平成16(ワ)15787 地位確認等請求事件(通称 郵便事業株式会社就業規則変更)

裁判年月日・裁判所
平成21年5月18日 東京地方裁判所
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判決文本文60,343 文字)

- 1 -主文 原告らの,後記請求欄第2項の訴えを却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求(主位的) 被告は,原告らのうちP1,P2,P3,P4を除くその余の者に対し,平成19年10月1日施行の被告の「社員就業規則」及び「社員勤務時間・休暇手続」の適用に関し「社員就業規則」別表第2に定める「10深夜勤「8,」深夜勤」及び「調整深夜勤」の勤務に従事する義務のないことを確認する。 (予備的)’,,「」 被告は上記原告らに対し平成19年10月1日施行の社員就業規則及び「社員勤務時間・休暇手続」の適用に関し「社員就業規則」別表第2に,定める「10深夜勤」又は「8深夜勤」に4日間続けて従事する義務のないことを確認する。 被告は別紙2原告一覧表番号1~26記載の原告らに対し,日本郵政公社職員勤務時間,休息,休日及び休暇規程運用細則の適用に関し,平成16年2月8日施行前の同規程運用細則8条の適用を受ける地位にあることを確認する。 被告は別紙1当事者目録記載の原告らに対し,各50万円及びこれに対する平成16年2月8日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 第3項につき仮執行宣言第2事案の概要原告らは,被告が設置する郵便局(平成19年10月1日以降は郵便)。 事業株式会社が設置する支店に勤務する者及び既に退職した者である- 2 -被告の訴訟被承継人日本郵政公社(以下「公社」という)は,平成15年1。 1月21日,就業規則の一部であり,職員の勤務時間について定めた「日本郵政公社職員勤務時間,休息,休日及び休暇規程運用細則」を改定し(以下「本件運用細則改定」といい,同改定前の運用細則 15年1。 1月21日,就業規則の一部であり,職員の勤務時間について定めた「日本郵政公社職員勤務時間,休息,休日及び休暇規程運用細則」を改定し(以下「本件運用細則改定」といい,同改定前の運用細則を「旧運用細則,改定後のそ」れを「本件運用細則」という,同16年2月8日から本件運用細則を施行し。)た。その後,公社が解散し,被告が訴訟を承継したが,被告は,平成19年10月1日,民営・分社化後における勤務時間制度を含む会社社員に適用される「社員就業規則(以下「本件就業規則」という)を制定した。 」。 本件は,原告らが,前記運用細則の改定により,①深夜帯で勤務する時間数が増加し,また深夜帯勤務の連続指定が可能になったこと,②休息時間が短縮されたこと,③勤務時間の短縮措置が廃止されたこと,④深夜帯勤務の回数制限が廃止されたこと等が,合理性のない就業規則の不利益変更であり,これらは原告らの健康及び社会生活に重大な影響を与えるものであると主張して,これとほぼ同内容である現行の本件就業規則及び「社員勤務時間・休暇手続(以下「本件勤務時間細則」という)の適用」。 に関し,主位的に同就業規則別表第2所定の10深夜勤,8深夜勤,調整深夜勤に勤務する義務の不存在であることの確認,予備的に同勤務に4日連続して従事する義務の不存在であることの確認及び旧運用細則の特例休息の定めの適用を受ける地位にあることの確認をそれぞれ求め,ま,,,,た違法無効な業務命令を受け精神的肉体的損害を被ったと主張して安全配慮義務違反に基づく慰謝料及び遅延損害金の支払を求める事案である。以下,本件において,時刻はすべて24時間表示である。 争いのない事実及び弁論の全趣旨から明らかな事実(文中では「争いのない事実」と表記する)。 ( )被告 公社は,日本 める事案である。以下,本件において,時刻はすべて24時間表示である。 争いのない事実及び弁論の全趣旨から明らかな事実(文中では「争いのない事実」と表記する)。 ( )被告 公社は,日本郵政公社法(平成15年4月1日施行)によって,同日付け- 3 -で成立した,旧郵政省,郵政事業庁が行っていた郵政三事業(郵便事業,郵便貯金事業,簡易保険事業)を行う国営の公社である。郵政民営化法(平成17年法律第97号,日本郵政株式会社法(平成17年法律第98)号,郵便事業株式会社法(平成17年法律第99号,郵便局株式会社))法(平成17年法律第100号,独立行政法人郵便貯金・簡易生命保)険管理機構法(平成17年法律第101号)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)が平成19年10月1日に施行されたことにより,日本郵政株式会社,郵便事業株式会社(以下「被告」とは同社をいう,郵便局株式会社,郵。)便貯金銀行,郵便保険会社(以下これらを「承継会社」という)及び。 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が設立され,公社は,郵政民営化法の施行の時において解散し,承継会社等はその時において,同法163条3項の認可を受けた実施計画において定められた業務等を公社から承継した(同法166条1項。 )( )原告ら 原告らは,いずれも旧郵政省,郵政事業庁の職員であった者で,日本郵政公社法施行法4条によって,公社の職員としての地位を取得した従業員であり(既に退職した者のうち,退職後に高齢再雇用社員及び期間雇用社員になっていない者を除く,郵便局において,いずれも郵便内務作業に従事し。)ていた公社に勤務していた職員は郵政民営化法167条において公。 ,,「,,社の解散の際現に公社 期間雇用社員になっていない者を除く,郵便局において,いずれも郵便内務作業に従事し。)ていた公社に勤務していた職員は郵政民営化法167条において公。 ,,「,,社の解散の際現に公社の職員である者は別に辞令を発せられない限りこの法律の施行の時において,承継計画において定めるところに従い,承継会社のいずれかの職員となるものとする」とされ,承継計画の定。 めるところに従い,いずれかの新会社の職員になることとされ,原告らは,被告の社員となった。 原告らは,いずれも「郵政産業労働組合(以下「郵産労」という)に」。 所属している。承継会社等には,他にJPU,全郵政,郵政労働者ユニオン- 4 -の各労働組合がある。同法171条は「公社の職員が結成し,又は加入す,る労働組合…と日本郵政株式会社は,承継職員の労働条件その他に関する労働協約…を締結するための交渉をし,及び承継労働協約を締結することができる」と定めており,これにのっとり,日本郵政株式会社は,関係労働。 組合と会社社員の勤務時間等について団体交渉を行い,合意に至った各労働組合との間で社員の勤務時間・休暇に関する協約及び社,「」「『員の勤務時間・休暇に関する協約』附属覚書」を締結した労働協約を締結した。同社は,原告らの所属する郵産労との間においても,団体交渉を行っているが,会社社員の勤務時間等について合意に至らなかったことから,上記協約及び協約附属覚書を締結していない。 ( )公社職員の勤務時間,休息時間の概要 ア適用法令公社職員は一般職の国家公務員である(日本郵政公社法50条)が,その勤務時間等に関する事項については,日本郵政公社法57条1項2号,8号により国家公務員法106条,一般職の職員の勤務時間,休暇等に関する法律(以下「勤務時間法」という 日本郵政公社法50条)が,その勤務時間等に関する事項については,日本郵政公社法57条1項2号,8号により国家公務員法106条,一般職の職員の勤務時間,休暇等に関する法律(以下「勤務時間法」という)の各適用が除外されており,勤。 務時間法の実施に関して必要な事項を定めた人事院規則15-14(職員の勤務時間,休憩,休日)についても適用が除外されている。また,公社職員には,特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(以下「特労法」という)が適用され(同法2条3号,4号,労組法,労基法等が適用。 )される(特労法37条1項1号。 )イ本件運用細則等公社総裁は,日本郵政公社法55条に基づき,職員の勤務時間等について日本郵政公社職員勤務時間休憩休日及び休暇規程乙1以下本,,,(。 「件規程」という)を定めている。また,公社人事部門の長は,本件規程。 34条に基づき,同規程の実施に関し,本件運用細則を定めている。 - 5 -ウ勤務時間及び休息時間(ア)公社は,職員(管理職員,再任用職員,郵政短時間職員及び非常勤の職員を除く)の勤務時間について,1日8時間以内,4週間につい。 て1週平均40時間と定めているが,単独計画人員配置の郵便局(各事業ごとに,原則として単独に計画人員が算定され,配置される郵便局のこと)及び総合計画人員配置の集配郵便局(各事業を総合して計画人員が算定され,配置される集配郵便局のこと)の郵便関係職員(以下,これらを併せて単に「郵便関係職員」という)の勤務時間については,。 4週間の勤務時間が1週平均40時間を超えない範囲内において,特定の日における勤務時間について8時間を延長又は短縮することができる(,,,)。 と定めている本件規程3条1項3項本件運用細則4条( )( ) 時間を超えない範囲内において,特定の日における勤務時間について8時間を延長又は短縮することができる(,,,)。 と定めている本件規程3条1項3項本件運用細則4条( )( ) (イ)公社は,職員の休息時間について,原則として,勤務4時間中に15分の休息時間を勤務の途中に設けると定める(本件規程5条2項本文。休息時間は,勤務時間に含まれ,与えられなかったとして)も,繰り越されないものである(本件規程5条3項。 )エ休憩時間について休憩時間は,労基法34条により,6時間を超える勤務時間の場合は45分を,8時間を超える勤務時間の場合は1時間を,勤務時間の途中に設けることとされている(本件規程6条1項。また,休)憩時間は,勤務時間に含まれず,予め指定された時間帯に付与されな,(,い場合は振り替えて付与されることとなっている同規程6条4項運用細則11条2項。 )オ勤務の指定について(ア)服務表について各機関の所属長は,各機関の業務運行等を勘案し,服務表を作成することとなっており,服務表においては,①勤務の種類並び- 6 -に始業時刻及び終業時刻,②休憩時間を設ける方法,③休息時間を設ける方法,④週休日を設ける方法,⑤非番日を設ける方法及び⑥勤務の種類の組合せ方法について定めることとされている本(件規程9条。 )このうち「勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻」は,職,員が所属する機関ごとに適用される勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻から,各機関ごとの業務運行に必要な勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻を定めることとなる(運用細則17条。 )なお,具体的な始業時刻及び終業時刻については,運用細則各別表に定める勤務の種類ごとの始業時刻及び終業時刻を繰り上げ又は繰り下げることができるこ 及び終業時刻を定めることとなる(運用細則17条。 )なお,具体的な始業時刻及び終業時刻については,運用細則各別表に定める勤務の種類ごとの始業時刻及び終業時刻を繰り上げ又は繰り下げることができることとされている(運用細則別表第1ないし別表第8。 )(イ)服務表の作成あるいは変更については,各機関において,関係労働組合支部等との団体交渉等を行い,実施予定日の1週間前ま()。 でに関係職員に周知することとなっている運用細則30条3項カ勤務指定について職員に対する勤務の指定は,4週間を単位として,当該職員の各日の勤務の種類等を指定し(本件規程10条1項,当該期間の1)週間前までに関係職員に周知することとなっている(運用細則31条1項。 )その際,実際に指定される勤務の種類は,上記オにより作成された服務表に定める勤務の種類である。 ( )本件運用細則改定前の郵便関係職員の深夜帯勤務等 ア「16勤」郵政省は,昭和30年代から「16勤(1回の勤務として,2労働日」分の16時間の勤務をする勤務の種類)を実施した「16勤」では,地。 - 7 -域区分局において,1時間の勤務時間の短縮措置を行っており,郵便局の規模によっては,特例により設けられた休息時間を含めて,3時間を超える休息時間が設けられていた。 イ「新夜勤(ニューやきん」と呼称される)」「。 公社職員の勤務時間の割り振りに用いる勤務の種類,これに関する始・終業時刻は,本件運用細則別表に定められている(本件規程8条,本件運用細則17条。郵便関係職員は,本件運用細則改定前,旧運用細則)別表第4,第5に基づき,深夜帯勤務として「新夜勤(例えば,午後,」5時から午後11時までの「夜勤(6夜勤B)と午前1時から午前9時」45分までの「深夜勤(深夜勤A)を組み合わ 旧運用細則)別表第4,第5に基づき,深夜帯勤務として「新夜勤(例えば,午後,」5時から午後11時までの「夜勤(6夜勤B)と午前1時から午前9時」45分までの「深夜勤(深夜勤A)を組み合わせるというように,勤務」の種類を2つ組み合わせて指定する勤務のことであり「深夜勤」と他の,勤務との間に最高で2時間の勤務に従事する義務のない勤務解放時間を設け,2日間労働したと計算する。旧運用細則別表第4,別記1参照)に従事していた。なお,公社(郵政省,郵政事業庁を含む)は,本件運。 用細則改定前,運用として,1勤務指定期間(4週間)における「深夜勤」の勤務回数が1人5回を超えないように制限していた。 ウ「調整深夜勤」「新夜勤」は,上記イのとおり,2つの勤務の種類を組み合わせた2労働日分の勤務であるから,本来は,合計16時間の勤務をしなければ()。 ,「」ならないはずである8時間×2労働日=16時間しかし新夜勤として組み合わせられる2つの勤務の種類の合計時間は,旧運用細則別記1のとおり,14時間又は15時間であり,正規の勤務時間に2時間又は1時間不足する。そこで,公社は「新夜勤」において不足する勤務,,,「」「」時間について他の日の勤務で調整するため調整深夜勤等の調整(,)。 との名を冠した勤務の種類を設けた本件運用細則別表第4第5参照公社(郵政省,郵政事業庁を含む)は,本件運用細則改定前,別紙2郵。 - 8 -便局の種類記載のうち,その区分がAないしCに該当する郵便局(以下「地域区分局等」という。なお「地域区分局」とは,他地域の郵便局か,ら送付された郵便物を受持地域内の郵便局へ差し立てる事務及び受持地域内の郵便局から送付された郵便物を他地域又は自地域の郵便局へ差し立てる事務を行う郵便局の お「地域区分局」とは,他地域の郵便局か,ら送付された郵便物を受持地域内の郵便局へ差し立てる事務及び受持地域内の郵便局から送付された郵便物を他地域又は自地域の郵便局へ差し立てる事務を行う郵便局のことをいうについて調整深夜勤と深。),「」「夜勤」の連続指定を認めていなかった(旧運用細則31条4項。 )エ休息時間の特例公社(郵政省,郵政事業庁を含む)は,本件運用細則改定前は,郵便。 関係職員の「深夜勤」について,前記( )ウ(イ)の休息時間に加え,勤務 の種類,勤務時間数及び郵便局の規模等の別に,特例の休息時間を設けることができると定めていた(本件規程5条2項ただし書,旧運用細則8条3項,別表第9,以下「特例休息」という。 。)オ勤務時間の短縮措置公社(郵政省,郵政事業庁を含む)は,本件運用細則改定前,郵便関。 係職員に対し概略次のとおり勤務時間の短縮措置を行っていた旧,,,(運用細則21条,以下「カット時短」という。 。)(ア)地域区分局については,調整勤務から2時間,又は「新夜勤」として組み合わせる「深夜勤」及び調整勤務から各1時間を短縮する。 (イ)地域区分局以外の郵便局については「新夜勤」として組み合わせ,る「深夜勤」又は調整勤務のいずれか一方から,又は「新夜勤」と連,続して指定する「調整深夜勤」から1時間を短縮する。 ( )本件運用細則改定 公社は,平成15年11月21日「郵便事業における効率的な服務方法,の実施」として,本件運用細則を改定し,同16年2月8日から新運用細則を施行した。本件運用細則改定による郵便関係職員の深夜帯勤務等の変更は,次のとおりである。 - 9 -ア「10深夜勤「8深夜勤」の新設(新夜勤」と区別するため「ふ」,「,かやきん」と呼称さ 施行した。本件運用細則改定による郵便関係職員の深夜帯勤務等の変更は,次のとおりである。 - 9 -ア「10深夜勤「8深夜勤」の新設(新夜勤」と区別するため「ふ」,「,かやきん」と呼称される)。 公社は,本件運用細則改定により,郵便関係職員について,深夜帯勤務の種類に「10深夜勤「8深夜勤」を新設し,常勤職員に対し,他,」,の勤務を組み合わせずに単独で,かつ連続して,深夜帯勤務の指定ができるようにした(旧運用細則31条,別表第4,第5改定。 )「10深夜勤」とは,暦日をまたいで,例えば21時から翌日8時と(。),「」いう10時間休憩時間60分を除くの深夜勤務をいい8深夜勤とは,暦日をまたいで,例えば22時から翌日6時45分という8時間(休憩時間45分を除く)の深夜勤務をいい,いずれも1日労働したと。 計算される勤務形態をいう。本件運用細則改定前は,深夜勤は新夜勤の一部として他の短時間勤務と組み合わせる深夜勤,新夜勤と連続して指定する深夜勤及び非常勤職員のみ指定されていたが,新夜勤のほか,必要に応じて常勤職員にも深夜勤の勤務を単独で,かつ連続して指定することとした。 イ深夜帯勤務回数の制限の廃止前記( )イのとおり,1勤務指定期間における新夜勤及び新夜勤に併せ て調整深夜勤の指定を行った場合の深夜帯の勤務回数については,一人平均5回以内としていたのを廃止した。 ウ特例休息の廃止公社は,本件運用細則改定により,特例休息を廃止した(旧運用細則8条改定,別表第9削除。 )エカット時短の廃止公社は,本件運用細則改定により,カット時短を廃止した(旧運用細則21条削除。 )( )前記( )の公社の解散,承継会社による業務の承継を承け,平成1 - 10 -9年10月1日,被告は,民営・分社化後 細則改定により,カット時短を廃止した(旧運用細則21条削除。 )( )前記( )の公社の解散,承継会社による業務の承継を承け,平成1 - 10 -9年10月1日,被告は,民営・分社化後における勤務時間制度を含む会社社員に適用される,本件運用細則とほぼ同内容の本件就業規則を,,。 ,制定し労働基準監督署への届け出社員周知等を行ったしたがって上記( )及び( )に述べた公社職員の労働条件は,被告社員にもほぼそのま ま当てはまる。 ,,,,,,,( )原告らのうち原告P5同P1同P6同P2同P3同P7 同P8,同P9及び同P4は,被告正社員としては既に定年退職している。 争点 ( )被告の本案前の答弁の成否(争点1) ( )本件運用細則改定について,就業規則の不利益変更に関する判例法理の 適用ないし類推適用があるか(争点2)( )上記( )が肯定される場合,本件運用細則改定には合理性があるか(争 点3)( )本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関する判例法 理の適用ないし類推適用があるか(争点4)( )上記( )が肯定される場合本件就業規則の制定には合理性があるか争 ,(点5)( )被告の安全配慮義務違反の存否(争点6) 当事者の主張( )争点1(被告の本案前の答弁の成否)について (被告の主張)ア前記争いのない事実( )の原告らについては,既に退職しており,被告 における就業義務の存否の確認を求めることについては確認の利益がないことは明らかであり,請求欄第1,及び1’項の請求部分は不適法であり,却下を免れない。 - 11 -上記退職した原告のうちには,退職後に高齢再雇用社員及び期間雇,,用社員になっ 認の利益がないことは明らかであり,請求欄第1,及び1’項の請求部分は不適法であり,却下を免れない。 - 11 -上記退職した原告のうちには,退職後に高齢再雇用社員及び期間雇,,用社員になっている者もいるが本件就業規則2条3項にあるとおり高齢再雇用社員及び期間雇用社員は,そもそも同規則及び本件勤務時間細則の適用がない。 イ請求欄第2項の訴えにつき,原告らは,本件運用細則の適用に関する請求を行っているが,前記公社解散に伴い,原告らが求める本件運用細則改定を定めた運用細則の適用がなくなったことから,上記訴えの利益はなくなった。 (原告らの主張)退職した原告らのうち,原告P5,同P6,同P7,同P8,同P9については,高齢再雇用社員勤務時間・休暇手続(乙215)の2条(変形勤務)の規定から「深夜勤を含む変形勤務」について正社員,の手続が準用されていることが明らかで,本件深夜勤の指定が可能となっているから,訴えの利益がないとはいえない。 ( )争点2(本件運用細則改定について,就業規則の不利益変更に関する判 例法理の適用ないし類推適用があるか)について(原告らの主張)ア原告ら公社職員にも労組法・労基法が適用され,労基法第9章「就業規則,89条以下も適用される。したがって法の形式的適用関係からみ」ても,原告ら労働者に就業規則の不利益変更に関する判例法理が適用されることは明らかである。 イ就業規則・運用細則の法規範性,すなわち原告ら公社職員に対してその効力を及ぼす法的根拠は,最高裁昭和40年(オ)第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁秋北バス事件判決が判示するように,労働条件が経営上の要請に基づき,統一的かつ画,,,一的に決定され労働者は経営主体が定める契約内容の定型に従って- 法廷判決・民集22巻13号3459頁秋北バス事件判決が判示するように,労働条件が経営上の要請に基づき,統一的かつ画,,,一的に決定され労働者は経営主体が定める契約内容の定型に従って- 12 -附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされている実情があるこ,。 とそしてこの実態に基づいて当該労働条件に合理性があることである,,この点から見ると公社と原告ら郵便内務労働者との間の労働条件は経営上の要請に基づき統一的,画一的に決定され,労働者がそれに従属。 させられている性格を有している点では民間の労働者と全く同様であるそれゆえにまた原告ら公社の労働者に対する本件就業規則・運用細則上の改定が合理性を有していなければ,原告らに対して法的効力を有するものとして受忍させ得ないことも当然である。 ウさらに,最高裁昭和60年(オ)第104号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号60頁大曲農協事件判決が判示するように,本件運用細則改定のように,深夜時間帯における勤務配置という,生命・健康に直結し,死亡事故が頻発している重要な労働条件の変更の場合には「高度の必要性に基づく合理的な内容」の存在が必要である。すな,わち原告ら労働者に対する本件運用細則改定を強制し受忍させる法的効力,法規範性の根拠は「高度の必要性に基づく合理的な内容」の存在であり,使用者たる被告公社が本件運用細則改定が高度の必要性に基づく合理的な内容であることを主張・立証しなければならない。 被告の主張は,被告が原告ら労働者に対して本件運用細則改定による労務指揮・業務命令の法的根拠は本件運用細則の改定変更であるが,原告ら労働者には,その法規範性の根拠である「高度の必要性に基づく合理的な内容」について争うことを許さないという主張に帰結する。これは最高裁判決 業務命令の法的根拠は本件運用細則の改定変更であるが,原告ら労働者には,その法規範性の根拠である「高度の必要性に基づく合理的な内容」について争うことを許さないという主張に帰結する。これは最高裁判決の示した法理を全く無視し,かつ前記決も指摘する労基法第2条1項の「労働条件の労使対等決定原則」に反する主張であり失当である。 (被告の主張)公社と職員との間の労働関係は,その身分が一般職の国家公務員と- 13 -されていることから明らかなとおり,公法上の法律関係にある。そして,上記労働関係では,非現業の公務員のような勤務条件法定主義がとられておらず,給与,勤務時間等の主要な勤務条件については労使間の交渉による労働協約や就業規則等によって定まる点で現業公務員(あるいは地方公務員の単純労務職員)の労働関係に類似した特殊な公法上の法律関係ということができる。 このような公法上の法律関係にある原告らと公社との間においては,原告らが主張する私法上の原則や就業規則の不利益変更の判例法理は適用がないと解すべきである。換言すれば,公社は,日本郵政公社法55条により,労働協約,労基法の定めに反しない限り就業規則の制定,変更により勤務条件の決定を行うことができ,同就業規則には私企業における就業規則と異なり同法により法的規範としての効力が付与されているのであるから,本件改定は当然に有効である。 ( )争点3(本件運用細則改定について,就業規則の不利益変更に関する判 例法理の適用ないし類推適用がある場合,本件運用細則改定には合理性があるか)について(被告の主張)本件運用細則改定については,高度の合理性がある。仮に,本件運用細則改定について就業規則の不利益変更の法理の適用ないし準用があるとしても,以下のとおり,本件運用細則改定は,郵便事業における効率的な 本件運用細則改定については,高度の合理性がある。仮に,本件運用細則改定について就業規則の不利益変更の法理の適用ないし準用があるとしても,以下のとおり,本件運用細則改定は,郵便事業における効率的な服務方法の実施のため行われたものであり,これに併せて勤務条件の改善等の措置も十全に行っていることから,同法理における高度の合理性を有する。 ア平成16年2月8日実施の郵便関係職員の深夜帯における勤務時間等改正の詳細は,以下のとおりである。 (ア)常勤職員(本務者」ともいう)への深夜勤の指定について(旧「。 - 14 -運用細則31条,別表第4及び別表第5の改正)深夜帯勤務に従事する職員の健康保持と深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,常勤職員の勤務について,それ以前からある深夜帯の勤務に加え,深夜帯における勤務の種類に,10時間勤務の深夜勤(10深夜勤,)8時間勤務の深夜勤(8深夜勤,10時間勤務の調整深夜勤(調整深夜勤C)及)(,,びその服務編成方法を追加した本件運用細則31条4項ないし6項別表第4別表第5,別記2,別記3及び別記4。 )すなわち,平成16年2月8日実施前は,深夜勤は新夜勤の一部として他の短時間勤務と組み合わせる深夜勤,新夜勤と連続して指定する深夜勤及び非常勤職員のみ指定されていたが,深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,新夜勤のほか,必要に応じて常勤職員にも深夜勤の勤務を単独で指定することとした。 このことにより,一つの勤務の始業時刻から終業時刻までの時間数が減少することとなったものである。 そして,主な勤務パターンは,本件運用細則別記2ないし別記4のとおりである。 (イ)深夜帯勤務回数の制限の廃止について1勤務指定期間における新夜勤及び新夜勤に併せて調整深夜勤の指定を行った場合の深夜 て,主な勤務パターンは,本件運用細則別記2ないし別記4のとおりである。 (イ)深夜帯勤務回数の制限の廃止について1勤務指定期間における新夜勤及び新夜勤に併せて調整深夜勤の指定を行った場合の深夜帯の勤務回数については,一人平均5回以内としていたが,深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,これを廃止した。 ただし,1勤務指定期間当たりの深夜帯勤務の回数の目安を新たに定めた。 すなわち,1勤務指定期間当たりの深夜帯勤務の回数の目安は,10時間深夜勤の連続指定の場合は8回,新夜勤と調整深夜勤を組み合わせて連続指定する場合は6回,8時間深夜勤の連続指定の場合は10回又は8回とした。 - 15 -(,)(ウ)特例休息の廃止について旧運用細則8条の改正別表第9の削除a深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,特例休息を廃止した(別表第9の削除。 )b上記のとおり,特例休息は廃止したが,勤務4時間につき15分の休息時間のほかに付与される新たな休息時間を設けた新,(運用細則8条3項1号。 )(エ)カット時短の廃止について(旧運用細則21条の削除)勤務時間の適正な運用と深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,新夜勤実施局において行っている1時間又は2時間の勤務時間の短縮について廃止した。 イ本件運用細則改定が不利益ではないことについて(ア)深夜勤の新設ではないこと,必ずしも深夜帯にわたる勤務時間数が増加したわけではないこと本件運用細則改定は,これまで新夜勤として他の勤務と組み合わせてきた深夜勤又は調整深夜勤に加え,単独で勤務指定する深夜勤を本務者に指定できるようにしたにすぎず,従来から非常勤職員には深夜勤を勤務指定していたのであり,深夜勤は新設されたものではない。また,本件運用細則改定は,8深夜勤では え,単独で勤務指定する深夜勤を本務者に指定できるようにしたにすぎず,従来から非常勤職員には深夜勤を勤務指定していたのであり,深夜勤は新設されたものではない。また,本件運用細則改定は,8深夜勤では勤務の途中に45分,10深夜勤では同じく60分の休憩時間をそれぞれ設けており,連続した勤務ではなく,むしろ深夜帯にわたる勤務時間数は,本件運用細則改定後減少している場合もある。 (イ)深夜帯勤務の健康に対する影響は必ずしも証明されていないこと深夜帯勤務の健康への影響は,各個人の健康状況,年齢,性別等個人差があり,深夜帯勤務が健康に悪影響を及ぼすことは必ずしも証明されておらず,本件運用細則改定により,原告らの健康に悪- 16 -影響等が発生しているとはいえない。現に,原告らは,定期健康診断等において深夜勤に従事したことを原因とした健康上の問題があ,。 る旨の指摘を受けたり深夜帯勤務を制限されたりしたことはない(ウ)特例休息の廃止があったが,新たな休息時間の付与がされていること及び仮眠時間を剥奪した事実はないこと公社は,本件運用細則改定に伴い,特例休息を廃止したが,新夜勤における勤務解放時間はあくまで自由時間であり,公社はその時間の活用方法を仮眠時間と定めたわけでなく,本件運用細則改定により仮眠時間を排斥したとの事実はないのであって,より過酷な勤務形態となったこともない。 また,公社は,深夜勤(調整深夜勤を含む)及び新夜勤の勤務。 ,,に従事した場合に新たな休息時間を付与することとしその結果規模によっては休息時間が増えた郵便局もあり,すべての郵便局で休息時間が短縮されたわけではなく,実労働時間も増加していない。そもそも休息時間は,勤務時間に含まれる給与支給の対象時間であるから,業務を処理する必要がある場合は就労しなければ ,すべての郵便局で休息時間が短縮されたわけではなく,実労働時間も増加していない。そもそも休息時間は,勤務時間に含まれる給与支給の対象時間であるから,業務を処理する必要がある場合は就労しなければならない時間である(本件規程5条。 )(エ)カット時短の廃止の必要性があり,一週平均40時間,4週160時間になったにすぎないことカット時短は,郵便関係職員の長時間拘束を緩和するために設けられたものであり,深夜労働の過酷さに配慮して設けられたものではない。カット時短は,①本件規程の適用を受ける郵便関係職員の勤務時間が,4週で160時間,1週平均40時間と定められているにもかかわらず,1回の新夜勤又は調整勤務の都度,勤務時間を2時間又は1時間短縮していること,②就労していないにもかかわらず短縮された時間相当の給与が支給されていたこ- 17 -とから,公社としては早急に是正を図らなければならなかった制度。 ,である本件運用細則改定によりカット時短を廃止したことにより正規の勤務時間である1週平均40時間,4週160時間の勤務時間になった。 (オ)深夜帯の勤務回数については一定の配慮を行っていること本件運用細則改定前,1勤務指定期間における新夜勤及び新夜勤に併せて調整深夜勤の指定を行った場合の深夜帯の勤務回数について,1人平均5回以内としていたが,深夜帯における効率的な業務処理を実施するためにこれを廃止した。その結果,深夜帯に勤務する時間の割合が高くなった局所もあるが,勤務指定に当たっては,1勤務指定期間当たりの深夜帯勤務の回数の目安(1勤務指定期間中,新夜勤の場合6回,10深夜勤の場合8回)を新たに定め,また,属人的に深夜帯勤務が指定されることがないよう勤務指定の公平化を図っている。したがって,本件運用細則改定において,何ら制限 指定期間中,新夜勤の場合6回,10深夜勤の場合8回)を新たに定め,また,属人的に深夜帯勤務が指定されることがないよう勤務指定の公平化を図っている。したがって,本件運用細則改定において,何ら制限なく深夜帯勤務を指定することができるようにしたものではなく,深夜帯の勤務回数について一定の配慮を行っている。 なお,原告らの所属する郵便局においても目安を超えて勤務指定された例はない。 ウ本件運用細則改定は,郵便事業における経営上の必要性から実施したものであること(ア)郵便関係職員の健康保持の推進(深夜・早朝帯の長時間拘束勤務の解消)について郵便事業の特性から,深夜・早朝帯における業務処理は,郵便物の送達速度の確保とスピードアップのために必要不可欠であるところ,この深夜・早朝帯における郵便物処理を行うために,これまで,16勤,新夜勤及び深夜勤という勤務を行ってきた。 - 18 -a16勤は,2日分の勤務時間数及び1時間20分の休憩時間の長時間にわたり職員を拘束することとなることから,昭和6,2年3月に週休二日制を先行して実施した地域区分局においてこの16勤に加え,深夜勤を実施した。これにより,深夜帯の業務処理効率をアップさせるとともに,長時間拘束勤務の解消を図ったが,一般局では深夜勤を実施しないことから,郵便局全体で見れば16勤は依然として深夜・早朝帯の中心的な勤務のままであった。この16勤は,平成5年3月に新夜勤が実施されるまで行われた。 b16勤に替わり実施された新夜勤は,暦日の非番日を確保するために,深夜勤と他の短時間勤務を組み合わせた14時間又は15時間の勤務(1回の「新夜勤」勤務に従事することで,2勤務の実績とカウント)であり,例えば,1日目に17時から,()23時までの勤務を行い勤務と勤務の間無給の勤務 合わせた14時間又は15時間の勤務(1回の「新夜勤」勤務に従事することで,2勤務の実績とカウント)であり,例えば,1日目に17時から,()23時までの勤務を行い勤務と勤務の間無給の勤務解放時間を最大2時間設け,2日目の翌日1時から9時45分までの勤務を行うもので,休憩時間を含めると17時間又は18時間の長時間にわたり職員を拘束する勤務である。 新夜勤は,深夜・早朝帯にわたって長時間職員を拘束することでは16勤と変わりがないため,今般,例えば,21時から翌日8時までの勤務を行う10時間の深夜勤や8時間の深夜勤のみを本務者にも指定できることとし,長時間にわたり職員を拘束する勤務の一部見直しを図った。 また「長時間労働者に,消化性潰瘍,胃炎等の発生が多いと,いうデータ,3組3交替制から4組3交替制に切り換えた後,疾病の発症率が年々少なくなった鉄鋼のデータなどは,深夜交替制勤務自体よりも身体的・精神的拘束時間の長さなど総体的な労働- 19 -負荷の方が疾病に影響していることを示唆している(乙96)。」との報告があるとおり,勤務形態自体よりも,長時間にわたる拘束時間の長さなどが総体的な労働負荷となり疾病に影響するものであるとされることから,勤務の見直しを図ることに合理的な理由があることは明らかである。 (イ)郵便事業財政の健全化の必要性等a郵便事業の使命郵便事業の使命は,ユニバーサルサービス(国民生活,社会経済活動に不可欠な郵便サービスをなるべく安い料金で,全国あまねく公平に提供すること)の確保である(郵便法1条。 )また,郵便事業は,独立採算制の下で効率的に経営することとされており(中央省庁等改革基本法33条1項2号,利用)者のニーズに応えるサービスを提供し,その対価をもってコストを補うこととなっている。 た,郵便事業は,独立採算制の下で効率的に経営することとされており(中央省庁等改革基本法33条1項2号,利用)者のニーズに応えるサービスを提供し,その対価をもってコストを補うこととなっている。 郵便事業は人力依存度の高い事業で,業務の多くの部分を人的労働力に頼る必要があることから,費用の多くの部分は人件費で占められ,安い料金を実現するためには,大量の郵便物を確保し,また,郵便ネットワークを活用した多様なサービスを提供,,,するとともに人件費の抑制・節減に努める必要がありこの点民営・分社化後も変わりはない。 公社設立以前,郵便事業は独占事業として経営され,経済成長に比例して郵便物数も伸びてきており,基本的には右肩上がりの需要の中で安定的な経営を続けてきた。しかし,今日,民間事業者の信書送達への参入,民間宅配・メール便業者との競争激化,電子メールの飛躍的な普及,顧客ニーズの高度化等社会経済環境の著しい変化の中で,独立採算制を維持し,経営の- 20 -健全化を図るためには,収益の確保と費用の抑制に努め累積利益を確保するとともに,できるだけ安い料金で継続的に郵便サービスを提供していくためには,郵便処理の機械化の推進や非常勤職員の活用等による事業運営の効率化を図り,費用の多くを占める人件費の伸びの抑制そして削減に努める必要があり,この点も,民営・分社化後も変わりはない。 b郵便事業の現状我が国経済の低迷やIT化の進展により,郵便物が大きく減少する傾向にあるほか,民間宅配・メール便業者との競争が激化し,郵便事業を取り巻く環境は厳しさを増している。 c厳しい財政事情(郵便事業財政の推移)郵便事業財政については,平成9年度に郵便業務収入が初めて前年度実績を下回った以降,平成11年度を除き対前年度を下回り続け,様々な効率化施策 を増している。 c厳しい財政事情(郵便事業財政の推移)郵便事業財政については,平成9年度に郵便業務収入が初めて前年度実績を下回った以降,平成11年度を除き対前年度を下回り続け,様々な効率化施策の実施などにより経費の節減を図ったものの,平成10年度から3年連続して100億円以上の赤字を計上した。その後の施策により黒字化したものの平成14年度は再び赤字となり,現状も厳しい財政事情にあり,今。 ,後とも更なる事業運営の効率化が必要である公社及び被告は様々な効率化施策の推進により,人件費その他の経費節減策を採っている。 d郵便事業における効率的な服務方法の実施に伴う効率化効果郵便事業における効率的な服務方法の各施策は機械設備投資や他の労働力への人件費振替が不要なことから,郵便物処理の機械化・転力化と比較して,効率化効果が高く(計画人員の純減が,そのまま人件費削減となる,事業財政基盤の改善に大。)きく寄与する施策であり,特に,特例休息及び勤務時間のカッ- 21 -ト時短の廃止は,現在の社会・経済環境の下で,公社の経営姿勢・方針を社会的に認知してもらうために,真っ先に取り組むべき効率化施策であった。 エ本件運用細則改定に伴い代償措置その他関連する勤務条件の改善を行っていることについて(ア)勤務条件の改善a新たな休息時間を付与したこと(新運用細則8条3項1号)特例休息の廃止,カット時短の廃止及び深夜勤の指定に係る措置並びに深夜帯に勤務する職員の健康保持と能率維持のため,(。),深夜勤調整深夜勤を含む及び新夜勤の勤務に従事した場合新たな休息時間を付与することとした。 b十分な健康管理対策を講じていること職員に対する一般的な健康管理のほか,深夜帯勤務者に対す,,,る健康管理として特別健康診断を実施し 従事した場合新たな休息時間を付与することとした。 b十分な健康管理対策を講じていること職員に対する一般的な健康管理のほか,深夜帯勤務者に対す,,,る健康管理として特別健康診断を実施しその結果に基づき必要に応じ時間外労働及び休日労働の勤務の制限等の指導をしている。さらに,自発的健康診断の経費負担の充実,成人病検診受診の助成の充実を図っている。 c職員が深夜帯勤務の疲労を回復するための時間を確保するた,,め疲労回復時間確保のための深夜帯勤務の始終業時刻の設定仮眠・横臥のための休憩室夜間の利用を可能にしているなど()の措置を実施している。 d職員が公共交通機関を利用して出・退勤が不可能な場合に構内駐車を措置している。 e夜間特別勤務手当の増額等常勤職員の深夜勤(8時間の深夜勤・10時間の深夜勤及び調整深夜勤)の新たな指定と特例休息及びカット時短の廃止に対- 22 -する措置として新たな支給区分の追加と支給単価を増額し,深夜勤の連続指定及び深夜帯勤務回数の制限の廃止に対する措置として新たな支給区分を追加した。原告らの夜間特別勤務手当は,本件運用細則改定実施前と実施後を比較すれば,いずれも増額していることが明らかである。 f1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の制限廃止に係る措置及び職員の健康保持と能率維持のため,1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の目安(年末年始繁忙期等を除く)を設定した。 。 g深夜帯勤務と勤務の間の時間外労働を抑制していること新夜勤(勤務と勤務の間が原則2時間とされるものに限る)。 の勤務と勤務の間について,時間外労働を命ずることは自粛するものとし,深夜帯勤務に連続して服する場合,連続する勤務と勤務の間について,時間外労働を命ずることは,真にやむを得ない場合を除き,自粛するものとした。 間について,時間外労働を命ずることは自粛するものとし,深夜帯勤務に連続して服する場合,連続する勤務と勤務の間について,時間外労働を命ずることは,真にやむを得ない場合を除き,自粛するものとした。 (イ)実施時期被告は,平成15年1月に改定案を提示してから,関係労働組合との団体交渉を経て,平成16年2月8日から実施することとしたもので,浸透のための周知期間を十分に確保している。 ク関係労働組合との交渉を経て,職員の約8割を占める労働組合に合意を得ていること職員が結成する労働組合の組合員数は,全逓は約13万人(非常勤職員を除く。以下同じ,全郵政は,約8万6千人で,郵産労は約。)2千人,郵政全労協は不明であるところ,郵便事業における効率的な服務方法の実施について,公社は,公社全体の常勤職員約28万人(管理者を含む。平成15年4月1日現在)の約80%を占める割合の組合員を有する全逓及び全郵政(組合員数の合計約22万5千人)の合意を- 23 -得,労働協約を締結している。 ケその後の手続公社は,平成15年11月21日,運用細則を改正した。また,同年10月以降,各郵便局と関係労働組合支部等の間において,服務,。 表改正に係る団体交渉等を行い各郵便局における服務表を決定したそして公社は,平成16年2月2日,本勤務時間の改正に関する就業規則の改正を行い,実施日である同月8日前までに,労働基準監督署への届け出,職員周知等を行った。 コ深夜業に関する我が国社会における一般的状況について厚生労働省(旧労働省)が発表した「深夜業の就業環境,健康,管理等の在り方に関する研究会」中間報告(平成11年1月。以下「中間報告」という)及び「平成13年労働環境調査(平成14。 」年9月。以下「労働環境調査」という)によると,我が国の他の民。 ,管理等の在り方に関する研究会」中間報告(平成11年1月。以下「中間報告」という)及び「平成13年労働環境調査(平成14。 」年9月。以下「労働環境調査」という)によると,我が国の他の民。 間企業等における深夜業に関する状況は次のとおりであり,郵便事業の例が特に過酷であるという状況ではない。 (ア)深夜交替制勤務の実施状況中間報告及び労働環境調査によると,深夜業(午後10時から翌日午前5時までに行う労働)のうち,郵便事業の勤務の形態に近い「深夜交替制勤務」を実施している民間事業所は,規模が大きな事業所ほど実施割合が高く,従業員1000人規模の事業所のうち8割を超える。 (イ)深夜帯勤務時間数・勤務日数中間報告によると,深夜業従事者の週の所定労働時間数は,深夜交替制勤務を実施している事業所のうち4割弱の事業所が40時間となっている。この点,一週平均40時間,4週160時間としている本件運用細則改定と同程度である。また,1か月当たりの深夜- 24 -帯勤務時間数では,20~40時間未満となっている事業所が最も多く3割弱を占めている。 なお,1か月当たりの深夜勤務の最高回数では,郵便事業と同じような深夜勤交替制勤務を導入している事業所においても10~14回となっている事業所が最も多く,3割強を占めている。 (ウ)深夜業従事者への配慮事項労働環境調査によると,深夜業を実施している事業所(深夜交替制勤務,常夜勤務及び所定外深夜勤務を実施している事業所)のうち9割の事業所が深夜業に従事者へ何らかの配慮を行っているが,配慮の内容は「休憩時間を2回以上確保(50.3%,」)「所定外労働時間数を制限(42.6%「深夜勤務回数を制」),限(38.4%)が高い。なお,中間報告では,労働時間,深」夜帯勤務回数等について何らか 時間を2回以上確保(50.3%,」)「所定外労働時間数を制限(42.6%「深夜勤務回数を制」),限(38.4%)が高い。なお,中間報告では,労働時間,深」夜帯勤務回数等について何らかの限度を設ける例は25%に留まる。 (原告らの主張)ア夜間・交代制勤務の健康・社会生活に与える重大な影響(ア)健康破壊もともと人間の生体の諸機能は,1日24時間のリズムを持って変動している。自然現象の変化に人間が適応して生活を営むために,人間は日中は覚醒して活動を行い,夜間は睡眠を取って休息するという生活のリズムを自律的に形成してきた(概日リズム「生体リズム」「」等という。人間の自律神経系の活動は,交感神経系と副交感神経系。)のそれぞれの活動に分かれて,体内の諸臓器の活動の調整を司る。昼間は交感神経系が,夜間は副交感神経系の活動がそれぞれ優位となることによって上記外的環境の日内変化に適応するように生体の内部環境の変化をもたらしている。血圧・体温も昼間に人間が活動できるよ- 25 -うに,朝から昼間にかけて次第に上昇していき,夕方にかけて夜間に就寝できるように血圧・体温とも下降していく。そしてこの人間の概日リズムは猿などと異なり不可逆的であり,いくら昼夜逆転の生活をしていても人間の身体の概日リズムは逆転しない。夜間労働を含む交代制勤務は,昼夜転倒生活を余儀なくさせることによって,労働者の概日リズムを狂わせ,日勤者に比べて,蓄積疲労・慢性疲労をもたらすと同時に以下のような様々な生理的・健康的悪影響を生じさせることになる。 a消化器系疾患b循環器系疾患c睡眠障害による神経症等dその他,睡眠不足や蓄積疲労状態によって,気管支炎,喘息などの呼吸器系障害,高血圧症などの疾病が増悪する。 (イ)社会生活の破壊前記のよう 系疾患b循環器系疾患c睡眠障害による神経症等dその他,睡眠不足や蓄積疲労状態によって,気管支炎,喘息などの呼吸器系障害,高血圧症などの疾病が増悪する。 (イ)社会生活の破壊前記のような人間の昼夜のリズムから,日勤が労働の原則であり,社会生活の基本的な形態である。夜間・交代制労働は,労働者の生活のリズムの変容を余儀なくさせる勤務形態であるから,その社会生活に対する破壊の程度も著しい。 a家庭生活の破壊夜間・交代制勤務に就いている労働者は,家族と食事をともにする機会が著しく減少する。労働者が家族とともに過ごす時間の中でも,最も規則的で家族が家庭という一つの統合体としてまとまりを意識させる時間である,夕食の時間が,夜間・交代制勤務に就く労働者には確保されない。また,学齢期の子どもがいる労働者は,子。 ,どもに対する親の役割を果たせないという結果をもたらす同様に夫婦生活の歪みも生じる。 - 26 -b私的生活・地域社会・団体生活の破壊夜間・交代制勤務に就く労働者は,社会から乖離させられる。友人等と会う機会が減少し,様々な催しへの参加が困難になり,地域社会との接触も減少する。そして,この社会生活の困難さは,政治団体,労働組合,文化活動団体,スポーツ組織等の組織的活動への参加について最も顕著に現れる。そして,以上の社会生活の破壊,社会からの乖離は,労働者の人格を変容・破壊する結果を招来する虞れが大きい。 イ本件運用細則改定の結果夜間・交代制労働が有する健康破壊・社会生活の破壊の危険性は,本,。 件運用細則改定によってより一層増大しかつ現実のものとなっている(ア)立作業・中腰作業・連続作業・重作業である郵便内務作業もともと,収集された膨大な郵便物を郵便局内に受入れて他局に発送する作業,他局から受け入れた郵便物 一層増大しかつ現実のものとなっている(ア)立作業・中腰作業・連続作業・重作業である郵便内務作業もともと,収集された膨大な郵便物を郵便局内に受入れて他局に発送する作業,他局から受け入れた郵便物を自局管内に配布を準備する作業は,翌日配達の名の下に,夜間に集中しており,しかも作業の形態はすべて立ち作業,中腰作業,かなりの重量となる郵便物を搬送する重作業であり,これらの作業が連続する。このような作業は日勤で,,も労働負荷は大きいのに夜間中心の勤務形態がとられているために上記健康・社会生活に対する影響はより一層深刻なものとなる。 ,,したがって使用者はその影響を可能な限り軽減するために必要な回数制限,連続夜間勤務の回避,休憩・休息,適切な仮眠時間の設定等適切な措置を講ずる必要がある。 (イ)実労働時間の増大・休憩・休息時間の短縮本件運用細則改定は,夜間交代制労働に要請される配慮と全く逆の措置であり,前記争いのない事実( )の内容により,実働時間を大きく 増加させた。原告ら郵便労働者には変形労働時間制である4週間を1- 27 -単位とする勤務形態が導入されているが,上記改定により,実働時間が,4週間単位で,一般局で6時間,地域区分局・特大局では11時間も増加し,休憩・休息時間が15時間も短縮した。 .(ウ)仮眠時間の剥奪従来の新夜勤では,2労働日にまたがる勤務形態であり,その勤務の中に130分の「勤務中断時間」と称する仮眠時間があった(時間帯は23時20分~1時30分まで,1時20分~3時30分まで,3時20分~5時30分まで。もともと平成5年3月までは,この時),間帯は賃金支払の対象となる休息時間であり仮眠時間とされていたが同月以降,被告はこの時間帯は勤務中断時間で,賃金の支払の対象とならないと主張したが,実 で。もともと平成5年3月までは,この時),間帯は賃金支払の対象となる休息時間であり仮眠時間とされていたが同月以降,被告はこの時間帯は勤務中断時間で,賃金の支払の対象とならないと主張したが,実態としても仮眠するしかない時間帯であった。深夜勤務における「仮眠時間」は,上記の深夜勤務の健康破壊の持つ危険を緩和するものとして,必要不可欠のものであり,労働科学上,最低限3時間を必要とするのであり,2時間10分程度の仮眠時間は極めて不十分なものであったが,まがりなりにも深夜勤務の健康破壊の緩和に一定の役割を果たしていた。 しかし深夜勤制度の下では,例えば新東京郵便局の場合,19時~6時まで,ないし22時~9時までの11時間拘束,実働10時間勤務であり,ここには仮眠できる休憩・休息時間はない。すなわち上記改定により,深夜勤務の健康破壊を緩和する機能をもつ仮眠時間がす,。 べて剥奪され常に緊張状態を継続しなければならない状態となった(エ)4連続「深夜勤」の実態a深夜勤制度は,4連続深夜勤務も可能な極めて過酷な勤務形態である。例えば,深夜勤の日は,22時に出勤し翌日の9時に終業,帰宅し,通常朝食を取ってから,家屋の構造からも時間帯の点からも極めて睡眠しにくい昼間に睡眠をとることになる。そして,同日22時- 28 -からの深夜勤のために20時30分から21時ころには再び出勤しなければならない。この勤務形態が4日間連続する。その間,家族との団らんは寸断され,食事をとるタイミングもずれ,しかも夜間労働による疲労は蓄積するため,3日目,4日目には,食事時間を削ってでも睡眠をとるようになっている。深夜勤制度は,家族の団らんを想定していない非人間的な勤務形態である。 b深夜勤務の連続指定により夜勤明け後の休息も事実上奪われ,心身の疲労が累積 食事時間を削ってでも睡眠をとるようになっている。深夜勤制度は,家族の団らんを想定していない非人間的な勤務形態である。 b深夜勤務の連続指定により夜勤明け後の休息も事実上奪われ,心身の疲労が累積するようになった。深夜勤制度導入前の夜勤制度の下では,深夜勤務の翌日に週休や非番を入れて,昼間帯の勤務と組み合わせることによって1回の深夜勤務で休日を経て昼間の勤務に戻るというサイクルができていた。新夜勤明けの翌日には週休または非番が1日か,週休と非番の連続指定が行われており,次の勤務まで最低でも48時間以上の間隔が開いていた。しかし,深夜勤では,夜勤が連続し,上記aのような状況であるため,疲労が蓄積するようになった。 深夜勤導入前の夜勤制度の下でも,多くの在職中の死亡者が発生していた。旧制度より一層苛酷な深夜勤をこのまま放置すれば,在職中の死亡者が一層増大することは明らかである。 cその他,本件運用細則改定により,深夜勤明けの,例えば9時以降が休日となり休日が暦日でなくなる場合が発生し,かつ手当制度も改定されて結果的に手当も減額された。 以上のように,夜間・交代制労働は,それ自体が健康破壊,社会生活の破壊という危険をもたらす労働形態であるが,深夜勤制度の導入によって,この危険は一層増大した。これにより,原告ら郵便労働者は,健康に生きること,家族と一緒に食事をし,会話をすること,誠実に仕事をすること,社会とのつながりの中で生きることなど,人間として普通- 29 -の要求が阻害され,重大な不利益を受けている。 ウ改定には高度な必要性が存在しないこと(ア)郵便関係職員の健康保持の推進について被告は本件運用細則改定の必要性について,郵便関係職員の健。 ,,康保持の推進を挙げるしかし被告の行った上記改定の実態はこれと全く逆行する。 と(ア)郵便関係職員の健康保持の推進について被告は本件運用細則改定の必要性について,郵便関係職員の健。 ,,康保持の推進を挙げるしかし被告の行った上記改定の実態はこれと全く逆行する。被告は,労働時間に代えて「拘束時間」を持ち出し,長時間拘束の解消をうたうが,拘束時間には休憩・休,,息時間も含まれるのであり十分な長さの休憩・休息時間があれば長時間拘束が直ちに健康保持に害悪をもたらすものではない。被告の主張は「労働時間」と「拘束時間」をすり替え,深夜勤務時間,の短縮を図ったような錯覚をもたらそうとしている。 (イ)財政健全化との関係について郵便事業には高い公益性がある。郵便事業は,密度の高い配達ネットワークを生かして国民の情報伝達のライフラインの役割を果たすとともに,地域コミュニティーをつなぐ窓口としての役割も担っている。そして,この事業を支えるのはほかならぬ郵便関係労働者である。自らの経営施策を振り返ることなく,もっぱら人件費にのみ目を付けて,人件費が高いから削減する,というのは,郵便事業の公益性とそれを担う生身の郵便労働者に思い至っていない。 被告は,財政事情が厳しいことを挙げ,健全な事業運営基盤を確保し黒字体質に移行していくためには,更なる効率化が必要である,と主張する。しかし,厳しい財政事情の原因は,人件費の伸びにあるのではない。人件費はこの数年伸びておらず,減少の一途をたどっている。人件費は毎年大幅に削減され,機械化の推進,非常勤職員の活用も進んでいる。こうした人件費の削減にも- 30 -かかわらず,郵便事業の財政が厳しくなっているとすれば,それは人件費以外の部分での収益の悪化によるものである。具体的には,この間,郵政省・郵政事業庁・公社が次々と行ってきた「大口割引制度」と,平成9年度から10年 事業の財政が厳しくなっているとすれば,それは人件費以外の部分での収益の悪化によるものである。具体的には,この間,郵政省・郵政事業庁・公社が次々と行ってきた「大口割引制度」と,平成9年度から10年度にかけて行われた「バーコード割引,料金を細かくグラム毎に区切った値下げ,平成9年度の消」費税増税分の料金への上乗せをしなかったことによる負担,局舎建設,自動読取区分機等の膨大な設備投資による減価償却費の増大等によるものである。また,郵便事業は「経済の低迷」の影響を受,けた平成9年度の総引受郵便物数は対前年11%増の258億通と過.去最高であり,198億円の黒字だったのである。そして,平成10年度の総引受郵便物数は,過去最高を記録した平成9年度に対し06%増の259億通となり取扱量の過去最高を更新したの.である。したがって,経済の低迷は赤字の理由とはならない。こ,,れらの大幅な割引により第一種郵便の一通あたりの平均収入は平成8年度には8708円であったものが,値下げの影響を全面.的に受けた平成10年度には8210円と5円近くも低下した。 .平成9年度の一通あたりの平均収入と比較しても416円の低下.。 ,である平成10年度の第一種郵便物数は128億通であったからこの値下げにより,平成8年度との比較で637億円強,値下げの影響を受けても198億円の黒字であった平成9年度との比較でも532億円の減収になったことになる。 さらに旧郵政省はこうした収入削減策をとる一方で大幅な設備投資を行い,費用を増加させた。設備投資は,平成2年に約2002億円だったのが,同3年は約2553億円に増加し,さらに同4年は約3470億円,同5年は約3794億円,同6年は約3151億円と,平成4年からの3年間で合計約1兆0415億- 31 - 02億円だったのが,同3年は約2553億円に増加し,さらに同4年は約3470億円,同5年は約3794億円,同6年は約3151億円と,平成4年からの3年間で合計約1兆0415億- 31 -,。 円平均すると1年間に約3472億円もの設備投資を行っている,,,これは同2年と比較すると単年度あたりの平均約1469億円70%以上という極端な増額であり,当然,その減価償却費が費用に計上されることで計数上の被告財政を圧迫する。 (ウ)不合理な「効率化施策の推進」被告の主張する効率化施策を推進しても収益改善に実効性は乏しく,財政の健全化のためには,被告がこれまでとってきた経営施策を見直すことの方がはるかに合理的である。 公社は平成13年に郵便事業新生ビジョン案以下ビ,「()」(「ジョン(案」という)を策定し,その中に本件における効率的)。 な服務方法の実施,新夜勤回数制限の撤廃,特例休息及びカット時短の廃止についても,悪化した事業財政を改善するための施策として計画に盛り込まれたという。しかし「ビジョン(案」は「な,),るべく安い料金実現のためには大量の郵便利用を確保することが必要」だとし,大口利用者(企業郵便)を中心にさらに「割引率」をアップさせ,そのことによって取り扱い数を増やし,それによって「」。 ,財政基盤を確立するという方針であるしかし上述したように企業郵便を中心として割引率を増やした結果,確実に収入が減ってきたというのがこの間の現実である。この方向をさらに推し進めようとする「ビジョ()」。 ,「()」,ン案の実施はかえって被告の財政を悪化させる公社のビジョン案はこれまで赤字を生み出してきた根本原因である郵便番号7桁化にともなう自動読取区分機購入や局舎建設等と莫大 ()」。 ,「()」,ン案の実施はかえって被告の財政を悪化させる公社のビジョン案はこれまで赤字を生み出してきた根本原因である郵便番号7桁化にともなう自動読取区分機購入や局舎建設等と莫大な設備投資による減価償却費,消費税率アップ分の負担増,大口割引制度等には全く触れず,ただひたすら労働者の生命・健康にのみ犠牲を転嫁している。 被告は,効率的な服務方法の各施策は効率化効果が高く,事業財政基盤の改善に寄与する施策であるとした上で,本施策実施に- 32 -より,年間60億円の人件費の節減が見込まれると主張する。しかし,年間60億円の人件費の削減が本当に見込まれるのか否かはひとまずおき,上述のとおり,公社は,相次ぐ割引を行い,それによる減収は試算で合計591億円にも上る。これに加えて,消費税増税分を反映しなかった分を合わせると,公社の経営失策による収益減は1000億円を大きく超える。さらに,過大な設備投資の結果として生じた,これまた過大な減価償却費用の分を考えれば,被告が従来の施策を改めることによって得られる収益改善効果は,本件運用細則改定により,労働者の生命と健康に著しい犠牲を強いながら生じる60億円程度の人件費節減の「効果」の20倍近くにもなる。したがって,本件運用細則改定による「効率化効果」は上述のような収益悪化策を改める収益改善策と比較すれば,すこぶる効率が悪いのである。 ,生体リズムに反する深夜労働が人間に大きな負担を与えること深夜労働は昼間の労働と比較して作業効率が悪いこと,また多寡はともかく,深夜時間帯での労働を強いるのであるから,手当を付加することが必要である。つまり,もともと深夜労働それ自体が,生体リズムの点でも効率的労働という点でも,財政的にも効率的な働き方とはいえない。 (エ)効率化の方法郵便の「効 であるから,手当を付加することが必要である。つまり,もともと深夜労働それ自体が,生体リズムの点でも効率的労働という点でも,財政的にも効率的な働き方とはいえない。 (エ)効率化の方法郵便の「効率化」は,無理に深夜帯の労働時間を増やさなくても可能である。郵便には早く配達される必要のあるものと,そうでないものがある。不急の郵便については,夜間は留め置いて日中に処理することもできる。要急・不急の郵便物を区別して,郵便物の処理が夜間に集中している現状を改めるならば,現在の郵便局の設備・人員のままでも夜間労働を少なくすることは十分可能である。普通通常郵便のうち,金銭関係郵便(領収書や払込案- 33 -内等,ダイレクトメール,カタログ郵便等「急がない郵便「不),」急郵便」は全体の593%を占めており,労働者に無理に深夜労.働を重ねさせ,生命・健康に著しい危険を発生させながら,翌日配達エリアを拡大させる必要は皆無か,限りなくゼロに等しい。 」,,郵便のスピードアップは平成15年5月から実施されており本件運用細則改定が実施された平成16年2月まで従来の新夜勤制度の下で郵便物処理を行なってきたが,その間,実施前と比較して特段の業務の支障が起っているわけではない。つまり従来の新夜勤制度の下でも十分に効率的な業務処理はできている。 エ改定内容の不合理性(ア)本件運用細則改定において,深夜勤制度導入により夜間から翌朝までの1勤務シフトにして2つの勤務をつなぐ勤務開放時間をなくしたこと,特例休息を廃止したことにより,労働者は,深夜帯に仮眠が取れるだけの休息時間を失った。そして既述のとおり,従来の新夜勤制度の下でも,最大でも1回につき5時間であった深夜時間帯の労働時間が,本件深夜勤の下では1回の勤務につき最大7時間と増大している 眠が取れるだけの休息時間を失った。そして既述のとおり,従来の新夜勤制度の下でも,最大でも1回につき5時間であった深夜時間帯の労働時間が,本件深夜勤の下では1回の勤務につき最大7時間と増大している。被告の行った上記改定では,深夜勤務による慢性的な疲労を回復する機会である仮眠時間を労働者から剥奪した。 しかも,公社は,仮眠時間のあった従来の新夜勤制度の下でも11年間に126人の在職死亡者が出ていた事実を全く省みることなく,上記改定を実施した。 (イ)カット時短の廃止による実働時間増の不合理性,,公社は変形労働時間制の週当たり労働時間枠は変えないままカット時短を一方的に廃止した。この結果,これまで以上に週当たりの実労働時間は増えており,生命・健康に対する危険はより一層大きくなった。 - 34 -(ウ)公社及び被告が採用した「深夜勤」制度は,以上のような深夜労働を原則として連続指定することとし,最大で4日間連続で指定するものである。この連続指定により,従来の新夜勤では,夜勤を終えてから次の勤務に就くまでに最大48時間の間があったのが現在では最大でもわずか13時間しかなくなった上記(ア),,。 で述べたように多量の在職死亡者が出ていたにもかかわらず,公社及び被告はあえて夜勤明けに実質的な休息をとれない連続指定制度を採用し,原告ら労働者の生命と健康に著しい危険を強いている。 (エ)このような著しく生命と健康に危険を与える深夜勤務制度について,指定回数の上限枠まで撤廃している。被告の主張によれば,一応の目安の回数も従来の回数よりも多いものである。 オ代償措置にならないこと被告の主張するものは,以下のとおり,代償としての意味はなく,また原告らの不利益性を実質的に緩和するものでもない。 (ア)夜間特別勤務手当の改正について 多いものである。 オ代償措置にならないこと被告の主張するものは,以下のとおり,代償としての意味はなく,また原告らの不利益性を実質的に緩和するものでもない。 (ア)夜間特別勤務手当の改正について,深夜勤に従事する場合の夜間特別勤務手当の時間当たり単価は被告のいう「増額」ではなく,減らされている。また,新夜勤等についての単価は,金額としては,一回当たり200円から300円の増額となっているが,それは特例休息やカット時短が廃止されたことに伴って深夜帯及び1勤務指定当たりの実労働時間が増加したことの当然の対価にすぎない。しかも,これと同時に公社は,新夜勤を行うと支給されていた夜間交替制加算額7800円。 ,を廃止した深夜勤の4回連続指定の場合の6000円の加算額は命を危険にさらすことの対価であって,しかも1回でも休むとカットされるのであるから,代償とはいい難い。 (イ)「新たな休息の創設」について- 35 -被告は「新たな休息時間」を創設したと主張する。しかしこ,の「新たな休息時間」は,地域区分局と一般局の間の休息時間を平均化するために,休息時間の多い局の休息を削減し,休息時間の少ない局の休息時間をやや増やしたにすぎない。休息時間としてみれば単純に減らしただけである。 (ウ)深夜帯勤務回数の目安の設定は代償とならない目安の設定が,何ゆえに代償措置となるのか疑問である。その上,この目安の設定をしたところで,再三指摘しているように,深夜勤務の指定回数は増えるのであるから,内容的に何ら代償になっていない。 (エ)時間外労働の自粛は代償措置ではない深夜勤は心身への負荷の大きい過酷な勤務であるから,時間外労働を抑制すべきであることは当然である。時間外労働の自粛な,,,どもともと代償措置とはならないだけでなく実際の現 代償措置ではない深夜勤は心身への負荷の大きい過酷な勤務であるから,時間外労働を抑制すべきであることは当然である。時間外労働の自粛な,,,どもともと代償措置とはならないだけでなく実際の現場では時間外労働の自粛どころではない状況にある。時間外労働の抑制策を図るのであれば,大幅な増員が必要であるが,そのような措置も伴っていない。 (オ)そのほか,健康管理は使用者の当然の義務であるし,深夜帯勤務の勤務と勤務の間は一定時間を確保するよう始終業時刻を設定したというのも,関係諸法令に違反しないように交代制の服務編成を行う上で当然のことである。休憩スペースも設けられてはいるものの作業場の一角にあり,とても休める場所ではない(東京中央郵便局)し,駐車スペースの確保というが,通勤に不便で,あることから従来自動車通勤が認められていた新東京郵便局では本件運用細則改定後,自動車通勤を許可されている労働者はほとんどいなくなっている。仮に駐車スペースがあったとしても自動車- 36 -通勤が認められないのでは全く意味がない。以上のように,被告のいう「休憩室の確保等」の中身は空疎なものであり,何ら労働者の被る不利益を緩和する意味がないものばかりである。 カ交渉の経過等について,,被告の主張は郵産労が賛成しないと述べたのを適切に引用せず意識的に郵産労が本件施策に「理解を示した」ような印象を与えようとするものである上,公社は,郵産労からの交渉申入れに途中か,。 ら応じなくなり同組合の意見を待たないまま上記改定を実施したキ社会一般の状況について被告の,統計資料の引用の仕方は極めて不適切である。同資料は,今後の対応として「過度の深夜業を抑制し,健康確保,社会生活の,維持等を図るために考慮すべき事項」として「深夜業が行なわれている事業 被告の,統計資料の引用の仕方は極めて不適切である。同資料は,今後の対応として「過度の深夜業を抑制し,健康確保,社会生活の,維持等を図るために考慮すべき事項」として「深夜業が行なわれている事業場においても,労働基準法,労働安全衛生法等の労働条件の最低基準を定める関係法令が遵守されなければならない」とし,労働組合との協議の重要性を述べ,多種多様な配慮の必要性を指摘した上で,同報告書は「労使による自主的ガイドラインの設定の,推進」について触れ「深夜業に係る就業環境等の整備が進むよう,,まず,主要業種ごとに,これらの考慮事項を盛り込んだガイドラインが労使により自主的に設定され,定着することが望ましい」と述べて。 ,,,,いるなおこうしたガイドラインは深夜業に従事する鉄鋼産業化学工業,電機産業など主要産業ではすでに確立されている。また,公社及び被告における1か月あたりの深夜帯勤務時間数は,他の「最も多い事業所」で実施している時間数よりも明らかに多い。社会一般の状況と照らしても,公社及び被告における深夜帯勤務時間の量は著しく大きい。 ク予備的請求原因について- 37 -仮に,本件運用細則改定による変更点,すなわち①特例休息の廃止,②時短措置の廃止,③深夜勤新設自体が有効としても,以下述べるとおり,本件就業規則別表第2において4日間連続で深夜勤に従事させるとしたことは無効である。 (ア)必要性がない仮に深夜帯に郵便物の区分処理作業が集中することから深夜勤を導入する必要があったとしても,一人の労働者に深夜勤を連続でさせる必要性はない。しかも,一人の労働者に4日連続で深夜勤を指定する必要性は一層ない。 現に被告は,本件運用細則改定後,全国の地域区分局,特大局及び普通局において連続深夜勤を導入したが,その後,原告らが 必要性はない。しかも,一人の労働者に4日連続で深夜勤を指定する必要性は一層ない。 現に被告は,本件運用細則改定後,全国の地域区分局,特大局及び普通局において連続深夜勤を導入したが,その後,原告らが把握しているだけでも渋谷郵便局,玉川郵便局,牛込郵便局では深夜勤の連続指定を取りやめている。このことは深夜勤の連続指定が不要であることを物語る。しかも,4日間連続で深夜勤が指定されているのは,原告らが把握している限り,豊島郵便局及び中野郵便局,銀座郵便局,そして日本橋郵便局くらいしかない。全国で1300ある普通局のなかで,わずか4局においてしか4連続深夜勤を指定していないということは,このような勤務形態が不要であることを示すものである。 (イ)労働者の被る不利益しかも,4連続深夜勤は,これに従事させられる労働者の被る不利益が著しい。ただでさえ深夜労働は肉体的心理的負荷が大きくなるところ,公社及び被告において,従前あった深夜帯の仮眠のとれる時間をなくしてしまったため,労働者は仮眠なしで一晩勤務に就くことを余儀なくされているが,4連続深夜勤ではこれを4日間続けて行うことになる。これによる負荷は,極めて大きく,郵産労が実施したアンケートで,4連続深夜勤が「非常に疲れる」と回答している者は実に- 38 -職場の86%に上る。したがって,深夜勤を4日間連続で指定することは労働者に著しい不利益をもたらすものである。 (ウ)内容の不合理性多くの局では4連続深夜勤を実施していないが,この事実自体,4連続深夜勤に合理性がないことを物語る。被告の4連続深夜勤は,社会一般に類例のない異常な勤務シフトというべきである。 以上のとおり,4連続深夜勤はその必要性も合理性もないものであり,かつ,これに従事する労働者の被る不利益は深夜勤に従事する労働者の中でも格 ,社会一般に類例のない異常な勤務シフトというべきである。 以上のとおり,4連続深夜勤はその必要性も合理性もないものであり,かつ,これに従事する労働者の被る不利益は深夜勤に従事する労働者の中でも格別に大きいものであって,本件運用細則改定はこの4連続深夜勤を許す限度で無効というべきである。 ( )争点4(本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関す る判例法理の適用ないし類推適用があるか)について(原告らの主張)ア本件の中心的争点は,被告が原告らに対して「本件深夜勤という勤務,を指定する法律上の根拠は何か,そして原告らに対しても職務・業務命令として強制的に指定できるか」であり,公社と被告との間で,法形式的な「労働条件の承継があったか否か」ではない。 イ公社の時代には,原告らが所属する郵産労と公社との間では,深夜勤を受容する労働協約は締結されていないから,原告らに対して,深夜勤の指定を根拠付ける法律上の根拠は,深夜勤について規定した就業規則の性格を有する本件運用細則しか存在しなかった。したがって上記細則が郵産労所属である原告らに対しても法的効力を有するかが中心的争点であった。そして原告らに対して上記「運用細則」が法的効力を有するかの判断基準が,秋北バス事件最高裁判決以来積み重ねられてきた「判例法理としての就業規則法理」であることは明らかであった。郵政省も公社も,法律上労働基準法の大部分の規定が適用され,就業規則の作成- 39 -を義務付けられていたからである。 ウ前記のとおり公社は民営会社に移行したが,被告も自認するとおり,被告と原告らが所属する郵産労との間では,深夜勤を受容する労働協約は締結されていないから,民営化後も,原告らに対して,被告が本件深夜勤を指定することができる法律上の根拠は本件就業規則48条,49 ,被告と原告らが所属する郵産労との間では,深夜勤を受容する労働協約は締結されていないから,民営化後も,原告らに対して,被告が本件深夜勤を指定することができる法律上の根拠は本件就業規則48条,49。 ,,条及び同規則の別表以外に存在しないしたがって民営会社移行後も本件の中心的争点は,深夜勤導入について同意していない原告らに対しても,本件就業規則上の「深夜勤」規定が法的効力を有するかであり,公社時代の労働条件を被告が承継したか否かではない。 公社の民営化により,被告と原告らとの法律関係は「労働契約関係」であることが明確になった。同時に,被告と原告らとの労働契約関係については,平成20年3月1日施行の労働契約法が適用される。 エ秋北バス事件最高裁判決は「新たな就業規則の「作成」又は変更によ,って,既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されない…が,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該就業規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒否することは許されない」と判示しており,もともと就業規則の「作成」による労働条件の不利益変更についても適用の対象としている。したがって,本件就業規則の深夜勤条項について同意していない郵産労所属の原告らについて,同条項が有効に適用があるか否かについての裁判規範は判例法理としての就業規則法理であることは当然である。 また,労働契約法10条は直接には「就業規則の変更により労働条件を変更する場合」と規定しているが,上記最高裁判決以来の判示から,同条は,新規に就業規則の作成による労働条件の変更の場合にも類推適- 40 -用される。 (被告の主張)被告設立 更により労働条件を変更する場合」と規定しているが,上記最高裁判決以来の判示から,同条は,新規に就業規則の作成による労働条件の変更の場合にも類推適- 40 -用される。 (被告の主張)被告設立後の被告と社員との間の労働関係前記争いのない事実( )記載のとおり,公社の職員は,承継計画の定 めるところに従い,いずれかの承継会社の職員になることとされ,原告らは,被告の社員となった。郵政民営化法は,公社職員の承継会社への承継を規定しているものの,労働条件の承継については何ら規定していない。むしろ,承継するのであれば改めて行う必要はないものと考えられる労働条件の明示(同法170条2項)を規定するほか,日本郵政株式会社が承継労働協約を締結することができること(同法171条1項,労働条件を定めるに当たっての日本郵政株式会社の配慮(同法1)73条)等について規定するとおり,労働条件については承継しないことを前提としている。したがって,被告社員の民営・分社化後の労働条件については,同法に基づき,新たに定められたものである。そして,前記争いのない事実( )及び( )記載のとお り,日本郵政株式会社は,被告社員の労働条件を定めるに当たり,郵政民営化法にのっとり,手続を踏んだところである。 このように,被告において定められた労働条件は,全く新たに定め,。 られたものであって公社における労働条件を承継したものではないしたがって,被告が新たに定めた就業規則中に,公社における労働条件と比較して不利益な部分があったとしても,その不利益に関して,就業規則の不利益変更の法理が適用される余地はない。 さらに,平成19年10月1日の被告設立に際しては,前述のとおり法律上は労働条件は承継しないとされているが,日本郵政株式会社は,郵便民営化法173条の趣旨に 不利益変更の法理が適用される余地はない。 さらに,平成19年10月1日の被告設立に際しては,前述のとおり法律上は労働条件は承継しないとされているが,日本郵政株式会社は,郵便民営化法173条の趣旨にのっとり,従来の労働条件を維持する内容の(本勤務時間の諸制度を含めた)新労働条件を提案し,多数組合の同意を得て労働協約を締結し,さらに就業規則等を定めて原- 41 -告らを含め,社員全員に適法に周知している。 ( )争点5(本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関する 判例法理の適用ないし類推適用が肯定される場合,本件就業規則の制定には合理性があるか)について(原告らの主張)公社から被告に雇用を承継された原告らにとっての既得の権利とは,平成16年2月8日以前においては,深夜勤が存在しない旧就業規則上の権利である。 そして,乙1~3と乙139を比較すれば明らかであるが,本件運用細則上の深夜勤制度と,本件就業規則上の同制度は全く同じものであり,現在,原告らに適用されている深夜勤は,公社時代と全く同一である。したがって,既に述べたように,本件運用細則改定が原告らについて,合理性のない不利益な就業規則の変更として効力を生じないのと同様,被告の本,。 件就業規則の制定は合理性のない就業規則の変更として効力を生じない(被告の主張)仮に就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用があるとしても,既に述べたように,合理性があり,有効である。 ( )争点6(被告の安全配慮義務違反の存否)について (原告らの主張)ア安全配慮義務は,もともと労働契約関係を前提としない一定の社会的関係の下でも信義則上発生する義務であり,国家公務員と国との関係でも発生する義務である。したがって安全配慮義務とその違反の存否は,被告の組織法上の性格が,公社 労働契約関係を前提としない一定の社会的関係の下でも信義則上発生する義務であり,国家公務員と国との関係でも発生する義務である。したがって安全配慮義務とその違反の存否は,被告の組織法上の性格が,公社か民営会社であるかに関係がない。 しかも,公社から民営会社への移行により,被告と原告らの関係は労働契約関係になったから,原告らと被告との法律関係に,労働契約法第5条の安全配慮義務規定そのものが適用されることは明らかである。 - 42 -イ労働安全衛生法(以下「安衛法」という)62条,65条の3,。 電通事件最高裁判決(最高裁平成10年(オ)第217,218号同12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁)から,使用者は労働者に対して,①適正労働条件措置義務,②健康管理義務,③適正労働配置義務,④看護・治療義務を負うと解すべきである。 特に使用者は労働者に対して適正労働条件措置義務として「労,働時間,休憩時間,休日,休憩場所等について適正な労働条件を確保する義務」を負う。すなわち使用者は,当該労働者の当該労働条件を整備しなければ生命・健康への危険が生じうると判断される場合には,その危険から労働者を保護するため労働条件を整備しなければならない。本件運用細則の改定は,この安全配慮義務,安全衛生法の趣旨に真っ向から反して,原告ら郵便局の内務作業に従事する労働者の健康,正常な社会生活に重大な影響を生じさせており,かつこれからも被害が拡大する恐れが極めて強い。特に原告らは,いずれも40歳~50歳代の中高年であり,特に循環器系を中心にその健康には十分な配慮した勤務形態を設定しなければならないのに,これに違反して上記改定を実施し,かつこれを継続している。これは上記安衛法の各規定および判例によって確立されてきた安全配慮義務に違反し,無効であ 十分な配慮した勤務形態を設定しなければならないのに,これに違反して上記改定を実施し,かつこれを継続している。これは上記安衛法の各規定および判例によって確立されてきた安全配慮義務に違反し,無効である。 ウこのような違法無効な勤務配置により,原告らは苛酷な労働を強いられ,いつその生命と健康,社会生活に著しい不安を強いられており,被告は原告らに対して,少なくとも50万円の慰謝料支払義務を負う。 ,,,なおこの安全配慮義務違反は慰謝料請求の請求原因としても上記の危険な勤務に従事する義務の不存在確認請求の請求原因としても主張する。 (被告の主張)- 43 -被告としては,講ずべき措置は講じているものであり,安全配慮義務の違反はない。 安全配慮義務は,労務の提供義務又は賃金の支払義務等労働契約における本来的履行義務とは異なり,あくまで労働契約に付随する義務であり,予めその内容を具体的に確定することが困難な債務であるから,労働者は使用者に対して,直接その義務の履行を請求することはできず,労働者に疾病の発生又はその増悪等の具体的結果が惹起された場合において初めて事後的にその義務の具体的内容及びその違法の有無が問題になるにすぎない。すなわち,安全配慮義務は債務不履行責任の根拠としてのみ作用し,損害賠償という効果のみを生じる債務なのである。加えて,郵便事業における効率的な服務方法の実施は,原告らの主張するように,義務の内容を確定でき,かつ国や使用者にその義務の履行を求めないと,公務員や労働者の生命・健康に差し迫った危険があるため,生命・健康を保持できないなどの特別の事情があるというものではないから,そこから一定の義務は生じない。 第3当裁判所の判断 争点1(被告の本案前の答弁の成否)について( )請求欄第2項の訴えは,原告らが, 持できないなどの特別の事情があるというものではないから,そこから一定の義務は生じない。 第3当裁判所の判断 争点1(被告の本案前の答弁の成否)について( )請求欄第2項の訴えは,原告らが,公社の運用細則の適用に関し, 平成16年2月8日施行前の同規程運用細則8条の適用を受ける地位にあることの確認を求めるものである。前記争いのない事実( )及び( )記 載のように,公社は民営・分社化により解散し,その承継会社である被告は,本件運用細則に代わり,これとほぼ同内容の本件就業規則を定め,適用している。したがって,本件運用細則の適用がなくなった以上,上記訴えの利益はなくなったといえる。 ( )被告は,請求欄第1及び1’項の訴えにつき,定年退職した原告のう ち,当該請求を維持している原告P5,同P6,同P7,同P8,同P9- 44 -について,本件就業規則2条3項は,高齢再雇用社員及び期間雇用社員には,同規則及び本件勤務時間細則の適用がないから,訴えの利益はなく,請求は不適法であると主張する。 そこで検討するに,証拠(乙126,155,158,162)及び弁論の全趣旨によれば,上記の原告らについては,定年退職後,原,,,,告P5同P6同P8及び同P9は高齢再雇用短時間勤務Ⅰ型社員同P7は同Ⅱ型社員として勤務していること,被告の高齢再雇用社員勤務時間・休暇手続(乙215)は,2条(変形勤務)の規定において,高齢再雇用社員について,被告の高齢再雇用社員就業規則に基づき,正規の勤務時間を延長又は短縮する場合の取り扱いにつき,正社員の手続を準用しており,規定上深夜勤の指定が可能となっていること,これら原告らの上司も,上記の陳述書において,これら原告について一定の範囲で深夜勤の指定が可能となっているが,現在指定してい 正社員の手続を準用しており,規定上深夜勤の指定が可能となっていること,これら原告らの上司も,上記の陳述書において,これら原告について一定の範囲で深夜勤の指定が可能となっているが,現在指定していないと述べていること,の各事実が認められる。したがって,現在指定されていないというだけでは,指定される可能性がないとはいえないから,訴えの利益を欠くものとはいえない。 争点2(本件運用細則改定について,就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があるか)について( )原告らの請求のうち,上記1で不適法と判示された訴えを除き,深夜勤 に従事する義務のないことの確認を求める主位的及び予備的請求は,いずれも現在の被告の本件就業規則の適用を前提とするものであるが,原告らは,本件において損害賠償請求をもしている。同請求は,公社時代からの違法行為の存在をも理由とするものであると解されるので,その前提として,公社の行った本件運用細則の改定の効力を検討することとし,同改定に就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があるかを検討することとする。 - 45 -( )公社と職員との間の労働関係について ,,「,ア公社はもともと国の機関であったものが国営の新たな公社として独立採算制の下,信書及び小包の送達の役務,簡易で確実な貯蓄,送金及び債権債務の決済の手段並びに簡易に利用できる生命保険を提供する業務,当該業務を行うための施設その他の経営資源を活用して行う国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資する業務等を総合的かつ効率的に行うことを目的とする」とされて誕生したものであり(日本郵。 政公社法1条,その資本金は全額政府の出資にかかり(同法4条,そ))の事業規模が全国的かつ広範囲にわたる(同法20条)な かつ効率的に行うことを目的とする」とされて誕生したものであり(日本郵。 政公社法1条,その資本金は全額政府の出資にかかり(同法4条,そ))の事業規模が全国的かつ広範囲にわたる(同法20条)など,公社の事業は高度の公共性を有するものといえる。このため,被告は,事業の経営,役員の任免,予算,会計等に関して,国家機関から種々の法律的規制を受けている(同法12条1項,15条,24条ないし27条,30条,31条等。 )イしかし他方,公社の行う活動は,上記のその設立目的に示されるように,基本的に経済的活動であるといえる。また,前記争いのない事実( ) で述べたように,公社職員は一般職の国家公務員とされるが,勤務時間等に関する事項については,日本郵政公社法57条1項2号,8号により国家公務員法106条,勤務時間法の各適用が除外され,勤務時間法の実施に関して必要な事項を定めた人事院規則15-14(職員の勤務時間,休憩,休日)についても適用が除外されている。また,公社職員には,特労法が適用され(同法2条3号,4号,労組法,労基法等が適)用される(特労法37条1項1号「労働時間,休憩,休日及び休暇に)。 関する事項」については団体交渉の対象とされ,これに関し労働協約を締結することができるとされ(同法8条,実際,団体交渉により取決め)がされてきた。このようなことを考えると,公社とその職員との間の労働関係は,私法上の行為たる性格を有するものと解され,私企業のそれ- 46 -と変わりがないものと解すべきである。前記の,国家機関から種々の法律的規制を受けていることは,その事業が高度の公共性を有するゆえをもって,後見的な見地から監督されているものと解される。 ,,「,,,ウところで日本郵政公社法55条は公社は職員の勤務時間 制を受けていることは,その事業が高度の公共性を有するゆえをもって,後見的な見地から監督されているものと解される。 ,,「,,,ウところで日本郵政公社法55条は公社は職員の勤務時間休憩休日及び休暇について規程を定め,これを総務大臣に届け出なければならない。これを変更したときも,同様とする」と定めており,このこと。 から被告は,公社の就業規則には,私企業のそれと異なり,同法により法的規範としての効力が付与されているため,その改定は当然に効力を生じると主張する。 しかしながら,上記で検討した公社とその職員との間の労働関係の特質に照らせば,公社の事業の高度の公共性から,その規則制定権に国家機関の規制が加えられる趣旨を定めたものと解され,それが当然かつ最。 ,,終的な効力を有するとする趣旨とは解し難いしたがって公社が定め又は変更する規則には,私企業のそれと同様,就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があり,これによりその効力が定まるものと解すべきである。 争点3(本件運用細則改定には合理性があるか)について( )就業規則の不利益変更に関する判例法理について 公社の本件運用細則は,職員一般につき,広く勤務時間,休息,休日及び休暇等について,公社が定めたもので,就業規則の性質を有する。これを職員の不利益に変更する場合には,前記当事者の主張に引用した最高裁判例並びに最高裁平成4年(オ)第2122号同9年2月28日第二小法廷判決・民集51巻2号705頁及び同平成8年(オ)第1677号同12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2075頁等が示す,以下のような判断の枠組みによるべきである。 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い,労- 47 -働者に不利益な労働条件を一方的 法廷判決・民集54巻7号2075頁等が示す,以下のような判断の枠組みによるべきである。 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い,労- 47 -働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として許されないが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質に照らすと,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒むことは許されない。ここにおいて,当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係において当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいう。特に,賃金,勤務時間など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,効力を生じるというべきである。そして,この場合の合理性の有無は,具体的には,使用者側の就業規則の変更の必要性の内容・程度,就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度,変更後の就業規則の内容自体の相当性,代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況,労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の対応,同種事項に関する我が国社会における一般的状況を順次検討し,その上でこれらの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。 ( )原告らの主張する不利益性について 原告らは,公社による本件運用細則改定が就業規則の不利益変更に当たると主張して 順次検討し,その上でこれらの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。 ( )原告らの主張する不利益性について 原告らは,公社による本件運用細則改定が就業規則の不利益変更に当たると主張しているものであるところ,原告らの主張する不利益とは,旧運用細則と比較しての不利益と解される。そこで,原告らの主張する不利益性の内容につき検討する。原告らの主張するそれは,本件運用細則改定により,①深夜勤務が連続して指定することが可能となったこと,②深夜勤- 48 -務の勤務回数制限がなくなったこと,③特例休息が廃止されたこと,④カット時短が廃止されたこと,であると解される。 これにより原告らは,具体的には,16勤の場合,途中に2時間の仮眠時間があったのに,これが廃止されたので,本件運用細則改定後の勤務とそれ以前とでは疲労度が全く違うとし,また,深夜帯勤務時間が増加したとし,さらに,以前は夜勤が連続することはなかったのに連続するようになったなどの不利益を主張している。以下,原告らの主張する,上記改定による不利益性の具体的な内容について検討する。 ア深夜勤務が連続して指定されるようになったとの点について深夜勤務が連続して指定することが可能となったこと,については,各郵便局における具体的な勤務時間や勤務パターンは,前記争いのない事実( )オのとおり,各郵便局において作成した服務表に定められた 勤務の種類によることとなっているから,全郵便局が一律に同じパターンとなるものではなく,すべての郵便職員が同じ「不利益」を被っているわけではない。 証拠(乙87,証人P10)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの中で,4連続深夜勤に実際に従事したことがあるのは,原告P11及び同P12のみであり,郵便局によっては,深夜勤務を全く行っていないところもある。 原告ら 人P10)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの中で,4連続深夜勤に実際に従事したことがあるのは,原告P11及び同P12のみであり,郵便局によっては,深夜勤務を全く行っていないところもある。 原告らは,本件運用細則改定前は,深夜勤務の翌日に週休や非番を入れて,昼間帯の勤務と組み合わせることによって1回の深夜勤務で休日を経て昼間の勤務に戻るというサイクルができており,新夜勤明けの翌日には週休又は非番が1日か,週休と非番の連続指定が行わ,,れており次の勤務まで最低でも48時間以上の間隔が開いていたが同改定により夜勤が連続するようになり,その結果疲労が蓄積するようになった,と主張する。 - 49 -証拠(乙87,証人P13)及び弁論の全趣旨によれば,上記改定前の夜勤においても,実態上,新夜勤明けの翌日には週休又は非番が1日か,週休と非番の連続指定が行われるような勤務指定をしている例はあるが,当該勤務指定を行わなければならないとの取扱いとはなっていなかったこと,深夜勤務の明ける日の生活パターンは,深夜勤明けでも新夜勤明けでも何ら変わることはないものであること,同改定前においても業務上必要な場合には,新夜勤の連続指定は可能であったものであり,また,改定後も,夜勤の連続指定を行わなければならないとの取扱いとはなっていないことが認められる。 したがって,夜勤の連続指定がされるようになったことは,少なくとも同改定により大きな不利益となったものとはいえないというべきである。 イ深夜勤務の勤務回数制限がなくなったことについて前記争いのない事実( )イのとおり,本件運用細則改定前には,運 用として,4週間の1勤務指定期間における「深夜勤」の勤務回数が1,人5回を超えないように制限していたという勤務回数制限があったのが同( )イのとおり,同改 とおり,本件運用細則改定前には,運 用として,4週間の1勤務指定期間における「深夜勤」の勤務回数が1,人5回を超えないように制限していたという勤務回数制限があったのが同( )イのとおり,同改定により,この制限は廃止された。この点につい ては,被告は新たな回数の目安を設けたと主張しているので,代償措置の項目で検討する。 ウ特例休息が廃止されたことについてこのことは,前記争いのない事実( )ウのとおりである。ところで,原 告らは上記のとおり,仮眠時間が奪われたと主張するのでここで検討する。 この点につき原告らは,第2,3( )(原告らの主張)イ(ウ)のように 主張し,従来の新夜勤では,2時間10分程度の勤務中断時間があり,この時間は仮眠時間として設けられていたとし,深夜勤務による健康破- 50 -壊の緩和に一定の役割を果たしていたものが本件運用細則改定により剥奪され,仮眠時間が一切なくなったと主張する。 しかしながら,証拠(乙87,証人P10,同P13)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 従来の新夜勤においては,2労働日分の労働であるため,その2つの勤務と勤務の間に勤務解放時間があり,この時間は賃金の支払対象外であるので,公社としてもこの時間を何に使うという指示をしたことはなかった。ただし,後の勤務に備えて体を休め,仮眠を取っている者が多く,公社(郵政省,郵政事業庁を含む)もそのように認識していた。公。 社は,後記( )アのような事情から,深夜帯が多忙となっているにもかか わらず,この時間が上記のように勤務解放時間とされていたため,この非効率性を改めようと,本件運用細則改定により,この時間帯に作業を行う深夜勤を導入したものである。 上記認定の事情からは,公社が,これまで積極的に仮眠時間を設けていたわけで 間とされていたため,この非効率性を改めようと,本件運用細則改定により,この時間帯に作業を行う深夜勤を導入したものである。 上記認定の事情からは,公社が,これまで積極的に仮眠時間を設けていたわけでも,上記改定により,これを剥奪したものでもないというべきである。もっとも,従来仮眠に当てていた時間がなくなったことにより,疲労が増大したとの原告らの主張は理解できないものではないところ,被告は新たな休息時間を設けたとしているので,この点は,代償措置の項目で検討する。 エ深夜帯勤務時間が増加したとの点について原告らは,実働時間が,1勤務指定期間である4週間で,一般局で6.時間,地域区分局・特大局では11時間も増加し,休憩・休息時間が15時間も短縮した,と主張する。 この点,上記アに判示したように,実際の勤務の状況は,各郵便局で作成した服務表に基づいて行うこととなっており,新夜勤においても,多数の勤務パターンがあったのであるから,深夜帯勤務時間が増えたか- 51 -否かは,特定の職員の本件運用細則改定前のある特定の時点と同改定後の特定の時点を比較しなければ明らかにならないものと考えられる。また,証拠(乙87,証人P13)及び弁論の全趣旨によれば,仮に深夜帯勤務時間が増加したとしても,週40時間,4週160時間の範囲内でのものと認められる。また,後記オのとおり,カット時短廃止による労働時間の増加は考慮すべきでない。 オカット時短の廃止について原告らが主張する上記不利益のうち,カット時短の廃止は,原告ら。 ,の不利益として考慮することができないというべきであるけだし被告の主張するように,カット時短は,本件規程の適用を受ける郵便関係職員の勤務時間が,4週で160時間,1週平均40時間と,,定められているにもかかわらず1回の新夜勤又 いうべきであるけだし被告の主張するように,カット時短は,本件規程の適用を受ける郵便関係職員の勤務時間が,4週で160時間,1週平均40時間と,,定められているにもかかわらず1回の新夜勤又は調整勤務の都度勤務時間を2時間又は1時間短縮しているもので,本来稼働しなければならない分を稼働しなくてもよいことにしていたものであり,就労していないにもかかわらず短縮された時間相当の給与が支給されていたことから,公社としては早急に是正を図らなければならなかった制度と考えるのは当然のことといえるからである。本件運用細則改定によりカット時短を廃止したことにより,正規の勤務時間である1週平均40時間,4週160時間の勤務時間になったもので,それ以前の利益を既得権と見ることはできないのであり,その廃止を不利益として考慮すべきではない。 カそのほか,原告らの主張の中には,深夜勤務それ自体の,健康や家庭生活・社会生活に対する害悪性を主張するものや,郵便内務作業が立作業・中腰作業・連続作業・重作業であることを主張するものがある。しかしながら,深夜勤務自体は,本件運用細則改定前から行われていたものであり,同改定により生じたというものではない。同様に,- 52 -原告らが従事している郵便内務作業が立作業・中腰作業・連続作業・重作業であること(その程度はさておき,そのこと自体は弁論の全趣旨により明らかである)も,本件運用細則改定前から,変わるものではない。 と考えられる。したがって,これら事情については,原告らの主張する「」,就業規則の不利益変更に関する判例法理の不利益性の問題としては本件運用細則改定により明確に変化が生じたという部分に限って検討するのが相当である。 キ深夜勤務の健康等に対する影響について上記カで判示したように,深夜勤務自 判例法理の不利益性の問題としては本件運用細則改定により明確に変化が生じたという部分に限って検討するのが相当である。 キ深夜勤務の健康等に対する影響について上記カで判示したように,深夜勤務自体は本件運用細則改定前から行われていたのであるから,深夜勤務それ自体の健康や家庭生活・社会生活に対する影響は,就業規則の不利益変更に関する不利益性として考慮すべきではない。しかし原告らは,同改定によって導入された深夜勤の連続指定が,健康に対する強い悪影響を及ぼすと主張するので,ここで深夜勤務の健康に対する影響について検討することにする。 深夜勤務が,人間の通常の生活リズム(概日リズム,生体リズム)と異なるものであることから,一般的に健康に対して,よくない影響を及ぼすであろうことは危惧されるところであるが,他方,現代社会におけるサービスや利便性を支えるために深夜勤務が必要とされることも論を待たないところであり,問題は,その影響をどの程度のものと捉え,それに対しどのような措置を取るかにあると考えられる。証拠(乙95)によれば,深夜労働は,睡眠障害,慢性疲労感,消化器疾患,循環器疾患などの影響が示唆されているが,調査報告例からは,これらを裏付けるデータは,血圧を除いて得られなかったとされていることが認められる。前記証拠からも,喫煙や飲酒,食物の嗜好その他生活習慣等も,健康状態には影響を及ぼしていることがうかがえ,深夜労働自体のもたら- 53 -す影響は,明確とはいえず,少なくとも原告らの主張するような,命と引き換えにするようなものとはいえないというべきである。そして,原告らの主張する,深夜勤の連続指定の健康に対する影響もこれを明確に示す証拠はないというべきである。 なお,深夜勤務の家庭生活・社会生活に対する影響は,少なくとも原告らに関する限 きである。そして,原告らの主張する,深夜勤の連続指定の健康に対する影響もこれを明確に示す証拠はないというべきである。 なお,深夜勤務の家庭生活・社会生活に対する影響は,少なくとも原告らに関する限り,前記判示のとおり具体的な勤務は服務表により定まり,4連続指定を受けている者は2人しかおらず,証拠(乙108,109,111,112,117,118,121,122,130,131,135,136)及び弁論の全趣旨によれば,他の者は連続指定を受けていても,その回数は多いものでなく,例えば原告P14は2連続が1勤務指定期間(4週間)に3回の計6回まで(原告P14本人,)原告P2が同じく2連続で7回まで(原告P2本人,原告P15が2連)続が2回まで(甲1の16の4,原告P16が2連続が2回まで(甲1)の38,であることが認められる。であれば,連続して深夜勤に就いて)いる期間中は多少制約を受けるとしても,その他の日には十分に休暇も取得できており,非番の日(暦日及び非暦日)もかなり当てられていることが認められるから,問題とすべきものとはいえないというべきである。 ( )本件運用細則改定の必要性 次に,被告主張の本件運用細則改定の必要性について検討する。 ア証拠(乙87,160,証人P13)及び弁論の全趣旨によれば,本件運用細則改定を必要とする直接の事情としては,顧客である国民に高品質なサービス(スピードアップ)を提供し,民間の信書等の事業者と競争していくために,平成15年5月から,小包や通常郵便物を翌日に配達する地域を全国的に拡大したことに伴い,郵便の業務について,従来にもまして深夜帯に作業が集中するようになってきたこ- 54 -と,そして,その結果,より確実な翌日配達体制を確保し,また,効率的に業務運行を図るため,深夜帯の要員 伴い,郵便の業務について,従来にもまして深夜帯に作業が集中するようになってきたこ- 54 -と,そして,その結果,より確実な翌日配達体制を確保し,また,効率的に業務運行を図るため,深夜帯の要員配置がより重要となったため,深夜勤導入の必要が生じ,導入されたものであると認められる。 イさらに,上記のように,従来にもまして深夜帯に作業が集中する,,ようになってきたことから深夜勤導入の必要が生じたことにより職員の健康保持を促進する必要が生じたことが挙げられる 証拠 乙。 (87)及び弁論の全趣旨によれば,従来の16勤や新夜勤は,拘束時間が長く,16勤に替わり実施された新夜勤についていえば,暦日の非番日を確保するために,深夜勤と他の短時間勤務を組み合わせた1(「」,4時間又は15時間の勤務1回の新夜勤勤務に従事することで2勤務の実績と数える)であり,例えば,1日目に17時から23。 時までの勤務を行い,勤務と勤務の間(無給の勤務解放時間)を最大2時間設け,2日目の翌日1時から9時45分までの勤務を行うもので,休憩時間を含めると17時間又は18時間の長時間にわたり職員を拘束する勤務であって,新夜勤は,深夜・早朝帯にわたって長時間職員を拘束することでは16勤と変わりがなかったことが認められる。このため公社は,職員の健康保持を促進する必要から,深夜・早朝帯の長時間拘束勤務の解消を図ることとしたものと認められる。 この点,原告は,被告は,労働時間に代えて「拘束時間」を持ち出し,長時間拘束の解消をうたうが,拘束時間には休憩・休息時間も含まれるのであり,十分な長さの休憩・休息時間があれば,長時間拘束が直ちに健康保持に害悪をもたらすものではない,と主張し,証拠(甲17の1)もこの点を常識であるとする。しかし,本件全証拠を総合し 含まれるのであり,十分な長さの休憩・休息時間があれば,長時間拘束が直ちに健康保持に害悪をもたらすものではない,と主張し,証拠(甲17の1)もこの点を常識であるとする。しかし,本件全証拠を総合しても,十分な休憩・休息時間を与えつつ,労働者を長時間拘束することが,拘束時間を短くするよりも健康等に対する影響等の面において明らかに優れているとは認められない。かえって,証拠- 55 -(乙96)によれば「長時間労働者に,消化性潰瘍,胃炎等の発生,,,が多いというデータ3組3交替制から4組3交替制に切り換えた後疾病の発症率が年々少なくなった鉄鋼のデータなどは,深夜交替制勤務自体よりも身体的・精神的拘束時間の長さなど総体的な労働負荷の方が疾病に影響していることを示唆している」という調査報告例もあるこ。 とが認められるところであり,拘束時間の短時間化というものも,職員の健康保持のための1つの施策として十分な合理性を有していると考えられる。 ウ郵便事業財政の健全化の必要性等証拠(甲17の1,乙87,乙99の1ないし3,証人P10,同P13)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)郵便事業の使命は,ユニバーサルサービス(国民生活,社会経済活動に不可欠な郵便サービスをなるべく安い料金で,全国あまねく公平に提供すること)の確保である(郵便法1条)とされる。 (イ)また,郵便事業は,独立採算制の下で効率的に経営することとされており(中央省庁等改革基本法33条1項2号,利用者のニ)ーズに応えるサービスを提供し,その対価をもってコストを補うこととなっている。 (ウ)郵便事業は人力依存度の高い事業で,業務の多くの部分を人的労働力に頼る必要があることから,費用の多くの部分は人件費で占められ,8割近くにも達している。それゆえ, トを補うこととなっている。 (ウ)郵便事業は人力依存度の高い事業で,業務の多くの部分を人的労働力に頼る必要があることから,費用の多くの部分は人件費で占められ,8割近くにも達している。それゆえ,安い料金を実現するためには,大量の郵便物を確保し,また,郵便ネットワークを活用した多様なサービスを提供するとともに,人件費の抑制・節減に努める必要がある。 (エ)公社設立以前,郵便事業は独占事業として経営され,経済成長に比例して郵便物数も伸びてきており,基本的には右肩上がりの需- 56 -要の中で安定的な経営を続けてきた。しかし,今日,民間事業者の信書送達への参入,民間宅配・メール便業者との競争激化,電子メールの飛躍的な普及,顧客ニーズの高度化等社会経済環境の著しい変化の中で,独立採算制を維持し,経営の健全化を図るためには,収益の確保と費用の抑制に努め累積利益を確保するとともに,できるだけ安い料金で継続的に郵便サービスを提供していくためには,郵便処理の機械化の推進や非常勤職員の活用等による事業運営の効率化を図り,費用の多くを占める人件費の伸びの抑制そして削減に努める必要がある。 エ郵便事業の現状前記証拠により,以下の事実が認められる。 我が国経済の低迷やIT化の進展により,郵便物が大きく減少する傾向にあるほか,民間宅配・メール便業者との競争が激化し,また,一般の手紙や葉書,年賀郵便物も減少が見込まれ,郵便事業を取り巻く環境は厳しさを増している。本件運用細則改定後の総引受郵便物数の状況については,平成15年度は255億8663万通(),(),個となっていたものが平成16年度は250億0433万通個平成17年度は248億1862万通(個,平成18年度は246億7)724万通(個)と年々減少している。 オ郵便事業財政の推移 (),個となっていたものが平成16年度は250億0433万通個平成17年度は248億1862万通(個,平成18年度は246億7)724万通(個)と年々減少している。 オ郵便事業財政の推移前記証拠により,以下の事実が認められる。 郵便事業財政については,平成9年度に郵便業務収入が初めて前年度実績を下回った以降,平成11年度を除き対前年度を下回り続,,け様々な効率化施策の実施などにより経費の節減を図ったものの平成10年度から3年連続して100億円以上(最大625億円)の赤字を計上した。その後の施策により黒字化したものの,平成1,,4年度は再び225億円の赤字となり現状も厳しい財政事情にあり- 57 -今後とも更なる事業運営の効率化が必要である。公社及び被告は,様々な効率化施策の推進により,人件費その他の経費節減策を採っている。 カ郵便事業における効率的な服務方法の実施に伴う効率化効果前記証拠により,以下の事実が認められる。 郵便事業における効率的な服務方法の各施策は機械設備投資や他の労働力への人件費振替が不要なことから,郵便物処理の機械化・転力化と比較して,効率化効果が高く(計画人員の純減が,そのまま人件費削減となる,事業財政基盤の改善に大きく寄与する施策。)であり,特に,特例休息及び勤務時間のカット時短の廃止は,現在の社会・経済環境の下で,公社の経営姿勢・方針を社会的に認知してもらうために,真っ先に取り組むべき効率化施策であると公社は認識していた。そして,本件運用細則改定の実施により,計画人員(常勤職員)で630人,時間制定数(非常勤職員)で4981人の労働力を.削減し,試算によると年間約60億円の人件費(非常勤職員の賃金を含む)の節減が見込まれた。 。 ( )原告らの主張の検討 これに対し原告らは ,時間制定数(非常勤職員)で4981人の労働力を.削減し,試算によると年間約60億円の人件費(非常勤職員の賃金を含む)の節減が見込まれた。 。 ( )原告らの主張の検討 これに対し原告らは,前記第2,3( )(原告らの主張)ウのように主張 するので,この主張について検討する。 ア「(ア)郵便関係職員の健康保持の推進について」との部分についてこの点は,労働者に十分な休憩・休息時間を与えつつ長時間拘束するか,拘束時間の短時間化を図るかという問題であり,既に上記( )イで検討済みである。 イ「(イ)財政健全化との関係について」との部分について原告らは,被告がもっぱら人件費にのみ目を付けて,人件費が高- 58 -いから削減しようとしているとし,厳しい財政事情の原因は,人件費の伸びにあるのでなく(人件費はこの数年伸びておらず,減少の一途をたどっている,被告の行った「大口割引制度「バーコー),」,ド割引」や大幅な設備投資にある,と主張する。 しかしながら,企業には経営の自由があり,この点は,公社や公。 ,的な企業である被告でも変わるところがないこの経営の自由から企業の採る経営上の施策や営業活動自体は,直接司法審査の対象となるものではないというべきである。司法審査の対象となるのは,企業の採る経営上の施策や営業活動自体の結果として,あるいはこれに不可分に密着したものとして行われた人事上の施策(解雇や労働条件の改悪等)に限られるというべきである。ここにおいて,公「」,「」,社の行った上記大口割引制度バーコード割引や設備投資はその結果として本件運用細則改定をもたらしたものではなく,同改定と密着したものということもできないから,その当不当につき,当裁判所が容喙すべきものとはいえない。上記判示のとおり,公 引や設備投資はその結果として本件運用細則改定をもたらしたものではなく,同改定と密着したものということもできないから,その当不当につき,当裁判所が容喙すべきものとはいえない。上記判示のとおり,公社において,人件費は費用の8割近くを占めるものなのであるから,財政の健,,全化を目指す上でその削減に着手するのは何らおかしなことでなくその方向性自体が誤っているとはいえない。 ウ「(ウ)不合理な『効率化施策の推進」との部分について「』この点においても,原告らは,上記イ同様に公社の採った効率化施策が効果を上げていないとか,消費税増税時に上乗せしなかったことなどを批判する主張をする。しかし,上記イで述べたように,人事上の施策と直接結びつかない,企業の採る経営上の施策や営業活動自体は,直接司法審査の対象となるものではないというべきである。 エ「(エ)効率化の方法」との部分について原告らは,無理に深夜帯の労働時間を増やさなくても,不急の郵- 59 -便を夜間は留め置いて日中に処理することとし,要急・不急の郵便,,物を区別して郵便物の処理が夜間に集中している現状を改めれば効率化は可能であると主張する。しかしながら,証拠(乙87)及び弁論の全趣旨によれば,そのような施策は公社としても全く検討しないものではなく,一部実行しているが,競合する民間事業者のサービスの基本は翌日配達であるため,対抗上,全く原告らの主張するようにすることは困難である事情が認められるから,原告らの主張は採用できない。 以上検討したところによれば,被告主張の,本件運用細則改定の必要性は認められるものというべきである。 ( )代償措置について 被告の主張する代償措置は,前記第2,3( )(被告の主張)エの とおりであるので,これらにつき検討する。 ア 用細則改定の必要性は認められるものというべきである。 ( )代償措置について 被告の主張する代償措置は,前記第2,3( )(被告の主張)エの とおりであるので,これらにつき検討する。 ア新たな休息時間を付与したことについて証拠(乙3,87,証人P10,同P13)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)公社は,特例休息の廃止,カット時短の廃止及び深夜勤の指定に係る措置並びに深夜帯に勤務する職員の健康保持と能率維持のため,深夜勤(調整深夜勤を含む)及び新夜勤の勤務に従事。 した場合,新たな休息時間を付与することとした。具体的には,従事する勤務の種類ごとに,勤務4時間中に15分の休息時間とは別に,次のとおり,新たな休息時間が付与されることとなった(新運用細則8条3項1号。 )a新夜勤60分b8時間の深夜勤30分c10時間の深夜勤及び10時間の調整深夜勤38分- 60 -(イ)郵便局の規模によっては,同改定後の新夜勤,10時間の深夜勤,10時間調整深夜勤及び8時間の深夜勤については,従前の勤務形態よりも多くの休息時間が与えられる。 具体的には,新夜勤14時間の勤務の場合,勤務4時間につき15分の割合で付与される一般の休息時間53分に加え,新たな休息時間60分が付与されたことにより,休息時間は113分を付与することとなった。 また,8時間深夜勤の勤務の場合,前記の一般の休息時間30分に加え,新たな休息時間30分が付与されたことにより,休息時間は60分の付与,10時間の深夜勤及び10時間の調整深夜勤の勤務の場合,前記の一般の休息時間38分に加え,新たな休息時間38分が付与されたことにより,休息時間は76分が付与されることとなった。 原告らは,休息時間は減らしただけと主張するが,証人P10も, 勤務の場合,前記の一般の休息時間38分に加え,新たな休息時間38分が付与されたことにより,休息時間は76分が付与されることとなった。 原告らは,休息時間は減らしただけと主張するが,証人P10も,休息時間が増えた旨述べており,上記のとおり認められる。 この時間は休息時間であり,業務の必要性があれば業務に従事しなければならないものであるが,現実には,休息に入る時間が多少ずれることはあっても,休息時間は確実に取れる運用がされていることが認められる(原告P2,同P15各本人)ので,仮眠時間としては短いかも知れないが,個々の労働者次第で,仮眠に当て,疲労の回復を図ることも不可能ではないと考えられる。 イ健康管理対策前記証拠によれば,公社が,職員に対する一般的な健康管理のほ,,,か深夜帯勤務者に対する健康管理として特別健康診断を実施しその結果に基づき,必要に応じ時間外労働及び休日労働の勤務の制限等の指導をしていること,自発的健康診断の経費負担の充実,成- 61 -人病検診受診の助成の充実を図っていることが認められる。当然のこととは思われるが,必要な措置といえる。 ウ仮眠・横臥のための休憩室前記証拠及び証拠(原告P14,同P12,同P2,同P9,同P16各本人)によれば,公社が,職員が深夜帯勤務の疲労を回復するための時間を確保するため,疲労回復時間確保のための深夜帯勤務の始終業時刻の設定,仮眠・横臥のための休憩室夜間の利用を()可能にしているなどの措置を実施していることが認められる。原告らは,とても休めるような場所ではないと主張するが,上記証拠及,。 び弁論の全趣旨によればそのような状況にあるとは認められないまた,局によっては,利用するのに届けを出す必要のあることが認め,。 られるが利用することの大きな制約となって が,上記証拠及,。 び弁論の全趣旨によればそのような状況にあるとは認められないまた,局によっては,利用するのに届けを出す必要のあることが認め,。 られるが利用することの大きな制約となっているとは認められないエ駐車場の措置前記証拠及び証拠(乙87)及び弁論の全趣旨によれば,職員が公共交通機関を利用して出・退勤が不可能な場合に構内駐車を措置している事実が認められる。原告らは,かえって自家用車による通,。 勤が認められなくなったと主張するがこれを裏付ける証拠はないオ夜間特別勤務手当の増額等証拠(乙12,87)によれば,常勤職員の深夜勤(8時間の深夜勤・10時間の深夜勤及び調整深夜勤)の新たな指定と特例休息及びカット時短の廃止に対する措置として新たな支給区分の追加と支給単価を増額し,深夜勤の連続指定及び深夜帯勤務回数の制限の廃止に対する措置として新たな支給区分を追加したことが認められる。原告らは,支給単価が下がった旨主張するが,証人P10も手当自体が増額になった事実は認めている。また,原告らは,深夜労働自体が増えたのだから,手当が増額するのは当然のことであるとも主張す- 62 -るが,前記( )オのとおり,カット時短は不利益として考慮できな いから,この分の時間増はやむを得ないし,前記( )エのとおり, それ以外は一概に深夜労働が増加したとはいえないのだから,この主張も採用できず,代償措置として考慮すべきものといえる。 カ深夜帯勤務回数の目安の設定証拠(乙4,87,証人P10,同P13,同P17)によれば,公社は,1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の制限廃止に係る措置及び職員の健康保持と能率維持のため,1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の目安(年末年始繁忙期等を除く)を設定し,これによ。 れば,例えば10深夜勤 勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の制限廃止に係る措置及び職員の健康保持と能率維持のため,1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の目安(年末年始繁忙期等を除く)を設定し,これによ。 れば,例えば10深夜勤については,連続指定は1週につき4回まで,2週続けての4連続指定は行わない,1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数は8回まで,などと定めていること,またこれは目安であり,実際の勤務は,前記争いのない事実( )オのように,郵便局ごと に異なるのであり,上記目安に近いところまで勤務指定されているわけではなく,前記のとおり,原告らの中に4連続指定に従事したことのある者は2名しかおらず,証人P10も,深夜勤は指定されるときも1~2回,指定されないときもあるという程度で,本件運用細則改定後,特に労働の態様が厳しくなったと感じていないことが認められる。 キ深夜帯勤務と勤務の間の時間外労働の抑制前記証拠によれば,特別の事情があるとき以外は,深夜帯勤務と勤務の間の時間外労働を抑制している事実が認められる。 ( )関係労働組合との交渉 ア証拠(乙87,証人P13)及び弁論の全趣旨によれば,公社職員が結成する労働組合の組合員数は,全逓は約13万人(非常勤職員を除く。以下同じ,全郵政は,約8万6千人で,郵産労は約2千。)- 63 -人,郵政全労協は不明であるところ,本件運用細則改定に伴う服務方法の実施について,公社は,公社全体の常勤職員約28万人(管理者を含む。平成15年4月1日現在)の約80%を占める割合の組合員を有する全逓及び全郵政(組合員数の合計約22万5千人)の合意を得,労働協約を締結した事実が認められる。 このことからも,本件運用細則改定に伴う服務方法の実施が,多くの者の賛同を得ることのできる内容であったことがうかがわれる。 イ郵産労との 万5千人)の合意を得,労働協約を締結した事実が認められる。 このことからも,本件運用細則改定に伴う服務方法の実施が,多くの者の賛同を得ることのできる内容であったことがうかがわれる。 イ郵産労との交渉原告は,公社は,郵産労からの交渉申入れに途中から応じなくな,,。 り同組合の意見を待たないまま上記改定を実施したと主張する証拠(甲17の1,乙15ないし18,87,100,証人P10)によれば,以下の事実が認められる。 (ア)公社は,平成15年1月,各労働組合に対し「郵便事業に,おける効率的な服務方法の実施について(乙15)と題する,本」件運用細則改定に係る内容を示した。その実施時期は,同年5月19日以降,準備出来次第,とされていた。 (イ)公社は,同年7月,各労働組合に対し「郵便事業における,効率的な服務方法の実施について(乙16)と題する,上記改」定に係る具体的内容を,勤務パターンも例示して示した。 (ウ)郵産労は,上記(イ)の公社からの提案に対し,同月31日「服務,方法の実施見直しに関する要求書」を公社あて提出した。これに対し公社は,郵産労に対し,上記要求書に対する回答を同年8月26日から同年9月2日にかけて行った上,同月17日及び19日に団体交渉を行ったが,合意に至らず,交渉は継続扱いとなった。 (エ)公社は,同年9月,全逓及び全郵政に対しては,要求書に対する回答として,郵産労及び郵政全労協に対しては,再提案(修- 64 -正提案)として,本件勤務時間の改正に係る,①新たな休息時間の付与,②夜間特別勤務手当の増額,③実施時期の変更及び④勤務パターンの追加を示した(乙17。 )(オ)同年10月3日,公社は,郵産労に対し,上記提案を受け入れるか否か確認したところ,郵産労は「平成16年2月に開催する中央委 額,③実施時期の変更及び④勤務パターンの追加を示した(乙17。 )(オ)同年10月3日,公社は,郵産労に対し,上記提案を受け入れるか否か確認したところ,郵産労は「平成16年2月に開催する中央委,員会で最終的な判断を下す」と回答した。これに対し公社は「交渉は継続,中であるが,平成16年2月の施策実施に向けて,遅くとも11月中には支部・単局段階の意思疎通を終了させる方針であることを伝えたところ郵産労は郵」,「産労として賛成はできないが,公社の責任において実施するものを止めるものではない」との見解を示した。 (カ)同月17日,公社は郵産労に対し,今後の対応について再度確認したところ,郵産労は,上記(オ)と同様に,平成16年2月に開催する中央委員会において,組合としての判断を下す旨の意思であった。 これに対し公社は,平成15年10月ころ,郵産労から求めがあれば,いつでも交渉に応じるつもりであることを伝えた。その後も同年11月までは,組合の支部と単局の段階で,交渉は行われていた。平成16年2月にも,公社の窓口における対応は行われていた。 (キ)郵産労は,平成16年1月に,本件運用細則改定に関し,延期を求める要求書を出し,同年8月になり「深夜労働に係わる,改善要求書」を公社あて提出した。 上記認定の事実の経過を総合すれば,公社は,郵産労に対しても,他の多数派労働組合同様,早くから改定の内容を示しており,実際の実施は最初の提示から1年1か月を経過した時期であること,他の組合は意思決定が比較的早かったのに対し,郵産労は,当初10月に行われる中執会議で結論を出す趣旨も述べていたものの(乙100,結局,中央委員会が平成16年2月に)開催されるので,それまで意思決定ができないとの姿勢を変えず,また同組合とし- 65 -ては,中央委員 中執会議で結論を出す趣旨も述べていたものの(乙100,結局,中央委員会が平成16年2月に)開催されるので,それまで意思決定ができないとの姿勢を変えず,また同組合とし- 65 -ては,中央委員会が開催された後に公社との交渉が持たれても,深夜勤の連続指定は受け入れられないとの姿勢が強固で,労働協約の締結に至る可能性は低かったことがうかがわれる。この経過に照らせば,本件運用細則改定に関し,公社が,郵産労との十分な説明と交渉の機会を持たなかったとはいえない。 ( )社会一般の状況について ア厚生労働省(旧労働省)から発表された「深夜業の就業環境,,健康管理等の在り方に関する研究会」中間報告(平成11年1月)(乙20及び乙97。以下「中間報告」という)及び「平成13。 」()(。 「」年労働環境調査平成14年9月乙21以下労働環境調査という)によれば,我が国の民間企業等における深夜業に関する。 状況は次のとおりと認められる。 (ア)深夜交替制勤務の実施状況中間報告及び労働環境調査によると,深夜業(午後10時から翌日午前5時までに行う労働)のうち,郵便事業の勤務の形態に近い「深夜交替制勤務」を実施している民間事業所は,規模が大きな事業所ほど実施割合が高く,従業員1,000人規模の事業所のうち8割を超える。 (イ)深夜帯勤務時間数・勤務日数中間報告によると,深夜業従事者の週の所定労働時間数は,深夜交替制勤務を実施している事業所のうち4割弱の事業所が40時間となっており,1週平均40時間,4週160時間とする本件運用細則改定と同程度である。 また,1か月当たりの深夜帯勤務時間数では,20~40時間未満となっている事業所が最も多く3割弱を占める。1か月当たりの深夜勤務の最高回数では,深夜勤交替制勤務を導入している事 改定と同程度である。 また,1か月当たりの深夜帯勤務時間数では,20~40時間未満となっている事業所が最も多く3割弱を占める。1か月当たりの深夜勤務の最高回数では,深夜勤交替制勤務を導入している事業所において,10~14回となっている事業所が最も多く3割強- 66 -を占める。 (ウ)深夜業従事者への配慮事項労働環境調査によると,深夜業を実施している事業所(深夜交替制勤務,常夜勤務及び所定外深夜勤務を実施している事業所)のうち9割の事業所が深夜業の従事者へ何らかの配慮を行っているが配慮の内容は休憩時間を2回以上確保503%所,「」(),「.定外労働時間数を制限(426%「深夜勤務回数を制限(3」),」.84%)が高い。なお,中間報告では「労働時間,深夜帯勤務.,回数等についてなんらかの限度を設けている」は25%に留まる。 イ乙96の労働基準法研究会の労働省に対する報告の中でも,4連続以上の深夜勤務等が,民間企業では決して低くない割合で実施されていることがうかがわれる。 ウ上記認定事実からうかがわれる,我が国企業の深夜業の状況からすれば,本件運用細則改定による措置は,少なくとも突出して過酷なものとはいえず,標準的なものに近いということができる。 ( )就業規則の不利益変更に関する小括 本件運用細則改定後の措置は,前記争いのない事実( )に記したとおりで あるが,既に認定したように「10深夜勤「8深夜勤」は,常勤職員に,」とっては新設とはいえ,非常勤職員には既に指定されていたもので,これを他の勤務と組み合わせず,単独で常勤職員に指定することができるようにしたもので,制度が激変したとはいえないこと,連続指定に関しても,それまで一部の郵便局については他の勤務と組み合わせて連続指定が可能であ 務と組み合わせず,単独で常勤職員に指定することができるようにしたもので,制度が激変したとはいえないこと,連続指定に関しても,それまで一部の郵便局については他の勤務と組み合わせて連続指定が可能であったものを,必要な局においては,その局ごとに単独で常勤職員に指定することができるようにしたものであり,同様に制度が激変したとはいえないこと,特例休息は廃止されたが,代償措置としての休息時間が設けられ,休息時間が短くなったとはいえないこと,カット時短は廃止されざ- 67 -るを得ないものであったこと,がいえるのであり,制度変更による不利益は大きなものとはいえない。したがって,変更の結果も,相当性がないとはいえない。これに対する,効率化及び職員の健康管理の視点から拘束時間の短時間化を図ったことは,目的及び手段において合理性があり,高度な郵便サービスの提供の見地から,上記効率化は高度の必要性が認められる。そして,休息時間等,深夜勤務手当や健康管理の措置等の代償措置も取られており,これらの措置は,上記の不利益の程度に照らし,決して不十分とはいえない。そして,労働組合への説明及び交渉の機会を持つことも行われており,これも不十分とはいえない。さらに,社会全体が深夜労働を許容し,必要とする状況にあり,公社における深夜勤は,突出した内容のものではない。 以上からすれば,本件運用細則改定は,就業規則の不利益変更に関する判例法理からすれば,原告らと公社間の労使関係における法的規範性を是認することができるだけの合理性を有していたものということができる。 したがって,原告らが上記改定に不同意であることをもって,その適用を拒むことは許されないものであったといえる。 争点4(本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用がある らが上記改定に不同意であることをもって,その適用を拒むことは許されないものであったといえる。 争点4(本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があるか)について被告が民営・分社化後作成した本件就業規則についても,就業規則の不利益。 ,変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があるというべきであるけだし同法理は,前記3( )で引用したように「新たな就業規則の作成又は変更に ,よって,既得の権利を奪い…」と論じられており,就業規則を変更するばかり,,,でなく新たに制定することによっても労働者に不利益を負わせる場合には同法理による検討がされるべきだからである。 ,,,被告は郵政民営化法は公社の労働条件を承継していないことを根拠に上記法理の適用がないと主張するが,上記理由から採用できない。 - 68 - 争点5(本件就業規則の制定について,就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用が肯定される場合,本件就業規則の制定には合理性があるか)について乙1~3と乙139を比較すると,本件運用細則上の深夜勤制度と,本件就業規則上の同制度は全く同じものであり,原告らに適用されている深夜勤は,。 ,,公社時代と全く同一であることが明らかであるしたがって上記4のとおり本件就業規則の制定には就業規則の不利益変更に関する判例法理の適用ないし類推適用があるので,同法理に基づき,本件就業規則を検討すべきである。そ,,,して上記判示のとおり本件運用細則改定は上記法理から合理性が認められ原告らと公社間の労使関係における法的規範性を是認することができるだけの合理性を有していたものであり,これと同一内容の本件就業規則についても同様であるので,原告らが同規則に不同意であることをも られ原告らと公社間の労使関係における法的規範性を是認することができるだけの合理性を有していたものであり,これと同一内容の本件就業規則についても同様であるので,原告らが同規則に不同意であることをもって,その適用を拒むことは許されないものである。 以上により,原告らの主位的請求は,理由がないというべきである。 予備的請求原因について原告らの予備的請求原因は,深夜勤の4連続指定が,肉体的な負荷が非常に大きく,これに従事させられる労働者の被る不利益が著しい上,多くの局で実施されていない,不必要な制度であり,社会的にも類例のない過酷な制度であるので,無効な制度であることを根拠とするものである。 ,,,しかしながら原告らは全国で4局でしか実施されていないと主張するがこれを裏付ける証拠はなく,実施されている局ははるかに数が多いことがうか,。 ,,がわれるので直ちに不要な制度とはいえないまた既に述べているように具体的な勤務パターンは,各局で所属長が勤務の状況や必要性を考慮して定めるのであり,本件運用細則及び本件就業規則は,その大枠を定めているのにすぎないのであるから,仮に実際に4連続指定を行っているところが少ないからといって,本件運用細則の改定及び本件就業規則で4連続指定を可能にするこ- 69 -とが直ちに不必要であるとはいえない。 さらに,前記( )キ判示のとおり,深夜勤の連続指定が特に健康等に及ぼす 影響は明確とはいえないから,4連続指定についても同様であり,かつ社会における深夜勤務の状況に照らしても,この4連続指定が突出したものということはできず,原告らの主張する無効原因について立証がされていないといえるので,この予備的請求も理由がないというべきである。 争点6(被告の安全配慮義務違反の存否)について( )既に判示した ことはできず,原告らの主張する無効原因について立証がされていないといえるので,この予備的請求も理由がないというべきである。 争点6(被告の安全配慮義務違反の存否)について( )既に判示したように,本件運用細則の改定は,就業規則の不利益変更に 関する判例法理に照らし,合理性を有するものと認められるので,そのような改定をすることが,使用者の安全配慮義務に違反するということは考え難いが,一応検討することとする。 ( )原告らは,使用者は,当該労働者の当該労働条件を整備しなければ 生命・健康への危険が生じうると判断される場合には,その危険から労働者を保護するため労働条件を整備しなければならないが,本件運用細則の改定は,この安全配慮義務,安全衛生法の趣旨に真っ向から反して,原告ら郵便局の内務作業に従事する労働者の健康,正常な社会生活に重大な影響を生じさせており,かつこれからも被害が拡大する恐れが極めて強い,と主張する。原告らは上記危険の内容として,深夜勤は,原告らの命を引き換えにする危険のあるものであり,これまでも多数の死者が出ていると主張。 ,(,),するそこで検討するに 証拠 乙27 及び弁論の全趣旨によれば年間二百数十から三百数十名の公社職員が在職中死亡しているが,うち新夜勤及び深夜勤に従事する者は,年間4名から7名ほどで,決して多いとはいえない。また,深夜勤導入後に死亡者が増えたような事情はなく,新夜勤又は深夜勤に従事したことが死亡の原因であるとして,公務災害認定の申請をした者もいない。原告らが,新夜勤の下でも既に11年間に126名が死亡していたと主張するのは,何を根拠に主張するものか不明というほかない。 - 70 -( )ア平成▲年▲月,名古屋郵便集中局で,72才のP18氏が深夜勤 明けに,帰宅途 に11年間に126名が死亡していたと主張するのは,何を根拠に主張するものか不明というほかない。 - 70 -( )ア平成▲年▲月,名古屋郵便集中局で,72才のP18氏が深夜勤 明けに,帰宅途中にくも膜下出血で死亡した事実は当事者間に争いがない。しかしながら,証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,同人は,本件運用細則改定前の平成5年から,深夜勤に従事する非常勤職員として応募し,採用されて,上記改定の前後を問わず深夜勤に従事してきた者で,健康状態にも問題がなかったというのであり,死亡の原因は明らかでないというほかない。 イ▲年▲月▲日,東京中央郵便局特殊郵便課の58才のP19氏(当時58才)が深夜勤に就く直前に自宅で倒れ,病院に搬送されて死亡した事実は当事者間に争いがない。原告P14は,上記P19氏の死亡は公務災害であると述べる甲1の22の1しかし 証拠 乙()。 ,(102,原告P14本人)によれば,P19氏は,本件運用細則改定から,死亡日までに2日連続の深夜勤を2回行ったのみで,その余は日勤だというのであり,同人の希望に添って日勤及び深夜勤に限定していたのであるから,深夜勤と死亡との因果関係は明らかでないというほかない。上記証拠によれば,遺族も公務災害の申請等はしていないものと認められる。 ウ新大阪郵便局のP20氏(44歳)が,同年9月22日に20時から深夜勤務(初日)に就いていたところ,21時過ぎに職場で倒れ,▲月▲日に死亡した事実は当事者間に争いがない。しかし,弁論の全趣旨によれば,同人は健康診断の結果,生活規正区分は「要注意者」であったが,勤務にも制限がない状況だったというのであり,同人の勤務パターンは,基本的に,日勤,中勤,夜勤及び新夜勤の組み合わせで,本件運用細則改定後は,日勤,中勤,夜勤及び深夜勤 は「要注意者」であったが,勤務にも制限がない状況だったというのであり,同人の勤務パターンは,基本的に,日勤,中勤,夜勤及び新夜勤の組み合わせで,本件運用細則改定後は,日勤,中勤,夜勤及び深夜勤の組み合わせで,大きく変わっておらず,深夜勤と死亡との因果関係は明らかでないというほかない。遺族も公務災害の申請等- 71 -はしていないものと認められる。 エ東京中央郵便局特殊郵便課総務主任のP21氏(58歳)が,平成▲年▲月▲日に死亡した事実は当事者間に争いがない。これについても,原告P14は,上記P19氏の死亡は公務災害である,遺族もそう述べていたと述べる(甲1の22の1。しかし同人の死亡原),(),因等は必ずしも明らかでないが 証拠 原告P14本人によればもともと心臓に持病を持ち,投薬も受けていたが,診断書を提出して勤務軽減措置を受けることはしていなかったことが認められ,死亡前の夜勤の状況も明らかでなく,深夜勤と死亡との因果関係は明らかでないというほかない。証拠(乙102)によれば,遺族も公務災害の申請等はしていないことが認められる。 オ証拠(甲1の16の3,原告P15本人)は,原告P15の勤務する横浜集中局で,平成17年以降,在職中に亡くなった職員数名がいること,その中には夜勤に従事していた職員もいることを示しているが,死亡原因と夜勤との因果関係は明らかではない。ましてや,本件運用細則改定による服務方法の変更との因果関係は明らかではない。 以上のとおり,原告らが深夜勤を課すことが安全配慮義務に違反するものとして示す事例は,いずれも深夜勤と死亡との因果関係は明らかでないから,深夜勤が生命・身体への危険があるものとは認められない。 ( )前記判示のとおり,具体的な勤務の仕方は,各局・支社で定めた服務表 により決 ,いずれも深夜勤と死亡との因果関係は明らかでないから,深夜勤が生命・身体への危険があるものとは認められない。 ( )前記判示のとおり,具体的な勤務の仕方は,各局・支社で定めた服務表 により決まるのであり,現実にはさほど厳しい勤務状況とはいえない勤務指定が行われているところが多い。また,新たな休息時間も設けられ,仮眠を取るための休息施設も用意されている。さらに公社及び被告では社員・職員に対し健康診断を行っており,加えて深夜帯勤務者については特別な健康診- 72 -,(,,,)断を行っているし 証拠 乙102 原告P14同P15各本人及び弁論の全趣旨によれば,健康状態が悪く,深夜勤に耐えないとされる者については,医師の診断書を提出することによって,深夜勤を免除されるなど,社員の健康状態に配慮した勤務軽減措置もあることが認められる。上記のように危険が認められない上,これらの軽減等の措置に鑑みれば,安全配慮義務の違反があるとは認められない。したがって,これを前提とする原告らの慰謝料請求は理由がない。原告らが,深夜勤あるいはその4連続指定に従事する義務の不存在確認請求の原因としても安全配慮義務の違反を主張しているのであれば,同請求も理由がない。 結論 以上判示したように,原告らの請求は,請求欄第2項の訴えについては訴え,,,,の利益がなく不適法でありその余の請求については既に検討したようにいずれも理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部村越啓悦裁判官

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