主文 被告人Aを懲役1年6月に,被告人Bを懲役2年に処する。 被告人両名に対し,この裁判確定の日から4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人両名は,Cと称する組織に所属し,バイナリーオプション取引に関する情報商材の販売等の事業における顧客の勧誘等に従事していたものであるが, 1 被告人Bは,Cの代表者として前記事業を営み,同事業全般を統括管理していた分離前相被告人であるD及びAらとの間で,前記勧誘の担当者が架空のトレーダー等になりすまして集客をするなどの手法を利用し,バイナリーオプション取引に関する投資指導料名目で現金をだまし取る旨を共謀の上,真実は,Aが,被告人Bの指導を受け,自己のバイナリーオプション取引において,2時間で12万6800円の利益を得た事実も,40万円を投資した後約30秒で38万円の利益を得た事実もなく,それら取引の裏付けとなっているバイナリーオプション取引の勝率を80パーセント程度に上げることができる方法論がなく,Aが,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た事実もないのに,これあるように装い,令和2年1月下旬頃,Aが,出会い系アプリで知り合ったE(当時22歳)に対し,架空のトレーダーであるFになりすまし,同人が2時間のバイナリーオプション取引で約12万6800円の利益を得た旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同年2月8日,名古屋市(住所省略)G店において,Eに 旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同年2月8日,名古屋市(住所省略)G店において,Eに対し,Fに投資を指導したとする架空のトレーダーになりすました被告人Bが,「バイナリーオプションってなに,みたいなとこから教えていきますし。」「どうやってトレードするの,チャー トの見方は?どういうロジック,勝ち方があるんだろう。それをこっちから教えていって,一緒にやっていこっか。」「僕たちって,別にお金を預けて,勝手に増やすでもなく,自分で稼げる知識,いわゆるスキルを身に付けて自分でトレードするんですよ。」「何も知らない僕ができたんで,全然問題ないかな。」などとうそを言い,Aが,取引動画を閲覧させながら,「これ,画面録画なんですけど,今土日で,これなんですよ。私たちがやっているやつが。」「これが今自分の口座の中に入っている。」「取引時間が30秒。」「40万を賭けて,かける1.95倍なんで,78万。」などとうそを言い,被告人Bが,「素人がやると50パー50パーなんですけど,どれだけ50パーを80パーセントとか90パーセントとか増やせるか。」「それは知識とか経験で勝てるものなので。」「まあ,逆に言えばそこまでもっていくのが僕たちのお仕事。」「そのやり方とかも教えていきます。」「僕たちは,一律で100でやっているんですよ。」などとうそを言って投資指導料名目で現金100万円の交付を要求し,さらに,Aが,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た旨うそを言い,Eに,現金100万円で同方法論を購入すれば,Aらと同様に,同支出を超える利益を得られるものと誤信させ,よって,同日,同市 0万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た旨うそを言い,Eに,現金100万円で同方法論を購入すれば,Aらと同様に,同支出を超える利益を得られるものと誤信させ,よって,同日,同市(住所省略)自動契約機a設置場所及び同市(住所省略)自動契約機b設置場所において,被告人Bが,Eから,2回にわたり,投資指導料名目で現金合計100万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた 2 被告人両名は,D及びHとの間で,前記勧誘の担当者が架空のトレーダー等になりすまして集客をするなどの手法を利用し,バイナリーオプション取引に関する投資指導料名目で現金をだまし取る旨を共謀の上,⑴ 真実は,被告人Aが,被告人Bの指導を受け,自己のバイナリーオプション取引において,1日間で25万円の利益を得た事実も,40万円を投資した後約30秒で38万円の利益を得た事実もなく,それら取引の裏付けとな っているバイナリーオプション取引で利益を得ることができる方法論もなく,被告人Bが,過去,同方法論の教示を受けるために現金50万円を支出し,同方法論を用いて半年以内に50万円以上の利益を得て同支出分を回収することで損失を出さずに利益をあげていた事実もないのに,これあるように装い,令和2年1月16日頃,被告人Aが,出会い系アプリで知り合ったI(当時23歳)に対し,架空のトレーダーであるFになりすまし,同人が1日間のバイナリーオプション取引で約25万円の利益を得た旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同月31日,名古屋市(住所省略)Jホテル1階ロビーラウンジにおいて,Iに対し,被告人Aが,取引動画を閲覧させながら,「私が20万2回か する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同月31日,名古屋市(住所省略)Jホテル1階ロビーラウンジにおいて,Iに対し,被告人Aが,取引動画を閲覧させながら,「私が20万2回かけました。1. 95倍なんで約78万。30秒取引でこれ。」などとうそを言い,Fに投資を指導したとする架空のトレーダーになりすました被告人Bが,「38万プラス。言っちゃえば30秒で。」「僕たちだと,慣れてきてるからここまでバーンてかけられるんですけど。」「いわゆる勝ち方,ロジックもあれば,好きなタイミングでエントリーポイント見つけてエントリーするロジックもあるんで,ほんとに社会人向け。決まった時間に決まった方法でエントリーすれば勝てるっていう。」「こういう稼げる情報を教えるよって。1回50万いただければ,僕たちは稼げる,稼げるっていうかやり方だったりとか,さっき言ったロジック,勝ち方だったりを全然お渡しできる。」「僕ローン組みました。僕なんて50万なんて半年あれば元取れましたから。プラスしかない。」などとうそを言って投資指導料名目で現金50万円の交付を要求し,Iに,現金50万円で同方法論を購入すれば,被告人Aらと同様に,同支出を超える利益を得られるものと誤信させ,よって,同日,同市(住所省略)ATMコーナーにおいて,被告人Bが,Iから,投資指導料名目で現金50万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた ⑵ 真実は,被告人Aが,被告人Bの指導を受け,自己のバイナリーオプション取引において,約2時間で約12万円の利益を得た事実も,被告人Bが,自己のバイナリーオプション取引で40万円を投資して38万円の利益を得た事実もなく,それら取引の裏付けとなっているバイナリーオプション取引で利益を得ることができる方法論もなく,被告 も,被告人Bが,自己のバイナリーオプション取引で40万円を投資して38万円の利益を得た事実もなく,それら取引の裏付けとなっているバイナリーオプション取引で利益を得ることができる方法論もなく,被告人Bが,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た事実もないのに,これあるように装い,令和2年1月28日頃,被告人Aが,出会い系アプリで知り合ったK(当時23歳)に対し,架空のトレーダーであるFになりすまし,同人が約2時間のバイナリーオプション取引で約12万円の利益を得た旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同年2月2日,名古屋市(住所省略)Jホテル1階ロビーラウンジにおいて,Kに対し,Fに投資を指導したとする架空のトレーダーになりすました被告人Bが,「エントリーポイントの見付け方も全然教えます。バイナリーとはっていうところから教えていきます。」「自分でトレードしたら,お金もついてきますけど,自分にスキル身につくじゃないですか。」「そのスキルって身につけたら,例えば今の職失っても生きていけるし。」「初めに,もう,やるってなった段階で,こっちが用意しているっていうか,ロジックを渡すんですよね。やり方っていうか,こういうエントリーポイントがあるよっていうのをお渡しできるんですけど。」などとうそを言った上,40万円が投資されて38万円の利益が得られた状況を録画した取引動画を閲覧させ,「これは僕が取引したときの動画です。」「みんな一律100万円でやってます。みんなには100万円もらって教えてます。」などとうそを言って投資指導料名目で現金100万円の交付を要求し,さらに,被告人Bが,過去 が取引したときの動画です。」「みんな一律100万円でやってます。みんなには100万円もらって教えてます。」などとうそを言って投資指導料名目で現金100万円の交付を要求し,さらに,被告人Bが,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を 得た旨うそを言い,引き続き,同日,同市(住所省略)歩道上において,Dが,Kに対し,「大丈夫です,私たちを信じて下さい。すぐに元が取れますから安心して下さい。」などとうそを言い,同人に,現金100万円で同方法論を購入すれば,被告人Aらと同様に,同支出を超える利益を得られるものと誤信させ,よって,同日,同市(住所省略)L店において,被告人Bが,Kから,投資指導料名目で現金100万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた⑶ 真実は,被告人Aが,被告人Bの指導を受け,自己のバイナリーオプション取引において,約2時間で約12万円の利益を得た事実も,被告人Bが,自己のバイナリーオプション取引で40万円を投資して38万円の利益を得た事実もなく,それら取引の裏付けとなっているバイナリーオプション取引で利益を得ることができる方法論もなく,被告人両名が,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た事実もないのに,これあるように装い,令和2年2月5日頃から同月10日頃までの間に,被告人Aが,出会い系アプリで知り合ったM(当時23歳)に対し,架空のトレーダーであるFになりすまし,同人が約2時間のバイナリーオプション取引で約12万円の利益を得た旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同 のバイナリーオプション取引で約12万円の利益を得た旨投稿があるツイッターアカウントを閲覧させた上,自身にバイナリーオプション取引に関する方法論を教示した師匠と引き合わせる旨メッセージを送信し,同月14日,Jホテル1階ロビーラウンジにおいて,Mに対し,Fに投資を指導したとする架空のトレーダーになりすました被告人Bが,「いわゆるルールだとか基礎を覚えてしまえば,あとはやり方覚えてトレードするだけ。」「将来的に1か月50万稼げるようになれるよっていうのは言える。」「こういう過去の動きがあったから,ここのポイントでもそうなるよねっていうのはあります。いろいろありますよ。ロジックなんて。」「僕たちだと,20万を2ポジションかけて40万のかける2倍でだいたい78万ぐらいで賭 けたりしますけど。ただ,僕たちは自信があるから2ポジション40万賭けれるんです。僕は1年半でここまで来れました。」「何かを始めるために絶対お金必要なんですよ。僕たちは,社会人でも,学生でもそうなんですけど,一律100万でやってて。」などとうそを言って投資指導料名目で現金100万円の交付を要求し,さらに,被告人両名が,過去,同方法論の教示を受けるために現金100万円を支出した後,同方法論を用いて同支出を超える利益を得た旨うそを言い,Mに,現金100万円で同方法論を購入すれば,被告人Aらと同様に,同支出を超える利益を得られるものと誤信させ,よって,同日,L店において,被告人Bが,Mから,投資指導料名目で現金100万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第2 被告人両名は,Cに所属し,自己啓発に関する助言サービス等を行う役務提供等の事業における顧客の勧誘等に従事していたものであるが,Cの代表者として前記事業を営み,同事業全般を統括管理していたD及びH 被告人両名は,Cに所属し,自己啓発に関する助言サービス等を行う役務提供等の事業における顧客の勧誘等に従事していたものであるが,Cの代表者として前記事業を営み,同事業全般を統括管理していたD及びHと共謀の上, 1 令和2年4月16日,名古屋市(住所省略)N店及び同市(住所省略)O店において,被告人両名が,P(当時21歳)に対し,自己啓発に関する助言サービス等を行う役務提供契約の締結について勧誘をするに際し,当該役務提供契約の解除に関する事項につき,故意に事実を告げない行為をした 2 法定の除外事由がないのに,被告人両名が,同日,O店において,Pとの間で前記役務提供契約を締結したのに,同人に対し,直ちに,同契約の解除に関する事項等法令で定める事項が記載された書面を交付しなかったものである。 (法令の適用)被告人Aについて罰条判示第1の2全部いずれも刑法60条,246条1項判示第2 刑法60条,特定商取引に関する法律70条1号, 6条2項,1項5号(判示第2の1),同法71条1号,5条1項1号(判示第2の2)(判示第2の1,2は包括一罪であり,特定商取引に関する法律70条1号所定の刑で処断)刑種の選択判示第2につき,懲役刑選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の2⑶の罪の刑に法定加重)刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書被告人Bについて罰条判示第1の1,2全部いずれも刑法60条,2 刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書被告人Bについて罰条判示第1の1,2全部いずれも刑法60条,246条1項判示第2 刑法60条,特定商取引に関する法律70条1号,6条2項,1項5号(判示第2の1),同法71条1号,5条1項1号(判示第2の2)(判示第2の1,2は包括一罪であり,特定商取引に関する法律70条1号所定の刑で処断)刑種の選択判示第2につき,懲役刑選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の2⑶の罪の刑に法定加重)刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は,被告人Aが,出会い系アプリやSNS上で,バイナリーオプション取引により多額の利益を得ている架空のトレーダーを演じ,同サイトを通じて知り合った若年成人らに対し,被告人Bは同取引についての被告人Aの師匠として,また,Dはときに被告人両名の上司としても役割分担の上,種々言葉巧みに同取引に関す る投資指導サービスを勧誘し,その指導料名目で現金をだまし取り(判示第1),あるいは,同様に自己啓発に関する助言等のサービスを勧誘するなどし,その際,クーリングオフに関する説明や書面の交付もせずに,高額で契約をさせるなどした(判示第2)ものである。その態様は計画的かつ組織的なものであり,全体として相当悪質といわなければならない。本件詐欺の被害額も,被告人Aの起訴分が合計250万円,被告人Bの起訴分が合計350万円に上っているところ,被告人両名は,本件でいずれ 組織的なものであり,全体として相当悪質といわなければならない。本件詐欺の被害額も,被告人Aの起訴分が合計250万円,被告人Bの起訴分が合計350万円に上っているところ,被告人両名は,本件でいずれも詐欺の実行行為を含む重要な役割を果たしたのであって,その刑事責任は決して軽視することができない。 他方で,本件各犯行を首謀し圧倒的に主導したのはDである。被告人両名は,本件で起訴された事件の当時はDとの関わりをやめたいという気持ちも強かったとうかがわれ,また,とりわけ被告人Aの得ていた報酬も多くはなく,Dと比較した場合,被告人両名の立場ははるかに従属的なものであった。その上で,被害者らに対しては被害弁償や示談がなされ,その多くからは宥恕も得られている。被告人両名は,いずれも前科なく若年であるところ,捜査・公判の過程を通じて本件を重く受け止め,真摯な反省と謝罪の気持ちを深めている。それぞれ現在は新たな仕事に就いており,親身に更生を支える家族もいることからすると,被告人両名が今後再犯に及ぶ可能性が高いとは思われない。 そこで,以上の諸事情を総合的に考慮して,被告人両名をそれぞれ主文の刑に処した上,社会内更生を期して,その刑の執行を猶予することとした。 (求刑・被告人Aにつき懲役1年6月,被告人Bにつき懲役2年)令和3年12月6日名古屋地方裁判所刑事第4部 裁判官辛島明
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