平成13年(行ケ)第405号審決取消請求事件判決原告ミノルタ株式会社訴訟代理人弁理士貞重和生被告株式会社シグマ訴訟代理人弁理士服部修一 主文 特許庁が無効2000-35492号事件について平成13年7月31日にした審決を取り消す。 訴訟費用は各自の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判主文第1項と同旨の判決。 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「超コンパクトな広角域を含む高変倍率ズームレンズ系」とする特許第2677268号(本件特許)の特許権者である。 本件特許は,昭和61年9月9日に特許出願され,平成9年7月25日に設定登録された。 被告は,平成12年9月13日に本件特許の無効の審判を請求し(無効2000-35492号),原告は,平成13年1月4日に明細書の訂正請求をしたところ,特許庁は,同年7月31日,上記訂正を認めた上,「特許第2677268号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を無効とする。」とした審決(本件審決)がされ,その謄本は同年8月13日に原告に送達された。 2 本件審決の理由の要旨上記訂正は,特許法134条2項で規定する訂正について,平成6年法律第116号附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法126条1項ただし書及び同条2項で規定する要件に適合するので,訂正を認める。 後記3の本件発明は,甲第6号証(審判甲第1号証,特開昭57-16820 なお従前の例によるとされる改正前の特許法126条1項ただし書及び同条2項で規定する要件に適合するので,訂正を認める。 後記3の本件発明は,甲第6号証(審判甲第1号証,特開昭57-168209号公報)及び甲第7号証(審判甲第2号証,特開昭60-178421号公報)の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから,特許を無効とする。 3 後記5の訂正審決による訂正前の本件発明の要旨(特許請求の範囲第1項)「物体側より順に,正屈折力の第1群,負屈折力の第2群,及び正屈折力の第3群を有し,この第3群が前群及び後群の2群に分けられるとともに,短焦点距離端から長焦点距離端へのズーミングに際して,第1群及び第3群前群及び後群を各々像面側から物体側へ移動し,前記第1・第2群間,第2・第3群間及び前記第3群の前群・後群間の空気間隔を変化させることによりズーミングを行ない,かつ,前記第2群が物体側から順に,像側により強い曲率を有する第1負レンズ,第2負レンズ,第3正レンズ及び第4負レンズから構成されるとともに,前記第3群のいずれかのレンズに非球面を有し,以下の条件を満足することを特徴とする超コンパクトな広角域を含む高変倍率ズームレンズ系:0.5< fIIIW / fW <0.9(|X|-|Xo|)/(Co(N'-N)) <0但し,fIIIW:第3群の広角端での,焦点距離,fW:全系の最短焦点距離,Co:非球面の規準となる球面の曲率,N:非球面より物体側の屈折率,N':非球面より像側の屈折率,X:下の式で表わされる光軸からの高さYにおける 焦点距離,Co:非球面の規準となる球面の曲率,N:非球面より物体側の屈折率,N':非球面より像側の屈折率,X:下の式で表わされる光軸からの高さYにおける光軸方向の変位量X=Xo+A4Y4+A6Y6+A8Y8+A10Y10+・・・・Xo: 下の式で表される非球面の規準となる球面の形状,Xo=CoY2/(1+(1-Co2Y2)1/2),A:非球面係数。」 4 後記5の訂正審決による訂正後の本件発明の要旨(特許請求の範囲第1項)「物体側より順に,正屈折力の第1群,負屈折力の第2群,及び正屈折力の第3群を有し,この第3群が前群及び後群の2群に分けられるとともに,短焦点距離端から長焦点距離端へのズーミングに際して,第1群及び第3群前群及び後群を各々像面側から物体側へ移動し,前記第1・第2群間,第2・第3群間及び前記第3群の前群・後群間の空気間隔を変化させることによりズーミングを行ない,かつ,前記第2群が物体側から順に,像側により強い曲率を有する第1負レンズ,第2負レンズ,第3正レンズ及び第4負レンズから構成されるとともに,前記第3群後群中のいずれかのレンズに非球面を有し,以下の条件を満足することを特徴とする超コンパクトな広角域を含む高変倍率ズームレンズ系:0.5< fIIIW / fW <0.9(|X|-|Xo|)/(Co(N'-N)) <00.01< △dIII / fW <0.30.02< fW / fIIIB <2.0但し,fIIIW:第3群の広角端での,焦点距離,fW:全系の最短焦点距離,fIIIB:第3群後群の焦点距離,△ / fIIIB <2.0但し,fIIIW:第3群の広角端での,焦点距離,fW:全系の最短焦点距離,fIIIB:第3群後群の焦点距離,△dIII:広角端における第3群の全長から望遠端における第3群の全長をひいた量,Co:非球面の基準となる球面の曲率,N:非球面より物体側の屈折率,N':非球面より像側の屈折率,X:下の式で表わされる光軸からの高さYにおける光軸方向の変位量,X=Xo+A4Y4+A6Y6+A8Y8+A10Y10+・・・・Xo: 下の式で表される非球面の基準となる球面の形状,Xo=CoY2/(1+(1-Co2Y2)1/2),A:非球面係数。」 5 訂正審決の確定原告は,本訴係属中の平成14年1月8日付けで,本件特許につき,特許請求の範囲の減縮等を目的として,明細書等の訂正をする審判を請求したところ(訂正2002-39004号),同年2月14日,当該訂正を認める旨の審決があり,その謄本は同月26日に原告に送達され,訂正審決は確定した。 第3 原告主張の審決取消事由本件審決は,第2の3に記載の訂正前の本件発明の要旨を認定し,これに基づき,第2の2のとおり,本件発明は特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるとしているが,第2の5のとおり特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正を認める審決が確定し,本件発明の要旨が第2の4のとおり訂正されたことにより,本件審決は,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,違法となったものである。 第4 被告の反論の要旨第2の4に記載の訂正後の本件発明をみても,特許法29条2項の規定により特許が許されないものであって,審 件発明の要旨の認定を誤ったことになり,違法となったものである。 第4 被告の反論の要旨第2の4に記載の訂正後の本件発明をみても,特許法29条2項の規定により特許が許されないものであって,審決の結論に影響を及ぼさないので,原告主張の事由によって本件審決を取り消すことはできないと解すべきである。 第5 当裁判所の判断第2に記載の事実関係は,本件証拠及び弁論の全趣旨により認めることができ(当事者間においてもこの限度では争いがない),これらの事実関係に照らせば,原告主張の事由により本件審決は取り消されるべきものであり,本訴請求は理由がある(訂正審決が確定したとしても本件審決は取り消されるべきでない旨の被告の前記主張は,採用することができない。)。 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。 (平成14年5月14日口頭弁論終結)東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官永井紀昭裁判官塩月秀平裁判官田中昌利
▼ クリックして全文を表示