【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役十月に処する。 但し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人を保護観察に付する。 原審並
主文原判決を破棄する。 被告人を懲役十月に処する。 但し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人を保護観察に付する。 原審並びに原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由当審検察官宮井親造が述べた控訴趣意は、記録に編綴されている原審検察官原田重隆提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用し、右控訴趣意に対し次の様に判断する。 記録について調査するのに、原裁判所が昭和二十九年六月四日本件につき言渡した判決において、被告人の第一、昭和二十八年十一月二日頃第二、同月二十日頃第三、同年十二月五日頃の三回に亘る本件各窃盗の犯罪事実を認定し、夫々相当法条を適用した上刑法第四十五条第四十七条第十条に則り最も犯情の重い第三の罪の刑に法定の加重を為し、右刑期範囲内で被告人を懲役十月に処し、尚右各罪は先に昭和二十九年二月四日同裁判所が被告人を懲役一年に処し但し三年間その刑の執行を猶予する旨の判決を言い渡し同月十九日該判決の確定を見るに至つたところの同人の昭和二十八年十一月七日及び同年十二月四日の二回に亘る各窃盗の罪と刑法第四十五条後段の併合罪の関係にあるが、本件は右確定判決を経た罪と併合審理されてたならば一括して執行猶予の言渡を受け得べき場合に該るとの理由により、同法第二十五条第一項第一号を適用して裁判確定の日から三年間前記懲役十月の刑の執行を猶予することとし、同法第二十五条ノ二による保護観察に付していないことは、所論指摘の通りである。 そこで、右の如く併合罪の関係にある数罪の内或る罪につき体刑の執行猶予を言い渡した判決が確定した後においてそのいわゆる余罪につき重ねて体刑の執行を猶予する場合、原判決の様に昭和二十八年六月十日最高裁判所大 、右の如く併合罪の関係にある数罪の内或る罪につき体刑の執行猶予を言い渡した判決が確定した後においてそのいわゆる余罪につき重ねて体刑の執行を猶予する場合、原判決の様に昭和二十八年六月十日最高裁判所大法廷が同庁昭和二十五年(あ)第一五九六号賍物故買被告事件につき言い渡した判決で示した解釈に拠り刑法第二十五条第一項(第一号)を適用すべきか、それとも控訴趣意主張の様に同条第二項を適用すべきかと、と言う点が問題になつて来るわけである。 言う迄もなく、いわゆる判例法主義の制度の下においては、判例法こそ第一次的法源しての権威を有し、成文法は第二次法源としての拘束力を有するに過ぎず従つてその意義も判例法に対し謂わば部分的補充的或は例外的なものとしてなるべく狭義に解釈されるべきものであるとされているのに対し、いわゆる成文法主義を採る我が法制の下においては逆に成文法こそ第一次的法源としての権威を有するものであつて、最高裁判所の判例と雖もその憲法解釈に関するものを除き爾後に制定される成文法に対し謙虚にその歩を譲るべきものと解するのが相当である。而して、前記刑法第二十五条第二項の規定は昭和二十八年八月十日法律第百九十五号による刑法等の一部改正の際新たに附け加えられたものであり、右改正(法案提出同年六月二十三日成立同年八月六日)が前記最高裁判所大法廷(以下単に大法廷と略称する)の判決言渡から相当な期間を経過した後に為されていること等に鑑みるとき、右規定の合理的な解釈を為すに際つては、実際における立法者の意図如何に拘らず、右改正は右大法廷判例の存在をも当然考慮に容れた上で為されたものと言う前提の下に、之に臨むの<要旨>が正しい態度と言わねばならない。以上の様な立場から右刑法第二十五条第二項の意義を考察するのに、その</要旨>本文は単に「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラ で為されたものと言う前提の下に、之に臨むの<要旨>が正しい態度と言わねばならない。以上の様な立場から右刑法第二十五条第二項の意義を考察するのに、その</要旨>本文は単に「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレクルコトアルモ其執行ヲ猶予セラレクル者一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ク情状特ニ憫諒ス可キモノァルトキ亦前項ニ同ジ」と規定し、その文言上特に執行猶予期間中更に罪を犯して処罰される場合のみに限定する趣旨は毫も窺い知ることができないから、該規定は、右大法廷判例を考慮に容れつゝ而も新たな見地から執行猶予に関する従前の刑法第二十五条所定の条件を緩和して之を附し得べき場合を拡張し、汎く右の如く執行猶予期間中の犯罪を処罰する場合並びに本件の如く前に執行猶予の確定判決を経ている罪と併合罪の関係にある余罪を別に処罰する場合(更に之を細分すれば(1)右大法廷判例に掲げられている様な事情を具備する場合と(2)その様な事情を具備しない場合とを考えることができよう)等一切を包括し、前に体刑の執行猶予の言渡を受けている者であつても苟くも右「一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受け情状特ニ憫諒ス可キモノ」と言う条件を具備し且その但書に該当しない限り、斉しく再度の執行猶予を言い渡し得るものとした趣旨と解するのが正当である。尚、このことは、同時に改正された同法第二十六条第一号及び第二号が「猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ……」(即ち猶予期間中の犯罪に関する場合)及び「猶予ノ言渡前ニ犯シクル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ……」(即ち猶予の言渡を受けた罪と併合罪の関係にある余罪に関する場合)と両者を書き別け、或は同法第二十六条ノ二第一号が「猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ罰金ニ処セラレタルトキ」と猶予期間中の犯罪に関する場合であることを明記していること等と照らし合せても、 る余罪に関する場合)と両者を書き別け、或は同法第二十六条ノ二第一号が「猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ罰金ニ処セラレタルトキ」と猶予期間中の犯罪に関する場合であることを明記していること等と照らし合せても、これを裏付けすることができるし、又右刑法第二十五条第二項の新設規定の位置その他を考慮しても何等上叙の解釈に変更を加えるべき事由を見出すことができない。 更に進んで、前記大法廷判例と、上叙解釈にかゝる刑法第二十五条第二項の規定との両者の関係を考察し、且右両者が犯人に及ぼす実質的な利害の面を比較検討して見よう。右昭和二十八年六月十日の大法廷判決は、その判決理由に明らかな通り、前記改正前の刑法第二十五条第一号に関し、併合罪である数罪が前後して起訴され別々に裁判されるために、前の判決では刑の執行猶予が言い渡されていて而して後の裁判においても同じく犯人に刑の執行を猶予すべき情状があるにもかかわらず、後の判決では法律上絶対に刑の執行猶予を付することができないものとすれば、この二つの罪が同瞬に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろう場合に比し著しく均衡を失し、結局執行猶予の制度の本旨に副わないことになると言う不合理な結果を生ずる特別な事情が存在する場合に限つての解釈を示したものであつて、右改正前の規定の解釈としてもその文理上聊か無理な点があり且右規定に該当するか否かを情状(而も当該事件以外の事件の情状を併せ考えたもの)と言う様な不明確な基準により決すると言う弱点があつたにも拘らず、未だ立法上の調整が行き届いていなかつた当時においては前記特別事情の存在する場合に限りその実質的な妥当性を是認されて然るべきものであつたと考えられる。然るところ、右刑法第二十五条第二項の新設により、右大法廷判決において憂慮されたところの、併合罪である数罪が前後別 存在する場合に限りその実質的な妥当性を是認されて然るべきものであつたと考えられる。然るところ、右刑法第二十五条第二項の新設により、右大法廷判決において憂慮されたところの、併合罪である数罪が前後別々に起訴審判されるため後の裁判にかかる罪につき法律上絶対に執行猶予を附することができないと言う様な事態は、殆んど除去されるに至つたものと視ることができ、又右後の裁判にかかる罪につき一年を超える体刑を科すべき場合(即ち右第二十五条第二項所定の条件から食み出る場合)には、右大法廷判決の言う前の罪と同時に併合審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろう様な情状をも具備しないことが多いものと考えられるから、結局右の新設規定は右判例の趣旨の大部分を踏襲して之を明文化したものと言うことができると共に、該規定の反面解釈上、前に執行猶予を言い渡された犯罪のいわゆる余罪につき一年を超ゆる体刑に処すべき場合に関する限り右判例の趣旨(尤も右判例はいわゆる余罪につき懲役六月及び罰金千円に処した事案に対し示されたものであつて、その拘束力が如何なる範囲まで及ぶかについては論議の余地があろう)は明文を以つて否定されるに至つたものと言うことができよう。 而して、右大法廷の判例に拠るときは、いわゆる余罪につき一年を超える体刑に処する場合でも情状により重ねて執行猶予を言い渡すことができ又余罪一般を通じ保護観察に付する必要はないのに対し、右新規定によれば、余罪につき一年を超える体刑に処する場合には重ねて執行猶予を言い渡すことができず又余罪一般を通じ必らず保護観察に付さねばならぬと言う不利益な面が存するけれども(尤も保護観察の点については、昭和二十九年四月一日法律第五十七号による改正により刑法第二十五条第一項による執行猶予の場合にも裁量的に之に付し得ることになつたの らぬと言う不利益な面が存するけれども(尤も保護観察の点については、昭和二十九年四月一日法律第五十七号による改正により刑法第二十五条第一項による執行猶予の場合にも裁量的に之に付し得ることになつたので、この点に関する不利益が存在しないことも起り得る様になつた)、他方右大法廷の判例に拠るときは、余罪につき執行猶予を付し得るか否かは当該余罪の情状のみでなく前の罪の情状を併せ考慮した上で決すべきものであるのに対し、右新規定によれば、かゝる前の罪の情状を一応考慮の外に置きその如何にかゝわりなく当該余罪の情状のみを目安として独自の見地から執行猶予を付することができ、又右判例が提示している様に「前の罪とその余罪とが同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろう」と言う条件を必要とするならば、例えば前の罪につき三年の体刑に処せられその執行を猶予されている者はたとえ余罪が六月或は十月位の体刑に値する程度の軽微な犯情であつても一応右条件を欠き従つて重ねて執行猶予を付し得ないものと考えられるのに対し、新規定によれば、斯様に前の罪の刑期と後の罪の刑期とを合算したものが三年を超える場合でも後の罪即ち余罪の刑期が一年以下でありその情状特に憫諒すべきものがあるときは重ねて執行猶予を付することができ、却つて新規定による方が犯人にとつて有利な点も存するわけである。其の他右大法廷の判例と刑法第二十五条第二項の規定とが夫々犯人に及ぼす利害得失については色々の面から考察することができようが、結局、何れを有利何れを不利とは一概に断じ難く、その利害得失を綜合考慮するとき両者の間に著しい径庭は存しないものと言わねばならない。従つて、既に右第二十五条第二項の規定が新設された今日、かゝる利害得失の考慮から延いて情理を援引し前述の如く文理上その他の面において多少の欠陥 両者の間に著しい径庭は存しないものと言わねばならない。従つて、既に右第二十五条第二項の規定が新設された今日、かゝる利害得失の考慮から延いて情理を援引し前述の如く文理上その他の面において多少の欠陥さえ包蔵していた右大法廷の判例を強いて右新設規定の外に存置し之を固持せねばならぬほどの実益は存在しないわけである。 以上の様な次第であるから、本件につき執行猶予を言い渡すべきものとすれば、刑法第二十五条第一項(第一号)によらず同条第二項によるべきであり、従つて同法第第二十五条ノ二により当然保護観察に付すべきであつたのに拘らず、前説示の如く原判決が刑法第二十五条第一項第一号により刑の執行を猶予し而して右保護観察に付することを遺脱したのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤があるものと言うべく、論旨は理由がある。 そこで、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に則り原判決を破棄し、尚同法第四百条但書に従い当裁判所自ら更に判決することにする。 当裁判所は、原判決挙示の各証拠により原判示と同一の犯罪事実及び前科の事実を認定する。 法律に照らすと、被告人の本件各窃盗の所為は何れも刑法第二百三十五条に該当し且その間同法第四十五条前段の併合罪の関係があるところ、以上は更に原判示確定判決(昭和二十九年二月四日言渡同月十九日確定)を経た罪と同条後段の併合罪の関係にあるので、同法第五十条に従い未だ確定判決を経ない本件の罪につき更に処断すべく、同法第四十七条第十条に則り最も犯情の重い原判示第三の窃盗の罪の刑に法定の加重を為した刑期範囲内で被告人を本件につき懲役十月に処し、但し諸般の情状特に憫諒すべきものがあるので同法第二十五条第二項(昭和二十九年法律第五十七号を以て改正前のもの以下同じ)第一項を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予すべく、尚 月に処し、但し諸般の情状特に憫諒すべきものがあるので同法第二十五条第二項(昭和二十九年法律第五十七号を以て改正前のもの以下同じ)第一項を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予すべく、尚同法第二十五条ノ二により同期間中被告人を保護観察に付し、原審並びに当審における訴訟費用(何れも国選弁護人に支給の分)は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い全部被告人に負担させることにする。 よつて主文の様に判決する。 (裁判長判事藤井亮判事吉田信孝判事中村荘十郎)
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