平成19(行コ)229 住民票不記載処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第309号)

裁判年月日・裁判所
平成19年11月5日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文19,036 文字)

- 1 -主文 1審被告の控訴に基づき,原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。 上記取消しに係る部分のうち,(1)処分行政庁が平成17年5月19日付けでした1審原告aの住民票の記載をしない処分の取消請求を棄却し,(2)処分行政庁に対し1審原告aの住民票の作成の義務付けを求める訴えを却下する。 1審原告らの本件控訴をいずれも棄却する。 訴訟費用は1審原告aと1審被告との関係では第1,2審とも1審原告aの負担とし,1審原告b及び同cと1審被告との関係では控訴費用は同原告らの負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求める裁判 控訴の趣旨(1)1審原告らア原判決中,1審原告ら敗訴部分を取り消す。 イ1審原告b及び同c(以下併せて「1審原告父母」ということがある。)の訴えに基づき,処分行政庁が平成17年5月19日付けでした1審原告aの住民票の記載をしない処分を取り消す。 ウ1審原告父母の訴えに基づき,処分行政庁は,1審原告aの住民票を作成せよ。 エ1審被告は,1審原告aに対し20万円,1審原告父母に対し,各10万円及び上記各金員に対する平成17年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)1審被告- 2 -主文1,2項同旨 控訴の趣旨に対する答弁(1)1審原告a1審被告の本件控訴を棄却する。 (2)1審被告主文3項同旨第2事案の概要 事案の要旨(1)本件は,1審原告aの住民票の記載の申し出に対する世田谷区長のした不記載処分をめぐる紛争である。すなわち,1審原告cが同aの父としてした同aの出生届出(以下「本件出生届」ということがある。)が法定の手続違背を理由に不受理(以下「本件不受理処分」ということがある。)となり,この届出がないことを理由に世田谷区長によっ aの父としてした同aの出生届出(以下「本件出生届」ということがある。)が法定の手続違背を理由に不受理(以下「本件不受理処分」ということがある。)となり,この届出がないことを理由に世田谷区長によって1審原告aについてされた住民票(以下「本件住民票」という。)の記載をしない処分(以下「本件処分」という。)をされたことにつき,同a及びその両親である同父母が,1審被告に対し,住民基本台帳法(以下「法」という。)8条,憲法14条違反等の違法を理由に,本件処分の取消しを求める(以下「本件処分取消しの訴え」という。)とともに,本件住民票の作成の義務付けを求め(以下「本件義務付けの訴え」という。),さらに,本件処分により被った精神的損害につき,国家賠償法1条1項に基づき慰謝料(1審原告aにつき20万円,同父母について各10万円)及びこれらに対する平成17年5月19日(本件処分日)から各支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2)原審は,ア1審原告らの本件処分取消しの訴えについて,1審原告aの両親である同父母は本件処分の取消しを求める法律上の利益を有しているとはいえないから原告適格を有しないとして,その訴えを却下したが,同a- 3 -の同訴えについては,世田谷区長(本件の処分行政庁。以下便宜「世田谷区長」という。)は,本件処分時において,本件住民票を記載すべきであったにもかかわらず,形式的に出生届が受理されていないことを根拠として本件処分をしたことは,同区長がその裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって違法であるとして,本件処分を取り消し,イ1審原告らの本件義務付けの訴えについては,1審原告父母については上記アにおけると同様に原告適格を欠くことを理由に同訴えを却下したが,同aの同訴えについては, であるとして,本件処分を取り消し,イ1審原告らの本件義務付けの訴えについては,1審原告父母については上記アにおけると同様に原告適格を欠くことを理由に同訴えを却下したが,同aの同訴えについては,世田谷区長に対し,本件住民票の作成をすべき旨を命ずるのが相当であるとして,これを認容し,ウ1審原告らの慰謝料請求については,本件処分に至った事実経過に照らすと,世田谷区長に国家賠償法上の違法があるということはできないとして,その請求をいずれも棄却した。 (3)1審原告ら及び1審被告は,それぞれ各敗訴部分に係る原審の認定判断を不服として本件控訴を提起した。 出生届出から住民票記載に至る法律上の手続過程戸籍法,同法施行令,法及び同法施行令(以下「施行令」という。)を関係法規として,以下の手続が定められている。 (1)出生届の手続ア出生の届書には,①子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別,②出生の年月日時分及び場所,③父母の氏名及び本籍を記載しなければならないと定められている(戸籍法49条2項)。 イ子の出生には罰則をもって届出義務が課されている(戸籍法52条,120条)ところ,本件のごとく嫡出でない子の出生の場合の届出義務者は第1に母(同法52条2項),次いでその同居人(同条3項第1),出産に立ち会った医師,助産師又はその他の者(同項第2)と定められている。 ウ1審被告は,上記ア,イに従って記載事項を設けた様式の出生届書を作成して届出事務に当たっている。 - 4 -(2)住民票の記載手続ア住民票の記載手続については,法8条が「住民票の記載,・・・は,・・・政令で定めるところにより,この法律の規定する届出に基づき,又は職権で行うものとする。」と規定している。 これを受けて,施行令11条は,上記法の規定による届出に基づき記 住民票の記載,・・・は,・・・政令で定めるところにより,この法律の規定する届出に基づき,又は職権で行うものとする。」と規定している。 これを受けて,施行令11条は,上記法の規定による届出に基づき記載すなわち転入届(法22条),転居届(法23条),転出届(法24条)及び世帯変更届(法25条)があったときの住民票の記載について規定し,これ以外の職権により住民票を記載する場合については,施行令12条1項が法の規定による届出に基づき住民票の記載等をすべき場合の職権記載について,同条2項がそれ以外の戸籍に関する届書を受理した場合(同項1号)等の職権記載について規定する。 したがって,市町村長は,出生届を受理した場合には,施行令12条2項1号(戸籍に関する届書の受理)に該当するものとして,職権で住民票に同aの記載をしなければならない。 イ1審被告における上記手続を具体的にみると次のとおりである。 1審被告内の各総合支所地域振興課戸籍係に出生届が提出され,受理決定がされると,法9条2項により住民票記載事項変更通知が作成され,生活文化部地域窓口調整住民票集中管理係(以下「住民票集中管理係」という。)に送付される。 住民票集中管理係は,住民票記載事項変更通知を受理した後,出生による住民票の職権記載入力の処理を行う。そして,住民票集中管理係は住民票コード通知票を当該出生により職権記載された者宛てに送付することにより上記手続は完了する。 (弁論の全趣旨) 前提事実証拠(末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,前提事実として次の- 5 -とおり認められる。 (1)1審原告らの身分関係1審原告b(昭和▲年▲月▲日生)と同c(昭和▲年▲月▲日生)は,婚姻届出をしないまま,平成11年から事実上の夫婦として世田谷区内で共同生活をしており,同所において 。 (1)1審原告らの身分関係1審原告b(昭和▲年▲月▲日生)と同c(昭和▲年▲月▲日生)は,婚姻届出をしないまま,平成11年から事実上の夫婦として世田谷区内で共同生活をしており,同所において両名の間の子である長女のd(平成▲年▲月▲日生。)と二女の1審原告a(平成▲年▲月▲日生)を監護養育している(甲11ないし14)。 (2)1審原告aの出生届不受理の経緯ア1審原告cは,平成▲年▲月▲日,同aにつき胎児認知届を提出し千葉県我孫子市長に受理されていたところ,同aの出生後の同年4月11日,世田谷区長に対し所定の出生届用紙を用いてその出生届の手続に及んだ。 両親が事実婚である1審原告aは法律上非嫡出子となるが,かねてこれを差別的表記と考える同cはこれを強制されることを回避するため,あえて上記用紙の「父母との続き柄」欄に何ら記載せず,届出人として同cの住所,氏名等を記載し,署名,押印の上,「届出人」欄の「父」欄にレ印を記載し,その他の必要な事項を記載した出生届を作成し,出生証明書等を添付してこれを提出しようとした。 世田谷区長は,空欄の「父母との続き柄」欄及び「届出人」欄を「父」とした点の補正を求めたところ,1審原告cがこれに応じず,同区長側から呈示された妥協方策としてのいわゆる付せん処理(父母との続き柄を記載しないままであっても,届出書のその余の記載事項から添付の出生証明書の本人と届出書の本人が同一であることが判断できれば,その認定事項(例えば,父母との続き柄中,父母との続き柄を「嫡出でない子・女」と認める等)を記載した付せんを届出書に貼付するという内部処理をして受理する方法。dについてはこの処理がされている。)による対応も拒否したため,当該届出を受理しなかった。(甲11,12,15,37,乙- 6 -8)イ1審原告cは, 付するという内部処理をして受理する方法。dについてはこの処理がされている。)による対応も拒否したため,当該届出を受理しなかった。(甲11,12,15,37,乙- 6 -8)イ1審原告cは,家事審判法9条2項,戸籍法118条に基づき,平成17年6月9日,東京家庭裁判所に対し上記アの不受理処分(本件不受理処分)の取消し及び同aの出生届の受理を求めて不服申立てをしたが,同裁判所は同年12月2日,上記不受理処分に違法性がないとして,同cの上記不服申立てを却下する審判をした(甲17,18)。 ウ1審原告cは,平成17年12月19日,上記審判を不服として抗告したが,東京高等裁判所は平成18年1月30日,これを棄却する決定をした(甲19,20)。 エ1審原告cは,平成18年2月5日付けで,最高裁判所に対し上記抗告棄却決定には憲法違反,最高裁判所判例違反があるとして特別抗告に及んだが,最高裁判所は同年9月8日,原決定の単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであるとして,特別抗告事由に該当しないことを理由に,上記特別抗告を棄却する決定をした(甲21ないし23)。 (3)1審原告aの住民票不記載の経緯ア1審原告cは,上記の出生届が不受理とされた後の平成17年5月19日,1審被告α総合支所において,世田谷区長に対し,同aの住民票の記載をするよう申出をした。世田谷区長は,同日,1審原告aの出生届が受理されていないことを理由に同aの住民票の記載をしないこととした(本件処分)(甲3,4)。 イ1審原告父母は,その後も世田谷区長に対し,同aの住民票の記載を行うよう求めたが,受け入れられないので,平成17年7月11日,世田谷区長に対して本件処分の異議申立てをした。しかし,世田谷区長は,同年8月30日,「本件においては,出生届が提出されていな の記載を行うよう求めたが,受け入れられないので,平成17年7月11日,世田谷区長に対して本件処分の異議申立てをした。しかし,世田谷区長は,同年8月30日,「本件においては,出生届が提出されていないことから,処分庁は,住民票への記載を行わなかったものである。」,「出生届が受理されていない者の住民票の取扱については,行政実例(平成元.12.2- 7 -8自治振第98号兵庫県総務部長あて回答)があり,婚姻中に婚姻外の男との間に出生した子の出生届が受理に至らない件について,施行令第12条第2項第1号の規定に従い,出生届を受理した後に職権で子に係る住民票の記載を行う扱いを相当とするとされている。」として,上記異議申立てを棄却する決定をした。(甲1ないし4)ウ1審原告父母は,平成17年9月30日,東京都知事に対し,本件処分の取消し,同aの住民票の記載及び上記イの決定の取消しを求めて審査請求をしたが,東京都知事は同年12月27日上記審査請求のうち同aの住民票の記載及び上記イの決定の取消しを求めた部分を却下し,その余の審査請求を棄却する裁決をした(甲5,8)。 エ1審原告らは,平成18年6月26日,本件訴えを提起した。 なお,1審被告の世田谷区においては,住民票の世帯主との続柄欄は,世帯主の子であれば,嫡出性の有無にかかわらず,すべて「子」と記載されることになる。 争点及び争点に関する当事者の主張(1)1審原告父母の原告適格について(1審原告父母)本件住民票が記載されない場合,1審原告aの諸手続において家族関係等の確認が必要となるが,この不利益は市民生活上看過できない負担である。 そして家族関係の確認は,1審原告aのみならず同父母の日常生活上の利益と直結しており,本件処分が及ぼす不利益の排除を求めることは,同父母としての固有の利益で 利益は市民生活上看過できない負担である。 そして家族関係の確認は,1審原告aのみならず同父母の日常生活上の利益と直結しており,本件処分が及ぼす不利益の排除を求めることは,同父母としての固有の利益であるから,本件処分取消しの訴え及び本件義務付けの訴えにおいて同父母に原告適格が認められるべきである。 (2)本件処分について(1審被告)ア住民票の記載手続は前記のとおりであり,法8条の規定を受け,まず施- 8 -行令11条は,法の規定による届出(転入届,転居届,転出届,世帯変更届)があった場合の住民票の記載について規定している。そして,これ以外の職権によって住民票を記載する場合については,施行令12条1項が法の規定による届出に基づき住民票の記載等をすべき場合の職権記載について,同条2項がそれ以外の戸籍に関する届書を受理した場合等の職権記載についてそれぞれ規定している。 世田谷区長は,本件出生届を受理した場合,住民票に1審原告aの記載をしなければならないが,本件では,同cによる本件住民票記載の申し出の際,本件出生届が受理されていなかったため,同aにつき施行令12条2項による住民票の記載を行わなかったものである。したがって,本件処分は適法である。 イまた,法においては,戸籍に関する事項については戸籍に関する届出等に基づいて職権記載を行うという仕組みになっていることから,その届出をしていない者について職権調査により職権記載を行うということは制度上想定されていないと考えられる。また,戸籍に関する届出がなされなければ住民票の記載事項が確定しないと考えられる。したがって,出生届未済の者については同届出を待って住民票の記載をすべきであるとされているのである。 したがって,世田谷区長が1審原告aの居住を確認したとしても,そのことから住民票の職権記 られる。したがって,出生届未済の者については同届出を待って住民票の記載をすべきであるとされているのである。 したがって,世田谷区長が1審原告aの居住を確認したとしても,そのことから住民票の職権記載をする義務があるということはできない。 ウ(ア)市町村長は,その市町村の区域内に本籍を有する者について,その戸籍を単位として戸籍の附票を作成しなければならないとされている(法16条1項,17条)。この附票を媒介として戸籍の記載と住民票の記載を相互に関連させ,住民票の記載を一元的に把握し,両者の記載を一致させることにより,住民に関する記録の正確性を確保する仕組みが採られている。そして,行政実務上も全国的に戸籍と住民票の記載の- 9 -連動を前提とした事務処理システムが構築されているのが通例であり,1審被告においても同様である。このようなことからすれば,出生の届出がされていない者の住民票の記載は同届出を待ってから行う方法を採ることが,最も合理的であり,かつ,住民票の記載を最も正確なものとするものである。また,この仕組みこそが住民票の記載の正確性を最終的に担保するものであり,各種行政事務処理の便益の観点からも必須のものである。 そうすると,その例外は容易に認められるべきではない。したがって,仮に,出生の届出がされず,戸籍の記載がないにもかかわらず,職権による住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者によって酷といえるような極めて例外的な場合に限られるべきである。 (イ)本件において,1審原告aの出生の届出がされていないのは,1審原告aの父母である1審原告父母の信条に基づくものである。 義務者によって酷といえるような極めて例外的な場合に限られるべきである。 (イ)本件において,1審原告aの出生の届出がされていないのは,1審原告aの父母である1審原告父母の信条に基づくものである。本件は届出義務者たる同父母が容易に届出ができるにもかかわらず,同父母が,その結果生じる事態を了知した上で戸籍法によって義務付けられている出生の届出を意図的に懈怠しているものである。 本件住民票に記載がされない場合に1審原告aが不利益を被る可能性は否定できないが,それは,①諸手続について別途申立てが必要となること,②選挙人名簿に登録されないことであるところ,①については,その負担は1審原告aにとって市民生活上看過できない程度の負担ということはできないし,②については,現実に問題になるのは十数年後のことであり,未だ問題の発生が現実化しているとはいえない。 以上のことからすれば,本件は,出生の届出がないにもかかわらず,- 10 -住民票の記載が認められるべき例外的な場合には当たらない。したがって,本件処分は適法である。 (1審原告ら)本件処分は下記のとおり違法である。 ア住民基本台帳法違反(ア)住民基本台帳制度は,各自治体において,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する届出等の簡素化を図り,併せて住民に関する記録の適正を図るために設けられた制度であり(法1条),市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならず(法3条1項),その住民につき,住民票を世帯ごとに編成して住民基本台帳を作成する義務を負い(法6条1項),だからこそ,法8条においては,住民票の記載等を届出のほか職権によってもなし得 ければならず(法3条1項),その住民につき,住民票を世帯ごとに編成して住民基本台帳を作成する義務を負い(法6条1項),だからこそ,法8条においては,住民票の記載等を届出のほか職権によってもなし得ると定めているのである。また,施行令12条1項が,法によれば,市町村長は,住民票の記載等をすべき場合において,当該届出がないことを知ったときは当該記載等をすべき事実を確認して,職権で住民票の記載をしなければならないとして市町村長の義務を明言している。さらに同条3項は,市町村長において,住民基本台帳又は住民票に脱漏若しくは誤載等があった場合に,当該事実を確認する義務があり,職権で住民票等の記載等をしなければならないと定めている。したがって,居住の実態があれば,市町村長はこれを住民票に記載する義務を負うのであり,居住の実態があるにもかかわらずこれを住民票に記載しないことが許されるものではない。住民基本台帳記載の要件は,当該市町村に住所を定めた実態があるかどうかということのみであり,出生届の有無を要件とするものではない。 そうすると,世田谷区内に居住実態がある1審原告aについて,出生- 11 -届の提出の有無にかかわらず,世田谷区長には即時住民票の記載を行う責務があるといえる。 また,世田谷区住民基本台帳事務取扱規程も,世田谷区長には,世田谷区の区域内に住所を有する者から住民票記載の申し出があった場合や,住民票記載漏れがあった場合には住民票を記載すべき旨,また,その責務を果たすための実態調査を行う義務を定めているのであるから,本件処分は上記事務取扱規程にも違反するものである。 (イ)施行令12条各項の文言にかんがみると,これらは市町村長が職権で住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合に職権記載することを禁 にも違反するものである。 (イ)施行令12条各項の文言にかんがみると,これらは市町村長が職権で住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合に職権記載することを禁止しているわけではない。また,出生した子の住民票記載がされない場合には,当該子に後記(3)(1審原告らの主張)において述べる不利益が生じる。 そうであるとすれば,市町村長は,出生届が受理されておらず,その戸籍が作成されていないときでも,当該出生届出をする者が同届出に係る住民票の記載をあえて望み,施行令12条2項1号の趣旨に反しないよう,市町村長に対して,住民票記載事項については充足している出生届の提出行為があり,当該出生届出に係る住民の住民票に記載すべき事項の正確性を添付資料等によって容易に確認できる状況にある場合には,当該出生届出に係る住民票を作成する必要があるというべきである。 本件は,上記場合に該当するのであるから,世田谷区長は,本件住民票を作成すべきなのであり,したがって,本件処分は法に反する違法なものである。 イ地方自治法違反地方自治法13条の2は「市町村は,別に法律の定めるところにより,その住民につき,住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない。」と定めているところ,上記「法律」こそが法であるこ- 12 -とに疑いはない。 1審原告aについて,住所地を確定した上で,世田谷区長が児童手当,乳幼児医療等の支給を行っていることからすれば,同原告の民法22条及び地方自治法10条1項にいう住所は確定されている。それはすなわち,1審原告aが地方自治法上,世田谷区の住民たる地位にあり「その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し」ている(同法10条2項)ことにほかならない。 そうであるならば,世田 ち,1審原告aが地方自治法上,世田谷区の住民たる地位にあり「その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し」ている(同法10条2項)ことにほかならない。 そうであるならば,世田谷区長は,1審原告aについて,地方自治法13条の2に定める「住民たる地位に関する正確な記録」を整備しなければならない。その記録の方法を定めた法及び施行令は,出生届未提出の者の住民票記載を禁止してはいない。 よって,世田谷区長は,地方自治法13条の2が定める責務を免れることはできないのであって,本件処分が地方自治法に違反することは明らかである。 ウ憲法14条1項違反等(ア)憲法14条1項違反本件処分は,出生届を国の指示通りの様式で提出しない者については住民として認めず,住民としての基本的権利を与えないというに等しく,出生届を様式に従って提出した者とそうでない者を差別するものであり,法の下の平等に反するものである。 本件処分は,1審原告aが住民登録されていない状況を世田谷区長が解消しないことであり,これは社会的身分による同原告に対する差別である。 東京都練馬区,三鷹市及び府中市等では,出生届未済のまま住民票記載が行われている。これらの自治体で住民票を有するものが世田谷区に転入した場合に住民登録しなければならないことは明白である。そうす- 13 -ると,本件処分によって,同一自治体内に,同一事由で戸籍の記載がないにもかかわらず,一方は住民登録され,他方はこれを拒否されるという事態が生じる可能性があり,このような事態が生じることもまた法の下の平等に反する。 したがって,本件処分は,憲法14条1項に違反する。 (イ)国際人権規約違反等本件処分が出生届出における「嫡出でない子」という差別記載を拒否したことによる出生届不受理を理由としていること 反する。 したがって,本件処分は,憲法14条1項に違反する。 (イ)国際人権規約違反等本件処分が出生届出における「嫡出でない子」という差別記載を拒否したことによる出生届不受理を理由としていることなどからすれば,本件処分は,国際人権A規約2条1,同B規約24条1,子どもの権利条約2条1,世界人権宣言25条の2及び世田谷区子ども条例に違反する。 (3)本件住民票作成の義務付けについて(1審原告ら)本件住民票が作成されないことにより,1審原告らは下記のような重大な損害を被る。したがって,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の2第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を満たすものである。 すなわち,住民登録は,就学のほかに,転出証明書,選挙,国民健康保険,年金などの事務の基礎とされているし,子の住民登録が要件とされている事項として,私立幼稚園児に対する補助金,印鑑登録,区立小中学校の「指定校変更」があり,住民票が要求される場合として,自動車運転免許証の取得,都営住宅への入居等の諸手続があるのであり,1審原告らは,これらの諸手続を行う場面で,手続を行えない,若しくは行えたとしても著しい負担が課せられるのであって重大な損害が生じるというべきである。 (1審被告)本件義務付けの訴えは,上記のとおり「重大な損害を生ずるおそれ」がある等の訴訟要件を満たす必要があるところ,住民登録ないし住民票が必要とされる場面において,それがなくてもこれらがある者と同じ扱いがされる場- 14 -合も多く,1審原告らに重大な損害が生ずるおそれはない。 また,前記(2)において主張したとおり,住民票と戸籍の連動を無視して安易に住民票の記載をすることは極めて例外的な場合にしか認められるべきではない。そして,1審原告らには,本件義務付けの訴えと実質的に裏腹の (2)において主張したとおり,住民票と戸籍の連動を無視して安易に住民票の記載をすることは極めて例外的な場合にしか認められるべきではない。そして,1審原告らには,本件義務付けの訴えと実質的に裏腹の関係にある本件処分取消しの訴えが認容される程度の重大な損害はないというべきである。したがって,本件義務付けの訴えは,その要件である「重大な損害を生ずるおそれ」を欠くものであって,同訴えは不適法であり却下されるべきである。 (4)慰謝料請求について(1審原告ら)本件処分によって,1審原告らにおいては,今後同aが年齢を重ね,就園・就学等様々な手続を行おうとするとき,本件処分が住民サービスの支給制限につながらないかという不安が常につきまとう。また,本件の経過をみると,1審被告の主張は住民票記載の条件として,国連勧告をして「差別的用語」として指摘されている「嫡出でない子」という用語の使用を1審原告らに強制していることにほかならない。 これらの1審被告の行為によって,1審原告らは著しい精神的苦痛を被っているのであり,その苦痛に対する慰謝料としては,1審原告aについて20万円,同父母について各10万円が相当である。 (1審被告)本件処分に違法はなく,1審被告に何ら国家賠償法上の責任はない。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,1審原告父母に本件処分取消し及び本件義務付けの各訴えにおける原告適格は認められず,また,世田谷区長による本件処分は適法であるから,1審原告aの本件処分取消請求は理由がなく,同原告の本件義務付けの訴えは不適法であり,1審原告らの各慰謝料請求はいずれも理由がないものと判- 15 -断する。その理由は以下のとおりである。 1審原告父母の原告適格について当裁判所も本件処分取消し及び本件義務付けの各訴えにおいて,1審原告父母にはい 求はいずれも理由がないものと判- 15 -断する。その理由は以下のとおりである。 1審原告父母の原告適格について当裁判所も本件処分取消し及び本件義務付けの各訴えにおいて,1審原告父母にはいずれも原告適格を認めることはできないと判断する。その理由は,原判決説示(同7頁16行目から8頁8行目まで及び14頁4行目から13行目まで)のとおりであるからこれを引用する。 本件処分について(1)住民票記載に関する法律上の手続規定は前記したとおりである。これに基づき考察すると,住民基本台帳に係る市町村長の責務(法3条,6条)である住民票の記載に関し,法8条は「住民票の記載,消除又は記載の修正は,第30条の2第1項及び第2項,第30条の3第3項並びに第30条の4の規定(住民票コードの記載)によるほか,政令で定めるところにより,この法律の規定による届出に基づき,又は職権で行うものとする。」と定め,上記「政令で定めるところにより,・・・職権」で住民票を記載する場合について,施行令12条1項は「市町村長は,法の規定による届出に基づき住民票の記載等をすべき場合において,当該届出がないことを知ったときは,当該記載等をすべき事実を確認して,職権で,第7条から第10条までの規定による住民票の記載等をしなければならない。」と,同条2項本文は「市町村長は,次に掲げる場合において,第7条から第10条までの規定により住民票の記載等をすべき事由に該当するときは,職権で,これらの規定による住民票の記載等をしなければならない。」と,同条2項1号は「戸籍に関する届書,申請書その他の書類を受理し,若しくは職権で戸籍の記載若しくは記録をしたとき,又は法第9条第2項の規定による通知を受けたとき。」と定めている。 上記各規定からすれば,子が出生したことにより住民票の記載がさ その他の書類を受理し,若しくは職権で戸籍の記載若しくは記録をしたとき,又は法第9条第2項の規定による通知を受けたとき。」と定めている。 上記各規定からすれば,子が出生したことにより住民票の記載がされるべき場合については,施行令12条2項1号がその手続を定めているもので- 16 -あって,市町村長が出生届を受理することにより,その後の手続は職権によって住民票に出生した子の記載をすることとされているものと解することができる。したがって,住民票の記載につきこれが世田谷区長の裁量事項であるかのように述べる1審原告aの見解は失当といわなければならない。 本件において,世田谷区長は,上記定めにしたがって,本件出生届が受理されていないことを理由として,本件住民票を記載しないという本件処分をしたものであり,本件不受理処分が違法なものでないことは確定しているのである(前提事実)から,本件処分理由に違法な点はなく,また,12条各項以外の場合において職権記載することは予定されていないというべきであるから,本件処分が法及び施行令の諸規定に反する違法なものと認めることはできない。 なお,この点について1審原告aの主張は多岐にわたっているので,以下(2)ないし(4)にこれらについて検討を加え,いずれも理由がないことを明らかにしておく。 (2)住民基本台帳法違反の主張についてア1審原告aは,法1条,3条1項及び5条の定めがあって,法8条が職権で住民票の記載を行うことを定めているのであり,施行令12条1項の定め及び同条3項が「市町村長は,住民基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に誤記(住民票コードに係る記載漏れを除く。)があることを知ったときは,当該事実を確認して,職権で,住民票の記載等をしなければならない。」と定めていることからすれば,住民に居住実 があり,又は住民票に誤記(住民票コードに係る記載漏れを除く。)があることを知ったときは,当該事実を確認して,職権で,住民票の記載等をしなければならない。」と定めていることからすれば,住民に居住実態があれば,市町村長は,これを住民票に記載する義務を負うのであり,この義務に違背する本件処分は違法である旨主張する。しかし,法1条は同法の目的を,法3条1項は市町村長の責務を,法5条は市町村は住民基本台帳を備えるといった一般的な事項を定めているものにすぎないし,施行令12条3項は住民票に脱漏,誤載等があった場合のことを定めているのであっ- 17 -て,法8条が職権で住民票の記載を行うことがあることを定めていることの法解釈は前記のとおりであるから,上記諸規定から,市町村長が,一般的に住民票記載の裁量権限を有し,居住実態のある住民が存する場合には,職権でこのことを住民票に記載すべき法的義務を負っていると解することはできない。また,世田谷区住民基本台帳取扱規程に1審原告aが主張するような定めがあるとしても,同取扱規程は,法及び施行令に定められた事項の具体的取扱を明確にしたものと考えられるから,本件において,当然に住民票へ記載すべき義務があることを認めるべき根拠規定となるものではない。 イまた,1審原告aは,施行令12条各項の文言にかんがみると,これらは市町村長が職権で住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合に職権記載することを禁止しているわけではなく,本件住民票の記載がされないとすると1審原告aに様々な不利益が生じるから,本件事情の下においては,世田谷区長には本件住民票を記載すべき義務がある旨主張するが,これも理由がない。 施行令12条各項は市町村長が職権で住民票を記載しなければならない場合を列挙してい 生じるから,本件事情の下においては,世田谷区長には本件住民票を記載すべき義務がある旨主張するが,これも理由がない。 施行令12条各項は市町村長が職権で住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合に職権記載することを禁止していない旨の主張は,前記の解釈として失当であり採用できない。 このことは,法においては,上記のとおり,戸籍に関する事項については,戸籍に関する届出等に基づいて職権記載を行うこととなっていること,また,市町村長は,市町村の区域内に本籍を有する者につき,その戸籍を単位として,戸籍の附票を作成しなければならないとされ(法16条1項),この附票には,戸籍の表示,氏名,住所,住所を定めた年月日を記載することになっており(法17条),これを媒介として戸籍の記載と住民票の記載を相互に関連させ,住民票の記載を一元的に把握し,両者の記載を一致させることにより,住民に関する記載の正確性を確保することとされて- 18 -いること,また,行政実務上も全国的に戸籍と住民票の記載の連動を前提とした事務処理システムが構築されているのが通常であり,1審被告においても同様のシステムを導入している(弁論の全趣旨)こと,また,住民票は,住民に関する記録として様々な手続に広く利用される書類であるから,各市町村が独自の法令解釈に基づいて区々な事務処理をすることは望ましいとはいえず,できる限り統一的に記録が行われるべきものであるともいえる(最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決・裁判集民事191号27頁参照)ことなどからしても明らかである。 そうすると,子が無戸籍の状態にある場合において,前記の規定にもかかわらず,なお,職権で住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは極めて例外的な場合に限られるというべきであり,せいぜい である。 そうすると,子が無戸籍の状態にある場合において,前記の規定にもかかわらず,なお,職権で住民票の記載をすべき場合があるとしても,それは極めて例外的な場合に限られるというべきであり,せいぜい,1審被告が主張するように,子が出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合で,かつ,戸籍法によって義務付けられた出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に限定されるというべきである。 これを本件についてみると,出生の届出義務を負うのは親権者である母ないしその同居者である父(戸籍法52条2項,3項)であるが,本件において出生の届出がされていないのは,前記認定事実によれば,1審原告父母の個人的信条に基づくものであり,他に同aが住民票に記載されるのに何らの支障もないといえるのである。そして,その信条とは,出生届の「父母との続柄」欄の記入が子を「嫡出子」と「嫡出でない子」と分けて表記すること自体が婚外子に対する差別に当たるというものである。しかし,非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定める規定についてさえ,民法が法律婚主義を採用していることなどからすれば,合理的理由のない差別とはいえず,憲法14条1項に反するものとはいえない(最高裁平成7年7月5日大法廷判決・民集49巻7号1789頁参照)。本件- 19 -は,届出義務者である1審原告父母が届出をしようと思えば容易にできる状況にある,すなわち法律上届出をすることに支障はないにもかかわらず,その信条によって法が何人に対しても予定している手続をあえて拒否し届出を懈怠しているものである。したがって,本件において,出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に当たるとはいえないというべきであるから,上記例外的に あえて拒否し届出を懈怠しているものである。したがって,本件において,出生届の提出を求めることが社会通念上,届出義務者に期待できないような場合に当たるとはいえないというべきであるから,上記例外的に許される場合として裁量により職権で住民票の記載を認めるべき場合に当たるとはいえない。 また,後記(4)に述べるところからして,出生の届出を行うことによって,届出義務者や子が重大な不利益を被る場合にも該当しない(1審原告a(法定代理人としての1審原告母)は本件住民票の記載がされないことによって同aに不利益が生じる旨主張するのであるが,仮に不利益があるとしても,前記のとおりその不利益は専ら同aの父母である1審原告父母の信条によるものであり,同原告らに思想信条の自由があることはもちろんであるが,その信条に基づいて行った本件不受理処分の適法性は前記のとおり既に確定しているのである。このような状況の下で,なお1審原告a(現在2歳)の無戸籍状態を継続させることが,社会的存在としての同原告の長い将来にわたって求められる健全な成長に資するものといえるのか疑問なしとしない。)。 以上の次第であるから,本件処分は適法である。なお,仮に職権により記載すべきかどうかについて,世田谷区長に一定の裁量があるとしても,前記したところからして,同区長に裁量権の範囲を逸脱,濫用した違法があるといえないことは明らかである。 (3)地方自治法違反の主張について次に,1審原告aは,同原告について,住所地を確定した上で,世田谷区長が児童手当等の支給を行っていることからすれば,同原告の民法22条及び地方自治法10条1項にいう住所は確定されている。それはすなわち,1- 20 -審原告aが地方自治法上,世田谷区の住民たる地位にあり,世田谷区長は,同法13条の2が定める責務を免れること 2条及び地方自治法10条1項にいう住所は確定されている。それはすなわち,1- 20 -審原告aが地方自治法上,世田谷区の住民たる地位にあり,世田谷区長は,同法13条の2が定める責務を免れることはできないのであって,これに反する本件処分が地方自治法に違反することは明らかである旨主張する。 しかし,同法13条の2は,自治行政の基礎となる住民の記録に関する市町村の責務に関する基本を定めた規定であって,同条を根拠として定められた法律が法である。そして,本件処分が法に反しないことは前記のとおりであり,したがって,本件処分が地方自治法13条の2に反するということもできない。また,1審原告aが世田谷区長から児童手当等の支給を受けているとしても,それは前記のとおり,住民票が作成されていない場合であっても福祉行政の一環として一定の条件の下に支給しているといえるのであって,そのことから直ちに世田谷区長が同aの住民登録をすべき義務があるとはいえない。この点もまた,本件処分を違法とする理由となるものではない。 (4)憲法14条1項違反等の主張についてさらに,1審原告aは,本件処分は,出生届を様式に従って提出した者とそうでない者を差別するものであり,法の下の平等に反するものである旨主張するが,前記のとおり,嫡出子と嫡出でない子の別は,法律婚主義を採用していることによるものであって,そのことが直ちに法の下の平等に反するとはいえないし,本件において,結果として1審原告aが主張する結果となったとしても,そのことが憲法14条1項に違反するものでないことは明らかである。また,そもそも本件処分は,本件不受理処分を前提としているところ,本件不受理処分が違法なものでないことは確定しているところである。 また,1審原告aは,本件処分は,同aが住民登録されていない状況を世 た,そもそも本件処分は,本件不受理処分を前提としているところ,本件不受理処分が違法なものでないことは確定しているところである。 また,1審原告aは,本件処分は,同aが住民登録されていない状況を世田谷区長が解消しないことであり,これは社会的身分による同原告に対する差別であるが,同主張を採用し得ないことは前記したところから明らかである。 - 21 -さらに,1審原告aは,出生届未済のまま住民票記載が行われている自治体が存するところ,これら者が世田谷区に転入した場合に住民登録しなければならないことは明白であり,そうすると,本件処分によって,同一自治体内に,同一事由で戸籍の記載がないにもかかわらず,一方は住民登録され,他方はこれを拒否されるという事態が生じるの可能性があり,このような事態が生じることもまた法の下の平等に反する旨主張する。今後1審原告aが主張するような事態が生じるかどうか必ずしも明らかではないが,そのような事態が生じたとしても,それは,各自治体が法の枠内で独自に行政を行った結果なのであって,そのような事態が生じたからといって法の下の平等に違反するということはできない。 1審原告aは,本件処分は,国際人権A規約2条1,同B規約24条1,子どもの権利条約2条1,世界人権宣言25条の2及び世田谷区子ども条例に違反する違法なものである旨主張するが,何らこれらに違反,抵触するものではなく,上記主張は採用することができない。 本件義務付けの訴えについて1審原告aは,本件処分が違法であって取り消されるべきことを前提として,本件住民票の作成の義務付けを求めている。しかし,本件住民票の記載をしない本件処分は前記のとおり適法なものと認められるのであり,是正すべき違法状態が存在しないのであるから,上記義務付けを求める訴えに理由のないことは明 務付けを求めている。しかし,本件住民票の記載をしない本件処分は前記のとおり適法なものと認められるのであり,是正すべき違法状態が存在しないのであるから,上記義務付けを求める訴えに理由のないことは明らかであるといわなければならない。 なお,義務付け訴訟は,「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり」,かつ,「その損害を避けるために他に適当な方法がないとき」に限り認められるものである(行訴法37条の2第1項)ところ,1審原告aは,住民登録は,就学のほかに,転出証明書,選挙,国民健康保険,年金などの事務の基礎とされているし,子の住民登録が要件とされている事項として,私立幼稚園児に対する補助金,印鑑登録,区立小中学校の「指定校変- 22 -更」があり,住民票が要求される場合として,自動車運転免許証の取得,都営住宅への入居等の諸手続があるところ,住民票が作成されないことによりこれらの諸手続に支障を生じることが重大な損害を生ずるおそれであると主張する。 しかし,上記のうち,選挙権の問題については,1審原告aが現在2歳であってその不利益が現実化しているものではないからこの点で重大な損害は生じていないし,その他の点については,証拠(乙1ないし6,9,10,13ないし20)及び弁論の全趣旨によれば,住民登録あるいは住民票がなくても手続において煩瑣な点があり得るとしても,これらがある者と同じ扱いがされる場合が多いと認められるのであるから,1審原告aに上記訴訟要件としての「重大な損害を生ずるおそれ」があるとまではいえない。また,1審原告aが上記損害を回避するために法律上の支障がないことは前記したところから明らかであり,したがって,本件義務付けの訴えを認める余地はないというべきである。 そうすると,本件義務付けの訴えは不適法なものというべき 損害を回避するために法律上の支障がないことは前記したところから明らかであり,したがって,本件義務付けの訴えを認める余地はないというべきである。 そうすると,本件義務付けの訴えは不適法なものというべきである。 慰謝料請求について前記認定のとおり本件処分を違法とは認めることはできないのであるから,その余の点について判断するまでもなく,1審被告に国家賠償法上の責任はなく,1審原告らの1審被告に対する慰謝料請求は理由がない。 以上によれば,原判決中,1審原告aの本件処分取消し及び本件義務付けの訴えを認容した部分は相当ではなく,本件処分取消しの訴えは棄却すべきであり,また,本件義務付けの訴えは却下されるべきものであるから,これらの点に関する1審被告の本件控訴は理由があるが,1審原告らの本件控訴はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部- 23 -裁判長裁判官藤村啓裁判官佐藤陽一裁判官古久保正人

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