平成14(わ)340 贈賄被告

裁判年月日・裁判所
平成14年12月9日 福岡地方裁判所
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判決文本文2,980 文字)

平成14年12月9日宣告平成14年(わ)第340号,第414号贈賄被告事件判決 主文 被告人を懲役1年2か月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は指定暴力団A会会長であるが,平成8年3月28日から同10年8月26日まで福岡県a警察署捜査第四課に,同月27日から同13年4月30日まで同県b警察署地域課に勤務し,同県内における各種犯罪の予防,鎮圧及び捜査,その他公共の安全と秩序の維持等に当たる職務に従事していた分離前の相被告人Bに対して第1 平成11年12月7日ころ,同県c市d町e番f付近路上に駐車中の普通乗用自動車内において,前記A会及び同会関係者について同県警察が行う捜査に関する情報を提供するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び将来も同様な取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに,現金50万円を供与し,もって前記Bの職務に関し賄賂を供与した。 第2 平成12年12月31日ころ,同所付近路上に駐車中の軽四輪乗用自動車内において,第1と同様の趣旨のもとに,現金50万円を供与し,もって同人の職務に関し賄賂を供与した。 (証拠の標目)-省略-(法令の適用)罰条判示各行為につき刑法198条刑種の選択判示各罪につきいずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重未決勾留日数の算入刑法21条(量刑の理由)本件は,平成4年1月暴力団A会の会長に就任した被告人が,福岡県警察官であったBに対して,捜査情報を提供するなどの有利かつ便 の罪の刑に法定の加重未決勾留日数の算入刑法21条(量刑の理由)本件は,平成4年1月暴力団A会の会長に就任した被告人が,福岡県警察官であったBに対して,捜査情報を提供するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び将来も同様な取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに賄賂として現金50万円を前後2回にわたり供与したという事案である。 本件の経緯・背景事情をみると,被告人は,平成8年4月ころ,福岡県a警察署捜査第四課(以下「捜査四課」という。)に所属し,同県c警察署内に設置されたg地区暴力団犯罪集中取締現地本部で勤務していた警察官Bに対して現金を渡すようになったが,その狙いはA会の組織を温存しその体制固めをするために,暴力団に対する捜査情報を入手することにあった。特に,同年10月末,A会C組若頭であったDが行方不明になった事件(以下「D失踪事件」という。)が発生し,福岡県警察がDはA会内部の者から殺害されたのではないかという嫌疑をもって捜査を開始したところ,被告人は,警察がこの事件を厳格に捜査する旨聞き及んだこともあって,その捜査情報を入手するため当時捜査を現に担当していたBに対し現金を渡し続けていたという経緯がある。しかも,Bは,平成10年8月に福岡県b警察署に異動したが,被告人がその後もBに対して現金を渡し続けた理由も,D失踪事件はBが捜査を担当した事件だから,c警察署等に勤務する知り合いの警察官から同事件の捜査情報を聞いているのではないかと考えたことにある。A会傘下の組の幹部がA会内部の者から殺害されたとなればA会は相当な打撃を受けるものと推認できるから,被告人もその捜査の推移に関心を寄せ,その捜査情報を入手するためにBへ現金を渡し続けている。本件贈賄額は,1回につき50万円,2回合計100万円と多額である。加えて, 撃を受けるものと推認できるから,被告人もその捜査の推移に関心を寄せ,その捜査情報を入手するためにBへ現金を渡し続けている。本件贈賄額は,1回につき50万円,2回合計100万円と多額である。加えて,暴力団員が多種多様な犯罪を引き起こし,社会に対して様々な害悪を招いており,暴力団が市民生活ひいては社会に対して悪影響を与えている現状の中で,被告人は,自己が会長を務めるA会という暴力団組織を温存するために捜査情報を入手すべく,職務の公正さ,廉潔性が特に強く要請され,暴力団員による犯罪を取り締まり,社会の治安維持のかなめとなるべき立場にある警察官に対して賄賂を供与している。しかも,A会は,福岡県c市に本部事務所を置き,1次団体としてのA会本家の下に,2次団体24組織,その下に3次団体15組織,4次団体1組織があり,構成員は合計700名以上が確認されており,被告人はこのピラミッド型組織の頂点にいる。福岡県公安委員会は平成4年12月以来,4回にわたってA会を指定暴力団に指定しており,A会は,同県のg地区で勢力を有している。 反社会性の強い暴力団組織の温存を狙ったという犯行の動機は,利欲的かつ自己中心的であり,酌量の余地はなく,強い社会的非難が加えられなければならない。本件は,収賄側であるBの行為と相まって,県民に対して,大きな衝撃を与えるとともに,警察全体に対して強い不信の念を抱かせたのであり,警察官の職務に対する信頼は著しく失墜させられた。 前述したとおり,被告人が平成8年4月ころから,Bに対して現金を多数回にわたって渡し続けていた背景事情・経緯を考えると,本件各犯行は,常習性が認められるし,被告人は,自発的に,Bに対する賄賂の供与を開始しているのであり,その積極的な犯行態様を併せて考えると,本件は非常に悪質である。 被告人は,罰金前科及び懲役 と,本件各犯行は,常習性が認められるし,被告人は,自発的に,Bに対する賄賂の供与を開始しているのであり,その積極的な犯行態様を併せて考えると,本件は非常に悪質である。 被告人は,罰金前科及び懲役前科とも多かったが,被告人の最終前科の判決が平成元年であって,その後本件第1の犯行までの約10年間前科がなかった点も,被告人の暴力団組織における地位等を考えると,量刑上重視はできない。 これらの諸事情によれば,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 他方,本件各犯行当時,Bは,既に福岡県b警察署に異動しており,当時のBの担当職務と,A会に対する捜査とは,その関連性が比較的希薄であったこと,Bが平成8年3月末捜査四課に異動し,前記g地区暴力団犯罪集中取締現地本部に勤務するようになった際,かつて取り調べたことのあった被告人がA会会長となっているので,今後暴力団情報を入手したいと考え被告人に電話をかけてきて自己の携帯電話の番号を教え,その後間もなくして被告人がBに現金を渡したことが発端となったという経緯があること,被告人は,財団法人Eに対して,300万円を贖罪寄付していること,一貫して罪を認め,Bの公務員としての精神をお金で堕落させて申し訳なく思うと供述するなど反省の態度を示していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 以上の諸事情を総合して考慮することになるが,本件は刑の執行を猶予するのを相当とする事案ではないから,主文掲記の実刑を科すこととした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役2年6か月)平成14年12月9日福岡地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官林秀文裁判官一木泰造裁判官永井 福岡地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官林秀文裁判官一木泰造裁判官永井美奈

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