平成29(ワ)175 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月8日 函館地方裁判所
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判決文本文45,161 文字)

- 1 - 主文 1 被告八雲町は、原告Aに対し、1億9444万7629円及びこれに対する令和5年11月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Aのその余の請求及び原告Bの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用中、原告Aと被告八雲町との間に生じたものは、これを10分し、うち3を原告Aの、その余を被告八雲町の負担とし、原告Bと被告八雲町との間に生じたものはこれを原告Bの負担とし、原告らと被告Cとの間に生じたものはこれを原告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告Aの請求⑴ 主位的請求被告らは、原告Aに対し、連帯して2億7589万2668円及びこれに対する平成26年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 予備的請求1被告八雲町は、原告Aに対し、2億7589万2668円及びこれに対する平成29年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - ⑶ 予備的請求2被告らは、原告Aに対し、連帯して7060万4130円及びこれに対する平成26年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Bの請求被告らは、原告Bに対し、連帯して550万円及びこれに対する平成26年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、原告Aが、被告八雲町が運営する八雲総合病院(以下「被告病院」という。)の産婦人科で被告Cら医師から処方を受けていた経口避妊薬であるアンジュ28錠(以下「本件薬剤」という。) 案の概要 1 本件は、原告Aが、被告八雲町が運営する八雲総合病院(以下「被告病院」という。)の産婦人科で被告Cら医師から処方を受けていた経口避妊薬であるアンジュ28錠(以下「本件薬剤」という。)の服用により脳静脈洞血栓症(以下「本件血栓症」という。)を発症し、重度の身体障害等を負ったとして、以下の請求をする事案である。 ⑴ 原告Aの主位的請求及び予備的請求1原告Aは、主位的に、被告Cには原告Aに禁忌等に該当する事情があったのに本件薬剤を処方した、処方に当たり必要とされる血圧測定等を怠った、本件薬剤の処方に当たって必要とされる説明を怠った過失があり、これにより原告Aに本件血栓症が発症した旨主張し、被告Cに対しては不法行為に基づき、被告八雲町に対しては使用者責任に基づき、連帯して、損害賠償2億7589万2668円及びこれに対する不法行為日よりも後の日である平成26年1月16日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、予備的に、被告八雲町に対し、債務不履行に基づき、上記と同額の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年10月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ⑵ 原告Aの予備的請求2- 3 - 原告Aは、更に予備的に、仮に被告Cによる本件薬剤の処方行為と原告Aの本件血栓症発症との間に因果関係が認められないとしても、被告Cには、本件薬剤を投与する前に原告Aの血圧を測定しなかった過失があり、これにより、原告Aへの投与は本件薬剤が適正に使用された場合に当たらないとされ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)から副作用救済給付を受けられなかった旨主張し、被告 り、これにより、原告Aへの投与は本件薬剤が適正に使用された場合に当たらないとされ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)から副作用救済給付を受けられなかった旨主張し、被告らに対し、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償7060万4130円及びこれに対する不法行為日より後の日の平成26年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ⑶ 原告Bの請求原告Bは、原告Aに対する被告Cの前記⑴の不法行為によって自身も精神的苦痛を被った旨主張し、被告Cに対しては不法行為に基づき、被告八雲町に対しては使用者責任に基づき、損害賠償550万円及びこれに対する不法行為日より後の日である平成26年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告ら原告A(昭和▲▲年▲月▲日生まれ)は、原告Bの妻であり、過多月経等の治療のため、被告病院を受診していた者である(甲C1)。 原告Bは、原告Aの夫である。 イ被告ら被告八雲町は、総合病院である被告病院の運営主体である。 被告Cは、少なくとも平成18年から平成26年までの間、被告病院の産婦人科の勤務医であった者である。 - 4 - ⑵ 原告Aに対する本件薬剤の処方等原告Aは、平成18年12月25日、過多月経等を主訴として被告病院を受診し、被告Cら被告病院の医師は、平成19年3月5日から平成25年11月20日までの間、合計34回にわたり、原告Aに対し、子宮筋腫又は子宮腺筋症の治療のため、本件薬剤を処方した(その詳細は後記認定事実⑴のとおりである。)。 ⑶ 原告Aの本件血栓症等の 5年11月20日までの間、合計34回にわたり、原告Aに対し、子宮筋腫又は子宮腺筋症の治療のため、本件薬剤を処方した(その詳細は後記認定事実⑴のとおりである。)。 ⑶ 原告Aの本件血栓症等の発症原告Aは、平成26年1月16日、発声のためにうまく口を動かすことができず、左手の麻痺が出現する等したため、被告病院を受診し、そのまま被告病院に入院した。原告Aは同月17日から意識障害が進行し、静脈血栓症の疑いが生じたため、函館脳神経外科病院に転院した。その後、原告Aは、本件血栓症と診断された。 なお、静脈血栓は、静脈などの血流が遅い、あるいはうっ滞しやすい血管内において、血流のうっ滞により凝固活性化(トロンビンの濃度が上昇)することにより形成されるものである。静脈血栓は血管壁とのつながりが弱いため、形成部位から遊離して塞栓となり、他部位の血管を閉塞することもある(甲B9)。 ⑷ 原告Aに対する身体障害者手帳の交付等原告Aは、本件血栓症により、右半身麻痺による右上下肢機能全廃、失語症を患い、平成26年6月10日、脳出血による右上肢機能全廃(2級)及び脳出血による右下肢機能全廃(3級)の障害により、身体障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けた(甲A5、6、甲C1)。 ⑸ PMDAによる医療費及び医療手当等の不支給決定等ア原告Aは、平成27年1月19日、PMDAに対し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法16条1項1号(平成25年法律第84号改正前のもの。以下同じ。)に基づく副作用救済給付としての医療費及び医療手当- 5 - の支給を請求した。PMDAは、同年9月9日、前記医療費等を不支給とする決定をした。(甲A1)イ原告Aは、平成27年11月7日、厚生労働大臣に対し、前記不支給決定について審査 - 5 - の支給を請求した。PMDAは、同年9月9日、前記医療費等を不支給とする決定をした。(甲A1)イ原告Aは、平成27年11月7日、厚生労働大臣に対し、前記不支給決定について審査請求を申し立てたが、厚生労働大臣は、平成28年12月13日、上記審査請求を棄却する裁決をした。(甲A2)ウ原告Aは、平成29年10月12日、PMDAに対し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法16条1項2号に基づく副作用救済給付としての障害年金の支給を請求したが、平成30年5月11日、PMDAは障害年金を不支給とする旨決定した(甲C15)。 エ原告Aは、平成29年6月13日、前記アの決定の取消訴訟を札幌地方裁判所に提起し、平成30年11月11日には同裁判所に前記ウの決定の取消訴訟も提起したが、令和元年6月6日、いずれの請求も棄却する旨の判決がされ、同判決は確定した(甲C16、C17)。 3 争点及び争点に対する当事者の主張の要旨原告らは、本件血栓症の発症につき、本件薬剤の処方が継続されたことによるものであり、処方をした被告Cら被告病院の医師らには、本件薬剤の添付文書等で禁忌とされた原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反、原告Aの検査・経過観察をせずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反、原告Aに血栓症のリスクを説明しなかった注意義務違反があり、かつ、被告Cの処方行為と本件血栓症発症との間に事実的因果関係が認められなくとも被告Cは不法行為責任を負い、ひいては被告病院は使用者責任を負う旨主張する。これに対し、被告らは、本件血栓症の発症の原因は本件薬剤の処方によるものではなく、被告病院の医師らにはいずれの注意義務違反もなく、仮に同義務違反があっても本件血栓症の発症とは法的因果関係がない旨主張する。以上の当事者の主張等によれば、本件 因は本件薬剤の処方によるものではなく、被告病院の医師らにはいずれの注意義務違反もなく、仮に同義務違反があっても本件血栓症の発症とは法的因果関係がない旨主張する。以上の当事者の主張等によれば、本件の争点は次のとおりであり、争点に対する当事者の主張の要旨は別紙2のとおりである。 - 6 - ⑴ 本件薬剤の処方と本件血栓症の発症との事実的因果関係の有無本件薬剤の処方と本件血栓症発症との間に事実的因果関係があるか否か(争点1)より具体的には、①そもそも本件薬剤が本件血栓症の原因になったか否か、②仮に①が肯定されるとして、個別具体的な処方行為と本件血栓症との間の事実的因果関係の有無・要否の2点である。 ⑵ 添付文書等違反の有無本件血栓症と事実的因果関係が認められる処方行為につき、添付文書等に違反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反があるか(争点2)⑶ 検査・経過観察義務違反の有無本件血栓症と事実的因果関係が認められる処方行為につき、原告Aの検査・経過観察をせずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反があるか(争点3)⑷ 被告Cの不法行為責任の有無被告Cの処方行為と本件血栓症発症との間に事実的因果関係が認められないが、被告C以外の医師の処方行為との間には事実的因果関係が認められる場合、被告Cは不法行為責任を負うか否か(争点4)⑸ 説明義務違反の有無原告Aに血栓症のリスクを説明しなかった注意義務違反があるか(争点5)⑹ 検査・経過観察義務違反と本件血栓症発症の法的因果関係の有無(争点6)⑺ 説明義務違反と本件血栓症発症の法的因果関係の有無(争点7)⑻ 原告Aの被った損害額(争点8)⑼ 原告Aの予備的請求2の当否PMDAから副作用救済給付を受けられなかったことの不法行為に基づく損害賠償請求 本件血栓症発症の法的因果関係の有無(争点7)⑻ 原告Aの被った損害額(争点8)⑼ 原告Aの予備的請求2の当否PMDAから副作用救済給付を受けられなかったことの不法行為に基づく損害賠償請求権の成否等(争点9)第3 当裁判所の判断- 7 - 当裁判所は、本件血栓症は被告病院の医師から最後に処方された本件薬剤を服用したことによって発症したものと認められるところ(争点1)、この時点で被告病院には添付文書等に違反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反は認められない(争点2)一方、原告Aの検査・経過観察をせずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反が認められ(争点3)、同義務違反と本件血栓症の発症との間には法的因果関係が認められるものの(争点6)、本件薬剤を最後に処方したのは被告Cではなく、他の医師による処方行為の責任を被告Cが負うことはないため(争点4)、被告Cの不法行為責任及び被告八雲町の使用者責任は認められず、被告八雲町の原告Aに対する債務不履行責任のみが認められるから、原告Aの請求は、被告八雲町に対して原告Aが被った損害1億9444万7629円(争点8)の賠償及びその遅延損害金の支払請求の限度で理由があり、原告Bの請求は理由がない旨判断する。その理由の詳細は、次のとおりである。 1 認定事実前記前提事実に証拠(各掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認めることができる。 ⑴ 原告Aに対する本件薬剤の処方等の詳細原告Aに対する本件薬剤の処方、血圧等の検査結果及び担当医師については別紙3のとおりである。なお、被告Cの他に、D医師、E医師、F医師、G医師、H医師及びI医師が、原告Aに本件薬剤を処方している(甲A14の5、甲A21の1及び2、乙A1、乙A2、被告C本人、弁論の全趣旨)。 ⑵ である。なお、被告Cの他に、D医師、E医師、F医師、G医師、H医師及びI医師が、原告Aに本件薬剤を処方している(甲A14の5、甲A21の1及び2、乙A1、乙A2、被告C本人、弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件薬剤の添付文書の記載原告A服用時の本件薬剤の添付文書には、次の内容の記載がある(甲B25)。 ア禁忌(次の患者又は女性には投与しないこと)・高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)- 8 - 血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、症状が増悪することがある。 イ使用上の注意 慎重投与a 40歳以上の女性一般に心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなる年代であるため、これを助長するおそれがある。 b 肥満の女性血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。 c 軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)のある患者「禁忌」の項参照 重要な基本的注意a 本剤の服用により、血栓症があらわれることがあるので、次のような症状・状態があらわれた場合は投与を中止すること、また、本剤服用者に対しては、次のような症状・状態が認められた場合には直ちに医師等に相談するよう、あらかじめ説明すること。 ・血栓症の初期症状下肢の疼痛・浮腫、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、急性視力障害等・血栓症のリスクが高まる状態体を動かせない状態、顕著な血圧上昇がみられた場合等b 本剤の投与にあたっては服用者の病歴調査及び検診が必要である。 この検診には、血圧測定、乳房、腹部の検査及び臨床検査が含まれる。 また、投与中は6か月毎の検診を行うこと。 ウ副作用血栓症(四肢、肺、心筋、脳、網膜等)があらわれることがあるので、- 9 - 圧測定、乳房、腹部の検査及び臨床検査が含まれる。 また、投与中は6か月毎の検診を行うこと。 ウ副作用血栓症(四肢、肺、心筋、脳、網膜等)があらわれることがあるので、- 9 - 観察を十分に行い、下肢の疼痛・浮腫、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、急性視力障害等の初期症状があらわれた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。 ⑶ 本件薬剤のインタビューフォームの記載本件薬剤の製造販売会社が作成したインタビューフォームには、高血圧等の危険因子の存在下では血栓症等の心血管系の疾患への罹患及び死亡リスクは有意に高くなるとされていること、WHOの疫学調査によれば静脈血栓症のリスクは高血圧の既往により上昇すること、高血圧は、各種循環器系疾患を引き起こす原因の1つであり、中等度以上の高血圧の患者への投与は避け、軽度の高血圧患者に投与する場合には定期的に血圧を測定する等の観察が必要であること等の記載がある(甲B7〔27頁〕)。 ⑷ WHOが定める低用量経口避妊薬の使用に関する医学的適用基準等日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」の記載日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」(以下「平成17年ガイドライン」という。)において引用されるWHOの低用量経口避妊薬(以下「OC」という。)使用に関する医学適用基準(第3版、2004年)には、以下の記載がある(甲B23〔19、20頁〕)。 ア OCが処方できる場合 分類1-使用制限なし(省略) 分類2-リスクを上回る利益年齢 40歳以上肥満 30を超えるBMIイ OCが処方できない場合- 10 - 分類3-利益を上回るリスク(臨床診 (省略) 分類2-リスクを上回る利益年齢 40歳以上肥満 30を超えるBMIイ OCが処方できない場合- 10 - 分類3-利益を上回るリスク(臨床診断が十分でない場合は使用不可、臨床診断ができている場合でも、他に適当な方法がない場合を除き通常は使用を推奨できない。)高血圧収縮期血圧140〜159mmHg及び拡張期血圧90〜99mmHg 分類4―容認できない健康上のリスク(使用してはいけない)高血圧収縮期血圧160mmHg、拡張期血圧100mmHg以上⑸ 本件血栓症についての医学的記載ア本件薬剤の製造販売会社は、医薬品副作用症例報告書において、本件血栓症発症と本件薬剤の服用との関連性を否定できない旨報告している(甲A22、23)。 イ函館脳神経外科病院の医師が作成した「病状説明」と題する書面には「閉塞した原因は、ピルの内服が考えられますが、入院にて検査を行います」との記載があり(甲A19)、副作用救済給付用の医療費・医療手当診断書には、副作用として本件血栓症を招来した医薬品を本件薬剤とした上、同診断の理由として「一般的にピルの副作用で血栓塞栓症を起こしやすいことは分かっており、その他の明確な要因がないため」と記載されている(甲A24)。また、被告病院の脳神経外科医が作成した医療費・医療手当診断書にも同旨の記載がある(甲A9)。 ウ PMDAは、調査の結果、本件血栓症は本件薬剤によって発現したものと推定されるところ、一般論として、本件薬剤を子宮腺筋症による過多月経等の治療目的で用いることは不適正といえないが、平成21年以降、本件血栓症等を発症するまでの約5年間にわたり臨床検査や血圧測定を実施せず、原告Aの高血圧を把握しないまま本件薬剤の投与を行 る過多月経等の治療目的で用いることは不適正といえないが、平成21年以降、本件血栓症等を発症するまでの約5年間にわたり臨床検査や血圧測定を実施せず、原告Aの高血圧を把握しないまま本件薬剤の投与を行ったことは、「どちらかといえば適正な使用とは推定されない」と結論付けている(甲A17)。 - 11 - また、PMDAは、原告Aの医療費等を不支給とする決定をした理由として、平成19年3月に本件薬剤の使用が開始されているところ、原告Aが44歳であった平成21年の健康診断の結果、体重97kg、血圧199/105であったから、当該使用は禁忌に該当する、処方医が高血圧を把握せずに本件薬剤を処方し、平成26年1月17日に本件血栓症を発症するまで血圧測定及び臨床検査を実施しなかったから、医薬品の適正な使用ではないとしている(甲A1)。 2 争点1(本件薬剤の処方と本件血栓症の発症との事実的因果関係の有無)について⑴ 本件薬剤が本件血栓症の原因になったか否かア本件薬剤等の経口避妊薬の服用には血栓症発症のリスクがあるところ(甲B4、5、11、17、19、21及び22)、本件薬剤の添付文書は、血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるなどとして、高血圧(軽度のものを除く。)のある患者に対する投与を「禁忌」とし、40歳以上の女性又は肥満の女性に対する投与を「慎重投与」としている(認定事実⑷ア、イ)。そうすると、平成17年ガイドラインが、血圧が収縮期160以上及び拡張期100以上の患者への投与は「容認できない健康上のリスク」があり、収縮期140~159及び拡張期90~99の患者への投与は「利益を上回るリスク」があるため、「OC処方ができない場合」としているのも、血栓症等の発症リスクを避ける趣旨と解される(認定事実⑷)。 また、本件 0~159及び拡張期90~99の患者への投与は「利益を上回るリスク」があるため、「OC処方ができない場合」としているのも、血栓症等の発症リスクを避ける趣旨と解される(認定事実⑷)。 また、本件薬剤等の低用量ピルには血液凝固能を亢進させる効果があり、これを継続的に服用することで、その効果が蓄積する(甲B26〔11頁〕、29〔15頁〕、33〔10頁〕)。 他方、原告Aの本件血栓症の発症の素因を見るに、初回処方時の原告Aには、年齢、血圧及び体重のいずれの点においても本件薬剤服用による血- 12 - 栓症発症の危険性があり、添付文書上その投与が禁じられるか、少なくとも慎重な投与が求められる程度には血栓症発症の危険は存在したものの(原告Aは、初回処方時の平成19年3月5日、当時42歳であり、その約2か月半前である平成18年12月25日時点の血圧は収縮期168、拡張期98、体重は110kg、初回処方から約2週間後の平成19年3月30日時点の血圧は収縮期140、拡張期87で、体重は110kgであった〔認定事実⑴〕。)、平成19年3月5日時点の血液の凝固検査ではほとんどの項目が正常値に収まっており(乙A1〔11頁〕)、現に初回処方時から6年以上経過した平成26年1月16日に至るまで本件血栓症を発症していないこと等からすると、本件血栓症の発症が原告Aの素因が顕在化したものとは認められない。 このように、本件薬剤の服用には血栓症発症のリスクがあること、本件薬剤にはその継続的な服用によりその効果が蓄積すること、本件血栓症の発症が原告Aの素因が顕在化したものとは認められないことに加え、本件薬剤の製造販売会社が本件血栓症発症と本件薬剤の服用との関連性を否定できない旨報告していること、函館脳神経外科病院の医師が本件血栓症発症の原因として経口避妊薬 たものとは認められないことに加え、本件薬剤の製造販売会社が本件血栓症発症と本件薬剤の服用との関連性を否定できない旨報告していること、函館脳神経外科病院の医師が本件血栓症発症の原因として経口避妊薬が考えられ、他に具体的な血栓症発症の原因となる要因が見受けられないとしていること、本件薬剤の製造販売業者がPMDAの調査に対して原告Aの本件血栓症発症と本件薬剤の服用との関連性を否定できないとしていること(認定事実⑸)等からすると、本件血栓症の発症は本件薬剤が原因となっていると認められる。 イこの点につき、被告らは、①本件薬剤投与による血液凝固能が服用後一時的に亢進したとしても、休薬期間中に正常に復するため、これを継続的に投与しても、血栓症発症のリスクが高まることはないし、現に原告が本件血栓症を発症した平成26年1月17日の凝固素因に関する検査結果は全て正常であった、②経口避妊薬投与による静脈血栓症の発症時期は、服- 13 - 用開始後1年以内が大半であり、5年以降の発症例は稀であることから、長期服用者は血栓症を発症しにくくなる、③本件血栓症発症の原因は、鉄欠乏性貧血、肥満によって生じることがある静脈血うっ滞等の可能性も否定できないなどと主張する。 しかし、①については、休薬期間に正常値に復することの根拠とする血液凝固能を示すAPC-srは完全に初期値に戻っているわけではない(乙B4〔11頁〕、乙B17〔7頁、8頁〕)から、休薬期間中に正常値に復するとは認められないし、仮に、被告の主張するとおり、血液凝固能が休薬期間に正常値に復するとしても、服用後一定期間は血液凝固能が高まるから、原告Aは、本件薬剤を服用する度に血栓を生じやすくなる期間を迎えていることになり、長期間継続的に本件薬剤を服用すれば、いずれ血栓症を発症すること るとしても、服用後一定期間は血液凝固能が高まるから、原告Aは、本件薬剤を服用する度に血栓を生じやすくなる期間を迎えていることになり、長期間継続的に本件薬剤を服用すれば、いずれ血栓症を発症することとなるのは何ら不自然なことではない。また、平成26年1月17日の凝固素因に関する検査結果が正常であった(甲B26〔20頁〕)としても、同検査結果は原告Aが本件血栓症を発症後、入院時に測定されたものであり、その間の検査結果に影響を及ぼす医療行為の有無・程度は明らかでないから、同検査結果をもって、原告Aの血液凝固能の亢進がなかったとは認められない。また、②については、本件薬剤の長期服用者が血液凝固能の亢進作用の影響を受けにくくなることの医学・薬学的裏付けは十分とはいえず(被告らの主張に沿うJ医師の意見書〔乙B4、17〕も存するが、同意見書も統計学上根拠を示しているにとどまり、かつ、原告らの主張に沿うK医師の意見書において症例群の非服用者を非服用者群における静脈血栓症の発症者と誤認している旨の疑義を呈されていることからして〔甲B26、29、33〕、十分な医学的・薬学的裏付けとはいえない。)、この点を措くとしても、単に5年以上経口避妊薬を服用し続けた女性の血栓症発症が稀であるからといって、原告Aの本件血栓症の発症と本件薬剤の服用との間の因果関係を直ちに否定する- 14 - ことはできない(殊に、原告Aにおいては、その投薬期間中、添付文書上の「禁忌」の状態や平成17年ガイドライン上の「容認できない健康上のリスク」又は「利益を上回るリスク」に該当しない状態のときもあり〔例えば、平成23年6月9日時の原告Aの体重は58kg、血圧は124/76であり、平成25年5月30日時点で体重60kg、血圧125/86であった。〕、血栓症発症のリスクの程度は一 態のときもあり〔例えば、平成23年6月9日時の原告Aの体重は58kg、血圧は124/76であり、平成25年5月30日時点で体重60kg、血圧125/86であった。〕、血栓症発症のリスクの程度は一様でなかったと考えられるから、本件薬剤の服用期間が長期にわたることをもって、本件薬剤の服用と本件血栓症発症との因果関係を否定することは困難である。)。そして、③については、被告らが指摘する血栓症の要因はいずれも抽象的な可能性に過ぎないから、上記認定を左右するものではない。 したがって、被告らの主張は採用できない。 ⑵ 個別具体的な処方行為と本件血栓症との間の事実的因果関係の有無・要否ア原告らは、原告Aの本件血栓症の発症につき、全ての医師による全ての処方行為との間に事実的因果関係があるし、原告Aに対する本件薬剤の処方行為のうち一部の処方行為が発症原因であったという程度の事実が認められる限り、被告らの注意義務違反が肯定されるべきであるから、個別具体的な処方行為との間に事実的因果関係があるのかについて厳密に特定する必要はない旨主張する。 イ確かに、本件薬剤の血液凝固能は、各処方行為によって徐々に高まっていくものと考えられるものの(上記⑴ア)、原告Aは平成26年1月16日に至るまで血栓症を発症していないことからすると、本件血栓症発症前最後の処方である平成25年11月20日に処方された本件薬剤の服用によって原告Aの血液凝固能が更に高まり、血栓が生成された結果、本件血栓症を発症したと認められる一方、同服用がなくとも本件血栓症が発症していたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件血栓症の発症と事実的因果関係を有すると認められるのは、本件薬剤の最後の処方に限られ- 15 - る。 なお、原告らが引用する平成9年最判は ていたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件血栓症の発症と事実的因果関係を有すると認められるのは、本件薬剤の最後の処方に限られ- 15 - る。 なお、原告らが引用する平成9年最判は、顆粒球減少症の起因剤が複数患者に投与されていた事案において、どの起因剤の投与が顆粒球減少症を発症させたのかについての鑑定結果に基づく事実認定に経験則違反があると判断したものであり、いずれかの処方行為が過失であるとの認定で足りるとか、結果を発生させた具体的な処方行為の特定ができなければそれを前提として判断すれば足りるなどと判断したものではないから、原告らの主張の根拠となるものではない。 ウ以上のとおり、原告Aの本件血栓症との間に事実的因果関係が認められるのは、平成25年11月20日の本件血栓症の発症前最後の処方(I医師によるもの。以下「本件処方」という。)に限られる。 3 争点2(添付文書等違反の有無)について⑴ 医薬品の添付文書の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文章に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである(最高裁平成8年1月23日・民集50巻1号1頁)。 また、本件薬剤の添付文書には、「禁忌」として「高血圧のある患者」とあり、「慎重投与」として、「40歳以上の女性」、「肥満の女性」、「軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)のある患者」との記載があり、平成17年ガイドラ は、「禁忌」として「高血圧のある患者」とあり、「慎重投与」として、「40歳以上の女性」、「肥満の女性」、「軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)のある患者」との記載があり、平成17年ガイドラインには、「分類2-リスクを上回る利益」として「年齢―40歳以上」、「肥満―30を超えるBMI」、「分類3-利益を上回るリスク」として「収縮期血圧140〜159及び拡張期血圧90〜99」、- 16 - 「分類4―容認できない健康上のリスク(使用してはいけない)」として「収縮期血圧160以上、拡張期血圧100以上」との記載があることからすると、添付文書上の「高血圧」は平成17年ガイドラインを参照して判断すべきであると解する。 ⑵ 本件において、本件処方時の原告Aは49歳であるから、添付文書上の「40歳以上の女性」に該当する。また、体重や血圧の詳細は不明であるが、このうち体重に関しては、平成25年5月30日時点で60kg、平成26年1月16日時点では67kgであり、平成25年5月30日から平成26年1月16日までの間に大きな体重の増減があったことを認めるに足りる証拠はないから、本件処方時の原告Aの体重は67kg前後であったと認められる。そうすると、原告Aの身長が約160cm(甲A14の1)であることから、原告AのBMIは67kg÷(1.6m)²≒26.2であり、平成17年ガイドラインにおける「肥満―30を超えるBMI」には該当しない。 したがって、原告Aは、添付文書上は「慎重投与」の対象であり、平成17年ガイドラインによれば、「分類2-リスクを上回る利益」に当てはまるに過ぎないから、本件処方については添付文書に違反してされたものとは認められない。 そして、原告Aに対する本件薬剤の投与は、一般的にはリスクを上回る利益があるとされ、処方 上回る利益」に当てはまるに過ぎないから、本件処方については添付文書に違反してされたものとは認められない。 そして、原告Aに対する本件薬剤の投与は、一般的にはリスクを上回る利益があるとされ、処方の目的は、子宮腺筋症を原因とする月経過多による貧血や動悸、全身倦怠感に対する治療であるところ(原告らは、原告Aには子宮腺筋症はなかった旨の主張もするが、かかる主張の根拠は長期にわたる被告病院での治療等が行われた後、別の病院で行われた診療結果〔甲A25〕であって、平成18年12月25日当時、原告Aが子宮腺筋症である旨診断した被告Cの専門的知見に基づく判断〔乙A1〕が誤りであったと認めるに足りるものではない。)、これらの症状は、治療をしなければ直ちに生命を脅かすものとまでは認められないものの、治療目的で処方すること自体が否- 17 - 定されるものではないから、原告Aに対して本件薬剤を処方したことそれ自体に過失は認められない。 ⑶ この点につき、原告らは、①本件薬剤の処方によって血栓症が発症した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、原告Aが個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、原告Aは禁忌者に該当していたと推定され(最高裁平成3年4月19日・民集45巻4号367頁)、かかる推定を覆す事情はない、②薬物治療の必要性を前提としても、子宮腺筋症又は子宮筋腫に対してはノアルテンやディナゲスト(ジエノゲスト)といった副作用の少ない代替薬剤の使用が可能であり、本件薬剤を処方する必要はなかった旨主張する。 しかし、①について、原告らが引用する判例は本件と事案を異にするものであり、原告らの主張はその前提を欠く。また、②については、 用が可能であり、本件薬剤を処方する必要はなかった旨主張する。 しかし、①について、原告らが引用する判例は本件と事案を異にするものであり、原告らの主張はその前提を欠く。また、②については、本件処方時にI医師が把握し得た原告Aに関する情報は、本件処方以前に被告病院において把握できた情報に限られることや、原告ら指摘のジエノゲストは本件処方時には販売されていないものもある(甲B38)ほか、その他の薬剤の場合に治療の観点から効果があるのか否かは証拠上明らかではないこと等からすると、本件薬剤を処方する必要性は否定されない。したがって、原告らの主張は採用できない。 4 争点3(検査・経過観察義務違反の有無)について⑴ 本件薬剤の「使用上の注意」として、投与中は6か月毎の検診が必要であり、検診の内容としては血圧測定等が含まれるところ、被告病院において本件処方の6か月前には血圧測定等は行われていない(認定事実⑴)。ここで「使用上の注意」において血圧測定等が要求されているのは、血栓症等の発症のリスクを把握するためであると考えられるから、I医師には、添付文書上要求される血圧測定等を行わずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反- 18 - が推定される(前記最高裁平成8年1月23日判決)。そして、原告Aには、初回の投与から6年以上、血栓症の発症等がなかったものの、「40歳以上の女性」を「慎重投与」とする添付文書上の記載からすれば、加齢によって血栓症のリスクが上昇することは看取可能であり、少なくとも添付文書記載の6か月の検診を行って原告Aの状況を把握しなければ、本件薬剤の処方に当たって適切な判断をすることは困難であるといえるから、初回の投与から6年以上血栓症の発症等がなかったことは、前記推定を覆す事情足り得ない。 そのほか、全証拠を総合し 把握しなければ、本件薬剤の処方に当たって適切な判断をすることは困難であるといえるから、初回の投与から6年以上血栓症の発症等がなかったことは、前記推定を覆す事情足り得ない。 そのほか、全証拠を総合しても、前記推定を覆す事情はないから、本件処方には、添付文書上要求される血圧測定等を行わずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反が認められる。 ⑵ この点につき、被告らは、薬剤の副作用は、投与開始時又は投与開始から間がない時点が最も警戒すべきものであり、本件薬剤を投与するたびに血圧を測定すべきことは添付文書自体が求めていない、平成17年ガイドラインの「経過観察中に服用を中止すべき症状や他覚所見」に本件血栓症の記載はなく、本件薬剤の投与によって本件血栓症の発症は予見できない、被告Cを含む全ての医師が原告Aへの問診で問題がないことを確認しているから、本件処方には注意義務違反がない旨主張する。 しかし、上記⑴の説示に照らし、添付文書自体が本件薬剤を投与するたびに血圧を測定すべきことを求めていないこと、被告Cを含む全ての医師が問診で問題がないことを確認していることは、上記注意義務違反の存在を否定するものでない。また、平成17年ガイドラインの「経過観察中に服用を中止すべき症状や他覚所見」に本件血栓症の記載がなくても、血栓症のリスクがあることは添付文書から明らかであるし、静脈血栓は血管壁とのつながりが弱いため、形成部位から遊離して塞栓となり、他部位の血管を閉塞することもあること(前提事実⑶)からすると、体内の血管のどこで血栓が生じ、どの血管を塞ぐこととなるのかを厳密に予見できなければ注意義務が否定さ- 19 - れるものではないから、本件薬剤の投与によって本件血栓症の発症が予見できないとは認められない。被告らの主張はいずれも採用できない。 なるのかを厳密に予見できなければ注意義務が否定さ- 19 - れるものではないから、本件薬剤の投与によって本件血栓症の発症が予見できないとは認められない。被告らの主張はいずれも採用できない。 5 争点4(被告Cの処方行為と本件血栓症発症との間に事実的因果関係が認められない場合でも被告Cは不法行為責任を負うか否か)について原告らは、被告病院における被告C以外の医師は、被告Cによる本件薬剤を処方する旨の方針を踏まえて、原告Aに対して本件薬剤を処方しているから、被告Cと他の医師は「共同」して本件薬剤の処方を行っているといえ、被告C以外の医師による処方についても民法719条1項前段、どの処方行為によって本件血栓症を発症したのかが不明な場合は同項後段、どの処方行為によって本件血栓症を発症したのかが不明、かつ、各処方行為がそれ単体では本件血栓症を惹起し得るとまでは認められない場合は同項後段の類推適用により、被告Cは他の医師の処方についても不法行為責任を負う旨主張する。 しかし、被告病院において、原告Aに対し、チーム医療のように各医師が連携して治療に当たっていたと認めるに足りる証拠はなく、医療行為の性質上、各医師は、先に治療を開始した医師が立てた治療方針を参照しつつも、自身の診察時には、そのときの患者の状態等を踏まえてそれぞれの専門的な判断で患者に対する治療を選択しているものといえる。そうすると、被告Cが原告Aに対して本件薬剤を処方する治療を行い、その後、他の医師も被告Cと同様に、原告Aに対して本件薬剤を処方しているとしても、被告Cと他の医師が「共同」して本件薬剤の処方を行ったとは認められない。また、平成25年11月20日の本件処方と本件血栓症との間に事実的因果関係が認められることは前記認定説示のとおりであるから、「共同行為者のうちいず 共同」して本件薬剤の処方を行ったとは認められない。また、平成25年11月20日の本件処方と本件血栓症との間に事実的因果関係が認められることは前記認定説示のとおりであるから、「共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないとき」(同項後段)には該当しないし、同項後段の類推適用もその前提を欠く。 したがって、原告らの主張は採用できない。 6 争点6(検査・経過観察義務違反と本件血栓症発症の法的因果関係の有無)- 20 - について上記4のとおり、本件処方には、添付文書上要求される血圧測定等を行わずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反が認められる。そして、本件処方時の原告Aの血圧等は判然としないものの、本件血栓症を発症した平成26年1月16日の救急搬送時の原告Aの血圧が140/84であり、平成17年ガイドライン上「利益を上回るリスク」に近い状態であったことからすれば、本件処方時に添付文書上要求される血圧測定等を行っていれば、その測定値等に基づき、本件処方が回避された蓋然性が認められるから、同注意義務違反と本件血栓症の発症との間には法的因果関係が認められる。 なお、被告らは、原告Aに本件薬剤を投与する際に血圧等を検査していたとしても、被告病院の医師らが本件薬剤の投与を中止していたとは考えられない旨主張するが、被告らの主張は、本件薬剤の添付文書がその副作用の発症を防ぐために血圧測定等を要求していることと相反するものであって、採用できない。 7 小括以上より、被告Cの不法行為責任は認められないから、原告らの被告Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求、被告八雲町に対する使用者責任に基づく損害賠償請求はいずれも理由がない。他方で、本件処方は、原告Aと被告八雲町との間の診療契約に基づいて行われた 原告らの被告Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求、被告八雲町に対する使用者責任に基づく損害賠償請求はいずれも理由がない。他方で、本件処方は、原告Aと被告八雲町との間の診療契約に基づいて行われたものであるから、説明義務違反の有無等(争点5、7)について判断するまでもなく、被告八雲町には債務不履行に基づく損害賠償責任が認められる。 8 争点8(損害の発生及び金額)について上記のとおり、原告Bの被告らに対する損害賠償請求には理由がないから、原告Aの損害のみを検討する。 ⑴ 治療費 81万7013円原告Aの治療費の額は当事者間に争いがなく、本件債務不履行による損害- 21 - と認められる。 ⑵ 介護用椅子購入費用 7万3656円証拠(甲C21)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、介護用椅子の購入費用として7万3656円を支出したことが認められ、これは本件債務不履行による損害と認められる。 ⑶ 入通院付添費小計2万9700円ア入院付添費 0円原告Aは、原告Bが原告Aの入院中、衣服の交換や、失語症を発症した原告Aと医療機関との間の意思疎通の補助、原告Aの車椅子移動等の付添看護を1週間に2回、合計55日間行ったところ、原告Aには頼れる親族が原告Bの他におらず、前記付添看護の内容は、原告A一人では行えないものであって、付添看護の必要性があるから、1日当たり1万円、合計55万円の損害が発生した旨主張する。 しかし、原告Bが原告Aの入院先を訪れた際に原告Aの看護を行うことがあったとしても、同看護が医師の指示によるものであるなど、入院付添を必要とする特段の事情は認められないから(原告Aには頼れる親族が原告Bの他にいないといった事情は付添看護自体の必要性を基礎付ける事情にはならない。)、原 が医師の指示によるものであるなど、入院付添を必要とする特段の事情は認められないから(原告Aには頼れる親族が原告Bの他にいないといった事情は付添看護自体の必要性を基礎付ける事情にはならない。)、原告Aの主張は採用できない。 イ通院付添費 2万9700円原告Aの通院付添費の額は当事者間に争いがなく、本件債務不履行による損害と認められる。 ⑷ 将来介護費 7857万4409円ア原告Aは、将来の介護費用として1日当たり2万円の損害が生じる旨主張する。 そこで検討するに、原告Aの後遺障害の状態(前提事実⑷)からすると、原告Aには将来にわたり介護が必要と認められる。そして、その費用算定- 22 - に当たっては、原告Aの訪問介護による令和元年8月分の介護費用は1日当たり1万5634円であること(甲C11、12)、原告Bは、少なくとも口頭弁論終結時においては、休日に原告Aの介護を行うことができていること(原告B本人)、将来介護費に係る損害も本件血栓症発症時に観念されるものであるから公的扶助による給付を控除することは相当でないことからすると、平日(週5日)は職業介護人、休日・祝日(週2日)は近親者による介護が行われることを前提とするのが相当である。そうすると、原告Aの1日当たりの将来介護費は、職業介護人に依頼した場合は1日当たり1万5634円、近親者介護の場合は1日当たり8000円とし、これらの平均によって算出することが相当であるから、原告Aの損害は以下のとおり算出される。 (計算式、ただし、小数点以下は切り捨て。以下同じ。)(1万5634円×5日+8000円×2日)÷7日=1万3452円したがって、原告Aの介護費としての損害は1日当たり1万3452円を相当と認める。 この点 捨て。以下同じ。)(1万5634円×5日+8000円×2日)÷7日=1万3452円したがって、原告Aの介護費としての損害は1日当たり1万3452円を相当と認める。 この点につき、被告八雲町は、原告Aは日中一人で自宅におり、自立した生活を送っているため常時介護は不要である旨主張するが、原告Aにおいて、前記のとおりの後遺障害の状態にもかかわらず、介護の必要性が否定されるほど自立した生活を送っているとは認められないから、同主張は採用できない。 イ計算本件血栓症に係る症状固定日である平成27年9月15日(甲A6)、原告Aは51歳であり、症状固定時の女性の平均余命は33年、ライプニッツ係数は16.003であることからすれば、将来介護費は7857万4409円である。 (計算式)- 23 - 1万3452円×365日×16.003=7857万4409円⑸ 将来雑費 12万2608円証拠(甲C22)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、症状固定日の翌日である平成27年9月16日から、毎月、624円の尿取りパッドを使用し、同パッドは将来にわたり使用の必要があると認められる(なお、被告八雲町は、同尿取りパッドを1か月で費消することの相当性は不明である旨主張するが、その指摘は抽象的なものにとどまり、採用できない。)。 そして、原告Aは症状固定時51歳、当時の女性の平均余命は35年であり、ライプニッツ係数は16.374であるから、将来雑費として12万5134円を損害として認める。 (計算式)624円×12か月×16.374=12万2608円⑹ 通院交通費 0円原告Aは、平成27年9月15日の症状固定日まで被告病院に9日間通院し、その通院交通費は、ab間 (計算式)624円×12か月×16.374=12万2608円⑹ 通院交通費 0円原告Aは、平成27年9月15日の症状固定日まで被告病院に9日間通院し、その通院交通費は、ab間が約60km、ガソリン1L(135円)当たり7km走行可能であり、9日間通院したから、合計で1万0323円の通院交通費が生じた旨主張する。 しかし、原告Aが主張する通院の具体的な日や通院の必要は明らかでなく、本件債務不履行と相当因果関係のある損害とは認められない。 ⑺ 入院雑費 27万3000円原告Aの入院雑費の額は当事者間に争いがなく、本件債務不履行による損害と認められる。 ⑻ 休業損害 964万9709円ア基礎収入原告Aは、主婦として働く傍ら、パートタイムのアルバイトを行っていたため、基礎収入は、平成25年分給与収入(158万8958円)に平- 24 - 成26年度男女全学歴45歳~49歳の平均賃金(579万3000円)を加えた738万1958円が基礎収入となる旨主張する。 しかし、兼業主婦の基礎収入を算定にするに当たっては、就労による収入と前記平均賃金の高い方を採用するのが相当であるから、基礎収入は579万3000円を相当と認める。 イ休業期間原告Aが本件血栓症を発症してから症状固定日までの期間は608日である。 ウ計算原告Aの休業損害は以下のとおりである。 (計算式)579万3000円÷365日×608日=964万9709円⑼ 入通院による慰謝料 302万円原告Aの入通院による慰謝料の額は当事者間に争いがなく、本件債務不履行による損害と認められる。 ⑽ 後遺障害による逸失利益 6278万3375円ア労働能力喪失率 料 302万円原告Aの入通院による慰謝料の額は当事者間に争いがなく、本件債務不履行による損害と認められる。 ⑽ 後遺障害による逸失利益 6278万3375円ア労働能力喪失率 原告Aは、右片麻痺により右上肢下肢機能全廃の状態であり、失語症も発症しているところ(前提事実⑷)、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、持久力、及び社会行動能力のいずれも大きく損なわれており、重篤な高次脳機能障害が発生していると認められる(甲A7、甲C19)。以上の原告Aの後遺障害の内容からすると、原告Aの労働能力喪失率は100%であると認められる。 この点につき、被告八雲町は、平成26年7月時点の原告Aはコミュニケーション理解が良好で、単語・短文レベルでの意思疎通ができており、入浴以外はゆっくりとしているもののほぼ自立できていること、平- 25 - 成28年及び平成29年の訪問看護記録からすれば会話ができるようにまで改善しているから、原告Aの労働能力喪失率は100%ではない旨主張する。 しかし、そもそも被告八雲町が指摘する程度の事情で原告Aの労働能力がどの程度向上するかは判然としない。この点を措くとしても、原告Aは、少なくとも口頭弁論終結時において、失語症の進行により電話番等の仕事をすることが困難になっており(原告A本人、原告B本人)、平成26年から平成29年までの訪問看護記録では、原告Aは会話ができるようになるまで改善したような記載があり(乙A3の1ないし27)、原告Bの認識として、そのような場面があったとの認識は有しているものの、実際の原告Aの状態は、前記訪問看護記録に記載されたものとは異なる旨供述している(原告B本人)ことからすると、原告Aの失語症が改善していたとは認められない。これに あったとの認識は有しているものの、実際の原告Aの状態は、前記訪問看護記録に記載されたものとは異なる旨供述している(原告B本人)ことからすると、原告Aの失語症が改善していたとは認められない。これに加え、原告Aは、現在は移動が困難であり、車椅子に座ることの方が多く、入浴も週に1度しか行えないような状態であること(原告B本人)も踏まえれば、原告Aは完全に労働能力を喪失したと評価せざるを得ない。被告八雲町の主張は採用できない。 イ労働能力喪失期間症状固定時の原告Aの年齢は51歳であるから、労働能力喪失率は16年であり、ライプニッツ係数は10.8378である。 ウ計算原告Aの基礎収入が579万3000円であることは前記説示のとおりであるから、原告Aの後遺障害による逸失利益は6278万3375円である。 (計算式)579万3000円×1.0×10.8378=6278万3375円- 26 - ⑾ 後遺障害による慰謝料 2800万円原告Aの後遺障害の内容、その等級等、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、後遺障害慰謝料は2800万円を相当と認める。 ⑿ 損益相殺 △656万5841円原告Aは、平成27年8月以降、年額78万0100円の障害年金を受給していると認められるところ(甲C2)、平成27年8月から口頭弁論終結時までの8年5か月分の支給額は以下の計算のとおり656万5841円であるから、同額については、被告八雲町が賠償すべき原告Aの損害から控除されるべきである。 (計算式)78万0100円×(8年+5÷12)=656万5841円⒀ 弁護士費用 1767万円上記⑿による損益相殺後の原告Aの損害額は、前記⑴ないし⑾の合計である1億8334万3470円から 78万0100円×(8年+5÷12)=656万5841円⒀ 弁護士費用 1767万円上記⑿による損益相殺後の原告Aの損害額は、前記⑴ないし⑾の合計である1億8334万3470円から前記⑿656万5841円を控除した1億7677万7629円である。 そして、本件訴訟の難易度や同損害額等からすると、本件債務不履行と相当因果関係を有する弁護士費用は1767万円と認める。 ⒁ 小括以上より、原告Aの損害は、1億7677万7629円と弁護士費用1767万円の合計である1億9444万7629円である。 9 遅延損害金について原告Aは、被告八雲町に対する債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求1)の遅延損害金の起算日につき、訴状送達の翌日である平成29年10月29日と主張するが、債務不履行に基づく損害賠償請求権は履行の請求を受けた時から遅滞に陥るところ(民法412条3項)、原告Aが被告八雲町に対して債務不履行に基づく損害賠償請求を請求したのは、本訴訟提起後、訴えの追- 27 - 加的変更の申立てが被告八雲町に送達された令和5年11月17日であるから(当裁判所に顕著)、遅延損害金の起算日は、その翌日である同月18日である。 第4 結論以上より、原告Aの被告八雲町に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は、1億9444万7629円及びこれに対する令和5年11月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で理由があるから認容し(予備的請求1を認容したため、予備的請求2は判断を要しない。)、原告Aのその余の請求及び原告Bの請求はいずれも理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 函館地方裁判所民事部 裁判長裁判官五十 Aのその余の請求及び原告Bの請求はいずれも理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 函館地方裁判所民事部 裁判長裁判官五十嵐 浩 介 裁判官榎本太郎 裁判官廣岡将希 - 28 - - 29 - (別紙2)争点に対する当事者の主張第1 争点1(本件薬剤の投与と本件血栓症発症との事実的因果関係の有無)について 1 本件薬剤が本件血栓症の原因になったか否か(原告らの主張)⑴ 痘そう予防接種判決(最高裁平成3年4月19日・民集45巻4号367頁)及びB型肝炎判決(最高裁平成18年6月16日・民集60巻5号1997頁)の枠組みに沿って検討すれば、後記⑵において主張するとおり、原告Aには、本件薬剤の投与以外に本件血栓症の原因が見当たらないのであるから、本件薬剤の投与がその原因であると認められる。 ⑵ 本件薬剤の製造販売元が発行する添付文書には、禁忌(次の患者又は女性には投与しないこと)として高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く。)が記載されている。また、慎重投与(次の患者又は女性には慎重に投与すること)として40歳以上の女性、肥満の女性及び軽度の高血圧のある患者が記載されている。このように、高血圧、肥満、40歳以上の女性に対して本件薬剤を投与すると血栓症発症のリスクが増大するところ、平成19年3月5日の本件薬剤処方時、原告Aは、42歳の女性であり、平成18年12月25日(処方約3か月前)の血圧は収縮期168、拡張期98であり、これを含め平成26年1月16日までに行われた血圧測定21回のうちWHO医学適用基 時、原告Aは、42歳の女性であり、平成18年12月25日(処方約3か月前)の血圧は収縮期168、拡張期98であり、これを含め平成26年1月16日までに行われた血圧測定21回のうちWHO医学適用基準での絶対禁忌は7回、相対禁忌は5回の状態であったことに加え、平成18年12月25日(処方約3か月前)及び平成19年3月30日(処方約2週間後)の原告Aの体重は110kgであった。なお、発症時の血圧は、166/93であり、WHO医学適用基準では絶対禁忌であった。本件については、後記(認定事実⑷)の平成17年ガイドライン(甲B23)記載- 30 - の内容を当時の医療水準と考えるべきであり、血圧について禁忌に当たるか否かの判断は、当時のWHO医学適用基準(甲B23・19頁~20頁の表8)に依拠すべきである。 ⑶ 原告Aは上記のとおり禁忌又は慎重投与に該当する本件薬剤をC医師の処方により約7年間継続して服用してきたこと(なお、長期にわたり経口避妊薬を投与されると、APC-sr〔血液凝固能亢進状態の指標〕は高くなり、休薬期間を経ても正常値には戻らない。)、本件血栓症はそもそも非常にまれな疾患でありOC・LEPガイドラインによれば本件血栓症患者の96%は経口避妊薬使用者であることが判明していること(甲B2・64頁)、原告Aには凝固異常等の素因やリスク因子がなかったこと、PMDAにおいて、専門委員である産婦人科の医師1名と神経内科の医師1名の意見を踏まえ、本件の本件薬剤の服用により原告Aに血栓症が発現したものと推定される旨の判定がされていること(甲A17、18)、被告病院の医師や看護師、函館脳神経外科の執刀医は、原告Aの本件血栓症の発症が本件薬剤の投与によるものである旨の意見等を述べていること(甲A9、14の11、16)等からして、原告Aの本 7、18)、被告病院の医師や看護師、函館脳神経外科の執刀医は、原告Aの本件血栓症の発症が本件薬剤の投与によるものである旨の意見等を述べていること(甲A9、14の11、16)等からして、原告Aの本件血栓症の発症は、本件薬剤を服用したことによるもの以外の原因は考え難い。 ⑷ 被告らは、本件薬剤の処方と本件血栓症発症の因果関係を否定する。 しかし、本件血栓症の発症は極めて稀な症例であって、発生原因が限られていることから、本件薬剤の投与以外の原因はない。 本件血栓症の発生機序は、本件薬剤の血液凝固能亢進作用による血栓発生であることまではある程度解明されているが、血液凝固能を亢進させる因子は複数存在するため、どの因子が原因で血栓症が発症するかというところまでは解明できていない。ただし、長期曝露による血液凝固能亢進因子の蓄積作用はあるところ、原告AにはプロテインS欠乏症の既往歴はないにもかかわらず、本件血栓症の発症翌日である平成26年1月17日の原告Aのプロ- 31 - テインSの値は正常値の下限である60であり、明らかに不自然な値となっている。こうした点からも、約7年間にわたる長期の本件薬剤の服用により、原告Aの血液凝固能亢進作用が蓄積され、本件血栓症の発症に至ったとみるべきである。 (被告らの主張)⑴ 原告Aへの本件薬剤の処方が本件血栓症発症の原因になったとはいえない。 原告らは、痘そう予防接種判決及びB型肝炎判決を援用するが、そもそも本件血栓症はその原因を特定できない場合も多いから、論理和を前提とする消去法は採用すべきできない。 ⑵ 高血圧、肥満、40歳以上の女性である点などを踏まえても、原告Aに対する本件薬剤投与が禁忌に当たるとまでは言えない。少なくとも全処方期間が禁忌ではなく、原告Aが本件血栓症を発症する前の数年以前には 高血圧、肥満、40歳以上の女性である点などを踏まえても、原告Aに対する本件薬剤投与が禁忌に当たるとまでは言えない。少なくとも全処方期間が禁忌ではなく、原告Aが本件血栓症を発症する前の数年以前には禁忌は全くなかった。 ⑶ OC(経口避妊薬) に含まれる合成エストロゲンへの曝露による凝固能亢進は服用開始後数か月のみであり、それ以降は、生体の慣れにより凝固能は正常に近づいてくる。また、APC-srは、経口避妊薬の服用中(21日間)は増加し続けるが、その後の休薬期間中(7日間)に急激に低下して正常に復するし、2周期のWashout期間を設ければ、APC-srはほぼ服用開始前に復する。原告Aは、本件薬剤を、21日間服用・7日間休薬というサイクルで服用しており、平成26年1月16日の血液凝固機能に関連する検査結果は全て正常であり(乙A4)、凝固機能に関連する同月17日の原告AのプロテインSもプロテインCも正常であったとおり、原告Aが本件血栓症を発症した当時、データから特段の凝固機能亢進の存在は示唆されず、もとより、本件薬剤の蓄積効果のために凝固機能が亢進した所見もないのであるから、OCのために凝固機能に異常をきたし、本件血栓症を発症したとはいえない。 - 32 - ⑷ 本件血栓症は比較的稀な疾患ではあるが、稀な疾患であることは直ちに本件薬剤によって生じたことを意味せず、先天性・後天性素因のほか、外科手術、外傷、鉄欠乏性貧血その他の疾患も原因になり得る(乙B18)。また静脈血うっ滞も静脈洞血栓症の危険因子となるところ、これを来すものとして肥満があげられている(甲B32・925頁)。 他方で、OC服用者で静脈血栓症 (VTE)を発症する場合にあっては、服用開始180日以内の発症が62.9%、360日以内の発症が81. 2%であり(乙B1 があげられている(甲B32・925頁)。 他方で、OC服用者で静脈血栓症 (VTE)を発症する場合にあっては、服用開始180日以内の発症が62.9%、360日以内の発症が81. 2%であり(乙B14・57頁右、59頁図2)、高度の蓋然性をもって1年以内に発症するといえる。これに対し、原告Aが本件血栓症を発症したのは、その服用開始2510日後(平成19年3月5日に服用開始とした場合)である(なお、乙B14・59頁図2に照らせば、服薬開始後「1801日(5年弱)」以降の発症例は極めて少ない。)。 以上からすれば、原告Aの本件血栓症の原因は不明である。 2 個別具体的な本件薬剤の処方行為と原告Aの本件血栓症との間の事実的因果関係の有無・要否(原告らの主張)原告Aの本件血栓症の発症に寄与したのは、被告病院の全ての医師による全ての処方行為である。本件においては、いずれの処方行為により本件血栓症が発症したかを厳密に特定することは困難であるが、被告らは、血栓症の副作用を有する本件薬剤の処方を行う以上、処方期間全体を通じて本件血栓症を招来しないように注意すべき義務を負っている。そして、結果を生じさせた処方行為は一つに限定されず、合計34回の処方行為のうち、いずれか複数の処方行為又は全ての処方行為と本件血栓症発症との間に因果関係を認めることも可能である(最高裁平成9年2月25日・民集51巻2号502頁、以下「平成9年最判」という。)から、原告Aに対する本件薬剤の処方行為のうち一部の処方行為が発症原因であったという程度の事実が認められ- 33 - る限り、被告らの注意義務違が肯定されるべきである。 したがって、原告らにおいて、注意義務違反の存否の判断の前提となる事実的因果関係について、誰が、いつ行った処方行為との間に事実的因果関係が る限り、被告らの注意義務違が肯定されるべきである。 したがって、原告らにおいて、注意義務違反の存否の判断の前提となる事実的因果関係について、誰が、いつ行った処方行為との間に事実的因果関係があるのかについて、厳密に特定する必要はない。 (被告らの主張)⑴ 仮に、本件薬剤が本件血栓症の何らかの要因となったとしても、要因となった処方は発症直近のものであり、これよりも前に服用した本件薬剤が本件血栓症の原因となることはない。 ⑵ 平成9年最判は、顆粒球減少症の起因剤が複数患者に投与されていた事案において、どの起因剤の投与が顆粒球減少症発症させたのかについての鑑定結果に基づく事実認定に経験則違反があると判断したものであり、原告が援用するように、いずれかの処方行為が過失であるとの認定で足りるであるとか、結果を発生させた具体的な処方行為の特定ができなければそれを前提として判断すれば足りるであるなどと判断したものではないから、本件にその射程は及ばない。 第2 争点2(本件血栓症と事実的因果関係が認められる処方行為につき、添付文書等に違反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反があるか)について(原告らの主張) 1 医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文章に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される(最高裁平成8年1月23日・民集50巻1号1頁)。そして、医師は、薬の副作用に関 って医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される(最高裁平成8年1月23日・民集50巻1号1頁)。そして、医師は、薬の副作用に関する医療上の知見について、その最新の- 34 - 添付文書を確認し、必要に応じて文献を参照するなど、当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務を負う(最高裁平成14年11月8日・裁判集民事208号465頁 )。 2 そして、本件薬剤の添付文書(甲B1)は、高度の高血圧(後記の平成17年ガイドライン〔甲B23・19~20頁の表8〕によれば、添付文書における禁忌としての「高血圧の患者」とは、血圧の数値がWHO分類3〔収縮期血圧140mmHg以上及び拡張期血圧90mmHg以上〕に当たる者を指す。)の患者を「禁忌」の対象とし、40歳以上の女性や肥満の女性を「慎重投与」の対象としているところ、原告Aの平成18年12月25日(処方約3か月前)の血圧は収縮期168、拡張期98である上、原告Aは処方開始時42歳であり、平成18年12月25日(処方約3か月前)及び平成19年3月30日(処方約2週間後)の体重は110kgであった。 平成17年ガイドラインは、「40歳以上の女性」、「肥満(30を超えるBMI)」を分類2(リスクを上回る利益)に位置付けており、原告Aはこれに複数該当することになるから、同人に対する本件薬剤の処方は禁忌である。 加えて、本件薬剤の服用によって血栓症を発症する医学的機序は十分に明らかになっておらず、処方前に血栓症発生や発生部位等を確実に予知して未然に防止することは不可能な状況であることに鑑み、従来から血栓症が発症する蓋然性があると経験的に考えられる特定の身体的状態を概括的に禁忌として定め、添付文書に記載するこ 発生部位等を確実に予知して未然に防止することは不可能な状況であることに鑑み、従来から血栓症が発症する蓋然性があると経験的に考えられる特定の身体的状態を概括的に禁忌として定め、添付文書に記載することで、服用者に重篤な後遺症を残しかねない血栓症発症を防いでいると考えられる。このような本件薬剤の添付文書における禁忌の考え方は、予防接種における禁忌の考え方と類似のものであるから、痘そう予防接種判決(最高裁平成3年4月19日・民集45巻4号367頁)に従い、本件薬剤の処方によって血栓症が発症した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くしたが禁忌者に該当する事由を発見することができなかったこと、当該発症者において個人的素因を有していたこと等の特段の事情- 35 - が認められない限り、当該発症者は禁忌者に該当するものとして取り扱うべきところ、原告Aには本件薬剤の禁忌に該当する条件が認められ、かつ、これと別に血栓症を生ずる個人的素因を有していたというような事情もないから、原告Aは禁忌者として取り扱われるべきであった。 3 また、原告Aには、被告らが主張するような本件薬剤の処方による治療の必要性はなく、薬物治療の必要性を前提としても、子宮腺筋症又は子宮筋腫に対してはノアルテンやディナゲスト(ジエノゲスト)といった副作用の少ない代替薬剤(甲B36~38)を処方が可能であったから、添付文書やガイドラインに違反して原告Aに本件薬剤を処方することは医療水準に適合しない治療法である。 4 よって、被告病院の医師らには、添付文書やガイドラインに違反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反がある。 (被告らの主張) 1 本件薬剤の添付文書には、「禁忌高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)」としか記載されておらず、「高血圧」の 反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反がある。 (被告らの主張) 1 本件薬剤の添付文書には、「禁忌高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)」としか記載されておらず、「高血圧」の具体的な数値を明記していない。 このため、添付文書記載の「禁忌高血圧の患者」おける具体的に禁忌とすべき高血圧は、患者の状態に応じ、医師が相応の裁量により決する趣旨と解釈されるべきである。 後記の平成17年ガイドラインも、飽くまで避妊法としてのOC(低用量経口避妊薬)の使用について述べるものであって、月経困難症などの疾病の治療を目的とするOCは目的や効果が全く異なる上、その処方に当たっても、これを投与することにより期待される利益とこれにより生じ得るリスクとが総合的に考慮されるべきところ、具体的に存在する疾病の治療は、健常者における避妊よりも重要かつ切実な目的であるから、同目的に基づくOCの投与に当たっては、避妊を目的とする場合と比較し、より広く、緩やかに医師の裁量を認めるべきである。この観点からすると、①まず、平成17年ガイドラインには、- 36 - 「処方前の検診」、「収縮期140又は拡張期90を超える女性には使用しないように指導する」との記載があるが、これは「エビデンスレベルC」、すなわち確たる医学的根拠に基づくものではないから、直ちにあるべき医療水準を画するものではない。したがって、当該記載を添付文書の「禁忌高血圧」に当てはめ、添付文書上も「収縮期140又は拡張期90を超える場合は禁忌」と解釈し、これを医療水準と解すべきではない。また、②平成17年ガイドラインにおけるWHO分類3(利益を上回るリスク:原則的禁忌。収縮期140~159及び拡張期90~99の高値)やWHO分類4(容認できない健康上のリスク:絶対的禁忌。収縮期160 ②平成17年ガイドラインにおけるWHO分類3(利益を上回るリスク:原則的禁忌。収縮期140~159及び拡張期90~99の高値)やWHO分類4(容認できない健康上のリスク:絶対的禁忌。収縮期160、拡張期100を超える血圧)についても、WHOが、全世界の女性を対象として、その避妊の場面においてOCの適用について述べるものであるから、治療目的でOCを用いる場面が問題となっている本件において上記記載をそのまま当てはめるべきではない。 加えて、原告Aの平成19年3月30日(処方約2週間後)の血圧は収縮期140、拡張期87であり、平成17年ガイドラインによれば相対禁忌の状態にすぎない。 2 また、本件薬剤の添付文書も、OCとしての用法について述べるものにとどまり、避妊薬としての使用の場面においてすら、「禁忌高血圧の患者」と記載するにとどまり、厳格に血圧の数値をもって禁忌を定めるものではなく、医師の裁量を認めるものであるから、疾病の治療目的で用いる場合には、より相当程度の広範な医師の裁量が許容されるべきである。 この観点から見るに、平成18年12月25日時点の原告Aの血圧(168/98)は高血圧であるが、1回限り測定された数値にとどまる上、高血圧学会のガイドラインに照らせば最も高いⅢ度高血圧には当たらない。また、この際に原告Aに投与したドオルトン(本件薬剤と同じく女性ホルモン剤である経口避妊薬)服用後、特段の副反応や異常はなかった。 他方で、本件で原告AにOCが投与されたのは、過多月経により動悸や全身- 37 - 倦怠感(乙A1・3、4頁)を生じるほどの貧血(ヘモグロビン値〔血色値〕は9.2、正常値は11.5~15.5〔乙A1・8頁〕)に悩まされていた原告Aにおいて、その原因と考えられた子宮腺筋症を治療する高度の必要性があったため を生じるほどの貧血(ヘモグロビン値〔血色値〕は9.2、正常値は11.5~15.5〔乙A1・8頁〕)に悩まされていた原告Aにおいて、その原因と考えられた子宮腺筋症を治療する高度の必要性があったためである。OC以外の治療法としては手術による子宮摘出しかなく、被告病院においても何度か手術を勧めたが(乙A1〔27、29頁など〕)、原告Aは手術を望まず、少なくとも退職後でないとできないとしたため(乙A1〔32頁〕)、OC投与が唯一の治療法であった。そして、本件薬剤の投与は、上記原告Aの症状の治療に有効であり、現に、原告Aはその服用を希望し、その効果も顕れていたのであるから、アンジェ28錠の投与の必要性は、非常に高く、かつ、初診時から継続して存在していた。 また、被告病院においては、原告Aの体調や症状等を確認し、細胞診検査等も行い、副作用の有無も念頭に置きつつ、慎重に診療を続けたのであって、その経過に不適切もない。 3 以上に照らせば、もとより治療目的によるOC投与に当たっては医師に広範な裁量が認められるところ、原告Aにおいては子宮腺筋症の治療のために本件薬剤を投与する高度の必要性が認められ、その一方で、原告Aに本件薬剤投与の禁忌があるとは認められないのであるから、被告らに注意義務違反があるとは認められない。 4 加えて、争点2については、更に以下の点を指摘し得る。 ⑴ 原告Aに対する本件薬剤の投与は合計34回にわたるところ、このうち2回目以降の処方は、それまでに副作用等がないことを確認した上で行っているから、医療機関側に課せられる注意義務の内容や程度は、初回処方時と比較して相当程度軽減されるべきである。 ⑵ また、上記34回の処方行為はそれぞれ別個独立のものである上、各処方行為時点における原告Aの身体の状態等も全て異なるのであるから 程度は、初回処方時と比較して相当程度軽減されるべきである。 ⑵ また、上記34回の処方行為はそれぞれ別個独立のものである上、各処方行為時点における原告Aの身体の状態等も全て異なるのであるから、これらを一つの行為と捉えることは不合理である。また、他の医師による本件薬剤- 38 - 投与の影響を被告Cに帰責できないことは当然であるし、とりわけ、専ら原告Aの希望により、診察を経ずに処方された本件薬剤(合計9回分)については、被告Cに過失があるとはいえない。 5 よって、被告らには、添付文書に違反して原告Aに本件薬剤を処方した注意義務違反がない。 第3 争点3(事実的因果関係が認められる処方行為につき、原告Aの検査・経過観察をせずに漫然と本件薬剤を処方した注意義務違反があるか)について(原告らの主張) 1 原告Aの血圧は、平成18年12月25日(処方約3か月前)に168/98、平成20年9月3日(処方後1年6月)に171/91、平成21年6月17日に199/105と絶対禁忌の状態であった(甲A14の1~5)。 2 本件薬剤の添付文書によれば、その投与にあたっては、服用者の病歴調査及び検診(血圧測定、乳房・腹部の検査及び臨床検査含む)が必要であり、投与中は6か月ごとの検診を行うことが必要であるにもかかわらず(甲B1)、被告病院の医師らは、原告Aの内科のカルテを確認せず、平成21年以降、臨床検査を実施していない。 本件薬剤における添付文書の考え方は予防接種における禁忌の考え方と類似のものであることは前記のとおりであるところ、インフルエンザ予防接種判決(最高裁昭和51年9月30日・民集30巻8号816頁)及び痘そう予防接種事件の差戻審(札幌高裁平成6年12月6日・判時1526号61頁)に従い、本件薬剤を処方する医師が原告Aにつ ンザ予防接種判決(最高裁昭和51年9月30日・民集30巻8号816頁)及び痘そう予防接種事件の差戻審(札幌高裁平成6年12月6日・判時1526号61頁)に従い、本件薬剤を処方する医師が原告Aにつき禁忌者を識別するための適切な検査を尽くさなかったため、その識別を誤って処方をした場合に、その副作用により原告Aが血栓症を発症したときは、当該医師はその結果を予見し得たのに過誤により予見しなかったと推定すべきである。 3 よって、被告病院の医師らには、原告Aに本件薬剤を処方するには血圧測定等の事前検査及び6か月毎の定期検査を行い、血圧測定等の検査の結果を踏ま- 39 - え、高血圧等の問題があれば本件薬剤の処方を中止しなければならないのに、検査せず、高血圧等であるか否かの診断を怠ったまま、漫然と本件薬剤を処方し続けた注意義務違反がある。 (被告らの主張) 1 薬剤の副作用は、投与開始時及びその直後における発症を最も警戒すべきであり、血栓症についても同様である。OCによる静脈血栓症のリスクは服用開始後1年以内が最も高く、徐々に減少していく。特に、血栓症リスクの増大は使用開始後4か月以内に認められ、その後は減少する(甲B23・7頁)。本件薬剤の添付文書も、投与のたびに血圧を測定することを求めていない。 2 原告Aの本件薬剤投与開始前である平成18年12月25日の血圧は「168/98」であったものの、ドオルトン服用後も特段の副作用等がなかったこと等を考慮して投与を開始したことは前記のとおりであり、実際にも、投与開始後間もない平成19年3月30日の血圧は「140/87」であり、特段の高血圧ではなかった。そして、投与開始後の平成21年2月18日の値は「164/104」であったところ、投薬開始後1年を経過しても、血栓症をはじめとする副作用は の血圧は「140/87」であり、特段の高血圧ではなかった。そして、投与開始後の平成21年2月18日の値は「164/104」であったところ、投薬開始後1年を経過しても、血栓症をはじめとする副作用は生じていない状況であり、その一方で投薬の効果が認められたこと等を考慮すると、血圧測定の時期の選択等について被告病院の医師ら過失があったということはできない。平成17年ガイドラインの「経過観察中に服用を中止すべき症状や他覚所見(表14.服用を中止すべき症状又は状態)」という表に本件血栓症はなく、本件薬剤投与によりこの発症を予見することはできなかった。 3 日本では、経口避妊薬投与による静脈血栓症の発症時期は、服用開始後1年以内が80%であるため(乙B4)、この期間に検査・検診を行えば足りる。 4 原告Aの血圧につき、被告病院の産婦人科では、初診時及び平成21年2月18日の受診時以外の測定は行われていなかったが、内科では本件薬剤の服用を認識した上で平成23年5月まで測定が行われており、平成21年11月1- 40 - 1日以降は、全く禁忌に当たる結果は出なかった。 また、原告Aの血液検査については、被告病院の産婦人科では、平成20年12月17日まで血液検査を行うか他院で血液検査が実施されていることを問診で聴取しており、その後は内科において平成21年6月24日から平成23年5月まで血圧同様定期的に血液検査が行われていた。 その後も、被告Cその他原告Aを診察した医師が問診で異常がないことを確認している。 5 したがって、被告病院の医師らには、原告Aに本件薬剤を処方した後、検査・経過観察をしなかった注意義務違反がない。 第4 争点4(被告Cの処方行為と本件血栓症発症との間に事実的因果関係が認められないが、被告C以外の医師の処方行為との間には に本件薬剤を処方した後、検査・経過観察をしなかった注意義務違反がない。 第4 争点4(被告Cの処方行為と本件血栓症発症との間に事実的因果関係が認められないが、被告C以外の医師の処方行為との間には事実的因果関係が認められる場合、被告Cは不法行為責任を負うか否か)について(原告らの主張) 1 原告Aに対する本件薬剤の各処方行為は、全て被告病院産婦人科において途切れることなく行われたものであって、処方した各医師は、従前のカルテを確認し、患者の診療経過等の情報を共有することができた。したがって、各処方行為は客観的に関連し共同しており(最高裁昭和43年4月23日・民集22巻4号964頁)、一連一体の共同行為として捉えることができる。したがって、各処方行為は「数人が共同の不法行為」に該当する(民法719条1項前段)から、被告Cは他の医師と連帯して責任を負う。 2 また、どの処方行為によって本件血栓症を発症したのかが不明な場合であっても、被告Cを含め、原告Aの損害をそれのみで惹起し得る行為をした者は存在しない(乙A1)から、被告Cは、自らの処方行為と原告Aの本件血栓症との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り、損害賠償責任を負う(民法719条1項後段、最高裁令和3年5月17日・民集75巻5号1359頁、以下「令和3年最判」という。)。 - 41 - 3 さらに、どの処方行為によって本件血栓症を発症したのかが不明、かつ、各処方行為がそれ単体では本件血栓症を惹起し得るとまでは認められない場合であっても、令和3年最判において、累積的にアスベストに曝露し、中皮腫に罹患したケースで、民法719条1項後段の類推適用を認めたことを踏まえると、本件は、各処方行為の蓄積作用により、累積的に本件薬剤に曝露した結果、本件血栓症が発症した可能 アスベストに曝露し、中皮腫に罹患したケースで、民法719条1項後段の類推適用を認めたことを踏まえると、本件は、各処方行為の蓄積作用により、累積的に本件薬剤に曝露した結果、本件血栓症が発症した可能性があり(甲B26ほか、K鑑定意見書)、処方行為のうち古いものについては、本件血栓症発症との関連性が低いとしても、当該処方行為との関係では、民法719条1項後段の類推適用となる。 (被告らの主張)被告Cが民法719条1項前段又は後段の共同不法行為責任を負うことを争う。なお、令和3年最判は、「加害者であり得る者が特定でき、ほかに加害者となり得る者は存在しないこと」(他原因者不存在)を民法719条1項後段類推適用の要件としているものと解されるから、原告Aに対する各処方行為のうち一部でも無過失のものが含まれていれば同類推適用は認められない。また、そもそも本件は、令和3年最判とは前提事情を異にする部分が大きく、同判例法理を適用することは相当でない。 第5 争点5(被告Cに、原告Aに血栓症のリスクを説明しなかった注意義務違反があるか)について(原告らの主張)本件薬剤の添付文書によれば、血栓症のリスク、血栓症の典型的症状、血栓症を疑う症状や兆候が出たときには、直ちに服用を中止し、救急医療機関を受診するよう説明することが求められていること、前記のとおり、原告Aに本件薬剤を処方することは禁忌であったことを踏まえれば、被告Cは、本件薬剤の服用により血栓症発症のリスクのあることを説明すべきだったにもかかわらず、これを怠った。 なお、被告らの「被告Cが手術を勧めたところ消極的であり、むしろ本件薬- 42 - 剤の処方を強く希望していた」との主張は否認する。原告Aは手術の必要性や、本件薬剤のリスク等について説明を受けなかったので、積極的に が手術を勧めたところ消極的であり、むしろ本件薬- 42 - 剤の処方を強く希望していた」との主張は否認する。原告Aは手術の必要性や、本件薬剤のリスク等について説明を受けなかったので、積極的に手術を希望しなかったに過ぎない。 (被告らの主張)被告病院は、平成19年3月5日、原告Aに対し、本件薬剤の「服用者向け情報提供資料」(乙B1)を交付した。同資料には、血栓症の初期症状として手足のしびれや言語障害(舌のもつれ)があり、そのような症状が現れた場合にはすぐに医師に相談・報告するよう記載がある。また、看護師も、原告Aに対し、血栓症のリスクについて説明した。 なお、被告Cら被告病院の医師が原告Aに対して繰り返し手術の意向を確認し、これを勧めたものの、原告Aは一貫して手術に消極的な態度を示して本件薬剤の投与による治療を希望し続けたのは、上記第2(被告らの主張)2のとおりである。 第6 争点6(検査・経過観察義務違反と本件血栓症発症の法的因果関係の存否)(原告らの主張)本件薬剤の処方が問題となっている本件においては、原告Aを検査せずに本件薬剤の処方を続けていたことが検査・経過観察義務違反の内容であり、本件薬剤から本件血栓症が発症したという事実的因果関係があれば、法的因果関係も認められるべきである。 (被告らの主張)原告Aに本件薬剤を投与するに当たり、血圧等を検査していたとしても、上記のとおり、少なくとも平成21年11月11日以降は、血圧測定結果は正常値に収まっているし、同日以前の結果も正常値に収まっていたと考えられるから、被告病院の医師らが本件薬剤の投与を中止していたとは考えられない。また、凝固能検査が行われていたとしても、血栓症が起きていれば数値として現れる可能性があるものの、一般的には血栓症は急速に起きる ら、被告病院の医師らが本件薬剤の投与を中止していたとは考えられない。また、凝固能検査が行われていたとしても、血栓症が起きていれば数値として現れる可能性があるものの、一般的には血栓症は急速に起きることが多く、血液- 43 - 検査をすることで将来の血栓症の発生を予測できることはほとんどない(乙B2・76頁、99頁参照)と考えられている。したがって、検査・経過観察義務違反は本件血栓症の発症と因果関係がない。 第7 争点7(説明義務違反と本件血栓症発症の法的因果関係の有無)(原告らの主張)被告らが説明義務を尽くしていれば、原告Aは通院して精密検査を受けることができたから、本件血栓症を発症することはなかった。なお、上記のとおり、原告Aが手術に消極的であり、本件薬剤の処方を強く希望していたとする被告らの主張は事実に反する。 (被告らの主張)上記のとおり、原告Aは、一貫して手術に消極的な態度を示し、本件薬剤の処方を強く希望していたから、仮に、被告Cが「服用者向け情報提供資料」記載の内容を説明したとしても、原告Aが本件薬剤を服用しなかったとはいえない。 よって、仮に被告Cに説明義務違反があったとしても、本件血栓症発症とは因果関係がない。 第8 争点8(損害の発生及び額)について(原告らの主張) 1 原告Aの損害 2億7589万2668円⑴ 治療費 81万7013円本件血栓症の発症により、被告病院において9万6256円、函館脳神経外科病院にて38万5242円、稜北病院にて33万5515円の治療費の支出を余儀なくされた。 ⑵ 介護用椅子購入費用 7万3656円⑶ 入通院付添費 57万9700円ア入院付添費 55万円- 44 - 原告Aは平成26年1月16日から平成26年7月16日まで入院 ⑵ 介護用椅子購入費用 7万3656円⑶ 入通院付添費 57万9700円ア入院付添費 55万円- 44 - 原告Aは平成26年1月16日から平成26年7月16日まで入院したところ、原告Bは、入院直後の平成26年1月16日から同月19日のほか、退院するまでの間、1週間に2回、原告Aの衣服の交換や、失語症を発症した原告Aと医療機関との間の意思疎通の補助、原告Aの車椅子移動等の付添看護を行った(合計55日)。これらの措置は原告Aひとりではできず、原告Aには頼れる親族が原告Bの他にはいないため、付添看護の必要性があるから、入院付添1日1万円、合計55万円の損害が発生した。 なお、付添費1万円には、ac間の交通費4158円(往復距離216km、ガソリン1L当たり7km、ガソリン1L当たり135円、216km÷7km×135円=4158円)を含む。 イ通院付添費 2万9700円原告Aは、被告病院に9日間通院したところ、通院付添費は1日当たり3300円なので、3300円×9日=2万9700円である。 ⑷ 将来介護費 1億2199万2490円ア 1日当たりの介護費用 2万円原告Aは、一人で着替え、食事の準備、入浴、洗濯及び掃除等の複雑な作業を行うことができない。そのため、原告Bが着替えの手伝いや朝昼晩の三食の準備、入浴の介助、洗濯及び掃除等を行っている。また、外出時には、原告Bが障害者用のトイレを探し、介助している。今後の通院についても、原告Bが車を運転して原告Aの付添・送迎を行うことは必須といえる。他方で、原告Aは、父親を亡くしており、子はおらず、栃木県に住む母親は認知症の状態であり、唯一の姉妹である姉は、原告の母親の介護で手一杯のため、原告Aの介護を行うことが不可能であるから、原告Bが一人で で、原告Aは、父親を亡くしており、子はおらず、栃木県に住む母親は認知症の状態であり、唯一の姉妹である姉は、原告の母親の介護で手一杯のため、原告Aの介護を行うことが不可能であるから、原告Bが一人で行うことになるが、原告Bは右前腕切断による右上肢機能の著しい障害を有しており、今後、年齢を重ねるにつれて、原告Aの介護が困難になる可能性が高い。したがって、1日当たり2万円の将来介護費を請求す- 45 - る。 イ症状固定時平成27年9月15日(当時51歳)ウ症状固定時の平均余命(女性) 37.19年エライプニッツ係数 16.7113オ合計2万円×365日×16.7113=1億2199万2490円(令和元年8月分は、1日あたり1万5634円である〔甲C11、12〕。)なお、公的扶助は常に利用しなければならないわけではなく、また、公的扶助が将来にわたって現在と同様に継続される保証もないから、介護保険等の公的扶助の利用を前提としない金額により算定すべきである。 ⑸ 将来雑費 12万5134円原告Aは、平成27年9月16日(症状固定日の翌日)から、将来にわたって、毎月624円相当の尿取りパッド(甲C22)を使用することになるところ、症状固定、症状固定時の女性の平均余命、ライプニッツ係数は前記⑷のとおりであるから、将来雑費は、624円×12か月×16.7113=12万5134円である。 ⑹ 通院交通費 1万0323円ア ab間 60kmイガソリン1L(135円)当たり7kmウ ab間に必要なガソリン60km÷7km≒8.5Lエ日数 9日オ合計8.5L×135円×9日間≒1万0323円⑺ 入院雑費 27万3000円- 46 - ⑻ b間に必要なガソリン60km÷7km≒8.5Lエ日数 9日オ合計8.5L×135円×9日間≒1万0323円⑺ 入院雑費 27万3000円- 46 - ⑻ 休業損害 1229万6192円ア原告Aの平成25年分給与収入 158万8958円(甲C7)イ平成26年度男女全学歴の45歳〜49歳の平均賃金 579万3000円ウ基礎収入 738万1958円原告Aの平成25年給与収入は、158万8958円である(甲C7)。 他方で、平成26年度男女全学歴の45歳~49歳の平均賃金は579万3000円である。原告Aは、主婦として働く傍ら、パートタイムのアルバイトを行っていたため、基礎収入は、平成25年給与収入に上記平均賃金を加えた金額である738万1958円とすべきである。 エ休業期間 608日オ合計738万1958円÷365日×608日=1229万6192円⑼ 入通院による慰謝料 302万円⑽ 後遺障害による逸失利益 8362万4009円ア労働能力喪失率 100%イ労働能力喪失期間 16年ウ基礎収入 771万5958円原告Aの平成25年給与収入は、158万8958円である(甲C7)。 他方で平成26年度男女全学歴の50歳~54歳の平均賃金は612万7000円である。原告Aは、主婦として働く傍ら、パートタイムのアルバイトを行っていたため、基礎収入は、平成25年給与収入に上記平均賃金を加えた金額である、771万5958円とすべきである。 エ中間利息控除ライプニッツ係数 10.8378オ合計- 47 - 771万5958円×1.0×10.8378≒8362万4009円⑾ 後遺障害による慰謝料 2800万円 控除ライプニッツ係数 10.8378オ合計- 47 - 771万5958円×1.0×10.8378≒8362万4009円⑾ 後遺障害による慰謝料 2800万円後遺障害等級第1級に準じて、2800万円が相当である。 原告Aは、右半身不随、失語症等により、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力、持久力、及び④社会行動能力のいずれも大きく損なわれており、重篤な高次脳機能障害に当たる(甲A7、C19)。他方で、右片麻痺による右上肢下肢機能全廃なので(甲A6)、高度の片麻痺の身体性機能障害にも当たる。 ⑿ 弁護士費用 2513万9121円前記⑴ないし⑾の合計は、2億5139万1217円であるところ、相当因果関係を有する弁護士費用はその1割に当たる2513万9121円である。 2 原告Bの損害⑴ 慰謝料 500万円原告Aは会話をすることも難しくなり、原告Bの介護なしには生きることが困難になり、原告Bは原告Aを自宅に放置できないため、昼には仕事を抜けて一時帰宅し、昼食を食べさせてから再び仕事場に戻るという生活を続けているほか、原告Aは「死んだ方が良かった。」等ということもあり、その言葉を聞く度に原告Bは、原告Aの本件薬剤服用を止められなかったことを悔やむ等の計り知れない精神的苦痛を被った。かかる精神的苦痛に対する慰謝料は500万円が相当である。 ⑵ 弁護士費用 50万円原告Bは、慰謝料請求のために弁護士に依頼せざるを得なかったところ、原告Bの損害となる弁護士費用は前記⑴の1割が相当である。 (被告らの主張) 1 原告Aの損害- 48 - ⑴ 治療費、通院付添費、入院雑費、入通院による慰謝料について、その金額自体は争わない。 ⑵ 入院付添費 記⑴の1割が相当である。 (被告らの主張) 1 原告Aの損害- 48 - ⑴ 治療費、通院付添費、入院雑費、入通院による慰謝料について、その金額自体は争わない。 ⑵ 入院付添費争う。被告病院においては、看護師が入院患者の看護を行っており、家族の付添いを求める運用はしていない(乙C1)。 ⑶ 将来介護費争う。将来的に常時介護が必要になったり、職業人による毎日の介護が必要になったりする蓋然性はない。将来公的介助が受けられなくなる蓋然性もない。 ⑷ 休業損害争う。原告Aは、L病院で庶務の仕事をフルタイムで働いていた可能性があり、休業損害は実収入を基礎とすべきである。仮に、原告Aがパートタイムのアルバイトをする傍ら家事労働に従事していたとしても、基礎収入の評価としては賃金センサス女性学歴計平均を上回ることはない。また、原告Bが家事労働を担っていた可能性があるところ、原告Aの基礎収入の評価においても原告Bの家事労働の貢献が評価されるべきである。 ⑸ 後遺障害による逸失利益及び慰謝料争う。 基礎収入について、そもそも原告Aは、フルタイム就労であったと考えられる(甲A14の11)。また、仮に、パートタイム就労であったとしても、その給与収入と、家事労働者であることを前提とした平均賃金の合計額を基礎収入するのは相当性を欠く。なお、採用する平均賃金は、北海道の女性労働者の全年齢平均のそれによるべきである。 次に、労働能力喪失率について、原告Aは、平成26年8月頃、茶碗洗いも時間をかけて行えていること(乙A3の1)からすれば、常時介護が必要とはいえず、また、医師による高次脳機能障害の診断を受けていないから、- 49 - 後遺障害等級第1級に相当するものとはいえない。 ⑹ その余の損害争う。なお らすれば、常時介護が必要とはいえず、また、医師による高次脳機能障害の診断を受けていないから、- 49 - 後遺障害等級第1級に相当するものとはいえない。 ⑹ その余の損害争う。なお、原告Aは、平成27年から障害年金を受給しており(甲C2)、損益相殺の対象とすべきである。 2 原告Bの損害争う。 第9 争点9(PMDAから副作用救済給付を受けられなかったことの不法行為該当性及びその損害)について 1 不法行為該当性(原告Aの主張)前提事実⑸のとおり、PMDAによる医療手当及び障害年金の不支給の判断がされていることから、本件薬剤の処方について、被告らに過失が認められない場合、原告Aは、本来受けられたはずのPMDAによる救済すら受けられないことになるから、被告らは原告Aに対する不法行為責任を負う。 (被告らの主張)原告Aの主張を前提とすれば、被告Cには過失がないから、不法行為が成立することはない。 2 損害(原告Aの主張)被告Cが適正使用の要件を満たしていたならば、原告AがPMDAから受けることができた医療手当、障害年金の総額は、6418万5573円であり、その1割に当たる641万8557円が損害となる弁護士費用であるから、原告Aに生じた損害の合計額は7060万4130円である。 (被告らの主張)争う。PMDAに対する請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構法施行令に基づいて算定されるものの、被告らに対する請求においては、労働基準法- 50 - 等に照らして損害額を算定すべきである。 以上 (別紙3)日付診療科担当医診療経過(入通院状況・主訴・所見・診断)検査・処置体重(kg)血圧(mmHg)証拠認否原告らの主張 証拠 18.12.25産婦人科 ある。 以上 (別紙3)日付診療科担当医診療経過(入通院状況・主訴・所見・診断)検査・処置体重(kg)血圧(mmHg)証拠認否原告らの主張 証拠 18.12.25産婦人科C医師過多月経・動機・全身倦怠感を訴え受診子宮肥大子宮筋腫・子宮腺筋症おそれ19.1.10再診とするホルモン検査・血液検査・細胞診検査・エコー検査フェロミア・ムコスタ・ドオルトン処方110kg168/98乙A1認める甲A14の119.1.10産婦人科D医師少量の出血との申告ドオルトン内服中にふくらはぎが攣るとの申告2か月後に再診とし、その際に内膜検査予定フェロミア・ムコスタ処方乙A1認める19.1.12産婦人科C医師同日朝からの過多月経により予定より早く受診貧血症状なし同月14日までに過多月経が収まれば2か月後再診、過多月経が継続すれば同月15日に受診するよう指示(15日の受診なし)乙A1認める19.3.5産婦人科C医師月経経過申告子宮内膜厚が15ミリメートルと肥大アンジュ28錠処方にあたり、血栓症のリスク及び初期症状、症状が出た場合に服用中止すること等の説明血液検査・凝固能検査・生化学検査デュファストン・アンジュ28錠処方乙A1不知アンジュ28錠処方にあたり、血栓症のリスク及び初期症状、症状が出た場合に服用中止すること等の説明について、これを裏付ける証拠がない。 19.3.30内科健康診断心肥大・明らかな肥満減量を指示110kg140/87乙A2認める甲A14の219.4.11産婦人科C医師月経経過申告アンジュ28錠処方乙A1認める19.6.27産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める19.9.26産婦人科C医師アンジュ2 19.4.11産婦人科C医師月経経過申告アンジュ28錠処方乙A1認める19.6.27産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める19.9.26産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める19.11.28産婦人科C医師月経後の不正出血・倦怠感を訴え受診月経の経過・M病院を受診し貧血との診断により鉄剤を処方され内服していることを聴取3か月毎程度に血液検査実施予定アンジュ28錠処方乙A1認める20.2.27産婦人科C医師月経経過申告2月5日にM病院にて血液検査実施を聴取したため血液検査を実施せずアンジュ28錠処方乙A1認める血液検査の実施をしなかった理由については不知。 20.5.14産婦人科C医師月経経過申告4月下旬にM病院にて血液検査実施を聴取したため血液検査を実施せず子宮が若干肥大化子宮内膜が若干肥大化アンジュ28錠処方約100kg乙A1認める血液検査の実施をしなかった理由については不知。 20.8.12産婦人科D医師月経経過申告貧血が改善し6月頃から鉄剤内服中止を聴取次回受診時に癌検診実施予定血液検査アンジュ28錠処方乙A1認める20.9.3内科健康診断アンジュ28錠服用の効果により過多月経及び貧血が改善の結果、血圧が上昇との診断107.5kg171/91乙A2認める甲A14の320.11.18産婦人科D医師癌検診は次回受診時に実施予定アンジュ28錠処方乙A1認める20.12.17産婦人科C医師月経経過申告子宮の大きさに著明な変化なし血液検査・子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方乙A1認める21.2.18産婦人科C医師血圧・体重測定貧血改善により血圧が高いと診断 きさに著明な変化なし血液検査・子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方乙A1認める21.2.18産婦人科C医師血圧・体重測定貧血改善により血圧が高いと診断111.8kg164/104乙A1認める21.4.15内科発熱と咳の症状を訴え受診認める21.6.10産婦人科C医師過多月経の改善、貧血の改善を聴取アンジュ28錠処方(希望により)乙A1認める21.6.17平成21年定期職員健康診断97kg199/105甲A14の5、甲A21の1、甲A21の2認める甲A14の521.6.24内科高血圧の治療のため受診(以降、定期的に受診)左右の足で動脈硬化の疑い1か月後に血液検査実施予定アムロジンOD処方105kg190/109乙A2認める甲A14の421.7.22内科血圧が高いとの訴え左右の足で動脈硬化の疑い血液検査アムロジンOD・ミカルディス処方107.9kg172/100乙A2認めるBMI42(正常値は20~25)乙A2・19頁21.8.19産婦人科C医師旅行の日程により月経をずらしたいとの相談プラノバール処方乙A1認める21.8.19内科アムロジンOD・ミカルディス処方乙A2認める21.9.16内科変化なしとの申告ピル服用を確認2か月後に再度血液検査実施予定血液検査乙A2認める21.11.11産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める21.11.11内科血圧の大幅な改善を確認血液検査アムロジンOD・ミカルディス処方123/78乙A2認める21.12.16産婦人科E医師月経経過申告高血圧のため内科にて降圧剤による治療中であることを聴取子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞 ジンOD・ミカルディス処方123/78乙A2認める21.12.16産婦人科E医師月経経過申告高血圧のため内科にて降圧剤による治療中であることを聴取子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方乙A1認める22.2.17産婦人科E医師アンジュ28錠処方乙A1認める22.2.17内科原告の希望によりサノレックス(食欲抑制剤)を処方体重を週1回チェックするよう指示血液検査アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方乙A2認める22.3.3内科サノレックス処方乙A2認める22.3.17産婦人科E医師月経経過申告子宮内膜細胞診検査乙A1認める22.3.17内科血液検査アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方103kg乙A2認める22.3.31内科アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方乙A2認める22.4.14内科採血乙A2認める22.4.16内科アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方乙A2認める22.4.30産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める22.4.30内科サノレックスの依存性により、服用開始から3か月を目途に服用終了することを確認アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方乙A2認める22.5.14内科左右の足の動脈硬化の疑いについては、動脈の「軽い」硬化の疑いがある程度に改善血液検査アムロジンOD・ミカルディス・サノレックス処方93.5kg126/71乙A2認める22.5.28内科サノレックスの服用中止を指示血液検査アムロジンOD・ミカルディス処方約90kg乙A2認める22.6.8平成22年定期職員健康診断85Kg /71乙A2認める22.5.28内科サノレックスの服用中止を指示血液検査アムロジンOD・ミカルディス処方約90kg乙A2認める22.6.8平成22年定期職員健康診断85Kg132/77甲A14の6、甲A21の1、甲A21の222.6.25内科アムロジンODの服用中止を指示血液検査ミカルディス処方87kg乙A2認める22.6.30産婦人科F医師国立病院の健診結果(体重・血圧)を聴取アンジュ28錠処方85kg132/77乙A1、甲A14の6認める22.7.23内科体調良好との申告ミカルディス処方85kg乙A2認めるミカルディス処方乙A2・48頁22.8.20内科経過良好のため、再診は間隔を空けて2か月後とする血液検査ミカルディス処方81.5kg150/80乙A2認める22.9.8産婦人科C医師月経経過申告子宮全摘を勧めるも、積極的ではなく、次回受診時に相談することとする子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方79kg乙A1認める「子宮全摘を勧めるも、積極的ではなく、次回受診時に相談することとする」は裏付けがない。 乙A1・27頁22.10.15内科体調良好との申告経過観察のため2か月後に再診とする血液検査ミカルディス処方77.0kg109/66乙A2認める乙A2・63頁22.12.15産婦人科F医師C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できずアンジュ28錠処方乙A1認める「C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できず」は裏付けがない。 22.12.17内科降圧剤を処方せず、2か月後に経過観察とする血液検査69.0kg114/66乙A2認める23.3.11内科降圧剤 受診したため手術の相談できず」は裏付けがない。 22.12.17内科降圧剤を処方せず、2か月後に経過観察とする血液検査69.0kg114/66乙A2認める23.3.11内科降圧剤を処方せず、2か月後に経過観察とする血液検査65.7kg146/83乙A2認める23.4.27産婦人科G医師5月の連休明けに子宮内膜細胞診検査を行うことを確認C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できずアンジュ28錠処方乙A1認める「C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できず」は裏付けがない。 23.5.18産婦人科G医師月経経過申告C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できずエコー検査・子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞診検査乙A1認める「C医師の外来診察日ではない日に受診したため手術の相談できず」は裏付けがない。 23.5.18内科降圧剤服用中止後も血圧が正常で、BMIも正常範囲内(24. 2)であることから、今後は定期健康診断で経過観察血液検査62.0kg140/81乙A2認める乙A2・66頁23.6.9平成23年定期職員健康診断58kg124/76甲A14の8、甲A21の1、甲A21の223.8.17産婦人科G医師月経経過申告6月の健診結果(体重・血圧)を聴取手術の実施よりも経過観察を希望手術は実施するとなると翌年の春であり、実施するか否かは再度相談するアンジュ28錠処方58kg124/76乙A1、甲A14の8認める「手術の実施よりも経過観察を希望」は裏付けがない。 乙A1・32頁23.11.16産婦人科G医師月経経過申告6か月後にもフォローのため再度子宮内膜細胞診検査を行うこととする子宮内膜細胞診検 の実施よりも経過観察を希望」は裏付けがない。 乙A1・32頁23.11.16産婦人科G医師月経経過申告6か月後にもフォローのため再度子宮内膜細胞診検査を行うこととする子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方60kg乙A1認める24.2.15産婦人科G医師アンジュ28錠処方乙A1認める24.4.25産婦人科H医師5月に実施予定だった子宮内膜細胞診検査は、都合により次回受診時に実施することを確認乙A1認める24.5.29平成24年定期職員健康診断58kg121/93甲A14の9、甲A21の1、甲A21の2認める24.8.1産婦人科H医師月経経過申告両側卵巣に異状なし、腹水もたまっていないエコー検査アンジュ28錠処方乙A1認める24.10.24産婦人科C医師アンジュ28錠処方乙A1認める25.1.23産婦人科H医師アンジュ28錠処方乙A1認める25.4.10産婦人科H医師アンジュ28錠処方乙A1認める25.5.30平成25年定期職員健康診断60kg125/86甲A14の10、甲A21の1、甲A21の2認める25.6.12産婦人科H医師次回受診時に、子宮頚部細胞診検査及び子宮内膜細胞診検査を実施することを確認アンジュ28錠処方乙A1認める25.7.10産婦人科C医師エコー検査・子宮頚部細胞診検査・子宮内膜細胞診検査アンジュ28錠処方乙A1認める25.10.2産婦人科H医師アンジュ28錠処方乙A1認める25.11.20産婦人科I医師アンジュ28錠処方乙A1認める26.1.16脳外科67kg140/84甲A14の11認める26.1.16脳外科67kg166/93午前8時時点の数値 .20産婦人科I医師アンジュ28錠処方乙A1認める26.1.16脳外科67kg140/84甲A14の11認める26.1.16脳外科67kg166/93午前8時時点の数値甲A2026.1.16脳外科67kg148/86午前9時時点の数値甲A20

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