令和6(行ケ)10056 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年12月1日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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令和7年12月1日判決言渡令和6年(行ケ)第10056号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和7年9月24日判決 原告株式会社エイ・アイ・シー 同訴訟代理人弁護士錦織 淳同新阜直茂 被告エスキー工機株式会社 同訴訟代理人弁護士河部康弘同藤沼光太同訴訟代理人弁理士齋藤昭彦 同齋藤博子 主文 1 特許庁が無効2023-890069号事件について令和6年5月13日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、次の商標について、令和元年9月13日、登録出願をしたが(商 願2019-121373号)、令和2年9月15日付け拒絶理由通知書の送付を受けた。上記拒絶理由通知書に記載された理由は、上記登録出願に係る商標は、後記⑹の引用商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法4条1項11号に該当する、との内容であった。(甲1) ア商標の構成ゴミサー(標準文字)イ指定商品及び指定役務第7類生ゴミ処理機、化学機械器具第40類生ゴミ処理機の貸与、化学機械器具の貸与 ⑵ 被告は、上記 ア商標の構成ゴミサー(標準文字)イ指定商品及び指定役務第7類生ゴミ処理機、化学機械器具第40類生ゴミ処理機の貸与、化学機械器具の貸与 ⑵ 被告は、上記⑴の出願に係る商標法10条1項の規定による出願(分割出願)として、令和3年6月23日、次の商標(以下「本件商標」という。)について登録出願し、同年7月9日に商標登録を受けた(登録番号第6414447号)。(甲1)ア商標の構成 ゴミサー(標準文字)イ指定役務(以下「本件指定役務」という。)第40類生ゴミ処理機の貸与、化学機械器具の貸与ウ登録出願日令和3年6月23日エ登録査定日令和3年7月2日 オ商標登録日令和3年7月9日⑶ 原告は、令和5年8月、本件商標について商標登録無効審判を請求した(無効2023-890069号。以下「本件無効審判」という。)。 ⑷ 特許庁は、令和6年5月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月23日に原告 に送達された。 ⑸ 原告は、令和6年6月19日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 ⑹ 原告は、本件無効審判において、本件商標の登録は、商標法4条1項11号、同項15号及び同項7号に違反してされたものであるから、同法46条1項1号により無効にすべきものであると主張した。原告が、本件商標の登 録の無効の理由として引用した商標(以下「引用商標」という。)は、原告が登録を受けている商標であり、その構成等は以下のとおりである。(甲42、45)ア商標の構成ゴミサー(標準文字) イ指定商品(以下「引用指定商品」という。)第7類生ゴミ処理機、液体 る商標であり、その構成等は以下のとおりである。(甲42、45)ア商標の構成ゴミサー(標準文字) イ指定商品(以下「引用指定商品」という。)第7類生ゴミ処理機、液体肥料製造装置ウ登録番号第5769618号エ登録出願日平成27年1月19日オ登録査定日平成27年5月22日 カ商標登録日平成27年6月5日 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由の要旨は以下のとおりである。 ⑴ 商標法4条1項11号についてア本件商標と引用商標は、外観上同一のものであり、「ゴミサー」の称呼を 共通にすることから、これらは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼を共通にするものであるから、両者は、相紛れるおそれのある同一又は類似の商標である。 イ商品又は役務の類否は、商品又は役務が通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、その類否を判断する両商標に係る 指定商品又は指定役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業 主の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるかにより判断し、その際には、例えば、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、商品と役務の用途が一致するかどうか、商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうかを総合 的に考慮し判断するのが相当である。 「生ゴミ処理機の貸与」と「生ゴミ処理機」の一般的、恒常的な取引の実情において、貸与と商品の販売とは、流通形態を異にするものであり、また、商品の貸与を業とする者は、当該商品の製造・販売業者ではなく、リース又はレンタルする事業者であることが 一般的、恒常的な取引の実情において、貸与と商品の販売とは、流通形態を異にするものであり、また、商品の貸与を業とする者は、当該商品の製造・販売業者ではなく、リース又はレンタルする事業者であることが一般的であるといえる。なお、 仮に当該商品の製造・販売業者がリース等の業務も行っていたとしても、前記のとおりそれが一般的、恒常的な取引の実情とはいえず、「生ゴミ処理機」の製造、販売する事業者とそれをリース又はレンタルする事業者が必ずしも一致するとはいえない。また、前記商品と役務の用途については、「生ゴミ処理機の貸与」は、他人の求めに応じて物品を貸与することが当 該役務の本質であるといえることから、その用途は、「生ゴミ処理機の貸与のため(用)」であるのに対し、「生ゴミ処理機」の用途は、正に生ゴミを処理・分解するための商品そのものであるから、必ずしも用途が一致するとはいえない。 製造・販売する事業者がリース又はレンタルする事業者と同じであると はいえないことからすると、必ずしも商品の販売場所と役務の提供場所が一致するとはいえない。 なお、前記商品と役務の需要者の範囲については、いずれも「生ゴミ処理機」を使用する者であるから、需要者の範囲は共通する。 ウ上記イによれば、本件指定役務中の「生ゴミ処理機の貸与」と引用指定 商品中の「生ゴミ処理機」については、それらの製造・販売者及び提供者、 用途、販売場所及び提供場所が異なり、需要者の範囲において一致する場合があるとしても、一般的、恒常的な取引の実情を勘案して総合的に考慮すると、当該役務と商品とは相違するものである。 そうすると、両商標の指定商品及び指定役務は、両者に同一又は類似の商標を使用しても、それらの商品及び役務が誤認混同するおそれのない非 類似の商品及び と、当該役務と商品とは相違するものである。 そうすると、両商標の指定商品及び指定役務は、両者に同一又は類似の商標を使用しても、それらの商品及び役務が誤認混同するおそれのない非 類似の商品及び役務といわざるを得ない。 ⑵ 商標法4条1項15号についてア請求人(原告)が提出した甲2及び甲3によれば、「ゴミサー」の商標(引用商標)を付した生ゴミ処理機(以下「原告商品」という。)は、請求人のホームページ等で紹介、販売されたことはうかがわれる。 しかし、我が国における引用商標を使用した原告商品の売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績を客観的に把握できず、我が国における引用商標を使用した原告商品の広告宣伝についても、具体的な広告宣伝活動の内容は明らかでなく、広告宣伝規模を具体的に示す証拠は提出されていないから、引用商標を使用した原告商品が、我が国の需要者にどの程度認識 されているのか把握、評価することができない。 その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が我が国の需要者に広く知られていたことを認めるに足りる証拠の提出はなく、引用商標の周知性を認め得る事情は見いだせない。 イ上記⑴アのとおり、本件商標と引用商標の類似性は高いといえるものの、 上記アのとおり、引用商標は、原告商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたものとは認められず、上記⑴イのとおり、本件指定役務と引用指定商品とは、事業者、用途、販売場所(提供場所)が異なるものであるから、両者の関連性の程度は低い。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用 するとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を想起又は 連想するということはできず、本件商標の指定役務が請求人又はこれと業務 標は、商標権者がこれをその指定役務について使用 するとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を想起又は 連想するということはできず、本件商標の指定役務が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。 ⑶ 商標法4条1項7号について上記⑵アのとおり、引用商標は、原告商品を表示するものとして、本件商 標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く認識されていたとはいえないものであるから、被請求人(被告)による本件商標の使用が、その周知性に便乗するものであるのか必ずしも明らかではない。 また、本件商標の登録出願の経緯は必ずしも明らかでなく、本件商標権者(被告)が、請求人(原告)の事業活動に便乗又は阻害するような具体的な 行為に及んだことを示す具体的な証拠を見いだせないから、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を著しく欠く、又は本件商標をその指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般道徳観念及び国際信義に反するとまで認めるに足りない。 そうすると、被請求人が仮に引用商標を知りながら本件商標の登録出願に 及んでいたとしても、それだけで、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような事情があったとまでは認められず、公の秩序又は善良の風俗を害するような事情があるともいえない。 その他、本件商標は、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他 人に不快な印象を与えるものでなく、また、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。 ⑷ 以上のとおり、本件商標は 商標は、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他 人に不快な印象を与えるものでなく、また、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。 ⑷ 以上のとおり、本件商標は、商標法4条1項11号、同項15号及び同項7号のいずれにも該当しない。 3 取消事由 ⑴ 取消事由1 商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り⑵ 取消事由2商標法4条1項15号該当性についての判断の誤り⑶ 取消事由3商標法4条1項7号該当性についての判断の誤り 第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ア原告が原告商品をエンドユーザーである顧客に実質的に「販売」する方法としては、次の二つの方法がある。 ① 原告が顧客と直接売買契約を締結し、顧客に商品を直接引き渡す方法② 顧客がリースを希望する場合は、原告と提携する特定のリース会社を介在させることとし、(ア)原告と当該リース会社との間の売買契約及び(イ)顧客と当該リース会社との間のリース契約を同時に締結する方法イ上記ア①、②のいずれを選択するかは、エンドユーザーである顧客が、 その資金繰りその他の事情によって判断するものであり、取引の実質において差異はない。②の場合は、間にリース業者を介在させ、表面的・形式的に当該リース業者が顧客に「リース(貸与)」する形式をとるだけであり、リース業者の信用を介在させる点で金融取引的には異なるものの、①と②の経済的機能は同一である。リース契約は、リース会社、商品の製造・販 売会社及びユーザー(顧客)の三者間における三面契約が不可分一体となったものであり、単なる賃貸借とみることは妥当でなく、リース会社による金融 である。リース契約は、リース会社、商品の製造・販 売会社及びユーザー(顧客)の三者間における三面契約が不可分一体となったものであり、単なる賃貸借とみることは妥当でなく、リース会社による金融を介在させた製品等の売買がその実質であるとみるべきである。 ウ被告がその製造する生ゴミ処理機に「ゴミサー」の商標を付して顧客に直接販売することは、原告が引用商標について有する商標権を侵害するこ ととなる。 他方、被告がエンドユーザーの顧客に販売するに当たりリース業者を介在させる場合、これは顧客の便宜に応じた便法にすぎない。現実問題として、介在するリース業者の注文に応じて生ゴミ処理機を被告の工場から出荷するに当たり、その段階で「ゴミサー」の商標を付して出荷し、これについて、「販売」ではなく「貸与」の補助作業を行っているにすぎないと強 弁するか、あるいは、出荷に際しては「ゴミサー」の商標を付さず、エンドユーザーの顧客の使用現場に至ってからこの商標を付すことによって「貸与に当たっての使用である」と強弁することが考えられるが、「販売」と「貸与(リース)」が異なる事業者によるものであることをもって、このような脱法行為を看過することは許されない。 ⑵ 本件審決は、「リース」と「レンタル」を「貸与」という概念で一括りにしているが、リースとレンタルは一般的・恒常的な取引の実情において全く別のものである。そして、前記⑴イの三面契約における取引全体がリース事業なのであり、言い換えれば、リース事業はリース業者が単独で行うものではなく、製造・販売業者もリース業者と協同してリース取引を事業として行う ものである。したがって、本件審決のように、リース取引における事業の概念を「製品の貸与」と「製造・販売」に峻別し、リース業者による貸与の 売業者もリース業者と協同してリース取引を事業として行う ものである。したがって、本件審決のように、リース取引における事業の概念を「製品の貸与」と「製造・販売」に峻別し、リース業者による貸与のみがリース取引であるかのように論じることは誤りである。 本件審決は、用途の不一致及び提供場所の不一致も述べているが、これらも、リース取引の全体を一体として考察せず、「貸与」と「製造・販売」を分 けて論じていることに起因する誤りである。 そして、リース取引の実体を分析すれば、商標が意味をもつのは、顧客による選択の場面である。すなわち、当該商標の有する顧客吸引力を必要とし、これを利用するのは製造・販売業者であって、リース業者ではない。 以上のとおり、被告は、生ゴミ処理機の製造・販売業者として業務を遂行 するに当たり、リース業者を介さずに直接にこれを顧客に提供する場合のほ か、リース取引、すなわちリース事業遂行においてリース業者を介して顧客にこれを提供する場合も本件商標を使用しているのであり、リース事業はリース業者のみが単独で行っており、製造・販売業者はこれに関与していないかのごとき誤った前提に立脚し、請求不成立とした本件審決は、商標法4条1項11号の解釈適用を誤ったものである。 本件審決のような論理を用いれば、製造・販売業者は顧客に製品を直接売却して提供する場合には本件商標の使用が許されないが、顧客の希望によりリース業者を介在させて顧客にこれを提供した場合には当該商標の使用が許されるという、はなはだ不合理な結果が生じる。 ⑶ かつては、製造したものは「販売」するのが常識であり、主流であって、 「販売」と「貸与」は判然と区別されていたが、特殊な製品についての市場のみで「販売」と「貸与(レンタル)」がほぼ互角に併存し かつては、製造したものは「販売」するのが常識であり、主流であって、 「販売」と「貸与」は判然と区別されていたが、特殊な製品についての市場のみで「販売」と「貸与(レンタル)」がほぼ互角に併存していた。たとえば、それは建設機械等にみられる。これらは概して高額である一方、耐久性に優れていることから、「販売」ではなく「貸与」も流通・使用における主流を占めていた。これらの建設機械は高額であることから、多くの中小事業者にと っては、これを「購入」して導入することを躊躇する。他方、これらの機械は一般的に耐久性に優れているから繰り返し使用・利用することが可能である。これらのことから、建設機械等については、導入に当たって購入ではなく貸与を受ける方式が多用されるようになり、このような「貸与」の市場が有力なものとして成立した。建設機械については、「販売」と「貸与」を併存 させる企業が多数存在する(甲66~69[枝番含む])。 建設機械についで、このような「販売」と「貸与」に積極的であったのは、事務機器、OA機器等の製造・販売業界である(甲72~74)。 そして、SDGsが主流になるにつれて流通形態は激変しつつある。有限な地球資源をいかに守っていくかが人類共通の普遍的課題として認識、理解 されるようになってから、大量に生産して大量に売ればよいとの古典的考え 方の問題性が理解されるようになり、「貸与」ないし「リ・ユース」の重要性が認識されるようになった。 現在では、多種多様な業界・製品につき、「貸与」に力を入れる企業が出てきている。たとえば、「生活関連レンタル・リース業界の会社・企業一覧」(甲75)の最初に出てくる企業17社をピックアップしてみると、いずれも「レ ンタル」と「販売」を併用している(甲80)。 また、「オフ とえば、「生活関連レンタル・リース業界の会社・企業一覧」(甲75)の最初に出てくる企業17社をピックアップしてみると、いずれも「レ ンタル」と「販売」を併用している(甲80)。 また、「オフィス家具をレンタルできるおすすめ会社16選」(甲81)に掲載されている企業は、特定の業種・商品に捉われることなく、あらゆる分野について「製造・販売業者と消費者・利用者をつなぐプラットフォーム」専門業者たらんとしている。「生ゴミ処理機」業界につき「Rentio」と いうプラットフォーム業者があるが(甲64、乙6)、そのような特定の商品に限られない。このような「プラットフォーム」業者は、単に「所有から利用へ」の流れに乗るだけでなく、「RenttoOwn」、「利用してから購入できる」という選択肢を一様に用意している。ここでは、「借りる」、「返せる」、「買える」の三つの選択肢を消費者・利用者に与えている。このよう なビジネスモデルは、生ゴミ処理機に限らずあらゆる製品について「貸与から購入へ」という選択肢を与えることが一つの主眼である。 製造・販売業者自体が上記のごときプラットフォームを自ら開発・採用している例もある。その具体例は、オフィス家具の分野にみられる(甲81、83)。 さらに、上記のごとき動きを一層加速させ、流通における新たなビジネスモデルの構築・発展を後押ししているのは、「サブスクリプション」というビジネスモデルである。これはもともと一定期間定額料金を支払うことで音楽や動画の配信サービスの提供を受けるビジネスモデルとして始まったが、これがあらゆる製品・サービスに広がりつつある。特定の製品・商品とこの「サ ブスクリプション」取引が結びつくとき、それは実質的にみて「貸与」とい ってよい。そして、この「サブ まったが、これがあらゆる製品・サービスに広がりつつある。特定の製品・商品とこの「サ ブスクリプション」取引が結びつくとき、それは実質的にみて「貸与」とい ってよい。そして、この「サブスクリプション」取引の途中で、この製品を買い受けることができるようにするビジネスモデルは、前記「RenttoOwn」と同じものである。 〔被告の主張〕⑴ 原告自身が指摘するとおり、通常のリースの仕組みは、リース会社とメー カーが売買契約を締結し、リース会社と顧客とがリース契約を締結するものである。すなわち、商品を製造販売する事業者がメーカーで、貸与という役務を提供する事業者がリース会社であるというように、商品役務の提供主体が異なっている。このように、通常のリースの仕組みを考えても、製造販売とリースを同一の事業者が行うのが一般的であるとはいえない。 このようなリースの仕組みは、原告の販売する生ゴミ処理機でも同様である。甲49、50及び51の1・2においても、原告商品の製造販売は原告、生ゴミ処理機の貸与という役務の提供はリース会社であるから、これらの商品役務は類似しない。 上記のとおり、生ゴミ処理機の製造販売と貸与を別の事業者が行っている 実情によれば、当該商品役務の需要者が同一であったとしても、商品役務の誤認混同は生じない。 原告が主張する「脱法行為」が行われたとすれば、それは原告の有する販売についての商標権に基づき商標権侵害訴訟を提起して、実質的には販売についての商標権の侵害行為であるとの認定を受ければよく、商品と貸与(リ ース)の役務とを類似と解すべき理由にはならない。 ⑵ 原告は、SDGsの普及や社会の変化を背景として、「販売」と「貸与」の垣根が取り払われつつあるという、極めて一般的かつ抽象的な主張 (リ ース)の役務とを類似と解すべき理由にはならない。 ⑵ 原告は、SDGsの普及や社会の変化を背景として、「販売」と「貸与」の垣根が取り払われつつあるという、極めて一般的かつ抽象的な主張を展開し、このような一般論のみを根拠として、指定商品「生ゴミ処理機」と指定役務「生ゴミ処理機の貸与」が類似すると主張する。しかし、原告の主張は、商 品役務の類否判断において最も重要な考慮要素であるべき「生ゴミ処理機」 の取引社会における具体的な流通の実情を無視したものであり、失当である。 原告は、建設機械、事務機器、家具等の業界において販売と貸与が併用されている多数の事例を挙げる。しかし、これらの業界と「生ごみ処理機」の業界とでは、製品の特性、価格、主要な需要者層等の取引の実情が全く異なる。取引実態の異なる他の業界の事例は、本件指定役務と引用指定商品との 類否判断の参考とならない。 原告は、「所有から利用へ」、「RenttoOwn」、「サブスクリプション」といった現代的なビジネスモデルや社会のキーワードを挙げることで、あたかも「販売」と「貸与」が一体不可分のものであるかのような印象を与えようと試みている。しかし、商標法4条1項11号の類否判断は、このよ うな抽象的な社会的流れによって左右されるものではなく、あくまで当該商品・役務の具体的な取引において、その提供主体が通常同一であるかどうか、また、そうであると需要者が誤認混同するおそれがあるか否かによって判断されるべきである。原告の主張は、具体的な取引実態の検討をせずに、一般論に終始するものであって、商品役務の類否判断の参考とならない。 仮に、「生ゴミ処理機」と「生ゴミ処理機の貸与」との商品役務の類否判断において、原告が主張するような一般的傾向が参酌されると 論に終始するものであって、商品役務の類否判断の参考とならない。 仮に、「生ゴミ処理機」と「生ゴミ処理機の貸与」との商品役務の類否判断において、原告が主張するような一般的傾向が参酌されるとしても、ある製品について「販売」と「貸与」が併用されることから、直ちに商品の製造業者と役務の貸与業者の主体が同一であることにはならない。原告が挙げるレンタル・リース業界の会社自体が、商品の製造業者とは別に、レンタルやリ ースを専門に行う事業者が多数存在することの証左にほかならない。 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性についての判断の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は、概ね①引用商標に周知性がない、及び②本件指定役務と引用指定商品とは、事業者、用途、販売場所(提供場所)が異なるものであるから、 両者の関連性の程度は低い、との二つの根拠により、商標法4条1項15号該 当性を否定する判断をしている。 しかし、①については、原告と被告の生ゴミ処理機の販路はほぼ共通、競合しており、とりわけ原告と被告は、もともと原告が長らく被告の製造する生ゴミ処理機の販売権を一手に有している関係にあったから、市場において両者の混同が生じることは明らかである。 また、②については、前記1〔原告の主張〕で詳述したとおり、本件審決が前提とするところは、あくまで一般論・形式論にすぎないから、本件においては失当である。 〔被告の主張〕本件審決は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が原 告商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないと判断したが、原告は周知性について補充する主張も立証もしておらず、引用商標は、原告の商標として周知ではなく、本件商標と引用商標を誤 我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないと判断したが、原告は周知性について補充する主張も立証もしておらず、引用商標は、原告の商標として周知ではなく、本件商標と引用商標を誤認混同するおそれはない。 また、前記1〔被告の主張〕のとおり、「生ゴミ処理機」と「生ゴミ処理機の 貸与」は、商品役務が類似しない以上、需要者が、商品又は役務の出所を混同することはない。 3 取消事由3(商標法4条1項7号該当性についての判断の誤り)について〔原告の主張〕商標法4条1項7号該当性に関する本件審決の判断は、原告が審判段階で主 張した本件に係る具体的事情、すなわち、①被告と原告の取引経緯(取引開始の経緯、取引開始後の経緯と原告の全面的販売貢献及び原告の販売網への全面的依存、被告の業績悪化と度重なる原告への支援要請)、②被告の更新期間徒過による「ゴミサー」の商標権消滅と原告による(再)登録(被告の更新期間徒過による商標権消滅、被告代表者への連絡・抗議と原告自身による「ゴミサー」 の商標の(再)登録)、③その後の推移、という、極めて特異な経緯を正しく理 解しないものである。 もともと本件商標に係る出願は、第7類と第40類の登録出願であったものを、第7類が認められないことから第40類の分割出願としてされたものである(前記第2の1⑴、⑵)。 被告は、自らが更新期間徒過により消滅させた第7類の商標権につき原告が 代わって登録することにより多大な恩恵を受けておきながら、自己の身勝手な都合で原告との生ゴミ処理機の供給契約を一方的に打ち切り、いわば自業自得に陥ったものであるにもかかわらず、第40類につき「ゴミサー」の商標を脱法的に取得せんとしたものである。 このような本件商標を登録することは、著しく信義誠実 給契約を一方的に打ち切り、いわば自業自得に陥ったものであるにもかかわらず、第40類につき「ゴミサー」の商標を脱法的に取得せんとしたものである。 このような本件商標を登録することは、著しく信義誠実の原則に反し、公序 良俗に反するものである。 〔被告の主張〕被告が第7類の「ゴミサー」の商標権を更新期限徒過により消滅させてしまったのは事実であるが、原告が代わって登録することにより被告が多大な恩恵を受けた事実はない。被告が商標権を失ったことを奇貨として、原告が商標権 の登録を受けただけである。実際、原告は、被告を相手に商標権侵害訴訟を提起している。 また、被告が、自己の身勝手な都合で原告との生ゴミ処理機の供給契約を一方的に打ち切った事実もない。一代理店にすぎない原告が、メーカーである被告の許可もなく、あたかも被告の商品のメーカーであるかのように展示会に出 展するなどしたため、被告は、そのようなことをするなら「ゴミサー」の名称を使用しないでほしいと伝えた(乙3)だけである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性に関する判断の誤り)について⑴ 本件指定役務と引用指定商品の類否について ア判断基準 ある商標の指定商品と他の商標の指定役務とが類似のものであるかどうかは、それらの商品及び役務が通常同一営業主により製造、販売又は提供されている等の事情により、それらの商品と役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判 断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。 イ商品の販売と貸与に関 ると認められる関係があるか否かによって判 断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。 イ商品の販売と貸与に関する取引の実情各項末尾に記載した証拠及び弁論の全趣旨によれば、建設機械の販売及び貸与に関する取引の実情として、以下の事実が認められる。 (ア) 住友建機販売株式会社のウェブサイトには、同社が製造した建設機械に関し、「お客様サポート」の見出しの下、「SUPPORT 01」の箇所に、「購入サポート」と「レンタル」の両方の記載があり、「レンタル」の箇所には、「取扱拠点」に関する記載及び「レンタル機器補償制度について」の記載が存在する。また、住友建機販売株式会社の目的には、 「建設機械、運搬機械の製造、販売、賃貸ならびにその部品の販売修理」が含まれている。(甲66の1・2、67)(イ) 日立建機株式会社のウェブサイトには、「会社概要」の見出しの下、「事業目的」の箇所に「建設機械・運搬機械及び環境関連製品等の製造・販売・レンタル・アフターサービス」との記載がある。(甲68の1) (ウ) 太陽建機レンタル株式会社のウェブサイトには、「会社概要」の見出しの下、「事業概要」の箇所に「運搬機械の製造・修理・販売・レンタル並びに輸出入業務」及び「公害防止機械器具、仮設資材のレンタル並びに販売業務」の記載がある。(甲70)(エ) 日本建機サービス販売株式会社のウェブサイトには、「COMPAN Y 会社案内」の見出しの下、「会社概要」の箇所の「主な事業内容」の 項に「建設機械・仮設資材・仮設ハウス・仮設トイレのレンタルおよび販売、修理」の記載がある。(甲71)ウ検討(ア) 上記イに挙げた事実によれば、建設機械に の箇所の「主な事業内容」の 項に「建設機械・仮設資材・仮設ハウス・仮設トイレのレンタルおよび販売、修理」の記載がある。(甲71)ウ検討(ア) 上記イに挙げた事実によれば、建設機械について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取 引の実情があると認められる。 (イ) 上記イ(ア)ないし(エ)に掲記した証拠のうち、甲66の1・2、68の1、70及び71は、上記イ(ア)ないし(エ)で認定したウェブサイトの画面を印刷したものであるが、原告の令和7年7月16日付け証拠説明書⑹に記載された上記各証拠の「作成年月日」欄の記載によれば、上記ウ ェブサイトの画面は令和7年6月27日時点のもの(甲66の1・2、68の1、70)又は同年5月12日時点のもの(甲71)であり、本件商標の登録査定日である令和3年7月2日より後に表示されていた画面を印刷したものである。 しかし、上記イ(ア)ないし(エ)に挙げた会社は、いずれもその設立は、 本件商標の登録査定日よりもかなり前であり(甲67、68の1、70、71)、同登録査定日より後にこれらの会社が建設機械の貸与を業務として行うようになったとはうかがわれないから、これらの会社は、同登録査定日の時点においても建設機械の貸与を行っていたと推認されるところである。したがって、本件商標の登録査定がされた時点で、建設機械 について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情があると認めることができる。 (ウ) 商標法施行規則6条及び同規則別表によれば、「土木機械器具」が、商標法施行令2条及び同施行令別表による商品及び役務の区分の第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に ウ) 商標法施行規則6条及び同規則別表によれば、「土木機械器具」が、商標法施行令2条及び同施行令別表による商品及び役務の区分の第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に属 する商品とされており、建設機械は第7類に属する商品であると認めら れる。 引用指定商品「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」も、第7類に属するものであるから、引用指定商品と建設機械は同じ第7類に属する商品である。 (エ) 以上のとおり、引用指定商品と同じ第7類に属する建設機械について、 その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情がある。これに加え、複写機、プリンター等の出力機器や事務用機器等の商品を取り扱う会社においても、会社の目的に商品の販売と貸与の両方を挙げる会社が複数存在する(甲72~74。なお、被告も、会社の目的に「産業用機械器具の製造、販売及び賃 貸」が含まれている[弁論の全趣旨]。)。機械に商標を使用する者がその機械の貸与も行っていることは、通常、特に意外なこととまではいえず、むしろ、予想し得る範疇のことといえる。また、本件指定役務の需要者は生ゴミ処理機を使用する者であり、引用指定商品の需要者も、その多くは、生ゴミ処理機を使用する者であると推認されるから、双方の需要 者は多くの部分で共通する。 これらの事情を考慮すれば、本件指定役務と引用指定商品に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるということができる。したがって、本件指定役務と引用指定商品は類似する ものと認められる。 ⑵ 本件商標と引用商標との比較本件商標は、「ゴミサー」の文字を標準文字で表 認められる関係があるということができる。したがって、本件指定役務と引用指定商品は類似する ものと認められる。 ⑵ 本件商標と引用商標との比較本件商標は、「ゴミサー」の文字を標準文字で表してなる商標であり、引用商標も、「ゴミサー」の文字を標準文字で表してなる商標であるから、本件商標と引用商標は同一である。 ⑶ 商標法4条1項11号該当性について 上記⑴及び⑵のとおり、本件商標と引用商標は、商標が同一であり、かつ、本件指定役務と引用指定商品が類似しているから、本件商標は、その登録出願の日前の登録出願に係る他人の登録商標である引用商標と同一であって、その商標登録に係る指定商品に類似する役務について使用するものであり、本件商標は商標法4条1項11号に該当する。本件商標は、同法46条1項 1号により無効にすべきこととなる。 ⑷ 被告の主張に対する判断被告は、前記第3の1〔被告の主張〕のとおり、建設機械の業界と「生ゴミ処理機」の業界とでは、製品の特性、価格、主要な需要者層等の取引の実情が全く異なり、取引実態の異なる他の業界の事例は、本件指定役務と引用 指定商品との類否判断の参考とならないなどと主張する。 しかし、生ゴミ処理機の業界と建設機械の業界の間に相違点があるとしても、建設機械は、引用指定商品と同じ第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に属する商品であることからすれば、建設機械に関する取引の実情を考慮に入れることを不当とすることはできない。 また、生ゴミ処理機の業界において、同一の商標がその商品と貸与の役務に使われても、同一営業主のものと誤認されるおそれがないほどに、製造、販売者と貸与者が明確に区別されて需要者に認識されていることを示すといえる証拠もない。 いて、同一の商標がその商品と貸与の役務に使われても、同一営業主のものと誤認されるおそれがないほどに、製造、販売者と貸与者が明確に区別されて需要者に認識されていることを示すといえる証拠もない。 したがって、被告の上記主張は採用することができず、その他、被告の主 張する内容を検討しても、上記⑴ないし⑶の認定及び判断は左右されない。 ⑸ 取消事由1に関する結論以上によれば、本件商標が商標法4条1項11号に該当するとは認められないとの本件審決の判断は誤りであり、取消事由1は理由がある。 2 結論 以上のとおり、取消事由1は理由があり、本件審決にはこれを取り消すべき 違法がある。 よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則

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