平成30(ネ)760

裁判年月日・裁判所
令和元年5月15日 福岡高等裁判所 福岡地方裁判所 平成25(ワ)175
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判決文本文10,450 文字)

- 1 -主文 1 原判決中,控訴人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人Aに対し,10万円及びこれに対する平成21年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,控訴人Bに対し,10万円及びこれに対する平成21年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用(上告費用を除く。)は,第1審,差戻し前の控訴審,上告審及び差戻し後の控訴審を通じて,これを5分し,その4を控訴人らの負担とし,そ の余を被控訴人の負担とする。 6 この判決の第2項及び第3項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する 部分を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人Aに対し,30万円及びこれに対する平成21年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,控訴人Bに対し,30万円及びこれに対する平成21年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,① 拘置所に被告人として勾留されていた控訴人A(以下「控訴人A」という。)及びその弁護人であった控訴人B(以下「控訴人B」という。)が,控訴人Aが刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中で あることを理由に拘置所職員が控訴人Aと控訴人Bとの面会を許さなかった- 2 -ことにより,接見交通権を侵害されたとし 容施設法」という。)79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中で あることを理由に拘置所職員が控訴人Aと控訴人Bとの面会を許さなかった- 2 -ことにより,接見交通権を侵害されたとして,また,② 控訴人Aが,保護室に収容される際に拘置所の職員から暴行を受けたなどとして,それぞれ,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料及び遅延損害金の支払を求める事案である。 原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らが原判決の全部を 不服として控訴したところ(当庁平成28年(ネ)第140号(差戻し前の控訴審)),差戻し前の控訴審は,保護室に収容されている被告人との面会の申出が弁護人からあった場合に,刑事施設の長が保護室への収容を継続する必要性及び相当性を判断する前提として,上記申出があった事実を被告人に告げるか否かは,その合理的な裁量に委ねられており,この事実を告げないまま,保護 室に収容中であることを理由として面会を許さない措置がとられたとしても,上記裁量の範囲の逸脱がなく,上記必要性及び相当性の判断に誤りがない限り,原則として,国家賠償法1条1項の適用上違法とならないなどとして,上記各控訴をいずれも棄却した。 これに対し,控訴人らが差戻し前の控訴審判決の一部(控訴人らの接見交通 権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分)を不服として上告及び上告受理の申立てをしたところ(最高裁判所平成29年(オ)第791号,同年(受)第990号),最高裁判所は,控訴人らの上告を決定で棄却し,上告審として事件を受理した上で,刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,そ の申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保 事件を受理した上で,刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,そ の申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不安定であることなどにより同事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がない限り,未決拘禁者及び弁護人等の接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の 適用上違法となると解するのが相当であるとして,上記部分について,差戻し- 3 -前の控訴審判決を破棄し,上記特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため,本件を当審に差し戻した。 したがって,当審(差戻し後の控訴審)における審判の対象は,上記①の請求の当否である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認定することができる事実)本件の前提事実は,原判決「事実及び理由」欄中「第2 事案の概要等」の ないし(原判決3頁7行目から4頁9行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決4頁6行目末尾に「なお,控訴人Aは,この日,控訴人Bが C拘置所に赴いてから同所を退去するまでの間に,C拘置所職員から,控訴人Bによる控訴人Aとの面会の申出があった旨を告げられたことはなかった。」を加える。 2 争点及び争点に関する当事者の主張争点1(控訴人Bは控訴人Aとの面会を申し出たか) 次のとおり補正するほかは,原判決4頁22行目から5頁12行目までのとおりであるから,これを引用する。 ア原判決5頁7行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 の面会を申し出たか) 次のとおり補正するほかは,原判決4頁22行目から5頁12行目までのとおりであるから,これを引用する。 ア原判決5頁7行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 控訴人Aが保護室収容中であることを理由に弁護人である控訴人Bとの面会を拒否するというC拘置所職員の対応は,本件刑事事件について, 勾留された被告人である控訴人Aがその弁護人である控訴人Bから援助を受ける機会を奪ったものであるとともに,控訴人Bの適切な弁護活動と円滑な業務遂行を妨害するものであって,憲法34条前段,37条3項,刑事訴訟法39条1項に違反する。」イ原判決5頁12行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 仮に,控訴人Bが控訴人Aとの面会を申し出たとしても,その後保護- 4 -室収容中の被収容者に対する面会の申出があった際に通常とられるべき手続がとられていないことや,当日の面会表に控訴人Aに関する記載がないこと,控訴人Bが面会可能時間のほとんどをDとの面会に費やしたこと等に鑑みれば,控訴人Bは,控訴人Aが保護室に収容されていることを知り,控訴人Aとの面会の申出を取り下げたものというべきであ る。」争点2(保護室収容を理由とする面会拒否の違法性の有無)ア被控訴人の主張控訴人Aの当時の状況に鑑みれば,控訴人Bから面会の申出があった旨を控訴人Aに告げないまま,控訴人Aが刑事収容施設法79条1項2号イ に該当するとして,控訴人Aの保護室収容を中止せず,控訴人Bと面会させなかったC拘置所職員の対応には合理性が認められ,国家賠償法上違法と評価されるべき点はない。 すなわち,控訴人Aは,控訴人ら主張に係る面会申出の以前,取り分けその数日前から,C拘置所職員に対する強い敵意や反 拘置所職員の対応には合理性が認められ,国家賠償法上違法と評価されるべき点はない。 すなわち,控訴人Aは,控訴人ら主張に係る面会申出の以前,取り分けその数日前から,C拘置所職員に対する強い敵意や反抗的な態度に基づい て,C拘置所職員の制止に従わず,大声を発する行動傾向が顕著に認められ,そのために保護室に収容されていた上,同行動傾向は,刑事事件の公判期日において裁判長の制止にも従わず,臨席した弁護人である控訴人Bらも抑止力たり得ないほどの極めて強固なものであった。そして,この顕著で強固な行動傾向が上記面会申出の際にも維持されていたことは,上記 面会申出の際から数分前後しか経っていない頃にも複数回大声を出す状況であったことからも明らかである。他方で,その当時,控訴人Aが,C拘置所職員の声かけに真摯に耳を傾け,その行動傾向が沈静化したことがあったというような事情は見当たらないし(なお,控訴人Aは,保護室に収容されてから4日が経過した平成21年7月27日に至っても,なお職員 の姿を見るや声を荒らげるなどしていた。),本件刑事事件の公判期日で- 5 -(自らの不利益となる)退廷を命じられるまで不規則発言を繰り返していたことから,計算ずくで抗議活動として大声を発していたとはうかがわれないのであるから,控訴人Aの上記反抗的態度は,公判準備を行う必要があることについて合理的な計算を働かせる余地がないほどに強固なものであって,控訴人Aは,上記面会申出の事実を告げられても,計算の上で素 直にこれに応じてC拘置所職員に対する強硬な態度を軟化させるとは到底考え難く,依然として,C拘置所職員の制止に従わず,大声を発する行動傾向が認められる状況にあったことが明らかである。また,控訴人Aが革労協の一員であり,革労協は,死刑執行等に反対 軟化させるとは到底考え難く,依然として,C拘置所職員の制止に従わず,大声を発する行動傾向が認められる状況にあったことが明らかである。また,控訴人Aが革労協の一員であり,革労協は,死刑執行等に反対するほか,刑事施設内で行われる被収容者の身体検査や保護室への収容等,意に沿わない処遇を刑 事施設職員による「テロ」,「弾圧」,「拷問」などと位置付けた上で,そのような処遇に対しては,同時多発的又は連鎖的なシュプレヒコールを実施するなどして徹底的に反抗する方針を採っていたとうかがわれること(乙33の1ないし8)も考慮すれば,拘置所の規律及び秩序を維持するために,控訴人Aの保護室収容を継続することが特に必要と認められる状 況にあったことも明らかである。 以上のとおり,控訴人ら主張に係る面会申出の当時,控訴人Aについては,精神的に著しく不安定であることなどにより,弁護人である控訴人Bから面会申出があった事実を告げられても依然として刑事収容施設法79条1項2号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情 があったというべきであるから,C拘置所職員が控訴人Aに控訴人Bによる面会申出の事実を告げないまま面会を拒否したことが国家賠償法1条1項の適用上違法となることはない。 イ控訴人らの主張被控訴人の主張は否認し,争う。 被控訴人の主張する特段の事情は,未決拘禁者が弁護人等の面会申出の- 6 -事実を伝えられても,未決拘禁者との接見交通(弁護人等との意思疎通)が実現できないことが客観的に明らかである場合(すなわち,絶対に当該面会申出に応じないといえる場合)にのみ認められると解されるところ,本件において,控訴人Aが保護室内において大声を出していたとしても,これはC拘置所当局への抗議を目的とするもの すなわち,絶対に当該面会申出に応じないといえる場合)にのみ認められると解されるところ,本件において,控訴人Aが保護室内において大声を出していたとしても,これはC拘置所当局への抗議を目的とするものであって,控訴人A自身が 意識的に制御できるものであり,控訴人Aが差し迫った公判に備えて必要不可欠であった弁護人との面会を犠牲にしてでもC拘置所当局への抗議を継続することなどおよそあり得ないから,C拘置所職員としては,即時に控訴人Aの保護室収容を中止すべきであった。 争点3(面会拒否による損害) ア控訴人らの主張控訴人らは,平成21年7月27日の面会が認められなかったことにより,同月15日の第10回公判期日で続行された証人尋問の結果を踏まえて臨む必要があった同月29日の第11回公判期日の2日前の面会を妨害され,予定した打合せが一切できないまま同期日を迎えざるを得なかった。 すなわち,控訴人らは,証人尋問の準備のため,控訴人Aに証拠を提示し,その記憶を喚起しながら,尋問準備をする機会を失い,弁護権及び防御権に回復し難い侵害を受け,弁護人の援助を受ける(する)権利を根底から否定された。しかも,C拘置所職員は,本件刑事事件の審理日程を知りながら,敢えて面会を妨害したものである。 以上に照らせば,C拘置所職員の措置により面会が実現しなかったことによって控訴人らが受けた精神的苦痛に対する相当な慰謝料の額は,それぞれ30万円を下らない。 イ被控訴人の主張控訴人らの主張は否認し,争う。 控訴人Aは,C拘置所入所から控訴人Bによる面会申出があったとされ- 7 -る平成21年7月27日までの間に,弁護人と25回にわたって面会し,うち控訴人Bとは19回にわたって面会しており,本件刑事 訴人Aは,C拘置所入所から控訴人Bによる面会申出があったとされ- 7 -る平成21年7月27日までの間に,弁護人と25回にわたって面会し,うち控訴人Bとは19回にわたって面会しており,本件刑事事件について相当程度打合せを重ねた状況にあったこと,控訴人らは,同月29日の第11回公判期日の開廷直前にも相当程度の時間を割いて面会しており,同公判期日までには十分な打合せの時間があったこと,第11回公判期日に 行われた証人尋問は,同公判期日限りのものではなく,平成21年6月4日の第8回公判期日から少なくとも同年10月1日の第13回公判期日までの6期日にわたって実施されており,第11回公判期日は,同一証人の証人尋問の4期日目であり,その後少なくとも2期日にわたって同一証人の証人尋問が実施されたことからすれば,同年7月27日に控訴人らの面 会が行われなかったことによる実害があったとは考え難い。仮に同日の面会ができなかったことにより控訴人らに精神的な損害が発生したとしても,当該損害は,当日のうちに面会できなかったことによる不安感や実際には生じなかった事態が生じるのではないかという憂慮を主とするものにすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実次のとおり補正するほかは,原判決9頁13行目から13頁4行目までのとおりであるから,これを引用する。 原判決10頁21行目の「Eとの接見の申出を」を「少なくともEとの接 見の申出は」に改める。 原判決12頁12行目の「(乙22)」を「(乙22,34ないし36)」に改める。 原判決12頁13行目から20行目までを次のとおり改める。 「ア控訴人Aは,平成20年6月17日,本件刑事事件の共犯者1名と 共に,C拘置所職員からの指導 )」に改める。 原判決12頁13行目から20行目までを次のとおり改める。 「ア控訴人Aは,平成20年6月17日,本件刑事事件の共犯者1名と 共に,C拘置所職員からの指導及び制止に従わず,「F拘置所の死刑- 8 -執行を弾劾するぞ。」などと大声で連鎖的なシュプレヒコールを行ったことから,刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして,保護室に収容された。 イ控訴人Aは,平成20年9月11日,本件刑事事件の共犯者5名と共に,拘置所職員からの指導及び制止に従わず,「死刑執行に反対す るぞ。」などと大声で連鎖的なシュプレヒコールを行ったことから,刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして,保護室に収容された。」原判決12頁24行目から13頁初行までを次のとおり改める。 「エ控訴人Aは,平成21年1月29日,本件刑事事件の共犯者5名と 共に,C拘置所職員からの制止に従わず,「死刑執行を弾劾するぞ。」などと大声で連鎖的なシュプレヒコールを行ったことから,刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして,保護室に収容された。」 原判決13頁4行目末尾を改行の上,次を加える。 「控訴人Aの公判期日における言動等 ア控訴人Aは,平成21年6月4日に行われた本件刑事事件の第8回公判期日において,控訴人Bらが弁護人として出廷していたにもかかわらず,共同被告人らと共に,「証人隠しは許せない。」,「でっち上げ証人はやめろ。」などと不規則発言を繰り返し,裁判長から不規則発言を止めるよう告げられても,これに従わず,不規則発言を繰り 返したため,退廷を命じられた。(甲27の1)イ控訴人Aは,平成21年6月30日に行われた本件刑 ,裁判長から不規則発言を止めるよう告げられても,これに従わず,不規則発言を繰り 返したため,退廷を命じられた。(甲27の1)イ控訴人Aは,平成21年6月30日に行われた本件刑事事件の第9回公判期日において,控訴人Bらが弁護人として出廷していたにもかかわらず,裁判長の公判手続の説明中に不規則発言をし,裁判長から不規則発言を止めるよう告げられても,これに従わず,不規則発言を 繰り返したため,退廷を命じられた。(甲28の1)- 9 -ウ控訴人Aは,平成21年10月1日に行われた本件刑事事件の第13回公判期日において,控訴人Bらが弁護人として出廷していたにもかかわらず,共同被告人らと共に,控訴人Bらの異議申立て手続中に不規則発言を繰り返し,裁判長から不規則発言を止めるよう告げられても,これに従わず,不規則発言を繰り返したため,退廷を命じられ た。(甲32の1)」 2 争点についての判断 争点1(控訴人Bは控訴人Aとの面会を申し出たか)について当裁判所も,控訴人Bは,平成21年7月27日,C拘置所において,控訴人Aとの面会を申し出たものであり,自己都合等による面会申出の取下げ をしたことはなく,C拘置所職員において,控訴人Aが保護室収容中であることを理由に控訴人Aとの面会を認めなかったために,控訴人Aと面会することができなかったものと判断する。その理由は,原判決13頁6行目から14頁14行目まで及び同頁17行目から15頁25行目までのとおりであるから,これを引用する(ただし,14頁17行目冒頭に「」を加える。)。 争点2(保護室収容を理由とする面会拒否の違法性の有無)についてア刑事施設の長は,未決拘禁者が刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に 17行目冒頭に「」を加える。)。 争点2(保護室収容を理由とする面会拒否の違法性の有無)についてア刑事施設の長は,未決拘禁者が刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている場合において面会の申出が弁護人等からあったときは,未決拘禁者が極度の興奮による錯乱状態にある場合のように,精神的に著しく不安定であることなどにより上記申出があった事実を 告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかな場合を除き,直ちに未決拘禁者に同事実を告げなければならず,これに対する未決拘禁者の反応等を確認した上で,それでもなお未決拘禁者が同号に該当するか否かを判断し,同号に該当しない場合には,同条4項により直ちに保護室への収容を中止させて刑事収容施設法115条等により未決拘禁者 と弁護人等との面会を許さなければならないというべきである。 - 10 -そうすると,刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不安定であることなどにより同事実を告げられても依然と して同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がない限り,未決拘禁者及び弁護人等の接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。 イこれを本件についてみると,前記前提事実及び争点1について説示したところによれば,C拘置所職員は,平成21年7月27日,刑事収容施設 法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者であった控訴人A ,前記前提事実及び争点1について説示したところによれば,C拘置所職員は,平成21年7月27日,刑事収容施設 法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者であった控訴人Aとの面会の申出が弁護人である控訴人Bからあったのに,その申出があった事実を控訴人Aに告げないまま,控訴人Aが保護室に収容中であることを理由として控訴人Aと控訴人Bとの面会を許さないこととしたのであるから,その措置は,上記特段の事情がない限り,国家賠償 法1条1項の適用上違法となるというべきである。 そこで,上記特段の事情の有無について検討すると,前記認定事実のとおり,控訴人Aは,平成21年7月27日に控訴人Bによる面会申出がされた当時の前後において,保護室内で大声を発するなどして,C拘置所職員に対する反抗的態度を示していたことが認められるものの,前記認定事 実及び全証拠によっても,控訴人Aが当時極度の興奮による錯乱状態にあったと認めるには足りず,控訴人Aは,C拘置所職員の視察や指導があった際に大声を出すことが多かったこと(前記に照らせば,むしろ意図的にC拘置所職員に対する反抗的態度をとっていたものと推認される。 被控訴人は,控訴人Aの上記反抗的態度が,公判準備を行う必要がある- 11 -ことについて合理的な計算を働かせる余地がないほどに強固なものであったと主張し,公判期日において,控訴人Bら弁護人が在廷していたにもかかわらず,退廷命令を受けるまで不規則発言を繰り返していたことをその根拠の一つとして挙げる。しかしながら,公判期日におけるそのような言動から直ちに拘置所において弁護人のみとの間で行われる公判準備のため の面会の際の言動(行動傾向)を推測することはできず,それ以外に被控訴人の上記主張を認めるに足りる 判期日におけるそのような言動から直ちに拘置所において弁護人のみとの間で行われる公判準備のため の面会の際の言動(行動傾向)を推測することはできず,それ以外に被控訴人の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 他に,前記特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,平成21年7月27日に,弁護人である控訴人Bから面会申出があった事実を控訴人Aに告げないまま,控訴人Aが保護室に収容中 であることを理由として控訴人らの面会を許さなかったC拘置所職員の措置は,控訴人らの接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となるというべきである。 争点3(面会拒否による損害)について被告人あるいは弁護人の基本的な権利である接見交通権が侵害されたもの であることに加え,本件刑事事件の法定刑の重さ(1年以上の有期懲役)や,控訴人Aが本件刑事事件において無罪を主張していたことなども考慮すれば,証人尋問が予定された公判期日の直前における接見交通を妨害されたことによる控訴人らの精神的苦痛は軽視できない。 他方で,① 控訴人Aは,平成20年6月13日のC拘置所入所から平成 21年7月27日までの間に,弁護人と25回(うち控訴人Bとは19回)にわたって面会を重ねていたこと(乙37),② 控訴人Aにおいて,第10回公判期日までの証人Gの尋問結果について,二,三疑問点がないでもないが,一応予想の範囲内である差し迫った打合せの必要を感じていたとまではいえないこと(控訴人A本人第2回3 1頁),③ 第11回公判期日の開廷直前にも,控訴人Aと控訴人Bら弁護- 12 -人とはある程度の時間面会をしていること(乙37),④ 証人Gの証人尋問が続行されたこともあり(甲31,32),控訴人らにおいて第1 回公判期日の開廷直前にも,控訴人Aと控訴人Bら弁護- 12 -人とはある程度の時間面会をしていること(乙37),④ 証人Gの証人尋問が続行されたこともあり(甲31,32),控訴人らにおいて第11回公判期日における具体的かつ現実的な支障が生じたとまではいえないこと(控訴人A本人第2回31頁,34頁,控訴人B本人7頁)などからすれば,控訴人Aと控訴人Bが当日のうちに面会できなかったことによる不安感を覚え たことなどを超えて,本件刑事事件における実害が生じたとまではいえない。 以上の点に加え,本件のようなC拘置所職員の判断を招来した一因が控訴人Aの言動にもあるといい得ることなども総合考慮すれば,控訴人らの被った精神的損害を慰謝するには,被控訴人から控訴人らに対して各10万円を支払わせるのが相当である。 3 結論よって,控訴人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求は,慰謝料各10万円及びこれに対する違法行為時である平成21年7月27日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべきところ,原判決中,これと異 なり,控訴人らの上記請求を全部棄却した部分は失当であって,本件控訴は一部理由があるから,同部分を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官矢尾渉 裁判官村上典子 - 13 -裁判官佐藤康平は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官矢尾渉 典子 裁判官佐藤康平は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官矢尾渉

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