令和1(行コ)168 東京都市計画高度地区(港区決定)計画書第7項に基づく許可処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年12月2日 東京高等裁判所
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判決文本文12,061 文字)

令和2年12月2日判決言渡令和元年(行コ)第168号東京都市計画高度地区(港区決定)計画書第7項に基づく許可処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第470号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 港区長が平成29年6月26日付けで原判決別紙物件目録記載の建物の建替えの計画に係る建築物についてした東京都市計画高度地区(港区決定)計画書7項に基づく絶対高さ制限の緩和に係る許可(29港街計第〇号)を取り消す。 第2 事案の概要(以下においては,特に断らずに原判決記載の略称を用いることがある。) 1 本件は,都市計画法上の高度地区に係る都市計画である「東京都市計画高度地区」(平成27年港区告示第266号による変更後のもの。本件都市計画)において建築物の高さの最高限度が定められている地区内に所在する原判決別紙物件目録記載の建物(本件マンション)の建替えの計画に係る建築物について,本件マンションのうちの分譲部分の区分所有者全員をもって構成する団体 である参加人管理組合とその構成員(組合員)の一人であり本件マンションのその他の部分(賃貸部分)の区分所有者でもある参加人Aとの共同申請を受け,港区長が,本件都市計画の定めに基づき,絶対高さ制限を緩和する旨の許可(29港街計第〇号。本件許可)をしたところ,参加人管理組合の組合員(区分所有者)の一人である控訴人が,本件許可の申請のうち参加人管理組合による部 分(本件管理組合申請部分)は参加人管理組合ないしその組合員からの授権を 欠き無効であるなどと主張して,本件許可の取消しを求めた事案である ,本件許可の申請のうち参加人管理組合による部 分(本件管理組合申請部分)は参加人管理組合ないしその組合員からの授権を 欠き無効であるなどと主張して,本件許可の取消しを求めた事案である。 原審は,控訴人の原告適格及び訴えの利益をいずれも肯定した上で,控訴人の請求を棄却する旨の判決をしたところ,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 2 高度地区に関する定め ⑴ 都市計画法都市計画法8条1項3号は,都市計画区域については,都市計画に高度地区を定めることができる旨を,同条3項2号トは,高度地区については,都市計画に,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定めるものとする旨をそれぞれ規定する。 ⑵ 本件都市計画(乙1,2)本件都市計画は,高度地区に係る都市計画であり,建築物の高さの最高限度を定めるところ,その付記7項において,「総合設計制度を活用する建築物(分譲マンションの建て替え)の特例」との見出しの下,次のア及びイのいずれにも該当する主たる用途が共同住宅である建築物の建替えに際して建築 基準法59条の2に基づく許可(いわゆる総合設計許可)を受けた建築物で,周辺環境に対し一定の配慮が図られ,市街地環境の向上に資する建築物であると港区長が認めて許可したものについては,「東京都総合設計許可に係る建築物の高さ等誘導指針」の範囲内で,当該建築物に係る絶対高さ制限(北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限を除 いた建築物の高さの限度をいう。)について,その高さを算定することができる旨を定める。 アマンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)2条1項に規定するマンションの建替えであること。 イ建替え後の建築 高さを算定することができる旨を定める。 アマンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)2条1項に規定するマンションの建替えであること。 イ建替え後の建築物の主たる用途が共同住宅であること。 (以下,上記の港区長による許可を「7項特例許可」という。) 3 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実である。)⑴ 当事者等ア本件マンションは,本件都市計画において建築物の高さの最高限度が35メートルとされている「35m高度地区」内に所在し,分譲部分及びそ れ以外の賃貸部分からなっている(甲2,乙1,2,弁論の全趣旨)。 イ参加人管理組合は,本件マンションのうちの分譲部分の区分所有者全員をもって構成する団体である(甲2,弁論の全趣旨)。 ウ参加人Aは,本件マンションのうちの賃貸部分の全部の区分所有者であり,また,分譲部分の一部の区分所有者として参加人管理組合の組合員で もある(甲2,7,8,弁論の全趣旨)。 エ控訴人は,本件マンションの分譲部分の区分所有者であり,参加人管理組合の組合員である(甲1,2)。 ⑵ 参加人管理組合の管理規約参加人管理組合の管理規約(以下「本件管理規約」という。)には,要旨, 次のような定めがある(甲2)。 1条この規約は,本件マンションの分譲共用部分の管理又は使用に関する事項等について定めるところにより,当該区分所有者の共同の利益を増進し,良好な住環境を確保することを目的とする。 43条1項組合員の議決権は,10条に定める専有部分の登記床面積の割合によるものとする。 44条1項総会の会議は,前条第1項に定める議決権 住環境を確保することを目的とする。 43条1項組合員の議決権は,10条に定める専有部分の登記床面積の割合によるものとする。 44条1項総会の会議は,前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。 2項総会の議事は,出席組合員の議決権の過半数で決し,可否同 数の場合においては,議長の決するところによる。 3項次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は,前項にかかわらず,組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。 一規約の変更二敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更 を伴わないものを除く)又は処分(平成16年6月改訂)三建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧四義務違反者に対する専有部分の使用禁止,区分所有権の競売及び占有に係る専有部分の引渡しに関する訴訟の提起 五その他総会において本項の方法により決議することとした事項4項区分所有法62条1項の建替え決議は,本条2項にかかわらず,組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。 5項前4項の場合において,書面又は代理人によって議決権を行使する者は,出席組合員とみなす。 6項から9項まで(略)⑶ 本件許可に至る経緯等ア参加人らは,平成25年4月17日,新日鉄興和不動産株式会社及び三 井不動産レジデンシャル株式会社(以下,一括して「新日鉄興和不動産ら」という。)との間で,「Bマンション建替え検討協力に関する協定書」(以下「本件検討協力協定書」 鉄興和不動産株式会社及び三 井不動産レジデンシャル株式会社(以下,一括して「新日鉄興和不動産ら」という。)との間で,「Bマンション建替え検討協力に関する協定書」(以下「本件検討協力協定書」という。)を取り交わした(丙47)。本件検討協力協定書において,新日鉄興和不動産らは,建替え検討協力者に選定され(1条1項),新日鉄興和不動産らは,建替え検討に際して必要な業 務を第三者に委託するのに要した費用等を別途参加人らと覚書を締結の上 で立て替えることができ,その立替金は,本件マンションの建替え決議が成立した時点又は修繕計画の推進が決定された時点のいずれか早い時点で精算するものとされ(4条1項,2項),参加人らが協議して合意した場合,参加人らは新日鉄興和不動産らを建替え事業の参加組合員に選定することに努めるものとされた(6条)。 イ参加人らは,平成28年10月5日,東京都知事に対し,共同で,本件マンションの敷地上に新たに建築することを予定している建築物について,建築基準法59条の2第1項(平成29年法律第26号に基づく改正前のもの。以下同じ。)に基づく総合設計許可の申請(以下「別件申請」という。)をし,同月25日,港区長に対し,共同で,本件マンションの建替 え計画に係る建築物(計画高さ79.95メートル)について,7項特例許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。なお,別件申請及び本件申請のうち本件管理組合申請部分は,いずれも参加人管理組合の当時の理事長であったCにより,参加人管理組合理事長Cの名義で行われた。 ウ東京都知事は,平成29年6月26日付けで,別件申請につき参加人ら に対して許可(28都市建指建第〇号。以下「別件許可」という。)をし,港区長は,同日付けで,本件申請につき参加人 た。 ウ東京都知事は,平成29年6月26日付けで,別件申請につき参加人ら に対して許可(28都市建指建第〇号。以下「別件許可」という。)をし,港区長は,同日付けで,本件申請につき参加人らに対して本件許可をした。 ⑷ 本件訴えの提起等ア控訴人は,東京地方裁判所に対し,平成29年10月12日,別件許可の取消しを求める訴訟(同年(行ウ)第468号。以下「別件訴訟」とい う。)を提起し,同月13日,本件許可の取消しを求める訴訟(本件訴訟)を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 イ参加人管理組合において,平成30年10月5日,平成29年度第4回臨時総会(以下「本件臨時総会」という。)が開催され,本件訴訟及び別件訴訟への補助参加を承認するとともに,従前の訴訟行為を追認す ることを承認する旨の決議(以下「本件補助参加等承認決議」という。) 並びに別件申請及び本件申請をそれぞれ追認する旨の決議(以下「本件追認決議」という。)がされた。 控訴人は,平成30年,東京地方裁判所に対し,参加人管理組合を被告として,主位的に本件臨時総会における第1号議案ないし第5号議案(そのうち,第1号議案は本件補助参加等承認決議に係るものであり, 第2号議案は本件追認決議に係るものである。)の各決議の取消し,予備的に各議案に係る各決議が無効であることの確認を求める訴訟(同年(ワ)第37430号。以下「別件決議取消等請求訴訟」という。)を提起した(丙55)。 ウ本件訴訟における原判決言渡し後の令和元年6月21日,東京地方裁 判所は,別件訴訟につき,控訴人に原告適格が認められず,別件訴訟は不適法であるとして,訴えを却下する旨の判決をした。控訴人は,これを不服として東京高等裁判所に控訴(同年(行コ)第190 方裁 判所は,別件訴訟につき,控訴人に原告適格が認められず,別件訴訟は不適法であるとして,訴えを却下する旨の判決をした。控訴人は,これを不服として東京高等裁判所に控訴(同年(行コ)第190号)を提起した。(丙49,61) 東京地方裁判所は,令和元年12月23日,別件決議取消等請求訴訟 につき,控訴人の主位的請求に係る訴えをいずれも却下し,予備的請求をいずれも棄却する旨の判決をした(丙55)。控訴人は,これを不服として東京高等裁判所に控訴(令和2年(ネ)第424号)を提起し,原判決を変更して,本件臨時総会における第1号議案から第5号議案までの各決議がいずれも無効であることを確認するよう求めた(丙62)。 エ東京高等裁判所は,令和2年7月2日,別件訴訟につき,同訴訟は原告適格及び訴えの利益のいずれも認められる適法な訴えであるが,控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ,本案の争点については原審において控訴人と被控訴人及び参加人ら間で主張立証が尽くされており,念のための判断として本件許可は適法である(控訴人の請求 は理由がない)旨を判示した原判決の本案の判断は相当であるとし,不 利益変更禁止の原則(行訴法7条,民訴法304条)により,本件控訴を棄却するにとどめるとして,控訴人の控訴を棄却する旨の判決を言い渡した(丙61)。 東京高等裁判所は,令和2年8月19日,別件決議取消等請求訴訟につき,控訴人の控訴を棄却する旨の判決を言い渡した(丙62)。 ⑸ 本件マンションの建替え計画の進捗状況等についてア区分所有法62条1項は,集会においては,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地 え計画の進捗状況等についてア区分所有法62条1項は,集会においては,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(建替え決議)をすることができると定めてお り,同法64条は,建替え決議に賛成した各区分所有者,建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は,建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなすと定めている。 そして,円滑化法は,9条1項において,区分所有法64条の規定により同法62条1項に規定する建替え決議の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者は,5人以上共同して,定款及び事業計画を定め,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事等の認可を受けてマンション建替組合(以下「建替組合」という。)を設立 することができると定め,12条において,都道府県知事等は,9条1項の規定による建替組合の設立の認可の申請があった場合,12条各号のいずれにも該当すると認めるときは,その認可をしなければならないと定めており,同条2号には定款又は事業計画の決定手続又は内容が法令に違反するものでないことが認可の要件として掲げられている。また,円滑化法 15条によれば,建替組合は,その認可の公告の日から2月以内に,区分 所有法63条4項に規定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができるとされている。加えて,円滑化法において,①施行者(マンション建替事業を 定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができるとされている。加えて,円滑化法において,①施行者(マンション建替事業を施行する者。建替組合を含む。)は,建替組合の認可の公告があったときは,遅滞なく,登記所に,施行マンションの区分所有権 及び敷地利用権について権利変換手続開始の登記を申請しなければならないとされ(55条1項),②建替組合の認可の公告があったときは,施行マンションの区分所有者又は敷地利用権を有する者は,その公告があった日から起算して30日以内に,施行者に対し,権利変換を希望せず,自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申 し出ることができるとされ(56条1項),③施行者は,56条の規定による手続に必要な期間の経過後,遅滞なく,権利変換計画を定め,国土交通省令で定めるところにより,65条所定の基準に従って都道府県知事等の認可を受けなければならないとされ(57条1項),④その認可がされると,68条1項及び2項による権利変換計画の公告及び権利変換処分に 係る関係権利者への通知並びに69条による登記所への権利変換期日等の通知がされ,70条によって,権利変換期日において,権利変換計画の定めるところに従い,施行マンションの敷地利用権は失われ,施行再建マンション(建替事業の施行により新たに建築されたマンション)の敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得することになるとさ れている。 イ本件マンションの建替え決議は未了であり,参加人らは,建替えに関する賛否を保留している区分所有者らから建替え計画への理解が得られ,本件訴訟及び別件訴訟につき一定の結論を得た段階で,建替え決議のための集会を招集 ンの建替え決議は未了であり,参加人らは,建替えに関する賛否を保留している区分所有者らから建替え計画への理解が得られ,本件訴訟及び別件訴訟につき一定の結論を得た段階で,建替え決議のための集会を招集することを予定している(弁論の全趣旨)。 4 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,原判決「事実及び理由」欄の第2の3及び4(原判決4頁11行目から8頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,理由部分を含め,「本件管理組合」を「参加人管理組合」と,「A」を「参加人A」とそれぞれ読み替える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件訴えは控訴人に原告適格及び訴えの利益が認められることから適法であるが,控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は,後記2において補正し,後記3において当審における当事者の補充主張及びこれに対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1から4まで(原判決8頁18行目から14頁21行目まで) に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正⑴ 原判決10頁9行目から10行目の「前記前提事実⑴エ」を「前記第2の3⑴エ」と改める。 ⑵ 原判決11頁26行目の「前記前提事実⑵」を「前記第2の3⑶イ」と, 12頁5行目の「同⑵」を「同⑶イ」とそれぞれ改める。 ⑶ 原判決13頁23行目から24行目の「本件管理組合の臨時総会」を「本件臨時総会」と,14頁6行目の「可決された」を「出席組合員の議決権の7割余の賛成を得て可決された」とそれぞれ改める。 3 当審における当事者の補充主張及びこれに対する判断 ⑴ 原告適格及び訴えの利益について 決された」を「出席組合員の議決権の7割余の賛成を得て可決された」とそれぞれ改める。 3 当審における当事者の補充主張及びこれに対する判断 ⑴ 原告適格及び訴えの利益について参加人らは,①本件マンションの建替え決議は未了であり,そのための日程も決まっていない,②控訴人が自らの損害の救済手段として本件許可の取消しによるのは不相当であり,控訴人の権利は本件マンションの建替え決議に係る集会の差止め仮処分の申立てや建替え決議の無効確認請求訴訟を提起 することによって図られるべきである旨主張する。 しかし,①前記1の引用に係る原判決説示のとおり,円滑化法に定めるマンション建替事業の施行が予定されている在来のマンションの区分所有者は,7項特例許可がされることによって,建替事業の施行による権利の変動を受ける地位に立たされ,7項特例許可の法的効果により権利の制限を受けることとなるということができ,本件許可の取消しを求めるにつき法律上の利益 を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものと解されるのであるから,建替え決議が未了であることは原告適格を否定する理由とはならない。また,都道府県知事等が円滑化法9条1項に基づく建替組合の設立認可をするに当たっては,事業計画の内容が法令に違反するものでないことが要件とされているところ,本件許可はその要件を満たすために必要なも のであり,建替組合の設立認可がされると,その認可に係る事業計画に従って具体的に事業がそのまま進められることが想定されることからすると,控訴人の権利救済の実効性の観点から,本件許可を受けた段階で,控訴人がその取消しを求める訴えの利益も認められるというべきであり,今後本件許可によって高さの制限を緩和されたマンションへの建 らすると,控訴人の権利救済の実効性の観点から,本件許可を受けた段階で,控訴人がその取消しを求める訴えの利益も認められるというべきであり,今後本件許可によって高さの制限を緩和されたマンションへの建替えが所定の諸手続を経 て実施される蓋然性が存する以上,建替決議が未了であることを理由に訴えの利益が否定されるべきではない。 また,②控訴人が参加人管理組合を相手方として本件マンションの建替え決議に係る集会の差止めの仮処分の申立てや建替え決議の無効確認請求訴訟を提起することができるとしても,本件許可によって高さの制限を緩和され たマンションへの建替えが所定の諸手続を経て実施される蓋然性が生じ,区分所有者の権利に変動が生じることを考慮すれば,その利益保護の観点から7項特例許可の違法性の有無を争う機会が制限されるべきではないから,民事訴訟において建替え決議の可否等を争う方法があることをもって,本件許可の取消しを求める訴えの原告適格や訴えの利益が否定されるものではない と解するのが相当である。 したがって,参加人らの上記主張は,いずれも採用することができない。 ⑵ 本件許可の適法性についてア控訴人は,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺が本件許可の取消事由に当たる瑕疵であることを前提として,参加人管理組合による追認の有効性につき,本件申請は行政法上の私人の行為であり,その追認を 許す明文の規定はないから,原則として無効であって,例外的に私法を類推適用するとしても相応の理由が必要であるところ,本件申請は例外的に取引行為における追認を類推適用してまで追認を認めるべき事案ではなく,追認があったとされる時期が本件許可後であることに照らしても追認は認められるべきではない旨,また,そもそも ろ,本件申請は例外的に取引行為における追認を類推適用してまで追認を認めるべき事案ではなく,追認があったとされる時期が本件許可後であることに照らしても追認は認められるべきではない旨,また,そもそも,参加人管理組合 は,区分所有法3条前段にいう団体には当たらないため,区分所有法62条等の建替え決議をする能力はなく,その目的及び業務範囲は,本件管理規約1条の定める本件マンションの分譲共用部分の管理又は使用に関する事項に限定されているとして,参加人管理組合が本件申請を行うことも,これを追認する決議をすることも目的外行為として許されない 旨,さらに,本件臨時総会における本件追認決議に先立って,参加人管理組合の理事が,組合員らに対し,実際には本件マンションの建替えにより建替え後の面積が建替え前の面積と比較して少なくなるにもかかわらず,議案書を用いて重大な事実について虚偽の説明を行ったほか,本件マンションの居住者の集会での発言を通じて虚偽の説明をしたから, 本件申請を追認する旨の本件追認決議は無効である旨を主張する。 しかし,7項特例許可の本質がマンションの建替えの計画に係る建築物を対象とする対物処分であって,本件管理組合申請部分に係る授権の欠缺が本件許可の取消事由たる瑕疵とならないことは,前記1の引用に係る原判決説示のとおりであり,授権の欠缺が本件許可の取消事由に当 たる瑕疵であることを前提とする控訴人の上記主張はいずれも失当とい うべきであって,採用することができない。 付言するに,本人による授権を欠いた代理人の行為につき,授権の欠缺を補正する方法として民法の無権代理に関する規定に準じて追認をするのは合理的であり,このことは行政庁に対する私人の申請行為に関しても異なるものではない よる授権を欠いた代理人の行為につき,授権の欠缺を補正する方法として民法の無権代理に関する規定に準じて追認をするのは合理的であり,このことは行政庁に対する私人の申請行為に関しても異なるものではないし,7項特例許可の申請につき追認が可能な時 期を許可処分前に限定すべき合理的な理由もないから,本件申請につき追認が認められない旨の控訴人の主張は理由がない。 また,控訴人は,参加人管理組合が本件申請をすることは参加人管理組合の目的外の行為であり許されない旨を主張するが,分譲棟の建替えの検討は,分譲棟の管理又はこれに準ずる行為であり,本件申請をするこ とは,区分所有者の共同の利益を増進し,良好な住環境を確保するという本件管理規約1条所定の目的を遂行するために必要な行為の範囲に含まれるということができるのであり,参加人管理組合が本件申請をすることはその目的の範囲内の行為というべきである。 上記に対し,控訴人は,7項特例許可が対物処分としての性質のみを 有するものであったとしても,許可申請につき授権を欠く場合には,申請行為自体に申請意思がなく,存在しないことになるとして,授権の欠缺は本件許可の取消事由たる瑕疵といえる旨主張する。 しかし,第2の3⑶イのとおり,本件申請のうち本件管理組合申請部分は,参加人管理組合の当時の理事長であったCにより,参加人管理組合理 事長Cの名義で行われたものであり,申請意思を欠く申請とみることはできない。 なお,仮に本件管理組合申請部分に何らかの瑕疵があったとしても,先に説示のとおり民法の無権代理の規定に準じて追認が可能であるところ,本件臨時総会で本件追認決議がされ(第2の3⑷イ),これによ って瑕疵は治癒されたと認めるのが相当である。別件決議取消等請求訴 訟の東京地方裁 規定に準じて追認が可能であるところ,本件臨時総会で本件追認決議がされ(第2の3⑷イ),これによ って瑕疵は治癒されたと認めるのが相当である。別件決議取消等請求訴 訟の東京地方裁判所及び東京高等裁判所の判決でも本件追認決議を含む本件臨時総会での各決議に無効原因は認められないとされており(丙55,62),控訴人の当審における主張や提出証拠を考慮しても,本件追認決議が無効であると認めることはできない。 イ控訴人は,本件マンションの建替え計画は,本来の順序と異なり,別件 申請,本件申請,建替え決議,建替組合の設立,デベロッパー等の決定(入札)の順序で進むことが予定されており,それ自体が違法であるとはいえないが,業界の自主ルールの適用により,関与したデベロッパー以外の業者による入札ができなくなるという入札妨害を企図したものであって,処分行政庁の担当者は,そのこと及び本件申請が虚偽のものであることを認 識しながら,その瑕疵を無視して本件許可をしたとして,本件許可には裁量権の範囲の逸脱及びその濫用があるとの趣旨の主張をする。 しかし,本件検討協力協定書では,新日鉄興和不動産らは建替え検討協力者とされ,参加人らが協議して合意した場合には参加人らは新日鉄興和不動産らを建替え事業の参加組合員に選定することに努めるとされるにと どまり(前記第2の3⑶ア),本件許可に沿った内容の建替え決議がされた場合には,その建替え計画の策定に協力した新日鉄興和不動産らは当該建替え工事の受注に当たり,一定程度の有利な立場に立つということができるとはいえ,当該建替え工事を請け負う施工者になることが確定しているわけではなく,建替え決議等の諸手続の過程で入札等の競争原理に従っ て他の業者を建替え工事の施工者に決定することは否 とができるとはいえ,当該建替え工事を請け負う施工者になることが確定しているわけではなく,建替え決議等の諸手続の過程で入札等の競争原理に従っ て他の業者を建替え工事の施工者に決定することは否定されていないのであるから,本件申請に係る手続の上記経緯等から入札妨害が企図されたものであることまでを認定することはできず,これを前提とする控訴人の上記主張は採用することができない。 以上のほか,控訴人が当審において主張立証するところを斟酌しても, 本件許可に違法事由があるとは認められない。 ⑶ 参加人管理組合の補助参加の許否について控訴人は,本件補助参加等承認決議は,組合員に対する議案の説明が不十分・不適切なままされたものであり無効であるとの趣旨の主張をする。 しかし,控訴人が,本件補助参加申出に異議を述べる前に弁論をしており,その異議の適法性にはそもそも疑義がある上(民訴法44条2項),議案の説 明に関し本件補助参加等承認決議の効力に影響を及ぼすような瑕疵があると認めることができないことは,前記1の引用に係る原判決説示のとおりである。別件決議取消等請求訴訟における東京地方裁判所及び東京高等裁判所の判決においても,本件補助参加等承認決議を含む本件臨時総会における各決議につき,無効原因となるような手続上の瑕疵は認められないとされている (丙55,62)。控訴人の当審における主張や提出証拠を考慮してもこの判断は変わらない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 4 以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。 第4 結論よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9 よれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。 第4 結論 よって、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官 瀬戸口壯夫 裁判官 廣田泰士 裁判官 和波宏典

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