令和4年4月15日判決言渡し・同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第27469号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日令和4年2月15日判決主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、30万円及びこれに対する令和2年11月7日から支 払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告が運営する電子商取引サイトにおいて、原告が、充電式モバイルバッテリーを購入したところ、その後、上記バッテリーが発火し原告に損害が生じたとして、原告が、被告に対し、第一次的に、上記サイトの利用を目的 とする契約に基づく債務の不履行に基づき、上記損害の一部として30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年11月7日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を、第二次的に、不法行為に基づき、慰謝料30万円及びこれに対する上記遅延損害金の支払を、第三次的に、被告が商法14条又は会社法9条の類推適用により上記バッテリーの販 売者と連帯して債務不履行責任を負うとして、同責任に基づき、第一次的請求と同内容の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等 ア被告は、インターネット等を利用した電子商取引事業等を目的とする合 同会社である。 被告は、「Amazon.co.jp」と表記されるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)上で展開される電子商取引サイト(取引デジタルプラットフォーム)を運営しており、自ら本件ウェブサイトへの出品も行っている。 o.jp」と表記されるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)上で展開される電子商取引サイト(取引デジタルプラットフォーム)を運営しており、自ら本件ウェブサイトへの出品も行っている。 (甲1、乙2)イ本件ウェブサイトを利用して取引をするためには、会員登録(アカウントの作成)をする必要がある。この会員登録をすると、登録者と被告ないしその関連会社との間において、本件ウェブサイトに係る利用規約(乙2参照。以下「本件利用規約」という。)が適用されることとなる。 (甲9、乙2)ウ原告は、上記イの会員登録をした上、本件ウェブサイトを利用していた者である(以下、原告が本件ウェブサイトを利用するに当たり原告と被告との間に適用される本件利用規約その他の契約関係を、「本件利用契約」という。)。 ⑵ 本件ウェブサイトでの商品購入原告は、平成28年6月14日、本件ウェブサイトにおいて、「車用ジャンプスターター」としての充電式モバイルバッテリー(以下「本件バッテリー」という。)を7999円(支払額6399円)で購入した(以下、この購入に伴い成立した販売者と原告との売買契約を「本件売買契約」とい う。)。本件ウェブサイト内の本件バッテリーの販売用ページにおいては、販売者ないし出品者は「AUKEYJAPAN(メーカー直営店)」(以下「オーキージャパン」という。)と表記されていた。 本件バッテリーは、翌日頃には原告に引き渡された。 (甲3) ⑶ 本件バッテリーによる火災事故とその後の経緯 ア平成29年11月17日午前3時15分頃、当時の原告の居宅で火災(以下「本件火災」という。)が発生し、居宅の一部が焼損するとともに、多数の家財に損傷が生じた。本件火災の原因は、本件バッテリー内部 平成29年11月17日午前3時15分頃、当時の原告の居宅で火災(以下「本件火災」という。)が発生し、居宅の一部が焼損するとともに、多数の家財に損傷が生じた。本件火災の原因は、本件バッテリー内部の電極板の短絡と判定された。 (甲5~7) イ原告は、自ら契約していた損害保険会社から、本件火災に伴う保険金として、平成30年4月以降、合計737万0290円の支払を受けた。その内訳は、損害保険金550万円(損害査定額は933万5517円)、残取費用保険金41万2290円(実費相当額)、賃借費用保険金25万8000円(実費相当額は26万7720円)、臨時費用保険金100万 円及び失火見舞い費用保険金20万円であった。 (甲12~15)ウ本件火災後、原告は、代理人弁護士(ただし、本訴の原告訴訟代理人弁護士らとは異なる。)を通じて、オーキージャパンとの連絡を試みるなどし、最終的に、令和元年10月、いずれも中華人民共和国(以下「中国」 という。)法人である傲基科技股份有限公司(以下「オーキー」という。)及び傲基国際有限公司(以下、「オーキーインターナショナル」といい、オーキーと併せて「オーキーら」という。)との間で、原告がオーキーから購入した本件バッテリーについての損害賠償請求につき、和解に係る合意(以下「本件和解」という。)が成立した。本件和解では、オー キーインターナショナルが原告に和解金として184万0631.95円を支払うなどとされ、これに基づき、同月29日、原告に184万0632円が支払われた。 (甲16、18) 2 争点及びこれに関する当事者の主張 ⑴ 本件利用契約上の債務不履行責任の有無(第一次的請求関係) (原告の主張)ア総論本件ウェブサイトの利用者と、本件ウェ 8) 2 争点及びこれに関する当事者の主張 ⑴ 本件利用契約上の債務不履行責任の有無(第一次的請求関係) (原告の主張)ア総論本件ウェブサイトの利用者と、本件ウェブサイトで物品を販売する事業者との取引は、被告(本件ウェブサイト)の介在により成立が可能となる。また、被告は、本件ウェブサイトにおいて、事業者が取引を行う場を 提供するとともに、利用者が事業者に支払った代金等から手数料を取得することにより利益を得ている。したがって、被告は、本件ウェブサイトにおける取引から生ずる危険も負担すべきであり、上記利用者に対する本件ウェブサイトの利用契約に基づく信義則上の義務として、消費者が安心、安全に取引できる欠陥のないシステムを構築、提供する義務を負う。 イ出店・出品審査義務違反上記アの信義則上の義務の具体的内容として、まず、出店・出品審査義務がある。 すなわち、いわゆるプラットフォーム事業者が介在する取引では、瑕疵ある商品の出品等の消費者トラブルが多発しているところ、消費者として は、個々の出品者について直接知る術がなく、プラットフォーム事業者を信頼して取引をせざるを得ない一方、同事業者は、自身のプラットフォームを利用しようとする出品者に対し、一定の情報提供を義務付け、出品者としての適格性を判断することが可能である。このような事情からすれば、上記トラブルを防止するため、プラットフォーム事業者には、消費者 が安心、安全に取引できるシステムを構築する義務の一つとして、出店・出品審査を行う義務を負うものというべきである。 また、本件バッテリーはリチウムイオンバッテリーであるところ、リチウムイオンバッテリーについては、平成24年以降、重傷例を含めた事故が年々増加している一方、安全性を保 を負うものというべきである。 また、本件バッテリーはリチウムイオンバッテリーであるところ、リチウムイオンバッテリーについては、平成24年以降、重傷例を含めた事故が年々増加している一方、安全性を保証する認証等の制度が複数存在して いる。したがって、被告としては、少なくとも本件売買契約が締結された 平成28年当時、リチウムイオンバッテリーが人の生命身体に危険を及ぼす可能性があることを認識していたか、認識可能であったといえ、出品審査義務として、本件ウェブサイトに出品されるリチウムイオンバッテリーが上記認証を取得しているか確認すべき義務を負っていたというべきである。 それにもかかわらず、被告は上記のような出店・出品審査義務を怠ったのであるから、債務不履行責任を負う。 ウ保険・補償制度構築義務違反消費者は、本件ウェブサイトで購入した商品により不測の被害を受けるおそれがあり、かつ、当該被害の適切な補償を販売者、出品者から受けら れないリスクがある。このリスクを回避し、消費者が安心、安全に取引をするためには、消費者に生じた被害をプラットフォーム事業者が補償することが必要である。したがって、被告は、消費者が不測の損害を被った際にその損害を填補できる保険・補償制度を構築する義務を負っていたというべきである。被告が主張する「マーケットプレイス保証制度」は、同義 務を履行するものとはいえない。 被告は、上記のような保険・補償制度構築義務を怠ったものであるから、債務不履行責任を負う。 (被告の主張)ア出店・出品審査義務違反がないこと 原告が主張する出店・出品審査義務については、同義務が導かれる根拠が明らかでない。原告は、いかなる出品者であれば商品に問題等が生じた場合のトラブルを一定程度抑止でき 審査義務違反がないこと 原告が主張する出店・出品審査義務については、同義務が導かれる根拠が明らかでない。原告は、いかなる出品者であれば商品に問題等が生じた場合のトラブルを一定程度抑止できるのか、出品者にどのような情報の提供を求めればそれを審査することができるかを全く明らかにしていない。 出品審査義務について、原告は、リチウムイオンバッテリーの安全性に 関する認証等の制度が複数存在することを指摘する。しかし、上記制度の 認証等は、リチウムイオンバッテリー搭載製品を含む電気製品を製造・販売する事業者ですら取得を義務付けられているわけではない。したがって、上記事業者に製品を販売する場を提供しているにすぎない被告において、本件ウェブサイトで販売されるリチウムイオンバッテリーが上記認証等を取得しているか否かを確認する義務を負う理由はない。なお、リチウ ムイオンバッテリーが組み込まれたモバイルバッテリーが電気用品安全法の規制対象となったのは、本件売買契約後の平成30年2月である。 出品者が将来どのような商品を出品するか、消費者がどのような方法・態様で購入商品を使用するかは、出店時点では誰も予測し得ない上、本件ウェブサイトで販売される数億点に上る商品全てについて、その出品時点 における瑕疵の有無又は瑕疵の存在する可能性の有無を被告のような一事業者が判断することは不可能である。取り分け、本件バッテリーのように、本件ウェブサイトでの購入後年単位の時間が経過した後に事故が発生する可能性の有無の判断を被告に求めるのは、不可能を強いるものである。原告の出店・出品審査義務に係る主張は、この点を無視した具体性の ないものであり、失当である。 したがって、被告には、出店・出品審査義務違反はない。 イ保険・補償制度 を強いるものである。原告の出店・出品審査義務に係る主張は、この点を無視した具体性の ないものであり、失当である。 したがって、被告には、出店・出品審査義務違反はない。 イ保険・補償制度構築義務違反がないこと原告が主張する保険・補償制度構築義務についても、その根拠が明らかではない。 また、被告は、本件ウェブサイトにおいて出品者から購入した商品に不具合や損傷があった場合や、当該商品が出品者の説明と著しく異なるものであった場合に、購入者に代金の全部又は一部を返金する「マーケットプレイス保証制度」を既に導入しており、保険・補償制度構築義務の履行を怠っているものではない。この制度で不十分というのであれば、どのよう な制度を構築すればよいのかについて、原告は何ら具体的な主張をしてい ない。 したがって、被告には、保険・補償制度構築義務違反はない。 ⑵ 不法行為責任の有無(第二次的請求関係)(原告の主張)インターネットにおける売買において、特定商取引に関する法律(以下 「特定商取引法」という。)11条5号、特定商取引に関する法律施行規則8条1、2号に基づいて出品者が行う氏名又は名称、住所、電話番号及び代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名の表示(以下「本件特商法表示」という。)は、消費者が出品者について知るための唯一の情報源であり、この表示が不十分又は不明確である場合、消費者はトラブルを解決する 手段を絶たれることになる。そして、プラットフォーム事業者は、プラットフォーム上で取引される財・サービスについて、消費者トラブルにつながる不適切な表示をなくすためのチェック体制を構築することが求められている。 被告は、本件ウェブサイトに出店・出品した事業者から利益を受けている ので サービスについて、消費者トラブルにつながる不適切な表示をなくすためのチェック体制を構築することが求められている。 被告は、本件ウェブサイトに出店・出品した事業者から利益を受けている のであるから、上記チェック体制を構築する義務を課しても不当ではない。 むしろ、被告は、特定商取引法に違反する事業者が行う取引から利益を得るべきでない。したがって、被告は、本件ウェブサイトにおいて出品者が行う本件特商法表示に関し、消費者が問合せ可能な適切な表示を維持・把握する体制を構築する義務を負っていたというべきである。しかし、原告の代理人 が本件ウェブサイトに表示されているオーキージャパンの連絡先(電話番号)に問い合わせたところ、誰も電話に出なかったものであり、本件バッテリーに係る本件ウェブサイトの本件特商法表示は不適切であって、被告は、上記義務に違反している。 (被告の主張) 特定商取引法は、販売業者が通信販売をする場合の商品の販売条件につい て広告するときに、一定の事項を表示することを義務付けるとともに、同義務に違反したときは、当該販売業者に対して業務停止命令等の行政処分を課すことで、同義務の履行を確保しようとしている(同法11条、15条)。 この制度の下では、行政処分を課されることなど気にも留めない販売業者が、本件特商法表示を行わず、その結果、消費者が当該販売業者に連絡を取 ることができない事態が生じ得ることは、織り込み済みであるといえる。それにもかかわらず、販売業者がプラットフォーム上で商品を販売した場合に限って本件特商法表示が行われることが確保されなければならない理由はなく、しかも、それがプラットフォーム事業者の責務とされなければならない理由もない。 なお、令和3年4月に成立し、同年5月10 本件特商法表示が行われることが確保されなければならない理由はなく、しかも、それがプラットフォーム事業者の責務とされなければならない理由もない。 なお、令和3年4月に成立し、同年5月10日に公布された取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(未施行)においては、取引デジタルプラットフォームを提供する事業者には、プラットフォームを利用して行われる通信販売取引について、消費者が販売業者と円滑に連絡を取ることができるようにする措置を講じたり、プラットフォーム 上での販売業者による商品の販売条件の表示に関しプラットフォーム利用者から苦情の申出を受けた場合において、当該苦情に係る事情の調査等、表示の適正を確保するために必要と認める措置を講じたりする努力義務が規定されているにとどまる(同法3条1項)。今後施行される法律においてすら、上記努力義務を課せられるにとどまるのであるから、ましてや本件売買契約 が締結された平成28年の時点で、被告が同様の義務を負っていたといえないことは明らかである。 したがって、被告は、不法行為に基づく責任を負わない。 ⑶ 商法14条又は会社法9条の類推適用による責任の有無(第三次的請求関係) (原告の主張) ア本件売買契約は、オーキーと原告との間で締結されたものであるが、次のイ以下の事情により、被告は、商法14条又は会社法9条の類推適用により、オーキーの本件売買契約上の債務不履行責任につき、オーキーと連帯して責任を負う。 イ外観の存在 本件ウェブサイトにおいては、販売される商品の掲載ページに被告の商号が利用者の目につくように表示される一方、販売元の表示は小さく、目に留まりにくくなっている。そして、被告が販売元の場合とそうでない場 本件ウェブサイトにおいては、販売される商品の掲載ページに被告の商号が利用者の目につくように表示される一方、販売元の表示は小さく、目に留まりにくくなっている。そして、被告が販売元の場合とそうでない場合とで、ページや商品購入までの表示及び流れに異なるところがない。そして、被告は、販売元に代行して代金の回収を行い、被告が購入者に対し て領収書を発行し、商品が発送される際の包装には被告の商号が印字され、本件ウェブサイトにおいて商品を購入した場合、被告が販売元か否かにかかわらず、被告により注文番号が付与され、被告から注文者に確認メールが送られる。このような事情からすれば、本件ウェブサイトにおいて商品を購入した利用者は、販売元が被告であると誤認をするものであり、 本件ウェブサイトにはそのような誤認をする外観が存在するといえる。本件バッテリーについても、販売者が被告であるとの外観が存在した。 ウ外観作出に対する被告の帰責性上記イの外観は、被告が本件ウェブサイト上で取引を行う際の集客、出品者の管理、代金回収など、被告の収益のために行われているものである から、上記外観が存在することについて被告に帰責性がある。 エ原告の善意無重過失原告は、本件バッテリーの販売者が被告であると誤認して本件売買契約を締結した。本件ウェブサイトには、上記誤認を防止する表示はなく、上記誤認をしたことにつき原告に重過失はない。上記誤認について原告に軽 過失がないことは、被告の責任を認めるための要件ではない。 原告は、本件火災の後、オーキーに連絡を取ろうとしたが、それは、本件火災の後に調査を行った結果として、本件バッテリーはオーキーがオーキージャパンを代理店として販売したことが判明したからにすぎず、本件売買契約時点で売主がオ ーキーに連絡を取ろうとしたが、それは、本件火災の後に調査を行った結果として、本件バッテリーはオーキーがオーキージャパンを代理店として販売したことが判明したからにすぎず、本件売買契約時点で売主がオーキーであると認識していたわけではない。 オ以上からすれば、被告は、オーキーと連帯して本件売買契約上の債務不 履行責任を負うところ、オーキーは、本件火災を生じさせるような本件バッテリーを原告に引き渡したことにつき債務不履行責任を負うことから、被告は、本件火災により原告に生じた損害につき賠償責任を負う。 (被告の主張)本件ウェブサイトにおいてオーキーが出品者である場合は、商品ページに おいて、「出荷元」も「販売元」も「オーキー日本公式ストア」と表示されるのであるから、購入者において出品者が被告であるとの誤解は生じようがない。 また、原告は、本件火災の後、オーキージャパンに連絡を取ろうとしたことなどを自認しており、そうであれば、原告は、本件売買契約の時点で、本 件バッテリーの販売者がオーキーであると認識していたといえ、上記販売者を被告と誤認して取引をしたものではない。 仮に商法14条又は会社法9条の類推適用を主張するのであれば、営業主体の誤認につき善意無過失を主張立証すべきであるところ、原告は、無過失については主張立証をしない。 以上からすれば、本件売買契約について商法14条又は会社法9条を類推適用することはできない。 ⑷ 原告の損害(原告の主張)ア債務不履行による損害額 被告の債務不履行によって原告に生じた損害の額は、次の①(積極損 害)の額から②(控除額)の額を差し引いた200万4605円である。 ① 積極損害合計1001万5527円ⅰ 焼損した家財道具の価額 933 告に生じた損害の額は、次の①(積極損 害)の額から②(控除額)の額を差し引いた200万4605円である。 ① 積極損害合計1001万5527円ⅰ 焼損した家財道具の価額 933万5517円ⅱ 廃棄物処理費用 41万2290円ⅲ 仮住居費用 26万7720円 ② 控除額合計801万0922円ⅰ 火災保険金 617万0290円ⅱ 本件和解に基づいてオーキーから支払われた見舞金 184万0632円イ不法行為による損害額 被告の上記⑵の不法行為の結果、原告は、本件火災による損害の賠償に関し不安及び精神的苦痛を受けた。この精神的苦痛等を慰謝するに足りる金額は、30万円を下らない。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件利用契約上の債務不履行責任の有無)について(第一次的請求関係)⑴ 前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 ア本件火災後、原告(当時31歳)は、弁護士(本訴の原告代理人以外の弁護士)を代理人として、オーキージャパンに連絡を取ろうと、本件バッテリーに係る本件特商法表示として記載された中国の電話番号に電話を架けたが、誰も電話に出なかった。そこで、原告は、本件ウェブサイトにあったオーキージャパンに連絡を取るためのフォームを利用して、オーキー ジャパンへの連絡を試み、以後、オーキージャパンとのやり取りが続い た。 (原告の年齢につき甲5、弁論の全趣旨)イ原告は、オーキージャパンとのやり取りが円滑に進まないと感じたことから、被告に対し、紛争解決の仲介をするよう依頼したが、被告は、本件バッテリーの出品者との間で直接交渉するよう求めた。 (弁論の 告は、オーキージャパンとのやり取りが円滑に進まないと感じたことから、被告に対し、紛争解決の仲介をするよう依頼したが、被告は、本件バッテリーの出品者との間で直接交渉するよう求めた。 (弁論の全趣旨)ウ結局、原告は、本件火災から約1年11か月後の令和元年10月、オーキーらとの間で本件和解を成立させた。本件和解においては、原告が本件バッテリーを中国法人のオーキーから購入したことを前提に、オーキーらが支払う和解金額の他、同金額が支払われれば、原告は、本件バッテリー に関しオーキーらにいかなる責任も追及しないこと、なお解決に至らない問題があれば、中国の裁判所に提訴することができることなどが定められている。 (甲18)⑵ 出店・出品審査義務違反について ア原告は、被告が、本件ウェブサイトにおける取引から利益を得ていることなどから、同取引から生ずる危険も負担すべきであり、消費者が安心、安全に取引できるシステムを構築する信義則上の義務を負うとした上、当該義務の中には出店・出品審査義務が含まれると主張する。 イ原告は、上記アの主張の根拠として、消費者委員会内に設けられたオン ラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会が作成した報告書(甲10。以下「本件報告書」という。)を挙げる。 しかし、本件報告書は、そもそも作成されたのが平成31年4月と本件売買契約から約2年10か月も後である上、その内容も、プラットフォーム事業者の出店・出品審査の関係では、利用者の安心、安全に向けた「提 言」としてのものであり、直ちに上記アの主張の裏付けとなるものではな い。 また、原告は、本件バッテリーを含むリチウムイオンバッテリーについて、本件売買契約当時、事故が年々増加していた一方、安 のであり、直ちに上記アの主張の裏付けとなるものではな い。 また、原告は、本件バッテリーを含むリチウムイオンバッテリーについて、本件売買契約当時、事故が年々増加していた一方、安全性を保証する認証等の制度が複数存在したことを上記アの主張の根拠として挙げる。 しかし、原告が指摘するリチウムイオンバッテリーに関する認証等の制 度は、いずれも、平成28年の本件売買契約当時、同バッテリーを搭載する製品の製造・販売を行う業者について取得が法律上義務付けられていたものではない(乙4参照)。したがって、上記制度の存在をもって、上記当時、被告にリチウムイオンバッテリー搭載製品の出品につき原告が主張するような審査義務があったと認めることはできない。 ウ上記イの事情に加え、原告が主張する出店・出品審査義務の具体的内容が必ずしも明らかではなく、被告がそのような審査を可能な限り講ずることが望ましいという指摘を超えるものとは認め難いこと、本件バッテリーについては、結局、原告は、出品者であるオーキーとの間で本件和解を成立させることができていることをも考慮すれば、原告の上記アの主張は採 用することができないというべきである。 ⑶ 保険・補償制度構築義務違反について原告は、被告が負うべき消費者が安心、安全に取引できるシステムを構築する義務の具体的内容として、保険・補償制度構築義務も主張し、その根拠として、本件報告書を挙げる。 しかし、上記⑵イで説示したところと同様の理由により、本件報告書は上記主張の裏付けとなり得ない。のみならず、本件報告書中の保険・補償制度に係る提言は、インターネット取引に関するアンケート調査の結果、プラットフォーム事業者において行ってほしいサービスとして、詐欺に遭った場合の返金、消費者ト 。のみならず、本件報告書中の保険・補償制度に係る提言は、インターネット取引に関するアンケート調査の結果、プラットフォーム事業者において行ってほしいサービスとして、詐欺に遭った場合の返金、消費者トラブルにあった場合の補償を求める回答が約1割程度見ら れたことを受けたものであるから(本件報告書62~63頁)、一定の場合 に代金の一部又は全部を返金するという被告が採用済みの「マーケットプレイス保証制度」は、上記提言に沿ったものと認められるとともに、いずれにせよ、原告が主張するような保険・補償制度の構築をプラットフォーム事業者に義務付ける趣旨のものとは認められない。 上記の事情に加え、原告が被告の義務と主張する保険・補償制度の具体的 内容が何ら明らかではない上、原告は、結局、本件バッテリーの出品者であるオーキーとの間で本件和解を成立させることができていることをも考慮すれば、原告の上記主張は、採用することができないというべきである。 2 争点⑵(不法行為責任の有無)について(第二次的請求関係)原告は、被告は、本件ウェブサイトにおける出品者の本件特商法表示に関 し、消費者が問合せ可能な適切な表示を維持・把握する体制を構築する義務を負う旨主張する。 しかし、上記体制の具体的内容が明らかではないことをおくとしても、前記前提事実及び上記1⑴認定のとおり、本件バッテリーについては、出品者への連絡先として電話番号が記載され、それとは別に、連絡用のフォームも用意さ れていて、現に、原告は、上記フォームを利用してオーキーらと連絡を取り、本件和解を成立させているのである。この過程で、本件バッテリーに係る本件特商法表示として記載された電話番号に電話を架けたが誰も出なかったとしても、そのことから当然に、本件バッテリーの出品 絡を取り、本件和解を成立させているのである。この過程で、本件バッテリーに係る本件特商法表示として記載された電話番号に電話を架けたが誰も出なかったとしても、そのことから当然に、本件バッテリーの出品者について本件特商法表示の不備があるということにはならず、まして、被告について、上記本件特商法表 示に関する義務違反があると認めることはできない。また、原告は、オーキージャパンないしオーキーらへの連絡方法が限られ迅速な対応が受けられなかったとも指摘するが、そもそもオーキージャパン等といつどのように連絡を取ろうとしたか(電話を何回架けたかを含む。)について、具体的な主張立証をしていない上、中国法人であるオーキーらとの連絡方法として電話及び上記フォ ーム以外に何を想定しているのかも不明である。いずれにしろ、オーキージャ パン等の対応の遅れがあったとして、その責任を被告に負わせるべき根拠は認め難い。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 争点⑶(商法14条又は会社法9条の類推適用による責任の有無)について(第三次的請求関係) ⑴ 原告は、本件売買契約の時点で、本件バッテリーの販売者は被告であると誤認していたとし、それを前提に、商法14条又は会社法9条の類推適用により、被告がオーキーと連帯して本件売買契約上の債務不履行責任を負うと主張する。 ⑵ 本件売買契約上の債務不履行責任を第一次的に負うべきオーキーとの間で 本件和解を成立させ、和解金の支払を条件にオーキーの免責を認め、同和解金を受領済みである原告において、被告に上記債務不履行責任を追及することができるかという問題はおくとしても、そもそも、原告が、本件売買契約の時点で、本件バッテリーの販売者を被告と誤認していたことを認めるに足りる証 る原告において、被告に上記債務不履行責任を追及することができるかという問題はおくとしても、そもそも、原告が、本件売買契約の時点で、本件バッテリーの販売者を被告と誤認していたことを認めるに足りる証拠がない。かえって、上記1⑴認定の本件火災後の原告の対応を考慮 すれば、原告は、上記販売者がオーキーであることを当初から認識していたことがうかがえるというべきである。 したがって、原告の上記⑴の主張は失当というべきである。 4 結論以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がない。よって、これらを棄却す ることとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第16部 裁判長裁判官伊藤正晴 裁判官五十嵐浩介 裁判官横山怜太郎
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