主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告らの被告学園に対する請求(以下本件労働関係という)(1) 原告らと被告学園との間で、原告らが同被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告学園は、平成10年4月から毎月21日限り、(a)原告Aに対し、月額13万1600円の、(b)原告Bに対し、月額14万1100円の、(c)原告Cに対し、月額13万6200円の各割合による金員及びこれらに対する上記各支払期日の翌日から各支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告学園は原告らそれぞれに対し、各200万円宛及びこれらに対する平成10年4月1日から各支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Bの被告Dに対する請求(以下本件不法行為関係という)被告Dは原告Bに対し、10万円及びこれに対する平成11年12月24日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件労働関係は、下記1(1)②の労働契約に関し、原告らが後示2(1)①の法的性質を主張して、被告学園との間であるいは同被告に対し、(a)同契約上の地位の確認、(b)下記(3)①の委嘱停止後の給与の支払、(c)同委嘱停止による不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。本件不法行為関係は、原告Bが後示2(3)①の名誉棄損を主張して、被告Dに損害賠償を求める事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(1) 当事者等(ただし、下記②の労働契約の実質的な期限の定めの有無及び解雇権濫用法理の適否につき争いがある)① 被告学園は、名古屋短期大学(以下本件短大という)等を経営する学校法人であり、同短大は、保育科(以下本件保育科という)等を開設している。 ② 定めの有無及び解雇権濫用法理の適否につき争いがある)① 被告学園は、名古屋短期大学(以下本件短大という)等を経営する学校法人であり、同短大は、保育科(以下本件保育科という)等を開設している。 ② 原告らは、原告Aが昭和51年9月以降、原告Bが昭和53年10月以降、原告Cが昭和48年4月以降、当初を除き、毎年4月14日頃から翌年3月31日まで、被告学園から本件保育科の音楽の非常勤講師として委嘱(以下本件委嘱といい、これによる労働契約を一括して本件契約という)を受けて、下記(2)の音楽Ⅰの授業でピアノの実技指導をしていた者らである(以下本件保育科でのピアノ実技指導の授業を単にピアノの授業という)。 ③ 被告Dは、昭和56年から本件保育科の教授をしている者で、平成5年度から8年度まで同科学科長の職にあった。 (2) 本件保育科のカリキュラム変更平成9年以前の本件保育科の音楽のカリキュラムには、「音楽Ⅰ」「音楽Ⅱ」「音楽Ⅰ(特)」(以下前二者はこの名称で、後者は特Ⅰの名称で表示する)があったが、被告学園は、平成10年度以降、(a)特Ⅰを廃止し、音楽Ⅰ、Ⅱの内容を変更するとともに、(b)ピアノの未修了者と既修者を分けて授業をするグレード別のクラス編成を採用するなどのカリキュラムの変更を行なった(以下このとき取られた措置を一括して本件カリキュラム変更という)。 (3) 原告らに対する委嘱の停止等(ただし、その法的効力等につき争いがある)① 被告学園は、平成9年12月13日付書面で通知のうえ、平成10年4月以降、原告らに対する委嘱を停止した(以下本件委嘱停止という)。 ② 本件カリキュラム変更前(以下単に従前ということがある)に、本件保育科の音楽Ⅰの授業は、専任教授2名と非常勤講師10名が担当していたが、平成10年度以降、同担当の非常勤講師は7名にな という)。 ② 本件カリキュラム変更前(以下単に従前ということがある)に、本件保育科の音楽Ⅰの授業は、専任教授2名と非常勤講師10名が担当していたが、平成10年度以降、同担当の非常勤講師は7名になった。 (4) 原告らの給与平成9年度、原告Aは、月額13万1600円、原告Bは、月額14万1100円、原告Cは、月額13万6200円の給与を、毎月21日に被告学園から受け取っていた。 (5) 被告Dの陳述書本件委嘱停止に対し原告らが提起した地位保全等の仮処分事件で、被告学園が疎明として提出した被告Dの陳述書(乙43。以下本件陳述書という)には、「学生が原告Bから叩かれたとも述べたという記憶がある」旨の記載(以下本件記載という)があった。 2 争点本件労働関係の主たる争点は、(a)本件契約の性質(同契約に解雇権濫用法理が適用ないし類推適用されるか。後示(1)①)、(b)本件委嘱停止に関する解雇権濫用の主張の成否(後示(1)②。以上請求原因)であり、更に上記(a)については、本件契約が期限の定めのない契約に転化したか、あるいは実質的にこれと同じ状態になったか等が問題になっている。本件不法行為関係の主たる争点は、本件記載の適法性の有無(後示(4)。抗弁)である。 (1) 本件労働関係に関する原告らの主張① 労働契約において、形式上期間の定めがあっても、実態として恒常的業務に従事し、当初から長期にわたり雇用が継続することが予定され、現実にも契約の更新が反復されて、実質的には期間の定めのない労働契約が締結されているのと変わりがない状態にある場合には、解雇に関する制限法理を適用ないし類推適用すべきところ、以下の事情によれば、本件契約は、少なくとも本件委嘱停止までに期限の定めのない契約に転化したか、実質的にこれと同じ状態になったというべきであり、そう 関する制限法理を適用ないし類推適用すべきところ、以下の事情によれば、本件契約は、少なくとも本件委嘱停止までに期限の定めのない契約に転化したか、実質的にこれと同じ状態になったというべきであり、そうではないとしても、原告らが期間満了後の委嘱継続を期待することには合理性があるから、本件委嘱停止は、解雇と同視され、解雇権濫用法理が適用ないし類推適用される。 ア音楽Ⅰは、幼稚園教諭2種免許及び保母資格取得のための必修科目であり、本件保育科の重要な科目となっているが、原告ら非常勤講師は、従前同科目の担当教官12名のうち10名を占め、質量ともに音楽Ⅰの授業の主要な部分を担ってきた。 イこれに対し、被告学園は、経済上の理由から、非常勤講師として低い賃金で雇用する方針を取ってきたもので、それ以外の臨時的事情に基づき、非常勤講師を採用していたものではない。 ウしたがって、被告学園は、合理的な理由を示して、特に短期間しか雇用しない意思を明示しない限り、永続的な更新を期待させる言動をしているというべきであり、原告らと被告学園とは、黙示的に、永続的な更新を合意していたというべきところ、原告らの採用の際に、その旨の明示はなく、かえって原告Bは、非常勤講師の定年は70歳とか75歳だと言われ、原告Cは、学長から「勤められるだけ勤めてくれ」と言われていた。 エ本件契約の期間は、形式上、毎年4月14日頃から翌年3月31日とされていたが、4月の第1木曜日には非常勤講師も出席する音楽担当者会議があり、一方春休みの3月にも他の月と同額の給与が支払われていたのであって、実態として、原告らは年間を通じて勤務していたものである。 オ非常勤講師の契約更新は、個別に更新の有無や契約継続の意思を検討、確認せず、専任教員と同様に各科目の一覧表を作成して次年度の担当者を決定しており、 、原告らは年間を通じて勤務していたものである。 オ非常勤講師の契約更新は、個別に更新の有無や契約継続の意思を検討、確認せず、専任教員と同様に各科目の一覧表を作成して次年度の担当者を決定しており、なんら厳格な手続は経ていなかった。 カ非常勤講師の給与は、勤務年数に応じて昇給する制度になっており、当初講師給だった原告らの給与は、順次ランクアップして平成6年度ないし9年度から教授給になり、また平成7年度には昇給があって、これらは非常勤講師の継続雇用が常態だったことを示している。 キそして、実際にも本件委嘱は、前示1(1)②、同(3)①のとおり本件委嘱停止まで19年ないし25年以上にわたって継続的に反復更新されており、この間原告らは、本件保育科の音楽教育に重要な役割を果たしてきた。 ② 上記①のとおり解雇と同視される本件委嘱停止は、多数の労働者の中から一部の者を選定して解雇し、その結果人件費の削減となっている実態があるから、整理解雇に関する法理が適用されるべきであるが、更に使用者が私学で労働者が教員の場合には、安易な教員数の削減が教育の質の低下をきたし、学生にそのしわ寄せを押し付けるおそれがあるから、一般企業の場合より厳格な基準のもとに整理解雇に関する法理が適用されるべきところ、本件委嘱停止は、整理解雇の4要件(人員整理の必要性、解雇回避努力、被解雇者の選定の妥当性、説明協議の手続)を欠き、合理性がなく無効である。 仮に、本件委嘱停止に整理解雇の法理が適用されないとしても、その真の理由は、報酬の高い原告らにかかる人件費の削減及び、音楽教育につき豊かな意見を有していた原告らを、E教授らが故なく嫌悪したことにあるのであって、本件委嘱停止には合理的理由がない。また、あらかじめ必要な減員数を確定せず、非常勤講師への事前の説明・協議を欠き、不適正な な意見を有していた原告らを、E教授らが故なく嫌悪したことにあるのであって、本件委嘱停止には合理的理由がない。また、あらかじめ必要な減員数を確定せず、非常勤講師への事前の説明・協議を欠き、不適正な投票方法を採る、原告らに弁明の機会を与えず、説明義務も果たさないなど手続的にも不合理であるから、本件委嘱停止は、解雇権の濫用であって無効である。 ③ そして、本件委嘱停止は、原告らの就労を違法に拒むものであって、不法行為にも該当するところ、原告らの慰謝料は各200万円を下らない。 ④ よって、原告らは、(a)被告学園との間で本件契約上の地位の確認を、また同被告に対し、(b)本件委嘱停止後の平成10年4月以降、毎月21日限り、前示1(4)の各金額の給与及び上記各支払期日の翌日以降の遅延損害金の支払、(c)上記③の慰謝料及び不法行為後の平成10年4月1日以降の遅延損害金の支払を、それぞれ求める。 ⑤ 後示(2)②について同イ、ウの主張は争う。そもそも労働契約に期間の定めのない労働者とある労働者との間に職務内容や待遇の差異があるからといって、後者に対する雇止めが当然に許容されるわけではなく、そのことと臨時社員が真に臨時に雇用される身分であるかどうかは別問題である。臨時社員が長期にわたって反復雇用されている場合、もはや真に臨時に雇用される身分ではなくなり、正社員と同様に解雇制限法理が適用ないし類推適用されるべきところ、前示①の事情によれば、原告らが将来にわたり雇用が継続されるとの期待を抱くのは無理からぬものであって、かかる期待には合理性がある。 ⑥ 後示(2)③についてア後示(2)③アについて同冒頭の主張は争う。同aのカリキュラムの変更は認めるが、これが同bの担当コマ数(以下授業時間数は、週1回90分の授業を1コマとするコマ数で表示する)の変更を ③についてア後示(2)③アについて同冒頭の主張は争う。同aのカリキュラムの変更は認めるが、これが同bの担当コマ数(以下授業時間数は、週1回90分の授業を1コマとするコマ数で表示する)の変更をもたらすものであることは争い、同cの手続の相当性も争う。 また、一般に大学にカリキュラム変更の裁量権があるとしても、これを理由に教員の解雇を正当化することはできない。特に、本件短大の場合、経営面で学校の存亡自体が問題になっているわけではなく、本件委嘱停止の必要性は一層厳しく問われるべきである。また、そもそも本件カリキュラム変更は、以下のとおり本来の改革の目的とは関係がなく、授業の充実という改革のあるべき方向と逆行し、学生を犠牲にして経費を削減しようとするものにほかならないから、大学の裁量などとして保護すべき範疇のものではない。 a 本件カリキュラム変更で廃止された特Ⅰは、時間割の組み方により平成9年度以降も存続可能で、現に音楽Ⅱのピアノコースとして必要性が存続しているのであって、被告学園は、本来必要な科目を削減することによって非常勤講師の削減を意図したものである。 また、本件カリキュラム変更後も、F教授は「生活と表現」を2コマ担当し、G非常勤講師は特Ⅰ1コマの担当を止めただけであって、いずれも音楽Ⅰの担当を4コマに増やす必然性はなく、被告学園には、人件費の高い原告らを排除する意図があったといわざるを得ない。 b 仮に、特Ⅰの廃止がやむを得ないとしても、平成9年度の特Ⅰは延べ5コマだけだったから、その廃止が原告ら3名12コマ分のピアノの授業の減少に直結するものではなく、非常勤講師3名の余剰が生じたのは、あくまでピアノの授業の指導体制を改悪したことが主な原因である。 そして、ピアノの既修者なら学生24名を教員2名で指導できるという合理的な根拠はないし ものではなく、非常勤講師3名の余剰が生じたのは、あくまでピアノの授業の指導体制を改悪したことが主な原因である。 そして、ピアノの既修者なら学生24名を教員2名で指導できるという合理的な根拠はないし、既修者も初心者と同じ学費を払っており、指導時間を区別されてよいはずがない。本件カリキュラム変更後は、既修者はもとより初心者さえ1人当たりの指導時間を短くされており、教師の人数を削減して学生を犠牲にしたと評するほかないものである。 イ後示(2)③イについて同a(ア)のうち、原告Aの平成9年度の担当学生に過呼吸の発作を起こした者がいたのは認めるが、これが同原告の叱責等によることは否認し、後示(2)③イのその余の事実も否認する。 また、原告Cにつき、被告学園が無届けと主張する休講は、同原告が届出をしたのに、教務課の方で記録し忘れただけである。補講がなかったと主張されている日も、出勤簿の押印漏れにすぎず、これは、原告Cの教務手帳の記載から明らかである。そして、いずれの年度も、同原告の開講数は、被告学園が最低開講数として要請していた12開講を上回っており、そもそも補講の必要がなかった。 (2) 本件労働関係に関する被告学園の主張① 本件労働関係の訴えに関する本案前の主張本件カリキュラム変更に伴い、音楽Ⅰの授業は、前示1(3)②のとおり教授2名、非常勤講師7名で行なう体制になり、すでにそれに従ったクラス分けもなされていて、原告らには、いわゆる元職復帰場所が存在しないから、本件契約上の地位確認は無意味であり、またこれを基礎とする他の給付訴訟も訴えの利益を欠くものであって、いずれも却下を免れない。 ② 前示(1)①についてア同アのうち、音楽Ⅰが保母資格の必修科目であり、平成9年度の同科目の担当教官12名中、10名が非常勤講師だったこと、同イのうち、被告 であって、いずれも却下を免れない。 ② 前示(1)①についてア同アのうち、音楽Ⅰが保母資格の必修科目であり、平成9年度の同科目の担当教官12名中、10名が非常勤講師だったこと、同イのうち、被告学園が経済上の理由があって非常勤講師を採用していること、同エのうち、毎年4月第1木曜日に非常勤講師の出席する音楽担当者会議があり、3月も他の月と同額の給与が支払われていること、同カのうち、非常勤講師の給与が勤務年数に応じて昇給し、同主張のランクアップ及び昇給があったこと、同キのうち、本件委嘱が同主張の期間反復されたことは認めるが、その余の事実は否認し、同冒頭と同ウ、エの法的主張は争う。 イもともと期間の定めのある労働契約が雇用継続の期待のもとに反復されていたとしても、当事者双方が期間の定めのない労働契約を締結する旨の明示黙示の意思表示をしない限り、その旨の労働契約に転化するものでないことは、民法629条1項本文から明らかである。 また、専任教員と非常勤講師との間には、以下のような採用、労働条件、職務内容等の相違があって、専任教員は、職務及び責任の面で全般的な拘束を受け、その地位が期間の定めなく継続するのに対して、非常勤講師は、本来限定された職務を短期間だけ担当し、担当授業を行なう以外の拘束を受けない地位にあって、被告学園との結び付きも極めて希薄であるから、本件委嘱が実質的に期間の定めのない労働契約が締結されているのと同視できる状況にないことも明らかであり、本件委嘱停止に解雇権濫用法理を適用ないし類推適用する余地はない。 a 採用の際、専任教員は、公募のうえ、教授会に設置の教員選考委員会で候補者を選定し、学科会議、大学運営委員会の審議等を経て、教授会の特別決議で採用を決する方法が取られるのに対し、非常勤講師は、学科会議の推薦に基づき、教務委員 のうえ、教授会に設置の教員選考委員会で候補者を選定し、学科会議、大学運営委員会の審議等を経て、教授会の特別決議で採用を決する方法が取られるのに対し、非常勤講師は、学科会議の推薦に基づき、教務委員会を通じて、教授会の普通決議で了承を取るという簡素化された手続が採用されている。また、専任教員の人事が、最終的に被告学園の理事会で決定されるのに比べ、非常勤講師の人事は、本件短大の教授会に委ねられているという違いがある。 b 職務内容は、専任教員が授業やゼミの担当のほか、委員会等の出席を義務付けられ、教育課程の策定や教員人事、入学試験、学生指導等にも関与するのに対し、非常勤講師は、基本的に担当科目の契約コマ数をこなすだけで、音楽担当の場合は、採点や担当者会議への出席もあるが、学生の単位認定は専任教員が行ない、非常勤講師がすることはない。 c 兼職も、専任教員は、就業規則で禁止されており、兼職には所属長の許可を得ねばならないのに対し、非常勤講師は、もともと一定のコマ数の授業を担当させているにすぎず、他の時間をどのように利用しようと自由であって、兼職の禁止はなく、届出の必要もない。 d 賃金形態は、専任教員と非常勤講師とでまったく異なっており、専任教員は、身分、職種等に応じて号俸給が定められるのに対し、非常勤講師は、経験等に応じた1コマ当たりの単価に委嘱期間中の総コマ数を乗じて報酬が決定されており、賞与、退職金が支給されることもない。 ウそして、原告らは、他の大学や高等学校でも非常勤講師として勤務して、非常勤講師の契約期間が1年間に限定され、専任教員とは就労条件や学校との結び付きが極端に異なること、その採用につき学校に広範な裁量権があることを熟知していた。一方、本件短大では、非常勤講師との次年度の契約は、学科会議、教務委員会で審議後、教授会で決定し 条件や学校との結び付きが極端に異なること、その採用につき学校に広範な裁量権があることを熟知していた。一方、本件短大では、非常勤講師との次年度の契約は、学科会議、教務委員会で審議後、教授会で決定して、毎年2月頃非常勤講師契約書を送付し、その返送を受けて締結しているのであって、漫然と反復しているものではなく、被告学園から本件契約の永続的締結を期待させるような文書を送ったり、発言をしたこともない。 したがって、仮に原告らが本件契約が毎年締結され続けるとの期待を有していたとしても、それは主観的期待ないし願望にすぎず、法的保護に値するものではない。 ③ 前示(1)②についてア同主張は争う。仮に、本件委嘱停止に合理的理由が必要だとしても、前示①のとおり解雇制限法理の適用ないし類推適用はないから、その理由は、解雇の場合よりも緩やかなもので足りるというべきところ、本件短大では、下記a以下のとおり本件カリキュラム変更によって、音楽の非常勤講師に余剰を生じたため、適正な手続を経て本件委嘱停止を行なったものであるから、これには上記の合理的な理由がある。 なお、カリキュラム編成は大学の専権事項であり、教育改革の内容は、大学の責任で決定し、その当否は、学生や社会等が判断すべきものであるから、本件カリキュラム変更により非常勤講師に余剰を生じたとしても、原告らが非難できるものではない。また、もともと雇止めの場合、使用者に労働者の意見を聴取する義務はなく、通常解雇の場合も同様であるから、本件委嘱停止の際、原告らの意見を聴取等する必要もない。 a 平成3年の短期大学設置基準の改正や、保母の採用時に幼児歌曲の弾き語りが重視されるようになったことから、本件学校では、教育、授業改革を進めており、また平成7年頃から、週5日授業体制の実施に伴う授業内容の変更等も検討していた の改正や、保母の採用時に幼児歌曲の弾き語りが重視されるようになったことから、本件学校では、教育、授業改革を進めており、また平成7年頃から、週5日授業体制の実施に伴う授業内容の変更等も検討していたが、本件カリキュラム変更によって、(a)従前主にピアノによる音楽技能の習得を目的とし、全員のバイエル教則本(全106曲)の修了を到達目標としていた音楽Ⅰを、ピアノ初心者と既修者とにクラス分けし、初心者クラスを5名の、既修者クラスを2名の教員で指導することにし、(b)従前主に声楽による音楽技能の習得を目的としていた音楽Ⅱを、声楽コース、アンサンブルコース、ピアノコースの3コースからの選択制とし、(c)正規の科目ではなく、いわば補習授業だった特Ⅰは、週5日授業体制によって無理になったため廃止し、バイエル未修了者は、音楽Ⅱの上記ピアノコースを選択して学修できるように措置するなどした。 b その結果、平成10年度から、(a)専任教員のF教授が、従前担当していた「生活と表現Ⅰ」(以下この名称で表示する)と同Ⅱの統合で、(b)G非常勤講師が、従前担当していた特Ⅰの廃止で、それぞれ音楽Ⅰ4コマを担当することが可能になり、(c)音楽Ⅰをピアノ初心者と既修者にクラス分けしたことで、既修者クラスを2名の教員で指導することが可能になったため、前示1(3)②のとおり従前10名の非常勤講師がいた音楽Ⅰの授業は、同7名でまかなえるようなった。 c 一方、本件保育科では、平成8年4月の音楽担当者会議で、原告らを含む音楽担当者に音楽Ⅰ、Ⅱの改革の検討を説明し、同年12月には、アンケート方式で授業内容改革の意見を求め、平成9年4月の音楽担当者会議では、音楽Ⅰ、Ⅱの授業内容等の見直しが進行中であり、特Ⅰは平成10年度から廃止されること、担当コマ数再編の可能性があること等を説明した 方式で授業内容改革の意見を求め、平成9年4月の音楽担当者会議では、音楽Ⅰ、Ⅱの授業内容等の見直しが進行中であり、特Ⅰは平成10年度から廃止されること、担当コマ数再編の可能性があること等を説明したうえで、平成9年12月3日、本件保育科の学科会議で上記aのとおりの変更案を了承し、更に教務委員会、教授会の承認を経て、本件カリキュラム変更を実施した。 そして、上記学科会議で、原告らを含む4名の非常勤講師について、平成10年度の契約を締結すべきか審議され、結局原告ら3名について無記名投票を実施した結果、いずれの原告についても契約を締結しないとする投票が過半数を上回り、この結果は教務委員会、教授会においても是認されて、本件委嘱停止に至ったものである。 イ仮に、本件委嘱停止に上記ア以上の合理的理由が必要だとしても、原告らの授業態度には以下の問題があったから、これにはなお理由がある。 a 原告Aについて(ア) 同原告は、平成6年度にその尋常ならざる叱責、指導のため、担当する学生が過呼吸の発作を起こし、平成9年度にも、その授業方法のために学生が過呼吸の発作を起こしたが、ほかの教員の担当学生で、このような発作を起こした者はいなかった。 (イ) また、昭和62年当時本件保育科では、学生が同意すれば音楽Ⅰの単位を留保して特Ⅰを履修させることが許されていたが、原告Aの担当学生からのみ、同意した覚えがないという異議が出された。 (ウ) ほかにも、原告Aの担当学生からは、いくら勉強しても認められないという苦情が出ており、その指導方法の問題は、他の教員も知るところであった。 b 原告Bについて同原告については、平成4年入学の学生が、その音楽の授業を契機として休学したため、本件短大の教授らが面談して、学生のピアノ修得レベルが異なるので、能力に合わせた適切な指導をする b 原告Bについて同原告については、平成4年入学の学生が、その音楽の授業を契機として休学したため、本件短大の教授らが面談して、学生のピアノ修得レベルが異なるので、能力に合わせた適切な指導をするようにと要望したにもかかわらず、平成6年にも、その授業が原因で別の学生が休学しており、同原告の授業方法の問題も、他の教員の知るところだった。 c 原告Cについて同原告については、以前から休講が多く、そのことが本件保育科の学科会議等で問題となっていたが、その平成2年度から平成9年度までの休講日、補講予定日、当日の出勤簿への押印の有無は、別表記載のとおりであり、そのうち平成7年1月9日及び平成9年10月21日を除く22回の休講については、これに見合う補講をしていなかった。 ④ 前示(1)③の主張は争う。 (3) 本件不法行為関係に関する原告Bの主張① 被告Dは、前示1(5)のとおり、本件記載をなした本件陳述書を作成し、同陳述書は、仮処分事件に疎明として提出されたが、同記載は虚偽であり、少なくとも同被告には、真実を確かめなかった過失がある。 ② 上記不法行為は、原告Bの人格、名誉を毀損し、正当な裁判を受ける権利を侵害するとともに、本件委嘱停止による違法な解雇措置を強いるものであって、その慰謝料は10万円が相当である。 ③ よって、原告Bは被告Dに対し、同額及び訴状送達の翌日以降の遅延損害金の支払を求める。 (4) 本件不法行為関係に関する被告Dの主張前示(3)①の陳述書作成と仮処分事件への提出は認めるが、その余の事実は否認し、同②の事実も否認する。被告Dは、その記憶に従い、当該学生が述べたとおりの事実を記載しただけであって、これになんら違法な点はない。 第3 争点に対する判断 1 本件労働関係(1) 被告学園の本案前の主張(前示第2の2(2)①)に対 その記憶に従い、当該学生が述べたとおりの事実を記載しただけであって、これになんら違法な点はない。 第3 争点に対する判断 1 本件労働関係(1) 被告学園の本案前の主張(前示第2の2(2)①)に対する判断この点につき、被告学園は、本件カリキュラム変更で、原告らには元職復帰場所がなくなったと主張して、本件労働関係の訴えの適法性を争っているが、前示第2の1(3)②及び乙15によれば、同変更後も、従前原告らが担当していた音楽Ⅰの授業は存続しており、また原告ら以外の音楽Ⅰ担当の非常勤講師は、同じ音楽Ⅰの授業を担当しているから、現在、原告らの元職復帰場所が存在しないとは認められず、被告学園の上記主張は直ちに採用できない。 (2) 本件契約の法的性質(前示第2の2(1)①の主張について)① まず、本件短大における非常勤講師の採用、職務内容等について、専任教員の場合と対比しつつ検討するに、前示第2の1(1)の事実、甲4ないし7、甲63ないし甲65、乙2ないし乙13、乙36、乙38、乙45、乙47、乙49、証人Hの証言、被告Dの本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア被告学園は、昭和26年設立の学校法人で、本件短大のほか、桜花学園大学などの学校を設置している。このうち本件短大には、本件保育科のほか、教養学科と英語学科が設置されている。 本件短大は、短期大学として学科制を敷いているため、全学の審議機関として教授で構成する教授会があり、その中に委員長ほか3名で構成する教員選考委員会が置かれている。また、各学科には後示の専任教員のみで構成する学科会議があった。 そのほか、本件短大には、教務部長や各科の教務委員で構成する教務委員会があり、学生の学籍異動や教育課程、非常勤講師の人事等の教務上の一般的事項の審議、確認をしていた。 イ本 する学科会議があった。 そのほか、本件短大には、教務部長や各科の教務委員で構成する教務委員会があり、学生の学籍異動や教育課程、非常勤講師の人事等の教務上の一般的事項の審議、確認をしていた。 イ本件短大は、2年制で、各学年約240名から260名の学生を擁しており、本件保育科は、その中心的な学科として各種科目を開設していたが、音楽関係の科目には、従前音楽Ⅰ、同Ⅱと特Ⅰがあって、主に、音楽Ⅰは、ピアノによる、音楽Ⅱは、声楽による音楽技能の習得を目的に、それぞれ1年時と2年時に履修が予定されていた。また、特Ⅰは、音楽Ⅰの単位未取得の学生に対する一種の補習として2年時に実施されていた。 本件保育科には、幼稚園教諭や保母を目指す学生が多数入学していたが、音楽Ⅰの単位は、保母資格取得の必修要件であり、幼稚園教諭2級の資格取得にも同科目か音楽Ⅱの単位が必要だったため、音楽Ⅰは、本件保育科の95パーセントの学生が受講する人気科目となっていた。 ウ一方、本件短大の教員には、教授、助教授など同校のみに勤務する専任教員と、それ以外の非常勤講師がおり(その詳細は下記エ以下のとおり)、従前本件保育科には、専任教員である教授12名、助教授2名と、非常勤講師29名がいたが、中でも音楽関係の科目は非常勤講師の割合が高く、音楽Ⅰは、教授2名と非常勤講師10名が、音楽Ⅱは、教授2名と非常勤講師5名(そのうち1名は音楽Ⅰを兼任)が、また特Ⅰは、音楽Ⅰ担当の非常勤講師中5名が、それぞれ担当していた。 エそして、教員採用の際、専任教員の場合、本件短大では、全国的に公募を行ない、応募者に対し、教員選考委員会で書類選考や業績審査、面接を実施して候補者を選考のうえ、学科会議、大学運営委員会の審議を経て、更に教授会に諮り、出席者の3分の2以上による特別決議によって、短期大学設置基準 者に対し、教員選考委員会で書類選考や業績審査、面接を実施して候補者を選考のうえ、学科会議、大学運営委員会の審議を経て、更に教授会に諮り、出席者の3分の2以上による特別決議によって、短期大学設置基準(昭和50年文部省令21号。以下短大設置基準という)23条ないし26条所定の各教員資格・能力の有無及びその職にふさわしい人物かなどを判定するという方法が取られており、また最終的な採用は、専任教員の人事権全般を有する被告学園の理事会で決定されていた。 これに対して、非常勤講師の場合は、公募の方法が採用されておらず、教員選考委員会で選考手続が取られることもなく、個別に候補者に打診のうえ、学科会議の推薦に基づき、前示アのとおり非常勤講師の人事を所掌する教務委員会で短大設置基準25条所定の講師職資格等を審議して、その後教授会の普通決議だけで採否が決められており、その人事は、本件短大だけで決定することができ、被告学園の理事会に諮る必要もないなど専任教員に比べて簡素化した手続が取られていた。更に、非常勤講師の採用時には、後示クの非常勤講師契約書が交わされていた。 オまた、本件短大の教員の職務内容は、専任教員の場合は、担当の授業やゼミナールを行なうだけでなく、所属の各種委員会や会議への出席を義務付けられ、これらを通じて、毎年度の教育課程の策定や教員人事の審議、入学試験、学生指導等にも関与するのに対し、非常勤講師の職務内容は、基本的に非常勤講師契約で委嘱された担当科目の一定コマ数の授業を行なうことに限られており、委員会等への出席義務はなく、また音楽担当者の場合は、非常勤講師でも試験の採点や若干の担当者会議に出席したりすることがあったが、学生の評価・単位認定はもっぱら専任教員が行ない、非常勤講師が最終的な単位認定を行なうことはなかった。 カそのため、兼職につ 常勤講師でも試験の採点や若干の担当者会議に出席したりすることがあったが、学生の評価・単位認定はもっぱら専任教員が行ない、非常勤講師が最終的な単位認定を行なうことはなかった。 カそのため、兼職についても、本件短大では、1週40時間以内という勤務時間の定めがある専任教員の場合は、就業規則36条1項で兼職が禁止されており、それをするには所属長の許可が必要だったのに対し、非常勤講師の場合は、上記オのとおり、基本的に一定のコマ数の授業を担当するだけで、他の時間帯には格別の制約が及ばないため、兼職についてなんらの禁止・制約はなく、届出の必要もなかった。 キ更に、本件短大の教員の賃金は、専任教員と非常勤講師とで全然別個の体系になっており、専任教員は、その身分や職種等に応じて号俸給が規定され、賞与、退職金も支給されるのに対し、非常勤講師は、経験等に応じた1コマ当たりの単価に委嘱期間中の総コマ数を乗じて報酬が算定されており、委嘱が一定回数以上反復された場合にコマ当たりの単価が上昇することはあるが、賞与、退職金の支給はなく、その旨の規定もなかった。 ク本件短大では、非常勤講師の採用に当たり、その委嘱期間を1年以内(本件保育科の場合、毎年4月14日頃から翌年3月31日までの範囲)に限定しており、次年度も委嘱を行なう場合は、学科会議と教務委員会で審議して、教授会で決定した後、毎年2月頃非常勤講師契約書を送付し、相手方に押印のうえ返送してもらってから、次年度の契約を締結するという手続を履践していたが、同契約書には、委嘱対象の授業科目と講義日、時限、総時限数のほか、非常勤講師としての委嘱である旨と委嘱期間が明記されており、反対に契約更新の規定等は記載されていなかった。 ケそして、本件短大の上記エないしクの専任教員及び非常勤講師の採用、職務内容、兼職、賃金 非常勤講師としての委嘱である旨と委嘱期間が明記されており、反対に契約更新の規定等は記載されていなかった。 ケそして、本件短大の上記エないしクの専任教員及び非常勤講師の採用、職務内容、兼職、賃金形態等の方式、内容は、他の短期大学、大学でのそれと大差がなく、他大学におけるこれら事項に関する専任教員と非常勤講師との処遇内容の差異も、ほぼ上記エないしクと同様であった。 コ (a)原告A(昭和21年12月20日生)は、昭和46年に名古屋大学文学部哲学科美学美術史を卒業後、日本福祉大学でピアノ実技等の非常勤講師をし、(b)原告B(昭和24年1月24日生)は、昭和48年に上野学園大学短期大学部音楽科を卒業後、ヤマハ音楽教室のピアノの教師や、日本福祉大学及び中京女子大学のピアノ実技等の非常勤講師をし、(c)原告C(昭和13年9月25日生)は、昭和46年に愛知教育大学音楽科を卒業後、ヤマハ音楽教室でピアノの教師をしていたが、それぞれ昭和51年9月、昭和53年10月及び昭和48年4月以降、上記と併せて本件短大から本件保育科の音楽の非常勤講師の委嘱を受けるようになり、その後毎年4月14日頃から翌年3月31日までの期間、もっぱら音楽Ⅰでピアノの実技指導をして、本件委嘱停止前には、各自同4コマを担当していた。 委嘱開始の際、原告らは、非常勤講師として前示エの手続で本件短大に採用され、その後本件委嘱停止までに約19年ないし25年にわたり委嘱が反復されたが、その手続は、概ね前示クのとおりであった。 ② 以上認定の事実によれば、本件短大の非常勤講師は、基本的に、委嘱された担当授業を行ない、これに対する報酬を受け取る以外に格別の権利、義務のない存在であり、被告学園とそのほかの法律関係に立つものではないと認めるのが相当である。そして、前示①カのとおり、同校の非常勤講師 当授業を行ない、これに対する報酬を受け取る以外に格別の権利、義務のない存在であり、被告学園とそのほかの法律関係に立つものではないと認めるのが相当である。そして、前示①カのとおり、同校の非常勤講師は、授業時間以外の時間帯は、なんら拘束を受けず、そもそも兼職という概念があり得ないため、これに対する規制がなく、また前示①キのとおり、その報酬が時間当たりの労賃を基礎として計算されているのも、以上の事情に基づくものと認めることができる。 そして、前示①ケの事実によれば、非常勤講師と大学とのこのような関係は、他の短期大学や大学においてもほぼ同様だと認めるのが相当である。 ③ そこで、更に、上記のような立場にある非常勤講師の短期大学(以下特に明示せずに、大学を含む場合があり、反対に単に大学というときにも、実質的に短期大学の場合を含めて判示することがある)の教員体系中に占める一般的な地位等について検討する。 ア学校教育法58条は、国公立、私立を問わず、学長、副学長を除く大学の教員として、教授、助教授、講師、助手の4種類を規定しているところ、非常勤の教員は、上記のうち講師に限って許容されているものと解される(教育公務員特例法2条2項は、国公立大学につきこれを前提とする規定を置く。また鈴木勲編著・逐条学校教育法《第4次改訂版》571頁参照。なお、大学の教員中には、上記のほかにも名誉教授や客員教授といわれるものがあるが、これらは称号としての教授であって、職位を示すものではなく、通常その身分は非常勤講師に当たると解される)。 そして、(a)短期大学設置基準(昭和50年文部省令21号。以下短大設置基準という)20条は、教育上主要と認められる学科目は、原則として専任の教授又は助教授が担当するものとし、このような主要学科目以外の科目についても、なるべく専任の教授 年文部省令21号。以下短大設置基準という)20条は、教育上主要と認められる学科目は、原則として専任の教授又は助教授が担当するものとし、このような主要学科目以外の科目についても、なるべく専任の教授、助教授又は講師が担当するものとすると定め(大学設置基準《昭和31年文部省令28号》8条も同旨)、(b)短大設置基準22条及び別表第1は、必要な専任教員の人数を学科の種類や定員に応じて具体的に規定しているが(大学設置基準13条及び別表第1、第2も同旨)、これら規定は、前示①オ、カ、同②判示のとおり、大学教育における非常勤講師の貢献・関与が、専任教員と異なり、一部に限定されたものであることを前提として、(ア)大学の教育・研究の質を維持する目的から、その関与を、原則として主要学科目以外の授業という一定範囲に制限するとともに、(イ)その反面、大学の経済的基盤を安定させる等の経営上の観点などに基づき、上記範囲の大学教育に対する非常勤講師の関与を一般的に是認する趣旨に出たものと解するのが相当である。 イ一方、(a)前示①エ、同②認定のとおり、一般に非常勤講師の採用等には専任教員の場合より簡素化された手続が採用されており(なお、上記のほか、教育公務員特例法は、国公立大学での専任教員の採用、昇任は、選考の方法によらねばならず、かつ教授会の議に基づき、学長が決するものと規定するのに対し《同法4条1項、12条1項1号、25条1項1号》、同法の教員中に含まれない非常勤講師には、この制限が及ばないと解されている)、(b)本件委嘱停止当時に実施されていた短大設置基準24条2号(文部科学省令平成13年46号による改正前のもの)は、短期大学の助教授の有資格者として、大学における助教授又は専任講師の経歴者をあげており、専任教員の場合、講師の経歴が上記資格認定上考慮さるべ 2号(文部科学省令平成13年46号による改正前のもの)は、短期大学の助教授の有資格者として、大学における助教授又は専任講師の経歴者をあげており、専任教員の場合、講師の経歴が上記資格認定上考慮さるべきことを明定する一方で、非常勤講師については、職務内容や勤務期間の長短等にかかわらず、その経歴を当然考慮されるべきものとしていないが(上記の文部科学省令による改正後は、同設置基準23条4号が教授資格に関し同趣旨の規定を置く。なお、文部科学省令平成13年44号による改正前の大学設置基準15条2号も上記と同旨)、以上の規定は、非常勤講師が、教授、助教授、専任講師、助手と連なる大学の専任教員の系列とは別個の系列に位置付けられており、両者の立場に互換性がないことを前提としているとみられるのであって、非常勤講師の地位は、たとえば大学の助手が、将来、助教授、教授へと昇任してゆく候補者段階の教育研究者であるのと同様に解することはできないというべきである。 ウ以上によれば、短期大学を含めた大学の教員の人事体系中に占める非常勤講師の地位は、あくまで専任教員とは異なる、非常勤の補助的教員たる立場にとどまるというのが相当であり、単に非常勤講師としての契約が長期間反復されたとしても、当該非常勤講師を常勤教員として取り扱う旨の明示の合意が認められたり、その旨の黙示の合意が成立したと見做せるなどの特段の事情がある場合を除き、当該非常勤講師の法的地位が、上記のような補助的教員たる性格を脱して、常勤の専任教員としての地位ないしこれに準じる地位に転化する余地はないと解するのが相当である。 そして、前示①エ、ケ、同②のような短大、大学での一般的な採用区分の違いや上記ア(a)(b)の教員定員上の取扱の差異も考慮すると、上記明示の合意が認められ、あるいは黙示の合意の成立が擬制さ である。 そして、前示①エ、ケ、同②のような短大、大学での一般的な採用区分の違いや上記ア(a)(b)の教員定員上の取扱の差異も考慮すると、上記明示の合意が認められ、あるいは黙示の合意の成立が擬制されるというためには、その内容的当否や法的有効性はともかく、当該非常勤講師につき専任教員の採用手続が実際に履践され、あるいは当該非常勤講師においてその手続が履践されたと信ずべき相当の事情があることが必要であって、かかる場合に限って上記特段の事情が認められるというのが相当である。 ④ 以上に基づき、本件の場合を検討するに、前示①エ、ク、コ認定のとおり、原告らについて専任教員としての採用手続が履践された事実はなく、原告らからその旨の希望が出た形跡も窺われないし、また毎年の委嘱に当たっては、非常勤講師としての委嘱である旨や委嘱期間を明示した契約書が交わされていたのであるから、容易に上記③ウの特段の事情は認められず、本件契約が専任教員の雇用契約と同様の期限の定めのない契約に転化したとか、実質的にこれと同視すべき状況になったということはできない。 また、前示①コ認定のとおり、大卒で、いやしくも大学教育界に身を置く原告らが、上記③ウ第2段判示の事情がないにもかかわらず、期間満了後の委嘱継続を期待するとは容易に考え難いが、仮にそのような期待が存したとしても、法的保護に値するものでないことは見易い道理である。 したがって、本件委嘱停止当時原告らは、前示③ウ第1段のとおり本件短大の非常勤の補助的教員たる地位を有するにすぎなかったというのが相当であり、前示第2の2(1)①の主張は容易に採用できず、本件契約は、解雇権濫用法理が適用ないし類推適用される性質のものでないというべきである。 ⑤ 以上に対し、原告らは、前示第2の2(1)①ア以下のとおり解雇権濫用法理の適用ない 主張は容易に採用できず、本件契約は、解雇権濫用法理が適用ないし類推適用される性質のものでないというべきである。 ⑤ 以上に対し、原告らは、前示第2の2(1)①ア以下のとおり解雇権濫用法理の適用ないし類推適用を主張するが、以下のとおりいずれも採用できない。 アすなわち、まず原告らは、前示第2の2(1)①アないしウ、キのとおり、本件保育科のカリキュラムに占める音楽Ⅰと非常勤講師の重要性や原告らの長年の貢献、及び経済的な理由から非常勤講師が採用されている点を根拠に、本件委嘱の永続的な更新を期待させる言動があったと扱うべき旨及び黙示的に永続的な更新の合意が成立していた旨を主張している。 しかしながら、前示②ア(a)のとおり、そもそも非常勤講師は、主要学科目以外の科目の授業に限り認められるものであって、本件保育科の音楽Ⅰにおける原告ら非常勤講師の配置が、同(b)掲記の短大設置基準の具体的規定に反すると認むべき証拠はないから、結局音楽Ⅰは、短大設置基準所定の主要学科目には当たらず、そのために、前示①ウ認定のような高い割合での非常勤講師の配置が許容されていたものと認めるのが相当である。 したがって、上記主張事実から、原告らの音楽Ⅰの授業の担当が、前示③ウに判示した非常勤講師の補助的教員たる地位を変更するに足りるだけの特段の内容、性格を有するものだったと認めることは困難であって、この点は、前示①コのとおり本件委嘱が長期間にわたることや、前示①イのとおり、音楽Ⅰの単位が保母資格や幼稚園教諭2級の資格取得に必要又は有効であり、音楽Ⅰが幼稚園教諭や保母を目指す本件保育科の学生の人気科目となっていた点を考慮しても同様というべきである。 また、原告らは、前示第2の2(1)①イで、被告学園が経済的理由から音楽Ⅰの教員に非常勤講師を採用している点を問題視する趣旨の主 育科の学生の人気科目となっていた点を考慮しても同様というべきである。 また、原告らは、前示第2の2(1)①イで、被告学園が経済的理由から音楽Ⅰの教員に非常勤講師を採用している点を問題視する趣旨の主張をしているが、経済的理由から、非常勤講師に、主要学科目でない音楽Ⅰの授業を担当させたとしても不当といえないことは前示③ア(イ)のとおりであって、上記事情が委嘱更新の期待の根拠となるということもできない。 そのほか、(ア)原告B本人は、採用の際に、被告学園のF教授から、非常勤講師の定年は70歳とか75歳と言われた旨を、(イ)原告C本人は、本件短大の学長から、「勤められるだけ勤めてくれ」と言われた旨を供述するが、これらの発言を裏付けるに足りる客観的証拠はないし、そもそも本件短大の非常勤講師に上記(ア)の定年制度があるとは認められないのであって、上記供述はいずれも容易に採用できない。 イまた、原告らは、前示第2の2(1)エ、オのとおり、実質的に年間を通じて勤務し、契約更新にも厳格な手続が取られていない旨を主張しているが、本件委嘱の期間がいずれも1年以内に制限されており、また毎年の委嘱に当たり、学科会議や教務委員会、教授会の審議等を経たうえ、委嘱期間等を明記した非常勤講師契約書を作成していたことは、前示①ク、コ認定のとおりであって、原告らの上記主張も直ちに採用できない。 ウ更に、原告らは、前示第2の2(1)カのとおり、報酬のランクアップ及び昇給の事実を継続雇用に対する期待を保護すべき根拠として主張しているが、前示①キ認定のとおり、非常勤講師の報酬は、あくまで1コマ当たりの単価に委嘱期間中の総コマ数を乗じて決定されており、上記のランクアップ等の後も、原告らの報酬の算定は、なお上記計算方法によっていると認められるのであるから、上記主張事実によって、 まで1コマ当たりの単価に委嘱期間中の総コマ数を乗じて決定されており、上記のランクアップ等の後も、原告らの報酬の算定は、なお上記計算方法によっていると認められるのであるから、上記主張事実によって、前示④の認定に影響を与えることはできず、他に同認定を左右するだけの証拠はない。 (3) 解雇権濫用の主張(前示第2の2(1)②)の当否① 前示(2)のとおり、本件契約に解雇権濫用法理が適用ないし類推適用されるものではないというべきところ、一方、実際の訴訟での同法理の適用場面においては、解雇が苛酷に失しないかの判断に当たり、解雇事由が認められて重大な程度に達しており、かつ労働者の側に宥恕すべき事情がほとんどない場合にのみ解雇の相当性を認めるとされることが少なくなく、結局、権利濫用の程度が相対的に低いときに、解雇の効力が否定される場合があったのであるが(たとえば、最判昭和52年1月31日・労働判例268号17頁。菅野和男・労働法《第5版補正2版》443頁以下も参照)、他方、上記のような狭義の意味での解雇権濫用法理の適用が否定される場合であっても、通常これより程度の高い権利濫用の事情を掲げて行なう一般的な権利濫用の主張が、直ちに形式的に排除されるものではなく、かつ原告らの上記主張中には、このような一般的権利濫用の主張を含むと解し得る部分がある。 そこで、以下では、このような点について留意しつつ、原告らの解雇権濫用の主張についても検討することとする。 ② まず、この点について、原告らは、前示第2の2(1)②のとおり、本件委嘱停止に整理解雇に関する法理ないし通常の解雇権濫用の法理が適用等されることを前提に、本件委嘱停止が整理解雇の4要件を具備せず、あるいは通常解雇としての合理性を欠くと主張して、その法的効力を争っている。 しかしながら、前示(2)判示のと の解雇権濫用の法理が適用等されることを前提に、本件委嘱停止が整理解雇の4要件を具備せず、あるいは通常解雇としての合理性を欠くと主張して、その法的効力を争っている。 しかしながら、前示(2)判示のとおり、本件委嘱停止に解雇濫用法理の適用ないし類推適用があるとは認められず、原告らの上記主張は前提を欠くというべきである(なお、そもそも整理解雇を主張するか否かは、使用者側において決すべき事項であって、労働者側が一方的に当該解雇を整理解雇だと主張して、整理解雇に関する4要件の具備を要求できるものでないことは当然であり、この点に関する原告らの主張はまったく独自の見解であって、採用できない)。 ③ そこで、前示①判示の狭義の解雇権濫用と区別される一般的な権利濫用の成否について検討するに、前示(2)④のとおり、原告らが非常勤の補助的教員たる地位を有するにすぎず、委嘱の継続について合理的な期待を有しているとも認め難い点を考慮すれば、本件委嘱停止に当たり、一般的な権利濫用が成立するといえるためには、単に委嘱停止の理由となった事実が存在しないとか、これが実体的手続的に合理性を欠くというだけでは足りないというべきであって、委嘱停止が特に不当な意図をもってなされたとか、違法な行為等により積極的かつ現実に作出した事実を根拠に委嘱停止が実行された等の特段の事情が必要であると解するのが相当である。 ④ そこで、これらに関連する主張を検討するに、原告らは、(ア)前示第2の2(1)②第2段のとおり、(a)本件委嘱停止が不当な意図に基づくもので、(b)手続的にも不合理であること、(イ)前示第2の2(1)⑥アのとおり、本件委嘱停止の基礎となった本件カリキュラム変更に合理性がなく、学生を犠牲にするものであること、(ウ)前示第2の2(1)⑥イのとおり、委嘱停止の理由となった原告ら各 )前示第2の2(1)⑥アのとおり、本件委嘱停止の基礎となった本件カリキュラム変更に合理性がなく、学生を犠牲にするものであること、(ウ)前示第2の2(1)⑥イのとおり、委嘱停止の理由となった原告ら各自の勤務態度不良の事実も存在しないこと、以上の趣旨を主張している。 しかしながら、まず上記(ア)(a)から検討するに、この点につき、原告らは、原告らに関する人件費の削減や、E教授らが原告らの音楽教育についての豊かな意見を嫌悪したことが本件委嘱停止の真の理由だと主張しているが、経済的理由から非常勤講師の採否を決定したとしても、それだけでは不当といえないことは、前示(2)③ア(イ)認定の事実から十分認められるところである。また、原告らが音楽教育につきどのような「豊かな意見」を有していたのか、これに対し、E教授らがいついかなる形で嫌悪したというのか、原告らの主張自体不明確で、直ちにその事実を認めるだけの客観的証拠はないといってよいから、原告らの上記(ア)(a)の主張は直ちに採用できない。 次に、上記(ア)(b)と同(ウ)の点をみるに、単なる手続的な不合理性や、委嘱停止の理由とされた事実の不存在が、直ちに本件委嘱停止に関する一般的な権利濫用の成立を基礎づける事情というに足りないことは、前示③判示のとおりであるうえ、前示第2の1(3)①のとおり、本件委嘱停止の3か月以上前に書面で通知しているのであるから、本件委嘱停止の手続が不当ということはできず、上記主張も容易に採用できない。 更に、上記(イ)の点を検討するに、本件委嘱停止に合理性がないこと自体は、一般的権利濫用を基礎づける事情には足りないうえ、もともとカリキュラムの編成は、本件短大の自治に任されていると解すべきであるし、また原告らには、本件カリキュラム変更によって学生の被る不利益を自分らに有利に援用で 用を基礎づける事情には足りないうえ、もともとカリキュラムの編成は、本件短大の自治に任されていると解すべきであるし、また原告らには、本件カリキュラム変更によって学生の被る不利益を自分らに有利に援用できる法的根拠も認められないから、上記主張も容易に採用できない。 そして、以上の事情を総合しても、本件委嘱停止が一般的な権利濫用に該当するとは認められず、結局、原告らの前示第2の2(1)②の主張も失当であるから、原告らの本件労働関係の請求には理由がないといわねばならない。 2 本件不法行為関係本件記載の違法性について検討するに、仮処分や訴訟その他の裁判分野においては、当事者双方に自由な疎明や立証活動を尽くさせることによって、いわゆる訴訟的真実の適切な形成を図る高度の必要性があると認められる。したがって、仮処分における疎明の内容が名誉棄損その他の不法行為を構成するといえるためには、その旨知りながら虚偽の事実を記載するなど、故意に当該行為に出たことを要すると解すべきであるところ、乙43、被告D本人尋問の結果によれば、平成6年、原告Bの担当だった学生が退学するかもしれないという事態となり、当時本件保育科の学科長だった同被告が、同学生と面談したところ、同人から、ピアノを得意としていたため、自信を持って音楽Ⅰの授業に臨んだのに、同原告から厳しく叱責されて耐えられなかった等の話を聞き、また同原告に叩かれたとも聞いたため、本件陳述書には、その記憶のとおり、当時の聴取内容をありのまま記載したにすぎないと認められるから、本件記載をもって、直ちに被告Dが故意に虚偽の記載をしたと認めることはできない。 これに対し、原告Bは、被告Dに真実を確かめなかった過失があると主張するが、単なる過失だけで仮処分事件の疎明への記載が違法となると解するのは相当ではなく、上記主張は直ち したと認めることはできない。 これに対し、原告Bは、被告Dに真実を確かめなかった過失があると主張するが、単なる過失だけで仮処分事件の疎明への記載が違法となると解するのは相当ではなく、上記主張は直ちに採用できず、そのほかに、同原告主張の不法行為の成立を認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上の次第で、原告らの請求は、いずれもすべて理由がない。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官夏目明徳(別紙省略)
▼ クリックして全文を表示