平成22(行ケ)10246 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年4月27日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文36,061 文字)

- 1 -平成23年4月27日判決言渡平成22年(行ケ)第10246号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年3月2日判決 原告株式会社玄米酵素 訴訟代理人弁理士竹沢荘一同中馬典嗣同森浩之 被告株式会社万成食品 訴訟代理人弁護士酒井雅弘同吉田衣里主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が,無効2009-800195号事件について,平成22年6月28日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯等被告は,発明の名称を「米糠を基質とした麹培養方法と玄米麹」とする特許第4304319号(平成15年3月5日出願,平成21年5月15日設定登録。以下- 2 -「本件特許」という。)の特許権者である。 原告は,平成21年9月10日,本件特許の無効審判請求(無効2009-800195号事件)をし,特許庁は,平成22年6月28日,「本件特許に係る発明についての本件審判の請求は成り立たない。」の審決をし,その謄本は,同年7月8日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は,次のとおりである(以下,請求項1ないし5に係る発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」とい 原告に送達された。 2 特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は,次のとおりである(以下,請求項1ないし5に係る発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」といい,これらを総称して「本件各発明」ということがある。)。なお,本件特許の明細書を「本件明細書」という(甲31)。 「【請求項1】米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する第一の工程と,該粒子状にした米糠に蒸気をあて蒸す第二の工程と,該蒸した米糠に種麹を接種し,むろに於いて培養する第三の工程と,該培養された麹と該培養中に産出された酵素とを含む玄米麹を乾燥する第四の工程とからなる米糠を基質とした麹培養方法【請求項2】前記第一の工程に於いて,酢酸を加え,必要に応じてにんにくを加え,雑菌繁殖を抑え,前記第三の工程に於ける前記培養を助成するようにした事を特徴とする請求項1に記載した米糠を基質とした麹培養方法【請求項3】前記第三の工程に於いて,前記種麹を接種した前記米糠の温度が37~38℃になった時点で,別途設けたファンから空気を送風し,該米糠の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養する事を特徴とする請求項1に記載した米糠を基質とした麹培養方法【請求項4】前記むろに於いて,培養床を設け,該培養床は,複数の仕切り部材を配置し,該- 3 -仕切り部材は,固定金具と該固定金具を含むメッシュの布からなり,静置された前記米糠に,別途設けたファンから送風される空気が,該仕切り部材を介して流れるようにした事を特徴とする請求項1に記載した米糠を基質とした麹培養方法【請求項5】請求項1から請求項4に記載された前記米糠を基質とした麹培養方法によって産出されたことを特徴とする玄米麹」 3 審決の理由別紙審決書写しのとおりである。 基質とした麹培養方法【請求項5】請求項1から請求項4に記載された前記米糠を基質とした麹培養方法によって産出されたことを特徴とする玄米麹」 3 審決の理由別紙審決書写しのとおりである。その判断の要旨は,以下のとおりである(便宜,審決の判断と順序を変更した。)。 (1) 容易想到性の有無について本件発明1は,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」点に特徴を有するものであるが,請求人(原告)が提示したいずれの刊行物を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものとはいえないから,特許法29条2項により特許できないとはいえず,本件発明2ないし5についても同様である。 (2) 記載要件について本件発明1は,特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たすものであり,本件発明2ないし5についても同様である。 (3) 産業上利用できる発明か否かについて本件発明1における「玄米麹」は,玄米全体ではなく,その一部である米糠を基質として培養したものを意味し,「米糠」を発酵させることにより産出できるものであり,本件発明1が,自然法則に反する内容に反する内容を含んでいることにならない。したがって,本件発明1は,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たし,本件発明1を引用して記載する本件発明2ないし5も同様である。 (4) 補正要件を充足するか否かについて本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。 - 4 -(5) 以上のとおり,本件発明1について,請求人が申し立てた無効理由はいずれも理由がないから,本件発明1についての特許を無効にすることはできない。同様に,本件発明2ないし5についての特許を無効にすることはできない。 第3 当事者の主張 1 取消事由に係 無効理由はいずれも理由がないから,本件発明1についての特許を無効にすることはできない。同様に,本件発明2ないし5についての特許を無効にすることはできない。 第3 当事者の主張 1 取消事由に係る原告の主張審決には,(1) 容易想到性判断の誤り(取消事由1),(2) 記載要件に係る判断の誤り(取消事由2),(3) 「産業上利用することができる発明」該当性判断の誤り(取消事由3),(4) 補正の適否判断の誤り(取消事由4)があり,これらは,審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。すなわち,(1) 容易想到性判断の誤り(取消事由1)審決は,本件発明1は,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」点に特徴を有し,これにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくしたものであるとした上で,「請求人が提示した,本件特許の出願前に頒布された刊行物(判決注:甲5ないし7,18ないし21,特開2002-29994号公報)のいずれにも,米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工することはおろか,粉末を粒子状に加工することすら記載されていない。 ・・・したがって,本件発明1は,請求人が提示したいずれの刊行物を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものではない。」(審決16頁25~32行),「粉体を粒子状に加工する技術は,調味料や肥料などを粒状に加工する造粒技術として周知ではあるが,粉体中の空気の流通を良くする技術として周知ではないのであるから,甲第18,20及び21号証に,米糠の空気の流通を良くしようとする課題は読み取れるものの,これと周知の造粒技術を組み合わせることについては,発想の転換が必要であり,当業者が容易に想到するとはいえないものである。」(審決17頁1~7行)と判断した。 くしようとする課題は読み取れるものの,これと周知の造粒技術を組み合わせることについては,発想の転換が必要であり,当業者が容易に想到するとはいえないものである。」(審決17頁1~7行)と判断した。 しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。 アまず,米糠を基質として,混ぜものなく使用し,蒸して,種麹を接種し,培- 5 -養して,培養された麹と該培養中に産出された酵素とを含む米糠麹を乾燥することからなる米糠を基質とした麹培養方法は,公知である。 すなわち,甲19(特開2002-275069号公報)には,「この発明の実施の形態例を説明する。まず製法として米糠を蒸して,麹菌株群,例えばアスペルギルスオリーゼ菌株群・・・を0.1重量%ほど加えてよく混合させて,糠麹を製造した。この場合,他の麹菌・・・の中から選択される麹菌を使用する事もある。 また必要に応じて乳酸菌を少量(2.5×10~3.0×10²個/g程度)添加する。必要があれば,酵母菌も乳酸菌と同量程度添加させることができる。また,必要に応じて牡蠣殻粉末を0.1重量%程度混合して蒸す。」(段落【0029】),「麹を造る過程で麹菌株群は,盛んにアミラーゼ,プロテアーゼ,リパーゼなどの分解酵素を分泌して米糠の糖,蛋白などを低分子に分解する。乳酸菌は糖分を分解させる。その後,そのまま培養床の米糠麹を,室温46℃~53℃で9時間乾燥させる。品温は44℃~46℃の範囲に抑え,麹菌と乳酸菌との活動を完全に停止させ,死滅させる。乾燥処理終了時に,含有水分4%以下,2.5%~3. 6%の乾燥体となっている。ちなみに通常の米糠の含有水分は13%~14%である。この乾燥米糠麹を篩にかけて,5mm以上の塊固形化物を除去し,粉砕機にかけて,乾燥米糠麹微粉末にする。」(段落【0030】)と記載される。 ている。ちなみに通常の米糠の含有水分は13%~14%である。この乾燥米糠麹を篩にかけて,5mm以上の塊固形化物を除去し,粉砕機にかけて,乾燥米糠麹微粉末にする。」(段落【0030】)と記載される。なお,前記の実施の形態が,米糠を基質として,混ぜものなく使用しているものと理解される(段落【0023】,【0031】)。そこで,甲19の段落【0029】,【0030】の記載と本件発明1を対比すると,本件発明1における第一工程中の「水分を加え粒子状に加工する」ことを除いて,甲19の段落【0029】,【0030】には本件発明1の構成要件を具備する米糠を基質とした麹培養方法が記載されているといえる。 また,甲18(特開2002-27929号公報)にも,「玄米の胚芽と表皮とからなる基質を蒸して,これに種菌アスペルギルスオリーゼ菌株群を混合して培養,熟成させた後,・・・含有酵素群は失活させない品温で乾燥体とすることを特徴と- 6 -する健康食品の製造方法」(請求項3,段落【0019】)の記載があり,「水分を加え粒子状に加工する」ことを除き,本件発明1の構成要件を具備する米糠を基質とした麹培養方法が記載されているといえる。 イ次に,「水分を加え粒子状に加工する」ことは,以下のとおり,公知文献の記載から容易に想到し得た事項である。 (ア) 甲18の段落【0030】ないし【0033】には,胚芽と表皮すなわち米糠の基質に水を加えるとともに,粒度250ないし400メッシュの石灰質粉や半割以下の玄米や粒度3mm程度に破砕した霊芝とともに蒸すことにより,米糠だけでは水分を含んで密着し合うため,空気の流通が悪く,好気菌の培養に好ましくない現象が,空気がよく当り改善される旨が記載されている。すなわち,甲18には,米糠を基質として麹菌を培養する場合,麹菌が けでは水分を含んで密着し合うため,空気の流通が悪く,好気菌の培養に好ましくない現象が,空気がよく当り改善される旨が記載されている。すなわち,甲18には,米糠を基質として麹菌を培養する場合,麹菌が好気性微生物であるため水分と空気の存在が不可欠である一方,米糠に水分を含ませると空気が通りにくくなり,空気が通りやすい状態に置くと水分の乾燥が進んで菌の培養・増殖がうまくいかないという二律背反の問題があるが,米糠に水を加えるとともに,粒状のものを加えることにより,この問題を解決し得ることが記載されているといえる。 そうすると,本件発明1のように,「玄米が完全栄養食品といったとき,その栄養のほとんどは,発芽と表皮部分にある。従って,この栄養価の高い米糠を基質として,混ぜものなく使用したい」(甲31の段落【0007】)という場合には,「水を加えるとともに,米糠自体を粒子状に加工する」ことにより,前記二律背反の問題が解決されるとの発想は容易に想起し得るのであり,「発想の転換」は必要ない。 しかも,粒状の大きさについて,本件発明1においては,「米糠を,・・・造粒工程で,粒子状に造粒する。粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。」(甲31の段落【0010】)とされ,甲18においても,「霊芝も粒度3mm程度に破砕して・・・」(段落【0031】)とされており,両者において同一のものが記載されている。同様の記載は,甲20(特開2002-125662- 7 -号公報)の段落【0020】,甲21(特開2002-272414号公報)の段落【0036】,【0039】にもある。 なお,甲18,20及び21に,粉体を粒子状に加工する技術が直接記載されていなくても,本件発明1に到達できないとはいえない。甲18には,「玄米の胚芽と表皮を加水機の中に入れ 0039】にもある。 なお,甲18,20及び21に,粉体を粒子状に加工する技術が直接記載されていなくても,本件発明1に到達できないとはいえない。甲18には,「玄米の胚芽と表皮を加水機の中に入れ,・・・全素材・・・水を吸わせ・・・蒸器の中に入れ・・・蒸す」(段落【0030】,【0031】)として,胚芽と表皮,すなわち米糠の基質に水を加えるとともに,米糠だけでは,水分を含んで密着し合うため,半割以下の玄米や粒度3mm程度に破砕した霊芝とともに蒸すことが記載され,甲20の段落【0020】,甲21の段落【0036】にも同様の記載があり,これらの記載は,半割以下の玄米や粒度3mm程度に破砕した霊芝とともに,又は,これに代えて,空気の流通を良好にするために,米糠を造粒して適度の通気間隙を形成しようと想起させる示唆ないし動機付けとなるものである。 (イ) この点,審決は,米糠の粉末に「水分を加え粒子状に加工する」ことについて,「粉末同士を結着させることにより,より大きな粒子とすること」(審決11頁1~3行)と解している。 しかし,審決の理解は誤りである。 「粉末同士を結着させることにより,より大きな粒子とすること」は,米糠粉末に水分を加え,膨潤させる工程にほかならない。製麹方法において,「膨潤」工程は,本願出願前に周知の技術であるが,本件明細書の段落【0010】,図1にいう「造粒工程8」は「膨潤」の内容の域を出ず,当業者には容易に想到し得るものである。 ウ以上のとおり,甲18,19には,第一工程中の「水分を加え粒子状に加工する」ことを除いて,本件発明1の構成要件を具備する米糠を基質とした麹培養方法が記載され,甲18,20及び21に,粉体を粒子状に加工する技術を示唆し,あるいは,当該技術を容易に想起させる動機付けとなる記載があるから,本件発 発明1の構成要件を具備する米糠を基質とした麹培養方法が記載され,甲18,20及び21に,粉体を粒子状に加工する技術を示唆し,あるいは,当該技術を容易に想起させる動機付けとなる記載があるから,本件発明1は,甲18記載の発明に基づき,又は,甲19記載の技術に,甲18,20,2- 8 -1のいずれかに記載の技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 したがって,本件発明1が容易に想到したものでないとする審決の判断は,誤りであり,本件発明1は,特許法29条2項の規定により特許できないものである。 (2) 記載要件に係る判断の誤り(取消事由2)審決は,粒子状に造粒する方法の記載が本件明細書にない点について,「周知の造粒方法で米糠が造粒できない特段の理由もなく,当業者であれば,周知の造粒方法を用いて,粉末を造粒して粒子状にできるものである。・・・当業者であれば,適宜の大きさと,適宜の堅さの粒子状物に造粒できるものであるし,例え,粒子が崩れやすいものであるとしても,粉末のままよりは,空気の流通がよくなるものであり,そのことにより効果が期待できるものであるから,具体的な造粒方法の記載が本件明細書にないとしても,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明がなされていないことにはならない」(審決17頁34行~18頁10行),「本件明細書の記載からは,具体的な造粒条件が不明であるから,・・・図4~8に問題があるとしても,・・・空気の流通を,多少なりとも改善されるようにする程度のことは,当業者が,本件明細書の記載に基づいて実施できることは明らかである」(審決18頁11~18行目)と判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項に規定する要件を満たさず,又は,特 実施できることは明らかである」(審決18頁11~18行目)と判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項に規定する要件を満たさず,又は,特許請求の範囲の記載は同条6項に規定する要件を満たさない。すなわち,ア請求項1には,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する第一の工程」の記載があるが,「水分を加え粒子状に加工する」の意味が,「水分を加える以外の操作を特に行わず水分を加えること自体によって粒子状に加工する」ことを意味するのか,「水分を加えるとともに,別途,粒子状に加工する操作を行う」ことを意味するのか判然としない。本件明細書の「米糠を100とし,40~50重量%- 9 -の水(4)と,20~30重量%の酢を投入し,造粒工程(8)で,粒子状に造粒する。粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。・・・粒子状に造粒し形を保持するためには,水分量の調整が大切である」(甲31の段落【0010】)の記載から,「水を加えるとともに,別途,粒子状に加工する操作を行う」ことを意味すると一応は推測されるが,必ずしも判然としない。 したがって,請求項1の記載は,特許を受けようとする発明が明確でなく,また,発明の詳細な説明において,当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 イ仮に,請求項1の「水分を加え粒子状に加工する」の意味が,「水分を加えるとともに,別途,粒子状に加工する操作を行う」ことであるとした場合,粒子状に加工するための具体的な手段が,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。また,請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 (ア) 一般に,造 に加工するための具体的な手段が,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。また,請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 (ア) 一般に,造粒するには,適当なバインダーを使用しないと,一時的に粒子状になっても,破壊され易い。特に,本件発明1においては,本件明細書の段落【0013】,【0014】の記載からすると,粒子状の米糠は,培養床に厚さ約10cmの高さに静置され,かつ8時間~12時間の長時間にわたって,ファンにより送風され,この間において,粒子状が保持されていることが必要であると理解される。高さ約10cmにした場合,下部の粒子状の米糠には,相当の荷重が負荷されるが,この場合においても前記条件が充足されるように粒子状に形成するためには,それ相応に適当なバインダーが必要であると考えられる。 また,当該バインダーは,麹菌の働きに悪影響を及ぼしたり,食品として害のあるものであってはならないが,本件明細書には,かかるバインダーとして,どのようなものを用いるのかなど,粒子状にする具体的な方法が何ら開示されておらず,当業者が実施できる程度に,明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (イ) 「水分を加え粒子状に加工する」ことが人の手で行われるとしても,造粒プ- 10 -ロセスに職人技やノウハウが必要と解されるが,本件明細書には,職人技の技術内容やノウハウが開示されていないから,当業者としては,試行錯誤や複雑高度な実験等を行わなければ,そのような技術内容やノウハウを見出すことができず,当業者が実施できる程度に,明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (ウ) これに対し,被告は,以下のとおり,特許法36条4項及び6項の規定する要件を満たす旨主張するが,いずれも失当である。 a 被告は 施できる程度に,明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (ウ) これに対し,被告は,以下のとおり,特許法36条4項及び6項の規定する要件を満たす旨主張するが,いずれも失当である。 a 被告は,請求項1の「米糠の粉末に,水分を加え,粒子状に加工する」との記載について,発明の詳細な説明の段落【0008】に,米糠に水分だけを投入することが明記されている旨主張する。 しかし,米糠の粉末に水分を加えることは記載されているが,「水分だけを投入」することについては明記されておらず,材料についても不明瞭である。 b 被告は,本件明細書の段落【0010】に,「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末状にある。この米糠を100とし,40~50重量%の水を・・・投入し,・・・粒子状に造粒する。粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。・・・粒子状に造粒し形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態にも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る」ことが記載されている旨主張する。 しかし,段落【0010】には,米糠に水を投入した後,どのようにして具体的に造粒するかについて何らの記載も存在しない。造粒には,一般に何らかのバインダーが使用されることも多いが,本件明細書には,このバインダーの使用の有無についても明記されていない。被告は,水分だけを投入することを明記していると主張しているが,記載箇所は不明である。 また,段落【0010】には,具体的にどのようにして「調整しながら水分量の増減を計る」のかについては記載されておらず,「湿度状態にも大きく左右される」としながら,どのように左右されるかについても記載がない。特に,「大きく左右される」というのであれば,どのように対処すればよいか具体的に かについては記載されておらず,「湿度状態にも大きく左右される」としながら,どのように左右されるかについても記載がない。特に,「大きく左右される」というのであれば,どのように対処すればよいか具体的に説明すべき- 11 -である。そうすると,バインダーの使用の有無や水分の調整について不明であり,具現すべき材料が不明瞭であるとともに,「粒子状に造粒する」ための具体的な工程も不明である。 c 被告は,造粒する際に使用する「装置」について,本件明細書に記載がないことを認めた上,造粒用の装置が公知であることを理由に「2~4mmの大きさ」の粒子状にするとの記載をもって具体的な記載は果たされていると主張する。 しかし,甲22(「造粒便覧」オーム社発行,131頁左欄21行~同頁右欄7行)に記載されるとおり,本件発明のように基質が粉末である場合は,プラスチックと異なり,造粒機構についての未知の分野が非常に多く,工学的理論解析がいまだ十分に行われていないため,経験や勘に頼っている状態である。装置の選定や具体的造粒工程については,十分な調査や予備試験が必要であり,当業者といえども,造粒手段について,使用する材料について,その種類や割合,湿度状態によって加える水分量が大きく左右される場合は,その具体的な調整基準,使用する造粒装置,さらに具体的な造粒工程が明示されない限り,容易に実施することができず,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 しかも,甲22の表2・3・1(132頁左欄)にも示されるように,押出し造粒分類に限っても,13通りの方式があるが,本件発明の場合,押出し造粒を行うのか否かも記載されておらず,仮に押出し造粒と仮定しても,いずれの方式で所望とする造粒が実施できるのか不明であり,所定の方式を選定したとしても,その具 の方式があるが,本件発明の場合,押出し造粒を行うのか否かも記載されておらず,仮に押出し造粒と仮定しても,いずれの方式で所望とする造粒が実施できるのか不明であり,所定の方式を選定したとしても,その具体的な造粒条件等が不明であるから,出願時の技術的常識に基づいても当業者が理解できない。 ウ請求項1には,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」とあるが,発明の詳細な説明において,粒子状の大きさについては何ら限定がない。 しかし,米糠を基質として麹菌を培養する場合,麹菌が好気性微生物であるため水分と空気の存在が不可欠である一方,米糠に水分を含ませると空気が通りにくくなり,空気が通りやすい状態に置くと水分の乾燥が進んで菌の培養・増殖がうまく- 12 -いかないという前記二律背反の問題を解決するためには,単に粒子状にすればよいのではなく,粒子状の大きさについて所定の範囲があると考えられることから,請求項においても,その範囲が記載されるべきものである。本件明細書の段落【0010】には,「造粒工程(8)で,粒子状にする。粒子の大きさは略2~4mm(直径)の大きさである」との記載があるが,この略2~4mm以外の大きさの粒子については何ら記載がない。一方,請求項1における「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」の記載は,形式的には,前記の略2~4mm以外の大きさの粒子を含むものであるから, 略2~4mm以外の大きさの粒子について,請求項中の発明を特定するための事象に対応する個々の技術的手段相互の関係が不明瞭であり,それらは出願時の技術的常識に基づいても当業者が理解できない。 また,「米糠」と「米糠の粉末」は,製造方法において異なる物であるが,上記段落【0010】には,「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末 いても当業者が理解できない。 また,「米糠」と「米糠の粉末」は,製造方法において異なる物であるが,上記段落【0010】には,「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末状」とあるものの,「米糠の粉末」とは,「米糠」のうち,どの範囲を指すのかが不明確である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,発明の実施形態の記載において,請求項中の発明を特定するための事象に対応する個々の技術的手段相互の関係が不明瞭であり,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。また,請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 エ請求項1における造粒工程について,発明の詳細な説明には具体的な条件等の数値は一切記載されていない。 しかし,造粒手段について,使用する材料の種類や割合,湿度状態によって加える水分量が大きく左右される場合には,その具体的な調整基準,使用する造粒装置,具体的な造粒工程が明示されていなければ,当業者といえども容易に実施することはできない。 被告は,製造条件の数値の記載について,本件明細書の段落【0010】において,造粒の際の水分量の調整は,その時の湿度状態にも大きく左右されると記載さ- 13 -れ,造粒形成する大きさは,「略2~4mm(直径)の大きさ」として,製造目標値が記載されている旨主張する。しかし,造粒の大きさの目標値として,「略2~4mmの大きさ」が記載されているにすぎず,前記二律背反問題を解決するために適した略2~4mmの大きさを有するとともに,培養工程において,厚さ約10cmも積み上げ,ファンによって送風しながら,8時間~12時間も培養を行う(甲31の段落【0013】,【0014】)ときにも,粒子が形くずれしないような粒子状とするための造粒工程そのもの 厚さ約10cmも積み上げ,ファンによって送風しながら,8時間~12時間も培養を行う(甲31の段落【0013】,【0014】)ときにも,粒子が形くずれしないような粒子状とするための造粒工程そのものの条件等についての数値は記載されていない。 したがって,本件明細書は,発明の実施の形態の記載において,製造条件等の数値が記載されておらず,出願時の技術的常識に基づいても当業者が理解できないため,当業者が請求項に係わる発明の実施をすることができないものである。また,請求項1を引用する請求項2ないし5についても同様である。 オ請求項2の「酢酸を加え」との記載については,発明の詳細な説明において,その目的,作用,効果が具体的に記載されていない。 特に「酢」に含まれている「酢酸」の沸点は118℃であり,これを造粒工程で水と共に米糠の粉末に投入しても,その後の100~120℃で20~30分蒸す工程で「酢酸」は蒸発するが,その基質を培養床におき発酵させても,蒸発した「酢酸」によって雑菌の繁殖を抑制できるという具体的な説明の記載はない。 また,「造粒工程」において,「酢酸」と「にんにく」を「雑菌繁殖を抑え,前記第三の工程に於ける前記培養を助成する」とあるが,「蒸し工程」は100~120℃で20~30分行い,「酢酸」の沸点は118℃であって,にんにくの殺菌成分である「アリシン」は熱に弱く変質するところ,「蒸し工程」を経ても,「酢酸」と「にんにく」が雑菌の繁殖を抑制し,培養を助成することができるという具体的説明は明細書に記載されていない。 カ請求項3の「該米糠麹の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 すなわち,本件明細書の段落【0015】には,「そのブロックの表面が繁殖し- 14 -た麹菌 の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 すなわち,本件明細書の段落【0015】には,「そのブロックの表面が繁殖し- 14 -た麹菌によって真白になるまで培養する」とあるが,このブロックは「5cm~7cm幅で長さ15cm位のブロック」とあり,培養時に10cm積層したはずなので,高さは10cmに近いはずである。この様な「ブロックの表面」が白くなったとしても,中まで真白くなったとはいえないから,「該米糠麹の表面が,真白」になるわけではない。特に米糠(米の表皮)は硬質でありデンプンがないから,麹菌が糠の表面に繁殖しにくく,白い菌糸が真白に着くことはない。 キ以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項に規定する要件を満たさず,又は,特許請求の範囲の記載は同条6項に規定する要件を満たさないものである。 (3) 「産業上利用することができる発明」該当性判断の誤り(取消事由3)審決は,本件発明1につき,「『玄米麹』は,玄米全体ではなく,その一部である米糠を基質として培養したものを意味していることは明らか」(審決10頁2~4行)として,「『玄米麹』は・・・『米糠』を発酵させることにより産出できるもので,本件発明1が,自然法則に反する内容を含んでいることにならない。」(審決10頁5~8行)と判断する。 しかし,審決の判断は誤りである。 「玄米麹」は,「胚乳」部分に大量の麹菌が培養され,酵素が豊富で発酵に適しているが,「胚乳」のない「米糠」では酵素量が少なく,「発酵に使用する麹」の意味がないため,通常の麹業者は「米糠麹」と「玄米麹」とは明確に区別している。 「米糠粉末で玄米麹ができる」とする本件発明1は,実際には米糠粉末から真実の玄米麹はできないものであって,産 用する麹」の意味がないため,通常の麹業者は「米糠麹」と「玄米麹」とは明確に区別している。 「米糠粉末で玄米麹ができる」とする本件発明1は,実際には米糠粉末から真実の玄米麹はできないものであって,産業上利用することができる発明に該当しないことから,特許法29条1項柱書に違反する。 請求項1に従属する請求項2ないし5に係る発明についても,同様の理由で特許法29条1項柱書に違反する。 (4) 補正の適否判断の誤り(取消事由4)「酢」は,95~97%が水であり,pHは2.4~3.0,「酢酸」のpHは- 15 -3.89ほどであり,「酢酸」の沸点は118℃である(甲9)。「酢」を含む「米糠粉末」を100℃から120℃で20~30分蒸すと,水と「酢」は沸騰して,中の「酢酸」は蒸発してしまい,「酢を使用し,pHを落とし,雑菌の繁殖を抑え」(甲31の段落【0008】)という目的は,達し難いと考えられる。 このため,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2について,出願当初は「酢」と記載されていたのを,補正により「酢酸」に変更されたものであるが,出願当初の明細書には「酢酸」について言及する記載は存在しなかった。 したがって,かかる補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反する。 2 被告の反論以下のとおり,審決には,取り消されるべき判断の誤りはない。 (1) 容易想到性判断の誤り(取消事由1)に対しア原告は,「米糠を基質として,混ぜものなく使用し,蒸して,種麹を摂取し,培養して,培養された麹と該培養中に産出された酵素とを含む米糠麹を乾燥することからなる米糠を基質とした麹培養方法は,公知である。」と主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 原告は,上記技術が公知であることを示す文献として,甲19(段落【0023】, からなる米糠を基質とした麹培養方法は,公知である。」と主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 原告は,上記技術が公知であることを示す文献として,甲19(段落【0023】,【0029】ないし【0031】),甲18(請求項3,段落【0019】)を掲げるが,これらの文献には,審決の内容を覆すような記載はなく,これらの文献の記載から,本件発明1が容易に想到し得たとはいえない。 イ原告は,「水分を加え粒子状に加工することは,公知文献の記載から容易に想到し得た事項である。」と主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 (ア) 原告は,「本件発明1は,甲18記載の発明に基づき,又は,甲19記載の技術に,甲18,20,21のいずれかに記載の技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。」と主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 - 16 -すなわち,本件特許に係る発明は,米糠を基質として,好気性微生物である麹菌を培養する際,水分と空気の存在が不可欠であるが,米糠に水分を含ませると空気が通りにくくなり,空気が通りやすい状態に置くと逆に水分の乾燥が進み菌の培養・増殖が旨く行かない点が,これまでの製造上の問題としてあり,この一見二律背反の問題を解決する製造方法を提供することを特徴とするものである。 原告は,甲18の段落【0032】,【0033】の記載を根拠として,甲18には,米糠に水を加えるとともに,粒状のものを加えることにより,上記二律背反の問題が解決されることが記載されている旨述べるが,甲18には,「米糠の素材だけでは,水を加えて膨潤させた時は,元々粒度が小さいため,空気の流通性が悪い。そこで米糠の粉末よりも大きな粒度を持つ牡蠣殻等から作った石灰質粉や霊之な れている旨述べるが,甲18には,「米糠の素材だけでは,水を加えて膨潤させた時は,元々粒度が小さいため,空気の流通性が悪い。そこで米糠の粉末よりも大きな粒度を持つ牡蠣殻等から作った石灰質粉や霊之などの粒子を混ぜて,空気の流通性を確保する」旨が記載されているにすぎない(段落【0030】)。米糠のような粉状のものを,麹菌のような好気性の微生物で培養するときには,水分と空気をどのように補給するかが問題となる。空気が流れれば,水分を奪うため,微生物にとって必要不可欠な水分を確保しながら,空気を送り続けることが,上記二律背反の問題として課題となり,その課題の解決が,本件特許における米糠を粒子状に加工するという製造方法にほかならない。粒状に形成し,粒子間の間を空気が流れる事により,粒子の表面に満遍なく空気を送り,菌の培養,増殖を図る。粒状を取り巻くように形成する菌は,粒子の中に蓄えられた水分を条件にして増殖できるのである。 一方,甲18,20及び21には,素材を米糠だけに限り,好気性菌である麹菌を培養するために,水分の保持と空気の流通性を確保するという点について,問題意識がなく,条件としても設定されていない。 また,原告は,甲18において,「米糠だけでは,水分を含んで密着し合うため,空気の流通が悪く,好気菌の培養に好ましくない現象が,米糠に粒状のものを加えることにより改善される」旨の記載があることを理由として,半割以下の玄米や粒度3mm程度に破砕した霊芝とともに,又は,これに代えて,空気の流通を良好に- 17 -するために,米糠を造粒して適度の通気間隙を形成しようと想起させる示唆ないし動機付けがあると述べるが,「米糠に粒状のものを加えることにより改善される」との点は,甲18の記載として正確ではない。甲18には,「石灰質粉が,基質や副基質間の 隙を形成しようと想起させる示唆ないし動機付けがあると述べるが,「米糠に粒状のものを加えることにより改善される」との点は,甲18の記載として正確ではない。甲18には,「石灰質粉が,基質や副基質間の間隙形成材となり,粒度の細やかな基質や副基質同士が密接し合わないため,基質や副基質の表面に良く空気が当たり,種菌の培養を図ることができる」ことが記載されているにすぎないから,米糠を造粒して適度の通気間隙を形成しようと想起させる示唆ないし動機付けがあるとする原告の主張は失当である。 したがって,甲18,20,21のいずれの記載によっても,米糠を粒子状にするために造粒することを想到できるとはいえない。 (イ) 本件発明1における「水分を加え粒子状に加工すること」は,「粉末同士を結着させることにより,より大きな粒子とすること」を意味することは明らかであるところ,原告もこれを前提とした上,「『水分を加え粒子状に加工すること』は,米糠粉末を膨潤させる工程にほかならず,製麹方法において,『膨潤』工程は,本願出願前に周知の技術である。本件明細書の段落【0010】,図1にいう『造粒工程8』は『膨潤』の内容の域を出ず,当業者には容易に想到し得るものである。」と主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。原告は,米糠に水を加え膨潤させるだけで,それ以外何も手を加えないのではなく,「撹拌」という技術工程が加えられていることを認めている。 すなわち,原告は,①製麹上の工程で,米糠に水を含ませる必要があり,②米糠に水をかけるとべとべとになるところと,水の付かない部分ができるため,③米糠全体を均一に湿潤させるためには,「適度な撹拌」が必要であると述べ,膨潤した米糠(甲41)の成立過程について「適度な撹拌」が必要であるとした上,④撹拌は,「篦」(へら状のもの)で行い るため,③米糠全体を均一に湿潤させるためには,「適度な撹拌」が必要であると述べ,膨潤した米糠(甲41)の成立過程について「適度な撹拌」が必要であるとした上,④撹拌は,「篦」(へら状のもの)で行い,それは「膨潤工程」に含まれると述べ,膨潤工程を経た米糠は,米糠の大粒体ができ,通気性も確保できるとしている。 また,原告は,「膨潤」は,水分を行き渡らせることが目的であり,その目的の- 18 -範囲のものは,「膨潤の完成」過程であって,「撹拌」も,膨潤の言葉の範囲に含まれるとも述べるが,液体を吸収し,固体が容積を増大するという「膨潤」の定義からすると,「膨潤」の後,水分量がまちまちになった米糠を均一に分布するための「撹拌」は,「膨潤」とは別の技術工程というべきである。 したがって,「造粒工程」が「膨潤」の内容の域を出ないとして,「水分を加え粒子状に加工すること」が容易想到であるとする原告の主張は失当である。 (2) 記載要件に係る判断の誤り(取消事由2)に対しア原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,「水分を加え粒子状に加工する」との記載の意味が,判然とせず,特許を受けようとする発明が明確でなく,また,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 本件明細書の段落【0007】,【0008】には,本件各発明が,従来の技術の課題,すなわち,水以外にも胚芽や霊芝等の物質の混入が不可避であり,栄養価が薄まるという点を克服することを主眼としている旨記載されており,このことからすると,「水分を加え粒子状に加工する」との記載は,水分を加えることのみで粒子状に加工することであるのは明らかである。 したがって,原告の主張は失当である。 としている旨記載されており,このことからすると,「水分を加え粒子状に加工する」との記載は,水分を加えることのみで粒子状に加工することであるのは明らかである。 したがって,原告の主張は失当である。 イ原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,「水分を加え粒子状に加工する」との記載の意味が,「水分を加えるとともに,別途,粒子状に加工する操作を行う」ことであるとした場合,粒子状に加工するための具体的な手段が,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 (ア) 本件明細書の段落【0008】【問題を解決する方法】には,「米糠を蒸す前に,粒状に加工し,この粒状を保ちながら蒸し,なおかつ麹菌の培養をするよう- 19 -にした。粒状にすることにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくした」と記載され,段落【0010】には,「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末状にある。この米糠を100とし,40~50重量%の水を・・・投入し,・・・粒子状に造粒する。粒子の大きさは略2~4mm(直径)の大きさである。・・・粒子状に造粒し形を保持するためには水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態にも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る」と記載されている。 上記によれば,具現すべき材料としては,米糠を用い,水分だけを投入することが明記され,装置については,具体的に書いていないが,出願時に造粒用の機械装置は様々な機械装置が知られており,手ごねで造粒することも含め,「2~4mmの大きさ」の粒子状にするということで,具体的な記載は果たされている。また,工程 的に書いていないが,出願時に造粒用の機械装置は様々な機械装置が知られており,手ごねで造粒することも含め,「2~4mmの大きさ」の粒子状にするということで,具体的な記載は果たされている。また,工程上の問題として,「粒子状に造粒し,形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態にも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る」とも記載されることから,記載上の不備はない。 (イ) 原告は,米糠の粉末を粒子状に加工するためにバインダーが必要であることを前提として,バインダーとしてどのようなものを用いるかなど,粒子状にする具体的な方法が開示されていない旨主張するが,バインダーがなくとも造粒が可能であることは,当業者であれば理解できる。 したがって,原告の主張は前提を欠く。 (ウ) 原告は,造粒プロセスには職人技やノウハウが必要と解されるが,本件明細書には,職人技の技術内容が開示されていない旨主張するが,造粒プロセスに職人技やノウハウが必要ということはない。 また,特許出願されている技術に加え,効率化のためのノウハウ技術があることは通常のことであり,特許として顕在化した技術のほかに,開示されていないノウハウ技術があるからといって,特許法36条4項1号違反になることはない。 したがって,原告の主張は失当である。 - 20 -ウ原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」と記載されるが,発明の詳細な説明において,粒子状の大きさについて限定がなく,また,「米糠の粉末」は,「米糠」のうち,どの範囲を指すのかが不明確であるとして,発明の実施形態の記載において,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。 しか また,「米糠の粉末」は,「米糠」のうち,どの範囲を指すのかが不明確であるとして,発明の実施形態の記載において,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 実際の工程において,造粒時の天候や湿度によって,数μ~数100μの大きさの粉状のものが残る場合もあろうし,逆に,4mmを超えた粒が造粒される可能性もあるから,2mmないし4mmの以外の大きさの粒子が生成されることはあり得るが,本件明細書には,本件各発明において粉末状の米糠を粒子状に造粒する目的が,米糠の培養にあたって水分保持と空気の流通を同時に確保することにある旨を記載した上,その目的を達成するための大きさとして「略2~4mm」と記載されている。造粒の目的を明示した上で,当該目的に照らして大きさを目標値として記載すれば,その目的を理解する当業者にはそれに適する大きさの粒子を造ることが十分に実施可能であり,その幅を超えた大きさの粒が作られた場合でも,その後の工程が不能になるわけでもない。 また,米糠はもともと粉末状のものであるから,これを「米糠」と表現したり,「米糠の粉末」と表現したりすることは,通常の用語の使用法である。「米糠」と「米糠の粉末」が異なる物であることを前提とする原告の主張は失当である。 したがって,本件明細書の記載は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているというべきであり,原告の主張は理由がない。 エ原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)における造粒工程について,発明の詳細な説明には,具体的な条件等の数値は一切記載されておらず,造粒手段について,使用する材料の種類や割合,湿度状態によって加える水分量が大きく左右される場合には,その具体的な調整基準,使用する 発明の詳細な説明には,具体的な条件等の数値は一切記載されておらず,造粒手段について,使用する材料の種類や割合,湿度状態によって加える水分量が大きく左右される場合には,その具体的な調整基準,使用する造粒- 21 -装置,具体的な造粒工程が明示されていなければ,当業者は容易に実施することはできないから,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が発明の実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 本件明細書の段落【0010】には,「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末状にある。この米糠を100とし,40~50重量%の水を・・・投入し,・・・粒子状に造粒する。粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。・・・粒子状に造粒し形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態にも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る」と記載され,水分量の調整はその時の湿度状態にも大きく左右されるとした上,造粒形成する大きさは「略2~4mm(直径)の大きさ」と明確に製造目標値の記載を行っている。 湿度による調整は,湿度が高ければ水分量を減らし,湿度が低ければ水分量を多くするというものであり,このような調整は,当業者ならば容易に可能である。各工程において必要な「湿度による調整」は,材料として使用される米糠の保管場所,保管状況,造粒加工する場所の湿度,培養室の湿度等,極めて多様な要因に左右されるため,その都度,個別に対処すべきものであり,米麹から麹菌の培養によって玄米麹を作る上で,そのことを開示しなければ製造ができないものではない。 したがって,原告の主張は理由がない。 オ原告は,請求項2の「酢酸を加え」との記載について,発明の詳細な 麹菌の培養によって玄米麹を作る上で,そのことを開示しなければ製造ができないものではない。 したがって,原告の主張は理由がない。 オ原告は,請求項2の「酢酸を加え」との記載について,発明の詳細な説明には,「酢酸」によって雑菌の繁殖を抑制できることや,「蒸し工程」を経ても,「酢酸」と「にんにく」が雑菌の繁殖を抑制し,培養を助成することができることの具体的な説明は記載されておらず,その目的,作用,効果が,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。 しかし,原告の主張は誤りである。 「酢酸」や「にんにく」に含まれる殺菌作用は,蒸す前の工程において既に果た- 22 -されており,その後の工程において揮発又は失効するとしても,目的,作用,効果が開示されていないとはいえない。 カ原告は,請求項3の「該米糠麹の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない旨主張する。 しかし,原告の主張は,特許法36条4項ないし6項違反とする理由が明らかでなく,主張自体失当である。 (3) 「産業上利用することができる発明」該当性判断の誤り(取消事由3)に対し原告は,「米糠粉末で玄米麹ができる」とする本件発明1(本件発明2ないし5についても同様である。)は,実際には米糠粉末から真実の玄米麹はできないものであって,産業上利用することができる発明に該当しないことから,特許法29条1項柱書に違反する旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 本件明細書の段落【0017】において,本件各発明は,米糠を麹菌で培養した物を玄米麹と位置づけているから,原告の主張は前提を誤ったものである。 (4) 補正の適否判断の誤り(取消事由4)に対し原告は,請求項2において,出願当初は て,本件各発明は,米糠を麹菌で培養した物を玄米麹と位置づけているから,原告の主張は前提を誤ったものである。 (4) 補正の適否判断の誤り(取消事由4)に対し原告は,請求項2において,出願当初は「酢」と記載されていたのを「酢酸」に変更した補正について,出願時の明細書に記載されている事項の範囲内での補正に当たらず,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 「酢」には「酢酸」が含まれており,「酢酸」が殺菌の増殖を抑制する作用を有することは公知であって,本件発明2において「酢」を造粒工程で使用する目的が,米糠に付着する雑菌の増殖の抑制にあることは,出願時の明細書の段落【0010】の記載から明らかである。 したがって,請求項2の記載を「酢」から「酢酸」に変更したことは,出願時の明細書に記載されている事項の範囲内での補正であり,違法はない。 - 23 -第4 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消すべき違法はないものと考える。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)について特許法29条2項所定の「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」との要件は,無効審判を請求する請求人(本件では原告)において,主張,立証すべき責任を負う。そして,本件各発明について,当業者(その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者)が同条1項各号に該当する発明(以下「主たる引用発明」という場合がある。)に基づいて容易に発明をすることができたかは,通常,引用発明のうち,特許発明に最も近似する引用の発明から出発して,主たる引用発明以外 項各号に該当する発明(以下「主たる引用発明」という場合がある。)に基づいて容易に発明をすることができたかは,通常,引用発明のうち,特許発明に最も近似する引用の発明から出発して,主たる引用発明以外の引用発明(以下「従たる引用発明」という場合がある。)及び技術常識ないし周知技術(その発明の属する技術分野における通常の知識)を考慮することにより,特許発明の主たる引用発明と相違する構成(特許発明の特徴的な構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断されるべきものである。ところで,上記の特許発明の主たる引用発明との相違する構成は,特許発明が目的とした課題を解決するために採用された構成であるから,特許発明の主たる引用発明と相違する構成に到達することが容易であったか否かの判断に当たっては,特許発明が目的とした解決課題及び解決手段の相違等を的確に検討することによって判断することが重要となる。 上記の観点から,以下,本件各発明が特許法29条2項に該当する発明であるとの要件に該当する事実を,原告において主張,立証できたか否かについて,検討する。この点,原告の審判手続における主張等を総合しても,原告は,単に,甲5ないし7,18ないし21,特開2002-29994号公報等は挙げるものの,①どのような先行技術を「主たる引用発明」として,同項の要件充足性の主張,立証を試みようとしているのか,②特定の先行技術を「主たる引用発明」として選択し- 24 -た場合に,本件各発明と当該先行技術との一致する構成及び相違する構成は何か,③本件各発明における「主たる引用発明」との相違する構成が,解決課題及び解決手段との関係でどのような技術的な意義を有するのか,④「主たる引用発明」と「従たる引用発明」を組み合わせることに支障があるか否かについて,合理的な主張 引用発明」との相違する構成が,解決課題及び解決手段との関係でどのような技術的な意義を有するのか,④「主たる引用発明」と「従たる引用発明」を組み合わせることに支障があるか否かについて,合理的な主張,立証をしていると評価することはできない。以上の点にかんがみると,「(本件各発明)は,請求人が提示したいずれの刊行物を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものではない」とした審決の理由は,本訴における個別的具体的な検討をするまでもなく,正当であるといえる。 以下,補足的事項を含めて詳述する。 (1) 事実認定(本件各発明の内容と原告が挙げる刊行物の記載)ア本件各発明について本件各発明の請求項の記載は,上記第2の2記載のとおりである。また,本件明細書(甲31)には,次の記載がある。 【0005】【従来の技術の問題】・・・米糠を利用して,微生物・・・を働かせて活性酸素抑制組成物を作る方法が「特公平8-10」に示されている。ここでは,米糠や大豆類を,水の中に投入し液体状の培地で発酵させる方法が示されている。・・・この液体培地に微生物を接種し,好気性雰囲気下で培養したとあるが,具体的な方法は示されていない。もし,液体培地の下でかつ好気的雰囲気の下で培養できる具体的方法があれば,・・・麹菌を培養すればよいが,液体培地という嫌気的条件の下で,麹菌を働かせることはむつかしい。・・・【0006】・・・米糠を基質として液体中で酸素の供給がないと働かない麹菌を働かせることは,困難な課題である。また「特開2002-27929」では,玄米の発芽や表皮(いわゆる米糠)を含む穀類からなる基質に,・・・(いわゆる麹菌)を働かせて,健康食品を作る方法が記載されている。ここでは,水分を25重量%~35重量%吸わせることが示されている。「特公平8-10 皮(いわゆる米糠)を含む穀類からなる基質に,・・・(いわゆる麹菌)を働かせて,健康食品を作る方法が記載されている。ここでは,水分を25重量%~35重量%吸わせることが示されている。「特公平8-10」が液体培地だったのに対し,いわば乾式培地である。しかし,この特許の中でも「玄米の胚芽- 25 -・表皮は,米粒に比して粒度が小さいため種菌培養床において密着しあうと空気の流通性が衰えて,好気菌の培養に好ましくなく,また歓迎されない嫌気菌の繁殖に適した環境となる」と,・・・米糠を単独で基質として麹菌を働かせることの困難さを指摘している。その上で,玄米をいわゆる白米部分も含めて全粒の形で破砕したものや,霊芝を破砕したものをまぜて,空気の流通性を確保する方法を提案している。 【0007】玄米が完全栄養食品といったとき,その栄養のほとんどは,発芽と表皮部分にある。従って,この栄養価の高い米糠を基質として,混ぜものなく使用したい。ところがこの「特開2002-27929」では,米糠のみを基質として麹菌を培養することの難しさゆえに白米部分を混入するというのである。しかし白米部分を含む全粒を破砕したものを基質として用いたとき,栄養価は薄まったものになる。また白米は,・・・それとして需要がある。米糠部分は,廃棄されることから対策を打ち,利用方法を考えなければならないものである。以上,米糠を単体,基質として麹菌を培養することを考えたとき,米糠は,粉状であるため,「特開2002-27929」で指摘されるような空気の流通性が悪く,麹菌が増殖できず,腐敗菌が増殖してしまうといった麹菌を使うにあたっての問題があった。 【0008】【問題を解決する方法】そこで本発明では,▲1▼米糠を蒸す前に,粒状に加工し,この粒状を保ちながら蒸し,なおかつ麹菌の培養を行うよう しまうといった麹菌を使うにあたっての問題があった。 【0008】【問題を解決する方法】そこで本発明では,▲1▼米糠を蒸す前に,粒状に加工し,この粒状を保ちながら蒸し,なおかつ麹菌の培養を行うようにした。 粒状にすることにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくした。▲2▼粒状にして,保水性を保てば,当然,米糠に付着している雑菌に住みごこちのよい住み家を与えることになるため,酢を使用し,PHを落とし,雑菌の繁殖を抑えここでも麹菌の働きの活性化を図った。 ▲3▼麹菌が働く培養時の特定温度を測定し,最も働きやすい温度帯37~38℃を超えたときには,雑菌の働きを抑え,麹菌を活性化するために空気を送るようにする培養管理を行った。 【0010】・・・米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数- 26 -100μの粉末状にある。この米糠を100とし,40~50重量%の水(4)と,20~30重量%の酢を投入し,造粒工程(8)で,粒子状に造粒する。粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。・・・粒子状に造粒し形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態などにも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る。・・・イ原告が挙げる刊行物の記載について(ア) 甲18の記載【0011】本発明者は,玄米の胚芽の糖蛋白と,自然の糖鎖及び失活されていない酵素群が,人体のホルモン系,生理活性物質を活性化し,代謝活性が各種疾患の改善に寄与するとの知見から,胚芽の糖蛋白に種菌を用いて酵素を増加させて,体内の糖鎖に好影響を与える蛋白と,失活されていない酵素を多く含む食品の製造方法について,鋭意研究を重ねてきた結果,この発明を完成した。 【0012】【課題を 蛋白に種菌を用いて酵素を増加させて,体内の糖鎖に好影響を与える蛋白と,失活されていない酵素を多く含む食品の製造方法について,鋭意研究を重ねてきた結果,この発明を完成した。 【0012】【課題を解決するための手段】本発明においては,前記の課題を解決するために,・・・穀類の中でも特に玄米の胚芽部位単独,あるいは胚芽と表皮の混合物を蒸し,これに,種菌アスペルギルスオリーゼ菌株群・・・を撒着して培養,熟成させた後,培養床の品温をあげて種菌を死滅させ,酵素群は失活させない品温で乾燥体としての健康食品を得る。 【0030】製造方法の1例として,選別された基質としての玄米の胚芽(約37%)と表皮(約63%)を加水機の中に入れ,これに石灰質粉(焼牡蠣殻粉=粒度#250~400メッシュ)を,全体量の5重量%~12重量%ほど加え,これに,前記全素材(基質,石灰質粉)に対して,25重量%~35重量%の水を吸わせて膨潤させる。 【0031】副基質として霊芝や玄米などを添加する場合には,玄米そのままでは,その下に位置する粒度の細かな基質が,玄米の重量に圧迫されて菌培養に斑が生じるので,玄米を半割以下,霊芝も粒度3mm程度に粉砕して,全体量に対して,それぞれ5重量%~15重量%の範囲で,胚芽や表皮と共に前記加水機に混入させ- 27 -る。 加水機で膨潤させた素材(基質,副基質,石灰質粉)を,再度異物チェックと水分チェックをしながら蒸器の中に入れ,100℃~120℃の蒸気で,45分~60分間蒸す。 【0032】石灰質粉を基質や副基質と共に蒸すと,石灰質粉の炭酸カルシウム分によるアルカリイオンが基質や副基質に付着する。このアルカリ分によって硬い表皮や玄米,霊芝は軟化して,体内で消化しやすくなる。胚芽や表皮などは米粒に比して粒度が小さいため,水分 粉の炭酸カルシウム分によるアルカリイオンが基質や副基質に付着する。このアルカリ分によって硬い表皮や玄米,霊芝は軟化して,体内で消化しやすくなる。胚芽や表皮などは米粒に比して粒度が小さいため,水分を含んで密着し合うと,空気の流通が悪く,好気菌の平均した培養に好ましくない。また,歓迎されない嫌気菌の繁殖を招く虞がある。 【0033】種菌培養によって,前記基質と副基質が培養床で発熱してくるが,培養床において,石灰質粉が基質や副基質間の間隙形成材となり,粒度の細かな基質や副基質同士が密接し合わないため,基質や副基質の表面に平均的によく空気が当り,種菌の平均した培養を図ることができる。 (イ) 甲19の記載【0009】【発明が解決しようとする課題】・・・フィチン酸は,ラット等では小腸粘膜由来の6-フィターゼ・・・などにより加水分解されてから吸収されるが,人の場合は,小腸粘膜由来の6-フィターゼ活性は,ラットに比べて極めて低いため,せっかく摂取しても食事由来の6-フィターゼがない場合は,ほとんど吸収できないという難点が有る。また,フィチン酸を含む野菜や食物繊維を大量摂取することは,食事的にも,又消化機能的にも大きな問題が有る。 【0015】【課題を解決するための手段】本発明においては,前記の課題を解決するために,・・・米糠を蒸し,これに麹菌株群を培養,熟成させ,米糠麹を得て,麹菌を死滅させて死菌体を含む乾燥体とし,麹菌株群が産生した酵素群が,酵素本来の触媒作用を喪失されていない状態で,そのまま含まれた乾燥米糠麹微粉末とし,これにフィチン酸を混合して,フィチン酸の含有量や作用を強化した組成物とする。・・・- 28 -(ウ) 甲20の記載【0020】本発明の製法の実施例1を次に示す。選別された米の胚芽と表皮の混合物を加水機 混合して,フィチン酸の含有量や作用を強化した組成物とする。・・・- 28 -(ウ) 甲20の記載【0020】本発明の製法の実施例1を次に示す。選別された米の胚芽と表皮の混合物を加水機の中に入れ,充分水を吸わせて膨潤させる。これを,蒸機の中に入れて,これに子実体を粒度3mm前後に破砕したマンネンタケ(Gano-dermalucidum,霊芝ともいう)を全体の5重量%~20重量%添加し,これに石灰質粉(焼牡蠣殻=粒度#250メッシュ~400メッシュ)を全体の0. 5重量%~1.2重量%添加して,100℃~120℃の蒸気で,水分チェックをしながら50分~60分間蒸す。 (エ) 甲21の記載【0036】【発明の実施の形態】この発明の実施の形態例を説明する。 方法実施例1,選別された米糠を加水機の中に入れ,原料に対して25重量%~30重量%の水を加えて,充分水を吸わせて膨潤させる。これを蒸機の中に入れて,石灰質粉(焼牡蠣殻粉=粒度#250メッシュ~#400メッシュ)を,それぞれ全体の0.5重量%~1重量%添加して,100℃~120℃の蒸気で,水分チェックをしながら50分~60分間蒸す。玄米など穀類を使用する時は,米糠と共に蒸す。 【0039】培養床における米糠は,表面に平均的に付着した石灰質粉によって,密着せずに適度の通気間隙が形成されて,平均的に空気の流通がよい状態で,麹菌株群が培養される。・・・(2) 判断上記事実認定に基づいて判断する。 上記(1)ア認定の事実によれば,本件各発明は,麹菌の培養に当たり,白米部分や霊芝等を混ぜることなく,栄養価の高い米糠を単独で基質として使用する場合,麹菌が好気菌であることから,空気の流通性を確保する必要があるが,米糠は,粉状であるため,空気の流通性が悪く,麹菌が増殖で や霊芝等を混ぜることなく,栄養価の高い米糠を単独で基質として使用する場合,麹菌が好気菌であることから,空気の流通性を確保する必要があるが,米糠は,粉状であるため,空気の流通性が悪く,麹菌が増殖できず,腐敗菌が増殖するという問題があり,そのような課題を前提として,その課題解決の方法として,「水分を- 29 -加え粒子状に加工する」この構成を採用した発明であることが認められる。そして,本件明細書には,米糠を粒状にすることによって,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくできること,粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさであること,粒子状に造粒し,形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,湿度状態などにも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計ること等が併せて記載されている。 これに対して,①甲18記載の発明は,胚芽の糖蛋白に種菌を用いて酵素を増加させて,体内の糖鎖に好影響を与える蛋白と,失活されていない酵素を多く含む食品の製造方法を提供することを課題とし,その解決のため,特に玄米の胚芽部位単独,あるいは胚芽と表皮の混合物を蒸し,これに,種菌を培養,熟成させた後,培養床の品温をあげて種菌を死滅させ,酵素群は失活させない品温で乾燥体としての健康食品を得る技術,②甲19記載の発明は,吸収性の低いフィチン酸を摂取しやすくすることを課題とし,その解決のため,米糠を蒸し,これに麹菌株群を培養,熟成させ,米糠麹を得て,麹菌を死滅させて乾燥体とし,麹菌株群が産生した酵素群が,酵素本来の触媒作用を喪失されていない状態で,そのまま含まれた乾燥米糠麹微粉末とし,これにフィチン酸を混合した組成物とする技術,③甲20,21記載の発明の課題も,同様に,米糠等の基質に,アスペルギルスオリーゼ菌株群 用を喪失されていない状態で,そのまま含まれた乾燥米糠麹微粉末とし,これにフィチン酸を混合した組成物とする技術,③甲20,21記載の発明の課題も,同様に,米糠等の基質に,アスペルギルスオリーゼ菌株群などを培養,熟成させ,種菌は死滅させるが,種菌が産生する酵素群の触媒作用能力を喪失させない状態で乾燥粉末として,未失活酵素強化組成物ないし栄養補助組成物等を提供することに関する技術のみが開示されているにすぎない。 上記のとおり,原告の挙げた刊行物には,米糠等の基質ないし副基質に水を加え,水を吸わせて膨潤させることは記載されていると認められるが,「粒子状に加工すること」については何ら記載されていないこと,甲18及び21には,好気菌の平均した培養を図るため,空気の流通をよくすることが記載されているが,そのことと,加水ないし造粒との関係については何ら記載も示唆もない。 甲18ないし21には,米糠に「水分を加え粒子状に加工する」ことにより,保- 30 -水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくするという本件各発明の課題解決方法について,何ら記載及び示唆等はない。 甲18ないし21は,本件各発明の解決課題及び課題解決手段おいて,全く異なる技術というべきである。 この点,原告は,「水分を加え粒子状に加工する」ことは,本願出願前に周知の技術である「膨潤」の域を出ないから,当業者は,「水分を加え粒子状に加工する」との構成を容易に想到し得る旨主張する。しかし,粒を形成するための手段ないし工程が何ら示されていない表記中に「膨潤」との語が用いられた場合,米糠に水分を加えて体積を増加させると解することができたとしても,米糠を「粒子状に加工すること」ないし「『撹拌』や『粒子状に形成』ための工程を備える」技術が開示ないし示唆 」との語が用いられた場合,米糠に水分を加えて体積を増加させると解することができたとしても,米糠を「粒子状に加工すること」ないし「『撹拌』や『粒子状に形成』ための工程を備える」技術が開示ないし示唆されているとまで理解することはできないというべきである。上記のとおり,本件各発明の「粒子状に加工する」ことは,空気の流通性を良くする目的で採用された構成であり,そのような技術的意義を有するのであるが,原告の主張する「膨潤」(甲18の段落【0030】,【0031】,甲20の段落【0020】,甲21の段落【0036】)に,そのような技術的な趣旨が示されていると合理的に解することはできない。原告の主張は採用できない。 したがって,当業者にとって,本件発明1は,原告の指摘する公知文献から容易に想到できるとはいえないから,その余の点を判断するまでもなく,特許法29条2項に規定する要件を満たすとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は失当である。 2 取消事由2(記載要件に係る判断の誤り)について(1) 原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,「水分を加え粒子状に加工する」との記載の意味が,判然とせず,特許を受けようとする発明が明確でなく,また,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 - 31 -上記1(1)ア記載のとおり,本件明細書には,「栄養価の高い米糠を基質として,混ぜものなく使用したい」,「米糠を単体,基質として麹菌を培養することを考えたとき,米糠は,粉状であるため,・・・空気の流通性が悪く,麹菌が増殖できず,腐敗菌が増殖してしまうといった麹菌を使うにあたっての問題があった。」(段落【0007】),「本発明で 培養することを考えたとき,米糠は,粉状であるため,・・・空気の流通性が悪く,麹菌が増殖できず,腐敗菌が増殖してしまうといった麹菌を使うにあたっての問題があった。」(段落【0007】),「本発明では,▼1▲米糠を蒸す前に,粒状に加工し,・・・粒状にすることにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくした。」(段落【0008】),「米糠(2)は,・・・10~数100μの粉末状にある。この米糠を100とし,40~50重量%の水・・・を投入し,造粒工程(8)で,粒子状に造粒する。」,「粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。」,「粒子状に造粒し,形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態などにも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る。」(段落【0010】)と記載されている。 上記のとおり,請求項1の「水分を加え粒子状に加工する」との構成について,本件明細書には,10~数100μの粉末状にある米糠を用い,米糠を蒸す前に,米糠を100とし,湿度状態などによって水分量を調整しながら40~50重量%の水を加え,略2~4mm(直径)の大きさの粒子状に加工することが記載され,また,その技術的意義について,栄養価の高い米糠を単体,基質として麹菌を培養するとき,米糠は,粉状であるため,空気の流通性が悪く,麹菌が増殖できず,腐敗菌が増殖してしまうという問題があったことから,米糠を,粒状にすることにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくするということが記載され,当業者の通常の理解の範囲を超えるものとはいえない。 上記のとおり,請求項1の「水分を加え粒子状に加工する」との構成は,当業者において,用語の通常の理解 菌を働きやすくするということが記載され,当業者の通常の理解の範囲を超えるものとはいえない。 上記のとおり,請求項1の「水分を加え粒子状に加工する」との構成は,当業者において,用語の通常の理解によりその意味を解釈できるから,特許発明が明確性を欠き,第三者に不測の不利益を及ぼすものとはいえない。 - 32 -また,本件明細書の上記記載及び当業者における認識を前提とすれば,当業者において,「水分を加え粒子状に加工する」ことの技術的意義及びその方法は,十分に理解できるものと認められるから,発明の詳細な説明の記載は,発明の公開の代償として一定の期間一定の条件で独占権を付与する特許制度の目的に反する程度に不明確なものとはいえない。 したがって,特許発明が明確でなく,また,発明の詳細な説明において当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていないとの原告の主張は失当である。 (2) 原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,仮に,「水分を加え粒子状に加工する」との工程が,「水分を加えるとともに,別途,粒子状に加工する操作を行う」ことであると理解した場合には,粒子状に加工するための具体的な手段(使用する機械装置,職人が手で撹拌する場合の技術内容など)が,本件明細書に記載されていないため,当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 「水分を加え粒子状に加工する」点については,上記(1) のとおり,発明の詳細な説明において,当業者が,技術的意義及びその方法を十分に理解できるものと認められる。そして,当業者は,「水分を加え粒子状に加工する」ことの技術的意義に照らし,米糠を用い,水を加え,米糠を略2~4mm(直径)の大きさの粒子状に加工し,空気 の方法を十分に理解できるものと認められる。そして,当業者は,「水分を加え粒子状に加工する」ことの技術的意義に照らし,米糠を用い,水を加え,米糠を略2~4mm(直径)の大きさの粒子状に加工し,空気の流通性を良くするために,技術常識に基づいて適宜の方法を選択することができるから,「粒子状に加工する」ことについて,使用する機械装置,職人が手で撹拌する場合の技術内容などが具体的に記載されていなくとも,発明を実施できないほどに不明確であるということはできず,原告の主張は理由がない。 (3) 原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)について,発明の詳細な説明に,「米糠の粉末に,水分を加え粒子状に加工する」について,粒子状の大きさについて限定がなく,また,「米糠の粉末」は,「米糠」のうち,どの部分を指すのかが不明確である旨主張する。 - 33 -しかし,原告の主張は失当である。 上記(1) のとおり,粒子状の大きさについては,本件明細書に,「粒子の大きさは,略2~4mm(直径)の大きさである。」(段落【0010】),「粒状にすることにより,保水性を高めるとともに,培養段階においては,空気の流通性を良くし,麹菌を働きやすくした。」(段落【0008】)と記載され,略2~4mm(直径)であって,保水性が高まり,空気の流通性が良くなる程度の大きさが有効である旨の開示がされていることに照らすならば,この点の原告の主張は採用できない。 また,請求項1記載の「米糠」については,本件明細書に,「玄米の胚芽と表皮部分は,米糠として取り去り,糖でんぷん質分を中心とする白米を,いわゆるお米として食し」(段落【0002】),「玄米の発芽・表皮・つまり米糠」(段落【0006】)「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数 り去り,糖でんぷん質分を中心とする白米を,いわゆるお米として食し」(段落【0002】),「玄米の発芽・表皮・つまり米糠」(段落【0006】)「米糠(2)は,胚芽と表皮が混在したものであり,10~数100μの粉末状にある。」(段落【0010】)と記載されることから,玄米の胚芽,表皮部分であって,10~数100μの粉末状にあるものをいうと解釈される。そうすると,「米糠の粉末」との記載も,米糠の状態を含めて表記したものであって,「米糠」と同義に解すべきであるから,「米糠の粉末」は,「米糠」のうち,どの範囲を指すのかが不明確であるとの原告の主張は,前提となる「米糠の粉末」と「米糠」の解釈を誤ったものであり,失当である。 (4) 原告は,請求項1(これを引用する請求項2ないし5も同様である。)における造粒工程について,「発明の詳細な説明には,具体的な条件等の数値は一切記載されておらず,造粒手段について,使用する材料の種類や割合,湿度状態によって加える水分量が大きく左右される場合には,その具体的な調整基準,使用する造粒装置,具体的な造粒工程が明示されていなければ,当業者は容易に実施することはできない。また,培養工程において,粒子が形くずれしないような粒子状とするための造粒工程の条件等についての数値も記載されていない。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載- 34 -されているとはいえない。」旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 造粒については,上記(2) のとおり,当業者が,「水分を加え粒子状に加工する」ことの技術的意義に照らし,適宜の方法を選択して,米糠を用い,水を加え,略2~4mm(直径)の大きさの粒子状に加工し,空気の流通性を良くすることが開示されている。また, 水分を加え粒子状に加工する」ことの技術的意義に照らし,適宜の方法を選択して,米糠を用い,水を加え,略2~4mm(直径)の大きさの粒子状に加工し,空気の流通性を良くすることが開示されている。また,本件明細書の,「粒子状に造粒し,形を保持するためには,水分量の調整が大切であるが,その時の湿度状態などにも大きく左右されるため,調整しながら水分量の増減を計る。」(段落【0010】)との記載は,当業者が適宜選択可能な造粒の方法を補足するものと解される。 原告は,培養工程において,粒子が形くずれしないような粒子状とするための条件等についての数値が記載されていないことを問題とするが,本件各発明において,米糠を「粒子状に加工する」ことの技術的意義は,培養工程において,空気の流通性を良くすることであり,粒子が形くずれしないようにすることではないから,そのような条件等についての数値の記載がないからといって,本件明細書の記載が不明確であるとはいえない。 したがって,造粒手段について,加える水分量の具体的な調整基準,使用する造粒装置,具体的な造粒工程が明示されていないとして,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない,また,特許発明が明確性を欠くとする原告の主張は,採用の限りでない。 (5) 原告は,請求項2の「酢酸を加え」との記載について,「発明の詳細な説明には,『酢酸』によって雑菌の繁殖を抑制できることや,『蒸し工程』を経ても,『酢酸』と『にんにく』が雑菌の繁殖を抑制し,培養を助成することができることの具体的な説明は記載されておらず,その目的,作用,効果が,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない」旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 請 きることの具体的な説明は記載されておらず,その目的,作用,効果が,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない」旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 請求項2の「酢酸を加え」との記載について,本件明細書に,「▲2▼粒状にし- 35 -て,保水性を保てば,当然,米糠に付着している雑菌に住みごこちのよい住み家を与えることになるため,酢を使用し,PHを落とし,雑菌の繁殖を抑えここでも麹菌の働きの活性化を図った。」(段落【0008】),「米糠を100とし,40~50重量%の水(4)と,20~30重量%の酢を投入し,造粒工程(8)で,粒子状に造粒する。・・・この造粒工程で(8)で多量の酢(PH2前後)を使用するのは,米糠に付着している雑菌の増殖を抑えることが目的である。」(段落【0010】)と記載されることから,その目的は,米糠に付着している雑菌の増殖を抑えること,作用,効果は,麹菌の働きの活性化を図ることにあることが示されているといえる。 原告は,本件明細書において,高温で蒸す「蒸し工程」を経ても「酢酸」と「にんにく」が雑菌の繁殖を抑制し,培養を助成することができることの具体的記載がないことを問題とするが,請求項2には,「前記第一の工程に於いて,酢酸を加え,必要に応じてにんにくを加え,雑菌の繁殖を抑え,前記第三の工程に於ける前記培養を助成する・・・」と記載され,この記載からは,「酢酸」と「にんにく」は,第一の工程(造粒工程)において雑菌の繁殖を抑えることで,第三の工程(培養工程)の培養を助成するものと解され,培養工程においても雑菌の繁殖を抑制する効果を保持していることまで示されているとはいえないから,そのような効果が,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている必要はない。 したがって,請 解され,培養工程においても雑菌の繁殖を抑制する効果を保持していることまで示されているとはいえないから,そのような効果が,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている必要はない。 したがって,請求項2の「酢酸を加え」との記載について,本件明細書の発明の詳細な説明に,その目的,作用,効果が,当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない,また,特許発明が明確性を欠く旨の原告の主張は,採用の限りでない。 (6) 原告は,請求項3の「該米糠麹の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 本件明細書に,「培養床(24)に入れた米糠の温度が略38℃になると,ファ- 36 -ン(30)によって,送風を始める。・・・米糠の温度をその38℃までに保ちながら,酸素を送り麹菌の働きを強める。ここでも,この状態で8時間~12時間すると,米糠の表面が少し,白くなり始める。」(段落【0014】),「この後,・・・培養床(24)から,5cm~7cm幅で長さ15cmくらいの大きさのブロックを取り出しむろの中で静置と送風を繰り返し,そのブロックの表面が繁殖した麹菌によって真白になるまで培養する。」(段落【0015】)と記載されている。なお,原告は,米糠は硬質でありデンプンがないから,麹菌が表面に繁殖しにくく,白い菌糸が真白に着くことはないと主張するが,上記主張を裏付けるに足りる証拠はない。 したがって,請求項3の「該米糠麹の表面が,麹菌によって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されていない旨の原告の主張は失当である。 (7) 以上のとおり,本件発明1は,特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たし,本件発 よって真白くなるまで培養」について,発明の詳細な説明に記載されていない旨の原告の主張は失当である。 (7) 以上のとおり,本件発明1は,特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たし,本件発明1を引用して記載する本件発明2ないし5についても同様であるとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は失当である。 3 取消事由3(「産業上利用することができる発明」該当性判断の誤り)について原告は,「本件発明1(本件発明2ないし5についても同様である。)は,『米糠粉末で玄米麹ができる』とするが,実際には米糠粉末から真実の玄米麹はできないものであって,産業上利用することができる発明に該当しないことから,特許法29条1項柱書に違反する」旨主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 特許法29条1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」とは,広く工業,農業,商業,鉱業等を包含する「産業」上利用可能な発明であることを明らかにし,学術的,実験的にのみ利用することができるような発明などは除く趣旨の規定である。米糠粉末から真実の玄米麹ができるかどうかは,上記の意味における「産業上利用することができる発明」の該当性の有無の判断を左右するものではな- 37 -いから,原告の主張は,その主張自体失当である。 4 取消事由4(補正の適否判断の誤り)について原告は,請求項2において,出願当初は「酢」と記載されていたのを「酢酸」に変更した補正について,出願時の明細書に記載されている事項の範囲内での補正に当たらず,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 原告の上記主張は,請求項2について,「酢」を含む「米糠粉末」を100℃から120℃で20~30分蒸すと,沸 第3項の規定に違反する旨主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。 原告の上記主張は,請求項2について,「酢」を含む「米糠粉末」を100℃から120℃で20~30分蒸すと,沸点が118℃である「酢」は蒸発し,「酢を使用し,PHを落とし,雑菌の繁殖を抑え」(本件明細書の段落【0008】)という目的を達し難いことから,「酢」が「酢酸」に補正されたことを前提とするが,酢には,酢酸が含まれ(甲9),酢酸の殺菌作用によって,「第一の工程に於いて,・・・雑菌繁殖を抑え」ることは明らかであるから,請求項2における「酢」の記載は,「酢酸」と実質的に同義であると解される。また,上記2(5) のとおり,請求項2の記載において,培養工程においても,「酢」又は「酢酸」による雑菌の繁殖を抑制する効果を保持していることまで示されているとはいえない。 したがって,請求項2において,「酢」を「酢酸」に補正した点が,特許法17条の2第3項の規定に違反するとの原告の主張は失当である。 5 小括以上のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消すべき違法があるとは認められない。原告は,他にも縷々主張するが,いずれも採用の限りではない。 第5 結論よって,原告の請求は理由がないから,請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部- 38 - 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官武宮英子 裁判官齊木教朗は,転任のため,署 明 裁判官 武宮英子 裁判官 齊木教朗は、転任のため、署名・押印することができない。 裁判長 裁判官 飯村敏明

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