平成17年4月27日判決言渡平成14年(ワ)第17541号損害賠償請求事件判決 主文 1 被告独立行政法人国立病院機構及び同Aは、連帯して、各原告に対し、それぞれ金1893万2146円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 2 原告らの被告独立行政法人国立病院機構及び同Aに対するその余の請求並びに同Bに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し、その2を被告独立行政法人国立病院機構及び同Aの負担とし、その余を原告らの負担とする。 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、連帯して、各原告に対し、それぞれ金2959万0211円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、国が設置運営する国立病院東京災害医療センター(当時)に入院したC(以下「亡C」という。)が、平成13年8月21日、心臓血管の閉塞を治療するために経皮経管的冠動脈形成術(以下「PTCA」という。)を受けた際、冠動脈を穿孔、出血し、それに対する処置を行っているうちに、容態が悪化して、翌22日午前1時21分死亡したという事案において、当該医療行為に過失があったとして、亡Cの妻及び長男が、上記PTCA(以下「本件PTCA」という。)の施行者であった被告A(以下「被告A」という。)及び同B(以下「被告B」という。)並びに上記両名の勤務先であった国立病院東京災害医療センター(当時)を設置運営していた国を相手取って、不法行為(被告A及び同Bに対しては民法709条に基づく責 。)及び同B(以下「被告B」という。)並びに上記両名の勤務先であった国立病院東京災害医療センター(当時)を設置運営していた国を相手取って、不法行為(被告A及び同Bに対しては民法709条に基づく責任、国に対しては民法715条に基づく責任)に基づき、損害賠償を請求した事案である。 なお、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)が平成15年10月1日に施行され、平成16年4月1日をもって独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」という。)が発足したことにより、従前国が設置・開設し、厚生労働省が所掌していた国立病院東京災害医療センターも国立病院機構へと移管された(新名称は「独立行政法人国立病院機構災害医療センター」である。)。同法附則5条1項により、国立病院等に関する権利義務は、特別の手続を要せず、国から国立病院機構へ承継され、またこれに伴い、本件の当事者(被告)たる地位も国立病院機構が当然に承継したものである。 1 争いのない事実等(1) 当事者ア亡Cは、昭和11年5月18日生の男性であり、平成13年8月22日に死亡した。 原告D(以下「D」という。)は、亡Cの妻であり、原告E(以下「E」という。)は、亡Cの長男である(争いのない事実、甲A5、9)。 イ被告A及び被告Bは、いずれも循環器内科の医師であって、国立病院東京災害医療センター(当時。以下「東京災害医療センター」という。))の勤務医として、本件当時亡Cの診療に携わっていたものである。 被告Aは、当時医長として、被告Bの上司であった(争いのない事実、乙A10、11、被告A本人)。 (2) 診療経過の概要本件の診療経過は、別紙診療経過一覧表記載のとおりであり(なお、別紙診療経過一覧表 、被告Bの上司であった(争いのない事実、乙A10、11、被告A本人)。 (2) 診療経過の概要本件の診療経過は、別紙診療経過一覧表記載のとおりであり(なお、別紙診療経過一覧表中、診察経過欄及び検査・処置欄のうち太字でない部分は当事者間に争いのない事実であり、太字の部分のうち斜体字でない部分は、当裁判所が証拠欄記載の証拠により認定した事実である。また、原告の反論記載の事実についても、同様に斜体字でない部分は、当裁判所が証拠欄記載の証拠により認定した事実である。)、その概要は以下のとおりである。 亡Cは、平成12年12月26日に上腹部痛を訴えてFを受診し、その後も症状が軽快せず、平成13年1月11日に東京災害医療センターへと転院となった。同センターにおいて、主治医となった被告Bによって心臓カテーテル検査(以下「CAG」という。)が実施され、左前下行枝は完全閉塞、右冠動脈は99%の亜閉塞、左回旋枝は90%の狭窄と認められ、冠動脈疾患三枝病変、陳旧性心筋梗塞であると診断された。亡Cに対しては、被告Bを術者として、右冠動脈及び左回旋枝に対してPTCAが実施され、これは成功して狭窄は改善された。その際、左前下行枝に対しては、冠動脈バイパス形成術(以下「CABG」という。)の実施を勧められたが、亡Cが消極的な態度を示したため、これは行わずに同月22日に退院となった。 その後、亡Cは、同年8月15日、CAGを目的として再度東京災害医療センターへ入院した。その結果、以前にPTCAを施行した右冠動脈及び左回旋枝については再度の狭窄は認められなかったが、左前下行枝はやはり完全閉塞であったため、同部位に対してPTCAを実施することになった。 同月21日、被告B及び同Aを術者として亡Cの左前下行枝に対するPT 度の狭窄は認められなかったが、左前下行枝はやはり完全閉塞であったため、同部位に対してPTCAを実施することになった。 同月21日、被告B及び同Aを術者として亡Cの左前下行枝に対するPTCAが実施されたが、その途中で冠動脈穿孔による出血が生じ、一旦止血したものの、その後亡Cの容態が悪化し、同日午後10時58分には心停止状態となり、蘇生措置を実施したが、亡Cは翌22日午前1時21分に死亡した。 2 争点(1) 亡Cに対するPTCAの必要性及び適応の有無(2) 被告Bにカテーテル操作を行わせたことの適否(3) 亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血の原因(4) 亡Cにおいて冠動脈穿孔及び出血を生じさせたことについての過失の有無(5) 第1対角枝の閉塞に対する治療を怠った過失の有無(6) 被告Bの本件PTCA手技における過失の有無(7) 亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血と死亡との因果関係の有無(8) 損害額 3 争点についての当事者の主張争点についての当事者の主張は、別紙争点整理表記載のとおりである。 なお、争点(5)及び争点(7)のうち第1対角枝の閉塞と死亡との因果関係の点については、弁論準備手続終結後に原告らから主張がされたものである。 第3 当裁判所の判断 1 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件の診療経過等に関し、以下のとおり認められる。 (1) 亡Cは、昭和11年5月18日生の男性であり、平成6年2月から株式会社Gにおいて、嘱託員として稼働していた。 平成12年12月26日、上腹部痛を訴え、Fを受診した。さらに、平成13年1月7日にも受診したが、症状は軽快せず、同月9日に入院の結果、前壁に陳旧性心筋梗塞、下壁に急性心筋梗塞を発症していると診 平成12年12月26日、上腹部痛を訴え、Fを受診した。さらに、平成13年1月7日にも受診したが、症状は軽快せず、同月9日に入院の結果、前壁に陳旧性心筋梗塞、下壁に急性心筋梗塞を発症していると診断され、同月11日に東京災害医療センター(当時)へと転院になった(甲A1、9、C1ないし2、乙A1)。 (2) 東京災害医療センターにおいて亡Cの主治医となった被告Bにより実施された緊急CAGの結果、この時点で既に陳旧性心筋梗塞の病変であったと推定される左前下行枝(LAD)は完全閉塞、急性心筋梗塞の責任冠動脈病変である右冠動脈(RCA)は99%亜閉塞、残る左回旋枝(CX)は90%狭窄と認められ、冠動脈疾患三枝病変、陳旧性心筋梗塞と診断された。同日、被告Bを術者として、右冠動脈に対してPTCAが実施され、ステントを留置するなどして、同部位の狭窄を改善した。なお、この際、被告Aより、亡C及び原告Dに対し、CAG及びPTCAを局所麻酔で行うこと、合併症としては出血、感染、アレルギー、脳梗塞、心破裂等があり得ることが説明されていた。 同日、亡C、原告ら両名及び亡Cの実妹に対して、急性の心筋梗塞自体は同月8日に発症した可能性が高いこと、今回のPTCAは成功したが、心筋梗塞の発症から処置まで時間がかかりすぎたこと、次に心筋梗塞を起こしたら救命は難しいかもしれないこと、禁煙が必要であること、左前下行枝にPTCAを実施するという選択肢も考えられること、半年後に確認のためのCAGが必要であることなどが説明された。亡Cらは、次に心筋梗塞を起こしたら救命が難しいかもしれないと聞いて驚いていた。 さらに、翌12日にも被告Bを術者として亡Cに対してCAGが実施された(甲A3、乙A1、1の2)。 (3) 同月15日、亡C及び原告Dに対し、右冠動脈を治療し しれないと聞いて驚いていた。 さらに、翌12日にも被告Bを術者として亡Cに対してCAGが実施された(甲A3、乙A1、1の2)。 (3) 同月15日、亡C及び原告Dに対し、右冠動脈を治療したこと、左前下行枝は完全に閉塞していること、左回旋枝は90%閉塞しており、ここにPTCAを実施した方がよいと考えられることが説明され、亡C及び原告Dはこれを了承した。 さらに、また、左前下行枝は慢性閉塞病変(以下「CTO」という。)であり、これに対しては、PTCAは困難であるが、核医学等から左前下行枝領域はバイアビリティー(生存心筋)が残っており、血行再建が可能なら、実施した方がよく、低侵襲な人工心肺ポンプ無しでのmidCABGが良いと考えられた。そのため、左前下行枝に対してCABGを行う方法も紹介されたが、この日はその件に関しては後日また考えるということになった(乙A1)。 (4) 同月17日には、被告Bを術者として、亡Cの左回旋枝に対しPTCAが実施され、狭窄率が90%から10%へと改善された。この際、被告Bより、PTCAといういわば風船を用いた治療を行うこと、合併症としては出血、不整脈、血腫、感染、アレルギー、塞栓症、血管解離等があり得ることが説明されていた(甲A3、乙A1)。 (5) 同日、亡C及び原告Dに対し、PTCAが成功したことと、左前下行枝に対するCABGの件について説明がされたが、亡Cは、CABGの実施に関しては消極的な態度であった。 さらに、翌18日にも亡Cの病状等について説明がされた。 結局、CABGについては、亡C自身がやりたくないという意見であり、実施しないこととされ、同月22日に東京災害医療センターを退院し、Fへの外来通院を再開することとなったが、その後は再入院に至るまで特段の胸部症状もなく経 ては、亡C自身がやりたくないという意見であり、実施しないこととされ、同月22日に東京災害医療センターを退院し、Fへの外来通院を再開することとなったが、その後は再入院に至るまで特段の胸部症状もなく経過した。 また、今回PTCAを実施した部位の確認等のため、半年ほど後に再度検査をすることとされた(甲A1、3、乙A1、2)。 (6) 亡Cは、上記退院後、引き続き株式会社Gにおいて、嘱託員として稼働していた。 業務の内容は、いわゆる外回りであったが、それほど肉体的な負担の重くないものであった。 同年5月19日に嘱託員労働契約が更新され、契約期間は1年間とされたが、亡Cが契約更新の意思を1箇月前に申し出た場合には、上記会社における業務の必要性や亡Cの実績等を総合的に考慮し、更新をすることがあるものとされていた。 なお、亡Cは、平成12年においては、上記会社より295万0483円の給与を受け取っていた(甲C1、2、原告D本人)。 (7) 亡Cは、同年8月15日、CAGの実施を目的として、東京災害医療センターへ再入院した。同日の検査において、亡Cの左室駆出率は40%であると計測され、高度な収縮能の低下があるとされた。 同月16日、亡Cに対し、術者を被告BとしてCAGが実施された。その結果、以前PTCAを実施した右冠動脈及び左回旋枝については再狭窄が認められなかったが、左前下行枝はやはり完全閉塞であった。そのため、亡Cらと話し合いの結果、同月21日に左前下行枝に対するPTCAが予定された。 なお、上記CAGにあたっては、被告Bから亡C及び原告Dに対し、合併症として出血、不整脈、血腫、腎障害、アレルギー、塞栓症、血管損傷、感染等があり得ることが説明されていた(乙A2)。 (8) 同月17日、被告Bから亡C及び原告 告Bから亡C及び原告Dに対し、合併症として出血、不整脈、血腫、腎障害、アレルギー、塞栓症、血管損傷、感染等があり得ることが説明されていた(乙A2)。 (8) 同月17日、被告Bから亡C及び原告Dに対し、亡Cは心臓機能が低下しており、治療の必要があることとその治療として左前下行枝に対するPTCAについての説明がされた。その際、左前下行枝はCTOであり、病変部が硬く、カテーテルが通過しにくいため、成功率は50ないし70%程度であること、合併症としては、出血、不整脈、血腫、塞栓症、感染、腎障害、アレルギーのほか、血管解離、血管損傷及び血管の穿孔等が考えられ、亡Cの場合、危険性が一般の患者よりも高いことが説明された。亡C及び原告Dは、以上の説明を聞いた上、「手術・検査承諾書」と題する書面に署名押印した(甲A4、乙A2、11)。 (9) 本件PTCAに関する経過本件PTCAの経過については、これが記録化されており、1番から29番まで画像に付された番号がある。甲A11(Hの画像解説)、乙A6、7(被告Aの画像解説)をはじめ、当事者双方から提出されている意見書や陳述書等においても当該番号が引用されている。そのため、本判決においても、以下この番号を「○番の画像」といった形で適宜使用することとする。なお、このうちの一部を静止画像としたものが乙A3の各写真であるところ、これらと画像番号との対応関係は以下のとおりである。 1番の画像:乙A3の13番の画像:乙A3の710番の画像:乙A3の211番の画像:乙A3の813番の画像:乙A3の916番の画像:乙A3の317番の画像:乙A3の1018番の画像:乙A3の1123番の画像:乙 像:乙A3の813番の画像:乙A3の916番の画像:乙A3の317番の画像:乙A3の1018番の画像:乙A3の1123番の画像:乙A3の427番の画像:乙A3の529番の画像:乙A3の6ア本件PTCAを実施するに当たり、被告Aは、約1800例のPTCAを経験しており、そのうちCTO症例は約150例ほど経験していた。 また、被告Bは、約100例のPTCAを経験していた(乙A10、11、被告A本人)。 イ本件PTCAは当初被告Bを術者として平成13年8月21日午後3時15分より開始された。なお、ガイドワイヤーについては、太さ0.014インチの物が使用されていた。 被告Bは、閉塞部である左前下行枝にガイドワイヤーを通過させようとしたが、対角枝方向へずれて目的部位を捉えることができず(2番の画像)、1度ワイヤーを抜いて進め直したところ、左前下行枝の方向へワイヤーが進んだものの、今度は内膜下(偽腔)に入った(3番の画像)。 さらに、被告Bはワイヤーを進め直し、目的の部位に到達させようと試みたが、内膜下に入っては抜くということを繰り返し、また、左前下行枝に入ってもワイヤーの先が対角枝方向に向くなどして、結局左前下行枝の真腔を捉えることはできず、当初造影されていた左前下行枝の側副血行路が消失し、ワイヤーの先端位置を特定するのが困難な状況になっていた(9ないし10番の画像)。 そこで被告Bは、10番の画像と11番の画像の間の時点で、手技を被告Aに交代することとした(甲A11、乙A2、6、7(いずれも枝番を含む。)、10、11、被告A本人)。 ウ被告Aが手技を交代した後も、側副血行路は消失したままであった。被告 の時点で、手技を被告Aに交代することとした(甲A11、乙A2、6、7(いずれも枝番を含む。)、10、11、被告A本人)。 ウ被告Aが手技を交代した後も、側副血行路は消失したままであった。被告Aは、ガイドワイヤーを進め、それが心尖部まで回り込むというところまで進行させた。被告Aは、ガイドワイヤーが対角枝に入っている可能性や途中で偽腔に入っている可能性も若干考慮したものの、画像や手先の感触等を総合して、おそらく左前下行枝内の真腔にあるだろうと判断し、閉塞部近位部を最小径である1.5mmのバルーンで拡張した(13番の画像)。 もっともこの時、結果的にはガイドワイヤーは左前下行枝の真腔を捉えてはおらず、対角枝方向の偽腔に入っていた可能性が高く、被告Aは、その可能性を認識しながらも閉塞近位部でバルーンを拡張することには問題がないと考え、第2対角枝の近位部でバルーンを拡張したものであった(甲A11、12、乙A2、6(いずれも枝番を含む。)、9、10、証人H、証人I、被告A本人)。 エ上記のように閉塞部をバルーンで拡張したところ、午後4時50分頃、冠動脈を穿孔させ、対角枝から出血が生じていることが確認された(16番の画像。以下「本件出血」という。)。亡Cも、胸部が重苦しい感じがすると訴え、軽度の呼吸苦も観察された(出血の詳しい機序については後記5において更に検討する。)。 そこで、被告Aは、止血に際して、血液の抗凝固作用を有するヘパリンを中和する目的で、プロタミンを投与し、その上で穿孔部付近をバルーンにより拡張するという方法で止血を開始した。被告Aは、約15分ないし30分程度の間隔で数回、止血確認のために造影を行い、止血ができていないことを確認した後は速やかにバルーンを再度拡張するという方法で止血を試みた。これにより、午 血を開始した。被告Aは、約15分ないし30分程度の間隔で数回、止血確認のために造影を行い、止血ができていないことを確認した後は速やかにバルーンを再度拡張するという方法で止血を試みた。これにより、午後6時30分頃、一旦は止血が確認された。 これについて、被告Aは、原告Dに対し、血管を穿孔したこと、現在のところ止血はできていること、心タンポナーデというほどにはなっていないが、必要であれば開窓術をして心のう液を外に排出するかもしれないこと、心のう液は多量ではなく、心のう穿刺による排液は無理であることなどを説明していた(甲A11、乙A2、6(いずれも枝番を含む。)、9、10、証人H、証人I、被告A本人)。 オしかしながら、午後6時45分頃、亡Cが胸部痛や心窩部痛を訴え、血圧が低下し徐脈が発現して、心室細動を来たし、呼吸停止となった。そこで、被告Aらは、気管挿管、電気的除細動、昇圧剤であるボスミン等の投与を行うと同時に造影を実施したが、再出血は見られなかった。 なお、このとき、第1対角枝は画像上写っておらず、閉塞していたことが読み取れるが(29番の画像)、被告Aらは、上記事実を認識しておらず、これに対する処置はしていなかった(甲A11、乙A2、3の6、A6(いずれも枝番を含む。)、9、10、証人H、証人I、被告A本人)。 カ被告Aらは、心のう液は少量であったものの、亡Cが心タンポナーデを起こして急変した可能性もあると判断し、心臓血管外科のJ医師に依頼し、開窓術を実施した。心のう液は排出されたものの、それほど多量というわけではなかった。なお、上記開窓術の後、心膜の縫合は行われていない。 しかしながら、心のう液はその後出てくる様子がなかったものの、心室細動は戻らず、正常な心臓の収縮を得られなかった。ボスミン等の なかった。なお、上記開窓術の後、心膜の縫合は行われていない。 しかしながら、心のう液はその後出てくる様子がなかったものの、心室細動は戻らず、正常な心臓の収縮を得られなかった。ボスミン等の投与も奏功せず、血圧や心拍数も低下し、瞳孔は8mmで対光反射はなかった。 血圧をひとまず維持する目的で、大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入した。 その後、午後8時20分頃、亡Cは救命病棟へ移され、最高血圧は30ないし40で推移していた。 午後10時58分、モニター上心停止となり、被告Aらは、亡Cに対し、直ちに心マッサージを実施した。しかしながら、翌22日午前1時21分、亡Cの死亡が確認された(死亡時満65歳)(乙A2、10)。 キ亡Cの死亡直後、被告Aらは、原告D及び同Eらに対し、亡Cの診療経過について説明を行った。 被告Aはその中で、今回のPTCAは、詰まっていた左前下行枝を開通させるための処置で、ワイヤーを通しながら行い、風船を膨らませるといった手技で行ったものであったこと、PTCAにおける死亡率は世界的にみて0.1ないし0.3%程度であり、被告A自身従前の1800例の経験において、3例ほど穿孔した経験はあるものの、今回のような事態に直面したことはなかったこと、途中でワイヤーが血管を突き破って心臓の周りに血液が漏れてしまったこと、ワイヤーは正しくないところに入っていたが、それには気付かず、血管内にきちんとワイヤーが入っていると思って手技を進めていたこと、止血は成功し、また、開窓術により心のう液も排出したが、その後血圧や心拍数が低下し、結局回復しなかったこと、今回のことはミスではなく事故・合併症であることなどを述べた(乙A2、10、原告D本人、被告A本人)。 (10) 亡Cについては、 排出したが、その後血圧や心拍数が低下し、結局回復しなかったこと、今回のことはミスではなく事故・合併症であることなどを述べた(乙A2、10、原告D本人、被告A本人)。 (10) 亡Cについては、K大学医学部法医学教室L教授及び同M講師により平成13年8月22日午後1時25分から午後3時45分まで解剖が実施された。その解剖結果は以下のとおりである(甲B3、4、11)。 ア胸腔内容物は左420ml、右680mlの血液貯留である。心のう内に血液200ml貯留し、大きさ2.5×1.0cmの心のう切開創が認められる。 イ冠状動脈は、粥状硬化高度進行により内腔が狭窄しており、左回旋枝、右冠状動脈内腔に金網状の筒挿入が認められた。 ウ左前下行枝周囲の心筋層と心外膜に厚層の血腫が認められた。 エ心臓の外膜の出血は、左前下行枝の損傷に起因し、これが原因となって心のう血腫を惹起したと考えられる。上記ウの所見は、左前下行枝の対角枝分岐の近傍において内膜が損傷され、それにより同部位から末梢にかけて動脈が解離したことを示している。この内膜の損傷は生前の物理的作用により生じたものと考えられる。 オ冠動脈外部の破綻部の特定は不可能であったが、左前下行枝周囲の心筋層と心外膜に肉眼的に厚層の血腫が存在していることからしても、患者に生じた心のう血腫は、物理的作用により損傷した冠動脈の解離に基づいて惹起されたものと考えられる。 したがって、死因は冠動脈損傷に基づく心のう血腫であると考えられる。 カ心臓カテーテル操作時にカテーテルの先端等で内膜を傷害された結果、動脈の解離が惹起され、心のう血腫を生じて死亡したものと考えて矛盾はない。 2 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件に関する医学的知見について、以下のとおり認められる。 等で内膜を傷害された結果、動脈の解離が惹起され、心のう血腫を生じて死亡したものと考えて矛盾はない。 2 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件に関する医学的知見について、以下のとおり認められる。 (1) 心臓の病変等についてア基本的に主要な突然死の重要疾患は、虚血性心疾患と心筋症である。最終的な病因としては、悪性の頻脈性不整脈、特に心室細動、心室頻脈、そして徐脈性不整脈、心停止、EMD(electro-mechanicaldisso-ciation)が重要である。これらが発生することにより、急速な循環不全に陥る(乙B6)。 イ心室細動とは、心筋細胞が全く無秩序に随所で極めて速い周期で繰り返し興奮し、心室の部分的収縮が持続的に反復する状態をいい、その結果、心室は、全体としての収縮が生じず、有効な心駆血が起こらなくなり、脳をはじめとする全身の血流が停止し、脈拍も振れなくなる状態、即ち、心停止と同様の状態になる事象を指す。数分以内に洞調律に回復しないとそのまま死亡するか、たとえ救命し得ても、脳、腎臓等に不可逆性の後遺症を起こす。 心室細動の原因としては、様々なものが挙げられているが、虚血性心疾患等器質的心疾患に、虚血、心機能の低下、交感神経活性の亢進等の誘引要素が生じることにより発症し、急速な循環不全に陥り、死に至るという機序が考えられている(甲B11、乙A10、B5)。 ウ心タンポナーデとは、心筋外傷で心膜損傷が小さく、損傷部より心膜(心のう)内への出血が持続した場合や、心筋梗塞で心破裂を来した場合、急性心膜炎等において心膜内の血液貯留(心のう血腫)や大量の心のう液貯留のため心臓の拡張障害を来した状態をいう。心膜は伸展しにくい組織であるため、血液や液体の貯留が急速な場合にタンポナーデを起こしやすく、その量 おいて心膜内の血液貯留(心のう血腫)や大量の心のう液貯留のため心臓の拡張障害を来した状態をいう。心膜は伸展しにくい組織であるため、血液や液体の貯留が急速な場合にタンポナーデを起こしやすく、その量は200ml程度とされている。静脈還流が著しく障害されるため、心拍出量が低下して血圧が下がり、ショックに陥る。本症状に対しては緊急的な心のうの穿刺・吸引によるタンポナーデの解除が必要である(乙B9)。 エ心筋梗塞を生ずる長い危険な虚血の前に短時間虚血・再灌流を行うと、心筋細胞が長い虚血に対して強くなる。この現象は、心筋細胞それ自身の変化に由来し、プレコンディショニングといわれる(乙A13・添付文献1、証人I)。 (2) PTCAに関する事項についてア PTCAの手技等PTCAは、経皮的に体外からバルーンカテーテルを挿入し、冠動脈内の狭窄を風船(バルーン)を膨らませた圧で拡張するというものである。 ガイディングカテーテルを用いて適切な冠動脈口にカテーテルを挿入し、バルーン付きカテーテルを遠位の冠動脈に挿入する。バルーンを狭窄内の位置に合わせ、血管拡張のために膨らませる。いかなる変化も記録するために、血管造影を手技完了後に再度行う。 ガイドワイヤーは、冠動脈内にバルーンより先行して挿入されるものであり、これによりカテーテルが体内を進んでいく。 PTCAは、アテロームにより狭窄した冠動脈の血行再建に適用され、ダイレクトPTCAは、心筋梗塞初期治療として血栓溶解療法よりも優れており、費用対効果もよいとされる(甲B1、乙B7)。 イ PTCAの一般的適応、禁忌等冠動脈造影から見たPTCAの絶対的禁忌は、①側副血行路がなく、非閉塞のバイパスグラフトで保護されていない左冠動脈主幹部病変、② (甲B1、乙B7)。 イ PTCAの一般的適応、禁忌等冠動脈造影から見たPTCAの絶対的禁忌は、①側副血行路がなく、非閉塞のバイパスグラフトで保護されていない左冠動脈主幹部病変、②2枝完全閉塞でそれらを拡張できない場合の第3枝目の病変、③大きな枝に側副血行路を出している枝の近位部病変等である。 また、相対的禁忌は、凝固障害か凝固亢進状態、拡張可能な部位のない瀰漫性疾患血管、心筋に全灌流を提供している1本の疾患血管、完全冠動脈閉塞、50%未満の狭窄、及び急性心筋梗塞の血管形成術を受ける患者の心筋非虚血領域に灌流している血管等である(甲B1、2)。 ウ PTCAの術者の技量新たにPTCAを始めようとする術者は、経験のある術者のもとで、100例程度のトレーニングを受けることが望ましいとされている(甲B2)。 エサイドブランチテクニックについてサイドブランチテクニックは、以下の2つの状況に応用される。 1つは、CTO末梢断端でワイヤーの進行方向と末梢真腔の方向に一定以上の角度がある場合、ワイヤーが直接真腔を捉えることは困難な場合が多く、真腔の周りに偽腔を形成してしまい、状況を悪化させるおそれが大きい。その際、CTO末梢断端より側枝が分岐している例では、最初から側枝の入り口部よりワイヤーを側枝に誘導するようにする。ワイヤーが側枝の入口部より穿通している場合は、1.5mmバルーンで拡張し、本幹の血流を拡幅し、ワイヤーを柔らかいものに交換後、側枝より本幹に挿入し直す。もしも、入口部ではなく末梢より穿通している場合には、バルーンによる拡張により側枝までの血流を回復しても、側枝より本幹にワイヤーを進めるのが不可能であることが多い。そのため、どの場所より穿通しているか慎重に確認すべきである 梢より穿通している場合には、バルーンによる拡張により側枝までの血流を回復しても、側枝より本幹にワイヤーを進めるのが不可能であることが多い。そのため、どの場所より穿通しているか慎重に確認すべきである。 2つ目は、末梢断端の線維性被膜の穿通が困難である場合、末梢の側枝の入口部より側枝にワイヤーを穿通させて1.5mmバルーンで側枝を拡張することにより側枝入口部で線維性被膜に亀裂を形成した後に本幹にワイヤーを通す方法である。しかし、この方法は真腔の周りに解離を形成する危険性を孕んでおり、以下に述べる条件が得られる場合のみ応用が可能である。一般に左前下行枝で分岐角度の条件が良い細い中隔枝を側枝として使う場合に成功する可能性が高い。成功の条件として、①ワイヤーの進行方向に対して側枝の分岐角度が少なくとも90度以内、②側枝の血管径が小さく1mm以内、③末梢側真腔の周りに瀰漫性のプラークがない、④CTO末梢断端から側枝入口部までワイヤーが真腔のすぐ横を伴走していることが必要である。ワイヤーが真腔のすぐ横を伴走していないことが分かれば、バルーンをCTO内に進めないでパラレルワイヤー法で真腔を捉えるか、真腔のすぐ横を伴走するチャンネルを探す努力をすべきである。 サイドブランチテクニックは、側枝入口部近くで側枝に向けてワイヤーを通過させる。側枝への穿通は硬いワイヤーを用いれば比較的容易であるが、穿通部位が入口部より末梢でないことを多方向より対側造影にて注意深く確認することが重要である。1.5mmバルーンで側枝入口部に亀裂を作る。再疎通が得られたことを確認後、柔らかいワイヤーに交換して本幹を選択する。 サイドブランチテクニックの不成功の要因としては、末梢側真腔の周りに厚いプラークがある場合、ワイヤーが真腔と大きくずれていると側枝の入口 確認後、柔らかいワイヤーに交換して本幹を選択する。 サイドブランチテクニックの不成功の要因としては、末梢側真腔の周りに厚いプラークがある場合、ワイヤーが真腔と大きくずれていると側枝の入口部より末梢で側枝真腔に穿通してしまうことが多く、そのままバルーンで拡張すると再疎通が得られないか、末梢にワイヤーで偽腔を形成してしまう(乙B1)。 オ PTCAの成功率と合併症PTCAの成功の定義は様々であるが、一般的には主要病変において20%以上(コンピュータ解析の場合には10%以上)狭窄度が減少し、50%以下の狭窄度となり、症状が改善し、主要合併症がなかったものをいう。完全閉塞病変を主病変とする場合は成功率は50ないし75%となるが、そうでない場合は90%程度の成功率を挙げることができる。 他方、PTCAの合併症として、突然の冠動脈閉塞や再狭窄等のほか、冠動脈穿孔や心タンポナーデがある。CAGの合併症と多くは共通するが、死亡、心筋梗塞及び発作の危険性はPTCAの方が高い。 冠動脈穿孔の原因としては、ガイドワイヤーによる穿孔、バルーンカテーテルによる穿孔、過度な拡張による冠破裂等がある。 また、心タンポナーデは、冠動脈の出血により、急速に心のう内に血液が流れ起こる。 処置としては、心のう穿刺・ドレナージを行ったり、冠動脈の穿孔・破裂部位を自己灌流バルーンで長時間拡張したり、ヘパリンの作用を中和したりする。バルーンによる穿孔は、冠動脈内のバルーン拡張により止血し得ることが多いとされ、末梢病変を拡張した直後から冠動脈穿孔のための出血を来した事例において、近位部を低圧で長時間(10分間)の拡張を繰り返し、止血したところ、心タンポナーデは起こさず、緊急手術も行わずに済んだという例も紹介されている。さ 後から冠動脈穿孔のための出血を来した事例において、近位部を低圧で長時間(10分間)の拡張を繰り返し、止血したところ、心タンポナーデは起こさず、緊急手術も行わずに済んだという例も紹介されている。さらに硫酸プロタミンで1/4から1/2のヘパリンを中和してから近位部を拡張するともっと効果的であるとされる。 さらにこの点について、造影上で確認される穿孔の頻度は、PTCAで治療される病変で0.1%程度であるとし、このうち、風船又は新しい器具で起きたものが74%、ガイドワイヤーで起きたものが20%であったが。6%は原因が不明であったとする報告がある。 同報告は、PTCAの間、穿孔はガイドワイヤーを進めること、風船を進めること、風船の拡張又は風船破裂の結果として発生するかもしれない、器具に関係なく、慢性閉塞病変等の複雑な病変形態があるとき穿孔の危険は増加する。冠動脈穿孔は、心のう内出血と心タンポナーデ、左右の心室への瘻孔又は冠動静脈瘻になる可能性がある、臨床的に冠動脈穿孔は、死亡(0ないし9%)、心筋梗塞(4ないし26%)の高い発生率と関連しているなどとしている(甲B1、2、乙B2、7、8)。 カ PTCAの注意点閉塞部の硬い完全閉塞病変では、しばしばガイドワイヤーが内膜下に入り込んでしまい、そのまま末梢まで通過したかに見えることがある。また、閉塞部は通過したが、その後に側枝に入ってしまっていることもある。このようなときには対側の冠動脈造影を行い、側副血行を観察することにより容易に判定することが出来る(甲B2)。 ワイヤーの操作において、「偽腔に入る」とは、ワイヤーが血管内にあるが、その真腔を捉えず、血管壁と真腔との間に入ることをいう。内膜下にワイヤーが入ることにより、真腔側に内膜が押し広げられ、その部分の真 イヤーの操作において、「偽腔に入る」とは、ワイヤーが血管内にあるが、その真腔を捉えず、血管壁と真腔との間に入ることをいう。内膜下にワイヤーが入ることにより、真腔側に内膜が押し広げられ、その部分の真腔の血流が阻害された結果、側副血行路の血流にも影響を与え、その描出が困難となる(乙A9、B1)。 閉塞部位にワイヤーを通す仕事は、基本的に盲目的な作業であるため、閉塞長が長いほど、ワイヤーが内膜下に入り込んだり血管外に出る危険性が増す。また、病変が長いと言うことは、病変自体や病変の近傍に屈曲を持つことが多く、かつ瀰漫性の性質を持っているのでワイヤーの受け皿となる遠位部の血管も細いことが多い(乙B1)。 キ CTOに対するPTCA(ア) 完全閉塞とは、順行性の流れのない主要な冠動脈の血管連続性の断絶であり、慢性閉塞病変(CTO)は、それが3箇月以上閉塞しているものと定義される(乙B7、12)。 (イ) CTOに対するPTCAの拡張成功率は概ね50ないし70%であり、高いとはいえず、長期的に見ても、40ないし50%程度の再狭窄率があり、その約1/3において再閉塞が発現する。 CTOに対するPTCAの問題点は、①ガイドワイヤーの通過困難、②ガイドワイヤーの通過経路の確認、③バルーン通過困難、④再狭窄率、特に再閉塞率の高値等である(甲B2、乙B10)。 (ウ) CTOのPTCAでは、ガイドワイヤーの病変部の通過が最も大きなポイントとなる。ガイドワイヤーが通過すれば、99%はバルーンが通過し、成功に導くことができる。 ガイドワイヤーが完全閉塞部分を通り越した後で真腔を捉えているかどうかを確認するためには、対側造影を行い、側副血行路の造影でガイドワイヤーの先端が真腔の中にあるかどうかを確認すればよい ガイドワイヤーが完全閉塞部分を通り越した後で真腔を捉えているかどうかを確認するためには、対側造影を行い、側副血行路の造影でガイドワイヤーの先端が真腔の中にあるかどうかを確認すればよい。ただ、ガイドワイヤーがひとたび閉塞部より末梢の真腔を捉えると、その後はガイドワイヤー先端の抵抗が増すことなく、どんどん末梢まで進むのが普通である。閉塞部より末梢の真腔を捉えたと思ってもガイドワイヤーが引っかかったように進みにくくなるときは、ガイドワイヤーは内膜下にあると考えた方がよい。 ガイドワイヤーが一旦閉塞部内に穿通すると、ガイドワイヤーの走行が正しいかどうかを判断する手段が少なくなってしまう。そこで、次のような情報を利用して、多角的に判断しなくてはならない。①側副血行で写ってくる末梢の血管から予想されるルートからのずれがあるかどうか;多くのそれほど長くない完全閉塞では、ガイドワイヤーの先端が側副血行で写ってくる末梢のメインストリームにまっすぐ向かっているかどうかで評価できる。蛇行している血管では判定が難しいこともあるが、ガイドワイヤーを通そうとしている末梢のメインストリームだけでなく、側副血行で写る側枝から予想される閉塞部の動きとガイドワイヤーの動きが一致するかどうかも参考になる、②操作する術者の手に感じるガイドワイヤー先端の感覚;ガイドワイヤーが内膜下に潜り込んでしまうと、一種独特のザラザラした抵抗感を右手に感ずる。ガイドワイヤーが真腔を捉えているときには感じることの少ない独特の感覚であるので、これを感じたときは内膜下に潜り込んだと考えて、真腔を捉えるべく再試行した方がよい、③ガイドワイヤーが側枝に入るかどうか;ガイドワイヤーが閉塞部内で側枝に入り、それが真腔を捉えていれば、分岐部で本管の真腔を捉えることが可能であるので、分岐 えて、真腔を捉えるべく再試行した方がよい、③ガイドワイヤーが側枝に入るかどうか;ガイドワイヤーが閉塞部内で側枝に入り、それが真腔を捉えていれば、分岐部で本管の真腔を捉えることが可能であるので、分岐部までガイドワイヤーを抜いて、本管の真腔を捉えるべく再試行すればよい。ところが、側枝の内膜下を捉えているならば、分岐部ではすでに内膜下に潜っており、より近位部から再試行する必要がある。 ガイドワイヤーが内膜下に潜り込んだときは、硬い狭窄を通るときとは異なった独特の抵抗感(滑りの悪さ)を感ずることが多い。特にガイドワイヤーを引き抜くときにその差を感じることができる。ある程度先に進めてみなければその抵抗感もはっきりしないため、しばしば閉塞部より末梢まで進んで、対側造影によりはじめて内膜下に潜り込んでいることが確認されることがある。そのような場合、異常な抵抗感が消失するまでガイドワイヤーを引き抜いて、真腔を捉えるべく再試行する。 閉塞部内にしろ閉塞部より末梢にしろ、ガイドワイヤーが側枝に容易に進入し、抵抗を増すことなく末梢まで進むようなら、少なくとも側枝に関しては真腔を捉えているといえるし、ほぼ間違いなく側枝までの部分も真腔であるといえる。閉塞部内で容易に側枝真腔を捉えるが、末梢では内膜下にもぐっているというときは、側枝より末梢に関して再試行すればよい。 CTO病変の末梢は十分に圧がかかっていなかったり、不十分な側副血行造影のために、コントロール造影はたとえ同時造影であるにしても、適切なバルーンサイズやバルーン長についての十分な情報を与えてくれるとは限らない。上記の最小径バルーンで拡張し、末梢への圧を確保し、ニトロール冠注により冠動脈を十分に拡張した上で、バルーンの径と長さを決定すべきである(甲B2、乙B10)。 分な情報を与えてくれるとは限らない。上記の最小径バルーンで拡張し、末梢への圧を確保し、ニトロール冠注により冠動脈を十分に拡張した上で、バルーンの径と長さを決定すべきである(甲B2、乙B10)。 (エ) 末梢冠動脈の情報なくしてCTO病変を治療することは不可能である。末梢の情報が多いほど手技は容易となるため、撮影時間を長くして可能な限り側副血行路を追いかけることが重要である。特に対側冠動脈との同時撮影はCTO病変の走行をイメージすることができ有用である(乙B1)。 (オ) また、手技の不成功の独立予測因子は、閉塞部位の石灰化、多枝疾患、閉塞の長さ(20mm以上)であった。そのうち最も強力なのは標的部位での石灰化であるとし、手技の結果に無関係な変数は、患者の年齢、性別、以前の心筋梗塞形成の既往歴、冠動脈での病変の位置、標的血管の近位と遠位の血管径と側副血行路の発達のグレードであり、評価された閉塞の期間と橋状の側副血行路の存在は、手技の結果に関係していなかったとする2000年(平成12年)の報告も存在している(乙B12)。 ク患者の予後についてLV(左室)機能が不良(スコア17-30)で1枝疾患を有する患者の4年生存率は67%、2枝で61%、3枝で42%であった。したがって、LV機能は罹患している血管数に比して重要な生存の予測因子であるとする1982年(昭和57年)の報告がある(乙B3)。 さらに、10年生存率はCTO治療不成功例に比してCTO治療例が優れていたとする2001年(平成13年)の報告や、CTOの拡張の成功は良好な長期予後と関係しており、再開通に成功したグループでの穿存率は極めて良好であったとする2000年(平成12年)の報告も存在している(乙B4、12)。 3 争点(1)(亡Cに対するPT の成功は良好な長期予後と関係しており、再開通に成功したグループでの穿存率は極めて良好であったとする2000年(平成12年)の報告も存在している(乙B4、12)。 3 争点(1)(亡Cに対するPTCAの必要性及び適応の有無)について(1) 前記2(2)イにおいて認定したとおり、PTCAについては、絶対的禁忌として、①側副血行路がなく、非閉塞のバイパスグラフトで保護されていない左冠動脈主幹部病変、②2枝完全閉塞でそれらを拡張できない場合の第3枝目の病変、③大きな枝に側副血行路を出している枝の近位部病変等が挙げられており、また、相対的禁忌としては、凝固障害か凝固亢進状態、拡張可能な部位のない瀰漫性疾患血管、心筋に全灌流を提供している1本の疾患血管、完全冠動脈閉塞、50%未満の狭窄、及び急性心筋梗塞の血管形成術を受ける患者の心筋非虚血領域に灌流している血管等が挙げられている。 亡Cにおいては、前記1(9)イにおいて認定したとおり、本件PTCA実施前においては側副血行路が認められており、右冠動脈と左回旋枝は平成13年1月に実施したPTCAによって再開通を得ている状態であって、上記①、②の絶対的禁忌には明らかに当たらない。また、証拠上その他上記の禁忌事由に該当する事情も見当たらない。 他方、亡CのようなCTOに対して、PTCAを実施することが生命予後の改善に有効であることは明らかに認められており(前記2(2)ク)、本件PTCAを実施することが亡Cにとって利益をもたらし得るものであったことは否定できない。 したがって、本件PTCAについて、その適応自体を否定することはできないといわなければならない。 (2) 前記1(3)において認定したとおり、平成13年1月の入院時点において、左前下行枝について「PTCAは困難と判断」した いて、その適応自体を否定することはできないといわなければならない。 (2) 前記1(3)において認定したとおり、平成13年1月の入院時点において、左前下行枝について「PTCAは困難と判断」したとの記載があることは事実であるが、前記1(3)において認定したとおり、亡Cの左前下行枝はCTOであったから、PTCAの難易度が通常よりも高くなることは事実であり、そのことを記載したにすぎないものと解するのが相当である。 現に、証拠(乙A1・24、133頁)によれば、左前下行枝に対してPTCAを予定するとか、実施したいとの記載があり、被告らにおいて、左前下行枝に対するPTCAも一つの治療法として候補に挙がっていたことは事実であると考えられるから、診療録の「PTCAは困難と判断」との記載が、直ちに、PTCAの適応を欠くことを意味すると解することはできない。 (3) また、原告らは、亡Cが日常生活に差し支えのない状態だったから本件PTCAは不要であったとも主張するが、前記1(2)において認定したとおり、亡Cは重症の三枝病変であり、次に心筋梗塞を起こした場合、救命が難しいおそれすらあったのであり、このことは平成13年1月の段階で亡C及び原告らに対しても知らされていた事実であるから、亡CがCABGを拒否していたという事情(前記1(5))も加味して考えれば、左前下行枝の完全閉塞に対してPTCAという積極的な治療を行う有用性を否定することはできないというべきである。 (4) なお、本件PTCAについて、およそ何らの治療効果が見込めなかったと解するに足る具体的な根拠は認められない。 証人Hは、残存心筋が少なかった可能性があり、治療効果に疑問があるとしているが、この点については、明確な裏付けがあるわけではなく、上記において判示したPTCAの有用 的な根拠は認められない。 証人Hは、残存心筋が少なかった可能性があり、治療効果に疑問があるとしているが、この点については、明確な裏付けがあるわけではなく、上記において判示したPTCAの有用性を否定するまでの事情があるとは認められない。 (5) したがって、亡Cについて、左前下行枝に対してPTCAを実施すること自体の適応を及び必要性を否定することはできないから、争点(1)にかかる原告らの主張は採用できない。 4 争点(2)(被告Bにカテーテル操作を行わせたことの適否)について(1) 前記2(2)ウにおいて認定したとおり、新たにPTCAを始めようとする術者は、経験のある術者のもとで、100例程度のトレーニングを受けることが望ましいとされているところ、前記1(9)アにおいて認定したとおり、被告Bは、本件PTCAの時点で既に約100例のPTCAを実施した経験を有しており、上記基準に照らす限り、単独でPTCAを施行することも可能であったというべきものである。 また、前記1(2)、(4)、(7)において認定したとおり、従前被告Bは、亡Cの主治医として、数度にわたり心臓カテーテルを用いた検査であるCAGやPTCAを実施し、これらについては問題なく成功を収めているのであるから、個別的な技量の点においても、およそ一般的にPTCAを実施することが不適当であるという事情は見当たらない。 さらに、本件PTCAがCTOを対象とするものであり、一般のPTCAよりも難易度が高いものであることは事実であるが、他方、本件PTCAにおいては、上司である被告Aがいわば監督者として付き添っていたものである。確かに本件PTCAにおいては、被告Bは結局目的部位の真腔にガイドワイヤーを通すことはできなかったものであるが、前記2(2)キにおいて認定したとお 告Aがいわば監督者として付き添っていたものである。確かに本件PTCAにおいては、被告Bは結局目的部位の真腔にガイドワイヤーを通すことはできなかったものであるが、前記2(2)キにおいて認定したとおり、そもそもCTOに対するPTCAにおいては、閉塞部にガイドワイヤーを通過させる手技は必ずしも容易ではないのであって、このことからPTCAを実施すること自体を不適当であるということはできず、また、前記1(9)イにおいて認定したとおり、現にガイドワイヤーが閉塞部を通過しないという現象が生じた後には、穿孔等を生ずる前に、手技の途中で上司である被告Aに交代しており、症例の難易度に合わせた対応がされていると評価することができることに照らせば、本件PTCAを被告Bが実施したこと自体について、問題があったとは認められない。 以上によれば、被告Bが本件PTCAを実施したこと自体を違法ということはできないというべきである。 (2) なお、原告らは、被告BがCAGを実施した別の患者について、検査後死亡という結果が生じている事実を採り上げ、被告Bにおける本件PTCA実施の適格性を論難するが、証拠(甲B5ないし7(いずれも枝番を含む。))を検討しても、本件に有意に関連する事実とはいえず、失当な主張といわざるを得ない。 5 争点(3)(亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血の原因)について(1) 前記1(9)ウ、エにおいて認定したとおり、本件における出血の主原因については、ガイドワイヤーが目的としていた左前下行枝の真腔を捉えず、対角枝方向へ向かい、しかも偽腔に入っていたため、偽腔内においてバルーンを拡張した結果、冠動脈を裂いて出血を招いた可能性が高いものと認められる。この点は、被告Bが手技を担当していたときからガイドワイヤーが内膜下に何度も入り、偽腔の形成がみら ため、偽腔内においてバルーンを拡張した結果、冠動脈を裂いて出血を招いた可能性が高いものと認められる。この点は、被告Bが手技を担当していたときからガイドワイヤーが内膜下に何度も入り、偽腔の形成がみられること(前記1(9)イ)、本件PTCA中に側副血行路が消失しているのが認められるところ、(少なくとも順行性の側副血行路消失については)この原因はガイドワイヤーによる偽腔形成及びこの偽腔方向へのカテーテルの進行と考えるのが合理的であること、解剖の結果、左前下行枝の対角枝分岐の近傍において内膜が損傷され、それにより同部位から末梢にかけて動脈が解離していることが確認され、解剖医もこれは物理的作用により損傷した冠動脈の解離に基づいて惹起されたものと考えられると判断していること(前記1(10)エ、オ)などに鑑みても蓋然性の高い原因であり、かつ、証人I、証人H及び被告Aも法廷において一致して、出血の原因について上記のとおり証言ないし供述しているところであって(証人I42頁、証人H10頁、被告A本人49頁)、他に本件出血の原因として合理的と思われる事由は見当たらない。 したがって、本件出血の主原因は、被告らの主張においても触れられているとおり、ガイドワイヤーが内膜下に入り、偽腔の外側の血管壁が薄く脆弱化していた部分でバルーンを拡張したために、穿孔が生じたことにあると認められる。 (2) さらに原告らは、ガイドワイヤーの先端が対角枝を突き破っており、その状態でバルーンを拡張したことから、血管を裂いて出血を招いた旨も主張している。 この点について検討すると、前記1(9)ウにおいて認定したとおり、本件PTCAにおいて、ガイドワイヤーの先は、心尖部を回り込むような形になっており、その位置から考えて血管外にある可能性も存すること、側副血行路の消失につい と、前記1(9)ウにおいて認定したとおり、本件PTCAにおいて、ガイドワイヤーの先は、心尖部を回り込むような形になっており、その位置から考えて血管外にある可能性も存すること、側副血行路の消失について、穿孔を原因と考える余地もあること、前記1(9)キにおいて認定したとおり、被告A自身、亡Cの死亡直後には、ワイヤーで血管を突き破ってしまったと説明していることなどからすれば、原告らが主張するように、ガイドワイヤーの先端が対角枝を突き破っており、その状態でバルーンを拡張したことから、血管を裂いて出血を招いたという可能性もあり得るところである。現に、証人Iも、ガイドワイヤーの先端が血管を穿孔した可能性については、これを否定することはできないと述べているところである(乙A9、証人I)。 被告らは、左前下行枝と対角枝が共に心尖部を回り込むような血管走行を有する患者もいないわけではないから、ガイドワイヤーの位置からガイドワイヤーによる穿孔を推測することはできないと主張するが、証人I及び被告Aも認めるとおり、そのような血管走行を有する患者は絶無ではないというにとどまるのであって、それが相当数存するということはできないのであるから、そのような稀な患者の例を挙げてガイドワイヤーによる穿孔の可能性そのものを一切否定することはできないものというべきである。 また、被告Aによる亡Cの死亡直後の説明内容について、被告Aは、動揺していたため今から振り返れば不正確な説明をしたこと、ガイドワイヤーが血管外に出たときに特徴的に感じられる、ワイヤーの先が血管外で自由に動けることに起因する踊るような動きが感じられなかったことからすれば、ガイドワイヤーによる血管穿孔の可能性は全く否定されることを陳述(乙A10)ないし供述する。しかし、仮に被告Aにおいてガイドワイヤーに ることに起因する踊るような動きが感じられなかったことからすれば、ガイドワイヤーによる血管穿孔の可能性は全く否定されることを陳述(乙A10)ないし供述する。しかし、仮に被告Aにおいてガイドワイヤーによる血管穿孔の可能性を否定する根拠が術者としての手先の感覚であるのであれば、亡C死亡直後の説明時点は、本件PTCAからまだ間がない時期であったのであり、術中の感覚の記憶は現在より鮮明であったと考えられるのに、断定的にガイドワイヤーが血管を突き破ったと説明していることと整合せず、上記陳述ないし供述には疑問が残るといわざるを得ない。 さらに、被告らは、画像上ガイドワイヤーが上記の特徴的な踊るような動きが確認されないことをガイドワイヤーによる穿孔を否定する論拠の一つとするが、上記画像(乙A6の1)は、被告らが自認するように、手技のごく一部を収録したものにすぎないのであるから、仮にその画像上上記の動きが確認されないという事実が存在するとしても、そのことをもってガイドワイヤーによる穿孔を完全に否定することはできない。 加えて、被告らは、CTOの血管側壁は動脈硬化が強く、硬いからワイヤーにより突き抜けることは困難であるとも主張するが、被告ら自身、バルーンの拡張により冠動脈が穿孔した理由としては、偽腔の外側の血管壁が薄く脆弱化していた可能性を挙げているのであるから、同様の論理によれば、ワイヤーによる穿孔の可能性もまた、否定することはできないはずである。 したがって、本件において、被告Aが、ガイドワイヤーの先端によって血管を穿孔させた可能性も相当程度認められるというべきである。 (3) もっとも、前記(1)において認定したとおり、本件における出血の主原因は、やはり偽腔内においてバルーンを拡張したことによる冠動脈の穿孔であると考えられ、かつ 度認められるというべきである。 (3) もっとも、前記(1)において認定したとおり、本件における出血の主原因は、やはり偽腔内においてバルーンを拡張したことによる冠動脈の穿孔であると考えられ、かつ後記6において判示するとおり、この点に関する過失の有無を判断すれば足りるものと解されるから、ガイドワイヤーの先端による血管穿孔の有無及びこれと本件出血との関係については、これ以上の立ち入った検討は行わないこととする。 6 争点(4)(亡Cにおいて冠動脈穿孔及び出血を生じさせたことについての過失の有無)について(1) 前記1(9)ウ、エ、前記5において認定説示したとおり、被告Aは、目的の左前下行枝ではなく、対角枝方向へガイドワイヤーを進ませた上で、偽腔内においてバルーンを拡張させ、結果として血管を穿孔させ出血を招いたものであるところ、かかる行為について過失が認められるか否かを判断する。 (2)ア前記2(2)カにおいて認定したとおり、一般に、PTCAにおいて、閉塞部位にワイヤーを通す作業は、術者が直接視認しつつ行うものではなく、基本的に血流と術者の感ずる手応えを頼りとする手探り的なものである。したがって、ワイヤーが内膜下に入り込んだり血管外に穿通する危険性があること、そのため画像上多角的な検討が必要であることや術者の手先の感覚が重要であることはもちろんであるが、その他側副血行路等による末梢の情報が重要であること、仮にワイヤーが内膜下等に入り偽腔を形成すると、真腔が圧排されて次第に造影されなくなることなどが指摘されており、ワイヤーの正確な位置を確認すること及びその前提として側副血行路等の情報を豊富に獲得し、これに術者の感覚等を総合して慎重な判断が必要であることは疑いがないものというべきである。 また、前記2(2)キにおいて認定した すること及びその前提として側副血行路等の情報を豊富に獲得し、これに術者の感覚等を総合して慎重な判断が必要であることは疑いがないものというべきである。 また、前記2(2)キにおいて認定したとおり、CTOにおいては、目的病変にワイヤーを通過させることできるか否かが最も重要な点であるとされている。この点、CTOにおいては、血管の走行には個体差が大きく、完全閉塞部位が長くなるほど、その間で冠動脈が屈曲しているのか直進しているのか不明であり、冠動脈の走行経路が不明のままワイヤーを通すのであるから、冠動脈が造影され、その走行経路が直接視認できる場合と比べて、穿孔や偽腔形成を生ずる危険性ははるかに大きい。また、CTOでは、ワイヤーの通過部位やそれが血管の真腔を通過しているか否かということを完全に確認することは一般のPTCAに比べて更に困難であるが、それは、ガイドワイヤーが一旦閉塞部内を穿通すると、その部位には血流がないから、ガイドワイヤーの走行が正しいかどうかを判断する手段が少なくなってしまうためである。しかし、そのような状況下でワイヤーの進行やバルーンの拡張を行わなければならないから、そのためには、側副血行で写ってくる末梢の血管から予想されるルートからのずれがあるかどうか、操作する術者の手に感じるガイドワイヤー先端の感覚はどうか、ガイドワイヤーが側枝に入るかどうかなどの点に留意し、さらに、ワイヤーが内膜下に入っていないかどうかに注意を払って、偽腔に入っている場合には真腔を捉えるべく再試行するべきであるといったことが指摘されている。 イこれを本件についてみると、前記1(9)イにおいて認定したとおり、当初は側副血行路が見えていたものの、被告Bがガイドワイヤーを内膜下に入れて偽腔を形成しては入れ直すという手技を繰り返している間に、側副血行 本件についてみると、前記1(9)イにおいて認定したとおり、当初は側副血行路が見えていたものの、被告Bがガイドワイヤーを内膜下に入れて偽腔を形成しては入れ直すという手技を繰り返している間に、側副血行路が消失し、ワイヤーの位置を正確に判断することが難しい状況になり、被告Aに手技を交代した後も、ワイヤーの位置を正確に同定することが困難な状況下において、ガイドワイヤーが内膜下に入って偽腔を形成していることが疑われ、その場でバルーンを拡張すれば血管を裂くおそれがあったにもかかわらず、閉塞近位部において拡張する限り危険はないとの判断の下にバルーンを拡張したことにより、本件出血を招いたものであって、その判断には合理的な裏付けがあるとは考えられないし、たとえば急性心筋梗塞を起こした直後で、冠動脈からの血流が回復すれば心筋が壊死に陥らずに回復することが期待される心筋梗塞を起こしてから数時間以内にPTCAを実施するというような場合と異なり、当該状況下であえてバルーンを拡張すべき緊急性も見出せないから、本件出血は、被告Aの過失に基づくものといわなければならない。 なお、証人Iも、側副血行路が消えた時点で偽腔に入ったという認識が可能であり、そうすべきであること(証人I30、43頁)及び偽腔に入っているのが確実で全長にわたって入っているのが確実である場合にはバルーンを拡張すべきでないこと(同43頁)を認めており、この点からも、側副血行路が消失し、ガイドワイヤーやバルーンが偽腔に入っていることが認識可能であった本件において、そのままバルーンを拡張する手技に注意義務違反が肯定されることが裏付けられるというべきである。 (3)ア被告らは、ガイドワイヤーが左前下行枝へ正しく到達していると判断したことは合理的であったと主張し、証人I及び被告Aはこれに沿う陳述な 反が肯定されることが裏付けられるというべきである。 (3)ア被告らは、ガイドワイヤーが左前下行枝へ正しく到達していると判断したことは合理的であったと主張し、証人I及び被告Aはこれに沿う陳述ないし証言等をする。しかしながら、画像上そのように認められるとする部分は、その根拠について明確な説明がなく、左前下行枝に正しく到達しているとは確認できないとする証人Hの陳述ないし証言に勝る説得力があるとは認められない。証人I自身、自らが本件PTCAの術者であれば、被告Aらと異なる判断に至った可能性があると認めているところである(証人I31頁)。また、手先の感覚等からガイドワイヤーが左前下行枝に正しく到達していると判断できた、偽腔に入っていることを認識し得なかったとする被告Aの陳述ないし供述については、本件証拠上その当否を事後的に検証することは不可能であって、結果的に偽腔に入っていたと認められる以上、こういった感覚を全面的に信頼することはできないといわざるを得ない。 イまた被告らは、CTOに対するPTCAにおいては穿孔の危険性を完全に否定することはできないと主張し、0.014インチのワイヤーによって穿孔したとしても出血点は小さく、止血措置によってほとんどの場合死の危険を回避することができると主張する。しかしながら、ガイドワイヤーによる穿孔の事実は被告ら自身においてこれを否定する主張をしているところであり、かつ、前記1(9)イ、ウ、エにおいて認定したとおり、本件出血の主原因は、0.014インチのガイドワイヤーによる穿孔というよりはむしろ、偽腔に入った1.5mmのバルーンを拡張したことによる血管の穿孔ないし破裂と考えられるところである。そうすると、仮に被告らの主張するように、ガイドワイヤーによる血管穿孔の可能性が否定できない場合にガイドワイヤーを 5mmのバルーンを拡張したことによる血管の穿孔ないし破裂と考えられるところである。そうすると、仮に被告らの主張するように、ガイドワイヤーによる血管穿孔の可能性が否定できない場合にガイドワイヤーを進めることが不相当ではないとしても、本件のような偽腔に入ったバルーンの拡張に起因する出血までもやむを得ないものと考えることには論理的な飛躍があるといわざるを得ない(なお、血管を穿孔しても止血をすれば良いというのは、過失があったとしても結果的に損害が生じなければ不法行為にはならないという法律上当然の結論を言い換えているにすぎない。)。 ウさらに被告らは、本件のように閉塞部位の末梢が造影されなくなった場合であっても、術者が相当の根拠をもってガイドワイヤーが血管内を通過したものと判断できた場合に閉塞部近位部を最小径のバルーンで拡張するという手技は、一般的に行われているものであって、多くの医師の容認する適切な手技であると主張する。この点については、上記のような手技自体が適正に行われる限りにおいては、これを是認することも不可能ではないと考えられるが、前記(2)イにおいて認定したとおり、本件においては、側副血行路の消失等の事情から、ガイドワイヤーが内膜下に入り込み、偽腔を進んでいる可能性が相当程度認識可能であったという事情が存するのであり、上記の「術者が相当の根拠をもってガイドワイヤーが血管内を通過したものと判断できた場合」に当たるか否かに疑問があるといわざるを得ず、また、やはり前記(2)イにおいて触れたとおり、証人I自身偽腔でバルーンを拡張すること自体には否定的評価を下していることからしても、上記の手技が、偽腔に入っている可能性が一定程度あるバルーンの拡張をも許容するものであるのかについても疑問を呈さざるを得ないものである。なお、被告らは、上記手技 否定的評価を下していることからしても、上記の手技が、偽腔に入っている可能性が一定程度あるバルーンの拡張をも許容するものであるのかについても疑問を呈さざるを得ないものである。なお、被告らは、上記手技による危険が許される根拠として、費用負担の問題をも持ち出しているが、治療による危険とそれによる生命・身体の利益を比較衡量するのであればともかく、経済的利益と生命とを比較衡量することは原則として妥当でないといわざるを得ない。 (4) なお付言するのに、原告らの争点(3)及び(4)に関する主張は、ガイドワイヤーの穿孔部位でバルーンを膨らませて血管を裂いたという点にいささか拘泥しすぎており、的確さに欠ける面があるといわざるを得ないが、しかしその趣旨を善解すれば、要するに、本件PTCAにおけるガイドワイヤーの進行やバルーンの拡張といった手技の不適切を主張するものと解されるし、被告らにおいては本件訴訟の当初から、本件出血に至るまでの手技全体を通じてそれが適切であることの主張立証を行っていたものである。したがって、上記のように過失を認定したとしても、何ら弁論主義に違背したり、当事者に不意打ちの不利益をもたらしたりするものではない。 (5) 被告らは、被告Aがサイドブランチテクニックを実施したとも主張する。もっとも、被告らは同時に、サイドブランチテクニックを積極的に試みようとしたものではないとも主張しており、その主張の趣旨は必ずしも判然としないが、前記2(2)エにおいて認定したとおり、サイドブランチテクニックとは、被告ら提出の乙B1によれば、①CTO末梢断端でワイヤーの進行方向と末梢真腔の方向に一定以上の角度がある場合、ワイヤーが直接真腔を捉えることが困難な場合が多く、真腔の周りに偽腔を形成してしまうおそれが大きいことから、側枝を最小径のバルーンで拡張 イヤーの進行方向と末梢真腔の方向に一定以上の角度がある場合、ワイヤーが直接真腔を捉えることが困難な場合が多く、真腔の周りに偽腔を形成してしまうおそれが大きいことから、側枝を最小径のバルーンで拡張し、本幹の血流を拡幅して、側枝より本幹にワイヤーを挿入し直す、②末梢断端の線維性被膜の穿通が困難である場合、末梢の側枝の入口部より側枝にワイヤーを穿通させて1.5mmバルーンで側枝を拡張することにより側枝入口部で線維性被膜に亀裂を形成した後に本幹にワイヤーを通すといった手法を指しているところ、この方法は真腔の周りに解離を形成する危険性を孕んでいることから、①ワイヤーの進行方向に対して側枝の分岐角度が少なくとも90度以内、②側枝の血管径が小さい1mm以内、③末梢側真腔の周りに瀰漫性のプラークがない、④CTO末梢断端から側枝入口部までワイヤーが真腔のすぐ横を伴走していることといった条件が満たされるときに限って応用が可能な手法であるとされているのである。 そうすると、本件においては、被告Aが上記のような検討を行った上でサイドブランチテクニックをあえて行ったことを示す証拠は何ら存在していないのであり、被告らのこの点にかかる主張は後付けの論理であって失当であるというほかはないし、現に本件につき、上記条件が満たされていたとも認め難い。 (6) 被告らは、バルーンを拡張した付近における血管の極端な狭小化、血管壁の脆弱化等は事前画像情報等によっても明らかではなく、1.5mm程度の対角枝を1.5mmのバルーンで拡張しても穿孔を予見することは不可能であったとも主張する。 しかしながら、上記の主張は、バルーンが真腔内にあることを前提とする議論であって、本件のように偽腔内にバルーンがある可能性が認識し得た場合にも同列に論ずることはできない。 こ する。 しかしながら、上記の主張は、バルーンが真腔内にあることを前提とする議論であって、本件のように偽腔内にバルーンがある可能性が認識し得た場合にも同列に論ずることはできない。 この点被告はさらに、仮に穿孔部位付近で偽腔に入っていたとしても、術中の画像から見て、その可能性は数%で想定すればよく、穿孔の危険性の認識もその程度で高まるにすぎないと主張する。しかし、仮にバルーンが偽腔に入った可能性を認識したのであれば、当然真腔を捉えるべく再試行すべきものであり(乙B1、7、10といった被告ら提出の文献も、内膜下にカテーテルが入り込むのを避けて真腔を捉えるべく努力すべきことを述べ、あるいは当然の前提としている。)、その状況でバルーンを拡張するのであれば、その結果穿孔を来すことについて、具体的予見可能性が肯定されるといわなければならない。 (7) 証人Hの陳述ないし証言内容の信頼性について被告らは、証人Hの証言は信頼性がないと主張する(被告準備書面(8)26ないし32頁)ので、この点についても判断する。 アまず、被告らは、証人Hが、様々な情報からガイドワイヤーが血管内にあると判断できる場合にバルーンを拡張することにより死亡等の重篤な結果が発生する頻度について何ら科学的・医学的な反論をしていないと批判する。しかしながら、この点については、前記(2)において判示したとおり、本件が「ガイドワイヤーが血管内にあると判断できる場合」に当たるという前提において既に疑問があるから、採用の限りではない。 イ次に、被告らは、証人Hが日本インターベンション学会会長のN医師の行った手技(乙A14、15)であって、O大学医学部臨床教授である証人Iも積極的に是認する手技を「誤りである」と指摘していることについて、このような手技が許容さ 本インターベンション学会会長のN医師の行った手技(乙A14、15)であって、O大学医学部臨床教授である証人Iも積極的に是認する手技を「誤りである」と指摘していることについて、このような手技が許容されていることは明らかであり、これを非難することを証言の信頼性を揺るがす一つの事情である旨主張する。しかしながら、社会的地位の高い医師が行う医療行為が無条件で正当であるといえないことは明らかであって、これを批判したからといって直ちにその意見に信用性がないものとは到底いえず、要は端的にその意見の論理性を検討すれば足りる問題である。 ウさらに、被告らは、証人Hが、側副血行路が消失したにもかかわらず、何ら症状が認められなかったのは、残存心筋がなく治療意義がないことを示すという見解を述べる一方で、側副血行路の消失をトラブルと評価する場面においては、側副血行路は残存心筋に酸素を補給しているので、これが消失するのは患者にとって不利益である旨述べているのは、一貫性を欠くと批判する。しかしながら、証人Hが述べるところは、本件において亡Cに心筋のバイアビリティー(生存性)があったか否かが必ずしも分明でないのではないかと疑問と呈すると共に、一般論として側副血行路の消失は患者に不利益を来すということを述べているものと解することができ、必ずしも論理矛盾を来しているとまでいうことはできない。この点においては、証人Hも相手方見解の非難に力点を移しており、厳格な整合性に欠ける部分はあるが、全体としての信用性に影響する事情であるとはいえない。 エ加えて、被告らは、証人Hが、側副血行路に血流が行かなくなることがトラブルであると述べた点を捉えて、これはトラブルではないと非難するが、この点は、単なる見解ないし用語法の相違であり、検討するまでもない問題である。 オな 側副血行路に血流が行かなくなることがトラブルであると述べた点を捉えて、これはトラブルではないと非難するが、この点は、単なる見解ないし用語法の相違であり、検討するまでもない問題である。 オなお、被告らは、証人Hが、亡Cについて、当初心タンポナーデを発症していたとしながら、後にこれを否定した点についても一貫性がないと批判しているところ、確かに、証人Hの見解がこの点については変遷していることは事実である。しかしながら、この点については、原告ら代理人において証人Hに当初意見を求めた際、どの程度正確な情報を提供しているかという問題にもかかわる問題であり、一概に見解の信用性を否定することはできない。現に前記1(10)カにおいて認定したとおり、司法解剖を行った医師も、限られた情報から死因を推測するに当たっては、これを心のう血腫(心タンポナーデ)と考えても矛盾しないとしているところである。また、証人Hは、最終的に証人Iの見解等も参酌して自己の見解を率直に訂正していることからしても、見解の変更があったからといって、直ちにこれを全体として信用できないものということはできない。 以上検討したとおり、証人Hの信用性については、部分的に修正を余儀なくされた箇所があることは事実であって、細部に至るまで全面的に採用することは躊躇され、また、相手方の見解を論駁することに主眼を置くあまり、厳密な一貫性を損なっている面も見受けられるものであるが、しかし、証人Iや被告Aと比較して、その信用性が全体として明らかに見劣るものとは認められないものである。 (8) 以上判示したとおり、本件においては、手技を被告Aに交代した後、側副血行路も消失しており、ワイヤーの位置を正確に同定することが困難な状況下において、ガイドワイヤーが内膜下に入って偽腔を形成していることが疑わ したとおり、本件においては、手技を被告Aに交代した後、側副血行路も消失しており、ワイヤーの位置を正確に同定することが困難な状況下において、ガイドワイヤーが内膜下に入って偽腔を形成していることが疑われたにもかかわらず、その場でバルーンを拡張して冠動脈を裂き、本件出血を招いたという過失が認められるものである。 (9) なお、上記において認定説示したとおり、本件において認められる過失は、被告Aが偽腔にガイドワイヤー及びバルーンを入れた状態でバルーンを拡張したために、16番の画像の前の段階で冠動脈穿孔・出血を招いたというものであるから、この点において過失が認められるのは直接の術者である被告Aとその使用者である被告独立行政法人国立病院機構に限られることになる(被告Bの責任の有無は下記7においても検討する。)。 7 争点(6)(被告Bの本件PTCA手技における過失の有無)について原告らは、被告Bは被告Aと手技を交代した後も、①被告Aと共に、PTCAの手技が適切に実施されているかを注視し、②ガイドワイヤーの進行場所、進行方向が不明となった際は直ちに手技を中止し、③ガイドワイヤーが血管を穿孔したか否かを注視し、④ガイドワイヤーがどこをどの方向に進行しているか不明な場合にバルーンを開いてはならない、⑤血管穿孔、血管を裂いたことにより大量出血させた場合は直ちに救命措置を講じるとの各注意義務を負っていたなどと主張する。 しかしながら、前記1(9)ウ、エにおいて認定したとおり、本件における冠動脈穿孔は、被告Bから被告Aに手技を交代した後に生じたものであるところ、前記第2の1(1)イのとおり、被告Aは、医長として被告Bを監督する立場にあり、本件でも、亡Cに対する手技の難易度が高かったこともあって、被告Bから本件PTCAの手技を引き継いで行ったものであ ころ、前記第2の1(1)イのとおり、被告Aは、医長として被告Bを監督する立場にあり、本件でも、亡Cに対する手技の難易度が高かったこともあって、被告Bから本件PTCAの手技を引き継いで行ったものであり、被告Bは以後の手技については上司である被告Aに委ねたとみるべきものである。そうすると、被告Bとしては、上級医である被告Aに手技を交代した後の行為に起因する結果については、被告Aの行為に対する有意な影響力を有していない以上、原則として不法行為責任を負わないといわざるを得ない。前記1(9)イにおいて認定したとおり、被告Bが本件PTCAを実施している際、なかなか真腔を捉えることができず、手間取っていたことは事実であるが、本件で問題となっている過失は、その後被告Aが自らカテーテルを入れ直した上で、バルーンを拡張したところ、偽腔に入っていたために血管を穿孔したというものであって、上記過失行為に被告Bのそれまでの手技が直接的に影響しているとも認められないから、結局、本件において、被告Bには不法行為は成立しない(なお、共同不法行為が成立する余地もない。)。 また、その後の救命措置についても、被告Bの過失責任を肯定すべき事情は認められない。 なお、仮に後記8(7)において触れるように、亡Cの第1対角枝の閉塞を看過したことについて過失責任を問う余地があるとしても、それはその段階で治療を主として担当していた被告Aについて問責し得るにとどまり、被告Bについてかかる点について不法行為が成立する余地もない。 以上により、争点(6)にかかる原告らの主張は失当である。 8 争点(7)(亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血と死亡との因果関係の有無)について(1) 前記6において判示したとおり、被告Aによる亡Cの冠動脈穿孔及びそこからの出血の招来については過 ある。 8 争点(7)(亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血と死亡との因果関係の有無)について(1) 前記6において判示したとおり、被告Aによる亡Cの冠動脈穿孔及びそこからの出血の招来については過失が認められるところ、次に、当該過失行為と亡Cの死亡結果との因果関係の有無を検討することとする。 (2)アまず、前記1(9)イ、ウ、エ、前記5において認定説示したとおり、本件PTCAにおいては、当初真腔を捉えようとする努力がされていたものの、ガイドワイヤーが内膜下に入って偽腔を形成するなどし、結局偽腔下にワイヤーが入ったまま当該部位をバルーンで拡張して、対角枝からの穿孔及び出血を来したものである、また、上記冠動脈穿孔及び出血の後、午後6時30分頃一旦これを止血したものの、その後それほど間を置かず、午後6時45分には亡Cから胸部痛、心窩部痛等の訴えがあり、心室細動が発症するなどして血圧、心拍数等が低下し、結局それが回復せずに午後10時58分には呼吸停止に陥り、結局翌日午前1時21分には死亡したという転帰を辿っており、前記6において認定した過失行為と亡Cの容態悪化及び死亡との間には、時間的な接着性が認められるというべきである。さらに、その間全く新たに死因となるような明らかな原因が介在しているという事情もないのであるから、亡Cの容態急変及び死亡の原因としては、やはりバルーンによる冠動脈穿孔及び出血という医原性の上記過失行為が最も疑われるというべきである。 イまた、前記6の過失行為から心室細動等が生じて死亡に至る医学的機序の点については、前記1(2)において認定したとおり、亡Cは重症の三枝病変で心臓の状態はかなり悪く、このような患者についていつ心室細動が生じても不思議はないといった事情(被告A41頁)に照らせば、本件出血のような心臓における直 において認定したとおり、亡Cは重症の三枝病変で心臓の状態はかなり悪く、このような患者についていつ心室細動が生じても不思議はないといった事情(被告A41頁)に照らせば、本件出血のような心臓における直接的なトラブルが心室細動の発生の引き金となった可能性も否定することができないというべきである。証人Iも、心室細動の原因が本件出血やそれに対する処置に起因する可能性を否定しているわけではないし、これを否定するに足りる他の原因を明示しているわけでもない(証人I49頁)。 ウ被告ら自身、心室細動の原因について、虚血性心疾患等器質的心疾患に、虚血、心機能の低下、交感神経活性の亢進等の誘引要素が生じることにより発症すること、亡Cの場合も心機能がかなり低下しているという器質的心疾患を抱えた状態において、何らかの上記誘引要素が加わって心室細動が生じたと考えられることを主張しているところ、その誘引要素として、本件出血及びそれに対する処置といった事象を想定することは、経験則上自然なことであるといわなければならない。 被告らは、心タンポナーデに至らないような出血が心臓に負担を与えるとは通常考えられないなどと主張するが、被告Aは、亡Cのような心機能であればいつ心室細動が起こるか分からないと供述しており(被告A・41頁)、そうであれば、たとえ心タンポナーデに至らないような出血であったとしても、これが心室細動の引き金になる可能性は否定できないと考えるのが相当である。 エ以上によれば、前記6において認定した過失行為と亡Cの因果関係は、特段の事情がない限り、これを肯定することができるというべきである。 (3) 進んで本件出血による出血量について検討する。 前記1(10)アにおいて認定したとおり、亡Cを死後解剖した段階では、胸腔内容物は左420 れを肯定することができるというべきである。 (3) 進んで本件出血による出血量について検討する。 前記1(10)アにおいて認定したとおり、亡Cを死後解剖した段階では、胸腔内容物は左420ml、右680mlの血液貯留であり、心のう内に血液200ml貯留しており、合計1300mlの出血が認められているところ、この原因について、原告らは本件出血によるものが大部分であるとし、被告らはその大部分は心臓マッサージにより生じたものであると主張している。 前記1(9)エにおいて認定したとおり、本件出血は動脈である対角枝において発生したものであり、決して少なくない量の血液が噴出したものと推測されるところであるし(なお、ガイドワイヤーの先端による穿孔であれば、それほど多量の出血が起こらないという推認も可能であるが、本件出血は前記5において認定したとおり、偽腔をバルーンで拡張して血管を裂いたことによる出血であるから、それと同列に論じられるものではない。)、被告Aらにおいても、心タンポナーデの可能性も念頭に置いてはいたという事情がある。他方、本件出血の直後から、被告Aらは、心のう液の貯留は少ないものと判断していたことも事実であるし、証人I、証人H及び被告Aも、亡Cの直接的な死因が出血多量による心タンポナーデであることは否定している。 また、上記の最終的な出血量についても、前記1(9)カにおいて認定したとおり、亡Cに対しては開窓術が実施され、その部分を縫合しないまま、その後の心臓マッサージ等の処置がされているから、穿孔部分からの出血と心臓マッサージの衝撃に伴う出血とは結局のところ渾然一体となってしまっているものであって、このうちのどれくらいの量が本件出血に伴うものであるのかについて、胸腔内と心のう内の血液貯留量をそれぞれ比較することによっ の衝撃に伴う出血とは結局のところ渾然一体となってしまっているものであって、このうちのどれくらいの量が本件出血に伴うものであるのかについて、胸腔内と心のう内の血液貯留量をそれぞれ比較することによってこの点を解明することも困難であるといわざるを得ない。 しかしながら、前記1(9)カにおいて認定したとおり、本件出血によって、亡Cには心のう貯留液が生じ、これが心臓の機能に悪影響を与える危険性を防ぐため、開窓術が実施されているのであり、このような出血が亡Cのような心疾患を有する患者の容態に悪影響を与える可能性は否定できないと認められる。 また、前記2(2)オにおいて認定したとおり、PTCAにおいて冠動脈穿孔を来した事例では、これが臨床的に死亡や心筋梗塞の高い発生率と関連しているとの指摘も存在しているところである。 したがって、本件出血そのものによる出血量の正確な確定が不可能であるとしても、これが亡Cの死亡に関与していることは医学的にも十分説明のつく事柄であると解される。 なお、被告らは、上記の1300mlの出血がすべて本件出血に由来するのであれば、それ自体亡Cの死亡を招いてもおかしくない量であるのに、15分以上にわたってバイタルサインに変化がなかったことは矛盾すると主張しているところ、このうち、上記のバイタルサインの点から1300mlの出血がすべて本件出血に由来すると考えるのが不相当であるという点は是認できるが、上記のように、出血自体が心臓にもたらし得る負担を否定することができない以上、バイタルサインに15分間異常が見られなかったことから、直ちに亡Cの容態悪化について本件出血が何ら関与していないと結論することまではできない。 なお、原告らのこの点に関する主張も、大量出血という点に拘泥し、やはりその的確さに欠ける面 たことから、直ちに亡Cの容態悪化について本件出血が何ら関与していないと結論することまではできない。 なお、原告らのこの点に関する主張も、大量出血という点に拘泥し、やはりその的確さに欠ける面が多分にあるものの、これを善解すれば、要するに本件出血が起点となって亡Cの死亡を招来したという大まかな因果関係を主張するものと解されるから、結局のところ、本件出血そのものによる出血量の正確な確定を要さずとも、前記過失行為と亡Cとの死亡との間の因果関係はこれを肯定することができるというべきである。 (4) なお、原告らは、被告Aらの止血措置についても論難する。しかし、前記2(2)オにおいて認定したとおり、バルーンによる穿孔は、冠動脈内のバルーン拡張により止血し得ることが多いとされ、末梢病変を拡張した直後から冠動脈穿孔のための出血を来した事例において、近位部を低圧で長時間(10分間)の拡張を繰り返し、止血したところ、心タンポナーデは起こさず、緊急手術も行わずに済んだという例も紹介されており、さらに硫酸プロタミンで1/4から1/2のヘパリンを中和してから近位部を拡張するともっと効果的であるとされているのである。したがって、前記1(9)エにおいて認定した、被告Aらが行った、ヘパリンを中和するためにプロタミンを投与した上で、約15ないし30分程度の間隔で、穿孔部付近のバルーンを拡張して止血を試みるといった止血方法は、これ自体は妥当なものであると認められ、この点について過失を認めることはできない。 もっとも、止血措置に過失が認められないとしても、それ以前の本件出血の影響によって亡Cの容態悪化・死亡という結果が認められる限りは、上記出血を招いた過失行為と死亡結果との因果関係は否定されないというべきである。 (5) 被告らは、亡Cは原因不明の心室細動 件出血の影響によって亡Cの容態悪化・死亡という結果が認められる限りは、上記出血を招いた過失行為と死亡結果との因果関係は否定されないというべきである。 (5) 被告らは、亡Cは原因不明の心室細動によって死亡したものであり、本件出血とは関係がなく、このような転帰を予測することも不可能であったと主張する。 しかしながら、前記(2)において判示したとおり、被告Aの前記過失行為と亡Cの容態悪化・死亡との関係については、その時間的接着性、他の明確な原因の不存在等からして、直近の医原性行為である本件出血の寄与が最も疑われるところであり、さらに、上記(3)において判示したとおり、本件出血が亡Cにおける心室細動等の発生に寄与したと考えることも医学的に必ずしも不合理なこととまではいえないものである。 以上の事情に照らすと、本件においては、亡Cの死因に直接的に寄与したのが心室細動の発生であったとしても、それが被告らの前記過失に独立して生じたものであることが窺われない限りは、上記因果関係の認定を覆すに足りないものというべきである。 (6) したがって、結局のところ、本件においては、前記6において認定した過失行為と、亡Cの死亡結果との間に、因果関係を認めることができる。 (7) なお、本件においては、原告らより、冠動脈穿孔からの出血を止血した後に第1対角枝の閉塞が生じたにもかかわらず、これを看過し適切な処置を執らなかった過失も存すると主張されており、他方被告らより、このような閉塞を予見することは不可能である旨主張されているところ、当該過失の有無や上記閉塞の予見可能性の有無等により因果関係の認定が左右される余地があるか否かを進んで検討しておくこととする。 アまず、上記閉塞が亡Cの死亡に影響を与えていないとすれば、これが因果関係の認定に影 閉塞の予見可能性の有無等により因果関係の認定が左右される余地があるか否かを進んで検討しておくこととする。 アまず、上記閉塞が亡Cの死亡に影響を与えていないとすれば、これが因果関係の認定に影響しないことは明らかである。 イ次に、上記閉塞が亡Cの死亡に何らかの影響を与えた可能性があるとすると、これについては以下のとおり考えられる。 (ア) 過失行為自体の危険性と死亡結果への影響力前記6において判示したとおり、本件において、被告Aが偽腔にワイヤーが入り込んでいる可能性がある程度認められる状況において、結果として偽腔内にあったバルーンを拡張させ、血管を穿孔して冠動脈から出血させた行為は、前記1(2)において認定したように亡Cの心機能が不良であったことや、出血部位が動脈であり、かつ細いワイヤーの先端による穿孔とは必ずしも同列に論ずることができないものであることにも鑑みれば、それ自体が、患者をして出血自体により、あるいは出血に起因する何らかの心臓の病変により、死亡させる結果を引き起こしかねない危険性を否定できないものであって、現に亡Cは、その詳細かつ具体的な機序はともかく、心室細動を発症するなどし、心臓の病変によって死亡したものである。 (イ) 過失行為と第1対角枝の閉塞との関係また、本件における第1対角枝の閉塞については、前記1(9)エにおいて認定したとおり、破れた冠動脈からの出血を止める際の処置に引き続いて発生したものであり、その際、止血を有効に行うため、血液の抗凝固作用を有するヘパリンを中和するプロタミンが投与されていたことから、血栓ができやすい状態になっていたという状況も存するものである。 このような事実に照らせば、上記閉塞は、被告Aによる冠動脈穿孔・出血及びそれに対するプロタミンの投与、 タミンが投与されていたことから、血栓ができやすい状態になっていたという状況も存するものである。 このような事実に照らせば、上記閉塞は、被告Aによる冠動脈穿孔・出血及びそれに対するプロタミンの投与、さらには止血のためのバルーンの留置等といった処置に誘発されて生じたものと推認される。 (ウ) 結論そうだとすると、確かに前記1(9)オにおいて認定したとおり、被告Aらは、そもそも上記第1対角枝の閉塞を認識していなかったものであり、これに対する処置は何ら行っておらず、それ自体において過失責任を問う余地も考えられないではない(但し、当該行為と死亡結果との因果関係が肯定できるか否かはまた別論である。)。 しかしながら、その点に関する被告らの過失の有無をひとまずおいても、上記に判示したように冠動脈穿孔及びそこからの出血自体に死亡の危険性があり、現実に心臓に病変が発症することによって患者が死亡しており、さらに、第1対角枝の閉塞もその出血に対する処置に誘発されて生じた蓋然性が高いといった事情に照らせば、上記の第1対角枝の閉塞という事実及びこれに対する処置の適否の問題は、その結論のいかんにかかわらず、前記被告Aの冠動脈穿孔行為と亡Cの死亡結果との因果関係を遮断するものではない。また、前記1(9)オにおいて認定したとおり、上記閉塞自体は画像上明確に読み取ることができ、かつこのような閉塞が何らかの心臓の病変に影響する可能性自体は否定できないのであるから、これがおよそ被告らにとって予見不可能な異常な事情であって因果関係を遮断すると解する余地もないと解される。 ウ以上検討したとおり、亡Cの死亡に対する上記閉塞の寄与度や、これを看過した過失の有無等にかかわらず、上記において認定説示した因果関係はなお肯定されるということができる。 ないと解される。 ウ以上検討したとおり、亡Cの死亡に対する上記閉塞の寄与度や、これを看過した過失の有無等にかかわらず、上記において認定説示した因果関係はなお肯定されるということができる。 エなお、このように解する以上、プレコンディショニングに関して被告らが縷々主張する点については、それが第1対角枝の閉塞が亡Cの死亡に寄与したか否かにかかわる論点であることからして、判断を要しないというべきものである。 さらに、冠動脈の閉塞時間と心筋梗塞を来す可能性の問題についても同様である。 9 争点(8)(損害額)について(1) 逸失利益について前記1(9)カにおいて認定したとおり、亡Cは死亡時満65歳であり、平成13年当時の簡易生命表によれば、平均余命は17.78年とされている(当裁判所に顕著な事実)ところではあるが、他方、前記1(2)、2(2)クにおいて認定したとおり、亡Cは重症の三枝病変を患っており、こういった患者の場合、PTCAによる再開通が成功しないと、4年生存率が42%程度であるとも言われているところであって、現に前記1(2)において認定したとおり、平成13年1月当時に既に、次に心筋梗塞を起こした場合には救命が難しいかもしれないと言われていたものである。 また、前記2(2)キ(イ)において認定したとおり、亡Cに対して実施されたようなCTOへのPTCAにおいては、再開通が成功する可能性は、50ないし70%にとどまるものであるから、本件PTCAが成功したことを仮定して亡Cの余命や就労可能年数を算定することはできないといわざるを得ない。 他方、前記1(1)、(6)において認定したとおり、亡Cは、平成6年2月より株式会社Gで勤務を続けてきており、軽作業であるとはいえ、平成13年1月の退院後は嘱託員 きないといわざるを得ない。 他方、前記1(1)、(6)において認定したとおり、亡Cは、平成6年2月より株式会社Gで勤務を続けてきており、軽作業であるとはいえ、平成13年1月の退院後は嘱託員として稼働しており、仮に本件PTCAを施行せず、通院等によって薬物療法を持続した場合、なお契約が更新されてある程度の期間は就労が可能であったと考えることにも一定の合理性が認められる。また、上記の生存率を示す文献は、1982年(昭和57年)のものであり、今日そのまま基礎にして良いか否かに若干の疑問もあるものである。 以上の事情を総合考慮し、当裁判所は、本件において、亡Cの就労可能年数を5年と認定するものである。 前記1(6)において認定したとおり、亡Cは平成12年において295万0483円の収入を得ていたものであって、これを基礎収入額とし、原告Eは健康な成人男子であると考えられるから、扶養家族は原告Dのみであるとして生活費控除率を40%と定める。 以上によると、295万0483円×(1-0.4)×4.3294(5年のライプニッツ係数)=766万4292円となるから、亡Cの逸失利益は、766万4292円と認められる。 (2) 亡Cの慰謝料について亡Cの死亡慰謝料については、亡Cが本件当時定職に就いており原告Dを扶養する立場にあったことに鑑み、2200万円と認めるのが相当である。 (3) 葬儀費用について亡Cの葬儀費用としては、120万円を認めるのが相当である。 (4) 相続上記(1)及び(2)を合計すると3086万4292円となるところ、原告両名は、亡Cの妻ないし子として、これをそれぞれ2分の1ずつ(1543万2146円)相続したものである。 (4) 相続上記(1)及び(2)を合計すると3086万4292円となるところ、原告両名は、亡Cの妻ないし子として、これをそれぞれ2分の1ずつ(1543万2146円)相続したものである。 (4) 原告ら固有の慰謝料について亡Cの妻であった原告D及び子である同Eの慰謝料としては、それぞれ200万円を認めるのが相当である。 なお、この点にかかる原告らの主張のうち、原告らが被告Aの説明を非難する部分については、むしろ被告Aはその時点で考え得る原因等について率直に述べていたものであって、このこと自体は積極的に評価すべきものである。また、本件のような医療事故が起こった際、警察を呼び解剖を実施しようとすることも、何ら不当なことではないから(医師法21条参照)、被告Aが警察に連絡すると述べたこと(乙A2・54頁)を批判することはできない。さらに、原告らに対する上記司法解剖の結果の通知は、第一次的には捜査当局の問題であって、被告らにおいて積極的に対処すべき事柄とはいえないから(本件記録上、司法解剖の結果については、被告らにおいても関知しておらず、東京地方検察庁へ文書送付嘱託を行ったが、回答を拒絶された事実が明らかである(証人等目録参照)。)、原告らにおいて上記結果を知らされていないことは、本件の過失行為と何ら因果関係を有しない問題であるといわなければならない。したがって、以上の各点を原告ら固有の慰謝料を定めるに当たって増額事由として考慮することはしない。 (5) 弁護士費用について本件提訴のために要した弁護士費用のうち、本件訴訟の経過に鑑み、原告両名について各150万円の限度で本件不法行為と因果関係ある損害と認める。 (6) 合計以上(1)ないし(5)によれば、原告らの損害は各1893万2146円となる。 過に鑑み、原告両名について各150万円の限度で本件不法行為と因果関係ある損害と認める。 (6) 合計以上(1)ないし(5)によれば、原告らの損害は各1893万2146円となる。 10 結論以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、被告A及びその使用者であった被告独立行政法人国立病院機構に対する原告らの請求は主文第1項の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、また、被告+Bに対する原告らの請求は理由がないから棄却すべきものである。 なお、前記2(2)キ、クにおいて認定したとおり、CTOに対するPTCAは、それが成功すれば生命予後を大幅に改善できるという報告がされているものであって、それ自体は十分評価に値するものであり、当裁判所も、CTOに対するPTCAの実施という治療法自体に否定的判断を下すものではない。しかしながら、やはり、前記2(2)キにおいて認定したとおり、CTOに対するPTCAについては、成功を困難とする要因がいくつも存在し、現段階では再開通が成功する確率が高いとまではいえず、他方で一定のリスクが存在しており、実施に当たっては相当の慎重さが要求される治療法であることも事実であると考えられる。そして、本件においては、手技の途中で当初見えていた側副血行路が消失し、カテーテルが真腔を捉えていない可能性が高いと具体的に認識可能であったという事情が存在し、かつその時点でバルーンをあえて拡張すべき緊急性も乏しかったにもかかわらず、バルーンを拡張し、冠動脈を穿孔して出血を招き、結果として患者が死亡するに至ったのであって、上記のような個別具体的な事情に照らせば、やはり術者の過失責任は免れないものと判断せざるを得ないものである。 よって、主文のとおり判決する。 東 るに至ったのであって、上記のような個別具体的な事情に照らせば、やはり術者の過失責任は免れないものと判断せざるを得ないものである。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行 裁判官金光秀明 裁判官熊代雅音別紙争点整理表 1 亡Cに対するPTCAの必要性及び適応の有無(原告らの主張)(1)平成13年8月14日、国立病院東京災害医療センター(以下「医療センター」という。)から半年後の検査入院の勧めがあり、これに応じた亡Cは、同月15日医療センターに入院し、心臓カテーテル検査を受けたが、その結果、右冠動脈(RCA)及び左回旋枝(CX)は開存していて良好な状態だった(甲A3)。 (2)しかるに、被告Bは、亡Cに対し、陳旧性心筋梗塞の病変であり既に閉塞している左前下行枝(LAD)に対するPTCA(経皮的冠動脈形成術)の実施は困難であると判断していたにもかかわらず(乙A5・5ページ)、その実施を勧めた。その際、被告Bは、左前下行枝の血管が既に硬くなっていてカテーテルが通りにくいことが考えられ、カテーテルが無事通る確率は5割から7割であると説明した( わらず(乙A5・5ページ)、その実施を勧めた。その際、被告Bは、左前下行枝の血管が既に硬くなっていてカテーテルが通りにくいことが考えられ、カテーテルが無事通る確率は5割から7割であると説明した(甲A4)ものの、生命の危険が存在することは全く説明しなかった。 亡Cの左前下行枝の閉塞は古い心筋梗塞の病変と推定されるものであり、亡Cの日常生活において具体的に支障を及ぼすものではなく、したがってPTCAを実施する緊急の必要性は皆無だったのであり、また、硬くなった左前下行枝に対するPTCAの実施には高度な危険性を伴うものであった。 さらに、亡Cは、平成13年1月11日の冠動脈造影検査の結果、右冠動脈には、近位部80パーセント、遠位部99パーセントの狭窄が認められ、左冠動脈のうち、左回旋枝にも90パーセントの狭窄が認められ、左前下行枝は100パーセント閉塞しており、心臓を拍動させる3枝いずれにも重篤な血管病変があった(3枝病変)。しかも、2回(左前下行枝の閉塞と今回の右冠動脈の心筋梗塞)の心筋梗塞を経て心機能は低下しているのであり、PTCAの実施により合併症を起こした場合、致命的な危険が予測できた。 被告B及び同Aは、亡Cが健康を回復して就労していた平成13年8月21日に、このように危険なPTCAを実施すべきではなかったにもかかわらず、あえてこれを実施し、カテーテルにより左前下行枝に穿孔を生じさせ大量の出血をさせて亡Cを死亡させた。 (被告らの主張)亡Cは、平成13年1月11日の冠動脈造影検査の結果、右冠動脈には、近位部80パーセント、遠位部99パーセントの狭窄が認められ、左冠動脈のうち、左回旋枝にも90パーセントの狭窄が認められ、左前下行枝は100パーセント閉塞しており、心臓を拍動させる3枝いずれにも重篤な血 部80パーセント、遠位部99パーセントの狭窄が認められ、左冠動脈のうち、左回旋枝にも90パーセントの狭窄が認められ、左前下行枝は100パーセント閉塞しており、心臓を拍動させる3枝いずれにも重篤な血管病変があった(3枝病変)。その後、PTCAにより、右冠動脈の近位部の80パーセントの狭窄を10パーセントに、遠位部99パーセントの狭窄を30パーセントに改善したものの(乙A1・24ないし30ページ)、いつ高度再狭窄や再閉塞が生じるかわからない非常に重篤な状態であった(乙A1・23ないし24、28ページ)。また、左心室機能について、前壁及び中隔壁の機能は重篤な低下があり、心尖部の心臓壁はひはく化しており、後壁は中等度の機能不全が認められ、拡張期に造影剤が残り血液の駆出が不十分であり、僧帽弁の閉鎖不全が認められた(乙A1・5、38ページ、乙A2・16、17、22ページ)。 心臓は、右冠動脈、左前下行枝及び左回旋枝の3枝の動脈により拍動しており、1枝の閉塞でも死に至る心筋梗塞を起こす可能性は高いところ、亡Cには、3枝に病変があり、加えて左心室機能の低下が認められた。このような場合、4年生存率は42パーセントと、その予後は極めて不良であり(乙B3)、生命予後改善のため、冠血行再建術として積極的治療を行う必要性は高かった。亡Cは、同年1月の入院中にCABG(外科的バイパス手術)を拒否しており、より低侵襲のPTCAを施行する必要があった。言い換えれば、PTCAを行うという手段しか残されていなかったのである。また、亡Cの場合、左心室を灌流する左前下行枝は、100パーセント閉塞した状態とはいえ機能はわずかに保たれており、慢性完全閉塞病変(CTO)であることから、通常のPTCAに比べ手技が困難であるとはいえ(乙A5・5ページ参照)、PTCAに 枝は、100パーセント閉塞した状態とはいえ機能はわずかに保たれており、慢性完全閉塞病変(CTO)であることから、通常のPTCAに比べ手技が困難であるとはいえ(乙A5・5ページ参照)、PTCAによる治療の意義が認められた。一般的にも、CTOについて、開存させた方が生命予後が良好であるとの報告例は多く(乙B4)、特に、病変枝数が多い、低心機能例でも、CABG及びPTCA等の冠血行再建術を施行した方が生命予後が良くなるとの報告もあることから(乙A9・6ページ、乙A12・5ないし6ページ)、亡Cについて、PTCAの必要性及び適応が認められることは明らかである。 2 被告Bにカテーテル操作を行わせたことの適否(原告らの主張)(1)本件PTCAは非常に難しい技術を要するものであったこと慢性完全閉塞病変の拡張成功率は、時間を無視すれば50ないし60パーセント程度で、6箇月以上であれば成功率はさらに低くなるとされる(甲10)。本件において、平成13年1月の段階で、左前下行枝の完全閉塞が認められていたのであるから、本件手術の対象であった左前下行枝は完全閉塞後少なくとも6箇月は経過していた。したがって、本件PTCAは非常に難しい技術を要するものであり、十分な経験を有する医師が行うべきものである。しかるに、被告Aは、経験不足の被告Bにカテーテルの操作を委ねるべきではなかったにもかかわらず、これを被告Bに委ねた結果本件事故を発生させ、亡Cを死亡させた。 (2)被告Bは、PTCAの経験が不足していたこと被告国立病院機構の主張によれば、亡Cに対する本件PTCAは、被告B及び同Aの両名がいずれも実際に行ったとのことである。 そして、被告Bは、その主張によれば、PTCA全般について、わずか約100例の経験しか有していない。また、 Cに対する本件PTCAは、被告B及び同Aの両名がいずれも実際に行ったとのことである。 そして、被告Bは、その主張によれば、PTCA全般について、わずか約100例の経験しか有していない。また、そのうち、亡Cの左前下行枝のような慢性完全閉塞部位に対する、PTCAの経験数は不明である。 被告Aにおいても、PTCA全般について、約1800例の実施経験を有するだけであって、亡Cの左前下行枝のような慢性完全閉塞部位に対する、PTCAの経験数も不明である。 被告B及び同Aの亡Cに対する本件PTCAの実施状況からすれば、その技術は極めて未熟なものであり、亡Cの左前下行枝のような慢性完全閉塞部位に対する困難な手技であるPTCAを、このような未熟な被告B及び同Aが実施したこと自体が、極めて重大な注意義務違反である。 被告国立病院機構の主張によれば、亡Cについて、「心臓には3枝病変が認められており、これに対し、右冠動脈及び左回旋枝については、PTCAにより、右冠動脈の近位部の狭窄を10パーセント、遠位部の狭窄を30パーセントに、左回旋枝の狭窄を10パーセントまで改善し得たものの、いつ高度再狭窄や再閉塞が生じるかわからない状態であった。また、左心室機能について、前壁・中隔壁の機能は重篤な低下があり、心尖部の心臓壁はひはく化しており、後壁は中等度の機能不全が認められ、拡張期に造影剤が残り血液の駆出が不十分であり、僧坊弁の閉鎖不全も認められ、左心室を灌流する左下行枝は100パーセント閉塞した状態であり、その機能がわずかに保たれている状態であった」というのである。 そうであれば、亡Cについて、慢性完全閉塞部位に対するPTCAを実施し、これを失敗して血管穿孔を起こして出血をさせた場合には、生命について重大な危険が発生することは、容易に予想さ うのである。 そうであれば、亡Cについて、慢性完全閉塞部位に対するPTCAを実施し、これを失敗して血管穿孔を起こして出血をさせた場合には、生命について重大な危険が発生することは、容易に予想された。 したがって、上記心臓疾患を有する亡Cに対し、困難な手技である慢性完全閉塞部位に対するPTCAを、未熟な技術しか有しない被告A及び同Bが実施することは、重大な注意義務違反となるのである。 被告A及び同Bは、亡Cが健康を回復して就労していたのであるから、PTCAを実施せずに経過観察を行うか、さもなくば、被告A及び同B自身が亡Cに提案したように、外科手術(バイパス形成)を実施すべきだったのである。 (被告らの主張)(1)本件PTCAの難易度慢性完全閉塞病変におけるPTCAの拡張成功率は、閉塞部位の長さや硬さによって定まるものであり、拡張成功率の高低が手技の困難性ひいては術者の選定に直結するものではない。 (2)被告Bは、十分なPTCAの経験を有していたこと心臓血管疾患に対するカテーテル治療を主体とする侵襲的治療を臨床的及び基礎的に研究し、約3500名の会員を要する日本心血管インターベンション学会においては、慢性完全閉塞病変症例に限らず200例以上のPTCAの経験を有することを、認定医の資格授与要件としており、かかる経験を有する医師は、上級医の監督及び指導なしのオペレーターとして一人立ちしてよいものと医学界においては考えられているといえる。したがって、本件PTCA施行時において、約1800例を上回るPTCAの経験を持つ被告Aが本件PTCAを施行することについてはもちろん、被告Bも、認定医ではないものの、その半分の約100例のPTCAの経験を有する者であって、指導医である被告Aの監督下で本件PTCAを施行するの 被告Aが本件PTCAを施行することについてはもちろん、被告Bも、認定医ではないものの、その半分の約100例のPTCAの経験を有する者であって、指導医である被告Aの監督下で本件PTCAを施行するのに何ら問題はない。 原告らの主張は、医学界における認識を欠くものであり、そもそも、どの程度の経験を有する者であれば、慢性完全閉塞病変に対するPTCAを行うに十分であるかについて、何ら具体的な根拠を示しておらず、失当である。 3 亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血の原因(原告らの主張)(1)ガイドワイヤーにより、血管に穿孔を生じさせたことア本件手術において、被告B及び同Aは、カテーテルの操作に際し、カテーテルを誤った場所に挿入し、バルーンを膨らませることにより左前下行枝を穿孔することのないよう配慮すべき注意義務を有していた。 しかるに、被告B及び同Aは、本件手術において、上記義務に反し、カテーテルの操作に必要な注意を怠り、カテーテルを左前下行枝に入れるべきであったところ、誤ってカテーテルを対角枝(左冠状動脈主幹部から左前下行枝に至る部分で分岐する細い血管)に入れてしまった。 イ慢性完全閉塞部位に対するPTCAを実施した場合、病変が硬くてワイヤーがなかなか通過しないというのは、通常ある出来事である。 その後、血流が喪失し、閉塞部位の確認が困難となったのであるから、被告Bにおいて、ワイヤーがどの血管を進んでいるのか、血管の真腔をワイヤーが通過しているか、ワイヤーが血管を穿孔したかは、モニター画面で確認できなくなっている。 したがって、この時点で、それ以上、なかなか通過しないワイヤーをモニターで確認もできないまま無理やり進めた場合、血管を穿孔する危険が発生するのであるから、被告Bにおいてはワイヤーを引き抜き、 したがって、この時点で、それ以上、なかなか通過しないワイヤーをモニターで確認もできないまま無理やり進めた場合、血管を穿孔する危険が発生するのであるから、被告Bにおいてはワイヤーを引き抜き、PTCAを一旦中止すべきであった。 被告国立病院機構は、被告Bが、閉塞部位でワイヤーが進まなくなり、かつガイドワイヤーがどの血管を通過しているかの確認が困難となった時点で、被告Aに術者を交替したと主張するところ、本来、PTCAは、術者の微妙な手元の感覚、ワイヤーが進む角度の認識が重要なものであり、途中で術者が交替した場合、それまでのワイヤーが血管を進む感覚、ワイヤーの角度の認識について、齟齬が発生する可能性が大きくなるのであって、交替した術者において格段の注意義務が要求される。 ところが、被告Aは、被告Bと交代した後、ワイヤーが血管を進んでいるか、どの血管を進んでいるか、血管を穿孔していないか、確認ができない状態で、ワイヤーをクロスさせて進めたのである。これ自体、極めて危険な行為である。 被告Aが亡Cの血管を穿孔したのは、遅くとも、甲A10の医用デジタル画像の12番目の造影の時点である(甲A11の2・5ページ参照)。 (2)穿孔部位でバルーンを膨らませることにより、更に穿孔を拡げて大量出血を引き起こしたこと極めて細いガイドワイヤーが血管を穿孔しただけでは、亡Cの生命に危険を及ぼす大量出血という事態は発生しなかった。ところが、被告Aは、ガイドワイヤーで対角枝を穿孔し、かつ、直径1ミリメートル程度の対角枝に、2ミリメートル程度のバルーンを拡張させて穿孔した穴を大きく広げて、亡Cの死亡に至る大量出血という事態を招いた。 被告Aが亡Cの血管の穿孔部位でバルーンを膨らませたのは、遅くとも、甲A10の医用デジタル画像の1 のバルーンを拡張させて穿孔した穴を大きく広げて、亡Cの死亡に至る大量出血という事態を招いた。 被告Aが亡Cの血管の穿孔部位でバルーンを膨らませたのは、遅くとも、甲A10の医用デジタル画像の13番目の造影の時点である(甲A11の2、6ページ参照)。 (3)術後、被告Aは、原告らに対し、ガイドワイヤーにより血管を突き破った旨申告していること被告A及び同Bは、カルテにおいて、「ワイヤーは対角枝に通過しており、☆部分より穿孔」(乙A2・18ページ)、「途中ワイヤーが血管をつきやぶって外にとび出してしまった。」(同・48ページ)、「ワイヤーが血管をつきやぶって正しくないところに入っていたのを気づかなかったということ」(同・49頁)として、ワイヤーによる血管の穿孔を自ら認めているのであり、ワイヤーによる血管の穿孔、バルーン拡張によって血管を裂き多量の出血を招来していることは、甲13の医用電子画像によっても、一見して明らかである。 (被告らの主張)(1)本件PTCAにおいて対角枝に穿孔が生じた原因は特定できないこと血管にワイヤーを通過させる際には、血管造影を行い、その通過部位等を確認しながら行うが、完全閉塞部位において穿孔が生じたとしても、血管にワイヤーを通過させるだけでは血流は回復しないので、穿孔部位から出血は生じず、穿孔を造影により確認することはできないし、バルーンを拡張する際には造影は行われないから、バルーン拡張後、造影を行った際に出血が判明したとしても、穿孔が、ワイヤーが血管を突き抜けたために生じたのか(下記ア)、バルーンの拡張により生じたのかなど(下記イ)、その原因を特定することはできない。 本件PTCAにおいても、ワイヤーを閉塞部に進め、バルーンを拡張後、造影剤が心のう内に流出していたことから、初めて の拡張により生じたのかなど(下記イ)、その原因を特定することはできない。 本件PTCAにおいても、ワイヤーを閉塞部に進め、バルーンを拡張後、造影剤が心のう内に流出していたことから、初めて血管穿孔が生じていたことが分かったのであって、以下のとおり、現在も、穿孔の原因を特定することはできない。 アガイドワイヤーが血管を突き破り穿孔が生じたものとはいえないこと穿孔部位から、ワイヤーが血管を突き抜け心のう内などの腔内に出たとすれば、腔内に出た部分についてはワイヤーの動きを制限するものがなく、心のう内には心のう液があるため、先端が数センチメートルにわたり踊るような動き(心のう液の中で波間に揺れるような動き)をするものである。手技中は、透視画像下で(そのすべてが記録されるわけではない。)、適宜ワイヤーを動かしながら、上記のような特徴的な動きがないかを確認するが、本件においては、手技中、ワイヤーは上記のような動きをしなかった。また、画像No16によって確認できる穿孔部位から先のワイヤー先端部までの長さは約6センチメートル程度であるところ、バルーン拡張以前にガイドワイヤーが穿通していたとすれば、その長さのワイヤーが心のう内で制限するものもなく漂った状態にあったことになり、記録された造影画像上も、上記の特徴的なワイヤーの動きがみられてしかるべきであるのに、本件の造影画像において、そのようなワイヤーの動きは認められない。さらに、穿孔は、対角枝の比較的近位部において生じており、穿孔の原因がワイヤーが血管を突き抜けたことによるのであれば、ワイヤーが血管の側壁を突き抜け、腔内に出ていたこととなるが、慢性完全閉塞の状態にある血管の側壁は、動脈硬化が強く、硬いものであって、通常、ワイヤーにより突き抜き得るものではない。 ば、ワイヤーが血管の側壁を突き抜け、腔内に出ていたこととなるが、慢性完全閉塞の状態にある血管の側壁は、動脈硬化が強く、硬いものであって、通常、ワイヤーにより突き抜き得るものではない。 本件で、ワイヤーは、左前下行枝を通って分岐する対角枝に進み、心尖部に達していたが、心尖部に達する長い対角枝も少なくないこと(乙B11)、血管の走行には個人差があって、対角枝本幹からの分枝が心尖部を回り込むこともあるから、上記のワイヤーの位置をもって、ワイヤーが血管を穿孔していたと認めることはできない。また、慢性完全閉塞病変に対するPTCAの際、ワイヤーが偽腔に入り、真腔の血流を阻害することにより側副血行路(乙B7・85ページ参照)が消失するのはよくあることであり(乙A9・7ないし8ページ)、No12の画像上、側副血行路が消失したことについては、ワイヤーによる血管穿孔を根拠付けるものではない(甲A11号証の2・5ページ参照)。 以上のことからすれば、穿孔が生じた原因は、ワイヤーが血管を突き抜けたことによるものとはいえない。 イバルーンの拡張により血管の穿孔が生じたものとはいえないこと他に考えられる血管穿孔の原因として、バルーンを拡張した付近の対角枝が極端に狭小化したり、血管壁が例外的に薄く脆弱化していたために、最小径のバルーンの拡張にも耐えられなかったために、拡張に際して穿孔が生じた可能性がある。しかしながら、造影画像で映し出された対角枝の直径は1.5ミリメートル程度と認められ、穿孔部位において、矮小化や脆弱化があったか否かは画像上明らかではなく、径1ミリメートルの血管を2ミリメートルのバルーンで拡張させることも通常行われているところ、約1.5ミリメートルの対角枝近位部を径1.5ミリメートルのバルーンによって拡張 かは画像上明らかではなく、径1ミリメートルの血管を2ミリメートルのバルーンで拡張させることも通常行われているところ、約1.5ミリメートルの対角枝近位部を径1.5ミリメートルのバルーンによって拡張したとしても、通常穿孔が生じるものではないから、バルーンの拡張により血管の穿孔が生じたとは認め得ない。 また、前述のとおり、側副血行路の血流が途絶していたのは、ワイヤーが偽腔内にあったためであると考えられる。本件では、術中の透視画像上も、記録された造影画像上も、ワイヤーが穿孔した場合に起こる特徴的な動きが認められていないが、ワイヤーが偽腔内にある場合は、その動きが血管壁等によって制限されて上記のような動きをすることはない。そこで、ワイヤーが血管外に穿通しないで偽腔に入り、偽腔の外側の血管壁が薄く脆弱化していた部分でバルーンを拡張したところ、穿孔が生じたという可能性もある。しかしながら、ワイヤーが穿孔部位以遠で偽腔に入っていたか否か、付近の血管壁が脆弱化していたか否かは画像上明らかではなく、かかる機序によって穿孔が生じたと認めることもできない。 (2)バルーンの拡張により大量出血を引き起こしたものではないこと原告は、被告Aが、ガイドワイヤーで対角枝を穿孔し、かつ、バルーンを拡張させて穿孔した穴を大きく広げ、亡Cの死亡に至る大量出血という事態を招いたと主張するが、被告Aがワイヤーにより対角枝に穿孔を生じさせたことを裏付ける証拠はなく(上記・ア)、また、バルーン拡張によって大量の出血が生じたものではないことは、後述のとおりである(下記6・)。 (3)術後における被告Aの説明内容について被告Aらは、亡Cの急変後、原告らに対し、穿孔の原因について、ワイヤーが血管を突き破って出てしまった旨説明している。 しかしながら、 。 (3)術後における被告Aの説明内容について被告Aらは、亡Cの急変後、原告らに対し、穿孔の原因について、ワイヤーが血管を突き破って出てしまった旨説明している。 しかしながら、穿孔の原因が特定できないことは、前記・のとおりであって、被告Aらは、何らかの根拠をもって穿孔の原因について上記の旨説明したわけではない。亡Cは、後述のとおり、穿孔に対する止血が完全に行われたにもかかわらず、突然の心室細動により急変したものであり、被告Aは、本件のようにPTCAにより穿孔が生じて止血が完了した後に急変する例が通常なく、開窓術によっても回復しなかったことから、急変した原因が究明できず、また、回復のための手段も尽きてしまい、少なからず動揺していた。原告らへの説明は、そのような状態で、穿孔の原因を詳細に検討することもなく(被告Aにおいて、当時、一番に念頭にあったのは心室細動の原因及びそれに対する対処法の究明であった。)、穿孔の原因として、ワイヤーが血管を突き抜けたことによる可能性は否定できないと思い、そのような可能性が否定できないのであれば、隠すようなことはしたくないとの思いから述べたものである。しかしながら、後に穿孔が生じた際の造影写真を見、また、本件PTCA施術時のワイヤーの動きを詳細に思い出し(後記のとおり、被告Aは、施術時、ワイヤーは血管内を通過したと判断しており、施術後もその旨説明している(乙A2、52ページ)、穿孔の原因を検討すると、上記・のとおり、ワイヤーが血管を突き抜けたことによるものではないと考えられる。 4 亡Cにおいて冠動脈穿孔及び出血を生じさせたことについての過失の有無(原告らの主張)(1)術者はガイドワイヤーの通過位置が確認できておらず、それ以上ガイドワイヤーを進めるべきではなかったことワイヤー 動脈穿孔及び出血を生じさせたことについての過失の有無(原告らの主張)(1)術者はガイドワイヤーの通過位置が確認できておらず、それ以上ガイドワイヤーを進めるべきではなかったことワイヤーが目的病変を通過しているのか、血管の真腔を通過しているのかについては、ワイヤーの走行方向等をモニターできちんと確認して行うものである。仮にワイヤーが血管を穿孔させた場合には、直ちにPTCAを中止しなければならない。 被告A及び同Bは、Cに対して、ワイヤーで血管を穿孔し、それに気付かないまま、またワイヤーがどこを通っているか確認できないにもかかわらず、バルーンを拡張させて、血管を裂き、大量出血という事態を招来させたのである。 (2)被告Aは、ガイドワイヤーが対角枝を通過し、あるいは穿孔している可能性を当然に認識すべきであったこと被告Aは、ワイヤーをクロスしたことにより「比較的スムースにワイヤーが」進んだことで、「(ワイヤーが)閉塞部位を通過した」と思い込み、また、「ワイヤー先端の可動性は良好であったため、左前下行枝の真腔を通過しているものと」思い込んだのである。 被告Bが慢性完全閉塞部位をガイドワイヤーが進まなかったことで困難を覚え、被告Aに交替したのであり、かつ交替した時点でガイドワイヤーが血管のどの部位を通過しているのか、モニターで確認できない状態となったのであるから、被告Aは、比較的スムースにワイヤーが進み、ワイヤー先端の可動性が良好となった時点において、ガイドワイヤーが目指した左前下行枝ではなく対角枝を通過している可能性を検討すべきだったのであり、また、血管を穿孔している可能性を検討すべきだったのである。 被告Aは、ガイドワイヤーが対角枝を通過し、あるいはガイドワイヤーが血管を穿孔した可能性を当然に認識すべきだっ すべきだったのであり、また、血管を穿孔している可能性を検討すべきだったのである。 被告Aは、ガイドワイヤーが対角枝を通過し、あるいはガイドワイヤーが血管を穿孔した可能性を当然に認識すべきだったのであり、また、被告Aは、理由もなくガイドワイヤーを途中で停止させ、バルーンを拡張させるなどという、危険性の高い行為をすべきではなかった。 ガイドワイヤーが被告Aが思い込んだとおり左前下行枝の閉塞部位を通過して真腔を進んでいったのならば、そのままガイドワイヤーを進めていけば、乙A3の2別図2に記されている「左前下行枝(本幹)(末梢部のみ側副血行路から流れているのが確認できる)」にガイドワイヤーが辿り着いたはずであり、それをモニター画面で確認できたはずである。 もし、ガイドワイヤーが対角枝を通過しているのなら、対角枝は短いので、途中でワイヤーは止まったはずであり、その時点で、ワイヤーが目標である左前下行枝とは異なる対角枝を通過したことを認識できたはずである。そうであれば、対角枝を通過したガイドワイヤーを通してバルーンを拡張させるなどという無意味で危険な手技を行うはずがない。 被告国立病院機構は、「対角枝本枝又は分枝が心尖部にまで達することも少なくない」と主張し、その根拠として文献(乙B11)をあげるが、誤りであり、日本人の場合、対角枝が心尖部にまで達する例はほとんど存在しない。しかも、被告国立病院機構があげる文献は、被告国立病院機構の主張を裏付けないものである。すなわち、この文献が対象としたのは、左冠動脈について、2分枝型(全体150例の54.7パーセント)、3分枝型(同38.7パーセント)、4分枝型(同6.7パーセント)の内、3分枝型及び4分枝型の合計約75例だけであり、その内非白人は21例しか含まれていないが、この約75例 例の54.7パーセント)、3分枝型(同38.7パーセント)、4分枝型(同6.7パーセント)の内、3分枝型及び4分枝型の合計約75例だけであり、その内非白人は21例しか含まれていないが、この約75例中、心尖部を回り込むような対角枝の例はわずか2例(9パーセント)しかなかったと記されているのである。加えて、Cは、この文献では測定されていない2分枝型であって、対角枝が心尖部まで達する可能性を考えるのは大きな誤りである。 もし、被告Aの目標とは異なって、ガイドワイヤーが血管を穿孔してしまっていたら、被告Aが本件手技中に認識したように、ガイドワイヤーは先端の可動性は良好のままスムースに進んでいくのであり、ガイドワイヤーがスムースに進んでいるにもかかわらず、ガイドワイヤーが、乙A3の2別図2に記されている「左前下行枝(本幹)(末梢部のみ側副血行路から流れているのが確認できる)」に届いていないことを認識した時点で、被告A及び同Bにおいて血管の穿孔を認識できたはずである。 要するに、被告Aは、PTCAを実施する術者としては当然の行動である、ガイドワイヤーをそのまま進めるという作業を行わず、なぜか途中で停止させるという行動に出たのである。 (3)被告国立病院機構は、医用デジタル画像No8及びNo9の時点で、ワイヤーが偽腔に入り、真腔に血液が流れなくなることで側副血行路が描出されなくなったが、大きなトラブルではないと主張するが(乙A9・2ページ)、そもそも本件PTCAは、完全閉塞の左前下行枝にワイヤーを通しバルーンで拡張することにより再疎通させ虚血部となっているであろう左前下行枝領域を改善させることにあるのである。側副血行路に血流が行かなくなれば、左前下行枝領域の心筋細胞に酸素が行かなくなるのであるかられっきとしたトラブルであり、この時点で、 となっているであろう左前下行枝領域を改善させることにあるのである。側副血行路に血流が行かなくなれば、左前下行枝領域の心筋細胞に酸素が行かなくなるのであるかられっきとしたトラブルであり、この時点で、PTCAは中止されるべきであった。 さらに、被告国立病院機構は、医用デジタル画像No11の時点では、順行性、逆行性の両方の側副血行路が消失し、ワイヤーが冠動脈内にあるかどうか定かでないにもかかわらず、PTCAの即時中止の必要はなくむしろ継続すべきだと主張するが(乙A9・3ページ)、両方の側副血行路の消失により左前下行枝領域の血流がほとんど消失してしまうという大きなトラブルを発生させたのであり、PTCAを直ちに中止しなければいけなかった。慢性完全閉塞部に対するPTCAの場合、冠動脈の走向が全くわからないのにガイドワイヤーを挿入、貫通させることは無謀としか言いようがない。 (4)ガイドワイヤーの通過位置が不明なままバルーンを拡張すべきではなかったこと被告Aは、上記の行動を取った後、モニター画面でガイドワイヤーがどこに存在するのかの確認ができない状態のまま、極めて危険な行動であるバルーンの拡張という行動に出たのである。 極めて細いガイドワイヤーが血管を穿孔しただけでは、亡Cの生命に危険を及ぼす大量出血という事態は発生しなかった。ところが、被告Aは、ガイドワイヤーで対角枝を穿孔し、かつ、直径1ミリメートル程度の対角枝に、2ミリメートル程度のバルーンを拡張させて穿孔した穴を大きく広げて、亡Cの死亡に至る大量出血という事態を招いたのである。 (5)被告Aが、ガイドワイヤーが対角枝を通過している可能性も考慮してバルーンを拡張させたとは考えられないこと被告Aは、ワイヤーを左前下行枝に通そうと試みたはずであり、それにもかかわらず、対 (5)被告Aが、ガイドワイヤーが対角枝を通過している可能性も考慮してバルーンを拡張させたとは考えられないこと被告Aは、ワイヤーを左前下行枝に通そうと試みたはずであり、それにもかかわらず、対角枝を通過している可能性も考慮したなどということは考えられない。被告Aは、C及び原告らに対し、ワイヤーを対角枝に通過させてバルーンを拡張する手技を行うことについて、いつ、どのように、説明をしたのかを明らかにすべきである。もっとも亡C及び原告らは、被告Aからそのような手技の説明を一切受けていない。 また、被告Aは、ここで、バルーンがどこを通過しているかの確認をしないままバルーンを拡張させたことを自認しているが、PTCAにおいて、通常の施術者が、バルーンがどこを通過しているかわからないまま拡張させるというような手技を行うことはあり得ない。 (被告らの主張)(1)慢性完全閉塞病変に対するPTCAでは、ガイドワイヤーの通過部位を、造影画像のみで、完全に確認し得ないこと慢性完全閉塞病変に対するPTCAとは、血流のない(すなわち造影されない)閉塞部位にワイヤーを通過させ、さらにバルーンを通過させ、これを拡張させることにより閉塞を解除するものであって、ワイヤーを進めていく場合においては、(閉塞部位は造影されないから)ワイヤーが目的病変を通過しているものか、血管の真腔を通過しているかを、造影画像によって、完全に確認することはできない。 慢性完全閉塞病変に対してPTCAを行う場合、施術者としては、①画像上、閉塞部位における血管の走行を推測し、多方向からワイヤーの走行方向を確認しつつ、②施術者の手から感得されるワイヤー進行時の抵抗感や、透視画像(必ずしもそのすべてが記録されるわけではない。)上に認められる挿入後のワイヤーの動き 推測し、多方向からワイヤーの走行方向を確認しつつ、②施術者の手から感得されるワイヤー進行時の抵抗感や、透視画像(必ずしもそのすべてが記録されるわけではない。)上に認められる挿入後のワイヤーの動き等によって、ワイヤーが目的病変の真腔を通過しているか否かを判断することができる。実際に本件でも、被告Aは、画像上は血管が造影されていない閉塞部において、左前下行枝及び分岐した対角枝の近位部の血管内にワイヤーを進めていることは、No16の画像から明らかである。 以上のことからすれば、造影画像のみによっては、ワイヤーの通過部位が確認できない場合であっても、ガイドワイヤーを進めるべきでないとする原告らの主張は失当である。 (2)慢性完全閉塞病変に対するPTCAにおいては、血管の穿孔の可能性は常に否定できないことア上記(1)のPTCAの手技上、ワイヤーの通過やバルーンの拡張に困難を伴うものであって、ワイヤーを進める際、又はバルーンを拡張する際においても、血管の穿孔の危険性は否定できるものではなく、血管の穿孔の危険性がある場合にPTCAを施行してはならないとすれば、医師として、PTCAを施行し、治療を行うことはできなくなる。また、0.014インチのワイヤーによって穿孔したとしても出血点は小さく、止血措置によって、ほとんどの場合死の危険を回避できるものであることから、上記(1)のワイヤー操作は、年間300件以上という比較的多数の症例数を扱う施設において、多くの医師が容認する適切な手技とされている。 イなお、原告は、被告Aにおいて、ワイヤーが対角枝を通過し、あるいは穿孔している可能性を当然に認識すべきであったと主張する。 しかしながら、仮にワイヤーにより血管に穿孔が生じたとしても、穿孔部位においても血流がないのであ ヤーが対角枝を通過し、あるいは穿孔している可能性を当然に認識すべきであったと主張する。 しかしながら、仮にワイヤーにより血管に穿孔が生じたとしても、穿孔部位においても血流がないのであるから、これを造影画像により確認することはできない。また、ワイヤーが穿孔した場合においては、先端から数センチメートルにわたりワイヤーが踊るような動きになるものであるが、本件PTCAの際、かかる動きはなかった。これについては、ワイヤーが穿孔部位より手前で偽腔に入っていたために、ワイヤー先端の動きが制限され、画像上も上記のような特徴的な動きをしなかったために、被告Aがその動きを認識できなかった可能性も十分考えられる。 また、Cの血管は慢性完全閉塞の状態にあり、血管の側壁は、動脈硬化が強く、硬いものであって、通常、ワイヤーにより突き抜き得るものではない。側副血行路の消失は、偽腔に入ったことによるものと考えるべきであるし、No12の画像から判断すると、ワイヤーが対角枝を通過している可能性は低く、対角枝本枝又は分枝が心尖部にまで達することも少なくない(上記3(1)ア)。この点、対角枝の長さに関する文献(乙B11)においては、対角枝の様々な形態を報告し、特に50ミリメートルを超える非常に長い対角枝が11.7パーセントに見られ、対角枝の長さについて、人種や性別による相違は認められなかったとの結論も示されている(乙B11・表Ⅱ、7ないし9ページ)。なお、2分枝型ないし4分枝型の分類は、一般的なものではなく同文献独自の分類によるものであって、要旨欄に、左冠動脈は2分枝型、3分枝型及び4分枝型に分けられ「後者二つは冠動脈対角枝を有することが明らかとなった」と記載されているとおり、同文献の分類による2分枝型は対角枝がないタイプであるところ、Cは対角枝を有していた 、3分枝型及び4分枝型に分けられ「後者二つは冠動脈対角枝を有することが明らかとなった」と記載されているとおり、同文献の分類による2分枝型は対角枝がないタイプであるところ、Cは対角枝を有していたのであるから、同文献による2分枝型ではなく、同文献をもって、その対角枝が心尖部まで達している可能性を考えることは妥当である。 したがって、仮にワイヤーが血管を穿孔していたとしても、被告Aにおいて、穿孔の可能性を認識し得るものではない。 (3)ガイドワイヤーの通過位置が、造影画像により完全に確認できなくても、バルーンの拡張をすべきであることア原告らは、本件PTCAは、完全閉塞の左前下行枝にワイヤーを通しバルーンで拡張することにより再疎通させ虚血部となっているであろう左前下行枝領域を改善させることにあり、側副血行路に血流が行かなくなれば、左前下行枝領域の心筋細胞に酸素が行かなくなるのであるかられっきとしたトラブルであり、この時点で、PTCAは中止されるべきであったと主張する。 しかしながら、PTCAは、その成功の有無が生命予後に直結するものであるところ、側副血行路の有無は手技の成否に有意な差異を生じるものではない。 また、CTOのPTCAの手技中、ワイヤーが偽腔に入り、側副血行路が見えなくなることは決して珍しいことではなく(乙A9・8ページ)、CTOの場合、遠位の心筋は虚血に耐性があることが多く、側副血行路の消失により虚血症状が出現したり、バイタルサインに変化を来すことは非常に少ないことなどからも、CTOのPTCA中に側副血行路が消失することは、トラブルとはいえない(乙A13・2ないし4ページ)。ただし、ワイヤーが、本幹ではなく側枝を通過している可能性も考慮に入れざるを得ないが、それでも、近位部においてはワイヤーが 血行路が消失することは、トラブルとはいえない(乙A13・2ないし4ページ)。ただし、ワイヤーが、本幹ではなく側枝を通過している可能性も考慮に入れざるを得ないが、それでも、近位部においてはワイヤーが本幹の血管内にある場合がほとんどであることから、閉塞部の近位部を、血管への影響が最も少ない最小径のバルーンを使用して拡張することが相当である。さらに、PTCAによって血管穿孔を生じることはまれに起きるのであり、たとえワイヤーで穿孔したとしても出血点は小さく、また、最小径の1.5ミリメートルのバルーンによる血管損傷の程度は軽度であり、いずれの場合も、後述するとおり適切な方法で止血し、200ミリリットル程度に満たない出血にとどめれば、通常、生命に危険を及ぼすことはない(乙B2・225ページ)。なお、この場合の死亡率に関しては、低心機能であるかどうかよりも、止血できるかどうかの方がより重要な決定要因である(乙A12・6ページ)。 以上のとおり、閉塞部位の末梢が造影により確認できなくなった場合でも手技の成否に影響はなく、PTCAが成功した場合の患者の生命予後は良く、一方、画像等を注視して、ワイヤーが血管内を通過したものと判断できた場合、その近位部を最小径のバルーンで拡張すれば、穿孔を生ずることは少なく、仮に穿孔のため出血したとしても、止血措置によって、ほとんどの場合死の危険を回避できる。かかる手技は、年間300件以上という比較的多数の症例数を扱う施設において、多くの医師が容認する適切な手技であり(乙A13・6ないし7ページ、乙A14、乙A15)、被告Aにおいても、閉塞部位の末梢が造影により確認できないことは年に数件経験するが、そのような場合もPTCAの施行を中止したことはなく、実際に、近位部を径1.5ミリメートルのバルーンで拡張し、 )、被告Aにおいても、閉塞部位の末梢が造影により確認できないことは年に数件経験するが、そのような場合もPTCAの施行を中止したことはなく、実際に、近位部を径1.5ミリメートルのバルーンで拡張し、閉塞が解除した例がある(乙A4の1ないし5)。 PTCAは、患者において多くの費用負担を要するものであって(中止したとしても、費用負担額は変わらない。)、上記のように血管への影響を考慮した適切な手技が認められる以上、閉塞部位をワイヤーが通過しない場合又はバルーンにより拡張されない場合であれば中止せざるを得ないものであるが、そうでない限り、患者の治療の責任を負う医師として、ワイヤーの通過を試み、バルーンによる拡張を試みることにより治療を行うものであり、手技を中止し得るものではない。 イ本件において、被告Aは、側副血行路からの血流による左前下行枝の末梢の造影が消失した後の手技を担当し(画像No10と11の間で被告Bと交替)、①閉塞部の入口付近までワイヤーをいったん戻し、閉塞部において、硬いながらも比較的スムースにワイヤーが通過していることを感じ取りながら、②モニターの角度を変更して、多方向からワイヤーの走行方向が左前下行枝の走行する方向(乙A8)と矛盾のないことを確認しつつ、ワイヤーを進め、③ワイヤーの先端数ミリメートルの範囲における可動性が良好であり、数センチメートルにわたって踊るような動きをすることもなく、ワイヤーが心のう内ではなく血管内にあると感得できたことなどを総合して、ワイヤーは、左前下行枝の真腔を通過していると判断した。 なお、閉塞部位の抹消が造影により確認できないことから、側枝を通過している可能性もわずかながら考慮したが、いずれにせよ、ワイヤーは、閉塞部の真腔を通過しているものと判断して、閉塞部の近位部を径1.5 お、閉塞部位の抹消が造影により確認できないことから、側枝を通過している可能性もわずかながら考慮したが、いずれにせよ、ワイヤーは、閉塞部の真腔を通過しているものと判断して、閉塞部の近位部を径1.5ミリメートルのバルーンで拡張した。そして、結果的に、上記バルーン拡張後の画像上は、ワイヤーが、血流が回復したことにより造影された左前下行枝及び分岐した対角枝近位部の血管内を通過していると認められ、上記被告Aの判断が合理的であったことが客観的に裏付けられている(乙A6、画像No16、乙A12・5ページ)。 なお、仮に、バルーン拡張前までに、穿孔が生じていたとしても、被告Aにおいて、穿孔の可能性を認識し得たものではないことについては、上記(2)イにおいて述べたとおりである。また、仮にバルーン拡張により穿孔が生じたものであるとしても、バルーンを拡張した付近における血管の極端な狭小化、血管壁の脆弱化等は、拡張後はもちろん拡張前の画像上も明らかではなく、また、直径1ミリメートル程度の血管を2ミリメートルのバルーンで拡張しても穿孔が生ずることは少ないのであるから、直径数ミリメートルの前下行枝又は1.5ミリメートル程度の対角枝を1.5ミリメートルのバルーンで拡張した場合に穿孔を生じたとしても、被告Aにおいて、その結果を予見することはできなかった。 また、被告Aは、上記のとおり適切にバルーン拡張を行った後で判明した出血に対し、適切な止血措置を行って出血量を心タンポナーデに至らない程度の量にまでとどめたのであるから(後記7)、その後の死の結果は不可避というべきである。 ウ以上のとおり、被告Aがバルーンを拡張したことに過失はない。 (4)被告Aは「サイドブランチテクニック」を実施したものであることアサイドブランチテクニ 不可避というべきである。 ウ以上のとおり、被告Aがバルーンを拡張したことに過失はない。 (4)被告Aは「サイドブランチテクニック」を実施したものであることアサイドブランチテクニックとは、慢性完全閉塞病変に対して本幹(本事例の場合は左前下行枝)にワイヤーが通過しないときに用いる手法の一つであり、閉塞部の枝(本事例の場合は対角枝、中隔枝等)にワイヤーを通し、分岐部を拡張することによって、本幹側の繊維性皮膜に亀裂を入れることによって、本幹へのワイヤー通過の手助けとするものである(乙B1・58ないし61ページ)。 イ本件のバルーンの拡張に当たっては、サイドブランチテクニックを積極的に試みようとしたものではない。前記(3)のとおり、被告Aにおいては、ワイヤーが通過した時点においては、側副血行路は既に消失しており、ワイヤーの位置を多方向より確認し、先端数ミリメートルの可動性も確かめるなどして、ワイヤーが左前下行枝内にあると判断していたが、末梢におけるワイヤーの位置を確認できない状況であるため、対角枝内である可能性も考慮して、バルーンを拡張しなければならなかった。 そして、このような場合、上記のとおり、閉塞部の近位部を最小径のバルーンで拡張するのが有効な手法であるとともに、仮にワイヤーが対角枝内にある場合には、側枝入口部付近をバルーンで拡張することにより、本幹(左前下行枝)をふさいでいる繊維性皮膜に亀裂を入れ、本幹の閉塞部位にワイヤーを入れ直す(サイドブランチテクニック)ことで、手技を成功に導き得る可能性もある。 ウ本件でも、結果として、ワイヤーは対角枝内にあったものであるが、上記バルーンの拡張により、左前下行枝及び対角枝の近位部における閉塞はいずれも解除された(乙A3の3)。 5 第1対角枝の閉塞 ウ本件でも、結果として、ワイヤーは対角枝内にあったものであるが、上記バルーンの拡張により、左前下行枝及び対角枝の近位部における閉塞はいずれも解除された(乙A3の3)。 5 第1対角枝の閉塞に対する治療を怠った過失の有無(弁論準備手続終結後の主張)(原告らの主張)亡Cについては、被告らの主張によれば、心エコー上心タンポナーデはないと確認しているのであるから、虚血による心原性ショックを考える必要がある。 心室細動に対しては、電気的除細動を行い、これで回復しない場合は、大動脈内バルーンパンピングだけでなく、経度的人工心肺(PCPS)を行う必要があった。PCPSにより心臓の負荷が軽減され、除細動の効果が増大し、心室細動から回復することも可能であったし、閉塞した第1対角枝に対してカテーテル治療を行えば、虚血からの回復と救命の可能性もあった。しかし、被告Aは最後の造影で第1対角枝の閉塞を見逃したため、これらの必要な処置を行う機会を逸したのである。 (被告らの主張)この点における原告らの主張は、集中証拠調べ後にされたものであるところ、それ以前において原告らはかかる主張を何ら行っておらず、それを裏付ける書証の提出も行っていなかった。それにもかかわらず、集中証拠調べ後に突然H医師の再補充意見書(甲A14)の提出とともにされたものである。他方、原告らが主張する第1対角枝の閉塞の事実を裏付ける乙A3の6は、本件訴訟の当初から提出されており、原告らは、上記主張を集中証拠調べ前に行う機会が十分にあったというべきである。 そして、被告らは、上記のとおりの訴訟経過のため、集中証拠調べ期日において原告らの上記主張を前提とした反証を行う機会を与えられなかったものであり、その後も十分な反論・反証の機会を与えられていない。 以上によれば、 上記のとおりの訴訟経過のため、集中証拠調べ期日において原告らの上記主張を前提とした反証を行う機会を与えられなかったものであり、その後も十分な反論・反証の機会を与えられていない。 以上によれば、原告らの上記主張は、時機に後れた攻撃防御方法というべきであって、民事訴訟法157条に基づき却下されるべきである。 なお、亡Cにおける第1対角枝の閉塞と死因となった心室細動との間に因果関係が存しないことは、後記7(被告らの主張)(5)において述べるとおりであり、さらに、仮に原告らの主張するとおり第1対角枝の閉塞により数分間の虚血症状によって心室細動を来したものであるとしても、心タンポナーデに至らない程度の出血にとどめた状況下では、被告Aらにおいて、このような閉塞が発生すること及び数分間の虚血症状で心室細動が発生することについては、具体的に予見することは不可能である。 6 被告Bの本件PTCA手技における過失の有無(原告らの主張)被告Bは、被告AにPTCAの手技を交代した後も、亡Cの主治医として、被告Aと共に、モニター画面で造影された血管、血流を監視し、ガイドワイヤーの進行方向を監視し、また、大量の出血を招いた後はその状況、そして適切な止血ができたかどうかを監視していた。 したがって、被告Bは被告Aと手技を交代した後も、①被告Aと共に、PTCAの手技が適切に実施されているかを注視し、②ガイドワイヤーの進行場所、進行方向が不明となった際は直ちに手技を中止し、③ガイドワイヤーが血管を穿孔したか否かを注視し、④ガイドワイヤーがどこをどの方向に進行しているか不明な場合にバルーンを開いてはならない、⑤血管穿孔、血管を裂いたことにより大量出血させた場合は直ちに救命措置を講じるとの各注意義務を負っていた。 しかるに、被告Bは、被告A に進行しているか不明な場合にバルーンを開いてはならない、⑤血管穿孔、血管を裂いたことにより大量出血させた場合は直ちに救命措置を講じるとの各注意義務を負っていた。 しかるに、被告Bは、被告Aと共に、上記各注意義務に違反し、亡Cを死亡するに至らせたのであって、被告Bの過失は明らかである。 (被告らの主張)被告Aは、約1800例を上回るPTCAの経験を持つトップレベルの循環器医師であり、指導的立場の医師(日本心血管インターベンション学会における指導医、日本循環器学会専門医)である。一方、日本心血管インターベンション学会おいては、慢性完全閉塞病変に限らず、200例以上のPTCAの経験を有することをして、認定医の資格授与要件としているため、被告Bは、約100例のPTCAの経験があるが、その資格授与要件を具備していない(なお、認定医ではないものの、約100例のPTCAの経験を有する被告Bが、指導医である被告Aの監督下で本件PTCAを施行するのに何ら問題はないことについては、前述のとおりである(前記2(2))。 このように、被告Bは、その症例経験数、学会における客観的立場を考慮すれば、指導医である被告Aの指導及び監督下に手技を行うべきものであるから、術者が被告Aに交替した場合、その後の手技についてすべての責任を負うべきは被告Aであり、被告Bにおいて、指導医たる被告Aの行う手技を監視する義務はないというべきである。 したがって、被告Aに交替した後において、被告Bは、原告の主張する①ないし⑤の義務を負わず、不法行為も成立しない。 7 亡Cにおける冠動脈穿孔及び出血と死亡との因果関係の有無(原告らの主張)(1)亡Cの出血に対し、妥当な止血がされていなかったこと被告A及び同Bは、血管の穿孔という事態を把握した時点で、内科医によ おける冠動脈穿孔及び出血と死亡との因果関係の有無(原告らの主張)(1)亡Cの出血に対し、妥当な止血がされていなかったこと被告A及び同Bは、血管の穿孔という事態を把握した時点で、内科医による措置ではもはや不十分であり、かつ亡Cの生命に危険を及ぼすことを、当然に認識すべきであった。 しかるに、被告A及び同Bは、PTCAによる血管穿孔という事態を認識しながら、直ちに外科医による救命措置を取ることなく、時間を浪費し、心臓外科医であるJ医師を呼んで開胸手術をさせたのは、既に、「心停止、呼吸停止」の後であったのである(乙A2・19頁)。 バルーンで血管を裂いてしまったのであるから、まず、バルーンを拡張させたままで、止血を試みるべきであることは当然である。 その上で、緊急の救命外科手術を実施すれば、Cを死亡させることはなかった。 ところが、被告A及び同Bは、甲13の医用デジタル画像で明らかなとおり、止血するまでバルーンの拡張を行い続けなければいけなかったにもかかわらず、バルーンを閉じては止血したかどうかを造影で確認し、止血が成功していないことから再びバルーンを拡張させるという不可解な行動を長時間にわたって繰り返し、その間血管を裂いた箇所から大量に出血をさせているのである。 被告A及び同Bが、この間行っていることは、亡Cの死を早める行動にすぎず、緊急の救命措置を全く講じていない。 (2)上記(1)の出血は大量であり、これにより心タンポナーデを来した可能性が高いこと心タンポナーデを来したことは、被告A及び同Bが自らカルテに記載して認めているとおりである。 バルーンを拡張させて血管を裂いたことによる出血量は、解剖医の所見によれば、心嚢内に200ミリリットル(これは開窓術により心のう液を排出した後に残った血 テに記載して認めているとおりである。 バルーンを拡張させて血管を裂いたことによる出血量は、解剖医の所見によれば、心嚢内に200ミリリットル(これは開窓術により心のう液を排出した後に残った血液である、乙A2・19ページ)、左胸腔内に420ミリリットル、右胸腔内に680ミリリットルの血液貯留があったのであるから、合計1300ミリリットル以上の大量のものである(甲B3及びB4)。 ちなみに、解剖医は、「故C殿は、心臓の前面を栄養している血管である左前下行枝の機械的損傷により心臓前面から心嚢内に出血を起こし、心嚢血腫(別名:心タンポナーデ)となり死に至ったものと考えられます。心嚢血腫とは、心臓を包んでいる膜の内側に出血を起こし、心臓の拍動を抑制することで心不全を引き起こし死に至るものです。救命処置により二次的に心臓にダメージを受けている部位もあるため、ご遺体の所見のみから冠状動脈を損傷した器具の推定などは困難ではありますが、状況から判断するとカテーテルによる損傷と考えて矛盾はないものと思われます。」と、原告E(以下「原告E」という。)あて書面で記している(甲B3)。 (3)カルテ上も心タンポナーゼによる容態急変と記載されていること被告B及び同Aは、カルテに、確定診断名として「心タンポナーデ」と記載し(乙A2・1頁)、入院病名一覧表にも「心タンポナーデ」と記載し(同2頁)、「エコー上はきわだって心のう液が蓄増してはいないも、前面にたまった心のう液で右心室も虚脱ぎみになっており、やはり少量ながらも心タンポナーデによる急変と判断」と記載している(同19頁)。 また、カルテの看護サマリーの入院経過にも、「PTCA中に冠動脈穿孔起こし心タンポナーデを呈し心原性ショックとなった。」(同5頁)と記載されている。 (4)被告国立病院機 ている(同19頁)。 また、カルテの看護サマリーの入院経過にも、「PTCA中に冠動脈穿孔起こし心タンポナーデを呈し心原性ショックとなった。」(同5頁)と記載されている。 (4)被告国立病院機構の、止血確認後のCのバイタルサインに変化がないとの主張についてア被告国立病院機構は、「止血に至るまでの出血は大量ではなく、出血により心タンポナーデを来したとは考えられない」とし、その理由として、「止血確認後、15分以上にわたってCのバイタルサインに問題はなく、心のう液の貯留は前面のみに認められ、かつ収縮期でも1センチメートルもなく、急変後の心エコーによっても増加していなかったこと」等の理由をあげる。 イ被告国立病院機構は、「止血確認後、15分以上にわたってCのバイタルサインに問題はなく」と主張するが、不正確である。 乙A2の23頁で、止血確認は8月21日18時35分、24頁で、その15分後である18時50分に胸部痛、心窩部痛再発、血圧低下と記載しているのであり、止血確認後、15分「以上」にわたってCのバイタルサインに問題はなかったとの事実は存在しない。 ウ乙A2のカルテ上では、止血確認後約15分、Cにおいてバイタルサインに変化がなかったとなっているのは事実であり、その正確な理由は、解剖医作成の鑑定書の検討をまたなければ確定できない。 冠動脈の穿孔により心のう内に大量に流出した血液が、何らかの原因で、胸腔内に漏出したため、心タンポナーデを来さず、バイタルサインに変化がなかったことも考えられる。 Cは、8月21日18時50分に胸部痛、心窩部痛を再発し、血圧低下となっている(乙A2の24頁)。胸部痛、心窩部痛は、虚血が原因である。 虚血を来した理由は、冠動脈穿孔に伴う出血、血行動 は、8月21日18時50分に胸部痛、心窩部痛を再発し、血圧低下となっている(乙A2の24頁)。胸部痛、心窩部痛は、虚血が原因である。 虚血を来した理由は、冠動脈穿孔に伴う出血、血行動態の悪化、第一対角枝の虚血と梗塞である。 仮に、Cの死因が心タンポナーデではなく、虚血と心室細動による心原性ショックであるとしても、虚血と心室細動は、被告Aがガイドワイヤーで血管を穿孔し、その後バルーンを拡張して大量出血をさせたことにより発生させたものである(甲A12の9頁、甲A13の6頁)。 したがって、仮にCの死因が心タンポナーデではなく、虚血と心室細動による心原性ショックであるとしても、被告らの責任は同一である。 (5)被告国立病院機構の心マッサージにより1000cc以上の出血があったとの主張についてア被告国立病院機構は、Cの解剖所見による1000cc以上の出血について、「本件では、約2時間30分も心マッサージを続けている。CPR(心肺蘇生)は、心マッサージをして脳血流とともに冠血流を保持する措置であり、心マッサージを繰り返すことにより冠灌流圧が上昇することは常識的なことである。また、心マッサージは、適切に施行しても骨折や気胸、血胸(胸膜腔へ血流が貯留した状態)などの合併症を十分きたしうる手技である。」とし、「したがって、本件において、解剖の所見で認められる貯留血液の大部分は、止血に至るまでに発生したものではなく、急変後、心マッサージを長時間続けた結果、止血されていた冠動脈から再出血したり、血胸を起こすなどしたために生じたもので、心マッサージ(CPR)に起因するというべきである」と主張する。 イしかし、心マッサージにより、対角枝の穿孔部から1000cc以上の出血を起こさせた可能性など、 どしたために生じたもので、心マッサージ(CPR)に起因するというべきである」と主張する。 イしかし、心マッサージにより、対角枝の穿孔部から1000cc以上の出血を起こさせた可能性など、医学的にまったくあり得ないことであり、被告国立病院機構の主張は失当である。 心停止の場合、心マッサージにより胸部前面を圧迫し、これにより、左室は収縮し、この結果左室内の血液が、開口した大動脈弁から大動脈を通って全身に押し出され、脳の血流等も確保されることとなる。このとき、冠動脈へはほとんど血液は流れない。 次に心マッサージの手の力を緩めることで左室が弛緩し、左房より左室に血流が流入し、これにより大動脈弁が閉鎖し、血流が逆流するような形で、冠動脈に血液が流入するのである。 心停止の場合、心マッサージのみの血圧となるのであり、手の力を緩めた、左室拡張期の血圧は0に近い状態であり、このため、心マッサージによっては冠動脈内の血流を十分に確保することはできない。したがって、心停止後の心マッサージにより1000cc以上の出血を起こさせた可能性など、医学的にまったくあり得ないことなのである(甲A12、7頁)。 ウ前述のとおり、心マッサージ中も、心マッサージの手の力を緩めることにより左室が弛緩し、左房より左室に血流が流入し、これにより大動脈弁が閉鎖し、血流が逆流するような形で、冠動脈に血液が流入する。その場合、どの程度灌流されているかについては、動物実験しかないが、「心マッサージでは10ml/min/100g(正常100ml/min/100g)から正常の12-50%(文献5、6)、また別の文献では、心マッサージでは全身への血流や冠動脈の血流は正常の1/4以下であると報告されている」のである(甲A13・5ページ、同号証の文献 /100g)から正常の12-50%(文献5、6)、また別の文献では、心マッサージでは全身への血流や冠動脈の血流は正常の1/4以下であると報告されている」のである(甲A13・5ページ、同号証の文献番号5、6、7)。 したがって、上記考察によっても、心マッサージにより、対角枝の穿孔部から1000cc以上の出血を起こさせた可能性など、医学的にまったくあり得ないことが明らかである。 エ Cの場合、心マッサージ中、輸血を全く行わず、補液もほとんどおこなっていない。そうすると、心マッサージ中、心マッサージにより対角枝の穿孔部から持続的に大量の出血があったとすると、循環血液量が確保されなくなり、心マッサージにより全身から心臓に戻る循環血液量も減少し、結局、冠血流も確保されなくなるのである。したがって、この点でも、心マッサージにより対角枝の穿孔部から1000cc以上の出血を起こさせたとの被告国立病院機構の主張は、医学的合理性に欠けることとなるのである(甲A12・8ページ)。 (6)第1対角枝の閉塞が亡Cの死亡に影響していること(弁論準備手続終結後の主張)亡Cに対しては、抗血栓薬であるヘパリンを中和するプロタミンが投与された後、バルーンで止血した結果、新たに開通させた左前下行枝、穿孔した対角枝は造影されなくなっており、血栓が生じて閉塞したものと考えられる。その後、心室細動が生じ、蘇生後の造影では、第1対角枝が完全閉塞している。 すなわち、ガイドワイヤーによる穿孔と、その後のバルーン拡張に伴う出血が生じ、これに対して止血のため抗血栓薬のヘパリンをプロタミンで中和し、血栓閉塞されるようバルーンで止血しているところ、これにより第1対角枝が閉塞し、虚血となって、胸痛、心窩部痛を来たし、心室細動を起こして死亡に至ったと考えられるのである。 リンをプロタミンで中和し、血栓閉塞されるようバルーンで止血しているところ、これにより第1対角枝が閉塞し、虚血となって、胸痛、心窩部痛を来たし、心室細動を起こして死亡に至ったと考えられるのである。 (被告らの主張)(1)被告らにより、適切な止血措置が施され、結果止血に成功していること被告Aは、手術において血液を凝固させないように投与されるヘパリンを中和するためプロタミンを投与した。穿孔部付近をバルーンにより拡張させ、灌流圧を低下させることにより、約1時間30分間止血を行った。この間、数回、止血確認のためにバルーンを閉じて造影を行ったが、止血が完了していないことを確認した後は、速やかに再度バルーンを拡張し、最終的に18時30分ころ、造影にて止血を確認した(乙A6の2)。 穿孔を来した場合において、開胸した上で止血を行うのでは間に合わず、止血処置として適切なものではない。また、止血のためバルーンで血流を阻害したままでは、造影により止血の完了を確認することはできず、上記のとおり、バルーンを閉じた状態で造影して止血を確認しながら、10分間程度の拡張を3、4回繰り返すことは、止血措置として一般的に行われている手法である(乙B2)。 (2)止血に至るまでの出血は大量ではなく、出血により心タンポナーデを来したとは考えられないこと①上記(1)のとおり、止血措置を行っている間、止血確認の造影のためバルーンを閉じていた時間はごく短時間であること、②止血確認後、15分以上にわたってCのバイタルサインに問題はなく、心のう液の貯留は前面のみに認められ、かつ収縮期でも1センチメートルもなく、急変後の心エコーによっても増加していなかったこと(乙A2・18、19、23、41ページ、A3の5)、③開窓術を施行した際、心のうは全く張 前面のみに認められ、かつ収縮期でも1センチメートルもなく、急変後の心エコーによっても増加していなかったこと(乙A2・18、19、23、41ページ、A3の5)、③開窓術を施行した際、心のうは全く張っておらず、貯留液排出後も、出血は認められなかったこと(乙A2・19ページ)、⑤一般に、200ミリリットル程度の血液が心のう内に貯留した場合に心タンポナーデを起こすといわれているところ、開窓術により排出された心のう内の血液は50ミリリットル程度にすぎなかったこと、⑥心のう内の血液の排出後、出血は認められないこと、⑦心のう液貯留が原因で急変したのなら、心のう液が排出すれば速やかに血圧が復活するはずであるが、心のう液の排出後も血圧が復活しなかったことからすれば、出血により、心のう内に血液や心のう液が貯留したため、心タンポナーデを来したと認めることはできない。 原告らは、止血措置が完了するまでに、1300ミリリットル程度の出血を来したと主張するが、これは、亡Cがその時点で死亡していてもおかしくないほどの出血量であり、上記のとおり、止血完了後15分以上にわたってバイタルサインに問題がなかったことなど、急変前の亡Cの症状と明らかに矛盾する(乙A9・12ページ)。なお、原告らは、冠動脈の穿孔により心のう内に大量に流出した血液が、何らかの原因で、胸腔内に漏出したため、心タンポナーデを来さず、バイタルサインに変化がなかったことも考えられると主張しているが、心のうと胸腔を隔てる心膜は、強固な結合組織であり、開窓術を行う前に、このような事態が起こることはあり得ない(乙A13・8ページ)。そもそも、本件に関する解剖所見の血液貯留量は、以下のとおり、開窓術及び心マッサージを行った後のものであって、冠動脈の穿孔後、急変前の出血量を示すものではない。 ない(乙A13・8ページ)。そもそも、本件に関する解剖所見の血液貯留量は、以下のとおり、開窓術及び心マッサージを行った後のものであって、冠動脈の穿孔後、急変前の出血量を示すものではない。 本件では、約2時間30分も心マッサージを続けている。CPR(cardiopulmonaryresuscitation、心肺蘇生)は、心マッサージをして脳血流とともに冠血流を保持する措置であり、心マッサージを繰り返すことにより冠灌流圧が上昇することは常識的なことである(乙A13・8ページ、同添付文献2・49、50ページ)。また、心マッサージは、適切に施行しても骨折や気胸、血胸(胸膜腔へ血液が貯留した状態)などの合併症を十分来たしうる手技である(乙A13・8ページ、同添付文献2・59ページ)。 したがって、本件において、解剖の所見で認められる貯留血液の大部分は、止血に至るまでに発生したものではなく、急変後、心マッサージを長時間続けた結果、止血されていた冠動脈から再出血したり、血胸を起こすなどしたために生じたもので、心マッサージ(CPR)に起因するというべきである(乙A9・11、12ページ、乙A13・8ページ)。 原告らは、心マッサージにより、冠動脈内の血流を十分に確保することはできないことから、対角枝の穿孔部から1000cc以上の出血を起こさせた可能性は、医学的に全くあり得ないと主張している。しかしながら、冠動脈は、左室からではなく大動脈から起始しているのであり、心マッサージを続ければ、左室の血圧が0でも大動脈からの冠血流は保持されるのであるから、原告らの上記主張は前提に誤りがある。また、上述のとおり、解剖所見の血液貯留量は、すべて冠動脈から流れ出たものではなく、血胸による可能性も十分ある。さらに、原告は、心マッサージ中、 るのであるから、原告らの上記主張は前提に誤りがある。また、上述のとおり、解剖所見の血液貯留量は、すべて冠動脈から流れ出たものではなく、血胸による可能性も十分ある。さらに、原告は、心マッサージ中、輸血を全く行わず、補液もほとんど行っていないと主張するが、亡Cへの輸血は1u(140ミリリットル)、補液は4時間で400cc以上行っており(乙A2・23、24、56ページ)、上記主張はその前提に誤りがある。 なお、仮に心タンポナーデを起こしていたとしても、前記・のとおり、適切に止血措置を終えていたことに加え、上記のとおり止血完了後、亡Cの状態からすると、心タンポナーデが発生すると予見することは不可能であり、止血措置はもとより、死亡の結果について、被告病院の医師らにおいて責任を問われるべきものではない。 (3)カルテ上の記載についてカルテ上の「やはりeffusion少量ながらも心タンポナーデによる急変と判断」との記載は、急変後の心エコーにおいて、心のう液の貯留は多くは認められなかったが、しかし、前面にたまった心のう液で右心室虚脱ぎみになっていたことから(乙A2・19ページ)、心タンポナーデによるものということを否定し得るものではなく、そうであれば、開窓術を行う必要があったところ、同術は「心タンポナーデ」という診断がなければ施行できないものであることから、記載されたものである。原告らの主張する同号証1、2、5ページにおける記載にしても、上記のとおり心タンポナーデの可能性をも考え得るような状態であったことから記載されたものにすぎない。 しかしながら、上記・のとおり、後から客観的事実を総合して判断すれば、亡Cの死亡原因が心タンポナーデであったとはいえない。 (4)亡Cの死因は、突然出現した心室細動であると考えられること しかしながら、上記・のとおり、後から客観的事実を総合して判断すれば、亡Cの死亡原因が心タンポナーデであったとはいえない。 (4)亡Cの死因は、突然出現した心室細動であると考えられることア亡Cの死亡原因としては、3枝病変で複数回の心筋梗塞の既往があり、心機能がかなり低下していたことにより、突然、心室細動が出現したことによるものと考えられる。心室細動とは、心筋細胞が全く無秩序に随所で極めて速い周期で繰り返し興奮し、心室の部分的収縮が持続的に反復する状態をいい、その結果、心室は、全体としての収縮が生じず、有効な心駆血は起こらなくなり、脳を始めとする全身の血流が停止し、脈拍も振れなくなる状態、すなわち、心停止と同様の状態となる。心室細動の原因については、様々なものが挙げられているが、虚血性心疾患等器質的心疾患に、虚血、心機能の低下、交感神経活性の亢進等の誘引要素が生じることにより発症し、急速な循環不全に陥り、死に至ることとなるものである(乙B5、B6)。 イ亡Cにおいては、3枝病変で複数回心筋梗塞の既往があり、心機能がかなり低下した状態にあるなど(乙A2・16、17ページ)、器質的心疾患を抱えていたものであり、それに上記アの何らかの誘引要素が加わることにより心室細動が生じたものと考えられるが、心タンポナーデに至らないような出血が心臓に負担を与えるとは通常考えられず、したがって、Cにおける出血により上記心室細動の誘引となる虚血、心機能の低下、交感神経活性の亢進等が生じたとはいえない。 ウなお、前記のとおり、止血後、亡Cのバイタルサインに何ら問題は認められず、心タンポナーデを来しているとも考えられないような状態、すなわち、特に処置を行う必要性も認められないような状態にあったのであり、突然に心室細動を来し死に至 Cのバイタルサインに何ら問題は認められず、心タンポナーデを来しているとも考えられないような状態、すなわち、特に処置を行う必要性も認められないような状態にあったのであり、突然に心室細動を来し死に至ることを、被告病院の医師らにおいて予見することは不可能であり、また、回避のための処置もとり得るものではなかった。したがって、被告病院の医師らにおいて、亡Cに心室細動が生じ、亡Cが死亡したことについて責任を問われるものではない。 (5)第1対角枝の閉塞は心室細動の原因ではないこと(前記7(原告らの主張)(6)に対する反論)第1対角枝の完全閉塞は、心室細動の原因ではなく、その結果であるというべきであり、原告らの主張は失当である。 ア胸部痛等が第1対角枝の閉塞による虚血症状とはいえないこと一般に冠動脈造影検査で75%以上の狭窄血管があれば、通常日常生活の中で心筋虚血が発生するというのが医学的な常識であるところ、亡Cの場合、第1対角枝にもともと75%程度の狭窄が認められていたにもかかわらず、平成13年1月17日のPTCAによる治療から本件PTCAまでの期間に、当該狭窄を原因とする狭心症を窺わせる症状を呈していない。 このような経過からすると、亡Cの第1対角枝領域は、Cohnの分類上、Ⅱ型(心筋梗塞発症後に無症候性心筋虚血)に相当する領域であったと考えられる。CohnⅡ型の場合、心筋梗塞症のために、心筋の疼痛閾値が上昇するため、無症候性心筋虚血が生じるという刺激感受性又は伝導路障害機序も考えられる。また、亡Cの心エコー検査では、無収縮ないし低収縮を示している領域が心基部近傍に及んでおり、第1対角枝の領域も古い心筋梗塞を既に生じていた領域であったことからみても、亡Cの第1対角枝領域は、無症候性心筋虚血領域であった可能性が高い。 ないし低収縮を示している領域が心基部近傍に及んでおり、第1対角枝の領域も古い心筋梗塞を既に生じていた領域であったことからみても、亡Cの第1対角枝領域は、無症候性心筋虚血領域であった可能性が高い。 そうすると、これまで第1対角枝の領域において心筋梗塞が発生しても症状がなかったにもかかわらず、同年8月21日の午後6時50分頃に第1対角枝が閉塞したことにより突然、急激な症状が出たというのは不整合である。 また、亡Cは、胸部痛等が出現してから間もなく心室細動となっており、この胸部痛等の症状が第1対角枝の閉塞によるものだとすれば、心室細動に至る時間があまりに短すぎる。そもそも、冠動脈の閉塞は20分以上続かなければ梗塞を来さないのであり、数分間の心筋虚血で心室細動になることは稀である。 イ第1対角枝の閉塞は、心室細動の結果であること上記のとおり、亡Cの第1対角枝の分岐部には75%の狭窄があり、心室細動時には冠血流がほぼ0になることから、もともと起始部に高度狭窄病変を有する第1対角枝がそれを契機として閉塞することも十分あり得ることである。それに加え、亡Cには心室細動の出現後に心マッサージにより胸骨への圧迫が繰り返し実施されているところ、この胸骨の真裏にちょうど第1対角枝が位置しているため、閉塞の原因としては、心マッサージの影響もあるものと考えられる。 いずれにせよ、第1対角枝の完全閉塞は、心室細動の結果として起こったものと考えられ、亡Cの死因は、第1対角枝の閉塞によるものではなく、突然起こった原因不明の心室細動によるものというべきである。 ウ被告らに予見可能性がないことなお、仮に、第1対角枝の閉塞により、数分間の虚血症状によって心室細動を来したとしても、上述したところによれば、A医師が、ガイドワイヤ いうべきである。 ウ被告らに予見可能性がないことなお、仮に、第1対角枝の閉塞により、数分間の虚血症状によって心室細動を来したとしても、上述したところによれば、A医師が、ガイドワイヤーを進め、バルーンを拡張し、止血措置によって心タンポナーデに至らない程度の出血にとどめたにもかかわらず、第1対角枝が閉塞すること、また数分間の虚血症状で心室細動が発生することについて、具体的に予見することは不可能である。 8 損害額(原告らの主張)(1)亡Cの損害ア逸失利益 1468万0423円(ア)基礎年収 295万0483円(平成12年の支払給与総額、甲C1)(イ)生活費控除 30パーセント(ウ)本件事故当時(亡C満65歳)から就労終期までの就労可能年数は9年間(但し平均余命の2分の1)で、これに対応するライプニッツ係数は7.108である。 計算式 (ア)×(1-(イ))×(ウ)=1468万0423円イ慰謝料 3000万円亡Cは、手術の成功により職場復帰を果たし、検査入院した際も、以前PTCAを実施した右冠動脈及び左回旋枝については開存していて良好な状態だったというのであり、自らの健康につき格別不安を抱く必要のない状況であった。また、亡Cは、生命の危険の存在を知っていれば、さらなる手術に同意することはなかった。しかるに、被告B及び同Aが、生命の危険の存在を説明することなく、本来行う必要のない左前下行枝に対するPTCAを実施し、被告B及び同Aのミスにより本件事故が発生し、亡Cを死に至らしめたのであり、その無念の思いは計り知れない。 本件事故によって死亡した亡Cに対する慰謝料は、3000万円が相当である。 ウ弁護士費用 400万円(2)原告ら固有の損害ア慰謝料各40 り、その無念の思いは計り知れない。 本件事故によって死亡した亡Cに対する慰謝料は、3000万円が相当である。 ウ弁護士費用 400万円(2)原告ら固有の損害ア慰謝料各400万円原告D(以下「原告D」という。)は、被告B及び同Aによる本件手術が失敗し、亡Cの容態が急変する様子を目の当たりにし、駆け付けた原告Eと共に亡Cの死を見届けることとなり、原告D及び同Eの受けた衝撃は極めて大きい。 そして、被告Aによる説明は、原告らにとって到底納得できるものではなく、加えて、原告Eの法的措置をとるとの発言に対して、被告Aは、憮然たる態度で、警察を呼ぶ、解剖をするなどと応じた。なお、原告らには解剖の結果もいまだ知らされていないのであり、原告らはやり場のない怒りと悲しみに苦しみ続けている。 原告らに対する慰謝料は、各400万円が相当である(甲A9)。 イ葬儀費用 170万円葬儀費用は原告らが各2分の1の割合で負担した。 ウ弁護士費用各40万円(被告らの主張)(1)前記のとおり、Cは、平成13年1月11日及び同月17日のPTCA成功により、右冠動脈の近位部の80パーセントの狭窄を10パーセントに、遠位部99パーセントの狭窄を30パーセントに改善したものの、いつ高度再狭窄や再閉塞が生じるかわからない非常に重篤な状態であり、左前下行枝は100パーセント閉塞していた。また、上記3枝病変に加えて、左心室機能の低下が認められた。このような場合の4年生存率は42パーセントと、予後は極めて不良である。 (2)術後の経過について原告らが、本訴提起の時点で、K大学において行われた司法解剖の結果を知らされていなかったとしても、これによって原告らが被った精神的苦痛は、本件PTCAの施行との間 (2)術後の経過について原告らが、本訴提起の時点で、K大学において行われた司法解剖の結果を知らされていなかったとしても、これによって原告らが被った精神的苦痛は、本件PTCAの施行との間に相当因果関係を有するものとはいえない。 (3)その他、過失に関する主張、術前及び術後における医師らの説明内容等については前記7(被告らの主張)までにおいて反論したとおりであり、その余の損害に関する主張は不知ないし争う。
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