平成22(ワ)36356 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年12月3日 東京地方裁判所
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判決文本文4,229 文字)

- 1 -平成22年12月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第36356号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成22年10月29日判決相模原市中央区〈以下略〉原告株式会社イー・ピー・ルーム東京都中央区〈以下略〉被告Y同訴訟代理人弁護士池田竜一主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する平成22年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,後記2,( )の特許の特許権者であった原告が,当該特許に対する 特許異議申立てについて同特許を取り消す旨の決定をした合議体の審判長であった被告に対し,被告が上記決定をしたことが不法行為に当たると主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料50万円(一部請求)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年7月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない)。 ( ) 当事者 - 2 -原告は,印刷機械,放電加工機の設計製図,製造販売等を目的とする株式会社である。 ,,,。 被告は元特許庁審判官であり平成15年4月1日特許庁を退職した( ) 原告が有していた特許権(甲1,5) 原告は下記特許以下本件特許といい本件特許に係る特許権を本,(「」,「件特許権」といい,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3記載の発明を「本件特許発明」という)の特許権者であった。 。 記特許番号第2640694号発明の名称放電焼結装置出願日 「件特許権」といい,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3記載の発明を「本件特許発明」という)の特許権者であった。 。 記特許番号第2640694号発明の名称放電焼結装置出願日平成2年9月18日優先日平成2年2月2日公開日平成4年1月14日公開番号特開平4-9405号登録日平成9年5月2日特許請求の範囲請求項1ないし3(省略)( ) 特許異議の決定(甲2,3,5) 本件特許につき特許異議の申立てがされ,平成10年異議第70682号事件(以下「本件異議申立事件」という)として特許庁に係属した。 。 ,,,特許庁は同特許異議の申立てについて審理した上平成13年7月4日本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すとの決定をした以下本(「件取消決定」という。 。)本件取消決定は,3名の特許庁審判官の合議体により判断されたものであり,被告は,その合議体の審判長であった。 本件取消決定の理由は,平成7年3月14日付けの手続補正は明細書又は図面の要旨を変更するものであり,本件特許の出願は(判決注:特許法等の- 3 -一部を改正する法律〔平成5年法律第26号〕附則2条2項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法40条により)上記手続補正書を提出したときである平成7年3月14日にしたものとみなされるから,本件特許発明は,その出願前に頒布された刊行物(特開平4-9405号公報〔甲3。以下「本件刊行物」という)に記載された発明に基づ〕,。 いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである,というものである。 平成15年10月9日,本件取消決定は確定し,同月22日,本件特許の登録を抹消する旨の登録がされた。 できたものであり,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである,というものである。 平成15年10月9日,本件取消決定は確定し,同月22日,本件特許の登録を抹消する旨の登録がされた。 当事者の主張( ) 原告の主張(請求原因) ア本件取消決定は,本件特許発明はその出願前に頒布された本件刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとして,本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消した。 しかし,本件刊行物に係る発明と本件特許発明の発明者はいずれも原告代表者で同一であり,出願人はいずれも原告で同一であるから,特許法29条の2第1項の括弧書及び但し書により,本件特許には特許法29条の2第1項の適用はなく,特許法29条2項の適用も免れるため,本件特許は特許法29条2項により取り消されることはない。 イこのように,本件特許発明には取消事由がないのであるから,本件特許を取り消した本件取消決定は違法なものであって原告に対する不法行為を構成し,この決定をした被告には故意又は過失がある。また,本件取消決定をした被告の行為は,国家公務員倫理規程1条1号に違反し,刑法193条の公務員職権濫用罪に該当し,憲法76条にも反する違法なものである。 - 4 -ウ原告は,上記被告の不法行為により,他社による本件特許の実施品である放電焼結機1台の販売について実施料相当額383万5000円の損害を被ったが,本件においては慰謝料として50万円を請求する。 ( ) 被告の反論 ,,ア本件異議申立事件は特許法29条の2が適用される事案ではないから特許法29条2項に違反するとして本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消した本件取消決定に違 ( ) 被告の反論 ,,ア本件異議申立事件は特許法29条の2が適用される事案ではないから特許法29条2項に違反するとして本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消した本件取消決定に違法性はなく,原告主張の不法行為は成立しない。 ,,,すなわち本件取消決定は平成7年3月14日付けの手続補正の結果「発明の構成に関する技術的事項」が当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものとなったため,上記手続補正が明細書又は図面の要旨を変更すると認定したものであり,その結果,本件特許の出願は平成7年3月14日に繰り下げられたものである。したがって,本件刊行物は本件特許の出願時には既に公開されており,後願の出願後に先願の公開等がされたものではないから,特許法29条の2は適用されない。そして,上記の本件特許の出願の繰下げを前提にすると,本件刊行物は,特許法29条1項3号に規定された特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に該当するから,特許法29条2項を適用した本件取消決定に違法はない。 また,原告の国家公務員倫理規程違反,刑法193条違反,憲法76条違反の主張はいずれも否認ないし争う。 イ被告の原告に対する不法行為が成立しないことは明らかであるが,そもそも,公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて故意又は過失により違法に他人に損害を与えた場合,当該職務行為について公務員個,,人はその責任を負わないことは確立された判例であるからこの点からも原告の請求は理由がない。 ウ被告の故意又は過失,損害額についての原告の主張は否認ないし争う。 - 5 -第3当裁判所の判断 原告は,前記第2,3( )のとおり,特許庁審判官であった被告が,合議体 の審判長として,本件異議申立事件につき,特許法29条2項の規定に違反したこと 争う。 - 5 -第3当裁判所の判断 原告は,前記第2,3( )のとおり,特許庁審判官であった被告が,合議体 の審判長として,本件異議申立事件につき,特許法29条2項の規定に違反したことを理由に本件取消決定をしたことは,特許法29条の2の適用がなく特許法29条2項の適用も免れる本件特許発明について特許法29条2項を適用したものであるから,原告に対する不法行為を構成し,被告は,不法行為に基づく損害賠償として慰謝料の支払義務を負うと主張する。 しかし,公権力の行使に当たる国の公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には,国家賠償法1条1項により,国がその被害者に対して賠償の責に任ずるのであって,公務員個人はその責を負わないものと解すべきである(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁等参照。 )本件において,被告は,国家公務員である特許庁審判官の職務として本件異議申立事件について審理し,本件取消決定をしたものであるから,仮に被告が本件取消決定をしたことが違法な行為に当たり,これによって原告が損害を被ったとしても,国家公務員であった被告個人がその賠償責任を負うことはないというべきであるから,原告の請求は理由がない。 また,前記第2,2( )のとおり,本件取消決定は,平成7年3月14日付 けの手続補正は明細書又は図面の要旨を変更するものであり,本件特許の出願は上記手続補正書を提出したときである平成7年3月14日にしたものとみなされることを前提に,本件特許発明は,本件特許の出願前に公開された本件刊行物(公開日:平成4年1月14日。甲3)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたと 14日にしたものとみなされることを前提に,本件特許発明は,本件特許の出願前に公開された本件刊行物(公開日:平成4年1月14日。甲3)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたとして,特許法29条2項に基づき,本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消したものであって,上記のようにみなされる本件特許の出願の日前に出願された特許等につき,本件特許の出願後- 6 -に出願公開等がされた事案ではない。したがって,そもそも本件は特許法29条の2が適用される事案ではないから,同条の括弧書及び但し書の適用を前提に特許法29条2項の適用はないとする原告の主張は,前提において誤っており採用することができず,本件取消決定に原告主張の違法を認めることはできない。 以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官岡本岳裁判官鈴木和典裁判官坂本康博

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