令和3(行ウ)42 行政処分義務付等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月8日 さいたま地方裁判所
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判決文本文43,865 文字)

令和6年5月8日判決言渡令和3年(行ウ)第42号行政処分義務付等請求事件 主文 1⑴ 処分行政庁が令和2年6月19日付けで原告に対してした重度訪問介護の 支給量を1か月413時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定について上記支給量を1か月704時間とする決定の義務付けを求める訴えのうち、上記支給量を1か月605.5時間を超える時間とする決定の義務付けを求める部分を却下する。 ⑵ 前記⑴の変更決定のうち、上記支給量につき1か月413時間を超えて605.5時間に達するまでの部分を支給量として算定しないものとした部分を取り消す。 ⑶ 処分行政庁は、原告に対し、前記⑴の変更決定に係る重度訪問介護の支給量を1か月605.5時間を下回らない時間とする決定をせよ。 2⑴ 処分行政庁が令和2年8月31日付けで原告に対してした重度訪問介護の支給量を1か月413時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定について上記支給量を1か月704時間とする決定の義務付けを求める訴えのうち、上記支給量を1か月605.5時間を超える時間とする決定の義務付けを求める部 分を却下する。 ⑵ 前記⑴の変更決定のうち、上記支給量につき1か月413時間を超えて605.5時間に達するまでの部分を支給量として算定しないものとした部分を取り消す。 ⑶ 処分行政庁は、原告に対し、前記⑴の変更決定に係る重度訪問介護の支給 量を1か月605.5時間を下回らない時間とする決定をせよ。 3⑴ 被告は、原告に対し、133万7455円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合によ 護の支給 量を1か月605.5時間を下回らない時間とする決定をせよ。 3⑴ 被告は、原告に対し、133万7455円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は、原告に対し、5万円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求1⑴ 処分行政庁が令和2年6月19日付けで原告に対してした重度訪問介護の 支給量を1か月413時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定を取り消す。 ⑵ 処分行政庁は、原告に対し、原告が令和元年10月10日にした介護給付費等の支給決定の変更申請に対する重度訪問介護の支給量を1か月704時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費 支給決定の変更決定をせよ。 2⑴ 処分行政庁が令和2年8月31日付けで原告に対してした重度訪問介護の支給量を1か月413時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定を取り消す。 ⑵ 処分行政庁は、原告に対し、原告が令和2年4月2日にした介護給付費等の 支給申請に対する重度訪問介護の支給量を1か月704時間とする障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定をせよ。 3⑴ 被告は、原告に対し、514万9675円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ための法律に基づく介護給付費支給決定の変更決定をせよ。 3⑴ 被告は、原告に対し、514万9675円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する令和3年11月16日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)により重度の身体障害を有する原告が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「総合支援法」という。)に基づく重度訪問介護の介護給付費の支給決定の申請及び変更の 申請をしたところ、処分行政庁においては不当に少ない支給量(介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量)を定めた介護給付費の支給決定及び支給決定の変更の決定を繰り返したなどという旨を主張して、被告に対し、次の各請求をする事案である。 ⑴ア令和2年6月19日付けでされた介護給付費支給決定の変更の決定の取消 請求(請求の1⑴)イ上記アに係る重度訪問介護の支給量を1か月704時間とする介護給付費支給決定の変更の決定の義務付け請求(同⑵)⑵ア令和2年8月31日付けでされた介護給付費支給決定の変更の決定の取消請求(請求の2⑴。以下、前記⑴アの取消請求と併せて「本件取消請求」という。) イ上記アに係る重度訪問介護の支給量を1か月704時間とする介護給付費支給決定の変更の決定の義務付け請求(同⑵。以下、前記⑴イの義務付け請求と併せて「本件義務付け請求」という。)⑶ア平成30年5月18日から令和2年8月31日までにされた介護給付費支給決定や支給決定の変更の決定に係る違法行為を理由とする国家賠償法1条1項に 基づく損害賠償金514万9675円及びこれに対す 平成30年5月18日から令和2年8月31日までにされた介護給付費支給決定や支給決定の変更の決定に係る違法行為を理由とする国家賠償法1条1項に 基づく損害賠償金514万9675円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年11月16日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求(請求の3⑴)イ被告の職員が平成31年4月12日の自宅調査の際にした原告に対する違法行為を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金50万円及びこれに対す る訴状送達の日の翌日である令和3年11月16日から支払済みまで平成29年法 律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求(同⑵。以下、前記アの国家賠償請求と併せて「本件国家賠償請求」という。)なお、関係法令の定めは別紙2に記載のとおりである。 2 前提事実等⑴ア原告(昭和51年▲月▲日生まれの男性)は、平成27年6月に筋萎縮性 側索硬化症(ALS)との診断を受け、平成28年3月▲日に障害名をALSによる左上腕機能障害(上腕4級)、体幹機能障害(体幹5級)とし、身体障害者等級表による級別を4級とする身体障害者手帳の交付を受け、同年12月▲日に障害名をALSによる両上肢機能障害(上肢2級)、体幹機能障害(歩行困難)(体幹3級)とし、上記級別を1級とする身体障害者手帳の再交付を受けた者である(甲1、 22)。 イ原告は、平成19年7月▲日、A(昭和52年▲月▲日生の女性。以下、後記ウの離婚の前後を問わず「妻」という。)と婚姻し、平成21年▲月▲日に第1子(長女)を、平成23年▲月▲日に第2子(長男)を、平成25年▲月▲日に第3子(二男)をもうけ、埼玉県吉川市内にある自宅 記ウの離婚の前後を問わず「妻」という。)と婚姻し、平成21年▲月▲日に第1子(長女)を、平成23年▲月▲日に第2子(長男)を、平成25年▲月▲日に第3子(二男)をもうけ、埼玉県吉川市内にある自宅(以下「原告宅」という。)で 家族と同居していた(甲102)。 ウ原告は、令和2年10月▲日に妻と離婚し、同年11月▲日、単身で埼玉県越谷市へ転出した(甲1、88、102)。 ⑵ア原告は、介護保険法に係る要介護3の要介護認定を受けていたところ、平成29年5月29日、吉川市長に対し、重度訪問介護の介護給付費等の支給申請を した(甲2)。 イ吉川市長は、平成29年7月24日、原告に対し、有効期間を同年6月1日から平成30年5月31日まで、重度訪問介護区分6該当者に係る支援の支給量(以下、単に「支給量」という。)を1か月当たり50.0時間(以下、単位期間(1か月、1日)当たりの時間については「時間/月」、「時間/日」などの単位をも って示す。)、うち重度訪問介護加算移動(以下、単に「加算移動」という。)を 10.0時間/月とする重度訪問介護の介護給付費支給決定をした(甲6)。 ⑶ア原告は、介護保険法に係る要介護5の要介護認定を受けた上、平成30年5月1日、吉川市長に対し、重度訪問介護の介護給付費等の支給申請(支給期間満了による更新のためのもの)をした(甲7)。 イ吉川市長は、平成30年5月18日、原告に対し、有効期間を同年6月1日 から平成31年(令和元年)5月31日まで、支給量を50.0時間/月、うち加算移動を10.0時間/月とする重度訪問介護の介護給付費支給決定(以下「本件処分①」という。)をした(甲8)。 ⑷ア原告は、B弁護士及びC弁護士を代理人として、平成31年1月24日、吉川市長に対し、支給量を .0時間/月とする重度訪問介護の介護給付費支給決定(以下「本件処分①」という。)をした(甲8)。 ⑷ア原告は、B弁護士及びC弁護士を代理人として、平成31年1月24日、吉川市長に対し、支給量を704時間/月、うち加算移動を28時間/月とするよ う求めて重度訪問介護の介護給付費支給決定の変更の申請(以下「支給変更申請」という。)をした(甲11、12)。 イ吉川市こども福祉部障がい福祉課(以下、単に「福祉課」という。)の職員3名(D、E及びF)は、平成31年4月12日、原告宅において現地訪問調査(以下「H31/4自宅調査」という。)を実施した。 同職員のうちF職員は、H31/4自宅調査の際、原告及びB弁護士ほかがいる場において、「いま、寝返りは、ご自身でできますか。」と発問し、これを受けて原告が文字盤上の文字を示してヘルパーがこれを読み取り始めたところ、F職員は、「よろしいですか。」と述べた上で、「これ、時間かせぎですか。」、「なんか今もできないようにさしているような。」という発言(以下「本件発言」という。)をし た(ただし、本件発言が誰に向けてされたものか等について、当事者間に争いがある。)。(甲28、29、30の1及び2、69)ウ吉川市長は、平成31年4月25日、原告に対し、支給量を373.0時間/月、うち加算移動を28.0時間/月に変更する旨の重度訪問介護の介護給付費支給決定の変更決定(以下「支給変更決定」といい、同日にされた支給変更決定を 「本件処分②」という。)をした。上記373.0時間は、①1日24時間介護の 必要性を否定した上で、日中の支援については朝2時間、昼3時間、夕方3時間、夜2時間(合計10時間)の見守りを含む支援が適当であると判断し、就寝時は主に人工呼吸器の見守りのため8時 時間介護の 必要性を否定した上で、日中の支援については朝2時間、昼3時間、夕方3時間、夜2時間(合計10時間)の見守りを含む支援が適当であると判断し、就寝時は主に人工呼吸器の見守りのため8時間の支援が適当であるとして、基礎時間数を558時間/月とし、②妻による就寝時の家族支援120時間(8時間×15日)、他のサービス65時間(介護保険40時間、訪問介護25時間(1時間×5回×5週)) の合計185時間を控除して算出されたものであった。(甲35)⑸ア原告は、B弁護士及びC弁護士ほかを代理人として、令和元年5月27日、吉川市長に対し、改めて、支給量を704時間/月、うち加算移動を28時間/月とするよう求めて重度訪問介護の支給変更申請をした(甲36、37)。 イ吉川市長は、令和元年7月3日、原告に対し、前記⑷アの支給変更申請時か ら変化は認められず、改めて支給量について検討しても前記⑷ウと同等の支給量が適当であると判断して、支給量を変更しない旨の決定(以下「本件処分③」という。)をした(甲42)。 ⑹ア原告は、気管切開手術を受ける予定であること等を踏まえ、B弁護士及びC弁護士を代理人として、令和元年10月10日、吉川市長に対し、支給量を70 4時間/月、うち加算移動を40時間/月とするよう求めて支給変更申請をした(甲45、46)。その後、原告は、令和元年11月12日に気管切開手術を受けた。 イ令和元年12月6日、原告が当時入院していた獨協医科大学越谷病院において、総合支援法22条1項及び総合支援法施行規則12条に規定する勘案事項(以下、単に「勘案事項」という。)の調査のため、被告の職員3名が病院訪問調査(以 下「R1/12病院調査」という。)を実施した(甲50の1及び2)。 被告の職員3名は、令和 定する勘案事項(以下、単に「勘案事項」という。)の調査のため、被告の職員3名が病院訪問調査(以 下「R1/12病院調査」という。)を実施した(甲50の1及び2)。 被告の職員3名は、令和元年12月13日、勘案事項の調査のため、原告宅において自宅訪問調査(以下「R1/12自宅調査」という。)を実施した(甲52の1及び2)。 ウ吉川市長は、令和元年12月27日、支給量を413.0時間/月に変更す るとの支給変更決定(以下「本件処分④」という。)をした。上記413.0時間 は、①本人が支援を要する時間数について、朝2時間、昼3時間、夕方3時間、夜2時間(合計10時間)の見守りを含む支援が適当であると判断して基礎時間数を310時間とし、自力で排痰ができず介護者による吸引が必要であるため加算時間数を1月当たり434時間(基礎時間数以外の全ての時間)とし、②妻による起床中の家族支援270時間、他のサービス61時間(介護保険40時間、訪問介護2 1時間(1時間×(3回×3週+6回×2週))の合計331時間を控除して算出されたものであった。(甲54)⑺ア原告は、令和2年4月2日、吉川市長に対し、支給期間満了のための更新として、重度訪問介護の介護給付費等の支給申請をした(甲56)。 イ吉川市長は、令和2年6月8日、原告に対し、有効期間を同年6月1日から 令和3年5月31日まで、支給量を413.0時間/月、うち加算移動28時間/月とする重度訪問介護の介護給付費等の支給決定(以下「本件処分⑤」という。)をした(甲57)。 ⑻ア吉川市長は、令和2年6月19日、職権により、原告に対し、本件処分④について、令和元年12月27日をもって支給量を413.0時間/月、うち加算 移動40時間/月と変更する旨のものに変更す ⑻ア吉川市長は、令和2年6月19日、職権により、原告に対し、本件処分④について、令和元年12月27日をもって支給量を413.0時間/月、うち加算 移動40時間/月と変更する旨のものに変更するとの重度訪問介護の支給変更決定(以下「本件処分⑥」という。)をした。なお、上記413.0時間の算定根拠は、本件処分④におけるものと同じであった。(甲58)イ吉川市長は、令和2年8月31日、職権により、原告に対し、本件処分⑥に伴い、本件処分⑤について支給量を413.0時間/月、うち加算移動40時間/ 月と変更するとの重度訪問介護の支給変更決定(以下「本件処分⑦」という。)をした(甲59)。 ⑼ 原告は、令和2年3月19日付けで本件処分④について(甲55)、同年9月4日付けで本件処分⑤及び⑥について、同年10月7日付けで本件処分⑦について、各審査請求をした(甲60ないし62)。 これに対し、埼玉県知事は、令和3年3月29日付けで本件処分④についての原 告の審査請求を棄却するとの、同年8月23日付けで本件処分⑤及び⑥についての原告の各審査請求を却下するとの、令和4年4月28日付けで本件処分⑦についての原告の審査請求を却下するとの各裁決をした(甲75ないし77、95)。 ⑽ 原告は、令和3年9月3日、本件処分④ないし⑦の取消し等を求めて本件訴えを提起したが、本件処分④は本件処分⑥により、本件処分⑤は本件処分⑦により それぞれ変更済みであるから本件処分④及び⑤の取消しを求める訴えには訴えの利益がない旨の被告からの本案前の答弁を踏まえ、本件訴えのうち本件処分④及び⑤の取消しを求める部分を取り下げた(記録上明らかな事実)。 ⑾ア被告においては、平成18年に、吉川市障害福祉サービス支給決定基準(吉川市平成18年告示第185号 え、本件訴えのうち本件処分④及び⑤の取消しを求める部分を取り下げた(記録上明らかな事実)。 ⑾ア被告においては、平成18年に、吉川市障害福祉サービス支給決定基準(吉川市平成18年告示第185号。乙1。以下、単に「支給決定基準」という。)が 定められていたところ、支給決定基準は、①総合支援法22条1項に定める支給要否決定を行うに当たり、支給決定をすることが適当と思われる場合は、同項に定める事項を勘案して当該支給要否決定に係る障害者が利用することが適当と思われる障害福祉サービスの種類及び内容を定めるものとし(1項)、②上記の障害福祉サービスの種類及び内容は、週を単位とするものとし(2項)、③総合支援法22条 4項に定める支給量は、1項により定めた障害福祉サービスの種類及び内容により算出された量に10分の50を乗じて算出するものとし(4項)、④被告は、平成18年12月1日以後に障害者について支給決定をする場合において、4項により算出された支給量を総合支援法29条3項並びに総合支援法附則21条2項及び22条4項の厚生労働大臣が定める基準の単価を用いて費用に換算した額が、総合支 援法施行令44条3項1号の厚生労働大臣が定める基準により算定した額を超えるときは、あらかじめ審査会の意見を聴くものとする(5項)旨を定めていた。 イ被告においては、令和元年8月27日付け告示をもって、重度訪問介護を吉川市障害福祉サービス支給決定基準を超えて支給する場合における支給量基準(吉川市令和元年告示第127号。乙2。以下、単に「支給量基準」という。)が定め られたところ、その内容は、別紙3に記載のとおりである。 なお、以上の事実中、重度訪問介護の介護給付費に係る支給申請やこれに対応する支給決定等の経過の概要は別紙4に記載のとおり が定め られたところ、その内容は、別紙3に記載のとおりである。 なお、以上の事実中、重度訪問介護の介護給付費に係る支給申請やこれに対応する支給決定等の経過の概要は別紙4に記載のとおりである。 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 本件処分⑥及び⑦の取消事由の有無等(原告の主張) ア総合支援法の趣旨からすると、処分行政庁には、勘案事項を適切に調査し、適切に考慮することにより、申請に係る障害者の個別具体的な障害の種類、内容、程度その他の具体的な事情に照らして、総合支援法の趣旨目的に合致するような支給決定を行うことが求められており、かかる趣旨目的に反し、勘案事項を適切に調査せず、又は考慮せずにされた支給決定は、裁量権の範囲から逸脱し、又はそれを 濫用したものとして違法となるところ、処分行政庁は、次のとおり、原告の身体状況、必要な介護の内容、家族の状況等の個別的事情を考慮せず、必要な支給量を大幅に下回る本件処分⑥及び⑦をしたもので、処分行政庁には裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用がある。 本件処分⑥及び⑦の各時点において、原告は、日常生活上のあらゆる動作に ついて、厳重な観察と臨機応変かつ慎重に対応できる集中力、精神力及び体力をもってする1日24時間の常時介護を必要とする状態にあった。 a 障害者が自らの選択に基づき在宅で自立生活を送ることは、憲法13条前段及び後段、14条並びに22条1項により保障されており、これを全うすべく憲法25条によって公的な介護給付を受ける権利が保障され、そのような憲法の趣旨 は、障害のある人の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)19条によって具体化され、それらを受けて障害者基本法、総合支援法の定めが設けられているところ、障害者が在宅で自立生活を送る は、障害のある人の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)19条によって具体化され、それらを受けて障害者基本法、総合支援法の定めが設けられているところ、障害者が在宅で自立生活を送るためには職業ヘルパーによる介護を受けることが大前提となるから、当該介護を受ける権利は、憲法の前記各条に由来する重要な権利である。障害者権利条約19条が定める必要な在宅サービスを受け る権利には、職業ヘルパーによる介護を受ける権利が含まれ、障害者基本法6条、 14条により、国及び地方公共団体は、当該権利を実現する責務を負う。障がい者制度改革推進本部の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(甲71。以下、単に「第一次意見」という。)及び「障害者制度改革の推進のための第二次意見」(甲72。以下、単に「第二次意見」という。)が示す法理念を考慮しても、障害者基本法が当該権利を保障しようとしていることは明らかである。 また、平成23年8月30日付け「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(甲70。以下「骨格提言」という。)が示していた基本姿勢を考慮すると、地方公共団体が提供すべき各種の障害福祉サービスを具体的に定める総合支援法も、当該権利を具体化したものといえる。 したがって、支給決定に当たり、必要な介護時間数から家族による介護時間数を 控除することは、原則として許されず、総合支援法22条及び総合支援法施行規則12条が「介護を行う者の状況」を勘案事項とした趣旨は、当該障害者も当該障害者の家族も当該家族による介護を行うことを希望しており、かつ、当該家族に介護を行う能力がある場合に限り、当該家族による介護が可能な時間数を勘案して支給量を決定することを許容したものと解すべきである。 b また、人は 護を行うことを希望しており、かつ、当該家族に介護を行う能力がある場合に限り、当該家族による介護が可能な時間数を勘案して支給量を決定することを許容したものと解すべきである。 b また、人はその意思に反して労働を強制されない権利(憲法13条)や労働の強制によって心身の健康を害されない権利(憲法13条、25条)を有するところ、障害者の家族であるという理由で一種の労働というべき障害者の介護を強制してよいという論理は成り立たない。第一次意見や骨格提言からしても、障害者の家族が介護労働を強制されない権利の保障は、現行の障害者法制を構成する重要な法 理念であり、高齢者虐待防止法及び障害者虐待防止法の根底にも当該法理念が存する。処分行政庁が家族による介護時間数を一方的に算出し、その時間数を控除して支給決定をすることは、その時間分、家族に対して介護労働を強制することと同視でき、上記権利を侵害するものであって違憲、違法である。 この点、「障害」は本人の機能障害のみに起因するものではなく社会に存在する 障壁によっても生じるものであると捉える「社会モデル」は、障害者権利条約によ って国際的に標準的な考え方として確立され、日本国内でも障害者権利条約への署名及び批准、障害者基本法を始めとする障害者法制の整備により基本的な考え方であることが明確にされたところ、同モデルの下、障害者基本法及び総合支援法は、障害者の尊厳ある生活の実現については国や地方公共団体が第一次的な責任を負うべきであって、公助が基本であることを定めている。支給決定をするに当たって初 めから家族が担当すべき介護時間数を算定することは、そのような現行法制の建前にも真っ向から反するものである。 また、民法752条の生活保持義務は、夫婦間において、精神的及び経済的に協力す 初 めから家族が担当すべき介護時間数を算定することは、そのような現行法制の建前にも真っ向から反するものである。 また、民法752条の生活保持義務は、夫婦間において、精神的及び経済的に協力すべきことを定めるものであって、一方配偶者が他方配偶者に対して介護等の作業や労働を提供すべき義務を定めるものではない。 a 前記の点をおくとしても、妻の心身の状態や生活状況からして、妻が原告の介護を担当することは、本件処分⑥及び⑦の当時、不可能であった。 すなわち、妻においては、3人の子の食事や身の回りの世話、精神的なケア、学校や幼稚園関係の雑務をこなすだけでも精一杯の状況であったところに、原告が従前行っていた所有不動産の賃貸・管理業務に係る事務作業や経理等も一手に引き受 けており、休養する時間もなかったもので、それらに加えて原告の介護を担当できる時間はなかった。本件処分⑥及び⑦が家族支援270時間の算定根拠としていた平日及び休日の各時間帯を具体的にみても、妻が原告の介護をすることは現実的に不可能な時間帯であった。 b さらに、大柄な原告の介護を妻が行うことは、身体的に非常に大きな負担で あり、時間的にも心身の状況からも、原告と密に意思疎通しながら原告の希望を正確にくみ取って微妙な手足の位置調整や水分補給などの介護を担当することは、極めて困難であった(妻は、憩室炎にかかり、医師からは無理をしないよう注意を受けてもいた。)。 また、妻は、R1/12病院調査時にも精神的にかなり追い詰められた状況にあったと ころ、本件処分⑥及び⑦の当時、十分な休息も睡眠もとることができず、心身の疲 れと精神的ストレスはピークに達し、過労死寸前に等しい状況にあった。 c 一般的な妻の家事育児に係る時間が就寝時間以外の1日の生活時間の ⑦の当時、十分な休息も睡眠もとることができず、心身の疲 れと精神的ストレスはピークに達し、過労死寸前に等しい状況にあった。 c 一般的な妻の家事育児に係る時間が就寝時間以外の1日の生活時間のうち大部分を占めることは明らかであり(甲74)、3人の子の母及び妻として育児及び家事をこなし、家庭外の業務にも従事する妻において、1日平均8時間ないし9時間の原告の介護を担当することは全く現実的でなかった。 a 訪問看護を受けている時間数を支給量の判断に当たって考慮する場合には、訪問看護時の諸般の事情から介護の必要性の有無を考慮すべきであり、これを考慮しないことは裁量権の範囲を超えたものとして違法であるところ、処分行政庁は、R1/12病院調査、R1/12自宅調査のいずれにおいても訪問看護の内容やその際に必要とされる介護に関する調査を一切しなかったもので、吉川市障害者介護給付費等支 給に関する審査会(以下、単に「審査会」という。)においても訪問看護の内容やその際に必要とされる介護についての調査、検討は何ら行われなかった。これは、支給量基準において、訪問看護との関係について、「看護師のみで問題なく支援が提供されていると判断したときに限り、控除対象とする」とされていることにも反する。以上のような調査及び検討の欠落は、それ自体裁量権の範囲から逸脱したも のである。 b また、訪問看護師には移乗用リフトや文字盤を使うことができない者もおり、原告においては、移乗の介護やスムーズな意思疎通のために、訪問看護中も重度訪問看護のヘルパーを利用することが必要不可欠であった。 c したがって、本件処分⑥及び⑦は、原告が訪問看護等を受ける21時間は介 護が不要であるとした点において、重大な事実誤認があり、裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを とが必要不可欠であった。 c したがって、本件処分⑥及び⑦は、原告が訪問看護等を受ける21時間は介 護が不要であるとした点において、重大な事実誤認があり、裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものである。 被告は、本件処分⑦の前提となった本件処分⑤に当たり勘案事項の調査を行わなかったことについて、緊急事態宣言がされたこと等を主張するが、被告の主張に係る厚生労働省関連の事務連絡(乙20)は、そもそも勘案事項の調査の不実施 を認めるものではなく、また、面会が困難ではなかった原告については当てはまら ない。他方、面会は差し控えるべきであったとしても、電話や書面による方法で調査をすることも可能であった。 イ本件処分⑥及び⑦は、申請を一部拒否する処分であり、行政手続法8条1項本文により、処分行政庁はその理由を示さなければならないところ、本件処分⑥及び⑦について示された理由は、具体性を欠き曖昧なもの等であって、いかなる事実 関係についていかなる審査基準を適用して処分を行ったか一切読み取ることができないもので、理由付記不備の違法もある。 上記に関し、本件処分⑦の前提となった本件処分⑤に係る原告の令和2年4月2日の支給申請は、あくまでも支給量として704時間/月を求める旨の申請であったもので、そのことは、平成31年1月24日以降の手続経過や原告の処分行政庁 に対する交渉経過等からして、処分行政庁にも明らかであった。 ウ本件義務付けの訴えは、いわゆる申請型の義務付けの訴え(行訴法3条6項2号)であるところ、前記ア及びイのとおり、本件処分⑥及び⑦は、いずれも違法であって取り消されるべきであるから、義務付けの訴えの要件を充足する(行訴法37条の3第1項2号等)。 (被告の主張)原告の上記主張は否 及びイのとおり、本件処分⑥及び⑦は、いずれも違法であって取り消されるべきであるから、義務付けの訴えの要件を充足する(行訴法37条の3第1項2号等)。 (被告の主張)原告の上記主張は否認し、争う。 ア総合支援法22条1項及び総合支援法施行規則12条の規定や、障害福祉サービスの提供に係る人的、物的諸条件が全国一律ではなく人口、年齢構成、地勢及び経済状況その他の地域の具体的状況に応じて市町村ごとに当然に異なるもので あることからすると、総合支援法は、個々の障害者について障害福祉サービスを支給するかどうか、支給する場合にはどのような種類の障害福祉サービスについてどれほどの支給量をもって支給するかという判断について、勘案事項に係る調査結果を踏まえた市町村の合理的な判断に委ねているものと解される。 したがって、市町村が行う支給の要否の決定並びに支給決定を行う場合における 障害福祉サービスの種類及び支給量の決定は、その判断の基礎となる事実に看過し 難い誤りがあり、又はその判断内容が社会通念に照らして明らかに合理性を欠くこと等により、その裁量の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものと認められるような場合に限って違法になるものというべきである。 本件処分⑥及び⑦は、次の点に照らせば、いずれも前記の裁量権の範囲から逸脱したものでも、又はこれを濫用したものでもなく、違法ではない。 a 原告が必要とする介護の内容について、本件処分⑥及び⑦では、合計744時間/月(24時間×31日間)を支援を要する時間数としている。 b 総合支援法22条1項及び障害者総合支援施行規則12条は、勘案事項として当該障害者の介護を行う者の状況を定めており、これは、支給量の決定の際の勘案事項とも解されるから、上記各条は、障害者に配偶者が 総合支援法22条1項及び障害者総合支援施行規則12条は、勘案事項として当該障害者の介護を行う者の状況を定めており、これは、支給量の決定の際の勘案事項とも解されるから、上記各条は、障害者に配偶者がいる場合に、当該配偶者 の状況に即して、当該配偶者による介護の可否及び介護が可能かつ相当な時間を勘案することを前提とするものである。また、介護給付費等の支給が公費によって賄われること、全ての国民が利用可能な制度として社会福祉制度を維持していくべきことのほか、民法752条を基礎として夫婦間の生活保持義務があることに照らすと、障害者の配偶者が介護を行うことが可能かつ相当な時間を勘案して支給量の決 定をすることは、処分行政庁の合理的な裁量に委ねられている。したがって、上記相当な時間を考慮することは、違憲、違法となるものではなく、不当なものでもない。 c R1/12病院調査及びR1/12自宅調査の結果によると、妻においては、本件処分⑥及び⑦の当時、1か月270時間の原告の介護を行うことが客観的に可能かつ相 当であった。原告の介護は全時間帯において集中力、精神力及び体力が要求されるものではなく、①平日について、夜間ヘルパーがいなくなる7時から原告が起床する8時30分まで(なお、8時30分から10時30分までは訪問看護ないし介護保険に基づくヘルパーがモーニングケアを担当していた。)、妻が在宅している10時30分から16時(木曜日は15時)まで(ただし、不動産賃貸業の管理業務 のための外出時間として5時間/月を除く。)及び子らが就寝する頃の22時から 24時まで(妻は、3時に就寝するとのことで、24時までに就寝することはない。)の時間と、②土・日曜日について、8時から17時まで及び22時から24時までの時間(ただし、子らの外 22時から 24時まで(妻は、3時に就寝するとのことで、24時までに就寝することはない。)の時間と、②土・日曜日について、8時から17時まで及び22時から24時までの時間(ただし、子らの外出や妻の休養のために月の半分の時間を除く。)は、妻による家族支援が客観的に可能かつ相当であった。 d 訪問看護時間数については、R1/12病院調査において、原告のケアマネージャ ーから訪問看護の利用時間、回数等の確認をして算出したもので、その後も特に時間数の変化はみられなかった。原告に対する介護は、必ずしも、原告から片時も離れず見守りしながら続ける必要はなく、他の作業をしながらでも可能な範囲の支援である。訪問看護21時間について代替性があるとして控除したことについて、判断の基礎となる事実に看過し難い誤りはなく、その判断内容が社会通念に照らして 明らかに合理性を欠くともいえない。 e 本件処分⑦の前提となる本件処分⑤に当たり、訪問調査は実施していないが、これは、令和2年4月7日に埼玉県を含む7都道府県に初めての緊急事態宣言がなされたこと、厚生労働省からも新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から障害支援区分の認定有効期間を延長できる旨の事務連絡が発せられたこと(乙20)、 提出されていた週間サービス計画表も413時間の計画に係るもののままであったこと、訪問看護事業者の聞取り調査によっても原告の状況に大きな変更はなかったこと、新型コロナウイルス感染防止の観点から訪問調査を実施しないことを伝えて妻から了承を得たことのほか、同月2日の申請が支給期間満了に伴う更新申請であったことなどによる。 イ原告の理由付記不備の主張は、否認し、争う。 本件処分⑥は、加算移動を付加する処分であって拒否処分ではない。 また、介護給付費の 支給期間満了に伴う更新申請であったことなどによる。 イ原告の理由付記不備の主張は、否認し、争う。 本件処分⑥は、加算移動を付加する処分であって拒否処分ではない。 また、介護給付費の支給決定における支給量の決定に当たって考慮すべき勘案事項が根拠法令に具体的かつ詳細に規定されている(総合支援法24条1項及び2項、22条1項及び7項、総合支援法施行規則12条及び13条)ことと、授益的処分 であるという本件処分⑥の性質及び内容を併せ考えると、現に考慮された勘案事項 の内容及びそれらと支給量の計算との関係等が一定程度具体的に示されていれば、その内容から処分の理由を了知することができ、申請者である原告の不服の申立てに便宜を与えるといった理由付記の趣旨に反するものではないというべきところ、本件処分⑥の処分通知書(甲58)には、支給量が決定された理由を原告において了知できる程度の記載があり、理由の提示として違法な点はない。 本件処分⑦は、支給申請に対して認める処分をしたものであって、理由付記が必要となる(一部)拒否決定ではない。 ウ本件処分⑥及び⑦は違法ではない(本件処分⑦は、支給量を変更することを求める変更申請を受けてされたものではなく、原告の申請を(一部でも)拒否する決定でもない)のであって、いずれも取り消されるべきでないことが明らかである から、本件義務付けの訴えは不適法である。 ⑵ 国家賠償責任の有無(原告の主張)ア総合支援法に基づき障害者が介護給付費等を受けることは、憲法及び障害者権利条約が保障する基本的人権の実現であるところ、総合支援法の目的(1条) や情報提供等を行うべき市町村の責務(2条1項2号)、勘案事項を列挙(22条)した上での調査義務の定め(20条2項)のほか、身体障 障する基本的人権の実現であるところ、総合支援法の目的(1条) や情報提供等を行うべき市町村の責務(2条1項2号)、勘案事項を列挙(22条)した上での調査義務の定め(20条2項)のほか、身体障害者福祉法9条5項2号及び3号の定める市町村の責務からすると、総合支援法は、身体障害者福祉法の趣旨目的を取り込みつつ、市町村においては障害者等の福祉に関する情報や知見が集積される一方で、一般に障害者等が当該情報や知見に容易にアクセスすることが困 難であることを背景として、市町村に対し、障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むために必要な情報提供を能動的に行うべき責務を課している。 この点、身体障害者にとって生活の根幹となる介護給付費については特に重要であるから、市町村の職員は、障害者に対し、総合支援法に基づき、支給決定手続(申 請方法、申請の流れ、調査する事項等)について情報提供義務を負っていると解す べきであり、また、市町村の職員には、介護給付費の支給申請があった場合、個々の障害者が個人としての尊厳にふさわしい日常生活及び社会生活を営むことができるよう、支給量の決定に当たって勘案事項を適切に調査し、適切に考慮することによって、申請に係る障害者の個別具体的な障害の種類、内容、程度その他の具体的な事情に照らし、総合支援法の趣旨目的に合致するような適切な支給量を定めた支 給決定をすべき注意義務がある。 さらに、総合支援法の趣旨を実効的なものとするため、一般市民に支給制度について十分な知識がない場合や申請の意思決定や意思表示に事実上の支障がある場合、職権によって支給決定の変更を可能とすることで当事者の必要な時間数に係る支給がされることを実質的に保障するとの総合支援法24条2項の趣旨 がない場合や申請の意思決定や意思表示に事実上の支障がある場合、職権によって支給決定の変更を可能とすることで当事者の必要な時間数に係る支給がされることを実質的に保障するとの総合支援法24条2項の趣旨に照らせ ば、市町村の職員には、障害者において支給量の増量を求める意思があることを認識したのであれば変更申請があったものとして勘案事項を適切に調査し、適切に考慮して、職権で変更決定をすべき作為義務がある。 上記の趣旨は、障害者が支給量の増量を希望している場合の手続案内にも通底するもので、対応する職員には、消極的な対応を行って当該障害者の申請を断念させ ることは許されず、申請手続について適時に必要な案内をすべき作為義務がある。 平成30年5月24日以降、被告は、24時間介護を必要としている原告の心身や家族の状況、妻を中心とした家族介護の苛烈な負担を認識し、又は認識すべきであったにもかかわらず、前記及びの義務に反し、職権による支給量の増量の決定をせず、増量の変更申請の方法を原告に適切に案内しなかったのみならず、 4回にわたる原告の申請に対し、必要な勘案事項調査を怠り、事実の評価を誤って、漫然と、大幅に不足した支給量を支給する旨の決定をし続けた。具体的な義務違反の内容は、別紙5の番号1①ないし⑦の「原告の主張」欄に記載のとおりである(以下、別紙5記載の違法行為をその番号に従って「違法行為1①」、「違法行為2」などという。)。違法行為1①ないし⑦は、原告が公費で職業ヘルパーによる適時 適切な介護を受けることを拒み、原告とその家族間の関係を悪化させ、本来ならば 公費で支出すべき部分についてまで私費での介護サービスの負担を強い続けたものとして、一連の違法行為を構成する。 総合支援法に基づく公的介護を受ける地位の侵害 間の関係を悪化させ、本来ならば 公費で支出すべき部分についてまで私費での介護サービスの負担を強い続けたものとして、一連の違法行為を構成する。 総合支援法に基づく公的介護を受ける地位の侵害が問題となる本件において、行政処分の国家賠償法上の違法は、行政処分の法的発動要件の欠如であり、行政処分が違法な場合、国家賠償法上も違法の推定を受ける。既に主張した点に照らし、 本件処分①ないし⑦は違法な処分であるから、国家賠償法上も違法である。 また、前記ないしで主張した点からすると、本件処分①の当時既に、被告においては、原告について24時間介護が必要であると認識し得たところ、平成30年頃、呼吸器装着の有無にかかわらず、また、同居の配偶者や家族がいる場合であっても、744時間/月以上を支給量とする介護給付費支給決定が複数の自治体で 多数の障害者に対してされており(甲105の1の1ないし105の53)、処分行政庁が厚生労働省や県や他の自治体等に情報提供や情報交換を依頼すれば、そのことは容易に知り得た。 イ F職員は、H31/4自宅調査の際の原告からの事情聴取の際、ヘルパーによる文字盤の読み取りを通じて可能な限り調査に応えようとした原告に対し、文字盤によ るコミュニケーションを揶揄する本件発言(別紙5の違法行為2)をした。なお、本件発言に対してその場でB弁護士が抗議をしたが、F職員を含む被告の職員らは本件発言の問題性について十分に理解していなかった。福祉課の職員という専門的知見を有してしかるべきF職員による本件発言は、原告を始めとした言語障害、発語障害、コミュニケーション障害を特性とする障害者全体に対する根深い差別意識 に基づき、発語障害を有する原告の障害特性を揶揄し、非難するもので、自己の問題に対して自己の意思を表明 言語障害、発語障害、コミュニケーション障害を特性とする障害者全体に対する根深い差別意識 に基づき、発語障害を有する原告の障害特性を揶揄し、非難するもので、自己の問題に対して自己の意思を表明しようとする人間としての当たり前の行動を阻害する強烈な差別的言動であって、故意に原告の尊厳を踏みにじり、深く傷つける違法行為に当たる。 (被告の主張) ア原告の上記主張は否認し、争う。 支給量の決定は、勘案事項を勘案して決定され、その中でも、障害福祉サービスの利用に関する意向は特に重要であるところ、どのようなサービスを想定・希望し計画するかは、各サービスの実現可能性も含め、申請者が計画事業者と十分相談し決定すべきものである。被告の職員にサービス計画の作成の負担まで課すような原告の作為義務の主張は、過剰な要求である。変更申請が提出されていない場合 に支給量変更の決定をしないことについて、被告に何ら義務違反はない。総合支援法24条は、申請による変更を原則としつつ(同条1項)、例外的に職権による支給決定の変更の決定を認めている(同条2項)ところ、原告は、平成30年5月時点で指定特定相談支援事業者の支援を受けられる状態にあったから(乙21、22)、もし変更決定が必要であれば、原則どおりサービス等利用計画案(総合支援法5条 22項前段)を作成した上で変更申請をすることが適切であったもので、同事業者の支援を無視して処分行政庁が職権で変更決定をすべき事情はなかった。 原告が主張する個々の違法行為に対する反論は、別紙5の各番号に対応する「被告の主張」欄に記載のとおりである。 被告の職員においては、総合支援法22条1項及び総合支援法施行規則12 条2号に「障害者等の介護を行う者の状況」に係る定めがあることや、支給決定 する「被告の主張」欄に記載のとおりである。 被告の職員においては、総合支援法22条1項及び総合支援法施行規則12 条2号に「障害者等の介護を行う者の状況」に係る定めがあることや、支給決定基準(乙1)及び支給量基準(乙2)においても「家族支援が見込まれる時間数の控除」が定められていること等を踏まえ、家族からの聞取り調査の上、原告の状況、必要な介護の内容及び妻や子らの生活状況等を考慮すると妻が原告の介護を行うことは客観的観点から過度な負担ではなく可能かつ相当と判断して、270時間/月 の家族支援を認定したものであり、その上で、審査会に諮って支給量が決定された。 したがって、仮に、家族介護の時間を控除することが違法であったとしても、被告の職員においては、現行の法及び規則の明文に規定された家族支援を考慮するという見解を正当と解し、これに立脚して公務を遂行したものであるから、後にその執行が違法と判断されたからといって、被告の職員に直ちに過失があったものとする ことは相当でない。 イ本件発言は、原告の代理人の代理活動に対するものであって、原告に対する差別的発言ではなかった。別紙5の番号2の「被告の主張」欄記載の本件発言に至った経緯を含めて考えると、本件発言は、原告に対する損害賠償責任を成立させるべき違法行為と評価されるものではない。 ⑶ 原告の損害 (原告の主張)ア違法行為1①ないし⑦により、原告は、本来支給されるはずであった支給量に係る介護の不足を私費のサービスによって補ったもので、それにより原告が受けた損害は、平成30年8月から令和2年10月までの期間について原告が介護サービスの利用費として支出した実費255万0148円を下らない。なお、本件義務 付けの訴えが認容された場合、処分行政庁が支給 害は、平成30年8月から令和2年10月までの期間について原告が介護サービスの利用費として支出した実費255万0148円を下らない。なお、本件義務 付けの訴えが認容された場合、処分行政庁が支給決定をしたときに、原告においては一定の範囲で上記利用費を処分行政庁に対して求めることができるようになり、その時点に至れば上記損害の一部が事実上補填されることになるが、上記のことは損害賠償請求に影響しない。 また、違法行為1①ないし⑦により、原告は、自らや家族の健康や自由を阻害さ れ、生命の危機を覚えるほどの恐怖や不安にさらされ続けたもので、原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、259万9527円を下らない。 イ違法行為2(本件発言)により原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、50万円を下らない。 (被告の主張) 原告の上記主張は否認し、争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実等、証拠(後記各書証)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 ⑴ア原告の平成29年5月29日付け支給申請(前提事実等⑵ア)に係る同年 6月5日付けの主治医の意見書(甲3)では、原告について、①身体の状態に関す る意見としては、身長180cm、体重74kgで、麻痺・筋力の低下は四肢ともに中程度であること、②特別な医療として、喀痰吸引措置が1日3回であること、③杖歩行で介助があれば屋外も歩行しているが、転倒が多くなり通院や散歩も困難となっていること、④発語も可能だが徐々に構語障害が見られるようになり嚥下も一部困難と感じている様子であること、⑤構語障害、嚥下障害、呼吸障害、筋力低 下がどの程度、どのくらいのスピードで進行するか心配されること、⑥病気の進行に伴い行動の制限が強くなっており、常時見守りが必要で適宜吸痰などが必 あること、⑤構語障害、嚥下障害、呼吸障害、筋力低 下がどの程度、どのくらいのスピードで進行するか心配されること、⑥病気の進行に伴い行動の制限が強くなっており、常時見守りが必要で適宜吸痰などが必要、トイレや食事にも全面介助が必要、息苦しさを訴えることがあり呼吸器の補助を受けることが多くなっていることなどが指摘されていた。 イ上記申請について平成29年6月23日に原告宅で実施された調査に係る概 況調査票(甲4)では、原告について、①過去1か月に2回程度の外出があったこと、②介助にて車いすに乗車し、日中はほとんど車いすで過ごしており、支えれば何とか立てるレベルで、原告の希望で日中トイレ介助を行っていること、③月2回の往診、週2回の訪問看護、週1回の訪問リハビリを受けていること、④妻は原告の介護と3人の子(当時は順に7歳、5歳、3歳)の世話で忙しく自分の時間は持 てないこと、⑤2階建ての一軒家である原告宅は平成28年に原告の生活スタイルに合わせて建て替えたもので、原告のベッドスペースは1階にあり、妻及び子らは2階で寝ていること、⑥食事は固形物は経口摂取、水分は胃ろうから注入で、ADLは全てにおいて介助が必要であることなどが指摘されていた。 ⑵ 平成29年7月21日開催の審査会では、原告について、体格が良いことが うかがわれ、家族は大変であろうこと、経口摂取をしているがむせがあることがうかがわれること、3時間ごとにトイレ介助を行っているがかなりの介助量が必要な状況であること、進行が速いことがうかがえることが指摘され、全員一致で重度訪問介護区分6、認定有効期間3年と判定された(甲5)。 ⑶ア原告の平成30年5月1日付け支給申請を受けて同月18日に本件処分① がされた(前提事実等⑶)後、原告及び妻は、同月24日付け 度訪問介護区分6、認定有効期間3年と判定された(甲5)。 ⑶ア原告の平成30年5月1日付け支給申請を受けて同月18日に本件処分① がされた(前提事実等⑶)後、原告及び妻は、同月24日付けで、被告に対し、「重 度訪問介護による介護時間数の増加に対する要望書」(甲9。以下「本件要望書」という。)を提出した。 本件要望書には、原告について、①衣服の着脱、食事、トイレ、車いすへの移乗など全て介助が必要な状態であること、②会話もほぼできない状態でコミュニケーションは文字盤かタブレット端末で行っていること、③就寝時にはバイパップ(鼻 マスク式の人工呼吸器)を装着していること、④進行性の難病のため徐々に家族の負担が増えてきたこと、⑤3人の子(当時は順に8歳、6歳、4歳)の学校等の行事や原告がやっていた仕事を妻が代わりにやっているため家を空けることがあり、小学校では役員を引き受けたので外出する回数も増えていること、⑥毎日ヘルパーに来てもらっているが、原告が一人で家にいる時間もあり心配であること、⑦妻は 余裕がない日が多く原告にあたってしまうことも多いことなどから、現在の支給量では足りない状態であって、支給量として12時間/日ないし24時間/日を要望する旨が記載されていた。 イ福祉課の職員は、本件要望書について検討の上、平成30年6月13日頃、原告宅を訪れ、原告及び妻に対し、①「時間等の変更の場合、変更申請書が必要に なります。その際、サービスをどのように利用する必要があるのかを確認させていただくためにサービス利用計画案の提出が必要になりますので、計画事業所とご相談の上ご提出をお願いいたします。」、②「なお、支給決定基準を上回る場合には、有識者で構成された障害者介護給付審査会にて意見聴取を行い妥当性を判断していただ 出が必要になりますので、計画事業所とご相談の上ご提出をお願いいたします。」、②「なお、支給決定基準を上回る場合には、有識者で構成された障害者介護給付審査会にて意見聴取を行い妥当性を判断していただく必要がございますので、変更申請どおり決定できるかどうかはその結果次第 となります。その後、お体の状況やご家族様の状況に変化が生じた場合などには、その時の状況により随時ご相談ください。」などと記載した回答書を交付した(甲10、乙23)。 ⑷ア B弁護士らは、平成31年1月24日付け支給申請(前提事実⑷ア)に係る申請書の別紙(甲12)において、原告については744時間/月(24時間× 31日)から訪問介護時間数40時間/月を差し引いた704時間/月の支給量が 必要であると主張した。 なお、同別紙には、全国の多数の地方自治体においては、原告と同様の全身性身体障害者について、24時間/日の支給量を保障していることなども記載されており、その資料として、平成30年11月16日に開催された「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット」の6周年シンポジウムの資料(甲26)が添付さ れ、そこでは、同年9月30日までに、ALSの障害者について、支給量として、京都府内、愛知県内、山口県内、富山県内、長野県内、徳島県内の市で24時間/日を実現した例があるほか、19時間/日以上(介護保険と合わせると21時間/日以上)を実現した例も5例あることや、東京23区では重度訪問介護だけで24時間/日を認める区が14区、介護保険と合わせて合計24時間/日を認める区が 4区に上っていることが紹介されていた。 イ前記アの別紙に添付された平成30年12月5日付けの主治医の意見書(甲13)では、原告について、①身体の状態に関する意見としては、左上肢の る区が 4区に上っていることが紹介されていた。 イ前記アの別紙に添付された平成30年12月5日付けの主治医の意見書(甲13)では、原告について、①身体の状態に関する意見としては、左上肢の麻痺が重度で、全身性の筋力の低下も重度であること、②特別な医療として、中心静脈栄養、レスピレーター、気管切開の処置及び経管栄養(胃ろう)、③発生の可能性が 高い病態として、尿失禁、転倒・骨折、嚥下性肺炎、心肺機能の低下、その対処方針として、全介助、人工呼吸器管理、④障害福祉サービスの利用時に関する医学的観点からの留意事項として、嚥下は不可、摂食は胃ろう、移動はリクライニング車いすであることが指摘され、⑤四肢体幹機能障害、呼吸障害、摂食・嚥下障害を認め24時間介護を要することなどが指摘されていた。 ウ前記アの別紙には、原告が胃ろうから水分補給等を行う際の介護状況に係る写真撮影報告書(甲14)、就寝時の移動等に当たっての介護状況に係る写真撮影報告書(甲15)、食事の際の介護状況に係る写真撮影報告書(甲16)、トイレ利用の際の介護状況に係る写真撮影報告書(甲17)、外出時の車の乗り降りの介護状況に係る写真撮影報告書(甲18)、就寝時に起こり得る危険な状況の再現に 係る写真撮影報告書(甲19)、バイパップのずれによる負傷に係る写真撮影報告 書(甲20)、原告の平成30年12月24日付け陳述書(甲22)などが添付され、原告の状況が詳細に説明されていた。上記のうち、原告の陳述書には、既に歩くことは全くできなくなり、右手の人差し指がわずかに動くほかは腕や手を動かすこともできず、発語ができないため文字盤等でコミュニケーションをしており、就寝時にも、どうにか1回寝返りを打つことができる程度で、ほとんど自力で動くこ とができない かに動くほかは腕や手を動かすこともできず、発語ができないため文字盤等でコミュニケーションをしており、就寝時にも、どうにか1回寝返りを打つことができる程度で、ほとんど自力で動くこ とができない状態であることなどが記載されていた。 ⑸ア被告においては、これまで24時間/日の支給量を決定したことがなかったため、原告の平成31年1月24日付け支給申請(前提事実⑷ア、前記⑷)の妥当性についての福祉課の検討には時間を要した(乙3ないし6)。 なお、被告は、同年2、3月、新たに支給量基準(乙2)を作成した。 イ H31/4自宅調査(前提事実等⑷イ)では、原告について、①移乗は1日に5回であること、②同年3月に褥瘡を生じかけたこと、③胃ろうと経口でのとろみ食を併用していること、④入浴は週に2回でその他の日は清拭がされていること、⑤トイレは3時間おきぐらいであること、⑥緊急時に原告からコールする手段はないこと(例えば入浴のために2階にいるときにも原告の状態は分からないこと)、⑦就 寝時のみバイパップを付けていること、⑧痰吸引はしていないこと、⑨レスパイト入院等は原告が希望しないこと、⑩週に3日程度は原告が5時間ほど一人になる日があること、⑪夜に一人で寝ていて危ないとか怖いなどと思ったことがあるが、誰もいないこと、⑫妻は子らの学校の行事や役員等で週に4日いないこともあること、⑬原告の仕事を妻が代わりにやっており、月に1回は必ず銀行に行き、仕事は週に 2~3回、2~3時間くらいであること、⑭妻は6時半頃には起床し、8時半又は9時にヘルパーが来ること、⑮妻は、子らの習い事がなければ16時頃には家に戻っていることが多いこと、⑯子らの習い事は、火曜日が体操(長男、二男)、木曜日がドラキッズ(二男)と新体操(長女)で帰宅は20時頃になる ーが来ること、⑮妻は、子らの習い事がなければ16時頃には家に戻っていることが多いこと、⑯子らの習い事は、火曜日が体操(長男、二男)、木曜日がドラキッズ(二男)と新体操(長女)で帰宅は20時頃になること、⑰子らの就寝は21時半頃で、妻の就寝は24時頃であること、⑱休日に外出はできていな いこと、⑲自費でヘルパーに入ってもらっており、11時から19時まで8時間(月・ 金曜日)、13時から16時まで3時間(木曜日)であること、⑳バイパップが外れてアラームが鳴っても妻は気づけないこと、㉑特に自費でヘルパーを依頼するまでは、介護のために夫婦間の関係がかなり悪化していたことなどが確認された(甲30の1及び2)。 ウ平成31年4月19日に開催された審査会では、新たに定められた支給量基 準の内容や考え方についての委員への説明も含めて実施されたところ、原告については、事務局から、原告の身体状況等を被告における基準に照らし合わせて373時間を算出したこと、日中の支援については妻の子育てが多忙ということもあり控除せずに支給することが妥当であると判断したこと、夜間の支援については、被告の国庫負担基準を超えて支給している者の身体状況と比較すると控除することが妥 当であると判断したことが説明された。 これに対し、委員からは、①国庫負担基準を超えて重度訪問介護を決定している者が何人いるかが確認され事務局から説明がされたほか、②自治体によっては24時間支給は独居が前提であるというところもあり、原告についての新たな支給量案は多いと感じるが、被告の支給決定基準で問題ないのであれば当該支給量でいいの であろうという意見や、③被告で設けている基準の範囲内であるなら妥当と考える、被告が今回作成した基準の内容も妥当であると考えるとの意見が出された 決定基準で問題ないのであれば当該支給量でいいの であろうという意見や、③被告で設けている基準の範囲内であるなら妥当と考える、被告が今回作成した基準の内容も妥当であると考えるとの意見が出された(甲63、乙2)。 ⑹ 原告の令和元年5月27日付け支給変更申請(前提事実等⑸ア)について、原告代理人弁護士らは、同年6月7日付け「6月3日付通知書に対する回答」と題 する書面(甲39)において、上記申請時と同年(平成31年)1月24日付けの変更申請時とで原告の身体状況や家族の介護状況に大きな変化はない旨を述べ、これを受けて、被告は、原告から特に希望がない限りは訪問調査を実施しない予定であること等を原告代理人弁護士らに連絡した(甲40)。 ⑺ア B弁護士らは、令和元年10月10日付け支給変更申請(前提事実等⑹ア) に係る申請書の別紙(甲46)において、原告について、①同年(平成31年)1 月24日の支給変更申請以降の事情変更に関し、呼吸筋の筋力低下に伴い、嚥下機能も低下しており、排痰を自力で行うことが困難となり、痰の詰まりにより苦しくなる事態も生じていること、②自発呼吸が困難となってきていることから、同年10月以降、可及的速やかに気管切開手術を行い、人工呼吸器を常時装着することが予定されており、同術後は24時間にわたり人工呼吸器の作動状況を確認する必要 があること、自動体位変換エアマットを導入したが、エアマットの動きによって腕が胴体の下に挟み込まれる等の支障が生じており、十分な体位交換を行うことはできておらず、また、エアマットの動作によって手が身体の下に挟み込まれることが頻発していることを主張して、改めて、原告については704時間/月の支給量が必要であると主張した(甲46)。 イ前記アの別紙に添付された令和 の動作によって手が身体の下に挟み込まれることが頻発していることを主張して、改めて、原告については704時間/月の支給量が必要であると主張した(甲46)。 イ前記アの別紙に添付された令和元年10月8日付けの電話聴取書(甲47)では、主治医からの聴取り内容として、原告について、同年9月4日の定期検査において、呼吸の数値が下がったために、気管切開手術をすることが決まったこと、術後は人工呼吸器を24時間着けた生活になることが記載されていた。 ウ前記アの別紙には、エアマットの使用状況に係る写真撮影報告書(甲48)、 痰吸引時の状況に係る写真撮影報告書(甲49)、原告の陳述書(甲23)、妻の陳述書(甲24の2)などが添付され、原告の状況が詳細に説明されていた。上記のうち、原告の陳述書には、令和元年春頃は、声が出ていたため、何かあった際には声を出して妻やヘルパーを呼ぶことができていたものの、最近では、近くにいる人に聞こえるか聞こえないかくらいの声量しか出なくなったため、すぐに助けを呼 ぶことができなくなっていることが、妻の陳述書には、特に令和元年8月頃から、痰が詰まり苦しそうにしていることが増えてきたように感じており、今は妻において原告の首を下にしないと自分で飲み込みができないようになり、痰吸引機を導入したこと、声がほとんど出なくなり文字盤を使ったやり取りがメインになっていることなどが記載されていた。 エなお、前記アの別紙にも、「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネ ット」の6周年シンポジウムの資料(前記⑷ア)が添付されていた。 ⑻ R1/12病院調査(前提事実⑹イ)では、原告について、①11時から19時まで、22時から7時まではヘルパーを依頼し、その余は看護師が担当していること、②食事については経 )が添付されていた。 ⑻ R1/12病院調査(前提事実⑹イ)では、原告について、①11時から19時まで、22時から7時まではヘルパーを依頼し、その余は看護師が担当していること、②食事については経口と胃ろうの併用であるが、食事時間が以前は20分ないし30分であったのが、1時間以上かかるようになったこと、③排泄は、パッドにベッ ド上でするかトイレだが、トイレはヘルパー一人では介助できないこと、④体位交換は1時間半ごとで、痰の吸引は2時間おきであること、⑤車椅子への移乗も二人で行っていること、⑥訪問看護は、点滴(ラジカット)があるときは月から金まで、点滴(ラジカット)がない週は週3回であること、⑦日中は、ほぼ車椅子に乗っていること、⑧夕飯は大体19時半で、子らの就寝は21時半と決めているが、実際 は小学生の子らは大体22時から22時半、二男はソファで寝てしまって寝たら連れていく感じで、大体22時頃であること、⑨妻は、平日は6時に起床し、7時半に子らを送り出して、幼稚園の子は9時半のバスに乗せること、⑩夕方は授業時間数次第だが17時までには子らが帰宅する(幼稚園のバスは16時15分頃に着く)こと、⑪火曜日は長男と二男が体操クラブで18時まで、木曜日は二男の幼稚園は 午前保育で15時半から16時半まで習い事(ドラキッズ)もあり、18時から19時半までは娘の新体操で長男及び二男は留守番をし、20時過ぎに夕食で、金曜日も二男の幼稚園は午前保育で、長女は土曜日に書道教室があること、⑫二男は来年小学1年生だが学童に入れることは考えていないこと、⑬夫婦間で喧嘩等のために壁があり、離婚の話も出たくらいで、妻もやりたいことが出てきてしまい、そち らの方に夢中になっているところもあるほか、妻は性格的に又は気持ちの問題として介護ができない ⑬夫婦間で喧嘩等のために壁があり、離婚の話も出たくらいで、妻もやりたいことが出てきてしまい、そち らの方に夢中になっているところもあるほか、妻は性格的に又は気持ちの問題として介護ができないこと、⑭原告は痰が出てガーゼに着くと息が苦しくなるところ、ヘルパーとしては、穴に布団がかぶさったりして苦しくなることや、食べこぼしでむせたりするところが怖いこと、⑮レスパイト入院は過去の経験から希望せず、また、バイパップをしていると受け入れられないこと、⑯妻は今年はPTAの役員で はなかったが、来年はおそらく役員を引き受けざるを得ず、月1回ないし3回くら いの業務が見込まれることなどが確認された(甲50の1及び2)。 ⑼ア原告が退院して間もなく実施されたR1/12自宅調査(前提事実⑹イ)では、①排泄の方法やブザー(コール)は検討中であること、②原告の起床は8時半で、モーニングケア等をして車いすに移乗し、昼食は11時半頃からとり、就寝は24時頃であること、③ヘルパーは11時から19時までと22時から7時までである こと、④痰に関する処置は1時間に2回くらい(1回当たり1分ないし2分程度)であること、⑤介護者一人ではリフトの使用にも不安があること、⑥妻は6時頃に起床すること、⑦妻による原告の仕事の手伝いは、銀行に月1回ないし2回、最低1時間ないし2時間程度赴くほか、原告宅での書類の整理もあること、⑧二男は月曜から金曜までだいたい16時20分のバスで帰宅することなどが、改めて補充的 に確認された(甲52の1及び2)。 イまた、被告の職員は、同日、原告が利用している訪問看護ステーションに荷電して、①訪問回数は月曜日から金曜日までの週5回で、1回当たり1時間から1. 5時間の訪問であること、②訪問時には、点滴(ラジカット。2週間 の職員は、同日、原告が利用している訪問看護ステーションに荷電して、①訪問回数は月曜日から金曜日までの週5回で、1回当たり1時間から1. 5時間の訪問であること、②訪問時には、点滴(ラジカット。2週間おきに10日間実施)及び栄養剤の注入、胃ろうの管理、足浴(訪問入浴利用日を除く。)、関 節可動域保持のためのリハビリ、全身の皮膚トラブルと栄養状態の確認、呼吸状態の確認並びに喀痰吸引を実施している(気管切開後は客痰吸引の回数が増えている)こと、③重度訪問介護ヘルパーがいないときに特段の問題が生じたことはないことを聞き取った(甲91、乙11)。 ⑽ 被告は、令和元年12月20日、審査会に対し、支給量を413時間/月と する案について諮問し、審査会の会長から当該支給量案を妥当とする旨の同日付けの通知がされ(甲75)、これを踏まえて、同月27日に本件処分④がされた。 ⑾ 令和元年12月27日にされた本件処分④においては、支給量の算定に当たり、妻による起床中の家族支援270時間が控除された。その内訳や理由は、次のアないしエのとおりであった(甲54)。 ア平日の家族支援については、原告は8時半に起床すること、二男の送り出し は介護保険、訪問看護サービス利用時に可能であること、書類整理等の不動産管理業務は原告の見守りをしながら可能であること、子の就寝後から原告が就寝するまでの時間は家族支援が可能であることから、7時から8時30分まで、10時30分から16時まで、22時から24時までの合計9時間は家族支援が可能であると判断する。ただし、木曜日については、二男の習い事の送迎があることから、7時 から8時30分まで、10時30分から15時まで、22時から24時までの合計8時間の控除とする。控除する時間は次のとおりとなる。 、木曜日については、二男の習い事の送迎があることから、7時 から8時30分まで、10時30分から15時まで、22時から24時までの合計8時間の控除とする。控除する時間は次のとおりとなる。 月・火・水・金曜日 9時間×4日×5週=180時間木曜日 8時間×1日×5週=40時間イ休日の家族支援については、子の送り出しはないこと、長女の習い事は自主 通所が可能であること、子の就寝後から原告が就寝するまでの時間は家族支援が可能であることから、8時から17時まで、22時から24時までの合計11時間は家族支援が可能であると判断する。ただし、家族での外出や休養等を考慮し、2. 5週での控除とする。控除する時間は、次のとおりとなる。 11時間×2日×2.5週=55時間 ウ上記ア及びイの合計控除時間数から妻の不動産管理に係る外出時間5時間を控除して、270時間(180+40+55-5)/月が家族支援の控除時間数となる。 ⑿ 原告は、本件処分④においても413.0時間/月の支給量しか認められなかったことを受けて、妻と婚姻して同居している限り、必要な支給量は認められな いのではないかなどと悩み、原告の介護に疲弊する妻の負担や夫婦間の感情の悪化等を避けるため、家族の形は変わるが関係性は変わらないという考えに基づいて妻と離婚するに至り、また、吉川市では妻の介護時間を理由に支給量が大きく限定されたことから、単身で吉川市から転出することを決意した(甲107、108)。 ⒀ 原告は、令和2年11月▲日に単身で吉川市から越谷市へ転出した後、同月 13日付けで、越谷市から、支給決定期間を同月▲日から令和3年5月31日まで とし、支給量768.0時間/月、うち加算移動96.0時間/月とする介護給付費の支給決定(ただし、支 、同月 13日付けで、越谷市から、支給決定期間を同月▲日から令和3年5月31日まで とし、支給量768.0時間/月、うち加算移動96.0時間/月とする介護給付費の支給決定(ただし、支給量の変更は令和2年11月13日からとされた。)を受けた(甲89)。 2 争点⑴(本件処分⑥及び⑦の取消事由の有無等)について検討する。 ⑴ 介護給付費等の支給を受けようとする障害者は、厚生労働省令で定めるとこ ろにより、市町村に申請をして支給決定を受けなければならず(総合支援法19条1項、20条1項)、上記申請があったときは、市町村は、勘案事項を勘案して介護給付費の支給の要否を決定し(総合支援法22条1項、総合支援法施行規則12条)、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として支給量を定めなければならない(総合支援法22条7項、総合支援法施行規則13条)。 また、介護給付費等の支給決定を受けた障害者が、現に受けている支給決定に係る支給量を変更する必要があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、市町村に対し、当該支給決定の変更の申請をすることができ、変更の申請を受けた市町村は、勘案事項を勘案して必要があると認めるときは、支給決定の変更の決定を行うことができる(総合支援法24条1項及び2項)。 以上のような総合支援法等の規定をみるに、市町村における支給決定の処分権者である市町村長が介護給付費等に係る支給量を定め、又はこれを変更するに当たっては、個々の障害者に係る勘案事項を勘案すべきこと以外には何ら具体的な基準が定められていない。また、勘案事項は、個々の障害者ごとに個別具体的な事情を様々に異にする性質のものであり、多岐にわたる各事項に係る諸事情の勘案の在り方も 総合的な考慮と判断を要するものとい が定められていない。また、勘案事項は、個々の障害者ごとに個別具体的な事情を様々に異にする性質のものであり、多岐にわたる各事項に係る諸事情の勘案の在り方も 総合的な考慮と判断を要するものといえる。そうすると、個々の障害者に係る勘案事項を勘案し、当該障害者に対していかなる種類の障害福祉サービスをいかなる支給量をもって行うかについては、勘案事項の調査の結果を踏まえた市町村長の合理的な裁量に委ねられているというべきである。 したがって、市町村長が支給決定をするに当たってその裁量権の行使としてした 障害者に対する支給量に係る決定は、その判断の内容が事実の基礎を欠くこと又は 考慮すべき事項を考慮しないこと等により社会通念上妥当性を欠くものであり、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものと認められる場合に、違法となるものと解するのが相当である。 ⑵ 原告は、本件処分⑥及び⑦の取消事由に関し、支給決定に当たって必要な介護時間数から家族による介護時間数を控除することは原則として許されず、当該障 害者も当該障害者の家族も当該家族による介護を行うことを希望し、かつ、当該家族に介護を行う能力がある場合に限り、当該家族による介護時間数を勘案することができる旨を主張する。 しかし、総合支援法は、その目的(1条)のために、またその基本理念(1条の2)の下で、22条1項において、障害者等の障害支援区分に続く二つ目の勘案事 項として「当該障害者等の介護を行う者の状況」を明文で定めており、総合支援法施行規則も、12条2号において「当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況」を勘案事項とし、かつ、職業介護に関しては別の定めを置いており(同条5号、6号等)、「障害者等の介護を行う者の状況」を調査事項の一つとしている(総合支援法施行規則8条、 害者等の介護を行う者の状況」を勘案事項とし、かつ、職業介護に関しては別の定めを置いており(同条5号、6号等)、「障害者等の介護を行う者の状況」を調査事項の一つとしている(総合支援法施行規則8条、総合支援法20条)。これらの定めは、障害者の家族の中に当 該障害者の介護を行う者がいる場合には、当該家族の状況に即して当該家族による介護の可否及びそれが可能かつ相当な時間を勘案することを前提としているものと解される。総合支援法に基づく介護給付費等の支給が公費によって賄われている以上、その支給量について一定の財政上の制約があることは否定し難い。また、民法752条において夫婦の協力及び扶助の義務が定められていることに照らすと、障 害者の配偶者において当該障害者の介護を行うことが可能である場合には、当該配偶者が介護を行うことが可能かつ相当な時間を勘案して支給量の決定をすることも、市町村長の合理的な裁量に委ねられていると解される。 したがって、市長村長が支給量の決定をするに当たって、障害者の配偶者が介護を行うことが可能かつ相当な時間を考慮すること自体が違法となるということはで きず、当該決定が違法となるか否かは、その考慮の在り方又は考慮の基礎となる事 実の認定や評価等が裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用に当たると認められるか否かによるものというべきである。なお、原告は憲法及び障害者権利条約の定めのほか、第一次意見、第二次意見及び骨格提言の内容を主張するが、これらは上記判断を左右するものとは解されず、また、総合支援法22条1項等の各定めを原告の主張するように限定的に解釈しなければならない根拠となるものとも認められない。 ⑶ア本件処分⑥及び⑦における支給量413時間/月は、本件処分④と同様、原告が支援を要する時間数を24時 原告の主張するように限定的に解釈しなければならない根拠となるものとも認められない。 ⑶ア本件処分⑥及び⑦における支給量413時間/月は、本件処分④と同様、原告が支援を要する時間数を24時間/日、すなわち、744時間/月(基礎時間数310時間に加算時間数434時間を加えた744時間は24時間の31日分と一致する。)とした上、介護保険サービス40時間に妻による家族支援270時間、訪問介護サービス21時間を加えた合計331時間を控除して算出されたもの(7 44-331=413)であるところ、原告は、上記270時間及び上記21時間の控除が違法であると主張する。 イまず、妻による家族支援270時間の控除の当否について検討する。 本件処分④及び⑥の前提となった支給変更申請がされた令和元年10月の翌月である同年11月に気管切開手術を受けた時点ないし本件処分⑦がされた令和2 年8月の時点において、原告については、その体をほとんど全く動かすことができず、24時間にわたり人工呼吸器を着けた生活をしていたもので、痰が詰まることも増えてきていた一方、近くにいない介護者等に対してすぐに助けを求めることはできない状態であり、呼吸困難等を生じた際に直ちにこれに対応して生命への危険を回避するため、相応の緊張感をもって近くで見守りをする必要がある状態にあっ た。また、食事に要する時間は増え、排泄や車いすへの移乗等に係る介護の負担も従前より増加していて介護者一人では相当困難な状態であり、夫婦の関係にあるとはいえ、原告との意思疎通にかなりの困難を伴うだけではなく、原告との相当な体格差もあるとうかがわれる妻においては不可能又は著しく困難なことであった。 a 以上に加えて、妻(当時42歳ないし43歳)は、3人の子(当時順に1 0歳ないし うだけではなく、原告との相当な体格差もあるとうかがわれる妻においては不可能又は著しく困難なことであった。 a 以上に加えて、妻(当時42歳ないし43歳)は、3人の子(当時順に1 0歳ないし11歳、8歳、6歳)の世話(学校行事や習い事に係る世話等を含む。) と家事に一日のうちかなりの時間を費やさざるを得なかっただけではなく、原告から引き継いだ仕事も行っており、PTA役員等の負担が増えること等も見込まれる状況にあった。 b 妻による家族支援270時間の控除の根拠となった時間帯を個別に検討しても、平日の7時から8時30分までについては、3人の子を送り出すまでの世話を 限られた時間内に同時並行的に行わなければならないという妻の負担は相当に重いものであり、妻が6時に起床した後に原告が起床する8時半までの間に、家族の朝食準備や子らの送り出し等の傍らで原告の支援を行うことは極めて困難であることが明らかであった。 c 次に平日の10時30分から16時(木曜は15時)までについてみるに、 妻は、原告から引き継いだ仕事のために銀行等に出かける日はもとより、その他の日にも、3人の子の不在の間に炊事、洗濯、掃除、買い物等の日常的な家事を済ませておく必要があることは容易に理解されるところであるから、この時間内に妻が原告の支援に充てられる時間が相対的に少なくなることは明らかである。 d さらに、休日の8時から17時までについて検討すると、3人の子の世話を 同時並行的に行わなければならない負担は平日よりも重いということができ、これに伴う家事の負担も加重されることを踏まえると、この時間内に妻が原告の支援に充てられる時間が少なくなることもやはり自明のことといえる。 e 最後に、平日及び休日の22時から24時までについて検討すると、3人の の負担も加重されることを踏まえると、この時間内に妻が原告の支援に充てられる時間が少なくなることもやはり自明のことといえる。 e 最後に、平日及び休日の22時から24時までについて検討すると、3人の子が就寝した後、妻自身の入浴や就寝準備等をする必要があることも容易に理解さ れ、原告の状態や原告宅の構造に照らして妻がこの時間帯に原告を常時見守ることができないことも自明のことであったから、この時間内に妻が原告の支援に充てられる時間が相当程度限定されることも容易に理解し得るものといえる。 f 確かに、妻においては、原告の介護に消極的な面があることもないわけではなかったが、主婦としての日常的な家事の負担、3人の幼い子を抱える母としての 育児の負担に加えて、配偶者として重度の身体障害を有する夫の介護の負担が重な る状況にあったことからすると、上記のような消極的な対応を妻の責めに帰すべき事情と評価するのは相当ではなく、妻がそのような過酷な環境に追い込まれていたことによって生じた結果であることは容易に理解されたといえる。このことは、H31/4自宅調査の際に介護の負担のために原告と妻の関係が悪化していたことが既に確認されていたことや、H31/4自宅調査の結果も踏まえた審査会で、日中の支援について は妻の子育てが多忙ということもあり控除せずに支給することが妥当であるとの事務局説明に批判的な意見がなかったことによっても裏付けられる。そして、原告がH31/4自宅調査等を踏まえてされた支給変更決定である本件処分②の時点と比較して人工呼吸器の装着や排痰の点でより手厚い介護を要する状態となっていたから、妻にとっては原告の介護に伴う負担が一層深刻なものとなっていた。 以上のような事情を踏まえると、本件処分④ないし⑦の時点において、妻が 排痰の点でより手厚い介護を要する状態となっていたから、妻にとっては原告の介護に伴う負担が一層深刻なものとなっていた。 以上のような事情を踏まえると、本件処分④ないし⑦の時点において、妻が原告の介護を行うことが可能かつ相当な時間は、①平日の7時から8時30分までの間については皆無であり、②平日の10時30分から16時(木曜日は15時)までの間についてはせいぜい2時間/日(木曜日は1.5時間/日)にとどまり、③休日の8時から17時までの間については、家族での外出や休養等のための2. 5週分を除いた2.5週においても、せいぜい3時間/日にとどまり、④平日及び休日の22時から24時までの間についてはせいぜい0.5時間/日にとどまるというべきであって(なお、以上は不動産管理に係る外出時間も含めて考慮したものである。)、これを超える時間数を原告の支給量から控除することは、その判断の内容が事実の基礎を欠き、考慮すべき事項を考慮しないことにより社会通念上妥当 性を欠くものであり、裁量権の範囲を超えたものとして違法の評価を受けることを免れないものというべきである。 これに対し、原告は妻が原告を介護することは全く不可能であったから一切の時間を控除すべきではない旨主張するが、平日の日中、休日及び夜間において、原告から引き継いだ仕事以外にフルタイムの仕事に従事していなかった妻において、直 接的には子らの世話等から一時的に解放され、かつ在宅している時間が全くなかっ たわけではなかった以上、妻による家族支援が可能かつ相当な時間があったとしてこれを支給量から控除すること自体は上記で判示した市長村長の裁量権の範囲を超えたものであったとは認めることはできないから、原告の上記主張は採用することができない。 ウ次に、訪問介護21時間 してこれを支給量から控除すること自体は上記で判示した市長村長の裁量権の範囲を超えたものであったとは認めることはできないから、原告の上記主張は採用することができない。 ウ次に、訪問介護21時間の控除の当否について検討する。 原告は、R1/12病院調査、R1/12自宅調査のいずれにおいても訪問介護の内容やその際に必要とされる介護に関する調査がなかったと主張するが、訪問介護の状況については、上記各調査でも一定の範囲で確認がされ、また、R1/12自宅調査の日には別途電話による調査もされていた。かえって、証拠(乙14ないし19)によると、被告は、令和2年2月ないし4月において、原告が利用していた二つの訪問看護事 業者から訪問看護の情報提供を受けていたことが認められることも併せ考慮すれば、原告の上記主張は採用することができない。 原告は移乗の介護やスムーズな意思疎通のために訪問看護中も重度訪問介護のヘルパーを利用することが必要不可欠であったとも主張するが、本件処分④ないし⑦の当時、原告について、訪問看護の際にもヘルパーが不可欠であったと認めるに足 りる証拠はないから、原告の上記主張も採用することができない。 したがって、訪問介護21時間の控除について、処分行政庁が当該時間を控除したことについて、裁量権の範囲からの逸脱ないし濫用を認めるべき事情はない。 エ以上によると、本件処分⑥及び⑦の当時、妻による介護時間については、①平日について60時間((2.5時間/日×4日+2時間×1日)×5週)、② 土・日曜日について17.5時間(3.5時間/日×2日×2.5週)の合計77. 5時間の限度内で考慮することは処分行政庁の裁量の範囲内であったが、これを超えて妻による介護時間を控除することは裁量権の範囲を超えたものであったといえ 間(3.5時間/日×2日×2.5週)の合計77. 5時間の限度内で考慮することは処分行政庁の裁量の範囲内であったが、これを超えて妻による介護時間を控除することは裁量権の範囲を超えたものであったといえる。 本件処分⑥は、支給量を704時間/月とするよう求める令和元年10月1 0日付け支給変更申請(前提事実等⑹ア)を受けてされた本件処分④を変更するも ので、413時間/月を超えて704時間/月に達するまでの支給量を認めないとの判断を含むものであり、また、本件処分⑦は、支給期間満了のための更新としての令和2年4月2日付け支給申請(前提事実等⑻ア)を受けてされた本件処分⑤を変更するもので、令和元年10月10日付け支給変更申請の内容のほか、上記支給申請に先立つ令和2年3月19日に原告が本件処分④について審査請求をしたこと 及び更新という趣旨に照らせば、原告が支給量を704時間/月とするよう求める趣旨で上記支給申請をしたことは処分行政庁にも明らかであったといえるから、本件処分⑦も、413時間/月を超えて704時間/月に達するまでの支給量を認めないとの判断を含むものといえる。 したがって、原告の本件処分⑥及び⑦の取消請求は、重度訪問介護の各支給 量につき1か月413時間を超えて605.5時間(744-40-77.5-21)に達するまでの部分を支給量として算定しないものとした部分の取消しを求める限度で理由がある(なお、原告は、本件処分⑥及び⑦には、行政手続法8条1項本文に定める理由付記の不備の違法があるとも主張するが、本件処分⑥は直接的には本件処分④について加算移動を付加又は変更するもので、本件処分⑦は直接的に は本件処分⑤について加算移動を増加させるものであるから、本件処分⑥及び⑦を単に取り消したのみでは、本件処分 接的には本件処分④について加算移動を付加又は変更するもので、本件処分⑦は直接的に は本件処分⑤について加算移動を増加させるものであるから、本件処分⑥及び⑦を単に取り消したのみでは、本件処分④及び⑤の効力が復活し、支給量が同等又はより低い状態となるものであって、本件処分⑥及び⑦の取消しを求める原告の目的が達成されないことは明らかである(理由付記の不備の違法があることをもって支給量を増加すべき理由とはならない。)から、原告の上記主張は採用の限りではない。)。 ⑷ 本件義務付けの訴えは、行訴法3条6項2号に定めるいわゆる申請型の義務付けの訴えとして提起されたものと解されるところ、本件義務付けの訴えのうち、重度訪問介護の支給量を605.5時間/月を下回らない時間とする決定の義務付けを求める部分は、行訴法37条の3第1項2号、同条2項及び同条3項2号の各訴訟要件を満たしており、重度訪問介護の各支給量につき1か月413時間を超え て605.5時間に達するまでの部分を支給量として算定しないものとした部分の 取消しを求める限度で原告の本件処分⑥及び⑦の取消請求は理由があり、かつ、処分行政庁が支給量を605.5時間/月を下回らない時間とする決定をしないことはその裁量権の範囲を超えるものと認められる(同条5項。処分行政庁は、原告が越谷市に転出した後も、本件処分⑥及び⑦をした行政庁として、本判決により取り消された本件処分⑥及び⑦に対応する処分をする権限を依然として有しているもの と解される。)。 他方、本件義務付けの訴えのうち、支給量を605.5時間/月を超える時間とする決定の義務付けを求める部分は、行訴法37条の3第1項2号の訴訟要件を欠き、不適法である。 3 争点⑵(国家賠償責任の有無)について、検討する。 量を605.5時間/月を超える時間とする決定の義務付けを求める部分は、行訴法37条の3第1項2号の訴訟要件を欠き、不適法である。 3 争点⑵(国家賠償責任の有無)について、検討する。 ⑴ 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)ところ、処分行政庁が支給量に係る決定に当たり裁量権 を逸脱し又はそれを濫用したとしても、そのことから直ちに国家賠償法上の違法があるとの評価を受けるものではなく、処分行政庁に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく当該決定をしたと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法上の違法があるとの評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号、第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻 4号2863頁参照)。 これに対し、原告は、行政処分が違法な場合には国家賠償法上も違法の推定を受ける旨を主張するが、前記2⑴で判示した市長村長の裁量に照らすと、総合支援法に基づく障害者の地位の重要性を考慮しても、行政処分の違法が直ちに国家賠償法上の違法を基礎づけるものとは解されない。 ⑵ア原告は、違法行為1①について、本件処分①の当時、原告が既に24時間 介護を要する状態にあったと主張するが、前記1⑴アの主治医の意見書及び同イの現地調査票の内容のほか、平成31年4月時点においてもバイパップの着用は就寝時のみであったこと(甲30の2の11頁、弁論の全趣旨)からして、当時、原告が24時間介 記1⑴アの主治医の意見書及び同イの現地調査票の内容のほか、平成31年4月時点においてもバイパップの着用は就寝時のみであったこと(甲30の2の11頁、弁論の全趣旨)からして、当時、原告が24時間介護を要する状態にあったものとまでは直ちに認められず、他に当該事実を認めるに足りる証拠はない。 また、原告は、原告及び妻が本件要望書を提出した際、被告の職員に義務違反があったと主張するが、本件要望書に対する回答書の交付といった福祉課の職員の対応(前記1⑶イ)について、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものとは認められない。この点、被告の職員に、原告の主張するような職権で支給量の増量の変更決定をすべき義務があったとは認められず、また、被告の職員が支給量 の変更のための申請書式を交付しなかったことについては、行政サービスとして不親切という評価はあり得るとしても、上記回答書の記載内容に照らし、その交付に加えて直ちに申請書式を交付すべき職務上の注意義務を被告の職員が負っていたものとはいえない。さらに、原告は、被告の職員が、50時間/月を超える支給量とすることは不可能である旨や、本当は存在しない支給決定に係る基準を超えた支給 については審査会の判断が必要であると誤った旨を述べたと主張するが、上記回答書の記載内容を超えて、被告の職員が上記の旨を述べたと認めるに足りる証拠はない(なお、上記回答書中、支給決定基準に係る記載は、当時既に存在した支給決定基準の記載と整合するものであったと認められる。)。 他に違法行為1①を認めるべき証拠はないから、この点に関する原告の主張は採 用することができない。 イ原告は、違法行為1②について、国庫負担基準の考慮が他事考慮であると主張するが、前記2⑵で判示したところに照らせば、支給量の判断 ら、この点に関する原告の主張は採 用することができない。 イ原告は、違法行為1②について、国庫負担基準の考慮が他事考慮であると主張するが、前記2⑵で判示したところに照らせば、支給量の判断に当たり財政上の制約を考慮すること自体が違法であるとはいえない。また、原告は、重度訪問介護の趣旨に照らして「朝2時間、昼3時間、夕方3時間、夜2時間」の支援で足りる と判断すること自体が違法である旨主張するが、そのような時間枠で重度訪問介護 の必要な時間を考慮することが直ちに法令に反するというべき根拠はない。さらに、原告は、適切な事実の調査がされなかったなどと主張するが、本件処分②は、H31/4自宅調査や審査会の審査を経てされたものである。そして、H31/4自宅調査の結果のほか、原告については本件処分②後にも症状の相当程度の悪化があったことがうかがわれることに照らせば、本件処分②の当時、原告が既に24時間介護を要する状 態にあったものとまでは直ちに認められない。原告の介護を要する状況については、そのALSの進行状況に鑑みると、本件処分②の時点では本件処分④ないし⑦の時点よりも必要性の程度が比較的低い状態にあり、介護に要する肉体的負担及び精神的負担の程度も相対的に低い状態にあったとみるのが相当であるところ、前記2で認定判断したとおり、本件処分⑥及び⑦においても妻の介護時間を77.5時間/ 月の限度で考慮して支給量を605.5時間/月とする限度では処分行政庁の裁量権の範囲から逸脱したものであったとは認められないことを踏まえると、本件処分②において家族による介護支援120時間/月が控除され支給量が373.0時間/月(558-120-65)とされたこと(前提事実等⑷ウ)が違法であったとまでは直ちに認め難く、これと異なって解すべき 分②において家族による介護支援120時間/月が控除され支給量が373.0時間/月(558-120-65)とされたこと(前提事実等⑷ウ)が違法であったとまでは直ちに認め難く、これと異なって解すべき事情も認めるに足りない。 以上の点からすると、本件処分②について、国家賠償法上の違法はもとより、行政処分として違法であったとも認めるには足りないから、この点に関する原告の主張は採用することができない。 ウ違法行為1③についても、前記イで違法行為1②について判断したところと同様の理由により、この点に関する原告の主張は採用することができない。 エ違法行為1④ないし⑦について、前記2で認定判断したところからすると、本件処分④ないし⑦は、いずれも妻の介護時間を過度に控除した点において、処分行政庁の裁量の範囲から逸脱したものとして、違法であるというべきである。 その上で、国家賠償法上の違法性について検討するに、前記2⑶イで指摘した諸事情のほか、本件処分④ないし⑦については、次の点を指摘することができる。 すなわち、まず、①原告からは、処分行政庁に対し、複数回にわたり、資料(甲2 6)も添付して支給量について慎重に判断されたい旨が伝えられていた。次に、②本件処分④ないし⑦について上記のとおり処分行政庁の裁量の範囲から逸脱したものとみるべき大きな事情の一つは、妻の育児や家事等の負担であるところ、3人の未成熟子を女性一人で世話することの負担が非常に大きいことは社会の一般常識に属する事柄というべきである(甲74参照)。また、③本件処分④がされた平成元 年12月の時点において、同居の親族がいる場合であっても700時間を超える支給量が認められた例が他の地方公共団体では一定数みられており(甲105の1の1及び2、105の17、 ④がされた平成元 年12月の時点において、同居の親族がいる場合であっても700時間を超える支給量が認められた例が他の地方公共団体では一定数みられており(甲105の1の1及び2、105の17、105の28、105の34、105の35、弁論の全趣旨)、被告の職員においてそのような他の地方公共団体における運用を調査するなどしてより慎重な検討をすることも可能かつ容易なことであったとみられる。さ らに、④特に、H31/4自宅調査の結果も踏まえた審査会では、事務局から、日中の支援については妻の子育てが多忙ということもあり控除せずに支給することが妥当であると判断された旨が説明され、本件処分②の際には妻の家族支援として120時間/月が控除されていた(前提事実等⑷ウ)のに対し、その後8か月を経過して原告の状態が更に悪化したとみられる本件処分④の際には日中の妻の家族支援として 上記120時間/月の倍以上の270時間/月が控除されていること(この点、原告が支援を要するものと認められた時間数に占める割合という観点から比較しても、妻による家族支援に係る控除時間は、本件処分②の際には約21.5%(120÷558)であったものが、本件処分④の際には約36.3%(270÷744)と大幅に増加しており、原告が支援を要するものと認められた時間自体は186時間 (744-558)増加したもののその実に約80.6%((270-120)÷186)が妻による家族支援が可能であるとして控除されている。)からすると、被告の職員においては、妻による介護が可能かつ相当であるか、妻にとって過度な負担ではないか(支給量基準Ⅱ-1)といった観点からの検討を怠っていたといわざるを得ない。 以上の点を総合的に考慮すると、本件処分④ないし⑦については、処分行政庁に るか、妻にとって過度な負担ではないか(支給量基準Ⅱ-1)といった観点からの検討を怠っていたといわざるを得ない。 以上の点を総合的に考慮すると、本件処分④ないし⑦については、処分行政庁に おいて職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなくそれら処分をしたと認めるのが相当であり、国家賠償法上の違法性が認められるというべきである。そして、既に判示したところに照らせば、被告の担当職員の過失も認められるというべきである。その上で、本件処分④と本件処分⑥、本件処分⑤と本件処分⑦の各関係や、それら処分の理由が共通のものであること(前提事実等⑹ないし⑻、前記2⑶エ) を踏まえると、違法行為1④ないし⑦は、原告の主張するとおり、一連の違法行為を構成するものというべきである。 ⑶ア違法行為2について、原告は、本件発言がF職員の根深い差別意識に基づく強烈な差別的言動である旨を主張する一方、被告は、本件発言はあくまで原告の代理人の代理活動に対するものであり原告に対する差別的発言ではなかった旨を主 張するところ、①本件発言がされたH31/4自宅調査に先立つB弁護士ほかと被告の職員との間でのやり取りに関連する証拠(甲27ないし29、82ないし84)からすると、24時間介護が当然の前提であると考えていたB弁護士ほか原告の代理人弁護士らと、24時間介護に慎重な姿勢で対応していた被告の職員との間には、大きな認識の隔たりがあり、それが、互いの言動や考え方についての理解の誤りやす れ違いにつながっていたことがうかがわれること、②H31/4自宅調査においては、原告からの聴取りが開始されてF職員が本件発言に至るに先立ち、調査の目的の認識等に関してB弁護士とF職員との間で対立があって口論のようなやり取りが相応の時間にわたってされていたと認め 査においては、原告からの聴取りが開始されてF職員が本件発言に至るに先立ち、調査の目的の認識等に関してB弁護士とF職員との間で対立があって口論のようなやり取りが相応の時間にわたってされていたと認められること(甲30の1及び2)、③B弁護士ほか作成の平成31年4月15日付け「抗議声明」と題する書面(甲31)には、F 職員が「代理人弁護士に向かって、「時間稼ぎですか?」と発言し」たと記載されていることからすると、上記の被告の主張にはそれなりの裏付けがあり、原告の上記主張を直ちに採用することはできない。 イしかしながら、本件発言は、原告の面前において、原告の文字盤による回答という行為を受けてされたものであって(甲30の1・2、弁論の全趣旨)、その ような本件発言がされた場や本件発言の内容(少なくとも文言上、原告において回 答に時間がかかることに対するものと理解することができる。)からすると、本件発言の際にF職員が直接的に原告の方を向いていたかB弁護士の方を向いていたかといった事情にかかわらず、原告において、本件発言が自らに向けられたものと受け止めることは自然なことであった。他方、F職員においては、B弁護士には時間稼ぎをするメリットがないことも容易に理解し得たもので、本件発言が原告に向け られたものと理解されることを容易に想到しえたというべきである。これらの事情に加え、福祉課に属するF職員の職責の重要性も併せ考慮すると、本件発言については、故意によるものであるとまではいえないとしても、重大な落ち度のある、あまりにも軽率な執務態度によるものであったと評価されてもやむを得ない強度の誹謗中傷的な発言であったというほかなく、国家賠償法上の違法性もF職員の過失も 優に認められるというべきである。 4 争点⑶(原告の損害) 度によるものであったと評価されてもやむを得ない強度の誹謗中傷的な発言であったというほかなく、国家賠償法上の違法性もF職員の過失も 優に認められるというべきである。 4 争点⑶(原告の損害)について検討する。 ⑴ア一連の違法行為である違法行為1④ないし⑦による財産的損害としては、本件処分④がされた令和元年12月27日以降に発生したものが問題となるところ、原告が介護サービスを受けるために令和2年3月から10月までの間に合計171 万9478円を支出したことは認められるが(甲78の8ないし14、92、弁論の全趣旨)、争点⑴について判示したところに照らせば、原告の求める支給量704時間/月と当裁判所が認定した605.5時間/月との差に相当する部分については、原告としては、違法行為1④ないし⑦にかかわらず、その支出をせざるを得なかったこととなるから、支給量を413時間/月とした本件処分④ないし⑦に係 る違法行為1④ないし⑦と相当因果関係のある損害としては、上記171万9478円を291(704-413=291)で除した額に192.5(605.5-413=192.5)を乗じた113万7455円(1円未満切捨て)の限度となるというべきである。なお、本件義務付けの訴えを一部認容した本判決に基づく支給決定を将来受けた場合は、その支給額相当の損害の填補があったものとして請求 異議事由となり得ることを付言する。 イ違法行為1④ないし⑦により原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては、本件に現れた諸般の事情を考慮して、20万円をもって相当と認める。なお、遅延損害金の利率については、違法行為1④ないし⑦が一連の違法行為であり、その終期は令和2年4月1日以降であったことに鑑みると、年3%とするのが相当である。 ⑵ をもって相当と認める。なお、遅延損害金の利率については、違法行為1④ないし⑦が一連の違法行為であり、その終期は令和2年4月1日以降であったことに鑑みると、年3%とするのが相当である。 ⑵ 違法行為2による損害について、証拠(甲32、33、86、87)によると、市長名の文書の発出を含めて被告から原告に対して一定の範囲で慰謝の試みがされたと認められることを踏まえても、本件発言によって原告が受けた精神的苦痛は決して小さなものとはいえないから、その慰謝料としては5万円をもって相当と認める。 5 その他、以上と異なり、原告、被告が種々主張するところは、上記で認定、判示したところに照らして、いずれも採用することができない。 第4 結論よって、①本件義務付け請求は、重度訪問介護の支給量につき1か月605.5時間を下回らない時間とする決定の義務付けを求める限度で理由があるから、この 限度で認容し、その支給量を1か月605.5時間を超える時間とする決定の義務付けを求める部分は不適法であるから、これを却下し、②本件取消請求は、いずれも重度訪問介護の支給量につき1か月413時間を超えて605.5時間に達するまでの部分を支給量として算定しないものとした部分の取消しを求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は理由がないから、これを棄却し、③本件 国家賠償請求は、133万7455円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求め、また、5万円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する(なお、仮執行宣言は相当では 支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する(なお、仮執行宣言は相当ではないので、これを付さないこととする。)。 主文 さいたま地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官田中秀幸 裁判官中島朋宏 裁判官丸山智大

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