平成12(ワ)858 会長選挙無効確認等請求

裁判年月日・裁判所
平成13年12月26日 千葉地方裁判所
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判決文本文27,792 文字)

平成13年12月26日言渡同日原本領収平成12年(ワ)第858号会長選挙無効確認等請求事件判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告が平成12年3月に実施した被告の会長選挙は無効であることを確認する。 2 被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成12年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の会員である原告が,平成12年3月に行われた被告の会長選挙に立候補したにもかかわらず,被告は原告の名前を候補者名簿に登載しないで選挙を実施したとして,その選挙の無効の確認と慰謝料100万円の支払を求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠に掲げたもの以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア被告は,地学教育の振興及び地学の普及を図ることを目的として,昭和23年5月に日本地学教育研究会として設立され,昭和36年に名称を日本地学教育学会と改めた学術団体で,会誌「地学教育」の発行や全国的に研究会を開催するなどの事業活動をすることを目的とする団体である。 イ原告は,文部省国立天文台に勤務する研究者であり,被告の正会員である。 (2) 被告の会則等(甲2)ア被告の会則(以下「被告会則」という。)によれば,被告は,会長1名,副会長3名,評議員30ないし50名,常務委員長1名などの役員を置くこと,その任期は2年(評議員については3年)であること(10条),会長は正会員の中から選出されること(11条1項),正会員は,役員選挙における選挙権及び被選挙権を有すること(6条2項)などが定められている。また, 2年(評議員については3年)であること(10条),会長は正会員の中から選出されること(11条1項),正会員は,役員選挙における選挙権及び被選挙権を有すること(6条2項)などが定められている。また,この会則の役員選挙についての細則によれば,役員選挙の管理は選挙管理委員会が行うこと,会長候補者の推薦は,正会員5名の署名押印した推薦状に本人の承諾書を添えて推薦者が選挙管理委員会の事務局に届け出るものとされている。 イ被告会則では,被告の会員が被告の名誉を損ない,またはその目的に反する行為を行った場合には,常務委員会等の審議を経て,評議員会の議決により除名されることがある旨の規定があるが(8条2項),そのほかには会員の懲戒処分についての規定はない。 (3) 本件選挙の経緯ア原告は,平成11年12月17日,被告の選挙管理委員会に対し,平成12年3月に行われる被告の会長選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補する旨の届出をした。 イこれに対し,被告は常務委員長名で,平成11年12月24日,原告に対し,立候補を辞退するよう要請した。その理由は,原告が以前に3名の共著で発表した論文の一部に引用文献の明示をしなかったことについて,被告が原告らに対して平成10年10月19日に行った被告を代表する活動を辞退するよう勧告した措置(以下「代表活動辞退措置」という。)は引き続き効力を有し,代表活動辞退の状態は現在も継続しているから,原告には会長候補としての資格がないというものであった。 ウ前記立候補辞退の要請に対して,原告が,平成12年1月4日に辞退拒否の回答をすると,被告は常務委員長名で,再度,同年2月10日に原告に本件選挙の立候補辞退を強く要請し,辞退の意思の有無を同月25日までに文書にて回答するよう通知した。原告は,これに対しても,同月19日に改め すると,被告は常務委員長名で,再度,同年2月10日に原告に本件選挙の立候補辞退を強く要請し,辞退の意思の有無を同月25日までに文書にて回答するよう通知した。原告は,これに対しても,同月19日に改めて立候補辞退の意思のないことを回答した。 エ被告は,平成12年3月3日の臨時評議員会で,原告が会長選挙の候補者として不適格であり,原告が立候補辞退の勧告に従わない場合には候補者名簿に原告の名前を登載しないとの決議をし,これを受けて,被告は選挙管理委員会委員長名で,原告に対し,立候補の取下げを要請した。 オこれに対し,原告は,立候補の取下げを拒否したため,被告は,原告を候補者名簿に登載せず,候補者としてI1名のみを記した投票用紙を作成し,これを全国の正会員に配布して本件選挙を実施した。 2 本案前の争点及びこれに関する当事者の主張(1) 被告の当事者能力(被告は権利能力なき社団といえるか)(被告の主張)ア最高裁昭和39年10月15日判決(民集18巻8号1671頁)は,法人格のない団体に当事者能力を認めるための要件として,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する旨判示するが,その後の下級審判決は,前記最高裁判決が挙げる要件全部が備わっていることまで認定していない例も多く,逆に,厳格な認定をしている例もあり,判例の要件は必ずしも統一されているといえない。また,学説上も前記最高裁判決が判示する要件に対しては,基準が曖昧であるし,そもそも,権利能力なき社団の成立要件を定立し,それによって全ての団体を権利能力なき社団とそれ以外に分ける手法自体に問題があるとの批判がある。 イ仮に,権利能力なき社団の は,基準が曖昧であるし,そもそも,権利能力なき社団の成立要件を定立し,それによって全ての団体を権利能力なき社団とそれ以外に分ける手法自体に問題があるとの批判がある。 イ仮に,権利能力なき社団の成立要件をまず定立し,これを充たした団体に対しては社団法人の規定又は考え方をできるだけ類推適用する考え方に立つとしても,以下のように,被告会則の内容は極めて不十分であるから,被告は権利能力なき社団にはあたらない。 すなわち,団体としての組織については,被告の運営・役員選出に関する細則を定める「理事会」なる組織があることになっているが(被告会則20条),組織の位置づけや構成員の選出方法等も明らかでなく,現実にはこのような組織は存在しない。 また,多数決の原則についても,最高議決機関である総会の定足数はわずか10分の1にすぎないし(被告会則9条1項(2)),また,総会の定めた基本方針に従い運営要領を審議決定する機関とされる評議員会(同9条2項)を構成する評議員のうち3分の1は選挙によらず会長が指名することとされているなど(同11条3項),多数決の原則が十分徹底されているとはいい難い。 さらに,代表者の定め,代表の方法,総会の運営,財産の管理についても,一応の規定は置かれているものの,総会の運営に関する細則は存在せず,議長の選任に関する規定もないし,選挙で当選した新会長がいつから会長としての職務を行うのかについての定めもない。 財産の管理についても,被告の財産は会費等の現金くらいしかないので,財産管理について定めた規定は被告会則18条程度しかなく,財産の管理者についての定めもない。 ウまた,仮に,被告会則の規定自体は権利能力なき社団の成立要件を充たしているとしても,被告の実態は,以下のように,規定とは乖離している。 すなわち,被告の会員が被告に参加す についての定めもない。 ウまた,仮に,被告会則の規定自体は権利能力なき社団の成立要件を充たしているとしても,被告の実態は,以下のように,規定とは乖離している。 すなわち,被告の会員が被告に参加する主目的は,被告の会誌の配布を受けたり,そこに論文を発表することや,講演会に参加して文部省や他学会の動向についての情報を得たりすることにあり,学会の運営自体に積極的に関わる会員はさほどいない。このため,最高議決機関とされる総会は,出席者は例年20人ないし30人くらいであり,評議員会の開催も年に1回がやっとで,その出席者も約30名の評議員のうち10名程度である。このため,被告会則上は,総会及び評議会の議決に基づき会務の執行を担当すべき常務委員会が,東京近郊の会員を中心としていて集まりやすいという事情のため,被告の運営をしているのが実態である。 さらに,被告会則上は,役員の選任方法として,常務委員長は評議員の互選により選出され(11条4項),常務委員は評議員会において常務委員長の推薦により評議員または評議員以外の正会員の中から選出される(同条5項)と規定されているにもかかわらず,毎年7月ころに開催される評議会を待っていては会務が進まないため,選挙後の4月ころに開催される常務委員会で役員が選任され,そのまま活動を始めており,被告会則との乖離が常態化している。 なお,財産管理者についての規定も被告会則にはないため,特に選出手続も定められていない「会計」という役職を設けて金銭出納事務を行っている。 エ被告は,日本学術会議の登録学術研究団体であるが,その登録要件は「学術研究の向上発達を図ることを目的とする団体」にふさわしいか否かの観点から定められたものであり,その登録要件と最高裁判決の権利能力なき社団の成立要件とは異なるから,被告が日本学術会議の登録学術研 学術研究の向上発達を図ることを目的とする団体」にふさわしいか否かの観点から定められたものであり,その登録要件と最高裁判決の権利能力なき社団の成立要件とは異なるから,被告が日本学術会議の登録学術研究団体としての登録要件を備えているからといって,権利能力なき社団の成立要件を備えているということはできない。 (原告の主張)ア前記昭和39年の最高裁判決は,法人格のない団体に当事者能力を認めるための要件として,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等,団体としての主要な点が確定していることを要する旨判示しており,被告は,この要件を充たしている。 すなわち,被告は,正会員,名誉会員,賛助会員及び学生会員により組織され,会則も整備され,団体としての組織を備え,多数決原則が取られている。また,構成員の変更にかかわらず団体そのものは存続し,被告会則上,代表者の定め,代表の任免・選任方法(10条,11条),総会等の機関(9条),財産管理等の定め(7条,8条1項,9条5項,15ないし18条)があるほか,社団としての組織,運営に関する主要な点が確定している。 イまた,被告は,日本学術会議の登録学術研究団体である。日本学術会議は科学者の国会といわれ,日本の科学者の内外に対する代表機関として,科学の向上発達を図り,行政,産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的として内閣総理大臣が所轄する公的団体である。日本学術会議の会員になることは,科学者として重責を担うことになるが,また非常な名誉であるところ,日本学術会議の登録学術研究団体は,その構成員である科学者のうちから日本学術会議の会員候補者を選定して日本学術会議に届け出ることができ,また,日本学術会 担うことになるが,また非常な名誉であるところ,日本学術会議の登録学術研究団体は,その構成員である科学者のうちから日本学術会議の会員候補者を選定して日本学術会議に届け出ることができ,また,日本学術会議の会員推薦人を指名して日本学術会議に届け出ることができる。このように,被告は,日本学術会議の登録学術研究団体として,日本学術会議会員の選任にかかわる等公的な使命を帯び,民主的な運営が十分に要請される団体である。 そして,日本学術会議の学術研究団体として登録されるには活動期間,構成員数,活動内容,収支状況等所定の要件を備えていなければならず,これら要件を備えている団体は,前記最高裁判決の判示でいう権利能力なき社団の成立要件を充たした団体であることは明らかである。 2 法律上の争訟性等(被告の主張)(1) 本件において,被告が原告の被告を代表する活動あるいはその役員への立候補を禁止することが著しく原告の社会生活上の権利を奪うことにはならない以上,これは任意団体である被告の内部において自治的自立的に解決すべき問題であって,法律上の争訟とはいえない。 (2) 仮に,本件が法律上の争訟であったとしても,一般市民社会の中にあってこれとは別個に自立的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の係争は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の司法審査の対象にならない。 そして,本件選挙の有効無効は一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるし,本件は,除名ではなく,単に被告を代表する活動あるいはその役員立候補への禁止であって,これが著しく原告の社会生活上の権利等を奪うことにはならない以上,本件の係争は,被告の自治的自立的解決に任せるべきであり,司法審査の対象とならない。 なお,被告は日本学術会議の登録 への禁止であって,これが著しく原告の社会生活上の権利等を奪うことにはならない以上,本件の係争は,被告の自治的自立的解決に任せるべきであり,司法審査の対象とならない。 なお,被告は日本学術会議の登録学術研究団体であり,日本学術会議の会員の候補者を選定し,日本学術会議に届け出ることができるとされているとはいえ,その届け出た候補者が日本学術会議の会員になる確率は非常に低く,被告が届け出た候補者が日本学術会議の会員になったことは今までに一度もない。 このように,被告の本質はあくまで研究者の任意の集まりにすぎないのであるから,この面からも裁判所がその内部に立ち入って司法審査を及ぼす必要性は少ない。 (原告の主張)被告は,日本学術会議の登録学術研究団体で,日本学術会議の会員選任にも関わり,ひいては国の科学研究,科学教育,科学行政にも関わる機能を有する団体で,単なる好学の士の集まりではなく,公平かつ民主的な運営が要求される団体である。その会長選挙は,その組織,運営面における最重要な案件であり,除名と同様に会員の基本的権利に関わる問題であるから,その被選挙権の有無はまさに法律上の争訟であるし,それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるとはいえないから,本件は,当然,司法審査の対象となる。 3 本案の争点本案の主たる争点は,被告が代表活動辞退措置を理由に原告の本件選挙への立候補届出を受け付けなかったことが本件選挙の無効事由となるか,すなわち,・代表活動辞退措置は拘束力を有しない事実上の勧告にすぎないか,実質的な懲戒処分か,・代表活動辞退措置の効力が対外的な活動の禁止にとどまるか,被告の会長選挙の被選挙権停止に及ぶか,・代表活動辞退措置には「当分の間」という期限が付されていたところ,本件選挙までにその期限が経過したといえるか,と 退措置の効力が対外的な活動の禁止にとどまるか,被告の会長選挙の被選挙権停止に及ぶか,・代表活動辞退措置には「当分の間」という期限が付されていたところ,本件選挙までにその期限が経過したといえるか,という点であるが,そのほかに,・被告の会長選挙に立候補するには5名の推薦人が必要であるところ,原告はその推薦人の要件を充たしていたか,すなわち,その推薦行為に錯誤があったか否か及びその推薦の取下げによってその要件を欠くことになるか,という点も付随的な争点である。 4 本案の争点に関する当事者の主張(1) 争点・-代表活動辞退措置は拘束力を有しない事実上の勧告にすぎないか,実質的な懲戒処分か(原告の主張)ア代表活動辞退措置の原因となった行為について被告は,代表活動辞退措置の原因となった原告らが本件論文に引用文献を明示しなかった問題について,故意による盗用と主張するが,これは,以下のように,過失により引用文献の明示を懈怠したものにすぎないし,この問題については,原告らと原著作者,被告及び日本学術会議第4部科学教育研究連絡委員会(以下「研連」という。)の関係者との間で,引用ミスとして解決済みである。 すなわち,原告らが真に盗作を企てたのであれば,論文の本文中に引用などの注記をすることはあり得ないが,本件論文中には引用の注記がある。また,本文中の引用だけでは引用文献の正確な出所が不明であるため,末尾に引用文献欄を設けて正確な書面等を記すのが通常であるところ,本件論文にこれがないのは,文献引用を本文で記述しているのに,うっかり末尾に引用文献欄を設けるのを怠ってしまったことの現れである。なお,原告らが「お詫びと訂正のお願い」という文書(甲9の②)の中で「盗作と言われてもいたしかたないことであります」という表現をしているのは,A及びBが起案した のを怠ってしまったことの現れである。なお,原告らが「お詫びと訂正のお願い」という文書(甲9の②)の中で「盗作と言われてもいたしかたないことであります」という表現をしているのは,A及びBが起案した原稿にあった表現をそのまま用いたからであって,盗作と言う事実を原告が認めたわけではなく,原告らは,引用文献を落とした原因は,共著者間の連絡・内容確認が不十分であったことにあると考えている。 イ除名以外の懲戒処分の可否について被告の会員に対する懲戒措置としては,会費滞納の場合の会員資格の停止または除籍(被告会則8条1項)と,会員が被告の名誉を損ない,または,被告の目的に反する行為を行った場合の所定の手続を経ての除名という措置(同条2項)しか規定されておらず,原告らの過失による引用文献懈怠に対する代表活動辞退措置は,何の法的根拠もない。 ウまとめしたがって,代表活動辞退措置は,「辞退」という文字どおり事実上の勧告にすぎず,辞退するか否かは被勧告者が自主的に決めることである。本件で,原告は,事態を沈静化させるため事実上,この勧告を受け入れ,被告を代表する活動を自粛してきたが,これによって原告の被告会員としての基本的権利を奪うことはできないのであるから,原告がこれに任意にしたがわない以上,代表活動辞退措置を理由に一方的にその被選挙権を奪うことは許されない。 (被告の主張)ア代表活動辞退措置の原因となった行為について原告らが発表した本件論文を,A・B著「ゴミと環境」の1994年度版(以下「A・B論文」という。)と比べると,「質問」に対する「予想」の脚を選択させる形式となっていることや,そのほとんどの脚は,A・B論文に記載された脚の字句を一部変えたり,脚の順番を並べ替えただけで,実質は同一であること,また,質問に対する予想の脚を る「予想」の脚を選択させる形式となっていることや,そのほとんどの脚は,A・B論文に記載された脚の字句を一部変えたり,脚の順番を並べ替えただけで,実質は同一であること,また,質問に対する予想の脚を選択させて皆で話し合わせたり,あるいは実験するという教育手法の一連の流れや原子の内容を小学校理科で扱うという試みも,A・B論文の功績を真似したものであること,さらに,原告らが発表した本件論文中の「二酸化炭素と水分子」の図も,A・B論文の図と比べると,左右の配置を入れ替えたり,配置の高さを変えただけで,図自体は同一であることなど,他人の学術的成果を自己の名において発表するという研究者としてあってはならない行為であることが明らかである。このような行為は,他の学術団体からも厳しい糾弾を浴びたものであり,盗用問題として持ち上がったものを関係者の配慮で表向きは引用文献を落としたと言う形で処理したのである。 なお,仮に,文献引用の懈怠が原告の過失により起きたとしても,本件論文と,A・B論文とを対照すれば,第三者から盗用と言う非難を受けてもやむを得ないものであり,著作権を尊重すべき研究者としてはあってはならない行為である。 イ代表活動辞退措置がなされるに至った経緯原告らの本件論文を掲載した日本学術会議選書9「『21世紀の教育内容』にふさわしいカリキュラムの提案」は,日本学術会議の編集協力の下に財団法人日本C協力財団が編集発行したものであり,論文を掲載してもらうには,日本学術会議の登録学術研究団体の会員であることが必要である。原告は,日本学術会議の登録学術研究団体である被告の会員であるからこそ同誌上において論文の発表ができたのであり,同誌上で被告の会員が問題を起こせば,被告も無関係な立場ではいられず,被告から推薦された委員が,平成10年9月12日に 研究団体である被告の会員であるからこそ同誌上において論文の発表ができたのであり,同誌上で被告の会員が問題を起こせば,被告も無関係な立場ではいられず,被告から推薦された委員が,平成10年9月12日に,研連において,原告の行為につき報告のうえ謝罪した。それにもかかわらず,研連は,被告に対し,被告における原告らの行為に対する処置の経過及び結果を同委員会委員長及び各所属学会長に報告することを求めてきたため,被告は,同年10月5日,原告らに対して代表活動辞退措置を取り,これを受けて,同日,本件論文の共著者の1人であるCが被告の常置委員を辞退し,翌日,同じく本件論文の共著者の1人であるDが評議員及び各常置委員辞任届を被告に提出し,原告も学校科目地学関連学会協議会の委員長を辞任した。被告は,同年11月9日付けの書面(乙4)で研連に対して原告らの行為に対する処置の経過及び結果を報告した。 このように,原告らに対する代表活動辞退措置の内容は,被告が,各種委員等の地位にあった者は全て辞任させ,かつ,その対象者全員に対し,被告を代表する活動を当分の間禁じた懲戒処分である。 ウ除名以外の懲戒処分の可否について会員の除名について規定した被告会則8条2項が,これ以外の懲戒処分を認めない趣旨と解すべき合理的理由はないし,除名の規定がある団体については,懲戒規定を置かない限り除名以外の懲戒処分は認めないというのも団体の運営上不都合である。このようにみてくると,被告会則8条2項は,除名という会員資格の喪失に関わる重大な処分については,その重大性に鑑み,常務委員会の審議を経て評議員会の議決を要するという手続を明文で定めたものと解するのが相当であり,会員資格の喪失に関わらない懲戒処分については然るべき機関が適宜決定しうるものである。 エまとめしたがって 議を経て評議員会の議決を要するという手続を明文で定めたものと解するのが相当であり,会員資格の喪失に関わらない懲戒処分については然るべき機関が適宜決定しうるものである。 エまとめしたがって,代表活動辞退措置は,実質的には懲戒処分として原告に対する拘束力を持つものである。また,代表活動辞退措置の法的性格がいずれであれ,原告が,代表活動辞退措置を一旦受諾した以上はそれに拘束されるし,それを解除すべきか否かは,措置を定めた被告が決定すべき事柄であり,措置を受けた原告の判断で代表活動を再開することは許されない。 (2) 争点・-代表活動辞退措置の効力が対外的な活動の禁止にとどまるか,被告の会長選挙の被選挙権停止に及ぶか否か(原告の主張)ア会長選挙への立候補は対外的な活動か代表活動とは,文字どおり対外的な活動であって会長選挙のような対内活動を代表活動に含めることは無理な解釈であり,会長は被告の代表者であり会長就任後の活動は代表活動になるから,会長就任につながる会長被選挙権の行使も辞退すべきというのは,代表活動の無理な拡大解釈である。なお,被告の常務委員会において,代表活動に会長選挙への立候補を含めることは議論にならなかったし,原告にもそのような認識はなかった。 イ被選挙権の意義被告のような公益を目的とする社団にあっては,自益権は重要な意義を有しない反面,共益権たる表決権は社団の管理運営に参加する基礎をなすもので,社員の有する権利のうち最も重要なものとされている。共益権の一つである被選挙権は,社員の権利のうち,その同意なくしては総会の決議をもってしても奪うことのできない固有権で会員の基本的権利である。 ウまとめしたがって,代表活動辞退措置によって,原告の被選挙権を停止することはできない。 のうち,その同意なくしては総会の決議をもってしても奪うことのできない固有権で会員の基本的権利である。 ウまとめしたがって,代表活動辞退措置によって,原告の被選挙権を停止することはできない。 (被告の主張)ア会長選挙への立候補は対外的な活動か被告の会長に当選すれば,まさに被告を代表して活動を行う立場となるのであるから(被告会則12条),会長選挙への立候補に対外的な活動を禁止する代表活動禁止措置の効力が及ぶのは当然である。 イ被選挙権の意義被告はC研究団体であり,原告を含む被告の会員は研究を目的として入会しているのであるから,その権利についても,会誌に投稿し,後援会で研究発表ができる,会誌などの配布を受ける,事業に参加できる等の権利が本質的なものである。これに対し,あくまでも被告内部の機関にすぎない会長の被選挙権は,これら会員としての本質的権利に比べると重要性は相当劣るものであり,これについて制約を受けたからといって,原告の会員としての活動が何ら損なわれるものではない。 ウまとめしたがって,代表活動辞退措置の懲戒処分としての効力は,被告の対外的な活動を行う会長選挙への立候補禁止を当然に含むものである。 (3) 争点・-代表活動辞退措置には「当分の間」という期限が付されていたところ,本件選挙までにその期限が経過したといえるか(原告の主張)1年を超える懲戒処分は自粛期間としては社会通念上相当以上に長期間であるから,「当分の間」とは,1年が最長との趣旨に解釈されるべきである。代表活動辞退措置がなされたのは平成10年10月19日であり,本件会長選挙は平成12年3月に行われたもので,その間1年5ヶ月も経過しているから,「当分の間」は優に経過している。 また,被告の常務委員会は,平成12年1月11日及び同月31日の会 月19日であり,本件会長選挙は平成12年3月に行われたもので,その間1年5ヶ月も経過しているから,「当分の間」は優に経過している。 また,被告の常務委員会は,平成12年1月11日及び同月31日の会議で,原告の会長選挙への立候補を認め,会長候補者として扱うという議決をしており,これによって代表活動辞退措置は解除された。 (被告の主張)代表活動辞退措置の「当分の間」の具体的な期間は,事案の軽重や,事件の影響,被処分者の反省等を総合考慮して被告が決定するものである。 このような,被告の「当分の間」の判定に逸脱や濫用があったのであれば違法の問題も生じうるかもしれないが,原告らが行った他人の学術的成果を自己の名において発表するという行為の重大性,原告が会長選挙に立候補した当時,研連には,原告らの盗用が問題になった当時の委員が在籍しており,関係者にとって事件の記憶が生々しいものであったこと,被告が原告らの処分を研連に報告してから約半年後に,原告が前回会長選挙の投票に対するお礼や自己の業績・経歴等を記載した文書を会員に配布するなど,今回の会長選挙への布石とみられても仕方のないような態度を取っており,到底,自粛の名に値しない態度であったこと等からすると,少なくとも次回の会長選挙が終了するまでは「当分の間」は経過していないと考えるのが当然であり,被告の判断に逸脱や濫用はない。 なお,原告は,平成12年1月11日及び同月31日の被告の常務委員会で,原告の会長選挙への立候補を認める議決がされたかのように主張するが,そのような決定がされたことはなく,原告の被選挙権の有無は,最終的には同年3月3日の臨時評議員会の議決に委ねられたものである。 (4) 争点・-被告の会長選挙に立候補するには5名の推薦人が必要であるところ,原告はその推薦人の要件を充たしていた 権の有無は,最終的には同年3月3日の臨時評議員会の議決に委ねられたものである。 (4) 争点・-被告の会長選挙に立候補するには5名の推薦人が必要であるところ,原告はその推薦人の要件を充たしていたか,すなわち,その推薦行為に錯誤があったか否か及びその推薦の取下げによってその要件を欠くことになるか(原告の主張)被告主張の推薦人の数は立候補受付に必要な停止条件であって,立候補後の解除条件ではない。仮に,立候補後も所定の推薦人数の維持が必要であれば,その旨の選挙細則が必要であり,推薦の取下げがあったときは,被告はその旨の報告を立候補者にして推薦人員の補充の届出を求めなければならない。しかるに,本件では,そのような細則も補充要請もなかった。したがって,原告は,会長候補者としての要件を充足していたといえる。 (被告の主張)被告会則の役員選挙についての細則上,会長候補には正会員5名以上の推薦を要するところ,平成12年3月3日の臨時評議員会までに,原告の推薦人のうち2名から,原告が著作権を侵害するような行為を行ったことを知らずに推薦してしまったので推薦を取り下げる旨の申出が選挙管理委員会に対してなされた。 前記推薦人2名は,原告が著作権を侵害するような行為を行ったことを知っていれば,原告を会長に推薦することはしなかったし,通常人も会長に推薦したりはしないだろうから,推薦は錯誤による意思表示として無効である。 さらに,原告も推薦を受けるにあたって,原告が著作権を侵害するような行為を行ったという重大な事実を秘匿することは信義則上許されないから,かかる事実を秘匿した原告の行為は詐欺にあたり,推薦人らの取下書により推薦の意思は取り消された。 したがって,原告は,選挙当時,会長候補者としての要件である推薦人5名の要件を充たしていなかった。 第3 本案 を秘匿した原告の行為は詐欺にあたり,推薦人らの取下書により推薦の意思は取り消された。 したがって,原告は,選挙当時,会長候補者としての要件である推薦人5名の要件を充たしていなかった。 第3 本案前の主張に対する判断 1 被告の当事者能力の有無について(1) 法人格を有しない団体が,民事訴訟法29条の規定により,法人でない社団として当事者能力を有するというためには,当該団体が団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体が存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が,規則によって確定していることを要すると解すべきである(最高裁昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁)。 (2) そこで,被告につきこの点を検討するに,前記第2の1の事実及び証拠(甲1,2,39,40の①ないし④,乙9ないし14,20,34,36,証人E,証人F,証人G,原告本人)により認められる事実を併せると以下のとおりとなる。 ア被告は,昭和23年5月に,地学教育の振興及び地学の普及を図ることを目的として日本地学教育研究会として発足し,昭和36年には,日本地学教育学会と改称して現在に至っており,地学教育に関する調査研究を行い,年6回会誌「地学教育」を発行し,全国的に研究会を開催するとともに,教育課程の検討,教育実践報告集の作成等の事業活動を行っている。被告は,学校教育における教育課程及び学習指導要領の改訂に際して,文部省から地学教育に関して意見を求められる団体であり,過去に,高校地学カリキュラム大綱を編成して文部省に提出したり,また,高校の授業において地学が2単位の必修科目となるのに尽力してきたという経過がある。 イ被告は,内部的な規約として会則(被告会則)を有すると 地学カリキュラム大綱を編成して文部省に提出したり,また,高校の授業において地学が2単位の必修科目となるのに尽力してきたという経過がある。 イ被告は,内部的な規約として会則(被告会則)を有するところ,被告会則においては,被告は,正会員,名誉会員,賛助会員,学生会員で組織され(4条),その機関としては,総会(正会員で組織される被告の運営の基本方針を決定する最高議決機関。),評議員会(会長・副会長・評議員で組織され,総会の定めた基本方針に従い運営要領を審議決定する。),常務委員会(常務委員長・常務委員で組織され,総会及び評議員会の議決に基づき被告の会務を執行し,事業の企画及び調整を行う。),常置委員会(常務委員会のもとにその任務を補佐する。),監事会(会計の監査を行う。)があるとされている(9条)。また,被告会則上,被告の役員には,会長,副会長,評議員,常務委員長,常務委員,監事(10条)があり,会長は被告を代表して会務を統括し,副会長は会長に事故があるときに職務を代行するとされている(12条)。 ウ被告の意思決定の最高機関は,正会員をもって組織される総会であるところ,これには年1回の通常総会と,評議員会が必要と認めたとき,または正会員の3分の1以上の請求があったときに開催される臨時総会があり,そこで正会員の10分の1以上の参加があったときに,被告運営の基本方針を議決することができるとされている(被告会則9条1項)。総会の定めた基本方針に基づき,被告の運営を決するのは評議員会であるが,被告の会員の主体は高校の地学教師であり,教師としての仕事や研究のほかに被告の運営にまで積極的に参加できる会員は少ない。そのため,総会の出席者も例年20人くらいしかなく,多数の委任状の提出によって定足数を充たしているのが実情であり,評議員会の開催も年1回 や研究のほかに被告の運営にまで積極的に参加できる会員は少ない。そのため,総会の出席者も例年20人くらいしかなく,多数の委任状の提出によって定足数を充たしているのが実情であり,評議員会の開催も年1回程度であって,その出席者も10名くらいであるため,実際には東京在住の会員を主体とする常務委員会が被告の運営にあたっている。また,被告会則上は,そのほかに被告の運営,役員選出等の細則を定める機関として理事会があるとされているが(20条),実際にはこのような理事会は存在しない。 エ被告の入退会については,入会を希望する者は,所定の入会申込証を被告に提出し,会員委員会の審査を経て常務委員会が決定すること,退会を希望する者は,退会届を提出し会員委員会の審査を経て,常務委員会の承認を得ることとされている(被告会則5条)が,会員委員会なるものが存在するか否か不明である。被告は,現在正会員数が約750名であり,その範囲は全国にまたがっているが,前記のように,その主体は高校の地学教師である。 オ被告の代表の方法については,被告会則に役員の選出手続が規定され,会長は正会員の中から選出されること(11条1項),正会員は,役員選挙における選挙権及び被選挙権を有すること(6条2項)などが定められている。また,被告会則中の役員選挙についての細則によれば,役員選挙の管理は選挙管理委員会が行うこと,会長候補者の推薦は,正会員5名の署名押印した推薦状に本人の承諾書を添えて推薦者が選挙管理委員会の事務局に届け出るものとされている。 カ被告の財産の管理については,被告会則中の会費についての細則に,会員の負担すべき年会費に関する規定が存在し,正会員・賛助会員・名誉会員・学生会員の区分に従って年会費が定められ(正会員は年額6000円),会費の変更には総会の承認が必要とされる。 ついての細則に,会員の負担すべき年会費に関する規定が存在し,正会員・賛助会員・名誉会員・学生会員の区分に従って年会費が定められ(正会員は年額6000円),会費の変更には総会の承認が必要とされる。そして,会員は年会費を毎年一定の時期までに納入するものとされている。被告会則上,会員の支払う年会費は被告の収入とされ,被告はその収入をもって被告の運営に要する経費を支弁するものとされており(15条),その資産は郵便振替貯金または銀行預金と規定されている(18条)。また,被告の予算及び決算については総会の承認が必要である(17条)。なお,被告会則上,会計の監査は監事会が行うこととされている(同9条5項)が,実際には監事及び監事会は存在せず,会計の担当者を1人決めて,その者が金銭の出納事務を行っていた。 キ被告は,日本学術会議の登録学術研究団体である。日本学術会議は,日本の科学者の内外に対する代表機関として,科学の向上発達を図り,行政,産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする会議であり,内閣総理大臣が所轄し,その経費は国庫で負担する。日本学術会議は,科学に関する重要事項の審議及び研究の連絡を行い,政府から諮問を受けたり,政府に対して勧告することができる。 ク日本学術会議に登録されるためには,科学者により構成され,学術研究の向上発達を図ることを目的とする団体である必要があり,(1)名称,目的,事務所,構成員の資格及び代表者の定めがあること,(2)学術研究の向上発展を図るための活動が引き続き3年以上で規則で定める期間を超えて行われていること,(3)300人以上の科学者が構成員であること,(4)構成員による学術研究の発表又は討論のための集会を年1回以上開催していること,(5)学術研究論文の発表のための刊行物を年1回以上発行していること (3)300人以上の科学者が構成員であること,(4)構成員による学術研究の発表又は討論のための集会を年1回以上開催していること,(5)学術研究論文の発表のための刊行物を年1回以上発行していること又はこれに相当すると認められる団体の発表活動をしていること,(6)運営及び活動に係る方針を決定する総会又はこれに準ずるものを年1回以上開催していること等の要件を充足する必要がある。 ケ日本学術会議の登録学術研究団体は,構成員から日本学術会議の会員の候補者を選定して日本学術会議に届け出ることができ,また,日本学術会議の会員推薦人を指名して日本学術会議に届け出ることができる(同法19条,20条)。もっとも,今まで被告の会員から日本学術会議の会員に選任された例はない。また,日本学術会議の登録学術研究団体の会員が会誌上で発表した論文は,例えば,大学教員の採用・昇任に必要とされる研究論文として評価の対象になる等,被告にとって,日本学術会議の登録学術研究団体であることは重要な意味を持つ。 コ被告は日本教育研究連合会に加盟している。日本教育研究連合会は,文部科学省から補助金を受け,約60の加盟団体のうち35団体に補助金を配分しており,被告も,日本教育研究連合会から毎年約100万円の補助金を受けている。 (3) 上記(2)の認定事実によれば,被告は,会則を有し,会則には,その規定において役員が置かれるとともに総会等の機関が設けられ,会長は被告を代表し,正会員をもって構成される総会は被告の運営に関する基本方針を決定すること等が定められるとともに,被告の意思決定の方法については多数決の原則が定められ,会員の入退会などにかかわらず被告の同一性は失われることがなく,組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定しているなど,前記(1)の権 いては多数決の原則が定められ,会員の入退会などにかかわらず被告の同一性は失われることがなく,組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定しているなど,前記(1)の権利能力なき社団として認められるための要件を備えているものと認められる。 もっとも,その組織及び運営の実態をみると,被告会則上は常務委員会の上部機関であって,被告の運営及び活動方針を決すべき評議員会が実際にはあまり機能しておらず,常務委員会が事実上それに代わる機関となっていることや,理事会なるものも実際には存在しないこと,また,会計業務についても,会則で予定されている監事会は存在せず,会計担当者が1人で金銭の出納事務を行っているなど,被告会則と実態との間に若干の乖離があることは否定できないけれども,前記(2)の認定事実によれば,被告は,総会,評議員会,常務委員会など,団体としての組織を会則上も実態上も備えているうえ,総会における議事運営等についても多数決の原則が取られていることは明らかであるし,被告が,昭和23年以来,構成員の変動にもかかわらず団体が存続し,日本学術会議の登録学術研究団体として独自の事業活動を継続してきていることなどを併せ考えれば,被告会則とその実態との間に前記の程度の乖離があるからといって,被告が権利能力なき社団にあたるとの前記判断が左右されるものではない。 (4) したがって,この点に関する被告の本案前の主張は理由がない。 2 法律上の争訟性等(1) 裁判所は,「一切の法律上の争訟を裁判する」(裁判所法3条)が,ここにいう法律上の争訟とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争を指称する(最高裁昭和26年・第584号同29年2月11日第一小法廷判決・民集8巻2号419頁)。 本件は,原告を候 の争訟とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争を指称する(最高裁昭和26年・第584号同29年2月11日第一小法廷判決・民集8巻2号419頁)。 本件は,原告を候補者名簿に登載しないで実施した選挙の有効性,すなわち原告の被選挙権の有無に関する紛争であって,被選挙権についての法令,会則,細則,慣習などの法規範を解釈し,又は適用することによって終局的に解決し得べきものであり,法律上の争訟であることは明らかである。 (2) もっとも,法律上の争訟であっても,自律的な法規範をもつ社会ないしは団体にあつては,当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ,必ずしも,裁判による司法的解決を適当としないものがあるから,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り司法審査の対象から除かれるべきであると解される。 本件についてこれをみるに,前記1(2)の認定事実によれば,被告は,地学の教師や研究者で構成される団体であるが,学校教育における教育課程及び学習指導要領の改訂,地学カリキュラム大綱の編成にあたり文部省に意見を出すなど,公的教育の一環に携わる活動をしているものであるし,日本の科学者の内外に対する代表機関で,内閣総理大臣が所轄する日本学術会議の登録学術研究団体でもあること,このような公的性格を有する団体の会員としての地位及び権利を認められるか否かは,地学の教育者及び研究者にとって,その社会的評価にも関わる重要な事項であると考えられること,その会長選挙についての被選挙権の有無はその会員としての基本的権利の一つと考えられることなどからすれば,本件選挙についての原告の立候補届出を受け付けなかったという本件の問題が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題として,司法審査の対象から除外されると の一つと考えられることなどからすれば,本件選挙についての原告の立候補届出を受け付けなかったという本件の問題が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題として,司法審査の対象から除外されるとは認め難い。 (3) したがって,この点に関する被告の本案前の主張も理由がない。 第4 本案の主張に対する判断 1 本件選挙に至るまでの経緯前記第2の1の事実及び証拠(甲3の①,②,4,5,6の・ないし・,7,8,9の・,・,10ないし18,19の・ないし・,20ないし29,30の・,・,31ないし39,乙1ないし8,22ないし30,33ないし40,証人F,証人E,証人G,原告本人)によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告は,平成9年ころ,被告の推薦を受けて研連の新しい教育課程を作るためのプロジェクトに参加し,シンポジウムで研究発表を行った。その後同年10月ころ,原告は,このときの発表をもとに,C,Dと共に日本学術会議選書9「『21世紀の教育内容』にふさわしいカリキュラムの提案」に本件論文を発表したところ,翌年7月ころ,この本件論文中にA・B論文中の文章と絵が引用されているにもかかわらず,引用部分の一部に引用文献の記載がないことが発覚した。すなわち,原告らの本件論文とA・B論文を比較すると,「質問」に対する「予想」の脚を選択させる形式,質問及び脚の内容はほぼ同一である(乙1と2,22と23)ほか,本件論文の238ページ上部にある漫画(乙24)は,A・B論文の19ページ下部にある漫画(乙25)と全く同一であるにもかかわらず,原告の本件論文238ページには「(A,1992)」という記載があるだけで,その末尾に引用文献の表示はない。また,本件論文237ページにある「二酸化炭素と水分子」の図(乙26)は,A・B論文10ページの図(乙27)につい ジには「(A,1992)」という記載があるだけで,その末尾に引用文献の表示はない。また,本件論文237ページにある「二酸化炭素と水分子」の図(乙26)は,A・B論文10ページの図(乙27)について左右の配置を入れ替えたり,図の配置の高さを変えただけで,図自体は全く同一である。 (2) そこで,前記日本学術会議選書9の編集者であり研連委員長であるHがA及びBに謝罪し,日本学術会議選書9の出版停止を申し出たところ(甲19の・),両名は,お詫びと訂正を今後販売される日本学術会議選書9に挿入することで足りる旨答えた。そこで,原告らがお詫びの文書の案を作成してBに送ったところ,Bは,それに修正を加え,「盗作と言われても弁解の余地がありません」という内容の対案(甲6の・の修正前のもの)を原告らに送付した。原告らは,Bが作成した対案の一部に表現上の訂正を加えたものの,基本的にはこれを受け入れ,再度,A及びBの了承を得たうえ,最終的に「お詫びと訂正のお願い」(甲9の②)という謝罪の文書を作成した。 (3) 前記第3の1(2)認定のような被告と日本学術会議との関係から,被告は日頃から日本学術会議の一部門である研連との関係を重視していた。しかるに,被告が研連に推薦した会員である原告らが,シンポジウムで行った発表をもとに研連が編集発行した本件論文の中で前記のような問題を起こしたため,平成10年9月12日,被告の副会長のIが,前記の経過を研連に報告するとともに,不適切な人材を被告から推薦したことを謝罪した。これに対し,研連からは,この件に関する被告における措置の経過と結果を研連の委員長及びその所属する各学会の長宛に報告することが求められたため,被告は,研連が事態を重くみていることを知り,同月21日ころ,当時の被告会長のJ名で,原告に対し,本件論文に引用文献の と結果を研連の委員長及びその所属する各学会の長宛に報告することが求められたため,被告は,研連が事態を重くみていることを知り,同月21日ころ,当時の被告会長のJ名で,原告に対し,本件論文に引用文献の記載がないということがなぜ起きたのか,この件について原告が現在どのような考えであるのかについて回答するように求めた(甲13)。これに対して,同月24日ころ,本件論文の著作者の1人であるDは被告のJ会長に対して,この問題は,原告とDとの間の連絡・内容確認が不十分であったことによって起きた過失であるが,この件については既にB及びAとの間で円満に決着がついていると回答した(甲14)。 (4) 平成10年10月5日,被告の常務委員会が開催された。そこで,被告の副会長Iが,原告らが発表した本件論文に不適切な引用があり,この件について研連から処置の経過と結果の報告を行うことが求められたことの説明を行うとともに,当時の被告会長Jから前記の経過についての報告が行われた。同常務委員会では,この問題を重く受け止め,原告らを被告から除名すべきだという意見も出されたが,Jから穏便に事を済ませた方がいいとの意見が出されたこともあって,除名すべきという意見は多数には至らなかった。しかしながら,本件が被告の推薦を受けて研連の委員として参加したシンポジウムで発表した論文の中で起きた問題であることから,研連やその所属会に対する配慮から,常務委員会は,原告らに対し,被告の推薦を受けて被告を代表して研連等の対外的な活動を行う活動を辞退させるという意味で,原告,C及びDに対し,被告を代表する活動を禁止することにした(代表活動辞退措置)。この措置を原告らに通知した書面(甲20)では,「申し出により」として,原告らの自発的申出に基づいて措置がなされたようになっているが,これは,原告ら する活動を禁止することにした(代表活動辞退措置)。この措置を原告らに通知した書面(甲20)では,「申し出により」として,原告らの自発的申出に基づいて措置がなされたようになっているが,これは,原告らの立場を配慮したものであり,実際には常務委員会という被告の機関による一方的決定である。 (5) このような代表活動辞退措置を受けて,Cは被告の行事委員会委員を辞退し,Dも被告の評議員,教育課程検討委員会委員及び行事委員会委員を辞任し(乙3),原告も,被告の学校科目地学関連学会協議会委員長を辞任した。被告会長のJは,平成10年11ころ,原告らに対してこれらの措置を行ったことを研連の委員長及び研連の各所属学会長に報告した(乙4)。これを受けて,研連の所属学会の一つである日本理科教育学会では,平成11年3月の学会誌「研究紀要」の学会彙報(乙33)に,原告らの「お詫びと訂正のお願い」(甲9の②)と研連委員長Hの「お詫び」(甲10)を掲載した。なお,前記(4)の常務委員会の議事録(甲38)には,本件論文をめぐる問題について,「日本学術会議選書9の件につき,報告を受けて協議の結果,適切な論文の書き方について会員に研究者としての注意を喚起し,その徹底を図るとともに,関連教育学会に報告することとなった。」と記載されたのみで,原告らの氏名も記載されていなかったため,被告の会員の中には,前記日本理科教育学会の彙報によって初めて原告らの本件論文についての問題を具体的に知った会員も多かった。 (6) その後,原告は,平成11年4月ころ,原告が行っている教育活動や,執筆,講演等の活動をまとめて原告が記載した「教育活動(Ⅰ)」と題する書面(乙5)を被告の会員に配布するとともに,同年9月にも,同様の「教育活動(Ⅱ)」と題する書面を被告の会員に配布した。また,原告は,被告 演等の活動をまとめて原告が記載した「教育活動(Ⅰ)」と題する書面(乙5)を被告の会員に配布するとともに,同年9月にも,同様の「教育活動(Ⅱ)」と題する書面を被告の会員に配布した。また,原告は,被告の会員に対し,「日本学術会議選書9「『21世紀の教育内容』にふさわしいカリキュラムの提案」中の「総合化理科のカリキュラムへの試み」における不適切な参照・引用をした件に関する事情説明とお詫び」(甲37)という文書も被告の会員に配布しているところ,これは本件論文をめぐる問題についての原告らの側に立った言い分をまとめたものであり,内容的な面から研連が前記の問題発生当時,その所属する各学会の会員に配布することを認めなかったものである。このような原告の一連の行動から,被告の常務委員の間には,原告が次の会長選挙に立候補するつもりかもしれないという観測が広まった。 ・そこで,被告は,平成11年10月4日に常務委員会を開催して,本件論文に関わった原告ら3名に対する代表活動辞退措置の効力は未だ解除されておらず,代表活動が制限されている状態が継続していることを確認した。そして,被告の常務委員長Kは,同年11月8日付けでこれを原告らに通知し(甲21),また,当時の被告の会長Jは,研連の委員長Hに対し,原告の前記のような活動に対し被告内部で対応する必要性を実感している旨を報告した(乙28)。 ・平成11年12月4日,被告の常務委員会で原告が会長選挙に立候補した場合の対応についての議論がなされたが,原告の立候補は時期尚早であり,代表活動辞退措置は,未だ「当分の間」を経過したといえず,解除されていないという意見で一致したため,原告が立候補した場合の対応として,まず常務委員長Kが原告に立候補の辞退を要請し,それでもなお原告が辞退をしない場合は,選挙管理委員会よりも上位 といえず,解除されていないという意見で一致したため,原告が立候補した場合の対応として,まず常務委員長Kが原告に立候補の辞退を要請し,それでもなお原告が辞退をしない場合は,選挙管理委員会よりも上位の機関であり,原告に対する措置を決定した常務委員会で原告の立候補への対応を判断することが適当である旨の決定がなされ,同月6日,被告の副会長Iが研連に経過報告を行った(甲23)。 ・平成11年12月17日,原告が翌年3月の被告の会長選挙(本件選挙)に,Cが評議員選挙に,それぞれ立候補の届出をしたため,被告常務委員長のKが常務委員会の決定に従い,原告及びCに対し,同月24日付けで「立候補の辞退について(お願い)」という文書(甲22)を送付した。しかし,原告はKに立候補を辞退しない旨回答したため,平成12年1月11日に臨時の常務委員会が開催された。その常務委員会では,原告の立候補については,代表活動辞退措置を受けている者が役員に立候補することに対する疑義が出され,そのことについて議論したが,被告の会則には,選挙に立候補した者に対して,その立候補を制限する規定がないため,原告らを立候補したものとして扱うという方向になったものの,最終的な判断は当時の被告の会長Jに委ねられることとなった。 ・被告の会長Jは,既に会員に会誌で原告が起こした事件の内容を報告していること及び研連や他学会の意向を考慮すると,原告の立候補を認めるわけにはいかないとして,平成12年1月31日の常務委員会に,原告の立候補を受け付けない旨の会長動議を出した。常務委員の中で,動議に賛成する者は3名で,反対する者は9名であった。9名の反対意見は,立候補は認めるが,推薦人に事情をきちんと話して,推薦人がおりた場合には会長裁定で取り消すというものだった。この結果を受けて,最終的に原告の立候 3名で,反対する者は9名であった。9名の反対意見は,立候補は認めるが,推薦人に事情をきちんと話して,推薦人がおりた場合には会長裁定で取り消すというものだった。この結果を受けて,最終的に原告の立候補を受け付けるか否かの判断は会長に委ねられることになった。 ・その後,Jは,もう一度原告の立候補を認めるかどうかを議論したいとして平成12年2月5日に臨時の常務委員会を開催したがその常務委員会でも原告の立候補を認めるか否かについての結論が出ず,その上位機関である評議員会を臨時に開催することになった。また,被告の常務委員長Kは,同月10日付けで,原告に対して会長選挙への立候補の辞退を文書(甲24)で要請するも,原告は,同月19日付けで,立候補辞退の意思がない旨回答した(甲25)。 ・平成12年3月3日の臨時評議員会では,被告の選挙管理委員長Fが原告の推薦人のうち2名が推薦をおりたことを説明した後,会長候補者としてふさわしいかについて議論がなされ,この際,代表活動辞退措置を解除してはどうかとの提案もあったものの,本件論文の文献引用懈怠が問題となったときの委員がまだ研連に残っていたため,まだ時期尚早であるとの意見も出され,また,被告会長Jも,代表活動辞退措置は,原告がある程度の論文を書き,研究者として実績を重ねたと認められるまで継続するという意見であった。その評議員会で原告が会長選挙の候補者にふさわしいかについて投票を行ったところ,推薦人が推薦を辞退したことで立候補の条件を充たしていないし,原告は代表活動辞退の措置が継続中であるとの理由でふさわしくないとの意見が多数を占め,再度,原告に対して立候補の取下げを勧告することになった。ただ,原告が勧告に従わない場合の措置については,役員候補者は選挙管理委員会が決定するという被告会則の役員選挙についての の意見が多数を占め,再度,原告に対して立候補の取下げを勧告することになった。ただ,原告が勧告に従わない場合の措置については,役員候補者は選挙管理委員会が決定するという被告会則の役員選挙についての細則を根拠に選挙管理委員会が候補者名簿に登載しないことを決めるべきであるとの意見と,会則上,立候補した者を候補者名簿から外すことは選挙管理委員会でもできないことなどを理由に選挙を行うべきであるとの意見に分かれ,投票の結果,前者が多数を占めた。 ・前記評議員会の結果を受けて,被告の選挙管理委員長Fは,平成12年3月17日付けで,原告に対し,臨時評議員会の審議で原告が会長として不適格とされたとして会長選挙の取下げを勧告する文書(甲26)を送付したが,原告が勧告を受け入れなかったため,選挙管理委員会は,候補者名簿に原告氏名を登載しないで投票用紙を会員に発送した。 2 争点・-代表活動辞退措置が拘束力を持たない事実上の勧告にすぎないか,実質的な懲戒処分か(1) 本件の代表活動辞退措置の実質については,措置の対象となった原告の行為の態様,その措置決定までの経緯等を総合考慮して判断する必要があるところ,前記1認定事実からすれば,代表活動辞退措置の原因となった原告らの本件論文における引用懈怠の態様は,第三者からみれば盗用という非難を受けかねないものであり,著作権を尊重すべき研究者としてはあってはならない行為であること,また,被告は,公的教育とも関係の深い学会として,日本学術会議及びその一部門である研連との関係を重視せざるを得ない立場にあったところ,原告らが引用文献を記載しなかった本件論文は原告が被告の推薦を受けて発表した日本学術会議の論文に掲載されたものであること,そして,被告は,研連から原告に対する処置について経過報告を求められるなど,この問題につい を記載しなかった本件論文は原告が被告の推薦を受けて発表した日本学術会議の論文に掲載されたものであること,そして,被告は,研連から原告に対する処置について経過報告を求められるなど,この問題については厳格に対処しなければならない立場にあったこと,なお,被告の常務委員会が原告らに対し,代表活動辞退措置を決定した経緯は前記1認定のとおりであり,原告らを被告から除名すべきだという意見も出されたが,当時の被告のJ会長の意見もあって,代表活動辞退措置ということになったものであること,その決定には原告らの「申し出により」との表現が用いられているけれども,それは原告らの立場に配慮してのものであり,実際にはそのような申出があったわけではなく,常務委員会による一方的な決定であったことなどからすれば,本件の代表活動辞退措置が被告の機関による原告らへの懲戒処分であったと認めるのが相当である。 もっとも,被告会則では,会員に対する懲戒処分としては,会員の除名について規定した被告会則8条2項しか存在しないけれども,会則にそのような規定がないからといって,除名以外の懲戒処分を認めないとする合理的理由はないし,約750名の会員からなる団体が学会を運営するにあたり,会則に規定された処分(除名)以外の処分を会員に課することが認められないのでは,学会の運営に支障をきたすことが容易に予測されることなどからすれば,被告は,その団体としての運営上,その合理的選択に応じ,適宜の懲戒処分をなすことができると解すべきであるから,この点も前記判断の妨げとなるものではない。 (2) したがって,本件の代表活動辞退措置は,実質的には懲戒処分としての効力を有するものであり,原告は,それに従うべき法的義務を負うものである。また,たとえ,代表活動辞退措置が懲戒処分としての性格を有しなかったと て,本件の代表活動辞退措置は,実質的には懲戒処分としての効力を有するものであり,原告は,それに従うべき法的義務を負うものである。また,たとえ,代表活動辞退措置が懲戒処分としての性格を有しなかったとしても,原告が,被告という団体の会員として,その機関の決定した措置を受け入れた以上は,団体の構成員として,それに従う信義則上の義務を負うことは明らかであり,いずれにせよ,原告は,代表活動辞退措置の効力に反する行動は許されないというべきである。 3 争点・-代表活動辞退措置の効力が対外的な活動の禁止にとどまるか,被告の会長選挙の被選挙権停止に及ぶか否か(1) 前記2(1)のように,代表活動辞退措置の原因となった原告らの本件論文における引用懈怠の態様は,第三者からみれば盗用という非難を受けかねないものであり,著作権を尊重すべき研究者としてはあってはならない行為であったこと,また,代表活動辞退措置がなされるに至ったのは,このようなモラルの問題もさることながら,被告が,公的教育とも関係の深い学会として,研連との関係を配慮し,その面からも厳格な対応を示す必要があったことによること,ところが,被告の会長選挙に立候補するということは,被告の代表者として活動することを前提にするものであり(弁論の全趣旨によれば,被告の会長選挙への立候補者は例年1人か2人しかおらず,原告が会長選挙に立候補すれば,当選の可能性は必ずしも低くなかったと認められる。),研連等の外部の団体に対する関係でも常に原告が被告を代表する立場に立つことを意味するのであって,代表活動辞退措置が実質的に無意味となりかねない事態をもたらす可能性があったことなどを総合して考えれば,代表活動辞退措置の対象となった代表活動には,会長選挙への立候補も含まれると解すべきである。 もっとも,被告がその常務委員会 意味となりかねない事態をもたらす可能性があったことなどを総合して考えれば,代表活動辞退措置の対象となった代表活動には,会長選挙への立候補も含まれると解すべきである。 もっとも,被告がその常務委員会で代表活動辞退措置を決定した当初には,措置の対象となる行為として,研連や文部省等の外部団体に被告の推薦を受けて被告の代表としてシンポジウム等に参加したり,論文を発表する等の行為を想定しており,会長選挙に立候補する行為については具体的な検討の対象となっていなかったと認められるけれども(証人E,証人F),それは,その時点では未だそのような問題が現実化していなかったうえ,そのような事情が想定もされなかったという事情によるものと認められるから(弁論の全趣旨),この点も前記の判断を左右するものではない。 なお,原告は,共益権の一つである被選挙権は,当該会員の同意なくしては総会の決議をもってしても奪うことのできない固有権で会員の基本的権利であると主張するが,そのように解すべき合理的な根拠はなく,その主張は採用し難い。 (2) したがって,代表活動辞退の措置は,本件選挙の被選挙権停止にもその効力が及ぶものである。 4 争点・-代表活動辞退措置には「当分の間」という期限が付されていたところ,本件選挙までにその期限が経過したといえるか(1) 団体内部における懲戒処分は,団体統制の必要上行われるものであるから,その処分がいつまで継続するかは,合理的な裁量権の範囲を逸脱するものでない限り,その処分の対象となった行為の性質,態様,そのもたらした影響,さらに被処分者の反省の有無,程度等を総合考慮して,当該団体がその自由裁量において決定すべきものである。 (2) 本件についてこれをみるに,代表活動辞退措置の原因となった文献の引用懈怠問題は,前述のように,研究者としてはあっ ,程度等を総合考慮して,当該団体がその自由裁量において決定すべきものである。 (2) 本件についてこれをみるに,代表活動辞退措置の原因となった文献の引用懈怠問題は,前述のように,研究者としてはあってはならない重大な過失に基づくものであったし,前記1認定のように,原告が本件選挙への立候補を届け出た当時は本件論文のことが問題になったときから2年も経過しておらず,原告の本件論文が問題となった平成10年7月当時から引き続き委員として研連に在籍する者がおり,被告が原告の会長選挙への立候補を認めれば,被告が原告に対して行った措置の実効性が問われ,被告が研連やその所属学会からの強い非難を受けることも容易に予想されたこと,さらに,原告は本件論文をめぐる行為の具体的内容が被告の会員にも知られるようになった直後から,本件会長選挙への布石とみられても仕方のないような行動を取っており,被告の役員からすれば,原告が本件論文の問題について必ずしも十分反省しているようには見えなかったこと,原告の立候補を認めるか否かを最終的に討議した平成12年3月3日の評議員会においても,被告の会長をはじめとする被告の役員らは,代表活動辞退措置の効力が依然継続しているとの見解が大多数であったことなどを総合考慮すれば,本件の代表活動辞退措置に付された「当分の間」という期限は,本件選挙までには未だ経過していなかったとする被告の判断が前記の合理的裁量の範囲を逸脱したものとはいえない。 (3) なお,原告は,被告は,平成12年1月11日及び同月31日の常務委員会で,原告の会長選挙への立候補を認め,会長候補者として扱うという議決をしており,これによって代表活動辞退措置は解除されたと主張するところ,前記1認定事実によれば,たしかに,両日の会議においては,原告の本件選挙への立候補を認めるべきで 会長候補者として扱うという議決をしており,これによって代表活動辞退措置は解除されたと主張するところ,前記1認定事実によれば,たしかに,両日の会議においては,原告の本件選挙への立候補を認めるべきであるとの意見が多数を占めたことは認められるものの,それが,被告の機関としての最終的な意思決定になったと認め難いことは,その後,同年2月5日に再度の常務委員会が,また,同年3月3日はその問題を検討するための評議員会が開かれていることからも明らかであり,この点に関する原告の主張は採用し難い。 (4) したがって,代表活動辞退措置の効力は,本件選挙当時もなお継続していたというべきである。 5 まとめ以上のとおり,代表活動辞退措置は,実質的には原告に対する懲戒処分としての効力を持つものであり,かつ,その効力は会長選挙の被選挙権の停止をも含むものであるところ,本件選挙当時,その効力は依然存続していたと認められるのであるから,争点・について判断するまでもなく,被告が原告を本件選挙の候補者名簿に記載しなかったことが本件選挙手続の瑕疵となるものではない。 したがって,本件選挙が無効であるとの原告の主張は理由がないし,その手続に瑕疵があると認め難い以上,慰謝料請求も理由がないことは明らかである。 6 結論よって,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第1部裁判長裁判官及川憲夫裁判官瀬木比呂志裁判官安福幸江 福幸江

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