平成22(行ケ)10353

裁判年月日・裁判所
平成23年8月31日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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判決文本文25,191 文字)

- 1 -平成23年8月31日判決言渡平成22年(行ケ)第10353号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成23年7月25日判決原告日東電工株式会社 訴訟代理人弁理士籾井孝文同吉田昌靖同山元美佐同上野山温子被告特許庁長官 指定代理人木村史郎同田部元史同田村正明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2009-2458号事件について平成22年10月5日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が名称を「光学部材及び液晶表示装置」とする発明につき特許出願をし,平成20年8月18日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする手続補正(以下「本件補正」という。)をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 - 2 - 2 争点は,上記補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が下記各引用例との間で進歩性を有するか(特許法29条2項),である。 記・引用例1:特開平11-70629号公報(発明の名称「液晶表示板表面保護フィルム」 性を有するか(特許法29条2項),である。 記・引用例1:特開平11-70629号公報(発明の名称「液晶表示板表面保護フィルム」,公開日平成11年3月16日,甲1。以下,これに記載された発明を「引用発明1」という。)・引用例2:特開平9-113726号公報(発明の名称「偏光板または位相板の表面保護フィルム」,公開日平成9年5月2日,甲2。以下,これに記載された発明を「引用発明2」という。)第3 当事者の主張 1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成11年6月9日,名称を「光学部材及び液晶表示装置」とする発明について特許出願(特願平11-162071号,公開特許公報は特開2000-347010号〔甲8〕)をし,平成20年8月18日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする本件補正(請求項の数4。甲11)をしたが,平成20年12月12日付けで拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2009-2458号事件として審理した上,平成22年10月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年10月20日原告に送達された。 (2) 発明の内容本件補正後の請求項の数は前記のとおり4であるが,その請求項1である本願発明の内容は,下記のとおりである(甲11,なお下線部分は補正箇所)。 記「【請求項1】 光学素材の表面を外表面の表面粗さRaが0.03μm以- 3 -上の保護フィルムにて,剥離できるように接着被覆してなることを特徴とする光学部材。」(3) 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願発明は引 - 3 -上の保護フィルムにて,剥離できるように接着被覆してなることを特徴とする光学部材。」(3) 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願発明は引用発明1又は引用発明2及び周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 イなお,審決が認定した引用発明1及び引用発明2の内容,本願発明と引用発明1との一致点及び相違点1,本願発明と引用発明2との一致点及び相違点2は,上記審決写しのとおりである。 (4) 審決の取消事由しかしながら,審決は,本願発明と引用発明1との相違点1についての容易想到性の判断を誤り(取消事由1),また本願発明と引用発明2との相違点2についての容易想到性の判断を誤り(取消事由2),さらに手続に違背して引用例2を引用刊行物と扱ったものである(取消事由3)から,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(引用発明1との相違点1についての容易想到性判断の誤り)(ア) 引用例1には逆の技術的思想の発明が記載されていること審決は,「刊行物1発明において,表面粗度を0.03μm以下とするのは,『光学的評価を伴う液晶表示板の検査が容易である』との課題の下に,保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査を問題なく行うため,光学特性を定めたからである。」(審決10頁8行~11行)とし,「従来の技術にあるように,従来は,『検査時に一端剥離し,検査終了後に再度貼付』していたものであり,『保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査』の必要が無ければ,その範囲の- 4 -上限を0.03μmに留める必要はないことは明らかである。」(10頁12行~15行)とした上で,「して 『保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査』の必要が無ければ,その範囲の- 4 -上限を0.03μmに留める必要はないことは明らかである。」(10頁12行~15行)とした上で,「してみると,刊行物1発明において,従来のように『保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査』を必要としない場合を想定すれば,ブロッキング防止の観点から,表面粗さRaを調整し,0.03μm以上とするのは当業者が適宜なし得ることである。」(10頁27行~30行)と判断している。 しかし,審決の上記判断は,以下のとおり,本願発明とは逆の技術的思想の発明が記載された引用例1から強引に導かれたものであり,誤りである。 a 引用例1(甲1)は,光学的評価を伴う液晶表示板の検査を容易にすることを課題としており(段落【0005】),そのために表面粗度を0.03μm以下とするものである(段落【0034】)。したがって,本願発明を知らない当業者が初めて引用例1を見た場合,引用発明1の課題に密接に関わる「保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査」について,その必要がない場合をわざわざ想定して,「『保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査』の必要が無ければ,その範囲の上限を0.03μmに留める必要はない」という強引な判断を行うことは決してあり得ない。引用発明1は,光学的評価を伴う液晶表示板の検査を容易にすることを明確な課題としており,その課題解決のために,表面粗度を小さくする(0.03μm以下)という技術手段を採用するものであり,本願発明における表面粗さを大きくする(0.03μm以上)という技術手段とは全く逆のものである。 この点に関して,被告は,引用例1の段落【0003】の記載を前提として,光学的配慮をしない従来技術の保護フ ける表面粗さを大きくする(0.03μm以上)という技術手段とは全く逆のものである。 この点に関して,被告は,引用例1の段落【0003】の記載を前提として,光学的配慮をしない従来技術の保護フィルムを知る当業者であれば,引用発明1においても,従来のように「保護フィルムを貼- 5 -付した状態での光学的評価を伴う検査」を必要としない場合を当然に想定することができると主張する。 しかし,引用例1の段落【0003】は,「検査時に一端剥離し,検査終了時に再度貼付しなければならない欠点がある」という「従来技術における欠点」を述べたものであり,引用発明1は,その欠点を解消するために完成されたものである。したがって,本願発明を知らない当業者が初めて引用例1を見た場合,従来技術の欠点である「検査時に一端剥離し,検査終了時に再度貼付」という行為を行わずに済むことを目的として完成された引用発明1について,わざわざその欠点である行為を行ってみようと試みることは決して想定し得ないというべきであるから,被告の上記主張は失当である。 仮に,引用発明1において「光学的評価を伴う液晶表示板の検査を容易にする」という課題を意識的に排除するという考え方が妥当であったとしても,ブロッキング防止の観点から表面粗さRaを0.03μm以上とすることが容易であるという被告の主張における該「0. 03」という数値の根拠はどこにもない。引用発明1において光学的評価を伴う検査を必要としない場合が仮にあるとすれば,その場合には,表面粗さRaの値はいくつでもよいと考えることが普通である。 このように,引用例1において,ブロッキング防止のために,表面粗さが「0.03」μm以上とする根拠はどこにもないのであるから,「0.03μm以上」という数値限定が容易想到であるとの被告 通である。 このように,引用例1において,ブロッキング防止のために,表面粗さが「0.03」μm以上とする根拠はどこにもないのであるから,「0.03μm以上」という数値限定が容易想到であるとの被告の主張は失当である。 b 引用例1においては,全ての実施例(実施例1~4)において,ブロッキングが見られる。つまり,引用発明1においてブロッキングが見られることは,好ましくない状況では決してない。したがって,引用例1を見た当業者が引用発明1においてブロッキングを防止しよ- 6 -うとは決して容易に想到し得ないというべきである。 (イ) 表面粗さRaを0.03μm以上とすることの技術的意義に関する誤り審決は,本願発明においても,「平均粗さをRaで評価したものであること,0.03μmを下限とすることに,格別な技術的意義は認められない。」と判断する。 しかし,本願発明におけるブロッキング防止は,液晶表示装置等の自動組立作業に供した場合に光学部材をその単位ごとに円滑に分離でき,複数単位の取込みによる組立ラインの停止を回避できるレベルである必要がある。これは,連続稼働下での安定した分離性が要求される非常に高度なブロッキング防止レベルである。 そして,本願発明では,Raを「0.03μm以上」とすることによって連続稼働下での安定した分離性が要求される非常に高度なブロッキング防止レベルを発現しているのである。 これに対して,引用例1や審決が周知例として指摘する特開平4-239627号公報(甲3,以下「周知例3」という。),特開平4-348942号公報(甲4,以下「周知例4」という。),特開平11-48335号公報(甲5,以下「周知例5」という。),特開平11-52514号公報(甲6,以下「周知例6」という。),特開平5-229082 2号公報(甲4,以下「周知例4」という。),特開平11-48335号公報(甲5,以下「周知例5」という。),特開平11-52514号公報(甲6,以下「周知例6」という。),特開平5-229082号公報(甲7,以下「周知例7」という。)では,いずれにおいても,連続稼働下での安定した分離性が要求される非常に高度なブロッキング防止レベルについては全く意識されていない。 以上のとおり,本願発明において,Raを「0.03μm以上」とすることには,格別な技術的意義が存在するのであるから,審決の上記判断は誤りである。 この点に関し被告は,本願発明は,光学部材の表面に貼付した保護フ- 7 -ィルムと接する,光学部材の裏面構成(材質,面状態)が特定されていない以上,本願発明のRa数値の規定に格別な技術的意義,正確な臨界的な意義を認めることができない旨主張する。 しかし,本願発明における光学部材は,本願発明の内容を客観的に検討すれば,液晶表示装置の形成などに用いられる偏光板や位相差板などの光学部材を意味するものであることは明らかであり(甲8段落【0002】),そのような光学部材の裏面の材質や面状態は,客観的かつ常識的な範囲で,当業者であれば予測がつく程度の範囲のものである。例えば,客観的かつ常識的に考えて,偏光板や位相差板などの光学部材の材質が,柔軟性に富んだゴム状のものであるはずがなく,また,表面に多数の凹凸が形成されたものであるはずもなく,現実的には,実施例で評価しているようなプラスチック製のフィルムやセパレータであることは当業者であれば容易に想到し得る範囲のものである。被告が主張するように光学部材の裏面構成(材質,面状態)が特定される必要があるのであれば,本願発明の場合,客観的かつ常識的な範囲で光学部材に用い得るプラスチック等の 易に想到し得る範囲のものである。被告が主張するように光学部材の裏面構成(材質,面状態)が特定される必要があるのであれば,本願発明の場合,客観的かつ常識的な範囲で光学部材に用い得るプラスチック等のあらゆる種類についての実施例が要求されるということになるが,このような要求は非現実的であって出願人に過度な負担を強いるものであり,「発明を奨励し,もって産業の発達に寄与する」という特許法の法目的に反するものである。 (ウ) 「外表面の表面粗さRaが0.03μm以上」とすることの臨界的意義に関する誤り審決は,本願発明においては,「『外表面の表面粗さRaが0.03μm以上』とすることに臨界的意義も認められない。」と判断する。 しかし,進歩性の判断において「課題が異なり,有利な効果が異質である場合」は,数値限定に臨界的意義を要しない。本願発明と引用発明1とは課題が全く異なり,有利な効果が異質である。 - 8 -したがって,引用発明1に基づく進歩性の判断において,数値限定の臨界的意義を基準とすることは,特許庁審査基準を誤って適用した判断であり,明らかな誤りである。 イ取消事由2(引用発明2との相違点2についての容易想到性判断の誤り)審決は,「刊行物2発明において,積み重ね品が互いにくっつくようなトラブルが生じないような帯電特性,保護フィルムの剥離除去のしやすさ,カット時の粘着剤付着防止のために,剥離強度が規定されているが,刊行物2発明の『積み重ね品が互いにくっつくようなトラブル』は静電気を要因とするものであって,本願発明1の課題のブロッキングとは,異なる。」(審決11頁29行~33行)と判断し,引用発明2の「積み重ね品が互いにくっつくようなトラブル」と本願発明の課題のブロッキングとは互いに異なることを明確にした上で,「しかし ッキングとは,異なる。」(審決11頁29行~33行)と判断し,引用発明2の「積み重ね品が互いにくっつくようなトラブル」と本願発明の課題のブロッキングとは互いに異なることを明確にした上で,「しかしながら,積み重ねでのくっつきという現象において共通しており,上記周知例3~7にあるが如く,フィルムの取り扱いにおいて,ブロッキング防止を考慮して,適度な表面粗さにすることは,周知・慣用手段である。こうしたことから,刊行物2発明において,ブロッキング防止の観点より,表面粗さRaを調整し,0.03μm以上とするのは当業者が適宜なし得ることである。」(審決11頁34行~12頁5行)と判断する。 しかし,引用発明2の課題と本願発明の課題とは全く異なり,積み重ねでのくっつきという現象において共通しているとしても,引用発明2の課題から「ブロッキング防止の観点」を導き出すことは決してできない。 そして,引用例2には,「ブロッキング防止」という課題について開示も示唆も一切ない。すなわち,引用発明2における「積み重ねでのくっつき」は「静電気によるくっつき」以外には全く想定されておらず,表面粗さに基づくくっつき(すなわち,ブロッキング)は全く意識されていない- 9 -のであって,このことは,引用例2において,外面の弱剥離面(2)に帯電防止性を付与している(請求項4及び5)ことから明らかである。 以上のとおり,審決の上記判断は,引用例2に「ブロッキング防止」という課題があたかも開示あるいは示唆されているかのような誤った前提に基づいたものであって,明らかに誤りである。 また,仮に「周知例3~7にあるが如く,フィルムの取り扱いにおいて,ブロッキング防止を考慮して,適度な表面粗さにすることは,周知・慣用手段である。」という審決の判断自体が事実であるとして ある。 また,仮に「周知例3~7にあるが如く,フィルムの取り扱いにおいて,ブロッキング防止を考慮して,適度な表面粗さにすることは,周知・慣用手段である。」という審決の判断自体が事実であるとしても,「静電気によるくっつき」を課題とする引用発明2に基づく容易想到性判断において,表面粗さに基づくくっつき(すなわち,ブロッキング)を課題とする周知例3~7を参酌することは全くの誤りである。 以上のとおり,審決には,本願発明と引用発明2との相違点2についての容易想到性の判断を誤った違法がある。 ウ取消事由3(引用例2に関する手続違背)審決は,拒絶理由通知書で全く言及されていない引用例2を審決の引用刊行物として扱っているが,これは明らかに不当であるから,審決には手続違背がある。 すなわち,平成22年7月1日付の拒絶理由通知書(甲16)において,特許法29条2項の規定における「下記の刊行物」としては,引用例1(特開平11-70629号公報)が挙げられているのみである。このため,請求人は,特許法29条2項の規定における「下記の刊行物」として引用例1のみを認識し,それについてのみ反論を行った。ところが,審決は,平成22年7月1日付の拒絶理由通知書(甲16)における「(2)剥離可能にできるように接着被覆する『保護フィルム』については,特開平9-113726号公報に,」と記載されている箇所の特開平9-113726号公報を引用例- 10 -2に該当するものとして扱っている。しかし,上記拒絶理由通知書を客観的に見れば,上記特開平9-113726号公報が引用刊行物であるとは到底認識できないものであるから,審決には,拒絶理由に掲げられていない引用刊行物を引用例として判断した違法がある。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし( 公報が引用刊行物であるとは到底認識できないものであるから,審決には,拒絶理由に掲げられていない引用刊行物を引用例として判断した違法がある。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3) の各事実は認めるが,(4)は争う。 3 被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対しア(ア) 原告の主張(ア)aにつき審決が,引用発明1を先行技術として引用したのは,表面粗度(Ra)「0.03μm」という値で本願発明と引用発明1とが共通しているからである。 そして,審決は,周知例3~7に挙げたように,一般に,「フィルム」について,その表面粗さが大きい場合に表裏のブロッキング性が向上する傾向があって,その点を考慮して表面粗さを調整することは周知・慣用手段であることから,引用発明1において,従来のように「保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査」を必要としない場合を想定すれば,ブロッキング防止の観点から,表面粗さRaを調整し,「0.03μm以上」とするのは当業者が適宜なし得ることである,と判断したものである。 そして,引用例1(甲1)の段落【0003】の従来技術では保護フィルムを「検査時に一端剥離し,検査終了後に再度貼付」していたものであるから,引用発明1を認定する際に,保護フィルムに光学的配慮を考えなくてよい従来技術をも前提にしている。 - 11 -したがって,光学的配慮をしない従来技術の保護フィルムを知る当業者であれば,引用発明1においても,従来のように「保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査」を必要としない場合を当然に想定することができるのであって,この点に関する原告の主張は失当である。 (イ) 原告の主張(ア)bにつき ように「保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査」を必要としない場合を当然に想定することができるのであって,この点に関する原告の主張は失当である。 (イ) 原告の主張(ア)bにつき確かに,原告の指摘のとおり実施例1~4においてはブロッキングが見られるが,他方,実施例5~7においてはブロッキング性がないとされている。そもそも,一般に,ブロッキングの発生を防止することは周知の課題であって,引用発明1も「積み重ねた状態で保管される・・・際,上下で接触している耐摩耗性層とフィルムとがブロッキング(固着)して取扱性が悪化することがある・・・斯かる問題を回避する」(段落【0033】)ものであってブロッキングを回避することが指向されている。 また,審決で周知例3~7として挙げたように,一般にフィルムについてその表面粗さが大きい場合に,表裏のブロッキング性が向上する傾向があって,その点を考慮して表面粗さを調整することが従来から周知・慣用手段である。 したがって,この点に関する原告の主張は失当である。 イ原告の主張(イ) につきそもそも本願発明は,光学部材の裏面構成(材質,面状態)を特定しておらず,実施例は,光学部材の裏面構成は「ポリエステルフィルムのセパレータ」であり,「ポリエステルフィルムからなる保護フィルム」との間のブロッキングを確認しているにすぎない。 このように,本願発明は,光学部材の表面に貼付した保護フィルムと接する,光学部材の裏面構成(材質,面状態)が特定されていない以上,本- 12 -願発明のRa数値の規定に格別な技術的意義,正確な臨界的な意義を認めることはできないものというべきであるから,この点に関する原告の主張は失当である。 ウ原告の主張(ウ) につき審決は,引用発明1に対して,ブ 規定に格別な技術的意義,正確な臨界的な意義を認めることはできないものというべきであるから,この点に関する原告の主張は失当である。 ウ原告の主張(ウ) につき審決は,引用発明1に対して,ブロッキング防止のための周知の手法(周知例3~7)を適用する際に,本願発明の数値限定の臨界的意義を併せて検討し,付言したにすぎない。 すなわち,本願発明において,互いに接する面の具体的な材質等が特定されていないと,表面粗さだけの数値範囲をいくら厳密に規定しても,その数値範囲ではブロッキング防止ができない材質等のものまでを,本願発明が包含することになる。その場合,本願の課題と発明構成との間に齟齬が生じることになり,数値範囲の限定的意義が不明確なものとなって確認することができない。審決はその観点から,本願発明を検討したのであり,その結果,本願発明の数値範囲の限定意義,特に臨界的意義,作用効果を認めることができないことを確認したものにすぎない。 したがって,この点に関する原告の主張は失当である。 (2) 取消事由2に対し原告は,引用例2にはブロッキング防止という課題は開示も示唆も一切ないから,引用発明2に基づく容易想到性判断において,表面粗さに基づくくっつき(すなわちブロッキング)を課題とする周知例3~7を参酌することは全くの誤りである旨主張する。 しかし,引用例2は静電気を対象としたものであるものの,偏光板を保護するフィルムにおいてフィルム同士がくっつくことが問題であること,このような問題を解消する必要があることが開示されている。そして,審決で示した周知例3~7にあるとおり,フィルムの取扱いにおいてブロッキングという現象によりフィルム同士がくっつく問題があること,その防止を考慮し- 13 -て適度な表面粗さにすることは,周知の技 決で示した周知例3~7にあるとおり,フィルムの取扱いにおいてブロッキングという現象によりフィルム同士がくっつく問題があること,その防止を考慮し- 13 -て適度な表面粗さにすることは,周知の技術事項である。 そうすると,ブロッキング防止という一般的な課題を解消するために,引用例2に周知技術を適用することが容易想到ということができるだけでなく,フィルム同士のくっつきを防止する必要があるという引用例2の示唆に従い,周知技術を引用例2に付加する動機付けが存することも明らかである。 したがって,この点に関する審決の判断に誤りはなく,原告の上記主張は失当である。 (3) 取消事由3に対し平成22年7月1日付の拒絶理由通知書(甲16)には,「理由」として,「(2)剥離可能できるように接着被覆する『保護フィルム』については,特開平9-113726号公報に,『偏光板または位相差板の表面保護フィルム』として,『役目を果たした表面保護フィルムを剥離除去する』ものであって,『積み重ね品が互いにくっつくようなトラブルを生じないようにした』もので,表面を弱剥離性だけでなく帯電防止性も有するように構成したものが記載されており,刊行物1に記載された発明に換えて,これを主たる引用例としても,周知のフィルムのブロッキング防止対策として,表面粗さを調整して,本願の請求項1~4の構成とすることは容易である。」と記載され,引用例1に換わる主たる引用例として引用例2が挙げられている。 また,上記拒絶理由通知書を形式的に見ても,引用例1を挙げた項番(1)と同格の項番(2)において引用例2が引用刊行物として挙げられているから,いずれにしても,拒絶理由通知書を客観的に見れば,引用例2が引用刊行物と認識できることは明らかである。 したがって,この点に関する原 番(2)において引用例2が引用刊行物として挙げられているから,いずれにしても,拒絶理由通知書を客観的に見れば,引用例2が引用刊行物と認識できることは明らかである。 したがって,この点に関する原告の主張は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1) (特許庁における手続の経緯),(2) (発明の内容),(3) (審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 - 14 - 2 容易想到性の有無審決は,本願発明は引用発明1又は引用発明2及び周知技術(周知例3~7)等に基づいて当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に想到できるとし,一方,原告はこれを争うので,以下検討する。 なお,検討の順序として,審決は上記のとおり引用発明1と引用発明2とを「又は」として選択的な対照発明とし,原告主張の取消事由も引用発明1と引用発明2とに分けてなされているので,以下においてもこれに従うこととする。 (1) 本願発明の意義ア本願明細書(公開特許公報,甲8)には,次の記載がある。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】 前記第3,1(2)のとおり。 (イ) 発明の詳細な説明・【発明の技術分野】「本発明は,積み重ねによるブロッキングを生じにくくて液晶表示装置等の組立効率に優れる光学部材に関する。」(段落【0001】)・【発明の背景】「液晶表示装置(LCD)の形成などに用いられる偏光板や位相差板等は,品質のバラツキ防止やLCD組立等の効率化などを目的に,例えば偏光板と位相差板を粘着層を介して予め積層した楕円偏光板や,偏光板に液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を予め付設した光学素材などとして用いられるが,その場合に光学素材の表面が損傷されないように保護フィルムで接着被覆した光学部材 積層した楕円偏光板や,偏光板に液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を予め付設した光学素材などとして用いられるが,その場合に光学素材の表面が損傷されないように保護フィルムで接着被覆した光学部材として実用に供されている。」(段落【0002】)・「しかしながら,従来の光学部材にあってはそれを積み重ねて輸送又は保管した後それを液晶表示装置の自動組立作業等に供すると,ブロッキングのために光学部材を単位毎に分離できずに複数単位を取り- 15 -込み,組立装置がその異常を検知して組立ラインが停止し,組立効率を低下させる問題点があった。」(段落【0003】)・【発明の技術的課題】「本発明は,ブロッキングを生じ難くて積み重ねた状態で輸送や保管等を行ってそれを液晶表示装置等の自動組立作業に供しても,その積み重ね体より光学部材を単位毎に円滑に分離できて複数単位の取り込みによる組立ラインの停止を回避でき,液晶表示装置等を組立効率よく製造することができる光学部材の開発を課題とする。」(段落【0004】)・【課題の解決手段】「本発明は,光学素材の表面,特にその片面を外表面の表面粗さRaが0.03μm 以上の保護フィルムにて接着被覆してなり,必要に応じ光学素材の他面に粘着層を介しセパレータを有することを特徴とする光学部材を提供するものである。」(段落【0005】)・【発明の効果】「本発明の光学部材によれば,積み重ねた状態で輸送や保管等に供しても,保護フィルムの外表面に付与した粗面がブロッキングを防止し,その積み重ね体を液晶表示装置等の自動組立作業に供して光学部材をその単位毎に円滑に分離でき,複数単位の取り込みによる組立ラインの停止を回避できて液晶表示装置等を組立効率よく製造することができる。」(段落【0006】)・【発 の自動組立作業に供して光学部材をその単位毎に円滑に分離でき,複数単位の取り込みによる組立ラインの停止を回避できて液晶表示装置等を組立効率よく製造することができる。」(段落【0006】)・【発明の実施形態】「本発明による光学部材は,光学素材の表面,特にその片面を外表面の表面粗さRaが0.03μm 以上の保護フィルムにて接着被覆してなり,必要に応じ光学素材の他面に粘着層を介しセパレータを有するものからなる。その例を図1~図3に示した。1が保護フィルム,2- 16 -が偏光板,3,31,32が粘着層,4がセパレータ,5が位相差板,6が輝度向上板である。」(段落【0007】)・【図1】光学部材例の断面図 ・【図2】他の光学部材例の断面図 ・【図3】さらに他の光学部材例の断面図 ・「光学素材は,例えば偏光板や位相差板,それらを積層した楕円偏光板や輝度向上板等の液晶表示装置の形成などに用いられる適宜なものであってよく,その種類について特に限定はない。・・・。」(段落【0008】)・「本発明による光学部材は,損傷防止等を目的に光学素材の表面を外表面の表面粗さRaが0.03μm 以上の保護フィルムにて接着被覆したものである。保護フィルムは,光学素材の表裏両面に設けうるが,一般には図例の如く保護フィルム1を光学素材の片面に設けて,光学素材の他面にはセパレータ4にて仮着カバーした粘着層3を設けた形態とされる。」(段落【0027】)・「前記において保護フィルムは,保護基材のみにても形成しうるが一般には,保護基材に粘着層を設けてその粘着層と共に保護基材を光学素材より剥離できるように形成される。一方,セパレータはそれが接着する粘着層3との界面で剥離で ルムは,保護基材のみにても形成しうるが一般には,保護基材に粘着層を設けてその粘着層と共に保護基材を光学素材より剥離できるように形成される。一方,セパレータはそれが接着する粘着層3との界面で剥離できるように形成される。」(段落【0028】)- 17 -・「従って通例,保護フィルムの場合にはその剥離で光学素材の表面が露出し,セパレータの場合にはその剥離で粘着層が光学部材に残存して,その粘着層を液晶セル等の他部材との接着に利用することができる。なお保護フィルムについてもセパレータの如く,それが接着する粘着層を光学素材に残存させるように形成することもできる。」(段落【0029】)・「保護フィルムを形成する保護基材には,例えばプラスチックフィルムやゴムシート,紙や布,不織布やネット,発泡シートや金属箔,それらのラミネート体等の従来に準じた適宜な薄葉体を用いることができる。‥‥。」(段落【0036】)・「一方,粘着層面を仮着カバーするセパレータは,粘着層を実用に供するまでの間,その汚染を防止することなどを目的とする。セパレータの形成は,前記の保護基材に準じた適宜な薄葉体に,必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系,フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤による剥離コートを設ける方式などにより行うことができる。」(段落【0038】)・【実施例】「実施例1 厚さ80μm のポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で5倍に延伸処理して形成した偏光フィルムの両側にポリビニルアルコール系接着層を介してトリアセチルセルロースフィルムを接着してなる厚さ約180μm の偏光板の片面に,厚さ50μmのポリエステルフィルムの裏面に厚さ20μm のアクリル系粘着層を設けてなる保護フィルムをその粘着層を介して接着した。」(段落【0041】 着してなる厚さ約180μm の偏光板の片面に,厚さ50μmのポリエステルフィルムの裏面に厚さ20μm のアクリル系粘着層を設けてなる保護フィルムをその粘着層を介して接着した。」(段落【0041】)・「次に前記偏光板の他面に,厚さ38μm のポリエステルフィルムからなるセパレータの裏面にシリコーン系剥離コートを介し厚さ25- 18 -μm のアクリル系粘着層を設けてそれをセパレータと共に接着して光学部材を得た。なお前記した保護フィルムの外表面の表面粗さRaは,表面粗さ計(東京精密社製,サーフコム,以下同じ)による測定にて0.06μm であった。」(段落【0042】)・「比較例保護フィルムとして,外表面の表面粗さRaが0.02μm のものを用いたほかは実施例1に準じて光学部材を得た。」(段落【0046】)・「評価試験実施例,比較例で得た光学部材の30単位を順次積み重ねてそれをポリエチレン製内袋と防湿アルミ製外袋とで減圧下に密封処理して48時間放置したのち開封して,ブロッキングの有無を調べた。その結果を次表に示した。」(段落【0047】)・「 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 比較例ブロッキングなしなしなしなしあり 」(段落【0048】)・「前記において,比較例では保護フィルム面を介して各単位がブロッキングしていたが,実施例1~4ではブロッキングせず,その積み重ね体を自動接着処理機に供して各単位毎にスムーズに分離して液晶セルに接着処理でき複数単位の取り込みによる装置のストップは生じなかった。」(段落【0049】)イ上記記載によると,本願発明は,液晶表示装置(LCD)の形成などに用いられる偏光板や位相差板等の光学素材の表面が損傷されないように みによる装置のストップは生じなかった。」(段落【0049】)イ上記記載によると,本願発明は,液晶表示装置(LCD)の形成などに用いられる偏光板や位相差板等の光学素材の表面が損傷されないように接着被覆された保護フィルムに関し,保護フィルムの外表面に付与した粗面がブロッキングを防止し,その積み重ね体を液晶表示装置等の自動組立作業に供して光学部材をその単位ごとに円滑に分離でき,複数単位の取込- 19 -みによる組立ラインの停止を回避して液晶表示装置等を効率よく製造するために,光学素材の表面,特にその片面を外表面の表面粗さRaが0. 03μm 以上の保護フィルムにて接着被覆する,という発明であると認めることができる。 (2) 引用発明1の意義ア引用例1(甲1)には,次の記載がある。 (ア) 特許請求の範囲・【請求項1】液晶表示板の偏光板または位相差板の表面に貼着して使用される液晶表示板表面保護フィルムであって,厚さが5~50μmの二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に耐摩耗性層が設けられ且つ他方の表面に粘着層が設けられた積層フィルムから成り,上記の二軸配向ポリエステルフィルムはレターデーション値が30~10,000nmであり,上記の耐摩耗性層は表面抵抗率が1×1010Ω未満であり,上記の積層フィルムは全光線透過率が80%以上であることを特徴とする液晶表示板表面保護フィルム。 ・【請求項6】 耐摩耗性層のポリエステルフィルムに対する摩擦係数が0.3以下である請求項1~5の何れかに記載のフィルム。 ・【請求項7】耐摩耗性層の表面粗度(Ra)が0.03μm以下である請求項1~6の何れかに記載のフィルム。 (イ) 発明の詳細な説明・【発明の属する技術分野】「本発明は,液晶表示板表面保護フィルムに関するものであり,詳 粗度(Ra)が0.03μm以下である請求項1~6の何れかに記載のフィルム。 (イ) 発明の詳細な説明・【発明の属する技術分野】「本発明は,液晶表示板表面保護フィルムに関するものであり,詳しくは,液晶表示板の偏光板または位相差板の表面に貼着することにより,偏光板または位相差板の表面を保護するために使用される液晶表示板表面保護フィルムに関するものである。」(段落【0001】)・【従来の技術】- 20 -「通常,液晶表示板は,2枚の基板の間に液晶を封入した液晶セルの両面に偏光板または位相差板を積層することによって作製される。そして,流通過程やコンピューター,ワープロ,テレビ等の各種表示機器の組み立て工程における偏光板または位相差板の表面の擦傷防止や塵芥付着防止のため,偏光板または位相差板の表面には保護フィルムが貼着される。斯かる保護フィルムは,偏光板または位相差板の保護の役目を果たした後においては不要物として剥離除去される。通常,保護フィルムの剥離除去は,保護フィルムに粘着テープを押し付けて当該粘着テープを持ち上げる方法により行われる。」(段落【0002】)・「従来,上記の保護フィルムとして,ポリエチレンフィルム,エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が使用されている。しかしながら,これらの保護フィルムは,液晶表示板の表示能力,色相,コントラスト,異物混入などの光学的評価を伴う検査には支障を来すことがあるため,検査時に一旦剥離し,検査終了後に再度貼付しなければならない欠点がある。」(段落【0003】)・「特開平4-30120号公報には,光学的評価を伴う検査時に剥離する必要がない保護フィルムとして,光等方性基材フィルムに光等方性粘着性樹脂層を積層した保護フィルムが提案されている。しかしながら,この保護フィル 30120号公報には,光学的評価を伴う検査時に剥離する必要がない保護フィルムとして,光等方性基材フィルムに光等方性粘着性樹脂層を積層した保護フィルムが提案されている。しかしながら,この保護フィルムは,基材フィルムとして,流延法により製膜され,従って,殆ど配向しておらずに非晶質に近い状態のフィルムを使用しているため,耐薬品性,耐擦傷性などの点で十分とは言えない。」(段落【0004】)・【発明が解決しようとする課題】「本発明は,上記実情に鑑みなされたものであり,その目的は,取扱性に優れ,光学的評価を伴う液晶表示板の検査が容易であり,液晶表- 21 -示板へのゴミの付着防止に優れる等の特性を有する,液晶表示板表面保護フィルムを提供することにある。」(段落【0005】)・【発明の実施の形態】「本発明において,耐摩耗性層のポリエステルフィルムに対する摩擦係数は0.3以下であることが好ましい。その理由は次の通りである。 耐摩耗性層形成工程を経たフィルムは,粘着層形成工程に搬入される前に積み重ねた状態で保管される。耐摩耗性層の摩擦係数が0.3を超える場合は,上記の保管の際,上下で接触している耐摩耗性層とフィルムとがブロッキング(固着)して取扱性が悪化することがある。 そこで,本発明においては,斯かる問題を回避するため,耐摩耗性層のポリエステルフィルムに対する摩擦係数の調節が推奨される。耐摩耗性層のポリエステルフィルムに対する摩擦係数は,好ましくは0. 25以下である。」(段落【0033】)・「本発明において,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)は0.03μm以下であることが好ましい。すなわち,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)が0.03μmを超える場合は,透明性の低下に伴い,フィルムの厚さ及びレターデーション値が前記の範囲であっても,保護 )は0.03μm以下であることが好ましい。すなわち,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)が0.03μmを超える場合は,透明性の低下に伴い,フィルムの厚さ及びレターデーション値が前記の範囲であっても,保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査において問題を起こすことがある。そこで,本発明においては,保護フィルムを貼付した状態での上記の検査を全く問題なしに行うため,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)を調節することが推奨される。耐摩耗性層の表面粗度(Ra)は,好ましくは0.025μm以下である。」(段落【0034】)・「本発明において,粘着層の粘着力は,耐摩耗性層に粘着テープを押し付けて当該粘着テープを持ち上げた際,偏光板または位相差板の表面から粘着層が二軸配向ポリエステルフィルムと共に剥離除去される様な範囲に調節される。この場合,偏光板または位相差板と粘着層- 22 -との間の粘着力は,5~200gf/50mmの範囲にするのが好ましい。そして,粘着層の表面には,その取扱性の便宜を図る観点から,公知の離型フィルムが積層される。」(段落【0044】)・「上記の様に構成された本発明の積層フィルム(液晶表示板表面保護フィルム)は全光線透過率(TL)が80%,好ましくは85%以上である。その結果,液晶表示板の表示能力,色相,コントラスト,異物混入などの光学的評価を伴う検査は,偏光板または位相差板の表面に保護フィルムを貼付したまま行うことが出来る。」(段落【0045】)・【実施例】「(12)ブロッキング性:耐摩耗性層を形成したポリエステルフィルムを2枚重ね,下側のフィルムを固定し,上側のフィルムを指で押さえて滑らせ,耐摩耗性層とポリエステルフィルムとの間のブロッキングの有無を調査した。」(段落【0059】)・「実施例1~4及 フィルムを2枚重ね,下側のフィルムを固定し,上側のフィルムを指で押さえて滑らせ,耐摩耗性層とポリエステルフィルムとの間のブロッキングの有無を調査した。」(段落【0059】)・「実施例1~4及び比較例1~5の結果を表で示す。」(段落【0081】)・【表1】 - 23 -・【表2】 ・「実施例5~7の結果を表3及び表4に示す。」(段落【0091】)・【表3】 ・【表4】 イ上記記載によれば,引用発明1は,液晶表示板において偏光板又は位相差板の表面の擦傷防止や塵芥付着防止のために貼着される保護フィルムが光学的評価を伴う検査には支障を来すことがあったことから,取扱性に優れ,光学的評価を伴う液晶表示板の検査が容易であり,液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる等の特性を有する保護フィルムを提供するために,液晶表示板の偏光板又は位相差板の表面に貼着して使用される液晶表示板表面保護フィルムであって,厚さが5~50μmの二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に耐摩耗性層が設けられ,かつ他方の表面に粘着層が設けられた積層フィルムから成り,上記の二軸配向ポリエステルフィルムはレターデーション値が30~10,000nmであり,上記の耐摩耗性層は表面抵抗率が1×1010Ω未満であり,上記の積層フィルムは全光線透過率が80%以上であり,耐摩耗性層のポリエステルフィルムに- 24 -対する摩擦係数が0.3以下であり,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)が0. 03μm以下であり,偏光板又は位相差板の保護の役目を果たした後においては不要物として剥離除去される,液晶表示板表面保護フィルムを,液晶表示板の偏光板又は位相差板の表面に貼着した液晶表示板の偏光板又は位相差板という発明であ 又は位相差板の保護の役目を果たした後においては不要物として剥離除去される,液晶表示板表面保護フィルムを,液晶表示板の偏光板又は位相差板の表面に貼着した液晶表示板の偏光板又は位相差板という発明であると認めることができる。 (3) 周知例3~7記載の技術内容ア周知例3(甲3)には,次の記載がある。 ・【請求項1】表面粗さが少なくとも中心線平均粗さ(測定長さ30μm)で0.07μmであるエチレンとラジカル重合性化合物からなる共重合体を有することを特徴とする粗面フィルム。 ・「前記表面粗度を示す中心線平均粗さの値が0.07μmよりも小さくなると,ブロッキングが生じ易くなり,フィルム間の滑りが低下し取扱い上困難をきたす。」(段落【0030】)イ周知例4(甲4)には,次の記載がある。 ・「次に本発明の低結晶性ポリエステルの突起平均高さは0.01~1. 0μm,より好ましくは0.03~0.8μmであるのがよい。突起平均高さが0.01μm未満ではフィルムの滑性が悪くなり好ましくない。また1.0μmを越えると透明性が悪くなり好ましくない。」(段落【0012】)ウ周知例5(甲5)には,次の記載がある。 ・「本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの,その少なくとも一方の表面の,表面粗さの平均値が20~100nmの範囲であることが必要であり,25~80nmの範囲であることが好ましく,さらに30~70nmの範囲であることがより好ましい。表面粗さの平均値が20nm未満の場合は,耐ブロッキング性改良の効果が得られない。逆に,100nmを超える場合は,製袋加工時に,製袋機のガイドロールや三角折- 25 -り込み板等に,摩擦によって白粉(樹脂の削れ粉)による汚れの発生する問題が生じる。上記の表面粗さの平均値とは,前述の原子間力顕微鏡を用いて1 製袋加工時に,製袋機のガイドロールや三角折- 25 -り込み板等に,摩擦によって白粉(樹脂の削れ粉)による汚れの発生する問題が生じる。上記の表面粗さの平均値とは,前述の原子間力顕微鏡を用いて1μm四方の面積を測定した原子間力顕微鏡(凹凸)像について粗さ解析した値であり,詳しくは,1μm四方の面積の全測定点(512×512点)の高さ(粗さ値)の平均値を計算し,これを二軸延伸ポリプロピレンフィルムの任意の15点で行い,その平均値を表面粗さの平均値とした。」(段落【0010】)エ周知例6(甲6)には,次の記載がある。 ・「・・・,本発明のフィルムにおいて,A層により構成される表層の一方の面の表面粗度Raは,0.030~0.50μm,好ましくは0. 040~0.40μm,さらに好ましくは0.050~0.30μmの範囲である。Raが0.030μm未満では,傷発生やフィルム同士のブロッキングによる取扱い性悪化の問題が生ずるようになる。Raが0.50μmを超えると写真画像品質の低下をもたらすため好ましくない。」(段落【0028】)オ周知例7(甲7)には,次の記載がある。 ・「しかし単に基材層を上記のような低密度ポリエチレンで構成するだけでは,板傷発生防止効果,優れた寸法安定性は得られるものの,十分な巻戻し性(耐ブロッキング性)は得られない。本発明では,優れた巻戻し性も同時に確保するために,基材層の表面粗さが,中心線平均粗さRaにて0.08ないし2.00μmの範囲に特定される。つまり,基材層の表面を,適度に大きく粗らすことにより,ブロッキングしにくい表面が得られ,巻戻し性が向上される。」(段落【0011】)(4) 取消事由1に対する判断原告は,取消事由1として,本願発明と引用発明1との相違点1についての容易想到性判断の誤 グしにくい表面が得られ,巻戻し性が向上される。」(段落【0011】)(4) 取消事由1に対する判断原告は,取消事由1として,本願発明と引用発明1との相違点1についての容易想到性判断の誤りを主張する。 - 26 -ア本願発明の内容は前記第3,1(2)のとおり,「光学素材の表面を外表面の表面粗さRaが0.03μm以上の保護フィルムにて,剥離できるように接着被覆してなることを特徴とする光学部材」であり,一方,引用発明1の内容は審決写し記載のとおり「液晶表示板の偏光板または位相差板の表面に貼着して使用される液晶表示板表面保護フィルムであって,厚さが5~50μmの二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に耐摩耗性層が設けられ且つ他方の表面に粘着層が設けられた積層フィルムから成り,上記の二軸配向ポリエステルフィルムはレターデーション値が30~10,000nmであり,上記の耐摩耗性層は表面抵抗率が1×1010Ω未満であり,上記の積層フィルムは全光線透過率が80%以上であり,耐摩耗性層のポリエステルフィルムに対する摩擦係数が0.3以下であり,耐摩耗性層の表面粗度(Ra)が0.03μm以下であり,偏光板または位相差板の保護の役目を果たした後においては不要物として剥離除去される,液晶表示板表面保護フィルムを,液晶表示板の偏光板または位相差板の表面に貼着した液晶表示板の偏光板または位相差板」であるところ,その間の相違点(相違点1)は,審決が認定したとおり,「外表面の表面粗さRaにつき,本願発明は,「0.03μm 以上」であるのに対し,引用発明1は,「0.03μm以下」である点」(相違点1)である。 そうすると,本願発明と引用発明1とは,少なくとも外表面の表面粗さRaの範囲が「0.03μm」である点では同一である。 また,引用発 は,「0.03μm以下」である点」(相違点1)である。 そうすると,本願発明と引用発明1とは,少なくとも外表面の表面粗さRaの範囲が「0.03μm」である点では同一である。 また,引用発明1(甲1)で,Raの範囲を「0.03μm以下」としたのは,引用例1の段落【0034】にあるとおり,Raが0.03μmを超える場合は保護フィルムを貼付した状態での光学部材の光学的評価を伴う検査において問題を起こすという課題を前提として,Raの範囲を「0.03μm以下」とすることによって保護フィルムを貼付した状態で検査を行うことを可能とするためであるとされる。 - 27 -そうすると,当業者であれば,保護フィルムを貼付した状態で検査を行う必要がなければ,Raが「0.03μm以下」でないものであっても保護フィルムとして使用できると理解すると考えられる。 そして,周知例3~7のとおり,本願の出願当時(平成11年6月9日),一般に,プラスチックフィルムについて,その表面を適度の粗らさにすることによりブロッキングしにくい表面が得られることは周知と認められ,周知例6にはRaが0.03μm未満ではフィルム同士のブロッキングによる取扱性が悪化するという問題が生じることも示されているから,引用発明1において,従来のように「保護フィルムを貼付した状態での光学的評価を伴う検査」を必要としない場合に,ブロッキング防止の観点から,表面粗さRaを適宜調整し,0.03μm以上とすることは当業者が容易に想到し得ることと認められる。 したがって,相違点1に関する審決の判断に誤りはない。 イ原告の主張に対する補足的説明(ア) 原告の主張(ア) についてa 原告の主張aに関し原告は,引用例1の段落【0003】は,「検査時に一端剥離し,検査終了時に の判断に誤りはない。 イ原告の主張に対する補足的説明(ア) 原告の主張(ア) についてa 原告の主張aに関し原告は,引用例1の段落【0003】は,「検査時に一端剥離し,検査終了時に再度貼付しなければならない欠点がある」という「従来技術における欠点」を述べたものであるから,本願発明を知らない当業者が初めて引用例1を見た場合,従来技術の欠点である「検査時に一端剥離し,検査終了時に再度貼付」という行為を行わずに済むことを目的として完成された引用発明1について,わざわざその欠点である行為を行ってみようと試みることは決して想定し得ない旨主張する。 しかし,引用例1の段落【0005】に「本発明は,上記実情に鑑みなされたものであり,その目的は,取扱性に優れ,光学的評価を伴- 28 -う液晶表示板の検査が容易であり,液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる等の特性を有する,液晶表示板表面保護フィルムを提供することにある。」と記載されているとおり,引用発明1の課題は「光学的評価を伴う液晶表示板の検査が容易」な表面保護フィルムを得ることだけでなく,「液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる」表面保護フィルムを得ることでもある。そして,引用発明1においてRaを「0. 03μm以下」と限定する理由は,「光学的評価を伴う液晶表示板の検査が容易」な表面保護フィルムとするためである(段落【0034】)から,当業者であれば,引用例1の段落【0003】に記載された従来技術の検査方法に従う場合であれば,Raの値を満足しないものでも,「液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる」表面保護フィルムとして使用できることを理解できるというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,仮に引用発明1において「光学的評価を伴う液晶表 に優れる」表面保護フィルムとして使用できることを理解できるというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,仮に引用発明1において「光学的評価を伴う液晶表示板の検査を容易にする」という課題を意識的に排除するという考え方が妥当であったとしても,引用例1において,ブロッキング防止のために,表面粗さが「0.03」μm以上とする根拠はどこにもないと主張する。 しかし,引用例1には,Raが「0.03μm以下」の表面保護フィルムに関して記載されているから,当業者であれば,引用例1に記載された表面保護フィルムの発明と重ならない範囲,すなわちRaが「0.03μm以上」の表面保護フィルムを特定することに格別の困難性はない。 したがって,原告の上記主張も採用することができない。 b 原告の主張bに関し原告は,引用発明1においては,実施例1~4において,ブロッキ- 29 -ングが見られることを理由として,引用発明1においてブロッキングが見られることは好ましくない状況では決してないと主張する。 しかし,引用発明1では,「積み重ねた状態で保管される・・・際,上下で接触している耐摩耗性層とフィルムとがブロッキング(固着)して取扱性が悪化することがある。そこで,本発明においては,斯かる問題を回避するため,」(段落【0033】)と記載されているとおり,ブロッキング防止にも関心を示し,実施例についてブロッキングの有無を調査した上(段落【0059】),実施例5~7(表3)においてはブロッキング性がないことが示されているのであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告の主張(イ) について原告は,本願発明には,Raを0.03μm以上とすることによって連続稼働下での安定した分離性が要求 るのであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告の主張(イ) について原告は,本願発明には,Raを0.03μm以上とすることによって連続稼働下での安定した分離性が要求される非常に高度なブロッキング防止レベルを発現できるという,格別な技術的意義が存在する旨主張する。 しかし,本願明細書(甲8)の段落【0041】,【0042】,【0046】~【0049】によれば,実施例では,光学素材の表面に「厚さ50μm のポリエステルフィルム」の保護フィルムを粘着層を介して接着し,光学素材の他面に,粘着層を介して剥離コート層を有する「厚さ38μm のポリエステルフィルム」を基材とするセパレータを接着して光学部材を製造すること,保護フィルムの外表面粗さRaが0.06μm のものが使用されていること,他方,比較例ではRaが0.02μmのものが使用されていること,そして,実施例1~4,比較例について,積み重ねたときのブロッキングの有無について評価が記載され,評価試験の結果はRaが0.06である実施例ではブロッキングが「なし」であり,Raが0.02である比較例は「あり」である旨が記載されて- 30 -いるように,本願明細書の実施例において,光学部材がブロッキングしないという効果が具体的に示されているのは,「厚さ50μm のポリエステルフィルム」の保護フィルムと「厚さ38μm のポリエステルフィルム」を基材とするセパレータとの間のブロッキングに関してである。 そこで,本願発明が特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるとすると,本願発明には光学部材がセパレータを有することも,保護フィルムやセパレータの材質がポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルムであることも限定されていない。仮に本願発明の光学部材をセパレータ ,本願発明には光学部材がセパレータを有することも,保護フィルムやセパレータの材質がポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルムであることも限定されていない。仮に本願発明の光学部材をセパレータを有するものに限定して解釈したとしても,本願明細書の段落【0036】及び【0038】記載のとおり,セパレータの材質には,布,不織布,ネットなど,一般的にはプラスチックフィルムとブロッキングしないと考えられるものまで記載されている。また,同様に,保護フィルムの基材として布,不織布,ネットなどを使用した場合,セパレータの材質としてどのようなものを使用したとしても,ブロッキングは生じないと考えられる。 そうすると,原告の主張する,本願明細書の実施例で示されているブロッキングしないという効果は,本願発明のうち,保護フィルムとセパレータとして限られた材質の組合せが使用される場合のみに考慮されるものであって,本願発明全体の効果として参酌されるものではない。 したがって,本願発明には原告の主張するような技術的意義があるとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。 この点に関し原告は,さらに,光学部材の裏面の材質や面状態は,客観的かつ常識的な範囲で当業者であれば予測がつく程度の範囲のものであり,現実的には実施例で評価しているようなプラスチック製のフィルムやセパレータであることは当業者であれば容易に想到し得る範囲のものであるとして,光学部材を実施例記載のものに限定解釈すべきで- 31 -ある旨主張する。 しかし,フィルム同士のブロッキングに関して,周知例3の段落【0030】及び周知例6の段落【0028】には,フィルムの表面粗度Raの値とブロッキングとの関係についてはRaが大きい方がフィルム同士のブロッキングが抑えられることが示されて して,周知例3の段落【0030】及び周知例6の段落【0028】には,フィルムの表面粗度Raの値とブロッキングとの関係についてはRaが大きい方がフィルム同士のブロッキングが抑えられることが示されている。 そうすると,仮に本願発明を原告が主張するように解釈し,保護フィルムやセパレータの材質をプラスチック製のフィルムに限定して検討したとしても,本願明細書の実施例に示されているプラスチックフィルム同士のブロッキングに関する効果は,周知例3及び周知例6から見て当業者が予期し得るものである。 したがって,原告の上記主張も採用することができない。 (ウ) 原告の主張(ウ) について原告は,本願発明と引用発明1とは課題が全く異なり,有利な効果が異質であるから,引用発明1に基づく進歩性の判断において,数値限定の臨界的意義を必要とすることは誤りである旨主張する。 しかし,前記(イ)のとおり,本願発明には光学部材がセパレータを有することも,保護フィルムやセパレータの材質がポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルムであることも限定されていないのであり,このように,互いに接する面の具体的な材質等が特定されていない状態で表面粗さだけの数値範囲をいくら厳密に規定しても,そのような数値範囲の限定に臨界的意義を認めることができないのは明らかであるから,本願発明において,「外表面の表面粗さRaが0.03μm以上」とすることに臨界的意義は認められないとした審決の判断に誤りはない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。 (5) 小括- 32 -以上によれば,原告主張の取消事由1は理由がないことになる。 そして,取消事由2及び取消事由3は,引用発明2に関する主張であり,かつ審決は引用発明1と引用発明2とを選択的 小括- 32 -以上によれば,原告主張の取消事由1は理由がないことになる。 そして,取消事由2及び取消事由3は,引用発明2に関する主張であり,かつ審決は引用発明1と引用発明2とを選択的な対照発明としているのであるから,本願発明が前記のとおり引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができるものである以上,その余について判断するまでもなく,本願発明に進歩性がないとした審決の結論に誤りがないことは明らかである。 3 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官中野哲弘 裁判官東海林保 裁判官矢口俊哉

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