平成23(ワ)8405 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年5月17日 大阪地方裁判所
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平成24年5月17日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第8405号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年3月19日判決原告ドーエイ外装有限会社(以下「原告ドーエイ」という。)原告株式会社パラキャップ社(以下「原告パラキャップ」という。)上記両名訴訟代理人弁護士大津卓滋同原田活也同佐藤一誠被告株式会社新高製作所同訴訟代理人弁護士松本直樹 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら (1) 被告は,別紙イ号製品目録及び同ハ号製品目録記載の各製品を製造してはならない。 (2) 被告は,原告パラキャップに対し,1500万円及びこれに対する平成23年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 被告主文同旨 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠の掲記がない事実は当事者間に争いがない。) (1) 当事者原告ドーエイは,建築金物の特許権等の取得及びその実施等を目的とする会社である。原告パラキャップは,建築材料の製造及び販売等を目的とする会社である。 事者間に争いがない。)(1) 当事者原告ドーエイは,建築金物の特許権等の取得及びその実施等を目的とする会社である。 原告パラキャップは,建築材料の製造及び販売等を目的とする会社である。 被告は,鉄製建築用金物その他各種鉄製金物の製造及び施工並びに販売等を目的とする会社である。 (2) 原告ドーエイの有する特許権ア本件特許権1原告ドーエイは,以下の特許(以下「本件特許1」といい,本件特許1に係る発明を「本件特許発明1」という。)に係る特許権(以下「本件特許権1」という。)を有する。 特許番号 2906374号発明の名称渡り通路の目地装置出願日平成8年2月13日登録日平成11年4月2日特許請求の範囲【請求項1】「一方の建物の外部通路の外壁に形成された渡り通路用開口部と,この渡り通路用開口部と目地部を介して連通するように他方の建物より突出するように設けられた渡り通路と,この渡り通路の目地部側端部の床面上に一端部が前後方向にスライド移動可能に支持され,他端部が前記渡り通路 用開口部の床面に左右方向にスライド移動可能に取付けられた目地プレートと,前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ,他端部が前記渡り通路用開口部が形成された外壁に左右方向にスライド移動可能に取付けられた一対のスライド側壁とからなることを特徴とする渡り通路の目地装置。」イ本件特許権2原告ドーエイは,以下の特許(以下「本件特許2」といい,本件特許2に係る発明を「本件特許発明2」という。)に係る特許権(以下「本件特許権2」という。)を有する。 特許番号 4079436号発明の名称壁面用目地装置出願日平成16年8月23日 に係る発明を「本件特許発明2」という。)に係る特許権(以下「本件特許権2」という。)を有する。 特許番号 4079436号発明の名称壁面用目地装置出願日平成16年8月23日登録日平成20年2月15日特許請求の範囲【請求項1】「目地部を介して設けられた左右の躯体の,一方の目地部側躯体にヒンジ部材を介して先端部が水平方向に回動可能に取付けられた,該目地部の幅寸法の約数分の1の幅寸法の枠体と,この枠体の取付部と対向する部位の前記左右の躯体の他方の目地部側躯体にヒンジ部材を介して水平方向に回動可能に取付けられた支柱と,この支柱と前記枠体の先端部に並列するように両端部が枢支された中央枢支部が少なくとも1箇所以上有するパンタグラフ形状の少なくとも2個以上の伸縮リンクと,この少なくとも2個以上の伸縮リンクの中央枢支部に常時垂直状態を維持するように枢支された少なくとも1本以上の中間支柱と,前記枠体に固定された,該枠体を覆うカバーパネルと,前記少なくとも1本以上の中間支柱に後端部が固定され,先端部が前記カバーパネル等と重なり合う前記中央枢支部間の寸 法の約2倍の幅寸法の少なくとも1枚以上の可動カバーパネルと,前記支柱に後端部が固定され,先端部が該支柱の隣りの中間支柱に固定された可動カバーパネルと重なり合う,該可動カバーパネルとほぼ同じ大きさの固定カバーパネルとで構成されていることを特徴とする壁面用目地装置。」(3) 構成要件の分説本件各特許発明は,以下のとおり分説することができる。 ア本件特許発明1A 一方の建物の外部通路の外壁に形成された渡り通路用開口部と,B この渡り通路用開口部と目地部を介して連通するように他方の建物より突出するように設けられた渡り通路と, ア本件特許発明1A 一方の建物の外部通路の外壁に形成された渡り通路用開口部と,B この渡り通路用開口部と目地部を介して連通するように他方の建物より突出するように設けられた渡り通路と,C この渡り通路の目地部側端部の床面上に一端部が前後方向にスライド移動可能に支持され,他端部が前記渡り通路用開口部の床面に左右方向にスライド移動可能に取付けられた目地プレートと,D 前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ,他端部が前記渡り通路用開口部が形成された外壁に左右方向にスライド移動可能に取付けられた一対のスライド側壁E とからなることを特徴とする渡り通路の目地装置。 イ本件特許発明2F 目地部を介して設けられた左右の躯体の,一方の目地部側躯体にヒンジ部材を介して先端部が水平方向に回動可能に取付けられた,該目地部の幅寸法の約数分の1の幅寸法の枠体と,G この枠体の取付部と対向する部位の前記左右の躯体の他方の目地部側躯体にヒンジ部材を介して水平方向に回動可能に取付けられた支柱と,H この支柱と前記枠体の先端部に並列するように両端部が枢支された 中央枢支部が少なくとも1箇所以上有するパンタグラフ形状の少なくとも2個以上の伸縮リンクと,I この少なくとも2個以上の伸縮リンクの中央枢支部に常時垂直状態を維持するように枢支された少なくとも1本以上の中間支柱と,J 前記枠体に固定された,該枠体を覆うカバーパネルと,K 前記少なくとも1本以上の中間支柱に後端部が固定され,先端部が前記カバーパネル等と重なり合う前記中央枢支部間の寸法の約2倍の幅寸法の少なくとも1枚以上の可動カバーパネルと,L 前記支柱に後端部が固定され,先端部が該支柱の隣りの中間支柱に固 され,先端部が前記カバーパネル等と重なり合う前記中央枢支部間の寸法の約2倍の幅寸法の少なくとも1枚以上の可動カバーパネルと,L 前記支柱に後端部が固定され,先端部が該支柱の隣りの中間支柱に固定された可動カバーパネルと重なり合う,該可動カバーパネルとほぼ同じ大きさの固定カバーパネルM とで構成されていることを特徴とする壁面用目地装置。 (4) 独占的通常実施権の設定原告ドーエイは,原告パラキャップに対し,本件特許発明1及び2について,独占的通常実施権を設定し,原告パラキャップはこれを実施している。 (5) 被告の行為アイ号製品の製造被告は,平成20年12月頃,業として,大阪市所在の「甲建物」の建設工事において,渡り通路の目地装置2個(以下,同建物西側に設置されたものを「イ号西製品」,同建物北側に設置されたものを「イ号北製品」といい,併せて「イ号製品」という。)を施工して製造した。 イハ号製品の製造被告は,平成20年12月頃,業として,広島市所在の「乙建物」の建設工事において,壁面用目地装置1個(以下「ハ号製品」という。)を施工して製造した。 2 原告らの請求 (1) 原告ドーエイの請求原告ドーエイは,被告に対し,イ号製品の製造が本件特許権1を侵害するものであるとして,本件特許権1に基づき,その製造差止めを求めるとともに,ハ号製品の製造が本件特許権2を侵害するものであるとして,本件特許権2に基づき,その製造差止めを求めている。 (2) 原告パラキャップの請求原告パラキャップは,被告に対し,被告の行為により損害を被ったとして,不法行為に基づき,合計1500万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 し,被告の行為により損害を被ったとして,不法行為に基づき,合計1500万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 (3) 訴えの一部取下げ等原告ドーエイは,本件訴えのうち,本件特許権1に基づくロ号製品の製造差止請求に係る部分を取り下げた。 3 争点(1) イ号製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するか (争点1)(2) ハ号製品は,本件特許発明2の技術的範囲に属するか (争点2)(3) 損害額及び差止めの必要性 (争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(イ号製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するか)について【原告らの主張】(1) イ号製品の構成についてイ号製品の構成は,別紙イ号製品目録記載のとおりである。 (2) イ号製品が本件特許発明1の各構成要件を充足することについて以下のとおり,イ号製品は,構成要件BないしDを充足し,その他の構成要件も文言上充足するから,本件特許発明1の技術的範囲に属するものである。 ア構成要件B別紙イ号製品目録記載4の構成は,構成要件Bを充足する。 イ号製品の「建物3」は,実際には「道路」であるが,構成要件Bの「他方の建物」とは「建築物」をいい,「道路」も「建築物」に含まれるから,構成要件Bを充足する。 イ構成要件C別紙イ号製品目録記載5及び7の各構成は,構成要件Cを充足する。 具体的には,ボード9は,通路8の隙間1側の凹状の床面に置かれることにより,前後方向(建物3と建物2を結ぶ直線方向)にスライド移動が可能なものである。また,ボード9の建物2側の端部が下枠11に噛み合う形で半凹状に切り取られ 路8の隙間1側の凹状の床面に置かれることにより,前後方向(建物3と建物2を結ぶ直線方向)にスライド移動が可能なものである。また,ボード9の建物2側の端部が下枠11に噛み合う形で半凹状に切り取られて下枠11を覆うことにより,左右方向(前記前後方向に対する直角方向)にもスライド移動が可能なものである。 ウ構成要件D(ア) 別紙イ号製品目録記載3,6ないし8の各構成は,構成要件Dを充足する。 具体的には,手摺10a,10bの建物3側の下枠12a,12bは,ボード9の両端部上の通路8の側壁9a,9bに近接した位置に設置されることにより,前後方向(建物3と建物を2を結ぶ直線方向)にスライド移動が可能なものである。また,手摺10a,10bの建物2側の下枠11が開放部分6の両脇の床面及び外壁を直角に切り取った半凹部7a,7bに設置され,かつ,ボード9の建物2側の端部が下枠11にかみ合う形で覆うことにより左右方向(前記前後方向に対する直角方向)にもスライド移動が可能なものである。 (イ) 構成要件Dの「取付け」とは「特定の目的のためにある物件を備え付けること」をいうものであり,「接着」することをいうものではない。仮に「接着」することをいうとすると,構成要件Dのスライド側壁は,左 右方向にも前後方向にも動くことが不可能となり,作用効果を発揮することができなくなる。 そして,イ号製品のスライド側壁(手摺10a 及び10b)は,通路の目地部側の側壁(側壁9a 及び9b)に近接した場所に設置されているから,構成要件Dの「前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ」たものに当たる。 【被告の主張】(1) イ号製品の構成についてア別紙イ号製品目録記載第1の1,4,5,6及び8につい 地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ」たものに当たる。 【被告の主張】(1) イ号製品の構成についてア別紙イ号製品目録記載第1の1,4,5,6及び8についてイ号製品は,いずれも建物と道路の間に設けられたものであり,道路は「建物3」には当たらない。 イ別紙イ号製品目録記載第1の6及び7についてイ号製品には,半凹部7,7a 及び7bの構成はない。 ウ別紙イ号製品目録記載第1の6についてイ号北製品の手摺は,通路側にしかなく,建物の側にはないから,建物の開放部分の両脇を覆うものではないし,「直角にそれぞれ覆う」ものでもない。 (2) イ号製品が本件特許発明1の各構成要件を充足しないことについて以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明1の各構成要件を充足しないから,本件特許発明1の技術的範囲には属さない。 ア構成要件B上記(1)アのとおり,イ号製品には「他方の建物」がないから,構成要件Bを充足しない。 イ構成要件C「スライド」とは「滑ること。滑らせること。」等を意味し,「滑る。」とは「物の上をなめらかに移行する。」こと等を意味する。 イ号製品のボード9は,渡り通路の間隔が縮まった場合には通路8に乗り上げて,ずれてしまう構造のものであり,滑る構造のものではなく,左右にも動くことができるものである。 したがって,「前後方向にスライド移動可能に支持され」たものではないから,構成要件Cを充足しない。 ウ構成要件D(ア) 手摺10a 及び10bは,ボード9と一体のものであり,渡り通路の間隔が縮まった場合には通路8に乗り上げてしまう構造のものであるから,上記イと同様に,「スライド移動」可能な構造ではない。 (イ) 構成要件Dによれば,スライド側壁は と一体のものであり,渡り通路の間隔が縮まった場合には通路8に乗り上げてしまう構造のものであるから,上記イと同様に,「スライド移動」可能な構造ではない。 (イ) 構成要件Dによれば,スライド側壁は,「前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ」る必要があり,「取付けられ」たというには,単に近接しているだけではなく,支持する構造を有する必要がある。 原告らがスライド側壁に当たると主張する手摺10a 及び10bは,床(ボード9)と一体のものとして支持されており,「目地部側の側壁」には支持されておらず,「取付けられ」たものには当たらない。 (3) 被告の製造した部分がイ号製品の一部にとどまることについて被告が製造したのは,イ号西製品のうちボード9とそれに一体化した手摺10a 及び10bのみであり,イ号北製品については,これらに加え,通路に並行する道路側に固定された側壁も製造した。 このように,被告はイ号製品の一部しか製造していないから,本件特許発明1に関する直接侵害は成立しない。 2 争点2(ハ号製品は,本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について【原告らの主張】(1) ハ号製品の構成についてハ号製品の構成は,別紙ハ号製品目録記載のとおりである。 (2) ハ号製品が本件特許発明2の各構成要件を充足することについて以下のとおり,ハ号製品は,構成要件F,I及びLを充足し,その他の構成要件も文言上充足する。 したがって,本件特許発明2の技術的範囲に属するものである。 ア構成要件F別紙ハ号製品目録記載第1の1及び2の各構成は,構成要件Fを充足する。 イ構成要件I別紙ハ号製品目録記載第1の5の構成は,構成要件Iを充足する。 ウ である。 ア構成要件F別紙ハ号製品目録記載第1の1及び2の各構成は,構成要件Fを充足する。 イ構成要件I別紙ハ号製品目録記載第1の5の構成は,構成要件Iを充足する。 ウ構成要件L別紙ハ号製品目録記載第1の7の構成は,構成要件Lを充足する。 【被告の主張】(1) ハ号製品の構成ア別紙ハ号製品目録記載第1の1及び3についてハ号製品は,建物の玄関部分において建物とその外側の風除けサッシとの間に設けられているものであり,建物の間にはない。すなわち,上記各構成のうち「建物3」がない。 イ別紙ハ号製品目録記載第1の5及び7についてハ号製品は,「5本のポール9a,9b,9c,9d,9e」を有しない。 (2) ハ号製品が本件特許発明2の各構成要件を充足しないことについて以下のとおり,ハ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足しないから,本件特許発明2の技術的範囲には属さない。 ア構成要件F上記(1)アのとおり,ハ号製品は,建物の間になく,「左右の躯体」を有しないから,構成要件Fを充足しない。 イ構成要件I及びL 上記(1)イのとおり,ハ号製品は,「中間支柱」に相当する部材を有しないから,構成要件I及びLを充足しない。 (3) 被告の製造した部分がハ号製品の一部に留まることについて被告は,ハ号製品のうち一部のみを製造したにすぎないから,本件特許発明2に関する直接侵害は成立しない。 3 争点3(損害額及び差止めの必要性)について【原告パラキャップの主張】(1) 被告の行為のうちイ号製品の製造に係る損害賠償アイ号製品1個当りの製造販売価格は,少なくとも500万円であり,このうち被告が受けた1個当たりの利益は,少なく 【原告パラキャップの主張】(1) 被告の行為のうちイ号製品の製造に係る損害賠償アイ号製品1個当りの製造販売価格は,少なくとも500万円であり,このうち被告が受けた1個当たりの利益は,少なくとも200万円である(利益率40%)。 前提事実(5)アのとおり,被告は,2個のイ号製品を製造販売したから,これにより被告が受けた利益は,少なくとも400万円である(特許法102条2項)。 イ原告ドーエイは,原告パラキャップに対し,被告の行為のうちイ号製品の製造に係る損害賠償請求債権を譲渡した。 (2) 被告の行為のうちハ号製品の製造に係る損害賠償渡り通路の目地に関する工事は,その性質上,床,天井及び壁面等を一括して受注する工事であり,分割して受注することは,およそあり得ない。ハ号製品には本件特許権2を実施する必要があったことなどから,ハ号製品を施工された渡り通路の目地に係る工事については,原告パラキャップが一括して受注することができる蓋然性があった。 被告は,ハ号製品に本件特許権2を実施する必要があることについて認識し又は容易に認識することができたにもかかわらず,上記工事を受注したのであり,これにより,原告パラキャップは,上記工事を受注した場合に得ることができた800万円の利益を受けることができず,同額の損害を被った。 【被告の主張】いずれも否認する。 (1) 被告の行為のうちイ号製品の製造に係る損害賠償イ号製品の販売価格及び被告の利益額は,上記【原告パラキャップの主張】(1)アの金額を下回るものである。 (2) 被告の行為のうちハ号製品の製造に係る損害賠償ハ号製品に本件特許権2を実施する必要などなかったから,ハ号製品を施工した渡り通路の目地に係る工事について,原告パラキャップが一括して受 る。 (2) 被告の行為のうちハ号製品の製造に係る損害賠償ハ号製品に本件特許権2を実施する必要などなかったから,ハ号製品を施工した渡り通路の目地に係る工事について,原告パラキャップが一括して受注することができる蓋然性はなかった。 (3) 差止めの必要性についてイ号製品及びハ号製品は,いずれもいわゆる「一点物」であり,特別に設計して製造したものであって,今後,同型の物を作ることはあり得ないから,本件訴えのうち差止請求に係る部分には必要性がない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(イ号製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するか)についてイ号製品は,少なくとも本件特許発明1の構成要件D「前記渡り通路の目地部側の側壁に一端部が前後方向にスライド移動可能にそれぞれ取付けられ,他端部が前記渡り通路用開口部が形成された外壁に左右方向にスライド移動可能に取付けられた一対のスライド側壁」を充足するとは認めることができないから,本件特許発明1の技術的範囲に属するということはできない。 以下,詳述する。 (1) 本件特許発明1の技術的範囲(構成要件D)の解釈についてア本件特許発明1の【特許請求の範囲】の記載中「取付け」の意味について原告らは,「取付ける」とは,「特定の目的のためにある物件を備え付けること」をいうものであり,「接着」することをいうものではなく,イ号製 品のスライド側壁(手摺10a 及び10b)は,通路の目地部側の側壁(側壁9a 及び9b)に近接した場所に設置されているから,本件特許発明1の構成要件Dを充足する旨主張する(上記第3の1【原告らの主張】)。 そこで検討すると,一般に,「取付ける」とは,「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする」ことをいうものと解されるから, 件Dを充足する旨主張する(上記第3の1【原告らの主張】)。 そこで検討すると,一般に,「取付ける」とは,「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする」ことをいうものと解されるから,他の物と間隔の空いた状態で設置された物について,他の物に「取付けられた」ということは困難である。他に当業者が別の意義を有するものと解釈するなどと認めるに足りる証拠もない。 そうすると,構成要件Dの「側壁に‥‥取付けられ」という用語を通常の意味で解釈すると,「側壁」と間隔の空いた状態で設置された物は,仮に近接した状態で置かれていたとしても,「側壁に‥‥取付けられ」た物ということはできないと解される。 イ本件特許1に係る明細書の【発明の詳細な説明】の記載について上記明細書(以下「本件明細書」という。)には,「取付け」の意義に関する説明は見当たらないものの,以下の記載がある(甲1)。 (ア) 本件明細書には,本件特許発明1の第1の実施の形態として,図1ないし図9が記載されている。このうち図1ないし図3は,以下のとおりである。 【図1】第1の実施形態に係る平面図 【図2】図1の2-2線に沿う拡大断面図 【図3】図1の3-3線に沿う拡大断面図 また,上記実施例に関する説明として,以下の記載がある。 「【0013】15,15は前記渡り通路用開口部1が形成された両端部の外壁4,4と,前記渡り通路5の目地部6側の側壁16,16との間をほぼ直角に覆う一対のスライド側壁で,この一対のスライド側壁15,15は前記外壁4,4および側壁16,16の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されかつ全体をほぼ直角になるように形成されたスライド側壁本体17,17と,このスライド側壁本体17, 5,15は前記外壁4,4および側壁16,16の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されかつ全体をほぼ直角になるように形成されたスライド側壁本体17,17と,このスライド側壁本体17,17の両端部寄りの内壁面に取付けられた前記外壁4,4および側壁16,16の上面を移動するローラ18,18とで構成されている。」 (イ) 他方において,本件明細書には,本件特許発明1の第6の実施の形態として,以下の図22ないし図24が記載されている。 【図22】第6の実施形態に係る平面図 【図23】図22の23-23線に沿う断面図 【図24】本件特許発明の第6の実施の形態の目地プレートとスライド側壁の斜視図 また,上記実施例に関する説明として,以下の記載がある。 「【0022】図22ないし図24の本発明の第6の実施の形態において,前記本発明の第5の実施の形態と主に異なる点は渡り通路5の目地部6側の床面上に目地プレート12を位置させるとともに,側壁16,16の内壁面にスライド側壁15D,15Dを位置させて前後方向にスライド移動可能に取付けた点で,このように構成した渡り通路の目地装置21Eにしても,前記本発明の第5の実施の形態と同様な作用効果が得られる。なお,目地プレート12は渡り通路5の床面上に前後方向にスライド移動可能に位置させただけでもよく,あるいは目地プレート12と渡り通路5の床面との間に小さなローラーを複数個介装させてもよい。」(ウ) 上記各記載について検討すると,まず,上記(ア)の第1の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されたスライド側壁本体17と,このスライド側壁本体の両端部寄りの内壁面に取 ると,まず,上記(ア)の第1の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の端部を覆うことができるように断面コ字状に形成されたスライド側壁本体17と,このスライド側壁本体の両端部寄りの内壁面に取付けられた,側壁16の上面を移動するローラー18とで構成されているものである。これは,スライド側壁を目地部側の側壁と間隔を空けずに構成したものであって,上記アのとおり,本件特許発明1の構成要件Dについて,通常の意味のとおり解釈し た場合における,本件特許発明の技術的範囲に属する実施例を開示したものである。 これに対し,上記(イ)の第6の実施形態に係るスライド側壁は,目地部側の側壁の内壁面に「位置させて前後方向にスライド移動可能に取付けた」ものとされている。しかしながら,上記図22ないし図24によっても,イ号製品のスライド側壁(手摺10a 及び10b)及び通路の目地部側の側壁(側壁9a 及び9b)とは異なり,スライド側壁と目地部側の側壁とが接触しているか否かが判然としない。目地プレート12と一体となったスライド側壁15が,渡り通路5の側壁16で囲まれた空間に嵌合しているものとみることが可能であり,その場合は,スライド側壁を側壁に取付けたということもできる。 しかし,仮に,上記実施例についてスライド側壁と目地部側の側壁とが接触しない構成を説明したものであると解釈する場合,何をもってスライド側壁15が側壁16に取付けられているといえるのか,本件明細書には具体的な説明はなく,この構成について本件特許発明1の技術的範囲に属する構成として開示したと解することはできない。 ウ本件特許発明1の技術的範囲(構成要件D)の解釈について上記ア及びイで検討したところによれば,少なくとも「側壁」と間隔の空いた状態で設置された物 成として開示したと解することはできない。 ウ本件特許発明1の技術的範囲(構成要件D)の解釈について上記ア及びイで検討したところによれば,少なくとも「側壁」と間隔の空いた状態で設置された物は,近接した状態で設置されていたとしても,構成要件Dの「側壁に‥‥取付けられ」の構成を充足するということは,特許請求の範囲に係る文言解釈上,できない。 (2) イ号製品の構成についてイ号製品のスライド側壁(手摺10a及び10b)は,通路の目地部側の側壁(9a及び9b)に近接した状態で設置されているものの,間隔の空いた状態で設置されていることについて当事者間に争いがない。 そうすると,イ号製品のスライド側壁(手摺10a及び10b)が本件特 許発明1の構成要件Dの「側壁に‥‥取付けられ」たという要件を充足するものであるとは認められない。 2 争点2(ハ号製品は,本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について以下のとおり,ハ号製品は本件特許発明2の構成要件I及びLの規定する「中間支柱」に相当する構成を有しておらず,少なくともこれらの構成要件を充足しないから,本件特許発明2の技術的範囲には属さないものである。 (1) 本件特許発明2の技術的範囲について前提事実(3)イのとおり,本件特許発明2は,構成要件I「この少なくとも2個以上の伸縮リンクの中央枢支部に常時垂直状態を維持するように枢支された少なくとも1本以上の中間支柱と,」及び同L「前記支柱に後端部が固定され,先端部が該支柱の隣りの中間支柱に固定された可動カバーパネルと重なり合う,該可動カバーパネルとほぼ同じ大きさの固定カバーパネル」を要件とするものである。 (2) ハ号製品の構成について原告は,ハ号製品の構成として,「5本のポール9a,9b,9c,9d と重なり合う,該可動カバーパネルとほぼ同じ大きさの固定カバーパネル」を要件とするものである。 (2) ハ号製品の構成について原告は,ハ号製品の構成として,「5本のポール9a,9b,9c,9d,9e」があり,これは構成要件I及びLの「中間支柱」に当たる旨主張する(上記第3の2【原告らの主張】)。 そこで検討すると,ハ号製品が「5本のポール9a,9b,9c,9d,9e」の構成を有することを認めるに足りる的確な証拠はない。 かえって,ハ号製品のカバーパネルの背後から撮影した写真等(乙9ないし13)によれば,ハ号製品には,カバーパネルの後端部を固定する「中間支柱」に相当する部材はないことが認められる。 第5 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官西田昌吾 裁判官達野ゆきは,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三 別紙イ号製品目録以下の渡り通路用免震エキスパンションジョイント。 第1 構造 1 隙間1を介した建物2と建物3がある。 2 建物2の屋外部4の外壁5には幅約2メートルの開放部分6がある。 3 開放部分6の両脇の床面及び外壁には,直角に切り取られた半凹部7a,7bが設けられている。 4 建物3には建物2側へ向けて突き出た通路8が設けられている。 5 建物3の通路8の隙間1側の床面は凹状と の両脇の床面及び外壁には,直角に切り取られた半凹部7a,7bが設けられている。 4 建物3には建物2側へ向けて突き出た通路8が設けられている。 5 建物3の通路8の隙間1側の床面は凹状となっており,この凹状の床面上の隙間1側に通路状のボード9が置かれている。 ボード9は,隙間1を覆い,建物2の開放部分6を経て建物2の屋外部4に通じている。 6 建物2の開放部分6の両脇の半凹部7と,建物3の通路8の側壁9a,9bの内側との間を直角にそれぞれ覆う,一対の手摺10a,10bが設けられている。 7 手摺10a,10bの建物2側の下枠11が半凹部7a,7bに設置されており,ボード9の建物2側の端部は下枠11に噛み合う形で半凹状に切り取られて下枠11を覆っている。 8 手摺10a,10bの建物3側の下枠12a,12bは,ボード9の両端部上の通路8の側壁9a,9bに近接した位置に設置されている。 第2 図面 1 図面1 俯瞰図 2 図面2 見上図 別紙ハ号製品目録以下の内壁用免震エキスパンションジョイント。 第1 構造 1 隙間1を介した建物2と建物3がある。 2 建物2の隙間1側にちょうつがい4a,4b,4cにより取り付けられていることにより建物2に対して開閉自在な,隙間1の横幅の約4分の1の横幅有する枠フレーム5がある。 3 建物3の隙間1側にちょうつがい4d,4e,4fにより取り付けられていることにより建物3に対して開閉自在な柱6がある。 4 柱6の右端部(なお,内部から見て右端部,の意である。以下同様。)と枠フレーム5の左端部は,5個の枢支部7a,7b,7c,7d,7eを設けたパンタグラフ状で伸縮自在な3個の上下方向に並列す 4 柱6の右端部(なお,内部から見て右端部,の意である。以下同様。)と枠フレーム5の左端部は,5個の枢支部7a,7b,7c,7d,7eを設けたパンタグラフ状で伸縮自在な3個の上下方向に並列する連結具8a,8b,8cにより連結されている。 5 連結具8a,8b,8cのそれぞれの枢支部7a,7b,7c,7d,7eには,縦方向の5本のポール9a,9b,9c,9d,9eが取り付けられている。 6 枠フレーム5には羽目板10が固定されており,羽目板10は枠フレーム5を覆っている。 7 ポール9a,9b,9c,9d,9eに各左端部が固定された5枚のパネル11a,11b,11c,11d,11eがある。なお,パネル11a,11b,11c,11d,11eの横幅は,ポール9a,9b,9c,9d,9eの各間隔の約2倍である。また,パネル11aの右端部はポール9bに,パネル11bの右端部はポール9cに,パネル11cの右端部はポール9dに,パネル11dの右端部はポール9eに,パネル11eの右端部は羽目板10に,それぞれ重なっている。 8 柱6に左端部が固定され,右端部がパネル11aと重なっているパネル12がある。なお,パネル12の横幅はパネル11aとほぼ同じである。 第2 図面 1 図面1 外観図 2 図面2 内観図

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