- 1 - 主文 本件各控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中,被告人Aに対し80日を,被告人Bに対し90日を,それぞれその原判決の刑に算入する。 理由 被告人Aの控訴趣意はその弁護人坂口唯彦作成の控訴趣意書に,被告人Bの控訴趣意はその弁護人磯田丈弘作成の控訴趣意書及び控訴趣意書補充書に,これらに対する答弁は第1回公判期日で訂正された検察官髙田浩作成の答弁書に,それぞれ記載されたとおりであるが,被告人Aの論旨は訴訟手続の法令違反,事実誤認,法令適用の誤り及び量刑不当の主張であり,被告人Bの論旨は事実誤認及び量刑不当の主張である。 1 被告人Aの訴訟手続の法令違反の論旨について論旨は次のようなものである。すなわち,原裁判所は,Cの検察官調書(以下「本件検察官調書」という。)について,刑訴法321条1項2号(以下「本号」という。)前段により採用して取り調べた上,原判示第2の危険運転致死傷の認定の用に供している。しかし,本件検察官調書が本号前段の要件を満たさず証拠能力を欠いているほか,原裁判所は,釈明義務や職権証拠調べ義務に違反し,審理不尽のまま判決を言い渡しているから,原審の訴訟手続に判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある,というのである。 そこで,原審記録及び証拠物を調査して検討する。 まず,原裁判所が本件検察官調書を採用するに至った審理の経過は,次のようなものであった。 - 2 -ア原裁判所は,平成27年7月に被告人Aが原判示第2に係る公訴事実について起訴された後,平成28年10月にかけて公判前整理手続を進行させる間に,別に起訴された被告人Bに対する本件被告事件と併合して審理する旨を決定したほか,12回にわたる打合せや4回の整理手続期日を重ねたが,その間 平成28年10月にかけて公判前整理手続を進行させる間に,別に起訴された被告人Bに対する本件被告事件と併合して審理する旨を決定したほか,12回にわたる打合せや4回の整理手続期日を重ねたが,その間の平成27年8月11日に検察官から同年6月18日付け本件検察官調書を含む関係証拠の取調べ請求を受け,弁護人から本件検察官調書に対する不同意意見が述べられたことなどを踏まえ,平成28年9月23日に,他の証人尋問請求と併せて,本件検察官調書と同様の「被告人両名の過去の運転状況等」という立証趣旨でCの証人尋問が請求された。 イそして,原裁判所は,上記整理手続で,同年10月4日に開かれた第3回整理手続期日に,同人の証人尋問を採用したほか,原判示第2に係る公訴事実に関する争点について,被告人両名が赤色信号を殊更に無視したか否かと共謀の有無と整理するとともに,同月17日から同月28日までの間に指定された9回の公判期日に証拠書類及び証拠物の取調べほかCを含む20名に対する証人尋問と被告人両名に対する質問を実施する審理計画を策定した上,同月17日の第1回公判期日以降の審理を進行させた。 ウところが,Cは,取り分け同年9月以降に,検察官から面談や電話で再三にわたり出廷を促されたのに対し,応じる姿勢を示す一方で,家族に様々な不利益が及びかねないことなどを危惧し,出廷自体に消極的な意向を述べていたところ,召喚された翌10月21日の第5回公判期日に出廷しなかった。 そこで,原裁判所は,日を改めてCに対する証人尋問を行うこ - 3 -ととし,同人に対する勾引の措置を執った上,勾引状の執行を経て同月25日の第6回公判期日に当該証人尋問を実施した。 ところが,Cは,その証人尋問で,宣誓したものの,まず,裁判長からの質問に対し,過料等の制裁に関する説明を 引の措置を執った上,勾引状の執行を経て同月25日の第6回公判期日に当該証人尋問を実施した。 ところが,Cは,その証人尋問で,宣誓したものの,まず,裁判長からの質問に対し,過料等の制裁に関する説明を受けても証言したくないと述べ,次いで,当事者による尋問に対し,交際相手が被告人両名のいずれかと親族関係にあり,自分が証言することにより,今後の関係の中で交際相手や子供に不利益が及ぶことを恐れていると述べた。その一方,Cは,被告人らをかばうつもりがなく,平成27年6月に捜査官による取調べを受けた際に,本件事故後に被告人Bと行動を共にして重大な事件に関わってしまい,同被告人に出頭を促すとともに,自分も責任を感じたことから,知る限りの事情を正直に話して調書に記載してもらったと述べたものの,重ねて検察官から上記立証趣旨に関する事項について尋問されたのに対し,裁判の場で証言することができないと応答した。 エそのため,原裁判所は,上記公判期日でCの証人尋問を終了させるとともに,本件検察官調書について,同日中に,検察官から本号前段に基づく取調べ請求を受け,被告人両名の各主任弁護人から異議がある旨の意見を聴取した上,翌26日の第7回公判期日で採用を決定し,被告人Aの主任弁護人から申し立てられた異議申立てを棄却した後,取調べを行った。ちなみに,本件検察官調書の内容は,Cが平成26年夏頃までの6年間に被告人両名と交遊した機会に,互いに負けず嫌いの被告人両名が各自の運転する自動車を競うように高速度で走行させていたことや,その際に時速180キロメートルで走行させたことがあったというものであり,原判示第2のほか第3の被 - 4 -告人Bによる不救護及び不申告の認定に供されている。 以上のような経過等に照らすと,原裁判所は,Cが従前及び今後の被 たことがあったというものであり,原判示第2のほか第3の被 - 4 -告人Bによる不救護及び不申告の認定に供されている。 以上のような経過等に照らすと,原裁判所は,Cが従前及び今後の被告人らとの関係等から,自分の家族に生活上の不利益が及ぶことを危惧しているため,被告人らの面前における証言を拒んでいる上,それまでの検察官による説得や勾引により尋問を実施した経過等に照らし,証言拒絶の決意が固く,更に期日を改めても証言が得られる見込みに乏しいことや,予定された審理日程からCに対する証人尋問を行うことが困難な状況であることなどを考慮に入れ,その証言拒絶が一時的なものでなく,本号本文前段所定の供述不能に当たると判断したものと解され,そのような原判断に不合理な点は認められない。したがって,本件検察官調書を採用して取り調べた原裁判所の訴訟手続に所論のような法令違反は認められない。 なお,所論は,原裁判所が多数の証人を取り調べたのに,それらの証言や被告人両名の供述の信用性判断を丁寧に行わず,本件事故の実態に関する精緻な探求を怠り,釈明義務や職権証拠調べ義務に違反し,審理不尽に陥っている,という。しかし,その主張は,所論の違反が存在したとする局面を具体的に特定していない上,本件の際に被告人Aの運転車両に同乗していたDの供述が取り調べられないまま,審理終結に至ったことを指摘する趣旨と解しても,検察官から請求された同人の供述調書が弁護人による不同意意見を受けて撤回されたものの,同様の立場にあったEやFの証人尋問が実施されたことなどに照らし,所論のような釈明義務や職権証拠調べ義務に違反した廉は認められない。 以上の次第で,論旨は理由がない。 - 5 - 2 両被告人の事実誤認及び被告人Aの法令適用の誤りの各論旨について 所論のような釈明義務や職権証拠調べ義務に違反した廉は認められない。 以上の次第で,論旨は理由がない。 - 5 - 2 両被告人の事実誤認及び被告人Aの法令適用の誤りの各論旨について 各論旨の内容ア被告人Aの事実誤認及び法令適用の誤りの論旨は次のようなものである。すなわち,原判決は,罪となるべき事実第2として,平成27年6月6日午後10時34分頃に,被告人両名がそれぞれ普通乗用自動車(以下「A車」という。)と普通貨物自動車(以下「B車」といい,一括して「両車両」という。)を運転して,北海道砂川市a丁目b番先の片側2車線の道路を奈井江町方面から滝川市方面に向かい,A車が第1通行帯を走行し,すぐ後方からB車が第2通行帯を追走して,同所先の信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)を直進するに当たり,互いの自動車の速度を競うように高速度で走行していたため,対面信号機の表示を意に介することなく,赤色表示であっても無視して進行しようと考えて共謀し,本件交差点の対面信号機(以下「本件信号機」という。)が約32秒前から赤色信号を表示していたのに,いずれも殊更に無視し,A車が時速約111キロメートルで,その直後にB車が時速100キロメートルを超える速度で,本件交差点内に順次進入したことにより,A車が,折からG(当時44歳)が家族であるH(当時44歳),I(当時17歳),J(当時16歳)及びK(当時12歳)を同乗させて左方道路から青色信号に従い進行してきた普通貨物自動車(以下「被害車両」という。)に衝突し,I及びJを車外に放出させて路上に転倒させた上,B車がJを轢跨し,その車底部で引きずるなどした結果,間もなくG及びHについて同所付近の路上で心臓 - 6 -破裂や胸部大動脈離断等の傷害によ し,I及びJを車外に放出させて路上に転倒させた上,B車がJを轢跨し,その車底部で引きずるなどした結果,間もなくG及びHについて同所付近の路上で心臓 - 6 -破裂や胸部大動脈離断等の傷害による外傷性ショックにより,右上腕骨骨頭部骨折等の傷害を負わせたJについて砂川市c丁目d番地e付近路上又はその周辺で胸腹部圧迫による窒息により,Iについて脳挫傷及び外傷性くも膜下出血の傷害により収容先の同市所在の病院で1時間20分余り後に,それぞれ死亡させたほか,Kについて加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせたとの事実を認定している。しかし,①関係証拠によると,被告人両名が本件の際に競うように高速度で走行したと認められない上,被告人Aが本件交差点の信号表示を見落としたという合理的な疑いが残るから,殊更に赤色信号を無視して本件交差点に進入した事実も肯認できない。 しかも,②被告人両名の間で本件危険運転に関する共謀を遂げた事実はない。ひいて,③被告人Aの行為について,危険運転致死傷罪の共同正犯として,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号及び刑法60条を適用する余地はない。したがって,被告人Aについて,原判示第2の事実を認定した上,危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を肯認した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び法令適用の誤りがある,というのである。 イまた,被告人Bの事実誤認の論旨は次のようなものである。すなわち,原判決は,被告人Bについて,上記のような原判示第2の事実に加え,罪となるべき事実第3として,自己の運転に起因して上記被害者らを負傷させたのに,同人らに対する救護等の措置や警察官に対する所定の報告を行わなかったとの事実を認定している。しかし,①本件交差点の赤 ,罪となるべき事実第3として,自己の運転に起因して上記被害者らを負傷させたのに,同人らに対する救護等の措置や警察官に対する所定の報告を行わなかったとの事実を認定している。しかし,①本件交差点の赤色信号について,同被告人が見落としたという合理的な疑いが残り,確 - 7 -定的な認識に欠ける上,それを殊更に無視する意思を肯認できない。しかも,②被告人両名が共謀して本件危険運転行為に及んだ事実は認められない。そのため,③被告人Aが単独で引き起こした交通事故に関する救護義務や報告義務が生じる余地はない。したがって,原判示第2及び第3の各事実を認定し,被告人を有罪と判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。 そこで,原審記録及び証拠物を調査して検討する。 原判断の概要アまず,原判決は,被告人両名の供述を含む関係証拠に基づき,次のような趣旨の事実や経過を認定している。 被告人両名は,本件当夜に砂川市内の居酒屋でD,E及びFと共に飲食した後,滝川市内で更に飲酒することとし,近くの駐車場に止めていたA車(BMW・X5)の助手席と後部座席にDとEを,B車(シボレー・アストロ)の助手席にFを,それぞれ同乗させ,同じ目的地に向けて各車両を発進させた後,間もなく,片側2車線で中央分離帯の設けられている国道f号(以下「本件道路」という。)に出て,滝川市方面に向けて北進する途中に,信号機による交通整理の行われている本件交差点に差し掛かった。 上記駐車場から本件交差点に至るまでの約3.6キロメートルのうち,本件道路沿いに,本件交差点の北西角にあるL給油所から2258メートル前後南方(手前)に①M店があるほか,同店から北に向けて進行すると,順次,387メートル前後で での約3.6キロメートルのうち,本件道路沿いに,本件交差点の北西角にあるL給油所から2258メートル前後南方(手前)に①M店があるほか,同店から北に向けて進行すると,順次,387メートル前後で②オートショップNが,同店から849メートル前後で③O株式会社が,同社から963メートル前後北に位置す - 8 -る本件交差点の南側停止線(以下「本件停止線」という。)を経て1022メートル前後で④L給油所が,それぞれ所在している。なお,本件道路の勾配は,本件停止線南方の約700メートル手前から約550メートル手前までが約1.5パーセントの下り,約500メートル手前から約350メートル手前までが約1.5パーセントの上り,約250メートル手前から本件停止線までが約0.15パーセントの下りとなっている。 上記①ないし④の各施設に防犯カメラが設置され,本件道路の状況が撮影されていたところ,被告人両名は,まず,A車が先行し,①M店前の信号機による交通整理の行われている交差点に差し掛かった際に,赤色信号に従い,第1通行帯の先頭に白色系車両(以下「白色車両」という。)が停止した状況で,第2通行帯に停止中のP運転の先頭車両(以下「P車」という。)に後続して順次停止した。次いで,両車両は,対面信号が青色に変わるや,P車が白色車両の前方に車線変更するために発進直後から加速したのに,P車より先に順次車線を変更して白色車両前方の第1通行帯を北進し,P車を左側から追い越した後,B車がP車の前方に再度の車線変更をしたことから,並進に近い形態で加速を続けた。こうして,両車両は,60キロメートル毎時の法定最高速度を大きく上回る速度で本件道路を走行しながら,②オートショップN前に差し掛かり,共に時速130キロメートル前後で,A車が第1通行帯を,その直 。こうして,両車両は,60キロメートル毎時の法定最高速度を大きく上回る速度で本件道路を走行しながら,②オートショップN前に差し掛かり,共に時速130キロメートル前後で,A車が第1通行帯を,その直後に同車と連なるようにしてB車が第2通行帯を北進した。さらに,両車両は,③O株式会社前に差し掛かり,B車が時速160キロメートル前後で第2通行帯を先行し,その直後の第1通行帯をA車が時速135ないし140キロメートルで北進した。 - 9 -ちなみに,両車両による上記各走行速度は,防犯カメラの映像等を基に実施された速度鑑定により算出されている。 そして,両車両が,③O株式会社前を通り過ぎた後,本件停止線の約600メートル手前の歩道橋を通過し,本件道路がそれぞれ東西に延びる道道g線及び市道と交差する本件交差点に差し掛かったが,過去に同所を自動車で通行した経験があった被告人両名は,遅くとも本件停止線の約500メートル手前の地点(以下「信号認識可能地点」という。)から対面する本件信号機の信号表示を容易に認識することができた。また,その時点で,同信号機は,本件事故発生の約35秒前に青色表示から黄色表示に切り替わり,2秒間の黄色表示を経て,約32秒前から赤色を表示していた上,その後も赤色表示が21秒間にわたり継続する状況であった。しかるに,両車両は,時速140キロメートルで走行したと仮定しても信号認識可能地点から本件停止線に至るまで13秒前後を要するのに,午後10時34分17秒頃に至り,まずA車が第1通行帯から本件交差点内に進入し,市道から走行してきた被害車両(ダイハツ・ハイゼットワゴン)の右側面に時速111キロメートル前後で衝突するなどして停止し,次いでB車がA車に間を置くことなく第2通行帯から時速100キロメートルを上回る速 ら走行してきた被害車両(ダイハツ・ハイゼットワゴン)の右側面に時速111キロメートル前後で衝突するなどして停止し,次いでB車がA車に間を置くことなく第2通行帯から時速100キロメートルを上回る速度で本件交差点に進入し,被告人Bが上記衝突を目の当たりにするとともに,A車の後部にB車を衝突させたものの,停止することなく通過して,走行を続けた。なお,上記の約32秒間に交差道路から本件交差点に進入する車両はなかった。 一方する間に,被告人AがB車に追い抜かれた際に「B速いな。」と - 10 -同車の速度を意識する発言をし,被告人BもM店前の交差点を過ぎて加速を始めた後に,「これ以上出ない。」などと速度を上げる意欲をうかがわせる発言をしたほか,被告人両名はこれまでに複数回にわたり一般道路で互いに競うように自動車を高速度で走行させたことがあった。 他方,本件事故に関し,原審公判で,被告人Aは,本件停止線の400ないし450メートルほど手前の地点でサンバイザーに掛けていたサングラスが落下し,それを捜すため,まず前方から視線を外して左側の足元を一,二秒左手で探り,次いでシートベルトを外して右側の足元を一,二秒捜していた際に本件事故を起こしたが,サングラスを捜し始める直前に本件信号機を見て青色を表示していると認識したと供述している。 また,被告人Bは,A車の尾灯付近を見た記憶があるが,本件信号機を見たというはっきりした記憶がなく,それが赤色を表示していたという認識がなかったと述べている。 イそして,原判決は,以上のような事実や経過を踏まえ,被告人両名について赤色信号を殊更に無視する意思及び共謀を,被告人Bについて救護義務及び報告義務の違反を,それぞれ肯認するに当たり,次のような判断を示している。 まず,赤 な事実や経過を踏まえ,被告人両名について赤色信号を殊更に無視する意思及び共謀を,被告人Bについて救護義務及び報告義務の違反を,それぞれ肯認するに当たり,次のような判断を示している。 まず,赤色信号を殊更に無視したか否かについて,前記ア認定の事実や経過のうち,被告人両名の本件信号機に対する見通しやM店前から本件交差点に至るまでの両車両の走行等に関する客観的な状況に加え,被告人両名による走行中の言動や本件以前の走行状況等に照らすと,被告人両名が共に本件信号機の赤色表示を認識しながらそれに従わず,又は,信号表示を意に介することなく高速度のまま通過しようと考えて本件 - 11 -交差点に進入したと推認することができる。そして掲記の被告人Aの供述は上記のような客観的状況に反して信用に値せず,被告人Bの供述も,赤色信号の見落としが考え難い上,A車だけを注視していたと仮定しても,そのような運転態度は本件信号機の表示を意に介していなかったことに帰する。 以上から結局,被告人両名が殊更に赤色信号を無視して本件交差点に進入した事実を肯認することができる。 そして,被告人両名が互いの自動車の走行速度を意識して自車を高速度で走行させる意思があったといえることや,同じ目的地を目指して発進した後,M店前から本件交差点に至るまでの客観的な走行状況に照らし,被告人両名は,互いに速度を競うように高速度で各自の車両を走行させる中で,減速や停止の様子を見せることなく本件交差点に接近していく互いの走行状況について共通の認識を備えていたものであり,相手が赤色信号に従わずに高速度で本件交差点を通過する意思であると認識しつつ,自らも同様に競うように本件交差点を通過する意思を有していたといえるから,本件交差点進入時におよそ赤色信号に従わずに高速度で本件 色信号に従わずに高速度で本件交差点を通過する意思であると認識しつつ,自らも同様に競うように本件交差点を通過する意思を有していたといえるから,本件交差点進入時におよそ赤色信号に従わずに高速度で本件交差点を通過する意思を相通じ,共謀して本件危険運転行為に及んだものと認められる。 また,被告人Bの救護及び報告義務違反について,上記のように共謀して本件危険運転行為に及んだ以上,A車が被害車両に衝突して負傷者を生じさせた交通事故が被告人Bの運転に起因することとなり,その事実に対する被告人Bの認識に欠けるところもないから,同被告人について原判示第3の各罪が成立する,というのである。 所論の概要 - 12 -ア被告人Aの所論は次のようなものである。すなわち,まず,①原判決は,サンバイザーから落下したサングラスを捜すために一定時間にわたり視線を下方に落としたと述べる被告人Aの供述について,その時間が6秒間程度であったと捉えた上,その信用性を否定している。しかし,同被告人の供述は,⒜捜索時間に関する原判決の前提が不正確であるほか,⒝同乗者であるEの証言と整合して,内容が不自然といえない上,⒞長い直線道路で複雑な操作を要しない状況であったことが,前方の確認不十分のまま,縁石等に衝突させることなく十数秒間にわたり運転を継続した可能性を裏付けていることに照らし,信用性を肯定できるから,同被告人について赤色信号を殊更に無視する意思を認定することは困難である。また,②原判決は,O株式会社に設置された防犯カメラに記録された映像等を基にその付近を通過する際の両車両の速度を算出したQ作成の鑑定書や,過去に被告人両名が速度を競うように自動車を走行させていたと指摘するC供述等に依拠して,同所を通過した際の両車両の走行速度を認定した上 その付近を通過する際の両車両の速度を算出したQ作成の鑑定書や,過去に被告人両名が速度を競うように自動車を走行させていたと指摘するC供述等に依拠して,同所を通過した際の両車両の走行速度を認定した上,被告人両名が互いに競うように運転したなどと判断し,本件共謀の存在を肯認している。しかし,⒜防犯カメラにおける補正時刻によると,両車両がオートショップNとO株式会社の間の約849メートルを約15秒間で走行し,平均速度が時速203キロメートルに達するという不合理な結果となることに照らし,上記鑑定書がそもそも鑑定の資料に適さない防犯カメラの記録を前提としているため信用性に欠けており,A車がはるかに低速で走行していたという合理的な疑いが残る。また,⒝被告人両名による従前の運転行為に関するC供述について,時期や状況の点で具体性に欠ける上, - 13 -記憶の正確性にも疑問があり,小さな街ですぐに噂が広まり,陰口も多く,共通の友人を失い,Aの家族との関係も壊れかねないという主観的な理由から,具体的な証言を行わないという対応に照らし,信用に値しない。したがって,それらの証拠に依拠した原判決は前提事実を誤認している。そのほか,⒞被告人両名が過去に本件同様の行為に及んだ事実がない上,互いの信号無視を認識し,それを積極的に自己の行為として利用したといえる具体的な事情もないから,本件共謀の存在は認められない。したがって,③被告人Aについて危険運転致死傷罪の共同正犯が成立する余地がないから,原判決は法令の解釈及び適用を誤っている,というのである。 イさらに,被告人Bの所論は次のようなものである。すなわち,まず,①赤色信号を殊更に無視する意思を肯認した原判断について,⒜被告人Bが飲酒後にA車の尾灯付近を注視しながら運転して追従していた状況から, らに,被告人Bの所論は次のようなものである。すなわち,まず,①赤色信号を殊更に無視する意思を肯認した原判断について,⒜被告人Bが飲酒後にA車の尾灯付近を注視しながら運転して追従していた状況から,赤色信号を見落とすことが十分にあり得ることであり,そのことは被告人Aが赤色信号を見落としたとしても並存し得る事情であるから,被告人Bについて赤色信号に関する確定的な認識があったと認定するには合理的な疑いが残る。また,⒝本件で殊更に無視する意思がが極めて少なく進入車両がほとんどないことを知っていた場合のいずれかに限られるところ,本件交差点付近における見通し状況と本件事故の発生した時間帯のほか,周辺建物の利用状況や本件交差点の通行状況に対する被告人Bの認識に照らすと,上記のいずれの場合にも該当しない。さらに,⒞被告人Bにつ - 14 -いて殊更に無視する意思を肯認することは,M店前交差点で,右折車両のために区分された通行帯を利用して停止することなく進行することが可能であったのに,赤色信号に従って停止した運転態度と矛盾する。したがって,原判決の上記認定に誤りがある。次いで,②被告人両名の共謀を認定した原判断について,⒜本件交差点に至る道路の勾配が走行速度に与える影響が大きくなく,そのような道路状況で,被告人Bが時速60キロメートルに減速するためには,意識的にアクセルを緩める必要がある上,A車に追い抜かれた経過があったことや,本件交差点進入時に両車の走行速度が同じであったこと,⒝被告人BがM店前交差点を過ぎて加速を始めた後に「これ以上出せない」などと発言したとするFの証言について,同人が携帯電話機を使用していたことやB車の排気音の大きさなどに照らし,信用できないことを踏まえると,被告人Bについて互いの自動車の速度を競うように高速度で走 などと発言したとするFの証言について,同人が携帯電話機を使用していたことやB車の排気音の大きさなどに照らし,信用できないことを踏まえると,被告人Bについて互いの自動車の速度を競うように高速度で走行する意思は存在しないから,この点に関する原判断に誤りがある。その上,⒞原判決は,被告人両名が互いの走行速度を意識して進行していたと認定しているが,C供述を前提としても,被告人両名が過去に赤色信号を無視して速度を競うような走行をした事実が認められない上,本件に際し,上記のとおりA車がB車を抜き去る状況が生じ,本件交差点進入時に競走する意思が存在したものと認められないから,被告人両名について本件危険運転行為を共同して遂行する意思やその連絡の存在を肯認することはできない。そして,③危険運転致死傷罪の共同正犯が成立しないから,被告人Bは道路交通法72条1項所定の義務を負わない,というのである。 当裁判所の判断 - 15 -しかし,所論を踏まえて検討を加えても,以下のとおり,原判決の上記認定及び判断について,論理則,経験則等に照らして不合理な点はなく,所論のような法令適用の誤りもない。 アすなわち,①各被告人による赤色信号の殊更無視の点について,前記認定のように,本件停止線から500メートル手前の信号認識可能地点で本件信号機の信号表示を容易に認識できる状況にあった上,本件信号機が本件事故の約32秒前から赤色表示であったのに,両車両が相当な距離と時間にわたり時速100キロメートルを上回る高速度で走行した末に,本件交差点に迫っても本件停止線の手前で停止するための速度調節等の措置を一切講じないまま,本件交差点に進入したという走行状況が客観的に明らかである。しかも,被告人両名は,本件交差点に至るまでの3キロメートル以上にわた 本件停止線の手前で停止するための速度調節等の措置を一切講じないまま,本件交差点に進入したという走行状況が客観的に明らかである。しかも,被告人両名は,本件交差点に至るまでの3キロメートル以上にわたり各自の車両を運転して走行する中で,取り分けM店前の交差点で停止した後に急な加速と車線変更を伴う態様により先行車両を追い越して,更に加速を続けた上,A車が第1通行帯を,B車が第2通行帯を,それぞれ走行し,各自の車両を走行中の通行帯から逸脱させることなく,オートショップN前でA車が,O株式会社前でB車が,本件交差点に至る時点で再びA車が先行するという推移をたどりながら,上記のような高速度による並走行為を続け,信号表示の替わり目でない時機に本件交差点に進入したという経過が認められる。そして,以上のような客観的な状況や経過を見る限り,各被告人が,本件信号機による交通規制の存在を失念したり,それによる赤色表示を見落としたりするような格別の事情がうかがえない上,被告人両名の供述でも本件信号機の信号規制に関する認識を備えていたというのである。 - 16 -このような事情に照らすと,原判決が説示するとおり,各被告人が,赤色信号を確定的に認識し,又は,そもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく本件交差点に進入したものとして,殊更に赤色信号を無視する意思の存在が推認されるというべきである。 これに対し,まず,被告人Aの所論①指摘の同被告人の供述は,5ないし6秒間に400ないし500メートルを走行したこととなる点を含め,具体的な内容が明らかに上記認定の客観的な状況と反しており,虚偽といわざるを得ないから,所論は採用できない。 また,被告人Bの所論①について,⒜所論指摘の同被告人の供述は,上記で述べた見通 ,具体的な内容が明らかに上記認定の客観的な状況と反しており,虚偽といわざるを得ないから,所論は採用できない。 また,被告人Bの所論①について,⒜所論指摘の同被告人の供述は,上記で述べた見通しや走行に関する客観的な状況や経過に照らしてそのままに信用し難い上,捜査段階で,本件交差点の手前で対面する信号表示が黄色から赤色に切り替わるのを見たなどという客観的事実に反する供述に及んでいたことなどを踏まえると,信用に値しないといわざるを得ない。 また,⒝及び⒞で指摘する点も,上記の客観的な状況や経過から見て,同被告人について殊更に無視する意思の存在を認定する妨げとならない。したがって,所論は採用できない。 イ次に,②本件共謀に関する原判決の認定及び判断について,既述のとおり,本件交差点に至るまでの被告人両名の客観的な走行状況は,オートショップN及びO株式会社前における走行速度を含め,防犯カメラの映像や速度鑑定の結果を始めとする関係証拠から明らかである。そして,被告人両名は,同じ目的地に向けて走行を開始した後,信号認識可能地点以降も相当な時間と距離にわたり高速度で走行を続けた上,本件交 - 17 -差点が迫っても減速等の停止に向けた格別の措置を講じることなく時速100キロメートルを上回る高速度で進行していたものであり,そうした走行に当たり互いに相手車両の走行状況に関する認識を妨げる格別の事情が見当たらず,むしろ,各被告人が,自車の走行状況に加えて相手車両の走行状況を認識していたばかりか,原判決が説示するように,互いの走行速度を意識し,自動車で競走する意思の下に,本件交差点が迫っても互いに停止する状況にないことを知りながら,上記の高速走行を続けていたものと認められる。これらの事情に照らすと,被告人両名は,本件交差点に至る 識し,自動車で競走する意思の下に,本件交差点が迫っても互いに停止する状況にないことを知りながら,上記の高速走行を続けていたものと認められる。これらの事情に照らすと,被告人両名は,本件交差点に至るに先立ち,殊更に赤色信号を無視する意思で両車両が本件交差点に進入することを相互に認識し合い,そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上,各自がそのままの高速度による走行を継続して本件交差点に進入し,本件危険運転の実行行為に及んだことが,優に肯認できるというべきである。 そして,被告人Aの所論②について,まず,⒜オートショップN及びO株式会社前における上記認定の走行速度は,本件当時の両車両の走行状況を防犯カメラが捉えた映像について,当該走行に係る車線上に1メートル間隔でセイフティ・コーンを40メートルにわたり並べ,それを物差しに見立てた状態にして作成した基準画像をコンピュータ上で重ね合わせた上,防犯カメラ映像で表示されるコマ送り画像の枚数に対応する時間とその間の移動距離を読み取って,走行速度を算出したものであり,その基本的な原理はもとより,記録の正確性等について疑いを入れる余地がなく,交通事故解析に関する専門家証人により是認される手法に基づく算出結果である。しかるに,所 - 18 -論は,それぞれの防犯カメラで表示された時刻の補正結果という上記鑑定による走行速度の算出と直接関わりのない事情を取り上げるものにすぎず,当を得たものといえない。また,⒝所論指摘のCの供述は,被告人両名と同年齢で交友関係にあった立場で,被告人両名が数年間に一般道路で何度も自動車の高速走行による競走行為に及んだ状況を目撃した事実について,走行速度が時速180キロメートルに達することがあったなどという印象的な出来事を交えて述べたものであり,日時等 間に一般道路で何度も自動車の高速走行による競走行為に及んだ状況を目撃した事実について,走行速度が時速180キロメートルに達することがあったなどという印象的な出来事を交えて述べたものであり,日時等が特定されていないとしても,かなりの具体性を備えた内容である上,記憶違いや虚偽供述に及ぶ動機が想定できないことなどに照らし,その信用性を肯定した原判断が不合理とはいえない。さらに,⒞所論の指摘を考慮に入れても,で認定した本件交差点に至る各被告人の走行状況等に照らすと,互いに赤色信号を無視する意思を相通じていたことを十分に肯認できるというべきである。 また,被告人Bの所論②について,まず,⒜同被告人がO株式会社前を通過する際に時速160キロメートル前後で走行し,その後に被告人Aに追い抜かれ,本件交差点に至るまでの間にそれまでより減速した状況であったと認められるが,そもそも本件交差点に迫っても時速100キロメートルを上回る高速度でA車を追走していた以上,互いの自動車の速度を競うように高速度で走行したという認定は妨げられない。また,⒝所論指摘のFの証言について,B車の排気音が異常なものであっても,助手席に同乗する状況で運転する被告人Bの発言が聞き取れないと考えられない上,実際に上記認定のような高速度でA車を追い抜いた経過と整合する内容であることに照らし, - 19 -その信用性を肯認した原判断が不合理とはいえない。さらに,⒞所論の指摘を考慮に入れても,被告人両名の間で赤色信号を無視する意思を相通じていたものと認定できることは,上記アとおりである。 したがって,被告人両名の所論は全て採用できない。 ウそして,③上記イのとおり,被告人両名が本件危険運転行為について共謀を遂げていた事実を優に認定できるから,被告人両 アとおりである。 したがって,被告人両名の所論は全て採用できない。 ウそして,③上記イのとおり,被告人両名が本件危険運転行為について共謀を遂げていた事実を優に認定できるから,被告人両名について本件危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を,被告人Bについて救護義務及び報告義務違反の各罪の成立を,それぞれ肯認した原判断について,法令の解釈及び適用の誤りは認められない。 エ以上に加え,所論の指摘するその他の点を検討しても,原判決に所論のような事実の誤認及び法令適用の誤りはない。 各論旨はいずれも理由がない。 3 両被告人の各量刑不当の論旨について各論旨は,被告人両名が原判示の各罪について有罪であるとしても,それぞれ懲役23年に処した原判決の量刑が重過ぎて不当である,というのである。 そこで,原審記録及び証拠物を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて,検討する。 本件は,前記のとおり,①被告人両名が共謀し,赤色信号を殊更に無視して各自の自動車を高速運転し,交差点に進入した結果,5名を死傷させた危険運転致死傷(原判示第2)に加え,②その際に被告人Aが酒気帯び運転に及んだ(同第1)一方,③被告人Bが,上記のような危険運転致死傷を敢行したのに,被害者の救護等の措置及び警察官に対する事故発生の報告を行 - 20 -わないまま,現場から逃走した(同第3)という事案である。 そして,原判決が説示する量刑事情及びその評価は是認することができる。すなわち,本件は,2台の自動車が高速度のまま相次いで交差点に進入して敢行された赤色信号殊更無視の類型による危険運転致死傷罪を中心とした事案であり,そうした罪質や内容を考慮しただけでも,極めて悪質かつ重大な犯行であることは論を待たない。しかも,被告人両名は,国道上で競う た赤色信号殊更無視の類型による危険運転致死傷罪を中心とした事案であり,そうした罪質や内容を考慮しただけでも,極めて悪質かつ重大な犯行であることは論を待たない。しかも,被告人両名は,国道上で競うように時速100キロメートルを上回る高速度で並走した上,格別の減速等の措置を講じることなく本件交差点に突入して,交差道路から青色信号に従って進行してきた被害車両に衝突するなどした結果,シートベルトを着用して運転席と助手席に乗車していた44歳の夫婦を即死させたほか,同乗していた17歳の長女及び16歳の長男を収容先の病院や被告人Bの運転車両に轢跨されるなどして死亡させ,12歳の二女にも重篤な後遺障害が見込まれる重傷を負わせている。このように,本件危険運転致死傷の犯行は,交通法規を無視するだけでなく,深夜とはいえ幹線国道で自動車競走の優劣を競う行為に及んで,2台の自動車で赤色信号を殊更に無視して走行するというまれに見る危険極まりない態様で敢行された結果,実際に重大かつ悲惨な結果を引き起こしたことに照らし,その犯情の悪質さが他に類を見ないほど際立っている。一方,4名の死亡被害者の受けた苦痛や無念さはもとより,一命を取り止めた二女の被った心身両面にわたる衝撃や苦痛が察するに余りあり,遺族の処罰感情が峻烈であることは当然の心情というべきである。 そして,被告人Aは,血液1ミリリットル当たり0.4ミリグラムという相当量のアルコールを身体に保有する状態で運転 - 21 -行為を敢行しながら,上記のような危険かつ悪質な高速走行に及んだ末に自車を被害車両に衝突させたことにより,本件の悲惨な結果の大半を引き起したものであり,そのような無謀な運転行為に及んだ経緯や動機も身勝手なものというほかなく,厳しい非難を免れない。しかも,同被告人は赤色信号を殊更 衝突させたことにより,本件の悲惨な結果の大半を引き起したものであり,そのような無謀な運転行為に及んだ経緯や動機も身勝手なものというほかなく,厳しい非難を免れない。しかも,同被告人は赤色信号を殊更に無視する意思や被告人Bとの間の共謀の存在を否認し,本件事故に至る経緯等に関し不合理な弁解に固執しており,真摯な反省の姿勢がうかがえない。なお,同被告人の所論は,平成25年以降に危険運転致死罪で処断された事案の中で,同被告人が被害者の人数を覚知するような事情もなかったのに,原判決が被害結果だけを過大に評価し突出した量刑判断を行っている,という。しかし,原判決が説示するように,本件危険運転致死傷の犯行は他に類を見ないほどに危険極まりない態様で敢行された上,そうした危険性が現実化して甚大な被害を生じさせた信号無視型の事犯であり,死傷者の人数等の被害の大きさが犯情の評価に当たり重視されることが当然である上,併合罪の関係に立つ酒気帯び運転の犯行にも及んでいたことに照らすと,刑の公平性の観点から従前の量刑傾向を参考にするとしても,本件が処断刑の上限で処罰するにふさわしいと評価した原判断が不合理とはいえない。したがって,所論は採用できない。 一方,被告人Bは,被告人Aと同様に上記のような走行に及んだ末にほぼ同時に本件交差点に進入した上,車外に放出された長男を轢跨したまま,約1.4キロメートルにわたり引きずるなどして死亡させたものであり,動機や経緯の点でも,被告人Aと同様に高速走行を敢行する必要性は皆無であり,厳しい非難に値する。しかも,被告人Bは,飲酒運転の発覚を恐れ, - 22 -被害者の安否を確認することなく事故現場に放置して,逃走を図ったものであり,本件事故から10時間以上が経過した後に警察署に出頭したものの,その間に自車の関わり 酒運転の発覚を恐れ, - 22 -被害者の安否を確認することなく事故現場に放置して,逃走を図ったものであり,本件事故から10時間以上が経過した後に警察署に出頭したものの,その間に自車の関わりを隠蔽する行動に出たことも考慮すると,救護及び報告義務の違反に係る犯情を軽視することは許されない。さらに,同被告人も,被告人Aと同様に,赤色信号を殊更に無視した点や同被告人との間の共謀の存在を否認し,本件事故に至る状況について曖昧な供述に終始しており,真摯な反省の姿勢がうかがえない。なお,同被告人の所論は,被害車両の乗車人数が定員を超え,長女と長男が荷台部分に乗車し,二女がシートベルトを着用していなかったから,そのような被害者側の過失を考慮しなかった原判決が不当である,という。しかし,前記のような本件危険運転行為の危険性や事故態様等に照らし,所論指摘の事情が被告人Bの量刑判断に格別の影響を及ぼすものとはいえない。したがって,所論は当を得たものといえず,採用できない。 以上のような本件の罪質や犯情等に照らすと,各被告人の刑事責任に有意な差異はなく,共に甚だ重大といわざるを得ない。 そうすると,被告人両名が謝罪の言葉を述べていることや,A車について対人賠償額に制限のない自動車保険が付されていることなど,原判決や所論の指摘する酌むべき事情に加え,原判決後に,各被告人が改めて謝罪の態度を示し,被告人Aが今後の損害賠償に努める意向を表明したことを考慮しても,上記のような罪質や犯情等に照らし,検察官による求刑と同様に,被告人両名を懲役23年に処した原判決の量刑が,重過ぎて不当であるとはいえない。各論旨はいずれも理由がない。 よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却し,被告人 - 23 -両名に対し,当審における未決勾留日数の算入 原判決の量刑が,重過ぎて不当であるとはいえない。各論旨はいずれも理由がない。よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却し,被告人両名に対し,当審における未決勾留日数の算入について刑法21条を,当審における訴訟費用を負担させないことについて刑訴法181条1項ただし書を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 主文 平成29年4月14日札幌高等裁判所刑事部 裁判長裁判官髙橋徹 裁判官瀧岡俊文 裁判官深野英一
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