主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人ら (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,第2審とも,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨 第2 事実関係 1 被控訴人と控訴人らは,平成11年8月5日,被控訴人を養親,控訴人らを養子とする養子縁組をした(甲2の1,2)。 2 本件は,被控訴人が,民法814条1項3号に基づき,控訴人らとの離縁を求めるものであり,被控訴人は,次のとおり縁組を継続し難い重大な事由がある旨主張している。 (1) 被控訴人と控訴人らはいずれも成人で,両者の間に扶養関係は存在しない。 (2) 縁組後,被控訴人と控訴人らとの関係が比較的円満であったのは1年にも満たない期間であり,その後は全く交流が途絶えている。 (3) 被控訴人は三重県上野市に居住し,控訴人らは奈良県に居住しており,同居の事実が全くない。 (4) 被控訴人は,控訴人Aから重大な侮辱を受け,控訴人らに対して強固な不信感を有しており,今後の信頼関係の回復は不可能である。 (5) 控訴人らは離縁を拒否する一方,正常な親子関係の回復に向けた努力を全くしていない。 第3 当裁判所の判断 1 甲1,甲2の1及び2,甲3の1及び2,甲4,5,甲7,8,乙1ないし9,控訴人ら及び被控訴人各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 被控訴人は,昭和56年5月26日Cと婚姻した。 (2) 控訴人Aは,Cと23歳ほど年下の弟で,Cが進学や就職等の面倒を見てきたが,被控訴人がCと婚姻して,C宅で暮らすようになった時には,控訴人Aは既に控訴人Bと婚姻(昭和48年10月18日)して,C宅を出ていた。 (3) 被控訴人 下の弟で,Cが進学や就職等の面倒を見てきたが,被控訴人がCと婚姻して,C宅で暮らすようになった時には,控訴人Aは既に控訴人Bと婚姻(昭和48年10月18日)して,C宅を出ていた。 (3) 被控訴人は,平成11年4月13日にCが死亡して一人暮らしになり,それから1か月も経たないうちに乳ガンとの診断を受けて同年6月ころ手術を受けた。被控訴人は,この時期,寂しく心細い思いに囚われていたが,控訴人らから入院中に見舞いを受けたり,控訴人らの家に泊めてもらったりして,控訴人らとの交流を深め,前記のとおり,平成11年8月5日控訴人らと養子縁組をした。 なお,Cには,被控訴人の前妻との間に子Dがいたが,C死亡後,Cと控訴人Aの父Eが所有していた不動産の承継をめぐって,控訴人AとDとの間に紛争があった。 (4) その後,控訴人Aが被控訴人の世話をし,被控訴人が控訴人らに物を与える等して,暫くの間,両者は良好な関係にあったが,控訴人Aが,被控訴人から預かっていた鍵で被控訴人方に留守中勝手に入ったり,被控訴人の前で「姉さんが死んだら全部俺がもらうんだ。」等と言ったりして,被控訴人が嫌な気持ちを抱くこともあった。 (5) 平成12年1月29日から,控訴人らの長男Fが被控訴人方に下宿したが,被控訴人はFの世話を負担に感じるようになり,控訴人BにFの下宿を断り,同年4月5日Fは被控訴人方を引き払った。 (6) Fが被控訴人方を引き払ってから,被控訴人と控訴人らは疎遠になったが,平成12年5月ころ,控訴人らが被控訴人方を訪ねてきた際,被控訴人は丁度外出しようとするところであったため,家に上げるのを断ると,控訴人Aは鍵(前記の被控訴人が鍵を預かっていた錠は付け変えていた。)を渡すよう要求し,被控訴人がこれを拒否すると,控訴人Aは「俺の先祖さんが建てた家なのに,姉さ あったため,家に上げるのを断ると,控訴人Aは鍵(前記の被控訴人が鍵を預かっていた錠は付け変えていた。)を渡すよう要求し,被控訴人がこれを拒否すると,控訴人Aは「俺の先祖さんが建てた家なのに,姉さんの留守に入って何が悪いんだ。」と言った。 (7) 平成12年11月4日,控訴人らが被控訴人方を訪ねて来たが,その時,かねて控訴人Bと諍いがあった岡村某が被控訴人方に来ていたため,被控訴人が控訴人らに,家に来るなら予め電話するように言って返そうとしたことから言い合いになり,被控訴人が縁組解消を口にし,これに対し控訴人Aが「甲家の墓に入れない。寂しく死ねばいい。」と応酬する等して喧嘩別れとなった。 (8) そこで,被控訴人は,控訴人らとの離縁を決意し,弁護士に委任して,平成12年12月21日到達の内容証明郵便で,控訴人Aに対し,被控訴人と控訴人らとの離縁を請求した。 そして,平成13年1月26日,被控訴人は控訴人らとの離縁の調停を奈良家庭裁判所葛城支部に申し立てたが,同調停は同年4月23日不調となった。 (9) 平成13年3月25日,Cと同人の母Gの3回忌で親族が集まった際,墓の建て替えを話し合い移築することになったが,その話が始まる前に帰ってしまっていた控訴人Aは,同年6月1日に甲家の墓参りに行って初めて住職から上記墓の移築の話を聞き,墓を動かすことは厳禁である旨の葉書を被控訴人に送った。しかし,控訴人Aが同年8月7日墓参りに行くと,甲家の墓のあった所が更地になり,墓石が台座から外されて他の墓石とともに脇に置かれていたため,同月8日,控訴人Aは被控訴人に「大変恐ろしいことをやってくれました。先祖の墓を処分するなんて聞いたことがありません。私の祖父母,父母の墓は元に戻してください。そうでないと大変なことが起こりますよ。」等と記載した葉書を送っ 人に「大変恐ろしいことをやってくれました。先祖の墓を処分するなんて聞いたことがありません。私の祖父母,父母の墓は元に戻してください。そうでないと大変なことが起こりますよ。」等と記載した葉書を送った。 (10) 現在,被控訴人は,控訴人らとの養親子関係の解消を強く望んでおり,仮に控訴人らが仲直りを望んできても,応じる気持ちはない。 他方,控訴人Aは,被控訴人に嫌味を言ったことを反省はしているが,謝るつもりはなく,また,控訴人Bは自分たちに離縁されるような理由はなく,また,被控訴人がCから相続した財産は,もともとCと控訴人Aの父Eの財産で,同控訴人が取得すべきものもあると考えて,被控訴人を相続するために,被控訴人との離縁を拒否している。 2 以上の認定事実に基づき,被控訴人の離縁請求の原因となる縁組を継続し難い重大な事由の存否につき判断する。 まず,被控訴人と控訴人らとの養子縁組は,控訴人らの側には,内心,Cから相続した被控訴人の財産を承継したいとの思惑が窺われるものの,被控訴人との間では,養子縁組にあたり,被控訴人の財産を控訴人らが承継することの話合いはなく,これが養子縁組の目的となったものとはうかがわれない。 むしろ,上記認定事実によれば,被控訴人と控訴人らの縁組は,第一義的には,親族的な情愛を前提として,被控訴人が将来扶養を必要とする状態に陥った場合には,控訴人らがその扶養に当たることを目的としたものというべきである。 しかるところ,被控訴人と控訴人らとの養親子関係は,当初こそ親和的であったものの,間もなく被控訴人が控訴人Aの言動に嫌な感じを抱き始め,被控訴人方に下宿したFが同方を退去してからは,被控訴人と控訴人らの間に亀裂が生じ,その後2度程の諍いを経てその亀裂はさらに深まって行って,控訴人Aが被控訴人に甲家の墓を移築したこと じを抱き始め,被控訴人方に下宿したFが同方を退去してからは,被控訴人と控訴人らの間に亀裂が生じ,その後2度程の諍いを経てその亀裂はさらに深まって行って,控訴人Aが被控訴人に甲家の墓を移築したことを非難する葉書を送った段階では,被控訴人と控訴人Aの間には互いに憎悪感があるばかりであるし,控訴人Aの妻として養子縁組した控訴人Bと被控訴人の間にも,親愛の情はすっかり失われており,もはや,被控訴人が扶養を必要とする状態になった場合に,被控訴人と控訴人らの親族的な情愛の下で,控訴人らが被控訴人の扶養に当たる等ということは望むべくもなく,そのような被控訴人と控訴人らの関係が今後改善される見込みもない。 したがって,被控訴人と控訴人らの間には,縁組を継続しがたい重大な事由があるというべきである。 なお,控訴人らは,被控訴人と控訴人らの縁組に至る経緯や,縁組後の控訴人らの誠意ある態度等を考えると,単なる短時間の些細な口論を理由とする被控訴人の一方的な離縁の決意を,縁組を継続しがたい重大な事由とすることはできないと主張するが,前記認定事実によれば,被控訴人と控訴人らは縁組後8か月ほどで疎遠になり,それから半年も経たないうちに深刻な対立となって現在まで続いているのであって,被控訴人と控訴人らとの間に生じているものは,到底単なる短時間の些細な口論というだけでは片づけられるものではない。そして,そのような事態を招いた原因は多分に控訴人らの態度にあることがうかがわれ,被控訴人が,控訴人らの誠意ある態度にもかかわらず一方的に離縁を決意したとはいえないから,控訴人らの上記主張は採用する余地がない。 3 結論以上のとおりであるから,被控訴人と控訴人らとの離縁を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の負担につ の上記主張は採用する余地がない。 3 結論以上のとおりであるから,被控訴人と控訴人らとの離縁を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の負担につき民事訴訟法67条,61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官川添利賢裁判官玉越義雄
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