平成24年4月26日判決言渡平成23年(行ケ)第10336号審決取消請求事件平成24年2月14日口頭弁論終結判決 原告 X訴訟代理人弁理士西島綾雄 被告特許庁長官指定代理人早川学同小松正同関谷隆一同田部元史同芦葉松美 主文 1 特許庁が不服2010-21814号事件について平成23年9月16日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯等原告は,発明の名称を「結合型コンピュータ」とする発明(平成12年9月21日特許出願。特願2000-286469号)について,平成22年7月2日付けで拒絶査定を受け,同年9月29日付けで不服審判(不服2010-21814号) を請求した。これに対し,特許庁は,平成23年9月16日付けで,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は同月29日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載平成22年4月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(請求項の数4)の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」といい,同補正後の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。)「【請求項1】同じ構造のもの同士が複数隣接して結 求項1の記載は,次のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」といい,同補正後の明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。)「【請求項1】同じ構造のもの同士が複数隣接して結合し集合型コンピュータを構成するための結合型コンピュータであり,多面形状の複数のケーシング毎に,CPUやメモリIC及び入出力インターフェースなどのコンピュータ構成要素を内蔵し,該各多面形状のケーシングの各面ごとにそれぞれコードレス型の入出力用信号伝達素子を配設し,該各多面形状のケーシング毎に信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータを内蔵し,前記ケーシングの各面ごとに設けられた前記入出力用信号伝達素子を該ケーシング内の前記入出力インターフェースに接続し,前記ケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子と,これに隣接する他のケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子を通じて他のコンピュータの入出力用信号伝達素子との間で双方向のデータ伝送を行うことができるようにし,前記ケーシングの各面に設けられた複数の入出力用信号伝達素子を前記多重スイッチルータを介して該ケーシング内の前記入出力インターフェースに接続し,前記入出力用信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しを信号選択及びバイパス機能を有する前記多重スイッチルータを通じて行うようにし,前記多重スイッチルータにより前記ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにしたことを特徴とする結合型コンピュータ。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特開平4-107717号公報(甲8。以下,「引用例1」といい,引用例1に記載された発明を「引用発明」という。), の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特開平4-107717号公報(甲8。以下,「引用例1」といい,引用例1に記載された発明を「引用発明」という。),特開平6-68053号公報(甲9。以下「引用例2」という。)に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 審決が認定した引用発明の内容,同発明と本願発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (1) 引用発明の内容マイクロプロセッサと,このマイクロプロセッサに対してバスを介して接続されたメモリと,マイクロプロセッサ,メモリと同じLSIに集積されたシリアルI/Oポート6系統と,前記バスに接続された少なくとも6系統の電磁結合が可能の電磁結合通信用媒体と,を備え,前記マイクロプロセッサ,メモリ,電磁結合通信用媒体をいずれも6面体の容器に収容し,前記電磁結合通信用媒体につながる6組の電磁結合部を6面体容器の各面にそれぞれ設置し,前記電磁結合部は,8の字形状に形成させた2つのアンテナコイルa,bを90°角度をなすように重ねて構成したもので,一方のアンテナコイルaは送信を担当し,他方のアンテナコイルbは受信を担当し,これらのアンテナコイルa,bは,他のモジュールとの信号の送受信を行える電磁結合コンピュータモデュール装置であって,前記電磁結合コンピュータモデュール装置を複数個隙間なく積み重ね,お互いの接面において隣り合う電磁結合コンピュータモデュール装置相互間の通信を電磁結 合部を用いて行うコンピュータ装置を構成する電磁結合コンピュータモデュール装置。 (2) 一致点同じ構造のもの同士が て隣り合う電磁結合コンピュータモデュール装置相互間の通信を電磁結 合部を用いて行うコンピュータ装置を構成する電磁結合コンピュータモデュール装置。 (2) 一致点同じ構造のもの同士が複数隣接して結合し集合型コンピュータを構成するための結合型コンピュータであり,多面形状の複数のケーシング毎に,CPUやメモリ及び入出力インターフェースなどのコンピュータ構成要素を内蔵し,該各多面形状のケーシングの各面ごとにそれぞれコードレス型の入出力用信号伝達素子を配設し,前記ケーシングの各面ごとに設けられた前記入出力用信号伝達素子を該ケーシング内の前記入出力用インターフェースに接続し,前記ケーシングの各面に設けられた前記入出力用信号伝達素子と,これに隣接する他のケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子を通じて他のコンピュータの入出力用信号伝達素子との間で双方向のデータ伝送を行うことができるようにし,前記ケーシングの各面に設けられた複数の入出力用信号伝達素子を該ケーシング内の前記入出力インターフェースに接続し,前記入出力用信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しを行うようにした結合型コンピュータ。 (3) 相違点ア相違点1メモリにつき,本願発明はメモリ「IC」であるのに対し,引用発明は,メモリがマイクロプロセッサ等とともにLSIに集積されており,(メモリのみを搭載した)メモリICではない点。 イ相違点2本願発明は,「該各多面形状のケーシング毎に信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータを内蔵し」との特定を有するのに対し,引用発明は,そのような特定を有しない(そもそも,多重スイッチルータを有しない)点。 ウ相違点3ケーシングの各面に設けられた複数の入出力用信号伝達素子 タを内蔵し」との特定を有するのに対し,引用発明は,そのような特定を有しない(そもそも,多重スイッチルータを有しない)点。 ウ相違点3ケーシングの各面に設けられた複数の入出力用信号伝達素子とケーシング内の入 出力インターフェースとの接続につき,本願発明は,「前記多重スイッチルータを介して」との特定を有するのに対し,引用発明は,そのような特定を有しない点。 エ相違点4入出力用信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しにつき,本願発明は,「信号選択及びバイパス機能を有する前記多重スイッチルータを通じて」行うとの特定を有するのに対し,引用発明は,そのような特定を有しない点。 オ相違点5本願発明は,「前記多重スイッチルータにより前記ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにした」との特定を有するのに対し,引用発明は,そのような特定を有しない点。 第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張審決には,以下のとおり,本願発明の容易想到性判断の誤りがある。 (1) 取消事由1(「多重スイッチルータ」に関する認定,判断の誤り)審決には,引用例2記載の発明のルータ部が本願発明の多重スイッチルータに相当するとの認定,判断をした誤りがある。 すなわち,本願発明の多重スイッチルータにおける「多重」とは,本願明細書の段落【0015】によれば,周波数,時間,符号を使って,データ伝送路の選択を行う信号多重化機能のことをいう。本願発明においては,多重スイッチルータにより入出力ポート間に形成されるバイパスは必然的に双方向にデータ伝送路が形成されることになるから,片方向のみしかデータの伝送ができないものは,入出力ポート間にバイパスが形成 は,多重スイッチルータにより入出力ポート間に形成されるバイパスは必然的に双方向にデータ伝送路が形成されることになるから,片方向のみしかデータの伝送ができないものは,入出力ポート間にバイパスが形成されたとはいえない。これに対し,引用例2記載の発明のルータ部は,片方向のみしか伝送路が形成されず,このような状態は,入出力ポート間にバイパスが形成されたとはいえない。 また,本願発明において,入出力用信号伝達素子は,多面形状のケーシングの各 面に配設され,多重スイッチルータに接続しているから,多重スイッチルータは,少なくとも入出力ポート用に4入力4出力(六面体では6入力6出力)の構成を有しているのに対し,引用例2は,2入力2出力あるいは3入力3出力にすぎない。 したがって,引用例2記載の発明のルータ部は,本願発明の多重スイッチルータに相当するとはいえない。 (2) 取消事由2(「バイパス」に関する認定,判断の誤り)審決には,引用発明の通信経路に,引用例2に記載されたバッファと,出力先を決定するスイッチから構成されるルータ部を設ければ,ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用伝達素子間にバイパスを形成することができるとの認定,判断をした誤りがある。 すなわち,本願発明に係る特許請求の範囲には,「・・・前記多重スイッチルータにより前記ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにしたこと」と記載され,入出力ポート間に双方向のデータ伝送路(バイパス)を形成できることを構成要件としているのに対し,引用例2には,双方向のデータ伝送が可能であり,かつ多面体の各面に設けた入出力用伝達素子間にバイパスを形成することができる多重スイッチルータに相当するスイッチルータの開示がなく としているのに対し,引用例2には,双方向のデータ伝送が可能であり,かつ多面体の各面に設けた入出力用伝達素子間にバイパスを形成することができる多重スイッチルータに相当するスイッチルータの開示がなく,引用発明に引用例2記載の発明のルータ部を設けても,任意に選択した2組の電磁結合部間に双方向のデータ伝送路(バイパス)を形成することができない。 これに対し,被告は,本願発明は,バイパスを片方向で形成することを排除しているものではないと主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり失当である。 すなわち,多重スイッチルータは,周波数,時間,符号を使ってデータ伝送路の選択を行うから,入出力ポート間に形成されるバイパスは双方向が必然であり,双方向でなければ,「他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出し」を行うことができない。本願発明に係る特許請求の範囲には,「他のコンピュータの入出力用伝達素子との間で双方向のデータ伝送を行うことができるようにし」と記載されており, バイパスが双方向であることが限定されている。 したがって,引用発明の通信経路に,引用例2に記載されたバッファと,出力先を決定するスイッチから構成されるルータ部を設けても,ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用伝達素子間にバイパスを形成することはできない。 (3) 取消事由3(本願発明の作用効果に係る判断の誤り)審決は,本願発明は,引用例1,2に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,格別顕著な効果があるとは認められないと判断する。しかし,引用例1記載のコンピュータに引用例2記載のルータ部を設けても,多面形状のケーシングの各面に設けられた入出力信号伝達素子間にバイパスを設けることができないから,上記審決の判断に いと判断する。しかし,引用例1記載のコンピュータに引用例2記載のルータ部を設けても,多面形状のケーシングの各面に設けられた入出力信号伝達素子間にバイパスを設けることができないから,上記審決の判断には誤りがある。 (4) 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された発明及び慣用技術に基づいて容易想到であるとした審決の判断には誤りがある。 2 被告の反論審決の本願発明の容易想到性判断には,以下のとおり,誤りはない。 (1) 取消事由1(「多重スイッチルータ」に関する認定,判断の誤り)に対して原告は,審決が引用例2記載の発明のルータ部は本願発明の多重スイッチルータに相当するとの認定,判断をした誤りがあると主張する。しかし,原告の上記主張は失当である。すなわち,ア本願発明の多重スイッチルータは,信号選択(信号の取り込み,信号の吐き出し)及びバイパス機能を有することが記載されているにすぎず,周波数,時間,符号を使うことやこれに限定すべきことは,本願明細書に記載も示唆もされていない。そうすると,本願発明の多重スイッチルータにおける「多重」とは,ルータが当然に有する,データ伝送路の選択を行うための前提となる信号多重化機能のことを意味するにすぎず,引用例2記載のルータ部もこのような多重スイッチルータであることに変わりはない。 イ本願発明に係る特許請求の範囲には,双方向のデータ伝送につき,入出力用信号伝達素子が双方向のデータ伝送を行うことができること,及び,隣接する他の結合型コンピュータとの間で双方向のデータ伝送を行うことができることは記載されているものの,ケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子間のバイパスが双方向のデータ伝送を行うことについては,記載されていない。また,本願発明において,隣接し 行うことができることは記載されているものの,ケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子間のバイパスが双方向のデータ伝送を行うことについては,記載されていない。また,本願発明において,隣接しない結合型コンピュータ間で双方向のデータ伝送を行うとしても,一方の結合型コンピュータから他の結合型コンピュータへの伝送路と,他の結合型コンピュータから一方の結合型コンピュータへのデータ伝送路とが,それぞれ異なる結合型コンピュータの片方向のバイパスを経由するものを排除するものではない。そうすると,本願発明において,隣接しない結合型コンピュータ間で双方向のデータ伝送を行うとしても,バイパスについては双方向のデータ伝送を行うものには限定されない。本願発明の「バイパス」は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,あるポートから他のポートへデータを伝送する際に,バイパスがなければ入出力インターフェースやCPUを経由せざるを得ないところ,ポート間に入出力インターフェースやCPU等を迂回するバイパスを形成できるようにしたものであり,データ伝送が双方向か片方向であるかとは無関係である。 なお,本願発明の多重スイッチルータにおける「多重」が,周波数,時間,符号を使ってデータ伝送路の選択を行う信号多重化機能を意味するとしても,片方向のバイパスでも,データを伝送する際に,周波数,時間,符号を使ってデータ伝送路の選択を行うから,本願発明の多重スイッチルータの「多重」を根拠に「バイパス」が双方向にデータを伝送するものに限定されるとはいえない。また,審決は,引用例2に記載された発明のルータ部が,本願発明の多重スイッチルータに関する事項のうち,「信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータ」との点で一致するとしたにすぎず,「複数の入出力用信号伝達素子間にバイパ れた発明のルータ部が,本願発明の多重スイッチルータに関する事項のうち,「信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータ」との点で一致するとしたにすぎず,「複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにした」ことなどについては別途検討している。 ウ引用例2の「本実施例では二次元のネットワークの場合を説明したが,ルー タ部51にスイッチ57を増設するだけで高次元のネットワークに拡張可能である」(段落【0244】)との記載によれば,ルータ部は,スイッチの増設により入出力数を任意に拡張できることは明らかであり,引用例2に記載されたルータ部の入出力部が2入力2出力又は3入力3出力であるとの原告の主張は失当である。 (2) 取消事由2(「バイパス」に関する認定,判断の誤り)に対して原告は,審決には,引用発明の通信経路に,引用例2に記載されたバッファと,出力先を決定するスイッチから構成されるルータ部を設ければ,ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成することができるとの認定,判断をした誤りがあると主張する。 しかし,原告の上記主張は,失当である。すなわち,引用発明の通信経路(電磁結合部とシリアルI/Oポートとの間)に,引用例2に記載されたルータ部及びバイパススイッチを設けて,ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用伝達素子間にバイパスを形成するために配線を行うことは,単なる設計的事項にすぎない。また,上記のとおり,本願発明に係る特許請求の範囲には,バイパスが双方向のデータ伝送を行うこと,任意に選択した2組の入出力用伝達素子間に複数のバイパスを同時に形成することについて,何ら記載されていない。入出力用伝達素子間の一部のデータ伝送路にバイパスを形成するだけでも,そ ータ伝送を行うこと,任意に選択した2組の入出力用伝達素子間に複数のバイパスを同時に形成することについて,何ら記載されていない。入出力用伝達素子間の一部のデータ伝送路にバイパスを形成するだけでも,そのデータ伝送路についてはバイパスの効果が得られるから,任意に選択した2組の入出力用伝達素子間にバイパスを形成することは,実施例の1つにすぎない。 (3) 取消事由3(本願発明の作用効果に係る判断の誤り)に対して本願発明は,引用例1,2に記載された発明及び慣用技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであり,格別顕著な作用効果も奏しない。 (4) 以上のとおり,審決の容易想到性判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,審決の容易想到性判断には誤りがあり,これを取消すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりであるが,事案に鑑み,取消事由1ないし3を 併せて判断する。 1 事実認定(1) 本願発明ア本願発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりである。 イまた,本願明細書(甲1)には,以下の記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は多数の接続されたコンピュータから成る集合型コンピュータを構成するための結合型コンピュータに関する。 【0002】【従来の技術】多数のコンピュータをクラスタ接続して集合型超コンピュータを構成し,これをASP(ApplicationServiceProvider)のデータセンターを構成するサーバーとして使用したり,あるいは,大型の科学計算を行うスーパーコンピュータとして使用することが従来行われている。各コンピュータ間の接続はコードによるものが一般的である。 【0003】【発明が解決しようとする課題】多数のコンピュータをクラスタ 行うスーパーコンピュータとして使用することが従来行われている。各コンピュータ間の接続はコードによるものが一般的である。 【0003】【発明が解決しようとする課題】多数のコンピュータをクラスタ接続して集合型超コンピュータを構成するような場合,コンピュータ全体の集合体積が大きくなってしまい極めて不便である。また,各コンピュータを接続するコードが膨大な量となって全体の収納スペースが大きくなってしまうという問題点があった。また,各コンピュータの結合作業が極めて煩わしくしかも時間がかかるという問題点があった。本発明は上記問題点を解決することを目的とするものである。 【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため,本発明は,同じ構造のもの同士が複数隣接して結合し集合型コンピュータを構成するための結合型コンピュータであり,CPUやメモリIC及び入出力インターフェースなどのコンピュータ構成要素を内蔵した多面形状のケーシングにコードレス型の信号伝達素子を配設 し,該信号伝達素子を前記入出力インターフェースに接続し,前記信号伝達素子を通じて他のコンピュータの信号伝達素子との間で双方向のデータ伝送を行うことができるようにし,前記信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しを信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータを通じて行うようにしたものである。また本発明は,前記ケーシングの外形を立方体とし,前記ケーシングの六面の各々の中央に前記信号伝達素子を配置したものである。・・・」「【0007】ケーシング4の各面に配置された前記信号伝達素子22,24は,多重スイッチルータ16を介して入出力インターフェース18に接続している。前記多重スイッチルータ16は,周波数或はコード信号を弁別してデータの選択的取 各面に配置された前記信号伝達素子22,24は,多重スイッチルータ16を介して入出力インターフェース18に接続している。前記多重スイッチルータ16は,周波数或はコード信号を弁別してデータの選択的取り込み,吐き出し及びバイパス処理を行うように構成されている。・・・」「【0014】コンピュータ2の六面体を,隣接するコンピュータ2と電磁結合させたとき,多重スイッチルータ16が,データの導通と遮断のいずれかを行う開閉ゲートとして作動し,周波数,時間,符号を使ってデータ伝送経路の選択をおこなう。 【0015】図5において,ケーシング4の六面にそれぞれ配置された信号伝達素子22,24から成る入出力ポートをA,B,C,D,E,Fとすると,多重スイッチルータ16の各ポートA,B,C,D,E,Fごとの周波数帯域を所要の値に設定することで,任意のポート例えばA,B,C,Dを開き,任意のポート例えばE,Fを閉じることができる。閉じられたポートE,Fからは設定された周波数帯域に対応するデータの取り込み,吐き出しが阻止される。 【0016】また,多重スイッチルータ16により,任意のポート間に側路即ちバイパスを形成することができる。多重スイッチルータ16に所要のバイパス設定制御信号が入力されると,例えばポートA,F間にバイパスが形成され,ポートAに転送されたデータは,入出力インターフェース14に取り込まれることなく,バイパスを通じて,ポートFに伝送される。このようにして,信号伝送経路の選択を各コンピュータ2が自ら行うことができ,特別の信号伝送経路制御装置を用意する 必要がない。」(2) 引用例2の記載引用例2(甲9)には,以下の記載がある。 「【0027】一方,複数の演算プロセッサを相互結合する通信ネットワークは,これらの演算プロセッサを相互 必要がない。」(2) 引用例2の記載引用例2(甲9)には,以下の記載がある。 「【0027】一方,複数の演算プロセッサを相互結合する通信ネットワークは,これらの演算プロセッサを相互に結合するが,プロセッサの数は非常に多いので,任意の演算プロセッサから他の全ての演算プロセッサに結合するための通信経路を備えるのは,物理的にも経済的にも現実的ではない。 【0028】そこで,例えば,図19に示すように,相互に隣接する演算プロセッサ55間の通信チャネル56だけを備えさせ,隣接せず直接に結合されていない演算プロセッサ55間では,一つ以上の中継プロセッサを介して通信を行う方法がある。 【0029】このようなプロセッサ間通信方式としては,例えばW.J.Dally 他の”Deadlock-FreeMessageRoutinginMultiprocessorInterconnectionNetworks”(IEEETrans. Comput., vol.C-6, No.5, May 1987)に開示されているワームホール・ルーティングがある。このワームホール・ルーティングでは,メッセージをフリットと呼ばれる小さな単位に分割して通信を行う。通信は送信側プロセッサから受信側プロセッサまでの経路を確定して開始され,その経路は通信が終了するまでそのメッセージに占有される。 【0030】ワームホール・ルーティングは以上のような通信を行うので,あるメッセージの通信が行われている間は,その通信で使用されている通信チャネルを他のメッセージの通信に使用することはできない。したがって,あるメッセージを構成する全てのフリットの通信が途中で停止してしまうと,その通信に使用されている通信チャネルを必要とする通信は,その間ずっと待ち続けなければ 通信に使用することはできない。したがって,あるメッセージを構成する全てのフリットの通信が途中で停止してしまうと,その通信に使用されている通信チャネルを必要とする通信は,その間ずっと待ち続けなければならない。 すなわち,あるメッセージの通信が他のメッセージの通信を妨害してしまうという問題がある。 【0031】この問題を解決するために,例えばW.J.Dally の”Virtual-Channel FlowControl”(IEEETrans. Para. AndDist. Sys., vol.3, No.2, Mar. 1992)に開示されているように,各演算プロセッサのメッセージの受信側に複数個のフリットを蓄えることのできるバッファを設ける。」「【0038】ところで,図19で示した通信方法とは別に,図29に示すような,通信方法がある。この方法におけるワームホール・ルーティングでは,メッセージをフリットと呼ばれる小さな単位に分割し,中継プロセッサはメッセージが全て到達するのを待たないで,あるフリットが到着したら直ちにそのフリットを次のプロセッサに転送する。」「【0040】・・・ワームホール・ルーティングではハンドシェイクを行って通信を行う必要がある。ハンドシェイクのリクエストとアクノリッジとで一回のフリットの通信が成立するので,一単位時間は2と考えることができる。・・・」「【0043】プロセッサ間通信の他の方式には,特開平2-228762に開示されているワームホール・ルーティングを変形した方法がある。この方法ではメッセージとともに伝達されるクロックの制御のもとに,プロセッサ間で通信が行われる。ワームホールでは通信を行うごとに,ハンドシェイクを行って隣接プロセッサ間で同期をとらなければならないのに対して,この方法ではい ともに伝達されるクロックの制御のもとに,プロセッサ間で通信が行われる。ワームホールでは通信を行うごとに,ハンドシェイクを行って隣接プロセッサ間で同期をとらなければならないのに対して,この方法ではいったんプロセッサ間の経路が決定してしまえば,クロック同期にしたがって通信すればよく,ハンドシェイクを行う必要がない。 【0044】この方法ではいったん経路が確定した後では,ハンドシェイクを行う必要がないので(D+L-1)で通信が行える。しかし,経路を確定するときと,経路の確定を送信側プロセッサへ報告するときには,ワームホール・ルーティングと同様にハンドシェイクを行わなければならず,それぞれ(2×D)の通信時間を必要とする。・・・」「【0050】一方,従来の並列計算機では,出力先の通信チャネルが空いており,通信が可能であるにも関わらず,通信が停止しているメッセージによって他のメッセージの通信が妨害されてしまうという問題があった。 【0051】また,ネットワークの規模がプロセッサ間通信に与える影響が大きく,大規模なネットワークでは通信に非常に時間がかかってしまうという問題もあった。」「【0055】また,第4の発明は,通信可能なメッセージが妨害されずに,通信時間の短縮を可能とする並列計算機を提供することを目的とする。 【0056】第5の発明は,通信チャネルおよび制御信号を中継プロセッサでバイパスすることにより,通信時間の短縮を可能とする並列計算機を提供することを目的とする。」「【0062】また,第4の発明は,複数のプロセッサがN次元ネットワークで相互接続され,各プロセッサが,隣接するプロセッサからメッセージを受信し,出力先を決定する出力先決定手段と,出力先ごとに設けられ,前記出力先決定手段によって出力先が決定されたメッセージ ットワークで相互接続され,各プロセッサが,隣接するプロセッサからメッセージを受信し,出力先を決定する出力先決定手段と,出力先ごとに設けられ,前記出力先決定手段によって出力先が決定されたメッセージを受信した順に蓄える蓄積手段と,蓄積されたメッセージを,決定された出力先のプロセッサに出力する出力手段とから構成される。 【0063】第5の発明は,複数のプロセッサがN次元ネットワークで相互接続され,各プロセッサが,隣接するプロセッサからメッセージおよび制御信号を受信し,メッセージの宛先を判定する判定手段と,判定されたメッセージが自プロセッサ以外の場合,受信したメッセージおよび制御信号を隣接するプロセッサにバイパスするバイパス手段とから構成されている。」「【0230】図20は本実施例で通信されるメッセージのフォーマットの一例である。一つのメッセージは複数のフリットに分割される。先頭の二つのフリットは図20(a)のフォーマットをしており,図中address で表されるメッセージの宛先が書かれている。左右方向の宛先が書かれたフリットに上下方向の宛先が書かれたフリットが続く。各方向の宛先は送信側プロセッサと受信側プロセッサとの間の相互距離で表される。」「【0232】図21は本実施例のルータ部51で行われるルーティング方法であ る。まず左右方向の宛先が一致するまで左右方向に隣接する演算プロセッサ間で通信を行う(ステップ100,101)。続いて上下方向の宛先が一致するまで上下方向に隣接する演算プロセッサ間で通信を行う(ステップ102,103)。第4の発明はこのルーティング方法に限定されず,いかなるアルゴリズムにも適応可能である。」「【0233】・・・クロスバスイッチ62には複数の方向から入力が与えられるので,これらが衝突する場合は調 4の発明はこのルーティング方法に限定されず,いかなるアルゴリズムにも適応可能である。」「【0233】・・・クロスバスイッチ62には複数の方向から入力が与えられるので,これらが衝突する場合は調停が行われる。」「【0246】第5の発明図28は第5の発明の並列計算機で用いられるプロセッサの構成図である。Xin,Xoutはそれぞれ隣接するプロセッサとの間の入力および出力チャネルである。 Pin,Poutはルータ部71と演算処理部72を接続する通信チャネルである。 ルータ部71はXin,Pinから受信したメッセージの転送先を決定し,XoutあるいはPoutに出力するものである。バイパススイッチ73は,第5の発明のために追加された構成であり,Xinからの入力をルータ部71をバイパスして,直接Xoutに出力するブロックである。」「【0248】本実施例で通信されるメッセージのフォーマットは,図20で示したものと同様である。」「【0249】・・・クロスバスイッチ78にはメッセージとリクエスト信号,そして転送先決定ブロック77からメッセージの出力先を示す信号が与えられる。この信号は2方向から与えられるので,これらが衝突した場合には調停を行って,メッセージとリクエスト信号を出力先へスイッチする。・・・」 2 判断(1) 「多重スイッチルータ」に関する認定,判断の誤りについてアまず,本願発明に係る「多重スイッチルータ」の意義について検討する。本願発明に係る特許請求の範囲(請求項1)には,多重スイッチルータに関して,①「前記ケーシングの各面に設けられた複数の入出力用信号伝達素子を・・・該ケー シング内の前記入出力インターフェースに接続し,」,②「前記入出力用信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しを信号選 けられた複数の入出力用信号伝達素子を・・・該ケー シング内の前記入出力インターフェースに接続し,」,②「前記入出力用信号伝達素子による他のコンピュータからの信号の取り込み,吐き出しを信号選択及びバイパス機能を有する」,③「前記ケーシングの各面に配設されたコードレス型の複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるように(する)」ことが記載されているが,多重スイッチルータの意義は,必ずしも一義的に明確ではない部分がある。 そこで,本願明細書の記載を併せて参照することとする。 本願明細書の上記記載によれば,本願発明は,多数のコンピュータをクラスタ接続して集合型超コンピュータを構成するに当たり,コードにより各コンピュータ間を接続するとコンピュータの集合体積が大きくなること,膨大な量のコードを収納するスペースが必要となること,各コンピュータの結合作業が煩雑となることなどの問題があったことから,これらの問題を解決するべく,集合型コンピュータを構成する各コンピュータの入出力インターフェース等のコンピュータ構成要素を多面形状のケーシングに内蔵し,入出力インターフェースに結合されたコードレス型の信号伝達素子をケーシングの各面に配設し,さらに,他のコンピュータからの信号の取り込み及び吐き出しを「信号選択」及び「バイパス機能」を有する多重スイッチルータを通じて行うようにしたものであることが認められる。 そして,本願明細書の段落【0007】,【0014】,【0015】,【0016】によれば,①上記「信号選択」機能とは,他のコンピュータからのデータのうち自コンピュータが取り込むべきデータを選択的に取り込むために信号を選択する機能と,形成されたバイパスを含む信号伝送経路を選択するために信号を選択する機能とを総称したものであり,②上記「バイパス機能」 コンピュータが取り込むべきデータを選択的に取り込むために信号を選択する機能と,形成されたバイパスを含む信号伝送経路を選択するために信号を選択する機能とを総称したものであり,②上記「バイパス機能」とは,入出力用端子間に,入出力インターフェースに取り込まれることなくデータを伝送するためのバイパスを形成するものと認められる。さらに,本願明細書の段落【0015】によれば,「周波数,時間,符号を使ってデータ伝送経路の選択を行う」ことの例示として,各ポートに設定された周波数帯域に応じて互いに分離できるようにされた複数の信号が伝送される例が示されており,これらの記載は,いずれも「多重スイッチルータ」が 周波数等を用いた弁別により互いに分離できる状態で複数の信号を伝送することを前提としたものと解される。 そうすると,本願発明における「多重スイッチルータ」は,①データの導通と遮断を行う開閉ゲートとして作動し,ポートごとの周波数帯域を所定の値に設定することによってポートを閉じてデータの取り込みや吐き出しを阻止し,②各コンピュータが周波数,時間,符号を使ってデータの伝送経路を選択する際,特別の信号伝送経路制御装置を用意することなく,ポート間にバイパスを形成し,③バイパスが形成された場合には,当該コンピュータの入出力インターフェースに取り込まずにポートからポートへとデータを伝送する機能を有するものであること,また,「多重」とは,互いに分離できるように複数の信号を物理的に1つの伝送路により伝送することを意味するものといえる。 以上によれば,本願発明に係る「多重スイッチルータ」とは,データの導通や遮断を行うスイッチとして作動し,かつ,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されるルータを意味するものであって,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送さ 「多重スイッチルータ」とは,データの導通や遮断を行うスイッチとして作動し,かつ,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されるルータを意味するものであって,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されないルータはこれに含まれないものと解される。 イ一方,引用例2には,以下の事項が記載されている。すなわち,相互に隣接する演算プロセッサ間の通信チャネルだけを備えた複数の演算プロセッサを相互結合する通信ネットワークにおけるプロセッサ間通信方法として,①ハンドシェイクを行った上でメッセージをフリットという単位に分割して通信を行い,その際,通信開始時に送信側プロセッサから受信側プロセッサまでの経路が確定され,通信終了までその経路が占有されるワームホール・ルーティングという方法,②これを変形した方法として,各演算プロセッサのメッセージの受信側に複数個のフリットを蓄積可能なバッファを設けたり,中継プロセッサがメッセージが全て到達するのを待たずに到着したフリットを次のプロセッサに転送したり,通信を行う度にではなく経路確定の際のみハンドシェイクを行ってその後はクロック同期に従って通信を行う方法,が従来存在したところ,これらの従来技術においては,通信可能なメッ セージが妨害される等の課題が存在することから,この課題を解決して通信時間の短縮を可能とするべく,メッセージの受信側にではなくメッセージの出力先毎にバッファを設ける構成(第4の発明),又は,受信したメッセージの宛名によってメッセージが自プロセッサ以外を宛名としている場合にメッセージおよび制御信号を他のプロセッサにバイパスする構成(第5の発明)が開示されている(甲9段落【0027】ないし【0031】,【0038】,【0040】,【0043】,【0044】,【0050】,【0052】,【0055 のプロセッサにバイパスする構成(第5の発明)が開示されている(甲9段落【0027】ないし【0031】,【0038】,【0040】,【0043】,【0044】,【0050】,【0052】,【0055】,【0056】,【0062】,【0063】)。 また,引用例2には,第4の発明に関して,1つのメッセージが複数のフリットに分割され,そのうちの先頭の2つのフリットが左右方向の宛先及び上下方向の宛先となっており,ルータ部が行うルーティングにおいて,まず左右方向の宛先が一致するまで左右方向に隣接する演算プロセッサ間で通信を行い,続いて上下方向の宛先が一致するまで上下方向に隣接する演算プロセッサ間で通信を行うこと,ルータを構成するクロスバスイッチに複数方向から入力が与えられてこれらが衝突する場合には調停が行われ,いずれかの方向からの伝送のみが行われることが開示されている(甲9段落【0230】,【0232】,【0233】)。 さらに,引用例2には,第5の発明に関して,ルータ部にこれをバイパスするためのバイパススイッチを追加したものであって,ルータを構成するクロスバスイッチに複数方向から入力が与えられて,これらが衝突する場合には調停が行われ,いずれかの方向からの伝送のみが行われることが開示されている(甲9段落【0246】,【0248】,【0249】)。 以上によれば,引用例2には,ワームホール・ルーティングやこれを変形した方法について生じた課題を解決する方法として,第4の発明及び第5の発明が開示されているが,第4の発明及び第5の発明のいずれにおいても,ルータに複数方向からの入力が与えられてこれらが衝突する場合には調停が行われて,いずれかの方向からの入力についてのみ伝送が行われ,1つのメッセージを構成する複数のフリットは連続して入力され宛先に届くもの に複数方向からの入力が与えられてこれらが衝突する場合には調停が行われて,いずれかの方向からの入力についてのみ伝送が行われ,1つのメッセージを構成する複数のフリットは連続して入力され宛先に届くものであり,ある方向からの1つのメッセージを 構成するフリットの伝送と他の方向からのメッセージを構成するフリットの伝送とは衝突し調停されるものといえる。 引用例2には,「第4の発明はこのルーティング方法に限定されず,いかなるアルゴリズムにも適応可能である」(段落【0045】)と記載されているものの,衝突し調停されるものとされたメッセージを構成するフリットの伝送を,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送するものに変形することは,記載も示唆もされていない。 したがって,引用例2には,スイッチ機構を用いたルータの開示はあるものの,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送され得るような「多重スイッチルータ」についての開示はない。 以上のとおり,本願発明の多重スイッチルータは,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されているものであるのに対し,引用例2記載の発明のルータ部は,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送され得るようなものではないから,これらが互いに相当する構成であるとした審決の認定,判断には誤りがある。 ウこれに対し,被告は,①本願発明の多重スイッチルータにおける「多重」とは,ルータが当然に有する,データ伝送路の選択を行うための前提となる信号多重化機能を指すにすぎない,②本願発明に係る特許請求の範囲には,多重スイッチルータにつき,周波数,時間,符号を使う点についての記載はなく,本願明細書の記載を参酌しても,周波数,時間,符号を使うものに限定して解釈すべき理由はないなどと主張する。 しかし,本願発明に係る「多重スイッチルータ」が,デー ,符号を使う点についての記載はなく,本願明細書の記載を参酌しても,周波数,時間,符号を使うものに限定して解釈すべき理由はないなどと主張する。 しかし,本願発明に係る「多重スイッチルータ」が,データの導通や遮断を行うスイッチとして作動し,かつ,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されるルータを意味するものであって,互いに分離できる状態で複数の信号が伝送されないルータはこれに含まれないことについては,前記のとおりであり,被告のこの点の主張は,採用の限りでない。 また,被告は,審決は,引用例2に記載された発明のルータ部が,本願発明の多 重スイッチルータに係る事項のうち,「信号選択及びバイパス機能を有する多重スイッチルータ」との点で一致すると認定したのであり,「複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにした」との技術事項に関する容易想到性の有無については,別途検討しているとも主張する。 しかし,被告の上記主張は,失当である。すなわち,引用例2記載の発明のルータ部は,ある方向からの1つのメッセージを構成するフリットの伝送中に他の方向からのメッセージを構成するフリットが調停を経ずに伝送されることをそもそも予定していないから,信号多重化機能を当然に有するものとはいえない。なお,審決は,引用例2記載の発明のルータ部が本願発明の多重スイッチルータに相当することを前提として,複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにした点について検討したものであって,その前提に誤りがあるから,被告の上記主張は,採用できない。 エ以上のとおり,引用例2記載の発明のルータ部が本願発明の多重スイッチルータに相当することを前提とした,審決の容易想到性判断には誤りがある。 (2) 「バイパス」に関する認定,判断の誤り被告は,本願 上のとおり,引用例2記載の発明のルータ部が本願発明の多重スイッチルータに相当することを前提とした,審決の容易想到性判断には誤りがある。 (2) 「バイパス」に関する認定,判断の誤り被告は,本願発明に係る特許請求の範囲には,「複数の入出力用信号伝達素子間にバイパスを形成できるようにした」との記載はあるが,このバイパスが双方向でデータ伝送を行うとの記載はなく,発明の詳細な説明を参酌しても,入出力用信号伝達素子間に形成されるバイパスについて,双方向のデータ伝送を行うものに限定して解釈すべき根拠はない,本願発明における多重スイッチルータの「多重」との文言を根拠として,「バイパス」を双方向にデータを伝送するものに限定して解釈することはできないと主張する。 しかし,被告の上記主張は,失当である。すなわち,本願発明に係る特許請求の範囲には,「前記ケーシングの各面に設けられた前記入出力用信号伝達素子と,これに隣接する他のケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子を通じて他のコンピュータの入出力用信号伝達素子との間で双方向のデータ伝送を行うことがで きるようにし」との記載があり,「ケーシングの各面に設けられた前記入出力用信号伝達素子」が「他のコンピュータの入出力用信号伝達素子」との間で,双方向のデータ伝送を行うこと,その際,この双方向のデータ伝送が隣接する他のケーシングの各面に設けられた入出力用信号伝達素子を通じて行われるものと認められる。そうすると,本願発明は,自コンピュータのケーシングの特定の面に設けられた入出力用信号伝達素子によって行われるデータ伝送が双方向のものであり,このような双方向のデータ伝送を行う入出力用信号伝達素子間に形成されるバイパスを,あえて片方向のデータ伝送のみに用いることは想定することができず,双方向の伝送が れるデータ伝送が双方向のものであり,このような双方向のデータ伝送を行う入出力用信号伝達素子間に形成されるバイパスを,あえて片方向のデータ伝送のみに用いることは想定することができず,双方向の伝送が可能なものと認められる。 また,引用発明の通信経路に,引用例2に記載されたメッセージを双方向に通信するバイパススイッチが追加されたルータ部を備えることができるとしても,上記のとおり,引用例2記載の発明のルータ部は,本願発明の多重スイッチルータに相当するとはいえず,引用発明に引用例2記載のルータ部を適用しても,多重スイッチルータを用いる本願発明の構成とはならない。 したがって,入出力用信号伝達素子間に形成される「バイパス」に係る審決の認定,判断には誤りがある。 3 結論以上のとおり,審決の容易想到性判断には誤りがあり,原告の請求には理由がある。その他,被告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官知野明
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