平成24(行ケ)10322 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年4月26日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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判決文本文28,447 文字)

- 1 -平成25年4月26日判決言渡平成24年(行ケ)第10322号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年4月15日判決 原告サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁理士渡辺隆同木内敬二同野村進同松尾直樹 被告特許庁長官 指定代理人中塚直樹同飯野茂同樋口信宏同大橋信彦主文 1 特許庁が不服2010-1489号事件について平成24年5月1日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 - 2 -事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯訴外コーニンクレッカフィリップスエレクトロニクスエヌヴィ(以下「訴外会社」という。)は,平成14年12月16日出願の国際特許出願に基づく優先権を主張して,平成15年12月12日,発明の名称を「GPSデバイスに対する情報の位置に依存した表示」とする発明について特許出願(以下「本願」といい,その明細書(甲2)を「本願明細書」 に基づく優先権を主張して,平成15年12月12日,発明の名称を「GPSデバイスに対する情報の位置に依存した表示」とする発明について特許出願(以下「本願」といい,その明細書(甲2)を「本願明細書」という。)をしたが,平成21年10月14日付けで拒絶の査定を受けたので,平成22年1月22日,これに対する不服の審判を請求した(不服2010-1489号)。 原告は,平成24年2月8日,訴外会社から本願に係る発明について特許を受ける権利を承継し,同年3月2日,特許庁に対し,出願人名義変更届を提出した。 特許庁は,平成24年5月1日,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は同月15日原告に送達された。 2 特許請求の範囲の請求項1の記載平成24年1月20日付け手続補正書(甲3)による補正後の特許請求の範囲の請求項1には,次の記載がある(以下,請求項1記載の発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセットを格納するメモリ媒体を備える装置であって,前記メモリ媒体は,中央演算処理装置と,出力デバイスとを有するGPSデバイスに動作可能に接続され,かつ前記GPSデバイスの中央演算処理装置は,現在のGPSデバイス位置を計算し,かつ前記GPSデバイスのユーザから任意の位- 3 -置および前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプを受け入れ,前記GPSデバイスの前記中央演算処理装置は,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記複数のGPSアドバイスデータセットと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デ 意の位置を,前記複数のGPSアドバイスデータセットと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択し,前記GPSデバイスの前記中央演算処理装置は,前記ユーザ入力されたGPSアドバイスタイプを,前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスタイプと比較し,前記ユーザ入力されたGPSアドバイスタイプが前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスタイプと一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択する装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写し記載のとおりである。その要点は,本願発明は,特表平8-510578号公報(甲1。以下「引用刊行物1」ともいい,これに記載された発明を「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (1) 引用発明「音声情報及び視覚情報を格納するデータベースを備える装置であって,前記データベースは,プロセッサと,データを出力するための手段とを有する,GPS受信機を有するポータブル情報システムに備えられており,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度および興味のあるデータのタイプを受け入れ,現在の位置或いは前記所望の場所に対応するデータが検索され,また前記興味のあるデータのタイプを検索,出力する装置。」- 4 -な 望の場所の緯度/経度および興味のあるデータのタイプを受け入れ,現在の位置或いは前記所望の場所に対応するデータが検索され,また前記興味のあるデータのタイプを検索,出力する装置。」- 4 -なお,審決の引用発明の認定中「ユーザー」とあるのは,「ユーザ」の誤記と解されるので,以下「ユーザ」と表記する。 (2) 一致点データを格納するメモリ媒体を備える装置であって,前記メモリ媒体は,中央演算処理装置と,出力デバイスとを有するGPSデバイスに動作可能に接続され,現在のGPSデバイス位置が計算され,かつ前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記データと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記データを選択し,前記ユーザ入力されたデータのタイプを比較し,一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記データを選択する装置。 (3) 相違点ア相違点1本願発明において,格納されるデータが「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む少なくとも1つのGPSアドバイスデータセット」とされているのに対し,引用発明においてはデータの構造は不明である点。 イ相違点2本願発明においては,「中央演算処理装置」が位置計算等の処理を行っているのに対し,引用発明では「プロセッサ」が処理を行っているのか,他の処理装置が処理を行っているのかが明確ではない点。 第3 原告主張の取消事由審決には,本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り(取消事由1),相違点1についての容易想到性の判断の誤り(取消事由2 理を行っているのかが明確ではない点。 第3 原告主張の取消事由審決には,本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り(取消事由1),相違点1についての容易想到性の判断の誤り(取消事由2)があり,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は違法であり,取り消されるべ- 5 -きである。 1 取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り)(1) 審決は,引用発明と本願発明の一致点として,「前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ」ることを認定しているが,この認定は誤りである。 ア引用刊行物1の2頁2~18行には,「1.データベースと,内蔵されていることが好ましい,・・・ユーザに関連する位置データを決定するための手段と,・・・データベースから・・・自動的に検索するための手段と,ユーザが興味あるデータを選択またはプリセットするための手段と,検索されたデータを出力するための手段とを備えているポータブル情報システム。」と記載されており,ここに,「ユーザが興味あるデータを選択またはプリセットするための手段」という記載があることから,引用発明のポータブル情報システムは,ユーザから「興味あるデータ」を受け入れるものであることは読み取れるが,ポータブル情報システムを構成する他の手段の記載を参照しても,「興味あるデータ」が何らかの位置に対応付けて選択またはプリセットされるものであることは読み取れない。 イ上記の記載のほかに,引用刊行物1の6頁17~21行には,データのタイプを受け入れることに関して,「ユーザは,彼にとって最も興味のあるデータのタイプを予め選択することができ,ユーザの位置・・・が変化するにつれて,このことはGPS受信機によって検出され,そして当該シ プを受け入れることに関して,「ユーザは,彼にとって最も興味のあるデータのタイプを予め選択することができ,ユーザの位置・・・が変化するにつれて,このことはGPS受信機によって検出され,そして当該システムはデータベースから好適なデータを自動的に検索する。」と記載されており,この記載によれば,引用発明のポータブル情報システムは,ユーザから「データのタイプ」を受け入れるものであることは読み取れるが,「データのタイプ」が何らかの位置に対応付けて選択されるものであることは読み取れない。 ウ以上のとおり,引用刊行物1には,審決が認定した一致点のうち,「前記任意の位置に対する」の部分が記載されていない。 したがって,本願発明と引用発明の一致点は,審決が認定した一致点から「前記- 6 -任意の位置に対する」という部分を除いて,「前記GPSデバイスのユーザから任意の位置およびデータのタイプを受け入れ,」と認定すべきである。そして,本願発明と引用発明との相違点として,以下の点を認定すべきである。 本願発明では,ユーザから「任意の位置」及び「任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」を受け入れるのに対し,引用発明では,「興味あるデータ」または「興味のあるデータのタイプ」が,ユーザが入力した「所望の場所」に対するものかどうかが不明である点。 上記の認定の誤りは,相違点1の容易想到性の判断に影響を及ぼす。 (2) 審決は,引用発明と本願発明の一致点として,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記データを選択」することを認定しているが,この認定は誤りである。 ア引用刊行物1の9頁9~11行には,「図3は,ある地図を示しており,この中で,大きなドットはGPSによって決定さ 力のために前記データを選択」することを認定しているが,この認定は誤りである。 ア引用刊行物1の9頁9~11行には,「図3は,ある地図を示しており,この中で,大きなドットはGPSによって決定される位置を示し,各ドットで,特定の音声フレーズがデータベースまたはラジオ放送から選択されて再生される。」と記載されており,この記載によれば,引用発明では,データベース内のデータが現在の位置と比較され,一致する場合に選択される。 イ一方,本願発明では,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセット」がメモリ媒体に格納され,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」する。 ここでいう「レンジ」については,「広辞苑」(甲5)に記載されているとおり,「①幅。範囲。領域。」を意味することは明らかであるから,「GPSアドバイスレンジ」は,一点を示すGPS座標ではなく,幅のある範囲を意味する。範囲は,通常,上限と下限で定義され,当該範囲に含まれる個別の値の情報を持たない。 - 7 -加えて,本願明細書(甲2)には,「GPSアドバイスレンジ」について,具体的に,「ここで用いられた用語“GPSアドバイスレンジ”は,あるGPSアドバイスデータセットを,経度,緯度及び高度の所定のレンジの組(セット)によって識別する。GPSアドバイスレンジは,例えば,それぞれ,ある所定の固定の経度,緯度及び高度を包含する,経度,緯度,及び高度の所定のレンジのセットから成り,」(段落【0015】)と記載されている。この記載によるGPSアドバイスレンジは 例えば,それぞれ,ある所定の固定の経度,緯度及び高度を包含する,経度,緯度,及び高度の所定のレンジのセットから成り,」(段落【0015】)と記載されている。この記載によるGPSアドバイスレンジは,所定の固定の経度,緯度等を包含する経度,緯度等の範囲,すなわち,経度,緯度等の範囲を定義する上限及び下限を示す情報を含むが,所定の固定の経度,緯度等の情報は含まないと考えられる。 ウ本願発明において,「GPSアドバイスレンジ」を引用刊行物1における「興味のある場所」の座標を含むように設定した場合,現在のGPSデバイス位置或いは任意の位置が「興味のある場所」の座標と一致していると,現在のGPSデバイス位置或いは任意の位置がGPSアドバイスデータセットのGPSアドバイスレンジ内に入るという判定結果が出る。 しかし,本願発明は,「興味のある場所」の座標の情報を持たないので,現在のGPSデバイス位置或いは任意の位置が「興味のある場所」の座標と一致すると判定したわけではない。 したがって,審決は一致点の認定に誤りがあり,この認定の誤りは,相違点1の容易想到性の判断に影響を及ぼす。 (3) 審決は,引用発明と本願発明の相違点1として,「引用発明においてはデータの構造は不明である」と認定しているが,この認定は誤りである。 すなわち,引用刊行物1の9頁13~17行には,「・・・興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標が,地図からまたは位置調査によってディジタル化される。その後,興味のある場所のそれぞれを説明する音声が,対応するGPS座標と共に,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納される。」との記載があり,この記載によれば,引用発明においては,「興味の- 8 -ある場所」のそれぞれについて,音声と,対応す トディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納される。」との記載があり,この記載によれば,引用発明においては,「興味の- 8 -ある場所」のそれぞれについて,音声と,対応するGPS座標とがデータベースに格納される。したがって,引用発明では,データベースに格納された音声とGPS座標のそれぞれの組についてGPS座標が現在の位置(或いは所望の場所)と比較され,一致する場合に当該GPS座標と対応付けされた音声が選択されると考えられる。 上記の認定の誤りは,相違点1の容易想到性の判断に影響を及ぼす。 2 取消事由2(相違点1についての容易想到性判断の誤り)(1) 以下のとおり,本願発明におけるデータ構造及び処理内容は,引用刊行物1に記載されたものとは異なり,このような相違は,設計事項には当たらず,本願発明は引用発明に基づいて容易に想到できたものではない。 ア審決は,「本願発明の…「GPSアドバイスレンジ」…については,明細書の記載を参酌すると,…『緯度,経度など』…を指すものと認められる。」と認定しているが,上記1(2)で「GPSアドバイスレンジ」について述べた理由から,『緯度,経度など』は,正しくは,『緯度,経度などの範囲』と認定すべきである。 本願発明では,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセット」がメモリ媒体に格納され,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」する。 イ一方,引用発明では,上記1(2)で述べたとおり,データベースに格納された音声とGPS座標のそれぞれの組 合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」する。 イ一方,引用発明では,上記1(2)で述べたとおり,データベースに格納された音声とGPS座標のそれぞれの組についてGPS座標が現在の位置或いは所望の場所と比較され,一致する場合に当該GPS座標と対応付けされた音声が選択される。 現在の位置が,あるGPS座標と一致することを検出するより,現在の位置が当該GPS座標を包含する緯度及び経度の範囲に入ることを検出する方が,明らかに検出が容易であるので,本願発明におけるGPSアドバイスデータセットの選択は,- 9 -引用発明における音声の選択より,処理が容易になる。 引用刊行物1における他の検索例として,引用刊行物1の7頁10~13行には,「ユーザは,必ずしも当てはまることではないが,一般的にユーザの現在位置を中心とする所定半径内の,・・・ユーザにとって興味のある特定の事項に関するデータベースの自動検索を開始することもできる。」という記載もある。すなわち,この検索例において,データベース内のデータは,現在の位置から所定範囲内にある場合に選択される。 しかし,本願発明と引用発明とでは検索結果が同じになるとは限らず,本願発明では,GPSアドバイスデータセットが検索されるような現在の位置との位置関係を個々に定義することができる。 ウさらに,本願発明は,GPSアドバイスデータセットのデータ構造自体に特徴がある。 本願発明におけるGPSアドバイスデータセットは,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む」が,引用刊行物1には,このようなデータ構造は開示されていない。 GPSアドバイスデータセットは,GPSアドバイスタイプ,GPSアドバイスレンジ,GPSアドバ レンジと,GPSアドバイスとを含む」が,引用刊行物1には,このようなデータ構造は開示されていない。 GPSアドバイスデータセットは,GPSアドバイスタイプ,GPSアドバイスレンジ,GPSアドバイスの3種の情報が結合された状態で存在することから,位置及びタイプが入力されれば,それに該当するGPSアドバイスを決定することができる。これに対し,引用刊行物1では,上記1(2)で述べたとおり,データベースにGPS座標と音声の形態でデータが保存されていると解される。このデータ構造では,GPS座標によってのみ音声が決定され,別途,タイプとの関係を示す情報がなければ,入力値として位置とタイプが与えられてもデータベースのデータを特定することができない。 (2) 引用刊行物1には,「所望の場所」と,「所望の場所」に対する「興味のあるデータのタイプ」の両方を入力する動機付けがない。すなわち,審決が引用する,引用刊行物1の14頁9~13行の「下見(プレ・ビュー:pre-view)モード・・・- 10 -所定のビジュアルシーケンスが,単に,所望の場所の名前または緯度/経度を入力することによって,またはシステムによって提供されるリストから所望の場所を選択することによって,検索されて表示される。」との記載においては,ユーザが入力する場所は,ユーザが興味のある場所であるから,場所に加えてデータのタイプを入力する必要性がない。 第4 被告の反論 1 取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り)に対し(1)「任意の位置に対するデータのタイプ」について原告は,審決は,引用発明と本願発明の一致点として,「前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ,」の構成を認定したが,引用発明は「前記任意の位置に対する」の構 は,引用発明と本願発明の一致点として,「前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ,」の構成を認定したが,引用発明は「前記任意の位置に対する」の構成を具備しないから,審決は一致点の認定に誤りがあり,また,相違点の看過がある旨主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張には理由がない。 ア本願の発明の詳細な説明(甲2)の段落【0032】及び【0033】の記載によると,本願発明の位置情報(GPSアドバイスレンジ)とこれに対するGPSアドバイスタイプは,データセットとして関連づけられている。 他方,本願の発明の詳細な説明の記載及び図面のどこを参照しても,本願発明の中央演算処理装置が,「任意の位置」(例:A市)及び「任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」(例:A市内にあるホテル)を受け入れるような構成の開示はない。 そうしてみると,本願の特許請求の範囲(甲3)の「前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」という記載は,本願発明の「GPSアドイスタイプ」が,データの意味内容の観点からみたときに「GPSアドバイスレンジ」と関連づけられていることを意味すると解される。他方,本願発明の中央演算処理装置が,データとして「任意の位置」及び「任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」を受け入れることを意味するとは解されない。 - 11 -以上のとおり,本願発明の中央演算処理装置は,データとしては「任意の位置」と「GPSアドバイスタイプ」を受け入れるものである。 このような理解は,本願の発明の詳細な説明の他の記載とも整合する(段落【0024】~【0028】,【0035】~【0037】)。 したがって,本願の発明の詳細な説明には,本願発明の中央演算処理装置が,ユーザ入力として「任意の 詳細な説明の他の記載とも整合する(段落【0024】~【0028】,【0035】~【0037】)。 したがって,本願の発明の詳細な説明には,本願発明の中央演算処理装置が,ユーザ入力として「任意の位置」(例:A市)や「GPSアドバイスタイプ」(例:ホテル)を受け入れ,選択された情報内容を表示することは開示されているが,本願発明の中央演算処理装置が,ユーザ入力として「任意の位置」(例:A市)及び「任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」(例:A市内にあるホテル)を受け入れ,選択された情報内容を表示することは開示されていない。 以上のとおりであるから,本願発明は,中央演算処理装置が,「GPSデバイス位置」及び「GPSアドバイスタイプ」のデータを受け入れるものを,発明の要旨とする。 これに対し,引用発明は,「データベースを備え」,「ユーザーが入力した所望の場所の緯度/経度および興味のあるデータのタイプを受け入れ,現在の位置或いは前記所望の場所に対応するデータが検索され」る構成を具備する(引用発明の認定に争いはない。)。 そうしてみると,「前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ,」の構成を一致点とした審決の認定に誤りはなく,したがって,相違点の看過もない。 イなお,本願の特許請求の範囲の「前記GPSデバイスの中央演算処理装置は,・・・前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプを受け入れ」という記載は,物としての中央演算処理装置の構成を特定する記載である。 したがって,ユーザから受け入れる情報が「前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」であっても「GPSアドバイスタイプ」であっても,それをデータとして受け入れる中央演算処理装置の構成には何ら差異が存在しない。 - 受け入れる情報が「前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプ」であっても「GPSアドバイスタイプ」であっても,それをデータとして受け入れる中央演算処理装置の構成には何ら差異が存在しない。 - 12 -ウユーザが訪問先に関する情報を得たいと考えているときに,訪問先の位置のみに基づいて選択されるすべての情報を得たり,興味のあるタイプのみに基づいて選択されるすべての情報を得たりするだけでは実用にならず,訪問先の位置と興味のあるタイプを組み合わせた情報を得て初めて実用的なものとなることは,一般常識である(以下「一般常識」という。)。 また,この点は,引用刊行物1(甲1)の5頁8~11行(以下「本発明の背景」という。)に,位置と興味の組み合わせによってデータが検索され,出力される構成が開示されていることからみても,明らかである。 このような一般常識は,ユーザが本願発明の装置を使用する場合においても妥当すると思われる。 そうしてみると,本願の特許請求の範囲の「GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプを受け入れ」という記載は,「任意の位置」と「GPSアドバイスデータ」を組み合わせた情報を得たいと考えたユーザが,本願発明の装置に「GPSアドバイスデータ」を入力するときの,一般常識に基づくユーザの意識を反映させた記載とも考えられなくもない。 ところで,引用刊行物1の図2及び図3には,図1のバージョンにおける設定経路モードとして,GPSデータ(位置データ)との適合及びデータの必要性(興味あるデータの選択)を組み合わせて検索されたデータを出力する構成が開示されている。 また,引用刊行物1の14頁10~13行には,図4のバージョンにおける下見モードが記載されているところ,先の「一般常識」な の選択)を組み合わせて検索されたデータを出力する構成が開示されている。 また,引用刊行物1の14頁10~13行には,図4のバージョンにおける下見モードが記載されているところ,先の「一般常識」ないし「本発明の背景」を考慮するならば,引用刊行物1には,図1及び図4のバージョンにおいて,「前記ポータブル情報システムのユーザーが入力した所望の場所の緯度/経度および興味のあるデータのタイプを受け入れ」て,両者を組み合わせて検索を行う構成も開示されており,事実,引用刊行物1の2頁には,請求項1に係る発明を引用した請求項3に係る発明が開示されている。 - 13 -そうすると,本願発明が位置とタイプを組み合わせた検索を行うものであることを認めるわけではないが,いずれにせよ,審決の一致点の認定に誤りはなく,相違点の看過もない。 (2)「位置」と「レンジ」の相違について原告は,審決は,本願発明と引用発明の一致点として,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記データを選択し」の構成を認定したが,引用発明では,データベースに格納されたGPS座標が現在の位置(或いは所望の場所)と一致する場合にデータが選択されるのに対し,本願発明は,現在のGPSデバイス位置(或いは任意の位置)がGPSアドバイスレンジ内に入る場合にGPSアドバイスデータセットを選択するから,審決は,一致点の認定に誤りがある旨主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張には理由がない。 原告が指摘する,引用刊行物1(甲1)の9頁13~15行の記載は,その文章のとおり解釈するべきであるから,「緯度/経度座標」を「緯度/経度座標点」の意味には限定解釈できない。 また,例えば,村や山を「点」で識別した場合, 1(甲1)の9頁13~15行の記載は,その文章のとおり解釈するべきであるから,「緯度/経度座標」を「緯度/経度座標点」の意味には限定解釈できない。 また,例えば,村や山を「点」で識別した場合,引用刊行物1には,村役場や山頂にまで行かなければ村内や山の近くのホテルの案内が行われない極めて不親切な装置が開示されているという,不合理な理解を強いられることになる。 引用刊行物1の9頁の下から2及び1行には,「北,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。」と記載され,さらに,引用刊行物1の12頁11~13行には,「一般的な航空モードを選択した場合,システムは,空港,規定された領域,危険領域,軽飛行機ルート,上空交通制御境界等の航空関連ポイントとの関連で,GPSによる位置,高度及び速度をユーザに識別させる。」と記載されており,これら記載からも明らかなとおり,引用刊行物1において「緯度/経度座標」は,「緯度/経度座標領域」の意味で用いられている。 - 14 -引用刊行物1の図2が示すとおり,引用発明は,現在の位置或いは所望の場所がデータベースに格納されたGPS座標と適合する場合にデータを選択する。 したがって,「適合」ではなく「一致」という用語を用いた点においては審決の一致点の認定は不正確であったとしても,審決の一致点の認定に誤りはなく,少なくとも,審決の相違点の認定に誤りはない。 (3) 相違点1の認定誤りについて原告は,引用発明においては「興味のある場所」のそれぞれについて,音声と,対応するGPS座標とがデータベースに格納されるから,相違点1の「引用発明においてはデータの構造は不明である」との審決の認定は誤りである旨主張する。 しかし,審決の相違点1の「引 について,音声と,対応するGPS座標とがデータベースに格納されるから,相違点1の「引用発明においてはデータの構造は不明である」との審決の認定は誤りである旨主張する。 しかし,審決の相違点1の「引用発明においてはデータの構造は不明である」という認定は,その文章が意味するとおり,データの構造が不明であるという意味であり,データベースに格納される内容が不明であるという意味ではない。 2 取消事由2(相違点1についての容易想到性判断の誤り)に対し(1) GPSアドバイスレンジについてア原告は,審決は,相違点1の判断において,本願発明の「GPSアドバイスレンジ」について,「緯度,経度など」を指すと認定しているが,正しくは,「緯度,経度などの範囲」を指すと認定すべきであり,本願発明のGPSアドバイスレンジは,ある所定の固定の位置に対して,当該所定の固定の位置を包含する緯度及び経度の所定の範囲を示し,緯度及び経度の範囲を識別するが,所定の位置の情報を持たないと主張する。 しかし,本願の発明の詳細な説明(甲2)の段落【0015】の第一文に,「ここで用いられた用語“GPSアドバイスレンジ”は,あるGPSアドバイスデータセットを,経度,緯度及び高度の所定のレンジの組(セット)によって識別する。」と記載されているとおり,本願発明の「GPSアドバイスレンジ」は,GPSアドバイスデータセットを,緯度,経度などの範囲によって中央演算処理装置が識別(現在地等と比較)するためのものである。 - 15 -他方,引用刊行物1の9頁の下から2及び1行に,「北,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。」と記載され,さらに,引用刊行物1の12頁11~13行に,「一般的な航空モードを選択 ,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。」と記載され,さらに,引用刊行物1の12頁11~13行に,「一般的な航空モードを選択した場合,システムは,空港,規定された領域,危険領域,軽飛行機ルート,上空交通制御境界等の航空関連ポイントとの関連で,GPSによる位置,高度及び速度をユーザに識別させる。」と記載されているとおり,引用発明の緯度,経度などのデータも,データベースのデータを,経度,緯度などの範囲によってシステムが識別(現在地等と比較)するためのものである。 なお,ナビゲーションシステム等の位置データにおいて,経度,緯度などの範囲によってシステムが識別(現在地等と比較)するものは,乙4~6に開示されているとおり周知である。 したがって,審決の相違点1の判断に誤りはない。 イ原告は,引用刊行物1における他の検索例において,データベース内のデータは,ユーザの現在位置から所定範囲内にある場合に選択され,この検索例は本願発明のものと相違する旨主張する。 しかし,原告が指摘する検索例は,原告も認めるとおり,「他の検索例」,すなわち,引用発明における「現在の位置或いは前記所望の場所に対応するデータが検索され」という検索とは異なる検索例(現在の位置或いは前記所望の場所から所定範囲内のデータが検索され)に関するものである。 また,引用刊行物1に他の検索例が記載されているからといって,引用発明が他の検索例のみを具備するものに限定解釈されることになるわけではないから,本願発明の容易推考が否定されるわけでもない。 なお,本願の発明の詳細な説明には記載されていないけれども,本願発明においても,現在のGPSデバイス位置に対して選択可能なGPSアドバイスデータセット(例:C 容易推考が否定されるわけでもない。 なお,本願の発明の詳細な説明には記載されていないけれども,本願発明においても,現在のGPSデバイス位置に対して選択可能なGPSアドバイスデータセット(例:C銀行のATM)が存在しないとき,次善の策として,現在のGPSデバイス位置から所定範囲内のデータを検索し,出力するようにした方が良いことは,- 16 -明らかである。 したがって,審決の判断に誤りはない。 (2) 動機付けの欠如原告は,引用刊行物1には,「所望の場所」と,「所望の場所」に対する「興味のあるデータのタイプ」の両方を入力する動機付けがないと主張する。 確かに,引用刊行物1の14頁9~13行には,ユーザがデータのタイプを入力することの明記はない。 しかしながら,引用刊行物1の下見モードにおいて明記がないとしても,先の「一般常識」ないし「本発明の背景」及び引用刊行物1の請求項3の記載を考慮するならば,引用刊行物1にはユーザが「所望の場所」及び「興味のあること」を入力してその検索結果を得る構成が開示されているから,審決の判断に誤りはない。 念のために主張すると,先の「一般常識」をもつ当業者が引用刊行物1の「本発明の背景」の記載に接したならば,引用刊行物1の下見モードにおいて,ユーザが「所望の場所」及び「興味のあること」を入力してその検索結果を得る構成とすることは容易にできることであるから,少なくとも,審決の結論に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由1(一致点・相違点の認定の誤り)には理由があり,審決は取消しを免れないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 本願発明について(1) 本願明細書の記載本願明細書(甲2)には,次の記載がある(下線は裁判所が付した。以下同じ。) 審決は取消しを免れないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 本願発明について(1) 本願明細書の記載本願明細書(甲2)には,次の記載がある(下線は裁判所が付した。以下同じ。)「【0008】本発明は,情報或いは広告データベースを含む通信網への無線アクセスを有するGPSデバイスを装備することなく,かつ商業用ラジオ或いはテレビション放送を受信するためのGPSデバイスを装備することなく,GPSデバイス位置或いはそ- 17 -のユーザの位置に特定なニーズと関係のある位置特定情報及び広告を提供するための新規のデバイス,システム及び方法に係る。」「【0011】GPSデバイスは,GPS衛星によって送信されたL1信号を受信し,上記GPSデバイスに動作可能に接続されたプログム可能な中央演算処理装置(“CPU”)がGPSデバイス位置,つまり,上記GPSデバイスの経度,緯度及び高度を計算するのに使用するために,上記L1信号からデータを抽出する。・・・【0012】本発明は,GPSデバイス位置或いはユーザの位置に特定なニーズと関係がある,位置特定情報或いは広告を上記GPSデバイスの出力デバイスに出力することで提供する。 【0013】ここで用いられた用語“GPSアドバイス”は,データセット(これらは以降GPSアドバイスデータセットと呼ばれる)として組み立てられ,収集され,グループ化され,接続され,リンク或いは編成された,オーディオビジュアル,グラフィカル或いはテキストによる位置特定情報を意味し,このデータセットは,このデータセット内に含まれる,“GPSアドバイスタイプ“及び“GPSアドバイスレンジ”によって識別される。 【0014】ここで用いられた用語“GPSアドバイスタイプ”は,あるGPSアドバイス のデータセット内に含まれる,“GPSアドバイスタイプ“及び“GPSアドバイスレンジ”によって識別される。 【0014】ここで用いられた用語“GPSアドバイスタイプ”は,あるGPSアドバイスデータセットを,位置特定情報或いは広告のあるカテゴリ,クラス,タイプ,或いは種類として,例えば,旅行に関連する情報の場合は,宿,食料,燃料,娯楽,駐車,ドッギング,保守,修理,その他,として識別する。 【0015】ここで用いられた用語“GPSアドバイスレンジ”は,あるGPSアドバイスデータセットを,経度,緯度及び高度の所定のレンジの組(セット)によって識別す- 18 -る。GPSアドバイスレンジは,例えば,それぞれ,ある所定の固定の経度,緯度及び高度を包含する,経度,緯度,及び高度の所定のレンジのセットから成り,ここで,これら固定の経度,緯度及び高度は,例えば,ある都市の中心,ある山の頂上,或いはある半島の先端に対応する。 【0016】このGPSアドバイスデータセットは,GPSデバイスに動作可能に接続されたメモリ媒体から得ることも,或いは上記GPSデバイスによって,GPS衛星からL1信号とともに送信される専用のキャリア信号から受信することも考えられる。」「【0024】発明の実施例によれば,GPSデバイスのCPUは,計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置をメモリ媒体上に格納されている各GPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較するか,或いは計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置をGPS衛星によって送信されかつGPSデバイスによって受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較する。 【0025】計算された或いはユーザ入力されたGP をGPS衛星によって送信されかつGPSデバイスによって受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較する。 【0025】計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置が,ある格納された或いは送信されかつ受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジ内に入る場合は,上記GPSアドバイスデータセットは,上記GPSデバイスの出力デバイスに出力するために選択される。 【0026】あるGPSデバイス位置は,あるGPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された緯度がGPSアドバイスデータセットの緯度の所定のレンジ内に概ね入り,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された経度がGPSアドバイスデータセットの経度の所定のレンジ内に概ね入り,そして,GPSデバイスの計算され- 19 -た或いはユーザ入力された高度がGPSアドバイスデータセットの高度の所定のレンジ内に概ね入る場合に,あるGPSアドバイスレンジ内に”入る”。 【0027】逆に,あるGPSデバイス位置は,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された緯度がGPSアドバイスデータセットの緯度の所定のレンジ内に概ね入いらず,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された経度がGPSアドバイスデータセットの経度の所定のレンジ内に概ね入いらず,及び,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された高度がGPSアドバイスデータセットの高度の所定のレンジ内に概ね入いらない場合は,GPSアドバイスレンジ内に入いらない。」「【0030】次に,図面の参照に移るが,様々な図面中,類似するパーツは類似する符号にて示される。図1には本発明の第一の実施例によるGPSデバイス20がブロック図の形式にて簡略的に示されて 「【0030】次に,図面の参照に移るが,様々な図面中,類似するパーツは類似する符号にて示される。図1には本発明の第一の実施例によるGPSデバイス20がブロック図の形式にて簡略的に示されている。この実施例においては,GPSアンテナ25,信号処理ユニット26,CPU(“CPU”)30,及び出力デバイス33を含むGPS受信機21は,モバイル通信或いは計算デバイス22とメモリ媒体23との両方に動作可能なように接続される。 【0031】L1GPS信号24がGPSアンテナ25によって受信され,GPS受信機21に信号処理ユニット26を通じて入力されるが,信号処理ユニット26は,L1GPS信号24からのGPS位置データ38を,取得,識別,分離,復調,及び抽出し,GPS中央演算処理装置(“CPU”)30に入力する。CPU30は,抽出されたGPS位置データ38を利用して,GPSデバイス位置を構成する位置座標の組を計算する。CPU30は,GPSデバイス位置を出力デバイス33に出力する。 【0032】- 20 -図2は,単に簡略的に図解する目的にて代表的なGPSアドバイスデータセット37を示すが,これは,オーディオビジュアル,グラフィカル或いはテキストによる位置特定情報或いは広告内容36,GPSアドバイスタイプ39,及びGPSアドバイスレンジ40を含み,このGPSアドバイスレンジは,緯度の所定のレンジ41,経度の所定のレンジ42,及び高度の所定のレンジ43を含む。」「【0034】メモリ媒体23は,様々な位置特定情報或いは広告36,GPSアドバイスタイプ39,及びGPSアドバイスレンジ40を含む,複数の一例として示されるようなGPSアドバイスデータセット37を格納する。 【0035】CPU30は,それが抽出されたGPS位 Sアドバイスタイプ39,及びGPSアドバイスレンジ40を含む,複数の一例として示されるようなGPSアドバイスデータセット37を格納する。 【0035】CPU30は,それが抽出されたGPS位置データ38からGPSデバイス20に対して計算したGPSデバイス位置を,メモリ媒体23内に格納されているGPSアドバイスデータセット35の各々の中に含まれるGPSアドバイスレンジ40と比較し,それが計算したGPSデバイス位置がこれら複数のGPSアドバイスデータセット35の各々の中に含まれるGPSアドバイスレンジ40内に入る場合は,これら複数のGPSアドバイスデータセット35からあるGPSアドバイスデータセット37を選択するようにプログラムされる。CPU30は,加えて,GPSデバイス20のユーザによって入力されたあるGPSデバイス位置を,メモリ媒体23内に格納されているGPSアドバイスデータセット35の各々の中に含まれるGPSアドバイスレンジ40と比較し,そのユーザにて入力されたGPSデバイス位置がGPSアドバイスデータセット35の各々の中に含まれるGPSアドバイスレンジ40内に入る場合は,これら複数のGPSアドバイスデータセット35からあるGPSアドバイスデータセット37を選択するようにプログラムされる。」(2) 本願発明の概要本願発明の構成は前記第2の2のとおりであり,これと本願明細書(甲2)の上記(1)の記載によれば,本願発明は,概要次のとおりの発明であることが認められ- 21 -る。 本願発明は,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセットを格納するメモリ媒体を備える装置であって,前記メモリ媒体は,中央演算処理装置と,出力デバイスとを有するGPSデバイスに動 バイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセットを格納するメモリ媒体を備える装置であって,前記メモリ媒体は,中央演算処理装置と,出力デバイスとを有するGPSデバイスに動作可能に接続され,かつ前記GPSデバイスの中央演算処理装置は,現在のGPSデバイス位置を計算し,かつ前記GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するGPSアドバイスタイプを受け入れ,前記GPSデバイスの前記中央演算処理装置は,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記複数のGPSアドバイスデータセットと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」するものである。 本願発明における「GPSアドバイスレンジ」は,あるGPSアドバイスデータセットを,経度,緯度及び高度の所定のレンジの組(セット)によって識別するものであり(段落【0015】,【0032】),例えば,それぞれ,ある所定の固定の経度,緯度及び高度を包含する,経度,緯度及び高度の所定のレンジのセットから成る(段落【0015】)。 GPSデバイスのCPUは,計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置をメモリ媒体上に格納されている各GPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較するか,或いは計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置をGPS衛星によって送信されかつGPSデバイスによって受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較し,計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置が,ある格納された或いは送信されかつ受信されたG バイスによって受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジと比較し,計算された或いはユーザ入力されたGPSデバイス位置が,ある格納された或いは送信されかつ受信されたGPSアドバイスデータセット内に含まれるGPSアドバイスレンジ内に入る場合は,上記GPSアドバイスデータセットは,上記GPSデバイスの出力デバイスに出力するために選択される(段落【0024】,- 22 -【0025】,【0035】)。 あるGPSデバイス位置は,あるGPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された緯度がGPSアドバイスデータセットの緯度の所定のレンジ内に概ね入り,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された経度がGPSアドバイスデータセットの経度の所定のレンジ内に概ね入り,そして,GPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された高度がGPSアドバイスデータセットの高度の所定のレンジ内に概ね入る場合に,あるGPSアドバイスレンジ内に入ると判定される(段落【0026】)。 2 引用発明について(1) 引用刊行物1の記載引用刊行物1(甲1)には,次の記載がある。 「GPS探索装置は,グローバル・ポジショニング・システム(GPS)データをキーとして使用し,データベースまたは放送データから音声及び画像を探索するポータブル情報システムに関する。ユーザは,彼にとって最も興味のあるデータのタイプを予め選択することができ,ユーザの位置,方位,速度,高度または姿勢が変化するにつれて,且つ時刻が変化するにつれて,このことはGPS受信機によって検出され,そして当該システムはデータベースから好適なデータを自動的に検索する。装置は,コンパクトディスクとして内部に交換可能なデータベースを備えるとともに,外部データベース及び放送データにも って検出され,そして当該システムはデータベースから好適なデータを自動的に検索する。装置は,コンパクトディスクとして内部に交換可能なデータベースを備えるとともに,外部データベース及び放送データにもアクセスできる。 GPS探索装置は,動いている時に情報を提供できるように設計されている。考案された適用例の多くの場合において,ユーザは,自己の位置を知りたい場合はほとんどなく,すぐ近くのビルの歴史または製品を買う場所等の,ユーザにとって最も興味のある場所に関する情報を単に必要としている。ユーザが必要としている情報が,GPSにおける位置,速度,高度または時間をキーとして使用し,データベースにアクセスすることによって得られるということは,ユーザにとって無関係であり,また自明なことである。 - 23 -・・・例えば,旅行中,システムは,ユーザが好む場所を自動的に識別できるように設定され,すぐ近くのビルの歴史または最も好ましいルートを示すことができる。ユーザは,必ずしも当てはまることではないが,一般的にユーザの現在位置を中心とする所定半径内の,目印,ホテル,病院,店または製品等の,ユーザにとって興味のある特定の事項に関するデータベースの自動検索を開始することもできる。」(6頁14行~7頁13行)「装置は,当該装置内に設けられているGPS受信機または所定の手段によって装置に接続されているGPS受信機によって,その位置,速度,移動方向,時刻及び同様の所定のデータを常にモニタする。 装置は,位置または時刻の変化等の,所定のGPSパラメータの変化を検出する度毎に,新しいGPSデータをキーとして使用して,受信された放送データを含むデータベースをサーチし,前記新しいGPSパラメータと直接的または非直接的に適合または関連する任意のデータ記録を検 検出する度毎に,新しいGPSデータをキーとして使用して,受信された放送データを含むデータベースをサーチし,前記新しいGPSパラメータと直接的または非直接的に適合または関連する任意のデータ記録を検索する。 前記検索されたデータは,音声として出力または表示される前に,装置の動作モード及び他の選択基準に対してチェックされ,検索されたデータの中のどのデータをユーザに提供するかを決定する。メッセージの経過を記録し,不必要な繰り返しを避ける。」(8頁3~12行)「好適実施例の説明1.以下図面を参照して,本発明による装置のオーディオ(音声)のみのバージョンを説明する。 図1は,オーディオ受話器口1,マイクロフォン2,GPS受信機3,CDドライブ4及びプロセッサ5を備えている装置の音声のみのバージョンを示している。 ・・・歴史的な建物,城,村,公園,湖,山,全景の見渡せる地点等の興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標が,地図からまたは位置調査によってディジタル化され- 24 -る。その後,興味のある場所のそれぞれを説明する音声が,対応するGPS座標と共に,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納される。」(9頁1行~17行)「設定経路(イーエヌルート:enroute)モード:図3は,主要な道に沿っての車による一般的な旅を示している。GPSデータを常にモニタすることによって,装置は,場所1-6のそれぞれに何時到達したかを決定し,その後,対応する音声フレーズがGPS-CDデータベースまたは放送データから検索され,受話器口またはスピーカーを介してユーザに再生される。 北,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。この場 送データから検索され,受話器口またはスピーカーを介してユーザに再生される。 北,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。この場合,好適なオーディオメッセージが,ユーザの向きなどによって決定され,挿入される左・右等の変数と共に,いくつかのフレーズからアセンブル化される。このようにして,より経済的にデータベース空間を利用することができる。」(9頁21行~10頁4行)「一般的な航空応用例例えば,一般的な航空モードを選択した場合,システムは,空港,規定された領域,危険領域,軽飛行機ルート,上空交通制御境界等の航空関連ポイントとの関連で,GPSによる位置,高度及び速度をユーザに識別させる。装置は,その後,音声案内,領空警報,またはボイスコマンドによる情報検索をパイロットに供給し,ボイスコマンドによって,またはうるさいコップピット内(裁判所注:「コックピット内」の誤記と認める。)でボタンを押すことによってパイロットの応答を受け取る。」(12頁10~16行)「下見(プレ・ビュー:pre-view)モード遠い場所を訪ねる前に,ユーザーは装置を用いて訪問したいいくつかの場所を下見することができる。所定のビジュアルシーケンスが,単に,所望の場所の名前または緯度/経度を入力することによって,またはシステムによって提供されるリストから所望の場所を選択することによって,検索されて表示される。」(14頁9- 25 -~13行)「本発明の商業的な利用…多くの探索装置のCDは,どちらかと言うと対話式のイエローページのような,所定の分野におけるビジネスの詳細を有している。しかし,イエローページの場合には消費者が広告主の場所を見つけなければならないという問題を残してい Dは,どちらかと言うと対話式のイエローページのような,所定の分野におけるビジネスの詳細を有している。しかし,イエローページの場合には消費者が広告主の場所を見つけなければならないという問題を残しているが,GPS探索装置システムの場合,たとえ広告主の所在が発見しづらかったとしても,消費者を広告主の所に誘導することができる。・・・」(16頁11~21行)(2) 引用発明の概要引用発明の構成は前記第2の3(1)のとおりであり,これと引用刊行物1(甲1)の上記(1)の記載によれば,引用発明は,概要次のとおりの発明であることが認められる。 引用発明において,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索するために,例えば,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標が,地図からまたは位置調査によってディジタル化され,興味のある場所のそれぞれを説明する音声が,対応するGPS座標と共に,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納される(9頁13~17行)。 一般的にユーザの現在位置を中心とする所定半径内の,ユーザにとって興味のある特定の事項に関するデータベースの自動検索を開始することもできる(7頁8~13行)。 装置は,位置の変化等の,所定のGPSパラメータの変化を検出する度毎に,新しいGPSデータをキーとして使用して,データベースをサーチし,新しいGPSパラメータと直接的または非直接的に適合または関連する任意のデータ記録を検索する(8頁3~9行)。 3 本願発明と引用発明との対比- 26 -(1) 前記1で認定したとおり,本願発明は,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジ る任意のデータ記録を検索する(8頁3~9行)。 3 本願発明と引用発明との対比- 26 -(1) 前記1で認定したとおり,本願発明は,「GPSアドバイスタイプと,GPSアドバイスレンジと,GPSアドバイスとを含む複数のGPSアドバイスデータセットを格納するメモリ媒体を備え」,「前記GPSデバイスの前記中央演算処理装置は,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記複数のGPSアドバイスデータセットと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」するものである。 そして,本願発明における「GPSアドバイスレンジ」は,あるGPSアドバイスデータセットを,経度,緯度及び高度の所定のレンジの組(セット)によって識別するものであり,あるGPSデバイスの計算された或いはユーザ入力された緯度,経度及び高度が,それぞれGPSアドバイスデータセットの緯度,経度及び高度の所定のレンジ内に概ね入る場合に,あるGPSアドバイスレンジ内に入ると判定されるものである。 ここで,「レンジ」とは,広辞苑(甲5)によれば,「①幅。範囲。領域。」を意味すると解される。 そうすると,本願発明における,「GPSアドバイスレンジ」とは,GPS座標を表す経度,緯度及び高度の,それぞれの範囲を規定する,上限及び下限を示す情報の組(セット)と解するのが相当である。 そして,本願発明の「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択し,」との発 Sデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択し,」との発明特定事項における,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る場合」とは,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置」が,「前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ」により規定- 27 -される,経度,緯度及び高度で表されるGPS座標の範囲内に入る場合と解するのが相当である。 (2) これに対し,引用発明は,前記2で認定したとおり,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索するために,例えば,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標がデータベースに記録格納されるものである。 ここで,「座標」とは,広辞苑(甲6)によれば,点の位置をx軸,y軸等に関して一意的に決定する数値の組を意味すると解される。 また,引用刊行物1には,一般的にユーザの現在位置を中心とする所定半径内の,ユーザにとって興味のある特定の事項に関するデータベースの自動検索を開始することや,新しいGPSデータをキーとして使用して,データベースをサーチし,新しいGPSパラメータと非直接的に適合または関連する任意のデータ記録を検索することは記載されているが,そのための具体的な構成及び方法が明示されているとは認められない。 そうすると,引用刊行物1には,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯 体的な構成及び方法が明示されているとは認められない。 そうすると,引用刊行物1には,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索する際に,記録格納された,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標,すなわち緯度及び経度により一意的に決定する座標点と解される,所定の固定のGPS座標と比較することは,記載されているが,GPS座標の所定の範囲を規定する,経度,緯度それぞれの上限及び下限を示す情報の組(セット)と比較することが記載又は示唆されているとは認められない。 (3) 一致点及び相違点に係る審決の認定について審決は,本願発明と引用発明は,「データを格納するメモリ媒体を備える装置であって,前記メモリ媒体は,中央演算処理装置と,出力デバイスとを有するGPSデバイスに動作可能に接続され,現在のGPSデバイス位置が計算され,かつ前記- 28 -GPSデバイスのユーザから任意の位置および前記任意の位置に対するデータのタイプを受け入れ,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記データと比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する場合は,前記出力デバイスへの出力のために前記データを選択」する点で一致すると認定している(前記第2の3(2))。 なるほど,引用発明は,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索する際に,記録格納された,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標,すなわち所定の固定のGPS座標と比較するものであるから,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記 ,現在の位置に対応するデータを検索する際に,記録格納された,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標,すなわち所定の固定のGPS座標と比較するものであるから,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記データ(メモリ媒体に格納されたデータ)と比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する」ことを検出するものといえる。 しかし,前記(1)のとおり,本願発明は,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る」ことを検出して,「前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」するものであって,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置を,前記データ(メモリ媒体に格納されたデータ)と比較し,前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記データと一致する」ことを検出するものではない。 そして,本願発明と引用発明とは,本願発明が,「前記現在のGPSデバイス位置或いは前記任意の位置が前記GPSアドバイスデータセットの前記GPSアドバイスレンジ内に入る」ことを検出して,「前記出力デバイスへの出力のために前記GPSアドバイスデータセットを選択」するとの構成を備えるのに対し,引用発明は,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索する際に,本願発明の上記の構成を備えていない点で相違すると- 29 -いうべきであり(以下「相違点3」という。),審決がこの点を含めて一致点として認定したことは誤りである。 以上のとおり,審決は,相違点3を看過したため,一致点及び相違点の認定を誤った 29 -いうべきであり(以下「相違点3」という。),審決がこの点を含めて一致点として認定したことは誤りである。 以上のとおり,審決は,相違点3を看過したため,一致点及び相違点の認定を誤ったものである。 (4) 被告の主張についてア被告は,引用刊行物1の9頁13~15行の「歴史的な建物,城,村,公園,湖,山,全景の見渡せる地点等の興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標が,地図からまたは位置調査によってディジタル化される。」との記載から,当該箇所に記載されている「緯度/経度座標」を「緯度/経度座標点」の意味に限定解釈することはできないと主張する。 しかし,前記認定のとおり,「座標」とは,点の位置をx軸,y軸等に関して一意的に決定する数値の組を意味するものと解されるところ,これは,文字どおりの解釈であって,限定解釈ではない。被告の主張は採用することができない。 イ被告は,例えば,村や山を「点」で識別した場合,引用刊行物1には,村役場や山頂にまで行かなければ村内や山の近くのホテルの案内が行われない極めて不親切な装置が開示されているという,不合理な理解を強いられることになると主張する。 しかし,引用発明は,前記2で認定したとおり,現在のポータブル情報システムの位置を計算し,また,前記ポータブル情報システムのユーザが入力した所望の場所の緯度/経度を受け入れ,現在の位置に対応するデータを検索するために,例えば,興味ある場所のGPS用の緯度/経度座標が,地図からまたは位置調査によってディジタル化され,興味のある場所のそれぞれを説明する音声が,対応するGPS座標と共に,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納されるものである。 そうすると,村や山がGPS用の緯度/経度座標で表される「点」で識別され ,対応するGPS座標と共に,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに,圧縮された形態で記録格納されるものである。 そうすると,村や山がGPS用の緯度/経度座標で表される「点」で識別される場合でも,引用発明では,ホテルのように村内や山の近くにある興味ある場所につ- 30 -いて,そのGPS用の緯度/経度座標と説明する音声が,コンパクトディスク(GPS-CD)のデータベースに記録格納されることで,村内や山の近くにある興味ある場所の案内が行われると理解できるから,引用刊行物1には極めて不親切な装置が開示されているという,不合理な理解を強いられることにはならない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ被告は,引用刊行物1の「北,南,東または西からある村に到達するような場合,いくつかの場所で,広く同様なメッセージを適用できる場合がある。」との記載(9頁下から2及び1行),「一般的な航空モードを選択した場合,システムは,空港,規定された領域,危険領域,軽飛行機ルート,上空交通制御境界等の航空関連ポイントとの関連で,GPSによる位置,高度及び速度をユーザに識別させる。」との記載(12頁11~13行)を根拠として,引用刊行物1において「緯度/経度座標」は,「緯度/経度座標領域」の意味で用いられていると主張する。 しかし,引用刊行物1の9頁下から2及び1行の上記記載は,「設定経路(イーエヌルート:enroute)モード」に関するものであるところ,当該記載の前には,「設定経路モード」について,「GPSデータを常にモニタすることによって,装置は,場所1-6のそれぞれに何時到達したかを決定し,その後,対応する音声フレーズがGPS-CDデータベースまたは放送データから検索され,受話器口またはスピーカーを介してユーザに再生 とによって,装置は,場所1-6のそれぞれに何時到達したかを決定し,その後,対応する音声フレーズがGPS-CDデータベースまたは放送データから検索され,受話器口またはスピーカーを介してユーザに再生される。」と記載されている。この記載によれば,「設定経路モード」では,「場所1-6」及び「いくつかの場所」のような,緯度及び経度により一意的に決定する特定の場所に到達すると音声フレーズが検索され,再生されると解するのが相当である。「場所1-6」及び「いくつかの場所」が,経度,緯度それぞれの上限及び下限を示す情報の組(セット)として表され,GPS座標の所定の範囲を規定する「緯度/経度座標領域」を意味するものとはいえない。 また,引用刊行物1の12頁11~13行の上記記載から,「緯度/経度座標」が,経度,緯度それぞれの上限及び下限を示す情報の組(セット)として表され,- 31 -GPS座標の所定の範囲を規定する「緯度/経度座標領域」であると,直ちに解することもできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ被告は,引用刊行物1の図2が示すとおり,引用発明は,現在の位置或いは所望の場所がデータベースに格納されたGPS座標と適合する場合にデータを選択するもので,「適合」ではなく「一致」という用語を用いた点においては審決の一致点の認定は不正確であったとしても,審決の一致点及び相違点の認定に誤りはないとも主張するが,いずれの用語を用いるかにかかわらず,審決の認定に誤りがあることは前示のとおりであり,被告の主張は採用することができない。 4 まとめ上記3のとおり,審決は,相違点3を看過している。そして,審決は,相違点1及び2の容易想到性については判断しているが,相違点3の容易想到性については何ら判断していない。 そう 4 まとめ上記3のとおり,審決は,相違点3を看過している。そして,審決は,相違点1及び2の容易想到性については判断しているが,相違点3の容易想到性については何ら判断していない。 そうすると,審決は,一致点及び相違点の認定を誤った結果,相違点3の判断を遺脱したものであり,これが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,原告主張の取消事由1は理由がある。 よって,その余の点について検討するまでもなく,審決は違法であり,取消しを免れない。 第6 結論以上のとおり,原告の請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官- 32 -芝田俊文 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅

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