主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人藤沢抱一,同梶山正三,同小島延夫,同薦田哲,同佐々木幸孝の上告理由について 1 本件工事が行われた経緯及び本件工事の内容に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り,上記事実関係の下においては,被上告人B1化学工業株式会社(以下「被上告人B1」という。)が本件処理施設を所有して本件土地を占有しているとはいえないとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうに帰し,採用することができない。 2 ところで,原審は,上告人らの被上告人B2に対する怠る事実の違法確認を求める訴えにつき,被上告人B1らが本件土地を占有しているといえないことを根拠に,怠る事実が不存在であるから訴えを不適法として却下すべきものとしている。 上記訴えは,地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求(以下「3号請求」という。)であり,東京都の住民である上告人らが,東京都は本件土地の所有権に基づく妨害排除請求として本件土地に埋設された本件処理施設の収去請求をすることができるところ,被上告人B2が被上告人B1らに対してこの収去請求権を行使しないことは東京都の財産である本件土地の管理を違法に怠る事実に当たるとして,被上告人B2に対して,その違法確認を求めるものである。そして,上記訴えは,東京都に代位して怠る事実の相手方である被上告人B1らに対して本件処理施設の収去を求める同項4号に基づく請求(以下「4号請求」という。)に係る訴えと- 1 -併合提起されているものであるが,同項が両請求の間に優先順位を定めて 手方である被上告人B1らに対して本件処理施設の収去を求める同項4号に基づく請求(以下「4号請求」という。)に係る訴えと- 1 -併合提起されているものであるが,同項が両請求の間に優先順位を定めていないことや両請求の当事者,効果の相異等にかんがみると,4号請求との関係において3号請求を補充的なものと解する根拠はないから,【要旨1】4号請求がその代位請求の対象となっている当該請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める3号請求に係る訴えに併合提起されていることにより,当該3号請求に係る訴えが不適法な訴えとなるものと解すべきではない。この点に関する原審の判断は正当である。 しかしながら,【要旨2】東京都が所有する本件土地に本件処理施設が存在しているにもかかわらず被上告人B2がその収去請求をしていない本件においては,上告人らが財産の管理を怠る事実として主張する本件処理施設につき収去を請求しないという不作為自体は存在しているというべきであり,被上告人B1らが本件処理施設を所有して本件土地を占有しているか否かという点は,上記収去請求権の有無に関する本案の問題というべきであるから,怠る事実が不存在であることを理由に被上告人B2に対する訴えを不適法とした原審の判断は是認することができない。 もっとも,記録によれば,上記訴えは,上告人らの本件監査請求につき監査の結果の通知がされた後1年以上を経過した平成7年6月12日に訴えの追加的変更として申し立てられたものであり,上告人らが出訴期間内に提起した当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視して出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるということもできないから,地方自治法242条の2第2項所定の出訴期間を徒過して提起された不適法な訴えといわざるを得ない。 したがって,上記訴えを不適法 欠けるところがないと解すべき特段の事情があるということもできないから,地方自治法242条の2第2項所定の出訴期間を徒過して提起された不適法な訴えといわざるを得ない。 したがって,上記訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断は,結論において正当である。 よって,上告人らの被上告人B1らに対する本件処理施設の収去請求に関して裁判官藤井正雄の補足意見及び裁判官町田顯の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 - 2 -裁判官藤井正雄の補足意見は,次のとおりである。 私は,町田裁判官の反対意見にかんがみ,本件訴訟の住民訴訟としての適法性について,意見を補足しておきたい。 本件訴訟において,上告人らは,被上告人B1らが何らの権原なくして東京都の所有地である本件土地に本件工事を実施し,本件処理施設を埋設して本件土地を不法に占有しているにもかかわらず,被上告人B2が本件処理施設の収去を請求せず,違法に本件土地の管理を怠ったと主張しており,被上告人B2が被上告人B1との協定に基づき被上告人B1らをして本件土地において六価クロム鉱さいの処理を行わせたとは主張していない。すなわち,上告人らは,被上告人B2には違法に財産の管理を怠る事実があるとして請求を構成しているのであり,被上告人B2による違法な財産管理行為があったとして請求を構成しているのではないのである。 そして,記録によれば,本件土地は,平成4年に東京都市計画公園の区域に追加された土地で,東京都の行政財産であるが,本件工事当時,都市公園等として公物管理がされていたことはうかがわれない。このような土地が他人に不法占拠され,財産的価値が減少しているのに,これを放置し,維持保全上の適切な措置を執らないときは,その財産的管理を怠ることに当たるというべきである。 ことはうかがわれない。このような土地が他人に不法占拠され,財産的価値が減少しているのに,これを放置し,維持保全上の適切な措置を執らないときは,その財産的管理を怠ることに当たるというべきである。 そうすると,上告人らが被上告人B1らに対し東京都に代位して本件土地の所有権に基づく妨害排除請求として本件処理施設の収去を求める訴えは,このような意味において財務会計上の怠る事実を対象としてとらえているものというべきであり,非財務的行為を対象とする不適法な訴えであると解するのは相当でないと考える。 裁判官町田顯の反対意見は,次のとおりである。 私は,本件訴えは,財務会計上の行為又は事実を対象とするものではなく,いずれも不適法な訴えと解すべきものと考える。その理由は,次のとおりである。 原審が適法に確定した事実関係によれば,①東京都は,被上告人B1の工場から- 3 -排出され,本件区域に埋め立てられている六価クロム鉱さいの処理が環境保全と本件区域における防災拠点建設事業の推進のため不可欠であるとして,同被上告人と協定を結び,同被上告人において,東京都の指導の下に,その所有する工場跡地内で処理を行ってきた,②昭和63年ころにはこの工場跡地の処理容量が限界に達したため,東京都環境保全局において,同建設局所管の本件土地を含む都有地の地下にコンクリート製の処理槽を設置し,これに六価クロム鉱さいを封じ込める方法によって処理することとし,平成5年9月に環境保全局,建設局及び同被上告人の各担当者が協議し,その作業は,環境保全局の指導の下に,同被上告人が原因者負担の見地から費用を負担して実施することが合意された,③この合意に基づき,環境保全局長は,建設局長から本件土地を六価クロム鉱さいの処理地として使用することについて使用承認を受け,同被上告人に指示して本件工 地から費用を負担して実施することが合意された,③この合意に基づき,環境保全局長は,建設局長から本件土地を六価クロム鉱さいの処理地として使用することについて使用承認を受け,同被上告人に指示して本件工事を施工させたというのであり,したがって,本件土地に埋設された本件処理施設は,環境保全局が費用については同被上告人に負担させながらも,自らの工事として埋設したもので,同被上告人に,これについての所有権その他の権利が発生する余地はなく,また本件土地について占有の有無又は使用権原の存否の問題も生じないものというべきである。 以上によれば,本件工事及び本件土地の使用は,環境汚染対策という環境行政の見地から行われたものであり,本件土地の財産的価値の維持,保全という財務的見地から行われる財務会計上の行為に当たらず,地方自治法242条の2に定める住民訴訟の対象となるものと解することはできない(最高裁昭和62年(行ツ)第22号平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。住民訴訟の対象となる財務会計上の行為に当たるかどうかは,訴訟要件の問題であるから,裁判所は,問題とされた行為の実体に基づき,職権でも調査,判断すべきものであり,当事者の主張によって,左右されるものではない。 そうすると,被上告人B1らに対する本件処理施設の収去請求に係る訴えも不適- 4 -法というべきである。これを適法な訴えとして本案判断をした原審及び第1審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから,原判決中この部分を破棄し,第1審判決中当該部分を取り消し,上記請求に係る訴えを却下すべきである。 (裁判長裁判官藤井正雄裁判官井嶋一友裁判官町田顯裁判官深澤武久)- 5 - ,上記請求に係る訴えを却下すべきである。 (裁判長裁判官藤井正雄裁判官井嶋一友裁判官町田顯裁判官深澤武久)- 5 -
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