平成29(ラ)4 文書提出命令に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月30日 福岡高等裁判所 宮崎支部 鹿児島地方裁判所 平成28(モ)66
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判決文本文4,700 文字)

平成29年(ラ)第4号文書提出命令に対する即時抗告事件(原審・鹿児島地方裁判所平成28年(モ)第66号。基本事件・鹿児島地方裁判所平成27年(ワ)第737号) 主文 1 原決定を取り消す。 2 別紙目録記載の準文書についての相手方らの文書提出命令の申立てを却下する。 理由 第1 抗告の趣旨主文同旨。 第2 当裁判所の判断 1 事案の概要本件は,鹿児島県警察所属の警察官5名が,Aに対して違法な制圧行為を行い,これによりAを死亡させたとして,Aの父母であり相続人である相手方ら(基本事件原告ら)が,鹿児島県(基本事件被告)に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求訴訟を提起したところ,相手方らが,別紙目録記載の準文書(以下「本件準文書」という。)の提出を求める文書提出命令の申立てをし,原審が,鹿児島地方検察庁検察官(以下「保管検察官」という。)に対し,その提出を命ずる決定をしたのに対し,保管検察官の保管に係る準文書の所持者である抗告人が,これを不服として,別紙「即時抗告理由書」中の第2及び第3に各記載のとおり主張して即時抗告を申し立てた事案である。 2 認定事実下記のとおり補正するほか,原決定「理由」中「第2 事案の概要」の3に記載のとおりであるからこれを引用する。 3頁12行目ないし18行目を次のとおり改める。 本件制圧行為の状況については,その一部始終を撮影したビデオ映 像が存在する。同ビデオ映像に係る記録媒体は,鹿児島県警察警察官が差し押さえ,鹿児島地方検察庁に送付されている。相手方らは,同ビデオ映像に係る記録媒体について,いわゆる「B」というドキュメンタリー番組を作成するためにテレビ 係る記録媒体は,鹿児島県警察警察官が差し押さえ,鹿児島地方検察庁に送付されている。相手方らは,同ビデオ映像に係る記録媒体について,いわゆる「B」というドキュメンタリー番組を作成するためにテレビ局又は番組制作会社(以下「テレビ局等」という。)が撮影したものであり,これに基づいて作成され,刑事関係書類として同検察庁検察官が保管する電磁的記録を本件準文書として特定している。」 4頁12行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 なお,本件制圧行為が行われた現場は,繁華街に位置しており,本件制圧行為を行う警察官らの直近に,歯が折れて顔面が血だらけとなり,意識がもうろうとした状態になっていたC(Aを被疑者とする傷害被疑事件の被害者。),Cの同僚,Aを制止したりなだめたりしていたD(偶然現場に居合わせた目撃者。)がいたほか,現場付近に不特定多数の野次馬が参集し,騒然としていた。」 3 判断当裁判所は,本件準文書が民訴法220条3号所定の利益文書又は法律関係文書に該当するか否かに関わりなく,本件準文書の提出を拒否した保管検察官の裁量的判断が,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであるとは認められないから,抗告人に対しその提出を命じるのは相当でないと判断した。 以下,その理由を示す。 認定事実及び一件記録によれば,本件準文書は,本件刑事公判に提出されなかった「訴訟に関する書類」であるから,刑事判決確定後であっても刑訴法47条の適用を受けるところ,同条本文が「訴訟に関する書類」を公にすることを原則として禁止しているのは,それが公にされることにより,被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーが侵害されたり,公序良俗が害されることになったり,又は捜査,刑事裁判が不当な影響を受けたりするな どの弊害が発生するのを が公にされることにより,被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーが侵害されたり,公序良俗が害されることになったり,又は捜査,刑事裁判が不当な影響を受けたりするな どの弊害が発生するのを防止することを目的とするものであること,同条ただし書が,公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合における例外的な開示を認めていることにかんがみると,同条ただし書の規定による「訴訟に関する書類」を公にすることを相当と認めることができるか否かの判断は,当該「訴訟に関する書類」を公にする目的,必要性の有無,程度,公にすることによる被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーの侵害等の上記の弊害発生のおそれの有無等諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり,当該「訴訟に関する書類」を保管する者の合理的な裁量にゆだねられているものと解すべきである。そして,民事訴訟の当事者が,民訴法220条3号の規定に基づき,刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても,当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重されるべきであるが,当該文書が利益文書又は法律関係文書に該当する場合であって,その保管者が提出を拒否したことが,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであると認められるときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当である(最高裁平成16年5月25日第三小法廷決定・民集58巻5号1135頁参照)。 そこで検討すると,基本事件において,本件制圧行為の態様及び本件制圧行為時のAの状態や具体的言動に関する当事者双方の主張が対立しているところ,本件 小法廷決定・民集58巻5号1135頁参照)。 そこで検討すると,基本事件において,本件制圧行為の態様及び本件制圧行為時のAの状態や具体的言動に関する当事者双方の主張が対立しているところ,本件準文書は,相手方らの主張によれば本件制圧行為の状況をビデオ撮影により直接記録した電磁的記録(以下「原本」という。)の音声画像を鮮明に補正したものというのであるから,原本に次ぐ高い証拠価値を有するものといえる。 しかし,本件制圧行為の態様及び本件制圧行為時のAの状態や具体的言動 は,本件警察官らのみならず,偶然居合わせた目撃者らが目撃しており,その供述調書等も提出されていることも考慮すると,本件準文書の取調べが必要不可欠なものとはいえない。 他方,本件準文書は,相手方らの主張を前提にすれば,報道機関であるテレビ局等が取材のためにビデオ撮影した電磁的記録を捜査機関が差し押さえ,音声画像が鮮明になるように補正した複製物ということであり,実質的には同一の取材内容が記録されていると評価できるから,仮に保管検察官において,テレビ局等の意思に反して一方的にこれを原審裁判所に提出した場合,テレビ局等が有する報道の自由ないし取材の自由を侵害するおそれが高いと認められる(一件記録によっても,上記取材結果について,テレビ局等が自らこれを放映する等して公開した事実はうかがわれないから,テレビ局等が上記取材結果を公開する意思を有しているとは認められないし,捜査機関以外の第三者に提供して,捜査・公判目的以外の用途に供することを承諾していたことをうかがわせる事情もない。)。 この点は,たとえ上記取材が鹿児島県警察の協力及び許可に基づいてなされたものであり,かつ,その取材映像を差し押さえることが報道の自由ないし取材の自由を不当に制約するものでないか否かにつ 。)。 この点は,たとえ上記取材が鹿児島県警察の協力及び許可に基づいてなされたものであり,かつ,その取材映像を差し押さえることが報道の自由ないし取材の自由を不当に制約するものでないか否かについて司法審査を経たものであっても,テレビ局等が取材に際し,捜査機関が取材映像を報道以外の目的に用いることを予め許容していたとは到底言えないし,令状裁判官が差押え対象電磁的記録につき捜査以外に用いられることを前提とした審査をしたものとは考えられないから,基本的に異なるところはない。テレビ局等の取材が鹿児島県警察の協力及び許可に基づいて行われたという経緯は,鹿児島県警察による差押えの可否を判断する上では取材の自由が妨げられる程度や将来の取材の自由が受ける影響を一定程度低下させる意味を持つ事情と評価できないではないが,差押えの可否の問題と差押後の取材用電磁的記録の原審裁判所への提出の当否の問題は同列に論じられない。テレビ局等が,取 材映像の差押えにつき,甘受し,あるいは一定の協力の姿勢を示していたとしても,当該取材映像がテレビ局等に無断で捜査・公判目的以外に用いられることがあれば,当該テレビ局等との信頼関係を失わしめ,ひいては報道機関の協力を得て行われる将来の同種事件の捜査全般に支障を来すおそれがあるというべきである。 また,たとえ犯罪被害者への対応として検察官が非公開の捜査資料である本件準文書に基づいて相手方らに事実関係を説明したことがあったとしても,本件準文書がいまだ非公開の捜査資料であることに変わりはなく,上記判断を左右する事情にはならない。 認定事実及び一件記録によれば,本件準文書には,歯が折れて顔面が血だらけとなり,意識がもうろうとした状態になっていたC,Cの同僚,Aを制止したりなだめたりしていたDらの容貌や言動が記録されて 。 認定事実及び一件記録によれば,本件準文書には,歯が折れて顔面が血だらけとなり,意識がもうろうとした状態になっていたC,Cの同僚,Aを制止したりなだめたりしていたDらの容貌や言動が記録されている可能性が高いほか,不特定多数の野次馬の容貌や言動も記録されている可能性があるから,仮に保管検察官が本件準文書を提出した場合,上記の者らの尊厳や名誉及びプライバシーが害されるおそれも否定できない。 ⑸ 以上のとおり,基本事件において本件準文書を取り調べる必要性があることは認められるが,取調べの必要性が高いとは必ずしもいえない一方,本件準文書が開示されることにより,テレビ局等の報道の自由ないし取材の自由が侵害されるおそれ,基本事件の当事者ではない多数の者の尊厳や名誉及びプライバシーが侵害されるおそれ,テレビ局等と捜査機関との間の協力関係ないし信頼関係を損なうことにより将来の同種事件の捜査に支障が生じるおそれがあるといえることを考慮すると,本件準文書の提出を拒否した保管検察官の裁量判断が,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであるとは認められない。 4 なお,本件準文書が民訴法220条2号に該当しないことは認定事実に照らして明らかである。 5 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原決定は相当でなく,本件抗告は理由があるからこれを取り消すこととし,主文のとおり決定する。 平成29年3月30日福岡高等裁判所宮崎支部裁判長裁判官根本渉 裁判官渡邉一昭 裁判官諸井明仁 別紙目録 平成25年11月24日未明,鹿児島市a 一昭 裁判官諸井明仁 別紙目録 平成25年11月24日未明,鹿児島市a 町b 番c 号付近路上において発生した鹿児島県警察所属の警察官らの制圧行為による亡Aの死亡事件について,制圧行為の一部始終が生々しく撮影された電磁記録であり,鹿児島県警察が,テレビ局又は番組制作会社から押収し,音声画像が鮮明になるよう補正した上で,DVDに収録し,鹿児島県警察司法警察員から鹿児島地方検察庁検察官に送付されたもの以上 別紙「即時抗告理由書」は省略

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