平成20(行ウ)6 埋立承認処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年6月6日 山口地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文33,121 文字)

主文 1 原告らの訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求山口県知事が平成8年11月28日付けで国に対してなした別紙「公有水面埋立承認目録」記載の埋立承認処分を取り消す。 2 予備的請求山口県知事が平成20年2月12日付けで国に対してなした別紙「公有水面埋立承認目録」記載の埋立承認処分を変更した処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の概要(1) 主位的請求本件の主位的請求は,山口県岩国市在住の原告らが,同市α町所在の米海兵隊と海上自衛隊が使用する岩国飛行場(以下「岩国飛行場」という。)の沖合移設(以下「本件沖合移設」という。)に伴う同町地先の公有水面(以下「本件公有水面」という。)の埋立事業(以下「本件埋立事業」という。)に係る別紙「公有水面埋立承認目録」記載の埋立承認処分(以下「本件承認処分」という。)について,同処分は,国の脱法行為(原告らは,本件埋立事業においては,当初から基地機能の強化が目論まれていたのに,国は,本件公有水面の埋立承認に係る出願に際し,本件沖合移設の目的が岩国飛行場における安全の確保と航空機騒音の緩和にあると偽っていたなどと主張する。)を看過してなされたものであるなどと主張して,山口県知事が所属する地方公共団体である被告に対し,本件承認処分の取消を求める事案である。 (2) 予備的請求本件の予備的請求は,原告らが,山口県知事による平成20年2月12日の添付図書の変更承認(以下「本件変更承認」という。)について,同承認が行政処分に該当することを前提として,本件変更承認に係る添付図書の変更内容は実質的には公有水面埋立法(以下,単に「法」ともいう。)13条の2 更承認(以下「本件変更承認」という。)について,同承認が行政処分に該当することを前提として,本件変更承認に係る添付図書の変更内容は実質的には公有水面埋立法(以下,単に「法」ともいう。)13条の2が規定する「用途の変更」に該当するにもかかわらず,同法所定の用途変更手続(審査)が行われないまま本件変更承認がなされたなどと主張して,被告に対し,本件変更承認の取消を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告らは,いずれも山口県岩国市に在住する者らであり,防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(以下「周辺整備法」という。)にいう第1種区域(騒音値75WECPNL〈加重等価継続感覚騒音レベル〉以上)に指定された区域内及びその周辺地域に現に居住していると主張する者らである。 イ被告は,本件公有水面について公有水面埋立法上の公有水面埋立承認権限を有する山口県知事が所属する地方公共団体である。 (2) 本件埋立事業の概要及び埋立承認出願に係る経緯等岩国飛行場は,岩国市街地の東端部に位置し,β川下流のγ川とδ川に挟まれた三角州に立地する飛行場である。岩国飛行場は,海上自衛隊が岩国航空基地として使用しているほか,在日米軍が米海兵隊岩国航空基地として使用している。本件埋立事業の概要は,岩国飛行場の運用上・安全上・騒音上の諸問題を解決し,在日米軍の駐留を円滑にするとともに,岩国飛行場の安定的使用を図るため,国を実施主体として,飛行場の東側に隣接する本件公有水面を埋め立てて滑走路を東側(沖合)へ約1000m移設するというも のである。昭和48年度以降,本件沖合移設に関する調査が開始され,「滑走路を東側へ約1000m移設する方法が適当」 本件公有水面を埋め立てて滑走路を東側(沖合)へ約1000m移設するというも のである。昭和48年度以降,本件沖合移設に関する調査が開始され,「滑走路を東側へ約1000m移設する方法が適当」との昭和57年7月の防衛施設中央審議会の答申を経て,平成4年8月,防衛施設庁(当時)が本件沖合移設を決定した。その後,平成6年9月から平成7年8月まで,閣議決定要綱に基づく環境影響評価の手続がとられた。 (3) 埋立承認出願,告示縦覧,主務大臣の認可及び本件処分ア以上の経過を経て,国は,法42条1項に基づき,平成7年9月22日,山口県知事に対し,埋立ての動機,規模,効果などが記載された埋立必要理由書(以下「本件埋立理由書」という。)等が添付された同日付けの公有水面埋立承認願書(以下「本件願書」という。)を提出して,本件公有水面の埋立ての承認について出願した(以下「本件出願」という。)。 イ本件願書を受理した山口県知事は,法3条1項の規定に基づき,平成7年10月13日から同年11月2日まで,出願事項等を告示縦覧に供するとともに,同項の規定に基づき地元市町村長の意見を徴するなどした上,法47条1項,公有水面埋立法施行令32条に基づき,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)に対し,本件公有水面の埋立承認に係る認可申請を行った。そして,山口県知事は,平成8年11月26日,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)の各認可を受け,同月28日,本件承認処分を行った。本件承認処分にあたり,山口県知事は,「願書の添付図書のうち,埋立てに用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書,埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面及び環境保全に関し講じる措置を記載した図書を変更して実施する場合には,山口県知事及び岩国港港湾管理者の長山口県知事の承認を受ける 採取量を記載した図書,埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面及び環境保全に関し講じる措置を記載した図書を変更して実施する場合には,山口県知事及び岩国港港湾管理者の長山口県知事の承認を受けること。」との留意事項(以下「本件留意事項」という。)を付した。 ウなお,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)は,上記認可に当たり,環境庁長官(当時)の意見を徴したところ,同長官は,各大臣に対し, 「本埋立事業は,埋立て等について環境保全上特別な配慮が必要な瀬戸内海海域における事業であることから,以下の措置を講じる必要がある。」として,最大限,新たな藻場及び干潟の造成に努めるとともに,藻の定着状況及び干潟の形成状況を計画的に監視する等により極力維持に努めること,また,埋立工事中の水質汚濁防止について十分配慮するとともに,工事中の濁水処理について所要の対策を講じることなどの措置(以下「本件措置」という。)を講じる必要があるとの意見(以下「環境庁意見」という。)を提出した。環境庁意見を受け,建設省(当時)河川局長は,平成8年11月26日,山口県知事に対し,本件出願に係る承認に当たっては,環境庁意見の趣旨に十分配慮して適切に措置するよう勧告した。これを受け,山口県知事は,平成8年11月28日,防衛施設庁(当時)広島防衛施設局長に対し,本件措置を講じるよう勧告するとともに,同措置についての結果報告を要求した。 (4) 国は,平成20年1月8日,山口県知事に対し,本件留意事項に基づき,「埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面」及び「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」の変更(以下「本件変更」という。)に係る承認を受けたいとして,添付図書の変更承認申請書等を提出した(以下「本件変更承認申請」という。)。本件変更は,主として,日米安 関し講じる措置を記載した図書」の変更(以下「本件変更」という。)に係る承認を受けたいとして,添付図書の変更承認申請書等を提出した(以下「本件変更承認申請」という。)。本件変更は,主として,日米安全保障協議委員会において取りまとめられた在日米軍再編計画の一環としての厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐に伴い,従前,新滑走路の西側のみに計画していた平行誘導路を東側にも整備することとしたことによる利用計画の変更であった。これに対し,山口県知事は,同年2月12日,同変更を承認する旨の本件変更承認を行った。 3 争点(1) 本案前の争点ア本件埋立事業に係る本件公有水面の埋立工事(以下「本件埋立工事」と いう。)が竣功したか否か。また,仮に本件埋立工事が竣功している場合には,これにより本件承認処分等の取消を求める訴えの利益が失われるか否か。 イ原告らが,本件承認処分等の取消を求める法律上の利益(行政事件訴訟法9条)を有するか否か。 ウ主位的請求について,出訴期間が経過しているか否か。 エ本件変更承認が行政処分に該当するか否か。 (2) 本案の争点ア本件承認処分が違法な処分であるか否か。 イ本件変更承認が違法な処分であるか否か。 4 争点に関連する当事者の主張(1) 本件埋立工事が竣功したか否か。また,仮に本件埋立工事が竣功している場合には,これにより本件承認処分等の取消を求める訴えの利益が失われるか否か。(本案前の争点)(原告らの主張)ア本件埋立工事が竣功していないことについて(ア) 国は,平成20年5月14日,山口県知事に対し,同月13日付け竣功通知書をもって,法42条2項に基づく竣功通知(以下「本件竣功通知」という。)を行った。しかし,本件竣功通知時点では,本件埋立 ア) 国は,平成20年5月14日,山口県知事に対し,同月13日付け竣功通知書をもって,法42条2項に基づく竣功通知(以下「本件竣功通知」という。)を行った。しかし,本件竣功通知時点では,本件埋立工事は竣功していなかった。すなわち,本件竣功通知後の時点においても,埋立自体が完了していない部分(水面)が残存していた上,地盤改良工事が至るところで実施されており,埋立地として完工したというには程遠い状況であった。また,現在までのところ,本件埋立事業に係る埋立地(以下「本件埋立地」という。)上に設置される西側の平行誘導路,北側の東西誘導路,パブリック・アクセスロードの建設が完了しておらず,工事は進行中である。 (イ) また,藻場・干潟の回復措置が完了していない以上,本件埋立工事が竣功したとは評価すべきでない。すなわち,山口県知事は,本件埋立事業によって消失する藻場(41ヘクタール)・干潟(42ヘクタール)について,残存区域の保全に努めることのほか,藻場・干潟の新たな造成を求めており,また,環境庁長官(当時)も,運輸大臣(当時)及び建設大臣(当時)に対し,平成8年11月22日,「本埋立事業の実施により,藻場及び干潟が一部消滅することから,専門家の指導,助言を得て,本埋立計画地周辺海域において,最大限,新たに藻場及び干潟の造成に努めるとともに,藻の定着状況及び干潟の形成状況を計画的に監視する等により極力維持に努めること。」などの環境庁意見を提出しているのに,現在までのところ,藻場・干潟の回復措置は完全には履行されていない。にもかかわらず,本件埋立工事が竣功していると認めれば,藻場・干潟がこのままの状態で放置されることにもなりかねないから,藻場・干潟の回復措置が完全に履行されない限り,本件埋立工事が竣功したと評価すべきでない。 本件埋立工事が竣功していると認めれば,藻場・干潟がこのままの状態で放置されることにもなりかねないから,藻場・干潟の回復措置が完全に履行されない限り,本件埋立工事が竣功したと評価すべきでない。 イ将来,仮に本件埋立工事が竣功したとしても,これにより訴えの利益は消滅しないことについて(ア) 将来,仮に本件埋立工事が竣功したとしても,これにより訴えの利益は失われない。本件承認処分及び本件変更承認(以下,併せて「本件処分等」という。)が取り消された場合に,社会通念上原状回復が困難ないし不可能であることは,事情判決の理由とはなり得ても,訴えの利益が消滅する理由とはなり得ない。本件処分等が取り消された場合,埋立行為者である国は公有水面埋立法上,原状回復義務を負うから,本件埋立工事が竣功したとしても本件処分等の取消を求める訴えの利益は消滅しない。 (イ) 被告は,国がなす埋立てについて規定した法42条3項が,国以外 の者が行う埋立ての場合において埋立免許の効力が消滅したときに免許権者が負担する原状回復義務について規定した法35条を準用していないことを理由に,国がなす埋立ての場合には,埋立承認の効力が消滅しても国は原状回復義務を負わないなどと主張する。しかし,このような解釈は以下の理由において失当である。 すなわち,仮にこのような法42条3項の解釈が正しいとすれば,埋立承認の効力が消滅した場合にとどまらず,国が無承認で埋立行為を行った場合も,国は何ら原状回復義務を負わないというのが論理的帰結となる。しかし,このような解釈では,国がなす埋立てについて,国に願書等の提出を義務付けるとともに,埋立承認にあたり免許基準と同一の承認基準を採用し,当該基準の充足性の判断権限を承認権者である都道府県知事に付与していることの意義を全く没 なす埋立てについて,国に願書等の提出を義務付けるとともに,埋立承認にあたり免許基準と同一の承認基準を採用し,当該基準の充足性の判断権限を承認権者である都道府県知事に付与していることの意義を全く没却することになる。したがって,公有水面埋立法の建前上,このような法令解釈は取り得ない。 そもそも,法42条3項が同法35条の準用を明記していないのは,同条項が制定された当時(大正時代)には,国による埋立行為の許否について,申請者である国と承認権者である都道府県知事の判断が相違する事態が想定されていなかったからに過ぎない。ところが,昭和48年の公有水面埋立法の一部改正により免許基準が法定化され,特に環境保全に配慮する免許基準(法4条1項2号等)が採用されたことにより,申請者である国の判断と,承認権者である都道府県知事の判断が相違する可能性が想定され得るところとなり,このような場合には承認権者である都道府県知事の判断が当然優先されることとなる。このような埋立承認手続の建前にかんがみれば,国がなす埋立ての場合も,後に承認基準が充たされないことが判明した場合には都道府県知事は当該承認を取り消すべきであり,このようにして承認が取り消された場合に埋立行為者である国が原状回復義務を負担しない理由は全く見出しがたい。 (ウ) したがって,将来,仮に本件埋立工事が竣功したとしても,本件承認処分等の取消を求める訴えの利益は消滅しない。 (被告の主張)ア本件埋立工事が竣功していることについて(ア) 原告らは,本件埋立工事は竣功していないと主張するが,平成22年5月以降,新滑走路等の運用が開始されていることなどに照らすと,本件埋立工事が竣功していることは明らかであって,原告らの主張は理由がない。 (イ) 平成22年7月20日時点にお るが,平成22年5月以降,新滑走路等の運用が開始されていることなどに照らすと,本件埋立工事が竣功していることは明らかであって,原告らの主張は理由がない。 (イ) 平成22年7月20日時点において,藻場・干潟の回復措置が完了していないことは認める。しかし,藻場・干潟の回復措置は,法42条2項の「埋立ニ関スル工事」には含まれない上,藻場・干潟の回復措置の要請は,公有水面埋立法上の権限に基づいて行ったものではなく,行政手続法2条6号に基づく行政指導として行ったものに過ぎないから,藻場・干潟の回復措置が完了するまで本件埋立工事が竣功しないという原告らの主張は失当である。 (ウ) また,西側の平行誘導路,北側の東西誘導路,パブリック・アクセスロードの建設工事は,埋立地の用途に従った土地利用に基づく施設の建設工事であるから,埋立てに関する工事には該当しない。 イ本件埋立工事の竣功により訴えの利益は消滅することについて(ア) 原告らは,本件埋立工事が竣功しても訴えの利益は消滅しないと主張する。しかし,公有水面埋立法の建前上,国がなす埋立ての場合に埋立工事が竣功したときには,都道府県知事は国から竣功通知を受領すること以外に権限行使の機会がなく,しかも,埋立承認処分が取り消されたとしても,国が原状回復義務を負うこともないし,都道府県知事が何らの法的措置を命ずることもできないことに照らせば,本件埋立工事の竣功により本件処分等の取消を求める訴えの利益は消滅するというべき である。 (イ) 国がなす埋立ての場合に埋立工事が竣功したとき,都道府県知事は国から竣功通知を受領するだけである。すなわち,国以外の者が行う埋立ての場合に埋立工事が竣功したときは,都道府県知事の竣功認可を要し,同認可を待ってはじめて埋立地の所有権が埋立権者に帰 道府県知事は国から竣功通知を受領するだけである。すなわち,国以外の者が行う埋立ての場合に埋立工事が竣功したときは,都道府県知事の竣功認可を要し,同認可を待ってはじめて埋立地の所有権が埋立権者に帰属するのに対し,国がなす埋立ての場合には,都道府県知事には竣功通知を受け取る以外に権限はなく,何らの能動的権限も認められていない。その実質的な根拠は,次のとおりである。すなわち,国以外の者が行う埋立ての場合には,都道府県知事の埋立ての免許により免許を受けた者に「埋立ヲ為ス権利」が設定されるのに対し,国がなす埋立ての場合には,国は本来,公有水面に対する支配権(公有水面を直接排他的に支配し管理する権能)を有しており,国はそもそもこの支配権に基づいて公有水面について適法に埋立てをなし得るから都道府県知事の埋立ての免許により「埋立ヲ為ス権利」が設定されるわけではない。にもかかわらず,法42条1項により国がなす埋立ての場合に都道府県知事の承認が必要とされるのは,国がなす埋立工事が公有水面の管理上何らかの支障を生ずるものであるか否かを都道府県知事の判断に任せたと解されるのであって,これによれば,埋立工事が竣功したか否かの判断を国に任せることに矛盾はないし,埋立て開始前や埋立中であれば,都道府県知事が公有水面の管理上の支障の有無をチェックする必要はあるにせよ,埋立工事が竣功した場合には,その必要性すら消滅するからである。 (ウ) なお,原告らは,国がなす埋立ての場合にも,埋立承認の効力が消滅すれば国は原状回復義務を負う旨主張する。しかし,国がなす埋立てについて規定した法42条3項が,国以外の者が行う埋立ての場合に埋立免許の効力が消滅したとき免許権者が負担することとなる原状回復義務を規定した法35条をあえて準用していないことに照らせば,このよ いて規定した法42条3項が,国以外の者が行う埋立ての場合に埋立免許の効力が消滅したとき免許権者が負担することとなる原状回復義務を規定した法35条をあえて準用していないことに照らせば,このよ うな解釈は明文解釈にも反するし,前記のとおり,国以外の者が行う埋立ての場合には,都道府県知事の埋立ての免許により「埋立ヲ為ス権利」が設定されるのに対し,国がなす埋立ての場合には,国は本来,公有水面に対する支配権(公有水面を直接排他的に支配し管理する権能)を有しているのであって,この支配権に基づき公有水面について適法に埋立てをなし得ることとも矛盾することとなる。 (エ) 以上のとおり,公有水面埋立法の建前や制度趣旨からすると,埋立工事が竣功した場合,都道府県知事には竣功通知を受領する以外の法律上の権原を見出すことはできず,したがって,本件においては,山口県知事が平成20年5月14日に竣功通知を受領したことをもって,本件処分等に係る法律上のプロセスは完了したのであって,原告らが本件処分等の取消を求める利益はなくなったというほかない。 したがって,本件埋立工事の竣功により訴えの利益は消滅している。 (2) 原告らが,本件処分等の取消を求める法律上の利益(行政事件訴訟法9条)を有するか否か(本案前の争点)。 (原告らの主張)ア原告らは,周辺整備法に基づき第1種区域(75WECPNL以上)に指定された区域内及びその周辺地域に現に居住している者らであるから,岩国飛行場の騒音によって健康・生活を害されないという環境利益を有している。同利益は,公有水面埋立法のみならず,同法と目的を共通とする環境基本法,周辺整備法,環境影響評価法の趣旨・目的に照らし,法律上保護された利益というべきであるから,原告らは本件訴訟において原告適格を有する。以 公有水面埋立法のみならず,同法と目的を共通とする環境基本法,周辺整備法,環境影響評価法の趣旨・目的に照らし,法律上保護された利益というべきであるから,原告らは本件訴訟において原告適格を有する。以下,詳述する。 イすなわち,公有水面埋立法が,都道府県知事による承認基準として,環境保全に配慮する承認基準を定めていることに照らせば,公有水面埋立法は,埋立ての実施に伴う環境の保全を第一の目的としていると解される。 したがって,原告適格の有無の判断においてはこのような同法の目的に沿って判断する必要がある。 また,法3条が,免許出願があったときは遅滞なく出願事項等を告示縦覧に供し,地元市町村長の意見を徴するとともに,利害関係人の意見提出権を規定して,もって地元及び周辺住民の意見との調整の機会を付与しているところ,国がなす埋立ての場合にもこれらの規定が準用されていることによれば,公有水面埋立法の免許・承認に係る規定は,埋立地周辺の住民の環境利益を具体的に保護することを目的としているといえる。 ウまた,行政事件訴訟法によれば,処分又は裁決の相手方以外の者について法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮する必要があり,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとされているところ(同法9条2項),前記のとおり,公有水面埋立法が埋立ての実施に伴う環境の保全を第一の目的としていることに照らせば,原告適格の有無の判断においては,①環境の保全についての基本理念を定めた環境基本法,②防衛施設周辺地域の生活環境等の整備 面埋立法が埋立ての実施に伴う環境の保全を第一の目的としていることに照らせば,原告適格の有無の判断においては,①環境の保全についての基本理念を定めた環境基本法,②防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずることによって関係住民の生活の安定及び福祉の向上を図ることを目的とする周辺整備法,③環境影響評価等の手続を通じて公害の防止等に対し適正な配慮を図ることを目的とする環境影響評価法,これら各法律の趣旨・目的をも参酌する必要がある。 エ以上のとおり,公有水面埋立法の規定やその趣旨・目的,関係法令たる環境基本法,周辺整備法及び環境影響評価法の趣旨・目的を参酌すれば,本件処分等の根拠法規たる公有水面埋立法は,埋立対象地の周辺地域に居住する住民に対し,飛行場をその用途とする違法な埋立事業に起因する騒 音・振動等によって健康又は生活環境にかかる著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとする趣旨・目的を含んでおり,かつ,このような具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消されるものでないことが明らかである。 したがって,飛行場をその用途とする埋立事業の実施に起因して,騒音・振動等による健康又は生活環境にかかる著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該埋立事業の免許・承認の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有する。 (被告の主張)ア原告らは,法4条1項2号・3号の環境保護条項を重視するようであるが,公有水面埋立法の改正に当たり新設された2号・3号の規定は,環境保全の具体的基準を明示していない。したがって,これらの規定が原告らのような埋立地周辺の住民の環境利益を具体的に保護することを目的としているとは解し難い。すなわち,法4条1項2号が規定する環境保全に関す 具体的基準を明示していない。したがって,これらの規定が原告らのような埋立地周辺の住民の環境利益を具体的に保護することを目的としているとは解し難い。すなわち,法4条1項2号が規定する環境保全に関する基準は,埋立行為そのものに特有の配慮事項として,環境問題及び災害問題につき一般的・公益的な見地から,現況及び影響を的確に把握した上でこれに対する措置を適正に講ずることを免許基準としたものであり,一定水準以上の環境・安全性を確保するという行政目的達成のための一般的・抽象的基準に過ぎない。また,同項3号は埋立地の用途と土地利用又は環境保全に関する国または地方公共団体の法律に基づく計画との整合性を要求しているところ,同規定により,埋立てによる環境への影響が環境基本法により定められた環境基準や公害防止計画等の許容基準を超えてはならないことが要求されることにはなるが,これらは人の健康を保護し,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準であって,行政の努力目標を示す指標に過ぎないものである。さらに,法3条は,出願事項等の告示縦覧,利害関係人の意見書提出等について定めていて,この規定 は,行政の正当性を担保するため国民の行政参加の一環として利害関係人の意見等を反映させるものであるが,提出された意見書の取扱いについては何ら明文による規律がなされていない上,免許権者が同意見に直ちに拘束されるものでも,意見に対して回答すべき法律上の義務を負うものでもない。 イそうすると,原告らが重視するこれらの規定は,専ら一般的な公益を保護する趣旨のものと解するのが相当であり,周辺住民の有する生活上又は営業上の環境利益を一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としても具体的に保護すべきものとする趣旨を含むものと解することは到底困難である。そして,他に のが相当であり,周辺住民の有する生活上又は営業上の環境利益を一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としても具体的に保護すべきものとする趣旨を含むものと解することは到底困難である。そして,他に,公有水面埋立法の趣旨・目的に照らして,周辺住民等の環境利益を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解することのできる理由は見当たらない。 (3) 主位的請求について,出訴期間が経過しているか否か(本案前の争点)。 (原告らの主張)被告は,主位的請求については出訴期間が経過していると主張する。しかし,原告らが主位的請求において取消を求める本件承認処分は,厚木飛行場からの空母艦載機の移駐により本件埋立事業の目的が基地機能の強化に変更されたことにより違法となったものであり,この目的の変更は,山口県知事が平成20年2月12日に本件変更承認をなしたことにより最終的に確定したものである。 したがって,出訴期間の制限の起算日は平成20年2月12日であるというべきであるところ,原告らはこれから6か月以内に本件訴訟提起を行っているから,主位的請求について出訴期間は経過していない。 (被告の主張)行政事件訴訟法14条2項の「処分の日」とは,行政行為の効果の発生した日と同義であり,これにより相手方の現実の知・不知を問わず,1年の経 過によって出訴期間は満了する。山口県知事は,平成8年11月28日,法42条1項により本件承認処分をなしたところ,本件訴え提起日である平成20年2月7日までには1年以上が経過している。 したがって,主位的請求については出訴期間が経過した。 (4) 本件変更承認が行政処分に該当するか否か(本案前の争点)。 (原告らの主張)ア行政処分とは,一般的に,「公権力の主体たる国または公共団体 ,主位的請求については出訴期間が経過した。 (4) 本件変更承認が行政処分に該当するか否か(本案前の争点)。 (原告らの主張)ア行政処分とは,一般的に,「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することを法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁)と理解されている。しかし,上記判示部分は,処分性の概念の中核部分を記述したものに過ぎず,これを演繹的に適用して問題となる具体的な行為の処分性を決することはできない。したがって,処分性の有無を判断するに際しては,上記判示部分に拘泥することなく,国民の権利救済の観点等を重視して決するべきである。 イ本件変更承認は,以下の理由から,行政処分に該当する。すなわち,本件変更承認が,国に対し,変更内容に沿った工事を適法に実施させ得るという法的効果を直接もたらすものであって,後述のとおり,本件変更承認申請の内容が,実質的には法13条の2の「用途の変更」に該当するものであることに照らせば,本件変更承認は行政処分に該当する。仮に,本件変更承認申請の内容が「用途の変更」に該当しないものであったとしても,本件変更承認申請が,厚木飛行場からの空母艦載機の移駐に伴う長大な誘導路の新設等をその内容とするものであることに照らせば,本件変更承認は,岩国飛行場の周辺住民に対し,現状以上の騒音や大気汚染,航空機の墜落の危険性を受忍させるものである。したがって,本件変更承認は,周辺住民との関係において,公権力の行使に該当するというべきである。 (被告の主張)本件変更承認は,山口県知事が本件承認処分の際に付した本件留意事項に基づくものである。本件留意事項は,行政行為 の関係において,公権力の行使に該当するというべきである。 (被告の主張)本件変更承認は,山口県知事が本件承認処分の際に付した本件留意事項に基づくものである。本件留意事項は,行政行為において法律規定事項以外の事項を付加する講学上の附款に該当し,そのうち法令に規定されている義務以外の義務を付加する講学上の負担に分類される。一般的に,負担に対する違反は,行政行為の効力に直接関係するものではなく,行政行為の撤回事由になるにとどまる上,公有水面埋立法上も,国がなす埋立ての場合には,国以外の者が行う埋立ての場合に埋立免許権者が免許条件に違反したときに承認権者が免許の取消を含む制裁や原状回復を命令することを認めた法32条が準用されておらず,国が本件留意事項に違反したとしても,山口県知事は国に対し何ら制裁や原状回復等の措置を取り得ない仕組みとなっている。これによれば,本件留意事項が相手方(国)に対し行政庁の優越的な意思発動の結果を受忍させる一般的拘束を課すものとはいい難い。公有水面埋立法施行令6条は「都道府県知事ハ埋立ニ関スル法令ニ規定スルモノノ外埋立ノ免許ニ公益上又ハ利害関係人ノ保護ニ関シ必要ト認ムル条件ヲ附スルコトヲ得」と規定して,行政処分に当たり都道府県知事が法律規定事項以外の条件を付することを認めているが,どのような場合にどのような条件を付すべきかは都道府県知事の裁量に委ねているから,法律が意思の発動を適法とするための要件を定め,行政庁がこの要件の充足の有無を判断して行動すべきことを要求しているとはいえないし,本件留意事項に基づく承認が,その効果としても極めて拘束力の弱い,相手方(国)の地位に直接的な変更をもたらせない効力しか有さず,また,不承認の場合における不服申立制度も設けられていないことなどに照らせば,本件変更承認 承認が,その効果としても極めて拘束力の弱い,相手方(国)の地位に直接的な変更をもたらせない効力しか有さず,また,不承認の場合における不服申立制度も設けられていないことなどに照らせば,本件変更承認は行政処分ではないというべきである。 (5) 本件処分が違法な処分であるか否か。 (原告らの主張) ア本件埋立事業は,表向きには岩国飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和を目的として計画・実行されてきたところ,国は当初から基地機能の強化を目論んでいた。本件承認処分は,国のこのような意図を看過してなされたものであるから,取り消されるべきである。 イ本件埋立事業が表向きには岩国飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和を目的として計画・実行されてきたことは,本件埋立理由書において明記されている。すなわち,本件埋立理由書には,「岩国市において早期に解決することが求められている課題」として,航空機による騒音及び航空機事故の危険性が摘示されており,その課題の解決策として,本件公有水面を埋め立てて滑走路を移設することが有効であり,かつ,これが被告や岩国市等の関係地方公共団体の策定した諸計画(山口県が昭和62年2月に策定した第四次県勢振興の長期展望,岩国市が平成2年3月に策定した岩国市総合計画など)とも整合すると指摘されている。 その上で,新滑走路の配置計画について,周辺地域や航空機の安全性の確保及び周辺地域の騒音軽減という観点から複数の案が比較検討された結果,「周辺地域の騒音も75WECPNL以上の範囲が市街地より概ね外れる」等の理由から,滑走路の東側の海面を埋め立てて新滑走路を並行に移設する案を採用した旨記述されている。 以上によれば,本件埋立事業が表向きには滑走路の沖合移設により岩国飛行場周辺における安全の確保 等の理由から,滑走路の東側の海面を埋め立てて新滑走路を並行に移設する案を採用した旨記述されている。 以上によれば,本件埋立事業が表向きには滑走路の沖合移設により岩国飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和を図ることを目的として計画・実行されてきたことは明らかである。 ウところで,平成18年5月1日に発表された日米安全保障協議委員会による「再編実施のための日米のロードマップ」によれば,スーパーホーネット等の57機に加え,新たにC-2輸送機2機の合計59機の空母艦載機を平成26年までに厚木基地から岩国飛行場に移駐させること等が表明され,同月30日にはこれらが閣議決定されて基地機能の強化が図られた。 しかし,基地機能の強化は,実は当初から目論まれていた。すなわち,防衛施設庁(当時)と山口県,岩国市との間では,平成4年6月18日,岩国飛行場における将来のNLP(米空母艦載機夜間離着陸訓練)受入れについて,「NLPについては,将来とも受け入れてもらえることを前提に,今回の照会内容には含めず。」(防衛施設庁),「今回の照会内容に含めないことは評価。なお,NLPについては,将来とも受け入れざるを得ないと思料。」(山口県・岩国市)とのやり取りがなされていたところ,このことは長年,市民に公にされることなく隠蔽されてきた。そして,このような,まさに「密約」というべき対応(隠蔽)がなされたのは,本件埋立事業がNLPの受入れを前提とするものであることが市民に知られるところとなれば,同事業が,実際には将来,在日米軍の移駐の受け皿として岩国飛行場の機能を拡張するものであるという目的が露見しかねないと懸念されたがためにほかならない。 エ以上のとおり,当初から,国は,本件沖合移設後の岩国飛行場が,厚木飛行場の空母艦載機とNLPの受入れ先( の機能を拡張するものであるという目的が露見しかねないと懸念されたがためにほかならない。 エ以上のとおり,当初から,国は,本件沖合移設後の岩国飛行場が,厚木飛行場の空母艦載機とNLPの受入れ先(受け皿)となることを見込んでいたにもかかわらず,これを秘匿したまま,岩国市民の安全の確保と航空機騒音の緩和のためであると偽って本件沖合移設に伴う本件埋立事業の出願をし,本件承認処分を受けたものである。同処分は,このような国の脱法行為を看過してなされたものであるから,取り消されるべきである。 (被告の主張)争う。 (6) 本件変更承認が違法な処分であるか否か。 (原告らの主張)ア本件変更承認の経過・内容について(ア) 本件変更承認申請は,概ね下記の経過を経てなされたものである。 記 平成17年10月29日在日米軍再編の日米両政府の「中間報告」。 厚木飛行場の空母艦載機57機を岩国飛行場に移駐することで合意。 平成18年5月1日在日米軍再編の日米両政府の「最終報告」。 空母艦載機の岩国飛行場移駐に合意。厚木飛行場の空母艦載機59機に普天間飛行場の空中給油機12機も加わり,常駐機数は57機から約130機に倍増。機数では極東最大の米軍航空基地に。 平成18年5月30日日本政府は在日米軍再編に関する実施方針を「閣議決定」。「厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐」が決まる。 (イ) 以上の経過を経て,平成20年1月8日に国がなした本件変更承認申請の内容(以下「本件変更内容」という。)は,概ね別紙「『公有水面埋立承認願書』(甲2)と『添付図書の変更承認申請書』(乙3)との間の主な変更点」記載のとおりであり,主として厚木飛行場からの空母艦載機の移駐に伴う東側誘導路の新設等に伴う変更である。 イ 有水面埋立承認願書』(甲2)と『添付図書の変更承認申請書』(乙3)との間の主な変更点」記載のとおりであり,主として厚木飛行場からの空母艦載機の移駐に伴う東側誘導路の新設等に伴う変更である。 イ本件変更承認の違法性について(ア) 本件変更内容は,実質的には法13条の2の「用途の変更」に該当するものであるにもかかわらず,本件変更承認に際しては,関係図書等の告示縦覧,地元市町村長の意見聴取,内容審査などの法13条の2第2項所定の手続が履践されていない。また,瀬戸内海環境保全特別措置法13条が,関係府県知事に対し,埋立承認に当たり瀬戸内海の特殊性につき十分配慮することを要求している趣旨に照らせば,周辺地域への環境アセスメントを実施検証するのでなければ,本件変更承認申請に対する内容審査(判断)は不可能であったにもかかわらず,環境アセスメ ントは実施されていない。したがって,このような本件変更承認は違法である。 (イ) なお,法13条の2第2項の「用途の変更」は,単に,願書に記載された「埋立地の用途」を変更する場合のみを意味しないと解すべきである。すなわち,環境保全条項を含む承認基準の内容審査に当たっては,埋立地の用途のみならず,埋立ての動機,埋立地の具体的な利用計画をも勘案しなければ,基準を満たしているか否かの審査は不可能である。 そうすると,当初の埋立承認の場合と同様の手続・審査が求められている「用途の変更」が,願書に記載された「埋立地の用途」に変更があった場合に限られると解釈するのは合目的的ではなく,埋立ての動機や埋立地の具体的な利用計画に重要な変更があった場合についても同項所定の手続・審査が求められていると解釈されなければならない。そして,重要な埋立ての動機・埋立地の利用計画につき変更があったか否かは,当該埋立 具体的な利用計画に重要な変更があった場合についても同項所定の手続・審査が求められていると解釈されなければならない。そして,重要な埋立ての動機・埋立地の利用計画につき変更があったか否かは,当該埋立免許・承認の可否判断において,埋立ての動機・埋立地の利用計画が有していた意義等が考慮されるべきである。 (ウ) これを本件につきみると,当初,本件沖合移設に伴う本件埋立事業の目的は,岩国飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和とされており,これらが重要な意義を有していた。しかし,本件変更承認申請により,本件公有水面の埋立て(以下「本件埋立て」という。)の動機は,空母艦載機等の移駐を可能にする基地機能強化に変更された。基地機能強化に伴う常駐機数の倍増により,航空機事故発生の可能性が増大すること,また,航空機騒音が増加することは明らかである。したがって,本件変更承認申請により,岩国飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和という当初の埋立ての動機は変更されたというべきであり,この変更は重大である。 (エ) 以上によれば,本件変更承認申請は,まさに,法13条の2第2項 の「用途の変更」に該当するものであり,同法所定の用途変更手続・審査の対象とされなければならないものであった。また,瀬戸内海環境保全特別措置法の趣旨に照らせば,環境アセスメントを実施検証しなければ内容審査が不可能なものであった。にもかかわらず,このような手続が一切履践されていない本件変更承認は違法というべきである。 (被告の主張)ア争う。本件変更内容は,法42条3項,13条の2により都道府県知事の承認を得ることが必要な事項には該当しない。すなわち,法42条3項,13条の2によれば,「埋立地の用途」又は「設計の概要」に係る変更には都道府県知事の承認が必 条3項,13条の2により都道府県知事の承認を得ることが必要な事項には該当しない。すなわち,法42条3項,13条の2によれば,「埋立地の用途」又は「設計の概要」に係る変更には都道府県知事の承認が必要とされているが,本件埋立地の用途は「飛行場用地」であり,これについて変更はなされていない。また,設計の概要は,法2条2項4号のとおり,申請にあたり願書に記載する必要がある事項であり,公有水面埋立法施行規則11条,16条,別表様式第一によると,「埋立地の地盤の高さ」「護岸,堤防,岸壁その他これらに類する工作物の種類及び構造」「埋立てに関する工事の施行方法」及び「公共施設の配置及び規模の概要」であるところ,これらについても変更はなされていない。 イしたがって,本件変更内容が法42条3項,13条の2にいう「用途の変更」に該当することを前提とした原告らの主張は,既にこの点において失当である。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実に証拠(甲1,6,9,10,22,26,29,33,乙1~3,5~7,10~16,19〈枝番のあるものは枝番を含む。〉)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1) 岩国飛行場は,岩国市街地の東端部に位置し,β川下流のγ川とδ川に挟まれた三角州に立地する飛行場で,その北側には工場地,西側には住宅地 が広がっている。岩国飛行場は,海上自衛隊が岩国航空基地として,在日米軍が米海兵隊岩国航空基地として使用している。岩国飛行場においては,かねてから,以下のような問題が生じていた。すなわち,岩国飛行場の旧滑走路(本件沖合移設前の滑走路)の北側進入表面下には石油コンビナート等災害防止法に基づき特別防災区域に指定された工場群が存在しており,万一の航空機墜落等の場合には重大な事故となる可能性があった。 滑走路(本件沖合移設前の滑走路)の北側進入表面下には石油コンビナート等災害防止法に基づき特別防災区域に指定された工場群が存在しており,万一の航空機墜落等の場合には重大な事故となる可能性があった。また,市街地に近接しているため航空機騒音が発生していたし,米軍機の墜落や落下物事故が何件も発生していた。このため,昭和46年以降,山口県及び岩国市は,飛行場周辺の安全の確保及び航空機騒音の障害緩和のため,国に対し,岩国飛行場の沖合移設を要望し,近隣地方自治体において策定された諸計画においても,次のとおり「基地対策の推進」が掲げられていた。 ア第四次県勢振興の長期展望(山口県,昭和62年2月策定)「基地に起因する航空機騒音等の諸問題を解決し,周辺地域住民の安全で快適な生活を確保するためには,基地周辺対策の拡充強化が必要である」とされ,その施策として「岩国基地沖合移設の早期実現を国に働きかける」とされていた。 イ岩国市総合計画(岩国市,平成2年3月策定)「地域住民の安全の確保と航空機騒音の緩和のために,また,基地の安定的運用を図り,かつ,国防という国家目標を解決してゆくためには,岩国基地の沖合移設が是非とも早期に実現されなければならない。」とされている。このための施策として「岩国基地沖合移設の早期方針決定と事業着工を目指す。」とされ,「このため,山口県,岩国市,関係団体及び地域住民が一体となって強力な岩国基地沖合移設の促進運動を展開する。」とされていた。 ウ第三次岩国地区広域市町村圏計画(岩国地区広域市町村圏協議会,平成3年3月策定) 概ね岩国市総合計画と同様の計画が定められていた。 (2) 国(当時の防衛施設庁)は,前記のような要望を受けて,昭和57年7月,防衛施設中央審議会に対し「岩国飛行場の将来対策に 定) 概ね岩国市総合計画と同様の計画が定められていた。 (2) 国(当時の防衛施設庁)は,前記のような要望を受けて,昭和57年7月,防衛施設中央審議会に対し「岩国飛行場の将来対策について」諮問したところ,「岩国飛行場周辺における安全を確保し,航空機騒音の軽減を図るためには,飛行場の東側の海面を埋め立て,滑走路を約1,000m移設する方法が適当である。」との答申を得た。国(当時の防衛施設庁)は,この答申に従い,昭和58年度から平成2年度にかけて,沖合移設を実施する場合に必要となる環境影響評価に係る基礎調査を実施し,また,昭和61年度から昭和63年度にかけて,埋立予定区域の一部において工法試験を実施し,平成元年度以降,沈下量の観測を行うなどした上で,平成4年8月,本件沖合移設を正式決定した。その後,平成6年9月から平成7年8月まで,閣議決定要綱に基づく環境影響評価の手続がとられた。なお,このころ,国(当時の防衛施設庁)は,航空機騒音が周辺地域に与える影響を把握するため,本件沖合移設後の新たな飛行ルートを想定飛行経路とした場合の航空機騒音の予測調査を実施し,航空機騒音予測コンター(以下「再編前予測コンター」という。)を作成した。 (3) 以上の経過を経て,国は,平成7年9月22日,山口県知事に対し,本件出願をした。本件出願に当たり山口県知事に対し提出された本件埋立理由書には,埋立ての動機,埋立ての効果として,下記のような記載がなされていた。 記(埋立ての動機)岩国市においては,岩国飛行場が存在することにより,日常生活上,安全上において次のような課題があり,早期に解決することが求められている。 ① 航空機による騒音 航空機から発生する騒音は,その大きさが自動車,鉄道等,他の交通騒音とは比較になら 上,安全上において次のような課題があり,早期に解決することが求められている。 ① 航空機による騒音 航空機から発生する騒音は,その大きさが自動車,鉄道等,他の交通騒音とは比較にならない程大きいこと,一機の運航でも,広範囲の飛行場周辺住民に影響を与えていること,また,他の騒音と比べて,騒音の継続時間が数秒から数十秒程度と短く,間欠的かつ瞬間的なものであることなどの特徴がある。 ② 航空機事故の危険性航空機が北に向けて出発する場合に,出発コースの下には「石油コンビナート等災害防止法」の規定に基づく特別防災区域に指定されている石油化学,化学繊維,製紙等の工場群があり,その上空を避けて飛行するため離陸後ただちに,東側海上に向かって急激な旋回を余儀なくされている。 この工場群に万一の航空機事故が発生した場合には大惨事となる危険性がある。 (埋立ての効果)現在の飛行場は市街地に近接しているため,航空機騒音による問題をかかえている。 これに対して,飛行経路の改善,民家・学校等の防音工事等の対策がなされているが,沖合に1,000m滑走路を移設することにより,現時点の運用形態から予測すると騒音値75WECPNL以上の区域が岩国市街地からほとんど外れ,周辺住民にとって航空機騒音の障害が大幅に軽減されることとなる。 また,現在の飛行場周辺の市街地では,航空機からの落下物や航空機の墜落等の危険にさらされており,それらが引き起こす災害が周辺住民の不安要素となっている。沖合に,1,000m滑走路を移設することにより,不安要素の解消が図られると共に飛行場周辺住民の安全が確保される。 このように,滑走路の移設は,飛行場周辺住民の安全確保と,騒音障害 の緩和を図るために有効な手段となる。 一方,現飛行場は工場地帯の が図られると共に飛行場周辺住民の安全が確保される。 このように,滑走路の移設は,飛行場周辺住民の安全確保と,騒音障害 の緩和を図るために有効な手段となる。 一方,現飛行場は工場地帯の中心部に位置し,工場地帯には石油化学,化学繊維,製紙等の大工場群が林立している。特に,現在の飛行場の北側進入表面下には特別防災区域に指定された工場群があり,常に大惨事の危険にさらされている。また,離発着の障害となるため工場の拡張,増設,新設に際しても制約を受けている。工場立地を希望している岩国市にとって,市勢伸長の根本となる各工場の増設や新規工場の誘致に支障を来すだけでなく,人口の流出等,市政遂行上の損失となっている。このため,滑走路の沖合移設により,工場群が進入表面下から完全に外れ,万一の事故の場合にも,周辺住民と工場群の安全を確保することができる。また,滑走路の沖合移設に伴って工場群上空の制限が緩和され,飛行場周辺の産業,経済発展上の阻害要因を除去するための有効な手段となる。 さらに,本埋立事業は,これまで20数年の永きにわたり,官民一体となった移設運動を展開してきた地域の要望に応えるものである。 (4) 本件願書を受理した山口県知事は,平成7年10月13日から同年11月2日まで,出願事項等を告示縦覧に供するとともに,法3条1項の規定に基づき地元市町村長の意見を徴するなどした上,法47条1項,公有水面埋立法施行令32条に基づき,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)に対し,本件公有水面の埋立承認に係る認可申請を行った。そして,山口県知事は,平成8年11月26日,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)の各認可を受け,同月28日,本件承認処分をなした。山口県知事は,本件承認処分に当たり,「願書の添付図書のうち,埋立てに用いる土砂等の採取 平成8年11月26日,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)の各認可を受け,同月28日,本件承認処分をなした。山口県知事は,本件承認処分に当たり,「願書の添付図書のうち,埋立てに用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書,埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面及び環境保全に関し講じる措置を記載した図書を変更して実施する場合には,山口県知事及び岩国港港湾管理者の長山口県知事の承認を受けること。」との本件留意事項を付した。 なお,建設大臣(当時)及び運輸大臣(当時)は,上記認可に当たり,環境庁長官(当時)の意見を徴したところ,同長官は,各大臣に対し,「本埋立事業は,埋立て等について環境保全上特別な配慮が必要な瀬戸内海海域における事業であることから,以下の措置を講じる必要がある。」として,最大限,新たな藻場及び干潟の造成に努めるとともに,藻の定着状況及び干潟の形成状況を計画的に監視する等により極力維持に努めること,また,埋立工事中の水質汚濁防止について十分配慮するとともに,工事中の濁水処理について所要の対策を講じることなどの本件措置を講じる必要があるとの環境庁意見を提出した。これを受け,建設省(当時)河川局長は,山口県知事に対し,環境庁意見に十分配慮するよう勧告し,山口県知事も,本件承認処分と同日,防衛施設庁(当時)広島防衛施設局長に対し,本件措置を講じるよう勧告するとともに,同措置についての結果報告を要求した。 (5) 国は,平成9年6月,本件公有水面に係る海上工事に着手し,平成12年2月に南地区の埋立て,平成15年7月に北地区の埋立て,平成17年12月に中央地区の埋立てを開始した。平成19年5月には,埋立土砂の投入が終了し,同年11月以降,新滑走路等の舗装工事に着手した。なお,本件埋立てに使用された埋立土量 月に北地区の埋立て,平成17年12月に中央地区の埋立てを開始した。平成19年5月には,埋立土砂の投入が終了し,同年11月以降,新滑走路等の舗装工事に着手した。なお,本件埋立てに使用された埋立土量は,約2095万㎥であった。 (6) 日米両国政府は,自衛隊及び米軍の役割・任務・能力並びに在日米軍の兵力構成見直しについて協議を進め,平成17年10月29日,日米安全保障協議委員会による在日米軍再編に係る中間報告(以下「中間報告」という。)が公表された。中間報告における岩国基地再編案の概要は,以下のとおりであった。すなわち,Ⅰ 空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐として,FA-18C/E/Fホーネット戦闘攻撃機49機,EA-6Bプラウラー電子戦機4機及びE-2Cホークアイ早期警戒機4機の合計57機を厚木基地から岩国飛行場へ移駐させることとし,Ⅱ 騒音等の負担に対する主な軽減措置として,海上自衛隊航空機(E/U/OP-3,U-3 6A)17機を厚木飛行場へ移駐させるとともに,空中給油機KC-130について,海上自衛隊鹿屋基地への移駐を優先的に検討し,いわゆる低騒音機(E-2C:4機)は空母艦載機離発着訓練を実施するものの,他の空母艦載機については引き続きできる限りε島で訓練を実施する,また,岩国飛行場から他の軍用施設への訓練分散の拡大を図る,Ⅲ 移駐の時期は,岩国飛行場滑走路移設事業が終了する平成20年度以降とする,というものであった。 (7) 国(防衛施設庁)は,平成17年12月及び平成18年4月,岩国飛行場に係る航空機騒音予測コンター(以下「再編後予測コンター」という。)を作成した。これは,中間報告等における米空母艦載機の厚木飛行場からの移駐に伴い,同移駐が完了した場合の航空機騒音が周辺地域に与える影響を把握する 予測コンター(以下「再編後予測コンター」という。)を作成した。これは,中間報告等における米空母艦載機の厚木飛行場からの移駐に伴い,同移駐が完了した場合の航空機騒音が周辺地域に与える影響を把握するために作成されたものであった。同コンター作成に当たり,国は,飛行経路としては再編前予測コンター作成時に使用した飛行経路を想定飛行経路として使用し,移駐機の騒音データについては,厚木飛行場等において測定された機種毎の騒音データを用い,再編後の1日の標準飛行回数については,これを389回と見積もった(平成17年当時の現況の推定標準飛行回数は326回)。再編後予測コンターは,上記の条件を前提とした場合の航空機騒音が周辺地域に与える影響を予測したものであるところ,再編前予測コンターと再編後予測コンターを比較した場合,再編後予測コンターにおける騒音値75WECPNL以上の区域及び騒音値70WECPNL以上の区域は再編前予測コンターの各区域より拡大すると予測された。 (8) 平成18年5月1日,日米安全保障協議委員会において「再編実施のための日米のロードマップ」が承認され,公表された。これによれば,厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐が掲げられており,その具体的内容は,以下のとおりであった。すなわち,①第5空母航空団の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐は,F/A-18,EA-6B,E-2C及びC-2 航空機から構成され,(1)必要な施設が完成し,(2)訓練空域及び岩国レーダー進入管制空域の調整が行われた後,2014年までに完了する,②厚木飛行場において,海上自衛隊EP-3,OP-3,UP-3飛行隊等の岩国飛行場からの移駐を受け入れる,③KC-130飛行隊は,司令部,整備支援施設及び家族支援施設とともに,岩国飛行場を拠点とし,航空機は,訓 において,海上自衛隊EP-3,OP-3,UP-3飛行隊等の岩国飛行場からの移駐を受け入れる,③KC-130飛行隊は,司令部,整備支援施設及び家族支援施設とともに,岩国飛行場を拠点とし,航空機は,訓練及び運用のため,海上自衛隊鹿屋基地及びグアムに定期的にローテーションで展開する,④海兵隊CH-53Dヘリは,第3海兵機動展開部隊の要員が沖縄からグアムに移転する際に,岩国飛行場からグアムに移転する,⑤訓練空域及び岩国レーダー進入管制区域は,米軍,自衛隊及び民間航空機(隣接する空域内のものを含む。)の訓練及び運用上の所要を安全に満たすよう,合同委員会を通じて,調整される,⑥恒常的な空母艦載機離発着訓練施設について検討を行うための二国間の枠組みが設けられ,恒常的な施設を2009年7月又はその後のできるだけ早い時期に選定することを目標とする,⑦将来の民間航空施設の一部が岩国飛行場に設けられる,というものであった。 そして,政府は,平成18年5月30日,厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐を含む再編関連措置については最終取りまとめに示された実施時期を踏まえつつ,着実に実施していくものとする旨の閣議決定をした。 (9) 国は,平成20年1月8日,山口県知事に対し,本件留意事項に基づき,本件変更承認申請をした。本件変更内容は,本件願書の添付図書のうち「埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面」及び「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」の記載内容を変更するというものであり,主として空母艦載機の岩国飛行場への移駐に伴い,従前,新滑走路の西側のみに計画していた平行誘導路を東側にも整備することとしたことによる利用計画の変更に伴うものであった。これに対し,山口県知事は,同年2月12日,本件変更承認をした。 なお,本件変更承認申請書には みに計画していた平行誘導路を東側にも整備することとしたことによる利用計画の変更に伴うものであった。これに対し,山口県知事は,同年2月12日,本件変更承認をした。 なお,本件変更承認申請書には,本件変更に係る経緯,変更後の考え方と して,下記のような記載がなされていた。 記(変更するに至った経緯)(1) 平行誘導路等の配置及び規模の変更岩国飛行場の北側進入表面下には,石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律84号)に基づき,石油コンビナート等特別防災区域に指定された工場群があり,航空機は離陸後1マイル以内での旋回を余儀なくされ,同飛行場の運用上及び安全の確保上大きな制約を受けている。また,同飛行場には市街地が近接し,騒音問題が生じている。 このため,昭和46年以降,地元岩国市等から同飛行場周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和を図るため,同飛行場の滑走路を沖合移設するよう国に対して強い要望があった。 このような状況から,当局は,同飛行場の運用上,安全上及び騒音上の問題を解決し,米軍の駐留を円滑にするとともに,同飛行場の安定的使用を図るため,滑走路を東側(沖合)へ1,000m程度移設する事業を平成5年度から推進し,平成8年度から工事を実施してきたところである。 他方,近年,平成13年9月11日の米国におけるテロに代表される国際テロなどの新しい脅威の台頭や,大量破壊兵器(核・生物・化学)の拡散,弾道ミサイル攻撃の危険など,アジア太平洋地域や世界において安全保障環境が変化しており,新たな安全保障環境に対応するための抑止力を維持するとともに,地元負担を軽減する観点から,在日米軍の兵力構成の見直しについて日米間で協議が行われ,平成18年5月1日の日米安全保障協議委員会(「2+2」)において「再編実施のた ための抑止力を維持するとともに,地元負担を軽減する観点から,在日米軍の兵力構成の見直しについて日米間で協議が行われ,平成18年5月1日の日米安全保障協議委員会(「2+2」)において「再編実施のための日米のロードマップ」が承認され,平成18年5月30日に閣議決定されたところである。 このような空母艦載機の岩国飛行場への移駐等に伴い必要となる施設整備については,日米間で細部を調整した結果,今般,新滑走路東側に整備 する誘導路及び誘導路両端に整備する装備機材点検作業エリアについて,施設整備の位置等が確定したことから,「埋立地の用途及び利用計画の概要を表示した図面」の変更を行うものである。 (2) 埋立地の利用に係る大気質及び騒音予測の変更等(1)で述べたとおり,厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐等が実施され,航空機の機数及び構成に変化が生じることから,航空機の移駐後の埋立地の利用に係るN0x(窒素酸化物)の排出量及び騒音の状況について予測することとした。 (変更後の考え方)(1) 平行誘導路等の配置及び規模の変更平行誘導路については,滑走路移設事業において新滑走路の西側に計画していたが,空母艦載機等の移駐後における多数の航空機の安全かつ円滑な運用に資するため,新滑走路東側にも整備するものである。 当該誘導路を滑走路東側に整備することにより,離着陸時,特に離陸時の滑走路進入待機における航空機の分散を図り,同飛行場における航空機の円滑な運用と,より一層の安全に寄与しようとするものである。 また,東側平行誘導路を設置することにより,住宅地からより隔離した位置での航空機の運用が一部可能となり,離陸前のエンジン調整等による地上音の軽減につながるものと考えている。 装備機材点検作業エリアについては,航空機 を設置することにより,住宅地からより隔離した位置での航空機の運用が一部可能となり,離陸前のエンジン調整等による地上音の軽減につながるものと考えている。 装備機材点検作業エリアについては,航空機の離陸前の機材の点検等のため,誘導路両端に整備するものである。 平行誘導路・装備機材点検作業エリアの規模については,これらは着陸帯及び過走帯・過走帯付帯緑地の中に含まれる施設として位置付けられており,着陸帯及び過走帯・過走帯付帯緑地の埋立面積に変更はない。 (2) 埋立地の利用に係る大気質及び騒音予測の変更等大気質については,滑走路移設事業が完成し,空母艦載機等が移駐され た場合に航空機数が増加することから,航空機のエンジンから排出されるN0x(窒素酸化物)を予測することとする。 また,騒音については,飛行機種及び飛行回数は滑走路移設事業が完了し,空母艦載機等が移駐された場合とし,飛行経路については滑走路移設事業に係る環境影響評価書作成の際に想定したものを用いて,航空機騒音の評価単位であるWECPNLを求める方法により,騒音を予測することとする。 なお,空母艦載機等の移駐後の岩国飛行場の飛行経路は,この滑走路移設事業に係る環境影響評価書作成の際に想定したものと同様のものとなる見込みであり,このことは,日米間で確認しているところである。 (10) なお,国は前記以外にも法42条3項,同法13条の2第1項又は本件留意事項に基づき出願事項の変更等の承認申請を行い,いずれも山口県知事の承認を得ているところ,その詳細は下記のとおりである。 記平成9年12月2日申請・平成10年2月12日承認分根拠規定法42条3項,同法13条の2第1項主な変更内容遊水池護岸,D護岸基礎のサンドドレーン工法取り止め る。 記平成9年12月2日申請・平成10年2月12日承認分根拠規定法42条3項,同法13条の2第1項主な変更内容遊水池護岸,D護岸基礎のサンドドレーン工法取り止め排水渠位置変更平成10年11月18日申請・平成11年2月10日承認分根拠規定法42条3項,同法13条の2第1項主な変更内容斜路の位置及び構造の変更埋立面積変更 -23,954.98㎡防波堤の構造変更(地盤改良の追加)平成12年10月20日申請・同年11月10日承認分根拠規定本件留意事項主な変更内容購入土(瀬戸内海沿岸の土砂採取場所)の追加 土砂採取量の変更5haの返還に伴い計画遊水池の一部埋立計画遊水池の埋立部の地盤改良の追加土砂採取量の変更に伴う環境保全に関し講じる措置を記載した図書の変更平成14年10月2日申請・同年10月18日承認分根拠規定法42条3項,同法13条の2第1項主な変更内容 F護岸の位置変更(セットバック)埋立面積変更 -4,082.01㎡北地区遊水池からの排水渠位置変更及び予備排水渠の新設パブリックアクセスロードの新設地盤改良工事及び液状化対策範囲の拡大平成17年2月21日申請・同年3月1日承認分根拠規定法42条3項,同法13条の2第1項主な変更内容 G護岸,K護岸の防潮堤の位置変更及び天端高さの変更根拠規定本件留意事項主な変更内容防潮ゲートの数量追加浮桟橋の位置,寸法の変更平成17年11月1日申請・同年11月18日承認分根拠規定本件留意事項主な変更内容弾薬関連施設と駐機場・格納庫等と 防潮ゲートの数量追加浮桟橋の位置,寸法の変更平成17年11月1日申請・同年11月18日承認分根拠規定本件留意事項主な変更内容弾薬関連施設と駐機場・格納庫等との南北配置入れ替え連絡誘導路の配置変更平成18年4月27日申請・同年5月15日承認分根拠規定本件留意事項主な変更内容埋立土砂の採取場所の変更(11) 国は,本件公有水面の埋立て開始後,工事の進捗状況に合わせ,山口県 知事に対し,平成15年2月24日,平成16年3月5日,同年6月23日,平成17年3月28日,平成18年3月10日,平成19年7月17日,同年11月5日,平成20年3月14日,計8回に分けて部分竣功通知を行い,同年5月13日,法42条2項に基づく本件竣功通知を行った。これらの各竣功通知に当たり,国は,埋立地の実測平面図及び求積平面図を作成し(ただし,平成16年3月5日の部分竣功通知を除く。),山口県知事に提出した。 (12) 平成22年4月15日,在日米軍に対し,岩国飛行場における新滑走路等の提供が行われ,同年5月29日,本件埋立地上の新滑走路の運用が開始された。 2 本件埋立工事が竣功したか否か。また,仮に本件埋立工事が竣功している場合には,これにより本件処分等の取消を求める訴えの利益が失われるか否かについて(本案前の争点)(1) 本件埋立工事が竣功したか否かについてア公有水面埋立法上,国がなす埋立ての場合,埋立てに関する工事が竣功したときには当該官庁は直ちに都道府県知事に通知することとされている(法42条2項)ところ,同法には「竣功」について何ら定義規定が置かれていないから,その意味は,一般的用語の意味において解釈することとなり,また,埋立工事が竣功したか 知事に通知することとされている(法42条2項)ところ,同法には「竣功」について何ら定義規定が置かれていないから,その意味は,一般的用語の意味において解釈することとなり,また,埋立工事が竣功したか否かは,社会通念に照らして判断するのが相当である。 イ前記認定事実によれば,平成19年5月には本件埋立工事に係る埋立土砂の投入がほぼ終了し,平成20年5月13日,山口県知事に対し本件竣功通知を行ったこと,平成22年5月以降,本件埋立地上の新滑走路の供用が開始されていることが認められる。これによれば,社会通念に照らし本件埋立工事は既に竣功していると判断するのが相当であり,この認定に反する証拠は存在しない。 ウこれに対し,原告らは,① 新滑走路西側の平行誘導路,北側の東西誘導路,パブリック・アクセスロードの建設が完了していないから,本件埋立工事は竣功していない,② 藻場・干潟の回復措置が完了していない以上,本件埋立工事が竣功したとは評価すべきでない旨主張する。 しかしながら,①については,これらは本件埋立地上ないしその周辺地上の飛行場施設であって,埋立工事そのものとは関わりがないというべきであるから,原告らの主張はこの点において失当である。 また,②については,藻場・干潟の新たな造成は,山口県知事が,本件承認処分とは別に,行政手続法2条6号に基づいて行政指導として防衛施設庁(当時)広島防衛施設局長に対し勧告したものであって,本件埋立工事そのものの内容には含まれないと解するのが相当である。 よって,原告らの主張は理由がない。 (2) 本件埋立工事の竣功により本件処分等の取消を求める訴えの利益が失われるか否かについてア行政事件訴訟法における処分の取消の訴えは,処分によって生じた違法状態を原状に復し,これによって原 2) 本件埋立工事の竣功により本件処分等の取消を求める訴えの利益が失われるか否かについてア行政事件訴訟法における処分の取消の訴えは,処分によって生じた違法状態を原状に復し,これによって原告の主観的利益の保護を図ることを目的とする訴訟形態であるから,原状回復することが法律上不可能とみるべき事態が生じ,当該処分を取り消したとしても,違法状態を排除することができず,法的効果からみて原告の権利利益の保護救済に資するところがないこととなった場合には,当該処分を取り消すべき実益がなくなったものとしてその訴えの利益は存在しないものというべきである。 イ当裁判所は,本件埋立工事が竣功している以上,仮に本件処分等に違法事由があり,本件処分等を取り消したとしても,本件埋立地を海面に回復して原状回復を図ることは法律上不可能であり,法的効果からみて原告らの権利利益の保護救済にも資するところがないから,本件処分等の取消を求める訴えの利益は存在しないものと判断する。その理由の詳細は,以下 のとおりである。 (ア) 前記認定のとおり,本件埋立事業は,海上自衛隊において岩国航空基地として,在日米軍において米海兵隊岩国航空基地として現に使用されている岩国飛行場の滑走路沖合移設のため,山口県岩国市α町地先の約213haという広大な公有水面を約2095万㎥という膨大な量の土砂で埋め立てたもので,現に本件埋立工事は竣功しており,本件埋立地上には既に新滑走路をはじめとする空港施設が設置され,これらは現に供用されていることが認められる。 また,前記認定のとおり,岩国飛行場の旧滑走路(本件沖合移設前の滑走路)の北側進入表面下に石油コンビナート等災害防止法に基づき特別防災区域に指定された工場群が存在していることから,航空機墜落等の場合に重大な事故につ おり,岩国飛行場の旧滑走路(本件沖合移設前の滑走路)の北側進入表面下に石油コンビナート等災害防止法に基づき特別防災区域に指定された工場群が存在していることから,航空機墜落等の場合に重大な事故につながることが懸念され,また,岩国飛行場が市街地に近接しているため航空機騒音等が発生しているなどの問題が生じていたもので,前記認定の(2)~(4)の経過によれば,本件沖合移設に係る本件埋立事業は,これら航空機墜落事故の回避や騒音被害の軽減を目的として開始されたものと認めるのが相当である。もっとも,前記認定のとおり,在日米軍再編に伴い厚木飛行場からの空母艦載機等の移駐が実施された場合には,騒音値75WECPNLの区域及び騒音値70WECPNL以上の区域がいずれも再編前予測コンターより拡大する旨予測されているなど,当初予測されていたとおりの騒音被害の軽減が図られなくなる余地はあるものの,これにより岩国飛行場周辺における航空機墜落事故の回避や騒音被害の軽減といった本件沖合移設の効果が消滅したとまでは認められない。 以上によれば,本件埋立地を海面に回復することは,物理的に全く不可能とまではいえないものの,本件埋立ての規模,構造,本件埋立地の利用状況,原状回復によって予測される社会的,経済的損失等を総合的 に勘案すれば,社会通念に照らし,もはや本件埋立ての原状回復は法律上不可能であると認めるのが相当である。 (イ) また,公有水面埋立法の建前によれば,国がなす埋立ての場合に埋立承認の効力が消滅しても,国は原状回復義務を負わないと解するのが相当である。すなわち,公有水面埋立法は,国以外の者が行う埋立ての場合には,埋立免許の効力が消滅した場合に埋立権者が原状回復義務を負うことを規定しているのに対し(法35条1項),国がなす埋立ての場合には, ある。すなわち,公有水面埋立法は,国以外の者が行う埋立ての場合には,埋立免許の効力が消滅した場合に埋立権者が原状回復義務を負うことを規定しているのに対し(法35条1項),国がなす埋立ての場合には,法43条3項において前記条項を準用していないから,埋立承認の効力が消滅したとしても国は原状回復義務を負わないとするのが自然な解釈である。 これに対し,原告らは,埋立承認が取り消された場合に国が原状回復義務を負わないなどという解釈は,都道府県知事に埋立承認権限が与えられている法の趣旨を完全に没却する解釈であるから,このような解釈は法令解釈としては取り得ないなどと主張する。 しかし,公有水面埋立法の建前によれば,国がなす埋立ての場合,埋立承認が取り消されて同承認の効力が消滅したとしても,国は法的に原状回復義務を負わないと解するのが相当である。すなわち,まず,国がなす埋立てと国以外の者が行う埋立てについて,公有水面埋立法は,国以外の者が行う埋立ての場合には,法2条1項において「埋立ヲ為サムトスル者ハ都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ」として,埋立権者は当該免許を得ることによりはじめて対象水面を排他的に埋め立てて土地を造成し得る権利を取得するとしているのに対し,国がなす埋立ての場合には,法42条1項において「国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県知事ノ承認ヲ受クヘシ」として,都道府県知事の承認で足りるとしている。この趣旨は,国は,本来的に公有水面を直接排他的に支配する権能を有しているから,国がなす埋立ての場合には,国に本来備わっているこの権限に基づい て埋立てを行うことになるので,国以外の者が行う埋立てには都道府県知事の免許が必要だが,国のなす埋立てにはそれを要しないというべきことになるところ,都道府県知事が海面に対して有する 基づい て埋立てを行うことになるので,国以外の者が行う埋立てには都道府県知事の免許が必要だが,国のなす埋立てにはそれを要しないというべきことになるところ,都道府県知事が海面に対して有する機能管理権との調整上の兼合いから都道府県知事の承認を要することとし,都道府県知事に対し承認基準を満たすか否かの判断権限を与えたことにあると解される。このことは,国以外の者が行う埋立ての場合には,法22条において「埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ遅滞ナク都道府県知事ニ竣功認可ヲ申請スヘシ」(1項),「都道府県知事前項ノ竣功認可ヲ為シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ告示シ且地元市町村長ニ第11条又ハ第13条ノ2第2項ノ規定ニ依リ告示シタル事項及免許条件ヲ記載シタル書面並関係図書ノ写ヲ送付スヘシ」(2項)とし,また,24条1項本文において「第22条2項ノ告示アリタルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ告示ノ日ニ於テ埋立地ノ所有権ヲ取得ス」として,埋立権者は都道府県知事の竣功認可を条件として埋立地の所有権を取得するものであり,仮に竣功認可が得られない場合には埋立権者は埋立地の所有権を取得できないこととされているのに対し,国がなす埋立ての場合には,法42条2項において「埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ当該官庁直ニ都道府県知事ニ之ヲ通知スヘシ」として,単に国から承認権者への通知を規定しているに過ぎず,この通知の日に埋立地の所有権は当然に国に生ずるとされていることからも窺うことができる。 以上のとおり,国がなす埋立ての場合に,法43条3項において法35条1項を準用していない趣旨は,単に,立法当時,国の判断と都道府県知事の判断が相違することが想定されていなかったということにとどまらず,前記のとおりの国以外の者が行う埋立てと国がなす埋立 いて法35条1項を準用していない趣旨は,単に,立法当時,国の判断と都道府県知事の判断が相違することが想定されていなかったということにとどまらず,前記のとおりの国以外の者が行う埋立てと国がなす埋立てとの間の本質的な相違に基づくものといえ,さらに,国がなす埋立ての場合に,竣功通知により埋立地の所有権は当然に国に生ずることとされ,都道府県知事には 竣功の有無に関する何らの検査権限・義務も認められていないことに照らせば,国がなす埋立ての場合,埋立承認が取り消されて同承認の効力が消滅したとしても,国は法的に原状回復義務を負わないと解するのが相当である。 よって,原告らの主張は採用できない。 (ウ) 以上によれば,山口県知事が国に原状回復を命じることもできない以上,仮に,本件処分等の取消によって回復すべき利益として原告らが主張する利益が本件埋立てと関連性を有するものであったとしても,もはや法的効果からみて本件処分等を取り消すことが原告の権利利益の保護救済に資するところもないというべきである。 したがって,本件処分等の取消を求める訴えの利益は存しない。 ウまた,原告らは,本件処分等が取り消された場合に,社会通念上原状回復が困難ないし不可能であることは,事情判決の理由となり得ても,訴えの利益が消滅する理由とはなり得ない旨主張する。 しかし,行政事件訴訟法31条にいう事情判決は,当該訴えが適法なものであり,かつ,処分が違法と判断される場合に,本来は当然請求を認容して処分取消の本案判決がなされるべきものであるものの,特に公共的見地から,請求を棄却することができる旨を定めた制度であるから,あくまでも当該訴えに訴えの利益があること,すなわち処分取消の判決を得ることにより救済目的が現実に達成される可能性のあることを前提とするものと ,請求を棄却することができる旨を定めた制度であるから,あくまでも当該訴えに訴えの利益があること,すなわち処分取消の判決を得ることにより救済目的が現実に達成される可能性のあることを前提とするものと解される。したがって,救済目的が現実に達成される余地がない場合には,そもそも訴えの利益がない不適法な訴えであり,この場合に本案審理をして事情判決をする余地はないというべきである。 これを本件につきみるに,前判示イ(ア)のとおり本件埋立地を海面に回復することは社会通念に照らし法律上不可能であることに加え,前判示イ(イ)のとおり,本件処分等が取り消されたとしても本件埋立地を海面に回 復して原状回復を図ることは法律上不可能である上,そもそも原告らが回復すべき法律上の利益として主張するところは,本件埋立自体によって生ずる環境被害ではなく,本件埋立地の利用によって生ずる環境被害等であるから,本件処分等が違法である場合に違法宣言をしたとしても,これにより原告らの権利利益の保護救済が法律上,何らかの形で図られ得るということもできない。たしかに埋立地の利用による環境汚染並びにこれに対する対策の有無及びその内容等については,都道府県知事の埋立承認処分の際の裁量権行使過程において当然十分に予測のうえ斟酌されるべき問題であって,かかる配慮を著しく欠いた埋立承認処分は,考慮すべき事項を考慮しなかった処分として違法とすべき余地があると解すべきである。しかし,都道府県知事の承認権限は埋立地上に設置される施設等の操業についての監督規制にまで及ぶものではなく,山口県知事は岩国飛行場の航空機の運用に関して何らの差止権限も有していないことに照らせば,事情判決による本件処分等の違法宣言により原告らの権利利益の保護救済が図られる余地はないというべきである。 よって は岩国飛行場の航空機の運用に関して何らの差止権限も有していないことに照らせば,事情判決による本件処分等の違法宣言により原告らの権利利益の保護救済が図られる余地はないというべきである。よって,原告らの主張は理由がない。 第4 結論 以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,本件訴えはいずれも訴えの利益がないから不適法としてこれらを却下すべきである。よって,主文のとおり判決する。 山口地方裁判所第1部 裁判長裁判官山本善彦 裁判官松永晋介 裁判官林﨑由莉子

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