令和6年9月27日宣告令和5年(わ)第1358号 判決 主文 被告人を懲役1年及び罰金200万円に処する。 未決勾留日数中150日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは、1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、 1 A、B及びCと共謀の上、内閣総理大臣の登録を受けないで、業として、平成30年11月下旬頃から令和2年3月上旬頃までの間、11回にわたり、長崎県佐世保市a町b番地cのD方ほか7か所において、前記Dほか10名との間で、被告人らが管理提供する自動売買システムを用いた外国為替証拠金取引(以下「FX取引」という。)に関する投資一任契約を締結し、同契約に基づき、平成31年1月下旬頃から令和3年8月頃までの間、大阪府内に設置され、インターネットに接続されたサーバーにおいて被告人らが管理提供するFX取引の自動売買システムを介して、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、FX取引に係る権利に対する投資として、デリバティブ取引取扱業者との間で、前記Dほか10名の各個人名義によるFX取引の代理を行って同人らの金銭を運用し、 2 A、B、C及びEと共謀の上、内閣総理大臣の登録を受けないで、業として、平成31年1月中旬頃から同月下旬頃までの間、3回にわたり、福岡市d区内の飲食店ほか2か所において、Fほか2名との間で、被告人らが管理提供する自動売買システムを用いたFX取引に関する投資一任契約を締結し、同契約に基づき、同月 下旬頃から令和元年12月上旬頃までの間、大阪府内に設置され、インターネットに接続されたサーバーにおいて被告人らが管理提供するFX取引の自動売買システ 任契約を締結し、同契約に基づき、同月 下旬頃から令和元年12月上旬頃までの間、大阪府内に設置され、インターネットに接続されたサーバーにおいて被告人らが管理提供するFX取引の自動売買システムを介して、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、FX取引に係る権利に対する投資として、デリバティブ取引取扱業者との間で、前記Fほか2名の各個人名義によるFX取引の代理を行って同人らの金銭を運用し、もって無登録で金融商品取引業を行った。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 争点及び判断の骨子共犯者とされるAらが、顧客らに対して自動売買システムを用いたFX取引に関するサービスを提供し(以下、Aらが顧客らに提供していたサービスを「本件サービス」という。)、顧客らの資産を元手にしてFX取引の投資がなされていたことに争いはない。本件の争点は、①Aらによる本件サービスの提供が、金融商品取引法上の「投資運用業(同法28条4項1号、2条8項12号ロ)」に該当すると認められるか(争点①)、②被告人に故意及び共謀が認められるか(争点②)である。 当裁判所は、①Aらは、自動売買システムを稼働するために必要な手続や設定等を代行してFXの自動取引ができるようにシステムを構築し、投資判断に関わるシステムの初期設定やオンオフ操作のタイミングに関する判断までも行うなどして、システムを管理することにより、FX取引に関して素人同然である顧客らから、投資判断を一任されるとともに、投資を行うために必要な権限を委任されたことにより投資一任契約に基づいて顧客らの金銭を運用していたと認められるから、Aらによる一連の行為は投資運用業に該当する、②Aらが顧客らに本件サービスを提供するようになった発端は、被告人がB及びCにその旨指示したことにあり、被 いて顧客らの金銭を運用していたと認められるから、Aらによる一連の行為は投資運用業に該当する、②Aらが顧客らに本件サービスを提供するようになった発端は、被告人がB及びCにその旨指示したことにあり、被告人は後述するIB報酬の分配も受けるなどして本件サービスの内容を詳しく知り得る立場にあった上、システムのオンオフ操作等をCが顧客のために行っていた可能性 を認識していたことなどから、被告人には故意及び共謀が認められると判断した。 以下、その理由を詳述する。 第2 投資運用業に該当するか(争点①) 1 前提事実関係証拠によれば、次の事実が認められ、弁護人も積極的には争っていない。 ⑴ 本件サービスの概要本件サービスは、Aらが顧客らに対して、「V」という名称の自動売買システム(以下「本件システム」という。)を販売し、Aらが必要な手続や設定等を代行し、本件システムが稼働することによってFX取引が自動的に実行されるという内容である。本件システムは、自動売買システムの販売提供を業とするG社が開発したソフトウェアであり、個別のFX取引の新規注文や決済注文等の内容や時期について、プログラムが自動的に判断して実行する機能を有する(なお、この種のソフトウェアのことを「EA(ExpertAdvisor)ファイル」という。)。 ⑵ 顧客に対する説明の内容Aらは、知人の紹介や説明会の開催等を通じて幅広く本件サービスの利用を募っていたが、本件公訴事実に係る顧客らは、FX取引の経験が皆無であるか、多少の経験はあっても知識が浅いなど、いずれもFX取引に関しては素人同然であった。 Aらは、顧客らに対し、本件システムがFX取引の判断を機械的にするため、顧客らの側で投資判断をする必要はないという旨や、本件システムを稼働するために必要な手続や設定等はAらの ては素人同然であった。 Aらは、顧客らに対し、本件システムがFX取引の判断を機械的にするため、顧客らの側で投資判断をする必要はないという旨や、本件システムを稼働するために必要な手続や設定等はAらの側で代行するという旨の説明をしていた。説明を受けた顧客らは、本件システムの購入代金を支払った上で、身分証明書等の必要な書類をAらに預け、FX取引の開始に必要な手続や設定等の代行を依頼した。 ⑶ 本件システムが稼働するまでの流れ顧客らが本件システムを購入してから、実際に本件システムを用いてFX取引が開始されるまでの流れは、概ね以下のとおりであった。 ア本件システムを実際に用いるためには、「MT4」というFX取引向けのプ ラットフォームに、EAファイルを保存して稼働させる必要がある。そこで、A又はCが、顧客らから預かった書類や情報を利用して、FX取引の注文先とする海外証券会社を選んで顧客名義で証券口座を開設し、MT4をダウンロードするため、顧客名義の仮想サーバー(以下「VPS」という。)の利用契約を締結した。 イその上で、Bが、本件システムのEAファイルをMT4に導入するための手続を行った。すなわち、Bは、Aらから提供を受けた証券口座のID等の顧客情報をG社に伝え、G社から同証券口座に紐づけられたEAファイル及びその稼働に必要な認証コードを入手した上で、証券口座を開設した証券会社からMT4の提供を受けてVPS上にダウンロードし、同EAファイルをMT4の所定フォルダに保存した。なお、顧客らはEAファイルの存在や認証コードを知らされておらず、本件システムの全容を認識していなかった。 ウさらに、Bは、顧客らのために本件システムの初期設定を行った。この初期設定には、通貨ペア(FX取引で売買される2か国の通貨の組み合わせのことで、「米 件システムの全容を認識していなかった。 ウさらに、Bは、顧客らのために本件システムの初期設定を行った。この初期設定には、通貨ペア(FX取引で売買される2か国の通貨の組み合わせのことで、「米ドル/日本円」、「ユーロ/米ドル」などがある。)や時間軸(通貨の値動きを示すチャートの時間単位を指し、「1分足」、「5分足」、「15分足」などがある。)等の設定が含まれており、その内容によってFX取引のリスクや収益結果等が変化することになる。初期設定の内容については、Aらが顧客への説明の際に簡単に意向を確認していたものの、大半の顧客はAらの推奨する設定内容をそのまま承諾していた。 エ A又はCが、本件システムを遠隔操作するためのアプリケーション「RDClient」(以下「本件アプリ」という。)を顧客らのスマートフォン等の端末にインストールした。 オ顧客らが、証券口座へ証拠金を入金し、VPSの利用料金を支払った。 カ MT4の取引画面にある「自動売買」ボタンを押して「ON」にすることによって、本件システムが稼働し、自動的に証券会社に対してFX取引が開始された。 なお、逆に「自動売買」ボタンを「OFF」にすると、本件システムは稼働を停止 することになる(以下、この「自動売買」ボタンの操作のことを「オンオフ操作」という。本件犯行におけるオンオフ操作の実態については、後記2で詳しく検討する。)。 ⑷ 本件システム稼働後のサポート上記⑶イのとおり、顧客らは本件システムのEAファイルや認証コードについてAらから伝えられていなかったため、システムの稼働後に顧客らが初期設定等を変更するなどして不具合が生じた場合には、Bらの側で必要な再設定を行っていた。 また、契約先の証券会社を変更する必要が生じた際にも、新しい証券口座へ移行するため システムの稼働後に顧客らが初期設定等を変更するなどして不具合が生じた場合には、Bらの側で必要な再設定を行っていた。 また、契約先の証券会社を変更する必要が生じた際にも、新しい証券口座へ移行するための手続はBらが担うなどして、Aらは、本件システムによる自動売買が想定どおりに行われるためのサポート業務を継続的に行っていた。 ⑸ Aらが得ていたIB報酬本件サービスにおいては、顧客らがFX取引によって利益を得たとしても、Aらが直接それによって顧客から報酬や利益を受け取ることはなかったが、本件システムを用いたFX取引が実行された場合、Aらには、その取引量に応じて証券会社からアフィリエイト報酬が支払われる仕組みとなっていた。具体的には、Aらが証券会社へ顧客らを紹介したことに対する報酬として、「IB報酬」(紹介者(=IntroducingBroker)に支払われる報酬)と呼ばれる報酬が支払われる仕組みとなっており、顧客らの取引量の増加に比例して、AらのIB報酬も増加する関係にあった。 2 本件システムのオンオフ操作について⑴ 問題の所在弁護人は、本件システムのオンオフ操作について、Aが一部の近しい顧客のために本件システムをオフにする操作をしていたことを除けば、Aらが全体としてオンオフ操作を実施していたかは明らかではないと主張する。 検討の前提として、顧客らは、自らのスマートフォン等にダウンロードされた本件アプリを利用すれば、アプリを通じて自らオンオフ操作をすることが可能であっ た。他方で、Aらも、オンオフ操作をするために必要な顧客らの証券口座のIDやEAファイルの認証コード等のデータを管理していたため、独自にオンオフ操作をすることが可能な状態であった。 これらを踏まえ、本件サービスにおけるオンオフ操作の実態について な顧客らの証券口座のIDやEAファイルの認証コード等のデータを管理していたため、独自にオンオフ操作をすることが可能な状態であった。 これらを踏まえ、本件サービスにおけるオンオフ操作の実態について検討する。 ⑵ 顧客らの供述内容オンオフ操作に関する顧客らの供述内容は、大きく2つに分かれる。 その一方は、顧客らの側でオンオフ操作が可能であるという説明をAらから聞いていなかった、操作のために必要な本件アプリのダウンロードがされていなかった、あるいは、完全にオンオフ操作をAらに任せていたため、顧客らの側で直接オンオフ操作をすることは一切なかった、というものである(H、I、F、J及びK)。 他の一方は、本件アプリがスマートフォン等にダウンロードされており、顧客らの方でオンオフ操作をすることが可能であって、多かれ少なかれ実際に自らオンオフ操作をしていた、というものである(D、L、M、N、O、P、Q、R及びS)。 もっとも、これらの顧客の中には、Aらにオンオフ操作を完全に任せていた時期があった者も複数存在し、また、直接オンオフ操作をしていたのが顧客らであったとしても、顧客らの側でオンオフ操作のタイミングを独自に判断することはほとんどなく、その判断は基本的にAらからの指示に従っていた。具体的には、Aらからグループラインのメッセージ等を通じて、週末や経済指標の発表等に備えてシステムをオン又はオフにするようアドバイスが送られてくるため、顧客らは基本的にそのアドバイスに従っていた。 ⑶ 顧客らの供述の信用性顧客らがあえてうそをつく理由や、何らかの記憶違いや勘違いをしている可能性は考えにくく、その供述は、元々顧客らがFX取引に関して素人同然であり、勧誘の際にAらが顧客らの側で投資判断をする必要はないなどと説明していたことや、共犯者らが本件システム や勘違いをしている可能性は考えにくく、その供述は、元々顧客らがFX取引に関して素人同然であり、勧誘の際にAらが顧客らの側で投資判断をする必要はないなどと説明していたことや、共犯者らが本件システムのオンオフ操作に必要なデータを全て管理し、操作に必要な権限を有していたこと等の事実関係と整合する、自然かつ合理的な内容である。 その上、C及びEは、グループラインを通じてオンオフ操作のタイミングを顧客らに教えるようにしていたという旨の供述をしており、顧客らの上記供述を裏付けている。 さらに、被告人は、令和元年8月3日、内妻のTへ向けたラインの中で、「魚屋(Cのこと)が金全部溶かしてしまうかも」「経済発表があるからスイッチ切れって言ったら間違えて全部オンにしてる」「俺のだけやなくて他の会員のも切ってる」などとメッセージを送っている。これらのメッセージは、Cが顧客らのためにオンオフ操作をしていたことを前提とする内容であり、やはり顧客らの上記供述を裏付けるものといえる。 ⑷ B及びAの公判供述他方、Bは、当公判廷において、オンオフ操作を推奨する内容の情報がG社から顧客らに伝達されていたことは認めつつも、自分が顧客のためにオンオフ操作をしたことはなかったし、A、C又はEがオンオフ操作をしているとも思っていなかったと供述する。また、Aも、近しい一部の顧客の頼みを受けて、個別でシステムをオフにする操作をしたことは数回あるが、オンにする操作はしていないし、顧客らに対しては、オンオフ操作は顧客らの側でするように説明していたと供述する。 しかしながら、FX取引に関して素人同然の顧客らが、本件システムの稼働に必要な手続や設定等のほぼ全てをAらに任せていたにも関わらず、経済動向等を踏まえオンオフ操作のみを主体的に判断していたというのは不自然である。 FX取引に関して素人同然の顧客らが、本件システムの稼働に必要な手続や設定等のほぼ全てをAらに任せていたにも関わらず、経済動向等を踏まえオンオフ操作のみを主体的に判断していたというのは不自然である。 ⑸ 小括以上のとおり、オンオフ操作の実態に関しては、顧客らの供述が信用できるのに対し、B及びAの供述は信用できない。そうすると、本件サービスにおいては、顧客らはオンオフ操作をAらに完全に任せていたか、操作自体は顧客らがするにせよ、そのタイミングの判断については、専らAらのアドバイスに従っていたことが認められる。 3 投資運用業の該当性 ⑴ 投資運用業の要件投資運用業に該当するといえるためには、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(以下「投資一任契約」という。)を締結し、当該契約に基づき、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用を業として行ったといえる必要がある(金融商品取引法2条8項12号ロ)。 ⑵ 検討FX取引における「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断」とは、「行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断(同法2条8項11号ロ)」をいい、具体的には、FX取引の新規注文及び決済注文の内容及び時期について判断することを指す。 本件のFX取引では、個別のFX取引の新規注文及び決済注文の内容及び時期は、本件システムによって自動的に決定されることになっているところ、検察官は、共犯者らが本件システムを稼働させるために必要な手続のすべてを行っていたこと、共犯者らがF 注文及び決済注文の内容及び時期は、本件システムによって自動的に決定されることになっているところ、検察官は、共犯者らが本件システムを稼働させるために必要な手続のすべてを行っていたこと、共犯者らがFX取引の主たる要素である通貨ペア、初期ロット数、時間軸等の初期設定を、必ずしも顧客の具体的な意向を確認しないまま行っていたこと等からすれば、本件システムは共犯者らによって管理されており、顧客らは、共犯者らが管理する本件システムに投資判断を任せる前提で本件システムを使用したと評価すべきであるから、共犯者らが、顧客が本来行うべき最終的な投資判断の全部又は一部を委任されていた、と主張する。これに対し、弁護人は、本件システムに人の投資判断は介在せず、その販売自体が金融商品取引法に反する行為とは考えられない上、検察官主張の本件システムを稼働させるための必要な手続や初期設定等の行為も、上記販売に付随するものであって、およそ投資判断に基づく運用と評価されるものではないと主張する。 そこで、以下検討する。 ア本件システムは、顧客らがEAファイル等を購入するだけで直ちに稼働できるようになるわけではなく、前記認定のとおり、①顧客名義の海外証券会社の証券口座を開設し、②顧客名義のVPSの利用契約を締結した上で、③同VPS上に上記海外証券会社からダウンロードしたMT4を保存してこれをプラットフォームにし、④G社から上記①の証券口座に紐づけられたEAファイル及び認証コードの発行を受け、⑤上記③のプラットフォーム上に上記④のEAファイルを組み合わせ、認証コードを入力する等の手続を経ることが必要になる。これらの各手続については、AやBらが、顧客の代わりに、顧客らから送信された身分証明書等のデータを用いるなどして、すべて行っており、顧客らは、これら本件システム 力する等の手続を経ることが必要になる。これらの各手続については、AやBらが、顧客の代わりに、顧客らから送信された身分証明書等のデータを用いるなどして、すべて行っており、顧客らは、これら本件システムの全容、EAファイルの存在、認証コードその他必要な手続等を認識していなかった。 イ Aらは、顧客らを勧誘するにあたり、顧客らの側で投資判断をする必要はなく、本件システムを稼働させるために必要な手続や設定等もAらの側で代行するという旨の説明をしており、顧客らは、それを前提に手続や設定等に必要な書類等をAらに預けた上で、そのほぼ全てをAらに一任しており、顧客らの証券口座のIDやEAファイルの認証コードなど、本件システムの初期設定やオンオフ操作等に必要なデータも全てAらの管理下に置かれていた。その上で、Aらは、システムに不具合が生じた際の再設定や、新しい証券口座への移行等の必要な手続を担い、本件システムによる自動売買が想定どおりに行われるためのサポート業務を継続的に行っていた。 ウさらに、本件システムが具体的にいかなる投資判断をするかは、通貨ペアや初期ロット数、時間軸等の初期設定の内容はもちろんのこと、その設定に基づくシステムの稼働の時期、すなわちオンオフ操作のタイミングによっても左右されるものであるところ、本件サービスにおいて、顧客らのために本件システムの初期設定を行っていたのはBである。この設定内容については、Aらが顧客への説明の際に簡単に意向を確認していたものの、それはあくまで形式的なものにすぎず、FX取 引に関して素人同然である顧客らは、基本的にAらの推奨する設定内容をそのまま承諾していたのであり、設定内容の実質的な判断は、BやAらが行っていたものと認められる。 また、オンオフ操作を実際に行ったり、そのタイミングを判断し らは、基本的にAらの推奨する設定内容をそのまま承諾していたのであり、設定内容の実質的な判断は、BやAらが行っていたものと認められる。 また、オンオフ操作を実際に行ったり、そのタイミングを判断したりしたことについても、前記2⑸で詳細に検討したとおり、その実質的な主体は、Aらであったと認められる。 エ以上のとおり、Aらは、本件システムを稼働させるに当たり、前提となる海外証券口座の口座開設等の手続をすべて行った上、本件システムのEAファイルの存在及び認証コードを顧客らに伝えることなく、MT4とEAファイルを組み合わせてVPS上に本件システムを構築し、顧客らの利用に供していた上、本件システムによる自動売買開始後も、顧客らの認証コード等を管理し、本件システムのサポート業務を継続的に行うなどして、管理していた。さらに、本件システムの投資判断に直接関わる通貨ペア等の初期設定やオンオフ操作についても、その実質的な判断主体はBやAらであったと認められる。以上からすると、本件は、検察官の主張するように、本件システム全体がAらの管理下にあったと評価するのが相当である。 なお、弁護人は、Aらは顧客らに対し、本件システムを販売し、これに付随して同システムを稼働するための準備行為等をしたにすぎないと主張する。しかし、Aらが行った前記ア①ないし⑤の各手続は、システムの販売に付随する手続とみるにはあまりに複雑で、本件システムの稼働のために本質的なものである。何より、弁護人の前提では、Aらがオンオフ操作を実質的に行っていたことを説明することが困難である。弁護人の主張は採用することができない。 オ以上によれば、顧客らは、Aらが管理提供する本件システムに投資判断の全部又は一部を一任するとともに、Aらに顧客らのために投資を行うために必要な権限を委任していたと 張は採用することができない。 オ以上によれば、顧客らは、Aらが管理提供する本件システムに投資判断の全部又は一部を一任するとともに、Aらに顧客らのために投資を行うために必要な権限を委任していたというべきであって、両者の間で投資一任契約が締結されていたと認めることができる。 その上で、このような投資一任契約に基づき、Aらが基本的には投資判断を担った上で、Aらが構築・管理していた本件システムによって顧客らの用意した証拠金を元手にしてFX取引が実行され、その金銭の運用が行われているのであるから、顧客らの金銭を運用していた主体はAらであったと認められ、Aらがそれを業として行っていたことも明らかである。 ⑶ 小括以上によれば、Aらによる本件サービスの提供は、金融商品取引法上の投資運用業に該当すると認められる。 第3 被告人に故意及び共謀が認められるか(争点②) 1 前提事実関係証拠によれば、次の事実が認められ、弁護人も積極的には争っていない。 ⑴ 被告人とAらとの関係被告人は、本件当時、暴力団組織のUにおける幹部組員であった。Cは、かつて被告人の配下の暴力団組員であった者であり、A及びBは、いずれも被告人の親交者であった。 ⑵ 本件サービスの提供開始と運営状況被告人は、平成30年7月上旬頃、知人が自動売買システムを用いたFX取引で儲かっているという話を聞いて興味を持ち、知人からG社の紹介を受けた。その後、被告人は、G社の自動売買システムを用いたFX取引をCに試行させたり、G社へ派遣したBからIB報酬に関する説明を受けたりしたことを踏まえ、自動売買システムを顧客に提供してIB報酬等を獲得する活動を、B及びCに行わせることとした。この活動には、遅くとも同年11月上旬頃までにAも参加するようになり、被告人も を受けたりしたことを踏まえ、自動売買システムを顧客に提供してIB報酬等を獲得する活動を、B及びCに行わせることとした。この活動には、遅くとも同年11月上旬頃までにAも参加するようになり、被告人もそのことを認識していた。 Aらは、平成31年以降は福岡市e区の事務所(以下「本件事務所」という。)で本件サービスに関する業務を行っていたが、被告人は、本件事務所を週2回から月1回程度の頻度で訪れていた。 ⑶ 初期設定やオンオフ操作に関する事実被告人は、平成30年9月から、内妻の名義を使用して、Cに必要な手続を代行させて証券会社の口座を開設するなどした上で、自らの資金を元手に、G社の提供する自動売買システムを用いたFX取引を実際に行い始めた。その際、被告人は、Cに対し、初期設定の変更やオンオフ操作を含めシステムの管理を任せており、被告人自身はオンオフ操作等の方法を知らなかった。 また、前記第2の2⑶のとおり、被告人は、令和元年8月3日、内妻へ向けたラインメッセージの中で、Cが顧客らのためにオンオフ操作をしていたことを前提とする内容のメッセージを送信していた。 2 被告人へのIB報酬の分配の有無⑴ 問題の所在前記第2の1⑸のとおり、本件サービスによってFX取引が行われると、取引量に応じてAらにIB報酬が支払われることになっていた。この点、Aは、捜査段階においては、IB報酬を被告人に分配していたと供述していたが、当公判廷においては、被告人へIB報酬を分配したかは記憶にないと供述し、被告人も、AからIB報酬を受け取ってはいないと供述している。 ⑵ Aの捜査段階供述の信用性Aの捜査段階供述は、「IB報酬の出金を終えるとすぐに被告人に連絡を取り、出金額を報告した。被告人は、本件事務所に立ち寄る予定がないときは、私にI と供述している。 ⑵ Aの捜査段階供述の信用性Aの捜査段階供述は、「IB報酬の出金を終えるとすぐに被告人に連絡を取り、出金額を報告した。被告人は、本件事務所に立ち寄る予定がないときは、私にIB報酬の分配額を指示し、私は、その指示どおりに報酬を分配し、被告人にも渡していた。被告人が本件事務所に立ち寄る予定があるときは、出金した現金をそのまま被告人に渡し、被告人がこれを3つに取り分けた上で、自分の取り分については、これを手にして事務所を出るか、私に金庫に保管しておくよう指示した」という具体的なものである。前記1⑵のとおり、本件サービスの提供は、被告人が企画したことが発端となって始まった業務であり、被告人は、業務開始後も本件事務所を繰り返し訪れるなど、継続的な関与が続いていたことからすると、被告人がIB報酬 の分配を受けていたというのは自然で納得できる内容である。 これに対し、当公判廷におけるAのIB報酬の分配に関する供述は、ほとんどの質問に対して覚えていないと答えるなど、曖昧かつ不自然な内容であり、捜査段階供述から何故供述が変わったのか合理的な説明ができていない。このようなAの供述態度からすると、親交のある被告人の面前では、被告人のことを慮って被告人に不利な内容を供述することができなかったことがうかがわれる。 以上によれば、Aの捜査段階供述は信用できるが、当公判廷における供述は信用できず、被告人は、IB報酬の分配を受けていたものと認められる。 3 故意及び共謀の有無⑴ 被告人の立場被告人は、本件サービスの提供開始の発端となっただけでなく、その後も本件事務所を繰り返し訪れるとともに、IB報酬の分配も受けていた。また、自らも内妻名義で、Cに必要な手続を代行させて証券口座を開設するなどした上で、本件システムを用いた となっただけでなく、その後も本件事務所を繰り返し訪れるとともに、IB報酬の分配も受けていた。また、自らも内妻名義で、Cに必要な手続を代行させて証券口座を開設するなどした上で、本件システムを用いたFX取引を実際に行っていたというのであり、Aらによる本件サービスの内容について詳しく知り得る立場にあったことが認められる。 ⑵ オンオフ操作等に関する認識また、実際に本件システムを用いたFX取引を行っていた被告人自身も、オンオフ操作等の方法を知らず、Cに初期設定の変更やオンオフ操作を含めシステムの管理を任せていた上、Cが顧客らのためにオンオフ操作をしていたことを前提とする内容の本件メッセージも送信していた。そうすると、被告人は、初期設定の変更やオンオフ操作という、FX取引における投資判断に当たる行為を、Cが顧客のために行っていた可能性を十分に認識していたといえる。 これに対し、被告人は、このようなオンオフ操作は近しい顧客に対してのみやっていると思っていたと供述しているが、被告人が操作の方法さえ知らなかったオンオフ操作を、素人同然である多くの顧客が自らの判断で実行していると信じていたというのは不自然である。 ⑶ 小括以上によれば、被告人は、本件サービスの内容を詳しく知り得る立場にあった上、FX取引における投資判断に当たる行為を、Cが顧客のために行っていた可能性を認識していたことが認められ、被告人には、本件の構成要件該当性を基礎付ける主要な事実を少なくとも未必的に認識・認容していたことは明らかであり、故意があったと認められる。 その上で、被告人が本件サービスの提供開始の発端となり、その後も継続的な関わりを持ち、IB報酬の分配も受けていたことからすれば、被告人は、Aらと意思を相通じ合った上、自己の犯罪として本件犯行に及んだもの 上で、被告人が本件サービスの提供開始の発端となり、その後も継続的な関わりを持ち、IB報酬の分配も受けていたことからすれば、被告人は、Aらと意思を相通じ合った上、自己の犯罪として本件犯行に及んだものと認められ、共謀共同正犯が成立する。 (確定裁判)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)被告人らは、約2年7か月間にわたり、FX取引の自動売買システムを顧客に販売した上、同システムの稼働に必要な手続や投資判断に関わるものも含む設定等を代行するなどして同システムを構築・管理し、顧客との間で締結した投資一任契約に基づき顧客の金銭を運用して、無登録で投資運用業を営んだものである。同システムは、レバレッジ率の高い海外の証券会社を利用した投機性の高いものであり、14名に及ぶ顧客の大半は証拠金を失い、中には1000万円以上の損失を被った者もいる。このような結果となったのは、コロナ禍等による市場の変動によるところが大きく、顧客の自己責任という面があることは否定できないものの、そもそも素人同然である顧客らが投資を決意したのは被告人らによる勧誘が発端であり、被告人らの言動を信用した結果でもあるから、投資家の保護を図るという金融商品取引法の趣旨に照らしても、被告人らには相応の責任があるといえる。被告人らは、 顧客らが負う多大なリスクと引き換えに、顧客の紹介や取引量に応じて証券会社から支払われる報酬という形で多額の利益を得ていたのであり、その利欲的な動機は強い非難に値する。他方で、被告人らは当局による行政指導等を受けておらず、突然刑事訴追されたものである上、被告人においても、投資運用業に該当するという確定的な認識を有していたとまでは認められないが、これらの事情を考慮しても、本件の犯情は相応に悪く、中でも被告人は、本件犯行を企画し、共犯 たものである上、被告人においても、投資運用業に該当するという確定的な認識を有していたとまでは認められないが、これらの事情を考慮しても、本件の犯情は相応に悪く、中でも被告人は、本件犯行を企画し、共犯者らを本件投資運用業に従事させていたものであり、被告人自身が共犯者らよりも大きな利益を得ていたとは認められないとしても、その責任は共犯者らの中で最も重いというべきである。 以上によれば、被告人の刑事責任は軽くないのであって、懲役刑が相当である。 そして、前記確定裁判は実刑判決であるから、その確定前余罪である本件で実刑を免れることはできないが、そのような併合罪の関係にあることや、被告人に同種の経済事犯に係る前科はないことは、刑期を定めるに当たっては十分に斟酌されるべきである。そこで、被告人に対しては、主文の刑期の懲役刑を科すとともに、この種の犯罪が経済的に割に合わないことを知らしめるため、主文の金額の罰金刑を併科するのが相当である。 (求刑:懲役1年6月及び罰金200万円)令和6年9月27日福岡地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官今泉裕登 裁判官志田健太郎 裁判官星野徹
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