平成22(わ)5587 犯人隠避被告事件

裁判年月日・裁判所
平成24年3月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文102,062 文字)

主文 被告人両名をそれぞれ懲役1年6月に処する。 被告人両名に対し,この裁判確定の日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用は,被告人両名の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実) 1 被告人両名の間で犯人隠避罪の共謀が成立した経緯(1) 被告人Aは,平成20年10月1日から平成22年4月4日までの間,大阪地方検察庁(以下「大阪地検」という。)検事として,自ら捜査を行うべき職務に従事するとともに,同庁特別捜査部(以下「特捜部」という。)部長(以下「特捜部長」という。)として,同部所属の検察官らを指揮して捜査を行う職務に従事していたもの,被告人Bは,平成21年4月1日から平成22年3月31日までの間,同庁検事として,自ら捜査を行うべき職務に従事するとともに,特捜部副部長として,特捜部長の命を受けて同部所属の検察官らを指揮して捜査を行う職務に従事していたものであるが,被告人Bは,平成22年1月30日午後11時過ぎ頃,大阪市(以下略)所在の大阪中之島合同庁舎(以下「合同庁舎」という。)16階にある特捜部副部長室(以下「副部長室」という。)の隣にある予備調室(以下「副部長隣室」という。)で,東京拘置所内の取調室にいた同部所属検事Cから,電話で,大阪地方裁判所(以下「大阪地裁」という。)に係属中であるK及びMらに対する各虚偽有印公文書作成等被告事件の証拠であるフロッピーディスク(以下「本件フロッピーディスク」という。)に記録された文書データ(以下「本件データ」という。)を変造した(以下,Cによる上記証拠変造行為を「本件改ざん」という。)との告白を受け,Cが罰金以上の刑に当たる証拠隠滅の罪を犯した者であることを知るに至り,同年2月1日午前9時40分過ぎ頃,合同庁 を変造した(以下,Cによる上記証拠変造行為を「本件改ざん」という。)との告白を受け,Cが罰金以上の刑に当たる証拠隠滅の罪を犯した者であることを知るに至り,同年2月1日午前9時40分過ぎ頃,合同庁舎16階にある特捜部長室(以下「部長室」という。)で,被告人Aにその旨報告し,ここにおいて,被告人Aも,Cが罰金以上の刑に当たる証拠隠滅の罪を犯した者であることを知るに至った。 (2) 被告人Aは,同日午後1時半頃から同日午後3時頃までの間に,被告人Bと話し合った結果を踏まえて,同日午後4時頃,副部長室を訪れ,被告人Bに対し,本件改ざんについて過誤で説明が付けられないかCに尋ねるようにとの指示をし,これを受けて,被告人Bは,同日午後4時20分頃,副部長室で,東京拘置所内の取調室にいたCと電話で話をし,Cから,本件フロッピーディスクを還付していること,本件改ざん前の文書データの内容を記載した特捜部D検事の立会事務官作成の平成21年6月29日付け捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)が存在するので,本件改ざんについて過誤で説明が付けられる旨聴取したことから,平成22年2月2日午前9時20分頃,部長室で,被告人Aにその旨伝え,ここにおいて,被告人Aは,Cによる本件改ざんを,本件データの改変があった可能性があるが,そうだとしても,それは故意によるものではなかったと事実をすり替えるなどし,もって証拠隠滅罪の犯人であるCを隠避させようと決意し,その旨被告人Bに告げ,被告人Bも直ちにこれに同調し,もって,被告人両名は,犯人隠避の共謀を遂げた。 2 被告人両名による犯人隠避の実行行為の内容被告人両名は,前記1記載の経緯で共謀を遂げた上(1) 平成22年2月2日午後零時頃,副部長室で,被告人Aの指示を受けた被告人Bにおいて,東京拘置所内の 両名による犯人隠避の実行行為の内容被告人両名は,前記1記載の経緯で共謀を遂げた上(1) 平成22年2月2日午後零時頃,副部長室で,被告人Aの指示を受けた被告人Bにおいて,東京拘置所内の取調室にいたCに対し,電話で,本件改ざんは過誤によるものとして説明することになったから,どのような説明が付けられるのか,もう一度説明するよう指示してその内容を聞き取るとともに,同月8日午前中,副部長室で,被告人Aの指示を受けた被告人Bにおいて,Cに対し,何か聞かれたときに本件データの改変が過誤だと説明できるような書面を作成しておくよう指示し,同月10日,副部長室及び部長室で,被告人Bの前記指示に基づきCが作成し,被告人B及び被告人Aに順次提出した「本件フロッピーディスクのデータ検証作業中,本件データが過誤によって改変された可能性はあるが,本件フロッピーディスクが還付されていて改変の有無は確定できない」旨の上申書案(以下「本件上申書」という。)につき,被告人Bにおいて,その内容を了承してその写しを受領し,被告人Aにおいて,Cに対し,その内容を基本的に了承するとともに,疑問点を指摘の上,より合理的な説明内容とするよう指示して,これを受領せずにCに差し戻すなどし,本件データが過誤によって改変された可能性はあるが,改変の有無を確定できず,改変されていたとしても過誤にすぎない旨事実をすり替えて,自ら又は同部所属の検察官らを指揮して捜査を行わず,(2) 同月2日午後5時頃,合同庁舎21階にある大阪地検次席検事室(以下「次席室」という。)で,被告人両名において,当時の同庁次席検事(以下「次席」という。)に対し,「Cが本件フロッピーディスクのデータに工作が加えられていないか検証している際,データが過誤により書き換わった可能性があるが,本件フロッピーデ て,当時の同庁次席検事(以下「次席」という。)に対し,「Cが本件フロッピーディスクのデータに工作が加えられていないか検証している際,データが過誤により書き換わった可能性があるが,本件フロッピーディスクは還付されているため,確認できない,E検事がそれを伝え聞いて,改ざんだと騒ぎ立てているが,その様子は告訴狂と同じだ。」などと虚偽の報告をし,同月3日午前11時頃,合同庁舎21階にある大阪地検検事正室(以下「検事正室」という。)で,当時の同庁検事正に対し,その詳しさの程度は別として,おおむね,次席に対する報告と同様に虚偽の報告をし,よって,次席及び検事正をして,捜査は不要と誤信させて自ら又は同庁所属の検察官らを指揮して捜査を行わないようにさせ,もって罰金以上の刑に当たる証拠隠滅罪の犯人であるCを隠避させたものである。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断)第1 前提事実前掲証拠及び関係各証拠により認められ,かつ,検察官,被告人Bの弁護人ら(以下「被告人B弁護人」という。),被告人Aの弁護人ら(以下「被告人A弁護人」といい,被告人B弁護人と併せて「弁護人ら」という。)の間でもおおむね争いがない事実は,以下のとおりである。 1 被告人両名について被告人Aは,昭和59年4月に検事任官後,別紙「被告人A略歴表」(別紙は省略)記載のとおりの経歴を経て,平成20年10月に特捜部長に着任し,平成22年4月に京都地方検察庁(以下,地方検察庁を「地検」といい,高等検察庁を「高検」といい,最高検察庁を「最高検」という。)次席検事に異動するまでの間,特捜部長として,同部所属の検察官らを指揮して捜査を行う職務に従事し,被告人Bは,平成元年4月に検事任官後,別紙「被告人B略歴表」(別紙は省略)記載のとおりの経歴を経て,平成21年4月 するまでの間,特捜部長として,同部所属の検察官らを指揮して捜査を行う職務に従事し,被告人Bは,平成元年4月に検事任官後,別紙「被告人B略歴表」(別紙は省略)記載のとおりの経歴を経て,平成21年4月に特捜部副部長に着任し,平成22年4月に神戸地検特別刑事部長に異動するまでの間,特捜部副部長として,特捜部長の命を受けて同部所属の検察官らを指揮して捜査を行う職務に従事していた。 2 厚労省事件の捜査・起訴の概要(1) 厚労省事件の着手等ア被告人Aは,平成21年4月当時,P会という団体が郵便法による優遇措置を悪用していたとされる郵便法違反事件の捜査の過程で押収された,同団体が前記優遇措置の対象となる心身障害者団体であることを証明する旨の当時の厚生労働省(以下「厚労省」という。)社会・援護局障害保健福祉部企画課長名義で発行された公的文書(以下「公的証明書」という。)が偽造ではないかとの疑いを持ち,その作成経緯の捜査を特捜部の配下検事に命じたところ,P会会長を取り調べた特捜部所属の副検事から,公的証明書は,後にMと判明する当時の担当の女性課長自らによって手渡されたものである旨の供述が得られたとの報告を受けた。 イそこで,被告人Aは,特捜部内でその能力を高く評価していたCを主任検事に指名して,特捜部として,平成21年5月11日頃,公的証明書に関し,前記Mや同文書発行当時の担当係長であったKほか担当職員らによる有印公文書偽造ないしは虚偽有印公文書作成・同行使事件(以下,公的証明書の偽造ないし虚偽作成等に係る厚労省関係者らに関する事件をまとめて「厚労省事件」という。)の捜査に着手するとともに,その頃,さいたま地検から大阪地検刑事部に異動してきたD検事を応援のため同事件の捜査に当たらせることにした。 ウ Mは,厚労省事 をまとめて「厚労省事件」という。)の捜査に着手するとともに,その頃,さいたま地検から大阪地検刑事部に異動してきたD検事を応援のため同事件の捜査に当たらせることにした。 ウ Mは,厚労省事件の捜査当時,厚労省雇用均等・児童家庭局長の地位にあり,もし同人を逮捕・起訴するということになれば,大阪地検の特捜部としては過去にほとんど例のない,大がかりな事件となり,そのため,厚労省事件の捜査については,大阪地検の当時の検事正あるいは次席(以下検事正及び次席を併せて「上層部」ということがある。)はもとより,大阪高検も多大な関心を抱いていた。 エなお,被告人Bは,その着任時期から,厚労省事件の全体像を十分に把握しておらず,被告人Aとの協議により,厚労省事件については,被告人Aが直接担当主任検事を指揮するなどして,指導・決裁に当たることとなった。 (2) 厚労省事件の強制捜査着手及び本件フロッピーディスクの押収Cの指揮の下,特捜部は,平成21年5月26日,Kを逮捕するとともに,同人方から本件フロッピーディスクを差し押さえた。 (3) プロパティ問題の発生ア Dは,厚労省事件捜査の一環として,K方で押収した本件フロッピーディスクに対し,いわゆる「ブツ読み」と称される,内容検索を実施したところ,同フロッピーディスク内にはいくつかの文書ファイルの電子データが保存されており,その中に「通知案」(以下「通知案」という。)及び「コピー~通知案」(以下「コピー通知案」といい,通知案と併せて「本件各文書」という。)と題する文書ファイル2個が存在した。本件各文書の内容及びプロパティ情報(以下「改ざん前データ」という。)の要旨は,以下のとおりである。 (ア) 通知案a 文書内容1ペ ファイル2個が存在した。本件各文書の内容及びプロパティ情報(以下「改ざん前データ」という。)の要旨は,以下のとおりである。 (ア) 通知案a 文書内容1ページ目に公的証明書の文書番号・発行日付が空欄の文書,2ページ目に平成16年5月中旬にKがP会にファックス送信した文書と同内容とされる文書(以下「ファックス文書」という。),3ページ目に事件とは無関係の通知文書の各データがある。 b プロパティ情報作成日時は,「2004年5月18日,12:43:23」,最終更新日時は「2004年11月30日,18:41:20」である。 (イ) コピー通知案a 文書内容1ページ目に公的証明書の完成後原本と同内容の文書,2ページ目にファックス文書の各データがある。 b プロパティ情報作成日時は,「2004年6月1日,1:14:32」,最終更新日時は,「2004年6月1日,1:20:06」である。 イ Dは,改ざん前データの最終更新日時によれば,Kは,本件公的証明書と同一内容の文書ファイルを遅くとも平成16年(2004年)6月1日未明までには完成させていたことになり,これは,MのKに対する公的証明書の作成指示,すなわち公的証明書の虚偽作成に関する共謀が同月8日から同月10日頃までの間にあるとする関係者の供述内容と食い違うこと(以下「プロパティ問題」という。)を認識し,以上の読み取り結果を直ちに主任であるCに報告し,Cも,その旨認識したが,C及びDのいずれにおいても,プロパティ問題を被告人両名に報告することはなかった。 ウ Dは,Kを取り調べた結果,平成21年5月31日になって,同人から,Mの指示により平成16年6月上旬以後,虚偽の のいずれにおいても,プロパティ問題を被告人両名に報告することはなかった。 ウ Dは,Kを取り調べた結果,平成21年5月31日になって,同人から,Mの指示により平成16年6月上旬以後,虚偽の内容の公的証明書を作成したものである旨,従前の関係者らの供述に沿った供述が得られたが,Kの起訴に至るまで,同人からプロパティ問題の解消につながるような供述を得ることはできなかった。 エ Dは,Dの立会事務官に対し,プロパティ問題についてKを取り調べる際に示すための資料の作成を指示し,同事務官は,同月29日付けで本件捜査報告書を作成した結果,本件各文書の改ざん前データの内容が証拠化され,後日,Mらに対する公判請求の後,他の一件記録と共に,大阪地検公判部(以下「公判部」という。)に引き継がれた。 (4) Mらの起訴Cは,プロパティ問題は解明されなかったものの,KやP会会長らの供述から,Mが全面否認する虚偽公文書作成罪の立証は可能であると考え,被告人Aはもとより,大阪高検及び最高検の決裁も得た上で,平成21年7月4日,M及びKを公的証明書に係る虚偽有印公文書作成・同行使の事実で大阪地裁に起訴した(以下,Mに係る厚労省事件を「M事件」といい,その公判手続を「M公判」という。)。 3 Cによる本件改ざんとDへの告白(1) Cによる本件改ざんCは,Mらを起訴した後の平成21年7月13日午後,合同庁舎17階の自己の執務室(以下「C室」という。なお,以下において,当時の大阪地検所属検事らの執務室については,同様に略称する。)で,私物のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)を使用して,本件フロッピーディスク内に保存されていた文書ファイルのうち,「通知案」と「コピー通知案」を開き,それらの内容について以下のとお 私物のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)を使用して,本件フロッピーディスク内に保存されていた文書ファイルのうち,「通知案」と「コピー通知案」を開き,それらの内容について以下のとおり手を加えるとともに,各文書ファイルのプロパティ情報をファイルバイザー4というソフトを用いて,以下のように変更し,もって,本件改ざんをしたが,その際,本件捜査報告書の存在を失念していた。Cは,その後,改ざん前及び後の各電子データを別途保存して手元に保管していた。 ア通知案(ア) 文書内容1ページ目(公的証明書の文書番号・発行日付が空欄のもの)と2ページ目(ファックス文書)とを入れ替えた。 (イ) プロパティ情報最終更新日時が「2004年11月30日,18:41:20」とあったのが,(ア)のページ入れ替え作業に伴い「2009年7月13日,17:33:58」と自動的に更新されたのを,更に変更して,元の「2004年11月30日,18:41:20」に戻した。 イコピー通知案(ア) 文書内容1ページ目(公的証明書の原本と同内容のもの)と2ページ目(ファックス文書)とを入れ替えた。 (イ) プロパティ情報最終更新日時が「2004年6月1日,1:20:06」とあったのを,最終的に「2004年6月8日,21:10:56」とした。 ウバックアップファイルの削除本件フロッピーディスク中,各文書ファイルごとに自動作成されていたバックアップファイルを全て削除した。 (2) 本件フロッピーディスクの還付Dは,本件フロッピーディスクを押収した後,特捜部における証拠品の通常の扱いに従い,証拠品検討表(通称ブツ読み表)と呼ばれる帳簿に,本件フロッピーディスクについても記入するに当 ピーディスクの還付Dは,本件フロッピーディスクを押収した後,特捜部における証拠品の通常の扱いに従い,証拠品検討表(通称ブツ読み表)と呼ばれる帳簿に,本件フロッピーディスクについても記入するに当たり,その重要度についてABC3段階評価の最上位である「A」と,還付の可否について「不可」と,それぞれ記載していたところ,Cは,証拠品検討表上の本件フロッピーディスク還付の可否に関し,「不可」を抹消して,「可・CP」と記載した上で,本件フロッピーディスクをKに還付するため,平成21年7月16日,Kの親族に宛てて送付し,同月21日これが受領された。 (3) CからDへの本件改ざんの告白Cは,本件フロッピーディスク還付後の平成21年7月中旬頃,C室を訪れたDに対し,本件フロッピーディスクの本件データを改ざんした旨告げた。 4 M事件公判前整理手続の状況(1) 本件捜査報告書の開示Mらの起訴に伴い,本件捜査報告書を含む厚労省事件の一件記録が特捜部から公判部に引き継がれ,その公判は公判部のF検事が主任として担当することになったが,Fは,M事件が公判前整理手続に付され,M事件の弁護人から類型証拠開示請求がなされたことから,本件捜査報告書を含む対象証拠を,M事件の弁護人に開示した。 (2) M事件の弁護人の予定主張M事件の弁護人は,平成21年11月30日付け予定主張記載書面及び証拠調べ請求書を提出し,Kが公的証明書を作成した日時は,「平成16年6月1日未明(午前1時20分06秒)以前である」と記載して,プロパティ問題の存在を指摘するとともに,それを立証する証拠として本件捜査報告書を挙げた。これにより,M事件の弁護人が,M公判で,プロパティ問題を取り上げることが明らかとなった。 5 Cの東京出張 ィ問題の存在を指摘するとともに,それを立証する証拠として本件捜査報告書を挙げた。これにより,M事件の弁護人が,M公判で,プロパティ問題を取り上げることが明らかとなった。 5 Cの東京出張東京地検特捜部は,Q事件捜査のため,高検経由で特捜部に対し,C及び特捜部所属のG検事の応援派遣要請をし,特捜部は,これに応じて,平成22年1月20日付けでC及びGを東京地検特捜部に派遣し,Cは,以後同年2月4日までの間,東京拘置所で勾留中のQ事件関係者の取調べに従事した。この東京地検応援派遣のため,Gは,当時自ら主任として捜査を進めていた事件(以下「G主任事件」という。)の捜査を不本意にも中断することとなった。 6 プロパティ問題の顕在化と特捜部の対応(1) M事件の弁護人の冒頭陳述等M事件の弁護人は,平成22年1月27日に行われた,M事件第1回公判期日において,冒頭陳述を行い,その中で,本件捜査報告書の内容を念頭において,プロパティ問題を指摘した上,検察官主張は破綻している旨主張し,その内容は,報道各社でも大きく取り上げられた。 (2) 特捜部の対応等被告人Aは,平成22年1月27日,検事正からプロパティ問題が報道されていることを指摘されて,初めてその存在を認識し,同日,M公判の立会指示のため部長室に呼び出したEに対し,Dに部長室に来てプロパティ問題を説明するように伝言を依頼し,Eからその旨伝えられたDは,同日,部長室で,被告人Aに対し,プロパティ問題を説明した。また,被告人Aは,同月28日,部長室で会議を開き,被告人B,E,D,特捜部所属のHが参加し,プロパティ問題への対応が協議されたが,その際,被告人両名は,本件捜査報告書の内容を認識するとともに,Dから,検察官の主張を前提にすると,M事件に係 開き,被告人B,E,D,特捜部所属のHが参加し,プロパティ問題への対応が協議されたが,その際,被告人両名は,本件捜査報告書の内容を認識するとともに,Dから,検察官の主張を前提にすると,M事件に係る虚偽公文書の作成日付は平成16年6月4日以降と想定されるのに,本件捜査報告書記載のデータでは,最終更新日時が同年6月1日となっていることに矛盾があるが,これはあくまでもデータであって,実際の文書作成とは結びつかない旨の説明を受け,さらに,Hから,検察官の主張を前提にすると,前記文書の作成日付は,正確には同年6月8日以降となるはずだとの指摘を受けたが,その際,被告人Aは,Cは東京での仕事に専念させたいので,電話連絡はしないようにと指示した。 7 平成22年1月27日から同月30日夕方までのDらの動き(1) D,E及びGとの間でのやり取りなどD,E,F及びGは,平成22年1月27日午後10時22分から同月31日午後11時32分までの間,別紙「Eら通信履歴一覧表」(別紙は省略)記載のとおり,携帯電話による通話や携帯電話による電子メール(以下「携帯メール」という。)のやり取りをしているところ,Dは,平成22年1月27日,M事件の弁護人冒頭陳述の内容が大きく報道されたことから,本件改ざんが発覚するのではないかと不安になり,同日,Eに対し,本件改ざんがあったことを言及したのを皮切りに,Gにも本件改ざんについて伝えた上で,同日から同月30日午前11時頃までの間,E及びGとの間で,別紙「Eら通信履歴一覧表」記載のとおり,携帯メール等のやり取りをして,本件改ざんにつき,どのように対処すべきかを話し合った。また,Gは,その間の同月29日,東京に出張してきたEと会い,本件改ざんへの対処について話し合ったほか,同月30日午前1時頃,Cと会って して,本件改ざんにつき,どのように対処すべきかを話し合った。また,Gは,その間の同月29日,東京に出張してきたEと会い,本件改ざんへの対処について話し合ったほか,同月30日午前1時頃,Cと会って一緒に飲食し,同日午前5時,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号36記載のとおり,その内容をDやEに携帯メールで伝えた。しかし,D,E及びGにおいては,本件改ざんへの対処方法について結論を得るには至らず,Cが東京出張から帰阪するまでは,態度を保留することとなった。 (2) FとD及びEとの間のやり取りEは,本件改ざんを上司に報告すべきであると考えていたが,そのタイミングについて踏ん切りがつかなかったことから,同月30日昼頃,F室に行き,Fに本件改ざんがあったことを告白し,これを聞いたFは,Eに指示してDを呼び出し,F室の向かいにある証人テスト室で,Dから本件改ざんがあったことを聞き出し,一刻も早く上司に報告するように言った。 8 平成22年1月30日に被告人Bが登庁した以後の状況(1) E室でのやり取りEは,平成22年1月30日午後3時40分に,Gに,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号41記載のとおり,これから被告人Bに会って話をする旨伝えるとともに,その頃,携帯電話で被告人Bに電話をして大阪地検まで呼び出し,これに応じて被告人Bは,同日午後5時から予定されていた,「R会」と称する知人との親睦会(以下「R会」という。)に出席する予定を変更して,同日午後4時40分頃,大阪地検に登庁し,同日午後5時頃から,E室で,E及びDと本件改ざんにつき話し合ったが,その際,Eと口論になった後,同日午後7時頃,E室を退去し,副部長室に戻った。なお,Eは,同日午後7時24分,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号42記載のとおり,携帯電話で 件改ざんにつき話し合ったが,その際,Eと口論になった後,同日午後7時頃,E室を退去し,副部長室に戻った。なお,Eは,同日午後7時24分,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号42記載のとおり,携帯電話でGに電話をして,本件改ざんについて,被告人Bに報告した旨伝えた。 (2) 副部長隣室でのやり取りなどその後,被告人Bは,Dが副部長室に来たので,副部長隣室に移動し,そこで缶ビールを飲むなどして話し合っていたところ,Eから被告人Bとのやり取りを聞いたFが,副部長隣室に来室し,それ以降に,Dの携帯電話に電話があり(このときの電話を,以下「F見聞電話」という。),被告人Bがこれに出て会話をして,落涙するなどし,F見聞電話を終えた後,Kの弁護人の名前を口に出すなどした。なお,この間,D室の固定電話から,①同日午後8時19分にDの携帯電話に発信(通話時間36秒)され,②同日午後8時22分に東京に出張中であった検察事務官宛に発信(通話時間41秒)され,③同日午後9時30分に金融庁の捜査関係者の公用電話に発信(通話時間703秒)されている。 また,Gは,同月30日,被告人Bと電話(このときの電話を,以下「G電話」という。)で会話をしたことがあり,また,同月31日未明に,Cと一緒に飲酒したことがある。 その後,被告人B,E,D及びFは,それぞれ退庁したが,それに関して,同日午後11時54分にD室の鍵が返納され,同月31日午前零時20分に被告人Bが副部長室の鍵を返納し,同日午前零時20分に休日出勤者調べにDの名前で退庁の記載がなされ,同日午前零時58分にFがF室の鍵を返納し,同日午前1時2分にEが自家用車を出庫した。 9 平成22年1月30日におけるCの東京拘置所での動きCは,平成22年1月30日午前9時33分, ,同日午前零時58分にFがF室の鍵を返納し,同日午前1時2分にEが自家用車を出庫した。 9 平成22年1月30日におけるCの東京拘置所での動きCは,平成22年1月30日午前9時33分,東京拘置所に入所し,Q事件関係者に対し,同日午前10時54分に取調べを開始し,以後,同日午前11時21分に取調べを中断し,同日午後1時53分に取調べを再開し,同日午後4時15分に取調べを中断し,同日午後6時19分に取調べを再開し,同日午後8時51分に取調べを中断し,同日午後9時35分に取調べを再開し,同日午後10時57分にこの日の取調べを全て終了し,同日午後10時58分にQ事件関係者が取調室を退出し,翌31日午前零時15分に自らも東京拘置所を退所した。 10 平成22年1月31日におけるDらの動きD,E,F及びGは,平成22年1月31日,別紙「Eら通信履歴一覧表」記載のとおり,携帯電話による通話や携帯メールのやり取りをしたが,Dは,被告人Bと連絡を取ろうとしたものの,果たせなかったため,その旨を前記のやり取りの中で,Eに伝えたほか,同日,大阪地検に登庁した際,Fにもその旨報告した。 11 平成22年2月1日の状況(1) 平成22年2月1日午前中の出来事ア被告人Bは,同日午前9時15分頃に登庁すると,Fが副部長室の外に立っており,その後,同日午前9時40分過ぎ頃には,被告人Aから公判部の併任辞令を受け取ったEが来室したほか,D及びHも来た。 イその後,被告人Bは,一人で部長室に入室したが,被告人Aが,同日午前10時から合同庁舎9階の大阪地検総務部長室の隣室で催される司法修習生の修習開始式に,午前9時50分頃には出掛けたため,自らは副部長室に戻った。 ウ被告人Aは,修習開始式に出席した後,引き 10時から合同庁舎9階の大阪地検総務部長室の隣室で催される司法修習生の修習開始式に,午前9時50分頃には出掛けたため,自らは副部長室に戻った。 ウ被告人Aは,修習開始式に出席した後,引き続き検事正室に移動して,同日午前11時頃までの会議に出席した後,部長室に戻り,被告人Bを部長室に呼び出し,二人で話し合った後,被告人Bに命じてDとFを部長室に呼びつけ,同人らも交えて部長室で話し合うなどしたが,同日午後零時から別の会議があるため,同日午前11時50分頃,同人らとの話し合いを終えた。 (2) 平成22年2月1日午後の出来事ア被告人Aは,同日午後1時30分頃,会議を終えると直ちに部長室に戻り,被告人Bを呼びつけ,二人だけで話し合い,途中からDも呼び出して話し合うこともしたが,当日は兵庫県姫路市に居住する叔母方に行く予定があったため,同日午後3時頃までには被告人Bとの話し合いを終え,同日午後3時14分頃,前記叔母方に電話をし,同日午後4時頃,副部長室を訪れ,被告人Bに,「この件でちょっと人と相談してくる。Cからよく聞いておいてくれ。」などと言い残した後,同日午後4時30分頃退庁した。 イ被告人Bは,同日午後3時頃,副部長隣室でEと話し合った後,被告人Aの指示に従い,同日午後4時20分頃,Cに電話(以下「2月1日C・B間電話」という。)をして会話を交わし,その後,被告人Aに報告すべく部長室を訪れたが,既に被告人Aは退庁した後であった。 ウ被告人Aは,同日午後7時頃から午後9時頃までの間,前記叔母方に滞在した後,自宅に戻ったが,帰宅後の翌2日午前零時11分,二男に対し,「父は部下の責任をとって辞めることになるかも知れない。」との携帯メール(以下「Aメール①」という。)を送信したほか,妻に対し,「Cが た後,自宅に戻ったが,帰宅後の翌2日午前零時11分,二男に対し,「父は部下の責任をとって辞めることになるかも知れない。」との携帯メール(以下「Aメール①」という。)を送信したほか,妻に対し,「CがM事件の過程で,大変なことをどうもやっているみたいだけども,もしこれが事実だったら,辞めなきゃいけなくなるかもしれんから,覚悟しとけよ。」などと言った。 12 平成22年2月2日の状況(1) 被告人Aは,同日午前9時過ぎに登庁し,同日午前9時20分頃,部長室に来た被告人Bから前日のCとの電話内容に関する報告を受け,その後,Dを部長室に呼びつけ,Dも交えて話し合ったが,そのような話し合いの中で,被告人Bに対し,Cから追加聞き取りをするように指示した後,同日午前10時51分,妻に対し,「Cのけんなんとか切り抜けれそうだ」との携帯メール(以下「Aメール②」という。)を送信した。 (2) 被告人Bは,同日午後零時頃,Cに電話(以下「2月2日C・B間電話」という。)して,会話を交わした後,同日午後1時頃,部長室に行き,Cから聴取した内容等を被告人Aに報告したところ,被告人A及び被告人Bは,この時点で次席に報告を上げることにし,その説明方法について協議したが,その協議には,途中からDも加わった。 (3) 被告人Aは,同日夕方頃,改めて被告人B及びDと打ち合わせをした後,午後5時頃,次席室に行き,次席に本件データに関する報告をし,その了承を得たが(以下「次席報告」という。),その際,本件改ざんがあったことに言及することはなかった。 13 平成22年2月3日の状況被告人Aは,平成22年2月3日午前11時頃,被告人B及びDと共に,検事正室に行き,検事正に本件データに関する報告をし,その了承を得たが(以下「検事正報告」という。 平成22年2月3日の状況被告人Aは,平成22年2月3日午前11時頃,被告人B及びDと共に,検事正室に行き,検事正に本件データに関する報告をし,その了承を得たが(以下「検事正報告」という。),その際も,本件改ざんがあったことに言及することはなかった。その後,被告人Bは,同日夜,Cに電話をして会話を交わした。 14 平成22年2月4日から同月10日までの状況(1) 被告人Aは,平成22年2月4日午前9時50分頃,部長室で,被告人B及びDと話し合ったほか,被告人Bに対し,Cに指導しておくべきことなどを指示した。 (2) Cは,同月5日午後5時頃,東京出張を終えて帰阪し,大阪地検に登庁し,Gらと共に被告人両名にそれぞれ挨拶をした後,再度一人で副部長室及び部長室に行き,被告人両名にそれぞれ謝罪したが,その際,被告人Bから叱責を受けた。 (3) Cは,同月8日,改めて被告人両名にそれぞれ謝罪し,検事正及び次席らに帰阪の挨拶をした後,再び被告人両名に個別に検事正らに対する挨拶を終えた旨報告に行った。 (4) Cは,同月10日に,本件上申書を作成し,これを被告人B及び被告人Aの順に提出した後,私物パソコンを持って副部長室に行き,被告人Bに対し,本件データ改変に関する状況を実演して見せた。 15 平成22年3月31日までの状況被告人Aは,平成22年3月26日,被告人Bと期末面談をした。 16 平成22年9月10日から同月20日までの状況(1) 平成22年9月10日,M事件において,Mに対し,無罪判決が下された。 (2) 検事正は,平成22年9月19日夜,記者から本件データの日付が「6月1日」から「6月8日」に変更されている旨の情報を聞き,平成22年9月20日,当時のI特捜部長とともに,Cに問い れた。 (2) 検事正は,平成22年9月19日夜,記者から本件データの日付が「6月1日」から「6月8日」に変更されている旨の情報を聞き,平成22年9月20日,当時のI特捜部長とともに,Cに問いただしたところ,Cから,過誤により本件データを変えた可能性がある旨の報告を聞いたほか,D室に行き,その場にいたD及びEと会話を交わした。Cは,検察庁内の内部調査の中で,本件データの改変が過誤であることを説明する報告書を作成して,提出した。 (3) Cは,同月21日午後8時45分頃,証拠隠滅の被疑事実で逮捕されたが,その頃までに,Dと,電話で,あるいは直接会って会話を交わしたほか,被告人A,被告人B,D及びCの間で電話によるやり取りがあった。 17 被告人Bの執務記録等について被告人Bは,以下のとおり,執務記録等を記載していたことが,認められるところ,その内容は,別紙「B執務記録等一覧表」(別紙は省略)記載のとおりである。 (1) 執務記録と手帳ア被告人Bは,十数年前から,検察協会より毎年各会員に無料配付される「執務記録」と題するノート(以下「B執務記録」という。)を自分の執務室に置き,在庁中の時間,逐次,これに予定や,詳細な記録,雑感等を記載していた。またそれとは別に,手帳(以下「B手帳」という。)を常時携帯し,予定の記載・確認などに使用していた。 イ B執務記録には,①冒頭部に,年間予定表欄及び見開き2ページ2か月分の予定表欄が2010年(平成22年)の1月から2011年(平成23年)3月までの15か月分,②中央部に,見開き2ページ左に1週間分のダイアリー欄,右に自由記載欄があり,③前記②に続いて,見開き2ページに2週間分の翌年1月分から3月分までのダイアリー欄がある。 ウ被告人Bは,9月 ②中央部に,見開き2ページ左に1週間分のダイアリー欄,右に自由記載欄があり,③前記②に続いて,見開き2ページに2週間分の翌年1月分から3月分までのダイアリー欄がある。 ウ被告人Bは,9月23日以降東京で最高検による事情聴取を受ける際,執務記録2009年(平成21年)版及び同2010年(平成22年)版並びにB手帳を持参し,同月24日これら3冊を最高検に任意提出した(以下,B執務記録につき特に年度を付記しない場合は,2010年版のそれをいうこととする。)。 (2) 罫紙メモ被告人Bが本件当時作成した罫線入りのメモ用紙(以下「罫紙メモ」という。)12枚が現存している。これらは,被告人Bが特捜部から転出する際に,副部長隣室に置いて行った溶解廃棄用段ボール箱内から,被告人両名の逮捕後に,発見・押収されたものである。 罫紙メモのうち8枚は,被告人Bが,日常,会議等に出席する際に使用している用紙切り離し式のノートから切り離した用紙に記載したものであり,その余の4枚は大阪地検の庁名の入ったものである。 なお,罫紙メモのうちノートから切り離した罫紙メモ2枚及び庁名入り罫紙メモ1枚が検察官請求に係る証拠物として取調べられている(以下,ノートから切り離した罫紙メモのうち,「フロッピー」から始まる書面(両面記載のもの)の表面を「1・30罫紙メモ」といい,その裏面を「2・1罫紙メモ」,庁名入り罫紙メモを「日付なし罫紙メモ」という。なお,3枚とも全て鉛筆書きである。)。 第2 争点の所在 1 争点の概要前記第1の前提事実によれば,①Cが本件改ざんを行ったこと,②被告人両名が本件改ざんについて自ら又は部下検察官らを指揮して捜査を行わなかったこと,並びに③被告人両名が次席及び検事正に対し本件データに関する報 の前提事実によれば,①Cが本件改ざんを行ったこと,②被告人両名が本件改ざんについて自ら又は部下検察官らを指揮して捜査を行わなかったこと,並びに③被告人両名が次席及び検事正に対し本件データに関する報告をしたが,その際,本件改ざんがあったことに言及することがなかったことが認められ,これらについては,当事者間にもおおむね争いがない。そこで,被告人両名が,前記②及び③の当時,①の事実を認識していたか否かが主な争点となる。 2 前記争点に関する当事者の主張(1) 検察官検察官は,前記の争点に関して,以下のような主張をする。 ア被告人Bは,平成22年1月30日(以下,特に年を付さないときは,全て「平成22年」の月日を指す。)夜,副部長隣室において,Cから電話で本件改ざんを行ったことの告白を受けたことから,本件改ざんを認識するに至った。 イ被告人Aは,2月1日,部長室において,被告人Bから,Cが本件改ざんを行ったとの報告を受けたことから,本件改ざんを認識するに至った。 その上で,被告人Aは,被告人Bにかん口令を敷くことを伝え,被告人Bがこれを了解した時点で,具体的な方針が未確定であるものの犯人隠避の共謀が成立した。 ウ被告人Bは,同日,Cに電話して,本件改ざんを過誤にすり替えて説明することは可能であると聞き,同月2日,その旨被告人Aに報告し,ここにおいて,被告人両名の共謀の内容が,過誤にすり替えて説明する方法により本件改ざんをもみ消し,Cを捜査の対象としないことに具体化した。 (2) 弁護人ら弁護人らは,前記の争点に関して,ほぼ一致して,以下のような主張をする。 ア被告人Bは,1月30日夜,副部長隣室において,Cと電話で話したことはなく,したがって,被告人Bは,この時点で, 弁護人らは,前記の争点に関して,ほぼ一致して,以下のような主張をする。 ア被告人Bは,1月30日夜,副部長隣室において,Cと電話で話したことはなく,したがって,被告人Bは,この時点で,本件改ざんがあったことを認識していない。 イ被告人Bは,2月1日,自己の認識に従い,被告人Aに対し,D,E,F及びGらの間で,不確定な情報として,Cが改ざんをしたとの話がある旨報告したものであり,したがって,被告人Aも,この時点で,被告人B同様に,本件改ざんがあったことを認識していない。 ウ被告人Bは,被告人Aの指示を受けて,同日,Cに電話で確認したところ,Cから過誤で本件データを改変した可能性がある旨の報告を受けたので,同月2日,被告人Aにその旨報告し,ここにおいて,被告人両名は,Cが過誤で本件データを改変した可能性があるとの認識を共通にし,以後,9月21日にCが逮捕される直前まで,その共通認識に従って行動した。 3 具体的な争点の所在前記2の各当事者の主張を照らし合わせると,被告人両名の本件改ざんの有無に対する認識の問題として,①被告人Bは,1月30日夜,Cから電話で本件改ざんの告白を受け,その結果,被告人Bにおいて本件改ざんがあったことを認識したか否か(以下「争点1」という。),②被告人Bは,2月1日,被告人Aに,Cから本件改ざんの告白があったことを伝え,その結果,被告人Aにおいて本件改ざんがあったことを認識したか否か(以下「争点2」という。),さらに,③被告人両名は本件改ざんを隠ぺいする決意をしたのか否か,決意したとして,それはいつ決意したのか(以下「争点3」という。)が,本件の具体的な争点となる。以下,これらの争点について,判断していく。 第3 争点1について 1 C及びDの各供述と被告人Bの供述との対 して,それはいつ決意したのか(以下「争点3」という。)が,本件の具体的な争点となる。以下,これらの争点について,判断していく。 第3 争点1について 1 C及びDの各供述と被告人Bの供述との対立争点1に関して,Dは,1月30日夜,副部長隣室においてCからDの携帯電話に電話があり,これを被告人Bに替わった後,被告人BがCと会話をした旨供述し,Cは,同日夜,Dの携帯電話に電話をし,被告人Bに替わってもらった上で,被告人Bに対し本件改ざんを告白した旨供述している。これに対し,被告人Bは,同日夜,Gと電話で話したことはあるが,Cとはない旨,C及びDの各供述と真っ向から対立する供述をしている。そこで,C及びDの前記各供述が,被告人Bの供述にもかかわらず,信用することができるかが,争点1の判断を決することになる。 2 C及びDの各供述概要(1) Cの供述概要争点1に関して,Cは,概要,以下のような供述をしている。 ア 1月30日夕方から夜までの時間帯におけるQ事件関係者に対する取調べの途中で,自らの携帯電話に,Dから,電話が欲しいという趣旨の連絡が入っていた。そこで,同日午後8時51分頃,取調べを一旦中断し,Q事件の主任検事に,その内容等を報告し,落ち着いたところで,同日午後9時35分に取調べを再開するまでの間に,自分の携帯電話からDの携帯電話に電話を掛けた。 イそのとき,Dから,同日の大阪での出来事,すなわち,EがM事件の公判担当主任であるFに本件改ざんの件を伝えたこと,Fは大変な事態であるとして直ちに上司に報告すべきであると言い,これを受けて,Eが直属の上司である被告人Bを呼び出し,DとEの二人から被告人Bに本件改ざんの件を伝えたこと,被告人Bが,この日の,取調べが終わってからで良いし,何 に上司に報告すべきであると言い,これを受けて,Eが直属の上司である被告人Bを呼び出し,DとEの二人から被告人Bに本件改ざんの件を伝えたこと,被告人Bが,この日の,取調べが終わってからで良いし,何時まででも待っているから電話が欲しいと言っていることなどを伝えられた。 ウなお,この電話でのことであったかは定かではないが,Dから改ざん後のデータの正確な日時を尋ねられたことがあり,自分は,改ざん前後のデータを青色USBメモリーに保存して東京出張に持参していたので,少し待ってもらっている間に,改ざん前後のデータを私物のパソコン画面に表示して,「6月1日の何時何分何秒から6月8日の何時何分何秒に変えている。」と伝えたと思う。 エ自分としては,大阪に帰って直接顔を見ながら上司に本件改ざんを告白すべきだと思っていたが,本件改ざんが上司の知るところとなった以上は,自分から本件改ざんを告白するしかないと思った。その際,自らが懲戒免職,刑事罰を受けることは仕方がないとしても,できることならば,ソフトランディング,すなわち,いきなりすぐに逮捕,自宅の捜索,官舎の立ち退きといったことではなく,内部的にも対外的にも手順を踏むことによって,若干の時間的猶予をもらいたい,そして検察に対する影響も極力小さい形で進めてほしいという希望があり,そのため自分ではどうしようもないので,まずは自分のしたことをきちんと上司に伝え,首を差し出した上で,処遇・対応等については上司に知恵を絞っていただきたいという気持ちだった。 オ Q事件関係者の取調べが1月30日午後10時57分に終了した後,同日午後11時台に,状況を確かめるため,Dの携帯電話に電話を掛けたところ,Dが,目の前に被告人Bがいると言い,すぐに通話の相手が替わった。 カ被告人Bは, 午後10時57分に終了した後,同日午後11時台に,状況を確かめるため,Dの携帯電話に電話を掛けたところ,Dが,目の前に被告人Bがいると言い,すぐに通話の相手が替わった。 カ被告人Bは,「C元気か,頑張ってるか,ご苦労さん。」などとねぎらう言葉を優しい口調で言った後,同じ口調で,「Dから聞いたけど,Kのところに還付したフロッピーディスクのデータを変えたというのは本当か。」と尋ねてきたので,「本当です。」と答えると,被告人Bは,「どういうふうに変えたんだ。」と尋ねたので,「6月1日を6月8日に変えました。」と答えた。さらに,被告人Bが,「そんなの変えれるのか。」と言ったが,自分が,「変えられます。」と答えると,被告人Bは,「そんなの変えられるの俺知らなかったけどなあ。」などと言った。このようなやり取りの後,自分が,「検事を辞めなければならなくなりました,応援を解除して大阪に戻してください。」と言ったところ,被告人Bは,この辺りから涙声になって,「お前,ばかな考えを起こすなよ,お前は今,東京で重要な仕事をしてるのだから,それに専念してくれ,責任は俺が取る。」などと言い,「Cには奈良医大の時に世話になった,何とかCを守りたい,でも,これはえらい問題や,上にも相談してみないとあかん。」などと言った。その後,Dが一旦電話を替わって,泣きながら,「Cさん,絶対辞めないでください,Cさんが辞めるんだったら僕も辞めます。」などと言い,最後に,もう一度被告人Bが電話を替わり,「とにかくばかな考えを起こすなよ,まあ,Cなら大丈夫だと思うけどなあ。」などと,泣き笑いのようにして言った。 (2) Dの供述概要争点1に関して,Dは,概要,以下のような供述をしている。 ア前記第1・8・(1)のE室での出来事の後,被告人Bに現 どと,泣き笑いのようにして言った。 (2) Dの供述概要争点1に関して,Dは,概要,以下のような供述をしている。 ア前記第1・8・(1)のE室での出来事の後,被告人Bに現状が正確に伝わらなかったおそれがあると考えて,改めて被告人Bに事実関係を自分から説明しようと考え,副部長室を訪れて,Cは確実に改ざんしている,もう間違いない旨を伝えると,被告人Bは,「やっぱりそうか。」などと言って,非常にがっかりしていた。 イその後,被告人BがCに直接話をして事実関係を確認することになり,Cの取調べが終わるときを待ってCから連絡をもらうことになり,副部長隣室に移動して,Cの取調べが終わるのを二人で待つことにするとともに,Cに対しては,電話かメールかはっきりしないが,取調べが終わったら電話をして欲しい旨伝えた。Cからの電話を待つ間,被告人Bと缶ビールを飲むなどしていたが,途中,トイレに立つこともあったし,D室に戻って自分の仕事の関係で電話を掛けたり,自分の立会事務官や事件捜査に入っていた者たちに,自分の仕事が終わったら解散して良いと伝えるなどしたこともあり,また,自分の鞄とコートを取りに戻ったこともあったので,終始副部長隣室にいたというわけではなかった。なお,被告人BとCからの電話を待っていると,Fが顔を出し,以後副部長隣室で同席することになった。 ウなお,Fが同席することになった前後いずれかは明らかではないが,被告人Bから,「上司というのは,部下が不祥事を起こしたときに責任を取るためにいる,俺も今回Cの不祥事の責任を取る,お前もいつか上司になるだろうから,そのことを忘れるな。」などと言うのを聞いたことがあり,また,Gから自分の携帯電話に電話が掛かってきたので,被告人Bと一緒に話をしている旨を伝えて,被 責任を取る,お前もいつか上司になるだろうから,そのことを忘れるな。」などと言うのを聞いたことがあり,また,Gから自分の携帯電話に電話が掛かってきたので,被告人Bと一緒に話をしている旨を伝えて,被告人Bに電話を替わったことがあり,その際,被告人Bは,「心配するな,Cのことは俺に任せろ。」とか,「お前は大阪を代表して東京に応援に行っているのだから,東京でがんばれ,大阪に恥をかかせるようなことをするな,あとのことは俺に任せろ。」などと言っていたが,G主任事件について言及していたことはない。 エ F同席後に,Cから自分の携帯電話に電話が掛かってきたので,「Cさんからです。」などと言って電話に出た後,被告人Bに電話を替わったところ,被告人Bは,非常に優しい口調で,「おおCか,ちゃんと飯食えてるか,元気にやってるか。」などと,Cの体を気遣うような挨拶から入って,「Dから聞いたんだけどな,プロパティなんて変えられるんか。」,「はあ,そんなことができるんか,俺知らなかったぞ。」などと言い,さらに,「いつに変えたんだ。」などと,非常に優しく問い掛けていた。その後も,「お前にも迷惑掛けたな。」,「平成丸々年の丸々の事件がお前との出会いやったな,あのときは頑張ってもらった,お前には本当に一番辛いところを,辛い役目ばかりさせてしまって,申し訳なかったな。」などと,涙を浮かべるようにして話しており,自分もこれを見て,思わずもらい泣きをしてしまい,さらに,その後,被告人Bから電話を返されたが,胸が詰まる思いがして,Cに上手い言葉も掛けられないまま,電話を切った。 オ Fが,被告人Bに対し,「Cさんは認めたんですか。」と尋ねたところ,被告人Bは,「ああ」と言い,さらに,「ちくしょう。」,「何でCはこんなことをしちまったんだ。」などと言って,感情 た。 オ Fが,被告人Bに対し,「Cさんは認めたんですか。」と尋ねたところ,被告人Bは,「ああ」と言い,さらに,「ちくしょう。」,「何でCはこんなことをしちまったんだ。」などと言って,感情を爆発させ,非常に悔しそうな様子で,涙をこぼしていた。 カその後,被告人Bは,「これからKの弁護人に連絡を取る,彼とは知らない仲じゃない,俺に考えがある。」などと,Kの弁護人に連絡を取るなどと言い出したので,Fが,「何をなさるおつもりですか。」などと尋ねたところ,被告人Bは,「うるさい。」,「お前には関係ない。」,「俺はCと一緒にもう辞めるんだ,責任を取って辞めるんだ,最後くらいは好きにさせろ。」などと言ったので,Fと一緒に制止した。 キこの頃には,終電の時間も迫っていたので,Fは自分の執務室に戻り,他方,自分は既に荷物を持ってきてあったので,被告人Bと一緒に帰ることになったが,二人になったときに,Kの弁護人に連絡を取ってどうするのか尋ねてみたところ,還付済みの本件フロッピーディスクを再度任意提出してもらうなどして,データを元に戻して返すという趣旨のことを言ったので,「それ,やめましょう,危ないです。」などと言ったところ,被告人Bも,「分かった,分かった。」などと言って話は終わり,二人でエレベーターで地下1階に下り,それぞれ退庁簿の記載や執務室の鍵の返還等の手続をして,別れたが,休日出勤者調べの退庁簿の午前零時40分の記載が,このとき自分の書いたものである。 ク Dは,1月31日登庁し,被告人Bの携帯電話に電話を掛けたが,被告人Bが出ることはなく,連絡が付かなかったので,その旨FとEに伝えた。 3 C及びDの各供述の信用性前記2のC及びDの各供述は,以下の理由から信用することができる。 (1) F供 告人Bが出ることはなく,連絡が付かなかったので,その旨FとEに伝えた。 3 C及びDの各供述の信用性前記2のC及びDの各供述は,以下の理由から信用することができる。 (1) F供述との整合性ア Fの供述概要Fは,争点1に関して,おおむね以下のような供述をしている。 (ア) 1月30日,登庁してF室で公判の準備をしていると,Eが来室し,Cが本件データを書き換えたという話をDから聞いたなどと言ったので,Dを呼び出して尋ねると,Dが,M事件起訴後の夏頃,Cから証拠に手を加えたという話を聞いたことがあり,まさかと思っていたところ,最近M事件の第1回公判期日の時にCと電話で話した際にも本件データを改ざんしていると言われた旨述べたため,これは大変な事態だと思い,EとDに直ちに上司に報告すべきであると言い,これを受けて,Eが被告人Bに連絡を取ることになった。 (イ) 同日遅い時間にE室を訪ねたところ,Eが,被告人Bに本件改ざんについて報告したが,被告人Bは聞く耳を持たなかったと話すのを聞き,自ら被告人Bに話をしようと思い,同日午後9時か午後10時頃,副部長隣室を訪ねた。 (ウ) 副部長隣室では,被告人BとDが缶の酒を飲んでおり,被告人Bの勧めに従って,以後同席して,今回の件をどうするのかなどと話した。 (エ) そのような中で,Dの携帯電話に電話が掛かってきて,まず,Dが少し話をした後,それを被告人Bに渡した。 (オ) 被告人Bは,「そっちの様子はどうや,頑張っとるんか,どんな感じや。」などと言い,それから少しして,「ところで,ちょっと耳に挟んだんやけど,Kのフロッピーが書き換えられとるっちゅう話があるんやけどな。」,「そんなことができるんか。」,「どうやってやるんや。 じや。」などと言い,それから少しして,「ところで,ちょっと耳に挟んだんやけど,Kのフロッピーが書き換えられとるっちゅう話があるんやけどな。」,「そんなことができるんか。」,「どうやってやるんや。」,「結局どうなっとるっちゅうことや。」などと言い,最後に,「苦労させたな。」,「すまなかったな。」,「そっちの事件も大変な事件やから,大阪の代表で行っとるんやから頑張ってくれ。」などと言って会話を終えた。 (カ) 被告人Bは,電話中は,ショックを受けながらも,それを押し殺している様子であったが,電話を終えた後には,がっくりとうなだれ,涙を流していた。 (キ) 被告人Bのやり取りから,Cが本件改ざんを認めたと思い,被告人Bに対し,「認めたんですよね。」と確認をしたところ,被告人Bが,首を縦に振り,「認めた。」などと言うのを聞いて,自らも本当に重い気持ちになった。そのほか,被告人Bは,「俺の責任や,俺があいつを育てたんや,あいつが辞めるんやったら俺も考えんといかん。」などと言っていた。 (ク) その後,被告人Bは,「今回のフロッピーはKのところに返っとるんやろう,Kの弁護人の連絡先は分かるんか。」などと言ったほか,自分が上に報告した方がいいなどと言うと,「俺にも考えがあるんだ。」,「今は言えない,お前らには言えない。」などと言った(。さらに,自分が,「早く言った方がいいですよ。」などと言うと,被告人Bが,「考える時間が欲しい。」などと言ったので,自分が,「取りあえず月曜日まで待ちますけれど,月曜日には何とかしないといけないんじゃないですか。」などと言うと,被告人Bが,「分かった。」などと言って話が終わったが,その時点で,自分の終電がなくなる午前零時前後になっていたため,副部長隣室を出た。 (ケ) 自分は,F室に戻る途中,E室に立ち寄り どと言うと,被告人Bが,「分かった。」などと言って話が終わったが,その時点で,自分の終電がなくなる午前零時前後になっていたため,副部長隣室を出た。 (ケ) 自分は,F室に戻る途中,E室に立ち寄り,Eに対し,Cと被告人Bが電話をし,被告人Bも分かってくれたことを伝えたほか,書き換えた日時について,6月8日になっているということを伝えた記憶がある。 (コ) 同月31日も登庁して仕事をしていたところ,Dが,F室に来て,被告人Bと連絡が取れない,何回電話しても取ってくれないなどと言ったので,同月30日,被告人Bが非常に責任を感じていた様子であったことから,もしかして自殺を考えているのではないかと思い,非常に不安になった。 イ F供述の信用性前記のF供述は,以下の理由から信用することができる。 (ア) 前記第1・4・(1)によれば,Fは,公判部に所属する検事であり,M公判を担当していたものの,1月30日,前記第1・7・(2)のとおり,Eから話を聞くまで,本件改ざんがあったことを認識しておらず,それを認識した後は,一貫して,それを上司に上げるように進言していたものであり,これからすれば,本件改ざんに関しても,被告人両名との関係,あるいは,C及びDとの関係のいずれにおいても,虚偽を述べなければならない利害関係はない。また,その供述態度を見ても,自己の記憶に残っていることと,そうでないところを区別し,真摯に供述しており,自己の記憶に反した供述をしている形跡もない。このようなFの立場及びその供述態度自体からして,F供述は,信用性の高い供述というべきである。 (イ) Eは,前記ア・(ア),(イ)の点について,F供述に沿った供述をしているほか,大分夜遅くになってから,FがE室に立ち寄り,「Cさん認めたよ。」,「 性の高い供述というべきである。 (イ) Eは,前記ア・(ア),(イ)の点について,F供述に沿った供述をしているほか,大分夜遅くになってから,FがE室に立ち寄り,「Cさん認めたよ。」,「BさんがCさんに電話して,その電話でCさんが認めたよ。」,「やっぱり,6月8日だったよ。」,「Bさんも泣いていたよ。」などと言った旨供述しているが,これは,前記ア・(キ),(ケ)のF供述と整合しており,この点において,F供述とE供述は相互に補強し合っている。 (ウ) もっとも,弁護人らは,前記ア・(キ)の点に関して,Fが,供述を変遷させ,あるいは供述を後退させている旨主張する。前記の点について,Fは,反対尋問において,Fの,「認めたんですね。」という質問に対する被告人Bの態度として,被告人Bが「認めた」などと言った記憶があるが,若干曖昧なので,もしかしたら間違っているかもしれないこと,捜査段階では,被告人Bが,うなずいたのか,「認めた」などという言葉を言ったのか,その点の記憶がはっきりしないと述べたこと,被告人Bが,「認めた」という一言一句,その言葉と違わない言葉で言ったのかと言われると,そこは曖昧だが,「うん」とうなずくような形で,言葉短く認める趣旨の言葉を発して,はっきりと伝えてくれたという状況は覚えているなどと供述しているが,これを見ると,Fは,記憶に若干曖昧な点があるので,断定は避けながらも,自己の記憶に従い,誇張がないように慎重に供述しようとする真摯な供述態度を維持しつつ,Fが,電話を終えた被告人Bに対し,「認めたんですよね。」と尋ねたこと,これに対し,被告人Bが「認めた」という趣旨の答えを,動作あるいは言葉で伝えたことについては,揺らぐことなく,捜査段階から反対尋問の終了に至るまで,その供述を一貫して維持しているので と尋ねたこと,これに対し,被告人Bが「認めた」という趣旨の答えを,動作あるいは言葉で伝えたことについては,揺らぐことなく,捜査段階から反対尋問の終了に至るまで,その供述を一貫して維持しているのである。 したがって,前記ア・(キ)の点に関し,前記弁護人らの指摘を踏まえても,なお,F供述の信用性が揺らぐことはない。 ウ F供述とC及びDの各供述の内容面での整合性C及びDの各供述の内容は,前記のとおり信用できるF供述の内容と,以下のとおり整合している。 (ア) 被告人Bの会話内容Fは,前記ア・(オ)のとおり,被告人Bが自己の面前でDの携帯電話で通話相手と会話を交わした内容について供述しているところ,Cは,被告人Bとの会話内容として,前記2・(1)・カのとおり,Dは,同じく前記2・(2)・エのとおりそれぞれ供述しているが,その内容を見比べると,最初優しい口調で,「頑張っているか,ご苦労さん。」などとねぎらいの言葉を掛けた後,Dから聞いたCが本件フロッピーディスクのデータを書き換えたという話について尋ね,その後,電話の相手と会話を続ける中で,「そんなことできるんか。」,「どういうふうに変えたんだ。」などと尋ねた後,最後も電話の相手にねぎらいの言葉をかけて,会話を終えているなどの点で,いずれも極めて似通った供述をしており,これらの点において,F供述は,C及びDの各供述の信用性を補強している。 (イ) 被告人Bが涙を見せたこと等Fは,前記ア・(カ),(キ)のとおり,被告人Bが電話での会話を終えた後がっくりとうなだれて涙を流したこと,Fが,「認めたんですよね。」と尋ねたところ,被告人Bが首を縦に振り,「認めた。」などと答えた旨供述しているところ,Cは,被告人Bの態度について,前記 を終えた後がっくりとうなだれて涙を流したこと,Fが,「認めたんですよね。」と尋ねたところ,被告人Bが首を縦に振り,「認めた。」などと答えた旨供述しているところ,Cは,被告人Bの態度について,前記2・(1)・カのとおり,被告人BがCと会話を交わしているうちに涙声になり,最後は泣き笑いのようにして会話を終えた旨供述し,Dは,同じく前記2・(2)・エ,オのとおり,被告人Bが電話の相手との会話の中で涙を浮かべるように話していたこと,電話を終えた後,Fが,「Cさんは認めたんですか。」と尋ね,被告人Bが,「ああ。」と答えた後,非常に悔しそうな様子で涙をこぼしていた旨供述しているが,この点においても,F供述は,C及びDの各供述内容と整合しており,その信用性を補強している。 (ウ) 被告人Bの電話後の言動についてFは,前記ア・(ク)のとおり,被告人Bが,電話を終えた後,「今回のフロッピーはKのところに返っとるんやろう,Kの弁護人の連絡先は分かるんか。」などと言ったほか,Fが上に報告した方がいいなどと言うと,「俺にも考えがあるんだ。」,「今は言えない,お前らには言えない。」などと言った旨供述しているが,この点は,Dも,前記2・(2)・カのとおり,被告人Bが,「これからKの弁護人に連絡を取る,彼とは知らない仲じゃない,俺に考えがある。」などと,Kの弁護人に連絡を取るなどと言い出したので,Fが,「何をなさるおつもりですか。」などと尋ねたところ,被告人Bは,「うるさい。」,「お前には関係ない。」,「俺はCと一緒にもう辞めるんだ,責任を取って辞めるんだ,最後くらいは好きにさせろ。」などと言ったので,Fと一緒に制止した旨供述しており,この点で,F供述は,D供述と一致し,その信用性を補強している。 (エ) 弁護人らの主張す って辞めるんだ,最後くらいは好きにさせろ。」などと言ったので,Fと一緒に制止した旨供述しており,この点で,F供述は,D供述と一致し,その信用性を補強している。 (エ) 弁護人らの主張するF供述との食い違いについて被告人B弁護人は,F供述とC及びD供述の内容が食い違っている旨指摘し,被告人A弁護人も,これを引用して主張する。しかしながら,以下のとおり,これらの主張は採用できない。 a まず,弁護人らは,Dが,前記2・(2)・エのとおり,被告人Bにおいて,「平成丸々年の丸々の事件がお前との出会いやったな,あのときは頑張ってもらった,お前には本当に一番辛いところを,辛い役目ばかりさせてしまって,申し訳なかったな。」などと,涙を浮かべるようにして話していた旨供述している点につき,Cは,前記2・(1)・カのとおり,被告人Bが,涙声になって,「Cには奈良医大の時に世話になった。」などと言った旨,前記D供述と整合する供述をしているものの,F供述には,このような件が出てこず,F供述との間に齟齬がある旨主張する。しかし,Cは,前記2・(1)・カのとおり,前記奈良医大の話題が出る前に,「検事を辞めなければならなくなりました。」と述べているのであるから,これを受けて,被告人B自身も,自ら主任検事として捜査を指揮し,その中でCと一緒に仕事をしたことを自認している前記奈良医大事件の話を持ち出したとしても不思議ではない上,Fも,奈良医大という言葉や事件のあった時期等についてこそ言及していないものの,前記ア・(オ)のとおり,被告人Bが電話の相手に対し,「苦労させたな。」,「すまなかったな。」などと言った旨供述しているのであって,F供述において,奈良医大という言葉等が出てこないことから,F供述とC及びD供述との間に,相容れない食い違いがあるとは 「苦労させたな。」,「すまなかったな。」などと言った旨供述しているのであって,F供述において,奈良医大という言葉等が出てこないことから,F供述とC及びD供述との間に,相容れない食い違いがあるとはいえない。したがって,弁護人らの前記主張は失当である。 b 次に,弁護人らは,Cが,前記2・(1)・カのとおり,被告人Bが,「何とかCを守りたい,でも,これはえらい問題や,上にも相談してみないとあかん。」などと言ったと供述している点につき,F供述には出てこないばかりか,仮に,本件改ざんを問題にし,上司への報告を強く求めているFがこれを聞けば,被告人BがCに甘い態度を取ったものとして印象に残らないはずがないと主張する。しかしながら,Fが強く求めていたのは,上司への報告であり,Cの処分内容いかんについて,自己の意見の実現を求めるような発言は行っておらず,また,前記C供述にいう,被告人Bの発言内容を見ても,「上に相談してみないとあかん。」と述べて,上司へ報告することを前提としていると解せられる発言をしていることを併せ考えれば,被告人Bの前記発言は,取り立ててFの考えに反するものとはいえず,その印象に残らなかったとしても,不自然とはいえない。加えて,被告人B自身,別紙「B執務記録等一覧表」トピック欄C-②において「SDは逃げようとしている~部を守ろうとしている←部・部員を守るのは当然のこと」と記載しているが,これからしても,被告人Bにおいて,1月30日の時点で,Cを守りたいとの思いを持っており,それが,Cに対する発言として出たとしても不自然ではない。したがって,前記弁護人らの主張も採用できない。 エ Fの認識との整合性Fは,前記ア・(キ)のとおり,被告人Bの電話での会話内容や,そのときの様子などから,この電話で,被告人Bが たがって,前記弁護人らの主張も採用できない。 エ Fの認識との整合性Fは,前記ア・(キ)のとおり,被告人Bの電話での会話内容や,そのときの様子などから,この電話で,被告人BがCから本件改ざんの告白を受けたことを確信した旨供述しているところ,そうであるからこそ,前記ア・(ケ)のとおり,Eに,Cが本件改ざんを認めたことを伝えているのであって,この点は,前記イ・(イ)のとおり,E供述とも整合している。また,Fは,前記ア・(コ)のとおり,1月31日に,Dから被告人Bと連絡が取れない旨聞いて,被告人Bが自殺を考えているのではないかと心配した旨供述しており,この点は,前記2・(2)・クのとおり,D供述と一致しているほか,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号51ないし53,同表番号56及び57と整合しているが,このことは,Fが,F見聞電話で,被告人BがCから本件改ざんの告白を受けたと確信し,そのため,事の重大さゆえに,被告人Bが自殺でも考えはしないかと心配していたことを示しているというべきである。このように,Fは,F見聞電話の結果,被告人BがCから本件改ざんの告白を受けていたことを確信し,その後も一貫してその確信に基づき行動していたことが認められるが,Fがこのような確信を有していたこと自体,前記2のC及びDの各供述の信用性を裏付けている。 (2) 客観証拠との整合性C及びDの各供述は,以下のとおり,客観証拠と整合している。 ア Cの取調時間との整合性Cは,前記第1・9のとおり,1月30日,東京拘置所においてQ事件関係者の取調べを行っていたところ,前記2・(1)・オのとおり,同日午後10時57分にQ事件関係者の取調べが終了した後,同日午後11時台に被告人Bと電話で会話をした旨供述しているが,信用で てQ事件関係者の取調べを行っていたところ,前記2・(1)・オのとおり,同日午後10時57分にQ事件関係者の取調べが終了した後,同日午後11時台に被告人Bと電話で会話をした旨供述しているが,信用できるF供述によれば,前記(1)・ア・(イ),(ク)のとおり,Fが副部長隣室に行ったのは,1月30日午後9時か午後10時頃であり,同室を出たのは,同月31日午前零時過ぎ頃であること,前記第1・8・(2)のとおり,被告人Bが退庁したのは,同日午前零時20分頃であり,Cの供述するF見聞電話の時間は,前記取調時間と整合しているほか,F供述とも整合している。 イ Dの退庁時間等との整合性Dは,前記2・(2)・イ,キのとおり,副部長隣室に行った後も,D室に鞄とコートを取りに行ったことがあること,Fが副部長隣室を退去した後,既に自分の荷物を自室から副部長隣室に持ってきていたので,被告人Bと一緒に退庁した旨述べているところ,Dが少なくとも一度は副部長隣室からD室に戻った点については,前記第1・8・(2)のとおり,D室の固定電話は,①1月30日午後8時19分頃,②同日午後8時22分頃,③同日午後9時30分頃に使用されているが,このうち,③についてはその通話先や通話時間から,D自身が使用したものと推認できるほか,退庁時間の点についても,前記第1・8・(2)のとおり,被告人Bの鍵の返納状況,休日出勤者調べの退庁時の記載状況と整合している。 (3) 内容自体の合理性Cの供述は,前記2・(1)のとおりであり,Dの供述は,前記2・(2)のとおりであるところ,これら両者の各供述を見比べても,1月30日にCが被告人Bと会話をした際の,時間帯,被告人Bの応答状況やその口調及び感情について,互いに整合しており,内容においても,不自然な点は見当たらな るところ,これら両者の各供述を見比べても,1月30日にCが被告人Bと会話をした際の,時間帯,被告人Bの応答状況やその口調及び感情について,互いに整合しており,内容においても,不自然な点は見当たらない。 4 C及びDの各供述の信用性に関する弁護人らの主張弁護人らは,被告人Bが1月30日夜に副部長隣室でCと電話で話したこと,その際,Cが本件の改ざんを告白したとするC及びDの各供述には信用性がない旨主張するが,以下のとおり,これらの主張は採用できない。 (1) 前記第1・8・(2)のとおり,1月30日夜にはG電話があったところ,弁護人らは,G電話がF見聞電話であるのに,Fにおいて,F見聞電話の相手をCと誤解し,これに乗じて,Dが虚偽の供述をしている旨主張する。しかしながら,F見聞電話がG電話でないことは,後記5で詳述するとおりであって,弁護人らの前記主張は理由がない。 (2) 弁護人らは,Dが,1月30日に,①Cに対し被告人Bに電話連絡するよう伝えたとの供述や,②Cから本件改ざんによって改変されたデータの内容を聞いたとする供述について曖昧で不自然である旨指摘する。しかし,Dの供述に,弁護人らが指摘するような点があるとしても,記憶の減退等で説明できないものではなく,また,前記2・(1)・イ,ウのとおり,C供述によって,Dの前記①,②の点に関する供述は裏付けられており,これからすれば,前記3の検討の中で認めた信用性が揺らぐものではない。なお,弁護人らは,前記①の点に関して,上司である被告人BがいつまでもCからの電話を待っているとするのは不自然で,本件改ざんを伝えるという極めて重大な内容からすれば,Cが直ちに上司である被告人Bに電話をするのが自然だと主張する。しかしながら,Cの供述によれば,①に関するDの伝言を知ったのは,同日 は不自然で,本件改ざんを伝えるという極めて重大な内容からすれば,Cが直ちに上司である被告人Bに電話をするのが自然だと主張する。しかしながら,Cの供述によれば,①に関するDの伝言を知ったのは,同日午後8時51分頃から9時35分頃の取調べ中断時であるが,当時東京地検の指揮下にあって,Q事件関係者の取調べをしている途中であったことからすれば,Cにおいて,むしろ,被告人Bに伝える内容の重大さの故に,前記取調べが終わって落ち着いた時間に電話をしようと考えたとしても不自然ではなく,また,Cが前記取調べ中であり,被告人Aからも,その支障となるようなことはしないように言われていた被告人Bとしても,内容の重大さの故に,Cの電話をいつまでも待とうと思ったとしても何ら不自然ではない。また,弁護人らは,CがDの供述を裏付ける供述ができたのは,二人の間で口裏合わせができていたからである旨主張するが,そのような主張が採用できないことは,後記第7で詳述するとおりである。 (3) 弁護人らは,C供述についても,①Cが本件改ざんを告白するに当たってためらいがないこと,②被告人Bに対する謝罪がないこと,③本件改ざんの動機,手法について具体的な話をせずに,奈良医大の話をしたとすること,④バックアップファイルの削除等,更新日時の改ざん以外の改ざん内容を伝えていないこと,⑤被告人Bが,Cを叱責することなく,優しい口調で話し,「Cを守りたい。」などと発言したが,Cがこれに対して何の反応もしていないことについて,いずれも不自然であって,迫真性もないと主張する。しかしながら,これらに関する主張は,以下のとおり,採用できない。 ア ①については,前記2・(1)・イないしエのとおり,Cは,Dから,本件改ざんがDだけではなく,Eらに伝わったと聞いて,帰阪後,上司に自ら直接会って に関する主張は,以下のとおり,採用できない。 ア ①については,前記2・(1)・イないしエのとおり,Cは,Dから,本件改ざんがDだけではなく,Eらに伝わったと聞いて,帰阪後,上司に自ら直接会って本件改ざんを告白するしかないと覚悟していたところ,Dから,公判部の検事であるF,更には上司である被告人Bにまで伝わったこと,被告人BがCからの電話をその日の取調べが終わるまで何時まででも待っている旨を聞いて,事ここに至っては自ら被告人Bに電話で本件改ざんを告白するとともに,その結果,懲戒処分,刑事罰は免れないが,ソフトランディングの措置をお願いしたいと思い,「首を差し出す」気持ちになったと述べているところ,その内容に不自然な点はなく,このように覚悟を決めたCが,被告人Bに対し,ためらいなく本件改ざんを告白したとしても,不自然ではない。 イ ②については,Cは,前記2・(1)・カのとおり,被告人Bに対し,「検事を辞めなければならなくなりました,応援を解除して大阪に戻してください。」と述べて,自らの責任を明確にしているのであって,弁護人らのいう,言葉としての「謝罪」がなくても,不自然とはいえない。 ウ ③及び④については,Cは,前記2・(1)・カのとおり,被告人Bから,「Dから聞いたけど,Kのところに還付したフロッピーディスクのデータを変えたというのは本当か。」などと尋ねられたので,「本当です。」と答え,続いて被告人Bから,「どういうふうに変えたんだ。」などと尋ねられ,「6月1日を6月8日に変えました。」と答え,「そんなの変えれるのか。」などと尋ねられ,「変えられます。」と答えた旨供述するところ,前記第1・6のとおり,プロパティ問題が顕在化し,それが大きく報道されていた当時の状況にあっては,被告人Bに前記のようなことを伝えれば,その改ざんの れ,「変えられます。」と答えた旨供述するところ,前記第1・6のとおり,プロパティ問題が顕在化し,それが大きく報道されていた当時の状況にあっては,被告人Bに前記のようなことを伝えれば,その改ざんの意図やそれが真実であることは,当然伝わったものと認めることができ,その時点で,被告人Bが求めていたこと,すなわち,Eらが信じる,Cが本件改ざんを行ったというDの話が真実か否かをC本人に確認するという目的は,十分に満たされているというべきであるから,それ以上に,弁護人らが言うように,改ざんの動機,手法や更新日時以外の改ざん内容の詳細について話さなくても,不自然とはいえないし,被告人Bが,それらの点について追及しなかったとしても不自然ではない。また,Cが,責任を認めて,辞職に言及したことから,被告人Bにおいて,感傷的になり,Cと共に捜査をした奈良医大の事件に言及したとしても不思議でなく,涙を流したという,被告人Bの感情とも整合する。 エ ⑤の点については,前記3・(1)・ウ・(エ)・bで指摘した,別紙「B執務記録等一覧表」トピック欄C―②の書面の,「部員を守るのは当然のこと」との記載や,同一覧表C-④の書面にも,「CPは救いたい。何とかならないか?」との記載があることからすれば,Cから本件改ざんの告白を受けた際,被告人Bが,「Cを守りたい。」と発言したとしても不自然ではない。また,被告人Bは,2月1日C・B間電話の際,「応援頑張っているか,ご苦労さん。」などの言葉で会話を始めたが,電話では誰に対してもこのように言う旨供述しているところ,これからすれば,Cから本件改ざんの有無を確認する際に,Cが供述するような言葉を柔らかい口調で言ったとしても,不自然とはいえない。また,Cが本件改ざんの責任を痛感して自殺をすることも懸念される状況にあること れば,Cから本件改ざんの有無を確認する際に,Cが供述するような言葉を柔らかい口調で言ったとしても,不自然とはいえない。また,Cが本件改ざんの責任を痛感して自殺をすることも懸念される状況にあることは,被告人Bにおいても容易に想定できたと推認できるところ,被告人Bが,上司として,Cから真実を聞き出すとともに,Cの自殺を懸念して,殊更Cを追い詰めないようにとの配慮から,柔らかい態度でCとの電話に当たったとしても不自然ではない。なお,弁護人らは,被告人Bが,「Cを守りたい。」などと言ったとすれば,それに対するCの反応について,Cはもとより,D及びFにおいても,何ら触れるとことがないのは不自然である旨主張する。 しかしながら,Cは,被告人Bが,Cが自殺によって責任を取るという,最悪な結論を取らないように,ねぎらってくれているのだと感じて,ありがたいと思った旨,被告人Bの,「Cを守りたい。」などの言動に接した際の自らの心境を述べているところ,そのような思いを抱いたこと自体がCの反応というべきである。また,弁護人らは,Cにおいて,被告人Bに,「守るのは無理です。」との反応を示すのが筋だというが,被告人Bの厚情に触れたCの心情として,それを受け入れたいとの思いが生じたとしても不自然ではなく,したがって,直ちに弁護人ら指摘のような態度を取らなかったとしても,不自然とはいえない。以上からすれば,弁護人らの前記主張は採用できない。 5 被告人Bの供述について前記2のD及びCの各供述とは異なり,被告人Bは,1月30日夜に副部長隣室でCと電話で話したことはなく,F見聞電話はG電話である旨供述する。 しかしながら,以下の理由から,G電話はF見聞電話ではないと認めるのが相当であり,したがって,被告人Bの前記供述は信用できない。 (1) 被告人Bの会話 く,F見聞電話はG電話である旨供述する。 しかしながら,以下の理由から,G電話はF見聞電話ではないと認めるのが相当であり,したがって,被告人Bの前記供述は信用できない。 (1) 被告人Bの会話内容との不整合信用できるF供述によれば,前記3・(1)・ア・(オ)のとおり,F見聞電話で,被告人Bは,相手に対し,「ところで,ちょっと耳に挟んだんやけど,Kのフロッピーが書き換えられとるっちゅう話があるんやけどな。」,「そんなことができるんか。」,「どうやってやるんや。」,「結局どうなっとるっちゅうことや。」などと述べているところ,被告人B自身も,「Dから聞いてるぞ,フロッピーディスクのプロパティなんて変えられるのか。」,「いつに変えてるんだ。」と尋ねたなど,一見,前記F供述と整合するかのような問答をGと行った旨供述しているが,このような会話内容からすれば,被告人Bが電話の相手に対し,本件改ざんの有無に関して,そのようなことが可能なのか否か,本件改ざんがあったとして,それはどのような結果となったのかなどを尋ねていると解するのが合理的である。しかるに,前記第1・8・(1)の経緯からすれば,被告人Bにおいて,本件改ざんをしたことが疑われているのはCであり,Cから直接本件改ざんの話を聞いたとされるのはDであることは十分認識しており,Dからも,本件改ざんの内容について一応の説明は聞いている状況にありながら,被告人Bの供述によっても,「副部長すいませんでした。Cさんが,Cさんが。」,「Cさんだけが悪いんじゃないんです。僕が悪いんです。」などと飲酒しているかの様子で泣きながら話すGに対して,「Cが何を言ったのか。」などと尋ねるのならまだしも,唐突に前記のような質問を発したとするのは不自然というほかない。 さらに,被告人Bは,2月1日C・B間 ているかの様子で泣きながら話すGに対して,「Cが何を言ったのか。」などと尋ねるのならまだしも,唐突に前記のような質問を発したとするのは不自然というほかない。 さらに,被告人Bは,2月1日C・B間電話で交わした会話内容に関して,「応援頑張っているか,ご苦労さん。」と言葉を掛けることから始めて,「ところで,こちらでは,検察官の間で,Cが,Kの自宅から押収したフロッピーディスクのプロパティ,更新日時を書き換えたという話があるんだけれども,本当のところはどうだ。」,「そんなことができるのか。」,「いつに変わったんだ。」と尋ねた旨供述しているところ,その内容は,Fはもちろん,D及びCにおいて,F見聞電話で被告人Bが話したと供述する内容とほぼ一致しており,このことは,F見聞電話で被告人Bの話した内容が,まさにCから本件改ざんに関して事情を聴く際に用いてこそ整合する会話内容であることを,被告人B自らの供述で裏付けているばかりか,むしろ,被告人Bにおいて,F見聞電話でCと交わした会話内容を,2月1日C・B間電話での会話内容に置き換えて供述していることも疑われるのである。 (2) 被告人Bの涙との不整合Fは,前記3・(1)・ア・(カ)のとおり,被告人Bは,F見聞電話の間,ショックを押し殺すような様子で,電話を終えた後は,がっくりとうなだれ,涙を流していた旨供述するが,この点について,被告人Bは,Cをかばって泣いているGに接して,Gが,自ら主任検事として捜査していたG主任事件が東京出張のため頓挫し,悔しい思いをしているにもかかわらず,何でCのために泣いてやれるのかと思い,自らも泣けてきた旨供述する。しかしながら,G自身が,G電話の中で,G主任事件について話が出たとは述べておらず,被告人B自身もGとの電話の際にG主任事件について話題に出 ために泣いてやれるのかと思い,自らも泣けてきた旨供述する。しかしながら,G自身が,G電話の中で,G主任事件について話が出たとは述べておらず,被告人B自身もGとの電話の際にG主任事件について話題に出ることはなかったと供述しているのに,突如,被告人Bにおいて,Gが触れてもいない同事件のことを思い出してGのために涙まで流すというのは不自然であるし,前記F供述にいう,「ショックを押し殺す」,「がっくりとうなだれ」といった被告人Bの態度とも整合しない。 (3) F見聞電話後の被告人Bの態度との不整合F見聞電話の相手がGであるとする被告人Bの供述は,その内容が,前記3・(1)・ア・(カ)のとおり,F見聞電話後,被告人Bは,がっくりとうなだれていたとのF供述に整合しないことは,前記(2)のとおりであるほか,前記3・(1)・ア・(キ)のとおり,Fが,被告人Bに,「認めたんですよね。」と尋ねたところ,被告人Bが,首を縦に振り,「ああ。」と答えたこととも,整合せず,さらに,前記3・(1)・ア・(ク)のとおり,被告人Bが,F見聞電話後になって,急にKの弁護人から本件フロッピーディスクの返却交渉をする話をしたこととも整合しない。 (4) 時間との不整合ア Gは,被告人Bに電話をかけた時間について,1月30日の夜,Eから,被告人Bに本件改ざんについて話したが,険悪な雰囲気になったことなどを伝える内容の電話を受けたこと,その直後頃に,被告人Bと電話で話したことがあることを供述している。ところで,Eは,前記第1・8・(1)のとおり,同日午後3時40分に,Gに電話をして,これから被告人Bと会う旨伝え(別紙「Eら通信履歴一覧表」番号41),その後,同日午後7時24分に,Gに電話で,被告人Bに報告したことを伝えたと認められることからすれ 3時40分に,Gに電話をして,これから被告人Bと会う旨伝え(別紙「Eら通信履歴一覧表」番号41),その後,同日午後7時24分に,Gに電話で,被告人Bに報告したことを伝えたと認められることからすれば(別紙「Eら通信履歴一覧表」番号42),Gが被告人Bに電話をしたのは,同日午後7時24分にかかってきたEからの電話を終えた直後頃ということになる。これに加えて,Gが,G電話で,被告人Bが,直接Eから本件改ざんの事情を聞き,それに対して「ちゃんと対応する」と話すのを聞いたことから,Eが被告人Bに報告し,組織としての対応が始まるということだと認識し,そうなると,Cが自らの意思で自分の身を処することができなくなると考え,「C検事を裏切ったような気になり,改ざんの件についてB副部長に報告したことをC検事に伝えるのが筋だと思い・・・1月30日のうちに,C検事と会いました」と述べているところ,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号43によれば,Gは,同日午後8時8分に,Eに対し,「今晩,Cさんの都合がつけば,今日のことをCさんご本人にお伝えしようと思います」と携帯メールを送信しているのであって,以上を総合すれば,Gが被告人Bと電話で話したのは,同日午後7時30分頃から同日午後8時過ぎ頃の間と考えるのが自然である。なお,Eは,同日午後7時24分,別紙「Eら通信履歴一覧表」番号42記載の電話をGとした後,副部長隣室に行き,その場にいたDが出て行った後,被告人Bと二人で話したことがあるが,それは,同日午後8時8分及び同日午後8時19分のGとの携帯メールのやり取り(別紙「Eら通信履歴一覧表」番号43,44)の前か後かはわからない旨供述しているが,これも,前記認定の妨げとはならない。 イ他方,信用できるF供述によれば,前記3・(1)・ア・(イ)のとおり,F ら通信履歴一覧表」番号43,44)の前か後かはわからない旨供述しているが,これも,前記認定の妨げとはならない。 イ他方,信用できるF供述によれば,前記3・(1)・ア・(イ)のとおり,Fが副部長隣室を訪れたのは,同日午後9時から午後10時頃であり,その後,F見聞電話があるまで,被告人BやDと話し合っていたことになる。 また,前記3・(1)・ア・(カ)ないし(ク)によれば,F見聞電話が終わった後,被告人BがKの弁護人の名前を出したことについてのやり取りがあった後,同月31日午前零時前後頃,副部長隣室を出ている。 ウそうすると,前記アからすれば,G電話があったのは,せいぜい同月30日午後7時30分頃から同日午後8時過ぎ頃の間と考えるのが自然であるのに対し,前記イからすれば,F見聞電話があったのは,どんなに早くても同日午後9時ないし10時以降ということになり,F見聞電話をG電話であると考えるのは,その時間的経緯からしても困難というべきである。 むしろ,このような時間的経緯は,前記2・(1)・オのとおり,同日午後11時台に被告人Bと電話で話したとするC供述にこそ整合するというべきであり,Fが,F見聞電話を終えるとき,被告人Bが「夜遅くに悪かったな。」などと言い,実際,そのときは同日午後11時も回っていたと供述していることとも整合している。 エもっとも,被告人Bは,Fが副部長隣室に来たのは同日午後8時前後頃であり,G電話があったのは早くても同日午後9時頃であり,Fが副部長隣室を出たのは同日午後11時過ぎ頃だった旨供述する。しかしながら,このような被告人Bの供述は,Gの供述及びFの供述のいずれとも整合しない上,その根拠も,G電話があったのが,被告人Bが出席を予定していたR会の関係者から2次会の誘いの電話があった後であると ながら,このような被告人Bの供述は,Gの供述及びFの供述のいずれとも整合しない上,その根拠も,G電話があったのが,被告人Bが出席を予定していたR会の関係者から2次会の誘いの電話があった後であるとの被告人Bの記憶によるものであるが,そのようなR会関係者からの電話があったという被告人Bの供述を裏付ける証拠はなく,また,被告人Bは,前記R会関係者の電話があったとき,Fが同席しており,「副部長,今日は何か予定があったんですか。」と言った旨供述するが,それを裏付けるFの供述もない。 オ以上からすれば,G電話がF見聞電話であるとする被告人Bの供述は,その時間的経緯からも,不自然というべきである。 6 認定した事実前記1ないし5で検討してきたところによれば,争点1に関するC及びDの各供述は信用することができ,これに前記第1の各事実に加え,F供述,その他前掲関係各証拠を総合すると,Cは,1月30日午後11時過ぎ頃,Dの携帯電話を通じて,被告人Bと会話を交わしたが(F見聞電話),その際,被告人Bに対し,本件フロッピーディスクのデータについて,6月1日を6月8日に変えたことを告白するとともに,その結果,検事を辞めなければならなくなったことを申し出たことが認められる。そして,この時点では,前記第1・6・(2)のとおり,プロパティ問題が顕在化し,特捜部でもその対応のため会議が開かれ,被告人Bもこれに出席して,M事件における検察官主張によれば,Kが作成した公的証明書の最終更新日時は平成16年6月4日以降あるいは同月8日以降となるべきであるのに,本件フロッピーディスクのデータでは,それが6月1日になっている状況を認識していたことから,前記Cの電話での告白を聞いた被告人Bにおいて,Cが本件フロッピーディスクのデータを改ざんしたこと,すなわち, フロッピーディスクのデータでは,それが6月1日になっている状況を認識していたことから,前記Cの電話での告白を聞いた被告人Bにおいて,Cが本件フロッピーディスクのデータを改ざんしたこと,すなわち,本件改ざんを認識したと推認するのが相当であり,これに反する被告人Bの供述は信用することができない。 7 その他の弁護人らの主張について(1) B執務記録等に記載がないことなど弁護人らは,B執務記録等には,1月30日にCから電話があったことをうかがわせる記載は一切ないことからしても,1月30日にCから電話がなかったことが裏付けられている旨主張する。しかしながら,G電話についても,B執務記録等には一切の記載がなく,全ての電話について漏れなく記載するわけではないことは,被告人B自身も自認しているところである。もっとも,被告人Bは,特捜部長である被告人Aに報告を上げるべき対象となる電話については記載したと述べているが,G電話についても,被告人Bの供述によるなら,被告人Bから積極的に「フロッピーディスクのプロパティなんて変えられるのか。」,「いつに変えているんだ。」などと尋ね,Gは「多分変えられるんだろうと思います。」などと答えたというのであるから,これもまた,被告人Aへの報告対象となる電話というべきであり,被告人B自身も,これも記載しておくべきだった旨供述している。そうすると,B執務記録等に1月30日にCから電話があったことの記載がないことは,さして決定的なこととはいえず,前記6の認定を覆すには足りない。 なお,別紙「B執務記録等一覧表」A―①の「1・30罫紙メモ」には,①「プロパティと捜報とくい違いありーのはず」「6/4以降の日付か?」との記載や②「C 事実確認」「東京→帰阪」との記載がある。この点,「1・30罫紙メモ」の右上に ―①の「1・30罫紙メモ」には,①「プロパティと捜報とくい違いありーのはず」「6/4以降の日付か?」との記載や②「C 事実確認」「東京→帰阪」との記載がある。この点,「1・30罫紙メモ」の右上には「22・1・30 5:00~」の記載があること,Eが,前記第1・8・(1)のE室でのやり取りの際,被告人Bが,切り離しができる罫線が引いてあるノートのようなものにメモを取っていたと供述しているが,Fも,同メモのM公判に関連する記載について,副部長隣室で話した可能性がある旨述べていることからすれば,前記メモのうちM公判の状況に関連する記載は副部長隣室でなされた可能性も否定できない。 ところで,これらの記載をした時間について,被告人Bは,1月30日午後9時頃だと述べているが,仮に,そうだとしても,前記6の認定に照らせば,これらの記載はF見聞電話より前になされたことになる。そうすると,F見聞電話でCの話す内容が未確定である以上,更新日時につき,Dの記憶に基づいて前記①のような記載をしたとしても不自然ではなく,また,Cが帰阪した後も,なお必要な事実確認をすることは十分想定されることから,前記②のような記載をしたとしても不自然ではない。したがって,前記①,②の記載が,前記6の認定と整合しないことはない。 (2) 大阪の代表について弁護人らは,Fが,前記3・(1)・ア・(オ)のとおり,F見聞電話において,被告人Bが,電話の相手方に,「そっちの事件も大変な事件やから,大阪の代表で行っとるんやから頑張ってくれ。」などと言った旨供述しているところ,このことが,F見聞電話の相手がGであることを裏付ける一方,被告人Bにおいて,本件改ざんを告白したというCに対し,「大阪の代表」と言うはずがない旨主張する。しかしながら,前記第1・5のとおり,Cは,Gと同様 ,F見聞電話の相手がGであることを裏付ける一方,被告人Bにおいて,本件改ざんを告白したというCに対し,「大阪の代表」と言うはずがない旨主張する。しかしながら,前記第1・5のとおり,Cは,Gと同様に,東京地検の応援要請を受けて,Q事件の捜査に従事しており,この点では,CとGの立場は同じであるばかりか,Cにおいては身柄拘束中のQ事件関係者の取調べを担当していたのであるから,被告人Bにおいて,Gに「大阪の代表」と言って自然であるならば,Cに対しても,「大阪の代表」と言っても不自然とはいえない。もっとも,弁護人らは,C供述によれば,Cは,被告人Bに本件改ざんを告白したことになるが,そうであれば,被告人Bにおいて,犯罪者であるCを,「大阪の代表」と持ち上げるはずがないとも主張する。しかしながら,前記4・(3)・エのとおり,別紙「B執務記録等一覧表」C―②及び④のトピック欄の記載もあることなどからすれば,被告人Bにおいて,1月30日当時,本件改ざんの告白を受けたとしても,特捜部員であるCを守りたいとの思いを持ったとしても不自然ではなく,また,被告人Bが,Cを殊更追い詰めないようにとの配慮から,柔らかい態度でCに接したとしても不自然ではないところ,そのような態度で接する中で,Q事件について応援派遣されているCに,「大阪の代表」と呼び掛けたとしても,不自然とはいえない。Dは,この点について,被告人Bが,Gに対し,「お前は大阪を代表して,東京に応援に行ってるんだから」などと呼び掛けた旨供述している。しかしながら,前記D供述からも分かるように,被告人Bのいう「大阪の代表」とは,東京地検のQ事件捜査に応援派遣されていることを指しており,したがって,同じ立場のCに対し,被告人Bが同様の呼び掛けを行っても不自然でないことは,既に述べたとおりであり,Dも, 「大阪の代表」とは,東京地検のQ事件捜査に応援派遣されていることを指しており,したがって,同じ立場のCに対し,被告人Bが同様の呼び掛けを行っても不自然でないことは,既に述べたとおりであり,Dも,自らの記憶には残っていないが,被告人BがCにも「大阪の代表」と話している可能性は否定していない。したがって,この点についての弁護人の主張も,前記6の認定を左右するに足りるものではない。 (3) 偶然が重なり過ぎるとの弁護人らの主張について弁護人らは,F見聞電話がG電話ではなかったとするには,あまりにも不自然な偶然が重なり過ぎるとして,①偶然にも,被告人Bが後付けで「作り話」の材料とできるような電話をGがしたこと,②偶然にも,被告人Bが,Cを「大阪の代表」と呼び掛けたにもかかわらず,Fだけがそのことを証言し,DもCもそのことを供述しなかったこと,③偶然にも,Dは,Gへの言葉としてのみ「大阪の代表」という言葉を証言したこと,④偶然にも,被告人Bには,G主任事件の捜査中断をめぐって,Gについて「大阪の代表」と激励する事情があったこと,⑤偶然にも,被告人Bには,Gに対し涙を流す事情が存在し,そのことがB執務記録にも記載されたこと,⑥偶然にも,Fが,被告人Bの「お前ばかな考えを起こすなよ」「Cを守りたい」といったCに対する言葉を聞き逃し,あるいは失念したこと,⑦偶然にも,Fは,電話の受渡し,電話後のやり取り,メモを見せられた時期など,電話の相手方がCであることを特定する事情について,ことごとく記憶が減退したことの7点を主張する。しかしながら,そもそも,被告人Bにおいて,本件が起訴された後に,証拠に照らし合わせながら成り立ち得る弁解を検討したとすれば,弁護人らがいう点は,「偶然」とはいえないことになるのであって,G電話については,被告人B自身, 被告人Bにおいて,本件が起訴された後に,証拠に照らし合わせながら成り立ち得る弁解を検討したとすれば,弁護人らがいう点は,「偶然」とはいえないことになるのであって,G電話については,被告人B自身,本件が起訴された後に,開示されたGの調書を見てからG電話での会話を思い出したと述べているところ,それに整合するよう自己の弁解を考えることも十分可能である。また,弁護人らが挙げる点のうち②ないし④の3点は,被告人Bが電話の相手方に「大阪の代表」と呼び掛けたことに関する主張であり,これが,前記6の認定を左右しないことは,前記(2)で述べたとおりである。次に,⑤について,被告人Bの涙とG電話が整合しないことは,前記5・(2)のとおりである。また,⑥については,被告人Bが,「Cを守りたい」などと述べたことについて,Fが記憶していないことについての主張であるが,これが不自然といえないことは,前記3・(1)・ウ・(エ)で述べたとおりである。さらに,⑦については,Fの記憶が減退したことについての指摘であるが,そもそも,時間が経てば記憶は減退するもので,不自然ではないし,それが,F供述の信用性を揺るがせるものでないことについては,前記3・(1)・イ・(ウ)で述べたとおりである。加えて,①については,Gが電話をかけたこと自体を偶然とするものであるが,そのような事実があったことだけから,前記6の認定が左右されないことは明らかである。したがって,前記弁護人らの主張には理由がない。 第4 争点2について 1 前提となる認定事実前記第1の前提事実に加え,前掲関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 2月1日午前9時40分過ぎ頃の部長室での出来事前記第1・11・(1)・ア,イのとおり,被告人Bは,2月1日午前9時40分過ぎ頃から同日午 各証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 2月1日午前9時40分過ぎ頃の部長室での出来事前記第1・11・(1)・ア,イのとおり,被告人Bは,2月1日午前9時40分過ぎ頃から同日午前9時50分頃までの間,一人で被告人Aがいる部長室に入ったことが認められるところ,被告人Bが部長室に入っている間に,副部長室で待っていたF,D及びEは,部長室から,ドーンという机を激しくたたく音が1回聞こえた後,被告人Aの,「何。」などといった非常に大きな怒鳴り声が聞こえた旨,ほぼ一致して供述しているほか(もっとも,Dは,机をたたく音を聞いた記憶にない旨供述している。),この点について,被告人A自身も,後記(2)・アのとおり,被告人Bからの報告を聞いて,激しく怒った記憶がある旨述べている。以上からすれば,被告人Aは,被告人Bからの報告を聞いて,激高したと認めるのが相当であり,被告人Bも,被告人Aが被告人Bの報告に接して怒ったこと自体は認めている。 (2) 同日の被告人Aの心情被告人Aの2月1日の状況は,前記第1・11のとおりであるが,この間の心情について,被告人Aは,以下のとおり供述している。 ア前記第1・11・(1)・イの場面で,被告人Bからの報告を聞いて,被告人Aは,「そういう衝撃的な報告を受けまして,もう本当に頭をがつんと殴られるような思いがいたしました。」と述べ,被告人Bの報告が遅れたことに対して,「B君,何でこの報告が今日になるんだ,なぜ土日にこういう重要な問題を報告しないんだ。」と言って,激しく怒った記憶があると述べている。 イ前記第1・11・(1)・ウのとおり,被告人Aは,同日午前10時50分頃まで会議に出席したが,その間の心情として,「とにかく早く終われと,早くこの場から解放して,僕だけ解放してほしいという気持 イ前記第1・11・(1)・ウのとおり,被告人Aは,同日午前10時50分頃まで会議に出席したが,その間の心情として,「とにかく早く終われと,早くこの場から解放して,僕だけ解放してほしいという気持ちで焦ってましたね。気持ちはもう,ここ心にあらずという感じでした。」と述べている。 ウ被告人Aは,「当時の状況として,Cがデータを改ざんしたという,その非常に衝撃的な一つの出来事が頭にバーンと入ってきて,どうするんだと,それに対して,どうしたらいいんだという思いを持っており」,被告人Bに被告人A自身の辞職ということも考えないといけないと言った記憶があると述べている。 エ被告人Aは,前記第1・11・(2)・ウのとおり,兵庫県姫路市に居住する叔母方に立ち寄ったが,その帰途の心情として,「今日の出来事からしたら,本当にCはやってるんじゃないかと。本当にデータを変えたんじゃないかと。どうするんだろうという,そういうその思いで,非常に心が暗くなりましたね。でも,反面,またつらつら考えるに,あのCが,あのベテランのCが何でそんなばかなことをするんだろうという,僕の彼に対する信頼」,「だったら何であんなフロッピーデータをすぐ返すんだ。それから,あんな報告書があるのに,何でそんな,その原本だけ変えたって何の意味もないじゃないかというようなことをつらつら考えると,本当に淡い期待でしたけども,ひょっとしたら,若い連中が何かのうわさで,わあっと騒いでるだけかもしれんなという,本当に淡い期待を持ったりして,気持ちが交錯して」,「やってるかなという気持ちが支配して,非常につらい気持ちで帰ったことをよく覚えています。」などと述べている。 オ被告人Aは,前記第1・11・(2)・ウのとおり,2月2日午前零時11分頃,二男に対し,「父は部下の責任をとって辞めるこ 非常につらい気持ちで帰ったことをよく覚えています。」などと述べている。 オ被告人Aは,前記第1・11・(2)・ウのとおり,2月2日午前零時11分頃,二男に対し,「父は部下の責任をとって辞めることになるかも知れない。」との携帯メール(Aメール①)を送信したほか,帰宅後,妻に対し,「CがM事件の過程で,大変なことをどうもやっているみたいだけども,もしこれが事実だったら,辞めなきゃいけなくなるかもしれんから,覚悟しとけよ。」などと言った。 2 前記事実から推認できる事実前記第1の前提事実に加え,前記1の事実からすれば,以下の理由から,被告人Aは,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人Bから,同被告人が1月30日にCから電話で本件改ざんの告白を受けた旨の報告を受け,ここにおいて,被告人Aも,本件改ざんの事実を認識するに至ったと認めるのが相当である。 (1) 被告人Bは,特捜部の副部長として,特捜部長である被告人Aに,同部に関わる重要事項については,報告を上げるべき義務を負っていたものであり,被告人B自身,1月30日にCから本件改ざんの告白を受けていれば,それは,被告人Aに報告しなければならないことである旨自認していることからすれば,被告人Bにおいて,Cから本件改ざんを行ったという重大事項についての告白を受けた以上,1月31日は被告人Aが私用で大阪を離れる旨聞いていたことからその報告を控えたという被告人Bの供述を踏まえても,週明けである2月1日の朝一番には,被告人Aに報告したと考えるのが合理的である。 (2) また,前記1・(1)の事実からすれば,被告人Aは,被告人Bから報告を受け,激高しているが,これは,被告人Bが,Cから電話で本件改ざんの告白を受けた事実を被告人Aに報告したと考えれば,自然に理解できる事実である。 1)の事実からすれば,被告人Aは,被告人Bから報告を受け,激高しているが,これは,被告人Bが,Cから電話で本件改ざんの告白を受けた事実を被告人Aに報告したと考えれば,自然に理解できる事実である。 (3) さらに,前記1・(2)のとおり,被告人A自身が述べる2月1日の心情も,同日朝に,被告人Bから,電話でCから本件改ざんの告白を受けたとの報告を受けたこととよく整合している。もっとも,前記1・(2)・エのとおり,被告人Aは,同日夜,自宅への帰途において,なお,Cが改ざんを行っていないのではないかとの「本当に淡い期待」も持った旨述べているほか,「Cはやってるんじゃないか」などと,Cが本件改ざんを行ったことを確信していないかのような言い回しも用いている。しかしながら,被告人Aにおいて,被告人Bから前記報告を受けても,なお,C自身から直接告白を受けていない身として,「何かの間違いであってほしい」との思いを持ち,また,そのような思いの表れとして,前記のような言い回しをする心境にあったとしても,不自然とはいえず,被告人Bから前記報告を受けていたとの認定が左右されるものではない。 3 被告人両名の供述等について(1) 被告人両名の供述について被告人両名は,いずれも,2月1日午前9時40分過ぎ頃に,部長室で,被告人Bが被告人Aに対し,「1月30日に,E,D,Fに呼ばれて登庁しました。Dからは,Cと電話で,フロッピーディスクを返した理由を聞いたところ,更新日時を書き換えたと聞いたと言ってます。」,「Eは興奮して,公表するというふうに言ってきました。」,「私がKの主任弁護人を知っているので,フロッピーディスクを確かめようと思いましたが,やめました。」などと報告した旨供述している。これからすれば,被告人両名の供述によっても,被告人Bは,1 た。」,「私がKの主任弁護人を知っているので,フロッピーディスクを確かめようと思いましたが,やめました。」などと報告した旨供述している。これからすれば,被告人両名の供述によっても,被告人Bは,1月30日に本件改ざんに関しての部下検事等の動きについて自らが経験したことを被告人Aに報告していることになる。もっとも,被告人Bは,同日夜,Cから電話で本件改ざんの告白を受けたことは報告事項の中に入れておらず,被告人Aもそれは聞いていない旨供述している。しかしながら,前記第3・6のとおり,被告人Bにおいては,同日夜,Cから電話で本件改ざんの告白を受けたことが認められる以上,Eらの動きの他に,最も重要な報告事項であるべきCから本件改ざんの告白を受けた事実についても,また,被告人Aに隠さず報告したものと考えるのが自然であり,これに反する被告人両名の供述は信用できず,前記2の認定は覆らない。 (2) Fの態度についてFは,前記第1・11・(1)・ウのとおり,2月1日午前中に,被告人Aと話す機会があったが,その際,被告人Aに対し,「上に上げてくれるんですよね。」と聞いたところ,被告人Aが,「まだよく分からないじゃないか。 Cが大阪に戻ってきてから,もっとよく話を聞こう。」などと言うので,被告人Aが問題の先送りを考えているのではないかと不信感を持ち,「このまま黙っていたら,下の者も含めて,みんな処分されることになりますよ。」と言うと,被告人Bが,「いや,そんなことにはならん。お前たちみたいな下の人間に責任が行くはずはないんだ。」と言うので,本件改ざんの件が大阪地検上層部にも上がらないような状況で,ただでさえ公判維持が難しいと考えていたM事件の公判などやっていられないと思い,「大体この事件何なんですか。証人テストをやったら,みんな引っくり返ってますよ。 阪地検上層部にも上がらないような状況で,ただでさえ公判維持が難しいと考えていたM事件の公判などやっていられないと思い,「大体この事件何なんですか。証人テストをやったら,みんな引っくり返ってますよ。本当に大丈夫なんですか。」と特捜部の捜査を批判するようなこと言い,被告人Aになだめられた後も,本件改ざんについて,「私の方から上に話をすることになりますよ。そういう覚悟もしてますよ。」などと言った旨供述している。 この点,弁護人らは,Fが,前記供述のように,被告人両名の態度に不信感を持ったのであれば,F見聞電話で,被告人BがCから本件改ざんの告白を受けていることを指摘するのが自然であるのに,Fも含めて,誰もそれをしていないということは,F見聞電話で被告人Bが話した相手がCではないことを示している旨主張する。しかしながら,Fは,前記第3・3・(1)・エのとおり,F見聞電話で被告人BがCから本件改ざんの告白を受けたことを確信している上,前記1・(1)のとおり,被告人Bが部長室に入った後,部長室から被告人Aの怒鳴り声などが聞こえたことから,この時点で,被告人Bが被告人AにF見聞電話でCから本件改ざんの告白を受けた旨報告をしたものと確信しており,そのことを前提に,それを被告人Aが大阪地検上層部に報告するか否かに専ら関心を持っていたことが,その供述から明らかである。したがって,前記のやり取りの中で,FがF見聞電話につき自己が思う内容について触れなかったとしても,不自然ではなく,したがって,また,このことから,F見聞電話で被告人Bが話した相手がCであったとの,前記第3・6及び前記2の認定が左右されるものでもない。 (3) 被告人Aの言動について前記(2)のとおり,Fは,被告人Aが,「まだよく分からないじゃないか。 Cが大阪に戻ってきてから 記第3・6及び前記2の認定が左右されるものでもない。 (3) 被告人Aの言動について前記(2)のとおり,Fは,被告人Aが,「まだよく分からないじゃないか。 Cが大阪に戻ってきてから,もっとよく話を聞こう。」などと言った旨供述しているほか,別紙「B執務記録等一覧表」A―②の「2・1罫紙メモ」に「C 帰阪―要)調査」との記載があることから,弁護人らは,この時点で,被告人Aは,F見聞電話でCが本件改ざんの告白を受けたことを認識していなかったことを示している旨主張する。しかしながら,被告人Aが前記言動に至ったのは,Fから,大阪地検上層部への報告を迫られたことに対する対応としてであり,Fが感じ取ったとおり,時間稼ぎのためから発した言葉としても理解でき,また,前記罫紙メモの記載は,被告人Aの前記言動をそのまま記載したものであって,被告人Aの前記言動を,前記のような時間稼ぎの言動として理解することの妨げになるものではない。したがって,弁護人ら指摘の被告人Aの言動や罫紙メモの記載から,前記第3・6及び前記2の認定が左右されることはない。 第5 2月1日から同月2日までの状況ついて(争点3・その1) 1 2月1日C・B間電話について(1) C供述の概要前記第1・11・(2)・イのとおり,被告人Bは,被告人Aからの指示を受けて,2月1日C・B間電話で話しているが,その内容について,Cは,おおむね,以下のような供述をしている。 ア被告人Bが,「Cの件を部長に上げた。部長も大変驚いておられる。Cの件を次席・検事正に上げることになった。C,この件は過誤ということで説明を付けられないのか。」などと言うので,被告人Bが本件改ざんの事実を被告人Aに報告した上で,被告人両名において,過誤で説明が付く話であれば,何とかそ ることになった。C,この件は過誤ということで説明を付けられないのか。」などと言うので,被告人Bが本件改ざんの事実を被告人Aに報告した上で,被告人両名において,過誤で説明が付く話であれば,何とかその説明で私を守ろうとしてくれているのだと思った。 イそこで,自分は,プロパティの報告書(本件捜査報告書)があること,改ざんしたフロッピーディスクを持ち主であるKに還付していることという,故意の改ざんではないことを根拠づける二つの事実(以下「本件過誤説明根拠」という。)を考え,前記アの被告人Bの問い掛けに対し,「それは,説明付けられますけど。」と答えた。そして,本件フロッピーディスクのコピーを見ていて,確認検証をしているときに,間違えて本件フロッピーディスクの現物のデータを変えた可能性があるという虚偽の過誤説明(以下「本件虚偽過誤説明」という。)を考え,それを被告人Bに伝えたところ,被告人Bは,「分かった,それで行こう,それが真実だ,真実は一つだ。」と言った。 ウその他にも,被告人Bから,プロパティの報告書(本件捜査報告書)を知らなかったのかと聞かれて,「何となく。」と答え,同報告書が公判部に引き継がれている点についてはどうかと聞かれて,「自分がしたことではないので曖昧です。」,「よく分からない。」と答え,本件データのうち通知案とコピー通知案のどちらをどうしたのかと尋ねられて,「コピー通知案は最終更新日時を変えているが,通知案は元のままだ。」と答え,コピー通知案のデータの作成日時はどうしたと聞かれて,自分が当時使っていたソフトでは作成日時を変える機能がないので,「変えられません。」と答え,アクセス日時をどうしたのかと聞かれ,「分かりません。」と答え,既にF見聞電話の際に伝えているが,改めて最終更新日時をいつにしたのかを確認 成日時を変える機能がないので,「変えられません。」と答え,アクセス日時をどうしたのかと聞かれ,「分かりません。」と答え,既にF見聞電話の際に伝えているが,改めて最終更新日時をいつにしたのかを確認され,「6月8日にしてる。」と答え,なぜかと聞かれたので,「6月上旬という他の証拠関係に合うので,8日を選んだ。」と答え,細かな改ざん方法として,「どういうふうに変えたのか。」と聞かれたので,「私物のパソコンに入っている,エクスプローラーのようなソフトを使った。」,「そのデータにマウスを置いて,右クリックすると,そのソフトで,日付と属性の変更という表示が出るので,そこをクリックすると数字を入力する画面が出て,そこで,「1」を「8」に入力すると変えられる。」と答えた。 (2) C供述の信用性前記(1)のC供述は,以下の理由から,これを信用することができる。 ア内容の合理性前記第3・6のとおり,1月30日のF見聞電話において,Cは,既に被告人Bに本件改ざんを告白し,前記第4・2のとおり,被告人Aも2月1日午前9時40分過ぎ頃に,被告人Bからその旨報告を受けて,本件改ざんを認識したことが認められるところ,これらを前提にすると,Cの前記供述内容には,不自然・不合理と思われる点はない。 もっとも,被告人B弁護人は,被告人Bから,前記(1)・アのとおり,「この件は過誤ということで説明を付けられないのか。」と尋ねられたCが,その場で「サッと考えて」,前記(1)・イのような虚偽の過誤説明ができたとするのは,不合理だと主張する。しかしながら,本件改ざんをしたほか,本件フロッピーディスクを還付し,また,本件捜査報告書に関するM事件弁護人の予定主張や冒頭陳述の内容について知るCであれば,実際に行った改ざんの手順の一部に手を加えて,前 ら,本件改ざんをしたほか,本件フロッピーディスクを還付し,また,本件捜査報告書に関するM事件弁護人の予定主張や冒頭陳述の内容について知るCであれば,実際に行った改ざんの手順の一部に手を加えて,前記(1)・イの程度の過誤説明を考え付くことは,それほど困難とは思えず,被告人B弁護人の主張は採用できない。 また,被告人B弁護人は,①特捜部の副部長で,捜査経験の豊富な被告人Bが,改ざん方法を聞き出す前に,いきなり,「過誤ということで説明を付けられないのか。」などと切り出し,前記(1)・イ,ウで述べられている程度の説明を聞いただけで,それ以上話を詰めることもなく,また,Cに,本件捜査報告書があるのに,なぜ本件フロッピーディスクをKに返したのか,あるいは,そもそもなぜ本件改ざんを行ったのかなど,本件過誤説明根拠について,そのような行為をした動機を尋ねることもなく,「分かった,それで行こう。」などと述べて納得していること,②Cにおいて,本件データにつき,最終更新日時の書き換えだけではなく,バックアップファイルの削除やページの入れ替えなど,本件虚偽過誤説明では,到底説明が付けられないような改ざんも行っているにもかかわらず,それを被告人Bに報告していないことを指摘して,前記C供述の内容は不合理であると主張する。しかしながら,前記第1・11・(2)・イのとおり,被告人Bは,被告人Aの指示を受けて2月1日C・B間電話をしたところ,前記(1)・アのC供述によれば,Cは,被告人両名は,既に,Cが本件改ざんを行ったことを認識した上で,大阪地検上層部への報告を乗り切れるだけの虚偽の過誤説明を求めているものと理解し,そのような虚偽の過誤説明として,前記(1)・イのとおり,本件虚偽過誤説明を伝えたと述べているのである。これからすれば,Cにおいて,被告人B弁護人 れるだけの虚偽の過誤説明を求めているものと理解し,そのような虚偽の過誤説明として,前記(1)・イのとおり,本件虚偽過誤説明を伝えたと述べているのである。これからすれば,Cにおいて,被告人B弁護人が前記①,②で指摘するような,被告人両名の求めに沿わない事情は述べなかったとしても不自然とは言えない。また,被告人Bにしても,本件改ざんがあったことは,既にCから告白を受けて知っている以上,間近に迫った大阪地検上層部への報告を乗り切るため,Cから本件改ざんの動機等を詳細に聞くよりも,被告人Aの指示に沿って,大阪地検上層部への報告を乗り切るのに必要かつ十分な限りで,「過誤ということで説明を付ける方法」を聞き出すことを優先させ,その結果,Cの本件虚偽過誤説明を聞いて,その内容であれば,本件過誤説明根拠もあることから,大阪地検上層部への報告を乗り切ることができると考えて,被告人B弁護人が指摘するような疑問を投げかけないまま,「分かった,それで行こう。」などと言ったとしても,不自然とはいえない。したがって,前記C供述の内容が不合理とはいえず,被告人B弁護人の主張は採用できない。むしろ,被告人Bは,Cの本件虚偽過誤説明を信用したと供述するが,そうであれば,2月10日にCから本件上申書の提出を受けた際,その中で,Cが本件フロッピーディスク内のファイルの更新日時に手が加えられているのではないかを検証していた際に誤ってデータを書き換えたかもしれない旨記載しているところ,Cが持っているファイルバイザーなるソフトにそのようなことを解明できる機能があるのか尋ねず,また,その際,遊び半分でデータの日時に手を加えたとの記載に違和感を持たなかったと述べているが,これこそ,被告人Bが,捜査の専門家であることからすれば,不自然・不合理というべきである。 イ B ,その際,遊び半分でデータの日時に手を加えたとの記載に違和感を持たなかったと述べているが,これこそ,被告人Bが,捜査の専門家であることからすれば,不自然・不合理というべきである。 イ B執務記録等の記載との整合性被告人Bは,2月1日C・B間電話でのやり取りなどを,別紙「B執務記録等一覧表」A―④の日付なし罫紙メモに記載したが,そのメモの枠内の12行目(枠としての行をいい,記載されている行をいうものではない。)までの記載は,Cの,前記(1)・ウで供述する,被告人Bとの間でのやり取りと整合している。 もっとも,被告人Bは,Cが供述するように,被告人Bが2月1日C・B間電話でCが最終更新日時を「6月8日に変えた。」と答えたのを,前記日付なし罫紙メモに記載したのであれば,「6/8」と記載するはずである旨供述し,これを受けて,被告人B弁護人も,C供述は,日付なし罫紙メモの記載と整合しない旨主張する。しかしながら,被告人Bは,本件捜査報告書の添付資料から,本件データのプロパティ画面には,最終更新日時として「6月1日」と月日が漢字で記載されていることを認識しており,被告人Bにおいても,本件捜査報告書の添付資料を見ながら書いたので,「6月8日」と漢字表記した旨供述している。そうすると,被告人Bの認識においては,最終更新日時は,単に日付だけの意味を有するのではなく,本件捜査報告書の添付資料における表記の在り様ということも頭にあり,そのことから,Cが,「6月8日に変えた」と答えたことを受けて,本件捜査報告書での表記に合わせて,「6月8日」と漢字表記したとしても不自然ではない。したがって,前記日付なし罫紙メモで,「更新日時」との記載に続けて,「6月8日」との記載がなされていることをもって,これが前記C供述と整合しないと 「6月8日」と漢字表記したとしても不自然ではない。したがって,前記日付なし罫紙メモで,「更新日時」との記載に続けて,「6月8日」との記載がなされていることをもって,これが前記C供述と整合しないとはいえない。 なお,被告人Bは,F見聞電話の際,Cから本件改ざんの告白を受けていないことを前提に,2月1日C・B間電話でのやり取りと,それを日付なし罫紙メモに書き取った状況について供述しているが,F見聞電話の際,被告人BがCから本件改ざんの告白を受けたことは,前記第3・6のとおりであるから,被告人Bの前記供述は信用できず,C供述の信用性を左右しない。 ウ供述の変遷について被告人B弁護人は,Cが,捜査段階において,2月1日C・B間電話については,10月6日付け調書までは全く供述しておらず,10月10日付け調書に至って,検察官からその前日に発見された日付なし罫紙メモを見せられて,被告人Bと直接やり取りしたことに間違いないと思い出せた部分があると述べたに過ぎないにもかかわらず,公判において,前記(1)のとおり,2月1日C・B間電話について,詳細な供述をするのは不自然であり,日付なし罫紙メモの記載につじつまが合うように,自己の供述を変遷させた旨主張する。しかしながら,Cに前記のような供述の変遷があるとしても,Cが記載していた手帳(以下「C手帳」という。)において,被告人Aらによる大阪地検上層部への報告のあった日付が1日ずれて記載されるなど,その記憶に混乱があったこともうかがわれるところ,このような状況の中で,Cにおいて,2月1日C・B間電話について,当初なかった記憶が喚起されていったとしても不自然とまではいえない。また,Cは,自らの証拠隠滅事件で起訴された後,差し入れられた証拠や,Q事件で自らが証人として出廷する 月1日C・B間電話について,当初なかった記憶が喚起されていったとしても不自然とまではいえない。また,Cは,自らの証拠隠滅事件で起訴された後,差し入れられた証拠や,Q事件で自らが証人として出廷することが端緒となって記憶を喚起したQ事件関係者の取調状況と照らし合わせる中で,徐々に事実関係を思い出していった旨供述していることなど,具体的な根拠を挙げて,自らの記憶が喚起されていった過程を述べている。したがって,弁護人ら指摘のような供述の変遷がC供述にあるとしても,不自然とはいえず,前記ア,イで検討した根拠によって認められる前記C供述の信用性を左右するに足りない。 (3) 認定した事実以上から2月1日C・B間電話の内容についての前記C供述は信用することができ,これに前掲関係各証拠を総合すると,Cは,2月1日C・B間電話において,被告人Bから,「この件は過誤ということで説明を付けられないのか。」などと尋ねられ,本件過誤説明根拠を指摘した上で,本件虚偽過誤説明をすることが可能である旨,被告人Bに伝えるなど,前記(1)のような内容の会話を交わしたと認めるのが相当である。 2 次席報告前の2月2日の状況について(1) D供述についてア D供述の概要前記第1・12・(3)のとおり,被告人Aは,被告人B及びDを伴って,2月2日夕方頃,次席室に行き,次席に対し本件データに関する報告をしたが,それに至る2月2日の状況について,Dは,おおむね以下のような供述をしている。 (ア) 2月2日登庁した後,被告人Aから指示されて,部長室に行くと,被告人両名がいたが,そのとき,被告人Aは,2月1日の狼狽していた状況とは変わって,非常に落ち着いていた。 (イ) 被告人Aは,「いいかD君,これから話すことは 指示されて,部長室に行くと,被告人両名がいたが,そのとき,被告人Aは,2月1日の狼狽していた状況とは変わって,非常に落ち着いていた。 (イ) 被告人Aは,「いいかD君,これから話すことはもみ消しじゃないぞ,危機管理だからな。」,「今回の件はC君のミステイクということで行くから。」と言った。その上で,被告人Aが,「どうだD君,ミステイクということで行けるか。」と聞いてきたが,これは,本件改ざんを過失あるいは不注意による改変行為にすり替えた場合,他の事実と矛盾を来すようなことはないかという趣旨の質問だと思い,「Cさんに聞いてみないと分かりません。」と答えた。これに対し,被告人Aは,「これからB君がC君とちょっと話をする,だから,君は東京にいるC君に連絡を取って,B君に連絡をするように言ってくれ。」などと言った後,「君は僕に改ざん行為を言わなかった,知っていたのに,それを隠していた,言わなかったという責任がある,Eにも話した責任があるんだ,だから,僕の指示に従え。」などと言ったので,返す言葉もなく,「分かりました。」と答え,過失あるいは不注意による改変行為にすり替えるという被告人Aの方針に従うことにした。 (ウ) そこで,同日の昼休みにCと携帯電話で話したが,その際,Cに対し,「Aさんから,今回の件はミステイクということで行くという,そういう方針が出ました,取りあえず,BさんがCさんと話をしたいということなので,今から言う番号に電話をしてください。」などと伝え,その後,しばらくして,被告人BからD室に電話があり,「Cと話をした,これからミステイクというストーリーで行くに当たって,俺はフロッピーディスクとか,そういうコンピュータのことに詳しくないから,Cから,どういうふうに説明すればいいのかをお前の方で聞き取ってくれ た,これからミステイクというストーリーで行くに当たって,俺はフロッピーディスクとか,そういうコンピュータのことに詳しくないから,Cから,どういうふうに説明すればいいのかをお前の方で聞き取ってくれ,聞き取った内容をまた報告してくれ。」などと言われた。 (エ) そこで,同日昼休みのうちに,Cと携帯電話で話し,Cから,「Kが本件フロッピーディスクを自宅内に隠していたという事実があったことから,Kがそのデータを改ざんしているかもしれないということになり,Cが私物のPCを使って,改ざんの跡がないかを検証した,検証する際に本件フロッピーディスクのデータをそのまま検証すると,それが書き換わってしまうようなミスが生じかねないので,一旦原データを私物PCのハードディスクにコピーし,そのコピーを検証していたが,手違いがあって,原物のデータの方をいじっていたかもしれない,なぜそれが分かったかというと,検証作業を終えてフロッピーディスクをKに還付した後,私物のPCを確認したところ,保存されているデータの方の更新日付が変わっていなかったので,もしかしたら,原データが書き換わったのかと思った。」などという趣旨の,本件改ざんを過失あるいは不注意による改変行為と構成した場合の経緯についての説明を聞かされた。 (オ) Cに,「一体何変えたんですか。」という趣旨のことを聞くと,Cは,「更新日付の他に,データの1ページ目と2ページ目を入れ替えた,当該データが一太郎だったので,バックアップデータが自動的にできるが,それを消去した,1ページ目と2ページ目を入れ替えたことによってデータの重さが変わった。」などと答えた。Cに,「それで大丈夫ですか。」と聞くと,Cは,被告人両名には,「取りあえずそれで報告しといて。あとは大阪に帰った後,そこは詰めるから。」な えたことによってデータの重さが変わった。」などと答えた。Cに,「それで大丈夫ですか。」と聞くと,Cは,被告人両名には,「取りあえずそれで報告しといて。あとは大阪に帰った後,そこは詰めるから。」などと言った。 (カ) その後,まず,被告人Bに,Cとの電話内容を報告し,続いて,被告人Bと一緒に部長室に行って,被告人Aに報告した。 イ D供述の信用性前記アのD供述は,以下の理由から,これを信用することができる。 (ア) 内容の合理性前記第3・6のとおり,1月30日のF見聞電話において,Cが被告人Bに本件改ざんを告白し,前記第4・2のとおり,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人Bが被告人Aにその旨報告し,被告人AもCによる本件改ざんの事実を認識し,前記1・(3)のとおり,2月1日C・B間電話において,被告人Bが,Cに,「過誤ということで説明を付けられないのか。」と問い掛け,Cが,これに応じて,本件虚偽過誤説明を伝えたことが認められるところ,前記第1・12・(1)のとおり,2月2日午前9時20分頃,被告人Bが被告人Aに2月1日C・B間電話の報告をしたという状況下においては,被告人Aにおいて,被告人Bからの報告内容を基に,本件虚偽過誤説明で大阪地検上層部への報告を乗り切ることができると考えたとしても不自然ではない。また,前記第1・12・(1)のとおり,被告人Aは,妻に,「Cのけんなんとか切り抜けれそうだ」との内容のAメール②を送っているところ,このAメール②の内容から読み取れる被告人Aの心境は,被告人Aが,前記ア・(ア)のとおり,被告人Bの報告を聞いて落ち着きを取り戻し,「ミステイクで行く。」ということを決断して,Dに,前記ア・(イ)のような指示を発したという,Dが供述するところの被告人A 人Aが,前記ア・(ア)のとおり,被告人Bの報告を聞いて落ち着きを取り戻し,「ミステイクで行く。」ということを決断して,Dに,前記ア・(イ)のような指示を発したという,Dが供述するところの被告人Aの言動と整合するものといえる。さらに,前記ア・(イ)の被告人AのDに対する「これからB君がC君とちょっと話をする,だから,君は東京にいるC君に連絡を取って,B君に連絡をするように言ってくれ。」との指示は,前記第1・12・(2)のとおり,同日午後零時頃,被告人BがCとの間で,2月2日C・B間電話をしていることと符合している。そのほか,前記アのDの供述内容を見ても,その内容自体に不合理・不自然な点は見いだせない。 (イ) C供述との整合性2月2日にCがDと電話で話したことは,後記(2)・ア・(ウ)のとおり,C自身認める供述をしているところ,このC供述は,後記(2)・イのとおり信用することができ,前記アのD供述と相互に補強し合っている。 (ウ) D供述の内容に関する被告人B弁護人の主張被告人B弁護人は,前記アのD供述について,①被告人Bとは別に,DにおいてCから事情を聴取すべき理由がなく,また,被告人Bはコンピュータに対する人並み以上の知識を持っており,「コンピュータのことに詳しくないから」などと言うはずもないこと,②D供述によれば,Dは,被告人Aから犯人隠避の共謀を持ちかけられたことになるが,それに加わることのためらいがなく,Cとの電話においても,Cから初めて聞く本件虚偽過誤説明等の話に対する反応がないのは,現実味を欠いていること,③D供述では,2月2日の昼休みに2回Cと電話で話し,その間に,被告人BがCと電話で話していることになるが,別紙「B執務記録等一覧表」B―⑦によれば,被告人BがCに電話をしたのは,同日午後零 こと,③D供述では,2月2日の昼休みに2回Cと電話で話し,その間に,被告人BがCと電話で話していることになるが,別紙「B執務記録等一覧表」B―⑦によれば,被告人BがCに電話をしたのは,同日午後零時であり,それから少なくとも15分間くらいかけて話したことからすれば,D供述のようにDがCと電話で話すことは時間的に困難であること,④Dは,前記ア・(オ)のとおり,Cから,本件改ざんに際し,ページの入れ替えやバックアップファイルの削除等も行った旨Cから聞き取りながら,それをメモに取ろうともせず,また,被告人両名に報告もしていないのは不自然であること,⑤B執務記録等に,DがCに電話したことを裏付ける記載がないことを指摘する。 しかしながら,前記①については,Dは,Cと懇意であり,前記第1・3・(3)のとおり,本件改ざんについても早くから聞いていた関係にあることからすれば,被告人Bにおいて,「俺は,コンピュータのことに詳しくないから」などと理由を付けて,DからもCの事情聴取をさせておいた方がいいと考えたとしても不自然ではなく,これからすれば,被告人Bが真実コンピュータに強いと自覚していたか否かは,さして意味を持たないというべきである。 また,前記②については,Dにとって,被告人両名は,自らが応援派遣された特捜部の上司であり,M事件について,その指揮を受けるべき立場にあり,前記ア・(イ)のとおり,D自身も,Cから本件改ざんの話を聞いたことの報告が遅れたことなどに責任を感じていたほか,Cが本件改ざんを行った原因についてCに対しても負い目を感じており,さらに,Cを優秀な先輩検事として尊敬するとともに,F見聞電話での被告人Bとのやり取りを聞いて,自らも涙を流すなど,Cに強く共感していたことからすれば,被告人Aの指示にためらいなく従ったとしても,不 に,Cを優秀な先輩検事として尊敬するとともに,F見聞電話での被告人Bとのやり取りを聞いて,自らも涙を流すなど,Cに強く共感していたことからすれば,被告人Aの指示にためらいなく従ったとしても,不自然とはいえない。 次に,前記③については,Dは,「私が昼休みと言ったのは,厳密に12時から1時の間という意味ではなくて,もちろん昼休み前でもいいんです,電話の開始が。で,電話を切って聞き終わったのは,間違いなく昼休みだったんです。で,Bさんのところにご報告に上がろうと思ったけど,まだ昼休みなんで,ちょっと昼休み明けてから行こうかななんて思ったっていう,ちょっとそういう記憶もあるんで,だから,電話を切ったときは昼休みだった,これは間違いないと思います。」,Cと電話で話した時間は,「もちろん,一,二分じゃありませんし,かといって1時間も話したかっていうと,そこまでなかったんじゃないかと思っていて,30分はあったとしてもおかしくないと思います。」などと述べている。そして,D供述によれば,前記ア・(ウ),(エ)のとおり,被告人Bが電話する前に1回,その後に1回,Cと電話しているが,仮に,被告人Bの供述するとおり,被告人Bが,同日午後零時にCとの電話を始めたとしても,2月2日のQ事件関係者の取調べ状況等報告書によれば,この日のQ事件関係者の取調べは午後からで,午前中にはなかったことからすれば,Dが前記1回目の電話を,2月2日午後零時より前に行い,その後,被告人Bが供述するとおり,同日午後零時から午後零時15分頃までの間に被告人BがCと電話で話し,それから後に,DがCと2回目の電話を30分間ほどしたとしても,同日午後1時頃までに終えることができるのであって,不自然な点はない。なお,Cは,2月2日C・B間電話とその後のDとの電話につき,後記(2)・ 後に,DがCと2回目の電話を30分間ほどしたとしても,同日午後1時頃までに終えることができるのであって,不自然な点はない。なお,Cは,2月2日C・B間電話とその後のDとの電話につき,後記(2)・ア・(ウ)のとおり,「Bさんの電話の後,かなり近い時間だった」と供述している。 さらに,前記④については,Dは,前記ア・(カ)のとおり,Cから聴取したことを直ちに被告人B,続いて被告人Aに報告していること,D自身,本件改ざんについては,Cから聞かされて,そのあらましを知っていたほか,被告人Bにおいても,F見聞電話でCから本件改ざんの報告を受け,さらに,被告人Aにおいても,被告人Bからその旨の報告を受けている状況の下では,Dが,自らはもとより,被告人両名も本件改ざんのあらましを認識しているとの前提の上で,Cから聴取したことをメモに取らずに,口頭で被告人両名に報告したとしても不自然とはいえない。また,Dが,ページの入れ替え等につきCから聴取したことを被告人両名に報告しなかったことについても,前記ア・(イ)のとおり,被告人Aからの指示が本件改ざんを過誤にすり替えることにあること,前記ア・(オ)のとおり,Cから,「取りあえずそれで報告しといて。」と言われたことからすれば,不自然とはいえない。 最後に,前記⑤については,被告人Bにとって,DによるCからの聴取は,自己のCからの聴取の補足的なものであり,その内容も,被告人BがCから聴取した内容を超えないものであれば,あえて,これをB執務記録等に記載しなくても不自然とはいえない。かえって,別紙「B執務記録等一覧表」B―⑦のとおり,2月2日のダイアリー欄には,「9:30 部長室プロパティ問題~対応協議 Dp~説明方法についてOKを得る」,「12:00 CpTEL プロパティ問題聴取~説明方法の合理 覧表」B―⑦のとおり,2月2日のダイアリー欄には,「9:30 部長室プロパティ問題~対応協議 Dp~説明方法についてOKを得る」,「12:00 CpTEL プロパティ問題聴取~説明方法の合理性について確認(再度)」「1:20 Dp」「2:00部長室・・・Dp」との記載は,前記アのD供述と整合している。 (エ) D供述の変遷についての被告人B弁護人の主張被告人B弁護人は,証拠として取り調べておらず,かつ,D自身によっても内容確認がなされていないDの取調メモの中で,「おそらくAに呼ばれた。B君に確認。ミステイクということだった。」と,Dが被告人Aから「確認したらミステイクということだった。」と言われたと読める趣旨の記載があることを取り上げて,前記ア・(イ)の点に関して,供述の変遷がある旨主張する。しかしながら,D自身に読み聞かされ,その署名押印を得た供述調書とは異なり,Dによる内容確認の担保がない取調メモの記載とD供述との間に食い違いがあっても,そのことは,D供述の信用性を考える上で,さほど重要視すべきことではない。また,被告人Aは,前記第4・2,前記1・(3)及び前記第1・12・(1)の各認定事実からすれば,被告人Bから,Cが本件改ざんを行ったことについての報告を受け,さらに,2月1日C・B間電話で,Cから本件虚偽過誤説明をすることが可能である旨の話があったことの報告も受けていることが認められるところ,このような状況下にあって,被告人Aが,Dに対し,「確認したらミステイクということだった。」などと言うことは考え難いところでもあって,むしろ,前記取調メモの記載の方が不自然というべきである。また,被告人B弁護人は,前記ア・(ウ)の点に関して,同じくDの取調メモにおいて,「A又はBから,パソコンのことはよく分からないから,Cと ,むしろ,前記取調メモの記載の方が不自然というべきである。また,被告人B弁護人は,前記ア・(ウ)の点に関して,同じくDの取調メモにおいて,「A又はBから,パソコンのことはよく分からないから,Cとよく話をしてくれ。」との記載があることを取り上げて,Dの供述には変遷があると主張する。しかしながら,取調メモの記載との間に食い違いがあっても重要視すべきでないのは,既に述べたとおりである上,被告人両名のいずれかからCからの聴取の指示を受けたが,そのいずれかであるかについて,Dの記憶に当初混乱があったとしても不自然とはいえない。 (2) C供述についてア C供述の概要前記第1・12・(2)のとおり,Cは,2月2日午後零時頃,2月2日C・B間電話を行っているが,その前後の状況につき,おおむね以下のような供述をしている。 (ア) 2月2日午前中に,Dから,電話で,被告人Aがこの件はミステイクで行くと言っていること,被告人Bが電話を欲しいと言っているので,電話をしてもらいたいことを告げられ,被告人Aが本件改ざんをもみ消すことを決断したと思い,被告人Aやその意を受けて電話をしてきた被告人Bの差し出す助け船に乗りたいとの邪心が出た。 (イ) 2月2日昼休みに,東京拘置所から被告人Bに電話をしたところ,被告人Bから,本件改ざんの件は過誤によるものとして説明することに決定したこと,そこで,どのような説明が付けられるのか,もう一度説明してほしいことを告げられた。そこで,被告人Bに,2月1日C・B間電話で話した本件過誤説明根拠や本件虚偽過誤説明を少し膨らませた話をしたが,これが2月2日C・B間電話の内容である。 (ウ) 2月2日C・B間電話の後かなり近い時間帯で,まだ昼休みの間に,Dから電話があり,被告人 根拠や本件虚偽過誤説明を少し膨らませた話をしたが,これが2月2日C・B間電話の内容である。 (ウ) 2月2日C・B間電話の後かなり近い時間帯で,まだ昼休みの間に,Dから電話があり,被告人Bから,どのように改ざんしたのか,それに対してどのように説明が付けられるのか,Dからもよく聞いてほしいとの指示があったので,一通り教えてほしいと言われた。そこで,本件過誤説明根拠や本件虚偽過誤説明をするとともに,Kに本件フロッピーディスクが還付されているため,過誤があったか確認できず,したがって,過誤の事案ではなく,過誤の可能性のある事案ということで説明できるのではないかということや,本件データの1ページ目と2ページ目を入れ替えて,一旦,上書保存したが,それでは最終更新日時が本件改ざんの日時になるので,もう一度,それを平成16年の6月8日に変更したことなどを説明した。その際,本件虚偽過誤説明は,本件フロッピーディスクを検証機関で検証したり,本格的な捜査の対象とされたりするのであれば,虚偽であることが露見する説明であるが,大阪地検上層部に報告する限りであれば,切り抜けられる説明ではないかと考えていた。 イ C供述の信用性前記アのC供述は,以下の理由から,信用することができる。 (ア) 内容の合理性前記(1)・イ・(ア)で指摘した事実経過からすれば,前記アのC供述は,前記(1)・アのD供述同様,その内容自体に不合理・不自然な点はない。 (イ) D供述との整合性前記アのC供述の内容は,前記(1)・アのD供述と整合しており,相互に補強し合っている。 (ウ) 被告人B弁護人の主張について前記(1)・イ・(ウ)で検討したとおり,D供述の信用性を論難する被告人B弁護 1)・アのD供述と整合しており,相互に補強し合っている。 (ウ) 被告人B弁護人の主張について前記(1)・イ・(ウ)で検討したとおり,D供述の信用性を論難する被告人B弁護人による主張は採用できないところ,そこで検討したことからすれば,D供述と整合するC供述の信用性も裏付けられる。 なお,Cが,C手帳に本件改ざんに関するやり取りを記載した動機として,被告人両名にはしごを外される可能性があると考えた旨述べているところ,被告人B弁護人は,このようなCの供述は,前記ア・(ア)で,被告人両名の助け船に乗りたいと述べていることと整合しない旨主張する。しかしながら,Cは,C手帳にF見聞電話の記載をしたのは,2月3日夜に,被告人Bから検事正への報告をうまく終えることができた旨聞いて,本件改ざんについて蓋をすることができたと感じるとともに,将来,その蓋が開いたときに,被告人両名が知らないと言ってはしごを外すことを懸念して,同日夜か,その翌日である2月4日に,C手帳にF見聞電話に関する記載をした旨述べているのであって,前記ア・(ア)で,被告人両名の助け船に乗りたいと思ったときとは時期を異にしている上,Cは,被告人両名において検事正報告を終えたという新たな事態が加わったことで心境の変化が生じたことが,C手帳への記載動機となった旨述べているのである。したがって,CがC手帳にF見聞電話に関する記載をしたことは,前記ア・(ア)のC供述と矛盾するものではなく,被告人B弁護人の主張は採用できない。 (3) 認定した事実ア前記(1),(2)で検討したとおり,次席報告前の2月2日の状況について,前記(1)のD供述及び前記(2)のC供述はいずれも信用することができ,これに前掲関係各証拠並びに前記第1・12の事実を総合すると (1),(2)で検討したとおり,次席報告前の2月2日の状況について,前記(1)のD供述及び前記(2)のC供述はいずれも信用することができ,これに前掲関係各証拠並びに前記第1・12の事実を総合すると,以下の事実が認められる。 (ア) 被告人Aは,前記第1・12・(1)のとおり,2月2日登庁後,被告人Bと二人だけで話し合い,その後,Dも交えて話し合ったが,その際,Dに対し,2月1日に狼狽していたのとは異なり,非常に落ち着いた様子で,前記(1)・ア・(イ)のとおり,「今回の件はC君のミステイクということで行くから。」などと指示し,Dは,これを聞いて,被告人Aが,本件改ざんを過誤にすり替えるとの考えの下で,このような指示をしていることを察知したが,被告人Aから,「君は僕に改ざん行為を言わなかった・・・責任がある,Eにも話した責任があるんだ,だから,僕の指示に従え。」などと言われたことやCに対する負い目を感じていたことなどもあいまって,被告人Aの指示に従うことにした。 (イ) そこで,Dは,同日午前中に,被告人Aの指示のとおり,Cに電話をして,前記(1)・ア・(ウ)のとおり,「今回の件はミステイクということで行くという・・・方針が出ました。」などと伝えるとともに,被告人Bに電話をするよう伝えた。 (ウ) Cは,これを聞いて,前記(2)・ア・(ア)のとおり,被告人Aが本件改ざんのもみ消しを決意したと察知するとともに,被告人Aやその意を受けてCに電話をしてきた被告人Bの差し出す助け船に乗ろうと考え,2月2日午後零時頃から,被告人Bに電話(2月2日C・B間電話)をし,前記(2)・ア・(イ)のとおり,改めて本件虚偽過誤説明等を話した。 (エ) その後,Cは,前記(1)・ア・(エ),(オ),前記(2)・ア・(ウ)のとおり,Dに対し 2月2日C・B間電話)をし,前記(2)・ア・(イ)のとおり,改めて本件虚偽過誤説明等を話した。 (エ) その後,Cは,前記(1)・ア・(エ),(オ),前記(2)・ア・(ウ)のとおり,Dに対し,本件過誤説明根拠や本件虚偽過誤説明を一通り教えるとともに,Kに本件フロッピーディスクが還付されているため,過誤があったか確認できず,したがって,過誤の可能性のある事案ということで説明できるのではないかなどと説明(以下「本件過誤未確定根拠」という。)したほか,本件改ざんの際,ページの入れ替え等も行ったこと(以下「本件付加的改ざん情報」という。)を伝え,Dから,「それで大丈夫ですか。」などと聞かれたが,本格的な捜査の対象となるなどすれば別だが,大阪地検上層部への報告であれは,本件虚偽過誤説明でも乗り切れると考え,Dに対し,「取りあえずそれで報告しといて。」などと答えた。Dは,Cとの電話の状況を,被告人B,次いで被告人Aに報告したが,その際,本件付加的改ざん情報を伝えることはなかった。 (オ) 前記第1・12・(2)のとおり,被告人Bは,同日午後1時頃,部長室に行き,被告人Aに対し,2月2日C・B間電話の内容を報告し,次席への報告方法について議論したが,途中からDも加わった。 イ被告人両名の供述について被告人両名は,前記ア・(ア)について,被告人Aにおいては,Dに「ミステイクで行く」と言ったことはなく,被告人Bにおいては,Dに対し,DからもCから事情を聞くように言ったことはなく,2月2日C・B間電話では,Cから本件虚偽過誤説明に関して何点かの確認事項を聴取しただけである旨供述する。しかしながら,前記第3・6,第4・2のとおり,この時点では,被告人両名はCが本件改ざんを行ったことにつき認識を共有していることが認められるのであって,こ の確認事項を聴取しただけである旨供述する。しかしながら,前記第3・6,第4・2のとおり,この時点では,被告人両名はCが本件改ざんを行ったことにつき認識を共有していることが認められるのであって,これを前提にすると被告人両名の前記供述は不自然であって信用できず,前記アの認定を左右しない。 第6 被告人両名の本件改ざん隠ぺいの決意について(争点3・その2) 1 被告人両名の本件改ざん隠ぺいの決意についての認定前記第1,第3ないし第5で認定した各事実及びそこで検討した証拠評価並びに前掲関係各証拠によれば,被告人両名において,以下のような経緯で本件改ざんを隠ぺいする決意をしたと認めるのが相当である。 (1) 被告人両名の本件改ざんの認識前記第3で検討したとおり,被告人Bは,1月30日午後11時過ぎ頃,F見聞電話においてCから本件改ざんの告白を受けてその存在を認識し,被告人Aは,前記第4で検討したとおり,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人BからCから本件改ざんの告白を受けた旨の報告を受けてその存在を認識した。 (2) 2月1日午前9時50分頃までの被告人両名の行動ア Fは,2月1日,副部長室で,D,E,F及びHがいる場で,被告人Bが,「今回の件についてはこちらでやるから,これで終わりにするから,これ以上騒ぎ立てるなよ。」などと述べ,被告人Bも,被告人Aがミーティングに出掛けた後,副部長室に戻り,「僕の方から説明,報告をしておくので,一旦みんな戻ってくれ,ただし,部外者には口外しないでくれ。」などと言った旨供述している。これに,前記第1・11・(1)の事実,特に,この被告人Bの発言が被告人Aへの報告を終えた直後になされたものであること,及び,被告人Aと被告人Bとの関係を併せ考えると,被告人Bは,被告人Aの指示を受け に,前記第1・11・(1)の事実,特に,この被告人Bの発言が被告人Aへの報告を終えた直後になされたものであること,及び,被告人Aと被告人Bとの関係を併せ考えると,被告人Bは,被告人Aの指示を受けて,同日午前9時50分頃,副部長室にいたD,E,F及びHに対し,本件改ざんについては,口外しないように申し向けたことが認められる。 イこのことから,検察官は,この時点で,被告人両名は,具体的な方法は未確定であるものの,Cによる本件改ざんの事実をもみ消すことが可能であればこれをもみ消してCを捜査の対象とはせず,そのもみ消しの一環として,まずは当該事実を知る検事らに対して他言を禁じるかん口令を敷くとの意思を相通じ,Cの証拠隠滅の犯罪を隠ぺいすることを共通の目的として,それに向けて協力して行動する旨の犯人隠避の共謀が成立した旨主張する。しかしながら,被告人両名において,本件改ざんを隠ぺいする具体的な方法も定まらず,それを検討するについての必要な情報もなく,したがって,本件改ざんの隠ぺいを考えるにしても,それが成算のあるものか否かも全く分からない状況の中で,同日午前9時40分過ぎ頃から同日午前9時50分頃までの,わずかな時間の中で,本件改ざんの隠ぺいを決意したとまでは考え難い。また,被告人Bは,前記のとおり,被告人Aの指示を受けて,Fらに本件改ざんを口外しないように求めているが,この行動自体は,被告人Aにおいて,特捜部長として,本件改ざんを大阪地検上層部に報告し,その判断を仰ぐまでの情報管理の一環として,被告人Bにその旨指示したものとしても説明の付くことであり,そのことだけから,被告人両名において,本件改ざんの隠ぺいを決意したとまでは認めるに足りない。したがって,この点についての検察官の主張は採用できない。 (3) 2月2日C・B間電話ま とであり,そのことだけから,被告人両名において,本件改ざんの隠ぺいを決意したとまでは認めるに足りない。したがって,この点についての検察官の主張は採用できない。 (3) 2月2日C・B間電話までの被告人両名の行動に対する評価ア前記第1・11,12,前記第5で認定した事実及びそこで信用できると判断したC及びDの各供述の内容からすれば,被告人Bは,被告人Aの指示を受けて,2月1日C・B間電話において,Cに対し,「この件は過誤ということで説明を付けられないのか。」と尋ねたことが認められる。 これに加え,前記第1・11・(2)・アのとおり,被告人両名が2月1日C・B間電話の前に同日午後1時30分頃から午後3時頃まで部長室で協議していることからすれば,被告人両名は,その協議の中で,本件改ざんをCの過誤による改変にすり替えることが可能かどうかを検討し,その判断のために必要な情報をCから聴取すべく,被告人Aが被告人Bに,Cからの事情聴取を指示したと認めるのが相当である。もっとも,この時点では,Cからの聴取内容いかんで,被告人両名において,本件改ざんを過誤による改変にすり替えることが困難と考える場合も想定されるところであり,前記第1・11・(2)・ウのとおり,被告人Aが,2月2日未明に発信したAメール①の内容や,その頃の被告人Aの妻に対する言動から明らかなように,被告人Aにおいて,本件改ざんをありのまま大阪地検上層部に報告して,自らも辞職することも想定していたと認めるのが相当である。 したがって,この時点で,被告人Aにおいて,本件改ざんを過誤による改変にすり替える決意をするに至っていたとは,なお認めるに足りない。 イ他方で,被告人Bは,前記第1・11・(2)・イ,前記第5・1・(3)のとおり,被告人Aの指示を受けて,2月1日C・ る改変にすり替える決意をするに至っていたとは,なお認めるに足りない。 イ他方で,被告人Bは,前記第1・11・(2)・イ,前記第5・1・(3)のとおり,被告人Aの指示を受けて,2月1日C・B間電話でCから本件過誤説明根拠の存在と本件虚偽過誤説明を聞いたことが認められるが,被告人Bと被告人Aの関係から考えて,被告人Aが本件改ざんを過誤による改変にすり替える決意をするに至っていないにもかかわらず,被告人Bが,この時点で本件改ざんを過誤による改変にすり替える決意をするに至ったとは認め難い。 ウ被告人Aは,前記第1・12・(1)のとおり,2月2日午前9時20分頃,被告人Bと二人で話し合っているところ,被告人Aの供述によれば,その際,被告人Bから2月1日C・B間電話の報告を受けたことが認められる。もっとも,被告人Aは,被告人Bから受けた報告は本件データが過誤で変わった可能性があるとの内容であった旨供述するが,前記第3及び第4のとおり,その時点では被告人両名において,本件改ざんがあったことの認識を共有しているのであるから,この報告内容についての被告人Aの供述は信用できない。その上で,被告人Aは,前記第5・2・(3)のとおり,Dに対し,「今回の件はC君のミステイクということで行くから。」,「だから,僕の指示に従え。」などと言っているほか,その様子は,2月1日と打って変わって落ち着いた様子であること,前記第1・12・(1)のとおり,同日午前10時51分に妻へ送信したAメール②の内容からすれば,被告人Bから2月1日C・B間電話の報告を受け,本件過誤説明根拠の存在と本件虚偽過誤説明の内容を聞いて,それに沿った報告を大阪地検上層部にすることで,本件改ざんを隠ぺいできる成算ができたことから,本件改ざんを本件虚偽過誤説明によって過誤による 本件過誤説明根拠の存在と本件虚偽過誤説明の内容を聞いて,それに沿った報告を大阪地検上層部にすることで,本件改ざんを隠ぺいできる成算ができたことから,本件改ざんを本件虚偽過誤説明によって過誤による改変にすり替えて隠ぺいすることを決意するとともに,そのことで気分も落ち着き,前記のような指示をDにしたほか,Aメール②を送信するなどしたと認めるのが相当である。また,被告人Bも,前記第5・2・(3)のとおり,被告人AがDに対し,「ミステイクということで行くから。」と指示したことにつき何ら異を唱えていないばかりか,被告人Aの指示に従って2月2日C・B間電話をしている上,DにもCに電話をするように指示していることからすれば,被告人Aと意思を共有して行動していると認めることができ,これに,前記第3及び第4の事実を併せ考えれば,被告人Bも,前記2月2日午前9時20分頃,部長室で被告人Aと話し合った結果,自らも本件改ざんを本件虚偽過誤説明によって過誤による改変にすり替えて隠ぺいすることに加担することを決意し,被告人Aとその意思を共有したと認めるのが相当である。なお,検察官は,被告人両名の共謀成立の状況として,前記第2・2・(1)・ウのとおり,2月2日に被告人両名の共謀の内容が具体化した旨主張しているところ,前記認定は,この時点を捉えて被告人両名が本件改ざんの隠ぺいを決意し,その意思を共有したと認定するもので,このような認定をしても,被告人らの防御上,何ら問題とはならない。 2 B執務記録等の記載との整合性についてB執務記録等の記載も,以下のとおり,前記1の認定と整合して理解することができ,これらの記載から,前記1の認定が補強されることはあっても,それが揺らぐことはない。 (1) 別紙「B執務記録等一覧表」A―②この罫紙メモに 記1の認定と整合して理解することができ,これらの記載から,前記1の認定が補強されることはあっても,それが揺らぐことはない。 (1) 別紙「B執務記録等一覧表」A―②この罫紙メモには,右上に「2/1 部長室 AM11:00~」との記載があるところ,そこには,「① C 帰阪―要)調査」とあるが,前記第4のとおり,この時点で被告人両名がCによる本件改ざんを認識していたとしても,前記1・(2)のとおり,それを隠ぺいできるかどうかについて成算が立つような情報も不足する状況にあったと認められることからすれば,この時点では,被告人両名においても,Cが帰阪後,なお調査を要することも想定していたというべきであって,被告人Bにおいて,前記のような記載をしても不自然とはいえず,この記載が,前記1あるいは前記第3ないし第5の各認定と整合しないとはいえない。被告人Bは,これとは異なる解釈について供述するが,その内容は,被告人両名が本件改ざんを認識していないことを前提とするもので,前記第3及び第4の事実に照らして,信用できない。 (2) 別紙「B執務記録等一覧表」B―⑥これは,2月1日のダイアリー欄の記載であるが,そこに記載された予定あるいは結果の記載には,前記1あるいは前記第3ないし第5の認定と整合しない記載はない。 (3) 別紙「B執務記録等一覧表」A―④この日付なし罫紙メモのうち,その枠内の12行目までの記載は,前記第5・1・(2)・イのとおり,C供述と整合し,ひいては,前記第5・1・(3)の認定事実と整合することは既に述べたとおりである。ところで,日付なし罫紙メモには,「②,①,③」の項目を付けた記載並びに「R①」及び「R②」の項目を付けた記載がある。このうち「R①」「R②」の記載は,前記第5・1,2の は既に述べたとおりである。ところで,日付なし罫紙メモには,「②,①,③」の項目を付けた記載並びに「R①」及び「R②」の項目を付けた記載がある。このうち「R①」「R②」の記載は,前記第5・1,2のとおり,Cが2月1日C・B間電話及び2月2日C・B間電話で被告人Bに伝えた本件過誤説明根拠と整合するほか,「②,①」の項目を付けた記載については,本件虚偽過誤説明,あるいは,Cが2月2日にDに電話で伝え,それをDが被告人Bに伝えた内容とも整合している。これからすれば,被告人Bは,前記の各電話においてCから聴取し,あるいは,Dから聴取した内容を書き留めたと理解することができ,そう考えても不自然な点はない。被告人Bは,これとは異なる供述をするが,その内容は,本件データの「作成日時」については,改変できないだろうと推測して,「改変できず」と断定的に記載する一方で,「アクセス日時」については,Dの情報からでは改変できたか推測できなかったので,「?」と記載したところ,それらがことごとく客観的事実に一致したなどとする点で,不合理である上,そもそも,被告人両名が本件改ざんを認識していないことを前提とするもので,前記第3及び第4の事実に照らして,信用することができない。 (4) 別紙「B執務記録等一覧表」C―②このトピック欄の記載は,その日付や記載内容から,1月30日から2月1日までに記載されたものと考えられるが,そこには,前記1並びに前記第3ないし第5の認定と整合しない記載はない。このうち,「2,現状として,」という項目を付けた記載として,「①CPは東京応援中で不在」,「②改ざんしたとされるデータは手許になし」,「③A・M公判は整理手続終了済み。本件捜査報告書取調べ請求以外にフロッピーの取調べ請求はなし」,「④A・K公判は整理手続中」な は東京応援中で不在」,「②改ざんしたとされるデータは手許になし」,「③A・M公判は整理手続終了済み。本件捜査報告書取調べ請求以外にフロッピーの取調べ請求はなし」,「④A・K公判は整理手続中」などの記載があり,「4」と項目を付した記載として,「Eの態度には驚く。上記2の現状からして当庁当部が率先して公表するタイミングではない」,あるいは,「上記2①②に照らし何を報告できるのか!」との記載がある。しかしながら,これらの記載のうち,「当庁当部が率先して公表するタイミングではない」との記載については,Cが東京でQ事件の応援に行っていることや,M事件の弁護人が本件改ざんに気付き,それを問題にするような状況にはないことから,被告人Bにおいて,特捜部ないしは大阪地検から率先して対外的に公表するタイミングではないとの考えを記載したものと考えることができ,したがって,被告人Bが本件改ざんを認識していたことと整合しないものではない。なお,「2/1SD →部長へ報告」と項目を付した部分の記載にも,「部長も上記2の現状を踏まえ,本職と同意見であった」との記載があるが,これについても,同様に解することができ,したがって,前記1の認定と整合しないことはない。次に,被告人Bは,2月1日午後3時頃,副部長隣室でEと話したが,その際,Eから,被告人Aへの報告が2月1日になるのは遅過ぎるなどと言われたことがあり,「上記2①②に照らして何を報告できるのか!」との記載は,Cに事実確認ができていない段階で,次席や検事正に何を報告できるのかという思いを記載した旨供述している。そうすると,仮に,被告人Bが述べるような被告人BとEとの問答があったとしても,それは,前記第1・11・(2)・イのとおり,同日午後4時20分頃の2月1日C・B間電話の前の時点であり,前記1のとおり うすると,仮に,被告人Bが述べるような被告人BとEとの問答があったとしても,それは,前記第1・11・(2)・イのとおり,同日午後4時20分頃の2月1日C・B間電話の前の時点であり,前記1のとおり,この時点では,被告人両名は,本件改ざんを過誤にうまくすり替えて次席らに報告できるのか,その判断材料が不足し,そのため,被告人両名においても今後の方針を決めかねている状況にあったことからすれば,被告人Bにおいて,前記第3及び第4のとおり,Cが本件改ざんを行ったことを認識した上で,なお,前記のような記載をしても不自然とはいえない。被告人Bは,これとは異なる解釈に基づいた供述をしているが,その内容は,「1.」の「②DPがCPから起訴後に聞いたところ「6/8」に改ざんした上,フロッピーは還付済み~~とのこと」の記載にある,「起訴後」は,1月20日頃を意味すると述べるなど,内容自体に不合理な点があるほか,そもそも,被告人両名が本件改ざんを認識していないことを前提とするもので,前記第3及び第4の事実に照らして信用できない。 (5) 別紙「B執務記録等一覧表」B―⑦,⑧2月2日及び同月3日欄のダイアリー欄には,前記1及び前記第5の認定と整合しない記載はなく,むしろ,2月2日欄には,被告人両名,D及びCの間で,「プロパティ問題―説明方法」について協議したことを示す記載があり,2月3日欄には,「部長室検事正報告に備えて検討」との記載があるが,これらは,後記(6)で検討することとも相まって,いずれも,前記1及び第5の認定と整合している。なお,被告人Bは,これと異なる供述をするが,2月3日欄の記載について,特に何かを検討したわけではないのに,「検事正報告に備えて検討」と記載したと述べるなど,その供述内容自体が不合理であるほか,前記第3及び第 Bは,これと異なる供述をするが,2月3日欄の記載について,特に何かを検討したわけではないのに,「検事正報告に備えて検討」と記載したと述べるなど,その供述内容自体が不合理であるほか,前記第3及び第4の認定事実に照らしても,信用できない。 (6) 別紙「B執務記録等一覧表」C―③このトピック欄には,「1.説明方法」の項目の下に,「証拠物の取扱い上の過誤であり意図的な改ざんではない →2/2AM部長へ報告した ~検討~」との記載があり,以下「① 故意に改ざんした事実はない従ってA・Kへ還付済みのフロッピー上のプロパティがどうなっているかは不知である」とした上で,「Rⅰ)・・・Dの立会事務官作成捜報・・・を公判部へ引継ぐはずがない」,「Rⅱ)フロッピーは・・・還付しているところ,手持ち証拠として有利となるはずのブツを返すはずがない」との記載があり,さらに,「② 仮に捜報とブツ・フロッピーのデータに不一致があるとすればブツ読みの際の取扱いにミスがあった可能性はある。」などの記載があるが,これらの記載は,前記第5・1,2のとおり,2月1日C・B間電話及び2月2日C・B間電話,さらには,Dが2月2日にCから電話で聴取し,被告人Bに伝えた本件虚偽過誤説明や本件過誤説明根拠,本件過誤未確定根拠の内容と整合している上,このトピック欄の記載の冒頭に,「2/2次席への報告に備えて整理 ~2/1 2/2 CPTELで聴取した結果を踏まえて」との記載があることとも整合している。その上で,前記のとおり,「説明方法」と記載されていることからすれば,被告人Bは,「今回の件はC君のミステイクということで行く」との被告人Aの方針(前記第5・2・(3)・ア)に従って,2月2日に予定されている次席報告を前に,2月1日C・B間電話,2月2日C・B ば,被告人Bは,「今回の件はC君のミステイクということで行く」との被告人Aの方針(前記第5・2・(3)・ア)に従って,2月2日に予定されている次席報告を前に,2月1日C・B間電話,2月2日C・B間電話及びDがCから聴取し,被告人Aに伝えた内容,すなわち,本件過誤説明根拠,本件虚偽過誤説明及び本件過誤未確定根拠を基に整理した,次席への虚偽の「説明方法」を整理して記載したものと考えるのが合理的である。なお,被告人Bは,このトピック欄の記載について,Cから本件改ざんの告白を受けたことはなく過誤による本件データの改変があった可能性があるとしか聞いていないため,それをそのまま前記トピック欄に記載した旨供述するが,前記第3ないし第5の各事実に照らして,信用できない。 (7) 別紙「B執務記録等一覧表」C―④このトピック欄の「2.自覚させる!」の項目の①,③,④の記載は,後記3のとおり,被告人両名において本件改ざんの隠ぺいを決意した動機及びそのときの状況認識と整合している。また,「2.自覚させる!」の②には,「当面,証拠物の管理におけるミスという主張を貫く」,「R)意図的な作為と認定するには難があるため」との記載があるが,同一覧表C―③の「1. 説明方法」との記載と同様,本件改ざんについては,後記3・(3)のとおり,大阪地検上層部に対する報告において,本件虚偽過誤説明を維持し,その根拠としては,本件過誤説明根拠と本件過誤未確定根拠を挙げることを記載したものであり,そうであるからこそ,「主張を貫く」と記載したと解するのが合理的であり,前記1の認定と整合している。また,続けて,「→この主張との矛盾点を検討してもらいたい」,「ただし,問題がある場合でも1人で対処しようとせず報告すること!」との記載があるが,このトピック欄の冒頭に「2/ の認定と整合している。また,続けて,「→この主張との矛盾点を検討してもらいたい」,「ただし,問題がある場合でも1人で対処しようとせず報告すること!」との記載があるが,このトピック欄の冒頭に「2/5 CPへ」「指示・指導すべき事項として」との記載があるように,このトピック欄の記載は,被告人Aの指示の下,被告人BがCに指示・指導すべき事項をまとめたものであり,前記の記載も,被告人Aの指示の下,被告人Bが,Cに対し,本件虚偽過誤説明について,矛盾点がないか,更に検討し,問題があれば,被告人両名に報告することを求めた記載と解するのが合理的である。もっとも,被告人Bはこれと異なり,「当面,証拠物の管理におけるミスという主張を貫く」との記載は,Cの件について他人に対して説明する必要が出てきた場合の自らの立ち居振る舞いについての自覚,自戒として記載し,「→この主張との矛盾点を検討してもらいたい」,「ただし,問題がある場合でも1人で対処しようとせず報告すること!」との記載は,被告人Bが被告人Aとの情報共有を図りつつ,矛盾点の検討をするようにとの被告人Aの指示を記載した旨供述をするが,前記トピック欄の冒頭の記載に照らしても,被告人Bが自身の自覚・自戒として記載したとの供述内容自体が不自然である上,そもそも,前記第3及び第4のとおり,被告人両名が本件改ざんを認識していることに照らしても,信用することはできない。なお,前記トピック欄「1.叱る!」の項目の②には,「実際に本件では取扱い上のミスを招いている!」との記載がある。被告人Bは,この記載の前にある記載について,Cが,「客観証拠」,すなわち,本件フロッピーディスクのデータやそこから読み取ることができる客観的事実を軽視し,「主観証拠」,すなわち,厚労省事件関係者の供述によって乗り越えようとしたことが いて,Cが,「客観証拠」,すなわち,本件フロッピーディスクのデータやそこから読み取ることができる客観的事実を軽視し,「主観証拠」,すなわち,厚労省事件関係者の供述によって乗り越えようとしたことが「思い上がり」であり,そのような思い上がりが,「ミス」,すなわち,本件データの過誤による改変を招いたことを表している旨供述する。 しかしながら,前記トピック欄の記載は,被告人Bが,被告人AからCに指導するよう指示された事項を記載したものであるところ,前記第3及び第4で認定した事実に照らせば,前記「ミス」が過誤による本件データの改変を指すとは考えられず,被告人Bの前記供述は信用できない。むしろ,前記「ミス」とは,供述証拠での立証を重視するCが,客観証拠を軽視し,本件改ざんでプロパティ問題を乗り切ろうという誤った判断の下で本件フロッピーディスクを取り扱ったということ,すなわち,そのようは「判断ミス」により本件フロッピーディスクを取り扱ったことを指していると考えることも,十分可能であるほか,前記(6)のとおり,別紙「B執務記録等一覧表」C―③で,本件改ざんに関し,「説明方法」として,「証拠物の取扱い上の過誤であり意図的な改ざんではない」との記載があることからすれば,被告人Bにおいて,本件改ざんを指す「説明方法」として,ここに,「取扱上のミス」と表記したとしても不自然ではない。したがって,前記「ミス」の記載も,前記1の認定の妨げとはならず,結局,この記載をもってしても,前記1の認定は揺らぐことはないというべきである。 (8) 別紙「B執務記録等一覧表」B―⑬2月10日の自由記載欄には,「~なるほどしかし本件は過誤~あったとしても~でありそれが事実なのだ」との記載がある。これも,前記(6)で同一覧表C-③の「説明方法」との記載について述 ―⑬2月10日の自由記載欄には,「~なるほどしかし本件は過誤~あったとしても~でありそれが事実なのだ」との記載がある。これも,前記(6)で同一覧表C-③の「説明方法」との記載について述べ,前記(7)で同一覧表C-④の「主張を貫く」との記載について述べたと同様に,被告人両名において本件改ざんを,本件過誤未確定根拠を交えた本件虚偽過誤説明にすり替えて大阪地検上層部に報告した後である2月10日の時点で,Cに本件改ざんの手法を実演されても,なお,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えて隠ぺいするとの,被告人Aとの共通の認識の下に,本件虚偽過誤説明を真実として,その主張を貫くという自身の意思を確認した記載と考えることができ,したがって,前記1の認定と整合して理解することができるばかりか,前記第3及び第4の認定とも整合する。これに反する被告人Bの供述は,被告人両名が本件改ざんを認識していないことが前提となっており,前記第3及び第4の認定に照らして,信用できない。 (9) 別紙「B執務記録等一覧表」B―⑮3月26日の自由記載欄には,被告人Bが,被告人Aから,期末面談において,「フロッピ問題は最大の危機だった,よく乗り越えてくれた他のSDではダメだっただろう」と言われた旨の記載がある。被告人Aは,ここでいう「フロッピ問題」とは,改ざん疑惑のことを指す旨述べているところ,これは,被告人Bが,被告人Aの指示に従って,本件改ざんの隠ぺいに尽力してくれたことを指している旨,前記1の認定と整合的に理解することができる。なお,被告人Bは,前記「フロッピ問題」とは,プロパティ問題であると理解した旨供述するが,M公判が継続している3月26日の段階では,プロパティ問題は,何ら「乗り越え」られておらず,その供述内容自体不自然である上,前 前記「フロッピ問題」とは,プロパティ問題であると理解した旨供述するが,M公判が継続している3月26日の段階では,プロパティ問題は,何ら「乗り越え」られておらず,その供述内容自体不自然である上,前記第3及び第4の認定や,前記被告人Aの供述に照らしても,信用できない。 (10) 別紙「B執務記録等一覧表」B―⑯5月28日の自由記載欄には,「ただタイムスタンプ問題は供述調書との整合性の有無という問題よりも日付データの改ざんの有無の方が大きな問題である実際問題発覚後は前者よりも後者の問題の対応に追われた一体何回・何時間・部長室にて協ギを重ねたことだろう」との記載がある。これは,前記第3,第4のとおり,被告人Bが2月1日に被告人AにCが本件改ざんを告白した旨報告して以後,前記第5のとおり本件改ざんを本件虚偽過誤説明により過誤による改変にすり替えて大阪地検上層部に報告できないかとの協議を重ね,前記第1・12,13のとおり,大阪地検上層部への報告に至った経緯と整合して理解することができる。被告人両名は,上記記載について,上記理解とは異なる合理的な説明ができないばかりか,その内容は,本件改ざんを認識していないことが前提となっており,前記第3及び第4に照らして,信用できない。 (11) B執務記録等に対する評価B執務記録等の記載については,前記(1)ないし(10)で検討し,あるいは,その他の判示部分でも検討したとおりであるが,これからすれば,被告人Bは,これを自ら聞き取った事実のほか,それを基に自らの考えを整理したこと,あるいは,自らの所感を,第三者に見せることを予定せずに,ほぼそのまま記載したものであり,基本的に信用性の高い証拠と評価できるところ,その記載内容を見ても,被告人両名において,本件改ざんを認識してい あるいは,自らの所感を,第三者に見せることを予定せずに,ほぼそのまま記載したものであり,基本的に信用性の高い証拠と評価できるところ,その記載内容を見ても,被告人両名において,本件改ざんを認識していたことと整合して理解できるのであって,これらによって,前記第3ないし第5,更には前記1の認定は補強されこそすれ,それが揺らぐことはない。なお,前記第1・17・(1)・ウのとおり,被告人Bは,B執務記録の一部などを自ら最高検の調査の際に持参しているところ,被告人B弁護人は,B執務記録等の記載が,被告人Bにおいて本件改ざんを認識していたことを表す記載であれば,被告人Bにおいて,これを持参し,その聴取に応じることは考えられない旨主張する。しかしながら,前記(1)ないし(10)で検討したことからも明らかなように,被告人Bは,B執務記録等の各記載について,自らの主張に沿った解釈を供述しているところ,これからすれば,被告人Bにおいて,B執務記録等を持参した上で,最高検の調査に対し,その記載を基に自らの主張を展開しようと考えたとしても不自然ではない。また,前記第1・17・(1)・アのとおり,被告人Bは,十数年前からB執務記録を記載していることから,被告人Bにおいて,B執務記録の一部を殊更に隠すことは,かえって,最高検に不信感を抱かせることにもなりかねないことから,自らB執務記録を最高検に持参して,積極的に申し開きしようと考えたとしても,また,不自然ではない。したがって,被告人B弁護人の主張は採用できない。 3 弁護人らの主張について被告人両名において,2月2日午前9時20分頃からの話し合いにおいて,Cが本件改ざんを行ったことにつき,過誤で本件データを改変したことにすり替えて,その隠ぺいをする決意をしたことは,前記1のとおりであるところ,この点につ 2日午前9時20分頃からの話し合いにおいて,Cが本件改ざんを行ったことにつき,過誤で本件データを改変したことにすり替えて,その隠ぺいをする決意をしたことは,前記1のとおりであるところ,この点について,弁護人らは,被告人両名がそのような隠ぺいの決意をしたと考えるには不自然な点がある旨主張して,被告人両名が本件犯行の動機を有していたことに疑問を投げ掛ける。しかしながら,以下のとおり,被告人両名には本件犯行を行う動機があり,また,本件改ざんが発覚する危険性を検討し,本件犯行により本件改ざんを隠ぺいすることに成算があると考えた上で,本件犯行に至ったものと認められるのであって,弁護人らの主張はいずれも採用できず,前記1の認定を左右しない。 (1) 動機についてア前記第4・2のとおり,被告人Aは,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人BからF見聞電話でCが本件改ざんを行ったとの告白を受けた旨の報告があったことが認められるところ,そのときの心境について,頭をがつんと殴られるほどの衝撃を受け,自らも辞職する覚悟をしてその旨被告人Bに伝え,前記第1・11・(2)・ウのとおり,家族にもその旨伝えたばかりか,刑事事件になれば,Cが相応の処分を受けなければならないこととなるし,特捜部,ひいては検察組織全体に対する甚大な影響を与えることになる深刻な事態である旨憂慮した旨述べている。また,別紙「B執務記録等一覧表」C―②の「4」の項目には,「A,Bが問題にしていないのに公表すれば,A・M公判はもとよりCP応援中の東京の事件にも影響し,ひいては特捜組織が崩壊する」,「部・部員を守るのは当然のこと」との記載があり,「2/1 SD→部長へ報告」の項目には,「もとより,辞職は覚悟の上であり,軽々な保身ではないむしろ本件が公表されることによる事件や検 崩壊する」,「部・部員を守るのは当然のこと」との記載があり,「2/1 SD→部長へ報告」の項目には,「もとより,辞職は覚悟の上であり,軽々な保身ではないむしろ本件が公表されることによる事件や検察組織への信頼への影響である~これが大局的な視点ではないのか?」との記載があることからすれば,被告人Bにおいても,被告人Aと同じ心境を抱いていたと認めるのが相当であり,同一覧表C―④,「E・SDとも一度は辞職を覚悟した but 『CPは救いたい。何とかならないか?』とない知恵をしぼった」との記載があることとも整合する。もっとも,この記載について,被告人Bは,自らの創作であり,「ない知恵をしぼった」と記載したものの,具体的に何かしたことはない旨弁解するが,その供述内容自体不自然であるほか,前記第3ないし第5の事実に照らしても,信用できない。以上からすれば,Cの上司であり,また,特捜部という検察庁の重要部門を預かる身でもある被告人Aにおいて,Cを守るとともに,自らの職を守り,何よりも,前記第1・2・(1)・ウ,同(4)のとおり,特捜部が最高検決裁まで経た上で,その威信をかけて立件したM事件への悪影響を避け,それによって,自らが預かる特捜部,ひいては,検察組織全体を防衛しようとして,本件改ざんの隠ぺいを決意し,また,同じくCの上司であり,また,特捜部の副部長として被告人Aを補佐する立場にある被告人Bにおいて,上司である被告人Aが,本件改ざんの隠ぺいを決意した以上,それに足並みをそろえて,補佐するため,また,自身の問題としても,上司としてCを守るとともに,自らの職も守り,さらには,特捜部,ひいては検察組織全体を防衛するために,本件改ざんの隠ぺいに加担することを決意したとしても,不自然な点はない。なお,被告人Bは,前記「辞職を覚悟」との記載は,被告 自らの職も守り,さらには,特捜部,ひいては検察組織全体を防衛するために,本件改ざんの隠ぺいに加担することを決意したとしても,不自然な点はない。なお,被告人Bは,前記「辞職を覚悟」との記載は,被告人Aの言葉であり,自らはそうは思っていなかった旨述べるが,その記載内容に照らして信用できないばかりか,仮に,被告人Bの述べるとおりだとしても,そのこと自体,自らの思いとは別であっても,なお,被告人Aと足並みをそろえていこうとの被告人Bの強い思いを示しており,前記認定と整合しないことはない。また,被告人Bは,前記「CPは救いたい」との記載についても,被告人Bは,Cが過誤だというのなら,その立場を守ってやりたいとの趣旨である旨供述するが,これも,その記載内容自体に照らして信用できないばかりか,前記第3及び第4のとおり,被告人両名において本件改ざんを認識していたことに照らしても,信用できない。さらに,同一覧表C―②の「2」③,④に記載されたM公判等の進行状況からすれば,M事件の弁護人から本件フロッピーディスクの検証等が請求される可能性は低い状況下で,本件改ざんを隠ぺいすることで,M公判への深刻な悪影響を避けたいと被告人両名が考えたとしても,不自然ではない。 イ弁護人らは,Cのために被告人両名が職を賭けるとは考え難い旨主張する。しかしながら,前記アのとおり,被告人両名が本件改ざんの隠ぺいを決意した動機は,Cを守ることだけではなく,むしろ,本件改ざんが発覚することにより,特捜部,ひいては検察組織の信頼が揺らぐことを避けたいとの思いが第一にあったと考えられるのであって,この点において,弁護人らの前記主張は採用できない。また,被告人両名においては,前記のとおり,本件改ざんが発覚すれば,自らも辞職を余儀なくされるであろうことを認識しており,した えられるのであって,この点において,弁護人らの前記主張は採用できない。また,被告人両名においては,前記のとおり,本件改ざんが発覚すれば,自らも辞職を余儀なくされるであろうことを認識しており,したがって,いずれにしても職を失う状況に立たされていたのであって,このような状況下にあっては,本件改ざんをうまく隠ぺいできる方策が見付かれば,それに賭けてみたいと考えたとしても,不自然とはいえない。そして,前記1で検討したとおり,被告人両名は,2月2日午前9時20分過ぎ頃に,2月1日C・B間電話でCが話した本件過誤説明根拠及び本件虚偽過誤説明の内容から,Cが本件改ざんを行った事実を,本件データを過誤で改変した可能性のある話にすり替えて大阪地検上層部へ報告することで,本件改ざんを隠ぺいできる成算ができたと考えたものであるところ,このような成算の下に,本件改ざんの隠ぺいを決意するに至ったものである。この点,被告人Bは,本件過誤説明根拠について,「Cが改ざんしたとするのであれば,報告書がそのままの状態で公判部に引き継がれて開示されてるというのは,一体どういうことなんだという点,この点は,改ざんをしたかと問われると,消極の方に働きました」,「改ざんをするということは,検察にとって有利な証拠を作ることになります。それを相手に返すという意味が私には分かりませんでした。 ですので,還付した後に一体どういう効果が期待できるのかなと,これは私には想像できませんでした」と供述し,被告人Aも,本件フロッピーディスクをKに還付していること及び本件捜査報告書の存在を知りながら本件改ざんをするはずがないことを,Cの説明を信じる有力な根拠になった旨供述しているが,このこと自体,被告人両名において,本件過誤説明根拠が,大阪地検上層部に対し本件虚偽過誤説明を無理なく報告できる有 件改ざんをするはずがないことを,Cの説明を信じる有力な根拠になった旨供述しているが,このこと自体,被告人両名において,本件過誤説明根拠が,大阪地検上層部に対し本件虚偽過誤説明を無理なく報告できる有力な根拠となり得ると考えていたことを示しているというべきである。このように,被告人両名においては,本件改ざんの隠ぺいが成功する可能性が高いことを見込んだ上で,本件改ざんの隠ぺいを決意したことになるのであって,弁護人らが主張するように,闇雲に自らの職を賭けたものではなく,この点においても,弁護人らの主張は採用することができない。 (2) 本件改ざんが発覚する危険性の認識についてア弁護人らは,本件フロッピーディスクがKないしはその弁護人の手中にあり,それらの者が本件改ざんに気付き,あるいは,大阪地検内部からも,FやEなど,本件改ざんを知る検事が外部に公表する可能性があるのに,被告人両名がそれを考慮しないで本件改ざんの隠ぺいを決意することはあり得ない旨主張する。 イしかし,別紙B執務記録等一覧表C―①に記載があるとおり,被告人両名において,M公判でもプロパティ問題に対する反論は可能であり,特捜部としては攻めの姿勢を保つ方針であり,前記(1)・アで検討したとおり,同一覧表C―②,「2」の③,④に記載したようなM公判の状況分析の結果,M事件の弁護人があえて本件フロッピーディスクを証拠請求し,あるいは,更にその解析をするとは考え難い状況にあると分析した上で,本件改ざんを隠ぺいしても,M事件の弁護人あるいはKの弁護人に本件改ざんが発覚する可能性は低く,むしろ,いわば「寝た子」を起こし,M公判への深刻な悪影響を招くことを避けるために本件改ざんを隠ぺいすることを考えたとしても,不自然ではなく,このことは,2月4日ないし同月5日頃,被告人Aが, く,むしろ,いわば「寝た子」を起こし,M公判への深刻な悪影響を招くことを避けるために本件改ざんを隠ぺいすることを考えたとしても,不自然ではなく,このことは,2月4日ないし同月5日頃,被告人Aが,Dに対し,「志布志の事件も,無罪になったから,捜査がうんぬんかんぬん言われて問題になるんだ」,「このM公判も,有罪を取りさえすれば問題にならない」,「C君の改ざんだって分からないんだ」,「だから公判は積極的に攻めていくんだ」などと述べたこととも整合している。なお,同一覧表C―④には,「危険水域は脱していない~A・M,A・Kからフロッピー,プロパティと捜報との不整合について指摘なし but指摘があれば~又はマスコミがかぎつければ調査を要する事態やフロッピーが鑑定にかけられる事態もありうるその意味では現状は首の皮一枚つながっているにすぎない~と思うべき」との記載がある。この記載については,「危険水域は脱していない」,すなわち,被告人両名において,弁護人らが指摘するような危険性を認識していたものの,それに続けて,「A・M,A・Kから・・・指摘なし」,「又はマスコミがかぎつければ」という記載にあるように,MやK,あるいは両名の弁護人,さらには,マスコミ関係者が,本件フロッピーディスクのデータと本件捜査報告書の内容との不整合に気付けば,本件フロッピーディスクが調査や鑑定にかけられる事態もあり得るが,「要するに作為の内容が不明である現時点では動きようがないだけ」,すなわち,前記MやKの弁護人やマスコミ関係者が,現状では,本件フロッピーディスクに対する作為内容を知らないため,調査や鑑定を求めるような動きに出ていないだけであると分析していることを示していると考えるべきであり,結局,このような記載からしても,被告人両名は,前記一覧表C―④に記載のような危 を知らないため,調査や鑑定を求めるような動きに出ていないだけであると分析していることを示していると考えるべきであり,結局,このような記載からしても,被告人両名は,前記一覧表C―④に記載のような危険性は認識しつつも,前記一覧表C―②の「2」の「③」,「④」のような現状に照らして,M事件弁護人らが,本件フロッピーディスクの解析をするなどの動きには出ないと考えたと認めるのが合理的である。したがって,前記の記載も,前記1の認定と十分整合的に理解することができる。これに対して,被告人Bは,自らが本件フロッピーディスクのデータがどのようになっているのか分からないため,動きようがないことを記載したものである旨供述するが,「要するに」の記載の主語が被告人Bであると考えるのは,前記のとおり,その直前に「A・M,A・K」あるいは「マスコミ関係者」を主語とする記載があることから見て,不自然であるほか,被告人Bにおいて本件フロッピーディスクのデータが変わったかどうかわからないとの内容自体も,前記第3ないし前記第5に照らして,信用することができない。 ウまた,検察庁内部からの発覚についても,Fは,前記第1・11・(1)・ウで,被告人Aと話した際,被告人両名に大阪地検上層部に報告することは強く求めたものの,被告人Aから,「明日の公判で言うつもりじゃないよな。」と尋ねられて,「そういうことを言っているんじゃないです」,「ただ,きちんと上に報告してくださいっていう話ですよ。」,「もし特捜部でこのまま上に上げないということであれば,私の方から上に話をすることになりますよ。」などと言った旨供述しており,これからすれば,Fは,被告人両名の態度に一定の不信感を持っているものの,その求めることは本件改ざんを大阪地検上層部に報告することにあり,F自ら直接外部に公表す すよ。」などと言った旨供述しており,これからすれば,Fは,被告人両名の態度に一定の不信感を持っているものの,その求めることは本件改ざんを大阪地検上層部に報告することにあり,F自ら直接外部に公表するような行動に出ることは考え難い状況であった。また,Dにおいても,被告人Aから,前記第5・2・(3)・アのとおり,自らの指示に従うよう命じられて了承し,現に,被告人Aの指示に従って行動していることからすれば,本件改ざんを公表することは考えられず,さらに,HやGについても,特に発覚の危険を感じさせるような行動はなかった。もっとも,Eについては,別紙「B執務記録等一覧表」C―②には,1月30日,E室で,被告人Bに対し,本件改ざんの公表を迫ったかのような記載があるが,「早期に上層部へ報告し,公表してほしい」とも記載されていることからすれば,Eが第一に求めるものは,やはりFと同様,大阪地検上層部への報告にあると考えられ,現に,E自身,被告人Bから被告人Aに報告が上がれば,当然,その後高検,最高検,法務本省に報告が上がると考えていた旨供述しているほか,次席報告があった後の2月2日午後10時52分に,DからEへ,「もう上に報告が行ったので我々は粛々とやりましょう。」との携帯メールが送信されているところである。これからすれば,被告人両名において,大阪地検上層部に対し本件虚偽過誤説明に基づく報告をし,その了承を得る一方で,大阪地検上層部には既に報告済みであることを伝えることで,FやEに対しても,これ以上本件改ざんについて言い立てることがないようにすることができ,したがって,検察庁内部から本件改ざんが発覚する危険は低いと考えたとしても,不自然ではない。ちなみに,同一覧表A―③の罫紙メモには,「E対策」,「Cp帰庁後,ヒアリングが行われる~と思っている.←や たがって,検察庁内部から本件改ざんが発覚する危険は低いと考えたとしても,不自然ではない。ちなみに,同一覧表A―③の罫紙メモには,「E対策」,「Cp帰庁後,ヒアリングが行われる~と思っている.←やっているとのポーズを示してゆく」,「『ハミ子』にしてはいけない」,「公判に出れば戦う気持ちになる」などの記載があることや,同一覧表C―④のトピック欄には,「FP―信用していないが口には出さないだけ」,「EP・全く信用していない」との記載があることは,被告人両名において,FやEが,本件改ざんを口外することのないよう,十分留意していく必要性を認め,その対策にも意を払っていたと考えていたことを示している。 (3) 大阪地検上層部への報告の位置付けア前記(2)からすると,被告人両名は,本件過誤説明根拠に基づき本件虚偽過誤説明により,Cが本件改ざんを行ったことを,過誤による改変にすり替えて大阪地検上層部に報告すれば,その了承を得られるとの成算ができ,また,大阪地検上層部の了承を得ることで,FやEの動きを封じることができ,また,M公判の状況からして,M事件の弁護人やKの弁護人から,本件改ざんが発覚する可能性は低いと見込んだことから,本件改ざんの隠ぺいを決意したと考えるのが合理的であり,これからすれば,被告人両名にとって,大阪地検上層部への報告の成否は,本件改ざんの隠ぺいの成否を左右する最も重要なこととして位置付けられていたというべきである。 イところで,被告人A弁護人は,仮に被告人両名が本件虚偽過誤説明により本件改ざんを過誤による改変にすり替えて隠ぺいすることを決意したのであれば,被告人両名はもちろん,C及びDが一堂に会して本件虚偽説明が完全なものになるように話を詰めるほか,M事件弁護人ら外部の者やF,Eら大阪地検内部の者から発覚するこ 隠ぺいすることを決意したのであれば,被告人両名はもちろん,C及びDが一堂に会して本件虚偽説明が完全なものになるように話を詰めるほか,M事件弁護人ら外部の者やF,Eら大阪地検内部の者から発覚することがないよう十分留意するはずであるが,そのような形跡が一切うかがえないのは不自然である旨主張する。 しかしながら,前記アのとおり,被告人両名は,大阪地検上層部に対し本件虚偽過誤説明をして,その了承を得られれば,本件改ざんが発覚するおそれは少ないと見込んだと考えるのが合理的であるところ,前記第1・12・(3),同13のとおり,被告人両名は,2月2日夕方に次席報告をし,同月3日に検事正報告を終えているが,その内容は,別紙「B執務記録等一覧表」C―③の記載に照らせば,その詳しさの程度は別として,おおむね,「Cが本件フロッピーディスクのデータに工作が加えられていないか検証している際,データが過誤により書き換わった可能性があるが,本件フロッピーディスクは還付されているため,確認できない,Eがそれを伝え聞いて,改ざんだと騒ぎ立てているが,その様子は告訴狂と同じだ。」などと,本件過誤説明根拠に基づき,本件過誤未確定根拠を交えた本件虚偽過誤説明を行ったほか,Eは伝聞情報を基にCの改ざんを推測し,M事件の結論とプロパティ問題を分けることができず,「公表」,「調査・検討」などと言っているだけで,告訴狂と同じヒステリー状態であることなどを説明し,それを受けて,次席及び検事正のいずれも,説明のあったEの態度に驚くとともに,説明のあった本件データに関する問題については,取り立てて書面にする必要もないということで了承している。ここにおいて,被告人両名が,前記(1)の状況に照らして,前記アのとおり,本件改ざんを隠ぺいするに当たって最も重要なこととして位置付けていた大阪地 立てて書面にする必要もないということで了承している。ここにおいて,被告人両名が,前記(1)の状況に照らして,前記アのとおり,本件改ざんを隠ぺいするに当たって最も重要なこととして位置付けていた大阪地検上層部に対する本件改ざんの隠ぺいが成功したことになるのであって,これからすれば,それ以後,被告人A弁護人が主張するように,被告人両名が,CやDを交えて,本件虚偽過誤説明の内容を更に詰める作業をしなかったとしても,不自然ではない。現に,被告人Aは,同一覧表B―⑨のとおり,検事正報告の前に会議室で待っている間,「今日は仕事が手に付かない」などと言っていたが,検事正報告の後は,満面の笑みでDに対し,「やったなD君」と言って握手を求め,さらに,「さすがの僕も今回ばかりは駄目だと思ったよ」,「今までの検事生活の中で一番厳しい戦いだった」,「これでクリアだとC君にも伝えてやってくれ」などと言ったと認められるが,これも,前記のような被告人両名の思いを裏付けているというべきである。もっとも,被告人Aは,検事正報告前に,「今日は仕事が手に付かない」などと言ったのは,M公判でのP会会長の証言が気になったからだと供述するが,前記第3及び第4で認定したとおり,被告人Aにおいて本件改ざんの認識があったことを前提にすれば,M公判でのP会会長の証言いかんよりも,検事正報告の成否の方がはるかに懸案事項であると考えられることからしても,被告人Aの前記供述は信用できない。 ウなお,別紙「B執務記録等一覧表」A―③の,検事正報告後の2月4日の罫紙メモには,「リーク・最高検等―調査指示―最悪」との記載があるが,これは,被告人両名において,本件虚偽過誤説明により本件改ざんを過誤による改変にすり替えて隠ぺいする手法は,大阪地検上層部に報告する限りにおいては,成功する成算があ 査指示―最悪」との記載があるが,これは,被告人両名において,本件虚偽過誤説明により本件改ざんを過誤による改変にすり替えて隠ぺいする手法は,大阪地検上層部に報告する限りにおいては,成功する成算があるが,最高検の調査の対象になれば,そのような手法は通らず,本件改ざんが露見する危険性が高いことを認識した上で,これについては,同罫紙メモに記載されているように,「厳秘」という方針で対処することを考えていたことを裏付けているというべきである。この点,被告人両名は,Cの本件虚偽過誤説明を真実だと考えていたことを前提に,これと異なる供述をするが,前記第3ないし第5の認定事実に照らして信用できないばかりか,その供述内容自体も,被告人両名においてCの本件虚偽過誤説明を真実だと考えていたのであれば,最高検の調査を恐れる必要はなく,したがって,最高検に対して「厳秘」とする必要もないというべきであって不合理である。なお,被告人Bは,そうなれば,調査の必要なしと判断した検事正や次席の判断の誤りを認めることになる旨供述する。しかしながら,仮に,被告人Bにおいて,Cの本件虚偽過誤説明を真実であると考えつつも,それを最高検に「厳秘」としなければならないほどの情報,すなわち,それを最高検が知れば,必ず調査に乗り出すような情報と考えているのであれば,次席報告や検事正報告の際に,最高検への報告を強く進言すべきであるが,そのようなことは行っていないのであって,この点も不自然である。以上のとおり,前記被告人両名の供述は信用できない。 エなお,被告人A弁護人は,被告人Aが,前記第1・12・(1)のとおり,2月2日に,Aメール②を妻に送信したほか,同日被告人Bからの報告を受けた直後に,知人らに不要不急の電話をかけているが,これは,被告人Aはこの時点で,被告人Bから,Cが本 1・12・(1)のとおり,2月2日に,Aメール②を妻に送信したほか,同日被告人Bからの報告を受けた直後に,知人らに不要不急の電話をかけているが,これは,被告人Aはこの時点で,被告人Bから,Cが本件データを過誤で改変した可能性があるに過ぎないとの報告を受け,安堵したことを示しており,本件改ざんの隠ぺいを決意したのであれば,このような電話をするはずがない旨主張する。しかしながら,前記1・(3)・ウ,前記(1)・イ,同(2)・イ,ウのとおり,被告人両名は,2月2日朝の話し合いにより,被告人Bの2月1日C・B間電話の内容を踏まえて,本件過誤説明根拠があることから,本件虚偽過誤説明により大阪地検上層部への報告を乗り切ることができ,また,M公判の進行状況やFらの求めていることからすれば,M事件弁護人や検察庁内部から本件改ざんが発覚するおそれは少なく,大阪地検上層部への報告を無事乗り切ることができれば,本件改ざんを隠ぺいできるとの成算を得たということができるのであるから,被告人Aにおいて,2月2日朝の被告人Bとの話し合いの直後に,被告人A弁護人が指摘するような,安堵したことを示す行動に出たとしても,不自然な点はないというべきである。 オところで,被告人両名は,いずれも,本件改ざんに関する動きについて,その後任者に引き継いでいないが,これも,大阪地検上層部への報告を終えたことで,本件改ざんが発覚するおそれは低くなったと考え,危機感が薄れるとともに,そのような引き継ぎをすることで,後任者が関心を持って調査をし,その結果,本件改ざんの隠ぺいが発覚することを恐れたためと考えるのが自然であって,前記1の事実と整合しているというべきである。被告人A弁護人は,これに反する主張をするが,前記第3及び第4の事実と整合しないほか,被告人両名において,その供述 を恐れたためと考えるのが自然であって,前記1の事実と整合しているというべきである。被告人A弁護人は,これに反する主張をするが,前記第3及び第4の事実と整合しないほか,被告人両名において,その供述するように,本件データが過誤により改変された可能性があるが,本件フロッピーディスクが還付されているため,それを調査できないと認識していたのであれば,M公判が継続中である以上,被告人両名が行った調査結果の資料であるC作成の本件上申書や被告人Bが大阪地検上層部への報告に当たって整理した認識内容等を書面にするなどして,それぞれの後任者にその状況をありのままに引き継いでおくのが自然というべきであるから,被告人A弁護人の前記主張は採用できない。 第7 CとDが謀略をしたとの弁護人らの主張について弁護人らは,前記第1・3・(3)のとおり,Cから本件改ざんの告白を受けたDが,KからCの想定するような供述を得られなかったため,Cに本件改ざんをさせたとの自責の念から,それを口外しなかったものの,前記第1・4ないし8のとおり,本件プロパティ問題の顕在化とともに,本件改ざんが発覚する不安を抑えられず,EやGに告白し,それが,Eを通じてFや被告人Bの知るところとなったため,Cに対する強い負い目を持ち,その頃,その旨Cと相談するなかで,Cと共謀して,被告人両名には,本件虚偽過誤説明を報告して本件改ざんを隠ぺいすることにし,前記第1・11・(2)・イ,12・(2)のとおり,2月1日C・B間電話及び2月2日C・B間電話で,本件虚偽過誤説明に従った報告をし,被告人両名にこれを信用させたが,前記第1・16のとおり,9月19日になって,本件改ざん疑惑の情報がマスコミ関係者から検事正に伝えられたことが契機となって,Cにおいては自己の証拠隠滅の,Dにおいては自己の犯人 これを信用させたが,前記第1・16のとおり,9月19日になって,本件改ざん疑惑の情報がマスコミ関係者から検事正に伝えられたことが契機となって,Cにおいては自己の証拠隠滅の,Dにおいては自己の犯人隠避の,各刑責を減じる情状事実として,1月30日にあったF見聞電話の相手をGからCにすり替えることで,被告人両名において本件改ざんを認識した上,CやDを巻き込む形で,本件改ざんの隠ぺいを図ったとの虚偽の話を作り出すことにし(以下「弁護人ら主張謀略話」という。),その旨の虚偽の供述をするに至った旨主張する。しかしながら,以下のとおり,このような弁護人らの主張は採用できず,前記第3ないし第6の認定は左右されない。 1 弁護人らの主張によれば,C及びDが弁護人ら主張謀略話を考えついたのは,前記第1・16の経緯からすれば,検事正がCから事情聴取することになってI特捜部長を介してCに連絡した9月19日の夜からCが逮捕されるまでの9月21日午後8時45分頃までの間ということになり,この間に,DとCにおいて,約8か月前の出来事である1月30日にGと被告人Bが電話で話し合ったこと,それを副部長隣室で同席していたFが見聞し,電話の相手をCと勘違いしている様子であったことを唐突かつ鮮明に思い出し,その時間帯が,CのQ事件関係者の取調時間と矛盾しないことを分析した上で,弁護人ら主張謀略話を考えつき,これを主張することで,自己の刑責を免れようと決意したことになる。そうすると,C及びDは,Cにおいて,自己の逮捕が差し迫り,検察庁部内でも調査が始まった中で,電話や立ち話を通じて弁護人ら主張謀略話を詰めたことになるが,Cが逮捕されるまでの限られた時間の中で,最高検の捜査に耐え得るような弁護人ら主張謀略話を考えつくことは極めて困難である。 加えて,被告人両名はもとより, じて弁護人ら主張謀略話を詰めたことになるが,Cが逮捕されるまでの限られた時間の中で,最高検の捜査に耐え得るような弁護人ら主張謀略話を考えつくことは極めて困難である。 加えて,被告人両名はもとより,F,E及びGという,CやDの影響の及ばない第三者がどのような供述をするかの予想もつかず,弁護人ら主張謀略話を主張するに当たっては,これらの者が自己の供述と矛盾する供述をするかもしれない危険性も十分にありながら,C及びDが,そのような危険性を顧みることなく,あえて弁護人ら主張謀略話によろうと決意したというのは,極めて不自然というほかない。また,Cにおいて,前記第1・11,12のとおり,被告人Bとの間で,2月1日C・B間電話及び2月2日C・B間電話をしているところ,弁護人ら主張謀略話を企図するに当たって,C及びDにおいて,ありもしない1月30日のCと被告人B間の電話をねつ造するよりも,2月1日C・B間電話,あるいは,2月2日C・B間電話で,本件改ざんを告白したとする方が,はるかに容易でかつ,被告人両名はもとより,FやGら第三者の供述と矛盾する危険性も少ないのに,なぜ,そのような方法を選ばなかったかについても,説明に窮することになる。 2 しかも,弁護人らの主張によれば,C及びDは,少なくとも9月19日までは,被告人両名に本件虚偽過誤説明をすることで,自己の刑責を免れようと考え,それは成功裏に進んでいたのであるから,9月20日の段階において本件改ざん疑惑がマスコミ関係者の知るところとなり,Cによる本件改ざん疑惑が露見することが免れない情勢となっても,Dにおいては,被告人両名同様に,Cの本件虚偽過誤説明を真実のものと信用した旨述べる方が,弁護人ら主張謀略話によるよりも,はるかに他の者の供述と矛盾する危険性が少ないと思われ,弁護人らの主張を前提と においては,被告人両名同様に,Cの本件虚偽過誤説明を真実のものと信用した旨述べる方が,弁護人ら主張謀略話によるよりも,はるかに他の者の供述と矛盾する危険性が少ないと思われ,弁護人らの主張を前提としたDの行動としても自然である。それにもかかわらず,そのような行動を取らずに,前記1のような他の者の供述と矛盾する危険性の高い弁護人ら主張謀略話によることを決意したと考えるのは,ますます不自然というべきである。 3 弁護人らは,弁護人ら主張謀略話によることで,C及びDは,それぞれの刑責を減じる情状事実を得ることなり,それが自らを守り,あるいは,互いに思慕しあうCないしDを守ることになるが,このことが,C及びDが,弁護人ら主張謀略話によることを決意した動機である旨主張する。しかしながら,弁護人ら主張謀略話によってC及びDが得るものはせいぜい有利な情状事実というに過ぎず,本件虚偽過誤説明を続けることのように,刑責を免れる可能性があるわけではない。また,情状事実としても,Cにとっては,犯行後に積極的に自首できなかった事実というに過ぎず,さして重要な情状事実ともいい難いのであって,現に,C自身,自らの事件においては実刑判決を受けている。しかるに,C及びDにおいて,このように,自らにとって得るものが少なく,かつ,前記2の本件虚偽過誤説明に比べてそれが虚偽であると露見する可能性がはるかに高くなる弁護人ら主張謀略話を,C及びDとの間で,特段の確執もなく,むしろ,仕事を共にし,その実力を高く評価してくれた被告人両名を陥れるばかりか,被告人両名が自己の供述と相反する供述をすることが当然予想されるのに,それをもいとわず,さらには,自らも偽証罪に問われる危険を冒すことも顧みずに,採用することにしたと考えるのは,困難である。 4 弁護人らの主張によれば,前記 る供述をすることが当然予想されるのに,それをもいとわず,さらには,自らも偽証罪に問われる危険を冒すことも顧みずに,採用することにしたと考えるのは,困難である。 4 弁護人らの主張によれば,前記1のとおり,C及びDにおいて,Fらがどのような供述をするか予測もつかない中で,Cが逮捕されるまでの限られた時間内で,弁護人ら主張謀略話を詰めて,それによることにしたところ,前記第3ないし第6で検討したところによれば,その後の捜査の過程で,偶然にも,CやDの影響の及ばないE,G及びFにおいて,弁護人ら主張謀略話に沿った供述をしたばかりか,偶然にも,CやDの知り得ないB執務記録等の内容においても,弁護人ら主張謀略話に沿った記載が,被告人Bによってなされていたことになるが,このような偶然が重なること自体考え難く,C及びDにおいて,そのような偶然を予見し,あるいは期待したということも,考えられないことである。この点,弁護人らは,CとDが,自らの弁護人らを通じ,あるいは,捜査官の顔色を見ても通謀できる旨主張するが,そのような手段から,前記のような証拠に沿った虚偽供述を,互いに整合する形で,かつ,捜査機関の目をくらますほど精緻に行っていくことも,また極めて困難というべきである。 5 C及びDは,前記第5・2・(3)・ア・(エ)のとおり,本件付加的改ざん情報については被告人両名に伝えていないが,弁護人らは,この点も,弁護人ら主張謀略話を裏付けている旨主張する。しかしながら,この点については,前記第5・2・(1)・イ・(ウ)において,被告人B弁護人の主張④に対する反論で述べたとおり,不自然とはいえない。 第8 犯人隠避罪の成立 1 不作為による犯人隠避行為(1) 被告人Bは,前記第3のとおり,1月30日F見聞電話において,Cから直接本件改ざん 反論で述べたとおり,不自然とはいえない。 第8 犯人隠避罪の成立 1 不作為による犯人隠避行為(1) 被告人Bは,前記第3のとおり,1月30日F見聞電話において,Cから直接本件改ざんの告白を受け,被告人Aは,前記第4のとおり,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人BからF見聞電話の報告を受けたことで,いずれもCが本件改ざんを行い,したがって,証拠隠滅罪の犯人であることを知った。ところで,被告人両名は,前記第1・1のとおり,いずれも検事として自らCに対する捜査を行う権限を有し,また,被告人Aにあっては特捜部長として,特捜部所属の検察官らを指揮してCに対する捜査を行い,被告人Bにあっては,特捜部副部長として,特捜部長である被告人Aの命を受けて特捜部所属の検察官らを指揮してCに対する捜査を行う権限を有していたのであるから,これらを行使して,Cに対して捜査を行うべき職責を有しており,また,それを容易に行い得る状況にあった。 (2) しかるに,被告人両名においては,前記第6・3・(2),(3)のとおり,FやEの態度からして,被告人両名が本件改ざんに関して何らかの報告を大阪地検上層部に行うことは避けられない状況にはあるが,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えた報告をすれば,本件過誤説明根拠もあることから,大阪地検上層部から了承を得られる見込みが大きく,それによって,FやEの動きも沈静化させることができ,さらに,M公判の状況からすれば,M事件の弁護人やKの弁護人の動きから本件改ざんが発覚する可能性も低いと考えるに至ったものである。その上で,被告人両名は,前記第6・3・(1)・ア記載の動機から,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えることにし,その旨大阪地検上層部に報告するとともに,Cに対しては証拠隠滅罪の犯人として捜査を行わな で,被告人両名は,前記第6・3・(1)・ア記載の動機から,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えることにし,その旨大阪地検上層部に報告するとともに,Cに対しては証拠隠滅罪の犯人として捜査を行わないことを決意したものであって,ここにおいて,被告人両名は,犯人隠避の共謀を遂げたものと認めるのが相当である。 (3) 被告人両名は,前記(2)の共謀に基づき,前記(1)のとおり,自ら,あるいは部下検察官を指揮して,Cに対する証拠隠滅罪の捜査をする権限と職責があったにもかかわらず,それを行わず,他方で,その間,FやEが本件改ざんを行ったとの疑惑を有している状況において,以下のような行為を行うなかで,本件改ざんの本件虚偽過誤説明へのすり替えを確たるものにし,特捜部内あるいはM公判を担当するFに対し,前記捜査を行わないことに対する不信感を助長せず,むしろ,その沈静化を図っていたものであって,このような被告人両名の不作為は,犯人隠避罪にいう隠避行為に当たるというべきである。 ア前記第1・12・(2),前記第5・2・(3)・ア・(イ),(ウ)のとおり,被告人Aが被告人Bに指示をして,2月2日C・B間電話をし,そこで,Cに対し,Cの件は過誤で行くことに決定した,そこで,どのような説明が付けられるのか,もう一度説明してほしいなどと指示して,本件過誤説明根拠や本件虚偽過誤説明を少し膨らませた話を聞き取った。 イ前記第1・14・(3)のとおり,2月8日,Cが,検事正及び次席らに帰阪の挨拶をした後,被告人両名に報告に行ったが,その際,被告人Aから指示を受けた被告人Bは,Cに対し,何か聞かれたときに本件データの改変が過誤だと説明できるような書面を作成しておくように指示した。もっとも,被告人Bは,同月5日に,自らの発案で,Cに上申書作成を指示したと述べ 被告人Bは,Cに対し,何か聞かれたときに本件データの改変が過誤だと説明できるような書面を作成しておくように指示した。もっとも,被告人Bは,同月5日に,自らの発案で,Cに上申書作成を指示したと述べているが,前記被告人A及びCの各供述の内容及び甲64によれば本件上申書の作成日時が同月8日であることから,同月8日に前記指示があったと認めるのが相当である。 ウ前記イの被告人Bの指示を受けて,Cは,前記第1・14・(4)のとおり,本件上申書を作成して被告人両名に順次提出したが,C供述によれば,その際,被告人Aは,Cに対し,本件上申書に関し,Cが公判請求後に本件フロッピーディスクの検証作業を行ったとする記載について,「これだと何で君がこんなことをやったのか,後で記者連中にものすごい突っ込まれるぞ。」などと指摘し,より合理的な説明内容とするよう指示して,本件上申書をCに差し戻したことが認められる。この点,被告人Aは否定するが,C供述の内容は具体的で自然であり,これに加えて,前記第3ないし第5の各認定事実とも整合していることからすれば,前記C供述は信用でき,これに反する被告人Aの供述は信用できない。 2 作為による犯人隠避行為被告人両名は,前記第1・12・(3)のとおり,2月2日夕方次席報告を行い,前記第1・13のとおり,2月3日午前11時頃,検事正報告を行ったが,その中で,被告人両名は,前記第6・3・(3)・イのとおり,その詳しさの程度は別として,次席及び検事正に対し,本件改ざんのあったことを報告せずに,本件過誤説明根拠に基づき,本件過誤未確定根拠を交えた本件虚偽過誤説明を行ったことが認められる。 その結果,次席及び検事正は,Cによる本件改ざんを認識することなく,したがって,Cが証拠隠滅罪の犯人であることを認識しなかったため,大阪地検 根拠を交えた本件虚偽過誤説明を行ったことが認められる。 その結果,次席及び検事正は,Cによる本件改ざんを認識することなく,したがって,Cが証拠隠滅罪の犯人であることを認識しなかったため,大阪地検次席検事あるいは大阪地検検事正として,捜査はもちろん,調査の必要性もないとの判断に至ったものであるから,被告人両名の次席報告及び検事正報告が,犯人隠避罪の隠避行為に当たることは明らかである。 3 結論以上からすれば,被告人両名には,不作為(前記1)及び作為(前記2)による犯人隠避罪が成立する。 (法令の適用)省略(量刑の理由) 1 事案の概要本件は,大阪地検特捜部長であった被告人Aと特捜部副部長であった被告人Bにおいて,特捜部検事であるCが,厚労省事件の証拠物である本件フロッピーディスク内の本件データを改ざんし,もって,本件改ざんをしたこと,したがって,Cが証拠隠滅の罪を犯した者であることを知りながら,共謀の上,本件改ざんの事実を,本件データが過誤によって改変された可能性はあるが,改変の有無を確定できず,改変されていたとしても過誤に過ぎないとの事実にすり替えて,自ら,あるいは,特捜部所属の検察官らを指揮して捜査を行わず,また,上司である検事正及び次席に対し,前記のとおり,内容虚偽の説明にすり替えた報告をし,検事正らをして捜査を不要と誤信させて自ら又は大阪地検所属の検察官らを指揮して捜査を行わないようにさせ,罰金以上の刑に当たる証拠隠滅罪の犯人であるCを隠避させたという犯人隠避の事案である。 2 犯行に至る経緯・動機について(1) 被告人両名が本件犯行に至った経緯・動機のまとめ被告人両名が本件犯行に至った経緯・動機は,前記「争点に対する判断」で詳述したとおりであるが,これによれば,被告人両名は,おおむね,以下 (1) 被告人両名が本件犯行に至った経緯・動機のまとめ被告人両名が本件犯行に至った経緯・動機は,前記「争点に対する判断」で詳述したとおりであるが,これによれば,被告人両名は,おおむね,以下のような経過で本件各犯行に至ったものである。 ア Cは,被告人Aの指揮の下,主任検事として厚労省事件の捜査をしたが,その過程で,押収された本件フロッピーディスクに保存されていた公的証明書の最終更新日時が,同事件関係者の供述と整合しないという問題,すなわちプロパティ問題を認識したが,関係者の供述に従って,M事件の起訴に至り,その後,本件フロッピーディスクのプロパティ情報を,関係者の供述に沿うよう改ざんした上,本件フロッピーディスクを還付するとともに,Dには,本件改ざんの事実を告白していた。 イしかるに,本件改ざん前の本件フロッピーディスクのプロパティ情報を記載した本件捜査報告書がM事件の弁護人に開示されたことから,1月27日のM事件第1回公判においても,同事件の弁護人からプロパティ問題の指摘を受けるに至ったが,M事件は,大阪地検特捜部としては過去にほとんど例のない,中央省庁の現職の局長を被疑者・被告人として,その威信をかけて立件したものであることから,プロパティ問題に対してもその対応が迫られることになり,1月28日には,特捜部内において,被告人両名も出席した上で,プロパティ問題の検討を含めた会議が開かれた。 ウこのような中,本件改ざんがM事件の弁護人の指摘により発覚することの不安に耐えられなくなったDが,1月27日,Eらに本件改ざんがあった旨告白したことをきっかけに,FやGの知るところとなり,同月30日には,Eが,被告人Bを呼び出して,本件改ざんのあったこと及びそれを上司に報告することを強く迫った。 エ被告人Bは, があった旨告白したことをきっかけに,FやGの知るところとなり,同月30日には,Eが,被告人Bを呼び出して,本件改ざんのあったこと及びそれを上司に報告することを強く迫った。 エ被告人Bは,Q事件関係者の取調べのため,東京地検に応援派遣されているCから事情を聴取することにし,同日,F見聞電話により,Cから本件改ざんを告白されて大きな衝撃を受け,一時はKの弁護人から本件フロッピーディスクを取り戻す考えを示してFらから制止されるなど,取り乱したが,取りあえず,被告人Aに報告して,その指示を仰ぐことにした。 オ被告人Aは,2月1日午前9時40分過ぎ頃,被告人BからCから本件改ざんの告白があったとの報告を受け,大きな衝撃を受けるとともに,この事実を公にした場合,Cはもとより,自身も辞職を余儀なくされるほか,何よりも,特捜部が威信をかけて立件したM事件に多大な悪影響を及ぼし,検察組織の信頼を損ね,ひいては,特捜部自体の存続も危ぶまれる結果になると考える一方で,Fらの態度から,大阪地検上層部へ何らかの報告をすることは避けられない情勢であると認識した。そこで,対応に苦慮した被告人Aは,同日午後,被告人Bと協議した結果,本件改ざんを過誤にすり替え,かつ,それが大阪地検上層部に報告として上げられるような内容の話ができるのか,Cから事情聴取し,その結果次第で,本件改ざんに対する対応を決しようと考えた。 カ被告人Aの指示を受けて,被告人Bは,2月1日C・B間電話をし,Cから,本件過誤説明根拠があることから,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えることは可能であると聞き,2月2日,被告人Aにその旨報告した。 これを聞いた被告人Aは,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えて報告することで大阪地検上層部の了承を得ることは可能であり,それによっ えることは可能であると聞き,2月2日,被告人Aにその旨報告した。 これを聞いた被告人Aは,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替えて報告することで大阪地検上層部の了承を得ることは可能であり,それによって,Fらの要求も沈静化でき,また,M事件においても,同事件の弁護人らの主張に沿った本件捜査報告書が証拠として採用されていることから,本件改ざんが発覚する可能性は低いと見込んだ上で,本件改ざんを隠ぺいすることで,特捜部が威信をかけて立件したM事件への影響を避け,特捜部の存亡に関わるような検察組織の信頼の失墜を防ぎ,さらには,自己やCの地位も保てると考えて,本件犯行を決意し,その旨被告人Bに伝え,被告人Bにおいても,特捜部長である被告人Aがその旨決意した以上,それに従うのが副部長である自らの務めであると考えるとともに,被告人A同様,それが検察組織を守り,また,自らの地位はもとより,部下であるCを守ることにもなると考えて,被告人Aの指示に従って,自らも本件犯行に加担することを決意し,その結果,被告人両名は,その旨共謀を遂げた上で,本件犯行に至ったものである。 (2) 被告人両名の本件犯行に至った経緯・動機への評価ア被告人Aは,前記(1)のとおり,特捜部が威信をかけたM事件への影響を避け,特捜部の存亡に関わるような検察組織の信頼の失墜を防ぎ,さらには,自己や部下であるCの地位も保てると考えて,本件犯行を決意したものである。しかし,組織防衛,あるいは,部下の身を思うなど,組織に身を置く者として,目的だけから見れば一見正当と思われる行為であっても,あくまでも,法令を遵守する中で行われるべきであり,それが法に反する以上,断固としてそれを摘発し,正していくべきは当然であって,それこそが,被告人A自身が長年身を置いてきた特捜部の果たしてきた役割 あくまでも,法令を遵守する中で行われるべきであり,それが法に反する以上,断固としてそれを摘発し,正していくべきは当然であって,それこそが,被告人A自身が長年身を置いてきた特捜部の果たしてきた役割であり,被告人A自身も,そうした仕事に誇りを持って取り組み,数々の事件で,そうした行為を正してきたはずである。しかも,特捜部長の職にある被告人Aにおいては,自らの部下の不祥事という膿を出し切る勇気を持ちさえすれば,本件犯行を思いとどまり,かつ,部下の犯罪を正す捜査も容易に行える立場にもあった。 しかるに,被告人Aは,前記(1)のとおり,M事件の弁護人の動向,Fら部下検察官の動向を分析するとともに,Cから聴取した本件虚偽過誤説明の内容から,大阪地検上層部への報告を乗り切れると見極めるや,捜査の専門家として,それが犯罪を構成するという,極めて違法性の高い行為であることを知りながら,組織防衛のためなどという,本来法令の枠内でのみ達成されるべき目的等のために,本件各犯行に至ったものであって,特捜部に所属する現職検事が,自ら主任として立件した事件の証拠を改ざんするという,前代未聞の不祥事に直面し,狼狽して冷静さを失ったとはいえ,なお,被告人Aの職責に照らせば,その動機は極めて安易で無自覚というほかなく,厳しい非難は免れない。 イ被告人Bは,前記(1)のとおり,被告人Aの決断を受け,副部長としてそれに従うべきだと考えるとともに,被告人A同様,特捜部の組織防衛や,自ら,あるいは,部下であるCの身を考えて,被告人Aに加担することを決意し,本件犯行に至ったものである。しかしながら,被告人Bも,被告人A同様,特捜部に身を置いて,そのような組織防衛の名の下で行われる犯罪を厳しく弾劾してきたものであり,また,特捜部副部長として,被告人Aの指示に従うべき立場 である。しかしながら,被告人Bも,被告人A同様,特捜部に身を置いて,そのような組織防衛の名の下で行われる犯罪を厳しく弾劾してきたものであり,また,特捜部副部長として,被告人Aの指示に従うべき立場にあったとはいえ,法令違反行為の指示に従わなければならないいわれはなく,FやEが自らに取った態度からも明らかなように,副部長として,むしろ,被告人Aの誤った判断をいさめ,場合によっては,大阪地検上層部に自ら直接報告するなどして,Cの犯罪を摘発する行動に出ることも十分可能であった。しかるに,被告人Bは,前記のとおり,副部長として被告人Aの指示に従うべきだと考えたことのほか,被告人Aと同様の動機の下に本件犯行に至ったものであって,Cから本件改ざんという前代未聞の不祥事の告白を受け,被告人A同様,冷静さを失ったとはいえ,なお,被告人Bの職責に照らせば,その動機は極めて安易で無自覚というほかなく,被告人Aに対すると同様,厳しい非難は免れない。 3 犯行態様について(1) 本件犯行の態様ア被告人両名は,前記2・(1)のとおり,本件犯行を決意するまでの過程で,Fら本件改ざんを知る検事らの動向,M事件の弁護人らの動向を分析し,Fらについては,大阪地検上層部に報告を上げれば,その動きを沈静化させることができ,また,M事件の弁護人らについては,M事件の進行状況から見て,本件改ざんを問題にする可能性は低いと判断した上で,Cからの聴取結果を基に,本件過誤説明根拠があることを盾にして,本件改ざんを本件虚偽過誤説明に置き換えて大阪地検上層部に報告すれば,その了承が得られるとの成算を得たことから,本件犯行に至っている。 イまた,被告人両名は,本件犯行を行うに当たって,本件改ざんを行ったCはもとより,M事件の捜査に深く関与し,また,Mの起訴直後頃に 承が得られるとの成算を得たことから,本件犯行に至っている。 イまた,被告人両名は,本件犯行を行うに当たって,本件改ざんを行ったCはもとより,M事件の捜査に深く関与し,また,Mの起訴直後頃にはCから本件改ざんの告白を受けながら,それを被告人両名に報告しないまま,先にEらにそれを漏らしたDをも,その隠ぺいに加担させる必要があると考えたことから,被告人Bにおいて,2月1日C・B間電話において,Cに,「この件は,過誤ということで説明を付けられないのか。」などと誘いかけ,Cの保身を願う気持ちに働き掛けて,本件虚偽過誤説明を引き出し,被告人Aにおいて,2月2日,Dに対し,「今回の件はC君のミステイクということで行く」,「君は僕に改ざん行為を言わなかった・・・責任がある,・・・だから,僕の指示に従え。」などと言い,Dの自責の念に働き掛けて,Dの協力を取り付けて巻き込むことによって,本件改ざんの隠ぺいが確実なものになるよう,意を用いている。 ウその上で,被告人両名は,本件改ざんを本件虚偽過誤説明にすり替え,大阪地検上層部にそれに沿った説明を言葉巧みに行って,思惑どおりに,それぞれが,かつて特捜部長を務めた捜査の専門家でもある次席や検事正をして事の重大さを感じ取らせないまま,特捜部の報告を了承させているほか,帰阪したCに対し,本件虚偽過誤説明に沿った書面を作成するように命じ,それを受けてCが本件上申書を作成すると,被告人Aにおいては,訂正すべき点を指摘するなど,本件虚偽過誤説明をより精巧なものにしようと意を用いている。 エ以上のとおり,被告人両名の本件犯行態様は,極めて用意周到かつ慎重に準備・計画された巧妙な犯行であり,そのために,別紙「B執務記録等一覧表」B―⑯における,「一体何回・何時間・部長室にて協ギを重ねたことだろう ,被告人両名の本件犯行態様は,極めて用意周到かつ慎重に準備・計画された巧妙な犯行であり,そのために,別紙「B執務記録等一覧表」B―⑯における,「一体何回・何時間・部長室にて協ギを重ねたことだろう」との記載に現れているとおり,被告人両名において綿密な謀議を重ねているのであって,悪質というべきである。 オまた,被告人両名は,前記のとおり,M事件の弁護人らの動向を分析して本件フロッピーディスク自体が公判で取り上げられる可能性が低いと判断した上,一見,本件改ざんがあったこととは矛盾するかのような本件過誤説明根拠があることに着目し,本件虚偽過誤説明にすり替えることに成算を見い出し,また,被告人Aが,Cが作成した本件上申書に対し,訂正すべき点を指摘するなど,自らの検察官としての知識や経験を悪用して,本件改ざんの隠ぺいに意を用いているのであって,本件犯行は,この点でも悪質というべきである。 (2) 被告人両名の役割ア被告人Aは,前記(1)のとおり,被告人B,あるいはCないしはDから得た情報を分析しながら,本件犯行の決断をし,その後も,被告人B,C及びDに必要な指示を出すなどして,終始,本件犯行を主導したものであり,被告人Aの決断がなければ本件犯行は成り立たなかったと評価できるのであって,その果たした役割は極めて重要である。 イ他方,被告人Bも,被告人Aの指示を受けて,その意にかなうように冷静かつ精緻に考えて行動をし,Cらから得た情報,さらには,自らの考えを,別紙「B執務記録等一覧表」記載のとおり,罫紙メモやトピック欄等に整理して記載するなどし,そうして整理した情報や考えを被告人Aに提供しているのであり,被告人Bがいなければ,本件犯行は,前記(1)で指摘したような巧妙なものとはならなかったであろうと評価できるのであって,この 載するなどし,そうして整理した情報や考えを被告人Aに提供しているのであり,被告人Bがいなければ,本件犯行は,前記(1)で指摘したような巧妙なものとはならなかったであろうと評価できるのであって,このことは,同一覧表B―⑮記載のとおり,被告人Aから,「よく乗り越えてくれた」,「他のSDではダメだっただろう」と評価されていることでも裏付けられている。したがって,本件犯行において,被告人Bが果たした役割も,また,被告人Aに劣らず重要というべきである。 4 犯行結果について本件犯行のもたらした結果も,以下のとおり,重大である。 (1) 前記2・(1)の経緯によれば,被告人Bは,1月30日に,被告人Aは,2月1日に,それぞれCによる本件改ざんを認識したものであるが,捜査の専門家であり,かつ,捜査権限もあり,その指揮下に捜査を実施する組織も有している被告人Aや,同被告人を補佐する被告人Bにとっては,Cによる本件改ざんが証拠隠滅罪を構成する犯罪であることや,速やかにその捜査を行い,Cに然るべき刑事処分を受けさせる方途を取ることは可能であり,かつ,その必要性があることも十分認識できたはずである。しかるに,被告人両名は,そのような方途を取らず,かえって,本件犯行により,それを隠ぺいし,その結果,Cの逮捕も9月21日を待たなければならなくなったのであって,それが,刑事司法の担い手である捜査機関に身を置く被告人両名の手によって行われたことを考えると,本件犯行により,Cの証拠隠滅行為に対してあるべき刑事司法の作用は大きく損なわれたというべきである。 (2) また,被告人両名は,1月28日の会議において,M公判ではプロパティ問題が争点として提起されていることを認識していたことからすれば,本件改ざんを認識した時点では,それがM事件にもたらす影響の大きさ また,被告人両名は,1月28日の会議において,M公判ではプロパティ問題が争点として提起されていることを認識していたことからすれば,本件改ざんを認識した時点では,それがM事件にもたらす影響の大きさを十分認識できたはずである。したがって,M公判において,本件改ざん前のデータが記載された本件捜査報告書が証拠として取り調べられているとはいえ,被告人両名においては,M事件の立証にも責任を持つ,特捜部長及び副部長として,本件改ざんを認識した後は,直ちに,検察官の主張に沿うとされている各関係者の供述の信用性を含めて,M事件の証拠構造について,改めて吟味すべきであった。しかるに,被告人両名は,そのような調査をせず,かえって,本件犯行により本件改ざんを隠ぺいしたのであって,本件犯行がM公判やMに与えた影響も否定できない。 (3) さらに,Cの本件改ざん自体,事案を解明し,刑罰権を適切に行使するための強大な権限を持ち,それゆえに,その廉潔性が強く求められる現職検察官が犯した証拠隠滅行為として,刑事司法に対する社会の信頼を大きく損ねたものであるが,本件犯行は,検察庁内においてそのような病理現象が生じた場合,それを正すべき立場にある被告人両名の手によって,適切な自浄作用が果たされなかったばかりか,かえって,それが隠ぺいされようとしたものであって,このような解明の困難な組織内の犯罪にメスを入れ,それを正すことが期待されてきた特捜部,ひいては,検察組織全体に対する社会の信頼を大きく損ねたばかりか,刑事司法における,検察官の活動全体に対する社会の信頼を損ない,ひいては,刑事司法に大きな悪影響をもたらしたというべきである。 (4) 加えて,前記のとおり,本件犯行が検察組織全体に対する社会の信頼を損ねた結果,日夜,犯罪を摘発し,それに対し,適正な処分をもたらし, は,刑事司法に大きな悪影響をもたらしたというべきである。 (4) 加えて,前記のとおり,本件犯行が検察組織全体に対する社会の信頼を損ねた結果,日夜,犯罪を摘発し,それに対し,適正な処分をもたらし,社会全体の法秩序の維持のために努力している,多くの真面目な検察官の職務に対しても,あらぬ疑いの目や,いわれのない中傷をもたらしたことも十分あり得るというべきであるが,そのことが,これら検察官の職務遂行をいたずらに困難にし,ひいては,その士気を損ないかねない影響を与えたことも否定できない。 (5) さらに考えれば,本件犯行が,秩序を保つため厳正に職務遂行することが,社会から求められている検察庁の幹部により行われたものであることから,社会における法令遵守に対する思いを損ねたのではないかとも懸念されるところである。 (6) 以上からすれば,本件犯行の結果は,誠に重大というべきである。 5 犯行後の情状について(1) 本件犯行後の被告人両名の態度を見るに,被告人Aにおいては,検事正報告の後,満面の笑みを浮かべて,Dに対し,「やったなD君」と言って握手を求めた上,「今までの検事生活の中で一番厳しい戦いだった」,「これでクリアだとC君にも伝えてやってくれ。」などと言い,その後は危機感も薄れて,3月26日の被告人Bとの面談においては,被告人Bに対し,「よく評価しておきました。」,「フロッピー問題は最大の危機だった」,「よく乗り越えてくれた」,「他のSDではだめだっただろう」と述べてねぎらう一方で,後任の特捜部長に対しては,本件改ざんに関して一切引継ぎをせず,その後も,思い直して,本件改ざんを然るべき部署に報告することもなく,9月20日に,本件改ざんに関してCに対する調査が開始された後も,Dに対し,「実ははなしだぞ。」などと言い,Cに対しても,「故意 その後も,思い直して,本件改ざんを然るべき部署に報告することもなく,9月20日に,本件改ざんに関してCに対する調査が開始された後も,Dに対し,「実ははなしだぞ。」などと言い,Cに対しても,「故意か過誤か知ってるのは君だけだ」,「最後まで頑張れ」などと言って,事情を知る者に口止めをしている。 (2) また,被告人Bにおいても,大阪地検上層部への報告後も,別紙「B執務記録等一覧表」C―④のとおり,「当面,証拠物の管理におけるミス~という主張を貫く」との考えの下,Cから本件改ざんの実演を受けても,なお,同一覧表B―⑬のとおり,「~なるほどしかし本件は過誤~あったとしても~でありそれが事実なのだ」と記載し,また,異動期においても,被告人A同様,後任者に本件改ざんに関する引継は一切せず,9月21日にCに電話をして,「とにかく,あれで行くから,あれが真実だ,真実は一つだから」などと言って口止めをしている。 (3) 以上のような,被告人両名の行動を見ると,被告人両名において,本件犯行を犯したことの重大さや,その影響の大きさに思いを致し,それに向き合おうとする態度は微塵も見られないばかりか,本件公判においても,なお,本件改ざんを隠ぺいしたことを否定する態度に終始しているのであって,そこには,本件犯行に対する反省の態度は見い出せない。 6 犯情についての結論以上からすれば,被告人両名による本件犯行の犯情は悪質で,その刑事責任は等しく重いというほかない。 7 有利な事情しかしながら,他方で,以下のとおり,被告人両名のために酌むべき事情もある。 (1) 被告人両名が本件犯行に至ったのは,Cによる本件改ざんという,我が国の刑事司法史上例を見ない事件に端を発しており,そのような衝撃的な事件がなければ,被告人両名においても,本件犯行に至ること (1) 被告人両名が本件犯行に至ったのは,Cによる本件改ざんという,我が国の刑事司法史上例を見ない事件に端を発しており,そのような衝撃的な事件がなければ,被告人両名においても,本件犯行に至ることはなかったものであり,この点は,被告人両名の量刑において,考慮すべきである。 (2) 次に,被告人両名が本件犯行に至った動機は,前記2で述べたとおりであるところ,そこには,自己保身もあるものの,その主たる動機は,検察組織,なかでも,特捜部の威信や組織を守りたいとの思い,さらには,部下であるCを守りたいとの思いにあることからすれば,本件犯行を被告人両名の私心による犯行と評価することはできず,この点は,被告人両名のために量刑上考慮すべきである。 (3) ところで,被告人両名の経歴は,別紙「被告人A略歴表」及び「被告人B略歴表」にそれぞれ記載されているとおりであるが,これを見ても,被告人両名は,検察庁部内において,その捜査官としての力量はもとより,管理者としての力量も評価されてきたことが明らかである。しかるに,本件犯行は,前記(2)のとおり,被告人両名において,特捜部の威信や組織を守りたいとの思いを主たる動機としているところ,このような思いを抱いたことが,被告人両名の特異な性格や考え方によるものであるとは,前記のような被告人両名の経歴に照らしても,考え難い。むしろ,M事件の立件に至る経緯,M公判の経緯,Cによる本件改ざんそれに続く本件犯行の経緯を見ると,そこには,特捜部の威信や組織防衛を過度に重要視する風潮が,当時の特捜部内,ひいては検察庁部内にあったことは否定できず,さらには,立件する以上は,中央省庁の局長のような大物を逮捕して事件を大きくしたい,特捜部が逮捕した以上は,何としても起訴し,起訴した以上は有罪を得なければならないとの思いから冷静 ことは否定できず,さらには,立件する以上は,中央省庁の局長のような大物を逮捕して事件を大きくしたい,特捜部が逮捕した以上は,何としても起訴し,起訴した以上は有罪を得なければならないとの思いから冷静な判断ができなくなるといったような,偏った考え方が,当時の特捜部内に根付いていたことも看取できるのである。そもそも,本件犯行は,Cによる本件改ざんに端を発したものであるが,C自身,特捜部というのは失敗は許されない,起訴した以上は必ず勝たないといけないとの思いから,M事件においても,より確実に,より迅速に有罪を得るため,消極証拠の一つとなり得る本件フロッピーディスクを弁護人に対する証拠開示の対象から外すため,これをKに還付したいが,その際,還付を受けたKにおいて万一本件フロッピーディスクのデータを見たときに,自らの供述に照らして違和感を抱かないようにするため,本件改ざんを行った旨,その動機を述べているが,これも,前記のような,当時の特捜部の考え方を裏付けている。そして,被告人両名が本件犯行に至ったのも,このような当時の特捜部内の体質ともいうべき考え方に影響されたものということができるが,当時の検察庁部内において,特にそのような特捜部の体質を改めようとする姿勢は見られなかった。そうすると,本件犯行は,このような組織の病弊ともいうべき当時の特捜部の体質が生み出したともいうことができるのであって,この点では,被告人両名ばかりを責めるのも,酷ということができる。 (4) また,被告人両名が,本件虚偽過誤説明でも,大阪地検上層部への報告であれば乗り切れると考えて本件犯行に至り,また,大阪地検上層部への報告が,被告人両名の思惑どおりに終わると,Fら,本件改ざんを隠ぺいしてはならないとの正当な考えを持つ複数の検察官が存在しながらも,その意思をくみ上げる えて本件犯行に至り,また,大阪地検上層部への報告が,被告人両名の思惑どおりに終わると,Fら,本件改ざんを隠ぺいしてはならないとの正当な考えを持つ複数の検察官が存在しながらも,その意思をくみ上げることができなかったが,これからすれば,本件犯行当時の,大阪地検,ひいては,検察庁内部における非違行為の監視態勢にも不備があったというほかないが,この点も,被告人両名において,本件犯行に踏み切らせた一因をなしているということができる。 (5) さらに,被告人両名は,前科前歴がないのはもとより,前記(3)のとおり,本件犯行に至るまでは,有能な検察官として,その与えられた職務に精励してきたものであるが,本件犯行の結果,広く社会に報道された上,懲戒免職処分を受け,検察官として,これまで築き上げてきた信用や名誉を一挙に失い,経済的にも社会的にも大きな苦境に立たされるなどの社会的制裁を受けていることも,被告人両名のために酌むべきである。加えて,被告人両名は,前記のとおり,既に検察官の職を失っていることからすれば,もはや再犯のおそれはないといえる上,真っ当な社会生活を営んでいく意思も能力もあり,また,被告人両名を支えていく家族もそれぞれに有していることからすれば,被告人両名には,社会内で更生することは十分期待することができる状況にある。 8 結論そこで,以上の諸事情を総合考慮して,被告人両名に対しては,等しく主文掲記の懲役刑を科した上で,その執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。 (求刑)被告人両名について懲役1年6月平成24年4月12日 大阪地方裁判所第11刑事部 裁判長裁判官岩倉広修 裁判官植野賢太郎 平成24年4月12日 大阪地方裁判所第11刑事部 裁判長裁判官岩倉広修 裁判官植野賢太郎 裁判官木山暢郎は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官岩倉広修

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