平成19(ワ)32793 報酬金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年4月8日 東京地方裁判所
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判決文本文118,476 文字)

- 1 -平成23年4月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成19年(ワ)第32793号報酬金請求事件口頭弁論終結日平成22年12月3日判決神奈川県綾瀬市<以下略>原告 A1訴訟代理人弁護士椙山敬士同市川穣同曽根翼訴訟復代理人弁護士片山史英東京都港区<以下略>被告株式会社東芝訴訟代理人弁護士竹田稔同木村耕太郎同服部謙太朗 主文 1 被告は,原告に対し,643万0489円及び内金343万2021円に対する平成9年10月25日から,内金296万3468円に対する平成10年10月24日から,内金3万5000円に対する平成11年10月26日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 - 2 -第1 請求被告は,原告に対し,3億2676万5500円及び内金1億3068万2750円に対する平成9年10月24日から,内金1億3068万2750円に対する平成10年10月23日から,内金6540万円に対する平成11年10月25日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告の元従業員である原告が,カナ漢字変換装置に関する後記2件の特許権に係る発明は,原告が単独で発明した職務発明であり,その特許を受ける権利を被告 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告の元従業員である原告が,カナ漢字変換装置に関する後記2件の特許権に係る発明は,原告が単独で発明した職務発明であり,その特許を受ける権利を被告に承継させた旨主張し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(以下「特許法旧35条」という。)3項及び4項の規定に基づき,被告に対し,上記特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の一部請求として3億2676万5500円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,昭和48年に京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程を修了して同年4月1日に被告に入社し,平成16年1月31日に退職するまで被告に在職し,日本語ワードプロセッサなどの情報・通信システムの研究開発業務等に従事していた者である。 イ被告は,電気機械器具製造業,計量器,医療機械器具その他機械器具製造業,ソフトウェア業,電気通信業,放送業,情報処理サービス業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の職務発明及び特許を受ける権利の承継ア被告は,以下の(ア)及び(イ)の特許権(以下,(ア)の特許権を「本件特許権1」,その特許を「本件特許1」,その特許請求の範囲1項記載の発- 3 -明を「本件発明1」,(イ)の特許権を「本件特許権2」,その特許を「本件特許2」,その特許請求の範囲1項記載の発明を「本件発明2」といい,また,(ア)及び(イ)の各特許権,各特許及び各発明を総称して,それぞれ「本件各特許権」,「本件各特許」及び「本件各発明」という。)を有していた。 (ア) 特許第1280689号発明の名称同音語選択装置出願日 許権,各特許及び各発明を総称して,それぞれ「本件各特許権」,「本件各特許」及び「本件各発明」という。)を有していた。 (ア) 特許第1280689号発明の名称同音語選択装置出願日昭和52年11月24日出願番号特願昭52-139880号出願公告日昭和59年3月19日登録日昭和60年9月30日存続期間満了日平成9年11月24日特許請求の範囲「1 日本語文をその読みに従つてカナで入力し,対応する漢字混り文に変換するカナ漢字変換システムにおいて,カナ漢字変換結果及び同音異義語を表示するデイスプレイ装置と,同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段と,この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段と,同音異義語が生じた場合には前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうか調べる手段とを有し,前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在する場合には,その1単語を自動的に選択することを特徴とする同音語選択装置。」(イ) 特許第1356578号発明の名称カナ漢字変換装置出願日昭和53年9月25日出願番号特願昭53-116705号- 4 -出願公告日昭和60年1月16日登録日昭和62年1月13日存続期間満了日平成10年9月25日特許請求の範囲「1 第1の文字系列からなる文節を入力するための入力手段と,文節の種類に応じて第1の文字系列の文節を第2の文字系列の文節に変換するために文節の種類毎に設けられた複数の文節変換手段と,前記入力手段より入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文 るために文節の種類毎に設けられた複数の文節変換手段と,前記入力手段より入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込みこの送り込んだ入力文節に対する前記文節変換手段の変換結果を受け取りこの受け取つた変換結果の第2の文字系列分を出力する変換制御手段と,この変換制御手段より出力された第2の文字系列分を格納する格納手段とを備え,前記変換制御手段は受け取つた変換結果で第2の文字系列に変換されなかつた文字列の先頭部の単語から文節の種類を判別しこの判別された文節の種類に対応する文節変換手段に前記変換されなかつた文字列を送り込みこの送り込まれた文字列が前記文節変換手段により変換された第2の文字系列分を前記格納手段へ出力することを特徴とするカナ漢字変換装置。」イ原告は,被告に在職中に,単独又は他の発明者と共同で,本件各発明をし,本件各発明の特許出願時までに,本件各発明についての特許を受ける権利を被告に承継させた。 本件各発明は,被告の業務範囲に属し,かつ,原告の職務に属するものであって,特許法35条1項所定の職務発明に当たる。 (3) 特許公報に記載された発明者本件特許1の特許公報(特公昭59-11928号公報。甲1)及び本件- 5 -特許2の特許公報(特公昭60-1645号公報。甲2)の「発明者」欄には,いずれも,原告,B1(以下「B1」という。),C1(以下「C1」という。)及びD1(以下「D1」という。)の4名(以下「原告ら4名」という。)が発明者として記載されている。 (4) 被告の職務発明規程ア被告においては,その職務発明規程として,「従業員発明考案取扱規程」(以下「被告規程」という。)が設けられ,更にその細則として,「実 発明者として記載されている。 (4) 被告の職務発明規程ア被告においては,その職務発明規程として,「従業員発明考案取扱規程」(以下「被告規程」という。)が設けられ,更にその細則として,「実績補償細則」及び「ライセンス補償細則」が設けられている(以下,これらを総称して「被告規程等」という。)。 被告規程においては,①職務発明をした被告の従業員は,その発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させなければならないこと,②被告は,従業員から特許を受ける権利を承継したときは,当該従業員に対し,「譲渡補償」(出願時又は出願しないと決定した時に行う補償),「実績補償」(特許権等を自社内において実施したときに行う補償)及び「ライセンス補償」(特許権等について,第三者に実施権を許諾して実施料収入を得た時又は第三者の保有する特許権等につき実施料を支払うべき場合に,その支払に替えて被告の保有する特許権等を実施許諾したときであって,その許諾が●(省略)●の条件にあるとみられるとき(クロスライセンスの場合)に行う補償)を行うことが定められている(乙74の1,2)。 イ被告規程等は,これまで制定及び改定を経ているが,附則等で特段の定めがない限り,補償額の決定及び支払が行われる時点において有効な規程及び細則が適用されるものとされている。 平成8年度(年度は4月1日から翌年3月31日までを意味する。以下同じ。)を対象とする補償については,平成6年11月1日に制定された被告規程等(以下「平成6年被告規程等」という。乙74の1,75の1,76の1)が,平成9年度及び平成10年度を対象とする補償については,- 6 -平成10年4月1日に改定された被告規程等(以下「平成10年被告規程等」という。乙74の2,75の2,76の2)がそれぞれ適用される。 及び平成10年度を対象とする補償については,- 6 -平成10年4月1日に改定された被告規程等(以下「平成10年被告規程等」という。乙74の2,75の2,76の2)がそれぞれ適用される。 平成6年被告規程等及び平成10年被告規程等の内容は,次のとおりである。 (ア) 平成6年被告規程等a 実績補償について(a) 特許及び実用新案についての実績補償は,権利消滅前の実施について,登録後各年ごとに次により行う(被告規程9.1(1))。 1級 ●(省略)●2級 ●(省略)●3級 ●(省略)●4級 ●(省略)●5級 ●(省略)●(b) 上記(a)の等級は,●(省略)●によって,次のとおりとされる(実績補償細則1.1)。 1級 ●(省略)●2級 ●(省略)●3級 ●(省略)●4級 ●(省略)●5級 ●(省略)●(c) 実績補償は,前年度までに特許又は登録になった権利を対象に,その翌年度の実施実績を調査し,該当級を決定して行う(実績補償細則1.3(1))。 (d) 実績補償の支払は,遅くとも実績調査対象年度の翌年9月末までに行うことが望ましい(実績補償細則1.6(2))。 b ライセンス補償について- 7 -ライセンス補償は,実施料収入に対して行う補償とクロスライセンスに対して行う補償をいい(被告規程10.1),クロスライセンスについては,クロスライセンス契約書若しくはこれに準ずる書面を手交した場合又は書面によりクロスライセンス契約の成立を証明することができる場合に補償の対象とする(ライセンス補償細則1.)。 (a) 実施料収入に対して行う補償は,●(省略)●(以上,被告規程10.1(1))。 ●(省略)●(ライセンス補償細則2.1)(b できる場合に補償の対象とする(ライセンス補償細則1.)。 (a) 実施料収入に対して行う補償は,●(省略)●(以上,被告規程10.1(1))。 ●(省略)●(ライセンス補償細則2.1)(b) クロスライセンスに対して行う補償は,契約時及び●(省略)●ごとに会社が●(省略)●を算定し,別に定める基準により等級及び●(省略)●補償額を決定する。 等級及び補償額は,次のとおりとする。 ●(省略)●(以上,被告規程10.1(2))。 ●(省略)●は,●(省略)●(ライセンス補償細則2.2)。 (c) ライセンス補償の支払は,前年度に実施料収入のあったもの,契約が締結されたもの又は●(省略)●に該当するクロスライセンス契約について,その翌年度に行う実績補償と併せて行うものとする(ライセンス補償細則4.)。 (イ) 平成10年被告規程等a 実績補償について(a) 特許及び実用新案についての実績補償は,権利消滅前の実施について,登録後各年ごとに次により行う(被告規程9.1(1))。 ① 顕著な価値を認めるべき実施の場合A級 ●(省略)●B級 ●(省略)●C級 ●(省略)●- 8 -② 通常の実施の場合D級 1万円(b) 上記(a)の「顕著な価値を認めるべき実施」の等級は,●(省略)●によって,次のとおりとされる(実績補償細則1.2)。 A級 ●(省略)●B級 ●(省略)●C級 ●(省略)●(c) 会社が保有する特許等は登録年次に従って区分し,各特許等について3年に1度調査(以下「定期調査」という。)する。調査は,調査対象期間(直前の1年間)内の実施の有無の確認,「顕著な価値を認めるべき実施」に該当するか否かの認定及び等級を決定して行う(実績補償細則1.4(1))。 「定期調査」という。)する。調査は,調査対象期間(直前の1年間)内の実施の有無の確認,「顕著な価値を認めるべき実施」に該当するか否かの認定及び等級を決定して行う(実績補償細則1.4(1))。 前年の調査によって「顕著な価値を認めるべき実施」に該当すると認定されたものについては,翌年も調査を行う(実績補償細則1. 4(3))。 調査によって「通常の実施」に該当すると認定されたものについては,その調査対象期間に続く年度から次回の定期調査における調査対象期間の前の年度までの最長2年間の実施があるものとみなすことにより,当該みなし期間の補償を一時に行う(実績補償細則1.4(4))。 (d) 実績補償の支払は,原則として実績調査対象年度の翌年10月末までに行う(実績補償細則1.7(2))。 b ライセンス補償についてライセンス補償は,実施料収入に対して行う補償とクロスライセンスに対して行う補償をいい(被告規程10.1),クロスライセンスについては,クロスライセンス契約書若しくはこれに準ずる書面を手- 9 -交した場合又は書面によりクロスライセンス契約の成立を証明することができる場合に補償の対象とする(ライセンス補償細則1.)。 (a) 実施料収入に対して行う補償は,●(省略)●(以上,被告規程10.1(1))。 ●(省略)●(ライセンス補償細則2.1)(b) クロスライセンスに対して行う補償は,契約時及び契約更改時に●(省略)●(被告規程10.1(2))。 ●(省略)●は,契約時及び契約更改時に,●(省略)●(ライセンス補償細則2.2)(c) ライセンス補償の支払は,前年度に実施料収入のあったもの,契約が締結されたもの又は更改されたクロスライセンス契約について,その翌年度に行う実績補償と併せて行うものとする( 補償細則2.2)(c) ライセンス補償の支払は,前年度に実施料収入のあったもの,契約が締結されたもの又は更改されたクロスライセンス契約について,その翌年度に行う実績補償と併せて行うものとする(ライセンス補償細則4.)。 ウ被告においては,実績補償及びライセンス補償の支払は,調査対象年度の翌年10月の給料支払日に行うものとされており,平成8年度を対象とする補償の支払日は平成9年10月24日,平成9年度を対象とする補償の支払日は平成10年10月23日,平成10年度を対象とする補償の支払日は平成11年10月25日であった。 (5) 被告の原告に対する被告規程等に基づく補償の支払原告は,本件各発明に関し,被告規程等に基づき,被告から,平成8年度分ないし平成10年度分の実績補償及びライセンス補償として,以下のとおり,合計26万2900円の支払を受けた(甲5,弁論の全趣旨)。 ア本件発明1について(ア) 平成8年度分a 実績補償 2万5000円(評価「●(省略)●」として)b ライセンス補償 4万5000円- 10 -(イ) 平成9年度分(ただし,平成9年4月1日から本件特許権1の存続期間満了日の同年11月24日までの期間を対象)a 実績補償 2万5000円(評価「●(省略)●」として)b ライセンス補償 11万0900円(ウ) 平成10年度支払分a 実績補償なしb ライセンス補償 2万9500円(ただし,平成8年度分及び平成9年度分が平成10年度に支払われたもの)(エ) 合計23万5400円イ本件発明2について(ア) 平成8年度分a 実績補償 2500円(評価「●(省略)●」として)b ライセンス補償なし(イ) 平成9年度分a 実 合計23万5400円イ本件発明2について(ア) 平成8年度分a 実績補償 2500円(評価「●(省略)●」として)b ライセンス補償なし(イ) 平成9年度分a 実績補償 2万5000円(評価「●(省略)●」として)b ライセンス補償なし(ウ) 平成10年度分a 実績補償なしb ライセンス補償なし(エ) 合計2万7500円(6) 被告における日本語ワードプロセッサ開発の経過ア昭和40年代半ばころまでの我が国における一般的状況(ア) 昭和40年代ころまでの日本語タイピング用の機器は,当用漢字を始めとする2000字程度の漢字等の活字を文字盤に配置した,和文タイプのような「全文字配列方式」が最も一般的であった。しかし,この- 11 -方式は,熟練した技術を有する特殊技能者にしか実用的に使用することができないものであった。 また,昭和49年ころには,当時の通産省工業技術院電子技術総合研究所が,一般人にも漢字の入力ができる機器として,漢字1字をカナ2文字で入力し,表示される同音異字の中から目的の漢字を選択するものを開発した。しかし,この方式は,1文字単位で入力をしなければならない上に,多くの同音異字の中から目的の漢字を見つけ出して選択しなければならず,入力に多大な時間と労力を要するものであったため,実用化されるには至らなかった。 (イ) 他方において,特殊技能者以外の一般人が漢字を入力することができる方式の一つとして,カナ鍵盤などで入力したカナ文を漢字混じり文に変換する「カナ漢字変換方式」の研究が,昭和40年ころから,九州大学のE1教授(以下「E1教授」という。)らによって行われた。E1教授らは,昭和42年の論文「仮名文の漢字混り文への変換について」( 変換する「カナ漢字変換方式」の研究が,昭和40年ころから,九州大学のE1教授(以下「E1教授」という。)らによって行われた。E1教授らは,昭和42年の論文「仮名文の漢字混り文への変換について」(乙1)において,カナ文の中から漢字に変換する部分を正確に抽出し,多くの同音異義の単語から正しい単語を選択・決定していくために必要となる文節の「分かち書き」,同音異義語の処理,変換辞書の構成等に関する基礎的な手法を提案するなどした。 さらに,NHK総合技術研究所のF1(以下「F1」という。)らは,ニュースを対象にした計算機によるカナ文から漢字混じり文への変換システムを試作し,その成果を昭和48年の論文「計算機によるカナ漢字変換」(乙2)において発表した。このシステムにおいては,ほぼ文節単位に分かち書きされて入力されたカナ文を前提に,同音異字語を絞るために必要な文法的情報をまとめた「分かち書き単位分析表」や約6500語から成るニュース文用の単語辞書が用いられ,その変換能力は,約7000分かち書き単位の新聞記事に対する測定結果において,- 12 -一意変換率にして77.5%,一意的ではないが正しい漢字が第1順位に出力されたものを加えると90.1%であったことが報告されている(乙2)。 イ被告における開発経過(ア) 被告においては,昭和49年ころから,日本語ワードプロセッサの開発に向け,カナ漢字変換の技術についての研究が本格的に開始された。 この研究は,当初は,被告社内において「アンダー・ザ・テーブル研究」と呼ばれるもの(会社としての正式な研究テーマとなる以前の模索過程の研究)として開始され,その当時,被告の中央研究所(その後の「総合研究所」。以下,単に「総合研究所」という。)において,D1をリーダーとする「パターン認識」(自然 な研究テーマとなる以前の模索過程の研究)として開始され,その当時,被告の中央研究所(その後の「総合研究所」。以下,単に「総合研究所」という。)において,D1をリーダーとする「パターン認識」(自然情報処理の一つで, 画像・音声などの雑多な情報を含むデータの中から,意味を持つ対象を選別して取り出す処理。画像データの中から文字を認識してテキストデータに変換するOCRの技術も含まれる。)を主な研究テーマとする研究グループに属していたB1及び原告によって,カナ漢字変換のためのプログラムの制作等の研究開発作業が進められた。 その後,昭和51年3月までに,カナ漢字変換のプログラム等が一応作成されるに至ったことから,同月,被告社内において,大型計算機を使用して,どの程度の精度でカナ漢字変換ができるかを示すためのデモンストレーションが行われ,その結果,カナ漢字変換の技術が実用化し得る技術であることが,被告社内で認識されるようになった。 (イ) 昭和51年4月,「カナ漢字変換入力」の研究を含む「日本語処理システムの研究」が,被告における正式な研究テーマとなった。そのころから,カナ漢字変換技術に係る研究開発作業にC1が参加するようになった(乙6,証人C1)。 - 13 -昭和51年4月以降,被告においては,ミニコンピュータ(以下「ミニコン」という場合がある。)を用いたカナ漢字変換装置の試作機の製作を目標として,更なる研究開発作業が進められ,昭和52年3月にその試作機が完成した。 (ウ) さらに,昭和52年11月になると,カナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサの開発は,被告の総合研究所と青梅工場とが中心となる全社的なプロジェクトとなり(乙24),カナ漢字変換や編集機能等のソフトウェアのほか,漢字ディスプレイや漢字プリンター等のハー 本語ワードプロセッサの開発は,被告の総合研究所と青梅工場とが中心となる全社的なプロジェクトとなり(乙24),カナ漢字変換や編集機能等のソフトウェアのほか,漢字ディスプレイや漢字プリンター等のハードウェアをも含めた研究開発が進められた。 その結果,被告は,我が国で初めてのカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサである「JW-10」を完成させ,昭和53年9月にこれを発表し,昭和54年2月からその販売を開始した。 3 争点本件の争点は,次のとおりである。 (1) 本件各発明は,原告の単独発明か,あるいは,原告ら4名の共同発明か(争点1)。 (2) 本件各発明により被告が受けるべき利益の額(争点2)ア被告がライセンス契約等において本件各発明により受けるべき利益の額イ被告が包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額ウ被告が本件各発明の自社実施により受けるべき利益の額(3) 本件各発明がされるについて被告が貢献した程度(争点3)(4) 本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,原告が被告から支払を受けるべき額(争点4)(5) 本件発明2(平成8年度分)に係る相当対価請求権の消滅時効の成否(争- 14 -点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各発明の発明者)について(1) 原告の主張本件各発明は,原告が,被告の従業員として日本語ワードプロセッサの研究開発業務に従事する中で,単独で着想し,かつ,具体化したものであって,原告の単独発明である。 他方で,本件各特許の特許公報には,原告のほかに,D1,B1及びC1の3名(以下,この3名を「D1ら3名」という。)が共同発明者として記載されているが,本件各発明の特許出願当時の被告の総合研究所, 他方で,本件各特許の特許公報には,原告のほかに,D1,B1及びC1の3名(以下,この3名を「D1ら3名」という。)が共同発明者として記載されているが,本件各発明の特許出願当時の被告の総合研究所,あるいはD1をリーダーとする研究グループにおいては,有用な業績のある研究又は連名を期待する上司の何らかの意思を感じるなどの場合には,発明に何らの貢献もない上司等を共同発明者として特許出願の願書に記載する慣行が存在していたのであり,D1ら3名が本件各発明の共同発明者とされたのは,このような慣行によるものにすぎない。 本件各発明の技術的意義,原告が本件各発明をした経緯等は,以下のとおりである。 ア本件各発明の技術的意義(ア) 本件発明1についてa 本件発明1は,カナ漢字変換における同音異義語選択のための「短期学習」に関する発明である。 「短期学習」とは,ある特定のイベントの間,例えば,一文書作成の間やワードプロセッサの電源を入れている間などに,一時的に有効な「暫定辞書」というものを記憶装置上に作り,同音異義語の中で最近用いられたものをそこに記憶するというものである。 これに対して「長期学習」とは,永続的な長期記憶装置上の「辞書」- 15 -に同音異義語が選択された情報を書き込むことをいう。「長期学習」の場合には,記憶装置は電源を切る等の操作を行っても,記憶が消滅しない長期記憶装置(ハードディスク,フロッピーディスクなど)を使用することが不可欠となるが,「短期学習」の場合には,短期記憶装置(例えば,パソコンのメモリ)を用いることができる。この自由度は情報処理の上で極めて重要な性質である。 b 本件発明1は,日本語ワードプロセッサにおける「エディタ」(コンピュータ上でオブジェクトを編集するソフトウェア)の機能として,同音 できる。この自由度は情報処理の上で極めて重要な性質である。 b 本件発明1は,日本語ワードプロセッサにおける「エディタ」(コンピュータ上でオブジェクトを編集するソフトウェア)の機能として,同音異義語を複数記憶する「暫定辞書」を作成し,カナ漢字変換部から送られてきた同音異義語群の中から,この「暫定辞書」の中にある語を「自動的に」選択するというものである。 すなわち,本件発明1においては,カナ漢字自動変換の速度を上げるため,一時的に有効な「暫定辞書」というものを主記憶装置(メモリ)の上に作り,そこに直近に選択された同音異義語を複数記憶する。 そして,ユーザーが同音異義語選択を行うと直ちに選択情報が「暫定辞書」に記憶され,以後文書の作成過程において同音異義語選択を行う場合,暫定辞書に記憶された語の中に,かつて使用された語が存在するか検索し,直近に使用された同音異義語がまず一意的に表示され,表示された同音異義語が正しいものであれば,特に確定キーを押すなどの作業を行うことなく,ユーザーはそのまま文書を作成し続けることができる。もし誤った同音異義語が表示された場合には,変換キーを押し,次の選択候補を表示させ,正しい選択候補が表示された段階でこれを確定する。 従来は,カナを漢字に変換するに当たり同音異義語がある場合,入力者がその都度繰り返し特定の単語を指定する必要があり,入力作業には多大な時間と労力が必要であった。しかし,本件発明1を利用す- 16 -ると,同音異義語の中から特定の単語を一度選択すれば,当該単語に優先権が付与され,以後同一の同音異義語を変換する際には,当該優先権が付与された単語が「自動的に」第一順位に優先的に表示されるようになる。 このように本件発明1によって,入力者の負担は大幅に軽減され,迅速な同音異義語選択 同音異義語を変換する際には,当該優先権が付与された単語が「自動的に」第一順位に優先的に表示されるようになる。 このように本件発明1によって,入力者の負担は大幅に軽減され,迅速な同音異義語選択を実現することが可能となるから,ユーザーの利便性は非常に高いものとなる。 なお,本件発明1は,発明協会平成4年度全国発明表彰の特許庁長官賞を受賞している。 (イ) 本件発明2についてa 本件発明2は,「局所意味分析」を用いた複合分析型のカナ漢字自動変換技術に関する発明である。 「自然言語処理」(人間が使用する自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術)の一つである「形態素解析」(対象言語の文法の知識や辞書を情報源として用い,自然言語で書かれた文を意味のある最小の単位である形態素の列に分割し,それぞれの品詞を判別すること)をカナ漢字自動変換に持ち込むという発想は,本件発明2の前から存在しており,九州大学のE1教授らやNHK総合技術研究所のF1らによる研究が行われ,昭和48年のF1らの研究では,変換率が90.1%まで高められていた。 しかし,形態素解析のみを用いたカナ漢字自動変換技術は,結果的には,数字,カタカナ,ローマ字が混じった文章を満足に変換することができなかったため,実用化には至らなかった。 b 本件発明2は,人工知能技術を自然言語処理に応用した「局所意味分析」を用いた複合分析型のカナ漢字自動変換技術に関する発明であり,その名の通り,普通名詞文節,固有名詞文節,数詞文節といった- 17 -文節の種類に応じた複数の変換器を用意し,日本語表記の多様性に対処すると同時に,それらの変換器の一つが変換に失敗した時には,他の変換器を用いて複合的に文節を分析するものであり,従来の単純な形態素解析によるカナ漢字変換に比べ,その変 意し,日本語表記の多様性に対処すると同時に,それらの変換器の一つが変換に失敗した時には,他の変換器を用いて複合的に文節を分析するものであり,従来の単純な形態素解析によるカナ漢字変換に比べ,その変換率を飛躍的に向上させ,日本語ワードプロセッサの実用化を可能とした発明である。 局所意味分析の一例として,数詞文節を取り上げると(例えば,「だい169かい(第169回)」),数字はいくらでも大きくできるので,数詞文節を含む語を全て辞書に登録することはできない以上,従来の形態素解析を用いる普通文節変換器では変換不可能であり,数詞文節変換器を使わなければならない。数詞文節であることの認識を行うことが局所意味分析の一つの機能である。また,固有名詞である企業の名称についてみると,企業は無数にあり,しかも,興亡が著しいから,日本中の企業の名称を全て辞書に持つことは事実上不可能であり,従来の形態素解析を用いる普通文節変換器では変換不可能である。 このように,普通文節変換器だけでは適切に処理できない文節を,複数の変換器を駆使して変換を成功に導く技術が局所意味分析を用いた複合分析であり,その動きは,本件発明2の特許出願(特願昭53-116705号。以下「本件出願2」という。)に係る願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書2」という。甲2)の実施例に記載されているとおりである。 また,局所意味分析を試みながら複数の変換器の間で複合分析を行うこと,すなわち人工知能の用語でいう「バックトラック」(エラー回復のための再試行)を繰り返すことも本件発明2の技術的範囲に含まれている。 このように本件発明2の特徴は,複数の文節分析方式を備え,かつ,これを機動的に併用する点にあり,局所意味分析機能を有する複数の- 18 -文節分析方式が,一つ の技術的範囲に含まれている。 このように本件発明2の特徴は,複数の文節分析方式を備え,かつ,これを機動的に併用する点にあり,局所意味分析機能を有する複数の- 18 -文節分析方式が,一つの分析方式で失敗した時,他の分析方式で可能な限りバックアップを実施するものである。 本件明細書2を一読すれば,入力されたカナ文節が一度だけ形態素解析プログラムに処理を受ける従来の極めて単純な方式に比べて,日本語表記の多様性に対処しつつ巧妙に変換をやり直し,変換率の最後の壁を乗り越えて行く様子が容易に理解できる。この方式により実用化への変換率の壁を超えることが可能になったのである。 c 被告は,後記のとおり,JW-10においては,「固有名詞文節」であることをユーザーが「固有名詞」キーにより指定する構成となっており,「変換制御手段」により自動的に固有名詞文節であることを判別する構成のものではないから,本件発明2が実装されていない旨主張する。 しかし,機械の自動処理のために,人間がどこまで指図するかは設計上の程度問題である。例えば,英数字を使う場合にはそのためのキーを押した上で当該英数字のキーを押すのが現在でも一般である。同様に,固有名詞キーを押した後で,当該固有名詞を入力したとしても,その処理が自動でなくなるわけではない。コンピュータの側に,固有名詞,数詞,普通名詞といった文節変換器を持ち,これらの変換器を制御する変換制御部を有するのであれば,人間の入力を受けて適切な変換処理を行うことができるのであり,これをもって自動的な処理というのに何の不都合もない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 d 以上のとおり,本件発明2は,従来の単純な形態素解析によるカナ漢字変換の性能を大幅に凌駕したカナ漢字自動変換技術に関する基本発明であ 都合もない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 d 以上のとおり,本件発明2は,従来の単純な形態素解析によるカナ漢字変換の性能を大幅に凌駕したカナ漢字自動変換技術に関する基本発明である。 イ原告が本件各発明をした経緯- 19 -(ア) 原告は,昭和50年ころ,B1とともに,カナ漢字自動変換の研究開発を開始した。この時のB1と原告との間での業務分担は,B1がカナ漢字自動変換のシステムを作成し,原告はそのシステムが出力するカナ漢字混じり文の誤りを修正するエディタを作成するということであった。 (イ) B1は,昭和50年の秋ころ,NHK総合技術研究所のF1らの形態素解析の研究成果(乙2)を基にして,カナ漢字自動変換のプログラム(以下「B1プログラム」という。)を作成し,これをミニコン用に再コンパイルして原告に手渡した。 (ウ) 原告は,既にB1の開発作業と平行して,ミニコン上で開発作業を進めていたエディタにB1プログラムを組み込み,大型計算機を介さずに,ミニコン上で表示装置に変換結果を表示させることができるカナ漢字自動変換システムを作り上げ,以後,このシステムを使用して,その表示結果を見ながら,変換できないもの,誤変換になるものなどを子細に検討し,その原因を推測して文法を改良するなどの実験を行っていった。 (エ) 原告は,上記のような実験を行ううちに,一つの文書の中では基本的に同音異義語の中の同じ語が使われやすい傾向があることに気がつき,そうであれば,その同じ語を自動的に選択するようにすれば,入力効率が上がることになると考えた。 また,原告は,上記の実現方法について,辞書という大きなデータを直接書き換える処理を行えば,その処理が遅く重いものとなるので,エディタ内部に高速な暫定辞書を作ることを考えついた。 ると考えた。 また,原告は,上記の実現方法について,辞書という大きなデータを直接書き換える処理を行えば,その処理が遅く重いものとなるので,エディタ内部に高速な暫定辞書を作ることを考えついた。 このようにして,原告は,昭和51年前半の時期に,短期学習に関する本件発明1を着想し,その後,本件発明1の機能(暫定辞書とそれを操作するコマンド群)をエディタ内に実装した。 - 20 -(オ) さらに,その当時,カナ漢字自動変換技術はビジネス文書や特許に関する文書の作成を目的に開発が進められ,これらの文書では,数字,カタカナ,英字が多く登場するところ,形態素解析のみを用いたカナ漢字自動変換システムでは,基本的にひらがなを用いたカナ漢字自動変換システムにしか対応できず,数字,カタカナ,英字の変換ができないことが,変換率の上がらない原因となっていた。 そして,原告は,これらの数字,カタカナ,英字の周辺のひらがなは単純にひらがなだけの環境にある場合とは異なる性質,すなわち原告が局所意味と名付けた性質を持つことに気がつき,更に,文節の種類ごとに個別の変換器を割り当てることを思いつき,本件発明2を着想した。 その後,原告は,昭和52年春から昭和53年秋にかけて,上記個別の変換器が言語学的にどのような構造を持つものかを確定するための実験を繰り返し,その結果得られた知見を基に,昭和53年9月に発表されたJW-10に本件発明2を実装した。 具体的には,JW-10における変換制御部(局所意味分析の実装部)のプログラミング,文節抽出のプログラミング及びエディタ部(暫定辞書とそれを操作するコマンド群の実装部を含む。)のプログラミングを原告が行った。 ウ D1ら3名が本件各発明に関与していないこと(ア) 本件各発明の対象とされるカナ漢字自動変換 ディタ部(暫定辞書とそれを操作するコマンド群の実装部を含む。)のプログラミングを原告が行った。 ウ D1ら3名が本件各発明に関与していないこと(ア) 本件各発明の対象とされるカナ漢字自動変換システムの開発においては,自然言語処理,ひいては人工知能についての深い理解が必要である。 しかるところ,原告は,京都大学大学院において,人工知能の研究を組織的に行っていたG1教授に師事し,また,自然言語処理を専門とするH1助教授の下で自然言語処理の研究を行うなど,自然言語処理に関する高度な専門的知識を有していたのに対し,D1ら3名は,以下のと- 21 -おり,いずれも自然言語処理の専門教育を受けた者ではないから,D1ら3名が本件各発明の発明者となることは考えられない。 本件発明1はエディタ自身に単語を短期的に記憶させるという実際的な発想と,それを高速,効率的に行う方法に関する情報理論の知識がなければ思い至らない発明であり,本件発明2は形態素解析及び意味分析といった自然言語処理の知識が不可欠な発明であって,当時,被告においてこれをなし得る研究者は原告をおいて他にいなかった。 aD1についてD1が専門としていたのは自然言語処理とは全く関係のない分野であり,自然言語処理について,D1は全くの素人であった。 被告は,後記のとおり,「文字検索装置」に関するD1の研究業績を指摘するが,これは,漢字1字を検索し,選択する装置に関する研究であり,自然言語処理に基づく本件各発明とは,技術思想がおよそ異なるものであるから,このような研究業績があるからといって,D1に自然言語処理に関する素養があるとはいえない。 bB1についてB1が大学院で専門的に学んだのは,回路工学であって,自然言語処理とは無関係なものである。 他方,B1は からといって,D1に自然言語処理に関する素養があるとはいえない。 bB1についてB1が大学院で専門的に学んだのは,回路工学であって,自然言語処理とは無関係なものである。 他方,B1は,大学院在学中に,自然言語処理の著名な研究者であったE1教授の指導を受けた旨を主張するが,その内容は明らかではなく,単にE1教授の授業を受けただけであれば,自然言語処理の専門教育を受けたとはいえない。 また,B1は,被告に入社後,京都大学のJ1助教授(以下「J1助教授」という。)の研究室に所属していた事実があるが,研究生として1年間在籍していたにすぎず,この間にB1が行った研究は「構文分析」(文節と文節の関係を調べるもの)であって,形態素解析(文- 22 -節の内部構造を調べるもの)ではなく,自然言語処理に関する知識レベルが高いものであったとはいえない。 cC1についてC1は,工業高校卒業後に,被告に入社し,主にシステム関係を担当していた者であり,自然言語処理については全くの素人である。 (イ) また,被告の日本語ワードプロセッサ開発におけるD1ら3名の関与の状況をみても,以下のとおり,D1ら3名が本件各発明の着想や具体化に関与した事実は認められない。 aD1について被告の日本語ワードプロセッサ開発において,D1は,原告らが属する研究グループのリーダーとしての管理業務を行っていたにすぎず,本件各発明の着想や具体化に関与した事実はない。 その当時のD1は,通産省の大型プロジェクトであった「パターン情報処理」の研究・開発にかかりきりで,原告らと口をきく機会すらほとんどなかった。このことは,B1が,自身のブログにおいて,「D1さんは一切口を出さずに,「どうなっている」とも聞かずにほっておいてくれました。」と述べている かりきりで,原告らと口をきく機会すらほとんどなかった。このことは,B1が,自身のブログにおいて,「D1さんは一切口を出さずに,「どうなっている」とも聞かずにほっておいてくれました。」と述べていること(甲29)からも明らかである。 bB1について被告の日本語ワードプロセッサの開発におけるB1の関与は,昭和50年秋ころの開発の初期の段階で,カナ漢字自動変換のためのB1プログラムを作成したことのみであり,その後,B1は,昭和51年度には,その主業務を「漢字バーコードリーダ」などの漢字認識(パターン認識の一種)関係の研究開発に移している。このことは,B1が,昭和52年度の「電子通信学会情報部門全国大会」において,漢字認識に関する研究発表(甲33)を行っている事実からも明らかである。 - 23 -そのため,B1は,昭和52年11月以降の青梅工場におけるJW-10の開発の中核部分にも関与しておらず,研究グループのリーダーであるD1から告げられた開発期間短縮などのメッセージを青梅工場にいる原告のもとに持ってくる程度の関与しか行わなかった。 cC1について(a) C1が,被告の日本語ワードプロセッサ開発に参加したのは,昭和51年10月からである。 他方,本件発明1に係る暫定辞書(短期学習)の実装が報告されたのは,昭和51年11月の被告社内の技術報告である「カナ漢字変換システム(第2報)」(乙15)においてであり,上記暫定辞書の実装が実現されたのは,少なくともその数か月前と考えられる。 そうすると,C1が上記開発に参加したのは,本件発明1に係る発明が完成した後のことということになるから,時期的観点からみるだけでも,C1が本件発明1に関与していないことは明らかである。 (b) 昭和51年10月以降,C1が,被告の日本語 本件発明1に係る発明が完成した後のことということになるから,時期的観点からみるだけでも,C1が本件発明1に関与していないことは明らかである。 (b) 昭和51年10月以降,C1が,被告の日本語ワードプロセッサ開発において主に担当したのは,固有名詞処理のプログラムの作成であった。 また,C1は,昭和52年11月以降の青梅工場におけるJW-10の開発においては,ファイルシステム,入力エディタを主業務とし,その他アプリケーション,長期学習の改良を担当したにすぎない。 このように,C1が,本件各発明に関与した事実はない。 (ウ) 被告は,後記のとおり,被告の日本語ワードプロセッサ開発において,D1をリーダーとする研究グループでは,D1を含めた全員,あるいは技術的に関連した事項についての担当者同士の間で,担当者による- 24 -説明,着想の提示をもとに活発な議論が行われ,その着想を実施可能な程度に具体的な問題解決のアイデアとして形成していったのであり,本件各発明についても,原告ら4名による上記のような過程を経て完成したものである旨を主張する。 しかし,実際にはそのような事実は存在せず,本件各発明に関して,原告ら4名の間で議論が行われるようなことはほとんどなかったものであり,被告の主張は理由がない。 エ小括以上のとおり,本件各発明は,原告の単独発明であり,D1ら3名は本件各発明の完成に何ら関与しておらず,共同発明者ではない。 (2) 被告の主張ア本件各発明の技術的意義について(ア) 本件発明1について本件発明1は,いわゆる「短期学習」の一方式に関する発明であって,「短期学習」そのものの発明ではない。ここに「短期学習」とは,「ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能」をいい, 1は,いわゆる「短期学習」の一方式に関する発明であって,「短期学習」そのものの発明ではない。ここに「短期学習」とは,「ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能」をいい,これが当業者の一般的理解である(甲13)。これに対する「長期学習」とは,「日本語ワードプロセッサの単語辞書において,同音異義語について標準的な使用頻度に応じて重み付け(点数の割り当て)がされていることを前提に,ユーザーがある特定の同音異義語を選ぶたびに,これをカウントして当該同音異義語の点数が増加していき,点数の高い順から優先的に表示することによって,ユーザーの使用頻度に応じて表示される同音異義語の候補の順序が変化していく機能」をいう(乙27)。原告は,「暫定辞書」という「一時的に有効な記憶装置」に用いるか,「永続的な長期記憶装置」に用いるかというハードウェアの差異に着目して短期学習と長期学習を区別しているが,証拠上の根拠- 25 -はない。 そして,いわゆる「短期学習」の機能を実現する手段としては,本件発明1では,「優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」(特許請求の範囲),すなわちJW-10の開発当時に「暫定辞書」と呼ばれた,短期学習専用の特別の辞書領域(本件発明1の実施例では「記憶装置5」がこれに相当する。)を用いることを技術的特徴とするが,これ以外にも「短期学習」の機能を実現する手段がある。例えば,本件発明1の特許出願(特願昭52-139880号。以下「本件出願1」という。)の出願前に出願のあった特公昭58-39334号公報(乙25)に記載された発明(発明の名称・「日本語文章入力装置」,出願番号・特願昭51-81529号,発明者・K1ほか3名,出願人・被告。以下,この発明を「K1発明」という。)における短期学習では,「辞 5)に記載された発明(発明の名称・「日本語文章入力装置」,出願番号・特願昭51-81529号,発明者・K1ほか3名,出願人・被告。以下,この発明を「K1発明」という。)における短期学習では,「辞書テーブル」(特許請求の範囲記載の「漢字及び熟語をその読み及び使用順序情報と対応させて収容したテーブル」)そのものを更新する方式を採用しており,本件発明1のように短期学習専用の特別の辞書領域を使用する方式ではない。 また,原告は,本件発明1は,カナ漢字自動変換の速度を上げるため,一時的に有効な「暫定辞書」というものを主記憶装置(メモリ)の上に作る旨主張するが,本件発明1の特許請求の範囲には「単語を記憶する記憶手段」としか記載されていないのであるから,上記主張は,特許請求の範囲に基づかない主張である。 さらに,本件出願1に係る願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書1」という。甲1)には,エディタについての記載はなく,エディタは本件発明1の要素ではない。また,エディタ(文書エディタ)と暫定辞書は別個独立のものである。 以上のとおり,本件発明1の技術的意義に関する原告の主張は,特許- 26 -請求の範囲の記載に基づかないものであって失当である。 (イ) 本件発明2についてa 原告は,本件発明2が,「局所意味分析」を用いたことによって初めて実用的なカナ漢字変換を成し遂げた基本発明であるかのような主張をするが,本件発明2は「局所意味分析」の発明でもなければ,カナ漢字変換の基本発明でもない。 すなわち,本件発明2の特許請求の範囲記載の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別し」との構成要件が原告のいう「局所意味分析」といかなる関係があるのか不明である。例えば,カタカナを含む文節であるからといって「固有名 範囲記載の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別し」との構成要件が原告のいう「局所意味分析」といかなる関係があるのか不明である。例えば,カタカナを含む文節であるからといって「固有名詞文節」とは限らず,「普通名詞文節」である可能性もあり,文節の種類の正確な判別はできない。 また,本件明細書2記載の実施例において,「日本ABC社」(第2図),「第12回の」(第4図)という,局所意味分析を利用可能な文例を記載しているというだけであり,本件発明2の特許請求の範囲及び本件明細書2の「発明の詳細な説明」の記載を見ても,本件発明2は,「局所意味分析」ないし「局所意味分析を用いたかな漢字変換」の発明とはいえない。 さらに,「第12回」のような序数詞(助数詞)を変換する場合においては,日本語の文章で使用される数字の種類としては算用数字,漢数字,およびローマ数字の3種類しかないのであるから,「第」を「数詞前助数詞」,「回」を「数詞後助数詞」として登録しておくというように,「数字の直前に来る『だい』は『第』である」といった簡単なルールを決めさえすれば,正しく変換できるのであって,「意味」の分析などは必要でない。このように助数詞を正しく変換する技術は,本件発明2の特許出願(本件出願2)の当時,公知の技術(乙2の2- 27 -5頁左欄20行以下)であった。 b なお,JW-10においては,「固有名詞文節」であることをユーザーが「固有名詞」キーにより指定する構成となっており,「変換制御手段」により自動的に固有名詞文節であることを判別する構成のものではないから,本件発明2が実装されていない。 その他の被告の機種においても本件発明2は実装されていないことからみても,本件発明2は,かな漢字変換の基本発明といえるものではない。 c 成のものではないから,本件発明2が実装されていない。 その他の被告の機種においても本件発明2は実装されていないことからみても,本件発明2は,かな漢字変換の基本発明といえるものではない。 c 以上のとおり,本件発明2の技術的意義に関する原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであって失当である。 イ共同発明者について特許法において,「発明」とは「技術的思想の創作のうち高度のもの」を意味するから,共同発明者といえるためには,当該発明における技術的思想の創作に貢献した者であることが必要である。そして,「技術的思想の創作に貢献した者」といえるためには,新しい着想をした者あるいは新しい着想を具体化した者の少なくともいずれかに該当する者でなければならない。すなわち,新しい着想をした者は,原則として発明者であるものの,この着想とは,課題とその解決手段ないし方法が具体的に認識され,技術に関する思想として概念化されたものである必要があり,単なる思いつき以上のものでなければならない。また,新しい着想を具体化した者は,その実験やデータの評価などの具体化が当業者にとって自明程度のことに属しない限り,共同発明者たり得る。 これを,本件に即して言えば,本件発明1については,単に「ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の1位に表示する」ことを抽象的に着想しただけでは,発明行為としての「着想」をした者と言い得るか疑問である。 - 28 -他方,①短期学習の方式として暫定辞書を用いる方式とすべきか否か,②暫定辞書を用いる場合,当時の限られた記憶容量を前提に,暫定辞書に記憶させる語数を何語とするのが実用的であるか,③長期学習機能との連携をどうするか,④ディスプレイの表示はどうあるべきかといった,上記のアイデアを具体化するため 限られた記憶容量を前提に,暫定辞書に記憶させる語数を何語とするのが実用的であるか,③長期学習機能との連携をどうするか,④ディスプレイの表示はどうあるべきかといった,上記のアイデアを具体化するために必要な様々な技術的事項を検討し,意見を表明した者は発明行為としての「着想」を行った者といえる。 また,かかる「着想」を前提として,短期学習機能をプログラミングして実機に実装することは,発明の完成に不可欠な創作的な作業であって,そのような作業を行った者は,「着想を具体化した者」として「発明者」に含まれるものといえる。 本件発明2については,実機に実装されていない発明である点で本件発明1と異なるが,「共同発明者」についての考え方は本件発明1と同様である。 しかるところ,本件各発明は,原告ら4名による共同発明である。 このことは,本件各特許の特許公報(甲1,2)において,原告ら4名が発明者として記載されていること,本件各発明に係る発明考案報告書等(乙13の1,14の1)に,原告の自筆により,原告ら4名が発明者として記載されていることから明らかである。 そして,被告の日本語ワードプロセッサ開発において,D1をリーダーとする研究グループでは,D1を含めた全員,あるいは技術的に関連した事項についての担当者同士の間で,担当者による説明,着想の提示をもとに活発な議論が行われ,その着想を実施可能な程度に具体的な問題解決のアイデアとして形成していったのであり,本件各発明も,原告ら4名による上記のような過程を経て完成したものであるから,原告ら4名による共同発明である。 D1ら3名が,本件各発明の共同発明者であることは,以下のとおり,- 29 -被告の日本語ワードプロセッサ開発への同人らの関与の状況から明らかである。 (ア) 原告ら4名 同発明である。 D1ら3名が,本件各発明の共同発明者であることは,以下のとおり,- 29 -被告の日本語ワードプロセッサ開発への同人らの関与の状況から明らかである。 (ア) 原告ら4名の役割分担被告の日本語ワードプロセッサ開発における原告ら4名の中での役割分担は,必ずしも明確なものではないが,おおまかに言えば,①D1は,研究グループの進行,管理を総括するとともに,自ら研究グループの一員として日本語ワードプロセッサに関する技術の研究開発に関与し,②カナ漢字変換プログラムの作成,同音異字語の長期学習に関わる辞書の頻度情報の更新プログラムの作成及び同音異字語の短期学習に関わる暫定辞書の設計は主としてB1が担当し,③文章エディタの作成は原告が担当し,④入力エディタ,暫定辞書への単語登録プログラムの作成,ファイル管理などの各種アプリケーションの作成は主としてC1が担当し,辞書の作成には原告ら4名全員が関わった。 (イ) D1が共同発明者であることD1は,昭和46年ころから日本語ワードプロセッサの着想を得て,その研究開発に着手していた,この分野の先駆者であり,原告らによる日本語ワードプロセッサ開発がスタートする前の昭和44年には,特願昭44-89746号公報(乙7)に係る「文字検索装置」の発明を,昭和46年には,特願昭46-20338号公報(乙8)に係る「文字検索装置」の発明を行うなど,日本語ワードプロセッサに関する数多くの発明をしているのであって,本件発明1に係る同音異義語の選択に関する技術や本件発明2に係るカナ漢字変換の技術にも通暁していた。 そして,D1は,被告の日本語ワードプロセッサ開発において,研究グループのリーダーとして全体を統括管理するだけでなく,個々の技術の研究開発についても必要に応じて関与し,本件各 にも通暁していた。 そして,D1は,被告の日本語ワードプロセッサ開発において,研究グループのリーダーとして全体を統括管理するだけでなく,個々の技術の研究開発についても必要に応じて関与し,本件各発明についてもその技術的思想の創作の具体的な問題解決のアイデアの形成に関与してき- 30 -た。 すなわち,本件各発明がされた昭和51年から昭和52年ころの被告総合研究所においては,上記(ア)のようなおおまかな役割分担はあったものの,D1は,決してグループの管理者としての役割のみを果たしていたのではなく,むしろ「プレイングマネージャー」として研究者の役割をも果たしていたのであり,カナ漢字変換の方法論についての議論に参加し,例えば,本件発明1の着想につながった昭和51年3月の大型計算機によるシミュレーション実験の結果についての議論にも参加していた。 この点,日本語ワードプロセッサの開発における各技術分野は,相互に密接に関連しているのであるから,各担当者,特に原告ら4名が,互いに課題や結果を持ち寄って日常的に議論を重ねていたというのは極めて自然なことである。そして,このことは,当時の被告総合研究所における原告ら4名の座席が,研究テーマ別に配置され,議論がしやすいように配慮がされていたこと(乙77)からも裏付けられる。 このように,D1は,本件各発明について,少なくとも原告ら4名の間における議論に参加してアイデアの着想に本質的に貢献したものといえるから,本件各発明の共同発明者である。 (ウ) B1が共同発明者であることB1は,九州大学大学院修士課程(電子工学専攻)を卒業した後,昭和46年に被告に入社したが,大学院在学中に,自然言語処理の著名な研究者であったE1教授の指導を受けており,更に被告入社後には,京都大学のJ1助教授 学大学院修士課程(電子工学専攻)を卒業した後,昭和46年に被告に入社したが,大学院在学中に,自然言語処理の著名な研究者であったE1教授の指導を受けており,更に被告入社後には,京都大学のJ1助教授の研究室に派遣され,同研究室の研究生として,1年間にわたり,カナ漢字変換の核となる技術である形態素解析を含む構文解析を研究したのであり,逐次選択方式の短期学習の特許出願(乙26)や長期学習の特許(乙27)において筆頭発明者となるなど,人工- 31 -知能及び自然言語処理について高度の知識と技術を有していた。 本件各発明の完成に当たっては,原告ら4名が,上記(ア)のとおり役割を分担しながらも,重要な事項については,担当者の説明・着想の開示を基に活発な議論を行って技術的検討を重ねた結果,その技術的思想の完成をみたものであり,B1もこのような議論に参加していた。 また,本件発明1の特徴の一つは,短期学習専用の特別の辞書領域である暫定辞書を作り,そこに同音異義語の選択情報を記憶しておくことにあるところ,実際に,暫定辞書のアルゴリズムを作り,プログラミングを行ったのは主にB1であり,このことからも,B1が本件発明1の完成に本質的な貢献をしていることは明らかである。 なお,原告は,B1が,昭和51年の初めにカナ漢字自動変換のためのB1プログラムを作成した後,他の業務に移り,日本語ワードプロセッサ開発には関与していなかった旨主張するが,それは誤りである。実際には,日本語ワードプロセッサの開発が被告の全社的なプロジェクトとなった昭和52年11月以降においても,B1はカナ漢字変換の技術に関する開発リーダーとして日本語ワードプロセッサの開発に関与していた。 以上のとおり,B1は,本件各発明について,原告ら4名の間における議論に参加してアイデア いても,B1はカナ漢字変換の技術に関する開発リーダーとして日本語ワードプロセッサの開発に関与していた。 以上のとおり,B1は,本件各発明について,原告ら4名の間における議論に参加してアイデアの着想に本質的に貢献するとともに,本件発明1の特徴に関わる暫定辞書のプログラムの作成を行うことによって,本件発明1の完成に本質的な貢献をしたものといえるから,本件各発明の共同発明者である。 (エ) C1が共同発明者であることC1は,小田原城北工業高校を卒業した後,昭和42年に被告に入社し,当時の中央研究所(その後の総合研究所)に配属され,主にシステム設計を担当し,プログラミング技術において優れた能力を有してい- 32 -た。 C1は,本件各発明の完成に当たって,前記(ウ)のような原告ら4名の議論に参加していたほか,本件発明1に関しては,B1とともに暫定辞書のプログラムの作成を行い,また,本件発明2に関しては,その構成要件の一部である固有名詞変換器に関するプログラムの作成を行っている。 したがって,C1は,本件各発明の完成に当たって,担当者との議論の相手方になって,アイデアの着想に本質的な貢献をするとともに,その着想の具体化に貢献したものといえるから,本件各発明の共同発明者である。 ウ小括以上のとおり,本件各発明は,原告ら4名の共同発明であって,原告の単独発明ではない。 2 争点2(本件各発明により被告が受けるべき利益の額)(1) 原告の主張被告が,本件各発明について,本件発明1については平成8年4月1日から平成9年11月24日(本件特許権1の存続期間満了日)までの期間,本件発明2については平成8年4月1日から平成10年9月25日(本件特許権2の存続期間満了日)までの期間において,他社にその実施を許諾し, 9年11月24日(本件特許権1の存続期間満了日)までの期間,本件発明2については平成8年4月1日から平成10年9月25日(本件特許権2の存続期間満了日)までの期間において,他社にその実施を許諾し,又は自社でこれを実施したことにより受けるべき利益の額は,次のとおりである。 ア被告がライセンス契約等において本件各発明により受けるべき利益の額被告は,平成8年度ないし平成10年度当時,本件各特許に関し,●(省略)●(以下「A社」という。),●(省略)●(●(省略)●。以下「B社」という。),●(省略)●(以下「C社」という。)及び●(省略)●(以- 33 -下「D社」という。)の4社との間でライセンス契約(一部クロスライセンス契約を締結していた。 (ア) A社ないしC社からの実施料a 被告がA社ないしC社との間の各ライセンス契約によって得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計は,各年度当たり少なくとも●(省略)●円である。 他方,A社ないしC社との各ライセンス契約において,被告は,本件各特許以外のワードプロセッサ関連特許についても包括的にライセンスしているが,本件各特許以外の特許については,平成8年度以降には消滅していたり,他社が利用していないものばかりである。 しかるに,本件各特許はいずれも日本語ワードプロセッサの実用化を可能とした基本特許であり,平成8年度分及び平成9年度分の上記実施料収入合計●(省略)●円における本件各発明の寄与度は100%(本件発明1及び本件発明2につき各50%)であるというべきであるから,●(省略)●円全額が本件各発明による実施料収入である。 b また,被告は,A社ないしC社との各ライセンス契約において,平成10年度にも●(省略)●円の実施料収入を得ているはずであり,そのうち本 ,●(省略)●円全額が本件各発明による実施料収入である。 b また,被告は,A社ないしC社との各ライセンス契約において,平成10年度にも●(省略)●円の実施料収入を得ているはずであり,そのうち本件発明2による実施料収入は,平成8年度分及び平成9年度分と同様に,●(省略)●円(●(省略)●円の50%)である。 c 以上によれば,被告がA社ないしC社との間の各ライセンス契約によって得た平成8年度ないし平成10年度の本件各発明による実施料収入の合計額は,●(省略)●円である。 (イ) D社からの実施料a 被告が,D社とのライセンス契約によって得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計は,●(省略)●円である。 他方,D社とのライセンス契約において,被告は,本件各特許以外- 34 -のワードプロセッサ関連特許についても包括的にライセンスしているが,本件各特許以外の特許については,平成8年度以降には消滅していたり,他社が利用していないものばかりである。 しかるに,本件各特許はいずれも日本語ワードプロセッサの実用化を可能とした基本特許であり,上記実施料収入合計●(省略)●円における本件各発明の寄与度は100%であるというべきであるから,●(省略)●円全額が本件各発明による実施料収入である。 b したがって,被告がD社との間のライセンス契約よって得た平成8年度及び平成9年度の本件各発明による実施料収入の合計額は,●(省略)●円である。 (ウ) マイクロソフト社からの実施料相当の利益被告は,マイクロソフト社(以下「MS社」という。)との間で,被告がMS社に本件各発明の実施を許諾することの対価として,被告が製造・販売するパソコンにプリインストールされるWindows95やWindowsNT等のOSについて,被告がMS う。)との間で,被告がMS社に本件各発明の実施を許諾することの対価として,被告が製造・販売するパソコンにプリインストールされるWindows95やWindowsNT等のOSについて,被告がMS社に支払うべきライセンス料の減額を受ける旨の契約を締結しており,これによって,●(省略)●から得た本件各発明による実施料収入と同程度の利益を得ていたものと推認される。 そして,●(省略)●のとおり,被告が●(省略)●から得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計額は●(省略)●円であるところ,●(省略)●。 他方,被告がMS社から得た実施料相当の利益額も,●(省略)●の場合と同様に●(省略)●円と考えられるところ,MS社が,平成8年度及び平成9年度に出荷した,本件各発明を実施する「MS-IME」を実装したWindows95やWindowsNT等のOSの本数は合計1700万本である。 - 35 -そうすると,被告がMS社との上記契約において本件各発明により受けるべき平成8年度分及び平成9年度分の実施料相当の利益の額は,●(省略)●円(●(省略)●円×1700万本)と推認される。 イ被告が包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額(ア) 被告は,平成8年度ないし平成10年度当時,被告及び●(省略)●との間において,ワードプロセッサ関連特許に関する包括クロスライセンス契約を締結していた。 ところで,被告が包括クロスライセンス契約において本件各発明により得た利益の額については,これを直接算定することは困難であるので,被告と●(省略)●との間の各ライセンス契約において本件各発明により得た実施料と同率の実施料率による利益を得ていたものと推定するのが合理的である。 しかるところ,平成8年度及 は困難であるので,被告と●(省略)●との間の各ライセンス契約において本件各発明により得た実施料と同率の実施料率による利益を得ていたものと推定するのが合理的である。 しかるところ,平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場における市場占有率は,被告が15%,●(省略)●が10%である。 他方,前記●(省略)●のとおり,被告が●(省略)●との間の各ライセンス契約において本件各発明により得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計は各年当たり少なくとも●(省略)●円であるから,市場占有率1パーセント当たりの1年間の上記実施料収入の額は,●(省略)●円と算定される(本件発明1及び本件発明2で2分の1ずつ)。 そして,平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場における被告及び●(省略)●以外の●(省略)●の市場占有率は,被告及び●(省略)●の上記市場占有率(合計25%)を除いた75%であるから,被告が,上記●(省略)●との包括クロスライセンス契約において,- 36 -本件各発明により受けるべき平成8年度分及び平成9年度分の実施料相当の利益の額は合計●(省略)●円(●(省略)●円×75×2年間),本件発明2により受けるべき平成10年度分の実施料相当の利益の額は合計●(省略)●円(●(省略)●円×1/2×75×1年間)である。 (イ) したがって,被告が,被告及び●(省略)●以外の●(省略)●との包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき平成8年度分ないし平成10年度分の実施料相当の利益の合計額は,●(省略)●円である。 ウ被告が本件各発明の自社実施により受けるべき利益の額(ア) 本件各発明の自社実施a 本件発明1について本件発明1の技術的意義は,前記1(1)ア( の合計額は,●(省略)●円である。 ウ被告が本件各発明の自社実施により受けるべき利益の額(ア) 本件各発明の自社実施a 本件発明1について本件発明1の技術的意義は,前記1(1)ア(ア)のとおり,暫定辞書を作り,同音異義語の中で最近用いられたものをそこに複数個記憶し,これによって,システム辞書等を書き換えることなく,同音異義語を自動的に選択する点にあるところ,このような本件発明1の技術は,JW-10において実装され,更に,被告の製品を含むその後の大部分のワードプロセッサ専用機やワープロソフトにも採用されてきた。 したがって,平成8年度及び平成9年度当時,被告が,本件発明1を自社製のワードプロセッサ専用機において実施していたことは明らかである。 b 本件発明2について本件発明2は,前記1(1)ア(イ)のとおり,「局所意味分析」を用いた複合分析型カナ漢字自動変換方式の技術に関するものであり,普通名詞文節,固有名詞文節,数詞文節といった文節の種類に応じた複数の変換器を用意し,日本語表記の多様性に対処すると同時に,それ- 37 -らの変換器の一つが変換に失敗した時には,他の変換器を用いて複合的に文節を分析するものであるところ,従来の形態素解析を用いた文節変換器だけでは正しい変換ができない数詞文節などの文節の変換を適切に処理するには,文節の種類に応じた複数の変換器を用意し,局所意味分析を用いて適切な変換器に文節を振り分けることが必須であり,それが本件発明2の技術である。 このような本件発明2の技術は,JW-10において実装され,更に,被告の製品を含むその後の大部分のワードプロセッサ専用機やワープロソフトにも採用されてきた。このことは,ワープロソフトである「MS-IME95」●(省略)●,ワードプロセッサ専用 て実装され,更に,被告の製品を含むその後の大部分のワードプロセッサ専用機やワープロソフトにも採用されてきた。このことは,ワープロソフトである「MS-IME95」●(省略)●,ワードプロセッサ専用機である「●(省略)●」及び「書院WD-M500」に「だい3」という数詞文節を入力して検証したところ,いずれにおいても,初回から「第3」という正しいカナ漢字自動変換が行われたこと(甲38・23頁以下)から裏付けられる。 したがって,平成8年度ないし平成10年度当時,被告が,本件発明2を自社製のワードプロセッサ専用機において実施していたことは明らかである。 c 被告の原告に対する補償金の支払前記争いのない事実等(5)のとおり,被告は,原告に対し,本件各発明に関し,被告規程等に基づき,平成8年度から平成10年度までの期間を対象とする実績補償として,一定の金銭を支払っていた事実がある。 この支払の事実は,被告が,本件各発明を自社実施していたことの証左である。 (イ) 被告の自社実施による独占の利益a 特許発明を自社実施するとともに,他社に実施許諾している場合に- 38 -おいても,自社実施による独占の利益である「超過利益」は,自社実施による利益の50%ないし60%存在しているのが原則である(知的財産高等裁判所平成21年2月26日判決(平成19年(ネ)第10021号)参照)。 これによれば,平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場における被告の市場占有率15%のうちの2分の1に当たる7.5%は,単なる通常実施権を超える独占的利益に基づくものと考えられる。 そして,前記イ(ア)のとおり,ワードプロセッサ専用機において本件各発明により得られる実施料相当額は,ワードプロセッサ専用機市場における市場占有率1 超える独占的利益に基づくものと考えられる。 そして,前記イ(ア)のとおり,ワードプロセッサ専用機において本件各発明により得られる実施料相当額は,ワードプロセッサ専用機市場における市場占有率1パーセント当たりの1年間の実施料にして,●(省略)●円と算定されるしたがって,被告が本件各発明を自社実施したことによる平成8年度分及び平成9年度分の独占の利益の合計額は,●(省略)●円(15×1/2×●(省略)●円×2年間)となる。 また,被告が本件発明2を自社実施したことによる平成10年度分の独占の利益の額は,●(省略)●円(15×1/2×1/2×●(省略)●円×1年間)となる。 b 以上によれば,被告が本件各発明を自社実施したことによる平成8年度分ないし平成10年度分の独占の利益の合計額は,●(省略)●円である。 エまとめ以上によれば,被告が,本件各発明について,本件発明1については平成8年4月1日から平成9年11月24日までの期間,本件発明2については平成8年4月1日から平成10年9月25日までの期間において,他社にその実施を許諾し,又は自社でこれを実施することにより受けるべき- 39 -利益の額は,合計34億6250万円である。 (2) 被告の主張ア被告が各ライセンス契約等において本件各発明により受けるべき利益の額について(ア) ●(省略)●からの実施料についてa 被告が●(省略)●との間の各ライセンス契約により得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計が,各年当たり●(省略)●円であることは認める。 b 実施料収入における本件各発明の寄与度原告は,前記aの実施料収入における本件各発明の寄与度は100%(本件発明1及び本件発明2につき各50%)である旨を主張するが,以下のとおり,理 る。 b 実施料収入における本件各発明の寄与度原告は,前記aの実施料収入における本件各発明の寄与度は100%(本件発明1及び本件発明2につき各50%)である旨を主張するが,以下のとおり,理由がない。 (a) 被告とA社間の●(省略)●のライセンス契約(以下「A社ライセンス契約1」という。)及び●(省略)●のライセンス契約(以下「A社ライセンス契約2」という。)においては,本件特許1は,●(省略)●,本件特許2は●(省略)●。 被告とB社間の●(省略)●のライセンス契約(以下「B社ライセンス契約1」という。)においては,本件特許1は●(省略)●,本件特許2は●(省略)●。また,被告とB社間の●(省略)●のライセンス契約(以下「B社ライセンス契約2」という。)においては,●(省略)●。 被告とC社間の●(省略)●のライセンス契約(以下「C社ライセンス契約」という。)においては,本件各特許は●(省略)●。 被告とD社間の●(省略)●のライセンス契約(以下「D社ライセンス契約」という。)においては,本件各特許は●(省略)●である。 (b) 以上の(a)の事情に加えて,①被告とA社,B社又はD社との- 40 -間の各ライセンスは,いずれも包括ライセンス契約であり,●(省略)●,②●(省略)●であること,③平成8年度ないし平成10年度当時に被告が保有していた日本語ワードプロセッサに関する特許及び特許出願は,原告ら4名のいずれかを発明者として含むものだけでも145件あることを総合的に考慮すると,●(省略)●からの平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入における本件発明1の寄与度は150分の1程度であり,本件発明2の寄与度は0であるというべきである。 また,●(省略)●から平成10年度分の実施料収入があったとしても,そ 成9年度分の実施料収入における本件発明1の寄与度は150分の1程度であり,本件発明2の寄与度は0であるというべきである。 また,●(省略)●から平成10年度分の実施料収入があったとしても,その実施料収入における本件発明2の寄与度は0であるというべきである。 (イ) D社からの実施料についてa 被告がD社ライセンス契約により●(省略)●,D社からの平成8年度及び平成9年度の実施料収入の合計額が●(省略)●円であるとの原告の主張は,誤りである。 b 被告が●(省略)●。 また,前記(ア)bで述べた諸事情によれば,上記実施料収入における本件発明1の寄与度は150分の1程度であり,本件発明2の寄与度は0であるというべきである。 (ウ) MS社からの実施料相当の利益について原告が前記(1)ア(ウ)で主張する被告とMS社間の契約の締結の事実はない。 したがって,被告がMS社から本件各発明の実施料相当の利益を得ていたという事実もない。 イ被告が包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額について- 41 -(ア) 包括クロスライセンス契約の相手方及びその市場占有率被告が,平成8年度ないし平成10年度当時においてワードプロセッサ関連特許に関して包括クロスライセンス契約を締結していた相手方は,●(省略)●(以下「E社」という。),●(省略)●(以下「F社」という。),●(省略)●(以下「G社」という。)及び●(省略)●(以下「H社」という。)の4社のみであり,被告との間で,ワードプロセッサ関連特許に関して,ライセンス契約も包括クロスライセンス契約も締結していないワードプロセッサ専用機メーカーが複数存在する。 また,E社ないしH社のワードプロセッサ市場における平成8年度及び平成9年度当時 に関して,ライセンス契約も包括クロスライセンス契約も締結していないワードプロセッサ専用機メーカーが複数存在する。 また,E社ないしH社のワードプロセッサ市場における平成8年度及び平成9年度当時の市場占有率の合計は,約40%ないし45%と推定される。 (イ) 包括クロスライセンス契約における本件各発明の寄与度a 被告とE社間の●(省略)●の包括クロスライセンス契約(以下「E社包括クロスライセンス契約」という。),被告とF社間の●(省略)●の包括クロスライセンス契約(以下「F社包括クロスライセンス契約1」という。)及び●(省略)●の包括クロスライセンス契約(以下「F社包括クロスライセンス契約2」という。),被告とG社間の●(省略)●の包括クロスライセンス契約(以下「G社包括クロスライセンス契約」という。),被告とH社間の●(省略)●の包括クロスライセンス契約(以下「H社包括クロスライセンス契約」という。)のうち,E社,F社及びG社との契約は●(省略)●であり,H社との契約は,●(省略)●。 そして,いずれの包括クロスライセンス契約も,その対象製品は広範であり,ワードプロセッサが主要な対象製品とされているものではなく,また,本件各発明が,ライセンス交渉において相手方に提示されたり,協議の対象となった事実もない。 - 42 -しかも,これらの契約の対象特許は,それぞれ数千件から数万件にのぼるものである。 b さらに,以下に述べるとおり,E社ないしH社は,平成8年度ないし平成10年度当時,本件各発明を実施していない。 (a) 本件発明1の代替技術の存在及びその実施前記1(2)ア(ア)のとおり,本件発明1は,いわゆる「短期学習」の機能(ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能)を実現する一つ 件発明1の代替技術の存在及びその実施前記1(2)ア(ア)のとおり,本件発明1は,いわゆる「短期学習」の機能(ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能)を実現する一つの実施態様に関する発明であり,JW-10の開発当時に「暫定辞書」と呼ばれた,短期学習専用の特別の辞書領域(本件発明1の実施例では「記憶装置5」がこれに相当する。)を用いることを技術的特徴とするが,本件発明1以外にも「短期学習」の機能を実現する技術が存在する。 すなわち,本件発明の先願発明であるK1発明では,「短期学習」の機能を実現する手段として,「辞書テーブル」(漢字及び熟語をその読み及び使用順序情報と対応させて収容したテーブル)そのものを更新する方式を採用しており,本件発明1のように短期学習専用の特別の辞書領域を用いる方式ではない。 本件発明1における「短期学習」の実現方式は,ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,他には何もしない方式であるのに対し,K1発明における「短期学習」の実現方式は,ユーザーが直近(前回)に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,その直前(前々回)に選択した同音異義語を優先順位の第2位で表示するということを繰り返し,同じ読みの語について,無限個(ないし同音異義語と同数)の優先権を付与しておき,より直近で選択された同音異義語が,より高順位で表示されるようにする方式である。 - 43 -そして,本件発明1の技術的範囲については,K1発明の方式を実施する機器が除かれるように解釈しなければ,本件特許1はダブルパテントの無効理由を包含することとなる。 しかるところ,平成8年度及び平成9年度当時販売されていた代表的な日本語ワードプロセッサ専用機であるシャープ株式会社 に解釈しなければ,本件特許1はダブルパテントの無効理由を包含することとなる。 しかるところ,平成8年度及び平成9年度当時販売されていた代表的な日本語ワードプロセッサ専用機であるシャープ株式会社(以下「シャープ」という。)製「書院」シリーズの1機種(WD-C10)及びE社製「●(省略)●」シリーズの1機種(●(省略)●)について,被告において中古市場において入手して試験を行ったところ,いずれにおいてもK1発明の方式を採用していることが判明した(乙43,44)。 このような試験結果からすれば,平成8年度及び平成9年度当時の各社の日本語ワードプロセッサにおいては,K1発明の方式が広く採用されていたのであり,E社ないしH社においても,同方式を実施していた可能性が高く,本件発明1は実施していなかったものと考えられる。 (b) 本件発明2の非実施E社ないしH社が本件発明2を実施していたという事実はない。 そもそも,本件発明2は,被告のJW-10のみならず,その後の被告製ワードプロセッサのすべての機種においても実施されておらず,他社のワードプロセッサにおいても,実施された例は確認されていない。 この点に関し,原告は,ワードプロセッサ専用機である「●(省略)●」及び「書院WD-M500」に「だい3」という数詞文節を入力して検証したところ,いずれも「だい3」が正しく「第3」に変換されたこと(甲38)を根拠に,これらのワードプロセッサ専用機では本件発明2が実施されている旨を主張する。 - 44 -しかし,本件発明2は,「前記入力手段より入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む「変換制御手段」の存在をその構成要件としているところ, り入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む「変換制御手段」の存在をその構成要件としているところ,「だい3」という文節が「第3」と正しく変換されたからといって,変換制御手段が文節の種類を判別した否か,判別したとしてもどのように判別したのかは全く不明であり,上記構成要件を充足することが立証されるものではない。 また,そもそも本件発明2は,変換のアルゴリズムに関する発明であり,その実施については,実機の変換動作の表示を外見的に調査しただけでは,確認することができないものである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (c) 前記(a)及び(b)のとおり,E社ないしH社は,平成8年度ないし平成10年度当時,本件各発明を実施していない。 c 以上によれば,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約における本件各発明の寄与度は0である。 (ウ) 小括以上を総合すれば,被告がE社ないしH社との各包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益は,存在しないというべきである。 ウ被告が本件各発明の自社実施により受けるべき利益の額について(ア) 本件各発明の非実施被告が平成8年度ないし平成10年度当時の被告製品において本件各発明を実施していたとの事実についての立証はされていない。 しかも,被告において,平成8年度ないし平成10年度当時に販売していたワードプロセッサ専用機である「トスワード」及び「ルポ」シリ- 45 -ーズの2機種(JW-6020,JW-8020)を調査したところ,いわゆる「短期学習」の機能の実現方式としては,K1発明の方式を採用していることが確認されており,これらの機種にお リ- 45 -ーズの2機種(JW-6020,JW-8020)を調査したところ,いわゆる「短期学習」の機能の実現方式としては,K1発明の方式を採用していることが確認されており,これらの機種においては,本件発明1が実施されていないことは明らかである。 また,本件発明2が,被告のJW-10においても実施されておらず,その後の被告製ワードプロセッサのすべての機種においても実施されていないことは,前記イ(イ)b(b)のとおりである。 (イ) 超過利益の不存在上記(ア)のとおり,被告は,平成8年度ないし平成10年度当時の被告製品において本件各発明を実施していない。 また,仮に被告が平成8年度ないし平成10年度当時の被告製品において本件各発明を実施していたとしても,以下に述べるように,被告は,自社実施による超過利益を得ていない。 すなわち,特許権者が,特許発明を実施しつつ,他社に実施許諾もしている場合において,当該特許発明の実施について,実施許諾を得ていない他社に対する特許権による禁止権を行使したことによる超過利益が生じているとみるべきかどうかについては,①特許権者が当該特許について開放的ライセンスポリシーを採用しているか,あるいは,限定的ライセンスポリシーを採用しているか,②当該特許の実施許諾を得ていない競業会社が一定割合で存在する場合でも,当該競業会社が当該特許に代替する技術を使用して同種の製品を製造販売しているか,代替技術と当該特許発明との間に作用効果等の面で技術的・経済的に顕著な差異がないか,③包括ライセンス契約あるいは包括クロスライセンス契約等を締結している相手方が当該特許発明を実施しているか,あるいはこれを実施せず代替技術を実施しているか,④特許権者自身が当該特許発明を実施しているのみならず,同時に又は別の時期 クロスライセンス契約等を締結している相手方が当該特許発明を実施しているか,あるいはこれを実施せず代替技術を実施しているか,④特許権者自身が当該特許発明を実施しているのみならず,同時に又は別の時期に,他の代替技術も実- 46 -施しているかなどの事情を総合的に考慮して,特許権者が当該特許権の禁止権による超過利益を得ているかどうかを判断すべきである。 被告においては,平成8年度ないし平成10年度当時に締結していたA社ないしD社との各ライセンス契約及びE社ないしH社との各包括クロスライセンス契約により,日本語ワードプロセッサ市場における有力な競合他社のうちの相当多数に対し,本件各発明についての実施許諾をしていたものであり,このことは,被告が本件各発明に関して開放的ライセンスポリシーを採用していたことを示すものである。 また,本件発明1については,K1発明という有力な代替技術が存在し,競合他社の製品の少なからぬ部分がこの代替技術を実施していたものと認められる。 さらに,平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場においては,被告のほかに,E社,F社,H社,●(省略)●という有力な競業会社が6社存在し,特許による独占の利益が全くない状態でも,少なくとも約14.3%(100÷7)の市場占有率は当然に見込まれていたところ,当時のワードプロセッサ専用機市場における被告の市場占有率が約15%であったことからすると,被告には,当時のワードプロセッサ専用機市場において,特許権の独占の効力による超過売上げがほとんど存在しなかったものといえる。 したがって,被告は平成8年度ないし平成10年度当時本件各発明の自社実施による超過利益を得ていないから,被告には原告主張の本件各発明の自社実施により受けるべき利益は存在しない。 エま える。 したがって,被告は平成8年度ないし平成10年度当時本件各発明の自社実施による超過利益を得ていないから,被告には原告主張の本件各発明の自社実施により受けるべき利益は存在しない。 エまとめ以上によれば,被告が,平成8年度ないし平成10年度の期間に本件各発明により得た利益の額は,A社ないしD社との各ライセンス契約において得た実施料収入合計●(省略)●円に,本件発明1の貢献割合150分の- 47 -1を乗じた金額である●(省略)●円を上回ることはない。 3 争点3(被告の貢献度)について(1) 被告の主張ア被告における技術的蓄積本件出願1及び2の出願前の昭和48年から昭和49年ころの時点において,我が国のカナ漢字変換技術の研究は既に実用段階に近いところまできており,本件各発明を含む被告における日本語ワードプロセッサの開発も,こうした先人の業績の上に成り立っている。 被告においては,昭和48年に原告が被告に入社する以前の,遅くとも昭和43年ころには,D1らにおいて,ツーストローク方式,分解入力方式などの様々な漢字入力方式についての研究を開始している。 このように,被告は,漢字を含む日本語情報をコンピュータシステムにおいて処理する研究を,日本語ワードプロセッサが開発される以前から継続的に行っていたのであり,そのような日本語処理システムに関する技術的蓄積は,被告における日本語ワードプロセッサの開発における不可欠の前提であった。 イ被告による研究開発及び商品化への寄与本件各発明の完成において,B1の貢献が特に大きいことは,前記1(2)イ(ウ)のとおりであるが,B1がそのような貢献をすることができたのは,研究グループのリーダーであったD1の「まず人から育てなければならない」との発想から,被告の判断 特に大きいことは,前記1(2)イ(ウ)のとおりであるが,B1がそのような貢献をすることができたのは,研究グループのリーダーであったD1の「まず人から育てなければならない」との発想から,被告の判断においてB1を京都大学に国内留学させたという事実が重要である。その間,B1には,被告から給与が支払われており,被告の費用で国内留学が行われていたものである。 また,日本語ワードプロセッサの実用化が全く不確定な時期に,その研究開発を「アンダー・ザ・テーブル研究」として遂行させたのも,被- 48 -告の判断によるものである。被告における「アンダー・ザ・テーブル研究」は,被告の総合研究所のリソース(人,金,物)の最大20%までを使うことができるものであり(乙9・13頁),しかも,本件では,大型計算機の使用の便宜まで図っているのであるから,被告の貢献は大きいものといえる。 さらに,被告が日本語ワードプロセッサを商品化する段階では,青梅工場の開発部門による迅速な協力体制の構築が行なわれ,プロジェクト・チームによる開発に多くの費用や人員が投入された。 ウ被告による販売努力と販売方法の創意工夫(ア) 被告のJW-10の発売以降,日本語ワードプロセッサが我が国で普及した背景には,被告による多大な販売努力と販売方法の創意工夫があった。 被告においては,「何よりも日本語ワープロは,それまで世の中にないシロモノであったこと。ばかりでなく,そもそも日本語ワープロには,それを受け入れてもらうべき「場」さえ存在していない,という事実」(甲26・106頁)を前にして,「ワープロ戦略をめぐる議論に明け暮れ」(同108頁),「ワープロ女性軍団」と称する女性のみからなる販売(兼インストラクター)部隊の結成(同108頁ないし115頁),日本初のワープロ教 を前にして,「ワープロ戦略をめぐる議論に明け暮れ」(同108頁),「ワープロ女性軍団」と称する女性のみからなる販売(兼インストラクター)部隊の結成(同108頁ないし115頁),日本初のワープロ教室の開講(同115頁ないし117頁),各地にあるタイプ学校とのタイアップ(乙9・53頁)といったアイデアを実行に移していった。 (イ) また,日本語ワードプロセッサが普及した要因には,JW-10の発売以降,機器の小型化,高機能化,低価格化が進んだという事情もある。 特に,被告が昭和60年に発売したパーソナルワードプロセッサ「Rupo」は,JW-10以降に行われた研究開発によって小型化,高機- 49 -能化,低価格化を実現したものであり,我が国のワードプロセッサ市場の拡大に大きな寄与を果たした。 エ以上の諸事情を総合すれば,本件各発明に関する被告の貢献度は99%を下回らない。 (2) 原告の主張被告の主張は争う。本件各発明に関する被告の貢献度は,多くても90%を上回るものではない。 4 争点4(原告が支払を受けるべき相当の対価の額)(1) 原告の主張ア前記2(1)のとおり平成8年度ないし平成10年度の期間における本件各発明により被告が受けるべき利益の額の合計は34億6250万円であること,前記3(2)のとおり本件各発明に関する被告の貢献度は90%を上回るものではないこと,前記1(1)のとおり本件各発明が原告の単独発明であることからすると,原告が被告から支払を受けるべき本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は,3億4625万円(34億6250万円×(100%-90%)×100%)と認められる。 イしたがって,原告は,特許法旧35条3項に基づき,被告に対し,本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る ,3億4625万円(34億6250万円×(100%-90%)×100%)と認められる。 イしたがって,原告は,特許法旧35条3項に基づき,被告に対し,本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,上記3億4625万円から被告から支払のあった平成8年度分ないし平成10年度分の実績補償及びライセンス補償を控除した残額の一部である3億2676万5500円及び内金1億3068万2750円に対する平成9年10月24日(平成8年度分の実績補償及びライセンス補償の支払期日)から,内金1億3068万2750円に対する平成10年10月23日(平成9年度分の実績補償及びライセンス補償の支払期日)から,内金6540万円に対する平成11年10月25日(平成10年度分の実績補償及び- 50 -ライセンス補償の支払期日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告の主張ア前記1(2)のとおり,本件各発明は,いずれも原告ら4名の共同発明であり,共同発明者間における原告の貢献割合は,25%を上回らない。 イそして,前記2(2)のとおり被告が平成8年度ないし平成10年度の期間に本件各発明により得た利益の額は●(省略)●円を上回らないこと,前記3(1)のとおり本件各発明に関する被告の貢献度は99%を下回らないことからすると,原告が被告から支払を受けるべき本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は,●(省略)●円(●(省略)●円×(100%-99%)×25%)を上回ることはない。 しかるに,被告は原告に対し本件各発明についての平成8年度ないし平成10年度分の実績補償及びライセンス補償として合計26万2900円を既に支払っているから,被告が原告に対し支払うべき相当の対価は しかるに,被告は原告に対し本件各発明についての平成8年度ないし平成10年度分の実績補償及びライセンス補償として合計26万2900円を既に支払っているから,被告が原告に対し支払うべき相当の対価は存在しない。 5 争点5(消滅時効の成否)について(1) 被告の主張ア(ア) 被告規程等によれば,被告は,職務発明をした従業員からその発明に係る特許を受ける権利を承継し,これに基づく特許権等について,自社内において実施した場合及び第三者に実施権を許諾して実施料収入を得るなどした場合には,当該従業員に対し,それぞれ実績補償及びライセンス補償として所定の金銭を支払うこととされており,その支払時期については,自社実施の実績や実施料収入があった年度の翌年度の所定時期とされている。 具体的には,被告において,平成8年度に自社実施の実績及び実施料収入があったことによる上記実績補償及びライセンス補償については,- 51 -前記争いのない事実等(4)ウのとおり,平成9年10月の給与支払日である同月24日がその支払時期である。 そうすると,原告の被告に対する本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権のうち,平成8年度の自社実施の実績及びライセンスによる実施料収入に係る分については,上記支払期日の翌日である平成9年10月25日から消滅時効期間が起算され,時効中断の事由が認められない限り,本訴が提起された平成19年12月7日より前である同年10月24日の経過をもって10年の時効期間が満了することとなる。 (イ) この点,原告は,後記のとおり,被告に対し,上記10年の時効期間満了前の平成19年9月14日到達の通知書(甲8の1。以下「本件通知書」という。)をもって,本件発明1についての上記相当の対価の支払を求める旨の催告をし,その おり,被告に対し,上記10年の時効期間満了前の平成19年9月14日到達の通知書(甲8の1。以下「本件通知書」という。)をもって,本件発明1についての上記相当の対価の支払を求める旨の催告をし,その後6か月以内に本訴を提起しているから,本件発明1に係る平成8年度分の相当対価請求権については,時効中断の事由が認められるのに対し,本件発明2に係る平成8年度分の相当対価請求権については,本件通知書に対象として記載されておらず,時効中断の事由は認められないから,平成19年10月24日の経過をもって,消滅時効が完成している。 (ウ) したがって,被告は,本訴において,原告の被告に対する本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権のうち,平成8年度における自社実施及びライセンスによる実施料収入に係る分については,上記消滅時効を援用する。 イこれに対し,原告は,後記のとおり,原告と被告の間においては,本訴提起前の和解交渉において,その対象となる相当対価請求権が本件発明1に係るものに限定されないことが当然の前提として了解されていたなどとし,そのような経過に鑑みれば,被告による消滅時効の援用は,信義則- 52 -に反し許されない旨を主張する。 しかしながら,本件通知書には,本件発明1以外の発明が全く記載されておらず,本件通知書によって職務発明に係る相当対価の請求がされたのは,本件発明1についてのみであることは明らかである。 また,原告と被告との間の上記和解交渉においては,平成19年10月24日が経過するまでの間に,本件発明1以外の原告の職務発明についての話合いは全く行われておらず,その後も,原告から被告に対し,本件発明2を特定した上での相当対価の請求が明示的にされたことはない。 したがって,原告と被告の間において,和解交渉の 職務発明についての話合いは全く行われておらず,その後も,原告から被告に対し,本件発明2を特定した上での相当対価の請求が明示的にされたことはない。 したがって,原告と被告の間において,和解交渉の対象となる相当対価請求権が本件発明1に係るものに限定されないことが当然の前提として了解されていたという事実はなく,被告による消滅時効の援用が信義則に反するとはいえない。 (2) 原告の主張ア本訴提起前における原告と被告との交渉経過は,次のとおりである。 (ア) 原告が被告に対し,平成19年9月14日到達の本件通知書を送付したのに対し,被告からは,同月21日付けの内容証明郵便(甲9)をもって話合いに応じる旨の回答があり,その後,被告の代理人弁護士(以下「被告代理人」という。)から原告の代理人弁護士(以下「原告代理人」という。)に対し,強く和解を希望する旨の電話があった。 (イ) そこで,原告代理人は,被告代理人に対し,交渉に当たり,①ライセンス契約書等,報償金の算定に必要な資料を被告が提出すること,②原告の相当対価請求権に関し,本件通知書の到達時に既に消滅時効が完成していた分を除き,被告は消滅時効の主張をしないことを条件として明示した。 (ウ) これに対し,被告代理人は,上記①については,「古いことであるから直ぐに資料も整わないので時間がかかる」旨,上記②については,- 53 -消滅時効の主張をしない旨の書面を出すことはできない旨を回答した。 (エ) そこで,原告代理人は,最高裁判所昭和43年2月9日第二小法廷判決(裁判外で債務履行の催告を受けた者が請求権の存否について調査するための猶予を求めた場合には,民法153条所定の6箇月の期間は,その者の何らかの回答がされるまで進行しない旨を判示するもの)に従って処理することを考え,被 告を受けた者が請求権の存否について調査するための猶予を求めた場合には,民法153条所定の6箇月の期間は,その者の何らかの回答がされるまで進行しない旨を判示するもの)に従って処理することを考え,被告代理人に電話して,この判例を明示し,この趣旨に則って時効の問題を解決したいとの提案をした。 (オ) これに応じて,被告代理人が原告代理人に交付したのが,2007年9月28日付けの被告代理人名義の文書(甲41)である。 イこのような経過に加え,本件通知書の記載においては,本件発明1を特定するに当たって「下記登録発明を含む発明」と明記されていること及び被告代理人名義の上記ア(オ)の文書(甲41)でも,本件特許権を明示するに当たって「特許第1280689号等」とされていることから明らかなとおり,原告と被告の間においては,和解交渉の対象となる相当対価請求権が本件発明1に係るものに限定されないことが当然の前提として了解されていた。 以上のような経過に鑑みれば,本訴において,被告が,本件発明2を特定した上での明示的対価請求はされていないとして,消滅時効の援用をすることは,信義則に反し許されないものというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件各発明の発明者)について原告は,本件各発明は,原告の単独発明であって,D1,B1及びC1(D1ら3名)は発明者ではなく,本件各特許の特許公報に原告ら4名が発明者と記載されたのは,本件各特許の出願当時の被告の総合研究所,あるいはD1をリーダーとする研究グループにおける上司等を共同発明者として特許出願の願書に記載する慣行に従った結果にすぎない旨主張するのに対し,被告は,本- 54 -件各特許の特許公報に記載のとおり,本件各発明が原告ら4名の共同発明である旨主張する。 ところで,特許法 の願書に記載する慣行に従った結果にすぎない旨主張するのに対し,被告は,本- 54 -件各特許の特許公報に記載のとおり,本件各発明が原告ら4名の共同発明である旨主張する。 ところで,特許法2条1項は,「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定し,同法70条1項は,「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定している。これらの規定によれば,「発明者」とは,当該発明の創作行為に現実に加担した者をいい,特許発明の「発明者」といえるためには,特許請求の範囲の記載によって具体化された当該特許発明の技術的思想(技術的課題及びその解決手段)を着想し,又は,その着想を具体化することに創作的に関与したことを必要とするものと解するのが相当である。したがって,発明について,一般的な指導又は助言を与えたにすぎない者,発明者の指示に従って補助又は協力をしたにすぎない者などは,創作行為に現実に加担したものということはできないので,発明者に当たらないというべきである。 そこで,以下において,まず,本件各発明の技術的思想について認定し,その上で,当該技術的思想の着想及びその具体化への原告ら4名の関わり方等の関係事実を認定し,これに基づいて,本件各発明が原告の単独発明であるか,あるいは原告ら4名の共同発明であるかについて検討することとする。 (1) 本件各発明の技術的思想ア本件発明1について(ア) 明細書の記載事項本件発明1の特許請求の範囲は,前記争いのない事実等(2)ア(ア)に記載のとおりである。 本件明細書1(甲1)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある。 a 「カナ漢字変換システムにおいて同音異義語がある場合,従来は,- 事実等(2)ア(ア)に記載のとおりである。 本件明細書1(甲1)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある。 a 「カナ漢字変換システムにおいて同音異義語がある場合,従来は,- 55 -オペレータがその都度繰り返し,特定の単語を指定する事により選択してきた。」(2欄8行~10行)b 「しかしこの方法によるとオペレータの負担が極めて大きく,特に同一単語が何回も出現する場合には一度特定の単語を指定すれば以後は自動的にその単語が選択できるような装置が望まれていた。」(2欄11行~14行)c 「本発明はこのような従来からの要望を満足させるためになされたもので,同音異義語についてはオペレータが一度優先権をつけて特定単語を指定することにより,以後同一の同音異義語について選択する必要がある場合,オペレータの介在なしに,自動的にその単語か選択されるようにした同音語選択装置を提供することを目的とする。」(2欄15行~21行)d 「第1図において1は制御装置で,この制御装置1にはバス2を介してデイスプレイ装置3,入力装置4,記憶装置5が接続されている。 そして入力装置4によつてたとえばカナで入力された文字情報が制御装置1によりカナ漢字変換されてデイスプレイ装置3に表示される。」(2欄25行~30行),「例えば1頁分の日本語文をカナで入力した後カナ漢字変換において一意に変換できないときすなわち,同音異義語があつたとするとデイスプレイ装置3のデイスプレイ表示面には第2図のような形態で変換結果が表示される。すなわち例えば「仕様」と「子葉」の2つの単語が,どちらかが選択されるべく,括弧内に表示される。したがつて,各同音異義語について順次選択する必要があり,制御装置1(判決注・原文は「制御位置1」)は順次同音異義語の選択を要求(例え の2つの単語が,どちらかが選択されるべく,括弧内に表示される。したがつて,各同音異義語について順次選択する必要があり,制御装置1(判決注・原文は「制御位置1」)は順次同音異義語の選択を要求(例えば同音異義語の位置へカーソルを移動させる) このような場合本発明によれば入力装置4内に設けられているライトペン,ジヨイステイツク等を用いて例えば最初の同音異義- 56 -語中の「仕様」という単語に対して優先権付与命令を入力して単語「仕様」を選択する(これは従来と同様方法でよい)。そしてこれと同時に単語「仕様」を記憶装置5に格納する。記憶装置5は複数の単語を記憶することができ,優先権が付与された単語が記憶される。」(2欄33行~3欄15行),「このようにしておくことにより,それ以後の同音異義語は,制御装置1が,2つの単語「仕様」,「子葉」のうちのどちらを選ぶかを要求する(カーソルが移動する)たびに優先権が付与された単語が記憶装置5内にあるかどうかをチエツクし,優先権が付与されたものを選択し表示する。そして,オペレータが確認しOKであれば次の同音異義語の処理へ移る。」(3欄16行~23行)e 「以上のように本発明によれば,オペレータが一度入力装置4によつて優先権を付与しておくことにより,以後その単語を選択する必要がある場合,制御装置1と記憶装置5の間で自動的に選択動作がなされ,その間オペレータの介在を必要としない。したがつて,オペレータは制御装置1による選択結果の確認のみを行なえばよいのでオペレータの負担を大幅に軽減できる。」(4欄7行~14行)(イ) 本件特許1の出願経過被告は,本件出願1の出願後,特許庁から,昭和58年2月2日付けで拒絶理由通知(乙47)を受けたので,同年4月25日付けで意見書(乙48)を提出した。 行)(イ) 本件特許1の出願経過被告は,本件出願1の出願後,特許庁から,昭和58年2月2日付けで拒絶理由通知(乙47)を受けたので,同年4月25日付けで意見書(乙48)を提出した。 その後,昭和59年3月19日に,本件出願1の出願公告がされた。 その出願公告に係る特許請求の範囲1項(甲1)は,本件発明1の特許請求の範囲(前記争いのない事実等(2)ア(ア))と同一である。 上記拒絶理由通知及び意見書には,次のような記載がある。 a 昭和58年2月2日付け拒絶理由通知(乙47)に示された本件出- 57 -願1の拒絶理由は,「引例」として特開昭51-51237号公報(乙49)を挙げて,「本発明の基本的な考え方は引例に示唆されている。 公知のかな漢字変換入力装置(電子的なもので,例えば特開昭52-8726号公報)に電子的な手段を用いて採用することは容易である。」として,本件出願1の特許請求の範囲に記載された発明は,その出願前に頒布された刊行物(上記「引例」)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 特開昭51-51237号公報(乙49)には,①「発明の名称」として「文字入力装置」,②「特許請求の範囲」として「漢字を複数個の漢字を含むグループに分割し,その各グループの選択を1回目の打鍵で行ない,さらに各グループ内での入力すべき漢字1個の指定を2回目の打鍵で行なう2打鍵式文字入力装置において,前記各グループ毎に最も近い過去に入力された漢字n個を予側文字としてグループ内の他の文字と区別する区別部と,この区別部によつて得られた出力を入力装置のオペレータに指示する指示部とを備え,漢字の入力を容易ならしめるようにし い過去に入力された漢字n個を予側文字としてグループ内の他の文字と区別する区別部と,この区別部によつて得られた出力を入力装置のオペレータに指示する指示部とを備え,漢字の入力を容易ならしめるようにしたことを特徴とする文字入力装置」,③「発明の詳細な説明」中に,「そこで本発明においては文字入力装置に予測機能を持たせることによつて文章の内容に応じて,漢字に選択される可能性に関する重みを持たせオペレータによる漢字選択に要する時間と労力を軽減するという手段を採用している。さて,予測法としては,実際の文章では,章,節など数百字程度を単位として,内容が進展してゆくことを考えて,最も最近使用された漢字数個を各漢字グループ内での予測文字とする。」(2頁左下欄16行~右下欄5行),「以上の説明から明らかなように,本発明によれば,複雑な手- 58 -段を用いることなく簡単な構成によつて所期の目的を達成することができる。また入力すべき文章の内容に応じて入力される漢字を予め予想することによつて文字の選択および指定が容易となり素人でも訓練を必要とせず入力速度の向上が図れるという点においても極めて有効である。」(3頁右下欄16行~4頁左上欄3行)などの記載がある。 b 被告提出の昭和58年4月25日付け意見書(乙48)には,「(2)上記引例1(判決注・引例1は「特開昭51-51237号公報」)は,同音異義字の中で最も最近使用された漢字5個を予測文字とし,漢字の読みが入力された場合,その読みに対応する同音異義字群とは別に上記予測文字を表示させるか,あるいは表示された同音異義字群の中で予測文字のみランプ表示させるように構成されたものです。すなわちこの方式は,オペレータによる同音異義字の選択操作の負担を軽減する点では一応本願発明と共通するものと思われます。し た同音異義字群の中で予測文字のみランプ表示させるように構成されたものです。すなわちこの方式は,オペレータによる同音異義字の選択操作の負担を軽減する点では一応本願発明と共通するものと思われます。しかしながら,引例1においては,依然として常に予測文字の中から所望とするものをオペレータが選択指示する必要があります。」,「(3)これに対し本願発明は,オペレータによる選択指示さえ省略できるようにしたものです。例えば,特許出願明細書においては用語「装置」がしばしば用いられています。その読み「ソウチ」に対しては,「草地」,「送致」等の同音語があります。したがって,従来のカナ漢字変換システムによりこのような文章を作成しようとすると,何回も同音語の中から「装置」をオペレータが選択指定してやる必要がありました。上記引例1にあっても,たとえ予測文字5個の中に「装置」を含むと仮定しても,その都度オペレータが選択指定することにかわりはありません。これに対し本願発明によれば,最初に「ソウチ」に対して同音語が表示された際,オペレータが「装置」に対して優先権を- 59 -付与します。これにより本願発明による装置はこの「装置」を記憶し,以後はオペレータが選択指示することなく自動的に選択が行なわれます。したがって,優先権を付与した後においては,オペレータは同音語の選択指示が不用となり,確認だけすればよいので,大幅にオペレータの負担が軽減されます。」,「(4)したがって,本願発明は上記引例1の思想とも全く異なるものであり,たとえ上記引例1及び2(判決注・引例2は「特開昭52-8726号公報」)を組み合わせたとしても本願発明の基本思想さえ示唆されるものとは思われません。よって,…公告決定賜りますよう強く希望する次第です。」などの記載がある。 (ウ) 検討 昭52-8726号公報」)を組み合わせたとしても本願発明の基本思想さえ示唆されるものとは思われません。よって,…公告決定賜りますよう強く希望する次第です。」などの記載がある。 (ウ) 検討本件発明1の特許請求の範囲(前記争いのない事実等(2)ア(ア))は,「日本語文をその読みに従つてカナで入力し,対応する漢字混り文に変換するカナ漢字変換システムにおいて,カナ漢字変換結果及び同音異義語を表示するデイスプレイ装置と,同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段と,この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段と,同音異義語が生じた場合には前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうか調べる手段とを有し,前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在する場合には,その1単語を自動的に選択することを特徴とする同音語選択装置。」というものである。 そして,上記特許請求の範囲の記載と前記(ア)認定の本件明細書1の記載事項及び図面(甲1の「第1図」,「第2図」)を総合すれば,本件発明1の技術的思想は,従来のカナ漢字変換システムでは,同音異義語がある場合に,オペレータがその都度繰り返し,特定の単語を指定して選択する操作を必要とされていたため,オペレータの負担が極めて大- 60 -きいという技術的課題があり,上記技術的課題を解決するため,「同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段」,「この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」,「同音異義語が生じた場合には前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」の構成を採用したことによって,同音異義語について,オペレータが上記「入力手段」によって一度優先権をつけて特定の単語を指定すれば,以後,上記「記憶手段」と上記「記憶 が存在するかどうかを調べる手段」の構成を採用したことによって,同音異義語について,オペレータが上記「入力手段」によって一度優先権をつけて特定の単語を指定すれば,以後,上記「記憶手段」と上記「記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」との間で「自動的に」当該特定の単語が選択され,オペレータは,選択結果の確認のみを行えばよく,その負担が大幅に軽減されるという作用効果を奏するようにしたことにあるものと解される。 このような本件発明1の技術的思想の解釈は,本件特許1の出願経過において,被告が特許庁からの拒絶理由通知(前記(イ)a)による拒絶理由を回避するために提出した意見書(前記(イ)b)中の「(2)・・・引例1においては,依然として常に予測文字の中から所望とするものをオペレータが選択指示する必要があります。」,「(3)これに対し本願発明は,オペレータによる選択指示さえ省略できるようにしたものです。・・・本願発明によれば,最初に「ソウチ」に対して同音語が表示された際,オペレータが「装置」に対して優先権を付与します。これにより本願発明による装置はこの「装置」を記憶し,以後はオペレータが選択指示することなく自動的に選択が行なわれます。したがって,優先権を付与した後においては,オペレータは同音語の選択指示が不用となり,確認だけすればよいので,大幅にオペレータの負担が軽減されます。」との記載内容にも合致するといえる。 (エ) 原告の主張についてこれに対し原告は,本件発明1は,カナ漢字変換における同音異義語- 61 -選択のための「短期学習」に関する発明であるとした上で,「短期学習」とは,ある特定のイベントの間,例えば,一文書作成の間やワードプロセッサの電源を入れている間などに,一時的に有効な「暫定辞書」とい 選択のための「短期学習」に関する発明であるとした上で,「短期学習」とは,ある特定のイベントの間,例えば,一文書作成の間やワードプロセッサの電源を入れている間などに,一時的に有効な「暫定辞書」というものを記憶装置上に作り,同音異義語の中で最近用いられたものをそこに記憶することをいい,本件発明1の技術的意義は,「エディタ」の機能として,「暫定辞書」を作り,同音異義語の中で最近用いられたものをそこに複数個記憶し,これによって,システム辞書等を書き換えることなく,同音異義語を自動的に選択する点にある旨主張する。 しかし,本件発明1の特許請求の範囲はもとより,本件明細書1(甲1)の「発明の詳細な説明」をみても,原告が主張する「短期学習」及び「暫定辞書」の文言の記載はない。 本件明細書1においては,特許請求の範囲記載の「この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」の構成について特に限定する記載はなく(実施例の記憶装置5についても「記憶装置5は複数の単語を記憶することができ,優先権が付与された単語が記憶される。」との記載(前記(ア)d)があるにすぎない。),「記憶手段」を原告が主張する「暫定辞書」のようなものに限定して解釈すべき根拠となる記載は存在しない。 また,本件明細書1においては,同音異義語について,オペレータが入力手段によって一度優先権をつけて特定の単語を指定すれば,以後はオペレータが選択指示することなく「自動的に」当該特定の単語の選択がされるので,大幅にオペレータの負担が軽減される作用効果を奏することが記載されているが(前記(ア)cないしe),そのような作用効果を実現するために原告が主張する「暫定辞書」の存在が必須であることを示唆する記載はない。 したがって,原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載及び明細書の 前記(ア)cないしe),そのような作用効果を実現するために原告が主張する「暫定辞書」の存在が必須であることを示唆する記載はない。 したがって,原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載及び明細書の- 62 -記載のいずれにも基づくものではないものとして,採用することができない。 イ本件発明2について(ア) 明細書の記載事項本件発明2の特許請求の範囲は,前記争いのない事実等(2)ア(イ)に記載のとおりである。 本件明細書2(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある。 a 「従来のカナ漢字変換装置は単一分析型であつたため,数詞変換,固有名詞の変換,カタカナ文節の変換,複合語の変換,接辞の変換,等に問題があり,変換が低い精度でしか果たせなかつた。」(2欄4行~7行)b 「本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので,それぞれの文節に対して精密な分析ができ,また1つの変換器で変換できない場合でも他の変換器でバツクアツプできるようにして高精度な変換ができるカナ漢字変換装置を提供することを目的とする。」(2欄8行~13行)c 「本発明のカナ漢字変換装置は,入力された文節をその種類によつて分類し,その分類に対応する各変換器を用意し,該各変換器によつてそれぞれの文節を分析変換し,1つの変換器で文節の部分あるいは全体が変換できなかつた時,他の変換器で再試行を行なう,複合分析型の変換装置である。」(2欄14行~20行)d 「第1図は本発明のカナ漢字変換装置の一実施例を示すブロツク構成図である。図において1は入力バツフア,2は変換制御部,3は普通文節変換器,4は固有名詞文節変換器,5は数詞文節変換器,6は出力バツフアである。」(3欄2行~6行),「ここで変換制御部2- 63 -は, 図において1は入力バツフア,2は変換制御部,3は普通文節変換器,4は固有名詞文節変換器,5は数詞文節変換器,6は出力バツフアである。」(3欄2行~6行),「ここで変換制御部2- 63 -は,入力文節の種類を判定してその文節を対応する文節変換器に送つて文節変換器からの結果を受け取り,また,未変換の部分があり更にその文節をまだ試行していない変換器があればその文節を当該変換器へ送り,この動作を全ての可能な変換器について行つて,変換の終了した文節及び尚未変換である文節を出力する機能を有している。」(3欄7行~14行)e 「まず第2図aは入力バツフア1に文節「にほんABCしや」がとりこまれたところを示し,第2図bは固有名詞文節変換器4により文節の一部分「にほん」が「日本」と変換されて出力バツフア6に送られたところを示す。そして第2図cは変換の要のない英字「ABC」がそのまま出力バツフア6に送られたところを示し,第2図dは接辞の「しや」が普通文節変換器3によつて「社」と変換されて出力バツフア6に送られたところを示す。」(3欄20行~29行),「第3図a~cは1つの変換器で変換できなかつた場合のバツクアツプの様子を示す図である。第3図aは入力バツフア1に文節「とうきようきかいの」がとり入れられたところを示し,第3図bはこの文節「とうきようきかいの」が固有名詞文節変換器4に送られたが「とうきよう」だけが「東京」と変換され,「きかいの」は変換されずに入力バツフア1に戻されてきたところを示す。そして第3図cは未変換部分である「きかいの」を普通文節変換器3で再試行し「機械の」と変換して出力バツフア6に送つたところを示す。」(3欄30行~4欄6行),「第4図a,bは数詞文節変換の動作を示す図で,入力バツフア1にとりこまれた文節「だい12かいの 換器3で再試行し「機械の」と変換して出力バツフア6に送つたところを示す。」(3欄30行~4欄6行),「第4図a,bは数詞文節変換の動作を示す図で,入力バツフア1にとりこまれた文節「だい12かいの」が数詞文節変換器5によつて「第12回の」と変換され,出力バツフア6に送られる様子が示されている。」(4欄7行~11行)f 「以上説明したように,本発明のカナ漢字変換装置は複数個の文節- 64 -変換器と1つの文節認定器(実施例では変換制御部2)とから成り,入力された文節の種類を文節認定器によつて判別して対応する文節変換器へ送りこんである文字系列を他の文字系列へ変換すると共に,1つの文節変換器が全体もしくは一部について変換できなかつた場合他の文節変換器によつて変換するようにしたものである。」(4欄12行~20行)g 「従つて本発明のカナ漢字変換装置によればそれぞれの文節に対して精度の高い分析ができ,さらに1つの変換器で変換できないものを他の変換器でバツクアツプすることによつて高精度の変換を可能とする。」(4欄21行~25行)(イ) 検討本件発明2の特許請求の範囲(前記争いのない事実等(2)ア(イ))は,「第1の文字系列からなる文節を入力するための入力手段と,文節の種類に応じて第1の文字系列の文節を第2の文字系列の文節に変換するために文節の種類毎に設けられた複数の文節変換手段と,前記入力手段より入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込みこの送り込んだ入力文節に対する前記文節変換手段の変換結果を受け取りこの受け取つた変換結果の第2の文字系列分を出力する変換制御手段と,この変換制御手段より出力された第2の文字系列分を格納する格納手 この送り込んだ入力文節に対する前記文節変換手段の変換結果を受け取りこの受け取つた変換結果の第2の文字系列分を出力する変換制御手段と,この変換制御手段より出力された第2の文字系列分を格納する格納手段とを備え,前記変換制御手段は受け取つた変換結果で第2の文字系列に変換されなかつた文字列の先頭部の単語から文節の種類を判別しこの判別された文節の種類に対応する文節変換手段に前記変換されなかつた文字列を送り込みこの送り込まれた文字列が前記文節変換手段により変換された第2の文字系列分を前記格納手段へ出力することを特徴とするカナ漢字変換装置。」というもの- 65 -である。 そして,上記特許請求の範囲の記載と前記(ア)認定の本件明細書2の記載事項及び図面(甲2の「第1図」ないし「第4図」)を総合すれば,本件発明2の技術的思想は,従来の単一分析型のカナ漢字変換装置においては,数詞文節,固有名詞文節,カタカナ文節等といった普通名詞文節とは異なる種類の文節についての変換の精度が低いという技術的課題を解決するための手段として,カナ漢字変換装置に,文節の種類に対応した複数の文節変換手段と,入力された文節の種類の文節認定機能を有する変換制御手段の構成を採用し,この変換制御手段において,入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別して対応する文節変換手段に上記入力文節を送り込むこととし,しかも,当該文節の全体又は一部が1つの文節変換手段によって変換できなかった場合には,その変換されなかった文字列について,更にその先頭部の単語から文節の種類を判別して対応する文節変換手段に送り込んで変換の再試行を行うものとしたことによって,それぞれの文節の種類に対応した精度の高い分析ができるとともに,更に1つの文節変換手段で変換できないものを他の文節変 別して対応する文節変換手段に送り込んで変換の再試行を行うものとしたことによって,それぞれの文節の種類に対応した精度の高い分析ができるとともに,更に1つの文節変換手段で変換できないものを他の文節変換手段でバックアップすることによって高精度の変換を可能とするという作用効果を奏するようにしたことにあるものと解される。 (2) 本件各発明の技術的思想の着想及び具体化に係る経過等前記争いのない事実等と証拠(甲4,11,13,14,17,26,27,29,47,49,52,乙4ないし6,9,10,13ないし17,22ないし24,33,34,39,42,77,78(以上枝番のあるものはいずれも枝番を含む。),証人B1,証人C1,証人D1,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 ア原告ら4名の関係- 66 -(ア) 原告は,昭和48年に京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程を修了して同年4月1日に被告に入社し,被告の総合研究所のD1をリーダーとする「パターン認識の研究」を研究テーマとする研究グループに研究員として配属となった。 原告は,京都大学大学院に在学当時,人工知能の研究を行っていたG1教授に師事し,また,自然言語処理を専門とするH1助教授の下で自然言語処理の研究を行った。 (イ) D1は,昭和37年に東京大学工学部応用物理学科を卒業して同年4月に被告に入社し,以来,被告の総合研究所(当時の名称は「中央研究所」)に所属して研究業務に従事していたものであり,昭和40年代後半から昭和50年代半ばころの時期には,被告の総合研究所において,複数の研究員を率いる研究グループのリーダーを務めていた。 (ウ) B1は,九州大学大学院修士課程(電子工学専攻)を修了した後,昭和46年4月に被告に入社し,D1の には,被告の総合研究所において,複数の研究員を率いる研究グループのリーダーを務めていた。 (ウ) B1は,九州大学大学院修士課程(電子工学専攻)を修了した後,昭和46年4月に被告に入社し,D1の研究グループに研究員として配属となった後,昭和47年に,被告から京都大学工学部電子工学科のJ1教授の研究室に派遣され,同研究室の研究生として,1年間にわたり,「構文解析システム」をテーマとする研究を行った。 B1は,昭和48年,京都大学から戻り,再びD1の研究グループで研究を行うようになった。 (エ) C1は,小田原城北工業高校電子科を卒業後,昭和42年に被告に入社し,被告の総合研究所における研究業務等に従事し,昭和51年4月ころ,D1の研究グループに配属となった。 イ昭和49年ころから昭和51年3月ころまでの経過(第1期)(ア) 昭和49年ころから,日本語ワードプロセッサの開発に向けたカナ漢字変換技術についての研究が,被告社内において「アンダー・ザ・テーブル研究」と呼ばれるものとして開始されるようになり,被告の総合- 67 -研究所のD1の研究グループにおいて,B1及び原告が担当者となって,カナ漢字変換システムの研究開発作業を進めていった。 具体的には,B1が,大型計算機「TOSBAC-5600」を使用して,入力されたカナ文を漢字カナ混じり文に変換していくカナ漢字変換プログラムを作成する作業等を担当し,原告が,ミニコンピュータ「TOSBAC-40」を使用して,上記カナ漢字変換プログラムによる変換結果についての校正処理を行うためのプログラムを作成する作業等を担当した。 (イ)aB1及び原告による前記(ア)の各プログラムの作成作業等の成果は,B1及び原告の2名を報告者とする「カナ漢字変換システムの作成-その1-」と題する ログラムを作成する作業等を担当した。 (イ)aB1及び原告による前記(ア)の各プログラムの作成作業等の成果は,B1及び原告の2名を報告者とする「カナ漢字変換システムの作成-その1-」と題する報告書(報告番号RR-2395)(乙42。以下「乙42の報告書」という。)にまとめられ,昭和50年12月12日,被告社内において報告された。 乙42の報告書には,次のような記載がある。 (a) 「要旨」として,「日本語情報の入力手段としてカナで鍵盤入力し計算機でそれを漢字カナ混り文に変換するカナ漢字変換システムを作成した。」,「本カナ漢字変換システムは入力されたカナ文を自動的に文節に分割し,文節を文法的に分析することによって正しい漢字カナ混り文に高精度に変換することができる。同音異義語等で一意的に変換できない場合は対話的に校正処理を行なう。この校正時に校正の情報を蓄積し辞書を自動的に更新するので,ユーザー向けのフレキシブルなシステムが実現できる。」,「現在TOSBAC-5600で分析部,TOSBAC-40で校正部が実現されており,TOSBAC-40単体でカナ漢字変換を実現するシステムを計画中である。」,「本カナ漢字変換システム作成にあたり,開発されたソフトウェア(TOSPICS-L),漢字処理用- 68 -ハードウェアについては別途報告する。」(以上,表紙)(b) 「本カナ漢字変換プログラムの特徴としては,従来の入力時に人が介入して行っていた分ち書きを自動的に行う自動分ち書きプログラムをもっていること,従来辞書とのマッチングのみに頼っていたカナから漢字への変換を文節単位の日本語としての文法分析を導入することによって変換の精度を上げていること,変換結果の校正時に自動的に辞書を更新することによってユーザ向けの辞書を得ることができ いたカナから漢字への変換を文節単位の日本語としての文法分析を導入することによって変換の精度を上げていること,変換結果の校正時に自動的に辞書を更新することによってユーザ向けの辞書を得ることができることなどが従来のカナ漢字変換にない優れている点としてあげられる。」(2頁)(c) 「2.1.2 ハードウェア構成カナ漢字変換部はTOSBAC-5600で行われる。校正はTOSBAC-40で行われる。」,「磁気テープカナ漢字変換の結果をT-5600から受けとるため及び,辞書更新情報をT-5600に引き渡すための媒体である。」(5頁)。 (d) 「2.1.3 ソフトウェア構成カナ漢字変換システムのソフトウェアは図2-3に示すパッケージより構成されている。T-5600のプログラム言語はFORTRANである。T-40はすべてアセンブラーで書かれ,漢字処理部分はTOSPICS-Lのサブルーチンを使用している。」(7頁)(e) 「本カナ漢字変換システムは現在ミニコン一台でカナ漢字変換システムの全機能が実現できるシステムにする計画で設計を行っている。ミニコンレベルでカナ漢字変換が行われた例はなくTOSPICS-Lの漢字情報処理機能と合せてミニコンによる日本語情報処理システムとして,情報案内,編集業務,CAIなど広い応用分野が期待できる。」(50頁)b 乙42の報告書記載の「FORTRAN」で記述された「TOSB- 69 -AC-5600」(「T-5600」)のカナ漢字変換プログラムは,B1が作成し,ソフトウェア「TOSPICS-L」は,原告が,被告において作成されていた「TOSPICS」を基に作成したものであった。 (ウ) 昭和51年3月,被告社内において,カナ漢字変換の精度を示すためのカナ漢字変換システムのデモンストレーショ 告が,被告において作成されていた「TOSPICS」を基に作成したものであった。 (ウ) 昭和51年3月,被告社内において,カナ漢字変換の精度を示すためのカナ漢字変換システムのデモンストレーションが行われ,その結果,カナ漢字変換の技術が実用化し得る技術であることが,被告社内で認識されるようになった。 上記デモンストレーションは,大型計算機(大型機)とミニコンピュータを併用するものであり,大型機(「TOSBAC-5600」)において,カナ漢字変換,辞書の登録等の処理を行い,ミニコンピュータ(TOSBAC-40)において,変換結果の校正その他の編集等を行うというものであった。 ウ昭和51年4月ころから昭和52年11月ころまでの経過(第2期)(ア) 昭和51年4月からは,「カナ漢字変換入力」の研究を含む「日本語処理システムの研究」が,被告における正式な研究テーマとなり,大型機とミニコンピュータに分かれていたシステムを,すべてミニコンピュータ上で実現するシステムとすることを目標として研究開発が進められた。 また,そのころからは,B1及び原告に加え,C1が,カナ漢字変換システムに係る研究開発作業に参加し,固有名詞の変換プログラムの作成等を担当するようになった。 (イ) 昭和51年11月ころまでに,ミニコンピュータ「TOSBAC-40C」上で,カナ入力から漢字カナ混じり文の出力までの処理がトータルでできる日本語入力システムの研究開発がされ,その成果は,B1,原告,C1及びD1の4名を報告者とする「カナ漢字変換システム(第- 70 -2報)」と題する報告書(報告番号RR-2517)(乙15。以下「乙15の報告書」という。)にまとめられ,同年11月12日,被告社内において報告された。乙15の報告書を起案したのは,原告であった。 2報)」と題する報告書(報告番号RR-2517)(乙15。以下「乙15の報告書」という。)にまとめられ,同年11月12日,被告社内において報告された。乙15の報告書を起案したのは,原告であった。 乙15の報告書には,次のような記載がある。 a 「要旨」として,「日本語情報の入力手段としてカナ鍵盤を用いて,カナ文字を入力し,計算機によってそれを漢字カナ混じり文に変換する,日本語入力システムを開発した。」,「TOSBAC-40Cと日本語情報処理用システムソフトウェアTOSPICS-Lとを用い,カナ入力から漢字カナ混じり文の出力までをリアルタイムで処理できるトータルシステムが実現できた。」(以上,表紙)b 「今回上記の成果をまとめ,ミニコンのみによってカナ文入力,変換,校正,出力が行えるカナ漢字変換システム KKCS(…)を作成した。KKCSの特徴は次の様なものである。 (Ⅰ) カナ入力方式として二つの方式が可能である。文節単位での入力方式と,漢字部分指定の入力方式である。 (Ⅱ) カナから漢字への変換は日本語の文法的知識を利用するので高精度の変換ができる。 (Ⅲ) CRT面上で対話的に変換結果の校正ができる。又,このときオペレータを援助するHELPが用意されている。 (Ⅳ) 文法的処理ではどちらを選択するか決定できない同音異字語は,使用頻度の高いものを優先する。オペレータが同音異字語の選択を行なうと,自動的にその情報が辞書にフィードバックされ,辞書更新が行なわれる。従って,システムを使いこむにつれ,ユーザー向けの辞書が自動的に構成される。 (Ⅴ) ユーザーが個人的,又は一時的に使用したい語は,暫定辞書(TemporaryDictionary)に登録される事により,特権的に処理- 71 -される。 (Ⅵ) 新語の登 される。 (Ⅴ) ユーザーが個人的,又は一時的に使用したい語は,暫定辞書(TemporaryDictionary)に登録される事により,特権的に処理- 71 -される。 (Ⅵ) 新語の登録,削除が自由に行なえる。」(1頁~2頁)c 「2.システムの動作の概要 …本システムの操作にあたってオペレータが直接関係する機器はカナ鍵盤とディスプレイである。カナ鍵盤は,カナ漢字変換すべきデータの入力,及び計算機との応答に使用される。ディスプレイは計算機からのメッセージの表示,鍵盤から入力した文字の表示,漢字カナ混り文への変換結果の表示などに使用される。」,「本システムはデータの入出力方式及びカナ漢字変換方式に,それぞれ2,3の異なる方式を持っている。…入力方式には漢字指定式と文節式の2方式がある。漢字指定式は漢字に変換したい部分をシフトキーで指定するもので,ディスプレイ上ではシフトキーを一度押すと左かっこが,もう一度押すと右かっこが発生され,漢字に変換したい部分の平カナがかっこで括られて表示される(図2-2)。 文節式は文節毎に区切って入力するもので,文節の終了毎にスペースを入力する(図2-3)。」,「これらの方式の規定が終了すると,データの入力が始められる。カナ鍵盤から入力されたデータはディスプレイに表示されながらディスクに記憶される。入力終了キーを押すことにより,ディスクから読み出されて分析が始まる。」,「文節式で入力されたデータはそのままの形で,又,漢字指定式で入力されたデータはプログラムによって文節に区切られた後,文節分析され,漢字へ変換が行なわれる。」,「漢字カナ混り文に変換された結果には多少の誤りが含まれている場合がある。文節分析では処理し得なかった同音異字語がある場合,辞書に登録されていない単語があって漢字に変換で 字へ変換が行なわれる。」,「漢字カナ混り文に変換された結果には多少の誤りが含まれている場合がある。文節分析では処理し得なかった同音異字語がある場合,辞書に登録されていない単語があって漢字に変換できない場合,あるいは誤って変換された場合などである。」,「この様な誤りを訂正するために,変換が終了するとシステムは校正モードとなる。このモードでは変換結果を一頁ずつディスプ- 72 -レイに表示し,種々の校正を施すことができる。校正は位置指示のためのカーソルと,校正の種類,データを入力するためのコマンドをカナ鍵盤から入力する事によって行なわれる。」,「最もよく使用されるのが同音異字語の選択コマンドである。同音異字語がある場合,かっこで括られて出力される。このコマンドを入力するとカーソルは左かっこ上に移動する。このカーソルはそのかっこ内にある同音異字語のどれかを選択する様オペレータに知らせるものである。オペレータは希望する語の位置を番号で入力する。…この操作により選択されなかった語は×印で消され,カーソルは次の同音異字語組のかっこ上に移動する。」,「以上により,全頁の校正が終了すると,校正中に貯えられた情報により辞書が自動的に更新される(図2-12)。この機能は本システムの大きな特長となっている。」(以上,3頁~14頁)d 「3.2.1 管理プログラム …ソフトウェア全体はオーヴァレイ構成となっている。…入力部,文節抽出部がまとめられて1モジュール,カナ漢字変換部,校正部がそれぞれ1モジュールをなし,全体で3モジュールがオーヴァレイされる。」(19頁)e 「3.2.5 校正カナ漢字変換部によって漢字カナ混り文に変換されたドキュメントは,一たん,ディスクに記憶される。校正部はこのドキュメントを1頁ずつ読み出し,ディスプレイに表示 」(19頁)e 「3.2.5 校正カナ漢字変換部によって漢字カナ混り文に変換されたドキュメントは,一たん,ディスクに記憶される。校正部はこのドキュメントを1頁ずつ読み出し,ディスプレイに表示し,カーソルを出力する。カーソルが出力されている間は,校正用コマンドの入力が受けつけられる。」,「3.2.6 辞書更新本システムで使用されている辞書には,各単語にその使用頻度が付されている。…校正時に,オペレータが同音異字語の一つを選択すると,その単語の使用頻度が上がる。使用頻度に大小が生じると,同音異字語は,その順に出力される様になる。」(以上,23頁~25頁)- 73 -f 「4.校正カナ漢字変換部によるカナから漢字への変換は文節単位で分析されて行なわれる。従って,一文中の意味を分析する事によってしか解決されない同音異字語は,決定できずにかっこで括られて出力される。…この様な場合に対処するためKKCSは校正能力を持ち,変換が終了すると,変換されたドキュメントは最初からディスプレイに1頁ずつ出力される。…以下各コマンドの説明を記す。 1) 同音異字語関係Sコマンド:Select同音異字語は,かっこで括られた状態で出力される。Sを入力すればその左かっこ上にカーソルが移動する。そこで正しい語の位置を左から1,2,3…の番号で指定する。…この操作によって選択された語以外は,ディスプレイ上では×印によって消去される。そして,カーソルは次のかっこに移動する。かっこが尽きるとカーソルはホームポジションに帰る。…PRIコマンド:PRIority本システムはカナ漢字変換時に使用する辞書以外に校正時に一時的に使う小さな辞書(暫定辞書)を持っている。この辞書は最初は空である。語の登録はオペレータがPRIにより行う。この辞書は ority本システムはカナ漢字変換時に使用する辞書以外に校正時に一時的に使う小さな辞書(暫定辞書)を持っている。この辞書は最初は空である。語の登録はオペレータがPRIにより行う。この辞書はSコマンドを使う時に使用する。即ち,同音異字語が発生した場合,同音異字語のうちのいずれか一つがこの辞書に登録されている場合,オペレータの選択操作を必要とせず,自動的にその語が選択され,カーソルは次のかっこに移動する。新たな語をこの辞書に登録するにはSコマンドで選択を行なった後にこのコマンドを入力すれば,選択された語が登録される。 RELコマンド:RELease暫定辞書に登録されている語を消去する。…」(以上,27頁- 74 -~30頁)g 「6.結果前回発表したRR,カナ漢字変換システム(その1)(RR-2395)ではアルゴリズムの有効性の検証を行ない,良好な結果の得られる事を確認した。その結果を踏まえて,一部,大型計算機とFORTRANで処理していた部分を全てミニコンT-40Cに移向し,ドキュメントの入力から校正された結果の出力までをリアルタイムで処理できるトータルシステムとして実現した。」(39頁)(ウ) 被告は,昭和52年3月,ミニコンピュータのみを用いたカナ漢字変換装置の試作機を完成させた。 (エ) 昭和52年4月18日,B1,原告,C1及びD1の4名を報告者とする「ミニコンによる即時処理型カナ漢字変換システム」と題する報告書(報告番号RR-2597)(乙16。以下「乙16の報告書」という。)が,被告社内において報告された。乙16の報告書を起案したのは,原告であった。 乙16の報告書には,次のような記載がある。 a 「要旨」として,「カナ漢字変換システムを即時処理型に改造し,入力終了と同時に結果を出力する。 た。乙16の報告書を起案したのは,原告であった。 乙16の報告書には,次のような記載がある。 a 「要旨」として,「カナ漢字変換システムを即時処理型に改造し,入力終了と同時に結果を出力する。計算機のカナ漢字変換速度は,人間のカナ文入力速度に比し十分速く,余裕を持って変換できた。従って,人間が入力を終了すると同時に変換も終了し,直ちに校正を実行できるワードプロセッサとしての機能を実現できた。」(表紙)b 「RR-2517で報告した方式は,カナ文の入力と,漢字への変換とは別々のフェイズで行なうものであった。これは大量のデータを一度,ディスクに格納し,その後,これをカナ漢字変換部に引き渡して一気に変換を行なう方式であった。ここに報告する方式では,入力と変換を同じフェイズで行ない。カナ文の入力が終了すると,直ちに漢字カナ混り文への変換が終了する事を特長としている。すなわち,- 75 -入力文章の長さにかかわらず,カナ文の入力終了後2~3秒でカナ漢字変換結果を得る事ができる。」(1頁)c 「3.制御部前回の報告「カナ漢字変換システム-第二報」と大幅に異なるのは制御部である。…入力部と変換部との接点はデータバッファだけである。変換部はこのバッファが空の時は,そこにデータが文節としてそろうまで監視しながら待っている。この間に入力部は割込みによりこのバッファにデータを整える。変換部は,こうして入力されたデータが文節として成立したと判断すると,これをバッファから取り出し,処理を加えて,結果を出力バッファに出力する。…変換された結果は出力用のバッファに入れられ,一杯になった時点で,ディスクに転送される。カナ鍵盤から入力された文字はCRTディスプレイでモニタできる。」(4頁~6頁)d 「8.今後の課題(a) 姓名,地名のカナ漢 のバッファに入れられ,一杯になった時点で,ディスクに転送される。カナ鍵盤から入力された文字はCRTディスプレイでモニタできる。」(4頁~6頁)d 「8.今後の課題(a) 姓名,地名のカナ漢字変換(固有名詞)現在のシステムでは特別に頻度の大きいもの(例えば,東京)を除いては固有名詞のカナ漢字変換は行なっていない。固有名詞も普通名詞と同様に扱って単語辞書に登録すれば,現状でも変換は可能である。しかし,これは得策ではない。固有名詞はその数の多さに比し,一般文中での出現頻度は小さいからである。普通名詞と固有名詞を同一の辞書に登録すれば,頻度の小さな固有名詞のために,大きな辞書をひく事になり,処理時間が増大する。従って固有名詞は別の辞書とする事になろう。」(21頁)e 「9.結論ここに報告したシステムは,RR-2517で報告したシステムを即時処理型に改造したものである。その結果データ入力終了後直ちに結果が出される様になった。又,他社システムとの比較も行なった。その結果,総合的システムとして,本システムに匹敵す- 76 -るものはない事を確認した。」(23頁)(オ)a 昭和52年7月6日,被告社内において,名称を「優先権付与機能つき選択装置」,提案者を原告,B1,C1及びD1の4名とする「発明考案報告書(発明考案譲渡証)」,「出願依頼書」及び「出願通知書」(乙13の1)並びに明細書の原案(乙13の2)が提出された。 なお,これらの書面は,被告社内において行われた発明を特許出願の対象とする場合に,当該発明の担当者によって作成され,提出されるものである(以下,これらの書面を総称して,「特許提案書」という場合がある。)。これらの書面を起案したのは,いずれも原告であった。 上記明細書の原案には,「特許請求の範囲」の1項とし 提出されるものである(以下,これらの書面を総称して,「特許提案書」という場合がある。)。これらの書面を起案したのは,いずれも原告であった。 上記明細書の原案には,「特許請求の範囲」の1項として,「オペレータが選択すべき,情報を表示するためのディスプレイ装置と,選択されるべき情報に,必要ならば,優先権を付与するためのあるいは/およびいずれを選択したかを示す選択情報を入力するための入力装置と,優先権を付与された情報を記憶する記憶装置とからなり,オペレータが選択した,選択情報を出力しあるいは/および一度,優先権を付与された情報は,人間の選択を受ける事なく,自動的に選択され,その選択情報を出力する事を特徴とする優先権付与機能つき選択装置」との記載がある。 その後,被告は,昭和52年11月24日,本件出願1をした。 b なお,本件出願1の出願前である昭和51年7月9日,被告は,K1発明(発明の名称「日本語文章入力装置」)の特許出願(特願昭51-81529号)をした。K1発明は,K1ほか3名を発明者とするものであり,その発明者の中に,原告ら4名は含まれていない。 その後,上記特許出願は,昭和53年1月23日に出願公開され,昭和58年8月29日に出願公告された。 - 77 -上記出願公告(乙25)の時点でのK1発明の特許請求の範囲は,「1 日本語文章をその読みに従つて入力するためのカナキー及び同音異種の漢字又は熟語の中から一つを選択指定するための選択キーを有する鍵盤と,漢字及び熟語をその読み及び使用順序情報と対応させて収容したテーブルと,前記カナキーより入力されたカナコードに対して前記テーブルを検索しその読みに対応する漢字又は熟語及びその使用順序情報を出力するテーブル検索手段と,この手段によつて検索された漢字又は熟 たテーブルと,前記カナキーより入力されたカナコードに対して前記テーブルを検索しその読みに対応する漢字又は熟語及びその使用順序情報を出力するテーブル検索手段と,この手段によつて検索された漢字又は熟語の中で使用順序情報が第1位であるものから順に表示する表示部と,前記テーブル検索手段により検索された漢字又は熟語が同音異種の複数の候補を持つ場合に,これらの候補を順次前記表示部で表示し,前記選択キーの入力に応じて漢字又は熟語を一意に決定するとともにこの一意に決定された漢字又は熟語の使用順序情報を前記テーブル中で第1位として書き換えるテーブル更新手段とを備え,入力カナコードに対応する同音異種の漢字又は熟語が存在する場合に最も近い時点で使用された漢字又は熟語から優先して表示することを特徴とする日本語文章入力装置。」というものであり,また,その明細書の「発明の詳細な説明」中には,「本発明の目的は誰でも容易に操作でき,しかも入力速度の高い漢字混りの日本語文章の入力装置を得ることにある。」(2欄36行~3欄1行),「外部記憶装置5 読みと,その読みに対応する漢字,熟語との変換テーブル(以下カナ漢字変換テーブルと称する)を収容する。 コアメモリ,ICメモリ,磁気デイスク,磁気ドラム等が用いられる。 上記カナ漢字変換テーブルには読みに対応する漢字,熟語とともに,同音異種の漢字,熟語についての使用順序情報(その時点までの日本語文章の入力において使用された順序に関する情報)が収められている。本実施例では最も近い時点で使用されたものから順に並べること- 78 -によつてテーブルに使用順序情報をもたせる。」(3欄44行~4欄11行),「上記のように本発明入力装置では同音異種の漢字と熟語を近い時点で入力された順に配列表示しているので,本人が装置を使用していく よつてテーブルに使用順序情報をもたせる。」(3欄44行~4欄11行),「上記のように本発明入力装置では同音異種の漢字と熟語を近い時点で入力された順に配列表示しているので,本人が装置を使用していくにしたがい,使われやすい漢字と熟語は上位に,使われにくい漢字と熟語は下位に表示されるようになつていく。そのため選択が容易になり,入力速度が上がる。」(7欄20行~26行)などの記載がある。 エ昭和52年11月ころから昭和54年9月ころまでの経過(第3期)(ア) 昭和52年11月になると,カナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサの開発は,被告の総合研究所と青梅工場とが中心となる全社的なプロジェクトとなり,カナ漢字変換や編集機能等のソフトウェアのほか,漢字ディスプレイや漢字プリンター等のハードウェアをも含めた研究開発が進められるようになった。 (イ) その後,B1,原告,C1及びD1の4名を報告者とする「日本語ワード・プロセッサの開発」と題する報告書(報告番号RR-2690)(乙17。以下「乙17の報告書」という。)がまとめられ,昭和53年4月5日,被告社内において報告された。乙17の報告書を起案したのは,原告であった。 乙17の報告書には,次のような記載がある。 a 「要旨」として,「英文ワード・プロセッサと同様,簡単に取り扱うことができ,しかも高度な文書作成力を持つ日本語ワード・プロセッサを開発する。」,「カナ・キーボードからタイプされたカナ文書はカナ漢字変換機能によって,漢字カナ混じり文書となる。更にエディターの種々の機能により容易に日本語文書を作成できる装置が実現できた。」,「この装置は現在…TOSBAC-40Cを用いて実現されている。」(以上,表紙)- 79 -b 「文節分析・カナ漢字変換部通常文節分析部と 容易に日本語文書を作成できる装置が実現できた。」,「この装置は現在…TOSBAC-40Cを用いて実現されている。」(以上,表紙)- 79 -b 「文節分析・カナ漢字変換部通常文節分析部と固有名詞文節分析部とからなり,ひん度処理,複合語処理,接続検定,文節分析等を行ないながら,カナを漢字に変換する。」(5頁),「(1) 固有名詞入力固有名詞入力は,漢字指定式入力とほぼ同様な方法で行なう。 即ち漢字モードキーを二度打つことによって固有名詞入力となる。」(6頁)c 「2.3.1 カナ漢字変換処理の流れキーボードから入力されたカナ系列は入力バッファに貯えられる。自動文節抽出ルーチンはこのバッファに文節がそろうと,これを抽出し,後の処理に送りだす。 抽出された文節は数詞文節,固有名詞文節,通常文節の別にそれぞれの処理部へ送られる。個々の処理部はそれぞれがサブ・ルーチンとなっており,数詞処理部,固有名詞処理部はその処理の失敗時に通常文節処理部からの自動的バックアップを受ける。…このようなバックアップにより,本ワード・プロセッサは実際の文に対する高い変換率を維持している。」(8頁)d 「2.3.2 自動文節抽出 …自動文節抽出部は入力された文章の字種情報と,若干の文法情報とを用いて,高速に文節を抽出する。 自動文節抽出は漢字を含んだ文節,平カナだけの文節,片カナを含んだ文節,数詞を含んだ文節,及び固有名詞文節に分類して次の処理へ送る。この文節抽出部は高速性を維持するため辞書はひかないので,誤った文節を抽出する場合がある。…この場合は,文節分析部でバックアップを受け…漢字に変換される。」(8頁)e 「2.3.3 カナ漢字変換入力部によって文節単位に分かち書きされたカナ文字列の単位毎に漢字に変換するのが変換プログラムである。 節分析部でバックアップを受け…漢字に変換される。」(8頁)e 「2.3.3 カナ漢字変換入力部によって文節単位に分かち書きされたカナ文字列の単位毎に漢字に変換するのが変換プログラムである。変換プログラムの中心となる分析プログラムは,文節を文法的に分析し,日本語の表現として妥当なものを変換結果とする。」(9- 80 -頁)f 「2.3.3.2 文節分析と複合語処理文節に対する分析は前節に示した文節の定義にしたがって,単語辞書と文法辞書とのマッチングをとりながら,マッチングをとった部分と前の部分の文法事項を調べその接続可能性を調べることによって行なわれる。…分析プログラムは文脈処理は行なえないので,同じ単語が何度も出現する場合には同一の文節に対しては同一の変換が何度も現われる欠点があるが,この場合でも,校正編集時に正しい単語を1回選択すればその語は暫定辞書に登録されるので,それ以後は,この選択の必要は生じず,文書全体の作成は非常に楽になる。」(9頁~10頁)g 「2.3.3.3 固有名詞の処理人名,地名,法人名などからなる固有名詞文節の構造は,通常文節の構造とは異なり,従って,接続検定の方法も異なる。…また,普通名詞と固有名詞間の同音異字語も存在する。従って通常文節と固有名詞文節とは入力時にオペレータが区別して入力することにした。ただしオペレータが区別するとき,負担なく入力できる様に,固有名詞かどうか,または,複合語のどこまでが固有名詞か分からない場合でも固有名詞として入力し,固有名詞処理で変換できなかった場合は自動的に通常文節として変換する事により,オペレータの負担を少なくした。」(10頁~12頁)h 「5 むすび …利用者毎の用語の自動管理と暫定辞書による同音異義語の処理は当初予想していたよりも非常に有効 通常文節として変換する事により,オペレータの負担を少なくした。」(10頁~12頁)h 「5 むすび …利用者毎の用語の自動管理と暫定辞書による同音異義語の処理は当初予想していたよりも非常に有効であった。実際に大量の文書を印刷してみると,数詞文節や固有名詞,特に複合名詞が予想以上に多く出現することがわかった。…今後の課題としては,カナ漢字変換を文章レベルの構文,意味処理を用いて,行なうことが必要であるが,その際,意味処理として,ある程度広範な分野をカバーでき,数万語に渡って有効に同音異義語を処理できるタフなアルゴリ- 81 -ズムを開発することなどが挙げられる。」(24頁)(ウ)a 昭和53年9月12日,被告社内において,名称を「カナ漢字変換装置」,提案者を原告,B1,C1及びD1の4名とする「発明考案報告書(発明考案譲渡証)」,「出願依頼書」及び「出願通知書」(乙14の1)並びに明細書の原案(乙14の2)が提出された。これらの書面を起案したのは,いずれも原告であった。 上記明細書の原案には,「特許請求の範囲」として,「複数個の文節変換器及び一個の文節認定器とからなり,入力された文節の種類を文節認定器により判別し,対応する文節変換器へ送り込み,ある文字系列を他の文字系列に変換する事と,一つの文節変換器が,部分的あるいは全体的に失敗した場合,他の文節変換器によって再変換する事を特徴とするカナ漢字変換装置。」との記載がある。 その後,被告は,昭和53年9月25日,本件出願2をした。 b なお,昭和54年9月7日,原告,B1及びC1の3名を報告者とする「局所的意味分析法」と題する報告書(報告番号RM19292)(甲52。以下「甲52の報告書」という。)に基づく報告が,被告社内において行われた。甲52の報告書を起案したのは 1の3名を報告者とする「局所的意味分析法」と題する報告書(報告番号RM19292)(甲52。以下「甲52の報告書」という。)に基づく報告が,被告社内において行われた。甲52の報告書を起案したのは,原告であった。 甲52の報告書には,「局所的意味分析(以後 LMA;…)とは日本語が持つ多数の字種が各々それら独得の意味を担っている事実に着目し,それらの字種の近辺で局所的な意味のまとまりをみい出そうとするものである。例えば,「だい34かいの…」という文字列は「第34回の」と解され「台34会の」とは解されない。これは「34」と言う数字の近辺で局所的意味のまとまりがあるからである。」(2頁),「5.結論 LMAの理論は日本語ワードプロセッサJW-10に組み込まれ,その裏付がなされている。即ちタイプさ- 82 -れた文字列は,このLMAにより局所的意味のまとまり毎に一連の文字列の中より切り出され漢字に変換されるのである。即ちLMAがここで行っている仕事は「(1) 分ちがきされていない文字列の連続体の中から局所的意味のまとまりを推測し,それを取り出す。(2) 辞書を引く事によりその推測を検定する。」である。この能力によりJW-10の仮名漢字変換の高い性能が保証されている。」(以上,8頁~9頁)などの記載がある。 (エ) 被告は,乙17の報告書に係る装置をベースとして,更なる改良を加えた装置を商品化し,我が国で初めてのカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサ「JW-10」として,昭和53年9月26日に発表し,昭和54年2月からその販売を開始した。 (3) 本件各発明の発明者以上を前提に,本件各発明の技術的思想の着想及びその具体化に創作的に関与した者が誰であるかについて順次検討する。 ア本件発明1について(ア) 本件 開始した。 (3) 本件各発明の発明者以上を前提に,本件各発明の技術的思想の着想及びその具体化に創作的に関与した者が誰であるかについて順次検討する。 ア本件発明1について(ア) 本件発明1が完成するに至った時期及び経過a 本件発明1の技術的思想は,前記(1)ア(ウ)のとおり,カナ漢字変換装置における同音異義語の選択において,オペレータの選択操作の負担が大きいという技術的課題を解決するため,「同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段」,「この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」,「同音異義語が生じた場合には前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」の構成を採用したことによって,同音異義語について,オペレータが上記「入力手段」によって一度優先権をつけて特定の単語を指定すれば,以後,上記「記憶手段」と上記「記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」との間で「自動- 83 -的に」当該特定の単語の選択が行われ,オペレータの介在を要せずに自動的な選択を実現した点にある。 そして,前記(2)で認定した経過をみると,昭和50年12月12日の報告に係る乙42の報告書(前記(2)イ(イ)a)には,上記の技術的思想についての記述や示唆はみられないのに対し,昭和51年11月12日の報告に係る乙15の報告書(前記(2)ウ(イ))においては,上記の技術的思想がおおむねもれなく記述されていることが認められる。 すなわち,乙15の報告書においては,同報告書の対象とされたカナ漢字変換システムにおける三つのモジュール(入力部・文節抽出部のモジュール,カナ漢字変換部のモジュール,校正部のモジュール)のうち,校正部に,同音異字語関係のコマンドの一つとして「PRI れたカナ漢字変換システムにおける三つのモジュール(入力部・文節抽出部のモジュール,カナ漢字変換部のモジュール,校正部のモジュール)のうち,校正部に,同音異字語関係のコマンドの一つとして「PRIコマンド」が存在することが示され,同コマンドについての説明として,上記システム中には,校正時に一時的に使う「暫定辞書」という記憶手段が存在すること,カナ漢字変換において同音異字語が発生し,そのうちの一つを「Sコマンド」によって選択した後に「PRIコマンド」を入力することによって,当該単語を「暫定辞書」に登録することができること,さらに,同音異字語が発生した場合,そのうちのいずれか一つが「暫定辞書」に登録されていれば,オペレータの選択操作なしに,その語が自動的に選択されることが記載されている。 これらの記載によれば,乙15の報告書に係るカナ漢字変換システムにおいては,本件発明1の「同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段」に相当する構成として「PRIコマンド」が,「この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」に相当する構成として「暫定辞書」がそれぞれ設けられるととも- 84 -に,「同音異義語が生じた場合には前記記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」の構成に相当するプログラム等も設けられ,これによって,同音異字語の中から「暫定辞書」に登録された語を自動的に選択するという機能を発揮するものであることが示されていることが認められる。 したがって,乙15の報告書には,本件発明1の上記技術的思想がおおむね示されているものということができる。 b さらに,その後の経過をみると,昭和52年3月に,乙15の報告書に示された成果に基づいてミニコンピュータのみを用いたカナ漢字変換装置の試作機が がおおむね示されているものということができる。 b さらに,その後の経過をみると,昭和52年3月に,乙15の報告書に示された成果に基づいてミニコンピュータのみを用いたカナ漢字変換装置の試作機が完成したこと(前記(2)ウ(ウ)),同年7月6日には,発明の名称を「優先権付与機能つき選択装置」とする発明について,原告の起案に係る特許提案書が提出され,その中の明細書の原案の「特許請求の範囲」には,おおむね本件発明1と同様の構成が記載されていること(前記(2)ウ(オ)a),その後同年11月24日に,本件発明1に係る特許出願(本件出願1)がされたこと(前記(2)ウ(オ)a)が認められる。 c 以上のa及びbの事実を総合すると,本件発明1の技術的思想は,昭和50年12月に乙42の報告書に基づく報告が行われた以降,遅くとも昭和51年11月に乙15の報告書に基づく報告が行われたころまでには,その着想が得られるとともに,その具体化のための作業も相当程度進められ,さらに,遅くとも昭和52年3月に試作機が完成するまでには,実機への実装も完了し,着想した技術的思想の具体化をも含めた発明としての完成をみたものということができる。 (イ) 原告ら4名の発明者性について上記(ア)のような経過からすれば,本件発明1の完成に関わる最も重要な資料は乙15の報告書であるところ,同報告書の報告者が原告ら4- 85 -名とされているという事実は,本件特許1の特許公報に原告ら4名が発明者として記載されている事実などとともに,原告ら4名が本件発明1の共同発明者であることをうかがわせる一つの間接事実ということができる。 以下においては,上記の点を踏まえつつ,本件発明1の技術的思想の着想及び具体化に関し,原告ら4名がそれぞれいかなる関わり方をしたのかについて考察 うかがわせる一つの間接事実ということができる。 以下においては,上記の点を踏まえつつ,本件発明1の技術的思想の着想及び具体化に関し,原告ら4名がそれぞれいかなる関わり方をしたのかについて考察することとする。 a 原告について原告が本件発明1の発明者であることは,当事者間に争いがない。 乙15の報告書によれば,同報告書に係るカナ漢字変換システムにおいては,そのソフトウェア構成が,各プログラムの機能によって,「入力部・文節抽出部」,「カナ漢字変換部」及び「校正部」の三つのモジュールに分けられているところ,上記システムにおいて,本件発明1の「特定の単語に優先権を付与する入力手段」に相当するものと認められる「PRIコマンド」は,校正部のモジュールに存在するものとされ,また,本件発明1の「優先権の付された単語を記憶する記憶手段」に相当するものと認められる「暫定辞書」についての説明や同音異字語の中から暫定辞書に登録された語を自動的に選択するという機能についての説明も,校正部にある「PRIコマンド」についての説明として記載されていること(前記(2)ウ(イ)f)が認められる。 他方,被告におけるカナ漢字変換技術に関する研究開発の経過によると,開発の当初,カナ漢字変換を行うプログラムの作成と同プログラムによる変換結果の校正処理を行うプログラムの作成とが,別個のコンピュータ(大型機のTOSBAC-5600とミニコンのTOSBAC-40)を使用して別々に進められ,前者のプログラムの作成- 86 -をB1が,後者のプログラムの作成を原告が担当していたことが認められ(前記(2)イ(ア)ないし(ウ)),このような役割分担は,ミニコンピュータ(TOSBAC-40C)のみを用いた乙15の報告書に係るカナ漢字変換システムにおけるモジュールご 当していたことが認められ(前記(2)イ(ア)ないし(ウ)),このような役割分担は,ミニコンピュータ(TOSBAC-40C)のみを用いた乙15の報告書に係るカナ漢字変換システムにおけるモジュールごとの開発体制にそのまま引き継がれていたものと認められる。 このように,被告において開発されたカナ漢字変換システムにおいては,本件発明1に係る技術は,三つにモジュール化されたソフトウェア構成のうち,主に校正部における処理に関わる技術として扱われてきた経過が存在するところ,このような校正部のプログラム開発の担当者が終始原告であったという事実に鑑みれば,本件発明1の技術的思想を着想し,これを具体化するに当たって,原告がその中心的な役割を果たしたものと推認することができる。 このことは,乙15の報告書や本件発明1に係る特許提案書を起案したのが原告であること,本件発明1に係る特許提案書における提案者の筆頭に原告の氏名が記載されていること(乙13の1),本件特許1の特許公報(甲1)においても,発明者の筆頭に原告の氏名が記載されていることからも裏付けられるものといえる。 bB1について(a) 被告は,B1について,①原告ら4名による議論に参加することによってアイデアの着想に本質的に貢献するとともに,②本件発明1の特徴に関わる暫定辞書のプログラムの作成を行うことによって,本件発明1の完成に本質的な貢献をした旨主張する。 これに沿うように証人B1は,「開発作業において,モジュールごとに各人の分担はあるものの,各モジュールはすべてつながっており,相互に密接に関連していることから,各担当者間で常に議論をしながら開発を進めていた」旨及び「選択された同音異義語の文- 87 -字コードを暫定辞書に登録し,その後同音異義語が出現した際に暫定辞書に に密接に関連していることから,各担当者間で常に議論をしながら開発を進めていた」旨及び「選択された同音異義語の文- 87 -字コードを暫定辞書に登録し,その後同音異義語が出現した際に暫定辞書に登録された文字コードを検索するプログラムは私とC1が担当した」旨を供述(乙4の陳述書を含む。以下同じ。)する。 (b) 上記①の点についてそこで検討するに,まず,B1が述べる「各担当者が開発に当たっていた各モジュールは相互に密接に関連していることから,各担当者間で常に議論をしながら開発を進めていた」との点については,複数のプログラムからなるシステムを開発する際における開発作業の進め方としては,当然考えられることであり,被告におけるカナ漢字変換システムの開発においても,各担当者間での議論や意見調整が行われたであろうことは,一般的には,否定し難いことといえる。 しかしながら,より具体的に,本件発明1の技術的思想に関して,校正部の担当者である原告とカナ漢字変換部の担当者であるB1との間,更には,C1及びD1をも含めた原告ら4名の間で,いつの時点で,どのような議論が行われ,それが本件発明1の技術的思想の着想やその具体化にどのように結びついたのかについては,証人B1,証人C1及び証人D1の各供述やその他の関係証拠によっても具体的に明らかとはいえず,少なくとも,B1がこれらの議論を通じて本件発明1の完成に本質的な貢献をしたことを具体的に認定するに足りる証拠はない。 (c) 上記②の点について証人B1の供述中に,被告のカナ漢字変換システムにおいて,「選択された同音異義語の文字コードを暫定辞書に登録し,その後同音異義語が出現した際に暫定辞書に登録された文字コードを検索するプログラム」(以下「暫定辞書プログラム」という。)- 88 - て,「選択された同音異義語の文字コードを暫定辞書に登録し,その後同音異義語が出現した際に暫定辞書に登録された文字コードを検索するプログラム」(以下「暫定辞書プログラム」という。)- 88 -の作成をC1とともに担当した旨の供述部分があるところ,上記のようなプログラムの作成は,本件発明1の技術的思想に関わる構成のうち,「優先権の付された単語を記憶する記憶手段」及び「同音異義語が生じた場合に上記記憶手段における優先権を付与された単語の有無を調べる手段」を実機において実現する行為であり,本件発明1の技術的思想に係る着想を具体化する行為の一環をなすものと評価することができる。 したがって,B1が現にこのような行為を行っているとすれば,少なくともこの点において,B1は,本件発明1の技術的思想の具体化に創作的に関与した者として,その共同発明者たり得るものということができる。 しかるところ,B1がC1とともに暫定辞書プログラムの作成を行ったとの事実については,証人B1のほか,証人C1の供述中にもこれに符合した供述部分が存在する。他方で,原告は,本件発明1に係るアイデアを着想したのが原告である旨や乙15の報告書に係るカナ漢字変換システムにおける校正モジュールに関与したのは原告のみである旨を抽象的に述べるものの,暫定辞書プログラムの作成が,誰によって,どのように行われたのかについては,これを具体的に述べてはおらず(原告本人,甲4,49),そのほかにも,証人B1及び証人C1の上記供述部分の信用性を積極的に否定するに足りる証拠はない。 かえって,乙15の報告書によれば,同報告書に係るカナ漢字変換システムにおいて,本件発明1の「特定の単語に優先権を付与する入力手段」に相当するものと認められる「PRIコマンド」については,校正部の一部 って,乙15の報告書によれば,同報告書に係るカナ漢字変換システムにおいて,本件発明1の「特定の単語に優先権を付与する入力手段」に相当するものと認められる「PRIコマンド」については,校正部の一部をなす構成として設計されていることが明らかであるから,校正モジュールの担当者である原告が同コマンドに- 89 -係るプログラムを作成したものと認めるのが自然であるといえるのに対し,本件発明1の「優先権の付された単語を記憶する記憶手段」及び「同音異義語が生じた場合に上記記憶手段における優先権を付与された単語の有無を調べる手段」に相当するものと認められる「暫定辞書プログラム」については,校正部との密接な関連は否定できないものの,必ずしも校正部それ自体に備えられるべき構成として設計されているものとはいえないから,かかるプログラムの作成を原告以外の担当者が行ったとしても,あながち不自然なこととはいえない。 以上を総合すると,証人B1及び証人C1の上記供述部分は,相応の信用性を認めることができ,これによれば,B1がC1とともに暫定辞書プログラムの作成を行ったとの事実を認めることができる。 したがって,B1は,本件発明1の技術的思想の具体化に創作的に関与した者として,その共同発明者に当たるものと認められる。 (d) なお,原告は,被告の日本語ワードプロセッサの開発におけるB1の関与について,開発の初期の段階でカナ漢字変換のプログラムを作成したことのみであり,その後,昭和51年度には,その主業務を漢字認識関係の研究開発に移した旨を主張し,その根拠として,B1が,昭和52年度の「電子通信学会情報部門全国大会」において,漢字認識に関する研究発表(甲33)を行った事実を指摘する。 しかしながら,B1が,日本語ワードプロセッサに直接関わらな して,B1が,昭和52年度の「電子通信学会情報部門全国大会」において,漢字認識に関する研究発表(甲33)を行った事実を指摘する。 しかしながら,B1が,日本語ワードプロセッサに直接関わらない技術についての研究発表を行ったとの事実が,その時点においてB1が日本語ワードプロセッサの開発に関与していなかったことに直ちに結びつくものとはいえない。 - 90 -かえって,B1は,昭和52年10月当時の被告の総合研究所における研究の題目や担当者等を記載した「研究計画書」(乙24)において,「日本語処理システムの研究」を題目とする研究の中で「カナ漢字変換入力」を担当する者の一人として挙げられている事実が認められ,また,昭和51年11月12日の報告に係る乙15の報告書,昭和52年4月18日の報告に係る乙16の報告書及び昭和53年4月5日の報告に係る乙17の報告書のいずれにおいても,B1がその報告者の一人とされていることは,前記(2)のとおりであるから,これらを総合すると,昭和52年度以降においても,被告の日本語ワードプロセッサの開発におけるB1の関与は続いていたものと認めるのが合理的であり,原告の上記主張は採用することができない。 他にB1が本件発明1の技術的思想の具体化に創作的に関与したとの前記認定を覆すに足りる証拠はない。 cC1について被告は,C1について,①原告ら4名による議論に参加することによってアイデアの着想に本質的に貢献するとともに,②B1とともに暫定辞書のプログラムの作成を行うことによって,本件発明1の完成に貢献した旨を主張し,証人C1も,おおむねこれに沿う供述(乙6の陳述書を含む。以下同じ。)をする。 しかるところ,上記①のような関わり方を根拠として,C1が本件発明1の技術的思想の着想又はその具体 献した旨を主張し,証人C1も,おおむねこれに沿う供述(乙6の陳述書を含む。以下同じ。)をする。 しかるところ,上記①のような関わり方を根拠として,C1が本件発明1の技術的思想の着想又はその具体化に創作的に関与したものと判断することが困難であることについては,前記b(b)でB1について述べたことが,そのままC1についても当てはまるものといえる。 他方,B1とともにC1も暫定辞書プログラムの作成を行ったもの- 91 -と認められること,したがって,C1が,本件発明1の技術的思想の具体化に創作的に関与した者と認められることは,前記b(c)で述べたB1の場合と同様である。 したがって,C1についても,本件発明1の共同発明者に当たるものと認められる。 dD1について被告は,D1について,被告の日本語ワードプロセッサ開発において,研究グループのリーダーとして全体を統括管理するだけではなく,個々の技術の研究開発についても必要に応じて関与してきたなどとした上で,本件発明1についても,原告ら4名による議論に参加することによってアイデアの着想に本質的に貢献した旨を主張する。 これに沿うように証人D1は,当時のD1のグループにおいては,グループ内で行われた発明を特許出願する際,最終的に発明のアイデアを着想した者のみならず,「その発明者の議論の相手になって,その発明に本質的に貢献した者も発明者である」とのルールに従って,発明者の決定が行われており,D1は,本件発明1に本質的に貢献したなどと供述(乙5の陳述書を含む。以下同じ。)する。 しかしながら,原告とD1との間,更には,B1及びC1をも含めた原告ら4名の間で,本件発明1の技術的思想に関して,具体的にいつの時点で,どのような議論が行われ,それが本件発明1の技術的思想の着想 しかしながら,原告とD1との間,更には,B1及びC1をも含めた原告ら4名の間で,本件発明1の技術的思想に関して,具体的にいつの時点で,どのような議論が行われ,それが本件発明1の技術的思想の着想やその具体化にどのように結びついたのかについては,証拠上明らかとはいえず,少なくとも,D1がこれらの議論を通じて本件発明1の完成に本質的な貢献をしたことを具体的に認定するに足りる証拠がないことは,前記b(b)でB1について述べたことが,そのままD1についても当てはまるものといえる。 したがって,原告ら4名による議論への参加なるものを根拠とし- 92 -て,D1が本件発明1の技術的思想の着想又はその具体化に創作的に関与したものと判断することは困難というほかない。また,そのほかに,D1が,本件発明1の技術的思想の着想やその具体化に創作的に関与したことを示す具体的な事実については,被告の主張がなく,これを認めるに足りる証拠もない。 このように,D1については,本件発明1の技術的思想の着想やその具体化に創作的に関与したとの具体的な事実を証拠上認めることができない以上,D1が,乙15の報告書の報告者の一人とされていること,本件特許1の特許公報に発明者の一人として記載されていることなどの事情を考慮したとしても,本件発明1の発明者と認めることはできない。 なお,証人D1は,「カナ漢字変換特許発掘会」と題する書面(乙78)に基づき,本件発明1の特許提案書が提出された当時,被告総合研究所のD1をリーダーとする研究グループにおいては,発明を特許出願の対象とするかどうかを議論するための「特許発掘会」と呼ばれる会議が行われており,本件発明1についても,この「特許発掘会」において,原告ら4名を含むメンバーの中で議論が行われた結果,特許出願を行うこと 象とするかどうかを議論するための「特許発掘会」と呼ばれる会議が行われており,本件発明1についても,この「特許発掘会」において,原告ら4名を含むメンバーの中で議論が行われた結果,特許出願を行うこと,原告ら4名を共同発明者とすること,特許提案書の作成を原告が担当することが決められたことなどを供述する。しかしながら,このような経過が存在したとしても,それによって,D1が本件発明1の技術的思想の着想やその具体化に創作的に関与したとの具体的な事実の存在が根拠づけられるものでなく,上記の結論は左右されない。 (ウ) 小括以上によれば,本件発明1は,原告の単独発明ではなく,原告,B1及びC1による共同発明であると認められる。 - 93 -イ本件発明2について(ア) 本件発明2が完成するに至った時期及び経過a 本件発明2の技術的思想は,前記(1)イ(イ)のとおり,従来の単一分析型のカナ漢字変換装置においては,数詞文節,固有名詞文節,カタカナ文節等といった普通名詞文節とは異なる種類の文節についての変換の精度が低いという技術的課題を解決するための手段として,カナ漢字変換装置に,文節の種類に対応した複数の文節変換手段と,入力された文節の種類の文節認定機能を有する変換制御手段の構成を採用し,この変換制御手段において,入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別して対応する文節変換手段に上記入力文節を送り込むこととし,しかも,当該文節の全体又は一部が1つの文節変換手段によって変換できなかった場合には,その変換されなかった文字列について,更にその先頭部の単語から文節の種類を判別して対応する文節変換手段に送り込んで変換の再試行を行うものとしたことによって,文節の種類に対応した精度の高い分析と,1つの文節変換手段で変換でき について,更にその先頭部の単語から文節の種類を判別して対応する文節変換手段に送り込んで変換の再試行を行うものとしたことによって,文節の種類に対応した精度の高い分析と,1つの文節変換手段で変換できないものを他の文節変換手段でバックアップすることによる高精度の変換を実現した点にある。 そして,前記(2)で認定した経過をみると,上記技術的思想に関わる書面上の記述が最初に見られるのは,昭和53年4月5日の報告に係る乙17の報告書においてである。 すなわち,乙17の報告書(前記(2)エ(イ))においては,同報告書の対象とされた日本語ワードプロセッサには,自動文節抽出部が設けられ,ここでは,入力されたカナ文から文節を抽出した上で,これらを「漢字を含んだ文節」,「平カナだけの文節」,「片カナを含んだ文節」,「数詞を含んだ文節」及び「固有名詞文節」に分類して,数詞文節,固有名詞文節,通常文節の別にそれぞれの処理部(「数詞- 94 -処理部」,「固有名詞処理部」及び「通常文節処理部」)へ送ること,ただし,固有名詞文節については,入力時にオペレータが区別して入力(漢字モードキーを2度打つことによって固有名詞入力とする。)すること,その後,それぞれの処理部において,文節の種類に応じ,単語辞書と文法辞書とのマッチングをとりながら,カナ漢字変換処理が行われるが,数詞処理部及び固有名詞処理部において変換に失敗した場合には,その変換されなかった部分を自動的に通常文節処理部へ回し,そこで更に変換処理が行われること,このようなバックアップにより,当該ワードプロセッサにおいては,高い変換率を維持していることなどが記載されている。 これらの記載によれば,乙17の報告書に係る日本語ワードプロセッサにおいては,本件発明2の「複数の文節変換手段」に相当する構 セッサにおいては,高い変換率を維持していることなどが記載されている。 これらの記載によれば,乙17の報告書に係る日本語ワードプロセッサにおいては,本件発明2の「複数の文節変換手段」に相当する構成として「数詞処理部」,「固有名詞処理部」及び「通常文節処理部」が設けられ,また,「変換制御手段」の機能の一部(入力された文節をその種類に対応する文節変換手段に送り込む点,当該文節の全体又は一部が1つの文節変換手段によって変換できなかった場合には,他の文節変換手段に送り込んで変換の再試行を行う点など)を備え得る構成として「自動文節抽出部」がそれぞれ設けられ,これによって高い変換率を実現するものであることが示されているものといえる。 もっとも,乙17の報告書に係る日本語ワードプロセッサでは,固有名詞文節については,オペレータが入力時に区別して入力し,自動文節抽出部が文節の種類を判別しているものではなく,また,自動文節抽出部が,本件発明2の「変換制御手段」のように「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別する」機能を有することについて示されていない。 また,数詞処理部及び固有名詞処理部における変換が失敗した場合- 95 -に「自動文節抽出部」が行う処理に関しても,乙17の報告書に係る日本語ワードプロセッサでは,その変換されなかった部分を自動的に通常文節処理部へ回すものとされており,本件発明2の「変換制御手段」のように「その変換されなかった文字列について更にその先頭部の単語から文節の種類を判別して対応する文節変換手段に送り込む」という処理を行うものであることは示されていない。 したがって,乙17の報告書には,本件発明2の上記技術的思想のうちの一部が示されているものの,なおその一部については記載も,示唆もないものといえる いう処理を行うものであることは示されていない。 したがって,乙17の報告書には,本件発明2の上記技術的思想のうちの一部が示されているものの,なおその一部については記載も,示唆もないものといえる。 b さらに,その後の経過をみると,昭和53年9月12日には,発明の名称を「カナ漢字変換装置」とする発明について,原告の起案に係る特許提案書が提出されたこと,同年9月25日,本件発明2に係る特許出願(本件出願2)がされたことは,前記(2)エ(ウ)aのとおりである。 しかるところ,上記特許提案書中の明細書の原案(乙14の2)をみても,本件発明2の「変換制御手段」の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別する」機能についての記載は認められない。この点は,昭和54年9月7日に被告の社内で報告のあった甲52の報告書においても同様であり,そのほかにも,本件発明2の「変換制御手段」の上記機能に関する記載が認められる報告書等の証拠は見当たらない。 c 以上を総合すると,本件発明2の技術的思想は,その一部については,乙17の報告書に基づく報告が行われた昭和53年4月ころまでに,その着想が得られるとともに,実機への実装も行われたものといえるが,本件発明2の技術的思想全体の着想が得られ,発明としての完成をみた時期及びその経過については,証拠上明確ではなく,本件- 96 -出願2の出願がされた昭和53年9月以降のいずれかの時点において,発明としての完成に至ったものと考えざるを得ない。 (イ) 原告ら4名の発明者性について上記(ア)のとおり,本件発明2の技術的思想に関わる書面上の記述が最初に見られるのは乙17の報告書においてであるところ,同報告書の報告者が原告ら4名とされているという事実は,本件特許2の特許公報に原告ら4名が発明者 ,本件発明2の技術的思想に関わる書面上の記述が最初に見られるのは乙17の報告書においてであるところ,同報告書の報告者が原告ら4名とされているという事実は,本件特許2の特許公報に原告ら4名が発明者として記載されている事実などとともに,原告ら4名が本件発明2の共同発明者であることをうかがわせる一つの間接事実ということができる。 以下においては,上記の点を踏まえつつ,本件発明2の技術的思想の着想及びその具体化に関し,原告ら4名がそれぞれいかなる関わり方をしたのかについて考察することとする。 a 原告について原告が本件発明2の発明者であることは,当事者間に争いがない。 原告は,本件発明2についての原告の関わり方について,①原告は,昭和50年12月に乙42の報告書に基づく報告を行った当時から,同報告書に係るカナ漢字変換システムにおいて,「第」と「台」,「位置」と「1」などといった誤変換が多数発生しており,変換性能を向上させる必要性を感じていたが,この時点ではそのためのアイデアはなかったこと,②乙16の報告書に係る即時処理型カナ漢字変換システムを完成させた後,変換率向上の問題に取り組むこととし,まずは数詞変換の問題から手をつけ,具体的には,数詞に付く接辞である助数詞について,コンピュータによる正しい処理を可能とするための工学的な解決法を模索する実験等を行ったこと,③その過程で,カタカナや英字などについても類似の問題が発生することに気づき,文節の種類によって個別の変換器を用いることを着想したこと,④さらに,- 97 -昭和52年春ころから昭和53年秋ころまで,個別の変換器が言語学的にどのような構造を持つかなどについての実験を繰り返したこと,⑤その過程での研究成果を乙17の報告書にまとめ,昭和53年4月に被告社内において報告し から昭和53年秋ころまで,個別の変換器が言語学的にどのような構造を持つかなどについての実験を繰り返したこと,⑤その過程での研究成果を乙17の報告書にまとめ,昭和53年4月に被告社内において報告したことなどを供述(甲49の陳述書を含む。以下同じ。)する。 しかるところ,上記のような原告の供述は,前記(2)のような本件に係る経過事実や乙17の報告書の記載内容からみて,格別不自然なものとはいえず,証人B1,証人C1及び同D1の各供述内容とも特段矛盾するものではないから,その信用性に疑いを差し挟むべき事情はないということができる。 そして,このような原告の供述を前提とすれば,本件発明2の技術的思想のうち,少なくとも乙17の報告書に示されたもの(前記(ア)a)の限度においては,これを着想し,かつ,具体化するに当たって,原告がその中心的な役割を果たしたものであることを優に認定することができる。このことは,乙17の報告書や本件発明2に係る特許提案書を起案したのが原告であること,本件発明2に係る特許提案書における提案者の筆頭に原告の氏名が記載されていること(乙14の1),本件発明2の特許公報(甲2)においても,発明者の筆頭に原告の氏名が記載されていることからも裏付けられるものといえる。 他方で,原告の上記供述によっても,本件発明2の「変換制御手段」の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別する」機能に係る部分の技術的思想について,原告が具体的にいかなる役割を果たしたのかについては,明らかとはいえない。 しかしながら,本件発明2の技術的思想のうち,本件発明2の「変換制御手段」の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から- 98 -判別する」機能に係る部分は,「変換制御手段」において必要とされる入力された文節 2の技術的思想のうち,本件発明2の「変換制御手段」の「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から- 98 -判別する」機能に係る部分は,「変換制御手段」において必要とされる入力された文節の種類を判別する方法を具体的に特定するというものであることからすると,本件発明2の技術的思想のうち,乙17の報告書に示されたもの(前記(ア)a)に係る部分の着想及びその具体化に創作的に関与したと認められる原告が,本件発明2の発明者の一人といえることは明らかである。 bB1,C1及びD1について(a) 被告は,本件発明2へのB1,C1及びD1の関わり方について,原告ら4名による議論に参加することによってアイデアの着想に本質的に貢献した旨を主張し,証人B1,証人C1及び証人D1もこれに沿う供述をする。 しかしながら,本件発明2の技術的思想に関して,原告ら4名の間で,いつの時点で,どのような議論が行われ,それが本件発明2の技術的思想の着想やその具体化にどのように結びついたのかについては,証人B1,証人C1及び証人D1の各供述やその他の関係証拠によっても具体的に明らかとはいえず,少なくとも,B1,C1及びD1がこれらの議論を通じて本件発明2の完成に本質的な貢献をしたことを具体的に認定するに足りる証拠はない。 してみると,B1,C1及びD1について,原告ら4名による議論への参加なるものを根拠として,本件発明2の技術的思想の着想又はその具体化に創作的に関与したものと判断することは困難である。 ⒝ また,被告は,C1について,本件発明2の構成要件の一部である固有名詞変換器のプログラムの作成を行ったことを根拠として,本件発明2の技術的思想の着想の具体化に貢献したものといえる旨を主張する。 - 99 -しかしながら,本件発明2の技術 の一部である固有名詞変換器のプログラムの作成を行ったことを根拠として,本件発明2の技術的思想の着想の具体化に貢献したものといえる旨を主張する。 - 99 -しかしながら,本件発明2の技術的思想は,前記(ア)aにおいて述べたとおりであり,文節の種類ごとに複数の文節変換手段を設けることが本件発明2の構成要件の一つとはされるものの,個々の文節変換手段における文節変換の方法等それ自体が本件発明2の技術的思想をなすものでないことは明らかであるから,被告の日本語ワードプロセッサ開発の中で,C1が,上記文節変換手段の一つである固有名詞変換器に係るプログラムの作成を行った事実があるとしても,そのことが直ちに本件発明2の技術的思想の着想やその具体化に貢献したことを意味するものとはいえない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 ⒞ そのほかに,B1,C1及びD1が,本件発明2の技術的思想の着想やその具体化に創作的に関与したことを示す具体的な事実については,被告の主張がなく,これを認めるに足りる証拠もない。 (d) このように,B1,C1及びD1については,本件発明2の技術的思想の着想やその具体化に創作的に関与したとの具体的な事実を証拠上何ら認めることができない以上,上記3名が,それぞれ乙17の報告書の報告者の一人とされ,本件特許2の特許公報にも発明者の一人として記載されていることなどの事情を考慮したとしても,本件発明2の発明者と認めることはできない。 (ウ) 小括以上によれば,本件発明2については,原告がその発明者に当たるものと認められる一方,被告が共同発明者であると主張し,本件発明2に係る特許出願の願書においても,原告とともに共同発明者とされているB1,C1及びD1については,いずれも共同発明者の一人であると認めること められる一方,被告が共同発明者であると主張し,本件発明2に係る特許出願の願書においても,原告とともに共同発明者とされているB1,C1及びD1については,いずれも共同発明者の一人であると認めることはできないのであるから,結局のところ,本件発明2は,原告の単独発明であるというほかはない。 - 100 -(4) まとめ以上のとおり,本件発明1は,原告,B1及びC1の3名による共同発明であり,本件発明2は,原告の単独発明であると認められる。 2 争点2(本件各発明により被告が受けるべき利益の額)について特許法旧35条3項は,「従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。」と規定し,同条4項は,「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と規定している。 これらの規定によれば,特許法旧35条3項の相当の対価の額は,同条4項の趣旨・内容に合致するものでなければならないというべきであるから,勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則等に使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても,これによる対価の額が同条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解するのが相当である(最高裁判所平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。 ところで,特許法旧35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利 の支払を求めることができると解するのが相当である(最高裁判所平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。 ところで,特許法旧35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益」は,使用者等が「受けた利益」そのものではなく,「受けるべき利益」であるから,使用者等が職務発明についての特許を受ける権利を承継した時に客観的に見込まれる利益をいうものと解されるところ,使用者等は,特許を受ける権利を承継せずに,従業者等が特許を受けた場合であっても,その特許権について特許法35条1項に基づく無償の通常実施権を有することに照らすと,「発明により使用者等が受けるべき利益」とは,このような法定通常実施権を行使- 101 -し得ることにより受けられる利益は含まず,使用者等が従業者等から特許を受ける権利を承継し,当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益,すなわち「独占の利益」をいうものと解される。 そして,このような「独占の利益」は,本来,特許を受ける権利の承継時に定められるべきものであるが,実際には,特許を受ける権利の承継の時点では,将来特許を受けることができるかどうか自体が不確実であり,その発明により将来いかなる利益を得ることができるのかを具体的に予測することは困難であることなどに照らすと,発明の実施又は実施許諾による使用者等の利益の有無やその額など,特許を受ける権利の承継後の事情についても,その承継の時点において客観的に見込まれる利益の額を認定する資料とすることができると解される。 具体的には,①使用者等が職務発明についての特許を受ける権利の承継後に第三者との間のライセンス契約に基づいて当該発明の実施を許諾している場合には,その実施料収入,また,第三者との間で包 される。 具体的には,①使用者等が職務発明についての特許を受ける権利の承継後に第三者との間のライセンス契約に基づいて当該発明の実施を許諾している場合には,その実施料収入,また,第三者との間で包括クロスライセンス契約を締結している場合には,相互に無償で実施を許諾する特許発明等とそれが均衡しないときに支払われる実施料の額が総体として相互に均衡するものと考えられるので,相手方が当該発明を実施することにより,本来相手方から支払を受けるべきであった実施料相当の利益及び現実に支払われた実施料収入の合計額,②使用者等が当該発明を自己実施(自社実施)している場合には,特許権が存在することにより,第三者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることができた利益,すなわち,特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果として,使用者等の自己実施による売上高のうち,当該特許権を使用者等に承継させずに,自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超える分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利益(超過利益)などに- 102 -基づいて,上記「独占の利益」を認定することができるものというべきである。 しかるところ,原告は,被告が,本件各発明を自社実施するとともに,第三者に対しライセンス契約や包括クロスライセンス契約に基づいて本件各発明の実施許諾をしており,これらによって利益を得ている旨主張するので,本件各発明により被告が受けるべき利益の額を算定するに当たっては,①ライセンス契約において受けるべき利益,②包括クロスライセンス契約において受けるべき利益,③自社実施により受けるべき利益に分けて検討することとする。 なお,原告が主張する被告が本件各発明により受けるべき利益の額 において受けるべき利益,②包括クロスライセンス契約において受けるべき利益,③自社実施により受けるべき利益に分けて検討することとする。 なお,原告が主張する被告が本件各発明により受けるべき利益の額の算定対象期間は,本件発明1については,平成8年4月1日から本件特許権1の存続期間満了日である平成9年11月24日までであり,本件発明2については,平成8年4月1日から本件特許権2の存続期間満了日である平成10年9月25日までである。 (1) 被告と他社とのライセンス契約及び包括クロスライセンス契約の状況等ア被告は,本件各特許に関し,以下のとおり,A社ないしD社の4社との間でライセンス契約(一部クロスライセンス契約)を,E社ないしH社の4社との間で包括クロスライセンス契約をそれぞれ締結していた。 (ア) A社ライセンス契約1及び2(乙52)aA社ライセンス契約1(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●bA社ライセンス契約2(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●- 103 -(d) 実施料 ●(省略)●(イ) B社ライセンス契約1及び2(乙53)aB社ライセンス契約1(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●bB社ライセンス契約2(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●(ウ) C社ライセンス契約(乙54)a 2(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●(ウ) C社ライセンス契約(乙54)a 締結日 ●(省略)●b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●e 実施料 ●(省略)●(エ) D社ライセンス契約(乙72)a 締結日 ●(省略)●b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●e 実施料 ●(省略)●(オ) E社包括クロスライセンス契約(乙73)a 締結日 ●(省略)●- 104 -b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●e 実施料 ●(省略)●(カ) F社包括クロスライセンス契約1及び2(乙60)aF社包括クロスライセンス契約1●(省略)●(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●bF社包括クロスライセンス契約2(●(省略)●)(a) 対象製品 ●(省略)●(b) 対象特許 ●(省略)●(c) 契約期間 ●(省略)●(d) 実施料 ●(省略)●(キ) G社包括クロスライセンス契約(乙61)a 締結日 ●(省略)●b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●e 実施料 ●(省略)●(ク) H社包括クロスライセンス契約(乙62)a 締結日 ●(省略)●b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●- 105 -e 実施料 ●(省略 社包括クロスライセンス契約(乙62)a 締結日 ●(省略)●b 対象製品 ●(省略)●c 対象特許 ●(省略)●d 契約期間 ●(省略)●- 105 -e 実施料 ●(省略)●イワードプロセッサ専用機市場における各社の市場占有率平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場における各社の市場占有率は,おおむね次のとおりであると推定される(甲6,弁論の全趣旨)。 (ア) 原告約15%(イ) ●(省略)●の合計約10%(ウ) E社ないしH社の合計約40%ないし45%(2) 被告がライセンス契約等において本件各発明により受けるべき利益の額についてア ●(省略)●から支払を受けた実施料の額(ア) 平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の額被告が●(省略)●との各ライセンス契約において,平成8年度分及び平成9年度分の実施料として支払を受けた合計額が,いずれの年度も●(省略)●円であり,2年間の合計額が●(省略)●円であることは,当事者間に争いがない。 (イ) 平成10年度分の実施料収入の額原告は,被告が●(省略)●との各ライセンス契約において,平成10年度にも,平成8年度及び平成9年度と同様に合計●(省略)●円の実施料収入を得ているはずである旨主張する。 そこで検討するに,①被告と●(省略)●との間の各ライセンス契約の内容(前記(1)ア(ア)ないし(ウ))をみると,これらの契約はいずれも平成10年度においても存続し,●(省略)●が被告に所定の実施料を支払うものとされていること(ただし,●(省略)●),②原告において,被告の実施料収入を証する証拠を提出することは困難であり,そのような状況の下で,平成10年度分の被告の実施料収入を前年 の実施料を支払うものとされていること(ただし,●(省略)●),②原告において,被告の実施料収入を証する証拠を提出することは困難であり,そのような状況の下で,平成10年度分の被告の実施料収入を前年度及び前々年- 106 -度の実績に基づいて推認することも相応の合理性を有するものといえること,③被告は,原告の上記主張に対して格別の反証もしていないことなどを総合すると,原告の上記主張は,これを首肯することができる。 したがって,被告が●(省略)●との各ライセンス契約において,平成10年度分の実施料として支払を受けた合計額は,●(省略)●円であると認める。 イ ●(省略)●から支払を受けた実施料の額(ア) ●(省略)●ライセンス契約の内容(前記(1)ア(エ))によれば,●(省略)●ことが認められる。 そして,被告が●(省略)●との各ライセンス契約に基づく平成9年度分の実施料として合計●(省略)●円の支払を受けたことは,前記ア(ア)のとおりであること,●(省略)●(甲6)によれば,この●(省略)●円と●(省略)●から被告に支払われた上記契約一時金を合計した被告の平成9年度のライセンス収入額が●(省略)●円であることが認められることを総合すれば,被告が●(省略)●から●(省略)●ライセンス契約に基づいて支払を受けた上記契約一時金の額は,●(省略)●円であると認められる。 ところで,●(省略)●ライセンス契約の上記契約期間は,始期が●(省略)●,終期が●(省略)●であって,平成9年度及び平成10年度の期間を超えるものであるところ,被告は上記契約一時金について上記契約期間の各年ごとの内訳について特に主張立証していないこと,原告において,被告の実施料収入を証する証拠を提出することは困難であることに照らすならば,上記●(省略)●円 は上記契約一時金について上記契約期間の各年ごとの内訳について特に主張立証していないこと,原告において,被告の実施料収入を証する証拠を提出することは困難であることに照らすならば,上記●(省略)●円は,被告が上記●(省略)●平成9年度分の実施料として支払を受けたものとして取り扱うのが相当である。 したがって,被告が●(省略)●ライセンス契約において,平成9年度- 107 -分の実施料として支払を受けた額は,●(省略)●円である。 (イ) この点について原告は,被告が●(省略)●とのライセンス契約によって得た平成8年度分及び平成9年度分の実施料収入の合計は●(省略)●円である旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,前記(ア)の●(省略)●円の限度で理由があるが,これを超える額については認めるに足りる証拠はない。 ウ MS社からの実施料相当の利益原告は,被告がMS社との間で,被告がMS社に本件各発明の実施を許諾することの対価として,被告が製造販売するパソコンにプリインストールされるWindows95やWindowsNT等のOSについて,被告がMS社に支払うべきライセンス料の減額を受ける旨の契約を締結し,これによって,被告は,MS社から,平成8年度及び平成9年度に,●(省略)●から得た実施料収入と同程度の利益を得ていた旨主張する。 しかしながら,被告がMS社との間で原告が主張する契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 エ実施料収入のうち本件各発明の寄与度に相当する部分の額(ア) 本件発明1についてa(a) A社ないしD社との各ライセンス契約の内容(前記(1)ア(ア)ないし(エ))をみると,これらのライセンス契約における「対象特許」(特許権,実用新 る部分の額(ア) 本件発明1についてa(a) A社ないしD社との各ライセンス契約の内容(前記(1)ア(ア)ないし(エ))をみると,これらのライセンス契約における「対象特許」(特許権,実用新案権等。以下同じ。)及びその中での本件特許1の扱われ方については,次のとおりであることが認められる。 ① A社ライセンス契約1及び2においては,●(省略)●。 ② B社ライセンス契約1においては,●(省略)●。 他方,B社ライセンス契約2においては,●(省略)●。 ③ C社ライセンス契約においては,●(省略)●。 - 108 -④ D社ライセンス契約においては,●(省略)●。 (b) 以上によると,本件発明1は,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約において,具体的に限定された対象特許のうちの一つ(●(省略)●),あるいは,包括的なライセンス契約において,契約交渉の中で具体的に提示され,対象特許に含まれるものとして契約書において明示的に列挙された特許の一つ(●(省略)●)として扱われているのであり,これからすると,本件発明1がこれらの契約の締結に相応の寄与をしたものと認められる。 なお,上記各契約のうち,●(省略)●。 しかしながら,①●(省略)●,②●(省略)●,③●(省略)●,以上①ないし③の事情からすれば,B社ライセンス契約2の実質的な内容は,少なくとも本件特許1の存続期間満了の後である平成10年9月30日までの期間については,B社ライセンス契約1をそのまま引き継いだものと評価することができる。 したがって,B社ライセンス契約2における本件発明1の寄与度は,B社ライセンス契約1の場合と異ならないものとして取り扱うのが相当である。 b ところで,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約の締結における本件発 ンス契約2における本件発明1の寄与度は,B社ライセンス契約1の場合と異ならないものとして取り扱うのが相当である。 b ところで,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約の締結における本件発明1の寄与度について判断するに当たっては,これらの契約締結に至る被告とA社ないしD社との間の交渉経過を具体的に認定し,これを勘案することが有用といえるところ,原告において,かかる交渉経過についての証拠を収集することが困難であることは明らかであり,この点の立証は,基本的に被告による証拠提出によるほかはないものといえる。 しかるところ,被告は,この点に関して,A社ないしD社の担当者が各ライセンス契約の内容等を簡略に記載した陳述書(前記(1)アで- 109 -摘示した乙号各証)を提出するのみであって,各ライセンス契約における秘密保持条項の存在等の被告側の事情を理由として,上記陳述書以外の証拠の提出をしていない。 そのため,本件においては,上記のような交渉経過に係る事実を具体的に認定することができず,ひいては,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約の締結における本件発明1の寄与度についての判断が困難となっているという面があることは否定できないところである。 そして,以上のような事情は,本件発明1の寄与度についての判断に当たって,原告のために斟酌すべき事情の一つというべきである。 c また,被告が本件発明1の平成8年度分及び平成9年度分のライセンス補償として合計18万5400円を原告に支払ったことは,前記争いのない事実等(5)アのとおりである。 しかるところ,甲6によれば,被告は,上記ライセンス補償を原告に支払うに当たって,A社ないしD社との間の各ライセンス契約で得た実施料収入における本件発明1の寄与度を評価した上で,次のと である。 しかるところ,甲6によれば,被告は,上記ライセンス補償を原告に支払うに当たって,A社ないしD社との間の各ライセンス契約で得た実施料収入における本件発明1の寄与度を評価した上で,次のとおり平成8年度分及び平成9年度分のライセンス補償の額を算定したことが認められる。 (a) 平成8年度分実施料収入合計 ●(省略)●本件特許1に基づく収入 ●(省略)●本件特許1の補償金 18万円原告への支払額 4万5000円(b) 平成9年度分実施料収入合計 ●(省略)●本件特許1に基づく収入 ●(省略)●- 110 -本件特許1の補償金 56万1100円原告への支払額 14万0400円d 以上を前提に,被告がA社ないしD社から前記ア及びイのとおり支払を受けた平成8年度及び平成9年度の実施料収入における本件発明1の寄与度に相当する部分の額について考察する。 前記cのとおり,被告は,原告へのライセンス補償の額を算定するに当たり,A社ないしD社との間の各ライセンス契約における本件発明1の寄与度を評価した上で,平成8年度分については,●(省略)●から支払を受けた合計約●(省略)●円の実施料収入のうちの●(省略)●円を,平成9年度分については,A社ないしD社から支払を受けた合計約●(省略)●円の実施料収入のうちの●(省略)●円を,それぞれ本件発明1の寄与度に応じた金額と算定している。このような本件発明1の寄与度についての評価は,本件発明1がライセンス交渉において発揮した価値等を最も知悉する立場にある被告自身が,平成8年度及び平成9年度当時に,本件紛争の存在を前提とせずに行ったものであることか 1の寄与度についての評価は,本件発明1がライセンス交渉において発揮した価値等を最も知悉する立場にある被告自身が,平成8年度及び平成9年度当時に,本件紛争の存在を前提とせずに行ったものであることからすれば,相応の根拠に基づく信頼性のある評価ということができる。 そして,被告による上記評価は,例えば,平成8年度の●(省略)●からの実施料収入合計●(省略)●円(前記ア(ア))に対する割合でいえば,本件発明1の寄与度を約●(省略)●%(●(省略)●)と評価するものといえるところ,このような数値は,前記aで述べた各ライセンス契約における対象特許及びその中での本件特許1の扱われ方に照らしても,格別不合理なものとはいえない。 他方,本件においては,被告による上記評価以外に,本件発明1の寄与度を的確に算定し得る資料は見当たらず,この点に関しては,前記bのような事情があることをも考慮すると,本件発明1の寄与度に- 111 -ついて,被告自身が過去に行った上記評価を下回る寄与度を認定することは,相当でないものといえる。 以上を総合すれば,被告が●(省略)●から支払を受けた平成8年度分の実施料収入合計●(省略)●円(前記ア(ア))及びA社ないしD社から支払を受けた平成9年度分の実施料収入合計●(省略)●円(前記ア(ア)及びイの合計額)における本件発明1の寄与度に相当する部分の額は,平成8年度分については●(省略)●円,平成9年度分については●(省略)●円と認めるのが相当である。 (イ) 本件発明2についてa(a) まず,A社ないしD社との各ライセンス契約の内容(前記(1)ア(ア)ないし(エ))をみると,これらのライセンス契約における対象特許及びその中での本件特許2の扱われ方については,次のとおりであることが認められる。 ① A社ラ イセンス契約の内容(前記(1)ア(ア)ないし(エ))をみると,これらのライセンス契約における対象特許及びその中での本件特許2の扱われ方については,次のとおりであることが認められる。 ① A社ライセンス契約1及び2では,●(省略)●。 ② B社ライセンス契約1では,●(省略)●。 ③ C社ライセンス契約では,●(省略)●。 ④ D社ライセンス契約では,●(省略)●。 (b) 以上のとおり,本件発明2は,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約のうち,C社ライセンス契約においては,●(省略)●,また,D社ライセンス契約においては,●(省略)●とされている。 他方,A社ライセンス契約1及び2並びにB社ライセンス契約1及び2においては,本件発明2は,●(省略)●(A社ライセンス契約1及び2並びにB社ライセンス契約2)。 以上からすると,本件発明2については,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約のうち,C社ライセンス契約及びD社ラ- 112 -イセンス契約の締結において,一定の寄与があったことは認め得るものの,A社ライセンス契約1及び2並びにB社ライセンス契約1及び2の締結に関しては,寄与の存在を直ちに認めることは困難というべきである。 また,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約の締結における本件発明2の寄与という点についてみても,C社ライセンス契約においては,●(省略)●,D社ライセンス契約においては,●(省略)●。 b 次に,前記争いのない事実等(5)イのとおり,本件発明2については,被告から原告に対する平成8年度分ないし平成10年度分のライセンス補償の支払がされていないことからすれば,当時の被告においては,A社ないしD社からの前記ア及びイの実施料収入において,本件発明2の寄与は存在しないものと評 成8年度分ないし平成10年度分のライセンス補償の支払がされていないことからすれば,当時の被告においては,A社ないしD社からの前記ア及びイの実施料収入において,本件発明2の寄与は存在しないものと評価していたことが推認される。 c 加えて,本件においては,被告とA社ないしD社との間の各ライセンス契約(前記(1)ア(ア)ないし(エ))が締結された当時に,A社ないしD社がその製造販売する製品において本件発明2を現に実施していたことを認めるに足りる証拠はない。 この点に関し,原告の陳述書(甲38)中には,D社が製造販売する●(省略)●を原告において検証した結果,●(省略)●において本件発明2が実施されていることが確認された旨の記載部分がある。すなわち,原告は,上記陳述書において,●(省略)●が本件発明2を実施していることが確認できる旨を述べている。 しかしながら,本件発明2の特許請求の範囲の記載(前記争いのない事実等(2)ア(イ))によれば,本件発明2のカナ漢字変換装置は,「前記入力手段より入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記- 113 -文節変換手段に前記入力文節を送り込みこの送り込んだ入力文節に対する前記文節変換手段の変換結果を受け取りこの受け取つた変換結果の第2の文字系列分を出力する変換制御手段」の構成を有するものであり,この「変換制御手段」は,「入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む機能を有するものであるところ,上記陳述書で原告が述べるように,「だい3」という入力が正しく「第3」に変換されたということからは,「●(省略)●」に数詞文節を変換する手段が存在し, 文節を送り込」む機能を有するものであるところ,上記陳述書で原告が述べるように,「だい3」という入力が正しく「第3」に変換されたということからは,「●(省略)●」に数詞文節を変換する手段が存在し,かつ,変換制御手段が入力文を数詞文節変換手段に送り込む機能を有していることは認め得るとしても,その際,当該変換制御手段が,「入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別し」たことが明らかとなるものではない。 したがって,原告の上記陳述書の記載部分から,「●(省略)●」における「変換制御手段」が本件発明2の「入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む機能を備えていることを認めることはできないから,D社の製造販売する製品において本件発明2が実施されていることを認めることはできない。 d 以上のaないしc及び前記(ア)bの諸事情を総合考慮すると,被告が,●(省略)●から支払を受けた平成8年度分の実施料収入合計●(省略)●円及びA社ないしD社から支払を受けた平成9年度分の実施料収入合計●(省略)●円のうち,本件発明2の寄与度に相当する部分の額は,それぞれ●(省略)●に当たる額,すなわち,平成8年度分については●(省略)●円,平成9年度分については●(省略)●円と認めるのが相当である。 - 114 -また,被告が●(省略)●から支払を受けたものと認められる平成10年度の実施料収入合計●(省略)●円のうち,本件発明2の寄与度に相当する部分の額については,平成10年度(平成10年4月1日から平成11年3月31日)において本件特許権2が存続していた期間が約6か月(平成10年4月1日から同年9月25日まで)であることを考慮し,上記● 分の額については,平成10年度(平成10年4月1日から平成11年3月31日)において本件特許権2が存続していた期間が約6か月(平成10年4月1日から同年9月25日まで)であることを考慮し,上記●(省略)●に2分の1を乗じた●(省略)●に当たる額,すなわち,●(省略)●円と認めるのが相当である。 オ小括以上によれば,被告がA社ないしD社との間の各ライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益(実施料)の額は,次のとおりと認められる。 (ア) 本件発明1についてa 平成8年度分 ●(省略)●円b 平成9年度分 ●(省略)●円c 合計 ●(省略)●円(イ) 本件発明2についてa 平成8年度分 ●(省略)●円b 平成9年度分 ●(省略)●円c 平成10年度分 ●(省略)●円d 合計 ●(省略)●円(3) 被告が包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額についてア被告は,前記(1)ア(オ)ないし(ク)のとおり,E社ないしH社との間で,ワードプロセッサを含む製品に関して,双方が保有する多数の特許発明等の実施を相互に包括的に許諾し合う包括クロスライセンス契約を締結しており,このうち,E社ないしG社との契約では●(省略)●とされ,H社- 115 -との契約では●(省略)●ものとされている。 このような包括クロスライセンス契約においては,相互に無償で実施を許諾する特許発明等とそれが均衡しないときに支払われる実施料の額が総体として相互に均衡するものと考えられるので,被告が自己の保有する特許発明等の実施を相手方に許諾することによって得た利益を算定するに当たっては,相手方が被告の当該特許発明等を実施することにより,本来被告が相 互に均衡するものと考えられるので,被告が自己の保有する特許発明等の実施を相手方に許諾することによって得た利益を算定するに当たっては,相手方が被告の当該特許発明等を実施することにより,本来被告が相手方から支払を受けるべきであった実施料相当の利益及び現実に支払われた実施料収入の額を基準とすることは,合理的な算定方法の一つであると解される。 ところで,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約は,いずれも,●(省略)●のみならず,●(省略)●(E社及びG社との契約の場合)や●(省略)●(F社及びH社との契約の場合)をも含む広範な製品に係る特許発明等のすべてを対象とするものであり,その特許発明等の数は極めて多数に及ぶことが推認される。 一般に,このような多数の特許発明等を対象とする包括クロスライセンス契約の締結交渉においては,双方が保有するすべての特許発明等について,逐一,その技術的価値,実施の有無などを相互に評価し合うことは不可能又は著しく困難であることから,相互に一定件数の相手方が実施している可能性が高い特許や技術的意義が高い基本特許を相手方に提示し,これらの提示特許に相手方の製品が抵触するかどうか,当該特許の有効性及び実施品の売上高等について協議することにより,提示特許のうち相手方製品との抵触性及び有効性が確認された代表特許と対象製品の売上高を比較考慮し,更に,互いに保有する特許の件数,出願中の特許の件数等も比較考慮するなどして,包括クロスライセンス契約におけるバランス調整金の要否などの条件が決定されるのが通常である。 したがって,上記のような代表特許は,包括クロスライセンス契約にお- 116 -いて多大な貢献をしているものといえる。 また,代表特許や提示特許でないものであっても,包括クロスライセンス契 したがって,上記のような代表特許は,包括クロスライセンス契約にお- 116 -いて多大な貢献をしているものといえる。 また,代表特許や提示特許でないものであっても,包括クロスライセンス契約の対象に含まれ,かつ,その契約締結時に相手方によって実施されていたものと認められる特許については,当該包括クロスライセンス契約の締結に一定の寄与をしているものと認めるのが相当であり,その特許の実施許諾により本来相手方から支払を受けるべきであった実施料相当の利益の額を考慮して,「使用者等が受けるべき利益の額」を算定すべきものといえる。 これに対して,代表特許や提示特許ではなく,相手方が実施するものとも認められない特許であって,包括クロスライセンス契約の対象に含まれる多数の特許のうちの一つであるという以上の貢献を認めるべき特段の事情も認められない特許については,実質的には,当該包括クロスライセンス契約の締結に対し有意な貢献をしたものとみることはできないから,当該包括クロスライセンス契約において,「その発明により使用者等が受けるべき利益」が存するものとはいえないというべきである。 以上を前提に,被告がE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額について検討する。 イ被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約のいずれについても,その契約締結の交渉において,本件各発明が相手方に提示されたり,代表特許として扱われたとの事実を認めるに足りる証拠はない。 そこで,E社ないしH社において,平成8年度ないし平成10年度当時,本件各発明を実施していたかどうかについて検討する。 (ア) 本件発明1についてa(a) 乙44は,E社が製造し,平成8年10月ころに発売した日本語ワードプロセッサ「 度ないし平成10年度当時,本件各発明を実施していたかどうかについて検討する。 (ア) 本件発明1についてa(a) 乙44は,E社が製造し,平成8年10月ころに発売した日本語ワードプロセッサ「●(省略)●」について,●(省略)●である。 乙44によれば,①乙44記載のワードプロセッサは,●(省略)- 117 -●②乙44記載のワードプロセッサにおいては,●(省略)●。 (b) 上記(a)の認定事実によれば,乙44のワードプロセッサ(●(省略)●)においては,●(省略)●ら,上記のとおり改行キーを押して同音異義語の変換結果を一つの単語に確定させることによって,当該単語には優先権が付与されているものといえる。 そして,乙44のワードプロセッサにおいては,同音異義語の中で優先権が付与された単語を,その後に同一のカナが入力されて変換キーが押された場合に,自動的に出力させてディスプレイに表示させているものといえる。 そうすると,乙44のワードプロセッサは,カナ漢字変換結果及び同音異義語を表示するデイスプレイ装置と,同音異義語の中の1単語に優先権を付与するための入力手段と,上記優先権が付与された単語を記憶する記憶手段と,同音異義語が生じた場合に上記記憶手段に優先権の付与された単語があるかどうかを調べる手段とを備え,上記記憶手段に優先権の付与された単語が存在する場合に,その1単語を自動的に選択する機能を有しているといえるから,本件発明1の特許請求の範囲(前記争いのない事実等(2)ア(ア))の構成をすべて充足するものと認められる。 (c) これに対し,被告は,本件発明1は,いわゆる「短期学習」の機能(ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能)を実現する一つの実施態様に関する発明であり,JW-10の開発 ) これに対し,被告は,本件発明1は,いわゆる「短期学習」の機能(ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位に表示する機能)を実現する一つの実施態様に関する発明であり,JW-10の開発当時に「暫定辞書」と呼ばれた,短期学習専用の特別の辞書領域を用いることを技術的特徴とし,ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,他には何もしない方式であるのに対し,乙44記載のワードプロセッサは,「短期学習」の機能を有しているが,本件発明1のように短期- 118 -学習専用の特別の辞書領域を用いる方式とは異なり,「辞書テーブル」(漢字及び熟語をその読み及び使用順序情報と対応させて収容したテーブル)そのものを更新する方式(K1発明の方式)を採用し,ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,その直前(前々回)に選択した同音異義語を優先順位の第2位で表示するということを繰り返し,同じ読みの語について,無限個(ないし同音異義語と同数)の優先権を付与しておき,より直近で選択された同音異義語が,より高順位で表示されるようにしているものであるから,本件発明1の技術的範囲に属さない旨主張する。 しかしながら,前記1(1)ア(エ)認定のとおり,本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書1においては,本件発明1の「この手段により優先権が付与された単語を記憶する記憶手段」の構成について,特に限定する記載は存在せず,これを被告が主張する「暫定辞書」のようなものに限定して解釈すべき根拠となる記載も存在しないし,また,本件発明1をユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,他には何もしない方式のものに限定する記載も示唆もない。 したがって,本件発明1の上記「記憶手段」には,ユー また,本件発明1をユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,他には何もしない方式のものに限定する記載も示唆もない。 したがって,本件発明1の上記「記憶手段」には,ユーザーが直近に選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,次順位以降の選択候補についてより直近で選択された同音異義語を,より高順位で表示する機能を持つものも含まれると解すべきである。 また,被告は,上記のような機能を持つものが本件発明1の技術的範囲に含まれると解釈すると,本件特許1には,先願発明であるK1発明との関係でダブルパテントの無効理由が存在することになるから,本件発明1の技術的範囲については,ユーザーが直近に- 119 -選択した同音異義語を優先順位の第1位で表示し,かつ,他には何もしない方式のものに限定解釈すべきである旨主張する。 しかしながら,K1発明は,前記1(2)ウ(オ)b記載の特許請求の範囲のとおりものであって,「テーブル検索手段により検索された漢字又は熟語が同音異種の複数の候補を持つ場合に,これらの候補を順次前記表示部で表示し」,「入力カナコードに対応する同音異種の漢字又は熟語が存在する場合に最も近い時点で使用された漢字又は熟語から優先して表示する」構成を備えるものではあるが,他方で,K1発明は,オペレータが「入力手段」によって一度優先権をつけて特定の単語を指定すれば,以後,「記憶手段」と「記憶手段に優先権の付与された単語が存在するかどうかを調べる手段」との間で「自動的に」当該特定の単語(1単語)の選択が行われ,オペレータの介在を要せずに自動的な選択がされるという本件発明1の技術的思想(前記1(1)ア(ウ))に係る構成は備えていない。 このように,本件発明1は,少なくとも優先権の付与された特定の れ,オペレータの介在を要せずに自動的な選択がされるという本件発明1の技術的思想(前記1(1)ア(ウ))に係る構成は備えていない。 このように,本件発明1は,少なくとも優先権の付与された特定の単語の選択動作が自動的に行われる点において,K1発明とは異なる構成を有するものであって,本件発明1とK1発明とが同一の発明といえないことは明らかであるから,被告の主張するようなダブルパテントの無効理由が存在することにはならない。 以上によれば,乙44記載のワードプロセッサが本件発明1の技術的範囲に属さないとの被告の上記主張は,採用することができない。 (d) 以上によれば,E社は,平成8年ころに販売していた自社製のワードプロセッサ(乙44記載のワードプロセッサ)において本件発明1を実施していたものと認められる。 - 120 -b 次に,証拠(乙43,50,51)及び弁論の全趣旨によれば,被告において,シャープ株式会社(以下「シャープ」という。)が製造し,平成9年3月ころに発売した日本語ワードプロセッサ「書院 WD-C10」(乙43),MS社が制作し,平成8年11月ころに発売した日本語入力ソフトウェア「MS-IME97」がインストールされたパソコン(乙50),●(省略)●が制作し,●(省略)●(乙51)を使用して,それぞれの動作を確認する試験を実施したところ,上記各ワードプロセッサ等の動作状況は,おおむね前記a(a)の乙44記載のワードプロセッサの場合と同様のものであったことが認められる。 そうすると,上記の各ワードプロセッサ及び日本語入力ソフトウェアについても,前記a(b)で述べたことがそのまま当てはまるものといえるから,乙44記載のワードプロセッサと同様に,本件発明1が実施されていたものと認められる。 c さらに,証拠( 入力ソフトウェアについても,前記a(b)で述べたことがそのまま当てはまるものといえるから,乙44記載のワードプロセッサと同様に,本件発明1が実施されていたものと認められる。 c さらに,証拠(乙9,43,44,50,51)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) E社製のワードプロセッサ「●(省略)●」シリーズ及びシャープ製のワードプロセッサ「書院」シリーズは,いずれも,昭50年代半ばころに販売が開始され,以後,継続的に販売されてきたワードプロセッサ専用機の●(省略)●である。例えば,平成8年度ないし平成10年度におけるワードプロセッサ専用機の市場における占有率をみると,「●(省略)●」シリーズは,●(省略)●を占め,「書院」シリーズは,標準価格30万円未満のパーソナルワープロ分野において,いずれの年度もシェア第1位であり,数量ベースにして20.1%から25.9%を占めている。 (b) MS社製の日本語入力ソフトウェア「MS-IME」●(省略)- 121 -●日本語入力ソフトウェア●(省略)●である。 (c) 我が国におけるワードプロセッサ専用機の普及の経過をみると,昭和53年に被告が第1号機である「JW-10」を発表して以降,昭和56年ころまでの間に多数のメーカーが市場に参入し,その後,昭和60年ころまでの間に大企業を中心にビジネス分野での普及が進み,さらに,昭和60年以降は,中小企業への普及が進むとともに,パーソナル型の機器が多数販売されるようになり,個人への普及も進んでいった。 d 以上のaないしcの認定事実を総合すれば,本件発明1は,我が国のワードプロセッサ専用機の市場において,昭和50年代半ばころから継続的に販売され,それぞれシェアの相当部分を占める二つの代表的な機種(「●(省略)●」シリー 事実を総合すれば,本件発明1は,我が国のワードプロセッサ専用機の市場において,昭和50年代半ばころから継続的に販売され,それぞれシェアの相当部分を占める二つの代表的な機種(「●(省略)●」シリーズ及び「書院」シリーズ)のいずれにおいても実施されていること,●(省略)●(「MS-IME」●(省略)●)においても実施されていることが認められる。 このような広範囲にわたる本件発明1の実施の事実に加え,本件発明1の技術的思想は,ワードプロセッサ等におけるカナ漢字変換システムの実用化には不可欠なものといえる同音異義語の効率的な選択を実現するものであり,その構成も比較的単純で汎用性の高い技術であることを考慮すると,本件発明1は,ワードプロセッサ等におけるカナ漢字変換システムの実用化に当たって,これを実施することが回避し難い基本的な技術に係る発明であるものと評価することができる。 そして,このような評価は,本件発明1が,A社ないしD社との間の各ライセンス契約においても,具体的に限定された対象特許の一つとして,あるいは,包括的なライセンス契約において,契約交渉の中で具体的に提示され,契約書においても明示的に列挙された特許の一- 122 -つとして扱われている事実(前記(2)エ(ア))及び被告においても上記各ライセンス契約から得られた実施料収入の相当部分を本件発明1の寄与によるものと評価している事実(前記(2)エ(ア)c)からも裏付けられるものといえる。 e 上記dの認定事実によれば,F社ないしH社が製造販売するワードプロセッサをも含めた広い範囲のワードプロセッサ製品においても,E社製品と同様に,本件発明1が実施されていることが推認される。 また,その実施の時期についても,証拠上確認される平成8年ころ以降の製品に限られるものではな 範囲のワードプロセッサ製品においても,E社製品と同様に,本件発明1が実施されていることが推認される。 また,その実施の時期についても,証拠上確認される平成8年ころ以降の製品に限られるものではなく,少なくとも前記c(c)のようなワードプロセッサ専用機の普及の経過からみて,既に日本語ワードプロセッサが一般的に普及していたものと認められる各包括クロスライセンス契約が締結された時期(●(省略)●)の製品においても,本件発明1が実施されていたことが推認される。 f 以上によれば,本件発明1については,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約の締結時に,E社ないしH社の各製品において実施されていたものと認められる。 (イ) 本件発明2について本件においては,E社ないしH社がその製造販売するワードプロセッサ等において本件発明2を実施していたことを認めるに足りる証拠はない。 この点に関し,原告の陳述書(甲38)中には,E社製のワードプロセッサ「●(省略)●」及びシャープ製のワードプロセッサ「書院 WD-M500」並びにMS社製の日本語入力ソフトウェア「MS-IME95」●(省略)●を原告において検証した結果,本件発明2が実施されていることが確認された旨の記載部分がある。 しかしながら,前記(2)エ(イ)cにおいて述べたところと同様に,原- 123 -告の上記陳述書の記載部分から,上記のワードプロセッサ及びソフトウェアにおける変換制御手段が,本件発明2の「入力された文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別しこの判別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む機能を備えていることを認めることはできないから,E社ないしH社の製造販売する製品において本件発明2が実施されていることを認め 別された文節の種類に対応する前記文節変換手段に前記入力文節を送り込」む機能を備えていることを認めることはできないから,E社ないしH社の製造販売する製品において本件発明2が実施されていることを認めることはできない。 (ウ) 小括以上のとおり,本件発明1については,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約において,代表特許や提示特許とされた事実は認められないものの,各包括クロスライセンス契約の対象に含まれ,かつ,その契約締結時に相手方によって実施されていたことが認められるものといえるから,前記アで述べたとおり,各包括クロスライセンス契約の締結に一定の寄与をしているものと認めるのが相当である。 他方,本件発明2については,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約において,代表特許や提示特許とされた事実も,相手方において実施されていた事実も認められないものであるから,各包括クロスライセンス契約の締結への寄与を認めることはできず,被告において本件発明2により受けるべき利益が存在するものとはいえない。 ウ(ア) 上記イのとおり,本件各発明のうち,本件発明1については,被告とE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約において被告が同発明により受けるべき利益の存在を認めることができるところ,前記アで述べたとおり,上記利益の額は,上記各包括クロスライセンス契約の相手方が本件発明1を実施することにより,本来,被告が相手方から支払を受けるべきであった実施料の額に基づいて算定することがで- 124 -きるものといえる。 そこで,被告が,本件発明1の実施を上記各包括クロスライセンス契約の相手方に許諾した場合に,本来,相手方から支払を受けるべき実施料の額について検討するに,このような実施料の額は,本来的 いえる。 そこで,被告が,本件発明1の実施を上記各包括クロスライセンス契約の相手方に許諾した場合に,本来,相手方から支払を受けるべき実施料の額について検討するに,このような実施料の額は,本来的には,当該発明の価値や実際の取引実例等の諸般の事情を考慮して,当該発明に係る相当な実施料率を認定し,これに相手方における当該発明の実施品の売上高を乗ずるなどして算出することが必要であるといえる。 しかしながら,本件においては,上記各包括クロスライセンス契約の相手方における本件発明1の実施品の売上高等を示す証拠がないから,上記のような算定は行えないこと,原告において,これらの証拠を収集,提出することが著しく困難であることからすると,この点について,原告に過度の立証責任を負わせるのは相当でなく,本件に顕れた証拠等から認め得る事実を前提に,可能な限り合理性のある推認を働かせるなどして,上記実施料の額を算定することも許されるものというべきである。 (イ) しかるところ,本件においては,①被告が,●(省略)●との間で,日本語ワードプロセッサを対象製品,これに関係する被告保有の特許を対象特許とし,●(省略)●が被告に所定の実施料を支払うことを内容とする各ライセンス契約を締結していること(前記(1)ア(ア)ないし(ウ)),②これらの各ライセンス契約において,本件発明1は,具体的に限定された対象特許のうちの一つ,あるいは,包括的なライセンス契約において,契約交渉の中で具体的に提示され契約書においても明示的に列挙された特許の一つとして扱われるなどしており,これらの契約の締結に相応の貢献をしたものといえること(前記(2)エ(ア)a(b)),③被告は,上記各ライセンス契約に基づき,●(省略)●から,平成8年度に係る実施料として,合計●(省略)●円の支払を らの契約の締結に相応の貢献をしたものといえること(前記(2)エ(ア)a(b)),③被告は,上記各ライセンス契約に基づき,●(省略)●から,平成8年度に係る実施料として,合計●(省略)●円の支払を受けていること(前記- 125 -(2)ア(ア)),④被告が原告へのライセンス補償金を支払うに当たって行った評価等によれば,●(省略)●からの平成8年度分の実施収入合計●(省略)●円のうち,本件発明1の寄与度に相当する部分の額は,約●(省略)●%に相当する●(省略)●円であるといえること(前記(2)エ(ア)d),⑤平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場における各社の製品の市場占有率は,●(省略)●の製品の合計が約10%,E社ないしH社の製品の合計が約40ないし45%であること(前記(1)イ)がそれぞれ認められる。そして,●(省略)●が,いずれもE社ないしH社と同様に,ワードプロセッサ専用機を製造,販売していたメーカーであることからすると,●(省略)●が被告に支払った平成8年度の実施料合計のうち本件発明1の寄与度に相当するものと認められる部分の額とその当時のワードプロセッサ専用機市場における●(省略)●の製品の市場占有率との関係に基づいて,E社ないしH社が被告から本件発明1の実施を許諾された場合に被告に支払うべき実施料の額を算定することにも,相応の合理性があるものということができる。 すなわち,一般に,特許発明のライセンス契約に基づく実施料の額は,当該発明の実施品の売上高に所定の実施料率を乗ずるものとして定められるものであり,支払われる実施料の額は,当該実施品の売上高に比例するのが通常である。しかるところ,前記のとおり,平成8年度及び平成9年度におけるワードプロセッサ専用機市場における●(省略)●の製品の市場占有 り,支払われる実施料の額は,当該実施品の売上高に比例するのが通常である。しかるところ,前記のとおり,平成8年度及び平成9年度におけるワードプロセッサ専用機市場における●(省略)●の製品の市場占有率が約10%であることからすると,●(省略)●は,平成8年度に市場全体の10%に相当するワードプロセッサを売り上げ,これに対応する実施料として合計●(省略)●円を被告に支払ったものであり,そのうちの●(省略)●円が本件発明1の寄与度に相当する部分の額であると認められるものといえる。 - 126 -そして,これを基礎として,E社ないしH社が被告から本件発明1の実施を許諾された場合に被告に支払うべき実施料の額を算定するに,本件発明1を実施してワードプロセッサ市場全体の10%に相当するワードプロセッサを売り上げた場合の1年間当たりの実施料額を●(省略)●円と算定することができること,他方,平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場におけるE社ないしH社の製品の市場占有率は約45%と認められること(甲6において,被告は,上記市場占有率を40%ないし45%と推定しているが,ここでは,被告自身による推定値の上限であり,原告にとって最も有利となる45%という数値を採用することとする。)からすると,平成8年度分及び平成9年度分に係る上記実施料の額は,次のとおりと算定される。 a 平成8年分●(省略)●円×45%/10%=●(省略)●円b 平成9年分●(省略)●円×45%/10%×8/12=●(省略)●円なお,上記で8/12を乗じたのは,平成9年度(平成9年4月1日から平成10年3月31日まで)の期間のうち,本件特許1の存続期間(平成9年11月24日まで)が約8か月であることを考慮したものである。 エ(ア) 以上に 乗じたのは,平成9年度(平成9年4月1日から平成10年3月31日まで)の期間のうち,本件特許1の存続期間(平成9年11月24日まで)が約8か月であることを考慮したものである。 エ(ア) 以上によれば,被告がE社ないしH社との間の各包括クロスライセンス契約において本件各発明により受けるべき利益の額は,本件発明1については,平成8年度分が●(省略)●円,平成9年度分が●(省略)●円の合計●(省略)●円であると認められ,他方,本件発明2については,当該利益を認めることができない。 (イ) なお,原告は,被告が,平成8年度ないし平成10年度当時,●(省略)●及びE社ないしH社以外のワードプロセッサ専用機メーカーと- 127 -の間でもワードプロセッサ関連特許に関する包括クロスライセンス契約を締結し,その契約において本件各発明による利益を得ている旨を主張する。 しかしながら,被告がA社ないしH社以外の他社との間で原告が主張する包括クロスライセンス契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 (4) 被告が本件各発明の自社実施により受けるべき利益の額についてア被告による自社実施の有無(ア) 本件発明1について原告は,被告が,平成8年度及び平成9年度当時,自社製のワードプロセッサ専用機において本件発明1を自ら実施することにより,独占的利益を得ていた旨主張する。 これに対し被告は,その当時被告が販売していたワードプロセッサ専用機「トスワード」及び「ルポ」シリーズについて,2機種(JW-6020,JW-8020)を調査したところ,それらのカナ漢字変換システムにおける「短期学習」の実現方式は乙44記載のワードプロセッサと同様のK1発明の採用する方式であることが確認された 種(JW-6020,JW-8020)を調査したところ,それらのカナ漢字変換システムにおける「短期学習」の実現方式は乙44記載のワードプロセッサと同様のK1発明の採用する方式であることが確認されたことを理由に,本件発明1が実施されておらず,そのほかの被告のすべての機種においても本件発明1が実施されていない旨主張する。 しかるところ,乙44記載のワードプロセッサが本件発明1の各構成要件を充足し,本件発明1を実施する製品であると認められることは,前記(3)イ(ア)aにおいて述べたとおりである。 してみると,被告が主張するように,平成8年度及び平成9年度当時に被告が販売していたとされるワードプロセッサ専用機における同音異義語の処理が,被告のいうK1発明の方式を採用しているとの事実- 128 -は,これらの機器において本件発明1が実施されていることを否定する根拠となるものではなく,かえって,乙44記載のワードプロセッサの場合と同様に,本件発明1が実施されていることをうかがわせる事情ということができる。 本件発明1の自社実施を争う被告の主張が以上のようなものであることことに加え,前記(3)イ(ア)d及びeで述べたとおり,本件発明1については,ワードプロセッサ等におけるカナ漢字変換システムの実用化に当たって,これを実施することが回避し難い基本的な技術に係る発明であるものと評価することができ,証拠上確認されるものに限らず,広い範囲のワードプロセッサ製品において実施されていることが推認されるものといえることをも考慮すると,被告は,平成8年度及び平成9年度当時の自社製ワードプロセッサにおいて,本件発明1を実施していたものと認められる。 (イ) 本件発明2について原告は,被告が,平成8年度ないし平成10年度当時,自社製のワードプ び平成9年度当時の自社製ワードプロセッサにおいて,本件発明1を実施していたものと認められる。 (イ) 本件発明2について原告は,被告が,平成8年度ないし平成10年度当時,自社製のワードプロセッサ専用機において本件発明2を自ら実施することにより,独占的利益を得ていた旨主張する。 しかしながら,前記1(2)エ(エ)のとおり,被告の「JW-10」は,乙17の報告書に係る装置をベースとし,更なる改良を加えて商品化されたものであるところ,前記1(3)イ(ア)aで述べたとおり,乙17の報告書においては,当該装置の「自動文節抽出部」が,本件発明2の技術的思想のうちの「変換制御手段」における文節の種類の判別の方法に関する部分,すなわち,「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別する」機能を有することが示されておらず,乙17の報告書に係る装置が本件発明2を実施するものといえないことは明らかである。 - 129 -また,乙17の報告書に係る装置をベースとする「JW-10」の商品化の過程で,当該装置の「自動文節抽出部」が「文節の種類をこの文節を構成する先頭部の単語から判別する」ものに改良されたことをうかがわせる証拠もなく,結局のところ,「JW-10」において本件発明2が実施されているとことを認めるに足りる証拠はないものというほかない。 さらに,その後,被告が製造,販売したワードプロセッサにおいても,平成8年度ないし平成10年度当時のものを含めて,本件発明2が実施されていることを認めるに足りる証拠はない。 この点に関し,原告は,甲38の陳述書に基づき,E社製及びシャープ製の各ワードプロセッサやMS社製●(省略)●日本語入力ソフトウェアにおいて本件発明2が実施されていることが確認されたとして,本件発明2に係る技術は,被 ,甲38の陳述書に基づき,E社製及びシャープ製の各ワードプロセッサやMS社製●(省略)●日本語入力ソフトウェアにおいて本件発明2が実施されていることが確認されたとして,本件発明2に係る技術は,被告の製品を含む大部分のワードプロセッサにおいて実施されてきた旨を主張する。 しかしながら,原告の上記陳述書中の上記主張に沿う記載部分から,上記ワードプロセッサ等において本件発明2が実施されていることを認めることができないことは,前記(3)イ(イ)において述べたとおりである。 したがって,被告が,平成8年度ないし平成10年度当時の自社製ワードプロセッサにおいて,本件発明2を実施していたとの事実は,これを認めることができない。 イ本件発明1の自社実施による独占の利益の有無被告は,本件発明1について,自らこれを実施するとともに,他社に実施許諾をしているところ,このような場合に,当該発明の自社実施について,特許権が存在することにより,その禁止権の効果として,実施許諾をしていない第三者に対して当該発明の実施を禁止したことに基づいて自- 130 -社実施による売上高について超過利益を得ていたとみるべきかどうかについては,個々の事案に応じた判断が必要になる。 前記のとおり,被告は,①●(省略)●との間においては,いずれも本件発明1を対象特許に含むライセンス契約を締結し,所定の実施料の支払を受けていたこと(前記(1)ア(ア)ないし(ウ)),②E社ないしG社との間においては,いずれも本件発明1を対象特許に含む包括クロスライセンス契約を締結し,それぞれが保有する対象特許の実施を●(省略)●許諾し合っていたこと(前記(1)ア(オ)ないし(キ)),③H社との間においては,本件発明1を対象特許に含む包括クロスライセンス契約を締結し,●(省略) れぞれが保有する対象特許の実施を●(省略)●許諾し合っていたこと(前記(1)ア(オ)ないし(キ)),③H社との間においては,本件発明1を対象特許に含む包括クロスライセンス契約を締結し,●(省略)●それぞれが保有する対象特許の実施を許諾し合っていたこと(前記(1)ア(ク))がそれぞれ認められ,また,④平成8年度及び平成9年度当時のワードプロセッサ専用機市場において●(省略)●及びE社ないしH社の製品が占める市場占有率の合計が約50%ないし55%,被告の製品が占める市場占有率が約15%であり,これら以外の他のメーカーの製品が占める市場占有率は約30%ないし35%であったこと(前記(1)イ)が認められる。 他方で,証拠(乙9,43,44)及び弁論の全趣旨によれば,平成8年度及び平成9年度当時には,被告及びA社ないしH社以外に,ワードプロセッサ専用機を製造販売する有力なメーカーとして,●(省略)●が存在していたこと,これらの●(省略)●(以下「●(省略)●」という。)が上記約30%ないし35%の市場占有率の大部分を占めていたものと推認される。 そして,被告が●(省略)●との間で平成8年度及び平成9年度当時に本件特許1についてライセンス契約又は包括ライセンス契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はないから,●(省略)●は被告が本件発明1の実施許諾をしていない第三者に該当するものと認められる。 - 131 -しかるところ,●(省略)●が平成8年度及び平成9年度当時に製造販売していたワードプロセッサにおいては,本件発明1が実施されていたものと認められること(前記(3)イ(ア)b,e)に照らすならば,●(省略)●は,本件特許権1の存在により,本件発明1を実施しなかったものということはできない。 そうすると,被告においては,平 ものと認められること(前記(3)イ(ア)b,e)に照らすならば,●(省略)●は,本件特許権1の存在により,本件発明1を実施しなかったものということはできない。 そうすると,被告においては,平成8年度及び平成9年度当時,本件発明1について,本件特許権1に基づく第三者に対する禁止権の効果として,自社実施による売上高について超過利益を得ていたものとは認められない。 なお,自社が保有する特許権に係る発明を他社が実施していることが判明した場合に,当該特許権者が執る対応としては,相手方に対し自社の特許権を行使し,侵害行為の差止めを求めたり,あるいは,ライセンス交渉を行って何らかのライセンス契約の締結に至るということもあれば,事情によっては,あえて権利行使を行わないこともあり得るものと考えられる。また,いったんは特許権者が権利行使を行い,ライセンス契約が締結されたものの,その後の事情の変化によって,契約が更新されなかったり,解消されるということも考え得る事態といえる。結局のところ,当該特許権者が,現実にいかなる対応を執るのかは,当該製品やこれに関連する製品の市場において自社及び相手方が置かれた立場,自社と相手方との関係,当該製品やこれに関する製品に関して相手方が保有する他の特許の有無,内容やそれと自社製品との関係など,様々な要因によって異なり得るものといえる。このことは,本件発明1をめぐる被告と●(省略)●との関係にも当てはまるものとうかがわれる。 ウ小括以上によれば,本件発明2については,そもそも被告による自社実施の事実が認められず,また,本件発明1については,被告による自社実施の- 132 -事実は認められるものの,それによって被告が法定通常実施権の行使により自己実施することができた分の利益を上回る利益(超過利益)を得 ,また,本件発明1については,被告による自社実施の- 132 -事実は認められるものの,それによって被告が法定通常実施権の行使により自己実施することができた分の利益を上回る利益(超過利益)を得ていたものとは認められないから,結局のところ,被告が本件各発明を自社実施したことによる独占の利益の存在は,これを認めることができない。 (5) まとめ以上を総合すると,本件各発明により被告が受けるべき利益の額は,次のとおりであると認められる。 ア本件発明1について(ア) 平成8年度分 ●(省略)●円(内訳)各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(ア)a)各包括クロスライセンス契約による利益 ●(省略)●円(前記(3)エ(ア))自社実施による超過利益なし(イ) 平成9年度分 ●(省略)●円(内訳)各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(ア)b)各包括クロスライセンス契約による利益 ●(省略)●円(前記(3)エ(ア))自社実施による超過利益なし(ウ) 合計額 ●(省略)●円イ本件発明2について(ア) 平成8年度分 ●(省略)●円(内訳)- 133 -各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(イ)a)各包括クロスライセンス契約による利益なし自社実施による超過利益なし(イ) 平成9年度分 ●(省略)●円(内訳)各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(イ)b)各包括クロスライセンス契約による利益なし自社実施による超過利益なし )●円(内訳)各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(イ)b)各包括クロスライセンス契約による利益なし自社実施による超過利益なし(ウ) 平成10年度分 ●(省略)●円(内訳)各ライセンス契約による実施料 ●(省略)●円(前記(2)オ(イ)c)各包括クロスライセンス契約による利益なし自社実施による超過利益なし(エ) 合計額 ●(省略)●円 3 争点3(被告の貢献度)について(1) 特許法旧35条3項及び4項が,従業者等と使用者等の利害関係を調整する趣旨の規定であることからすると,同条4項の「使用者等が貢献した程度」を判断するに当たっては,使用者等が「その発明がされるについて」貢献した事情のほか,特許の取得・維持やライセンス契約の締結に要した労力や費用,あるいは,特許発明の実施品に係る事業が成功するに至った一切の要因・事情等を,使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した一切の事情として考慮し得るものと解するのが相当である。 そこで,以下において,本件各発明についての被告の貢献に係る事情につ- 134 -いて検討する。 ア本件各発明の前提となる技術の蓄積(ア) カナ文を漢字カナ混じり文に変換するに当たっては,変換のための辞書を整備した上で,形態素解析(対象言語の文法の知識や辞書を情報源として用い,自然言語で書かれた文を意味のある最小の単位である形態素の列に分割し,それぞれの品詞を判別すること)の考え方を用いるなどして,カナ文の中から漢字に変換すべき部分を正確に抽出し,同音異義語の適切な選択を行うことなどが必要となり,これらに係る技術が,カナ漢字変換に関する基礎的な 品詞を判別すること)の考え方を用いるなどして,カナ文の中から漢字に変換すべき部分を正確に抽出し,同音異義語の適切な選択を行うことなどが必要となり,これらに係る技術が,カナ漢字変換に関する基礎的な技術をなすものということができる。 これに対して,本件発明1は,前記1(1)アのとおり,カナ漢字変換システムにおける同音異義語の選択を効率化してオペレータの選択操作上の負担を軽減するもの,また,本件発明2は,前記1(1)イのとおり,変換精度の向上を図るものであって,いずれも上記のようなカナ漢字変換に関する基礎的な技術の存在を前提とし,これを実用化するに当たって生じる種々の技術的問題を解決することを目的とした発明ということができる。 このような本件各発明の位置づけに鑑みれば,カナ漢字変換に関する基礎的な技術は,本件各発明が着想され,成立するに至る前提となるものであり,被告におけるこのような基礎的技術の蓄積は,本件各発明がされるについて,被告の貢献があったことを示す事情ということができる。 (イ) 前記1(2)の認定事実と前記1(2)の冒頭掲記の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次のような事実が認められる。 a 被告は,昭和47年,被告の総合研究所に勤務する研究員であったB1を,被告従業員としての地位を残したまま,その当時自然言語処- 135 -理の研究をしていた京都大学工学部電子工学科のJ1助教授の研究室に派遣した。 B1は,同研究室の研究生として,1年間にわたり,「構文解析システム」をテーマとする研究に従事し,その中で,形態素解析についての研究も行った。 bB1は,昭和48年に被告に復帰したが,その翌年の昭和49年ころから,被告における日本語ワードプロセッサの開発に向けたカナ漢字変換技術についての研究が開始された。 析についての研究も行った。 bB1は,昭和48年に被告に復帰したが,その翌年の昭和49年ころから,被告における日本語ワードプロセッサの開発に向けたカナ漢字変換技術についての研究が開始された。 その中で,B1は,原告とともにこの研究開発作業を担当し,まず,大型計算機を使用して,入力されたカナ文を漢字カナ混じり文に変換していくカナ漢字変換プログラムの作成を行い,上記京都大学への派遣中における形態素解析に関する研究成果に基づいて,昭和50年12月ころまでに上記プログラムを完成させた。 その後,昭和51年3月に,被告社内において,大型計算機とミニコンピュータを併用したカナ漢字変換システムのデモンストレーションが行われた。 c その後,B1は,大型計算機用の上記カナ漢字変換プログラムをミニコンピュータ用に書き換える作業を行い,これを基にして,昭和51年11月ころまでに,乙15の報告書に係る装置が開発されるに至った。 その後,被告は,昭和52年3月,乙15の報告書に示された成果に基づいてミニコンピュータのみを用いたカナ漢字変換装置の試作機を完成した。 (ウ) 上記(イ)のような経過からすると,被告におけるカナ漢字変換技術の研究開発が進められるに当たって,最初に完成した成果物はB1が作成したカナ漢字変換プログラムであり,このプログラムがその後の原告- 136 -等による研究開発作業のベースとなり,本件各発明の着想やその具体化においても,その基礎となる技術をなすものであったことは明らかである。 そして,このようなB1によるカナ漢字変換プログラムの作成が,被告がその負担においてB1を京都大学へ派遣して研究に従事させた際の研究成果に基づくものであることなどからすると,上記のような本件各発明の基礎となった技術の蓄積という点に 字変換プログラムの作成が,被告がその負担においてB1を京都大学へ派遣して研究に従事させた際の研究成果に基づくものであることなどからすると,上記のような本件各発明の基礎となった技術の蓄積という点において,被告の貢献が認められる。 イ被告における研究開発の体制について(ア) 前記1(2)の認定事実と前掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 a 被告におけるカナ漢字変換技術の研究は,昭和49年ころに,被告において「アンダー・ザ・テーブル研究」と呼ばれるもの,すなわち,会社としての正式な研究テーマとなっていない模索過程の研究として開始されたものであるが,当時の被告の総合研究所においては,リソース(人,金,物)の最大20%までを「アンダー・ザ・テーブル研究」に使用することが許されていたものであり(乙9),日本語ワードプロセッサの研究開発においても,B1によるカナ漢字変換プログラムの開発に大型計算機「TOSBAC-5600」の使用が認められるなど,被告による便宜が図られている。 b 昭和51年4月以降は,「カナ漢字変換入力」の研究を含む「日本語処理システムの研究」が,被告における正式な研究テーマとなり,また,そのころからは,B1及び原告に加え,C1が研究開発作業に参加するなど,人的な体制も強化された。 c さらに,昭和52年11月以降になると,カナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサの開発が,被告の総合研究所のみならず,- 137 -青梅工場をも含めた被告の全社的なプロジェクトとなり,人的,物的な研究開発体制がさらに拡充された。 その後,被告は,昭和53年9月に我が国で初めてのカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサ「JW-10」を発表し,昭和54年2月からその販売を開始した。 (イ) 制がさらに拡充された。 その後,被告は,昭和53年9月に我が国で初めてのカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサ「JW-10」を発表し,昭和54年2月からその販売を開始した。 (イ) 以上のような経過によれば,被告におけるカナ漢字変換技術についての研究開発は,各時点における濃淡は認められるものの,研究の開始からJW-10の商品化に至るまで,終始,被告の人員,設備及び予算に基づいて進められてきたものであり,本件各発明の技術的思想の着想とその具体化も,このような体制に基づく研究開発の経過の中で行われたものであることからすると,研究開発体制の整備という点において,被告の貢献が大きいものであることは明らかといえる。 ウ特許の取得について本件各発明の特許提案書の中にある明細書の原案(乙13の2,14の2)を原告が作成したこと以外に,発明者である原告が本件各発明の特許出願の手続やその準備行為に関与したことを認めるに足りる証拠はないことからすると,本件各発明の特許出願等の権利化業務を主に担当したのが被告の特許部門の担当者であることは優にこれを推認することができ,この点は,被告の貢献として評価することができる。 エライセンス契約及び包括クロスライセンス契約の締結について被告は,本件発明1について,A社ないしD社との間で各ライセンス契約を,E社ないしH社との間で各包括ライセンス契約を締結し,これによって,前記2のとおり,本件各発明により利益を得ているものであるところ,被告がこれらの契約をいかなる交渉経過を経て締結したものであるかについては,これを具体的に認め得る証拠がないため,詳細が不明といわざるを得ない。 - 138 -しかしながら,これらの契約の相手方が上記の8社に及ぶものであり,その各契約内容もそれぞれ異なる ついては,これを具体的に認め得る証拠がないため,詳細が不明といわざるを得ない。 - 138 -しかしながら,これらの契約の相手方が上記の8社に及ぶものであり,その各契約内容もそれぞれ異なる多様なものであることからすると,被告が各相手方とこれらの契約を締結するに当たっては,その各交渉に相応の時間と労力を要したであろうこと,また,その中で,被告の正当な利益を確保するためには相応のノウハウと交渉力を要したであろうことは,容易に推察し得るところといえるのであり,この点も,被告の貢献として評価することができる。 オ日本語ワードプロセッサ事業の成功及び拡大について被告がA社ないしH社との間の各ライセンス契約及び各包括クロスライセンス契約において本件発明1により利益を受けるについては,そもそも本件発明1の実施品であるカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサの事業が成功し,拡大していったことがその前提となっているものである。 しかるところ,被告は,昭和54年2月に,我が国で初めてのカナ漢字変換技術を用いた日本語ワードプロセッサであるJW-10の販売を開始し,その後,競業各社が参入して日本語ワードプロセッサに係る事業が確立するに至る基礎を作ったものといえること,更に昭和60年以降になると,パーソナル型の機器が多数販売されるようになり,個人への普及も進んで,日本語ワードプロセッサの市場が拡大されていったところ,このようなパーソナル型の機器が普及するに当たっては,昭和60年に被告が販売を開始した「ルポ」シリーズの存在が寄与しているものといえること(乙9,43,44,57)などの事情を考慮すれば,被告は,日本語ワードプロセッサ事業の成功及び拡大に相当程度の貢献をしたものであり,この点も,被告の貢献として評価することが可能である。 いえること(乙9,43,44,57)などの事情を考慮すれば,被告は,日本語ワードプロセッサ事業の成功及び拡大に相当程度の貢献をしたものであり,この点も,被告の貢献として評価することが可能である。 (2) 以上で認定した事情のほか,本件各発明の内容及びその技術的意義,本件各発明の完成に至る経過及び「JW-10」の商品化の過程における原告- 139 -の関与の状況,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件各発明に関する被告の貢献度は,いずれも93%と認めるのが相当である。 4 争点4(原告が支払を受けるべき相当の対価の額)について以上を前提として,本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,原告が被告から支払を受けるべき額を算定すると,次のとおりである。 (1) 本件発明1についてア本件発明1について,その発明者が被告から支払を受けるべき相当の対価の額は,●(省略)●円である。 (計算式)●(省略)●円(前記2(5)ア(ウ))×7%(100%-93%(前記3(2)))イ共同発明者間における原告の貢献割合前記1(3)アで認定したとおり,本件発明1は,原告,B1及びC1の3名による共同発明と認められるので,これら共同発明者間における原告の貢献割合について検討するに,前記1(3)ア(イ)で述べた事情,すなわち,本件発明1は,被告におけるカナ漢字変換技術の開発経過の中で,終始原告が担当してきた領域に属する技術に係るものであり,本件発明1の技術的思想を着想し,これを具体化するに当たっては,原告がその中心的な役割を果たしたものと認められること,他方,B1及びC1が本件発明1の技術的思想の着想又はその具体化に関して果たした役割として認められるのは,両名共同して暫定辞書プログラムを作成することにより, な役割を果たしたものと認められること,他方,B1及びC1が本件発明1の技術的思想の着想又はその具体化に関して果たした役割として認められるのは,両名共同して暫定辞書プログラムを作成することにより,本件発明1に係る一部の構成を実機において実現し,その技術的思想の具体化の一部に関与したにとどまることを総合考慮すると,原告,B1及びC1の共同発明者間における原告の貢献割合は,70%と認めるのが相当である。 ウ既払額の控除原告は,被告規程等に基づき,本件発明1について,平成8年度分及び- 140 -平成9年度分の実績補償及びライセンス補償として,合計23万5400円(前記争いのない事実等(5)ア(エ))の支払を受けているので,この既払額を控除する必要がある。 エ以上によれば,本件発明1の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,原告が被告から支払を受けるべき額は,●(省略)●円(●(省略)●円×70%-23万5400円)である。 なお,上記相当の対価の額の年度ごとの利益に対応した内訳は,次のとおりである。 (ア) 平成8年度分a 相当の対価の額 ●(省略)●円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)ア(ア))×7%×70%b 既払額 7万円(前記争いのない事実等(5)ア(ア)の合計額)c 差引額 ●(省略)●円(イ) 平成9年度分a 相当の対価の額 ●(省略)●円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)ア(イ))×7%×70%b 既払額 16万5400円(前記争いのない事実等(5)ア(イ)及び(ウ)の合計額)c 差引額 ●(省略)●円(2) 本件発明2についてア本件発明2について,その発明者が被告から支払を受けるべき相当の対価の額は,●(省略)●円 5)ア(イ)及び(ウ)の合計額)c 差引額 ●(省略)●円(2) 本件発明2についてア本件発明2について,その発明者が被告から支払を受けるべき相当の対価の額は,●(省略)●円である。 (計算式)●(省略)●円(前記2(5)イ(エ))×7%なお,前記1(3)イで認定したとおり,本件発明2は,原告の単独発明と認められるので,共同発明者間の貢献割合を考慮する必要はない。 - 141 -イ既払額の控除原告は,被告取扱規定等に基づき,本件発明2について,平成8年度分及び平成9年度分の実績補償として,合計2万7500円(前記争いのない事実等(5)イ(エ))の支払を受けているので,この既払額を控除する必要がある。 ウ以上によれば,本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,原告が被告から支払を受けるべき額は,●(省略)●円(●(省略)●円-2万7500円)である。 なお,上記相当の対価の額の年度ごとの利益に対応した内訳は,次のとおりである。 (ア) 平成8年度分a 相当の対価の額 ●(省略)●円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)イ(ア))×7%b 既払額 2500円(前記争いのない事実等(5)イ(ア))c 差引額 ●(省略)●円(イ) 平成9年度分a 相当の対価の額 ●(省略)●円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)イ(イ))×7%b 既払額 2万5000円(前記争いのない事実等(5)イ(イ))c 差引額 ●(省略)●円(ウ) 平成10年度分a 相当の対価の額 3万5000円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)イ(ウ))×7%b 既払額なしc 差引額 3万5000円- 142 - 平成10年度分a 相当の対価の額 3万5000円(計算式)●(省略)●円(前記2(5)イ(ウ))×7%b 既払額なしc 差引額 3万5000円- 142 - 5 争点5(消滅時効の成否)について(1) 被告は,原告の被告に対する本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権のうち,被告の平成8年度の実施料収入に係る分(前記4(2)ウ(ア)の●(省略)●円の相当対価請求権)については,その支払期日の翌日である平成9年10月25日から10年が経過したことにより,消滅時効が完成している旨主張する。 そこで検討するに,前記争いのない事実等(4)のとおり,被告においては,従業員による職務発明に係る相当の対価について,一定の期間ごとに,当該発明に係る特許の実施を第三者に許諾して得られた実施料収入に応じた額を,ライセンス補償として当該従業員に支払う旨が定められているところ,このような場合には,職務発明に係る相当の対価のうち,各期間における実施料収入に対応する分については,その期間に応じて被告規程等で定められた支払期日が到来することによって初めて,当該従業員から被告への支払請求が可能となるのであるから,上記の支払期日の翌日が,各期間における実施料収入に係る相当対価請求権の消滅時効の起算点となるものと解するのが相当である。 しかるところ,前記争いのない事実等(4)ウで述べたとおり,被告においては,平成8年度を対象とする実施料収入に係るライセンス補償については,平成9年10月の給与支払日である同月24日が支払期日とされていたことが認められるから,原告の被告に対する本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権のうち,被告の平成8年度の実施料収入に係る分については,平成9年10月25日からその 期日とされていたことが認められるから,原告の被告に対する本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権のうち,被告の平成8年度の実施料収入に係る分については,平成9年10月25日からその時効期間が進行し,原告が本訴を提起した平成19年12月7日の前である同年10月24日の経過をもって10年の時効期間が満了したものと認められる。 (2)アこれに対し原告は,平成19年9月14日に本件通知書が被告に到達した後の原告と被告との間の和解交渉においては,交渉の対象となる相当- 143 -対価請求権が本件発明1に係るものに限定されないことが当然の前提として了解されていたという経過があることなどを理由として,被告が本件発明2に係る相当対価請求権について消滅時効を援用することは信義則に反する旨主張する。 そこで検討するに,原告が被告に対し送付した平成19年9月14日到達の本件通知書(甲8の1)によれば,原告は,同通知書において,本件発明1を明示して,これについての職務発明に係る相当の対価を請求していることが認められ,更に原告は,その後6か月以内に本訴を提起しているから,本件発明1に係る相当対価請求権については,民法153条及び149条の時効中断事由が存するものと認めることができる。 しかしながら,原告が前記第3の5(2)アにおいて主張するような本訴提起前における原告と被告との交渉経過の存在を前提としても,これによって,当該交渉の対象とされる相当対価請求権が本件発明1に係るものに限定されず本件発明2をも含むものであることが,原告と被告との間で当然の前提として了解されていたとの事実を認めることはできない。他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。 この点に関し,原告は,本件通知書において,本件発明1を特定して記載するに当たり,「 間で当然の前提として了解されていたとの事実を認めることはできない。他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。 この点に関し,原告は,本件通知書において,本件発明1を特定して記載するに当たり,「下記登録発明を含む発明」とされていること及び被告代理人が原告代理人に交付した2007年9月18日付けの文書(甲41)において,本件特許権1を明示するに当たり,「特許第1280689号等」とされていることを上記主張の根拠として指摘するが,これらの文書の記載全体を詳しく見ても,上記の各記載部分が本件発明1以外の発明に係る相当対価請求権が原告と被告との間の交渉の対象とされていた事実を直ちにうかがわせるだけの意味を持つものとはいえない。 イ以上のとおりであるから,被告の消滅時効援用を信義則違反とする原告の主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。 - 144 -(3) 以上によれば,原告の被告に対する本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当対価請求権●(省略)●円(前記4(2)ウ)のうち,被告の平成8年度の実施料収入に係る分●(省略)●円については,消滅時効が完成し,本訴における被告による時効の援用によって消滅したものと認められる。 したがって,本件において,原告が被告に対し,本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として請求し得る額は,●(省略)●円(●(省略)●円-●(省略)●円)である。 6 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,643万0489円(前記4(1)エと前記5(3)の合計額)及び内金343万2021円(前記4(1)エ(ア)c)に対する平成9年10月25日(平成8年度分のライセンス補償の支払期日の翌日)から,内金296万3468円(前記4(1)エ(イ)cと同(2)ウ(イ)cの合計額)に対する 円(前記4(1)エ(ア)c)に対する平成9年10月25日(平成8年度分のライセンス補償の支払期日の翌日)から,内金296万3468円(前記4(1)エ(イ)cと同(2)ウ(イ)cの合計額)に対する平成10年10月24日(平成9年度分のライセンス補償の支払期日の翌日)から,内金3万5000円(前記4(2)ウ(ウ)c)に対する平成11年10月26日(平成10年度分のライセンス補償の支払期日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 - 145 - 裁判官石神有吾

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