平成11(受)1244 配当異議事件

裁判年月日・裁判所
平成14年1月22日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所 平成11(ネ)390
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判決文本文3,618 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 第1審判決を次のとおり変更する。 (1) 大阪地方裁判所が同庁平成5年(ケ)第672号不動産競売事件について作成した配当表のうち,上告人に対する配当金を620万円と,被上告人に対する根抵当権付き債権に係る配当金を4217万6100円と変更する。 (2) 上告人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟の総費用はこれを5分し,その2を被上告人の負担とし,その余を上告人の負担とする。 理由 上告代理人平川敏彦の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 (1) 株式会社E銀行は,平成2年4月12日,Fとの間で,同人所有の第1審判決別紙物件目録記載一及び二の各土地(以下「本件土地」という。)について,債務者をF,極度額を2億4000万円,被担保債権の範囲を銀行取引等とする根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の設定契約を締結し,同日,その旨の登記を経由した。 (2) 上告人は,平成4年4月10日,Fから本件土地の宅地造成工事(以下「本件工事」という。)を代金1400万円で請け負い,同月27日,本件土地について生ずべき先取特権(以下「本件先取特権」という。)の効力を保存するため,先取特権者を上告人,工事費用予算額を上記代金額,原因を同請負の先取特権発生とする不動産工事先取特権保存の登記を経由した。 (3) 上告人は,平成4年5月初旬ころ,本件工事のうち切土,残土処分工事- 1 -を行い,同5年11月から同6年4月中旬ころまで,本件工事のうち通路暗きょ工事,擁壁設置工事,ヒューム管布設工事等を行った。後記競売手続による本件土 ころ,本件工事のうち切土,残土処分工事- 1 -を行い,同5年11月から同6年4月中旬ころまで,本件工事のうち通路暗きょ工事,擁壁設置工事,ヒューム管布設工事等を行った。後記競売手続による本件土地売却時点において,本件工事による本件土地の増価額は620万円であった。 (4) E銀行は,大阪地方裁判所に対し,本件土地につき本件根抵当権の実行としての競売を申し立て,同裁判所は,平成5年5月13日,不動産競売の開始決定をし,同月14日その旨の差押登記が経由された(以下,この不動産競売手続を「本件競売手続」という。)。本件競売手続において,評価人は,同裁判所からの評価命令に基づき,同年7月15日,同裁判所に対し,本件土地に格別の不動産工事が施されたとは認めにくい旨を記載し,本件土地の評価額を,西側市道が利用可能である場合には7127万2000円,同市道が利用不可能である場合には5239万2000円とする評価書を提出した。同裁判所は,本件土地について,売却実施命令を発し,評価人の上記評価に基づいて最低売却価額を5240万円とする期間入札を行ったが,入札はなかった。評価人は,同裁判所からの補充評価命令に基づき,同6年7月18日,同裁判所に対し,前回の評価時から1年経過による市場価格の変動を勘案した本件土地の評価額を,西側市道が利用可能である場合は6608万円,同市道が利用不可能である場合には4860万6000円とする補充評価書を提出したが,同評価は,本件土地の実査を行うことなくされたものであった。同裁判所は,本件土地について,2回目の売却実施命令を発し,評価人の上記補充評価に基づいて最低売却価額を4862万円とする期間入札を行ったものの入札はなかったが,3回目の売却実施命令を発し,最低売却価額を上記同額とする期間入札を行ったところ,Gから入札 ,評価人の上記補充評価に基づいて最低売却価額を4862万円とする期間入札を行ったものの入札はなかったが,3回目の売却実施命令を発し,最低売却価額を上記同額とする期間入札を行ったところ,Gから入札価額を5005万円とする買受けの申出があり,同金額による売却許可決定がされ,Gは,同7年7月28日,買受代金を納付した。 なお,上告人は,上記不動産競売手続の現況調査を担当する大阪地方裁判所執行- 2 -官からの本件工事についての照会に対し,平成5年9月10日,都市計画法に基づく開発許可申請を行っているが,地元関係者との調整が未了であるため工事着手待ちになっており,地元との調整が出来次第工事にかかる旨の回答書を提出していた。 (5) 大阪地方裁判所は,平成7年11月17日の配当期日において,本件根抵当権付き債権についてのE銀行への配当額を,売却代金5005万円から手続費用167万3900円を除いた4837万6100円全額とし,上告人への配当額を0円とする旨の配当表(以下「本件配当表」という。)を作成したが,上告人は,本件配当表の記載のうち,E銀行の本件根抵当権付き債権についての配当額のうち1703万9342円(本件工事代金元本1400万円,遅延損害金303万9342円)について配当異議を申し出た。 (6) 被上告人(当時の商号は株式会社韓国商業銀行)は,平成10年12月31日,E銀行を合併した。 2 本件訴訟において,上告人は,本件先取特権が本件根抵当権に優先するなどとして,本件配当表のうち,上告人への配当金を1703万9342円と,被上告人への根抵当権付き債権についての配当額を3133万6758円と変更する旨の判決を求めている。第1審は,本件先取特権は本件根抵当権に優先するが,本件先取特権の対象となる工事を本件工事の一部に限定した上, の根抵当権付き債権についての配当額を3133万6758円と変更する旨の判決を求めている。第1審は,本件先取特権は本件根抵当権に優先するが,本件先取特権の対象となる工事を本件工事の一部に限定した上,114万7000円の範囲で上告人の請求を認めるべきものとした。原審は,前記の事実関係に基づき,本件土地の最低売却価額の決定過程及び売却許可決定に至る不動産競売の手続内において不動産工事の先取特権の対象となるべき工事による増価分が反映されていない以上,同先取特権に基づく優先弁済権を主張することは許されないなどと判断し,上告人の請求は理由がないとしたが,上告人のみが控訴しているので,第1審判決を上告人の不利益に変更することができないとして,控訴を棄却した。 3 しかし,原審の前記判断は是認することができない。その理由は,次のとお- 3 -りである。 不動産工事の先取特権は,請負人等が不動産に関して行った工事による増価額が現存する場合に限り,その増価額につき,登記された予算額の範囲内において(民法327条,338条1項),抵当権に優先するものであり(同法339条),差押えの登記前に登記がされた先取特権を有する債権者は,不動産競売手続において,この増価額につき売却代金の配当等を受けることができる(民事執行法188条,87条1項4号)。ところで,上記増価額は「配当加入ノ時裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ヲシテ之ヲ評価セシムルコトヲ要」し(民法338条2項),この評価は民事執行法58条に規定する評価人の評価の手続においてされるけれども,【要旨】不動産工事の先取特権の対象となるべき不動産についての工事による増価額が,不動産競売手続における評価人の評価又はこれに基づく最低売却価額の決定に反映されているか否かは,同先取特権の被担保債権が優先弁済を受けるべき実体 権の対象となるべき不動産についての工事による増価額が,不動産競売手続における評価人の評価又はこれに基づく最低売却価額の決定に反映されているか否かは,同先取特権の被担保債権が優先弁済を受けるべき実体的権利に影響を与えるものではない。けだし,評価人の評価は増価額を確定するものではなく,最低売却価額の決定も上記増価額を決定するものではなく,売却時に現存する増価額の有無を配当異議訴訟で争うことを妨げるものではないからである。したがって,上告人は,本件工事による本件土地の増価額につき,本件根抵当権に優先して配当を受けることができるものというべきである。 4 以上によれば,上告人の請求は,本件先取特権に基づき,本件工事による本件土地の増価額620万円の範囲で本件根抵当権に優先して配当を受けることができるものとして,その限度で認容すべきであり,その余は理由がないものとして棄却すべきである。 なお,上告受理申立ての理由中,民事執行法194条,42条の解釈適用の誤りをいう点は,上告受理の決定において排除された。 よって,原判決を,主文第1項のとおり変更することとし,裁判官全員一致の意- 4 -見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官千種秀夫裁判官金谷利廣裁判官奥田昌道裁判官濱田邦夫)- 5 -

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