昭和50(ラ)491 遺産分割審判に対する抗告、同附帯抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和54年2月6日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原審判を取消す。      本件を静岡家庭裁判所浜松支部に差戻す。          理    由  (抗告の趣旨及び理由)  昭和五〇年(ラ)第四九一号抗告事件の抗告人A、同

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主文 原審判を取消す。 本件を静岡家庭裁判所浜松支部に差戻す。 理由 (抗告の趣旨及び理由)昭和五〇年(ラ)第四九一号抗告事件の抗告人A、同B、昭和五一年(ラ)第八三五号附帯抗告事件の附帯抗告人C、同年(ラ)第一、〇〇八号附帯抗告事件の附帯抗告人D、同Eの各申立の趣旨はそれぞれ「原審判を取消し、さらに相当の裁判を求める。」というのであり、抗告理由及び各附帯抗告理由は、それぞれ別紙一ないし三記載のとおりである。 (当裁判所の判断)一昭和五〇年(ラ)第四九一号事件の抗告理由について 1 抗告人らは、昭和四五年八月ころ相続人間て遺産分割協議が成立しているから、相手方Cには遺産分割請求権がなく、本件申立は不適法として却下すべきてあると主張する。 この点についての判断はその結論において原審判と同一であり、その理由は次に附加するほか同一であるからこれをここに引用する。 当審における抗告人審問の結果によつてもこれを覆えすことはできない。すなわち、抗告人ら主張の協議内容については、相手方C及びI(同D、同Eの亡実父)の各寄与分を考慮していないばかりでなくその内容がその希望に沿わないものであるとして、相手方らが激しくこれを争つている上、その協議内容として抗告人らが履行を約束したという相手方D、同Eの学費援助、相手方Cの扶養(引取または金銭仕送り)についてその後今日にいたるまで抗告人らが何ら履行していないことなどを合せ考えると、右抗告人ら主張に沿う抗告人ら審問の結果は信用し難く、他にこれを認めることのできる的確な証拠もない。したがつて、この点の抗告人ら主張は失当である。 2 (一) 抗告人らは被相続人の遺産として書画、骨とう、刀剣類が多数ある筈であると主張するが、これらが現に存在するこ ことのできる的確な証拠もない。したがつて、この点の抗告人ら主張は失当である。 2 (一) 抗告人らは被相続人の遺産として書画、骨とう、刀剣類が多数ある筈であると主張するが、これらが現に存在することを認めるに足りる証拠はない。 また、もしそれが後日発見された場合には、その財産について追加的に遺産分割を申立てれば足り、その存在は何ら本件遺産分割の効力に影響を及ぼすものではない。 この点の抗告人ら主張は失当である。 (二) 抗告人らは、被相続人の遺産として、定期預金など多額の債権があるから、これを本件遺産分割の対象とすべきてあると主張する。しかし、右のような債権は相続開始とともに各法定相続分の割合に応じて当然に分割される(最高裁昭和二九年四月八日判決参照)から、そのような債権が存在しているとしても、本件遺産分割の対象とする余地はないというべきてある。この点の抗告人ら主張も失当である。 3 (一) 抗告人らは、被相続人が、原審判別紙目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)のうち19、20の田についてのみ相手方D、同Eの親権者Fに事実上耕作させていたのにすぎず、その余の田畑を同人に賃貸したことにもとより耕作をしていたこともないから、これらの農地についてはFの賃借権の制限かないものとして評価すべきであると主張する。 記録によると次の事実が認められ。 Fは昭和二六年四月一日当時被相続人と同居していた被相続人の三男のIと婚姻し、夫と共に被相続人の農業に協力し耕作に従事していたが、その後被相続人、相手方C夫婦との折合いが悪くなり昭和三二年ころ被相続人夫婦と別居し、自己所有の農地を耕作していたころも、その傍ら本件不動産中8、10、17、23の各田を除く大部分の農地を耕作して被相続人の農業に協力していた。Iは昭和三七年一月一六日に死亡したが、 人夫婦と別居し、自己所有の農地を耕作していたころも、その傍ら本件不動産中8、10、17、23の各田を除く大部分の農地を耕作して被相続人の農業に協力していた。Iは昭和三七年一月一六日に死亡したが、Fはその後被相続人が昭和四五年一月一九日死亡するまでの間引続きIの農業を承継し、従前と同様に、本件不動産中前記農地を耕作していた。しかし、右農地の耕作については、IはもとよりFもまた農地法三条による農業委員会の許可をえていなかつた。 以上のとおり認定でき、右認定に反する相手方D、同Eの提出したFの賃料供託通知書、農業委員会の耕作証明書から直ちにFが被相続人から賃借していたとの事実を認めることはできず、当審におけるF審問の結果中右認定に反する部分は信用し難い。 以上の事実によると、Iは、農業を主宰する被相続人の家族の構成員(別居後も同じ)として、家業の農業に協力し、被相続人の農地を事実上耕作していたものであり、FはIの生存中は同人とともに、その死亡後は単独で、Iと同様に被相続人の農業に協力し事実上耕作していたものというべきである。I及びFが被相続人からもつぱら耕作すべき田を特定され耕作に従事していたけれども、そのことは右のように理解する妨げとなるものではない。(もつとも、このように解したとしても、後に述べるように、I、F夫婦の実子てある相手方D、同Eに対する具体的な分割財産の特定に関しその考慮の対象となることはいうまでもない。)。したがつて、原審判が本件不動産中5、7、11ないし16、18ないし21、24ないし28の田につきFの賃借権の制限があるものとして評価し、これを遺産評価額算定の基礎としたのは、違法てあり、この点の抗告人ら主張は理由があり、その違法は結論に影響を及ぼすものであるから、原審判はこの点においてすでに取消を免れない。 (二 として評価し、これを遺産評価額算定の基礎としたのは、違法てあり、この点の抗告人ら主張は理由があり、その違法は結論に影響を及ぼすものであるから、原審判はこの点においてすでに取消を免れない。 (二) 抗告人らは、原審判は本件不動産中4の宅地についてGに賃貸中と説示しながらその評価にあたりその賃借権の制限のある場合から除かれ、賃貸借の制限のない価額て評価した違法があると主張する。しかし、記録によると、同4の宅地はGに賃貸中であり、鑑定書上もその賃貸借の制限かあるものとしてこれを金一〇〇万円と評価したものであることがその理由(第五)の記載から明らかであり、原審判はその評価額を採用し遺産評価算定の基礎としたものであることが認められるから、原審判にはこの点についての違法はない。抗告人らの上記主張は失当である。 (三) 抗告人らは、原審における本件不動産の評価鑑定は不公平偏頗であるから、これに基づく原審判の遺産評価は違法である旨主張する。しかし、原審における鑑定人のした本件不動産の評価は、宅地を農地より低額に評価したものもないではないが、その評価理由の記載からそれを首肯できないわけではなく、また、敷地と地上建物を相続人の一人に分割する場合でも特に敷地の評価額を高額に評価すべき根拠に乏しいから、この点につき考慮しないで評価しても不当とはいえない。これらの点についての抗告人らの非難ば当らないというべきである(もつとも、評価時点と裁判時点との間に長年月を経過し評価を異にすることが予測される場合には不動産の時価につき再鑑定を要することはいうまでもない。)。 4 抗告人らは、原審判は遺産の具体的分割に際し物件の種類その性質、各相続人の職業及び社会的地位などの点の考慮に欠けるところがあり、ことに新たに相続人ら間の共有関係をもうけたことは遺産分割の精神に反 4 抗告人らは、原審判は遺産の具体的分割に際し物件の種類その性質、各相続人の職業及び社会的地位などの点の考慮に欠けるところがあり、ことに新たに相続人ら間の共有関係をもうけたことは遺産分割の精神に反し違法であると主張する。 遺産分割の審判においては、民法九〇六条に従い一切の事情を考慮して具体的な分割財産、分割方法を定めるかぎり違法であるとはいえない。記録によると、原審判は各相続人の分割希望財産(但し、抗告人らは本件遺産分割自体に反対し抗告人Aの単独相続を強調する。)、各農地の位置関係、従前の占有使用、耕作関係、各職業、社会的地位などを考慮し各相続人に分割すべき方法、及び分割財産の特定、債務負担を定めていることが認められるから、原審判にこの点の違法があるとはいえない。したがつて、抗告人らの上記主張は失当である。もつとも、原審判には、現物分割の困難性の点からか特段の事由の説示もなく審判て新たに共同相続人間の共有関係を設定しその分割を後日に延引し、一部分割禁止と同様の結果を来たした点、余り広くない田を複雑に細分して各相続人に帰属させた結果管理耕作に著しく困難な状況を生むにいたつた点などにおいてその配慮が十分でなかつたことは否定できないが、それは妥当性の有無に止まり違法性の問題ではない。 二昭和五一年(ラ)第八三五号および同年(ラ)第一、〇〇八号事件の抗告理由について<要旨>遺産相続における寄与分なる観念は、個人経営の農業や商業等においては、事実上、事業主を中心とする</要旨>家族成員の協力によつて事業が営まれる場合が多く、かかる場合においては、右の協力的活動によつて財産の維持または増加に寄与した相続人に対して、事業主が死亡しその遺産を分割する際に、法定相続分とは別に、右協力に対する対価関係の清算が認められるのでなければ、社会の実態に即 右の協力的活動によつて財産の維持または増加に寄与した相続人に対して、事業主が死亡しその遺産を分割する際に、法定相続分とは別に、右協力に対する対価関係の清算が認められるのでなければ、社会の実態に即さず、また、かかる協力をしない相続人と対比して不公平の感を免れないという理念を内容とするものであろう。 当裁判所は、相続財産の維持または増加についても公平の原理を基本とする不当利得の原則の適用があつてしかるべきであるから、相続財産の維持または増加に寄与した程度が配偶者については民法第七五二条に基づく通常の協力扶助の程度を超え、直系卑属については同法第七三〇条に基づく通常の相互扶助の程度を超えるものであり、かつ、その評価額が当該事業の費用として相応である限り(所得税法五七条参照)、遺産の分割に際し、法定相続分とは別に、かかる寄与分なる観念を認めても、法定相続分を定める民法の精神に反しないと考える。そして、遺産の分割に際しては、かかる寄与分の共益費用的性格にかんがみ、まずこれを評価算定してこれを相続財産の価額から控除し、残額につき法定相続分に従つて算出された価額に右寄与分の評価額を加えた価額をもつて当該相続人の取得分とし、しかる後に民法第九〇六条、家事審判規則第一〇九条に則り具体的配分を行うべきてあると解する。 もとより、相続財産の維持、増加に協力する形態は、右のような労務の提供に限られず、資金を提供して相続財産の一部を買戻し、あるいは新たに取得するなど種々の形態が考えられ、かかる協力の形態は被相続人が事業を経営する場合に限られないわけであるが、このような協力についても、右に準じて当該相続人の寄与分を評価算定するのが相当である。 1 附帯抗告人Cの寄与分(一) 記録によると、次の事実が認められる。 (1) 附帯抗告人Cは昭和一八年三月に四 うな協力についても、右に準じて当該相続人の寄与分を評価算定するのが相当である。 1 附帯抗告人Cの寄与分(一) 記録によると、次の事実が認められる。 (1) 附帯抗告人Cは昭和一八年三月に四一歳で被相続人と再婚し、婚姻挙式の上同居したが、先妻の子である抗告人らの反対があり同人らとの感情的な対立が生ずることを虞れ婚姻届出が遅れていたところ、昭和三九年一〇月二七日にいたり漸くその届出をするにいたつた。右Cは内縁に入つた後昭和二八年三月ころまで女学校、中学校の教員として勤務し、その給与は自分の小遣いや職業費を除きすべて家計費にあて、被相続人は別紙目録記載の農地総面積田二、七四七平方メートル(二反七畝二一歩)、畑六一二平方メートル(六畝五歩)(それらは被相続人が家督相続により取得したもの及び婚姻前に取得したものである。)を耕作して農業に従事し、被相続人の若干の恩給も合わせて、漸く被相続人及びCの生計が維持できる状態であつた。 (2) Cは昭和二八年三月ころ五一歳で教員を退職したが、退職金約七万円は殆んど自己のリウマチの治療費にあて、その一部で土地(本件不動産以外のもの。 袋井市a字bc番d宅地七二・七六平方メートル)を取得し、実家からの援助をえてその地上に家屋を建てたが、この家屋は現在実妹Hに賃貸している。 (3) Cは、教員を退職後I夫婦とともに農業の手伝いをし、昭和三二年ころI夫婦が被相続人夫婦と別居して以後、被相続人死亡の昭和四五年一月一九日までの間は、被相続人とともに居住家屋周辺の別紙目録8、10、17、23の農地の耕作に従事し、その後現在まで人手を雇うなどして右農地の耕作を続けている。 (二) 以上の事実によれば、附帯抗告人Cは、少なくとも、教員を退職した後の昭和二八年四月ころから被相続人が死亡した昭和四五年一月ころまでの間被 現在まで人手を雇うなどして右農地の耕作を続けている。 (二) 以上の事実によれば、附帯抗告人Cは、少なくとも、教員を退職した後の昭和二八年四月ころから被相続人が死亡した昭和四五年一月ころまでの間被相続人の主宰する農業に事実上協力し、その結果、本件不動産が維持されたものであり、その協力の程度は妻としての通常の協力を越えたものというべきであるから、本件遺産の分割にあたつては、まず、その寄与分を評価算定してこれを相続財産の価額から控除し、残額につき法定相続分に従つて算出された価額に右寄与分の評価額を加えた価額をもつて同人の取得分とし、しかる後に遺産の分割を実行すべきものである。原審判が、附帯抗告人Cにつき、右寄与分を全く考慮せず、同人の取得分を法定相続分のみであるとして本件遺産分割を実行したのは失当であり、取消を免れない。 なお、附帯抗告人Cの寄与分の評価算定について付言すれば、同人の農作業の種類、程度、期間および被相続人方の農業規模ならびに農業所得などから裁量により合理的に算出した労務対価額(給与相当額)より、その期間における同人の生計費相当額を控除した額が、これにあたると解する。 2 附帯抗告人D、同Eの相続したIの寄与分(一) 記録によると次の事実か認められる。 (1) 附帯抗告人D、同Eの亡父Iは昭和二四年一〇月末ころ(当時二八歳)から被相続人の農業手伝いをしていたところ、被相続人はI(三男)を農業の後継者に定め、Iが昭和二六年四月一二日Fと婚姻後も被相続人夫婦と同居し、そのころから事実上被相続人方の農業経営の主体となつて農業に専従した。 (2) その後、被相続人夫婦とI夫婦との折合いがよくなかつたことから、昭和三二年ころI夫婦が被相続人夫婦と別居して生活することとし、その際両者協議し、当時六七歳になつた被相続人は老令で十分 た。 (2) その後、被相続人夫婦とI夫婦との折合いがよくなかつたことから、昭和三二年ころI夫婦が被相続人夫婦と別居して生活することとし、その際両者協議し、当時六七歳になつた被相続人は老令で十分に耕作に従事できなくなつたため、本件不動産1ないし3の宅地、その地上建物30、31を居住使用してその近隣の同8、10、17、23の各田(全農地の約三分の一)を耕作するのに止め、その余の農地はすべてIが事実上農業経営をも含めて承継の上耕作することとし、これらの農地をそのころ取得した自己所有農地と合わせて耕作に専従した。 (3) FはIと婚姻後引続きIとともに農業に従事し、昭和三七年一月一六日I死亡後もこれを承継して右各農地を耕作し現在にいたつている。 (二) 以上の事実によると、Iは、昭和二四年一〇月末ころから昭和三七年一月一六日に死亡するまでの間、被相続人の農業に事実上の経営者として専従していたもので、その協力の程度は通常の親族間の協力の程度をはるかに越えており、その結果本件不動産が維持されたから、その維持につき寄与したものということができる。したがつて、本件遺産の分割にあたつては、まず、附帯抗告人D、同Eが代襲相続したものと認むべき右Iの寄与分を評価(その算定は、被相続人と生活を共にした期間が異なるほか、前記Cに準ずる。)してこれを相続財産の価額から控除し、残額につき各法定相続分に従つて算出された価額に右寄与分の評価額の二分の一を加えた価額をもつて各附帯抗告人の取得分とし、しかる後に遺産の分割を実行すべきてある。原審判が右の寄与分を全く考慮しないで本件遺産分割を実行したのは失当であり、取消を免れない。 3 なお、Fの寄与分について検討する。寄与分は相続人が遺産分割の手続において清算するものであるから、相続人でない第三者が遺産分割手続の中で 本件遺産分割を実行したのは失当であり、取消を免れない。 3 なお、Fの寄与分について検討する。寄与分は相続人が遺産分割の手続において清算するものであるから、相続人でない第三者が遺産分割手続の中で寄与分の主張をすることは許されないものと解するのが相当である。本件において、Fは相続人ではない。したがつて、前記認定事実によると同人にその寄与分が肯認できないわけではないが、本件における同人の寄与分の主張は、これを認めることはできない。しかし、Fは、右寄与分を附帯抗告人D、同Eに有利に考慮されたい旨の意見を述べているので、本件遺産分割の審判にあたつては、右事情を民法九〇六条にいう「その他一切の事情」として右附帯抗告人らの有利に考慮するのが相当である。 三以上のとおりであるから、これと異なる原審判は失当であり、本件抗告、各附帯抗告はそれぞれ右説示の範囲て理由があるので、家事審判規則一九条一項により、原審判を取消した上本件を静岡家庭裁判所浜松支部に差戻すこととし、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官杉本良吉裁判官高木積夫裁判官清野寛甫)(別紙ないし三省略)

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