平成18(行コ)238 運転免許停止処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第630号)

裁判年月日・裁判所
平成19年1月31日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文6,062 文字)

-- 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 処分行政庁が控訴人に対して平成15年5月16日付けでした同日から30日間運転免許の効力を停止する処分を取り消す。 第2事案の概要 本件は,控訴人が,交差点において後方の安全確認を十分に行うことなく,普通乗用自動車を後退させ,同車両の後方に立っていた歩行者に同車両を衝突させて同人に約20日間の安静加療を要する腰椎捻挫の傷害を負わせる交通事故を発生させたとして,処分行政庁が控訴人に対して30日間運転免許の効力を停止する処分(以下「本件処分」という)をしたため,控訴人が,上記違。 ,,反行為はしていないし歩行者の傷害は上記衝突によって生じたものではなくその程度も15日以上の加療を要するものではないと主張して,本件処分の取消しを求めた事件である。 原判決は,控訴人は,本件処分が終了した後1年以上,無違反かつ無処分で経過したことから,将来道路交通法上の処分が行われる際に,本件処分が前歴として考慮されるおそれは消滅しており,この点においては,本件処分により生ずる法律上の不利益は解消しているし,免許証の有効期間の更新(以下「免許証の更新」という)に当たり「違反運転者等」に区分されることによる不。 利益や控訴人が受けている一般乗用旅客自動車運送事業の許可に付された期限の更新(以下「一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新」という)に。 当たって受ける不利益は,本件処分の取消しを求める訴えの利益を基礎付けるものではないとして,本件訴えを却下したため,控訴人が控訴した。 -- 事案の概要の詳細は,当審における控訴人の主張として3項のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案 るものではないとして,本件訴えを却下したため,控訴人が控訴した。 -- 事案の概要の詳細は,当審における控訴人の主張として3項のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人の主張本件処分が取り消されれば,本件処分後に行われる最初の免許証の更新に当たり「違反運転者等」に区分されることによる不利益や一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新に当たって新たに付される期限が短縮される不利益を回避できる点において,その取消しを求める訴えの利益が認められる。以下に詳述する。 (1)免許証の更新に当たっての運転者の区分に係る不利益回避ア道路交通法は,免許証の交付又は更新を受けた者を「優良運転者「一」,般運転者」及び「違反運転者等」に区分して,更新後の免許証の有効期間を定めており,更新時の講習手数料もこの区分に応じて異なっている。このため,免許証の更新に当たって「違反運転者等」に区分されると「優,,良運転者」に区分される場合と比べて更新後の免許証の有効期間及び更新時の講習手数料について法律上の不利益を受けることになる。 イ上記区分に当たっては,更新前の免許証の有効期間が満了する日の直前のその者の誕生日の40日前の日前5年間(以下「考慮期間」という)。 の違反行為の有無が要件とされており,違反行為による処分の有無は要件とはされてはいないが,本件処分の取消判決の理由中で,本件処分の理由となった違反行為(以下「本件違反行為」という)がないという判断が。 示されれば,本件処分後に行われる最初の免許証の更新時における運転者の区分に事実上大きな影響を及ぼすことは疑いがない。このような事実上の関係があるにもかかわらず,これを判決の拘束力に含めな 断が。 示されれば,本件処分後に行われる最初の免許証の更新時における運転者の区分に事実上大きな影響を及ぼすことは疑いがない。このような事実上の関係があるにもかかわらず,これを判決の拘束力に含めない解釈は不相当である。本件処分の取消判決の拘束力によって,アの不利益を避けることができる点において,本件訴えの利益は肯定されるべきである。 -- ウなお,考慮期間内に別の違反行為が生ずる可能性は否定できないが,そのことの故に本件訴えの利益を否定する立論は,本件処分の取消しには訴の利益がないことを前提とするものであって,循環論法のそしりを免れない。 (2)一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新に当たっての不利益回避関東運輸局長が公示する「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー事業に限る)の許可等に付された期限の更新申請の審査及び取扱。 基準(以下「審査基準」という)本文は,一般乗用旅客自動車運送事業」。 の許可期限の更新に当たって「法令違反行為等の有無」を審査するものとした上「審査基準」別表の区分に応じて更新後の許可期限を付するものと定,めているところ,同別表は,更新後の許可期限の審査に当たって「違反に,よる処分がある」か否かを審査基準としていることが明らかである。したがって,一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新に当たり,新たに期限を5年間とする許可を得る地位を回復するために,本件処分の取消しを求める訴えの利益がある。 道路交通法と道路運送法とはその規制目的を異にし,免許証の更新と一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新とはその趣旨を異にする以上,道路交通法上の運転者の区分は違反行為歴をその区分の基準とし,道路運送法上の許可期限は処分歴をその付与の基準としているとの異なった解釈となることは何ら不合理では 限の更新とはその趣旨を異にする以上,道路交通法上の運転者の区分は違反行為歴をその区分の基準とし,道路運送法上の許可期限は処分歴をその付与の基準としているとの異なった解釈となることは何ら不合理ではない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,本件訴えは,訴えの利益を欠き,不適法として却下を免れないものと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」の1(1)及び同(2)のうちイ(ウ)bまで(原判決3頁18行目から6頁24行目まで)を引用するほかは,以下に説示するとおりである(ただし,原判決6頁1行目及び17行目に「認定」とあるのをそれぞれ「区分」と改め-- る。 。) 免許証の更新に当たっての運転者の区分に係る不利益回避控訴人は,本件処分後に行われる最初の免許証の更新に当たって「違反運転者等」に区分されることによる法律上の不利益を回避できる点に本件処分の取消しを求める利益があると主張する。 (1)道路交通法92条の2第1項は免許証の交付又は更新を受けた者を優,「良運転者「一般運転者」及び「違反運転者等」に区分して,それぞれの」,更新後の免許証の有効期間を定めており,また,同法108条の2第1項11号,112条1項12号,道路交通法施行令43条1項の表,道路交通法施行規則38条12項1号の表,警視庁関係手数料条例2条1項,同条例別表第二の一の一二によれば,上記区分に応じて免許証の更新時に受けるべき,,講習の時間ひいては講習に係る手数料の額が異なることになるのであって控訴人が,本件処分後に行われる最初の免許証の更新時に,道路交通法所定の「違反運転者等」に区分されたならば「優良運転者」に区分される場合,に比して法律上の不利益を被ることになるのは明らかである。しかし,上記区分は,考慮期間内 最初の免許証の更新時に,道路交通法所定の「違反運転者等」に区分されたならば「優良運転者」に区分される場合,に比して法律上の不利益を被ることになるのは明らかである。しかし,上記区分は,考慮期間内において違反行為又は道路交通法施行令別表第二の二に掲げる行為(以下「違反行為等」という)をしたことがあるか否かを基準。 としてされるのであって,運転免許の効力を停止する処分を受けたか否かを基準としてされるものではないから,本件処分を取り消したからといって,控訴人が本件処分後に行われる最初の免許証の更新に当たり,考慮期間内に違反行為等をしたことがない者として「優良運転者」に区分される法的地,位を回復すると解することはできない。以上のことは,上記引用に係る原判決「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」の1(2)イ(イ),(ウ)のaに説示のとおりである。 (2)控訴人は,本件処分の取消判決の理由中において,本件違反行為の有無について司法判断が示されれば,判決の拘束力によって,本件処分後に行わ-- れる最初の免許証の更新時の「優良運転者」に区分されることになるとの趣旨の主張をするが,処分を取り消す判決には,当該事件について当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する効力が認められているにすぎない(行政事件訴訟法33条。本件違反行為が存在しないとの事実認定の下に,本)件処分を取り消す旨の判決がされたからといって,全く異なる行政手続である免許証の更新の手続上,本件違反行為がないことを前提とした区分がされると解すべき根拠を見出すことはできない。しかも,甲14号証の1,2及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件処分後に行われた最初の免許証の更新に当たり,既に「違反運転者等」に区分された上で「満了日等の後,,その者の3回目の誕生日から起 かも,甲14号証の1,2及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件処分後に行われた最初の免許証の更新に当たり,既に「違反運転者等」に区分された上で「満了日等の後,,その者の3回目の誕生日から起算して1月を経過する日」までを有効期限とする免許証の更新を受けていることが明らかであって,本件処分の取消判決の理由中の判断が本件処分後最初に行われる免許証の更新の手続に及ぼす効力を問題にする余地は失われたものというほかはない。 (3)以上によれば本件処分後に行われる最初の免許証の更新に当たって違,「反運転者等」に区分されることによる法律上の不利益を回避できる点において本件処分の取消しを求める利益があると認めることはできない。 ちなみに,公安委員会は,免許を現に受けている者に対し,更新期間その他免許証の更新の申請に係る事務の円滑な実施を図るための必要な事項を記(),載した書面を送付するものとされているところ道路交通法101条3項免許を現に受けている者が考慮期間内において運転免許の停止処分を受けたことがある場合はもとより,考慮期間内に違反行為があったとして道路交通法施行令別表第一に定める点数が付されている場合には,その者が考慮期間内に違反行為を行ったことを前提として,上記書面には,その者が更新を受ける日において「優良運転者」に区分される旨の記載をしないことが明らかである。そして,既に免許証の更新を受けたことのある者が,違反行為があったとされる時の後最初の免許証の更新時において「優良運転者」に区分,-- ,「」される旨の記載がある書面の送付を受けていない場合には違反運転者等に区分されることを前提として講習を受けなければ免許証が更新されることはないし,更新後の免許証の有効期限も「違反運転者等」に区分される者に対する期限に限ら の送付を受けていない場合には違反運転者等に区分されることを前提として講習を受けなければ免許証が更新されることはないし,更新後の免許証の有効期限も「違反運転者等」に区分される者に対する期限に限られることになる。このような不利益を回避するためには,違反行為があったとされる時の後最初に行われる免許証の更新に先だって,あらかじめ,その者の住所地の存する都道府県を被告として,その者が当該違反行為を行っていないことの確認を求める予防的確認訴訟を認めるなどの法的救済措置を認めるのが相当というべきである。原判決は,免許証の更新時における運転者の区分に係る認定を処分ととらえてその取消しを求めるべきであるというが,上記書面を受領した後免許証の更新期間内に,区分の変更を実現し,上記不利益を回避することは現実には不可能であることを考慮すると,予防的確認訴訟につき,確認の利益を肯定することができるものといえよう。 一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新に当たっての不利益回避控訴人は,一般乗用旅客自動車運送事業の許可期限の更新に当たっての不利益を回避できる点に本件処分の取消しを求める利益があると主張する。 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)を経営しようとする者は,国土交通大臣の許可を受けなければならず(道路運送法4条,上記許)可については,条件又は期限を付することができるものとされている(同法86条1項。同法88条2項,道路運送法施行令1条1項により,国土交通大)臣から上記許可の権限を委任された地方運輸局長は,上記各規定に基づき,期限を付して一般乗用旅客自動車運送事業の許可を行っているところ,上記各規定の定めるところによれば,地方運輸局長が許可にどのような期限を 上記許可の権限を委任された地方運輸局長は,上記各規定に基づき,期限を付して一般乗用旅客自動車運送事業の許可を行っているところ,上記各規定の定めるところによれば,地方運輸局長が許可にどのような期限を付するかは,その裁量に委ねられていると解される。そして,乙4号証によれば,関東運輸局長は,審査基準を公示していることが明らかであるが,上記公示は,道-- 路運送法4条,86条1項により認められた関東運輸局長の処分の妥当性を確保するために,上記裁量権行使についての具体的な基準を内部的に定め,これ,,,を公表したものにすぎずこれが法令の性質を有すると解することはできず所定の期間内に道路交通法に基づく処分を受けたことがないからといって,当該事業者に,特定の許可期限を付した許可が与えられる法的地位が認められているわけではない。したがって,仮に,上記公示において,許可期限が満了する日以前の所定の期間における道路交通法に基づく処分の有無が裁量権行使の考慮要素とされているとしても,そのことをもって,本件処分の取消しを求める法律上の利益を基礎付けることはできない。 仮に,本件処分が事実の基礎を欠くものであった場合には,直截に,本件処分がされたことを考慮した上でされた一般乗用旅客自動車運送事業の許可について,行政庁の裁量権の行使の適否を争うべきものと解するのが相当である。 以上によれば,原判決は結論において相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官小林克已裁判官小宮山茂樹裁判官綿引万里子-- 引万里子

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