昭和28(う)367 労働基準法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和28年11月10日 札幌高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      被告人Aの本件控訴は棄却する。      原判決中被告人B株式会社に対する部分を破棄する。      被告人B株式会社を罰金拾万円に処する。      原審における訴訟費用は被

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判決文本文2,849 文字)

主文 被告人Aの本件控訴は棄却する。 原判決中被告人B株式会社に対する部分を破棄する。 被告人B株式会社を罰金拾万円に処する。 原審における訴訟費用は被告人会社と被告人Aの平等負担とする。 理由 弁護人小笠原六郎の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。 弁護人の控訴趣意第一点(被告人Aに関する事実誤認及び法令の適用の誤)について、所論の要旨は、被告人Aは被告人会社と雇傭契約を結んだことがなく、また被告人会社から俸給手当その他如何なる名義をもつてするを問わす金銭の交付を受けた事実はなく、たまたまCの養父としてDに同居していたに過ぎない関係であるから被告人に対しては労働基準法第十条の適用を見るべき身分関係がない。また被告人Aが坑夫E外五名に対し暴力を加え出炭成績を上げるため労働を強制した事実はない。これについては坑夫E外五名の各証言があるが、これらの者は鉄道の各駅を根城として浮浪していたルンペンに過ぎないものであつて、もとより労働を厭う徒輩であるからこれらの証言は直ちに事実認定の資料とはなり得ない。たとえ被告人Aが労務者に労働を強制したとしても同人は被告人会社と労務につき無関係の立場にありまた身分関係においても何等の関係もないものであるから本罪を構成しない。 と主張するの<要旨>であるが、労働基準法第十条にいわゆる「その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行</要旨>為をするすべての者」とは雇雇契約に基くと否とを問わず事業主の経営する事業の労働者に関する事項につき一定の権限を有し事業主の利益のために行為をするすべての者と解すべきところ、原判決挙示の証拠を綜合すると、被告人Aは被告人会社F礦業所で労務者が居ずかず不足する 営する事業の労働者に関する事項につき一定の権限を有し事業主の利益のために行為をするすべての者と解すべきところ、原判決挙示の証拠を綜合すると、被告人Aは被告人会社F礦業所で労務者が居ずかず不足するため昭和二十五年十二月初旬頃被告人会社社長Gと同会社F礦業所長Hとが相談の結果使用するに至つた者で、被告人Aは社長Gより採炭及びこれに関する労務管理の権限を与えられ右礦業所に入り被告人会社の利益のために従来の労務者とは別個に飯場をもち自らその管理者となり飯場を統括し採炭の課程の割当についても加つてこれを定め且つ自己の飯場の労務管理も同人においてなし、他に世話役を置き会社の労務者を指揮監督していたことが認められ、被告人Aは労働基準法第十条にいわゆる使用者たることが明かである。そして強制労働の点につき原判決拳示の証拠を綜合すると、原判示事実が十分認められ右は労働基準法第五条にいわゆる精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて同人等の意思に反して労働を強制したものに外ならないのであつて、原判決は措辞不十分であるが被告人Aが使用者として労働を強制したものと判断したことは明かであるから所論のような違法はない。所論は独自の見解の下に裁判所の証拠の取捨及びその価値判断を攻撃するもので論旨は採用し得ない。 同第二点(被告人会社に対する事実誤認及び法令の適用の誤)について、被告人Aが労働基準法第十条にいわゆる使用者に該当し且つ労働者に対し労働を強制したものであることは前段説示のとおりであるが、原判決は「被告人Aは右F礦業所において労働者と共に飯場に起居しつつ、坑夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において被告会社のためにその実施に参加していたものであるところ」と事実を認定し被告人会社に対し労働基準法第百二十一条第一項に該当するものとして有罪 夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において被告会社のためにその実施に参加していたものであるところ」と事実を認定し被告人会社に対し労働基準法第百二十一条第一項に該当するものとして有罪の言渡をしているのである。しかし、同法第百二十一条第一項の罪は労働基準法の違反行為をした者が当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては行為者を罰するの外事業主に対しても各本条において定める罰金刑を科する両罰規定であつて、本件について見ると被告人Aが被告人会社のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合に被告人会社を処罰し得るのであつて、そうでない場合は被告人会社を処罰し得ないのである。ところが原判決は被告人Aは労働者と共に飯場に起居しつつ、坑夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において被告人会社のためにその実施に参加していたものであると判示するだけであつて同人が被告人会社の代理人、使用人その他の従業者であつたか否かの点については何ら確定するところなく漫然と労働基準法第百二十一条にあたるものとして同条の罪に問擬しているのである。して見ると原判決には理由を附さない違法があるといわなければならないので原判決ば破棄を免れない。この意味において論旨は理由がある。 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により被告人Aの本件控訴は棄却すべきものとし、刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十八条第四号により原判決中被告人会社に対する部分を破棄し同法第四百条但書により更に判決する。 当裁判所において認定した罪となるべき事実は、原判示事実中冒頭の「被告会社は」から「その実施に参加していた者であるところ」までを「被告会社は、肩書地に事務所を有し、鉱礦物の採取並に売買を事業とし、宗谷郡a村字 おいて認定した罪となるべき事実は、原判示事実中冒頭の「被告会社は」から「その実施に参加していた者であるところ」までを「被告会社は、肩書地に事務所を有し、鉱礦物の採取並に売買を事業とし、宗谷郡a村字bに同社F礦業所を設け同所において出炭事業を行つているものであり、被告人Aは昭利二十五年十二月初頃より被告人会社の使用人として、右F礦業所において、通称Dを監理し坑夫等とともに右飯場に起居しつつ、被告人会社のために採炭業務につき自己の飯場に属する坑夫等の労働に関し指揮監督の任務に当つていたものであるが」と訂正し、その余の事実及び証拠は原判示と同一であるから、これを引用する。 法令の適用判示被告人Aの所為は、被告人会社の使用人であつていずれも労働基準法第五条第十条第百十七条刑法第六十条に該当し、同法第四十五条前段、第四十七条第十条に則り処断すべきものであるから、被告人会社に対し労働基準法第百二十一条第一項第百十七条、刑法第四十五条前段、第四十八条第二項により各罪の罰金の合算額以下において罰金十万円に処するものとし、原審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項により主文第四項のとおり負担させることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事熊谷直之助判事成智寿朗判事笠井寅雄)

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