- 1 -平成23年12月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ケ)第10063号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年11月24日判決原告鈴木産業株式会社同訴訟代理人弁理士近 藤 利英子菅野重慶阿部寛志杉村純子被告株式会社サメジマコーポレーション被告株式会社シリックス上記両名訴訟代理人弁護士中原健夫大江修子上 野 さやか同弁理士涌井謙一山本典弘鈴木正次 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2008-800095号事件について平成23年1月17日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要- 2 -本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告らの下記2の本件発明に係る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が,下記1(3)のとおりの本件訂正を認め 事案の概要- 2 -本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告らの下記2の本件発明に係る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が,下記1(3)のとおりの本件訂正を認めた上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 本件訴訟に至る経緯(1) 被告らは,平成12年5月19日,発明の名称を「調湿建材」とする特許出願(特願2000-148392号)をし,平成17年3月25日,設定の登録(特許第3659867号)を受けた。以下,この特許を「本件特許」という。 (2) 原告は,平成20年5月22日,本件特許の請求項1ないし3に係る発明について,特許無効審判を請求し,無効2008-800095号事件として係属した。特許庁は,平成21年3月24日,「本件特許第3659867号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をした。 被告らは,平成21年4月30日,これを不服として知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求める訴え(平成21年(行ケ)第10116号)を提起したところ,同裁判所は,被告らが同年7月28日に訂正審判請求(訂正2009-390093号事件)をしたことから,同年8月20日,同審決を取り消す旨の決定をし,同決定は確定した。 (3) 上記取消決定確定後の無効2008-800095号事件において,被告らは,平成21年10月23日付けで訂正請求(以下「本件訂正」という。)をしたところ,特許庁は,平成23年1月17日,本件訂正を認めた上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同月27日,その謄本が原告に送達された。 2 本件訂正前後の特許請求 う。)をしたところ,特許庁は,平成23年1月17日,本件訂正を認めた上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同月27日,その謄本が原告に送達された。 2 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載(1) 本件訂正前の特許請求の範囲請求項1ないし3の記載は,次のとおりである(甲29)。 - 3 -【請求項1】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を固化してなることを特徴とする調湿建材【請求項2】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後,固化してなることを特徴とする調湿建材【請求項3】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後,600~900℃で低温焼成することを特徴とする調湿建材(2) 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1ないし3は,次のとおりであり(ただし,平成22年4月19日付け手続補正後のものである。),下線が訂正部分である。以下,本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明を,順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」といい,併せて「本件訂正発明」という。また,本件訂正発明に係る明細書(甲30)を「本件明細書」という。 【請求項1】「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」を固化してなることを特徴とする調湿建材【請求項2】請求項1記載の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後, ンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後,固化してなることを特徴とする調湿建材【請求項3】請求項1記載の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後,600~900℃で低温焼成することを特徴とする調湿建材なお,本件訂正の訂正事項1は,請求項1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を「「オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とす- 4 -る天然鉱物」」と訂正し,訂正事項2は,請求項2及び3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を「請求項1記載の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」」と訂正し,訂正事項3は,請求項1ないし3の「天然鉱物」を「天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」と訂正するものである。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,①本件訂正発明1は,下記アの引用例1に記載された発明と同一ではなく,同発明に基づき,当業者が容易に発明することができたものでもない,②本件訂正発明2は,引用例1に記載された発明と同一ではなく,同発明に基づき,また,同発明及び下記イの引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づき,当業者が容易に発明することができたものでもない,③本件訂正発明3は,引用例1に記載された発明,引用発明2及び下記ウの引用例3に記載された発明(以下「引 発明(以下「引用発明2」という。)に基づき,当業者が容易に発明することができたものでもない,③本件訂正発明3は,引用例1に記載された発明,引用発明2及び下記ウの引用例3に記載された発明(以下「引用発明3」という。)に基づき,当業者が容易に発明することができたものではない,というものである。 ア引用例1:平成9年度研究報告書「能登地域未利用資源活用事業」石川県工業試験場,平成10年3月発行(甲1)イ引用例2:特許第2652593号公報(甲2)ウ引用例3:特許第2964393号公報(甲3)(2) なお,本件審決が認定した引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)並びに本件訂正発明1と引用発明1との一致点及び相違点1,2,本件訂正発明2と引用発明1との一致点及び相違点3ないし5,本件訂正発明3と引用発明1との一致点及び相違点6ないし8は,次のとおりである。 ア引用発明1:主要成分である含水非晶質シリカからなる珪藻殻の他に,モンモリロナイトなどの粘土分を多く含み成型性に優れた能登珪藻土からなり,セメント系固化材と混合し固化させた吸放湿建材イ本件訂正発明1と引用発明1との一致点:オパーリンシリカとスメクタイト- 5 -とを主成分とする天然鉱物を固化してなる調湿建材ウ相違点1:本件訂正発明1の天然鉱物が「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する」と限定されているのに対して,引用発明1では,「能登珪藻土からなる」点エ相違点2:本件訂正発明1が天然鉱物を「固化」するのに対して,引用発明1では「セメント系固化材と混合し固化させた」点オ本件訂正発明2と引用発明1との一致点:オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体を成形した後,固化してな して,引用発明1では「セメント系固化材と混合し固化させた」点オ本件訂正発明2と引用発明1との一致点:オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体を成形した後,固化してなる調湿建材カ相違点3:本件訂正発明2の天然鉱物が「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する」と限定されているのに対して,引用発明1発明では,「能登珪藻土からなる」点キ相違点4:本件訂正発明2は天然鉱物を「固化」するのに対して,引用発明1の天然鉱物が「セメント系固化材と混合し固化させた」点ク相違点5:本件訂正発明2が固化する前に「これと他の原料とを配合した混合粉体」にしているのに対して,引用発明1では,「これと他の原料とを配合した混合粉体」にすることについて明示されていない点ケ本件訂正発明3と引用発明1との一致点:オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体を成形した後,固化してなる調湿建材コ相違点6:本件訂正発明3の天然鉱物が「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する」と限定されているのに対して,引用発明1では,「能登珪藻土からなる」点サ相違点7:本件訂正発明3は天然鉱物を「600~900℃で低温焼成する」のに対して,引用発明1の天然鉱物が「セメント系固化材と混合し固化させた」点シ相違点8:本件訂正発明3が固化する前に「これと他の原料とを配合した混合粉体」にしているのに対して,引用発明1では,「これと他の原料とを配合した- 6 -混合粉体」することについて明示されていない点 4 取消事由(1) 本件訂正に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件訂正発明の明確性に係る判断の誤り(取消事由2)(3) 本件訂正 混合粉体」することについて明示されていない点 4 取消事由(1) 本件訂正に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件訂正発明の明確性に係る判断の誤り(取消事由2)(3) 本件訂正発明1の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(取消事由3)ア引用発明1の認定の誤りイ相違点1に係る判断の誤りウ相違点2に係る判断の誤りエ本件訂正発明1の効果に係る判断の誤り(4) 本件訂正発明2の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(取消事由4)ア引用発明1の認定の誤りイ相違点3に係る判断の誤りウ相違点4に係る判断の誤りエ本件訂正発明2の効果に係る判断の誤り(5) 本件訂正発明3の進歩性に係る判断の誤り(取消事由5)ア引用発明1の認定の誤りイ相違点6に係る判断の誤りウ相違点7に係る判断の誤りエ本件訂正発明3の効果に係る判断の誤り第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件訂正に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決は,訂正事項1及び2について,いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものではないと判断し,また,訂正事項3については,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると判断して,本件訂正を認めた。 - 7 -(2) しかし,請求項1ないし3の文言は,訂正事項1及び2による訂正の前から明瞭であり,これらの訂正は明瞭でない記載の釈明に該当しない。 また,訂正事項3は,「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の産地を「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層(以下,これらを併せて「浅茅野層等」という。)のいずれかから産する」と訂正するものであるが,この訂正 スメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の産地を「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層(以下,これらを併せて「浅茅野層等」という。)のいずれかから産する」と訂正するものであるが,この訂正によって新たに特定できる技術的事項はなく,特許請求の範囲の減縮に該当しない。 (3) 以上のとおり,本件訂正を認めた本件審決の判断は誤りであるところ,特許庁は,平成21年3月24日,本件訂正前の本件特許を無効とする審決をしているのであるから,本件訂正に係る判断の誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。 (4) 小括よって,本件審決は取り消されるべきである。 〔被告らの主張〕(1) 訂正事項1,2は,請求項1ないし3において,「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が共通し,かつ,これが出発物質であることを明らかにするものであり,各請求項の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」によって特定される事項の範囲がそれぞれ異なるとの誤った解釈がなされる可能性を排除するための訂正であって,明瞭でない記載の釈明に該当する。 (2) また,訂正事項3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正要件の検討に当たり,技術的事項の存否を検討すべき根拠はない。 (3) 小括よって,本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(本件訂正発明の明確性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕- 8 -(1) 本件審決は,浅茅野層等の範囲内か外かは地質図幅に基づき認識可能であるから,いずれかから産する天然鉱物の範囲は明確であり,また,地層名を発明特定事項とすることは,当該分野で行われているなどとして,本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は不明確ではないと判断している。 し ,いずれかから産する天然鉱物の範囲は明確であり,また,地層名を発明特定事項とすることは,当該分野で行われているなどとして,本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は不明確ではないと判断している。 しかし,浅茅野層等は,それぞれ堆積した時代や層相が異なり,何らの一致点もない。本件訂正発明は,これらの地層から産する天然鉱物を利用するものであるから,本件訂正発明の特許製品であるか否かは,材料の産地が重要な特許要件となるが,製品材料の産地を認定する根拠は,これらの産地を規定することによる何らかの技術事項がない以上,産地表示以外にはあり得ない。このような本件訂正発明において,堆積した時代も層相も異なる浅茅野層等について,それぞれの地層が地質図幅に基づき認識可能であるから,天然鉱物の範囲は明確であるとの判断に基づき,本件訂正発明を明確であるとする本件審決には根拠がない。 なお,本件明細書(【0015】)には,本件訂正発明の天然鉱物が,「浅茅野層,ポンニタチナイ層及び17線川層等の地層に広く分布している」と記載されており,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物が浅茅野層等に特有のものでないことを示している。 (2) また,本件審決は,引用発明2の稚内層珪藻土についても,技術的特長が請求項で特定されていないと説示しているが,本件訂正発明では,浅茅野層等は本件訂正発明の技術的特徴であるオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物が広く分布している地層の例示にすぎず,それ以上の意味を持たせることができる要件ではないが,引用発明2の稚内層珪藻土は,その明細書中に原料の特長が詳細に記載され,北海道立工業試験場,北海道立地下資源調査所発行の平成5年度共同研究報告書「本道珪藻土の高度利用と資源評価に関する研究」(甲7)中でも詳細な検 層珪藻土は,その明細書中に原料の特長が詳細に記載され,北海道立工業試験場,北海道立地下資源調査所発行の平成5年度共同研究報告書「本道珪藻土の高度利用と資源評価に関する研究」(甲7)中でも詳細な検討がされており,稚内層珪藻土として一義的に特定することができる技術的特長を有する地層であり,両者の意味は全く異なる。 (3) 小括- 9 -したがって,本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は不明確であり,特許法36条6項2号の規定に反するから,本件特許は,同法123条1項4号により無効とすべきである。 〔被告らの主張〕(1) 原告は,浅茅野層等の堆積した時代や層相を比較すると,これら3層には何らの一致点もないと主張する。 しかし,層相の分類は,単に粒度の違いによって行われるものであり,成分の違いによるものではないから,堆積した時代や層相が異なることは,浅茅野層等に一致点がないと判断する理由にはならない。 (2) また,特許法36条6項2号の「発明が明確であること」とは,1つの請求項の技術的範囲を画する上で,発明の外延が明らかになることをいう。 本件訂正発明において,発明の範囲が明確であるか否かは,まさに浅茅野層等を明確に把握できるか否かの問題となるところ,これら3つの地層は,地質図幅に基づいて明確に認識することが可能である以上,本件訂正発明は,特許法36条6項2号に違反するものではない。 (3) また,原告は,本件明細書の記載(【0015】)から,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物が浅茅野層等に特有のものでないと主張する。 しかし,本件明細書の上記記載は,オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とする天然鉱物が浅茅野層等以外の地層にも存在する可能性を否定するものではないとしても,そのこと自体は本 ないと主張する。 しかし,本件明細書の上記記載は,オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とする天然鉱物が浅茅野層等以外の地層にも存在する可能性を否定するものではないとしても,そのこと自体は本件特許の無効理由を生ずるものではない。 (4) さらに,原告は,本件訂正発明において,浅茅野層等のいずれかから産するとの事項は,天然鉱物が分布する地層の例示にすぎず,それ以上の意味を持たせることができる要件ではない旨主張している。 しかし,特許請求の範囲に記載された地層名によって一義的に特定することができる技術的特長が存在しないことが,いかなる無効理由を構成するか不明であり,- 10 -原告の主張は失当である。また,地層名による技術的特長が一義的に特定することができるか否かの判断の基準時は出願時であるから,平成3年5月30日に出願された引用例2の稚内層珪藻土に関し,出願後の文献(甲7)を根拠として稚内層珪藻土は一義的に特定することができる技術的特長を有する地層名であると主張するのは不合理である。 (5) 小括したがって,本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号の規定に反するものではない。 3 取消事由3(本件訂正発明1の新規性及び進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1の認定の誤りについてア本件審決は,引用例1に記載された発明について,セメント系固化材と混合し固化させた吸放湿建材と認定している。 しかし,引用例1記載の能登珪藻土について,セメント系固化材と混合することを必須とする天然鉱物であると認定すべき合理的理由はない。 イしたがって,本件審決の引用発明1の認定は誤りである。 (2) 相違点1に係る判断の誤りについてア本件審決は,浅茅野層等がオパーリ とする天然鉱物であると認定すべき合理的理由はない。 イしたがって,本件審決の引用発明1の認定は誤りである。 (2) 相違点1に係る判断の誤りについてア本件審決は,浅茅野層等がオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を産することは,いずれの証拠にも記載されておらず,浅茅野層等が当該天然鉱物を産することが周知であったとも認められないから,当業者は,能登珪藻土からなる天然鉱物に換えて,浅茅野層等のいずれかから産する天然鉱物を特定することを容易に想到することはできないと判断している。 しかし,北海道開発庁が昭和42年3月に発行した浜頓別と題する報告書(甲27)には,17線川層の天然鉱物が,引用例1記載の能登珪藻土と堆積した時代や層相が異なるものでないことが示されている。 - 11 -イしたがって,浅茅野層等がオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を産することはいずれの証拠にも記載されていないとした本件審決の判断は誤りであり,かかる誤りを前提に相違点1に係る本件訂正発明1の構成が容易に想到することができないとした本件審決の判断も誤りである。 (3) 相違点2に係る判断の誤りについてア本件審決は,本件訂正発明1は硬化剤や結合材を混合しなくても卓越した凝結力をもって固化するという効果を達成するものであるから,本件訂正発明1の「固化」とは,単に固まることを意味するのではないとした上で,引用例1記載の能登珪藻土からなる天然鉱物が必須とするセメント系固化材と混合することを省き,自らの固結力を発揮させることには飛躍があるから,当業者はセメント系固化材との混合を省くことを困難なく想到することはできないと判断した。 しかし,発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,請 ことには飛躍があるから,当業者はセメント系固化材との混合を省くことを困難なく想到することはできないと判断した。 しかし,発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,請求項1の記載から「固化」が単に固まることを意味するものではないと判断することはできない。 仮に,本件訂正発明1の「固化」が単に固まることを意味するものではないという本件審決の判断が適法であるとしても,前記(1)のとおり,引用例1記載の能登珪藻土について,セメント系固化材と混合することを必須とする天然鉱物であると認定すべき合理的理由はない。また,本件明細書(【0013】)には,「この天然鉱物が備える自硬性はスメクタイトの特性に基づくもの」と記載されているから,スメクタイトを主成分とする引用例1記載の能登珪藻土の「固化」と,本件訂正発明1の天然鉱物の「固化」の機能及び効果が異なるものでないことは明らかである。 イしたがって,相違点2に係る本件審決の判断は誤りである。 (4) 本件訂正発明1の効果に係る判断の誤りについてア本件審決は,本件訂正発明1に係る調湿建材は凝結力が大きく,セメントを固化材に使用するよりも耐摩耗性に優れ,吸放湿機能も大きいなどとする本件明細書の記載(【0022】表1)に基づき,本件訂正発明1の効果は格別顕著である- 12 -と判断している。 しかし,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明1の天然鉱物は,技術的要件において同一のものであり,これらを固化してなる調湿建材は,機能及び効果において異なるものでない。 なお,本件明細書の実施例1では,浅茅野層等は堆積した時代や層相が異なるにもかかわらず,使用した天然鉱物がいずれの地層から産出されたものであるのか特定されていない。また,同実施例では,天然鉱物の配合比 お,本件明細書の実施例1では,浅茅野層等は堆積した時代や層相が異なるにもかかわらず,使用した天然鉱物がいずれの地層から産出されたものであるのか特定されていない。また,同実施例では,天然鉱物の配合比は25%,解膠剤,骨材,繊維質物及び増粘剤の混合粉体の配合比は75%であり,さらに,混合粉体の70%以上を占める骨材は,珪藻土,パーライト,火山灰であって,大半を乾燥,固化できる他の天然鉱物が占めているから,実施例1をもって,本件訂正発明1の実施例とすることには疑念があり,実施例1の結果に基づき,本件訂正発明1の「固化」の意味を決定付けるのは無理がある。 一方,引用例1記載の能登珪藻土である能登の飯塚層から産する天然鉱物を用い,当該天然鉱物を25%,骨材を70.8%,繊維質物を3.5%,増粘剤を0.4%,解膠剤を0.3%とする混合粉体に水を加えて混練し,石膏ボード下地に塗り付けたところ,固化して塗壁とできることが確認され,また,固化したサンプルの吸放湿性を調べたところ,吸放湿機能を有することも確認された(甲52,53)。 したがって,引用例1記載の能登珪藻土は,セメント系固化材との混合を必須とするものでなく,本件訂正発明1の天然鉱物と同様に,自硬性を有するものである。 イしたがって,本件訂正発明1の効果に係る本件審決の判断は誤りである。 (5) 小括ア以上のとおり,本件訂正発明1は,引用例1に記載された発明と同一である。 イ仮に,本件訂正発明1と引用例1に記載された発明が同一でないとしても,当業者は,同発明に基づき,本件訂正発明1を容易に想到することができたものである。 〔被告らの主張〕- 13 -(1) 引用発明1の認定の誤りについて原告は,引用例1記載の能登珪藻土について,セメント系固化材と混合することを 容易に想到することができたものである。 〔被告らの主張〕- 13 -(1) 引用発明1の認定の誤りについて原告は,引用例1記載の能登珪藻土について,セメント系固化材と混合することを必須とする天然鉱物であると判断すべき合理的理由はないから,本件審決の引用発明1の認定は誤りであると主張する。 しかし,本件特許が出願された平成12年5月19日以前に発行された文献には,セメント系固化材と混合しない能登珪藻土は示されておらず,この当時,天然鉱物はセメント系固化材と混合しなければ建材として使用するに耐えないことが当業者の常識であったから,原告の主張は理由がない。 (2) 相違点1に係る判断の誤りについて原告は,甲27には,17線川層の天然鉱物が引用例1記載の能登珪藻土と堆積した時代や層相が異なるものでないことが示されているから,浅茅野層等がオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を産することはいずれの証拠にも記載されていないとした本件審決の判断は誤りであるなどと主張する。 しかし,本件訂正発明1の天然鉱物は,調湿性,自硬性及び低温焼結性という特性を有する天然鉱物であり,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものではないとする原告の主張は誤りである。また,上記特性を有する天然鉱物が浅茅野層等のいずれかから産することは,原告が引用するいずれの証拠にも記載されておらず,本件審決の判断に誤りはない。 (3) 相違点2に係る判断の誤りについてア原告は,発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであると主張する。 しかし,特許の技術的範囲は,特許請求の範囲によって規定されるが,そこに記載された用語の意味は,明細書で明確に定義されている場合等を除き,明細書に記載された特許発明が解決しようとする技 張する。 しかし,特許の技術的範囲は,特許請求の範囲によって規定されるが,そこに記載された用語の意味は,明細書で明確に定義されている場合等を除き,明細書に記載された特許発明が解決しようとする技術的課題やその技術的構成が実現する作用効果等を考慮して解釈すべきものであるところ,本件訂正発明1は,硬化剤や結合材を混合していた従来技術の問題点を克服し,建材の再生を可能にするという効果- 14 -やこれらを混合しなくとも他の粘土鉱物に比して卓越した凝結力をもって固化するという効果を奏するものであるから(【0007】【0009】【0013】),本件訂正発明1の「固化」とは,単に固まることを意味するのではなく,セメント等の特別な硬化剤や結合材を混合することなしに,他の粘土鉱物に比べて卓越した凝結力をもって固まる性質を意味すると解すべきである。 イまた,原告は,引用例1記載の能登珪藻土について,セメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であると判断すべき合理的理由はないと主張するが,前記(1)のとおり,本件特許出願当時,能登珪藻土はセメント系固化材と混合しなければ建材として使用するに耐えないことが当業者の常識であり,原告の主張は理由がない。 ウさらに,原告は,本件明細書の記載(【0013】)を引用し,引用例1記載の能登珪藻土はスメクタイトを主成分とする天然鉱物であるから,本件訂正発明1と同様に固化するなどと主張する。 しかし,本件明細書の上記記載は,本件訂正発明1における固化による効果を実現する天然鉱物の自硬性にスメクタイトの特性が寄与していることを推測しているにすぎず,上記記載から直ちに,スメクタイトを含む全ての天然鉱物が特別な硬化剤や結合材を混合することなしに他の粘土鉱物に比べて卓越した強度をもって固化するという作用効果を奏 ていることを推測しているにすぎず,上記記載から直ちに,スメクタイトを含む全ての天然鉱物が特別な硬化剤や結合材を混合することなしに他の粘土鉱物に比べて卓越した強度をもって固化するという作用効果を奏することにはならない。また,引用例1記載の能登珪藻土がスメクタイトを含むとしても,調湿性,自硬性及び低温焼結性について,本件訂正発明1と同等の作用効果を有することは一切示されておらず,上記特性を有する天然鉱物ではないから,本件訂正発明1と同様に固化するものということはできない。 エしたがって,相違点2に係る本件審決の判断に誤りはない。 (4) 本件訂正発明1の効果に係る判断の誤りについてア原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明1の天然鉱物は技術的要件において同一であるとして,本件訂正発明1の効果は,引用発明1でも得られる- 15 -ものであると主張する。 しかし,本件訂正発明1の調湿建材によって得られる顕著な効果が,引用発明1の調湿建材においても得られることを裏付ける証拠はない。 イまた,原告は,浅茅野層等は堆積した時代や層相が異なるものであるにもかかわらず,実施例1で使用した天然鉱物が浅茅野層等のいずれの地層から産出されたものか特定されていなどと主張している。 しかし,前記2〔被告らの主張〕(1)のとおり,堆積した時代や層相が異なることは,浅茅野層等が何らの一致点も有しないと断定する理由にはならない。 ウさらに,原告は,甲52及び53の実験結果から,引用例1記載の能登珪藻土が,本件訂正発明1の天然鉱物と同様の自硬性を有するなどと主張している。 しかし,上記実験結果から,引用例1記載の能登珪藻土が,本件訂正発明1の天然鉱物と同様に,特別な硬化剤や結合材を混合することなしに他の粘土鉱物に比べて卓越した強 硬性を有するなどと主張している。 しかし,上記実験結果から,引用例1記載の能登珪藻土が,本件訂正発明1の天然鉱物と同様に,特別な硬化剤や結合材を混合することなしに他の粘土鉱物に比べて卓越した強度をもって固化していることを確認することはできない。また,上記実験における試料は,多少の吸放湿機能を有することしかうかがわれず,本件訂正発明1の天然鉱物の吸放湿機能との比較すら示されていない。 (5) 小括以上によれば,本件訂正発明1は,引用発明1と同一ではないし,本件審決の本件訂正発明1に係る進歩性の判断にも誤りはない。 4 取消事由4(本件訂正発明2の新規性及び進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3〔原告の主張〕(1)のとおり,本件審決の引用発明1の認定は誤りである。 (2) 相違点3に係る判断の誤りについて本件審決は,相違点3について,相違点1と同様に,当業者は,能登珪藻土からなる天然鉱物に換えて,浅茅野層等のいずれかから産する天然鉱物を特定すること- 16 -を容易に想到することはできないと判断している。 しかし,前記3〔原告の主張〕(2)と同様に,本件訂正発明2の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものではなく,本件審決の判断は誤りである。 (3) 相違点4に係る判断の誤りについてア本件審決は,相違点4について,相違点2と同様に,当業者は,引用例1に記載された発明におけるセメント系固化材との混合を省くことを困難なく想到することはできないなどと判断している。 しかし,前記3〔原告の主張〕(3)と同様に,請求項2の記載から「固化」が単に固まることを意味するものではないと判断することはできない。 また,引用例1記載の能登珪藻土の「 どと判断している。 しかし,前記3〔原告の主張〕(3)と同様に,請求項2の記載から「固化」が単に固まることを意味するものではないと判断することはできない。 また,引用例1記載の能登珪藻土の「固化」と,本件訂正発明2の天然鉱物の「固化」の機能及び効果は異なるものではない。 イしたがって,相違点4に係る本件審決の判断は誤りである。 (4) 本件訂正発明2の効果に係る判断の誤りについてア本件審決は,本件訂正発明2に係る調湿建材は焼成により作製した調湿セラミックを上回る強度と耐摩耗性を備えるなどという本件明細書の記載(【0028】表2)に基づき,本件訂正発明2の効果は格別顕著と認められると判断している。 しかし,本件審決は,相違点5につき実質的な相違点ではないと判断しているから,本件訂正発明2の特許性の判断に寄与する技術事項は,本件訂正発明1と何ら変わらないことになる。 したがって,本件訂正発明2の効果は,技術的要件において何ら相違していない引用例1に記載された発明の効果と同様であることは明らかであり,本件訂正発明2の効果を格別顕著なものとする余地はない。 イまた,本件訂正発明2の1つの態様は,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物と,他の原料を配合した混合粉体を成形した後,固化してなるものであるが,ここでいう他の原料は,少なくとも吸放湿機能を向上させる高- 17 -機能珪藻土を意味するものであり,引用発明2の稚内層珪藻土は,オパーリンシリカを豊富に有する天然鉱物であって,オパーリンシリカには優れた調湿機能があるから,当業者は,引用例1記載のオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物に,調湿機能の向上を目的として,引用発明2の天然鉱物を混合させることを想到するのは容易であり,本件訂 機能があるから,当業者は,引用例1記載のオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物に,調湿機能の向上を目的として,引用発明2の天然鉱物を混合させることを想到するのは容易であり,本件訂正発明2の効果は当業者が容易に想起できる程度のものである。 (5) 小括ア以上のとおり,本件訂正発明2は,引用例1に記載された発明と同一である。 イ仮に,本件訂正発明2と引用例1に記載された発明が同一でないとしても,当業者は,同発明に基づき,あるいは,同発明及び引用発明2に基づき,本件訂正発明2を容易に想到することができたものである。 〔被告らの主張〕(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(1)のとおり,本件審決の認定に誤りはない。 (2) 相違点3に係る判断の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(2)と同様に,本件審決の判断に誤りはない。 (3) 相違点4に係る判断の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(3)と同様に,本件審決の判断に誤りはない。 (4) 本件訂正発明2の効果に係る判断の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(4)と同様に,本件訂正発明2は,引用発明1に比較して顕著な効果を有する。 なお,原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明2の天然鉱物が同じであるとした上で,引用例1記載の能登珪藻土に,調湿機能の向上を目的として,引用発明2の天然鉱物を混合させることを想到するのは容易であるとも主張しているが,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明2の天然鉱物が異なるものではないという原告の主張は誤りである。 - 18 -(5) 小括以上によれば,本件訂正発明2は,引用発明1と同一ではないし,本件審決の本件訂正発明2の進歩性に係る判断にも誤りはない。 という原告の主張は誤りである。 - 18 -(5) 小括以上によれば,本件訂正発明2は,引用発明1と同一ではないし,本件審決の本件訂正発明2の進歩性に係る判断にも誤りはない。 5 取消事由5(本件訂正発明3の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3〔原告の主張〕(1)のとおり,本件審決の引用発明1の認定は誤りである。 (2) 相違点6に係る判断の誤りについて本件審決は,相違点6について,相違点1と同様に,当業者は,能登珪藻土からなる天然鉱物に換えて,浅茅野層等のいずれかから産する天然鉱物を特定することを容易に想到することはできないと判断している。 しかし,前記3〔原告の主張〕(2)と同様に,本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものではなく,本件審決の判断は誤りである。 (3) 相違点7に係る判断の誤りについてア本件審決は,相違点7のうち,引用例1に記載された発明の天然鉱物が「セメント系固化材と混合し固化させた」との点については,相違点2と同様に,当業者は,当該発明におけるセメント系固化材との混合を省くことを困難なく想到することはできないなどと判断し,また,本件訂正発明3は天然鉱物を「600℃~900℃で低温焼成する」との点については,引用発明2に基づき,600℃ないし900℃での低温焼成が従来から用いられていた周知手段であると認めたが,引用発明2及び3は,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を出発物質としていないから,相違点7に係る本件訂正発明3の構成を引用例1に記載された発明に採用することを動機付ける発明としては適当ではないと判断している。 しかし,本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能 ていないから,相違点7に係る本件訂正発明3の構成を引用例1に記載された発明に採用することを動機付ける発明としては適当ではないと判断している。 しかし,本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものではなく,これらの固化による機能及び効果は異ならない。また,引用例1には,「能登珪藻土はモンモリロナイトなどの粘土分を多く含んでおり,これまで耐火断- 19 -熱レンガなどに応用されている。」旨の記載があり,引用例1記載の能登珪藻土を焼成することは通常行われており,これを焼成することに新規性も進歩性もない。 したがって,本件訂正発明3と引用例1に記載された発明との相違点7は存在しない。 イ仮に,相違点7が存在するとしても,引用例1記載の能登珪藻土と,引用発明2及び3の天然鉱物は,いずれもその主成分がオパーリンシリカの点で一致する。 また,引用例2の「稚内層珪藻土粉砕物と北海道旭川地区のせっ器質粘土を配合し,タイル状に乾式プレス成形後,800℃焼成したものの調湿機能である。」旨の記載や引用例3の「珪質頁岩と神楽粘土の配合比が,6種類の練土状素地を調製した。 これらの素地で真空土練成形機を用いて,焼成温度900℃,1時間保持の条件で焼成した板状調湿セラミックス建材を作成した。調湿機能は珪質頁岩の配合比に一義的に支配され,その配合量が多いほど大きい。曲げ強度は神楽粘土の配合量が多くなるほど大きい。」旨の記載等から,当業者は,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする引用例1記載の能登珪藻土を出発物質として,これを成形(固化)した後に600ないし900℃で低温焼成することを容易に想到することができる。また,引用例3の上記記載から,当業者は,引用例1記載の能登珪藻土に,調湿性の向上を目的として,オパーリンシリカを主成分とす た後に600ないし900℃で低温焼成することを容易に想到することができる。また,引用例3の上記記載から,当業者は,引用例1記載の能登珪藻土に,調湿性の向上を目的として,オパーリンシリカを主成分とする高機能珪藻土である引用発明2の天然鉱物を配合することも,その強度を向上させる目的で,引用例1記載の能登珪藻土の一方の主成分である粘土鉱物のモンモリロナイト(スメクタイト)をさらに配合することも容易に想到することができる。 (4) 本件訂正発明3の効果に係る判断の誤りについて本件審決は,本件訂正発明3に係る調湿セラミックス建材は市販のセラミックスよりも強度が大きく,耐摩耗性も陶磁器質床タイルのJIS規格を満足するなどという本件明細書の記載(【0035】表4~6)に基づき,本件訂正発明3の効果は格別顕著と認められると判断している。 しかし,本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるもの- 20 -ではないので,本件訂正発明3の効果は,引用例1に記載された発明,引用発明2及び3から当業者が容易に想起できる程度のものである。 (5) 小括以上によれば,当業者は,引用例1に記載された発明,引用発明2及び3に基づき,本件訂正発明3を容易に発明することができたものである。 〔被告らの主張〕(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(1)のとおり,本件審決の認定に誤りはない。 (2) 相違点6に係る判断の誤りについて前記3〔被告らの主張〕(2)と同様に,本件審決の判断に誤りはない。 (3) 相違点7に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明3の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土の固化による機能及び効果は異ならないと主張するが,前記3〔被告らの主張〕(3)と同様に,原告 ) 相違点7に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明3の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土の固化による機能及び効果は異ならないと主張するが,前記3〔被告らの主張〕(3)と同様に,原告の主張は理由がない。 また,引用例1には,成形した材料を1000℃で焼成する例しか記載されていないから,相違点7が存在しないことの根拠とはならない。 イ次に,原告は,引用発明1に引用発明2及び3を適用することにより,当業者は,相違点7に係る本件訂正発明3の構成を容易に想到することができるとも主張している。 しかし,引用発明1に引用発明2及び3を適用する動機付けがどのような論理で導かれるについては一切主張がない。原告は,引用例1記載の能登珪藻土と引用発明2及び3の天然鉱物は,いずれも主成分がオパーリンシリカであることや調湿機能を有することで共通していると主張しているにすぎず,引用例1記載の能登珪藻土の成形物を低温で焼成することを受け入れることができることについての主張はない。 したがって,引用例2に記載された800℃の焼成が周知手段であるとしても,- 21 -原告の主張は,引用発明1に引用発明2及び3を適用することの阻害要因や動機付けの不存在を否定するものではない。 (4) 本件訂正発明3の効果に係る判断の誤りについて原告は,本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものではなく,本件訂正発明3の効果も,当業者が引用発明1ないし3から容易に想到できる程度のものであると主張するが,前記(2)のとおり、本件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものであるから,原告の主張はその前提を欠くものである。 (5) 小括以上によれば,本件審決の本件訂正発明3の進歩性に係る判断に誤 件訂正発明3の天然鉱物は,引用例1記載の能登珪藻土と異なるものであるから,原告の主張はその前提を欠くものである。 (5) 小括以上によれば,本件審決の本件訂正発明3の進歩性に係る判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件訂正に係る判断の誤り)について(1) 訂正事項1は,請求項1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を「「オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とする天然鉱物」」と訂正するもの,訂正事項2は,請求項2及び3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を「請求項1記載の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」」と訂正するものであり,これらの訂正事項は,両者相俟って,請求項2,3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が,請求項1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」と同じであることをより明らかにするものであり,明瞭でない記載の釈明(特許法134条の2第1項2号)に該当するものと認められる。 (2) 訂正事項3は,請求項1ないし3の「天然鉱物」を「天然鉱物であって,北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」と訂正するものであり,請求項1ないし3の天然鉱物の産地を特定したものである。天然鉱物の産地を上記のとおり特定することによって,各請求項記載の天然鉱物を特定の地層から産出される特定の天然鉱物に限定し,それ以外の産地から産- 22 -出される天然鉱物を除外したものであるから,特許請求の範囲の減縮(特許法134条の2第1項1号)に該当すると認めるのが相当である。 (3) 小括したがって,取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件訂正発明の明確 であるから,特許請求の範囲の減縮(特許法134条の2第1項1号)に該当すると認めるのが相当である。 (3) 小括したがって,取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件訂正発明の明確性に係る判断の誤り)について(1) 原告は,堆積した時代も層相も異なる浅茅野層等について,それぞれの地層が地質図幅に基づき認識可能であるから,天然鉱物の範囲は明確であるとの判断に基づき,本件訂正発明を明確であるとする本件審決には根拠がないと主張する。 しかしながら,浅茅野層等の堆積した時代も層相も異なることが,直ちに浅茅野層等から産出される天然鉱物に共通性がないことを示すものということはできない。 本件訂正発明は,オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とし,調湿性や自硬性における特性を共通とする天然鉱物が浅茅野層,ポンニタチナイ層及び17線川層等に広く分布していることを前提とした上で(【0013】【0015】),その産地を浅茅野層等に特定したものであり,かつ,浅茅野層等は,それぞれの地層が地質図幅(甲25の1等)に基づき認識することができるのであるから,特許請求の範囲の記載は,明確性に欠けるものとは認められない(特許法36条6項2号)。 (2) 小括よって,取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(本件訂正発明1の新規性及び進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1の認定の誤りについてア原告は,引用例1記載の能登珪藻土がセメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であると判断すべき合理的理由はなく,本件審決の引用発明1の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,引用例1には,珪藻土にセメント系固化材を混合して珪藻土壁材を作成することしか記載されていない以上,原告の主張を採用することはできない。 - 1の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,引用例1には,珪藻土にセメント系固化材を混合して珪藻土壁材を作成することしか記載されていない以上,原告の主張を採用することはできない。 - 23 -イしたがって,本件審決の引用発明1の認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 本件明細書には,本件訂正発明について,概略,次の記載がある。 ア本件訂正発明は,オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の優れた調湿性と自硬性とを利用したリサイクルできる調湿建材と,低温焼成により,陶磁器質床タイルとして使用可能な耐摩耗性を備える調湿セラミックス建材に関するものである(【0001】)。 イ建築における湿害対策として用いられる調湿建材は,材料の形態によって,不定形と定形に大別される。不定形調湿建材である調湿性塗材は,調湿原料として各種珪藻土,硬化剤としてセメントやプラスター,結合材として樹脂を使用するのが一般的であるが,硬化剤の水和生成物や樹脂により調湿原料の細孔が塞がれ,その機能が阻害されるという問題やセメントや樹脂で固化した材料を再利用することが困難であるという問題があった。また,定型調湿建材である調湿セラミックス建材において,従来の製造法では600ないし900℃の低温焼成により,床タイルのJIS規定を満足する耐摩耗性を有する建材を作製することはできなかった。本件訂正発明の目的は,リサイクルできる調湿材料や床材としても使用できる強度と耐摩耗性を備えた調湿セラミックス建材を提供するものである(【0002】【0004】~【0007】)。 ウ上記目的を達成するため,本件訂正発明は,調湿性,自硬性及び低温焼結性を備えるオパーリンシリカとスメクタイトとを主鉱物とした天然鉱物を主原料として作製することを特徴とする。本 0007】)。 ウ上記目的を達成するため,本件訂正発明は,調湿性,自硬性及び低温焼結性を備えるオパーリンシリカとスメクタイトとを主鉱物とした天然鉱物を主原料として作製することを特徴とする。本件訂正発明の調湿建材は,特別の硬化剤や結合材を使用することなく固化するため,再利用が容易である。また,天然鉱物の自硬性によって固化することから,配合する原料固有の機能が阻害されないため,高機能化が容易である。天然鉱物が備える自硬性はスメクタイトの特性に基づくものと考えられるが,特別な硬化剤又は結合材を加えることなく固化し,その凝結力は他の粘土鉱物に比し卓越したものである。また,この天然鉱物は,600℃程度の低温焼成によって陶磁器質床タイルの規格を満足する強度と耐摩耗性を発現する(【0- 24 -008】~【0013】)。 エ実施例1(請求項1に係る調湿建材):粒径1mm 以下に粉砕したオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とし,調湿性と自硬性とを備えた天然鉱物(浅茅野層等の地層に広く分布している。以下「0PS粉体」という。),解膠剤,骨材,繊維質物及び増粘剤の混合粉体に所定の水を加えて混練し,それをコテによって石膏ボード下地に塗り付け,乾燥,固化した調湿建材を作製し,吸放湿機能と耐摩耗性とを測定した(【0015】【0016】表1)。 オ比較例1:OPS粉体の代わりにセメントを硬化剤とし,実施例1と同じ方法で試料を作成し,その吸放湿機能と耐摩耗性を測定した(【0020】表1)。 カ実施例及び比較例から明らかなように,OPS粉体を利用した調湿建材は,固化したときの凝結力が大きく,セメントを硬化剤に使用するよりも耐摩耗性に優れ,吸放湿機能も大きい。また,骨材等に機能性原料を利用すれば,特別な硬化剤や結合材を使用しないためにその機能 調湿建材は,固化したときの凝結力が大きく,セメントを硬化剤に使用するよりも耐摩耗性に優れ,吸放湿機能も大きい。また,骨材等に機能性原料を利用すれば,特別な硬化剤や結合材を使用しないためにその機能が阻害されないから,材料設計が容易であり,調湿建材の機能を高度化又は多様化することができ,再利用も容易である(【0022】)。 (3) 相違点1に係る判断の誤りについてア原告は,甲27には,17線川層の天然鉱物が,引用例1記載の能登珪藻土と堆積した時代や層相が異なるものでないことが示されているから,浅茅野層等がオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を産することはいずれの証拠にも記載されていないとした本件審決の判断は誤りであるなどと主張する。 確かに,引用例1には,「能登半島に分布する珪藻土は第三紀中新世の地層の一部として存在し,単細胞藻類の珪藻殻のほか粘土鉱物も含む珪藻泥岩あるいは珪藻頁岩と呼ばれる堆積岩の一種である。」との記載があり,甲27には,17線川層は新第三期中新世に堆積し,層相は硬質頁岩,礫岩,泥岩との記載があるから,両者が堆積した時代や層相には共通性があるということができる。 しかしながら,前記(2)のとおり,本件訂正発明1において,浅茅野層等から産- 25 -出される天然鉱物は,調湿性,自硬性及び低温焼結性という特性を備えたものであるところ,天然鉱物は,通常,産地によって組成が異なり,性質にも一定の相違が生じているということができるから,堆積した時代や層相の共通性から,直ちに能登珪藻土と17線川層から産出される天然鉱物とが同一のものであると断定することはできない。そして,調湿性,自硬性及び低温焼結性という特性を有する天然鉱物が浅茅野層等から産することは,原告が引用する証拠には記載されておらず,浅 される天然鉱物とが同一のものであると断定することはできない。そして,調湿性,自硬性及び低温焼結性という特性を有する天然鉱物が浅茅野層等から産することは,原告が引用する証拠には記載されておらず,浅茅野層等からこのような特性を有する天然鉱物が産することが周知であったとも認められない。 イしたがって,本件審決の相違点1に係る判断が誤りであるとは認められない。 (4) 相違点2に係る判断の誤りについてア原告は,発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであると主張するが,請求項1の「「…から産する天然鉱物」を固化してなる」との記載からすると,本件訂正発明1の「固化」とは,文言上,天然鉱物自体を固まりとすることを意味するものと解することができるが,他方で,硬化剤や結合材を加えて固まりとすることが一般的であるとの技術常識に照らすと,天然鉱物に硬化剤や結合材を加えて固まりとすることを意味するものと解することもできるから,「固化」の意味は,多義的であるということができる。そこで,本件訂正発明1における「固化」の技術的意義について,発明の詳細な説明の記載を参酌すると,前記(2)のとおり,本件訂正発明1は,調湿性,自硬性及び低温焼結性を備えるオパーリンシリカとスメクタイトとを主鉱物とした天然鉱物を主原料とすることにより,再利用の容易性や強度の耐摩耗性を発現するものであるから,本件訂正発明1の「固化」とは,広く固まることを意味するのではなく,特別の硬化剤や結合材を使用せずに固まるという意味を有するものと認めるのが相当である。 イ次に,原告は,引用例1記載の能登珪藻土がセメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であると判断すべき合理的理由はないと主張するが,前記(1)のとおり,引用例1の記載内容に照らし,原告の主張を採用 次に,原告は,引用例1記載の能登珪藻土がセメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であると判断すべき合理的理由はないと主張するが,前記(1)のとおり,引用例1の記載内容に照らし,原告の主張を採用することはできない。 - 26 -ウまた,原告は,本件明細書(【0013】)の「この天然鉱物が備える自硬性はスメクタイトの特性に基づくものと考えられる」との記載を引用し,引用例1記載の能登珪藻土もスメクタイトを主成分とする天然鉱物であるから,本件訂正発明1と同様に固化するなどと主張する。 しかしながら,本件明細書の上記記載は,浅茅野層等で産出される天然鉱物に関する説明であり,スメクタイトを含む全ての天然鉱物が特別な硬化剤や結合材を混合することなしに固化することができることを記載したものと解することはできない。そして,引用例1記載の能登珪藻土については,セメント系固化材を混合して作成することのみが示されているのであるから,本件明細書の上記記載に基づき,引用例1記載の能登珪藻土も本件訂正発明1と同様に,特別な硬化剤や結合材を混合することなしに固化するものと認めることはできない。 エしたがって,本件審決の相違点2に係る判断が誤りであるとは認められない。 (5) 本件訂正発明1の効果に係る判断の誤りについてア原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明1の天然鉱物とは,技術的要件において同一のものであり,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材は機能及び効果において異ならないと主張するが,前記(3)及び(4)のとおり,本件訂正発明1の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土とが同一のものとは認められないし,そうである以上,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材の機能及び効果も同一のものということはできないから,原告の主張は採用でき の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土とが同一のものとは認められないし,そうである以上,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材の機能及び効果も同一のものということはできないから,原告の主張は採用できない。 イまた,原告は,実施例1で使用した天然鉱物が浅茅野層等のいずれの地層から産出されたものか特定されておらず,実施例1をもって,本件訂正発明1の実施例とすることには疑念があるなどと主張している。 しかし,実施例1は,浅茅野層等の地層に広く分布する調湿性,自硬性及び低温焼結性を備えるオパーリンシリカとスメクタイトとを主鉱物とした天然鉱物を用いて調湿建材を作成し,その吸放湿機能や耐摩耗性を測定したものであり,当該天然鉱物が浅茅野層等のうち,いずれの地層から産出されたものであるかの特定それ自- 27 -体を欠いているとしても,浅茅野層等から産出されたものであることに違いはなく,それによって,実施例1の結果を否定する理由とはならない。 ウまた,原告は,甲52及び53記載の実験では,能登珪藻土に骨材等を加えた混合粉体に水を加えるなどして,石膏ボード下地に塗り付けたところ,固化して塗壁とできることやこれが吸湿機能を有していることが確認されたと主張する。 しかしながら,上記実験の結果からは,その試料がどの程度の強度をもって固まったのか明らかでない。また,本件訂正発明1においては,吸放湿機能,磨耗減量の効果が両立して達成されていることが示されているが(【0015】表1),上記実験結果には,吸湿機能が示されているにすぎず,この実験結果は本件訂正発明1の効果を減殺するものではない。 エしたがって,本件訂正発明1の効果に係る本件審決の判断が誤りであるとは認められない。 (6) 以上によれば,本件訂正発明1は,引用発明1と同一であるとはい 1の効果を減殺するものではない。 エしたがって,本件訂正発明1の効果に係る本件審決の判断が誤りであるとは認められない。 (6) 以上によれば,本件訂正発明1は,引用発明1と同一であるとはいえないし,当業者は,引用発明1に基づき,本件訂正発明1を容易に発明することができたということもできない。 (7) 小括よって,取消事由3も理由がない。 4 取消事由4(本件訂正発明2の新規性及び進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3(1)のとおり,本件審決の引用発明1の認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 相違点3に係る判断の誤りについて本件訂正発明の請求項2は,請求項1の記載の「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」を引用しているから,相違点3は,相違点1と異なるものではない。 - 28 -そうすると,前記3(3)のとおり,本件審決の相違点3に係る判断が誤りであるとは認められない。 (3) 相違点4に係る判断の誤りについてア前記3(4)と同様に,本件明細書の発明の詳細な説明を参酌すると,本件訂正発明2の「固化」は,広く固まることを意味するのではなく,特別の硬化剤や結合材を使用せずに固まるという意味を有するものと認められる。 イまた,引用例1記載の能登珪藻土が,特別の硬化剤や結合材を混合することなしに固化するものと認められないことは,前記(1)のとおりである。 ウしたがって,相違点4に係る本件審決の判断が誤りであるとは認められない。 (4) 本件訂正発明2の効果に係る判断の誤りについてア本件明細書には,本件訂正発明2に係る調湿建材は,成型・乾燥・固化によって作製されたものであるが,焼成により作製した は認められない。 (4) 本件訂正発明2の効果に係る判断の誤りについてア本件明細書には,本件訂正発明2に係る調湿建材は,成型・乾燥・固化によって作製されたものであるが,焼成により作製した市販の調湿セラミックスを上回る強度と耐摩耗性を備え,また,焼成しないことにより,OPS粉体と配合する原料には多様なものが利用でき,再利用も容易である旨記載されている(【0028】)。 イ原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明2の天然鉱物は,技術的要件において同一のものであり,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材は機能及び効果において異ならないと主張するが,前記(2)及び(3)のとおり,本件訂正発明2の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土とが同一のものは認められないし,そうである以上,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材の機能及び効果も同一のものということはできないから,原告の主張は採用できない。 ウなお,原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明2の天然鉱物が同一のものであることを前提として,引用発明2の稚内層珪藻土はオパーリンシリカを豊富に有する天然鉱物であり,オパーリンシリカには優れた調湿機能があるから,引用例1記載のオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物に引用発明2の天然鉱物を混合させることを想到するのは容易であり,本件訂正発明2の- 29 -効果は当業者が容易に想起できる程度のものであるとも主張する。 しかしながら,前記(2)のとおり,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明2の天然鉱物とが同一のものであるとは認められないから,原告の主張は前提を欠くものである。また,引用例2には,「引用発明2の稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法には,不焼成を特徴とする材料として,石膏系,セメント系,樹 であるとは認められないから,原告の主張は前提を欠くものである。また,引用例2には,「引用発明2の稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法には,不焼成を特徴とする材料として,石膏系,セメント系,樹脂系などがあるが,例えば,石膏に稚内層珪藻土粉砕物を添加し,その調湿機能の発現を見た」と記載されているように,引用発明2は,固化材の使用を前提としたものであり,本件訂正発明2の効果は,引用発明1及び2に基づき,容易に想到することができたものともいえない。 エしたがって,本件訂正発明2の効果に係る本件審決の判断が誤りであるとはとは認められない。 (5) 以上によれば,本件訂正発明2は,引用発明1と同一であるとはいえないし,当業者は,引用発明1に基づき,あるいは,引用発明1及び2に基づき,本件訂正発明2を容易に発明することができたということもできない。 (6) 小括よって,取消事由4も理由がない。 5 取消事由5(本件訂正発明3の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1の認定の誤りについて前記3(1)のとおり,本件審決の引用発明1の認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 相違点6に係る判断の誤りについて本件訂正発明の請求項3は,請求項1の記載の「北海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層,17線川層のいずれかから産する天然鉱物」を引用しているから,相違点6は,相違点1と異なるものではない。 そうすると,前記3(3)のとおり,本件審決の相違点6に係る判断に誤りがあるとは認められない。 - 30 -(3) 相違点7に係る判断の誤りについてア引用例1記載の能登珪藻土が,セメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であることについては,前記(1)のとおり,本件審決の判断に誤りはない。 イまた 相違点7に係る判断の誤りについてア引用例1記載の能登珪藻土が,セメント系固化材との混合を必須とする天然鉱物であることについては,前記(1)のとおり,本件審決の判断に誤りはない。 イまた,引用例2において,「珪藻土を粉砕し水を加えて練土状にし,土練成形後に800℃で焼成し,タイル状にした」との記載があり,引用例3において,「焼成温度900℃,1時間保持の条件で焼成して板状調湿セラミックス建材を作製した」との記載があるように,引用例2及び3に記載された天然鉱物については,「600~900℃で低温焼成する」ことは,知られた手段であるとしても,引用発明2では,稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料が開示され(甲2),また,引用発明3では,天然無機鉱物を使用した調湿セラミック建材が開示されているのであり(甲3),いずれもオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を出発物質とするものではないから,引用発明2及び3には,引用例1記載の能登珪藻土を600ないし900℃で低温焼成することの動機付けが示されているということはできない。 ウしたがって,相違点7に係る本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。 (4) 本件訂正発明3の効果に係る判断の誤りについてア本件明細書には,本件訂正発明3に係る調湿建材は,市販の調湿セラミックスよりも強度が大きく,耐摩耗性は陶磁器質床タイルのJIS規格を満足すると記載されている(【0035】)。 イ原告は,引用例1記載の能登珪藻土と本件訂正発明3の天然鉱物は,技術的要件において同一のものであり,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材は機能及び効果において異ならないと主張するが,前記(2)及び(3)のとおり,本件訂正発明3の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土とが同一のものとは認められ あり,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材は機能及び効果において異ならないと主張するが,前記(2)及び(3)のとおり,本件訂正発明3の天然鉱物と引用例1記載の能登珪藻土とが同一のものとは認められないし,そうである以上,これらの天然鉱物を固化してなる調湿建材の機能及び効果も同一のものということはできないから,原告の主張は採用できない。 ウしたがって,本件訂正発明3の効果に係る本件審決の判断にも誤りがあると- 31 -は認められない。 (5) 以上によれば,当業者は,引用発明1ないし3に基づき,本件訂正発明3を容易に発明することができたということはできない。 (6) 小括よって,取消事由5も理由がない。 6 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官髙 部 眞規子 裁判官齋藤 巌
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