主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求藤沢税務署長が原告に対して平成17年5月31日付けでした原告の同14年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定処分(ただし,同17年10月27日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,平成14年分の所得税の申告において,ストックオプションの権利行使益の所得区分を一時所得として申告したところ,藤沢税務署長から,上記権利行使益が給与所得に当たるとして,更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたことから,上記申告において上記権利行使益を一時所得として申告したことについて,国税通則法(以下「通則法」という。)65条4項所定の「正当な理由」があると認められるとして,上記過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 前提事実本件の前提となる事実は,以下のとおりである。いずれも当事者間に争いのない事実又は証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実であるが,括弧内に認定根拠を付記している。 (1)当事者原告は,A株式会社(以下「A社」という。)に入社し,その後もA社に 勤務していた者である(乙3,弁論の全趣旨)。 (2)原告に対するストックオプションの付与原告は,A社の親会社である米国法人のB(以下「B社」という。)から,B社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利(以下「本件ストックオプション」という。)を付与された(乙3,弁論の全趣旨)。 (3)原告の権利行使原告は,本件ストックオプションを平成9年から同14年までに行使して,各年とも,その権利行使日におけるB社の株式の時価と権利行使価格との差額に相当する権利行使益を得た(乙 。 (3)原告の権利行使原告は,本件ストックオプションを平成9年から同14年までに行使して,各年とも,その権利行使日におけるB社の株式の時価と権利行使価格との差額に相当する権利行使益を得た(乙1から3まで,5)。 (4)平成9年分及び同10年分の権利行使益に係る課税経緯等ア原告は,平成9年分及び同10年分の所得税について,権利行使益の一部をいずれも株式等に係る譲渡所得として,法定申告期限内に確定申告をした(乙3,弁論の全趣旨)。 イ原告は,平成12年6月27日,権利行使益のうち,既に株式等に係る譲渡所得として確定申告をした分は維持した上で,申告漏れ分を一時所得として各年分の修正申告をした(乙3,4)。 ウ藤沢税務署長は,原告の上記各修正申告について,権利行使益が給与所得に該当するとして,平成13年1月19日付けで,同9年分及び同10年分の所得税について,権利行使益を給与所得とする各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った(乙3)。 エ原告は,平成13年3月8日,上記各更正処分及び過少申告加算税の各 賦課決定処分を不服として異議申立てをしたが,異議申立ての翌日から起算して3か月を経過しても決定がされなかったため,同年7月16日,これらの処分についての審査請求をした(乙3)。 オその後,藤沢税務署長は,原告に対し,平成13年9月3日付けで,平成9年分については減額更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分を,同10年分については過少申告加算税の変更決定処分をそれぞれした(乙3)。 カ上記エの審査請求の日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がされなかったことから,原告は,平成13年10月25日,上記各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,上記オによる減額後のもの)の取消しを求める訟えを提起した。な か月を経過しても裁決がされなかったことから,原告は,平成13年10月25日,上記各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,上記オによる減額後のもの)の取消しを求める訟えを提起した。なお,上記エの審査請求は,同14年4月26日付けで,いずれも棄却された。(乙3)(5)平成11年分の権利行使益に係る課税経緯等ア原告は,平成12年3月6日,平成11年分の所得税について,権利行使益を給与所得として確定申告をした後,同13年1月4日,権利行使益が一時所得に当たるとして,更正の請求をした(乙3,弁論の全趣旨)。 イこれに対し,藤沢税務署長は,原告に対し,平成13年4月3日付けで,更正すべき理由がない旨の通知処分をした(乙3)。 ウ原告は,平成13年5月29日,上記通知処分を不服として異議申立てをしたが,同年8月22日付けで,棄却された(乙3)。 エ原告は,平成13年9月25日,審査請求をしたが,同14年4月26日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決がされた(乙3)。 オ原告は,平成14年7月19日,上記通知処分の取消しを求める訴えを提起した(乙3)。 (6)平成12年分の権利行使益に係る課税経緯等ア原告は,平成12年分の所得税について,権利行使益を一時所得として,法定申告期限内に確定申告をした(乙3)。 イこれに対し,藤沢税務署長は,平成13年10月31日付けで,権利行使益が給与所得に当たるとして,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った(乙3)。 ウ原告は,平成13年11月29日,上記更正処分等を不服として異議申立てをしたが,同14年2月26日付けで,いずれも棄却された(乙3)。 エ原告は,平成14年3月13日,審査請求をしたが,同年8月27日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決がされた(乙3)。 オ原告 立てをしたが,同14年2月26日付けで,いずれも棄却された(乙3)。 エ原告は,平成14年3月13日,審査請求をしたが,同年8月27日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決がされた(乙3)。 オ原告は,平成14年11月18日,上記更正処分等の取消しを求める訴えを提起した(乙3)。 (7)上記各権利行使益に係る課税処分取消訴訟の経過ア平成9年分及び同10年分の所得税についての各更正処分等の取消しを求める訴え,同11年分の所得税についての更正すべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める訴え及び同12年分の所得税についての更正処分等の取消しを求める訴えは,横浜地方裁判所において併合審理され,同16年1月21日,権利行使益が給与所得に当たるとして,上記各請求のうち,同9年分,同10年分及び同12年分の所得税についての各更正処分の取消しを求める請求並びに同11年分の所得税についての更正すべき理 由がない旨の通知処分の取消しを求める請求を棄却するとともに,同9年分,同10年分及び同12年分の権利行使益の所得区分を一時所得として申告したことについては,通則法65条4項所定の「正当な理由」があると認められるとして,上記過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す旨の判決がされた(乙3)。 イ原告及び藤沢税務署長は,いずれも上記第1審判決を不服として控訴し,平成16年10月7日,東京高等裁判所において,上記第1審判決中藤沢税務署長敗訴部分を取り消し,原告の請求を棄却するとともに,原告の控訴を棄却する旨の判決がされた(乙4)。 ウ原告は,上記控訴審判決を不服として上告受理の申立てをし,最高裁第三小法廷は,平成18年10月24日,同9年分,同10年分及び同12年分の権利行使益の所得区分を一時所得として申告したことについて,通則法65条4項所定 決を不服として上告受理の申立てをし,最高裁第三小法廷は,平成18年10月24日,同9年分,同10年分及び同12年分の権利行使益の所得区分を一時所得として申告したことについて,通則法65条4項所定の「正当な理由」があると認められるとして,上記控訴審判決のうち,上記各賦課決定処分の取消請求に関する部分を破棄し,当該部分につき藤沢税務署長の控訴を棄却した(以下,この判決を「平成18年10月24日第三小法廷判決」という。)(甲6)。 (8)平成13年分の権利行使益に係る課税経緯等ア原告は,平成13年分の所得税について,同14年3月15日,権利行使益を一時所得として確定申告をした(乙5)。 イ藤沢税務署長は,原告の平成13年分の所得税について,同14年9月30日付けで,権利行使益を給与所得とする更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。なお,これに対して,原告は,異議申立てをし ていない。(乙25,弁論の全趣旨)(9)平成14年分の権利行使益に係る課税経緯等ア原告は,平成14年分の所得税について,権利行使益を一時所得として,法定申告期限内である同15年3月14日に確定申告(以下「本件確定申告」という。)をし,その後,同17年3月17日に,利子所得に申告漏れがあったとして修正申告(以下「本件修正申告」という。)をした(乙1,2)。 イ藤沢税務署長は,原告が,本件修正申告においても権利行使益の所得区分を一時所得としたことから,平成17年5月31日付けで,権利行使益を給与所得とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を行った(甲1)。 ウ原告は,平成17年7月28日,本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として異議申立てをしたところ,同年10月27日付け 加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を行った(甲1)。 ウ原告は,平成17年7月28日,本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として異議申立てをしたところ,同年10月27日付けで,別表の「異議決定」欄のとおり,その一部を取り消す旨の決定がされた(甲3)。 エ原告は,平成17年11月25日,上記異議決定後の本件賦課決定処分を不服として審査請求をしたが,同18年2月21日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決がされた(甲5)。 オ原告は,平成18年8月17日,上記異議決定後の本件賦課決定処分の取消しを求める本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 カなお,本件賦課決定処分等の経緯の詳細は,別表のとおりである。 被告が主張する原告の過少申告加算税の額の算出根拠 被告が本件訴訟において主張する原告の平成14年分の所得税の過少申告加算税の算出根拠は,次のとおりである。原告は,被告主張の算出根拠について争っていない。 (1)本件更正処分(ただし,平成17年10月27日付け異議決定により一部取り消された後のもの)による納付すべき税額3874万2100円別表の「異議決定」欄の「納付すべき税額」参照(2)本件修正申告による納付すべき税額2138万7600円別表の「修正申告」欄の「納付すべき税額」参照(3)本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額1735万円上記(1)の金額から上記(2)の金額を控除した金額。ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。 (4)過少申告加算税の額173万5000円上記(3)の金額に通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額 争点 本件の争点は,原告が平成14年分の所得税についての申告において本件ス 税の額173万5000円上記(3)の金額に通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額 争点 本件の争点は,原告が平成14年分の所得税についての申告において本件ストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことについて,通則法65条4項所定の「正当な理由」があると認められるか否かである。 当事者の主張(原告の主張)(1)通則法65条4項は,過少申告について「正当な理由」があると認められ る場合にはこれを課さない旨定めているところ,上記規定にいう「正当な理由」があると認められる場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうと解すべきである。 (2)課税庁が権利行使益の所得区分についての解釈の変更を通達で明示した時期は,平成14年6月24日付け課個2-5ほかにより所得税基本通達23~35共-6が改正された時であるところ,同年分の所得税の法定申告期限は,同15年3月17日である。 しかし,通達は,上級行政庁が,法令の解釈や行政の運用指針等について,下級行政庁に対してする命令ないし指令であり,租税法の法源ではない。そうであれば,課税庁による通達が発せられた後であっても,納税者がいずれの所得区分で申告すべきかについて周知され,定着した状況があったと評価することはできず,課税庁の見解変更による混乱状況が続いている状況下において申告がされた場合には,通則法65条4項の「正当な理由」があると認められるべきである。 そして,上記通達の改正がされてから約半年後の同14年11月26日に,当庁民事第3部において,権利行使益が一時所得に当たる旨の初めての司法判断がされ,同年分の所得税の法 ると認められるべきである。 そして,上記通達の改正がされてから約半年後の同14年11月26日に,当庁民事第3部において,権利行使益が一時所得に当たる旨の初めての司法判断がされ,同年分の所得税の法定申告期限まで,権利行使益についての司法判断はなく,当該申告時点では権利行使益を一時所得とする判決しかなかった。この判決は,その言渡し後,大手日刊紙によってこぞって報道され,これを紹介する多くの刊行物が出版された。 このような状況においては,納税者が権利行使益を一時所得として申告することは,無理からぬ面があったということができるから,同14年分の所得税の確定申告に際しても,変更後の取扱いが納税者に周知され,定着した状態にあったということはできない。したがって,本件確定申告に際して権利行使益を一時所得として申告した原告に過少申告加算税を課すことは,不当又は酷になるということができる。 (3)仮に,課税庁が平成14年6月に前記通達の改正をすることにより,課税庁の見解の変更について周知し,これを定着させるための最低限の措置を講じたと評価することができるとしても,その後において,より信頼の高い司法判断がされて,一時所得である旨の判断が示され,これが広く報道されていたことなどからすると,納税者としては,いずれの所得区分が正しい法解釈であるか判断することができるはずはないから,こうした混乱状況下において,同年分の権利行使益を一時所得として行った確定申告について,納税者を責めることは不当又は酷というべきである。 (4)以上によれば,本件確定申告時において権利行使益を一時所得として申告した原告には,「正当な理由」があると認められることが明らかである。 (被告の主張)(1)過少申告加算税は,期限内申告によらないで確定した本税について,一定の割合を乗じ 行使益を一時所得として申告した原告には,「正当な理由」があると認められることが明らかである。 (被告の主張)(1)過少申告加算税は,期限内申告によらないで確定した本税について,一定の割合を乗じて計算した特別な経済的負担を課する制度として設けられたのであるが,納税者間の不公平を制度的に是正するとともに,納税者をして自主的に適正な納税額を申告させる制度的な裏付けとして位置付けられており,これにより申告納税制度に対する信頼を維持し,適正な期限内申告の実現を 図ることを目的とするものである。 したがって,通則法65条4項の「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり,上記の過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであり,納税者側の主観的な事情や法の不知や解釈の誤りは含まれないと解すべきである。そして,過少申告加算税が納税者間の不公平を制度的に是正し,これにより申告納税制度に対する信頼を維持し,適正な期限内申告の実現を図ることを目的として設けられた制度であることからすれば,その例外としての「正当な理由」を安易に拡張するような解釈は許されるべきではなく,「正当な理由」に当たる場合とは,基本的には,納税者において,申告時に,過少申告とならない申告をする契機が客観的に与えられていなかったような場合に限られると解すべきである。 (2)通則法65条4項は,「第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(括弧内省略)の計算の基礎とされていなかつたことについて「正当な理由」があると認められるものがある場合には」,当該部分について過少申告加算税を課さない旨を規定している。そう 正申告又は更正前の税額(括弧内省略)の計算の基礎とされていなかつたことについて「正当な理由」があると認められるものがある場合には」,当該部分について過少申告加算税を課さない旨を規定している。そうすると,同項の規定の適用に当たっては,飽くまでも,「その修正申告又は更正前の税額」の計算の基礎とされていなかったことに「正当な理由」があるかどうかが判断されるのであるから,その判断基準時は,「その修正申告又は更正前」における直近の申告の時点と解すべきである。したがって,原告の平成14年分の所得税について,法定申告 期限内に権利行使益を一時所得とする本件確定申告がされ,その後に利子所得の申告漏れがあったとして本件修正申告がされ,更に権利行使益を給与所得とする本件更正処分がされている本件においては,権利行使益を一時所得として申告したことについての「正当な理由」の有無は,本件更正処分の直近の申告である本件修正申告の時点において判断する必要がある。 そして,原告は,平成17年3月17日に本件修正申告を行う以前に,①平成9年分及び同10年分の所得税について,同12年4月から藤沢税務署長が実施した所得税の調査において,調査担当職員から権利行使益は給与所得に該当するとの指摘を受け,その後,同13年1月19日付けで権利行使益を給与所得とする各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたこと,②同11年分の所得税について,確定申告前の社内説明会における会計事務所の説明により,同12年3月6日に,権利行使益を給与所得として正しく申告したこと,③同12年分の所得税について,同年6月15日付けで予定納税額の通知を受けたことに対し,同年7月15日に権利行使益は一時所得に該当し申告納税見積額が予定納税基準額に満たないと見込まれるとして,予定納税額の減額承認の 税について,同年6月15日付けで予定納税額の通知を受けたことに対し,同年7月15日に権利行使益は一時所得に該当し申告納税見積額が予定納税基準額に満たないと見込まれるとして,予定納税額の減額承認の申請をしたところ,藤沢税務署長から,同月28日付けで,権利行使益は給与所得に該当するとした通知処分を受けた上,当該通知処分に係る異議申立てについて,同年12月25日付けで,異議申立てを棄却する異議決定を受けたこと,④同12年分の所得税については同13年10月31日付けで,また,同13年分の所得税については同14年9月30日付けで,いずれも権利行使益を給与所得とする各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたこと,⑤新聞報道や税理士との 相談,税務専門雑誌等により,権利行使益が給与所得に該当する旨の多くの情報を得ていたと推認されること,⑥横浜地方裁判所に係属していた前記1(7)アの事件の口頭弁論期日において,藤沢税務署長が,権利行使益が給与所得に該当する旨の法的根拠を明らかにした準備書面を陳述した事実を認識していたと認められること,さらに,⑦最高裁において,平成17年1月25日に,権利行使益は給与所得に該当する旨の判断が示されたことからすると,原告は,本件修正申告時において,権利行使益を給与所得として課税するという課税庁の取扱いを明確に認識していたものと認められる。 仮に,本件修正申告の時点ではなく,原告による本件確定申告の時点である平成15年3月14日を基準に,「正当な理由」の有無を判断したとしても,上記①ないし⑥の事実からすれば,原告は,本件確定申告の時点において既に,権利行使益を給与所得として課税するという課税庁の取扱いを明確に認識していたものと認められる。 (3)なお,平成18年10月24日第三小法廷判決は,課税庁が従来の ,本件確定申告の時点において既に,権利行使益を給与所得として課税するという課税庁の取扱いを明確に認識していたものと認められる。 (3)なお,平成18年10月24日第三小法廷判決は,課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には,仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきものであるとした上で,課税庁は,同14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したというのであるから,少なくともそれまでの間は,納税者において,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し,その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても,それには無理からぬ面があると して,権利行使益を一時所得として申告することにより過少な申告となったことに「正当な理由」があるとしたものである。 そうである以上,課税庁が,権利行使益の所得区分を給与所得とする旨の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じるに至った後においては,平成18年10月24日第三小法廷判決の射程が及ばないことは明らかである。 (4)課税庁は,平成14年6月24日付けで,課個2-5ほかにより所得税基本通達23~35共-6を改正することによって,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いを納税者に周知し,これが定着するよう必要な措置を講じていたのであり,そのことは広く一般納税者等に対して公表されていた。 原告は,課税庁が権利行使益の所得区分を給与所得とする旨の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じた時期以降における本件確定申告に際し,そのような課税上の取扱い 表されていた。 原告は,課税庁が権利行使益の所得区分を給与所得とする旨の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じた時期以降における本件確定申告に際し,そのような課税上の取扱いを明確に認識しながら,権利行使益を一時所得として申告したものである。 そうすると,原告は,本件確定申告に当たり,上記の通達改正前における課税上の取扱いの変更を不服として,独自の判断に基づいて権利行使益を一時所得として申告したものというべきであるから,原告が権利行使益を一時所得として本件確定申告をしたことは,正に,原告の主観的な事情に基づくものというほかなく,真に原告の責めに帰することのできない客観的事情があるということはできない。 また,そうである以上,本件において,前記過少申告加算税の趣旨に照ら しても,なお,原告に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるような事情があるとは到底認められない。 (5)したがって,原告が,本件修正申告において,権利行使益を一時所得として申告し,給与所得としては税額の計算の基礎としていなかったことについて,通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとは認められないから,本件賦課決定処分は適法である。 第3争点に対する判断 通則法65条4項にいう「正当な理由」の意義について過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対して課されるものであり,これによって,当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として通則法65条4項が定め 生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁参照)。 ストックオプションに係る課税上の取扱いについて 我が国においては,平成7年法律第128号による特定新規事業実施円滑化臨時措置法の改正により特定の株式未公開会社においてストックオプション制度を導入することが可能となり,その後,平成9年法律第56号及び平成13年法律第128号による商法の改正によりすべての株式会社においてストックオプション制度を利用するための法整備が行われ,これらの法律の改正を受けて,ストックオプションに係る課税上の取扱いに関しても,租税特別措置法や所得税法施行令の改正が行われたが,外国法人から付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていない。 東京国税局直税部長が監修し,同局所得税課長が編者となり,財団法人大蔵財務協会が発行した「回答事例による所得税質疑応答集」昭和60年版においては,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益については,ストックオプションが給与等に代えて付与 による所得税質疑応答集」昭和60年版においては,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益については,ストックオプションが給与等に代えて付与されたと認められるとき以外は一時所得として課税されることになるという趣旨の記述がされ,平成6年版までの「回答事例による所得税質疑応答集」においても同旨の記述がされていた。課税実務においても,平成9年分の所得税の確定申告がされる時期ころまでは,上記権利行使益を一時所得として申告することが容認されていた。 しかしながら,我が国においてストックオプションに関する法整備が行われるに伴い,課税庁において,ストックオプションの権利行使益は一時所得ではなく給与所得であるとの共通認識が形成され,平成10年分の所得税の確定申告の時期以降は,上記権利行使益を給与所得とする統一的な取扱いがされるに 至った。平成10年7月に発行された「回答事例による所得税質疑応答集」平成10年版においても,外国法人である親会社から付与されたストックオプションの権利行使益は給与所得として課税されることになる旨の記述がされた。 しかし,そのころに至っても,外国法人である親会社から付与されたストックオプションの権利行使益の課税上の取扱いが所得税基本通達その他の通達において明記されることはなく,これが明記されたのは,平成14年6月24日付け課個2-5ほかによる所得税基本通達23~35共-6の改正によってであった。(乙8,31の1及び弁論の全趣旨により認められる。) 本件賦課決定処分における「正当な理由」の有無について(1)前記2の事実関係等によれば,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,現在に至るまで法令 当な理由」の有無について(1)前記2の事実関係等によれば,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていないところ,課税庁においては,上記ストックオプションの権利行使益の所得税法上の所得区分に関して,かつてはこれを一時所得として取り扱い,課税庁の職員が監修等をした公刊物でもその旨の見解が述べられていたが,平成10年分の所得税の確定申告の時期以降,その取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったものである。この所得区分に関する所得税法の解釈問題については,一時所得とする見解にも相応の論拠があり,最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁によってこれを給与所得とする最高裁の判断が示されるまでは,下級審の裁判例においてその判断が分かれていた。このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には,法令の改正によることが望ま しく,仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである(平成18年10月24日第三小法廷判決参照)。 (2)ところで,国税庁においては,平成11年1月28日付け官総1-3「通達の公表等について(事務運営指針)」(乙11)により,法令解釈通達等を公表するものとされており,具体的な公表の方法として,①全国の各国税局及び沖縄国税事務所並びに各税務署(総務課)窓口で一般納税者等の閲覧に供すること,②国税庁のホームページに掲載すること,③出版物の取扱者から法令解釈通達等を出版物の紙面に掲載したい旨の申出があった場合に,これに応じて情報提供を行うこと 課)窓口で一般納税者等の閲覧に供すること,②国税庁のホームページに掲載すること,③出版物の取扱者から法令解釈通達等を出版物の紙面に掲載したい旨の申出があった場合に,これに応じて情報提供を行うことが定められている。 そして,平成14年6月24日付け課個2-5ほかによる所得税基本通達23~35共-6の改正により,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いが同通達に記載されたことに関しても,上記事務運営指針に基づき,①全国の各国税局及び沖縄国税事務所並びに各税務署の窓口において,上記改正後の所得税基本通達が一般の納税者等に対し閲覧に供されており,また,②同年7月18日までには,新旧対照表の形式によって,改正の内容が具体的に国税庁のホームページに掲載され,さらに,③各種税務専門誌などにおいても,課税庁からの情報提供等を基に,上記通達改正の内容やその解説が掲載されていた(乙8から24までにより認められる。)。 このように,課税庁が,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いを,平成14年6月の所得税基本通達23~35共-6の改正により同通達に明記したことは,上記①ないし③の方法によって広く一般納税者等 に対して公表されていたのであるから,課税庁は,上記のとおり,遅くとも同年7月18日までには,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じるに至っていたものということができる。 (3)本件において,原告が本件確定申告書を提出したのは,前記前提事実のとおり,上記(2)の措置が講じられた時期から7か月余りが経過した後の平成15年3月14日である。 そうすると,仮に,原告の主張するように,本件確定申告の時点を基準として,原告の過少申告に「正当な理由」があるか否かを判断するも じられた時期から7か月余りが経過した後の平成15年3月14日である。 そうすると,仮に,原告の主張するように,本件確定申告の時点を基準として,原告の過少申告に「正当な理由」があるか否かを判断するものとしたとしても,原告は,課税庁が権利行使益の所得区分を給与所得とする旨の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じた時期以降における本件確定申告に際し,そのような課税上の取扱いを明確に認識しながら,上記の通達改正前における課税上の取扱いの変更を不服として,独自の判断に基づいて権利行使益を一時所得として申告したものというべきであるから,原告が権利行使益を一時所得として本件確定申告をしたことは,原告の主観的な事情に基づくものというほかなく,真に原告の責めに帰することのできない客観的事情があるということはできない。 したがって,前記のような過少申告加算税の趣旨に照らすと,原告に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるような事情があるということはできないから,原告が,本件確定申告において,権利行使益を一時所得として申告し,給与所得としては税額の計算の基礎としていなかったことについて,通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできな い。 原告の主張について(1)これに対し,原告は,①通達は,上級行政庁が法令の解釈や行政の運用指針等について,下級行政庁に対してする命令ないし指令であり,租税法の法源ではないから,課税庁による通達が発せられた後であっても,納税者がいずれの所得区分で申告すべきかについて周知され,定着した状況があったと評価することはできないこと,②前記通達の改正がされてから約半年後の平成14年11月26日に,当庁民事第3部において,権利行使益が一時所得に当たる旨の初めての司法判断がされ,こ 着した状況があったと評価することはできないこと,②前記通達の改正がされてから約半年後の平成14年11月26日に,当庁民事第3部において,権利行使益が一時所得に当たる旨の初めての司法判断がされ,この判決は,その後,大手日刊紙によってこぞって報道されるなどしており,このような状況においては,納税者が権利行使益を一時所得として申告することは,無理からぬ面があったということができること,③課税庁が同年6月に前記通達の改正をすることで,課税庁の見解の変更が周知され,これを定着させるための最低限の措置を執ったと評価することができるとしても,その後,当庁の行政専門部において,一時所得である旨の判断が示されていたことなどからすると,納税者としては,いずれの所得区分が正しい法解釈であるか判断することができるはずはないことなどの諸事情を総合すれば,同年分の権利行使益について従前の課税庁の見解に従って一時所得として申告及び納税した原告に過少申告加算税を課すことは酷にすぎるなどと主張する。 (2)しかしながら,前記3(2)において認定したとおり,課税庁は,権利行使益の所得区分を給与所得とする課税上の取扱いを平成14年6月の所得税基本通達23~35共-6の改正により同通達に記載した上,各税務署等の窓 口において上記改正後の所得税基本通達を一般の納税者等に対し閲覧に供し,また,改正の内容を具体的に国税庁のホームページに掲載するなどして,広く一般納税者等に対して公表していたものである。 また,原告は,本件確定申告時において,権利行使益については給与所得として課税するという課税庁の取扱いを明確に認識しながら(前記前提事実のとおり,原告は,平成11年分の所得税については,権利行使益を給与所得として申告した後,一時所得への更正の請求を行っている。),これを一時 るという課税庁の取扱いを明確に認識しながら(前記前提事実のとおり,原告は,平成11年分の所得税については,権利行使益を給与所得として申告した後,一時所得への更正の請求を行っている。),これを一時所得として申告したのであって,最高裁の判断がされていなくとも,そのような課税庁の取扱いを知りながら,あえて,自己の見解に従って,権利行使益を一時所得として申告したものである上,このような場合に自己の見解が正当であると考える場合には,課税庁の取扱いに沿った申告納税を行った上で,自己の見解に基づき更正の請求をするという方法を選択することにより,過少申告加算税を賦課されることなく司法判断を受けることができるのであるから,かかる原告に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるということはできない。 さらに,申告納税制度が適正に機能するためには,国民が自発的に申告することが必要であり,このような申告納税制度を維持する上で,誤った所得区分に基づいて算定された過少な税額で申告することは,適正な申告とはいえないのであって,過少申告加算税を賦課することによって,そのような不適正な申告をした者と当初から適正な申告をした者との間に生じる客観的不公平を実質的に是正することが必要である。 これらの点に照らすと,原告の前記主張はいずれも失当というべきである から,採用することができない。 まとめ以上によれば,原告が権利行使益を一時所得として申告したことについて,通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとは認められないから,本件賦課決定処分は適法である。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部杉原則彦 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部杉原則彦裁判長裁判官市原義孝裁判官島村典男裁判官
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