令和5(わ)569 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月22日 名古屋地方裁判所
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判決文本文10,520 文字)

令和7年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第569号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和6年10月9日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和5年3月4日から支 払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告と労働契約を締結し、被告が運営する名古屋市立大学病院(以下「被告病院」という。)において正規職員の看護師として勤務していた原告が、被告に対して夜勤の免除の希望を申し出たにもかかわらず、被告が夜勤の 免除等の措置を講じることなく違法な退職勧奨ないしは退職強要をしたことは労働契約上の職場環境配慮義務違反に当たると主張し、被告に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金220万円(慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計)及びこれに対する本件訴状の送達の日の翌日である令和5年3月4日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延 損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか後掲各証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は、平成20年9月1日に被告病院の契約職員の看護師として被告に採用され、同年12月1日に正規職員の看護師として被告との間で期間 の定めのない労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結し、平成 30年4月、ICUの部署での勤務を開始した。なお、原告は、令和4年8月22日から同年9月7日まで 告との間で期間 の定めのない労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結し、平成 30年4月、ICUの部署での勤務を開始した。なお、原告は、令和4年8月22日から同年9月7日までの当時、民間企業において就労する夫及び小学4年生の子と同居していた。(甲39、乙8)イ被告は、被告病院を運営する公立大学法人である。 ウ Aは、令和4年当時、被告病院の看護部長であった(乙4、15)。 エ Bは、令和4年当時、被告病院の副看護部長であった(乙4、16)。 オ C及びDは、令和4年当時、被告病院のICU・PICU・CCUの部署の看護師長であった(乙4、17)。 (2) 被告病院における規定等公立大学法人名古屋市立大学職員の超過勤務又は深夜勤務の制限に関する 規程(平成18年4月1日公立大学法人名古屋市立大学第20号。以下「本件勤務制限規程」という。甲12)には、次の内容の規定がある。 8条(育児を行う職員の深夜勤務の制限)1項理事長は、小学校就学の始期に達するまでの子のある職員(次の各号のいずれにも該当し、深夜において常態として当該子を保育するこ とができる配偶者(当該子と同居している者に限る。)がいない者に限る。)が、当該子を養育するために請求した場合には、法人の業務の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜勤務をさせてはならない。 1号深夜において就業していない者(深夜における就業日数が1月について3日以下の者を含む。) 2号負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、当該子を保育することが困難な状況にない者3号 8週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定でない者4号産後8週間以内の期間にない者 害により、当該子を保育することが困難な状況にない者3号 8週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定でない者4号産後8週間以内の期間にない者 2項前項に規定する「法人の業務の正常な運営」に係る支障の有無の判 定に当たっては、請求に係る時期における職員の業務の内容及び業務量、当該請求に係る期間について当該請求をした職員の業務を処理するための措置の難易等を総合して行うものとする。 (3) 夜勤免除の希望の申出及び退職願の提出等ア原告は、令和4年8月22日(以下、年の記載がない月日は全て令和4 年とする。)、C及びDに対し、10月から夫の単身赴任により夜勤を行うことが困難となったとして、夜勤免除の希望を申し出た(以下「本件夜勤免除申出」という。)。 イ原告は、9月8日、被告に対し、10月以降、正規職員から夜勤に従事する義務のないパート職員に身分を切り替えることを前提に、退職願を提 出した。 ウ原告は、10月12日、上記イの退職願の撤回を申し入れたため、被告は、同月14日、原告に対し、同退職願を返却した。 2 争点(1) 本件夜勤免除申出に関する被告の債務不履行責任の有無(争点1) (2) 原告の損害(争点2) 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(本件夜勤免除申出に関する被告の債務不履行責任の有無)(原告の主張)被告は、原告から本件夜勤免除申出を受けた際、労働契約上の使用者の職 場環境配慮義務の根拠及び趣旨、並びに、本件夜勤免除申出に係る諸事情に照らし、原告に対し、原告の夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無を聴取した上で、①原告が所属するICUの部署におけるシフト調整の方法により、夜勤回数 びに、本件夜勤免除申出に係る諸事情に照らし、原告に対し、原告の夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無を聴取した上で、①原告が所属するICUの部署におけるシフト調整の方法により、夜勤回数を軽減する措置(以下「夜勤軽減措置」という。)又は一定期間夜勤を免除する措置(以下「夜勤免除措置」といい、夜勤軽減 措置と合わせて「夜勤減免措置」という。)を講じ、若しくは②これが困難 な場合には、異動調整の方法により夜勤減免措置を講じて、職場環境を悪化させないようにする義務を負っていた。 しかるに、被告は、本件夜勤免除申出をした原告に対し、上記の原告の夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無を十分に聴取することなく、夜勤ができないならば正規職員としての勤務はできず、パートか契約職 員になるしかなく、そのためには退職届の提出が必要である旨説明し、違法な退職勧奨又は退職強要をしたことから、上記義務違反がある。 (被告の主張)被告は、①正規職員の看護師を採用するに当たって「夜勤ができること」を条件としており、原告との間でも、この条件を前提に本件労働契約を締結 していること、②本件勤務制限規程において、健康上の理由又は未就学児の養育がある看護師についてのみ夜勤免除が定められているほかに、夜勤を免除する旨の就業規則等の定めはないから、原告に対し、健康上の理由又は未就学児の養育がある場合を除き、シフト調整又は異動調整の方法のいかんを問わず、夜勤免除措置を講ずべき義務はなく、また、異動調整を行ってまで 夜勤軽減措置を講じる義務もない。 被告が、本件夜勤免除申出をした原告に対し、夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無を聴取した上で、シフト調整の方法によって夜勤軽減措置を講じる義務を負 夜勤軽減措置を講じる義務もない。 被告が、本件夜勤免除申出をした原告に対し、夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無を聴取した上で、シフト調整の方法によって夜勤軽減措置を講じる義務を負っていたことは争わないが、被告は、以下のとおり、その義務を履行している。すなわち、C及びDは、本件夜勤免除申出に ついて、原告に対し、夜勤ができない期間が明確な場合における夜勤減免措置の検討及びシフト調整により夜勤軽減措置を行うことを念頭に、夜勤従事が困難な事情や夜勤従事が可能な場合の有無の聴取を行い、原告とともに、常勤継続に向けた解決策を模索した。また、C又はDが原告に対して退職を強要した事実はなく、原告は、自ら選択してパート職員への切替えを希望し て、退職願を提出したものである。 したがって、本件夜勤免除申出に関する被告の対応について、債務不履行に当たる事実はない。 ⑵ 争点2(原告の損害)(原告の主張)ア慰謝料 200万円 原告は、上記(1)の原告の主張に記載の被告の職場環境配慮義務違反により適応障害(抑うつ状態)と診断され、病気休暇を取得せざるを得ない状態に至ったのであり、その精神的苦痛を金銭に換算すると、200万円を下ることはない。 イ弁護士費用 20万円 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、当事者間に争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を 総合すると、次の事実を認めることができる。 (1) 夜勤に係る本件労働契約の内容ア被告は、正規職員の看護師の新規採用に当たり、応募資格として、「夜勤ができる方」と明示していた(乙7の1・2)。 イ ることができる。 (1) 夜勤に係る本件労働契約の内容ア被告は、正規職員の看護師の新規採用に当たり、応募資格として、「夜勤ができる方」と明示していた(乙7の1・2)。 イ原告は、平成20年12月1日、被告との間で、夜勤ができることを条 件に、正規職員の看護師として、本件労働契約を締結した(乙8、原告本人・16頁。争いがない。)。 (2) 本件夜勤免除申出から退職願の提出及び撤回までの経緯ア原告は、8月22日、C及びDに対し、10月から夫の単身赴任により夜勤を行うことが困難となったとして、夜勤免除の希望を申し出た(本件 夜勤免除申出)。Cは、原告に対し、被告病院は夜勤ができることを条件 に正規職員の看護師を採用しているため、健康上の理由でなく、家庭の都合だけでは夜勤を免除することはできない旨を伝えた上で、夜勤ができない期間の目途や、月2回程度なら夜勤が可能でないかを尋ねたところ、原告は、夜勤ができない期間は分からず未定であり、現状では月2回も夜勤をすることはできない旨の回答をした。Cは、原告に対し、夜勤のない部 署に異動することができないかを看護部に確認する旨を伝えた。(甲39、乙17、証人C・7~10、24~30頁、原告本人・2、3、18、19、37、43頁、弁論の全趣旨)C及びDは、同日、Bに対し、上記の原告とのやり取りの内容を報告し、原告を10月から夜勤のない部署に異動させることが可能か尋ねたところ、 Bは、C及びDに対し、現状、夜勤のない部署に異動させることは非常に難しいと回答した上で、家族の協力を得る、夜間育児支援を利用するなどして月2回の夜勤ができるよう調整できないか、また、夜勤ができない期間がどれくらいになるかを原告に確認するよう指示した(乙16 常に難しいと回答した上で、家族の協力を得る、夜間育児支援を利用するなどして月2回の夜勤ができるよう調整できないか、また、夜勤ができない期間がどれくらいになるかを原告に確認するよう指示した(乙16、17、証人B・4~6、12頁、証人C・10、11頁)。 イ Aは、8月23日、本件夜勤免除申出の件の報告を受け、Bに対し、夜勤が全くできないということであれば、正規職員として継続勤務してもらうことは難しく、夜勤をすることなく被告病院での継続勤務を望むのであれば、契約社員かパート社員に雇用形態の変更を検討してもらうことが必要となることを伝えた上で、夜勤は月2回でもよいので家族の協力を得る などして調整することはできないのかを原告に確認するよう指示した。そこで、Bは、同日、Cに対し、上記のAによる指示内容を伝えた上で、夜勤ができない期間がどれくらいなのか、また、夜勤を月2回でもいいので家族の協力を得るなどして調整することができないかを原告に再度確認するよう指示した。(乙16、証人A・7、8、18、19頁、証人B・1 2、13頁、証人C・11、31頁) ウ Cは、8月24日、原告に対し、再度夜勤ができない期間や月2回でも夜勤をすることができないかを尋ねたところ、原告は、夜勤ができない期間が未定であり、現状月2回の夜勤も無理である旨の回答をした。そこで、Cは、原告に対し、夜勤の再開の目途が立たない状況では、夜勤がない部署への異動は難しい、常勤(正規職員)のままでの雇用継続は難しく、契 約社員やパート社員に身分の切替えを検討してもらう必要がある旨を伝えた。原告は、Cに対し、パート社員の雇用条件や待遇及びその切替えの方法等について紙面で教えてほしい旨を伝えたところ、Cは、基本的に、原告自身において、契約条件 替えを検討してもらう必要がある旨を伝えた。原告は、Cに対し、パート社員の雇用条件や待遇及びその切替えの方法等について紙面で教えてほしい旨を伝えたところ、Cは、基本的に、原告自身において、契約条件等についての確認や、当該切替えの手続をしてもらう必要がある旨の回答をした。(乙17、証人A・8頁、証人C・1 2、13、31、32頁、原告本人3、4、19頁)エ Bは、9月2日、Cに対し、被告病院の採用状況として、契約社員の枠がないためパート社員での採用となる状況とともに、パートの採用枠も10人中残り2枠に3人の応募が来ている状況であり、枠がなくなり次第パート社員での採用もできなくなる状況である旨を伝えた。後日、Cは、原 告に対し、上記の状況を伝えた。(甲39、乙16、17、証人B・7、8頁、証人C・13、14頁、原告本人・20頁)オ Cは、9月6日、原告との間で面接を行い、正規職員からパート社員に身分を切り替えるためには、退職願の提出が必要であることを伝えた。これに対し、原告は、Cに対し、パート勤務はどのような勤務形態が多いの かなどと尋ね、Cは、パート勤務の人は、午前9時から午後4時半、月曜日から金曜日まで勤務する人が多いなどと回答した。(甲39、乙17、証人C・14、15頁、原告本人・5、20頁)カ Cは、9月7日、原告に対し、退職願を提出したか否かを確認するため、「あれ、書いた?」と尋ねたところ、原告が「いつまでですか?」と言っ たため、「そんなのすぐだよ!だってもう2か月切っちゃってるじゃん。 今月末で退職だから今すぐ退職願だけでも書いて!良いからちゃっちゃっと書いちゃって!すぐに看護事務室に持って行くからさ」と言った。その後、原告は、同日、Cに対し、退職事由を「一身上の都合」と記載し 今月末で退職だから今すぐ退職願だけでも書いて!良いからちゃっちゃっと書いちゃって!すぐに看護事務室に持って行くからさ」と言った。その後、原告は、同日、Cに対し、退職事由を「一身上の都合」と記載した退職願を提出した。この提出に際し、原告は、自らの家庭の状況や配偶者との相談状況等を具体的に説明しなかった。(甲39、乙16、17、証人 B・8、9頁、証人C・17頁、原告・6、7、18、38、39頁、弁論の全趣旨)キ Cは、9月8日、原告に対し、退職事由を書き直すように求めたところ、原告は、やはり退職願を書かなければならないことや身分を切り替えなければならないことに納得できない旨の発言をしたため、原告に対し、再度、 夜勤の調整はできないかと尋ねたところ、原告は、夫と話し合ったが、夜勤ができない期間の目途も立たず、月2回の夜勤も難しい旨を述べた。その後、原告は、退職事由を「家事専念」と記載した退職願を再度提出した。 (甲39、乙15、16、証人B・9~11頁、証人C・20、21、37、38、45~47頁、原告本人・7、8頁) ク原告は、9月12日、被告に対し、退職願の撤回を申し入れ、被告は、原告に対し、同月14日、同退職願を返却した(甲39、原告本人・9、10、27、28頁)。 2 争点1(本件夜勤免除申出に関する被告の債務不履行責任の有無)について(1) 本件夜勤免除申出に関して被告が原告に対して負う義務について ア上記1(1)によれば、被告は、本件労働契約に基づき、原告に対し、夜勤に従事するよう命令をすることができる。他方で、本件労働契約の内容である本件勤務制限規程8条1項は、被告は、小学校就学の始期に達するまでの子のある職員に対し、当該子を養育するために請求があった場合には、被告の業務の正常 ることができる。他方で、本件労働契約の内容である本件勤務制限規程8条1項は、被告は、小学校就学の始期に達するまでの子のある職員に対し、当該子を養育するために請求があった場合には、被告の業務の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜勤務をさせてはな らない旨を規定するが、その他本件労働契約の内容となる被告病院におけ る就業規則及び本件勤務制限規程等を見ても、被告の原告に対する上記夜勤従事命令権を制限する内容の定めは存在しない。以上の本件労働契約の内容に照らすと、本件夜勤免除申出は、夫の単身赴任により夜勤を行うことが困難となることを理由とするものであり、本件労働契約における明文の規定上、夜勤従事命令権を制限することができる場合には当たらないか ら、被告が、本件夜勤免除申出をした原告に対し、直ちに夜勤減免措置を講じるべき義務があると認めることはできない。 イもっとも、被告が、労働契約上夜勤に従事する義務を負う職員に対し、本件勤務制限規程等の規定に該当しない限り無制限に夜勤を命じることができるものではなく、当該職員から夜勤の免除を希望する申出があった場 合において、その希望の内容等に応じ、被告病院の業務の体制上、合理的な範囲でシフト調整等の方法による夜勤の一部免除や軽減等の措置をとることが可能であるにもかかわらず、そのような措置を講じない結果、当該職員が職務上又は私生活上の不利益を受ける場合には、被告の当該職員に対する労働契約上の義務の違反が生じ得ると解される。 証拠(乙15~17、証人A・4、5、27頁、原告・35、36頁)によれば、被告は、正規職員の看護師から家庭の事情を理由に夜勤減免に係る申出があった場合、本件勤務制限規程等における規定とは別に、夜勤ができない期間が定まっている場合には夜勤免除措置や 5、36頁)によれば、被告は、正規職員の看護師から家庭の事情を理由に夜勤減免に係る申出があった場合、本件勤務制限規程等における規定とは別に、夜勤ができない期間が定まっている場合には夜勤免除措置や最低月2回といった夜勤軽減措置を事実上講じることとしていたことが認められる。他方で、 診療点数に係る入院基本料の算定に当たり、病棟の実人員数及び延べ夜勤時間数には、月当たりの夜勤時間数が16時間未満の者は含まないとされていることにより(乙13)、最低月2回以上の夜勤を行う看護師が不足する場合には被告病院の経営への影響が生じるおそれがあることから、月2回よりも少ない頻度まで夜勤の減免に応じることは困難であったことが 認められる。これらのことからすれば、被告は、原告に対し、本件夜勤免 除申出に際し、夜勤に従事できない期間や最低月2回の夜勤は可能か否かを確認し、原告の希望する夜勤の減免の内容が上記条件に適合する場合には、合理的な範囲の措置として、上記条件の限度で夜勤減免措置を講じることが可能であったと認められる。 上記1(2)ア、ウ及びキのとおり、被告は、本件夜勤免除申出をした原 告に対し、8月22日、同月24日及び9月8日、夜勤に従事できない期間や最低月2回の夜勤は可能か否かを確認しているところ、上記確認の際のCと原告とのやり取りの内容を踏まえると、原告は、被告において、夜勤ができない期間が判明した場合には夜勤免除措置を、月2回までであれば夜勤軽減措置の検討の余地があることについて、認識し又は容易に認識 し得たと認められる。このような状況において、原告は、自らの家庭の状況や配偶者との相談状況等を具体的に説明することなく、夜勤ができない期間は未定であり、月2回の夜勤も無理である旨の回答に終始し、 し得たと認められる。このような状況において、原告は、自らの家庭の状況や配偶者との相談状況等を具体的に説明することなく、夜勤ができない期間は未定であり、月2回の夜勤も無理である旨の回答に終始し、これ以上の情報提供をしなかったというのであるから、被告において、原告の夜勤減免に関して更なる調整の余地を見出すのは困難であったと認められる。 このことに加え、被告が、本件夜勤免除申出を受けた後、夜勤のない部署への異動の可能性を検討し、夜勤の再開の目途が立たない状況では、これが困難であることも原告に伝えたこと(上記1(2)ウ)を考え併せると、被告は、本件夜勤免除申出に関し、原告に対して本件労働契約上求められる義務を尽くしたというべきである。 ウこれに対し、原告は、本件夜勤免除申出の際、単身赴任となった夫の帰省の頻度やその滞在日数を見ながら、それに合わせた夜勤シフトを組んでもらえれば働いていけるのではないかと考えており、かつ、その状況が全く未定であったのであるから、その具体的な期間が明示できなかったとしても、被告は、夜勤ができない期間について、上記の夫に係る事情が判明 するまでの期間であったことが合理的に理解でき、これを認識し又は認識 することができたのであるから、被告は、夜勤減免措置を講じるべきであった旨の主張をする。しかし、上記説示のとおり、原告は、自らの家庭の状況や配偶者との相談状況等を具体的に説明することなく、夜勤ができない期間は未定であり、月2回の夜勤も無理である旨の回答に終始し、これ以上の情報提供をしなかったというのであり、このような状況を踏まえる と、被告が、本件夜勤免除申出を受けた際、原告の希望する夜勤免除の期間を合理的に理解し、これを認識することができたとは認められない。仮に原告が なかったというのであり、このような状況を踏まえる と、被告が、本件夜勤免除申出を受けた際、原告の希望する夜勤免除の期間を合理的に理解し、これを認識することができたとは認められない。仮に原告が主張するように、原告が、本件夜勤免除申出の時点で、夜勤のできない期間を明確に回答することが不可能な状況にあったとしても、夫の単身赴任に関する事情について、その状況をより詳細に説明することが困 難であったとはいえず、被告は、そのような説明がなければ、原告が置かれた具体的な状況を踏まえた更なる対応を検討することも困難であったといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (2) 違法な退職勧奨等の有無原告は、Cが原告に対して退職願を提出するよう求めたことが、違法な退 職勧奨ないしは退職強要として職場環境配慮義務違反を構成する旨の主張をする。 しかし、上記の主張は、被告が本件夜勤免除申出に関して夜勤減免措置を講じなかった対応に本件労働契約上の義務違反があることを前提とするものであるところ、これを認めることができないことは上記(1)で説示したとお りであるから、その前提を欠くものである。また、原告の退職願の提出に至る上記1(2)のやり取りについてみても、Cは、原告に対し、退職願を速やかに提出するよう求めたことが認められるが(上記1(2)カ)、これは、原告が10月からパート社員として勤務するためにはそのための手続を早期に行う必要があり(上記1(2)エ)、原告からはパート社員の雇用条件等につ いて問合せを受けていた(上記1(2)ウ、オ)という状況において述べられ たものであるから、夜勤に従事することなく被告病院での継続勤務を希望する原告の意向に沿うためにとられた対応と理解できるもの 合せを受けていた(上記1(2)ウ、オ)という状況において述べられ たものであるから、夜勤に従事することなく被告病院での継続勤務を希望する原告の意向に沿うためにとられた対応と理解できるものである。このほか、Cが退職届の提出に納得していない旨の申出をした原告に対して再度夜勤の調整はできないかなどの調整を図ったこと(上記1(2)キ)をも踏まえると、原告に対し、その意思に反して、早期に退職することを求めたものとはいえ ない。原告は、Cから周囲を歩きまわって圧力を受け、退職願を作成せざるを得なかった旨の供述をするが(甲39・5頁、原告本人・6、7頁)、Cの言動が客観的に退職願の作成及び提出について圧力をかけるような態様であったと認めるに足りる的確な証拠はなく、Cの言動が、社会的相当性を逸脱した態様での退職勧奨ないしは退職強要に該当するというべき事実は認め られない。 したがって、被告が原告に対して違法な退職勧奨ないしは退職強要をしたとは認められない。 (3) 小括以上のほか、原告は、被告の職場環境配慮義務違反を基礎付けるものと して、①労働契約終了の不利益に対する法律上の配慮、②仕事と生活との調和の原則(労働契約法3条3項)、②原告の看護師としてのキャリアを蓄積し人格的成長を遂げる権利(キャリア人格権)に対する配慮の必要性等を主張するが、原告が主張するこれらの観点ないしはその趣旨を考慮しても、前記の認定判断は左右されない。 以上によれば、本件夜勤免除申出に関し、被告の債務不履行があるということはできない。 第4 結論以上の次第で、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 主文 以上の次第で、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官五十嵐章裕 裁判官雨宮隆介 裁判官竹内峻

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