令和6年10月30日判決言渡 令和6年(行ケ)第10012号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和6年8月28日判決 原告 再生ファーマ株式会社 同訴訟代理人弁理士 秋山文男 福家浩之 被告 特許庁長官 同指定代理人 上條肇 小金井悟 海老原えい子 小暮道明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由(注)本判決の本文中で用いる略語の定義は、本文中で別に定めるほか、次のとおりである。 本件審決:特許庁が不服2022-9208号事件について令和5年12月26日にした審決 本願発明:本願の出願時の願書に添付された特許請求の範囲【請求項1】に記載された発明 本願明細書:本願に係る明細書及び図面(乙1) 本件補正:本願につき拒絶査定不服審判請求と同時(令和4年6月15日)にされた手続補正(甲6) 本件補正発明:本件補正後の特許請求の範囲【請求項1】に記載された発明 甲1文献:第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293(甲1、本件審決の「引用文献1」) 甲1発明 本件補正後の特許請求の範囲【請求項1】に記載された発明甲1文献 :第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293(甲1、本件審決の「引用文献1」) 甲1発明 :甲1文献に記載された発明(本件審決の「引用発明」)甲2文献 :放射線生物研究、2004年Vol.39,No.3,pp.328-341(甲2)甲3公報 :特表2005-508892号公報(甲3、本件審決の「引用文献3」、公表日平成17年4月7日) 甲3技術的事項:甲3公報に記載された後記第2の3⑴ウの技術的事項甲5文献 :J. Nutr. Biochem., 1992 年,Vol.3, Issue 10, pp.498-502(甲5、本件審決の「参考文献」)甲10実験結果:本願につき令和4年1月28日に提出された意見書(甲10)に記載された実験結果 甲11公報 :国際公開WO2015/087981公報(甲11)ウシ常乳 :ウシ初乳を除くウシ由来の乳(ただし、本件補正発明及び各証拠における「ウシ初乳」の定義は、同一ではない)第1 請求 本件審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は、特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、本件補正発明の進歩性である。 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない)⑴ 原告は、令和3年10月26日、発明の名称を「乳酵素処理物、その製造 方法、組成物および製品」とする発明について特許出願をした(特願202 1-174778号)。本願は、平成28年5月31日(優先日・平成27年6月1日(以下「本件優先日」という。)、優先権主張国・日本)を国際出願日と る発明について特許出願をした(特願202 1-174778号)。本願は、平成28年5月31日(優先日・平成27年6月1日(以下「本件優先日」という。)、優先権主張国・日本)を国際出願日とする特願2017-521953号の一部を分割して新たな特許出願としたものである。 ⑵ 原告は、令和4年3月15日付けで拒絶査定を受けたため、同年6月15 日、拒絶査定不服審判を請求し、同日、手続補正書を提出して特許請求の範囲についての補正(本件補正)をした。 ⑶ 特許庁は、同審判請求を不服2022-9208号事件として審理し、令和5年12月26日、本件補正を却下するとともに「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は、令和6年1月16日、原告 に送達された。 ⑷ 原告は、同年2月14日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 本願発明の内容等⑴ 本件補正前(本件補正却下後も同じ。)の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、以下のとおりである。 「 乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、前記乳がウシ初乳を含まない、乳酵素処理物の製造方法。」⑵ 本件補正後の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、以下のとおりである(下線部は補正箇所)。 「 乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含ん でなり、前記乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である、乳酵素処理物の製造方法。」⑶ 本願明細書本願明細書には、別紙1「本願明細書の記載事項(抜粋)」の記載がある。 3 本件審決の理由 本件審決の理由は、別紙2「本件審決の理由(抜粋)」のとおりであり、そ の要旨は次のとおりである。 ⑴ 本件補正は、特許請求の範囲の (抜粋)」の記載がある。 3 本件審決の理由 本件審決の理由は、別紙2「本件審決の理由(抜粋)」のとおりであり、そ の要旨は次のとおりである。 ⑴ 本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法17条の2第5項2号)に該当するところ、本件補正発明は、以下のとおり、甲1発明及び甲3技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正は、独立特許要件(同法17条の2第6項、126 条7項)に違反し、却下すべきものである。 ア甲1発明ウシ初乳を、beta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理する、ウシ初乳MAF(MacrophageActivatingFactor)を得る方法イ本件補正発明と甲1発明の対比 【一致点】ウシ乳をβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法。 【相違点】「ウシ乳」について、本件補正発明は「ウシ由来の乳(ただし、ウシ 初乳を除く)」であるのに対し、甲1発明は「ウシ初乳」である点。 ウ甲3公報に記載された技術的事項(甲3技術的事項)(ア) Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理することで、効能のあるマクロファージ活性因子を生成すること。 (イ) Gc-グロブリンの大規模生産のための方法におけるGc-グロブリ ン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、例えば乳製品、初乳又は発酵培養液であってもよいこと。 エ相違点に係る構成の容易想到性甲1 発明と甲3公報は、マクロファージ活性化因子を生成することができる血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)に関する点で技術分野が共通 ってもよいこと。 エ相違点に係る構成の容易想到性甲1 発明と甲3公報は、マクロファージ活性化因子を生成することができる血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)に関する点で技術分野が共通 し、甲1文献に接した当業者は、甲1発明のウシ初乳が血清糖タンパク質 を含有する原料として用いられていることを理解する。そして、甲3公報には、血清糖タンパク質を含有する原料として、初乳とともに乳製品も挙げられていることから、甲1発明のウシ初乳が甲3公報に挙げられている乳製品のような初乳以外の乳に代替可能なことは、当業者が容易に認識することができる。 また、当業者にとって流通性、入手性が高い原料を選択することは自明の課題であるところ、牛乳・乳製品は、流通量が多く入手しやすいものである一方、ウシ初乳は、一般に流通しているものではない。 したがって、甲3公報の記載に照らし、甲1発明のウシ初乳に代えて、「血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源」として初乳に代替し得る ウシ乳を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願明細書を参酌しても、上記相違点による効果を格別顕著と評価することはできない。 ⑵ 本願発明は、本件補正発明を包含するものであるから、本件補正発明と同じ理由により、甲1発明及び甲3技術的事項に基づいて、当業者が容易に発 明をすることができたものである。 4 原告主張の審決取消事由本件補正が独立特許要件違反であるとした判断(甲1発明に基づく本件補正発明の進歩性判断)の誤り第3 当事者の主張 (原告の主張) 1 甲3技術的事項について甲3公報に記載された発明は「イオン交換クロマトグラフィおよび限外濾過および/またはダイアフィルトレーション工程を含む、Gc-グロブリン 主張 (原告の主張) 1 甲3技術的事項について甲3公報に記載された発明は「イオン交換クロマトグラフィおよび限外濾過および/またはダイアフィルトレーション工程を含む、Gc-グロブリンの大規模精製法。」であり、甲3公報の課題、課題を解決するための手段、請求項 のいずれにも、Gc-グロブリンをβガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処 理するとの記載は存在しないから、「Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理することで、効能のあるマクロファージ活性因子を生成すること。」は、甲3公報に開示された技術的事項とはいえない。 2 甲1発明に甲3技術的事項を組み合わせる動機付けがないこと⑴ 課題等の共通性について 甲1文献の課題は「糖鎖修飾したウシ初乳のマクロファージ活性化能の評価及び作用機序の解析」であるのに対し、甲3公報の課題は「Gc-グロブリンおよびGc-グロブリン医薬品を製造するために、改善された大規模精製方法」であるから(甲3公報の段落【0024】)、課題の共通性が存在しない。 また、甲3公報の記載事項は前記1のとおりであるから、甲1発明と甲3公報の記載事項との間には、機能、作用効果での共通点が存在しない。 ⑵ ウシ常乳を用いる動機付けについてア Gc-グロブリンの濃度は、母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁であるウシ初乳、特に分娩直後のウシ初乳では高濃度であるが、ウシ常乳 では低濃度であり(甲4、5、8)、例えば、甲4の記載(「初乳における分泌量は常乳と比較して有意に高く、ウシミルクではそれぞれ250μg/ml および6μg/ml と見積もられている。」)によれば、初乳中のGc-グロブリンの濃度は常乳中の濃度の40倍以上である。 加えて、酵素は溶液 して有意に高く、ウシミルクではそれぞれ250μg/ml および6μg/ml と見積もられている。」)によれば、初乳中のGc-グロブリンの濃度は常乳中の濃度の40倍以上である。 加えて、酵素は溶液中の他のタンパク質により安定化されるという技 術常識に従えば、蛋白質総量や、カゼイン、ホエー蛋白質の含有量が多いウシ初乳(甲8)よりも、それらが少ないウシ常乳では、酵素が不安定となり活性が低下することが予想される。 甲1文献がウシ初乳を選択した理由も、冒頭の【目的】に「ウシ初乳は分娩後数日間に分泌される乳汁であり、免疫グロブリンを豊富に含有 する…」と記載されているとおり、ウシ初乳が免疫グロブリンなどの有 用なタンパク質を豊富に含有することにあり、単にウシ初乳がGc-グロブリンを含有することに尽きるものではない。 そのため、甲1文献に接した当業者が、甲1発明におけるウシ初乳に代えて、Gc-グロブリンや各種乳成分の濃度が低いウシ常乳をあえて使用する動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。 イウシ常乳の流通量が多く、入手しやすいことの根拠はない。さらに、ウシ常乳のGc-グロブリン濃度は、ウシ初乳の40分の1以下であるから(甲4)、40倍以上の量が必要となることを踏まえると、あえて選択するほど流通量が多く、入手しやすいとはいえない。 3 顕著な効果の有無 ⑴ 本件補正発明の方法で得られる乳酵素処理物は、甲1発明により得られるウシ初乳由来の処理物と同等以上のマクロファージ活性化機能を有する(甲10実験結果)。ウシ初乳のGc-グロブリン濃度はウシ常乳の40倍以上であること(甲4)を踏まえれば、ウシ常乳を使用した場合にはマクロファージ活性化能が低下すると予想するのが自然であるところ、甲10実験結果 シ初乳のGc-グロブリン濃度はウシ常乳の40倍以上であること(甲4)を踏まえれば、ウシ常乳を使用した場合にはマクロファージ活性化能が低下すると予想するのが自然であるところ、甲10実験結果 に示される効果は、甲1文献や甲3公報からは予想することができない。 ⑵ 甲10記載の実験は、ウシ常乳については本願明細書(本願明細書の段落【0050】~【0057】)に記載された方法により、ウシ初乳についてはこれと実質的に同じ方法(甲11公報の段落[0035]~[0044]記載の方法)により行われており、実験のすべての詳細が特定されていなか ったとしても、その結果から、本件補正発明の方法で得られるウシ常乳の酵素処理物はウシ初乳の酵素処理物と同等以上のマクロファージ活性化能を有することを理解することができる。 ⑶ 本願明細書(本願明細書の段落【0050】~【0065】)には、本件補正発明の方法で得られる乳酵素処理物が優れたマクロファージ活性化能を 有することについて、具体的に開示されており、また、出願時にあらゆる先 行技術との比較結果を明細書に盛り込むことは事実上不可能であるから、甲10実験結果を参酌することは許されるべきである。 (被告の主張) 1 甲3技術的事項について甲3技術的事項が甲3公報に開示されているとの本件審決の認定に誤りはな い。 2 甲1発明に甲3技術的事項を組み合わせる動機付けについて⑴ 甲1文献において「ウシ初乳」がマクロファージを活性化する材料に選ばれた理由は、「ウシ血清糖タンパク質(Gcprotein)」すなわちGc-グロブリンを含有することに尽きる。そもそも、Gc-グロブリンは 血漿中に300~350μg/ml 存在するところ(甲3公報の段落【0002】)、あえて Gcprotein)」すなわちGc-グロブリンを含有することに尽きる。そもそも、Gc-グロブリンは 血漿中に300~350μg/ml 存在するところ(甲3公報の段落【0002】)、あえて、多くとも250μg/ml しか含まれない(甲5・図2)ウシ初乳由来のものを利用していることを考慮すると、甲1文献がウシ初乳を選択した理由は、その含有量や含有割合の多寡によるものではない。 そして、甲1文献と甲3公報は、糖鎖がGalNAcにプロセシングされ ることによりマクロファージの貪食能を活性化させる効果が期待できる要素であるGc-グロブリンにおいて機能、作用効果が共通し、Gc-グロブリン源として容易に入手できるものを開拓することといった技術的課題を内在していることも、当業者に明らかである。 そうすると、甲1発明に記載された「ウシ初乳」から、甲3公報等に記載 されたより入手しやすい「ウシ初乳を除くウシ乳」への置換を動機付ける十分な示唆はあるといえる。 ⑵ 原告は、ウシ初乳中のGc-グロブリンの濃度はウシ常乳中の濃度の40倍以上である旨主張するが、甲4の「初乳における分泌量」として見積もられた「250μg/ml」は、甲5文献の図2等の記載(別紙3「優先日前の学 術文献」参照)を考慮すると、分娩後0.5日に搾乳された初乳に限られる といえ、同記載によれば、分娩後1週間程度以降の「ウシ初乳」と本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」との間では、Gc-グロブリン濃度にさほどの差がないといえる。 ⑶ ウシ初乳を除いたウシ由来の乳の流通量が多く、入手しやすいことは、根拠を示すまでもなく、当業者に周知である。例えば、本件優先日(平成27 年6月1日)時点において、ウシ初乳は、生理的異常乳と ⑶ ウシ初乳を除いたウシ由来の乳の流通量が多く、入手しやすいことは、根拠を示すまでもなく、当業者に周知である。例えば、本件優先日(平成27 年6月1日)時点において、ウシ初乳は、生理的異常乳とされ(乙3)、我が国においては、乳及び乳製品等の製造において分娩後5日目以内の牛からの搾乳が禁じられていること(乙2)から、入手性に劣る一方、生乳の生産量は極めて多く(乙4)、それらの生乳が飲用(「牛乳」は生乳を加熱殺菌したものである。)その他の乳製品の製造に供されることから、ウシ常乳の 流通量が極めて多く、その入手性も極めて高いことは明らかである。 3 顕著な効果について⑴ 本願明細書から当業者が認識できる効果は、酵素未処理の乳に比べ、マクロファージの貪食能活性を増加させることに尽き、本願明細書の記載から、ウシ初乳をウシ常乳に変更することによりマクロファージ貪食能活性化が優 れたものとなるといった、酵素処理される対象を変更したことによる効果を導き出すことはできない。ウシ常乳とウシ初乳との効果上の差違について事後的に補充する甲10実験結果は、本願明細書の記載の範囲を超えるものであり、これを参酌することは、出願人と第三者との公平を害する結果を招来するので、許されるべきではない。 ⑵ 仮に甲10実験結果を参酌したとしても、「ウシ初乳を除くウシ乳」と「ウシ初乳」それぞれの実験に用いた試料の調製手順が明らかでないこと、マクロファージ貪食能活性を評価する「ものさし」とその「目盛」に相当するマクロファージが両実験で異なること、検体作成時に生じる実験誤差や統計上の有意差があるか否かの検証もされていないことから、甲10実験結果 は、本件補正発明が「ウシ初乳」を採用した場合と比べて格別顕著な効果を 奏すること 体作成時に生じる実験誤差や統計上の有意差があるか否かの検証もされていないことから、甲10実験結果 は、本件補正発明が「ウシ初乳」を採用した場合と比べて格別顕著な効果を 奏することを裏付けるものとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明及び本件補正発明について本願明細書の記載(別紙1)によれば、本願発明及び本件補正発明について、次の記載があると認められる。(乙1) ⑴ 技術分野本発明は、乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、及び医薬品を含むその製品に関する。(本願明細書の段落【0001】。以下、特に断らない限り、【 】内の番号は本願明細書の段落番号を指す。)⑵ 背景技術 マクロファージは体内の老廃物の処理や、微生物、ウイルスなどの病原体や腫瘍細胞に対する防御機能を担っている。したがって、癌や感染症などの治療や予防にはマクロファージを活性化させることが重要であり、マクロファージの活性化により、癌や感染症の治療や予防を行うことが可能である。 マクロファージを活性化する因子としては、例えばインターフェロンが挙げ られ、その臨床応用も試みられている。また、ある種の多糖類が免疫賦活活性を有することが知られており、これらの一部は抗ウイルス剤や抗ガン剤としての開発が期待されるものである。ヒト血清の酵素処理物(β-ガラクトシダーゼ、または、β-ガラクトシダーゼとシアリダーゼ)がマクロファージ活性化作用を有することは、先行特許文献に記載がある。(【0002】、 【0007】)⑶ 発明が解決しようとする課題本発明は、癌及び感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患及び脱毛症の治療、予防又は改善、並びに、皮膚改善に有用な乳酵素処理物、その 0007】)⑶ 発明が解決しようとする課題本発明は、癌及び感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患及び脱毛症の治療、予防又は改善、並びに、皮膚改善に有用な乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、及び医薬品を含むその製品を 提供しようとするものである。(【0010】) ⑷ 課題を解決するための手段、発明を実施するための形態本発明者は、哺乳類の乳を特定の酵素、すなわち、β-ガラクトシダーゼ、又はβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる製造方法により得られる乳酵素処理物が、癌及び感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患及び脱毛症の治療、予防又は改善、並びに、皮膚 改善に優れた効果を奏することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は、[1]乳をβ-ガラクトシダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法、[2]乳をシアリダーゼと接触させる工程をさらに含んでなる、上記[1]記載の製造方法に関する。(【0011】、【0012】) 本発明で使用する乳とは、ウシを含む哺乳類が幼児に栄養を与えて育てるために母体が作り出す分泌液をいう。但し、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)は含まない。ここで、乳は、酵素処理に付す前に、予め前処理しておいてもよい。そのような前処理としては、水分量を減少させる濃縮の他、乳からチーズをつくる際にチーズとして固まる成分(カゼイ ン、脂肪等)を除去する処理(脱チーズ成分処理)が含まれる。(【0016】)本発明で使用するβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。(【0017】、【0018】) )が含まれる。(【0016】)本発明で使用するβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。(【0017】、【0018】) 本発明において、乳と、β-ガラクトシダーゼ又はシアリダーゼとの接触(酵素処理)は、それぞれ、十分な量の酵素を用いて十分な時間接触させることにより、それ以上実質的に酵素反応が進行しない程度まで行うのが好ましい。酵素処理は、加熱(熱処理)により、酵素を失活させることにより終了する。(【0019】~【0021】) ⑸ 発明の効果 本発明に係る乳酵素処理物は、癌及び感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患及び脱毛症の治療、予防又は改善、並びに、皮膚改善に有用である。したがって、該乳酵素処理物を用いれば、これら疾患の治療、予防又は改善に有用あるいは皮膚改善に有用な医薬品、医薬部外品ないし飲食品を提供することができる。(【0013】) さらに、本発明に係る乳酵素処理物は、哺乳類の乳をβ-ガラクトシダーゼ、又はβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理することによって調製できるため、簡便かつ低コストであるという利点を有する。(【0014】) 2 審決取消事由(甲1発明に基づく本件補正発明の進歩性判断の誤り)につい て⑴ 甲1発明の認定及び本件補正発明との対比甲1文献の記載(「ウシ初乳は分娩後数日間に分泌される乳汁であり」との記載を含む。)によれば、同文献には以下の甲1発明が記載されていると認められる。そして、本願明細書【0016】における説明によれば、本件 補正発明における「ウシ初乳」は、「母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁」を意味するといえるから、甲1発明と本件補正発明とを対 れる。そして、本願明細書【0016】における説明によれば、本件 補正発明における「ウシ初乳」は、「母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁」を意味するといえるから、甲1発明と本件補正発明とを対比すると、以下の一致点及び相違点が認定できる。 ア甲1発明ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)を、beta-ガラクトシ ダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理する、ウシ初乳MAFを得る方法イ本件補正発明と甲1発明の対比【一致点】ウシ乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法。 【相違点】 「ウシ乳」について、本件補正発明は「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く)」であるのに対し、甲1発明は「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」である点。 ⑵ 甲3技術的事項について ア本件審決は、以下の甲3技術的事項に照らし、甲1発明のウシ初乳が乳製品のような初乳以外の乳に代替可能なことは当業者が容易に想到することができる旨判断するところ、原告は、下記(ア)の技術的事項は甲3公報に開示されていない旨主張する。 (ア) Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理 することで、効能のあるマクロファージ活性因子を生成すること。 (イ) Gc-グロブリンの大規模生産のための方法におけるGc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよいこと。 イしかし、甲3公報には、「ここに記載された精製方法により生産された Gc-グロブリンは、…そのマクロファージ活性効果による抗腫瘍 、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよいこと。 イしかし、甲3公報には、「ここに記載された精製方法により生産された Gc-グロブリンは、…そのマクロファージ活性効果による抗腫瘍作用を引き起こすために用いられるデグリコシル化(注:脱グリコシル化に同じ)されたGc-グロブリン製品を製造するためにも、用いられ得る。…」(【0134】)、「…Yamamoto(1994)は、誘導体、β ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼ(Sialidase)で処理したGc-グロブリンが、 効能のあるマクロファージ活性因子を生成することを示し…」(【0009】)との記載がある。 さらに、甲2文献には、「Gc タンパク質は炎症がトリガーとして生成したlyso-PC により誘導されたB細胞のβ―ガラクトシダーゼとT細胞の常在性のシアリダーゼにより糖鎖が三単糖から単糖のN-アセチルガラ クトサミンにプロセシングされマクロファージ活性化能を発揮するマク ロファージ活性化因子(Gc-derivedMAF, GcMAF)に変換されることを発見した。」(331頁)との記載があり、甲1文献には「血清糖タンパク質由来マクロファージ活性化因子Gcprotein-derivedmacrophageactivatingfactor(GcMAF)は、GalNAc 単糖を介してマクロファージの貪食能を活性化させることが示唆されており、ウシ血清糖タンパク質を 含有するウシ初乳もGcMAF と同様に糖鎖修飾することでマクロファージを活性化する可能性がある。」、「ウシ初乳をbeta‐ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼ併用で37℃、1時間酵素処理しウシ初乳MAFを得た。」との記載があることからすれば、Gc-グロブリンについて、効能の 能性がある。」、「ウシ初乳をbeta‐ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼ併用で37℃、1時間酵素処理しウシ初乳MAFを得た。」との記載があることからすれば、Gc-グロブリンについて、効能のあるマクロファージ活性因子を生成するための脱グリコシル 化、すなわち糖タンパク質であるGc-グロブリンに存在する糖鎖における所定の糖残基の脱離が、βガラクトシダーゼやシアリダーゼを用いた酵素処理によって行われることは、本件優先日当時、周知技術であったと認められる。 以上のとおり、前記ア(ア)の技術的事項は、本件優先日当時、既に周知 技術であり、かつ、甲3公報にもその内容が言及されていたものと認められる。 ⑶ 甲1発明に甲3技術的事項を組み合わせる動機付けについてア課題等の共通性について原告は、甲1文献と甲3公報に記載された課題は異なり、また、甲3 公報には前記⑵ア(ア)の技術的事項が開示されていないことから、機能、作用効果での共通点が存在しない旨主張する。 しかし、前記⑵ア(ア)の技術的事項が周知技術であり、甲3公報にもその内容が言及されていたと認められることは、前記⑵イのとおりである。 また、前記⑵イの甲1文献の記載によれば、甲1発明の課題は、Gc MAFがマクロファージの貪食能を活性化させるとの示唆に基づいて、 「GcMAFと同様に、酵素処理によって糖鎖修飾することで、マクロファージを活性化するものを提供すること」にあると認められる。他方、甲3公報には、「このように、Gc-グロブリン及びGc-グロブリン医薬品を製造するために、改善された大規模精製方法の必要性が存在する。」(【発明が解決しようとする課題】【0024】)との記載に加 え、酵素処理により糖鎖修飾されたGc-グロブリ c-グロブリン医薬品を製造するために、改善された大規模精製方法の必要性が存在する。」(【発明が解決しようとする課題】【0024】)との記載に加 え、酵素処理により糖鎖修飾されたGc-グロブリンを精製することやそのマクロファージ活性効果に基づく医薬品を提供することが記載されていることが認められる。 そうすると、甲1文献と甲3公報とは、糖鎖修飾によりマクロファージを活性化するものを提供するという点において課題が共通し、機能、 作用効果での共通点も存在するというべきである。 イウシ常乳を用いる動機付けについて(ア) 原告は、甲1発明においてウシ初乳を選択した理由は、ウシ初乳がGc-グロブリンを高濃度で含有することにあるから、甲1発明において、ウシ初乳に代えてGc-グロブリン濃度が低いウシ常乳を用いる 動機付けはなく、むしろ阻害要因がある旨主張する。 (イ) しかし、甲3公報(甲3公報の段落【0026】、【0127】)には、本件審決が認定するとおり、甲3技術的事項の(イ)(Gc-グロブリンの大規模生産のための方法におけるGc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、例えば乳製品、初乳または発酵 培養液であってもよいこと)が開示されている。 また、いずれも本件優先日(平成27年6月1日)より前に公知となった文献である各文献(甲4、5、乙5、6)には、それぞれ別紙3「優先日前の学術文献」の記載があり、これらによれば、甲1発明にいう「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」だけでなく、そ の後に分泌され、飲用や乳製品の製造に供されるウシ乳も、血清や血 漿と同様にGc-グロブリン(ビタミンD結合タンパク質(DBP)とも呼ばれる)を含むものであって、Gc-グロブリ そ の後に分泌され、飲用や乳製品の製造に供されるウシ乳も、血清や血 漿と同様にGc-グロブリン(ビタミンD結合タンパク質(DBP)とも呼ばれる)を含むものであって、Gc-グロブリン源となることは、本件優先日前における周知技術であるといえる。 (ウ) さらに、上記各記載、特に甲5文献の図2及び「DBPの最も高い濃度は、初乳(250μg/mL)であり、これは血清濃度の約27%に 相当する。DBPレベルは最初の48時間以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後、分娩後1週間後の最初の搾乳時のレベルの3.5%までゆっくりと低下する。このレベルは、その後の3週間の乳分泌期間中に有意に変化しない。」との記載や、甲3公報の「Gc-グロブリン(ビタしミンD-結合プロテインとも呼ばれている)は 約300~350mg/l(Haddad、1995)の濃度でヒトの血漿中に含まれている重要な血漿プロテインである。」(【0002】)との記載によれば、甲1文献が選択した「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」は、ウシ乳の中では相対的にGc-グロブリン濃度が高いとはいえ、血清、血漿などの血液由来の原料よりはGc-グ ロブリン濃度が低い材料であるといえる(なお、上記のとおり、Gc-グロブリン濃度が250μg/ml であるのは分娩後0.5日目の「初乳」であり、その後は急激に低下するのであるから、「初乳中のGc-グロブリンの濃度は常乳中の濃度の40倍以上である。」との原告の主張は、甲1文献の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」 については正確性を欠いている。)。 (エ) 他方、甲1文献には、「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」以外のウシ乳を採用することについて、阻害要因となるような記載は認められない。 については正確性を欠いている。)。 (エ) 他方、甲1文献には、「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」以外のウシ乳を採用することについて、阻害要因となるような記載は認められない。 原告は、ウシ初乳は蛋白質総量やカゼイン、ホエー蛋白質の含有量が 多いところ(甲8)、酵素は溶液中の他のタンパク質により安定化さ れることは技術常識であるから、それらが少ないウシ常乳では、酵素が不安定となり活性が低下することが予想され、甲1文献がウシ初乳を選択した理由も、ウシ初乳が免疫グロブリンなどの有用なタンパク質を豊富に含有することにあるとも主張する。 確かに、ウシ初乳(甲8によれば、分娩後数日間に泌乳される乳で ある。)の蛋白質総量やカゼイン、ホエー蛋白質の含有量は分娩直後には常乳(甲8によれば、初乳と末期乳との間の泌乳期の乳である。)よりも高い濃度を示すが、分娩後12時間で急減し、それ以降は漸減傾向を示していることが認められる(甲8)。しかし、その余の上記主張については、これを的確に裏付ける証拠はなく、前記(イ)のとおり、 初乳に限らず乳製品等がGc-グロブリン源とされていることを考慮すると、にわかに採用することはできない。 (オ) さらに、本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く)」は、生乳やいわゆる「牛乳」そのものに限られず、これを前処理した濃縮乳や脱チーズ成 分乳(乳清)(本願明細書【0016】)、固体のウシ乳(【0050】)を含むものであることからすると、甲1発明の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」以外のウシ乳、さらには本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く のであることからすると、甲1発明の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」以外のウシ乳、さらには本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く)」のGc-グロブリン等の濃度が相対的に 低いことは、当業者において、それらについての入手性の程度と同様、Gc-グロブリン源として何を採用するかという優先度を決定するための判断材料の一つとなるにすぎないというべきである。 (カ) 原告は、ウシ常乳の流通量が多く、入手しやすいことの根拠はないと主張するが、ウシの生乳が飲用や乳製品加工用として大量に生産され ること(乙4)は周知の事実というべきであり、乳牛が乳を分泌する 期間は分娩から約340日であり(甲8)、食品衛生法(昭和22年法律第233号)13条1項(平成30年法律第46号による改正前は11条1項)に規定する食品等の成分規格及び製造等の方法の基準の要領について定めた、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号、乙2)3条の別表の二㈠⑵によれば、分娩後 5日目以内の牛から乳を搾取してはならないとされていることからみても、本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く)」は、甲1発明の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」と比較して、はるかに流通量が多く、入手しやすいことは明らかである。原告の主張は、採用の限 りでない。 ウ動機付けについての結論以上によれば、本件優先日当時の当業者において、甲1発明に甲3技術的事項を適用し、甲1発明の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」に代えて、相違点に係る構成である「ウシ由来の乳(ただし、 ウシ初乳(母牛が分娩 時の当業者において、甲1発明に甲3技術的事項を適用し、甲1発明の「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」に代えて、相違点に係る構成である「ウシ由来の乳(ただし、 ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)を除く)」を採用する動機付けは十分にあるというべきであり、また、阻害要因は認められない。 ⑷ 顕著な効果についてア原告は、ウシ初乳と比べてGc-グロブリン濃度が低いウシ常乳を使用 した場合、乳酵素処理物のマクロファージ活性化能が低下すると予想するのが自然であるところ、甲10実験結果によれば、本件補正発明の方法で得られる乳酵素処理物は、甲1発明により得られるウシ初乳由来の処理物と同等以上のマクロファージ活性化機能を有する旨主張する。 イ意見書(甲10)には、甲10実験結果として、以下の内容の記載があ る。 (ア) ウシ初乳以外のウシ乳について、本願明細書の段落【0050】~【0057】に記載の方法によりβガラクトシダーゼ及びシアリダーゼを使用して乳酵素処理物を製造し、マクロファージ貪食能活性を測定したところ、図1に示すように、サンプル量10ng、100ng において、摂食指数(貪食指数)は、未処理のサンプルの場合はそれぞれ 17.8と19.9、酵素処理をした場合はそれぞれ25.3と29. 1となった(コントロールの摂食指数は16.2、LPSを添加した場合の摂食指数は21.2)。 (イ) [図1] (ウ) 一方、ウシ初乳を用いて同様にβガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理し、マクロファージ貪食能活性を測定したところ、その結果は、サンプル量10ng、100ng において、摂食指数は、未処理のサンプルの場合はそれ を用いて同様にβガラクトシダーゼ及びシアリダーゼで処理し、マクロファージ貪食能活性を測定したところ、その結果は、サンプル量10ng、100ng において、摂食指数は、未処理のサンプルの場合はそれぞれ17.96、19.45、酵素処理した場合はそ れぞれ23.46、24.54となった(コントロールの摂食指数は18.99。LPS添加した場合の摂食指数については記載がない。)。 ウ甲10実験結果の内容を表で表すと、以下のとおりとなる。 [サンプル量10ng の場合] 摂食指数コントロールLPS添加未処理物添加酵素処理物添加ウシ初乳18.99-17.9623.46ウシ常乳16.221.217.825.3[サンプル量100ng の場合] 摂食指数コントロールLPS添加未処理物添加酵素処理物添加ウシ初乳18.99-19.4524.54ウシ常乳16.221.219.929.1 なお、LPSは、マクロファージ活性化能を有する物質として一般的に知られているものであり(甲11公報[0046]、甲1文献の【結果・考察】)、上記実験においては、陽性対照(ポジティブコントロー ル)として摂食指数を算出し、マクロファージの反応性を確認したものと認められる。 エ原告は、甲10実験結果に基づき、ウシ初乳の酵素処理物を用いた場合よりも、ウシ常乳の酵素処理物を用いた場合の方が摂食指数が高いから、本件補正発明が顕著な効果を有することは明らかであるなどと 主張する。 オしかし、甲10実験結果に係る実験で用いられた「ウシ初乳」が、どのような条 が摂食指数が高いから、本件補正発明が顕著な効果を有することは明らかであるなどと 主張する。 オしかし、甲10実験結果に係る実験で用いられた「ウシ初乳」が、どのような条件で得られたものか、特に、分娩後のいつの時点で分泌されたものかについて、意見書(甲10)には記載がない。原告が実験条件を示すものとして引用する甲11公報の段落[0013]に 「本発明で使用するウシ初乳とは、子牛の分娩後、母牛が10日目までに分泌する乳汁をいい、好ましくは7日目まで、より好ましくは5日目まで」とあることから、遅くとも分娩後10日目までに分泌した乳汁という条件を満たすことは推認されるが、これ以外に乳汁の分泌時点を特定する記載は、甲11公報にも見当たらない。 そして、前記のとおり、分娩の直後から10日後までの間において分泌される乳汁に含まれるGc-グロブリンの濃度は、分娩から最初の48時間(2日)以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後はゆっくりと低下し、1週間(7日)後に3.5%まで低下した後の3週間は有意に変化しないこと(甲5文献)からすると、マクロフ ァージ活性化能の比較検討、特に「ウシ初乳(分娩後数日間に分泌されるもの)」を用いる甲1発明の効果と比較検討する上で、使用された「ウシ初乳」の元になる乳汁を搾取した時点が重要であることは明らかである。 カまた、マクロファージ活性化能についての結果を比較検討する上で は、試験に用いるマクロファージの反応性の程度(刺激に対する活性化の程度)が同じであることも重要になる。 しかし、甲10実験結果をみると、ウシ初乳、ウシ常乳それぞれの試験における摂食指数のコントロール値が異なっていることから、それぞれ個別に調製されたマクロファージ溶液 が同じであることも重要になる。 しかし、甲10実験結果をみると、ウシ初乳、ウシ常乳それぞれの試験における摂食指数のコントロール値が異なっていることから、それぞれ個別に調製されたマクロファージ溶液を用いたと考えられる上、 LPS添加によりマクロファージの陽性対照に対する反応性を確認し ているのはウシ常乳の試験のみであり、ウシ初乳の試験では、マクロファージの陽性対照に対する反応性が確認されていない。 そのため、甲10実験結果の各試験において、摂食指数を測定するために使用したマクロファージの反応性が同じであるということはできない。。 キさらに、被告が指摘するとおり、甲10実験結果においては、本願明細書及び甲11公報の記載を考慮しても、検体作成時に生じる実験誤差や統計上の有意差があるか否かの検証がなされているか否か不明である。 ク以上のとおり、甲10実験結果は、発明の効果を比較検討する上で 重要となる「ウシ初乳」を搾取した時期や、実験で使用したマクロファージの反応性が同じであることが明らかでないこと、実験誤差や統計上の有意差についての検証の有無も不明であることからすると、本件補正発明の方法で得られる乳酵素処理物が甲1発明により得られるウシ初乳由来の処理物と同等以上のマクロファージ活性化機能を有すること を裏付けるに足りるものではない。 したがって、出願後に補充された甲10実験結果の内容が本願明細書の範囲を超えるものではないと仮定したとしても、甲10実験結果に基づいて、本件補正発明が、従来技術である甲1発明と比較して予想することができない顕著な効果を奏するものと認めることはできない から、結局、原告の主張を採用することはできない。 ⑸ 取消事由についての結論以上に ある甲1発明と比較して予想することができない顕著な効果を奏するものと認めることはできない から、結局、原告の主張を採用することはできない。 ⑸ 取消事由についての結論以上によれば、甲1発明に基づく本件補正発明の進歩性判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は認められない。 3 結論 よって、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一 (別紙1)本願明細書の記載事項(抜粋) 【技術分野】【0001】 本発明は、乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品に関する。 【背景技術】【0002】マクロファージは体内の老廃物の処理や、微生物、ウイルスなどの病原体や腫瘍細胞に 対する防御機能を担っている。また、T細胞への抗原の提示とインターロイキン1の産生を介し、細胞性免疫のエフェクターとしての機能も有している。したがって、癌や感染症などの治療や予防にはマクロファージを活性化させることが重要であり、マクロファージの活性化により、癌や感染症の治療や予防を行うことが可能である。マクロファージを活性化する因子としては、例えばインターフェロンが挙げられ、その臨床応用も試みられて いる。また、ある種の多糖類が免疫賦活活性 り、癌や感染症の治療や予防を行うことが可能である。マクロファージを活性化する因子としては、例えばインターフェロンが挙げられ、その臨床応用も試みられて いる。また、ある種の多糖類が免疫賦活活性を有することが知られており、これらの一部は抗ウイルス剤や抗ガン剤としての開発が期待されるものである(特許文献1または2) 。 【0007】ヒト血清の酵素処理物(β-ガラクトシダーゼ、または、β-ガラクトシダーゼとシア リダーゼ)がマクロファージ活性化作用を有することは、特許文献12に記載がある。 【先行技術文献】【特許文献】【0008】【特許文献1】特開平05-097695号公報 【特許文献2】特公平06-099314号公報 【特許文献12】国際公開第2013/038997号【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明は、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しく は、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に有用な乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品を提供しようとするものである。 【課題を解決するための手段】【0011】 本発明者は、鋭意検討した結果、哺乳類の乳を特定の酵素、すなわち、β-ガラクトシダーゼ、または、β-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる製造方法により得られる乳酵素処理物が、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に優れた効果を奏することを見 などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に優れた効果を奏することを見 出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。 【0012】すなわち、本発明は、[1]乳をβ-ガラクトシダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法、 [2]乳をシアリダーゼと接触させる工程をさらに含んでなる、上記[1]記載の製造方法、[3]酵素処理の前に、乳を濃縮または脱チーズ成分処理しておく工程をさらに含んでなる、上記[1]または[2]記載の製造方法、〔略〕に関する。 【発明の効果】 【0013】本発明に係る乳酵素処理物は、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に有用である。したがって、該乳酵素処理物を用いれば、これら疾患の治療、予防または改善に有用あるいは皮膚改善に有用な医 薬品、医薬部外品ないし飲食品を提供することができる。 【0014】さらに、本発明に係る乳酵素処理物は、哺乳類の乳をβ-ガラクトシダーゼ、または、β-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理することによって調製できるため、簡便かつ低コストであるという利点を有する。 【発明を実施するための形態】【0016】<乳>本発明で使用する乳とは、哺乳類が幼児に栄養を与えて育てるために母体が作り出す分泌液をいう。ここで、哺乳類とは、特に限定されないが、好ましい例としては、ウシ、ウ マ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ヒト、水牛、ヤク、ラクダ、ロバ、トナカイ、シカなどが挙 て育てるために母体が作り出す分泌液をいう。ここで、哺乳類とは、特に限定されないが、好ましい例としては、ウシ、ウ マ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ヒト、水牛、ヤク、ラクダ、ロバ、トナカイ、シカなどが挙げられる。また、乳には、分娩後所定日数の間にのみ分泌されるいわゆる初乳も含む。但し、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)は含まない。ここで、乳は、酵素処理に付す前に、予め前処理しておいてもよい。そのような前処理としては、水分量を減少させる濃縮の他、乳からチーズをつくる際にチーズとして固まる成分(カゼイン、脂肪 等)を除去する処理(脱チーズ成分処理)が含まれる。以下、濃縮により得られる乳を「濃縮乳」、脱チーズ成分処理により得られる乳を「脱チーズ成分乳」(乳清)ともいう。 【0017】<酵素>本発明で使用するβ-ガラクトシダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のもの も使用することができる。〔略〕 【0018】本発明で使用するシアリダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。〔略〕【0019】<酵素処理> 本発明において、乳と、β-ガラクトシダーゼ若しくはシアリダーゼとの接触(酵素処理)は、それぞれ、十分な量の酵素を用いて十分な時間接触させることにより、それ以上実質的に酵素反応が進行しない程度まで行うのが好ましい。〔略〕【0020】酵素処理は、任意の容器中で、これら酵素を、乳に添加して実施することができるが、 所望により、乳中の総タンパク質濃度を調整するために、この分野で通常用いられる緩衝液を加えてもよい。そのような緩衝液としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(SPB)、リンゲル液などが挙げられる。酵素処理の温度は、酵素が活性を示す温度で するために、この分野で通常用いられる緩衝液を加えてもよい。そのような緩衝液としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(SPB)、リンゲル液などが挙げられる。酵素処理の温度は、酵素が活性を示す温度であれば特に限定はないが、通常酵素が高い活性を示す37 ℃付近の温度である。 【0021】 酵素処理は、加熱(熱処理)により、酵素を失活させることにより終了する。かかる熱処理は、酵素を失活させることができる限り特に限定されないが、例えば、60℃付近の温度で、約10分間加熱することにより、実施することができる。熱処理後の検体は、所望により、濃縮してもよい。〔略〕【実施例】 【0050】1.乳酵素処理物(1)の調製固体のウシ乳1mgを、1mlの1×PBSで溶解し、この溶液100μlにβ-ガラクトシダーゼ(和光純薬工業(株)製、カタログNo.072-04141、10mU/μl)6.5μl、シアリダーゼ(SIGMA-ALDRICH社製、N2876、10 mU/μl)6.5μl、および100mM SPB(15.601gのNaH2PO4・ 2H2Oおよび35.814gのNa2HPO4・12H2Oを、500mlの蒸留水に溶解して、200mM SPB(pH7.0)を調製し、これを希釈して、100mM SPBとする。)87μlを加え、37℃で3時間インキュベートする。インキュベート後、100mM SPBをさらに200μl加え、60℃で10分間、熱処理する。熱処理後、マイクロコン(10000MWCO YM-10、MILLIPORE社)で濃縮し、タ ンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovineserumalbumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)す IPORE社)で濃縮し、タ ンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovineserumalbumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)する。これにより、タンパク質濃度(μg/μl)を求める(検体1)。 【0051】かかる検体1を、100mMSPBを用いて希釈し、タンパク質濃度がそれぞれ、1 ng/10μl(検体1-1)、10ng/10μl(検体1-2)、100ng/10μl(検体1-3)である各検体を調製する。 【0052】一方、酵素処理する前の乳について、タンパク質濃度を同様に決定する(比較検体1)。 該比較検体1を、100mM SPBを用いて希釈し、タンパク質濃度がそれぞれ、1n g/10μl(比較検体1-1)、10ng/10μl(比較検体1-2)、100ng/10μl(比較検体1-3)である各検体を調製する。 【0053】<マクロファージ貪食能活性(1)>(オプソニン化SRBCを用いた、マウス腹腔マクロファージ貪食能活性) マウス(ICR系雌性)を頸椎脱臼し、腹部の外皮を剥ぎ、内臓を傷つけないようにして、腹腔にリン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.01Mのリン酸ナトリウム、0.9%のNaClおよび5単位/mlのヘパリンを含有する)を10mlを注入する。腹部を1分程度タッピングした後、腹腔液を回収し、腹膜細胞を収集する。回収した腹腔液を遠心(1500rpm、4℃、15分)した後、上清を破棄しRPMI培地を加え、ピペッテ ィングする。Burker-Turk型血球計算盤で細胞数を計測し、1.0×106c ells/mlになるように、さらにRPMI培地を加えて調整する。なお、RPMI培地は以下の操作にて調製する。すなわち、クリーン r-Turk型血球計算盤で細胞数を計測し、1.0×106c ells/mlになるように、さらにRPMI培地を加えて調整する。なお、RPMI培地は以下の操作にて調製する。すなわち、クリーンベンチ内で、粉末培地(GIBCO社製、カタログ番号:856846)を精製水900mlに溶解した後、さらに2gのNaHCO3を溶解する。混合物を、1NHClでpH7.2に調整した後、精製水を用いて全量を1000mlとする。こうして得た溶液をフィルター(MILLIPORE、SL GVJ13SL)にて濾過したものをRPMI培地とし、使用時まで、4℃で保管する。 【0054】滅菌したカバーガラス(MATSUNAMI、microcoverglass、No.1)をウェル毎に3枚ずつ入れた24穴プレート(TPP、92024)に、上記で得たマクロファージ溶液を、500μl/well(5.0×105cells/wel l)分注し、各ウェルにさらにRPMI培地500μl/wellを加え、全体として1ml/wellになるようにする。かかるプレートを、37℃で、1時間インキュベーションした後、各ウェル内の液を破棄し、RPMI培地1mlで、各ウェルを2回洗浄する。 洗浄後、さらにRPMI培地1mlを各ウェルに加え、37℃で、15時間インキュベートする。 【0055】インキュベート後、各ウェルに、上記で調製した検体1-1~1-3、および、比較検体1-1~1-3を、それぞれ10μl加える。37℃で、3時間インキュベートして、マクロファージを刺激する。インキュベート後、各ウェルの溶液部分を破棄し、0.5%オプソニン化SRBC(ヒツジ赤血球、(株)日本生物材料センター)1mlを加え、3 7℃で、90分間インキュベートし、マクロファージに貪食させ キュベート後、各ウェルの溶液部分を破棄し、0.5%オプソニン化SRBC(ヒツジ赤血球、(株)日本生物材料センター)1mlを加え、3 7℃で、90分間インキュベートし、マクロファージに貪食させる。貪食後、順次1/5×PBS、1×PBS、1×PBSを用いて、カバーガラスを洗浄し、約30分間風乾する。風乾後、各カバーガラスを、メタノール(関東化学(株)、25183-2B)に1分程度浸し、メタノール固定する。該固定後、再び約30分間風乾し、PBSで20倍希釈したギムザ液(SIGMA、A1327)で、1時間染色する。染色後、水道水でカバ ーガラスの裏側から洗浄し、一晩風乾する。 【0056】風乾後、スライドガラス(MATSUNAMI、microslideglass、S2215)にカバーガラスを裏返して貼り付ける。光学顕微鏡(NikonECLIPSEE200)にてカバーガラス1枚につき9点写真を撮り、観察される全マクロファージ数、貪食されたSRBC数、貪食したマクロファージ数をカウントし、9点分の計 測値を合計し、計測された全マクロファージのうちSRBCを貪食したマクロファージの割合に、1つのマクロファージの平均貪食数を掛けたものを摂食指数(ingestionindex)として算出する。なお、参考までに、図1に、「貪食しているマクロファージ」および「貪食されているSRBC」の様子を表す、ギムザ染色後の写真を示す。 ギムザ染色によってマクロファージは紫色の球体として、SRBCは透明の球体として観 察されている。マクロファージに接触しているSRBCを貪食されたSRBC、SRBCに接触しているマクロファージを貪食したマクロファージとして、摂食指数を算出する。 【0057】各検体について、それぞれのカバーガ クロファージに接触しているSRBCを貪食されたSRBC、SRBCに接触しているマクロファージを貪食したマクロファージとして、摂食指数を算出する。 【0057】各検体について、それぞれのカバーガラスごとに、2ないし3の摂食指数を算出し、その平均値を求める。コントロールとして、検体若しくは比較検体の代わりにRPMI培地 を用いて、上記と同様の操作を行う。 【0058】各検体は、コントロールおよび比較検体に対し、優れた摂食指数を示す。 【0059】<腸管マクロファージの貪食能活性> (各サンプルの調製)乳サンプルは、未処理ウシ乳を100mMPBS(pH=7.0)で100μg/mlに希釈して調製する。 【0060】乳酵素処理物サンプルは、ウシ乳酵素処理物を100mMPBS(pH=7.0)で 100μg/mlに希釈して調製する。 【0065】(結果)乳酵素処理物は、酵素未処理の乳に比べ、腸管における卵白アルブミン(OVA)陽性マクロファージの貪食能活性を増加させる。 以上 (別紙2)本件審決の理由(抜粋) 第2 令和4年6月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論] 令和4年6月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容)(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。 (下線部は、補正箇所である。)「乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、前記乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である、乳酵素 り補正された。 (下線部は、補正箇所である。)「乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、前記乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である、乳酵素処理物の製造方法。」(2)本件補正前の特許請求の範囲本件補正前の、本願の出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は 次のとおりである。 「乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、前記乳がウシ初乳を含まない、乳酵素処理物の製造方法。」 2 補正の適否本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項 である「乳」の内容について、「乳がウシ初乳を含まない」とあったものを、「乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である」とし、「ウシ由来の乳」の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。) が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項及び引用発明の認定 ア引用文献1(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、第135回日本薬学会年会要 用発明の認定 ア引用文献1(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審による。) 「【目的】ウシ初乳は分娩後数日間に分泌される乳汁であり、免疫グロブリンを豊富に含有することで運動力増強や免疫力亢進などの効果を持つ。血清糖タンパク質由来マクロファージ活性化因子Gcprotein-derivedmacrophageactivatingfactor(GcMAF)は、GalNAc単糖を介してマクロファージの貪食能を活性化させることが示唆されており、ウシ血清糖タンパク質を含有 するウシ初乳もGcMAFと同様に糖鎖に糖鎖修飾することでマクロファージを活性化する可能性がある。そこで本研究は、糖鎖修飾したウシ初乳のマクロファージ活性化能の評価及び作業機序の解析を目的とする。」「【方法】ウシ初乳をbeta-ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼ併用で37℃、1時間酵素処理しウシ初乳MAFを得た。マウス腹腔から単離したマクロファ ージをウシ初乳MAFで刺激し、オプソニン化SRBCに対する貪食能を評価した。またマクロファージをウシ初乳MAFで刺激後、各サイトカイン量の発現をFACSによって評価した。」「【結果・考察】beta-ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼで併用処理したウシ初乳MAFは、未処理のウシ初乳と比べて有意なマクロファージ貪食活性化能 を示し、その活性値はLPSやGcMAFと同程度であった。また、ウシ初乳MAFは炎 症性サイト 用処理したウシ初乳MAFは、未処理のウシ初乳と比べて有意なマクロファージ貪食活性化能 を示し、その活性値はLPSやGcMAFと同程度であった。また、ウシ初乳MAFは炎 症性サイトカインであるTNF-alphaおよびIL-1betaの誘導能は示さなかった。これらの結果より、ウシ初乳MAFはGcMAFと同様な作用機序でマクロファージを活性化することが示された。」(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、ウシ血清糖タンパク質を含有するウシ初乳もGcMAFと同様に糖鎖に糖鎖修飾することでマクロファージを活性化する可能性について評価することを課題としたものである(【目的】)。 b ウシ初乳をbeta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理したウシ初乳MAFを得た(【方法】)。 cbeta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼで併用処理したウシ初乳MAFは、未処理のウシ初乳と比べて有意なマクロファージ貪食活性化能を示し、その活性値はLPSやGcMAFと同程度であり、ウシ初乳MAFはGcMAFと同様な作用機序でマクロファージを活性化することが示された(【結果・考察】)。 (ウ)上記(イ)bから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。) が記載されていると認められる。 「ウシ初乳を、beta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理する、ウシ初乳MAFを得る方法」イ引用文献3(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通 じて公衆に利用可能となった特表2005-508892号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載 (ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通 じて公衆に利用可能となった特表2005-508892号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0009】Gc-グロブリンは、従来医薬品には使用されていなかった。しかし、Yamamoto(1994)は、誘導体、βガラクトシダーゼおよびシアリダーゼ(Sialidase)で処理したGc-グロブリンが、効能のあるマクロファージ活性因子を生成す ることを示し、このマクロファージ活性因子に変換される組換えGc-グロブリンを Yamamoto(1996)に記載している。」「【0026】本発明は、Gc-グロブリンの大規模生産のための新規な精製方法に関する。Gc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、Gc-グロブリンを含むいかなる溶液、懸濁液または上澄液、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよい。Gc-グロブリンは血漿由来のものでもよく、遺伝子組換生物による生 成物であってもよい。」「【0030】もう一つの形態では、Gc-グロブリンは、ヒトGc-グロブリンを発現する哺乳動物からの乳および/または初乳から精製される 。一つの形態では、哺乳動物はヒト以外の遺伝子組換動物である。」 「【0127】本発明の方法は、さらに、ヒトの医薬品としてのGc-グロブリン製品を使用するために、細胞培養上澄液、溶解細胞懸濁液、乳製品または初乳から、Gc-グロブリンを精製することを目的としている。」(イ)上記(ア)から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 a 「Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理する 的としている。」(イ)上記(ア)から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 a 「Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理することで、効能のあるマクロファージ活性因子を生成すること。」b 「Gc-グロブリンの大規模生産のための方法におけるGc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよいこと。」 (3)引用発明との対比ア本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)本願明細書の【0019】には、「接触(酵素処理)」と記載されているから、引用発明の「酵素処理する」工程は、「接触させる」工程に相当する。 (イ)引用発明の「beta-ガラクトシダーゼ」は、本件補正発明の「β-ガラク トシダーゼ」に相当する。 (ウ)引用発明の「ウシ初乳」は、本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」と「ウシ乳」で共通するので、引用発明のウシ初乳を酵素処理して得られた「ウシ初乳MAF」は、本件補正発明の「乳酵素処理物」に相当する。 (エ)引用発明の「得る方法」は、本件補正発明の「製造方法」に相当する。 イ以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおり である。 【一致点】「ウシ乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法。」【相違点】 「ウシ乳」について、本件補正発明は、「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」であるのに対し、引用発明は、「ウシ初乳」である点。 (4)判断以下、相違点について検討する。 ア相違点に 乳」について、本件補正発明は、「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」であるのに対し、引用発明は、「ウシ初乳」である点。 (4)判断以下、相違点について検討する。 ア相違点について 本件補正発明におけるウシ由来の「乳」については、本願明細書の【0016】段落に「乳は、酵素処理に付す前に、予め前処理しておいてもよい。そのような前処理としては、水分量を減少させる濃縮の他、乳からチーズをつくる際にチーズとして固まる成分(カゼイン、脂肪等)を除去する処理(脱チーズ成分処理)が含まれる。以下、濃縮により得られる乳を「濃縮乳」、脱チーズ成分処理により得られる乳を「脱チーズ成分乳」 (乳清)ともいう。」と記載されるとおり、前処理された各種の乳製品を含むといえる。 また、引用文献3には、上記(2)イのとおり、血漿、乳製品、初乳から得られる「Gc-グロブリン」について記載されているところ、同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった放射線生物研究,2004年,Vol.39, No.3,pp.328-341(以下「引用文献2」という。)には、「Gcタンパク 質(ヒトでの群特異成分group-specificcomponent(Gc)) は、一般的にはビタミンD結合タンパク質(vitamineD-bindingprotein,DBP)またはGcグロブリンとして知られているアルブミンスーパーファミリーに属する血清タンパク質で、肝臓から分泌される55KDのタンパク質である。」(328頁2-5行)と記載されていることから、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」は、引用文献3の「Gc-グロブリン」を言い換えたものであるといえ Dのタンパク質である。」(328頁2-5行)と記載されていることから、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」は、引用文献3の「Gc-グロブリン」を言い換えたものであるといえ る。 引用発明と、引用文献3は、マクロファージ活性化因子を生成できる血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)に関する点で技術分野が共通し、引用文献1は、上記(2)ア(イ)a及びcのとおり、ウシ初乳がウシ血清糖タンパク質を含有することを契機として、ウシ初乳中のウシ血清糖タンパク質の糖鎖に糖鎖修飾するために酵素処理をしてウシ初乳 MAFを得、そのマクロファージ貪食活性化能を評価したものであるから、引用文献1に接した当業者は、引用発明のウシ初乳が血清糖タンパク質を含有する原料として用いられているものであることを理解するといえる。そして、引用文献3には、上記(2)イ(イ)bのとおり、Gc-グロブリン源、即ち、血清糖タンパク質を含有する原料として、初乳とともに、乳製品も挙げられていることから、引用発明の血清糖タンパク質の原料として 挙げられるウシ初乳が、引用文献3に「血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源」として挙げられている乳製品のような初乳以外の乳に代替可能なことは当業者が容易に認識できるといえる。 また、発明の実施にあたり、原料の流通性や入手性は重要な視点であり、当業者にとって流通性、入手性が高い原料を選択することは自明の課題であるところ、ウシ乳、い わゆる牛乳・乳製品は、流通量が多く、入手しやすいものであることは周知の事実である。 一方、わが国では、乳及び乳製品等の製造において、分娩後5日以内の牛からは搾乳を禁じられているため(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第3条、別表二(一)(2)1)、ウシ初乳は、一般に流通し る。 一方、わが国では、乳及び乳製品等の製造において、分娩後5日以内の牛からは搾乳を禁じられているため(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第3条、別表二(一)(2)1)、ウシ初乳は、一般に流通しているものではなく、牛乳などのウシ乳と比べると入手しやすいものとはいえない。 したがって、牛乳などのウシ乳は、引用発明で原料として使用される初乳と比較し て、流通量が多く、入手しやすいものであることは明らかであり、引用文献3の記載に照らすと、「血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源」として初乳に代替し得るものであるから、引用発明のウシ初乳に代えてウシ乳を血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源として採用することは当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願明細書や図面等を参酌しても、実際にウシ乳を、β-ガラクトシダー ゼ及びシアリダーゼを接触させて製造した乳酵素処理物の具体的なマクロファージ活性化能等の実験結果は示されておらず、ウシ初乳を除くウシ乳を原料とした場合に、当業者の予測を超えるマクロファージ活性化能を示す乳酵素処理物が製造できるとも認められないので、上記相違点による効果を格別顕著と評価することはできない。 イ請求人の主張及び当審の見解 (ア)請求人の主張a 「引用文献4には「初乳における分泌量は常乳と比較して有意に高く、ウシミルクではそれぞれ250μg/mlおよび6μg/mlと見積もられている」と記載されており、初乳には常乳の40倍以上のVDBPが含まれていることが周知技術でした。この記載を踏まえると、当業者はVDBPを高濃度で含むウシの初乳を用いることが自然で あり、あえて、ウシの、初乳以外の乳を選択する動機はありません。」(審判請求書)b 「添付資料 た。この記載を踏まえると、当業者はVDBPを高濃度で含むウシの初乳を用いることが自然で あり、あえて、ウシの、初乳以外の乳を選択する動機はありません。」(審判請求書)b 「添付資料1の図1~6、表3でも、ウシの乳に含まれる各成分の含有量が、分娩直後から大きく変動することが示されています。このように、本件優先日以前において、ウシの、初乳と初乳以外の乳では、Gcプロテイン以外の成分が相違することが技術常識でした。また、一般的に、酵素反応の効率が、その反応系に存在する夾雑タンパク質、 脂質等の種類や濃度の影響を受けることは当業者の技術常識です。したがって、仮に、引用文献1においてウシ初乳に代えて、ウシの、初乳以外の乳を用いたとしても、GcプロテインをMAFに活性化できるとは、容易に予想できません。」(審判請求書)c 「さらに、本願発明の方法で得られる乳酵素処理物は、引用文献1に記載されるウシ初乳由来の処理物よりも高いマクロファージ活性化能を有します。本願明細書の段 落[0050]~[0057]に記載の方法によりβガラクトシダーゼおよびシアリダー ゼを使用して乳酵素処理物を製造し、マクロファージ貪食能活性を測定したところ、図1に示すように、サンプル量10ng、および100ngにおいて、貪食指数はそれぞれ25.3と29.1でした。[図1]ウシ初乳を用いた点を除いて、本願明細書の段落[0050]~[0057]の記載内容と同様にβガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理し、マクロファージ貪食能活性を測定しました。その結果、サンプル量1ng、10n g、および100ngにおいて、貪食指数はそれぞれ21.60、23.46、および24.54でした。なお、マクロファージ貪食アッセイにおいてサンプルを添加しないコ の結果、サンプル量1ng、10n g、および100ngにおいて、貪食指数はそれぞれ21.60、23.46、および24.54でした。なお、マクロファージ貪食アッセイにおいてサンプルを添加しないコントロールでは18.99であり、酵素処理しなかったサンプルを1ng、10ng、および100ng添加したときの貪食指数はそれぞれ17.12、17.96、および19. 45でした。このように本願発明の方法で得られる乳酵素処理物がウシ初乳由来の処理物 よりも高いマクロファージ活性化能を有することは、引用文献1に引用文献2やその他の周知技術を組み合わせても容易に予想できません。特に、初乳には常乳の40倍以上のVDBPが含まれるという引用文献4に記載の周知技術に基づくと、本願発明の方法により得られるマクロファージ活性化能は驚くべきものということができます。」(意見書) d 「前置報告書では、下記のように述べられています。『審判請求人は、令和4年1月28日付け意見書で提示した効果、すなわち、初乳ではないウシ由来の乳を用いた場合、ウシ初乳を用いた場合よりも、高いマクロファージ活性能を有する乳酵素処理物が得られる旨、主張している。しかしながら、審判請求人が主張する効果は、本願明細書に記載された効果ではなく、本願明細書又は図面の記載から推論できる効果であるとも認め られないから、当該効果を参酌することはできない。』しかし、前置審査官殿がご指摘の試験結果は、ウシ初乳を用いて得られる酵素処理物と、本願発明の方法で得られる酵素処理物の効果を比較したものであり、本願発明の方法で得られる酵素処理物のマクロファージ活性化能は、本願明細書に十分に開示されています。一般的に、出願時には、審査で引用される先行技術を予想する れる酵素処理物の効果を比較したものであり、本願発明の方法で得られる酵素処理物のマクロファージ活性化能は、本願明細書に十分に開示されています。一般的に、出願時には、審査で引用される先行技術を予想することはできず、あら ゆる先行技術との比較結果を明細書に盛り込むことは事実上、不可能です。ウシ初乳を用いて得られる酵素処理物の活性データが当初明細書等に記載されていないことをもとに、当該データが参酌されないとすると不可能が強いられることとなり、妥当ではありません。」(上申書)(イ)当審の見解 a 請求人の主張上記(ア)aについて本願の優先日当時の技術情報を示すJ. Nutr. Biochem., 1992年,Vol.3, Issue 10, pp.498-502(以下「参考文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 「498頁左欄IntroductionThevitaminD-bindingprotein (DBP), alsocalledGroupSpecificComponent (Gc) isa glycoproteinpresentintheplasmaofmostvertebratesandithasamolecularweightofabout 52,000inhumans.」(下線部の当審訳:ビタミンD結合タンパク質(DBP)は、群特異成分(Gc)とも呼ばれ、ほとんどの脊椎動物の血漿中に存在する糖タンパク質であり、ヒトの分子量は約52,000である。) 「Figure 2 Figure 2ChangesintheconcentrationofDBPan 分子量は約52,000である。) 「Figure 2 Figure 2ChangesintheconcentrationofDBPandalbuminincow'scolostrumandmilkduringthefirstmonthoflactation. Valuesareexpressedasapercentageofthefirstmilkingconcentration (250 ± 40 mg/Land 3,129 ± 1,284 mg/LforDBPandalbumin, respectively). Verticalbarsindicatethestandarddeviation. ●-● DBP; ○-○ albumin.」(下線部の当審訳:乳分泌1か月間のウシ初乳とウシ乳のDBP及びアルブミンの濃度変化。値は、最初の搾乳時の濃度(DBP及びアルブミンに対してそれぞれ、250±40mg/L及び3,129±1,284mg/L)のパーセントとして表される。縦棒 は、標準偏差を示す。●-●DBP;○-○アルブミン。」「499頁右欄~500頁左欄ResultThechangesintheconcentrationofbovineDBPthroughoutearlylactationareshowninFigure2. ThehighestconcentrationofDBPwasfoundinthefirstcolostrum (250 mg/mL), whichrepresentsabout 27% oftheserumco ionofDBPwasfoundinthefirstcolostrum (250 mg/mL), whichrepresentsabout 27% oftheserumconcentration. DBPlevelsfellsharplytoabout 22% oftheinitialvaluewithin thefirst 48 hours, andthendeclinedslowlyto 3.5% ofthelevelinthefirstmilkingafter 1 week postpartum. Thisleveldidnotchangesignificantlyduringthefollowing 3 weeksoflactation.Albuminlevelswerealsodeterminedinthesamewheysamples, andsimilarchangesinconcentrationwerefound. Thehighestconcentrationcorrespondedtothefirstcolostrum (3.1 mg/mL) reachingastablelevel (about 5% ofthefirstmilking) after 1 weekpostpartum.」(下線部の当審訳:乳分泌初期におけるウシDBP濃度の変化を図2に示す。DBP の最も高い濃度は、初乳(250mg/mL)であり、これは血清濃度の約27%に相当する。DBPレベルは最初の48時間以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後、分娩後1週間後の最初の搾乳時のレベ の最も高い濃度は、初乳(250mg/mL)であり、これは血清濃度の約27%に相当する。DBPレベルは最初の48時間以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後、分娩後1週間後の最初の搾乳時のレベルの3.5%までゆっくりと低下する。このレベルは、その後の3週間の乳分泌期間中に有意に変化しない。)ここで、上述した引用文献2の「Gcタンパク質(ヒトでの群特異成分group -specificcomponent(Gc))は、一般的にはビタミンD結合タンパク質(vitamineD-bindingprotein,DBP)・・」という記載から、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」は、参考文献の「DBP」及び請求人の言う「VDBP」を言い換えたものである。 上記の参考文献の記載を参酌すると、請求人の主張する「初乳には常乳の40倍以 上のVDBPが含まれている」とは、分娩0日目の初乳と分娩1週間後以降の常乳を比較したものであって、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」のレベルは最初の48時間で22%まで急激に低下し、分娩1週間後からは有意に変化しないところ、本願明細書の[0016]の「ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)」という記載に基づけば、分娩後1週間程度のウシ初乳と、分娩後11日目以降のウシ乳との間で は、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度には顕著な差はないと認められることも考慮すると、「分娩後数日間に分泌される」という引用発明の初乳と、そのような初乳以外の乳との間において、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度に、常に40倍以上の差があるとは認められない。 もっとも、引用文献3には、Gc-グロブリン源として、好ましくは粗血漿フラク 間において、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度に、常に40倍以上の差があるとは認められない。 もっとも、引用文献3には、Gc-グロブリン源として、好ましくは粗血漿フラク ションであるが、乳製品、初乳等であってよいことが記載されているところ(上記(2) イ(イ)b)、上記アで述べたとおり、牛乳などの初乳以外のウシ乳は、初乳と比較して流通量が多く入手しやすいものであるから、初乳とウシ乳の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度の差が、上記アの容易想到性の判断を阻害するとはいえない。したがって、「ウシの、初乳以外の乳を選択する動機はありません。」という請求人の主張上記(ア)aは採用できない。 b 請求人の主張上記(ア)bについて請求人は、β-ガラクトシダーゼ又はシアリダーゼの活性を阻害する具体的成分は明らかにしていない。また、審判請求書の添付資料1の図1~6、表3を参酌しても、ウシ初乳には存在せず、ウシ乳のみに存在する特異的成分を見いだせない。 加えて、引用文献2の328頁5-7行には、引用文献1の「血清糖タンパク質 (Gc-protein)」の機能について、「主な生理機能としてはビタミンDの輸送および貯蔵、細胞外アクチンのスカベンジャー、さらに炎症における好中球の走化性の亢進やマクロファージを活性化することが報告されているタンパク質である。」と記載されているとともに、331頁「2.2-1GcMAFの生成」において「すなわちGcタンパク質は、炎症がトリガーとして生成したlyso-PCにより誘導されたB細胞のβ- ガラクトシダーゼとT細胞の常在性のシアリダーゼにより糖類が三糖類から単糖のN-アセチルガラクトサミンにプロセシングされマクロファージ活性化能を発揮する so-PCにより誘導されたB細胞のβ- ガラクトシダーゼとT細胞の常在性のシアリダーゼにより糖類が三糖類から単糖のN-アセチルガラクトサミンにプロセシングされマクロファージ活性化能を発揮するマクロファージ活性化因子(Gc-derivedMAF、GcMAF)に変換されることを発見した。」と記載されているように、生体内の血中等でβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼにより酵素処理される旨が記載されている。 そうすると、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼは、ウシ初乳だけでなく、全く異なる環境下である血中でも機能していることを考慮すると、ウシ初乳以外のウシ乳(牛乳)でも、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼが機能すると合理的に推認することができる。 請求人の主張は、いずれも、ウシ初乳以外のウシ乳は、β-ガラクトシダーゼ及び シアリダーゼが機能するには適さない可能性があることを述べるにとどまるものであり、 これらを具体的に裏付けるものとは認められないから、「ウシ初乳」に代えて「ウシ初乳以外のウシ乳」を用いることを当業者に断念させるに足りるほどの事情があったとは認められない。したがって、請求人の主張上記(ア)bは採用できない。 c 請求人の主張上記(ア)c、dについて本願明細書や図面に、実際にウシ乳を、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼを 接触させて製造した乳酵素処理物の具体的なマクロファージ活性化能等の実験結果が示されていないことからすると、意見書図1で示された結果(データ)は、本願明細書又は図面に記載されていたものではなく、本願明細書又は図面の記載から推論できる効果であるとも認められないから、本件補正後の請求項1に係る発明の効果として参酌することはできない。 仮 又は図面に記載されていたものではなく、本願明細書又は図面の記載から推論できる効果であるとも認められないから、本件補正後の請求項1に係る発明の効果として参酌することはできない。 仮に参酌することができるとしても、請求人が意見書で述べるように本願明細書の段落[0050]~[0057]に記載の方法によりβガラクトシダーゼおよびシアリダーゼを使用した乳酵素処理物の原料は「固体のウシ乳」であり 、牛乳の組成が乳固形分12.6%、水分87.4%からなること(一般社団法人日本乳業協会ウェブサイト)を考慮すれば、タンパク質及びタンパク質の中に含まれるGcプロテイン等成分が極めて 濃縮されている特殊な原料を用いた結果であるから、意見書図1で示された結果(データ)は「ウシ初乳以外のウシ乳」と「ウシ初乳」の効果上の差異を実証したものとは認められない。 また、(i)ウシ乳のコントロール摂食指数(16.2%)と、ウシ初乳のコントロール摂食指数(18.99)との間で、コントール値同士にも、大きな差が生じているか ら実験系には無視できない程度の大きな測定誤差が含まれること、(ii)ウシ初乳のLPSを用いたポジティブコントール摂食指数が示されていないことから、ウシ初乳の乳酵素処理物の効果の程度が不明であること、(iii)ウシ乳の乳酵素処理物の摂食指数(10ng:25.4、100ng:29.1)と、ウシ初乳の乳酵素処理物の摂食指数(10ng:23.46、100ng:24.54)との間で統計上の有意差があるか否 かの検定がされていないこと、(iv)分娩後1~10日の間で「血清糖タンパク質(G c-protein)」の濃度は大きく変化するところ、意見書で使用されたウシ初乳が分娩後の何日のものであるかが不明であることを総 こと、(iv)分娩後1~10日の間で「血清糖タンパク質(G c-protein)」の濃度は大きく変化するところ、意見書で使用されたウシ初乳が分娩後の何日のものであるかが不明であることを総合的に考慮すると、この点においても、意見書図1で示された結果(データ)が「ウシ初乳以外のウシ乳」と「ウシ初乳」の効果上の差異を実証したものとは認められない。 よって、請求人の主張上記(ア)c、dの主張は採用できない。 ウしたがって、本件補正発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明令和4年6月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和3年10月26日にされた出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事 項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に 項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明 の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたもの であるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。 引用文献1:第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293引用文献3:特表2005-508892号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ウシ由来の乳」に係る限定事項を削除したものであるから、本願発明は本件補正発明を包含するものであ ることは明らかである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文 献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび以上のとおり、本願発明は、特許法29 も、引用文 献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべき ものである。 以上 (別紙3)優先日前の学術文献 <ミルクに含まれる運搬タンパク質(平成25年度酪農科学シンポジウム講演要旨)>(甲4) 「 VitaminD-bindingProtein(DBP)はGc-グロブリンとも呼ばれ、アルブミノイドスーパーファミリーに属し、血液に含まれる25-hydroxyvitaminD の90%以上を結合する。肝臓で合成され、血液を経由してミルク中に分泌すると考えられている。初乳における分泌量は常乳と比較して有意に高く、ウシミルクではそれぞれ250μg/ml および6μg/ml と見積もられている。」 (41頁右欄21~27行) <甲5文献>「 ビタミンD結合タンパク質(DBP)は、群特異成分(Gc)とも呼ばれ、ほとんどの脊椎動物の血漿中に存在する糖タンパク質であり、ヒトの分子量は 約52,000である。」(498頁左欄2~4行)「図2 乳分泌1か月間のウシ初乳とウシ乳のDBP及びアルブミンの濃度変 化。値は、最初の搾乳時の濃度(DBP及びアルブミンに対してそれぞれ、250±40mg/L及び3,129±1,284mg/L)のパーセントとして表される。縦棒は、標準偏差を示す。●-●DBP;○-○アルブミン。」(499頁右欄図2とその説明)「 乳分泌初期におけるウシDBP濃度の変化を図2に示す。DBPの最 mg/L)のパーセントとして表される。縦棒は、標準偏差を示す。●-●DBP;○-○アルブミン。」(499頁右欄図2とその説明)「 乳分泌初期におけるウシDBP濃度の変化を図2に示す。DBPの最も高い 濃度は、初乳(250μg/mL)であり、これは血清濃度の約27%に相当する。DBPレベルは最初の48時間以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後、分娩後1週間後の最初の搾乳時のレベルの3.5%までゆっくりと低下する。このレベルは、その後の3週間の乳分泌期間中に有意に変化しない。」(499頁右欄下から7行~500頁右欄3行。なお、提出された抄訳 に「初乳(250mg/mL)」とあるのは「初乳(250μg/mL)」の誤記と認める。) <CLINICALEXPERIENCEOFCANCERIMMUNOTHERAPYINTEGRATEDWITHOLEICACIDCOMPLEXEDWITHDE-GLYCOSYLATEDVITAMINDBINDINGPROTEIN (American JournalofImmunology,2014,Vol.10,No.1,p.23-32)>(乙5)「 乳、初乳、血液中に存在するタンパク質であるビタミンD結合タンパク質は、強力なマクロファージ活性化因子(GcMAF)の前駆体であり、他のOAタンパク質複合体と同様に、OA―GcMAFがGcMAFのみよりも優れた免疫療法活性を示す可能性があると我々は提案する。」(23頁要約欄2~5行) 「 ラクトフェリンに加えて、乳、初乳、血液中に多く含まれるもう1つの免疫原性タンパク質はビタミンD結合タンパク質である。これは、その選択的な脱グリコシル化に由来する非常に強力なマクロファージ活性化因子の前駆体である。 えて、乳、初乳、血液中に多く含まれるもう1つの免疫原性タンパク質はビタミンD結合タンパク質である。これは、その選択的な脱グリコシル化に由来する非常に強力なマクロファージ活性化因子の前駆体である。ビタミンD結合タンパク質はGcグロブリンとも呼ばれるため、このマクロファージ活性化因子はGcグロブリン由来マクロファージ活性化因子(Gc MAF)として知られている(ビタミンD結合タンパク質及びGcMAFの総 説について,RuggieroandPacini,2011)」(24頁左欄5~14行) <OleicAcid, DeglycosylatedVitaminD-BindingProtein, NitricOxide: AMolecularTriadMadeLethaltoCancer(ANTICANCERRESEARCH, 2014,Vol.34,No.7, p.3569-3578)>(乙6) 「 α-ラクトアルブミンとラクトフェリンに加えて、初乳、血液中と同様に、乳中に多く含まれるもう1つの免疫刺激タンパク質は、ビタミンD結合タンパク質である。これは、その選択的な脱グリコシル化に由来する非常に強力なマクロファージ活性化因子の前駆体である。ビタミンD結合タンパク質はGc-グロブリンとも呼ばれるため、このマクロファージ活性化因子はGcMAF (Gc-グロブリン由来マクロファージ活性化因子)として知られている(ビタミンD結合タンパク質及びGcMAFの総説について,参考文献7参照)。」(3570頁左欄1~10行)以上 申し訳ありませんが、提供されたテキストには整形すべき内容が含まれていないため、整形を行うことができません。具体的なテキストを提供していただければ、整形を行います。
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