平成24(ワ)10746 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年7月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文31,440 文字)

平成26年7月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第10746号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年5月29日判決 原告 P 原告株式会社テクノアオヤマ 原告ら訴訟代理人弁護士松本司同田上洋平同大江哲平 被告セキ工業株式会社 同訴訟代理人弁護士北山元章同植松祐二同鈴木翼同大澤久志同訴訟代理人弁理士前田弘同竹内宏 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1)被告は,別紙被告物件目録記載の物件を製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 (2)被告は,前項の物件を廃棄せよ。 (3)被告は,原告株式会社テクノアオヤマに対し,4750万円及びこれに対する平成24年10月17日から支払済みまで 販売し又は販売の申出をしてはならない。 (2)被告は,前項の物件を廃棄せよ。 (3)被告は,原告株式会社テクノアオヤマに対し,4750万円及びこれに対する平成24年10月17日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4)被告は,原告P1に対し,1680万円及びこれに対する平成24年10月17日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (5)訴訟費用は被告の負担とする。 (6)仮執行宣言 2 被告主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者(甲12,13,弁論の全趣旨)原告株式会社テクノアオヤマ(以下「原告会社」という。)は,自動車及び農機具に使用するボルト,ナット,ブラケット等の小物部品の自動供給装置の販売等を目的とする会社である。原告P1(以下「原告P1」という。)は,原告会社において,設立時から平成18年まで代表取締役に就き,現在は取締役に就いている者である。 被告は,各種機械の製作及び修理等を目的とする会社である。 (2)原告P1の有する特許権 原告P1は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許の特許請求の範囲【請求項2】に係る発明を「本件特許発明」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。 本件特許の設定登録後,平成14年12月20日に特許異議の申立てがされ,取消理由が通知され,その指定期間内である平成15年6月23日に訂正請求がされるとともに意見書が提出され,同年8月19日付けの異議の決定により訂正を認めるとともに,特許を維持するとの決定がされ,同決定は同年9月8日に確定した。その後,平成24年8月1日,本件特許出願の願書に添付された明細書の訂正を求める審判が請求され,同月28 定により訂正を認めるとともに,特許を維持するとの決定がされ,同決定は同年9月8日に確定した。その後,平成24年8月1日,本件特許出願の願書に添付された明細書の訂正を求める審判が請求され,同月28日,明細書を審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める旨の審決がされた(甲1~5,乙5~7,16。以下,本件特許出願の願書に添付され,その後に訂正された明細書を「本件明細書」という。)。 特許番号第3309245号発明の名称プロジェクションナットの供給方法とその装置出願日平成8年12月28日登録日平成14年5月24日特許請求の範囲【請求項2】(上記異議の決定及び上記訂正審決により訂正されたもの)円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダとこのパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ,その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段をパーツフィーダの送出通路に設置し,ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッ ドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。 (3)構成要件の分説本件特許発明を構成要件に分説すると,以下 寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。 (3)構成要件の分説本件特許発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 A 円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダとB このパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ,C その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,D 正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段をパーツフィーダの送出通路に設置し,E ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されているF ことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。 (4)被告の行為被告は,別紙被告物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を,業として,製造し,販売し,販売の申出をしている(被告製品の構成については,当事者間に争いがある。)。 2 原告らの請求原告P1は,被告に対し,本件特許権に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,不当利得返還請求権に基づき,1680万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(平成24年10月17日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を 止め及び廃棄を求めるとともに,不当利得返還請求権に基づき,1680万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(平成24年10月17日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 原告会社は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,4750万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(平成24年10月17日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するかア被告製品は,本件特許発明の構成要件BからFまでを文言上充足するか(争点1-1)イ被告製品は,本件特許発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するか (争点1-2)(2)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるかア本件特許発明は,本件特許出願前に公然知られた発明又は公然実施をされた発明であるか,あるいは,当業者が上記の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか (争点2-1)イ本件特許発明は,当業者が,本件特許出願前に頒布された特開平7-215429号公報(以下「乙12公報」という。)に記載された発明(以下「乙12発明」という。)に基づいて,容易に発明をすることができたものであるか (争点2-2)ウ本件特許は,明確性要件に違反するものであるか (争点2-3)(3)原告会社の損害額 (争点3)(4)原告P1の損失額 (争点4) 第3 争点に関する当事者の主張1-1 争点1-1(被告製品は,本 害額 (争点3)(4)原告P1の損失額 (争点4) 第3 争点に関する当事者の主張1-1 争点1-1(被告製品は,本件特許発明の構成要件BからFまでを文言上充足するか)について【原告らの主張】以下のとおり,被告製品は,文言上,本件特許発明の構成要件Aを充足しないが,構成要件BからFまでを充足する。 (1)被告製品の構成被告製品の構成は,別紙被告製品説明書記載のとおりであり,本件特許発明の構成要件に対応させて表現すると,以下のとおりとなる。 a マグネットホルダーを回転することによりプロジェクションナットを送出する選別機とb この選別機からのプロジェクションナットを先端ブロックに当てて所定位置に停止させ,c その後,供給ユニットのロッドのジェットピンをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,d 正規寸法(別紙被告物件目録1記載の物件ではM6)よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる選別片を選別機のナット通路に設置し,e 先端ブロックに位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ユニットのロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすジェットピンの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されているf ことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置(2)構成要件B及びC 構成b及びcは,それぞれ構成要件B及びCに相当し,被告製品は,構成要件B及 よりも大きく設定されているf ことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置(2)構成要件B及びC 構成b及びcは,それぞれ構成要件B及びCに相当し,被告製品は,構成要件B及びCを充足する。 被告製品の「先端ブロックの底面」,「ジェットピン」は,それぞれ本件特許発明の「ストッパ面」,「ガイドロッド」に相当する。 (3)構成要件D構成dの選別片は,プロジェクションナットの通路に設置され,正規寸法よりも大きいナットを排除し,正規寸法と同一又はそれ以下のナットを通過させるものであるから,構成要件Dにおける計測手段に相当する。したがって,被告製品は,構成要件Dを充足する。 (4)構成要件E構成eは,構成要件Eに相当し,被告製品は,構成要件Eを充足する。 被告製品が,「正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばす」ことについては,次のとおりである。 ア 「弾き飛ばす」の意義本件明細書の記載によれば,「弾き飛ばす」とは,① ガイドロッドの先端部がプロジェクションナットの上面に当たることにより起こる現象であること,② ガイドロッドの先端がナットのねじ孔を貫通して反対側に突き抜ける「串刺し作用」とは両立しない現象であること,③ 目的箇所へのナットの供給を妨げる現象であることが分かる。被告製品において,正規寸法より小さいナットが「はねて,空中を移動する」場合もあれば,ガイドロッドの前進が途中で停止し,ナットがヒンジカバーとジェットピンに挟まれたロック状態となる場合もあり得る。そして,これらを区別して解釈しなければならない理由は,本件明細書には存在しない。 したがって,「弾き飛ばす」とは,「ガイドロッドの先端部がプロジェクションナットの上面に当たった結果,プロジ る。そして,これらを区別して解釈しなければならない理由は,本件明細書には存在しない。 したがって,「弾き飛ばす」とは,「ガイドロッドの先端部がプロジェクションナットの上面に当たった結果,プロジェクションナットが串刺しにされず,目的箇所に供給されなくなること」をいう。 イ仮に,ガイドロッドの前進が途中で停止し,ナットがヒンジカバーとジェットピンに挟まれたロック状態となる場合が「弾き飛ばす」に該当しないとしても,次のとおり,被告製品は,「弾き飛ばす」構成を有しており,構成要件Eを充足する。 (ア)平成12年製造のNUTFEEDER(製造番号●●●●●●,型式NS-ARF。以下「平成12年製品」という。)平成12年製品は,被告が平成12年に製造,販売した製品であり,被告製品と同じ型式である。現在,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が保有している。平成12年製品は寸法がM6のプロジェクションナット(以下「M6ナット」と略する。ほかの寸法のナットについても同様である。)を正規寸法としている。被告製品の供給ユニットのロッドのジェットピンの外径(4.5㎜)は正規寸法のナットのねじ孔の内径(M6では4.917㎜)よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいナットのねじ孔の内径(M5では4.134㎜)よりも大きく設定されている。M6ナットにM5ナットが混入した場合,ロッドの進出時にジェットピンの先端部分でM5ナットを弾き飛ばすから,平成12年製品は,構成要件Eを充足する。 平成24年11月28日改訂の取扱説明書に記載されている被告製品の構成は,平成12年製品に関する取扱説明書に記載されている構成と同様であり,平成12年製品製造当時から,設計変更をしていないことが推認される。被告により製造され 取扱説明書に記載されている被告製品の構成は,平成12年製品に関する取扱説明書に記載されている構成と同様であり,平成12年製品製造当時から,設計変更をしていないことが推認される。被告により製造された平成12年製品が本件特許発明の技術的範囲に属するならば,本件特許が登録された平成14年以降に製造された被告製品についても,本件特許発明の技術的範囲に属すると推認できる。 (イ)平成17年製造のナットフィーダ(製造番号●●●●●●●,型式NS-ARF。以下「平成17年製品」という。) 平成17年製品も,被告が製造,販売した製品であり,被告製品と同じ型式である。現在,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が保有している。平成17年製品は,ガイドロッドの外径(6.4㎜)が,正規寸法のM8ナットのねじ孔の内径(8㎜)よりもわずかに小さく設定されていると共に,正規寸法よりも小さいM6ナットのねじ孔の内径(6㎜)よりも大きく設定されている。M8ナットにM6ナットが混入した場合,正規寸法よりも小さいM6ナットは,ガイドロッドの進出時にジェットピンの先端部で弾き飛ばされるから,平成17年製品は,構成要件Eを充足する。 (上記ねじ孔の内径の寸法については,後記第4の2(2)参照)(ウ)平成24年製造のパーツフィーダ(製造番号M6-3680,型式NS-ARF。以下「平成24年製品」という。)及び平成15年製造のパーツフィーダ(製造番号M6-591,型式NS-ARF。以下「平成15年製品」という。)被告は,平成24年製品及び平成15年製品がいずれも被告製品であるとした上で,平成24年製品及び平成15年製品について実験を実施した結果によると,正規寸法より小さいプロジェクションナットは,ヒンジカバーとジェットピンに挟まれて停止するロ がいずれも被告製品であるとした上で,平成24年製品及び平成15年製品について実験を実施した結果によると,正規寸法より小さいプロジェクションナットは,ヒンジカバーとジェットピンに挟まれて停止するロック状態が生じるのであって,「はねて」もいないし,「空中を移動」してもいないと主張する。 しかし,平成24年製品の事実実験では「正規寸法よりも小さなプロジェクションナット」を用いたものであるとは証明されていない。また,ナットが進出する速度と,ジェットピンの前進速度とを調整することにより,フランジ部分に次のナットが引っ掛からないようにすることは可能である。被告による事実実験の結果から,「正規寸法よりも小さなプロジェクションナット」一般において同様の結果が生じるとの結論を導 くことはできない。 また,スピンドル及びノーズピンは消耗品であり,平成24年製品や平成15年製品のそれらは交換されている疑いがある。 したがって,平成24年製品及び平成15年製品についての実験結果から,被告製品の構成を認定することはできない。 (5)構成要件F被告製品は,プロジェクションナットの供給装置であり,構成fが構成要件Fに相当し,構成要件Fを充足する。 【被告の主張】以下のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件A及びDからFまでを充足するものではない。 (1)被告製品の構成被告製品の構成a,b及びcは認め,その余は否認する。 被告製品の構成を,本件特許発明の構成要件に対応させて表現すると,以下のとおりとなる。 a マグネットホルダーの磁石の磁力によってプロジェクションナットを吸着して送出する選別機を備え,b この選別機からのプロジェクションナットを供給ホースによって供給ユニットの先端ブロックの底面に当てて所 ネットホルダーの磁石の磁力によってプロジェクションナットを吸着して送出する選別機を備え,b この選別機からのプロジェクションナットを供給ホースによって供給ユニットの先端ブロックの底面に当てて所定位置に停止させ,c その後,供給ユニットのロッド先端のジェットピンをプロジェクションナットのねじ孔内に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,d 選別機に設置した選別片により裏返ったプロジェクションナットを排除して正姿勢のプロジェクションナットだけを通過させる選別片を選別機に設置し,e ジェットピンの外径(4.64㎜)は正規寸法であるM6のプロジェク ションナットのねじ孔の内径よりも小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さなプロジェクションナット(M5)のねじ孔の内径よりも大きく設定されているf ことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置(2)構成要件B及びC構成b及びcがそれぞれ構成要件B及びCに相当し,被告製品が構成要件B及びCを充足することは認める。 (3)構成要件Dパーツフィーダに設置された選別片は,プロジェクションナットを供給ユニットに送る際に裏返ったナット(ナットの座面にある溶接突起部がステンレスボードに向いた状態のもの)を排除して,正姿勢のナットだけを通過させることを目的としており,正姿勢のナットと裏返ったナットを高さの違いにより選別できるように設置されているにすぎず,異常寸法のナットを排除できる位置関係になるように選別片が設置されているわけではない。そもそも,正規寸法以外のナットが混入すること自体あり得ず,選別片が,正規寸法より大きいナットの排除に使用されることはない。結果的に,正規寸法より大きなナットも排除されることになるが,被告製品は,その そも,正規寸法以外のナットが混入すること自体あり得ず,選別片が,正規寸法より大きいナットの排除に使用されることはない。結果的に,正規寸法より大きなナットも排除されることになるが,被告製品は,そのことを目的としているわけではなく,本件特許発明と技術的思想が異なる。 (4)構成要件E被告製品では,プロジェクションナットがヒンジカバーとジェットピンとに挟まれた状態となり,正規寸法より小さいナットを「弾き飛ばす」とはいえず,被告製品の供給ユニットは「供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッド」を備えていないから,被告製品は構成要件Eを充足しない。 ア 「弾き飛ばす」の意義構成要件Eの「弾き飛ばす」は,「弾く」と「飛ばす」の複合語である。 「弾く」とは「押し曲げられた物がはね返る力でうつ」,「はねてよせつけない」等という意味であり,「飛ばす」とは「空に上げる」,「空中を移動させる」等という意味であるから,「弾き飛ばす」は,「はねて,空中を移動する」という意味で解釈しなければならない。 本件明細書では,「ガイドロッドの先端部がナットの上面に当たる」,「ナットが串刺しにされない」,「ナットが弾き飛ぶ」,「目的箇所に供給されない」という本件特許発明の機構が段階的に説明されているにすぎず,「弾き飛ばす」の定義が記載されているとみることはできず,「弾き飛ばす」を「はねて,空中を移動する」と解釈しても,本件明細書のほかの記載と抵触することはない。 また,本件明細書では「確実に弾き飛ばす」とされており(【0015】,【0016】),「弾き飛ばす」ことが本件特許発明の本質的部分であることからすると,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットについては,常に弾き飛ばさなければならない。 したがって,構成要件Eの「 016】),「弾き飛ばす」ことが本件特許発明の本質的部分であることからすると,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットについては,常に弾き飛ばさなければならない。 したがって,構成要件Eの「弾き飛ばす」とは,「確実にはねて,空中を移動する」と解釈されるべきである。 イ平成12年製品平成12年製品は,原告らが勝手に,被告製品を改造し,あるいは被告製品を模して製作した模造品である疑いが強い。また,本件特許が登録された平成14年以降の製品の構成要件充足性が論じられるべきところ,平成12年製品は平成12年に製造されたものである。 したがって,平成12年製品の構成から,被告製品の構成を認定することはできない。 ウ平成17年製品弁護士法23条の2第2項による照会に対し,平成17年製品を現在保有している●●●●の担当者がどのような状態を「弾き飛ばす」に該当す ると理解して回答したか,そのほかの者が改造,修理,部品の交換を行っていないかが不明である。 したがって,平成17年製品の構成自体が不明であるし,これから被告製品の構成を認定することはできない。 エ平成24年製品及び平成15年製品平成24年製品及び平成15年製品も被告が製造,販売した製品で,被告製品と同じ型式である。 平成24年製品及び平成15年製品を用い,供給ユニットに正規寸法であるM6ナットより小さいM5ナットが供給された場合の作動を確認するため,事実実験を実施したところ,供給ユニットのロッドが前進を開始しても,その前進が途中で停止し,M5ナットがヒンジカバーとジェットピンで挟まれるロック状態となり,プロジェクションナットが「はねて」もいないし,「空中を移動」してもいないことが確認された。 平成24年製品も平成15年製品も,被告が製造し ヒンジカバーとジェットピンで挟まれるロック状態となり,プロジェクションナットが「はねて」もいないし,「空中を移動」してもいないことが確認された。 平成24年製品も平成15年製品も,被告が製造した後,修理,改造及び部品交換は行っていない。平成15年製品のガイドロッドの進出速度は,平成24年製品とほぼ同じである。被告製品は,平成15年の時点においても平成24年の時点においても,その機構に変わりはない。 したがって,被告製品は,構成要件Eの「弾き飛ばす」ことをしておらず,構成要件Eを充足しない。 (5)構成要件F被告製品は,構成要件A,D及びEを充足せず,本件特許発明と特徴を異にするから,構成要件Fを充足しない。 1-2 争点1-2(被告製品は,本件特許発明と均等なものとして,その技術的範囲に属するか)について【原告らの主張】前記1-1のとおり,被告製品は,構成要件BからFまでを充足する。 プロジェクションナットを移動させる方式において,被告製品の磁石方式(構成a)が,構成要件Aの振動方式と相違するものの,以下のとおり,被告製品は,本件特許発明と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 (1)被告製品と本件特許発明の上記相違点が本件特許発明の非本質的部分であること本件特許発明は,正規寸法よりも小さいナットがストッパ面に一時係止されているとき,「ガイドロッドの先端部がナットの上面かまたはねじ孔の角部に当たり,串刺し作用が生じることなくナットは弾き飛ばされてしまう」ため,「異常寸法のナットが目的箇所へ供給されたり,溶接されるようなことが回避できる」(本件明細書【0014】)などの効果を奏する点に本質がある。 磁石方式か振動方式かという相違点は,プロジェクションナットを移動させる方式に 箇所へ供給されたり,溶接されるようなことが回避できる」(本件明細書【0014】)などの効果を奏する点に本質がある。 磁石方式か振動方式かという相違点は,プロジェクションナットを移動させる方式に関わるにすぎず,上記の効果とは関係がなく,本件特許発明の本質的部分ではない。 (2)置換可能性振動方式のパーツフィーダを,磁石方式の選別機に置き換えても,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットが目的箇所へ供給されないようにするという本件特許発明の目的を達することができ,本件特許発明と同一の効果を奏する。 (3)置換容易性パーツフィーダにおいてプロジェクションナットを移動させる方式には,振動方式だけでなく磁石方式もあることは,被告の出願に係る特開平11-59878号公報に記載されているから,振動を利用するナットの送出装置に替えて,磁石方式を採用することは,被告が被告製品の製造販売を開始した平成12年頃には,既に公知技術となっており,当業者が容易に想到することができた。 (4)被告製品の構成が公知技術から容易に推考されないこと 被告製品の構成は,本件特許の出願時において,公知技術と同一又は当業者が容易に推考できたものではない。 (5)包袋禁反言など特段の事情はないこと被告製品が,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情は存しない。 【被告の主張】プロジェクションナットを送出するパーツフィーダには,本件特許発明のような振動方式のほかにも多種多様の種類があり,原告P1は,複数の公知技術の中から同方式を選択して技術分野を限定している(構成要件A)から,被告製品の構成aを意識的に除外したというべきである。 2-1 争点2-1(本件特許発明は,本件特許出願前に P1は,複数の公知技術の中から同方式を選択して技術分野を限定している(構成要件A)から,被告製品の構成aを意識的に除外したというべきである。 2-1 争点2-1(本件特許発明は,本件特許出願前に公然知られた発明又は公然実施をされた発明であるか,あるいは,当業者が上記の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか)について【被告の主張】本件特許出願前に株式会社電元社製作所(以下「電元社」という。)が,平成5年に製造し,販売したFEEDER(製造番号93-6132,型式AF-VMU-H10-DR。以下「平成5年電元社製品」という。)及び昭和56年に製造し,販売したナットフィーダー(製造番号81-0356,型式AFVM-6/8形。以下「昭和56年電元社製品」という。)は,次のとおり本件特許発明の各構成要件を備えている。したがって,本件特許発明は,その出願前に日本国内において公然知られ,又は公然実施をされた発明として新規性を欠き,本件特許は無効にされるべきものである。また,仮に新規性を有するとしても,本件特許発明は,上記発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから進歩性を欠き,本件特許は無効にされるべきものである。 したがって,原告らの権利行使は特許法104条の3により制限されるべきである。 (1)平成5年電元社製品ア以下のとおり,平成5年電元社製品は,本件特許発明の各構成要件を備えている。 (ア)構成要件A平成5年電元社製品は,プロジェクションナットを貯留し送り出すパーツフィーダと,ナットを目的箇所へ供給する送給装置を備えている。 パーツフィーダは,ナットを貯留する円形のボウルと,ボウルに振動を与えるバイブレータを備え,ボウルの上部外周壁にナットを送り出すナット送り管が接 と,ナットを目的箇所へ供給する送給装置を備えている。 パーツフィーダは,ナットを貯留する円形のボウルと,ボウルに振動を与えるバイブレータを備え,ボウルの上部外周壁にナットを送り出すナット送り管が接続され,ボウルの振動によりナットが送り出される。 したがって,パーツフィーダは,「円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダ」に相当するから,平成5年電元社製品は構成要件Aを備えている。 (イ)構成要件B平成5年電元社製品の送給装置は,プロジェクションナットを目的箇所に送るスピンドルと,スピンドルを進退させるエアシリンダーを備え,エアシリンダーのシリンダー部前端にガイドシリンダーが同軸で結合され,ガイドシリンダーの前端においてナット受けが設けられている。 このナット受けよりチューブ接続管が上方へ延び,このチューブ接続管とボウルのナット送り管が送給チューブで接続される。ナット受けには,パーツフィーダから送給チューブによって送られるナットを停止させるストッパが設けられており,このストッパでナットが所定位置に停止する位置決めがされる。 したがって,平成5年電元社製品は,「このパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ」に相当する構成を有し,構成要件Bを備えている。 (ウ)構成要件C 平成5年電元社製品の送給装置のスピンドルの前端にはプロジェクションナットのねじ孔を貫通するガイドロッドが設けられ,スピンドルを前進させると,スピンドル先端のガイドロッドがナットのねじ孔を貫通し,ナットがスピンドルによって目的箇所に送られる。 したがって,スピンドルは本件特許発明の供給ロッドに相当し,平成5年電元社製品は,「その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクショ 孔を貫通し,ナットがスピンドルによって目的箇所に送られる。 したがって,スピンドルは本件特許発明の供給ロッドに相当し,平成5年電元社製品は,「その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のもの」であるから,構成要件Cを備えている。 (エ)構成要件D平成5年電元社製品のパーツフィーダには,プロジェクションナット送出通路の途中2箇所に,ねじ孔が縦に開いた状態のナットを通過させ,ねじ孔が横に開いた状態のナットの通過を排除する排除プレートが設けられ,ナット送出通路には,さらに2箇所の排除プレートを通過したナットの表裏を選別する選別プレートが設けられている。正規寸法のM10ナットよりも大きいプロジェクション溶接用M12六角ナットをナット送出通路に載せ,パーツフィーダを作動させると,M12ナットは排除プレートに当たり,ナット送出通路からボウルの底に落下し,正規寸法のM10ナット及びそれよりも小さいプロジェクション溶接用M8六角ナットをナット送出通路に載せ,パーツフィーダを作動させると,M10ナット及びM8ナットは,排除プレートには当たらず,排除プレートを通過する。 したがって,排除プレートは本件特許発明の計測手段に相当するので,平成5年電元社製品は,「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」としての排除プレートを「パーツフィーダの送出通 路」に設置しているから,構成要件Dを備えている。 (オ)構成要件E平成5年電元社製品では,正規寸法よりも小さいM8ナットを送給チューブから供給してストッパ面に当てて停止した状態にし,スピンドルを前進させると, ら,構成要件Dを備えている。 (オ)構成要件E平成5年電元社製品では,正規寸法よりも小さいM8ナットを送給チューブから供給してストッパ面に当てて停止した状態にし,スピンドルを前進させると,M8ナットはスピンドルの進出時にガイドロッドの先端で弾かれ落下する。ガイドロッドの外径は8.3㎜であり,正規寸法のM10ナットのねじ孔の内径8.8㎜よりもわずかに小さく,正規寸法よりも小さいM8ナットのねじ孔の内径6.8㎜よりも大きい。 したがって,ガイドロッドは,「ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時に先端部で弾き飛ばすガイドロッド」に相当し,「ガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されている」から,平成5年電元社製品は構成要件Eを備えている。 (カ)構成要件F平成5年電元社製品が構成要件Fの構成を備えていることは明らかである。 イ平成5年電元社製品が,製造当時のものと同一性を有すること平成5年電元社製品は,平成5年11月30日に電元社から出荷され,同年12月に被告が購入し,平成10年4月まで被告の工場において稼働していたものである。平成5年電元社製品は,事実実験の際に,破損し,廃棄されていたヒンジ板(キックバネを含む。),送給チューブを取り付けたほかには,購入後,現在に至るまで,部品の交換,修理,改造等を行っていない。したがって,平成5年電元社製品は,平成5年当時の構成と同一性を失っていない。 なお,ヒンジ板の形状等は,本件特許発明の本質的部分である「弾き飛ばす」こととは関係がなく,ヒンジ板を取り付けても,平成5年 電元社製品は,平成5年当時の構成と同一性を失っていない。 なお,ヒンジ板の形状等は,本件特許発明の本質的部分である「弾き飛ばす」こととは関係がなく,ヒンジ板を取り付けても,平成5年電元社製品の同一性が失われることにはならない。 (2)昭和56年電元社製品ア以下のとおり,昭和56年電元社製品は,本件特許発明の各構成要件を備えている。 (ア)構成要件A昭和56年電元社製品は,プロジェクションナットを貯留し送り出す選別機と,ナットを目的箇所へ供給する送給装置を備えている。選別機は,ナットを貯留する円形のボウルと,このボウルに振動を与えるバイブレータを備え,ボウルの上部外周壁にナットを送り出すナット送出通路が接続され,ボウルの振動によりナットが送り出される。 したがって,選別機は,「円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダ」に相当するから,昭和56年電元社製品は構成要件Aを備えている。 (イ)構成要件B昭和56年電元社製品のM6ナット用の送給装置は,プロジェクションナットを目的箇所に送るスピンドルと,スピンドルを進退させるエアシリンダーを備え,エアシリンダーのシリンダー部前端にガイドシリンダーが同軸で結合され,ガイドシリンダーの前端においては接続金具が設けられている。接続金具よりシューターが上方へ延び,シューターとボウルのM6ナット用送出通路が接続されている。接続金具の取り付け金具に取り付けられたヒンジ板には,選別機からシューターによって送られるナットを停止させるストッパが設けられており,ストッパでナットが所定位置に停止する位置決めがされる。 したがって,昭和56年電元社製品は,「このパーツフィーダからの プロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位 けられており,ストッパでナットが所定位置に停止する位置決めがされる。 したがって,昭和56年電元社製品は,「このパーツフィーダからの プロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ」に相当する構成を備えており,構成要件Bを備えている。 (ウ)構成要件C昭和56年電元社製品の送給装置のスピンドルの前端にはプロジェクションナットのねじ孔を貫通し反対側に突き抜けた状態になるガイドロッドが設けられ,スピンドルを前進させると,スピンドル先端のガイドロッドがナットのねじ孔を貫通し,そのナットがスピンドルによって目的箇所に送られる。 したがって,スピンドルは本件特許発明の供給ロッドに相当し,昭和56年電元社製品は,「その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてナットを目的箇所へ供給する形式のもの」であるから,構成要件Cを備えている。 (エ)構成要件D昭和56年電元社製品の選別機には,プロジェクションナット送出通路の途中2箇所に,ねじ孔が縦に開いた状態のM6ナット及びM8ナットを通過させ,ねじ孔が横に開いた状態のM6ナット及びM8ナットの通過を排除する排除プレートが設けられ,ナット送出通路には,さらに2箇所の排除プレートを通過したナットの表裏を選別する裏表選別突条が設けられている。M8ナットよりも大きいM10ナットを送出通路に載せ,パーツフィーダを作動させると,M10ナットは排除プレートに当たり,送出通路からボウルの底に落下し,M5ナット,M6ナット及びM8ナットを送出通路に載せ,選別機を作動させると,M5ナット,M6ナット及びM8ナットは排除プレートには当たらず,排除プレートを通過する。裏表選別突条が設けられている部分よりも送給装置側において,M6用送出通 出通路に載せ,選別機を作動させると,M5ナット,M6ナット及びM8ナットは排除プレートには当たらず,排除プレートを通過する。裏表選別突条が設けられている部分よりも送給装置側において,M6用送出通路とM8用送出通路に分岐しており,分岐部にM8ナットをM6用送出通路には向かわせず,M8用送出通路に向かわせる 分別プレートが設けられている。 したがって,排除プレート及び分別プレートは本件特許発明の計測手段に相当し,昭和56年電元社製品は,「正規寸法よりも大きいナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」としての排除プレート及び分別プレートを「パーツフィーダの送出通路」に設置しているから,構成要件Dを備えている。 (オ)構成要件E昭和56年電元社製品では,正規寸法よりも小さいM5ナットをシューターから供給しストッパに当てて停止した状態にし,スピンドルを前進させると,M5ナットはスピンドルの進出時にガイドロッドの先端で弾かれ落下する。M6用送給装置のガイドロッドの外径は4.66㎜であり,正規寸法のM6ナットのねじ孔の内径5.09㎜よりもわずかに小さく,正規寸法よりも小さいM5ナットのねじ孔の内径4.29㎜よりも大きい。 したがって,ガイドロッドは,「ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッド」に相当し,ガイドロッドの外径は「正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されている」から,昭和56年電元社製品は構成要件Eを備えている。 (カ)構成要件F昭和56年電元社製品が構成要件 共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されている」から,昭和56年電元社製品は構成要件Eを備えている。 (カ)構成要件F昭和56年電元社製品が構成要件Fを備えていることは明らかである。 イ昭和56年電元社製品は,昭和56年当時の構成と同一性を失っていない。すなわち,シューターは送給装置の先端部に固定されているので,送 給装置及びシューターを含むナットフィーダの装置全体が昭和56年製造のものと認められる。 【原告らの主張】(1)平成5年電元社製品ア平成5年電元社製品のうち,本件特許出願前に公然実施をされていたと認められるのは,パーツフィーダに係る構成のみであり,構成要件B,C及びEを含めた本件特許発明が公然実施をされたとは認められない。 イスピンドル及びノーズピンは消耗品であり,使用している間に何度か交換していることは疑いがないから,事実実験において用いられたスピンドル及びノーズピンが,平成5年に製造されたものであるとは認められない。 そもそも,パーツフィーダと比較して,送給装置のガイドシリンダー,スピンドル及びノーズピンは摩耗,汚れ,錆等がなく,明らかに別の時期の製品であると認められる。したがって,平成5年電元社製品が平成5年に製造されたとは認められない。 仮に平成5年電元社製品の送給装置やスピンドルが平成5年に製造されたものであったとしても,平成5年電元社製品におけるプロジェクションナットの供給方式は永久磁石方式を採用しており,ガイドロッド(ノーズピン)が短くても,ナットを串刺し状に貫通させることなく,ナットを目的箇所へ供給することができる。したがって,「正規寸法より小さいプロジェクションナットを確実に弾き飛ばす」という本件特許発明特有の作用効果を奏す も,ナットを串刺し状に貫通させることなく,ナットを目的箇所へ供給することができる。したがって,「正規寸法より小さいプロジェクションナットを確実に弾き飛ばす」という本件特許発明特有の作用効果を奏するものではない。 (2)昭和56年電元社製品被告が昭和56年電元社製品を購入したのは平成25年3月であり,事実実験の時点で,昭和56年電元社製品が製造当時のままの構成を備えていたか不明である。シューターが固定されていることと,容易に分離可能であることは両立するのであり,シューターが固定されていることをもって,送給 装置を含む全体が昭和56年に製造されたと認めることはできない。 仮に,昭和56年電元社製品の送給装置やスピンドルが昭和56年に製造されたものであったとしても,昭和56年電元社製品は,ナットの供給方式として,永久磁石方式を採用しており,本件特許発明の作用効果を奏するものではない。 2-2 争点2-2(本件特許発明は,当業者が,本件特許出願前に頒布された乙12公報に記載された乙12発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるか)について【被告の主張】本件特許発明は,出願前に頒布された乙12公報に記載された乙12発明に,特公昭47-41655号公報(以下「乙13公報」という。)に記載された発明(以下「乙13発明」という。),「機械設計」第17巻第1号53頁以降(以下「乙3刊行物」という。)に記載された発明(以下「乙3発明」という。)及び実開昭60-151821号公報(以下「乙14公報」という。)に記載された発明(以下「乙14発明」という。)を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明は進歩性を欠き,本件特許は無効にされるべきものである。 (1)乙12発明 発明(以下「乙14発明」という。)を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明は進歩性を欠き,本件特許は無効にされるべきものである。 (1)乙12発明乙12公報には,以下の発明(乙12発明)が記載されている。 12A 回転式の振動コンベアからなるボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出する整列手段と12B この整列手段からのプロジェクションナットを受入部の底面に当てて所定位置に停止させ,12C その後,送出杆の先端部をプロジェクションナットのねじ孔内に係合させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて, 12D プロジェクションナットの倒立又は縦横を選別し,突起の向きを一方向に整列する手段を整列手段に設置し,12E 受入部の底面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを送出杆の先端部の進出時にその先端で弾き飛ばす送出杆の先端部の外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されている12F ことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置(2)乙12発明と本件特許発明との対比ア一致点乙12発明の「ナット」,「整列手段」,「送出杆」,「送出杆の先端部」は,それぞれ本件特許発明の「プロジェクションナット」,「パーツフィーダ」,「供給ロッド」,「ガイドロッド」に相当し,乙12発明の構成12A,12B,12E及び12Fは,それぞれ本件特許発明の構成要件A,B,E及びFに相当する。 イ相違点(ア)相違点1本件特許発明は,プロジェクションナットを目的箇所へ供給する際に,供給ロッド 2B,12E及び12Fは,それぞれ本件特許発明の構成要件A,B,E及びFに相当する。 イ相違点(ア)相違点1本件特許発明は,プロジェクションナットを目的箇所へ供給する際に,供給ロッドのガイドロッドをナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させて供給するのに対して(構成要件C),乙12発明は,送出杆の先端部をナットのねじ孔内に係合させて供給する点で,両者は相違する。 (イ)相違点2本件特許発明は,パーツフィーダの送出通路に「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」を設置しているのに対して (構成要件D),乙12発明においては「プロジェクションナットの倒立又は縦横を選別し,突起の向きを一方向に整列する手段」を設置するものの,正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除するか等については不明である点で,両者は相違する。 (3)容易想到性ア相違点1(ア)乙13発明の内容乙13発明において,ナットは工作物にスポット溶接されるから,本件特許発明の「プロジェクションナット」に相当する。乙13発明の図面によれば,案内棒はナットの螺糸孔内へ串刺し状に貫通している。スピンドルが下降し案内棒がナット孔を串刺し状に貫通してそのナットが板金工作物のナット溶接個所に供給されるから,スピンドルは本件特許発明の「供給ロッド」に相当し,案内棒は本件特許発明の「ガイドロッド」に相当する。 したがって,乙13発明は,構成要件Cに相当する構成を備えている。 (イ)容易想到性乙12発明と乙13発明は,いずれも,従来手作業で行っていたナット供給を装置によって自動化することを目的とする発明であり,乙12発明は物品としてのナットを自動供給する装置に関 (イ)容易想到性乙12発明と乙13発明は,いずれも,従来手作業で行っていたナット供給を装置によって自動化することを目的とする発明であり,乙12発明は物品としてのナットを自動供給する装置に関するものであり,乙13発明はスポット溶接機へのナットの供給方法及び装置に関するものであり,両者は同一の技術分野に属する。 したがって,当業者であれば,乙13発明に記載されたナットの孔を串刺し状に貫通する案内棒の構成を乙12発明に記載された送出杆の先端部に設けることは,基礎的な技術手段を適用するにすぎず,容易に想到することができる。 イ相違点2 (ア)乙3発明の内容乙3発明の部品については,図面の「扁平部品」の記載から,プロジェクションナットも含まれることが分かる。そして,「大きいものはゲートでひっかかりシュートへ送り出されない」ものの,「ゲートの切欠き形状を通過するような小さいものは,整列された部品と同様,シュートへ送り出される」ので,本件特許発明の構成要件D「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」に相当し,かかるゲートは,図面から明らかであるとおり,送出通路に設置されている。 したがって,乙3発明は,構成要件Dに相当する構成を備えている。 (イ)乙14発明の内容乙14発明において,チェックゲージが設置されている螺旋形段部は「その終端部から送出用の供給管が伸びている」ことから,チェックゲージはパーツフィーダーの送出通路に設置されているといえる。 「ナットが裏向きになつていると,ガイド溝の深さに相当する分だけ突起が高くなるので,この高くなった箇所がチェックゲージの前面に接触する」ことからすると,チェックゲージと正規寸法のプロジェ といえる。 「ナットが裏向きになつていると,ガイド溝の深さに相当する分だけ突起が高くなるので,この高くなった箇所がチェックゲージの前面に接触する」ことからすると,チェックゲージと正規寸法のプロジェクションナットとの隙間は,当該ナットの溶接用突起よりも小さいことになり,図面からも,正規寸法より大きいナットはチェックゲージによって排除されることが明らかである。 したがって,乙14発明は,構成要件Dに相当する構成を備えている。 (ウ)容易想到性乙12発明,乙3発明及び乙14発明は,いずれもプロジェクションナットを含むナットを供給するパーツフィーダに関する発明であるから,当業者であれば,乙3発明又は乙14発明に記載された正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以 下のプロジェクションナットを通過させるゲート又はチェックゲージを,乙12発明の整列手段に設けることは容易に想到することができる。 【原告らの主張】以下のとおり,本件特許発明は,乙12発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。 (1)乙12発明と本件特許発明との対比ア一致点本件特許発明と乙12発明は,「円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダとこのパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ,その後,供給ロッドのガイドロッドを用いてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のプロジェクションナットの供給装置」という構成の限度で一致している。 イ相違点本件特許発明と乙12発明には,被告が主張する相違点1及び2に加え,以下の相違点がある(相違点3)。 本件特許発明のガイドロッドは,ストッパ面に位置決めされた正規寸法より小 いる。 イ相違点本件特許発明と乙12発明には,被告が主張する相違点1及び2に加え,以下の相違点がある(相違点3)。 本件特許発明のガイドロッドは,ストッパ面に位置決めされた正規寸法より小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすものであり,その外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法より小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されているのに対して,乙12発明はこの点が不明である。 (2)容易想到性ア相違点1乙12発明が,ナットが詰まった時や装置の保守点検時にシュートを脱着しても,その取付位置を間違えることなく,結果としてナットの表裏選 別を確実に行うことを解決課題及び目的としているのに対し,乙13発明は,従来は手作業で行っていたナット供給を,装置を用いて自動化するということを目的としている。したがって,乙12発明と乙13発明は,目的とする解決課題及び作用効果が全く異なるものであり,乙12発明に乙13発明のナット供給方式を適用する動機付けはなく,当業者が容易に想到できるものではない。 イ相違点2乙14発明には,「正規寸法よりも小さいプロジェクションナット」についての記載がなく,相違点2に関し,当業者が,「正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」が開示されていると理解することはできない。 ウ相違点3相違点3に関し,乙3刊行物,乙13公報及び乙14公報には,構成要件Eに相当する構成が開示されていない。 2-3 争点2-3(本件特許は,明確性要件に違反するものであるか)について【被告の主張】本件特許発明の構成要件Eの「ガイドロッドの外 には,構成要件Eに相当する構成が開示されていない。 2-3 争点2-3(本件特許は,明確性要件に違反するものであるか)について【被告の主張】本件特許発明の構成要件Eの「ガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定」及び「正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定」との記載は,意味が明確ではなく,本件特許は,明確性要件に違反するものであり,無効にされるべきものである。 【原告らの主張】以下のとおり,本件特許は,明確性要件に違反するものではない。 (1)プロジェクションナットのねじ孔の内径には規格があり,M10ナットが正規寸法である場合も,M8ナットが正規寸法の場合も当然存在するから, 一義的に数値で特定するのは不可能であるため,本件明細書では,正規寸法を基準に相対的にガイドロッドの外径を特定している。本件明細書の記載から,構成要件Eにおける発明特定事項が「正規寸法のプロジェクションナットの内径 > ガイドロッドの外径 > 正規寸法より小さいプロジェクションナットの内径」という意味を有するものであることは,当業者にとって自明である。 (2)被告の主張は,本件特許発明を具体的に実施する上で高い寸法精度が要求される場合があるとの指摘にすぎず,明確性要件とは無関係である。 3 争点3(原告会社の損害)について【原告会社の主張】(1)被告は,平成21年9月28日から平成24年9月15日までの間,被告製品を,1台当たり少なくとも40万円で,少なくとも360台製造販売し(売上合計1億4400万円),少なくとも4320万円(利益率30%)の利益を得た。 原告P1は,本件特許が出願された直後から,原告会社に対し,本件特許発明について 少なくとも360台製造販売し(売上合計1億4400万円),少なくとも4320万円(利益率30%)の利益を得た。 原告P1は,本件特許が出願された直後から,原告会社に対し,本件特許発明について,期限を本件特許存続中とする独占的通常実施権(仮通常実施権を含む。)を許諾していた。原告会社は,本件特許発明を独占的に実施し得る地位にあったといえ,特許法102条2項の類推適用により,上記利益の額は,原告会社が受けた損害の額と推定される。 (2)原告会社は,本件の解決のために,訴訟代理人弁護士に委任した。本件と相当因果関係のある弁護士費用は,430万円を下らない。 (3)したがって,原告会社の損害は合計4750万円である。 【被告の主張】否認ないし争う。 4 争点4(原告P1の損失)について【原告P1の主張】 被告は,平成14年9月28日から平成21年9月27日までの間,被告製品を,1台当たり少なくとも40万円で,少なくとも840台製造販売した(売上合計3億3600万円)。本件特許発明の実施に対し原告P1が受けるべき実施料率は,年5%を下らない。 本件特許発明の実施行為により,被告は,法律上の原因なく,1680万円の利得を受けた一方,原告P1は,同額の損失を被っており,この利得と損失の間には因果関係がある。 【被告の主張】否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断被告製品が本件特許発明の構成要件Eに相当する構成を備えていると認めるに足りる証拠はなく,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。 以下,その理由を説明する。 1 「弾き飛ばす」の意義(1)本件明細書の記載本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲4)。 ア発明の属する技術分野本件特許発明は,プ いえない。 以下,その理由を説明する。 1 「弾き飛ばす」の意義(1)本件明細書の記載本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲4)。 ア発明の属する技術分野本件特許発明は,プロジェクションナットを供給する分野におけるものであり,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させて,ナット供給を行うものに関するものである(【0001】)。 イ従来の技術及び発明が解決しようとする問題点従来の技術では,供給ロッドのガイドロッドの外径がプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大幅に小さく設定されており(【0002】),ガイドロッドが,ストッパ面に停止した正規寸法よりも小さいプロジェク ションナットをも串刺しにして通常通りに供給してしまい(【0003】),パーツフィーダ側の送出コントロールと供給ロッドの構造,寸法との有機的な関連性が設定されずに,異常寸法のナットに対する解決策が満足にとれていないという問題があった(【0005】)。 ウ問題を解決するための手段とその作用請求項2ではガイドロッドの外径が,正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されると共に,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されることとされ,パーツフィーダにおいてあらかじめ正規寸法よりも大きいナットを意図的に排除した後,正規寸法よりも小さいナットを供給ロッドの箇所で供給させないようにし,パーツフィーダ側と供給ロッド側とに連携性を持たせている(【0006】)。 エ発明の実施の形態ガイドロッドの外径は,正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されるとともに,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットの 0006】)。 エ発明の実施の形態ガイドロッドの外径は,正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されるとともに,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定される(【0009】)。その結果,正規寸法のナットのねじ孔がガイドピンに嵌り合う(【0010】)のに対し,正規寸法よりも小さいナットについては,供給ロッドが進出するとガイドロッドの先端部がナットの上面に当たることになり,ナットは弾き飛ばされ,目的箇所へは供給されない(【0013】)。 オ効果正規寸法よりも小さいナットがストッパ面に一時係止されているときは,ガイドロッドの先端部がナットの上面かねじ孔の角部に当たり,串刺し作用が生じることなくナットが弾き飛ばされ(【0014】,【0015】,【0016】),正規寸法よりも大きいプロジェクションナットをあらかじめ排除しておくためのパーツフィーダにおける計測機能と,一時係止状態 にあるナットへのガイドロッドの作動とが有機的に関連付けられ,正規寸法よりも小さいナットを排除するための特別な機構等が全く不要となる(【0014】)。 (2)特許請求の範囲及び本件明細書の訂正の経緯ア原告P1は,本件特許に係る特許異議に際し,訂正を請求し,請求項2の「ガイドロッド」を「ストッパ面に位置決めされた正規寸法以下のプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッド」に訂正することを求めるとともに(甲3,乙7),意見書(乙16)を提出した。原告P1は,上記意見書に,「本件特許発明はガイドロッドの外径をその上限と下限とをもって特定することによって,ガイドロッドに正規寸法以下のナットを排除する機能を積極的に付与したものです。言い換えれば,パー は,上記意見書に,「本件特許発明はガイドロッドの外径をその上限と下限とをもって特定することによって,ガイドロッドに正規寸法以下のナットを排除する機能を積極的に付与したものです。言い換えれば,パーツフィーダにおける計測機能と一時係止状態にあるナットへのガイドロッドの作動とが有機的に関連付けられているので,一連の作動がシステマティックに行われるのです。」と記載した。 イ原告P1は,明細書の訂正を求める審判請求をし,「正規寸法以上の」とあるのを「正規寸法よりも大きい」と訂正し,「正規寸法以下の」とあるのを「正規寸法よりも小さい」と訂正することなどを求めた(甲4,5)。 原告P1は,審判請求書(甲4)に,本件特許発明において,「正規寸法よりも大きいナットはパーツフィーダ側で排除し,正規寸法よりも小さいナットをガイドロッド先端部で弾き飛ばすという構成を採用した」旨記載した。 (3)検討特許請求の範囲及び本件明細書に,「弾き飛ばす」の意義を直接に明示した記載は見当たらないが,これらの記載内容に,訂正の経緯を併せ考慮すると,「正規寸法」とは,プロジェクションナットのねじ孔の内径に関するものであり,「弾き飛ばす」とは,供給ロッドのガイドロッドが,正規寸法よりも小 さいプロジェクションナットを,目的箇所へ供給されないように排除する動きを意味すると考えられる。 ここで,「弾き飛ばす」のうち,「弾く」には,「のけものにする。排斥する。 はねてよせつけない。」という意味があり(乙17の1),「飛ばす」には,「飛ぶようにする。空に上げる。空中を移動させる。」という意味がある(乙17の2)。 したがって,「弾き飛ばす」とは,供給ロッドのガイドロッドが,その進出時に,ストッパ面に当たって所定位置に停止した正規寸法よりも小さいプロジェクシ 動させる。」という意味がある(乙17の2)。 したがって,「弾き飛ばす」とは,供給ロッドのガイドロッドが,その進出時に,ストッパ面に当たって所定位置に停止した正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通せずに,ガイドロッドの先端部を当該ナットの上面やねじ孔の角部に当てて,当該ナットをはねて,空中を移動させて落下させることによって,当該ナットを排除するという動きを意味すると解される。 正規寸法よりも小さいプロジェクションナットが,ヒンジカバーとジェットピンで挟まれ,停止したままの状態(ロック状態)は,当該ナットを排除しているわけでなく,「弾き飛ばす」とはいえない。 2 被告製品の構成及び構成要件充足性原告らは,平成12年製品と平成17年製品を被告製品であるとして,その構成要件充足性を主張する。これに対し,被告は,平成24年製品と平成15年製品を被告製品であるとして,その構成要件充足性を争う(これらの製品は,正規寸法より小さいプロジェクションナットを弾き飛ばすことをせず,ロック状態を生じるので,前記1のとおり,構成要件Eを充足しない。)。 いずれの製品も,被告が製造し,販売したものであり,型式も被告製品と同じであるが,以下に述べるとおり,現在の平成12年製品と平成17年製品が,製造当時のものと同じ構成であると認めることはできず,被告製品が,本件特許発明の構成要件を充足するとの原告らの主張を認めることはできない。 (1)平成12年製品 以下のとおり,平成12年製品は,正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを弾き飛ばす構成を備えているが,ジェットピンの形状が被告製品のものとはいえず,平成12年製品によって,被告製品の構成を認定することはできない。 ア平成12年製品の構成(プロジ ェクションナットを弾き飛ばす構成を備えているが,ジェットピンの形状が被告製品のものとはいえず,平成12年製品によって,被告製品の構成を認定することはできない。 ア平成12年製品の構成(プロジェクションナットを弾き飛ばすこと)甲第6号証では,プロジェクションナット供給装置のジェットピンが,正規寸法よりも小さいと思われるナットを「弾き飛ばす」状況が撮影されている。証拠(甲17,20,24)によれば,甲第6号証において撮影されたナット供給装置は,被告が平成12年●●に製造した平成12年製品(NUTFEEDER:製造番号●●●●●●,型式NS-ARF)であると認められる。 イ平成24年製品及び平成15年製品の構成(プロジェクションナットを弾き飛ばさないこと)しかしながら,他方で,証拠(乙2の1・2,乙38の1・2)によれば,被告が平成24年に製造した平成24年製品(製造番号M6-3680,型式NS-ARF)及び平成15年に製造した平成15年製品(製造番号M6-591,型式NS-ARF)では,選別機に,正規寸法のM6ナットと共に,正規寸法よりも小さいM5ナットを混入させた場合,M5ナットについては,供給ユニットのロッドが前進を開始した後,その前進が途中で停止し,M5ナットがヒンジカバーとジェットピンに挟まれた状態になったこと,すなわち,ナットを弾き飛ばしていないことが認められる。 ウジェットピンの形状の比較平成12年製品のジェットピンの形状(甲18)と平成24年製品のジェットピンの形状(乙2の1,写真9)及び平成15年製品のジェットピンの形状(乙38の1,写真10)を比較すると,平成12年製品の ジェットピンのフランジ部分の角がなだらかなテーパー状になっているのに対し,平成24年製品及び平成15年製品 品のジェットピンの形状(乙38の1,写真10)を比較すると,平成12年製品の ジェットピンのフランジ部分の角がなだらかなテーパー状になっているのに対し,平成24年製品及び平成15年製品のジェットピンのフランジ部分の角が直角になっている。加えて,平成11年に製造されたNUTFEEDER(製造番号M6-98,型式NS-ARF)も,ジェットピンのフランジ部分の角が直角になっている(乙33の1・2)。 以上によると,むしろ,被告製品のジェットピンの形状は,一貫して,フランジ部分の角が直角になっていることが認められる。 なお,取扱説明書(甲7,乙1)に掲載されたジェットピンの図では,フランジ部分の角がなだらかになっている。しかし,取扱説明書の前後の記載内容をみると,ジェットピンの図は,シリンダー部を構成する部品の概要及び名称等を説明する趣旨で掲載されているにすぎず,必ずしも部品の細部の形状まで精密に記載しているわけではない。 また,平成12年製品を保有する●●●●の担当者による平成25年10月23日付けの陳述書(甲20)には,平成12年●●●に平成12年製品を購入した当時,スピンドルの先端の形状が平成12年製品を撮影した写真のとおりであり,平成20年9月頃に原告会社に貸与するまでの間,部品の交換,修理,改造をしたことはない旨が記載されている。しかし,上記の陳述書は,平成12年製品を保有する●●●●の社員から聞き取った内容を記載したにとどまり(甲24),上記の記載内容によって,当該社員が約13年前に購入した平成12年製品のジェットピンの形状まで記憶しており,製造された当初から平成12年製品のジェットピンのフランドル部分がなだらかなテーパー状であったと認めることはできず,ほかにそのような事実を認めるに足りる証拠はない。 ピンの形状まで記憶しており,製造された当初から平成12年製品のジェットピンのフランドル部分がなだらかなテーパー状であったと認めることはできず,ほかにそのような事実を認めるに足りる証拠はない。 エプロジェクションナットを弾き飛ばすか否かを決める原因平成24年製品及び平成15年製品において,M5ナットがヒンジカバーとジェットピンに挟まれた状態になったのは,ロッドの前進が停止し たのが原因であると考えられる。そして,ロッドの前進が停止したのは,ジェットピンが,先端ブロックに停止したM5ナットのねじ孔内に串刺し状に貫通せずにM5ナットを前方に押し動かし,供給ホース内にある後続のプロジェクションナットが下方に動き,ジェットピンのフランジ部分が,その角が直角になっているために,後続のナットに引っ掛かったのが原因であると考えられる(乙2の1・2,乙38の1・2)。 平成15年製品を用いた事実実験(乙38の1・2)では,ヒンジカバーとジェットピンに挟まれたM5ナットを取り除き,ヒンジカバーを開いた状態にしたところ,後続のナットの下部が仮止め室の前面開口の上縁とジェットピンのフランジとに挟まれて後続のナットが傾き,ジェットピンのフランジが後続のナットを供給ユニット前端のブロックにロックした状態になっていたことが認められる。このことは,ジェットピンのフランジ部分が後続のナットに引っ掛かることがロック状態の原因であることを裏付けている。したがって,ジェットピンの形状の違いが,正規寸法よりも小さいナットを弾き飛ばすか否かに違いが生じる原因となっていると考えられる。 オジェットピンの速度が及ぼす影響原告らは,ナットが進出する速度と,ジェットピンの前進速度とを調整することにより,フランジ部分に次のナットが引っ掛からないようにする っていると考えられる。 オジェットピンの速度が及ぼす影響原告らは,ナットが進出する速度と,ジェットピンの前進速度とを調整することにより,フランジ部分に次のナットが引っ掛からないようにすることは可能であると主張する。確かに,ナットを弾き飛ばす平成12年製品と,ロック状態を生じる平成24年製品を比較したところ,これらの速度が異なることが窺える(甲6,乙2の2,乙20の1・2,乙38の2,乙42の1)。 しかしながら,速度の違いだけがナットを弾き飛ばす原因であると断定することもできず,ジェットピンの形状が前記のロック状態の原因であることを否定することはできないというべきである。 仮に,ジェットピンの前進する速度の違いが原因で,ナットを弾き飛ばすか否かの違いが生じる可能性があるとしても,被告製品において,ジェットピンの前進する速度の設定が,平成12年製品のものと認めるに足りる証拠はない。むしろ,証拠(乙1)によると,平成24年製品のものは,ジェットピンの前進する速度を調整する機構を備えておらず,被告製品の設定どおりであることが窺える。 また,平成15年製品についても,平成24年製品とほぼ同じ時間を要することが窺える(乙42の1・2)。 カまとめ以上のとおり,平成12年製品は,ジェットピンが交換され,被告製品が本来備えているはずのジェットピンとは異なるジェットピンが取り付けられている疑いがあり,被告製品と認めることはできない。したがって,平成12年製品によって,被告製品が正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを「弾き飛ばす」という構成要件Eに相当する構成を備えていると認めることはできない。 (2)平成17年製品弁護士法23条の2第2項による照会に対し,●●●●は,工場内に,被告が平成17 ナットを「弾き飛ばす」という構成要件Eに相当する構成を備えていると認めることはできない。 (2)平成17年製品弁護士法23条の2第2項による照会に対し,●●●●は,工場内に,被告が平成17年に製造した平成17年製品(製造番号●●●●●●●,型式NS-ARF)を保有し,供給ホースにM8ナットと共にM6ナットを混入した場合,M6ナットは,供給ユニットのロッドの進出時に,ジェットピンの先端部で弾き飛ばされる旨回答している(甲25の1・2)。 しかし,●●●●は,M6ナットを混入した場合,供給ユニットのロッドの前進が途中で停止し,M6ナットがヒンジカバーとジェットピンに挟まれたロック状態になることが「あります。(一瞬ですが)」と回答しており,ロック状態が生ずるとも読み取れる。また,回答書のみでは,●●●●の工場内にあるプロジェクションナット供給装置,特に,ジェットピンがどのような 形状をしているか,あるいはどのような状況で供給装置を作動させたかは明らかではない。 したがって,平成17年製品によって,被告製品が正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを弾き飛ばすという構成要件Eに相当する構成を備えていると認めることはできない。 なお,原告らは,前記第3の1-1【原告らの主張】(4)イ(イ)において,M6ナットとM8ナットの内径をそれぞれ6㎜,8㎜と説明している。これは,甲25の2に基づく主張と考えられるが,これらのナットはJIS規格に基づく規格品であり,上記寸法は,M6ナット,M8ナットに螺合するおねじの外径の基準寸法であり(甲10),実際のナットの内径の寸法とは異なると考えられる。 (3)そのほかに,被告製品が構成要件Eに相当する構成を備えていると認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,その余 り(甲10),実際のナットの内径の寸法とは異なると考えられる。(3)そのほかに,被告製品が構成要件Eに相当する構成を備えていると認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松阿彌隆 裁判官林啓治郎 (別紙)被告物件目録 1 品名 NUTFEEDER型式 NS-ARF 2 上記1のほか,別紙被告製品説明書と同一の構成を有するプロジェクションナットの供給装置 (別紙)被告製品説明書 1 製品の説明名称 NUTFEEDER 型式 NS-ARF 2 符号の説明 3 鋼板部品 4 正規寸法のプロジェクションナット 5 供給ユニット 6 ロッド 7 中間チューブ 8 供給ホース 25 ジェットピン 27 シリンダー 28 先端ブロック 29 ねじ孔 30 ガイドピン 31 ホッパー 32 選別機のナット通路 33 マグネットホルダー 331 マグネット 332 クロス 34 選別片 35 入り口板 38 正規寸法より大きいプロジェクションナット 39 正規寸法より小さいプロジェクションナット 40 ヒンジカバー 41 選別機 42 選別ボード 43 ス り口板 38 正規寸法より大きいプロジェクションナット 39 正規寸法より小さいプロジェクションナット 40 ヒンジカバー 41 選別機 42 選別ボード 43 ステンレスボード 44 モーター 3 図面の説明図1 供給ユニットの縦断面図図2 供給ユニット全体を示す側面図図3 正規寸法のプロジェクションナットにジェットピンが貫通している状態を部分的に示す縦断面図図4 選別機の選別部の斜視図図5 図4のB-B断面図図6 図5のC-C断面図図7 図4のA-A部分断面図図8 正規寸法より大きいプロジェクションナットを排除している状態を示す図図9~11 正規寸法より小さいプロジェクションナットをジェットピンで弾き飛ばしている写真 4 構成a マグネットホルダー33を回転することによりプロジェクションナット4を送出する選別機41とb この選別機41からのプロジェクションナット4を先端ブロック28に当てて所定位置に停止させ, c その後,供給ユニット5のロッド6のジェットピン25をプロジェクションナット4のねじ孔29内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナット4を目的箇所へ供給する形式のものにおいて,d 正規寸法(例えばM6)よりも大きいプロジェクションナット38を排除し正規寸法4あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる選別片34を選別機41のナット通路32に設置し,e 先端ブロック28に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナット39を供給ユニット5のロッド6の進出時にその先端部で弾き飛ばすジェットピン25の外径(M6用では4.5㎜)は正規寸法のプロジェクション 8に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナット39を供給ユニット5のロッド6の進出時にその先端部で弾き飛ばすジェットピン25の外径(M6用では4.5㎜)は正規寸法のプロジェクションナット4のねじ孔の内径(M6では4.917㎜)よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナット39のねじ孔の内径(M5では4.134㎜)よりも大きく設定されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置 図1 図2 図3 図4 図5 図6 図7 図8 図9 図10 図11

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