令和3年3月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第19880号発信者情報開示請求事件口頭弁論終結日令和3年2月5日判決原告 X 同訴訟代理人弁護士平野敬髙井雅秀笠木貴裕被告ソフトバンク株式会社同訴訟代理人弁護士五十嵐敦 小林央典橋本直記 主文 1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,漫画家である原告が,電気通信事業を営む被告に対し,別紙発信端 末目録記載の発信端末の利用者(以下,これらの利用者を,同目録の番号に従い,「本件発信者1」などという。)が,被告の提供するインターネット接続サービスを介し,原告が執筆した漫画の電子データをP2P型のファイル共有ソフト「BitTorrent」を用いて送信又は送信可能化したことにより,上記漫画に係る原告の著作権(公衆送信権,送信可能化権)を侵害したことが 明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信 者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争い プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 当事者ア原告は,「X’」との筆名で活動する漫画家であり,「勇者のクズ」1巻及び2巻(以下,総称して「本件漫画」という。)の著作者である。(甲1,2,13)イ被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,プロバイダ責任制限法2 条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。 (2) BitTorrentの仕組みBitTorrentとは,インターネット上で,中央サーバを設けずに,P2P方式でファイルを共有するためのプロトコル(通信規約)の一つであり,同プログラムを実装したクライアントソフトの名称でもある。 BitTorrentにおいては,ファイルのダウンロードを,①まず,対象ファイルに対応するトレントファイルを入手してBitTorrentクライアントソフトに取り込み,②次に,当該トレントファイルで指定されたトラッカー(対象ファイルの提供者を追跡し,同提供者のリストを管理するサーバ)と通信して同提供者のIPアドレスの一覧を入手し,③最後に, 入手したIPアドレスの一覧から1つ以上のIPアドレスの端末を選択して対象ファイルの送信要求を行い,選択した端末から「ピース・ファイル」と呼ばれる対象ファイルが断片化されたデータを順次受信することにより行う。 そして,BitTorrentでファイルをダウンロードしたネットワークの参加者は,BitTorrentクライアントソフトを停止させるまで, トラッカーに対し,当 することにより行う。 そして,BitTorrentでファイルをダウンロードしたネットワークの参加者は,BitTorrentクライアントソフトを停止させるまで, トラッカーに対し,当該ファイルが送信可能であることを継続的に通知し, 他の不特定のネットワーク参加者からの要求があればいつでもこれを送信し得る状態に置かなければならない。(甲3,5,9の2,14)(3) 本件漫画の電子データの共有本件発信者1~3は,被告から別紙発信端末目録記載の各IPアドレスの割当てを受け,同目録記載の各日時頃,被告の提供するインターネット接続 サービスを介し,トラッカーに対し,同日時頃より前にBitTorrentを用いてダウンロードした本件漫画の電子データ(以下「本件データ」という。)を送信可能であることを通知(以下「本件通知」という。)し,本件ファイルの提供者のIPアドレスの一覧に登録されていた。 本件発信者1及び3は,上記各日時頃,原告訴訟代理人に対し,本件デー タを送信していた。他方,本件発信者2が,上記日時頃に,原告訴訟代理人に対し,本件データを送信していたかどうかについては,明らかになっていない。(甲4,5,6の1,6の5,6の7,7,8,11の4,11の5)(4) 本件発信者情報の保有被告は,本件発信者情報を保有している。 3 争点(1)「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法2条1号)該当性(争点1)(2) 権利侵害の明白性(争点2)(3) 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法2条1号)該当性)について〔原告の主張〕本件発信者1~3は,自己 べき正当な理由の有無(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法2条1号)該当性)について〔原告の主張〕本件発信者1~3は,自己の端末内のビットトレント・クライアントを用いて,別紙発信端末目録記載の時刻に,同IPアドレスにより,不特定の者に対 して本件データを現に送信し,又は送信可能化していた。これは,「不特定の 者によって受信させることを目的とする電気通信」に当たるので,「特定電気通信」に該当する。 〔被告の主張〕本件通知は,本件データを送信可能な状態にある端末からトラッカーという特定の相手に対して1対1で行われる通信であり,不特定の者によって受信さ れることを目的とするものではないので,原告の主張の趣旨が,本件通知をもって「特定電気通信」に該当するとの趣旨であれば失当である。 2 争点2(権利侵害の明白性)について〔原告の主張〕(1) 本件発信者1及び3は,不特定の者に対し実際に本件データを送信してい たのであるから,本件漫画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害していたことは明らかである。 (2) 本件発信者2は,本件通知をし,不特定の者からの送信要求があればいつでも本件データを送信し得る状態を生じさせ,本件データを公衆送信可能な状態に置いていたのであるから,本件漫画に係る原告の著作権(送信可能化 権)を侵害していたことは明らかである。 〔被告の主張〕(1) BitTorrentを用いてのファイルの送信が,当該ファイルそのものではなく,当該ファイルを断片化したピース・ファイルを送信するという方法で行われているとすると,本件データのピース・ファイルは,本件漫画 の画像データの原形をとどめておらず,著作物で そのものではなく,当該ファイルを断片化したピース・ファイルを送信するという方法で行われているとすると,本件データのピース・ファイルは,本件漫画 の画像データの原形をとどめておらず,著作物でない単に数字を羅列したデータにすぎないと考えられる。 したがって,本件データの送信は,著作物でない本件データのピース・ファイルを流通させるものにすぎず,本件漫画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものであることが明らかということはできない。 (2) 本件通知自体は,自己の端末から本件データが送信可能であるという情報 を通知の内容とするものにすぎず,本件データを何らかの保存領域に保存するものでないから,原告の権利を侵害するものではない。 3 争点3(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について〔原告の主張〕原告は,本件発信者1~3に対し,損害賠償等の請求をする準備しているが, このような請求をするには本件発信者情報の開示を受けることが必要である。 したがって,原告には,本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 〔被告の主張〕不知ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法2条1号)該当性)について前記前提事実(2)(3)によれば,BitTorrentでファイルをダウンロードしたネットワークの参加者は,他の不特定のネットワーク参加者からの要 求があればいつでもこれを送信し得る状態に置かなければならないのであるから,BitTorrentによるファイルの送信は「不特定の者によって受信させることを目的とする電気通信」に該当する(なお,原告は,本件通知自体を「特定電気通信」と主張しているものではない。)。 2 争点2 Torrentによるファイルの送信は「不特定の者によって受信させることを目的とする電気通信」に該当する(なお,原告は,本件通知自体を「特定電気通信」と主張しているものではない。)。 2 争点2(権利侵害の明白性)について (1) 前記前提事実(3)によれば,本件発信者1及び3は,本件データの送信により,BitTorrentネットワークの不特定の参加者の一人である原告訴訟代理人に対し,本件データを送っていたのであるから,本件漫画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害していたことは明らかである。 これに対し,被告は,本件データの送信は,著作物でない本件データのピ ース・ファイルを流通させるものにすぎないと主張するが,前記前提事実(2) によれば,BitTorrentは,ネットワーク参加者が,ピース・ファイルを全て受信することにより,送信要求の対象となったファイルと同一のファイルを自己の端末に複製することを可能にするのであるから,ピース・ファイルの送信であっても他のネットワーク参加者と共同して本件漫画に係る原告の著作権を侵害しているということができる。 (2) また,前記前提事実(3)によれば,本件発信者2は,BitTorrentを用いて本件データを自己の端末にダウンロードして記録した上で,本件通知をすることにより,トラッカーからIPアドレスの一覧を入手した不特定のネットワークの参加者からの求めに応じて,自己の端末から本件データを自動で送信し得る状態にしていたのであるから,本件漫画に係る原告の著作 権(送信可能化権)を侵害していたことは明らかである。 3 争点3(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について原告は,本件発信者1~3に対して著作権(公衆送信権 権(送信可能化権)を侵害していたことは明らかである。 3 争点3(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について原告は,本件発信者1~3に対して著作権(公衆送信権及び送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有しており,その権利を行使するために被告から本件発信者情報の開示を受ける必要がある。したがって,被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 4 結論よって,本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 齊藤敦 (別紙)発信者情報目録 別紙発信端末目録記載の各IPアドレスを,同目録記載の発信時刻頃に使用した者の情報であって,次に掲げるもの。 1 氏名又は名称 2 住所以上 (別紙)発信端末目録 (省略)(省略)(省略)(省略) (省略)(省略)(省略)(省略) (省略)(省略)(省略)(省略) 以上 申し訳ありませんが、具体的なテキストが提供されていないため、整形を行うことができません。整形したいテキストを提供していただければ、ルールに従って整形いたします。
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