平成24(行ウ)877 不許可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月19日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文30,454 文字)

- 1 -平成26年2月19日判決言渡平成24年(行ウ)第877号不許可処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求東京都知事が原告に対して平成24年5月24日付けでした賃貸人原告,賃借人参加人間の別紙1物件目録記載の土地の賃貸借契約の解約の申入れについてした不許可処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,その所有する農地である別紙1物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を参加人に対して賃貸(以下,これに係る契約を「本件賃貸借契約」という。)をしているところ,①参加人が,本件土地のごく一部を家庭菜園として利用するのみで,その大部分につき耕作を行うことなく放置し荒れるに任せるなどしていた,②本件土地は市街化区域内にあり,平成4年以降,固定資産税につきいわゆる宅地並み課税がされ,その税額が借賃の額を大きく上回るいわゆる逆ざや状態となっていて,原告の持ち出しが続いていたなどの事情があり,農地法(以下「法」という。)18条2項1号又は5号所定の農地の賃貸借の解約の申入れをすることを許可すべき事由があるにもかかわらず,東京都知事が原告の同条1項に基づく本件賃貸借契約の解約の申入れをすることについての許可の申請に対してこれを許可しないとの処分(以下「本件処分」という。)をしたとして,同処分の取消しを求めた事案である。 1 関係法令等の定め別紙2「関係法令の定め」に記載したとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。) - 2 - 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除いて,当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,宗教法人である。 (2) 称等は,以下においても用いることとする。) - 2 - 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除いて,当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,宗教法人である。 (2) 本件土地について原告は,本件土地を所有している。 本件土地は,市街化区域内にある農地であるが,生産緑地地区の区域内にない。 本件土地は,その北側の道路とは網等をもって画されており,道路に至るには,西側に隣接する原告が所有し参加人以外の者の耕作に係る土地の南端に開設された通路を通行するものとされている(甲5,12,14,乙4,7)。 (3) 本件賃貸借契約等参加人の父は,昭和10年頃,原告から本件土地を賃借し,同土地において耕作を開始した(弁論の全趣旨)。 参加人の父の死亡により参加人の母が本件土地についての賃借権を相続により取得し,その後の昭和56年に,参加人は,上記賃借権を相続により取得し,以後,同土地の少なくとも一部において耕作を行ってきた(甲13,弁論の全趣旨)。 参加人は,本件土地において,自家消費用等の作物を栽培するなどしている(甲1,13,乙4)。 参加人は,平成4年以降,別紙3「本件土地の固定資産税額・地代額等」のとおり,本件土地の借賃として年額5万円を供託している。 (4) 逆ざや状態本件土地は生産緑地地区の区域内にないため,平成4年度以降,本件土地に対して課する固定資産税の課税標準となるべき価格については類似宅地の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格によって定められる - 3 -べきものとされ,宅地並み課税がされて,本件土地に対して課される固定資産税の額が本件土地の借賃の額を上回る逆ざや状態が生じている。 (5) 解約の申入れをすることについての許可の申請原告は, べきものとされ,宅地並み課税がされて,本件土地に対して課される固定資産税の額が本件土地の借賃の額を上回る逆ざや状態が生じている。 (5) 解約の申入れをすることについての許可の申請原告は,平成24年2月23日付けで,東京都知事に対し,法18条1項の規定に基づき,本件賃貸借契約の解約の申入れをすることについての許可の申請をした。 (6) 本件処分東京都知事は,平成24年5月24日付けで,原告が本件賃貸借契約の解約の申入れをすることを許可しないとする本件処分をした。 (7) 審査請求原告は,平成24年7月13日付けで,本件処分について審査請求をした。 (8) 裁決農林水産大臣は,平成24年11月13日付けで,上記(7)の審査請求を棄却する裁決をした。 (9) 本件訴えの提起原告は,平成24年12月28日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点等本件における争点は,本件処分の適法性であり,具体的には,本件において,原告が農地の賃貸借の解約の申入れをすることについて法18条2項1号又は5号所定の許可の事由に該当する事情があると認められるかであり,この争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおりである。 (原告の主張の要旨)(1) 本件においては,以下の①ないし④の事情が存在し,法18条2項1号又は5号に基づき解約の申入れを許可すべきであったのにもかかわらず,本件処分は上記各号の解釈を誤り不許可にしたもので違法なものである。 - 4 -① 本件土地は袋地で,本件土地にたどり着くには現在耕作に供されている隣接地の際を事実上通るほかなく(甲5の写真1ないし3),効率的な利用など不可能な状況が長期間にわたっている。 ② 本件土地は,農地の宅地化を促進し市街化を図る市街化区域内に 現在耕作に供されている隣接地の際を事実上通るほかなく(甲5の写真1ないし3),効率的な利用など不可能な状況が長期間にわたっている。 ② 本件土地は,農地の宅地化を促進し市街化を図る市街化区域内にあり,平成4年以前から別紙3「本件土地の固定資産税額・地代額等」のとおり,公租公課額が供託地代額5万円を大きく上回るという逆ざや状態となっており,直近では毎年約60万円の原告の持ち出しが続いている。なお,地代の増額請求ができないことについては,最高裁平成8年(オ)第232号同13年3月28日大法廷判決・民集55巻2号611頁(以下「平成13年最高裁判決」という。)が判示している。 ③ 参加人は,平成元年以前から本件土地のごく一部を家庭菜園として気の向くままに利用するのみで,大部分の土地は耕作を行うことなく放置し荒れるに任せている(甲5)。このような耕作権の放棄状態は20年以上継続しており,参加人が本件土地を占有しているのは,原告から理由のない多額の離作料等の支払を受けることを目的とするもので,法2条の2の明記する農地について賃借権等を有する者の責務からすると,参加人に保護すべき権利は存在せず,参加人の本件土地の利用は,信義誠実原則に反した行為であることが明らかである。 ④ 本件土地は,原告の墓地に接しており,公簿上783平方メートル(約240坪)もの広さを有し,様々な有効利用が可能である。原告は,現時点において本件土地の返還を受けなければならない具体的な計画を策定するに至ってはいないが,檀家と相談しながら市街化区域及び周辺環境にふさわしい柔軟な利用を行っていく予定である。 なお,農業収益が存在しない本件土地に係る本件賃貸借契約の解約には離作補償の問題は発生しないというべきであるが,原告は同解約に当たり,参加人に対し500万円を離 柔軟な利用を行っていく予定である。 なお,農業収益が存在しない本件土地に係る本件賃貸借契約の解約には離作補償の問題は発生しないというべきであるが,原告は同解約に当たり,参加人に対し500万円を離作補償として支払う用意がある。 - 5 -(2) 法18条2項1号の該当性に関する被告の主張について被告は,参加人が本件土地の一部を農地として使用しているので,賃貸人と賃借人の関係を持続することが客観的に見て不能とされるような信義誠実の原則に反した行為は存しない旨主張するが,土地の一部でも農地として使用していればなぜそのような結論に至るのか理解し難い。問題とすべきは,一部でも使用しているか否かではなく,具体的な使用態様であり,したがって,本件においては参加人の本件土地の具体的な使用態様が検証されねばならない。参加人は,昭和14年生まれで,サラリーマンのときに本件土地の賃借権を相続し,その後定年退職した。後継者はおらず,耕作等の労務に携わることのできる者は,参加人だけであり,その結果,本件土地の使用もわずかな部分にとどまり,自家消費用として耕作も気の向くままに行われている。したがって,本件土地からの明確な収穫高もなく(乙4の4枚目(「18条申請土地状況調査調書」)の「普通収穫高」の欄に収穫高の記載がない。),本件土地の大部分は荒れたまま放置され,この状態が20年以上も継続している。参加人は,本件土地の耕作権を放棄しているとみることもできる。また,年額5万円の地代供託も20年以上に及んでいる。以上の使用状況は,賃貸借契約における継続的信頼関係を根底の部分において損なうものであり,逆ざや状態の下で原告が毎年60万円以上の負担を強いられている現状を加味したときに,原告と参加人は,賃貸人と賃借人の関係を維持することが客観的に不可能な状態に を根底の部分において損なうものであり,逆ざや状態の下で原告が毎年60万円以上の負担を強いられている現状を加味したときに,原告と参加人は,賃貸人と賃借人の関係を維持することが客観的に不可能な状態にあることは明らかである。 特に,平成21年法律第57号による法(農地法)の改正で,法1条の目的まで大きく変更され,法2条の2が新設されて,他者の利用の機会を排除して当該農地を独占的に利用できる立場にある賃借人等について「当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」との責務が明示され,その審議の際,衆参両議院で関連する附帯決議もされたが,参加人の本件土地利用は,上記責務に真っ向から違反するものであり, - 6 -参加人の土地利用が信義に反するものであることは疑問の余地がない。 なお,参加人が何故に20年以上も実質不耕作状態で本件農地を占有し続けてきたかについて一言触れておく。参加人は,元サラリーマンで,農業を生業としたことはなく,現在も「農地の適正かつ効率的な利用」などとは無縁な生活を送っている。参加人が本件土地の占有を継続している唯一の動機は,原告から本件土地の時価の約3割相当の高額な離作料若しくは土地所有権を獲得できるという期待である(乙4の5枚目(「農地法18条に係る論点表」)の論点6(参考事項)の「相手方の主張・反論」,同9枚目(「会議録」)の事務局による「借人が一番望んでいることは,離作補償として3割位の面積の土地を得て農業を継続することです。」との説明)。このような法の目的から外れる意図で本件土地の一部を気の向くままに使用し続ける参加人の行為は,権利の濫用というべきもので,参加人には保護される権利自体が存在しない。 以上より,本件については,法18条2項1号に該当するもので,本件処分は取り 部を気の向くままに使用し続ける参加人の行為は,権利の濫用というべきもので,参加人には保護される権利自体が存在しない。 以上より,本件については,法18条2項1号に該当するもので,本件処分は取り消されなければならない。 (3) 法18条2項5号の該当性に関する被告の主張についてア(ア) 本件土地は袋地で,第三者の賃借地の際(人1人がようやく通れる通路幅しかない。甲5の写真2)を通ってのみ本件土地にたどり着くことができる。したがって,そもそも,機械営農は不可能で(乙4の4枚目(「18条申請土地状況調査調書」)の「高性能の機械営農」の欄が「不可能」となっている。),783平方メートルの本件土地利用は元サラリーマンである参加人の人力を頼りにするしかなく,本件土地の効率的利用など到底望むべくもない状況である。本件土地が袋地であるという制約は,農地の効率的使用の可能性を見極める上で重要な要素である。 (イ) この点,被告は,乙7の写真(平成25年7月9日撮影)を提出し, - 7 -通行の支障となっていると原告が主張する樹木は既に伐採され存在しておらず,人1人がようやく通れる通路幅を通ってのみ本件土地にたどり着くことができる状況にはない旨主張する。確かに,甲5の写真1ないし3と乙7を比較すると,樹木が伐採されたようであるが,原告の指摘により,急きょ通路付近の樹木を伐採し多少通行できる形を取り繕っただけのことで,依然として営農機械などの搬入は到底困難な状況に変化はない(甲12)。また,慌てて樹木を伐採した参加人の行動は,遡って本件土地が不耕作状態であった事実を認める結果ともなっている。 そもそも参加人は,平成4年以前から(遡ればサラリーマンであった参加人が本件の借地権を相続した昭和56年頃からと推測される。),本件土地の耕作管理を放 作状態であった事実を認める結果ともなっている。 そもそも参加人は,平成4年以前から(遡ればサラリーマンであった参加人が本件の借地権を相続した昭和56年頃からと推測される。),本件土地の耕作管理を放棄しており,現在本件土地には多くの樹木が育ち根を広げている。したがって,本件土地を耕作可能な状態とするためには,それらを伐採し,根を掘り出すところから始めなければならず(甲5の写真5,8ないし10,14,18ないし20),しかるべき農機等の搬入・搬出,さらには伐採樹木の搬出が必要となり,この度の出入口の樹木の伐採などで到底対応できるものではない。しかも,乙7及び甲12の写真手前に撮影されている耕作地は第三者が原告から借地しており,参加人が同借地を通行できる正式な権利を有しているものではない。また,本件土地に関し農業を担えるのは昭和14年生まれの参加人だけであることは既に述べたとおりである。この度,参加人は,本件土地へ通じる出入口付近の樹木を伐採したが,客観的な事実は,同人が本件土地を適正かつ効率的に利用することが極めて困難な状況にあることを示している。 行政処分の違法性判断の基準時は処分時であり,本件では平成24年5月24日である(甲5の写真1ないし3の状態)。したがって,本件処分時以降に本件土地の利用状況に変化があったとしても,本件処分の - 8 -違法性判断に格別影響するものではない。 (ウ) 参加人による本件土地の利用の状況等は,前記(1)③及び(2)に述べたとおりであるところ,甲14によれば,本件土地の登記簿上の面積に対する参加人の耕作面積の割合は24.8パーセントであることになるが,被告は,これに対し,単純に登記簿上の面積と作付面積とを比較して農地の利用状況を論じることは,農地の利用実態に即していないと反論する。原告も の耕作面積の割合は24.8パーセントであることになるが,被告は,これに対し,単純に登記簿上の面積と作付面積とを比較して農地の利用状況を論じることは,農地の利用実態に即していないと反論する。原告も厳密な定義を前提に「耕作面積」を主張しているものではないので,被告が耕作には作業用の通路部分や境界線からある間隔が必要と考えたとしても,一般論としてそれに反対するものではない。しかし,現実の耕作についていかほどの作業用の通路部分が必要であり境界線との間隔はどの程度のものかは,本件土地に隣接して耕作されている土地によって明らかとなるところ(甲14の写真13ないし15),同土地では,作業用の通路部分が判明できないほどに耕作として利用されており,また,境界線との間隔も道路部分しか判別できず,約1メートルも確保されているとは見えない。しかも,参加人によれば,本件土地の実測面積は縄延びがあり845平方メートルとなっているというのであり,そうであるとするなら,作業用の通路部分や境界線との間隔を加味したとしても,本件土地の実測面積に対する耕作面積の割合は,原告の主張と大きく異なることはないことになる。いずれにせよ,本件土地の利用実態が,法2条の2によって農地権利者の責務とされた「適正かつ効率的な利用の確保」から大きくかけ離れたものである事実は,雑草一つなく隅々まで肥培された隣接農地と本件土地を比較することによって一目瞭然である。 イ(ア) 原告は現在本件土地利用について具体的に明示できるプランを持っていないことは事実であるが,明示できるプランがないことだけで法18条2項5号の適用が否定されるものではない(農地法関係事務に係る処 - 9 -理基準(平成12年6月1日付け12構改B第404号農林水産事務次官依命通知)。乙5。以下「処理基準」という。 条2項5号の適用が否定されるものではない(農地法関係事務に係る処 - 9 -理基準(平成12年6月1日付け12構改B第404号農林水産事務次官依命通知)。乙5。以下「処理基準」という。)第9の2(4)(「法第18条第2項第5号の判断基準」)も,具体的に明示できるプランの存在などを求めておらず,かえって,平成21年の法の改正に伴って改正された処理基準の当該部分(甲11)においては,「個別具体的な事案ごとに様々な状況を勘案し,総合的に判断する必要がある」,「賃貸借の解約等を認めることが農地等の適正かつ効率的な利用につながると考えられる場合には積極的に許可を行うべきである。」とされ,極めて有用かつ弾力的に運用ができるものとなっている。)。そもそも原告が具体的利用プランを持ち合わせていないのは,平成元年頃から高額・理不尽な離作料を要求し続ける参加人から本件土地の返還を受けられる見通しが立たなかった結果である。本件土地は市街化区域農地で,宅地並み課税によって宅地化の促進が求められている。その意味では,市街化区域農地であること自体が賃貸借契約の解約による多様な利用可能性を示している。 (イ) 被告は,原告が賃貸借契約の解約後に農地として使用していないことを前提として解約の許可申請をする場合には,法18条2項2号に該当することを理由として申請すべきだから,同項5号は解約後も農地として使用することを前提としたものと解すべきと主張する。 しかし,同項2号が農地として使用しないことを前提としているからといって,同項5号を農地としての使用を前提としたものとの解釈が導かれるものではないし,そのような制約もないというべきである。いうまでもなく,同号は,同項1号ないし4号に該当しない場合であっても,解約許可制度の趣旨から,当該具体的事情 前提としたものとの解釈が導かれるものではないし,そのような制約もないというべきである。いうまでもなく,同号は,同項1号ないし4号に該当しない場合であっても,解約許可制度の趣旨から,当該具体的事情からは許可することが相当と考えられる場合に許可できるようにしたいわゆる一般条項であり,同項1号と同様同項5号によって農地の賃貸借契約の解約が認められる場合 - 10 -の賃貸人の立場は種々あり得る。解約によって返還を受けた農地を賃貸人が引き続き農地として使用する場合もあり,他方,返還された農地を農地としての使用を止める場合もあることは想像に難くない。同項2号が存在するからといって,同項5号を「解約後農地としての利用を前提としている」などと解釈すべき必然性はなく,そのように解すると一般条項としての同号の存在意義が全て失われてしまう。また,被告の解釈は,平成13年最高裁判決が前提とした同号の解釈にも反するものである。さらに,同項2号は,具体的な転用計画があり,転用許可が見込まれ,かつ,賃借人の経営及び生計状況や離作条件等からみて,賃貸借契約を終了させることが相当と認められる場合であり(処理基準の第9の2(2)),そのような条件を充たしていない賃貸人が5号に該当する場合もあり得るのであるから,この意味でも被告の解釈はとり得ない。 (ウ) 被告は,本件賃貸借契約の解約を認めることが本件土地の適正かつ効率的な利用につながるとはいえないと主張する。参加人が本件土地を効率的に利用しているのなら,正当事由の有無の判断において,賃貸人側の適正かつ効率的な利用に関して検討することは必要であろう。しかし,本件のようにそもそも適正かつ効率的な利用がされていない事案では,法の趣旨に沿って維持管理されていない本件土地の賃貸借契約を維持すること自体が法に反する に関して検討することは必要であろう。しかし,本件のようにそもそも適正かつ効率的な利用がされていない事案では,法の趣旨に沿って維持管理されていない本件土地の賃貸借契約を維持すること自体が法に反するものである。本件土地は市街化区域にある約240坪のまとまったもので,墓地と住宅地に隣接しており,檀家,近隣及び地域にとって価値のある使用形態は幾らでもあり,解約手続の進展に合わせ包括寺院や檀家と綿密に打合せを行って本件土地の利用計画を現実化していくことになる。いかなる利用であっても,現在の参加人の利用(耕作権の放棄)を上回る適切かつ効率的な利用につながることは明らかである。換言すれば,本件土地は宅地化が促進されている市街化区域農地であるというだけで,解約後の適正かつ効率的な利用が認めら - 11 -れるべきものである。まして,本件のように参加人によって法の趣旨に沿った利用がされていない事案においてはなおさらである。 ウ(ア) 逆ざやに関し,法18条2項5号の該当性を否定する被告の主張は誤りである。 原告は,逆ざやだからといって,「賃借人が農地を適正かつ効率的に利用していない」などと主張するものではない。両者は別問題であり,換言すれば,仮に「賃借人が農地を適正かつ効率的に利用していても」,逆ざやの場合には同号の正当事由に該当すると主張しているものである。 被告は,平成13年最高裁判決において,同号に関する判示部分は,逆ざや状態の解消の手段が別途存在することを傍論として示したものにすぎず,同号の解釈に関する先例としての意義を有するものではないと主張する。確かに既判力の及ばない傍論に違いないが,小作農の保護という法の目的を貫徹して宅地並み課税を理由とする小作料の増額請求を認めず,しかし,同時に市街化区域農地の宅地化の促進という宅地 ないと主張する。確かに既判力の及ばない傍論に違いないが,小作農の保護という法の目的を貫徹して宅地並み課税を理由とする小作料の増額請求を認めず,しかし,同時に市街化区域農地の宅地化の促進という宅地並み課税の目的は,逆ざや現象の解消を農地所有者からする賃貸借契約の解約によって解決すべきとした道筋は,極めて重要な傍論である。そのことは,最高裁判所判例解説ほかの判例評釈(甲8ないし10)においてもうかがわれ,今後の許可事務の取扱い,不許可処分を争う行政訴訟への影響が注目されている。平成13年最高裁判決の事案と比較しても,本件土地においては,年間固定資産税等は供託金額5万円の13.14倍となっており,小作料との差が6.15倍又は8.13倍であった上記の事案よりも格段に賃貸人原告の負担が重くなっている。 (イ) 被告は,平成13年最高裁判決当時は,法2条の2の責務規定は存しなかったのであるから,平成21年の農地法改正後の事案については同判決の射程範囲は及ばず,同判決から直ちに逆ざや状態をもって法18条2項5号に該当すべきものとすべきということはできないと主張する。 - 12 -しかし,法2条の2の新設によって,平成13年最高裁判決の射程が本件に及ばなくなることはあり得ない。法18条2項5号に基づく解約を行う賃貸人の立場は種々で,解約後農地として使用する場合もあれば,農地として使用しない場合もあることは,前記のとおりである。本件処分が取り消され,原告が所有権に基づき自ら使用することが現実化したときに,原告が農地以外のものとして利用しようとするなら,農業委員会に農地転用届出をすることになる(法4条1項7号)。また,仮に引き続き農地として利用する場合には,法2条の2により農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務が原告に課せられること るなら,農業委員会に農地転用届出をすることになる(法4条1項7号)。また,仮に引き続き農地として利用する場合には,法2条の2により農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務が原告に課せられることになる。同条の新設は,平成13年最高裁判決の射程に何ら影響するものではない。 (ウ) 被告は,参加人は平成4年に本件土地を生産緑地地区に指定されることに同意しており,原告は本件土地について生産緑地地区指定の申請を行うことで,本件土地の宅地並み課税を免れることができたにもかかわらず,当該申請を行わなかったもので,逆ざや状態は原告が招いたものであると主張する。 都市計画に生産緑地地区を定めることができ,生産緑地地区に関する都市計画案の申請には賃借人の同意が必要である(生産緑地法3条2項)。 これは,都市計画において生産緑地地区の指定を受けることで,当該賃借人に当該農地の管理義務が発生し(同法7条1項),30年間の営農義務を負担することになるからである(同法10条)。他方,農地所有者が生産緑地地区の指定申請をしないことについては,賃借人に何らの権限が認められていない。農地所有者が上記指定申請をしなくても,賃借人に格別の不利益がないからである。また,農地所有者に生産緑地地区指定の申請義務もなく,本件で原告が生産緑地地区指定の申請をしなかったからといって,宅地並み課税となる以上に格別不利益を被るわけではない。生産緑地地区指定の申請をするかどうかは,当該市街化区域 - 13 -内農地を将来的にどのように利用するかという当該農地所有者の生活設計の問題である。 そもそも,生産緑地法3条1項に「市街化区域内にある農地等で,次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については,都市計画に生産緑地地区を定めることができる。」となっており,都市計画 である。 そもそも,生産緑地法3条1項に「市街化区域内にある農地等で,次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については,都市計画に生産緑地地区を定めることができる。」となっており,都市計画決定権者の都市計画上の判断によって指定が検討されるもので,農地所有者に申請権があるものではない。したがって,生産緑地法3条所定の要件を充足し,農地所有者が希望申請しても,当然に都市計画が変更されるものではない。以上の生産緑地地区指定制度の建付けの中で,原告が生産緑地地区の指定申請をしなかったので逆ざや状態を招いたといわれる理由は存しない。そもそも逆ざや状態は,生産緑地地区指定申請の問題ではなく,平成3年に生産緑地法及び地方税法が改正され,平成4年度以降,三大都市圏の特定市の全ての市街化区域について宅地並み課税が行われるようになった結果である。被告の主張は,生産緑地地区指定制度の建付けを無視し,逆ざや状態が宅地並み課税の結果であることの理解を欠如したものである。 被告は,原告は自らの意思で逆ざや状態を招いているのであるから,逆ざや状態をもって農地の賃貸借契約の正当の事由に該当すると解するのは農地法の趣旨に反すると主張するが,上記に述べたところからすれば,原告が生産緑地地区指定申請をしなかったことで原告が不利益を受ける理由は存しないというべきであるし,本件において,逆ざや状態をもって原告が賃貸借契約解約の正当の事由に該当すると主張することは,農地法の趣旨に沿うことはあっても反するものではない。 (エ) 被告は,賃借人が生産緑地地区の指定申請に同意している本件には,その同意のなかった事案である平成13年最高裁判決の射程は及ばない旨を主張するが,被告の同判決の理解は誤っている。同判決は,農地所 - 14 -有者の生産緑地地区指定申請の有 ている本件には,その同意のなかった事案である平成13年最高裁判決の射程は及ばない旨を主張するが,被告の同判決の理解は誤っている。同判決は,農地所 - 14 -有者の生産緑地地区指定申請の有無や賃借人の上記申請への同意の有無にかかわらず,農地法と宅地並み課税との間に規範的な矛盾を認めず,農地である以上,小作農の保護という法の目的を貫徹し,宅地並み課税を理由とする小作料の増額請求を認めず,他方,市街化区域農地の宅地化の促進という宅地並み課税の目的は,逆ざや状態の解消を期待する農地所有者からする賃貸借契約の解約によって解決すべきものとしたものであり,本件もまさに,同判決の射程範囲内にある。同判決を被告のように限定的に解すべきでないことは,同判決と同日付けの最高裁判決(最高裁平成9年(オ)第1138号同13年3月28日大法廷判決・甲15)が,農地所有者が生産緑地地区の指定を希望したのに賃借人がこれに同意しなかったという事情のなかったという事案においても,同様な判断をしていることからも明らかである(なお,平成13年最高裁判決を,被告のように限定的に理解している判例評釈もない。)。 平成13年最高裁判決の射程範囲に関する被告の主張の誤りは,農地所有者に生産緑地地区指定申請の申請権も申請義務もなく,農地所有者が希望し申請しても当然に都市計画が変更されるものではないという制度設計を理解せず,逆ざや状態の発生が宅地並み課税の結果であることを見落として農地所有者が生産緑地地区指定の申請をしなかったからと誤解したところにある。 エ被告は,昭和56年に参加人が本件土地耕作権を相続する際に相続税を納付したので,本件土地の賃貸借契約の許否の判断にはこの事情が加味されねばならないと主張する。しかし,相続税の納付は「相続」の結果であり,本件処分 6年に参加人が本件土地耕作権を相続する際に相続税を納付したので,本件土地の賃貸借契約の許否の判断にはこの事情が加味されねばならないと主張する。しかし,相続税の納付は「相続」の結果であり,本件処分が違法か否かの判断とは無関係である。異質なものを無理矢理関係づけようとする被告の意図は理解し難い。 (被告の主張の要旨)(1) 法18条2項1号の該当性について - 15 -ア法18条2項1号は,「賃借人が信義に反した行為をした場合」を解約申入れの許可事由としている。これは,農地等の賃貸借は当事者間の信頼関係を基調とする継続的な契約関係であることから,賃借人が信義に反した行為をした場合,その契約関係を解消することがやむを得ないとして許可するという趣旨である。「賃借人が信義に反した行為をした場合」とは,特段の事情がないのに,通常賃貸人と賃借人の関係を持続することが客観的にみて不能とされるような信義誠実の原則に反した行為をいうものと解され,賃借人の賃料の滞納,無断転用,田畑転換等の用法違反,無断転貸,不耕作,賃貸人に対する不法行為等の行為がこの場合に該当する(処理基準(乙5)第9の2(1),乙6)。 イ原告は,参加人が本件土地の大部分の土地について耕作を行うことなく放置し荒れるに任せており,「信義に反した行為」が存すると主張する。 しかし,原告も認めるとおり,参加人は本件土地の一部を利用しているのであり(甲5),参加人には耕作継続の意思があり(乙4の5枚目(「農地法第18条に係る論点表」)の論点3(営農関係)の「相手方の主張・反論」),参加人が耕作権を放棄しているものではなく,本件土地が完全な不耕作状態となっているものではない。参加人が本件土地を一部でも農地として使用している現状においては,賃貸人と賃借人の関係を持続 反論」),参加人が耕作権を放棄しているものではなく,本件土地が完全な不耕作状態となっているものではない。参加人が本件土地を一部でも農地として使用している現状においては,賃貸人と賃借人の関係を持続することが客観的にみて不能とされるような信義誠実の原則に反した行為は存しない(なお,原告が参加人は本件土地の一部しか利用していないとの主張を裏付けるものとして提出した甲14においては,本件土地について参加人が耕作している面積は合計194.79平方メートルであり,本件土地の登記簿上の面積783平方メートルの約24.8パーセントに当たるとされている。しかし,甲14における本件土地の耕作面積は,8つの部分の作付面積を単純に合算したものであるが,各部分に作付けをするには管理作業を行うための通路部分が必要であり,同部分は耕作に不可欠であ - 16 -ることから耕作面積に含めるべきものである。また,通常,農地を隣地との境界線まで耕作することはなく,境界線から少なくとも約1メートル程度は間隔を空けて耕作するから,本件土地の境界線から一定程度後退させた部分の面積を耕作可能面積として,これと作付面積とを比較する必要がある。単純に登記簿上の面積と作付面積とを比較して農地の利用状況を論じることは,農地の利用実態に即していない。)。 したがって,原告の主張に係る上記の事由は,1号には該当しない。 ウ原告は,参加人が本件土地の占有を継続する唯一の動機が高額な離作料や土地所有権への期待にあるとし,参加人による本件土地の利用は権利の濫用に当たる旨主張するが,そのように認める根拠はなく権利の濫用には当たらない。 エまた,原告は,逆ざや状態が生じていること,本件土地についての効率的な利用が不可能な状況が長期間にわたっていること,原告が本件土地につき今後檀 認める根拠はなく権利の濫用には当たらない。 エまた,原告は,逆ざや状態が生じていること,本件土地についての効率的な利用が不可能な状況が長期間にわたっていること,原告が本件土地につき今後檀家と相談しながら市街化区域及び周辺環境にふさわしい柔軟な利用を行っていく予定であることなどを主張するが,これらの事由は,賃借人の賃料の滞納,無断転用,田畑転換等の用法違反,無断転貸,不耕作,賃貸人に対する不法行為などといった賃借人による信義に反する行為とは関係しない事由であり,法18条2項1号には該当しない。 (2) 法18条2項5号の該当性についてア法18条2項5号にいう「その他正当の事由がある場合」とは,賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合をいうものと解される。 法1条に規定されている同法の目的や,処理基準において,法18条1項5号への該当性の判断に当たっては,「個別具体的な事案ごとに様々な状況を勘案し,総合的に判断する必要があるが,法2条の2の責務規定が設けられていることを踏まえれば,賃借人が農地を適正かつ効率的に利用 - 17 -していない場合は,法第18条第2項第1号に該当しない場合であっても,同項第5号に該当することがあり得る。このため,賃貸借の解約等を認めることが農地等の適正かつ効率的な利用につながると考えられる場合には積極的に許可を行うべきである。」とされていることに鑑みれば,「その他の正当の事由がある場合」に該当すると認められるには,賃貸借の解約等を認めることが農地等の適正かつ効率的な利用につながる場合であることを要するものと解するべきである。 イ(ア) 本件土地の一部に耕作が行われていない部分が存したとしても,前記(1)イに述べたように,参加人は本件土地 等の適正かつ効率的な利用につながる場合であることを要するものと解するべきである。 イ(ア) 本件土地の一部に耕作が行われていない部分が存したとしても,前記(1)イに述べたように,参加人は本件土地の一部を現に利用しており,今後も耕作を継続する意思を有しているのであって,現状において参加人が農地を適正かつ効率的に利用していないとはいえず,賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合に当たるとは認められない。 (イ) 仮に本件土地にたどり着くには隣接する他人の耕作地の際を通らざるを得ないとしても,これによって,参加人による本件土地の利用が不可能になったり,著しい障害が生じたりしているとは認められないのであり,本件土地の適正かつ効率的な利用が不可能又は阻害されているとはいえず,賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合には該当しない。 原告は,本件土地は袋地で,第三者の賃借地の際(人1人がようやく通れる道幅)を通ってのみ本件土地にたどり着くことができる,そもそも機械営農は不可能で,参加人の人力を頼りにするしかなく,本件土地の効率的利用など到底望むべくもない状況にあり,本件土地が袋地であるという制約は,農地の効率的使用の可能性を見極める上で重要な要素である旨主張する。しかし,甲5の写真2において見られる,通行の支障となっていると原告が主張する樹木は既に伐採されて存在しておらず - 18 -(乙7),人1人がようやく通れる通路幅を通ってのみ本件土地にたどり着くことができるという状況にはないのであって,機械営農は不可能で本件土地の効率的利用など到底望むべくもない状況にあるとはいえない。上記の伐採が本件処分後にされたものであっても,そのことは,参加人が本件処分時に るという状況にはないのであって,機械営農は不可能で本件土地の効率的利用など到底望むべくもない状況にあるとはいえない。上記の伐採が本件処分後にされたものであっても,そのことは,参加人が本件処分時においても本件土地を農地として利用する意思を有していたことを推認させるものである。 (ウ) 原告は,本件土地について農地として利用する具体的な計画をいまだ持っていないばかりか,「本件土地の返還を受けなければならない具体的な計画を策定するに至って」すらないのであるから,本件において本件賃貸借契約の解約を認めることが本件土地の適正かつ効率的な利用につながるとはいえず,やはり賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合には該当しない。 原告は,解約後においても,原告が本件土地を農地として使用しなければならないといった制約はどこにもない旨主張する。しかし,賃貸人が解約後において当該土地を農地として使用しないことを前提として解約の許可申請をする場合には,法18条2項2号に該当することを理由として申請をすべきであり,同項5号にいう「その他正当の事由がある場合」に該当するとして解約が認められるためには,賃貸借の解約等を認めることが農地の適正かつ効率的な利用につながる場合であること,すなわち,解約後も農地として使用することを前提として農地の適正かつ効率的な利用につながることを要するものと解すべきであって,原告の上記主張は失当である。 (エ) 原告は,平成21年法律第57号による法(農地法)の改正により法2条の2が新設されたことに伴い,処理基準が改正されており,改正後の判断基準では,法18条2項5号につき極めて有用かつ弾力的に運用ができるものとなっている旨主張する。 - 19 -しかし,法2条の2は,農地につ とに伴い,処理基準が改正されており,改正後の判断基準では,法18条2項5号につき極めて有用かつ弾力的に運用ができるものとなっている旨主張する。 - 19 -しかし,法2条の2は,農地について権利を有する者の責務を規定しているところ,この責務規定については,「農地について所有権を有する者は,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保することについて第一義的責任を有することを深く認識し,自ら当該農地を耕作の事業に供するとともに,自らその責務を果たすことができない場合においては,所有権以外の権原に基づき当該農地が耕作の事業に供されることを確保することにより,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならないものとすること」との考え方について周知徹底を図ることが衆参両院で附帯決議されている(甲7)。そして,上記のとおり,法18条2項5号は,農地を引き続き農地として利用することを前提としてなされる解約に係る規定であって,同号により賃貸借契約を解約した場合には,賃貸人であった所有者が「農地について所有権を有する者」として当該農地を農地として利用することになり,法2条の2に定める「農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する」責務を負うこととなる。そうであれば,法18条2項5号への該当性を判断するに当たっては,解約により当該農地を引き続き農地として農業上利用することになる賃貸人が法2条の2の責務を果たすことができるか否かについても考慮することが必要となる。しかしながら,原告は,本件土地について,解約後の農地としての利用方法を示していないのであるから,法2条の2の「農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する」責務を果たすことができるとは到底いえず,賃貸借の解約を認めることが,農地の適正かつ効率的な利用につなが 方法を示していないのであるから,法2条の2の「農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する」責務を果たすことができるとは到底いえず,賃貸借の解約を認めることが,農地の適正かつ効率的な利用につながるとはいえない。したがって,本件は法18条2項5号に該当しない。 ウ原告は,逆ざや状態が生じていることが法18条2項5号に該当すると主張するが,逆ざや状態となっていることをもって賃借人が農地を適切かつ効率的に利用していないことにはならないのであり,賃借人の離農等に - 20 -より賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合には該当しない。また,少なくとも本件では,原告は本件土地を農地として利用する具体的な計画を持っていないのであるから,このような状況の下で賃貸借契約の解約を認めたとしても本件土地の適正かつ効率的な利用につながらないのであり,逆ざや状態が生じていることをもって5号に該当するとは認められない。 原告が地代の増額請求ができないことの参照として引用する平成13年最高裁判決には,農地の賃貸借契約について合意解約ができない場合には,農地所有者は,当該農地が優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域である市街化区域内にあることや逆ざや現象が生じていることをもって,平成21年法律第57号による改正前の法20条2項5号(現行の法18条2項5号)に該当するものとして解約を申し入れることができるものと解される旨判示した部分が存する。しかし,平成13年最高裁判決は,小作地に対する宅地並み課税により固定資産税等の額が増加したことを理由として小作料の増額請求をすることの可否が争点とされ,当該争点についての判断がなされた事案であって,当時の法20条2項5号の許可事由該当性についての判断がなされたものではない。平成13年最高裁判決に して小作料の増額請求をすることの可否が争点とされ,当該争点についての判断がなされた事案であって,当時の法20条2項5号の許可事由該当性についての判断がなされたものではない。平成13年最高裁判決における同号に関する判示部分は,逆ざや状態解消の手段が別途存在することを傍論として示したものにすぎず,現行の法18条2項5号の解釈に関する先例としての意義を有するものではない。 また,平成13年最高裁判決は,農地所有者が生産緑地地区指定を希望していたにもかかわらず,賃借人が同意しなかったために,生産緑地地区指定の申請をすることができずに宅地並み課税が課されることになった事案であるが,本件では,賃借人は生産緑地とすることに同意しているにもかかわらず,農地所有者が生産緑地地区指定の申請をしないために宅地並み課税が課されている事案であり,平成13年最高裁判決とは正反対の事 - 21 -実関係にある事案であるから,この点からも,同判決の射程は及ばないというべきである。加えて,平成13年最高裁判決の当時は,法2条の2の責務規定は存しなかったのであるから,平成21年の農地法改正後の事案については同判決の射程は及ばないと解すべきであり,同判決から,直ちに逆ざや状態をもって法18条2項5号に該当するものとすべきということはできない。 エ市街化区域内にある農地であっても,生産緑地地区の区域内にある農地については宅地並み課税の対象とはならないところ(地方税法附則19条,19条の2),本件土地の賃借人である参加人は,平成4年に本件土地を生産緑地地区とすることに同意(生産緑地法3条2項)しているのであるから,原告は,本件土地について生産緑地地区指定の申請を行うことで,本件土地に係る固定資産税の宅地並み課税を免れることが可能であった。 それにもかかわらず, 同意(生産緑地法3条2項)しているのであるから,原告は,本件土地について生産緑地地区指定の申請を行うことで,本件土地に係る固定資産税の宅地並み課税を免れることが可能であった。 それにもかかわらず,原告は本件土地について生産緑地地区指定の申請を行わず,小金井市ではその後も生産緑地地区の追加指定を行っているが(乙8の1ないし10),原告は現在においても本件土地について生産緑地地区指定の申請を行っていない。 本件土地が生産緑地地区に指定されていれば,平成24年度の固定資産税額は1300円程度となっていたのであって,生産緑地地区指定がなされていない状態での65万7120円とは比較にならないほど低額で済み,地代が5万円であっても逆ざや状態は生じないのである。 平成4年当時,原告においては,本件土地について生産緑地地区指定の申請をすることについて検討がされていたことがうかがわれ(参加人の主張),同申請をすることにより,本件土地に係る固定資産税の宅地並み課税を免れ,逆ざや状態を解消することが可能であったにもかかわらず,当該申請を行っていないのであり,逆ざや状態は原告が自ら招いたものといわざるを得ない。これに対して,参加人は,昭和56年に本件土地を相続 - 22 -した際に,本件土地の耕作権に係る相続税として500万円以上の納税をし,耕作継続のために多額の負担をしているものであり,本件賃貸借契約の解約の許否に当たってはこのような事情も加味されるべきである。 以上のように,原告は自らの意思で逆ざや状態を招いている一方で,参加人は本件土地の耕作を継続するために多額の負担をしているという事情が存する。逆ざや状態を容易に解消するという手段が存するような場合において,自らあえて招いた逆ざや状態をもって,農地の賃貸借契約の解約の正当の事由(法18条2 るために多額の負担をしているという事情が存する。逆ざや状態を容易に解消するという手段が存するような場合において,自らあえて招いた逆ざや状態をもって,農地の賃貸借契約の解約の正当の事由(法18条2項5号)に該当すると解するのは,法1条所定の同法の趣旨に反するというべきであり,原告の主張は失当である。 (参加人の主張の要旨)(1) 参加人の希望の第一義については,本件土地(実測で845平方メートル)の耕作を継続することにある。 (2) 本件土地は,参加人の父が昭和10年頃から小作により耕作をしていたもので,参加人は,昭和56年に本件土地の賃借権を母から相続し,その際,高額な500万円の相続税を負担した。その後の平成4年1月18日,檀家役員が参加人宅を訪れ,本件土地を生産緑地として申請する旨申出をし,参加人は了承する旨回答した。参加人は,その時点では本件土地は生産緑地に変更されたものと理解したが,生産緑地申請は,原告が失念したか,意図的にしなかったためか,実現しなかった。ところが,同年9月15日,原告から連絡があり,宅地並み課税分を地代として請求したい旨申出があった。参加人は,耕作以外の権利のない土地にそのような高額な地代を支払う義務も理由もないとして,拒否した。参加人は,その時初めて原告が生産緑地の申請を失念したことを知った。参加人は,原告の負担を考慮し,地代を従前の10倍の5万円に値上げしたい旨を提案したが,拒否され,その後の平成10年に更に地代を8万円に値上げする旨を提案したが,拒否された。平成12年4月23日,上記檀家役員が来宅し,本件土地に対する参加人の考えを - 23 -尋ねたところ,参加人は「耕作を続けたい」旨回答した。その際,檀家役員は,耕作権の買上げ代金として500万円を提示したが,参加人は耕作継続を希望 ,本件土地に対する参加人の考えを - 23 -尋ねたところ,参加人は「耕作を続けたい」旨回答した。その際,檀家役員は,耕作権の買上げ代金として500万円を提示したが,参加人は耕作継続を希望し拒否した。その後も原告の代理人と交渉を重ねたが,進展はなく,以後10年ほど交渉は途絶えて現在に至っている。なお,本件土地の賃料の供託は平成4年分より開始している。 逆ざやについては色々な考えがあろう。しかし,財産の所有者としての諸経費負担(宅地並み課税等)はやむを得ないことであろうと考える。 (3) 参加人の農業経営には多少不手際な点はあるが,普通に農業を行っていると考える。普通の農業者が持っている全ての農機具を持っている。もちろん耕運機も運搬車も畑に備えている。肥料も普通に投与しているし,収穫もかなり上がっている。耕作面積は土地全体の70パーセントは維持している。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 認定事実等前記第2・2の前提となる事実に加え,証拠(本文中に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,同認定を覆すに足りる証拠は存しない。 (1) 原告は,宗教法人であり,農業を行っていない(甲1)。 (2) 原告は,本件土地を所有している。 本件土地は,市街化区域内にある農地であるが,生産緑地地区の区域内にない。 本件土地は,その北側の道路とは網等をもって画されており,道路に至るには,西側に隣接する原告が所有し参加人以外の者の耕作に係る土地の南端に開設された通路を通行するものとされている。 参加人の父は,昭和10年頃,原告から本件土地を賃借し,同土地において耕作を開始した。 その後,参加人の母が本件土地についての賃借権を相続により取得し,参 - 24 -加人は,昭和56年,上記賃借権を相 ,昭和10年頃,原告から本件土地を賃借し,同土地において耕作を開始した。 その後,参加人の母が本件土地についての賃借権を相続により取得し,参 - 24 -加人は,昭和56年,上記賃借権を相続により取得し,以後,同土地の少なくとも一部において耕作を行い,自家消費用等の作物を栽培するなどしていた。 (3) 参加人は,平成24年5月24日の本件処分の当時,本件土地の一部において耕作を行っている状態であり,本件土地のうち耕作が行われている部分は,本件訴えの提起後である平成25年10月8日に原告が調査した結果において,194.79平方メートルとされ,登記簿上の面積(783平方メートル)に占める割合は約24.8パーセントであった(実測面積につき,参加人が主張する845平方メートルとみても,これに占める割合は約23. 1パーセントである。甲14,弁論の全趣旨)。 本件処分の当時,本件土地のうち上記のように耕作が行われている部分以外の部分については,十分な手入れが施されていない状態であった(甲5,乙4)。 (4) 平成3年に生産緑地法及び地方税法が改正され,生産緑地地区の区域内のもの等を除く市街化区域内の農地については,宅地並み課税がされることになったところ,本件土地は,市街化区域内にあり,都市計画に生産緑地地区を定めることができる要件を満たしていたが,原告はそのような定めを受けるための手続をとらなかった(甲13,乙4)。そのため,本件土地に対して課される平成4年度以降の固定資産税については宅地並み課税がされ,同税額が本件土地の借賃の年額として参加人が供託している金額より高額となる逆ざや状態となっている(その状況は,別紙3「本件土地の固定資産税額・地代額等」のとおりである。)。 (5) 上記(4)の逆ざや状態が生じたことを受 年額として参加人が供託している金額より高額となる逆ざや状態となっている(その状況は,別紙3「本件土地の固定資産税額・地代額等」のとおりである。)。 (5) 上記(4)の逆ざや状態が生じたことを受けて,平成4年頃,原告と参加人との間で,本件土地の借賃の増額をめぐって交渉が持たれたが,合意に至らず,参加人は,同年以降,本件土地の借賃として年額5万円を供託している(甲13,弁論の全趣旨)。 - 25 -(6) その後も,原告側と参加人との間で交渉が持たれたが,参加人は,本件土地における耕作の継続やいわゆる小作権割合を3割程度とすることを前提とした相当の金額又はこれに相当する土地の取得を希望するなどし,交渉はまとまらなかった(甲13,乙4,弁論の全趣旨)。 (7) 原告は,平成23年5月に東京地方裁判所立川支部に農事調停の申立てをしたが,同年11月に調停が成立しないものとして事件は終了した(甲13)。 (8) 原告は,平成24年2月23日付けで,東京都知事に対し,法18条2項5号に規定する事由があるとして,同条1項の規定に基づき,本件賃貸借契約の解約の申入れをすることについての許可の申請をした(甲1)。 (9) 小金井市農業委員会は,平成24年3月12日,本件土地についての現地調査を実施し,本件土地の状況につき,高性能の機械営農は不可能な状態にあり(乙4の4枚目の「農地の状況」の欄),農業生産力は「中」程度であるとしていた(乙4の4枚目の「農地の区分」の欄)。 (10) 東京都知事は,平成24年5月24日付けで,原告が本件賃貸借契約の解約の申入れをすることを許可しないとする本件処分をした。 (11) 今日に至るまで,本件土地に関する原告の具体的な利用の計画は定まっていない(当事者間に争いがない)。 (12) 原告は,平成24年 約の申入れをすることを許可しないとする本件処分をした。 (11) 今日に至るまで,本件土地に関する原告の具体的な利用の計画は定まっていない(当事者間に争いがない)。 (12) 原告は,平成24年12月28日,本件訴えを提起した。 本件訴えの提起後においても,原告と参加人の間において交渉が持たれたが,交渉は不調に終わった。 2 法18条2項1号の該当性について(1) 法18条2項1号は,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることについて都道府県知事が許可することができる場合として,「賃借人が信義に反した行為をした場合」を掲げ,処理基準の第9の2(「法第18条第1項の許可基準」)は,都道府県知事は,法18条1項の許可をするかの判断に当たっては,法令の定めによるほか,次によるものとするとし,同(1)(「法 - 26 -第18条第2項第1号の判断基準」)は,同条2項1号の「信義に反した行為」とは,特段の事情がないのに,通常賃貸人と賃借人の関係を持続することが客観的にみて不能とされるような信義誠実の原則に反した行為をいうものとし,例えば,賃借人の借賃の滞納,無断転用,田畑転換等の用法違反,無断転貸,不耕作,賃貸人に対する不法行為等の行為が想定されるとしている(乙5)。 法18条は,農地等についての賃借権を保護し,賃借人の地位の安定を図るため,民法の原則を修正し,当該賃貸借の当事者は都道府県知事の許可を受けなければ解約の申入れ等をしてはならないものとした上で,都道府県知事が上記の許可をすることができる場合を一定の事由がある場合に限る旨を定めるものであり,農地等についての賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることからすれば,「信義に反した行為」(同条2項1号)とは,賃貸人と賃借人との間の契約 合に限る旨を定めるものであり,農地等についての賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることからすれば,「信義に反した行為」(同条2項1号)とは,賃貸人と賃借人との間の契約関係を継続することが客観的にみて不可能とされるような背信的な行為をいうものと解される(上記処理基準の定めはこれに沿う内容のものと解される。)。 (2) 上記1(3)に認定したように,本件土地のうち耕作が行われている部分は,本件訴えの提起後の平成25年10月8日の時点において,登記簿上の面積783平方メートルのうち約24.8パーセントの範囲(実測面積を基準にしても845平方メートルのうち約23.1パーセントの範囲)であり,証拠(甲5,14,乙4)によれば,上記のような耕作の状況は本件処分の当時においてもおおむね同様であったものと認めるのが相当であるところ,参加人が本件土地についての賃借権を相続により取得してからにおいても30年以上にわたって耕作を継続していたことからすると,本件土地内に十分な手入れが施されていない部分が存し,かつ,本件土地から公道に至るには西側に隣接する第三者の耕作に係る土地の南端に開設された通路を通行せざるを得ず,高性能の機械営農は不可能な状態にあるとの事情が存するとし - 27 -ても,本件処分の当時において,一件記録によっても,参加人が不耕作の状況にあったとはいえず,処理基準第9の2に他に例示されたような事情が存していたことを認めるに足りる証拠もない。また,本件土地につき税制上の取扱いにより逆ざや状態が生じていたとの一事をもって,直ちに,賃借人である参加人が「信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないことも明らかである。 そうすると,本件については,「賃借人が信義に反した行為をした場合」(法18条2項1号 もって,直ちに,賃借人である参加人が「信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないことも明らかである。 そうすると,本件については,「賃借人が信義に反した行為をした場合」(法18条2項1号)に該当する事情があるとはいえないというべきである。 3 法18条2項5号の該当性について(1)ア法18条2項5号は,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることについて都道府県知事が許可することができる場合として,「その他正当の事由がある場合」を掲げている。 イところで,法1条は,法は,国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり,かつ,地域における貴重な資源であることに鑑み,耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ,農地を農地以外のものにすることを規制するとともに,農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し,及び農地の利用関係を調整し,並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより,耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り,もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする旨を定め,法2条の2は,農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない旨を定めている。 その上で,処理基準第9の2(4)(「法第18条第2項第5号の判断基準」)は,法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」とは,賃借人の - 28 -離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合とするとし,これらの判断に当たっては,個別具体的な事案ごとに様々な状況を勘案し,総合的に判断する必 借人の - 28 -離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合とするとし,これらの判断に当たっては,個別具体的な事案ごとに様々な状況を勘案し,総合的に判断する必要があるが,法2条の2の責務規定が設けられていることを踏まえれば,賃借人が農地を適正かつ効率的に利用していない場合は,同項1号に該当しない場合であっても,同項5号に該当することがあり得るため,賃貸借の解約等を認めることが農地等の適正かつ効率的な利用につながると考えられる場合には積極的に許可を行うべきであるとしている(乙5)。 ウ上記イのとおり,①法1条が,耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り,国民に対する食料の安定供給の確保に資するとの法所定の目的を達する手段として,(a)農地を農地以外のものにすることを規制すること,(b)農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し,及び農地の利用関係を調整すること並びに(c)農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることを挙げていることに加え,②法2条の2が,農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者の責務が当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保することにある旨を定めていることを踏まえると,法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かについては,当該事案における諸般の事情を総合的に考慮した上で,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることを認めることが当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるといえるか否かによって判断すべきものと解される(上記処理基準の定めはこれに沿う内容のものと解される。)。 (2)ア上記1及び2に述べたように,①本件においては,参加人 かつ効率的な利用につながるといえるか否かによって判断すべきものと解される(上記処理基準の定めはこれに沿う内容のものと解される。)。 (2)ア上記1及び2に述べたように,①本件においては,参加人の本件土地における耕作の範囲は同土地全体のうち2割強程度にすぎず,農地として必ずしも十全な利用がされているとはいい難い面が存することは否定し - 29 -得ないものの,本件土地は昭和10年頃から参加人の父等が賃借権を有し耕作を行ってきたもので,参加人においても相続により賃借権を取得してから30年以上にわたって耕作を継続していた上,本件訴えにおける参加人の主張に見られるように,今後についても耕作を継続する意向を示していること,②他方で,原告は,本件処分の当時において,本件土地の具体的な利用の計画を有しておらず,原告が本件土地の使用及び収益をすることができる地位を回復した以降に所有者として本件土地につき農業上の適正かつ効率的な利用又は農地以外のものとすることを相当とするような利用をする確定した見込みがあるとはうかがわれなかったこと,③原告は,本件土地に係る逆ざや状態を解消したいとの意向を有していたところ,そうであれば,本件土地の具体的な利用の計画を有していないとの前提の下に,生産緑地法3条所定の生産緑地地区内に本件土地があることとなるような都市計画の定めを受けることによって宅地並み課税を免れ上記の状態を解消する方途も存していたところ,原告は,逆ざや状態が生じるに至った平成4年以降,賃借権を有する参加人が所要の同意をする意向を有していたことがうかがわれるにもかかわらず(弁論の全趣旨),本件処分の当時に至るまでその解消のための対応はとっていなかったこと,④逆ざや状態が生じて以降,原告と参加人との間で交渉が持たれたが,参加人が本件土地での耕 がわれるにもかかわらず(弁論の全趣旨),本件処分の当時に至るまでその解消のための対応はとっていなかったこと,④逆ざや状態が生じて以降,原告と参加人との間で交渉が持たれたが,参加人が本件土地での耕作を希望していたため,交渉は進展しなかったことなどの事実が認められ,これらの事実を総合的に考慮すると,本件処分の当時において,原告が本件賃貸借契約の解約の申入れをすることを認めることが,農地である本件土地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるとはいい難かったものというべきであり,本件土地を農地以外のものにすることを相当とするような特段の事情があったともいい難かったものというべきである(なお,原告は,本件訴えにおいて,離作料の支払をする用意がある旨を述べ,本件処分がされるに至るまでの手続においても同様の - 30 -意向を表明していたことが認められる(甲1,乙4)ものの,上記に述べたように,本件処分の当時において,原告において本件土地の具体的な利用の計画を有していない状況の下では,離作料の支払を問題とするまでもなく,原告が本件賃貸借契約の解約の申入れをすることは認められない状態にあったというべきであり,このことは,これまでの原告と参加人との交渉の経緯や参加人が今後も本件土地における耕作の継続を希望する意向を有していることからも,裏付けられるものと考えられる。)。 イ(ア) この点に関し,原告は,平成13年最高裁判決は,市街化区域内にある農地について宅地並み課税がされている場合に,小作料の増額の請求は認められないものとする一方で,傍論ながら,法18条2項5号による解約の申入れについての許可を得た上での賃貸借契約の解約によって解決すべき旨の道筋を示しているとして,本件において,逆ざや状態にあることが,同号の「正当の事由」に該当し,本件賃 18条2項5号による解約の申入れについての許可を得た上での賃貸借契約の解約によって解決すべき旨の道筋を示しているとして,本件において,逆ざや状態にあることが,同号の「正当の事由」に該当し,本件賃貸借契約の解約の申入れをすることが許可されるべき旨を主張する。 しかしながら,同判決に係る事案は,平成21年法律第57号による改正前の法(農地法)20条2項5号(現行の18条2項5号)の適用に関するものではない上,同判決中の原告の指摘する部分は,小作料の増額の請求が認められない場合に賃貸人のとり得る方法の一つを一般論として例示するものであり,実際に農地の賃貸借の解約の申入れをすることが認められるか否かは,具体的な事案における諸般の事情を考慮した上で判断されるべきものであるから,同判決の判示するところをもって,本件においても直ちに本件賃貸借契約の解約の申入れをすることが許可されるべきことにはならないものと解するべきである。 (イ) また,原告は,①本件土地の利用について具体的に明示できるプランがないことだけで法18条2項5号の適用が否定されるものではない旨,②平成21年法律第57号による法の改正により法2条の2が新設 - 31 -されたことに伴って処理基準が改正され,改正後の基準では法18条2項5号につき極めて有用かつ弾力的に運用ができるものとなっている旨,③同項2号が農地として使用しないことを前提として許可事由を定めているからといって,同項5号が農地としての使用を前提とした許可事由を定めたものであるとの解釈が導かれるものではなく,そのような制約もない上,そのように解釈することは平成13年最高裁判決が前提とした同項5号の解釈にも反する旨などを主張する。 しかしながら,法2条の2は,農地について権利を有する者の責務を規定し, な制約もない上,そのように解釈することは平成13年最高裁判決が前提とした同項5号の解釈にも反する旨などを主張する。 しかしながら,法2条の2は,農地について権利を有する者の責務を規定し,これによれば,農地について賃借権等を有する者のみならず,所有権を有する者についても,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務を負うものとされているものであり,農地の賃貸借の賃貸人である所有者が法18条2項2号(農地等以外の土地に転用する場合)によらずに同項5号による許可を受けて解約の申入れをする場合には,その後に当該所有者において当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用をしていくことが前提とされていると解するのが相当であるから,農地の賃貸借の賃貸人である所有者が解約の申入れをすることにつき同項5号による許可を申請する場合に,解約後に当該所有者において当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用をすることを要しないことを前提とする原告の上記主張は,採用し難いものといわざるを得ない。 (3) そうすると,本件については,「その他正当の事由がある場合」(法18条2項5号)に該当する事情があるとはいえないというべきである。 4 結論以上の次第で,本件処分は適法なものというべきである。 よって,原告の請求は理由がないから,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 - 32 - 裁判長裁判官八木一洋 裁判官石村智 裁判官品川英基 - 33 -(別紙2)関係法令の定め 1 法1条(目的)この法律は,国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将 裁判官品川英基 - 33 -(別紙2)関係法令の定め 1 法1条(目的)この法律は,国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり,かつ,地域における貴重な資源であることに鑑み,耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ,農地を農地以外のものにすることを規制するとともに,農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し,及び農地の利用関係を調整し,並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより,耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り,もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。 2 法2条の2(農地について権利を有する者の責務)農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。 3 法18条(農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)(1) 1項農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は,政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ,賃貸借の解除をし,解約の申入れをし,合意による解約をし,又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。(ただし書につき省略)(2) 2項法18条1項の許可は,次に掲げる場合でなければしてはならない。 ア 1号賃借人が信義に反した行為をした場合イ 2号その農地又は採草放牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とする場合 - 34 -ウ 3号及び4号 (省略)エ 5号その他正当の事由がある場合 4 生産緑地法3条(生産緑地地区に関する都市 牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とする場合 - 34 -ウ 3号及び4号 (省略)エ 5号その他正当の事由がある場合 4 生産緑地法3条(生産緑地地区に関する都市計画)(1) 1項市街化区域(都市計画法7条1項の規定による市街化区域をいう。)内にある農地等で,次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については,都市計画に生産緑地地区を定めることができる。 1号公害又は災害の防止,農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり,かつ,公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。 2号 500平方メートル以上の規模の区域であること。 3号用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。 (2) 2項生産緑地地区に関する都市計画の案については,大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法106条3項又は農住組合法88条2項の規定による要請があった土地の区域に係るものを除き,当該生産緑地地区内の農地等(土地区画整理法98条1項(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法83条において準用する場合を含む。)の規定により仮換地として指定された農地等にあっては,当該農地等に対応する従前の土地)について所有権,対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した永小作権,先取特権,質権若しくは抵当権を有する者及びこれらの権利に関する仮登記,これらの権利に関する差押えの登記又はその農地等に関する買戻しの特約の登記の登記名義人の同意を得なければならない。 (3) (3項省略) 5 生産緑地法7条(生産緑地の管理) - 35 -(1) 1項生産緑地について使用 地等に関する買戻しの特約の登記の登記名義人の同意を得なければならない。 (3) (3項省略) 5 生産緑地法7条(生産緑地の管理) - 35 -(1) 1項生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は,当該生産緑地を農地等として管理しなければならない。 (2) (2項省略) 6 地方税法附則19条の2(市街化区域農地に対して課する昭和47年度以降の各年度分の固定資産税の特例)(なお,便宜上,本件においては,同条につき現行の規定を掲げることとする。)(1) 1項昭和47年度以降の各年度に係る賦課期日に所在する市街化区域農地(農地のうち都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地(同法8条1項14号に掲げる生産緑地地区の区域内の農地及び同法4条6項に規定する都市計画施設として定められた公園又は緑地の区域内の農地で同法55条1項の規定による都道府県知事等の指定を受けたものその他の政令で定める農地を除く。)をいう。以下同じ。)に対して課する固定資産税の課税標準となるべき価格については,当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地(以下「類似宅地」という。)の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格によって定められるべきものとする。 (2) (2項以下省略)

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