平成11(ワ)492 通行地役権確認等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年9月17日 岡山地方裁判所
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判決文本文5,971 文字)

主文 原告が別紙物件目録記載1の土地のうち,別紙図面1の赤色部分のU字溝(岡山市甲字乙a番bに接する部分に位置するもの。)を,生活排水路として利用する権利を有することを確認する。 被告は,前記U字溝を原告が生活排水路として利用することを妨害してはならない。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1原告の請求主文と同旨第2事案の概要本件は,原告が,被告所有地内に設置されたU字溝について,民法220条,221条により生活排水路として利用する権利があるとして,その権利の確認とU字溝利用の妨害禁止を求めた事案である。 第2事案の概要 争いのない事実等(証拠によって認めた事実については,括弧内に証拠を掲記する。)(1) 原告は,別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地」という。)上にある同目録記載4の建物(以下「本件建物1」という。)を平成8年10月9日に買い受けた後(甲1の5),本件土地及び同地上のもう1棟の建物である同目録記載3の建物(以下「本件建物2」という。)を同年11月18日競売による売却によって買い受けた(甲1の3,4。以上の事実は概ね争いがない。)。 (2) 本件土地付近の地籍図は別紙図面2のようになっており(甲8),本件土地は公路,公流又は下水道のいずれにも接していない(争いがない。)。いずれも私有地である岡山市甲字乙a番c,同番d,同番e,同番f,g番h,i番j,g番kの各土地(別紙図面2の緑線で囲んだ部分。なお,同字所在の土地については,以下地番のみで表示する。)は公衆用道路として利用されており,本件土地からはこの各土地を経て初めて,南側の公道(県道丙線)に至ることができる(甲4,5,8,9,20,22,24,26,27,18,35,乙2の1ないし3,原告代表者,元共同被告A本人)。別紙住 本件土地からはこの各土地を経て初めて,南側の公道(県道丙線)に至ることができる(甲4,5,8,9,20,22,24,26,27,18,35,乙2の1ないし3,原告代表者,元共同被告A本人)。別紙住宅地図は,本件土地付近の住宅地図の写しである(本件土地は,同図中赤色に着色した部分。甲4)。 (3) 前記公衆用道路として利用されている私有地の側端にはU字溝が設けられており,本件土地に設けられた排水口から排水された水は,自然排水の状態で,a番cの土地内をa番l,同番m及び同番bとの境界線に沿って設けられたU字溝を流れ,同番nの土地内に同番bと接する形で設置されたU字溝(別紙図面1の赤色部分。以下これを「本件U字溝」という。)を通って,有蓋用水路(a番o,同番p,同番n,同番bに沿ってそれらの北東側にある道路の側端に設けられたもの。以下「本件用水路」という。)に流れ込み(その状況は別紙図面3記載のとおり。),さらに北上してより大きな用水路(丙用水)に流れ込んで行くことになる(甲4,5,乙2の1ないし11,原告代表者,元共同被告A本人)。 (4) 本件U字溝が存するa番nは,本件土地よりも低い(争いがない。)。 (5) 被告は,本件U字溝が存するa番nの土地を所有しており,原告が本件土地から生活排水を本件U字溝に流すことに反対し,その利用権を争っている(争いがない。)。 争点 本件の争点は,原告が民法220条,221条の定める余水通水権,通水用工作物の使用権に基づき,本件U字溝を本件土地のための生活排水路として利用する権利があるか否かである。 (1) 原告の主張本件土地はa番nより高地にあるから,民法220条,221条により,原告は,家用の余水を排泄するため,公流に至るまで,低地に水を通過させることができるし,また,本件土地の水を通過させる 原告の主張本件土地はa番nより高地にあるから,民法220条,221条により,原告は,家用の余水を排泄するため,公流に至るまで,低地に水を通過させることができるし,また,本件土地の水を通過させるため設けられた本件U字溝を使用する権利がある。本件U字溝はそのために設けられたものであり,低地のために損害が最も少ない場所及び方法である。 (2) 被告の主張原告主張の条文は,低地に損害の発生を予定していない高所から低所への一般的な余水の排泄に係る事実関係についてのみ適用が考えられるものであって,被告が主張する最低地に発生する被害について説得すべき根拠を持たない。被告所有のa番nが近隣用地の中では最低地点に位置し,原告の余水がa番nを通過した後は,高い用地に向かって進行して行き,広い用水路に接続しているところ,この広い用水路の水位が高くなれば,用水路の水圧によって本件用水路から広い用水路への出口は圧迫され,出水しようとする排水は本件用水路に逆流し,a番nや被告らの建物に被害を発生させている。 本件土地における建築は,当初からこの排水関係について全く留意することなくなされた。それは当時,本件土地の行き着くところは農地(水田)であって,余水による被害を余り認識できない頃に建築したことに原因する。 第3当裁判所の判断 まず,当事者間に争いのない事実及び証拠(甲1,3ないし24,26ないし28,31ないし33,35,乙1ないし8(以上のうち枝番のあるものは,枝番の全て。),調査嘱託の結果,原告代表者,元共同被告A本人。ただし,それらのうち後記認定に反する部分は,他の証拠に照らし,採用しない。)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件土地を含む周辺の土地は,もとa番c田975㎡であり,昭和30年4月10日にBが買い受けて所 部分は,他の証拠に照らし,採用しない。)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件土地を含む周辺の土地は,もとa番c田975㎡であり,昭和30年4月10日にBが買い受けて所有権を取得した。その後,岡山市の不動産業者Cがここを宅地造成して分譲することになり,昭和45年2月4日,a番cから,同番lないし同番qが分筆され,同月16日,a番cからさらに同番dが分筆された。そして,同年5月20日,a番bにつき宅地に地目変更され,同年6月1日,同番l,p,oにつき宅地に,同番cにつき公衆用道路にそれぞれ地目変更され,同月16日,a番pから同番nが分筆された。 この宅地造成分譲の際,a番nは,同番cと同様に公衆用道路の予定地として分筆され,a番cの両側端に排水のためのU字溝が設けられるとともに,a番nにも本件U字溝が設置された。この付近は,土地が南から北に緩やかに下り傾斜であるため,a番c,同番dに設置されたU字溝の排水は,本件U字溝に集まり,本件用水路に流れ込んだ後,さらに北側の広い用水に合流して排泄されていた。なお,本件土地を含む岡山市甲地区は,岡山市の下水処理区域外である。 (2) a番p,同番nは昭和45年6月15日Dに売却され,同年9月ころa番p上に居宅が新築された(昭和56年4月ころ増築され,軽量鉄骨・木造スレート・亜鉛メッキ鋼板葺2階建居宅1階70.94㎡,2階31.15㎡になった。)。被告は,昭和49年ころからこの建物を借り受けて家族で居住し,昭和56年12月10日,a番p,同番nの土地と地上建物を買い受けた。なお,a番bは,昭和53年4月14日Eに売却され,同年6月ころ同地及びr番s上に居宅が新築(昭和56年12月ころ増築され,軽量鉄骨・木造スレート・亜鉛メッキ鋼板葺2階建居宅・車庫1階88.93㎡,2階 a番bは,昭和53年4月14日Eに売却され,同年6月ころ同地及びr番s上に居宅が新築(昭和56年12月ころ増築され,軽量鉄骨・木造スレート・亜鉛メッキ鋼板葺2階建居宅・車庫1階88.93㎡,2階80.53㎡になった。)された後,地上建物とともに平成9年7月24日被告の夫Aに売却され,現在この建物に被告の家族が居住している。 (3) 本件土地は,昭和45年6月25日Fに売却され,昭和46年4月ころ地上に本件建物2が新築された。本件土地は,その後昭和55年5月16日G,Hに,昭和57年1月18日Iに順次売却された後,平成5年5月12日,地上建物とともにJに売却されたが,平成7年7月18日抵当権の実行による競売開始決定のため本件土地及び本件建物2が差し押さえられ,平成8年11月18日競売による売却により原告がそれらの所有権を取得した。また,本件土地には,平成6年8月ころ本件建物1が新築され,平成8年10月9日原告がこれを買い受けた。 (4) a番oは,昭和45年12月22日Kに売却された後,地上に建物が新築されたが,昭和63年12月22日同人の死亡によりLに相続された。また,a番mは,昭和45年6月4日Mに売却され,現在まで畑として使用されている。 (5) 被告の夫Aは,原告が本件土地及び本件建物2を競落した後,原告代表者に対し,本件土地及び隣接のa番mは生活排水のできない土地であるから大した価値のない土地であること,排水路の一部は自分の家族の所有地であるから生活排水は絶対に流させないこと,本件土地は競売価格が安値になったら自分が入札する予定でいたこと,そのために排水を禁止する立て看板をしていたことを話し,原告代表者が現地を確認すると,a番mの北西角付近にその旨手書きした立て看板があった。 (6) 本件土地の南西方にある公衆用道路a番f,g こと,そのために排水を禁止する立て看板をしていたことを話し,原告代表者が現地を確認すると,a番mの北西角付近にその旨手書きした立て看板があった。 (6) 本件土地の南西方にある公衆用道路a番f,g番h,i番j,g番kにはU字溝が設置されており,これが公流ないし下水道につながっているが,本件土地前のU字溝とはつながっていない。また,a番f側のU字溝の底面は,本件土地より数十cm高くなっているため,本件土地からこのU字溝に排水するためには揚水ポンプの設備が必要な上,そのU字溝が位置する土地の所有関係が多数複雑で,全所有者の同意を得ることが困難な状況にあり,仮に同意が得られたとしても,その排水路工事には800万円以上を要する。 (7) a番pの東側のt番uには岡山市の下水道管が埋設されている。仮に本件土地からa番c,同番pを横断する形で通水することができたとしても,そこからこの下水道管に接続させるには,a番pと下水道管の間にある本件用水路の底を通過する必要があるところ,本件用水路の底面が深いため,技術的に困難である。 (8) 被告は,本件土地の生活排水のために本件U字溝を利用させることの弊害として,降雨などにより北方の広い用水の水嵩が増した場合,本件用水路に水があふれ,被告方の排水口を通じて水が逆流すること,a番n付近は周辺で最も低地にあり,水はけが悪いため,異常降雨の際冠水することなどを主張している。 原告は,民法220条により,本件土地の生活排水の排泄のため,公路,公流又は下水道に至るまで低地に水を通過させることができるところ,前記認定事実によれば,本件U字溝は,宅地造成業者によって造成宅地のための生活排水路として設置され,造成宅地のため長年利用されてきたものと認められるから,特段の事情がない限り,本件U字溝を利用することが低地のた によれば,本件U字溝は,宅地造成業者によって造成宅地のための生活排水路として設置され,造成宅地のため長年利用されてきたものと認められるから,特段の事情がない限り,本件U字溝を利用することが低地のために損害が最も少ない場所及び方法であると解するのが相当である。 そこで,特段の事情があるかを検討するのに,本件土地の南西方の公衆用道路に設けられたU字溝については,そもそもその敷地が本件土地より低地ではない上,経済的法律的な難点がある。a番pに通水する方法は,そこから東の下水道管に接続することは前記認定のとおり困難であり,そこから本件用水路に排水することは本件U字溝から本件用水路に排水するのと同様,被告方の排水口に逆流の弊害を伴う。その他,本件においては,本件U字溝を利用する以外に,より損害の少ない場所及び方法があることを窺わせる証拠はない。 被告主張の弊害のうち冠水被害は,異常降雨が原因であって本件U字溝の利用とは直接関係がないものであるし,被告方排水口に逆流することも,その排水口が本件用水路と接続している限り起こりうる問題である。なるほど,本件U字溝に生活排水が排泄されることで,逆流水に生活排水が混じることの不衛生等の弊害は考えられるが,被告方の立地条件から来る制約であって被告が不動産を取得する時点で予見できたことであるから,受忍するほかなく,そのために本件U字溝の利用禁止を肯定することはできない。 また,本件U字溝は,民法221条所定の低地の所有者が設けた通水用工作物であるから,原告は,同条によっても,本件土地の生活排水のため,本件U字溝を利用する権利があるものと認められる。 なお,被告は,民法220条,221条は,低地に損害の発生を予定していない高所から低所への一般的な余水の排泄に係る事実関係についてのみ適用が考えられるものである旨 用する権利があるものと認められる。 なお,被告は,民法220条,221条は,低地に損害の発生を予定していない高所から低所への一般的な余水の排泄に係る事実関係についてのみ適用が考えられるものである旨主張するが,そのように限定的に解すべき理由はない(同法220条ただし書によれば,同条は低地に損害のある場合にも適用があることは明らかである。)から,被告の前記主張は採用できない。 以上によれば,原告は,民法220条,221条に基づき,本件土地の生活排水路として本件U字溝を利用する権利を有するところ,被告はその権利の存在を争っており,被告が原告の利用を妨害することも十分考えられるから,予めその妨害排除を求める必要も認められる。したがって,原告の請求はいずれも理由があるから,これらを認容する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判官政岡克俊(別紙)物件目録 岡山市甲字乙a番n宅地30.00㎡ 同乙a番l宅地189.00㎡ 同乙a番地l所在木造スレート瓦葺平家建居宅床面積45.63㎡家屋番号22番12の2 同乙a番地l所在木造瓦葺2階建居宅床面積1階51.11㎡,2階50.54㎡家屋番号22番12の1(別紙図面省略)

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