平成24(行ケ)10453 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年8月9日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文23,993 文字)

 平成25年8月9日判決言渡平成24年(行ケ)第10453号審決取消請求事件平成25年8月7日口頭弁論終結判決原告日本電動式遊技機特許株式会社訴訟代理人弁護士小松陽一郎同森本純同山崎道雄被告株式会社三共 訴訟代理人弁理士重信和男同小椋正幸同溝渕良一同堅田多恵子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2012-800095号事件について平成24年11月27日にした審決を取り消す。 第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。) 被告は,平成19年5月28日に出願(ただし,平成17年2月17日を出願日とする特願2005-40601号の分割出願)され,平成22年6月4日に設定登録された,発明の名称を「スロットマシン」とする特許第4523017号(以下「本件特許」という。請求項の数は1である。)の特許権者である。 原告は,平成24年6月7日,特許庁に対し,本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2012-800095号事件として審理をした結果,平成24年11月27 ある。 原告は,平成24年6月7日,特許庁に対し,本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2012-800095号事件として審理をした結果,平成24年11月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年12月6日,原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載(甲21の1)本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本件特許発明」という。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。 「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって,遊技の制御を行う遊技制御手段を備え,前記遊技制御手段は,データを読み出し及び書き込み可能に記憶する記憶領域を有する記憶手段であり,前記記憶領域として前記遊技制御手段が動作を行うためのデータが記憶されるワーク領域と,前記遊技制御手段が動作を行うためのデータが読み出し及び書き込みが行われることのない未使用領域と,が少なくとも割り当てられたデータ記憶手段と,複数種類の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,前記 データ記憶手段における記憶領域のうち該成立した初期化条件の種類に対応して定められた領域を初期化するとともに,前記データ記憶手段の記憶領域における前記未使用領域を1ゲーム毎に初期化する初期化手段と,を含み,前記データ記憶手段には,記憶領域を特定するアドレスが割り当てられているとともに,前記初期化手段 ータ記憶手段の記憶領域における前記未使用領域を1ゲーム毎に初期化する初期化手段と,を含み,前記データ記憶手段には,記憶領域を特定するアドレスが割り当てられているとともに,前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み,前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化することを特徴とするスロットマシン。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであるが,その要旨は,(1)本件特許発明は特開2004-223077号公報(甲1。以下「引用公報」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)ではない,(2)本件特許発明は,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく,特許法29条2項により無効とすることはできない,というものである。審決が認定した甲1発明の内容,本件特許発明と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。(1) 甲1発明の内容「1ゲームに対して賭け数を設定することによりゲームを開始させること が可能となり,可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,可変表示装置2の内部には,リールモータの駆動によって回転/停止さ 導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,可変表示装置2の内部には,リールモータの駆動によって回転/停止させられる,3つのリール3L,3C,3Rから構成されるリールユニット3が設けられ,リール3L,3C,3Rの外周部には,それぞれ「色なし7」,「色つき7」,「BAR」,「JAC」,「スイカ」,「チェリー」,「ベル」といった図柄が所定の順序で描かれており,スロットマシンにおける遊技の進行全体の流れを制御するメイン側の制御基板であって,CPU111,RAM112,ROM113及びI/Oポート114を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110を搭載している,遊技制御基板101を備え,遊技制御基板101のRAM112は,ワーク領域としての重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,設定値ワーク112-4及び非保存ワーク112-5と,未使用領域112-6と,スタック領域としての未使用スタック領域112-7及び使用中スタック領域112-8とに分かれており,重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,設定値ワーク112-4,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7,使用中スタック領域112-8は,RAM112のメモリマップにおいて,この順に配置されており,重要ワーク112-1は,電源投入時にRAM112が壊れていた場合と設定スイッチ91による設定が終了した場合にのみクリアされ,一般ワーク112-2は,ビッグボーナス終了時の他に,電源投入時にRAM112が壊れていた場合と設定が終了した場合にクリアされ,特別ワーク112-3は,電源投 した場合にのみクリアされ,一般ワーク112-2は,ビッグボーナス終了時の他に,電源投入時にRAM112が壊れていた場合と設定が終了した場合にクリアされ,特別ワーク112-3は,電源投入時にRAM112が壊れていた場合に のみクリアされ,設定値ワーク112-4は,設定スイッチ91による設定値を保持するワーク領域であり,設定の終了時に当該設定された値が,電源投入時にRAM112が壊れていた場合に設定値1を示すデータが入れられ,他の場合には,ここに値を入れることはなく,非保存ワーク112-5は,スイッチの状態を保持するワーク領域であり,電源投入時にはRAM112が壊れていたか否かに関わらず,クリアされ,未使用領域112-6は,RAM112のうちの使用されていない領域であり,電源投入時(RAM112が壊れていたか否かに関わらない),設定終了時,ビッグボーナス終了時,及び各ゲーム開始時にクリアされ,未使用スタック領域112-7は,スタック領域のうちの使用されていない領域であり,未使用領域112-6と同じ条件でクリアされ,使用中スタック領域112-8は,スタック領域のうちの使用されている領域であり,クリアされることはないものであり,各領域112-1~8は,クリアされるときの条件によって区別されるものであり,RAM112の各領域112-1~8をクリアする条件は図7にまとめられたように,電源投入時でRAMが壊れていた時は,重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,設定値ワーク112-4,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,電源投入時でRAMが壊れていなかった時は,非保存ワーク112-5, -3,設定値ワーク112-4,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,電源投入時でRAMが壊れていなかった時は,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,毎遊技開始時は,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化されるもので, 初期処理は,まず直前にメインスイッチ94の操作により電源が投入されたかどうかを判定し(ステップS101),直前に電源が投入された場合には,RAM112の状態をチェックし,そのデータ内容が壊れているかどうかを判定し(ステップS102),RAM112が壊れていなければ,非保存ワーク112-5のみをクリアして(ステップS103),ステップS108の処理に進み,RAM112が壊れていた場合には,重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,及び非保存ワーク112-5をクリアすると共に,設定値ワーク112-4に設定値として1を入れて(ステップS104),ステップS108の処理に進み,また,ステップS101において直前に電源が投入されたのではなかった場合には,直前に設定スイッチ91の操作により内部当選確率の設定変更がされたかどうかを判定し(ステップS105),設定変更がされていた場合には,重要ワーク112-1と一般ワーク112-2とをクリアし(ステップS106),さらに,その操作により変更された設定の値を設定値ワーク112-4に入れて(ステップS107),ステップS108の処理に進み,設定変更もされていなかった場合には,そのままステップS108の処理に進み,ステップS108では,いずれの条件においてもクリ 4に入れて(ステップS107),ステップS108の処理に進み,設定変更もされていなかった場合には,そのままステップS108の処理に進み,ステップS108では,いずれの条件においてもクリアされることとなる未使用領域112-6及び未使用スタック領域112-7をクリアして,初期処理を終了する,スロットマシン。」(2) 一致点「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能 となるとともに,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって,  遊技の制御を行う遊技制御手段を備え,  前記遊技制御手段は,  データを読み出し及び書き込み可能に記憶する記憶領域を有する記憶手段であり,前記記憶領域として前記遊技制御手段が動作を行うためのデータが記憶されるワーク領域と,前記遊技制御手段が動作を行うためのデータが読み出し及び書き込みが行われることのない未使用領域と,が少なくとも割り当てられたデータ記憶手段と,  複数種類の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,前記データ記憶手段における記憶領域のうち該成立した初期化条件の種類に対応して定められた領域を初期化するとともに,前記データ記憶手段の記憶領域における前記未使用領域を1ゲーム毎に初期化する初期化手段と,  を含む,  スロットマシン。」  (3) 相違点「本件特許発明は,  前記データ記憶手段には,記憶領域を特定するアドレスが割り当てられている(以下「構成要件C」という。)とともに, 前記初期化手段は,2種類以上の初期化条 相違点「本件特許発明は,  前記データ記憶手段には,記憶領域を特定するアドレスが割り当てられている(以下「構成要件C」という。)とともに, 前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み,前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する(以下「構成要件D」という。)のに対して,  甲1発明は,  重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,設定値ワーク112-4,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7,使用中スタック領域112-8は,RAM112のメモリマップにおいて,この順に配置されており,   RAM112の各領域112-1~8をクリアする条件は図7にまとめられたように, 電源投入時でRAMが壊れていた時は,重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,設定値ワーク112-4,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,  電源投入時でRAMが壊れていなかった時は,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,毎遊技開始時は,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初 RAMが壊れていなかった時は,非保存ワーク112-5,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化され,毎遊技開始時は,未使用領域112-6と,未使用スタック領域112-7が初期化されるもので,初期処理は,まず直前にメインスイッチ94の操作により電源が投入されたかどうかを判定し(ステップS101),直前に電源が投入された場合には,RAM112の状態をチェックし,そのデータ内容が壊れているかどうかを判定し(ステップS102),RAM112が壊れていなければ,非保存ワーク112-5のみをクリアして(ステップS103),ステップS108の処理に進み,RAM112が壊れていた場合には,重要ワーク112-1,一般ワーク112-2,特別ワーク112-3,及び非保存ワーク112-5をクリアすると共に,設定値ワーク112-4に設定値として1を入れて(ステップS104),ステップS108の処理に進み,また,ステップS101において直前に電源が投入されたのではなかった場合には,直前に設定スイッチ91の操作により内部当選確率の設定変更がされたかどうかを判定し(ステップS105),設定変更がされていた場合には,重要ワーク112-1と一般ワーク112-2とをクリアし(ステップS106),さらに,その操作により変更された設定の値を設定値ワーク112-4に入れて(ステップS107),ステップS108の処理に進み,設定変更もされていなかった場合には,そのままステップS108の処理に進み,ステップS108では,いずれの条件においてもクリアされることとなる未使用領域112-6及び未使用スタック領域112-7をクリアして,初期処理を終了するものである点。」第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(一致点・相違 条件においてもクリアされることとなる未使用領域112-6及び未使用スタック領域112-7をクリアして,初期処理を終了するものである点。」第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(一致点・相違点の認定判断の誤り)について(1) 前提となる技術常識についてアメモリマップに連続したアドレスが割り当てられている構成は,遊技機の技術分野における技術常識である(以下,この技術を「技術A」という。)。 イ記憶領域の初期化において,「初期化テーブル」を参照して,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)を取得する構成(より厳密には,記憶領域の初期化において,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)が設定・登録された 「初期化テーブル」を参照して,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)を取得する構成)そのものも,単なる技術常識にすぎず(以下,この技術を「技術B」という。),公知の刊行物(甲22)や公開特許公報(甲23~29,31,32)にも開示されている。 ある領域を初期化する以上,初期化の対象となる領域を特定するため,初期化開始アドレスと初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)の指定は当然に必要であって,そのために,初期化領域設定手段を具備すること,すなわち,これら初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)を参照・取得する構成を具備することは,初期化手段において,当然に予定されている。そして,データを参照・取得するための構成としては,テーブルが一般的であるから,初期化手段は,技術常識として,初期化テーブルを当然に具備している。 審決も,本件特許発明の認定に当たり,初期化テーブルを参照してアドレス情報を取 ための構成としては,テーブルが一般的であるから,初期化手段は,技術常識として,初期化テーブルを当然に具備している。 審決も,本件特許発明の認定に当たり,初期化テーブルを参照してアドレス情報を取得する構成が技術常識である旨明確に認定している(審決書26頁5行目~12行目)。 (2) 構成要件Cについて引用公報の図6のメモリマップには,各領域が所定の順序に従って連続して配置されており,しかも,各領域には「112-1」~「112-8」との連続した番号の符号が付せられている。そもそも,メモリマップは,上記のとおり,メモリ内の各領域の配置を示すものであって,メモリマップに連続したアドレスが割り当てられていなければ,メモリマップに記載された各領域の配置は全く意義を失う。したがって,引用公報記載のメモリマップを理解するに当たっては,当然に技術Aが斟酌されるべきである。そして,甲1発明は,技術Aを斟酌することにより,構成要件Cの「前記データ記憶手段には,記憶領域を特定するアドレスが割り当てられているとともに」の構 成を具備するものと当然に理解される。 したがって,構成要件Cの構成を具備しているか否かを相違点とした審決の認定判断は誤りである。 (3) 構成要件Dについて審決は,本件特許発明については技術Bを読み込んで認定したが,甲1発明については技術Bを読み込んで認定しておらず,相違点について飛躍した大雑把な誤った認定をしている。 技術A及びBを斟酌すれば,甲1発明についても,少なくとも,初期化すべき「各領域」について,当然に「初期化テーブル」を参照し,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)を取得して,初期化を実行する構成を備えているものと理解される。 そうすると,甲1発明は,引 て,当然に「初期化テーブル」を参照し,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス(又は初期化領域のサイズ)を取得して,初期化を実行する構成を備えているものと理解される。 そうすると,甲1発明は,引用公報の図10のフローの形式的な記載に基づき,「各領域」ごとに初期化が実行されるとしても,構成要件Dの技術表現を用いれば,少なくとも,前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して,初期化を実行する各領域ごとに前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,初期化を実行する各領域ごとに初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み,前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた各記憶領域を順次初期化する(下線部分は,本件特許発明が備えておらず,甲1発明が備えている構成である。)構成を開示するものである。そして,引用公報の図6のメモリマップ及び図7の表の記載によれば,異なる各初期化条件である「電源投入時でRAMが壊れていた時」,「電源投入 時でRAMが壊れていなかった時」及び「毎遊技開始時」は,いずれも,図10のフローに従い,未使用領域の最終アドレスまで,そして,未使用スタック領域の最終アドレスまでの連続した領域を初期化するものである。したがって,甲1発明には,2種類以上の初期化条件において共通した「最終的な」初期化終了アドレスが存在し,甲1発明はこの最終的な初期化終了アドレスまでの領域を初期化する構成を具備する。以上によれば,本件特許発明と甲1発明とは,前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記デ 存在し,甲1発明はこの最終的な初期化終了アドレスまでの領域を初期化する構成を具備する。以上によれば,本件特許発明と甲1発明とは,前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み,前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する(下線部分は,構成要件Dの構成のうち,一致点とならない構成である。)において一致するとともに,2種類以上の初期化条件において共通した最終的な初期化終了アドレスが存在し,この最終的な初期化終了アドレスまでの領域が初期化される点において一致し,本件特許発明は,各初期化条件に対して,初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスがそれぞれ1個設定され,初期化領域が,初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの1個の領域として構成されるのに対し,甲1発明は,各初期化条件に対して,初期化が実行される各領域ごとに初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され,初期化領域が,こ れら各領域の集合体として構成されている点(以下「原告主張相違点」という。)において相違しているにすぎない。したがって,構成要件Dの構成を具備しているか否かを相違点とした審決の認定判断は誤りである。 2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について(1) 原告主張相違点は,初期化領域を「1個の領域」 したがって,構成要件Dの構成を具備しているか否かを相違点とした審決の認定判断は誤りである。 2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について(1) 原告主張相違点は,初期化領域を「1個の領域」として把握するか,「複数の各領域の集合体」として把握するか,の相違にすぎない。そして,引用公報には,図6のメモリマップ及び図7が記載されており,「電源投入時でRAMが壊れていた時」,「電源投入時でRAMが壊れていなかった時」及び「毎遊技開始時」の各初期化条件について,初期化する各領域が連続して配置されているのであるから,これら各領域を「1個の領域」として把握するか,「複数の各領域の集合体」として把握するかは,当業者が適宜選択して決定すべき単なる設計的事項にすぎない。 (2) 本件特許発明の課題は,「遊技の制御を行うマイクロコンピュータの記憶手段の未使用領域に不正プログラムが常駐することを防止できるスロットマシンを提供すること」(本件明細書【0009】)にあるとされている。他方,甲1発明では,「毎遊技開始時」に未使用領域及び未使用スタック領域を初期化することによって,既に,上記課題に対する解決が実現しているのであって(図7),原告主張相違点は,本件特許発明の課題解決に何ら関連するようなものではない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明の実施例の作用効果として,プログラムの容量を削減することができる旨の記載がある(【0393】)。しかし,プログラムの容量の削減は,プログラミングの技術分野においてごく一般的かつ抽象的な作用効果でしかなく,また,単なる実施例の作用効果として記載されている点からみても,上 記作用効果は格別に意義のあるものとはいえない。 (3) 以上によれば,本件特許発明と甲1発明との間に原告主張相 なく,また,単なる実施例の作用効果として記載されている点からみても,上 記作用効果は格別に意義のあるものとはいえない。 (3) 以上によれば,本件特許発明と甲1発明との間に原告主張相違点が存在するとしても,これは課題解決又は作用効果に関連するような構成ではなく,当業者が適宜選択して定める設計的事項でしかないので,本件特許発明に進歩性を認めた審決の判断は誤っている。 3 取消事由3(新規性判断の誤り)について(1) 本件特許発明は,あくまで物の発明であって,構成要件Dは,物の構成としては,①初期化条件の種類に対応して設定された初期化開始アドレス,②初期化条件に共通して設定された初期化終了アドレス,③初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの連続した記憶領域が初期化の対象領域となる構成,及び,④未使用領域を1ゲームごとに初期化する構成で足りる。そして,本件特許発明は,初期化する各領域を所定の順序で順次連続して配置したことに発明の基礎が認められるもので,初期化する各領域の配置によって,本件特許発明は,上記の構成①~④を実現している。そして,初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの連続した記憶領域について,具体的にどのような処理方法又は順序によって初期化の実行がなされるかは,初期化処理の方法の問題であって,物の発明である本件特許発明が規定するものではない。 (2) これに対し,引用公報記載のメモリマップ(図6)には,初期化する各領域が所定の順序で順次連続して配置されており,甲1発明は,かかる配置によって,図7記載のとおり,異なる各初期化条件である「電源投入時でRAMが壊れていた時」,「電源投入時でRAMが壊れていなかった時」及び「毎遊技開始時」について,①’これら初期化条件の種類に対応して設定された初期化開始 り,異なる各初期化条件である「電源投入時でRAMが壊れていた時」,「電源投入時でRAMが壊れていなかった時」及び「毎遊技開始時」について,①’これら初期化条件の種類に対応して設定された初期化開始アドレス(それぞれ,重要ワーク,非保存ワーク,未使用領域の冒頭アドレス),②’これら初期化条件に共通して設定された初期化終了アドレス(未使用領域の最終アドレスあるいは未使用スタック領域の最終アド レス),③’初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの記憶領域が初期化の対象領域となる構成,及び,④’未使用領域を1ゲームごとに初期化する構成を実現している。このように,甲1発明は,初期化する各領域を所定の順序で順次連続して配置させることによって,本件特許発明の構成要件Dの構成①~④を実現するものである。 そして,初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの記憶領域が,引用公報の図10記載のフローに従って実行されるとの内容は,初期化処理の方法の問題にすぎず,物の発明を構成する内容となるものではない。 (3) 以上によれば,技術A及びBを斟酌すれば,引用公報には,本件特許発明の構成要件Dの構成①~④が記載されている,又は少なくとも記載されているに等しいものといえる。 したがって,本件特許発明に新規性を認めた審決の判断は誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(一致点・相違点の認定判断の誤り)について(1) 構成要件Cについて引用公報の図6のRAMのメモリマップには各領域を示す符号として「112-1」~「112-8」が示されているにすぎず,引用公報には各領域を特定するアドレスが割り当てられる構成の開示がないのであるから,構成要件Cを相違点とした審決の認定判断に誤りはない。(2) 構成要件Dについてア原 示されているにすぎず,引用公報には各領域を特定するアドレスが割り当てられる構成の開示がないのであるから,構成要件Cを相違点とした審決の認定判断に誤りはない。(2) 構成要件Dについてア原告の指摘する審決の認定判断部分は,アドレス情報を取得することに関して,本件特許発明の「2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段」なる特許請求の範囲の記載に基づいて,当該初期化領域設定手段を参照してアドレスを取得したことを解釈したもので あって,技術Bを読み込んで本件特許発明を認定しているわけではない。イ原告が技術常識であると主張する技術Bは,原告の提出するいずれの刊行物(甲22)や公開特許公報(甲23~29)にも何ら記載も示唆もされておらず,技術常識ではない。また,上記刊行物及び公開特許公報には,本件特許発明の「前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み」なる構成,及び「前記初期化手段は,…前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」なる構成は何ら記載も示唆もされていない。 ウ以上によれば,甲1 発明には構成要件Dの構成は開示されてお に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」なる構成は何ら記載も示唆もされていない。 ウ以上によれば,甲1 発明には構成要件Dの構成は開示されておらず,また,技術常識を参酌しても記載されているに等しい事項ともいえないので,これを相違点とした審決の認定判断に誤りはない。 2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について(1) 上記1のとおり,甲1発明には,本件特許発明における「初期化領域設定手段」は記載されていないので,甲1発明に「各初期化条件に対して,初期化が実行される各領域ごとに初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され」なる構成の開示はない。また,上記1のとおり,審決の相違点の認定には何ら誤りはなく,原告が主張する相違点の構成は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 (2) 本件特許発明は,遊技の制御を行うマイクロコンピュータの記憶手段の未使用領域に不正プログラムが常駐することを防止できるスロットマシンにお いて,データ記憶手段における未使用領域が1ゲーム毎に初期化されるので,データ記憶手段の未使用領域を利用して不正プログラムを格納させても,当該不正プログラムが常駐してしまうことを防止でき,また,2種類以上の初期化条件の種類に対応する初期化開始アドレスとこれら初期化条件に共通の初期化終了アドレスのみを設定しておくことで,初期化条件の種類に対応する初期化終了アドレスを個々に設定しておくことなく,初期化条件の種類に対応する記憶領域を初期化することができるので,複数種類の初期化を行うためのプログラム容量を削減できる,という作用効果を奏するものである。 したがって,原告の「プログラムの容量の削減など,プログラミングの技術分野において,ごく一般的かつ抽象的な作用 種類の初期化を行うためのプログラム容量を削減できる,という作用効果を奏するものである。 したがって,原告の「プログラムの容量の削減など,プログラミングの技術分野において,ごく一般的かつ抽象的な作用効果でしかなく」とする主張は誤りである。 そして,引用公報や他の刊行物及び公開特許公報(甲2~14,22~29)には,本件特許発明の構成要件Dについて何ら記載も示唆もされておらず,引用公報に上記刊行物や公報(甲2~14,22~29)記載の技術を組み合わせたとしても本件特許発明の構成要件Dには到達し得ないばかりか,上記作用効果も奏し得ない。 (3) 以上によれば,本件特許発明は,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができないとの審決の認定判断に誤りはない。 3 取消事由3(新規性判断の誤り)について(1) 本件特許発明では,構成要件Dを原告が主張する構成①~④としているものではないので,原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 そして,審決の「甲1発明には,初期化条件の種類(RAM112の領域112-1~112-8のうちどの領域を初期化するか)に対応した初期化開始点と,初期化条件の種類に関係なく共通である初期化終了点を,各領域に割り当てられたアドレスにより設定する旨の記載はない」(審決書30頁 11行目~14行目)の認定に誤りはなく,したがって,本件特許発明が引用公報に記載された発明ではないとした審決の認定判断に誤りはない。 (2) 本件特許発明の構成要件Dは,「前記初期化手段は,2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み, 初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段を含み,前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」手段であって,該「初期化手段」は「2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段」なる構成を備えることを前提として,該「初期化手段」を「前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」手段という機能により特定された「物の発明」として請求項に記載したものである。 したがって,本件特許発明は前記「初期化手段」なる発明特定事項を備えた「スロットマシン」という「物の発明」であることは明らかである。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。   1 取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り)について(1) 甲1発明について なく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。   1 取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り)について(1) 甲1発明について引用公報には,前記第2の3(1)の内容の発明が記載されているものと認められる(甲1。原告も争っていない。)。 (2) 原告の技術Bが技術常識であるとの主張について原告は,記憶領域の初期化において,技術Bが技術常識である旨主張し,その根拠として審決の認定判断並びに刊行物(甲22)及び公開特許公報(甲23~29,31,32)の記載を挙げているが,以下の理由により,いずれも技術Bが本件特許の原出願時における技術常識であることを認定する根拠とすることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,技術Bが本件特許の原出願時における技術常識であるとは認められず,原告の上記主張を採用することはできない。 ア審決の認定判断について原告は,審決書(26頁5行~同頁12行)の記載を根拠として,審決が,本件特許発明の認定に際し,初期化テーブルを参照してアドレス情報を取得する構成が技術常識である旨認定していると主張する。 しかし,審決書(25頁27行~26頁12行)の記載によれば,審決は,まず,請求項1の「前記初期化手段は,・・・初期化領域設定手段を含み」との記載の意味につき,初期化手段に含まれる初期化領域設定手段(実施例では図44(b)の初期化テーブル)には,初期化条件の種類に対応してデータ記憶手段における初期化開始アドレスが初期化条件の種類の数だけ設定(登録)されるとともに,2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定(登録)されている旨解釈し,本件特許発明が初期化領域設定手段(初期化テーブル レスが初期化条件の種類の数だけ設定(登録)されるとともに,2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定(登録)されている旨解釈し,本件特許発明が初期化領域設定手段(初期化テーブル)を有するものであるとしている。そして,審決は,上記解釈を前提とした上で,請求項1における初期化手段が「前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が 成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」との記載につき,その記載中に記憶領域を初期化する際に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得することを明示する部分はないものの,技術常識に照らせば,当然に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照して情報を取得することがなされているものと理解される,との認定判断をしているものである。そうすると,審決の上記認定判断部分は,請求項1の文言に基づいて同項の解釈をした結果,記憶領域を初期化する際に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得するとの構成を導き出しているにすぎないものと認められ,審決に記載のある「技術常識」の趣旨についても,せいぜい,本件特許発明において,初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得することは,技術常識といえる程度に当然に理解できるものであることを説示したにすぎないものというべきである。そうすると,原告の指摘する審決の記載は,技術Bが技術常識であることを認定したものと認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。イ たにすぎないものというべきである。そうすると,原告の指摘する審決の記載は,技術Bが技術常識であることを認定したものと認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。イ刊行物及び公開特許公報の記載について原告は,技術Bは,刊行物(甲22)や公開特許公報(甲23~29,31,32)にも開示されている旨主張するが,以下の理由により,技術Bが上記刊行物又は公開特許公報に開示されているものと認めることはできない。 (ア) 「実習ができる Z80アセンブラ入門」(平成6年3月10日発行) (甲22)上記刊行物124~125頁には,「Z80アセンブラ」によるプログラムの例として,連続するメモリ領域をある値で埋めるためのクリアデータをAレジスタへ,クリアしたいメモリ領域の先頭アドレスをHLレジスタペアへ,メモリ領域の大きさをBレジスタへ初期値としてセットしておき,ループによって,Aレジスタの値をHLレジスタペアがポイントするメモリ領域へ書き込み,HLレジスタペアを1ずつ増加しながら,1ずつ減少されるBレジスタの値が0になるまで繰り返すプログラムが記載されていることが認められる。 しかし,上記刊行物には,初期化テーブルの構成に関わる開示はない。 (イ) 特開平11-104305号公報(甲23)上記公報は,発明の名称を「パチンコ遊技機における制御処理装置」とする発明に係るものであり,明細書の【0037】,【0041】,【0043】及び【図12】には,「初期化データテーブル」を用いて初期化をする構成の記載がある。 しかし,上記「初期化データテーブル」は,初期化される領域に設定されるデータが格納されているものであって(【0037】参照),初期化開始アドレス及び初期化終了アドレス 成の記載がある。 しかし,上記「初期化データテーブル」は,初期化される領域に設定されるデータが格納されているものであって(【0037】参照),初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定されているものとは認められない。(ウ) 特開平11-313961号公報(甲24)上記公報は,発明の名称を「パチンコ遊技機における制御処理装置」とする発明に係るものであり,明細書の【0045】~【0049】及び【図8】には,「初期化データテーブル」を用いて初期化をする構成の記載がある。 しかし,上記「初期化データテーブル」は,初期化される領域に設定されるデータが格納されているものであって(【0046】,【0048】, 【0049】参照),初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定されているものとは認められない。 (エ) 特開平9-182849号公報(甲25)上記公報は,発明の名称を「遊技機」とする発明に係るものであり,明細書の【0165】及び【0166】には,「LCDC初期化データテーブルをルックアップして液晶表示装置の表示データを初期化する処理がなされる。」との記載がある。 しかし,上記公報には,上記「初期化データテーブル」にどのようなデータがどのように設定され取得されるのかについて,具体的な記載はなく,示唆もない。 (オ) 特開2002-113229号公報(甲26)上記公報は,発明の名称を「遊技機」とする発明に係るものであり,明細書の【0216】,【0221】及び【図32】には,ROM領域の制御用データ領域の最前部に初期化データテーブルが格納されていること,ランプ制御用CPU351が,制御用データ領域に格納されている初期化デ 【0216】,【0221】及び【図32】には,ROM領域の制御用データ領域の最前部に初期化データテーブルが格納されていること,ランプ制御用CPU351が,制御用データ領域に格納されている初期化データを用い,レジスタ,ワークエリアを含むRAM及び出力ポート等を初期化する初期化処理を実行すること,初期化データは,機種が異なっても共通に使用される可能性が高い,すなわち,制御用データのうち複数の機種間で共通に使用される制御用データについては制御用データを格納する記憶領域における前部に配置されていることの記載がある。しかし,上記公報には,上記「初期化データテーブル」にどのようなデータが設定され取得されるのかについて,具体的な記載はなく,示唆もない。(カ) 特開2002-126196号公報(甲27)上記公報は,発明の名称を「遊技機」とする発明に係るものであり, 明細書の【0122】及び【図15】には,ROM領域の制御用データ領域の最前部に初期化データテーブルが格納されていること,ランプ制御用CPU351が,初期化に際して,制御用データ領域に格納されている初期化データを用いて,レジスタ,RAM及び出力ポート等の初期化を行うことが記載されている。 しかし,上記公報には,上記「初期化データテーブル」にどのようなデータが設定され取得されるのかについて,具体的な記載はなく,示唆もない。(キ) 特開2003-825号公報(甲28)上記公報は,発明の名称を「遊技機」とする発明に係るものであり,明細書の【0174】,【0179】及び【図32】には,ランプ制御用CPU351が,メイン処理において,まず,レジスタ,ワークエリアを含むRAM及び出力ポート等を初期化する初期化処理を実行すること,ROM領域の最前部に初期化データテーブル 32】には,ランプ制御用CPU351が,メイン処理において,まず,レジスタ,ワークエリアを含むRAM及び出力ポート等を初期化する初期化処理を実行すること,ROM領域の最前部に初期化データテーブルが格納されていることが記載されている。 しかし,上記公報には,上記「初期化データテーブル」にどのようなデータが設定され取得されるのかについて,具体的な記載はなく,示唆もない。(ク) 特開2004-118764号公報(甲29)上記公報は,発明の名称を「プログラム及びデータの処理方法並びに装置」とする発明に係るものであり,明細書の【0041】~【0051】及び【図8】には,RAM30に編集可能な初期化テーブル32が格納されること,プログラム処理装置の電源を投入すると,レジデントモジュール23における装置起動処理が実行され,まず,編集可能な初期化テーブル32がRAM30上に構成されること,初期化テーブル32は,初期化の際にコールされるべきモジュール のアドレスを管理するテーブルであること,次に,モジュール検索処理部21によって,プログラム処理装置に内蔵又は外部に接続されたすべての記憶装置11に対してモジュール検索が実行され,その結果,オプションモジュール31(再配置可能なオブジェクトとされる。)が検知された場合は,リンカ24によってリンクが行われ,オプションモジュール31からレジデントモジュール23への参照による未定義シンボルを解決し,かつ,オプションモジュール31の配置されるアドレスが決定されること,次に,リンカ24が,リンクによる再配置の結果,決定したオプションモジュール31のエントリポイントを初期化テーブル32に追加するが,その際,該初期化テーブル32内に対象となるオプションモジュール31と同じモジュール名を持つエン る再配置の結果,決定したオプションモジュール31のエントリポイントを初期化テーブル32に追加するが,その際,該初期化テーブル32内に対象となるオプションモジュール31と同じモジュール名を持つエントリが存在する場合,バージョン番号が新しい方を残し,古い方はそのエントリを初期化テーブル32から取り除かれ,これにより,初期化テーブルから取り除かれたモジュールの初期化処理はコールされない,すなわち,モジュールとして無効化されたこととなること,このようなモジュール検索,リンク及び初期化テーブル32の書換えは記憶装置11の全てに対して繰り返し実行されること,全ての記憶装置11に対して上記各処理が終了すると初期化処理が実行されるが,その際は,初期化テーブル32に登録されているモジュールをコールするだけであること,発明の実施形態において,実現方式をあるケースに限定した場合には,初期化テーブル32のデフォルト値はレジデントROM20内に格納されていること,などが記載されている。しかし,上記公報には,上記のとおり,書換え可能な「初期化テーブル32」が初期化の際に呼び出されるモジュールのアドレスを管理するテーブルであることや,初期化処理の実行の際は,初期化テーブル32に登録されているモジュールをコールするだけである旨の記載があるだ けで,「初期化テーブル32」に初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され,これらを「初期化テーブル32」から取得することについては具体的な記載はなく,その示唆もない。(ケ) 特開2000-76081号公報(甲31)上記公報は,発明の名称を「タスクマネージャー及びプログラム記憶媒体」とする発明に係るものであり,上記公報【0059】及び【0060】には,図3のマイクロプロセッサがリセッ (甲31)上記公報は,発明の名称を「タスクマネージャー及びプログラム記憶媒体」とする発明に係るものであり,上記公報【0059】及び【0060】には,図3のマイクロプロセッサがリセットされて動作し始めると,まずスタック領域監視部230のプログラム処理が実行され,図1のスタック領域初期化部231に対応するプログラムの処理が行われること,すなわち,プログラムカウンタ100は,命令ROM200内にマイクロプロセッサの命令コードデータ群として格納されているスタック領域初期化部231に対応したプログラムの先頭アドレスデータを初期データとし,このアドレスデータを出力及びインクリメントして更新していくことを繰り返して,スタック領域初期化部231に対応したプログラムの先頭アドレスデータから終了アドレスデータまでのアドレスデータを順番に命令選択回路250に供給することが記載されている。 しかし,上記記載における「先頭アドレスデータ」及び「終了アドレスデータ」は,いずれも,実行されるスタック領域初期化部231に対応したプログラムのアドレスデータである。そして,アドレスデータを出力すること及びインクリメントして更新していくことを繰り返し,領域初期化部231に対応したプログラムの「先頭アドレスデータ」から「終了アドレスデータ」までのアドレスデータを順番に命令選択回路250に供給することが記載されているのであって,上記「先頭アドレスデータ」から上記「終了アドレスデータ」までの領域を初期化する方法が記載されているものではない。さらに,上記公報には,初期化テーブルに初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され,これらを 初期化テーブルから取得することの具体的な記載はなく,示唆もない。(コ) 特開2000-2795 報には,初期化テーブルに初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され,これらを 初期化テーブルから取得することの具体的な記載はなく,示唆もない。(コ) 特開2000-279598号公報(甲32)上記公報は,発明の名称を「遊技機」とする発明に係るものであり,明細書の【0032】には,「アドレステーブル310,312,314,316,318,…」と,「メモリマップ320上の表示データα,β,γ,δ,ε,…」とを有し,指令データ300の画面表示モード302によってアドレステーブル310を指定し,対象画面情報304によって3番目の要素を指定すると,表示データγが格納されているアドレスa14を取得することができることの記載がある。しかし,上記公報には上記記載があるにとどまり,初期化テーブルに初期化開始アドレス及び初期化終了アドレスが設定され,これらを初期化テーブルから取得することの具体的な記載はなく,示唆もない。 (3) 審決の本件特許発明と甲1発明の一致点及び相違点の判断についてア前記(2)認定のとおり,技術Bは本件特許出願当時の技術常識であるとは認められない以上,甲1発明の認定に当たり,技術Bを参酌することはできない。 そして,前記第2の2認定の本件特許発明の内容及び前記1(1)認定の甲1発明の内容を対比すると,本件特許発明と甲1発明は,本件特許発明が構成要件Dの構成を備えるのに対し,甲1発明がこれを備えていない点で相違することが認められる。したがって,この点に関する審決の一致点・相違点の認定判断に誤りはない。イなお,原告は,本件特許発明が構成要件Cの構成を備えるのに対し,甲1発明がこれを備えていない点で相違する旨の審決の認定判断が誤りである旨主張し,取消事由としている。しかし,審決は,進 い。イなお,原告は,本件特許発明が構成要件Cの構成を備えるのに対し,甲1発明がこれを備えていない点で相違する旨の審決の認定判断が誤りである旨主張し,取消事由としている。しかし,審決は,進歩性の判断において,構成要件Cに係る相違点は,メモリマップに連続したアドレスを割り当てる構成が遊技機の技術分野に おいて周知技術であることを参酌すると,当業者にとって容易想到である旨判断しているのであるから,原告の上記主張はそもそも審決を取り消すべき事由とはいえず,原告の上記主張を採用することはできない。 2 取消事由2(進歩性の判断の誤り)について(1) 原告の提出する公開特許公報(甲2~14)には,本件特許発明の構成要件Dに係る構成について具体的な記載はなく,示唆もない。 そうすると,本件特許発明における構成要件Dの構成は,甲1発明及び上記公開特許公報(甲2~14)に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。なお,前記1(2)イにおいて認定したところに照らすと,本件特許発明における構成要件Dの構成は,甲1発明及び刊行物(甲22)ないしは公開特許公報(甲23~29,31,32)に基づいて当業者が容易に想到し得たものともいえない。 したがって,本件特許発明は甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないとした審決の認定判断に誤りはない。(2) 原告の取消事由2に係る主張は,甲1発明を認定するに当たり,技術Bを技術常識として参酌することができることを前提とするものである。 しかし,前記1(2)及び(3)認定のとおり,技術Bが本願出願時の技術常識であると認めることはできず,甲1発明の認定に当たりこれを参酌できない以上,原告の取消事由2に係る主張は,その前提を欠き採用することができ (2)及び(3)認定のとおり,技術Bが本願出願時の技術常識であると認めることはできず,甲1発明の認定に当たりこれを参酌できない以上,原告の取消事由2に係る主張は,その前提を欠き採用することができない。 3 取消事由3(新規性の判断の誤り)について(1) 前記1認定のとおり,本件特許発明は構成要件Dを備える点で甲1発明と相違するので,本件特許発明は引用公報に記載された発明ではないとした審決の認定判断に誤りはない。 (2) 原告は,本件特許発明が物の発明であるので,構成要件Dは,物の構成としては,①初期化条件の種類に対応して設定された初期化開始アドレス,②初期化条件に共通して設定された初期化終了アドレス,③初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの連続した記憶領域が初期化の対象領域となる構成,及び,④未使用領域を1ゲームごとに初期化する構成で足り,初期化開始アドレスから初期化終了アドレスまでの連続した記憶領域について,具体的にどのような処理方法又は順序によって初期化の実行がなされるかは,初期化処理の方法の問題であって,物の発明である本件特許発明が規定するものではないとの主張を前提に,本件特許発明が甲1発明と同一の発明であり,本件特許発明は新規性を欠く旨主張する。 しかし,本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載に照らすと,同項における構成要件Dに係る記載は,「初期化手段」の構成を特定したものであると認められる。そして,「初期化手段」は,「2種類以上の初期化条件の種類に対応して前記データ記憶手段における初期化開始アドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段」と,「前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したと ドレスがそれぞれ設定されるとともに,該2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定された初期化領域設定手段」と,「前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」構成とを含むものである。 そうすると,請求項1の構成要件Dに係る記載は,「初期化手段」の構成について上記内容の特定をしたものであり,したがって,本件特許発明は,上記の各構成を備えたものとして特定されるものであると認められる。 よって,原告の上記主張は,本件特許の特許請求の範囲の記載に基づかないものというほかなく,採用することはできない。   4 まとめ以上のとおり,原告主張の各取消事由はいずれも理由がない。また,他に審決に取り消すべき違法もない。 第6 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂  一 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅  厚毅

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