主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 本件を那覇地方裁判所に差し戻す。 第2 事案の概要等(以下,略称については原判決のとおり。ただし,原判決中,「原告」は「控訴人」と,「被告」は「被控訴人」とそれぞれ読み替える。) 1 沖縄防衛局は,沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市 辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てにつき同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認(本件承認処分)を受けていたが,事後に判明した事情等を理由として同県副知事により本件承認処分が取り消されたことから(本件撤回処分),これを不服として国土交通大臣(裁決行政庁)に対し行政不服審査法に基づく審査請求(本件審査請求)をしたところ,裁決行政庁は,本件 撤回処分を取り消す旨の裁決(本件裁決)をした。 本件は,控訴人が,本件裁決には成立の瑕疵があり,その内容においても違法があると主張して,行政事件訴訟法3条3項に基づき,被控訴人を相手に,本件裁決の取消しを求める事案である。 原審が本件訴えを却下したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 関係法令の定め,前提となる事実,争点及びこれについての当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」第2の2ないし5のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,本件訴えは不適法であり,原審同様,これを却下することが相 当であると判断する。その理由は,次のとおりである。 1 本件訴えの法律上の争訟該当性(争点⑴ア)について被控訴人の主張被控訴人は,平成14年最高裁判決は,行政主体が提起した訴訟の「法律上の争訟」 の理由は,次のとおりである。 1 本件訴えの法律上の争訟該当性(争点⑴ア)について被控訴人の主張被控訴人は,平成14年最高裁判決は,行政主体が提起した訴訟の「法律上の争訟」該当性について,自己の権利利益の保護救済を目的とするものか否かという観点から判断すべきことを示したものであるとした上で,本件 訴えは,控訴人が,行政権の主体としての立場において,沖縄県知事に付与された埋立法上の承認撤回権限の救済を求めるものであり,行政権限の適正な行使を実現するという一般公益の保護を目的として提起した訴訟であり,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから,「法律上の争訟」に当たらないと主張する(原判決第2の5ア,イ)。 検討裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」は,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものとされている(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443 頁参照)。 そして,平成14年最高裁判決は,国又は地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合は,法律上の争訟に当たるというべきであるが,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟 は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく,法律に特別の規定がある場合に限り,提起することが許されると判示している。 もっとも,平成14年最高裁判決の事案は ことはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく,法律に特別の規定がある場合に限り,提起することが許されると判示している。 もっとも,平成14年最高裁判決の事案は,地方公共団体(市)が条例に 基づき私人に対して建築工事の中止命令を発したがこれに従わないため,そ れを民事執行手続で強制的に実現することを企図して,私人を被告として建築工事を続行してはならない旨の裁判を求めたものであり,地方公共団体が提起する訴訟のうち,上記のような事案については,法律上の争訟に当たらないと判示したものと解する余地がある。しかるに,本件訴えは,処分をした都道府県知事が属する地方公共団体である控訴人が,裁決をした国土交通 大臣が属する国を被告として,行訴法3条3項に基づく取消訴訟として,行審法上の裁決の取消しを求めるものであり,平成14年最高裁判決とは事案を異にする。 そこで,当裁判所は,本件訴えについて,控訴人が本件裁決の取消しを求める取消訴訟としての適法性の検討を行うこととし,本件の争点との関係で は,さしあたり,控訴人が行訴法9条所定の原告適格を有するか否かについて判断する。 なお,本件裁決が行訴法3条3項にいう「裁決」に当たると解すべきことは,原判決第3の2のとおりであるからこれを引用する。 2 控訴人の原告適格等(争点⑴ウ及びエ)について ⑴ 控訴人の主張控訴人は,取消訴訟における原告適格に関し,①「取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」という文言上,私的権利利益以外の利益が一律に排除されるものではないと主張し(原判決第2の5⑷参照),このことを前提として,②控訴人は,処分により形成された公法上の法律関係の 当事者たる地位を有しており,本件裁決により,処分の効果 律に排除されるものではないと主張し(原判決第2の5⑷参照),このことを前提として,②控訴人は,処分により形成された公法上の法律関係の 当事者たる地位を有しており,本件裁決により,処分の効果が覆滅され,かかる公法上の法律関係が変動すること,この公法上の法律関係の当事者たる地位は,国と異なる統治主体として立法府が割り当てた処分権限を行政庁が行使することで生じた地位であり,国が裁定的関与を行ってこれが常に優越することは,自治権又は公物管理権の侵害であり,上記の公法上 の法律関係の変動は国との関係で保護されなければならないから,裁決の 準名宛人として,原告適格が認められるべきであると主張する。(なお,控訴人は,上記の点に関し,原審では主観訴訟・客観訴訟の概念に言及しつつ主張していたが(原判決第2の5参照),控訴審においてこれを整理し,実定法の問題としては,取消訴訟における原告適格において私的権利利益以外の利益が一律に排除されているのかという問題に尽きていると して,上記のとおり主張している。) 取消訴訟と原告適格の意義ア行訴法は,行政事件訴訟につき,抗告訴訟,当事者訴訟,民衆訴訟及び機関訴訟を定め(2条),抗告訴訟については,「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」と定義し(3条1項),取消訴訟は,処分又 は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができ(9条1項),自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができないとする(10条1項)一方で,機関訴訟については,「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」と定義し(6条),法律に 定める場合及び者に限って提起できるとし(42条),行訴法9条及 訴訟については,「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」と定義し(6条),法律に 定める場合及び者に限って提起できるとし(42条),行訴法9条及び10条1項を準用しないこととしている(43条1項)。 イ行訴法が定める上記の取消訴訟は,行政法制度に関する「行政主体と私人との区別」という思考枠組みに基づき,行政庁の公権力の行使から私人の権利を保護するために設けられたものであり,究極的には憲法3 2条の定める基本的人権としての裁判を受ける権利に基づくものであると解される。このような理解の下においては,取消訴訟の原告適格が肯定され得る「法律上の利益」とは,少なくとも,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益又はそれと同等のものである必要があるというべきである。 そして,行訴法9条1項にいう処分等の取消しを求めるにつき「法律 上の利益を有する者」とは,処分等により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,ここでいう法律上保護された利益とは,処分等を定めた根拠法令が,個人の個別的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益をいうと解されるところ(最高裁 昭和49年(行ツ)第99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,最高裁昭和57年(行ツ)第149号同60年12月17日第三小法廷判決・集民146号323頁参照),これは,上記の理解に依拠しているものといえる。 ウ他方,私人を名宛人として処分をした処分庁と,それを取り消す裁決 をした審査庁は,いずれも公権力を行使する側にあり,両者の関係は,上記イのような思考枠組みにおけ 拠しているものといえる。 ウ他方,私人を名宛人として処分をした処分庁と,それを取り消す裁決 をした審査庁は,いずれも公権力を行使する側にあり,両者の関係は,上記イのような思考枠組みにおけるものとは状況を異にする。そして,控訴人は,この点を踏まえつつも,審査庁がした本件裁決によって処分の名宛人と処分庁との間の法律関係が変動したことに伴い,控訴人の自治権や公物管理権が侵害されることをもって,取消訴訟の原告適格が肯 定され得る「法律上の利益」に当たると主張していると解されるので,以下で検討する。 検討ア自治権の侵害について控訴人は,立法府が地方公共団体の事務として割り振った権限に対 して,国の行政権が終局的に判断することは,地方自治の本旨に合致せず,地方公共団体には,私人の権利が法律等によって形成されたものであっても憲法上の訴権が保障されるのと同様,このような場合でも,国の行政権による自治権の侵害が生じ得ると主張する。 そこで検討するに,憲法第八章の地方自治に関する規定は,民主主 義社会における地方自治の重要性に鑑み,住民の日常生活に密接な関 連を有する公共的事務は,その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解され,上記保障の中には,団体自治,すなわち地方公共団体の事務がその意思と責任において処理されることも含まれている。 もっとも,上記のとおり,憲法における地方自治に関する規定は,一定の統治機構を制度として保障したものであり,憲法92条にいう「地方自治の本旨」の内実はかなり抽象的なものであること,そして,憲法にはその他に地方公共団体の機関等に関する規定(93条),権能に関する規定 治機構を制度として保障したものであり,憲法92条にいう「地方自治の本旨」の内実はかなり抽象的なものであること,そして,憲法にはその他に地方公共団体の機関等に関する規定(93条),権能に関する規定(94条),特別法に関する規定(95条)しか置か れていないことからすると,少なくとも,自治権といった広範な概念を措定して,憲法が,地方公共団体の行う事務(94条)全般における権能の行使に関し,私人が有する裁判を受ける権利と同等の保護を予定していると解することは困難であり,また,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同等のものを保 障していると断ずることも困難であるといわざるを得ない。 本件撤回処分は,自治法上,法定受託事務に属するものとされている地方自治体の事務である(埋立法51条1号,自治法別表第一)。 自治法は,法律又はこれに基づく政令により都道府県等が処理することとされる事務のうち,国が本来果たすべき役割に係るもので,国 においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(2条9項1号)を法定受託事務とする旨を定めている。そして,憲法の上記の規定を受けて,地方公共団体の自主性・自立性を確保するため,国と普通地方公共団体との関係に関する諸規定(第11章)を設けた上,法定受託事務につい ても,普通地方公共団体の行為について「国の関与」が行われること により生じる国と普通地方公共団体の紛争に関する各種規定を定め,国地方係争処理委員会への審査の申出(250条の13)や,国の関与に関する訴えの提起を認めている(251条の5等)。 しかしながら,①「国の関与」に関する上記の訴訟については,行訴法との関係では機関訴訟に係る条項の適用が前 査の申出(250条の13)や,国の関与に関する訴えの提起を認めている(251条の5等)。 しかしながら,①「国の関与」に関する上記の訴訟については,行訴法との関係では機関訴訟に係る条項の適用が前提とされており(自 治法251条の5第8項),取消訴訟において必然的に問題となる「法律上の利益」(行訴法9条及び10条1項)に関する条項の適用はないものとされている。②また,審査請求に対する裁決については,そもそも「国の関与」から除外されており(自治法245条3号),上記の訴訟を提起することができないこととされているところ,その 趣旨は,裁決自体が紛争解決のための準司法的な手続であって,別の法律で根拠及び手続が定められているのが通常であり,更に自治法上の関与に係る紛争処理制度の対象とすると,当事者を不安定な状態に置き,紛争解決を不必要に遅延させるおそれがあるためであると解されている。③そして,法定受託事務に係る都道府県の執行機関による 処分について処分の名宛人から行審法に基づく審査請求をする場合,審査庁は,当該処分に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する大臣と定められ(自治法255条の2第1項1号),大臣が審査庁としてした裁決により関係行政庁は拘束される(行審法52条1項)という制度を置いている。 このように,自治法の関係規定を通観しても,国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして定められた法定受託事務に属する処分に対する審査請求がされて,所管の大臣が審査庁として処分の名宛人たる私人の利益となる内容の裁決をしたという場面において,処分庁の地位につき,その公権力の行使に関して,裁判を受け る権利に関して私人が置かれている地位と同等のものに置こうとする 趣旨に出たものと解 なる内容の裁決をしたという場面において,処分庁の地位につき,その公権力の行使に関して,裁判を受け る権利に関して私人が置かれている地位と同等のものに置こうとする 趣旨に出たものと解される条項は見当たらない。 さらに,本件撤回処分の根拠法令である埋立法についてみるに,同法は,公有水面の埋立て(以下,単に「埋立て」という。)につき,その実施主体を限定することなく,一般に,埋立てをしようとする者は都道府県知事の免許(以下「埋立免許」という。)を受けるべきも のとするとともに(2条1項),国において埋立てをしようとするときには,これを実施する機関において都道府県知事の承認(以下「埋立承認」という。)を受けるべきものとしている(42条1項)。公有水面は国の所有に属するものであるから(1条1項),国は,本来,公有水面に対する支配管理権能の一部として,自らの判断によりその 埋立てをする権能を有すると解されるが,同法が上記のとおり国においても都道府県知事の処分を受けるべきものとしているのは,埋立てにより周囲に生ずる支障の有無等については,その地域の実情に通じた都道府県知事が審査するのが適当であり,このことは国が埋立てをしようとする場合にも妥当すること,国以外の者による埋立ての可否 を都道府県知事の埋立免許に係らせる一方で国は自らの判断のみで埋立てをし得るものとすれば,埋立て相互間の整合性を欠くこととなって公有水面の管理に支障が生じかねないこと等から,埋立ての可否の第一次的な判断を都道府県知事が一元的に行うこととするという趣旨に出たものと解される。 もっとも,埋立法上,都道府県知事の職権に属する事項は政令の定めるところにより国土交通大臣の認可を受けしむることを得るとされ(47条1項),同大臣の するという趣旨に出たものと解される。 もっとも,埋立法上,都道府県知事の職権に属する事項は政令の定めるところにより国土交通大臣の認可を受けしむることを得るとされ(47条1項),同大臣の監督に関する規定が置かれており,埋立免許については,埋立区域の面積が50ヘクタールを超えるものなどについては,同大臣の認可が必要とされ(埋立法施行令32条3号), 埋立の規模や場所によっては,同大臣による判断が経由されるべきも のとされている。 また,都道府県知事が埋立免許又は埋立承認を行う際の処分要件は,①一般公益に関するもの(国土利用上適正かつ合理的であること(4条1項1号),環境保全及び災害防止につき十分配慮されていること(同項2号),埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は 地方公共団体の法律に基づく計画に違背していないこと(同項3号),埋立地の用途に照らし公共施設の配置及び規模が適正であること(同項4号))や,②埋立地の処分方法や予定対価,資力等に関するもの(同項5号及び6号)のほか,③公有水面に関する権利者(法令により占用の許可を受けた者など)の同意等があること(同条3項)であ り(4条,42条3項),これらの処分要件からみる限り,埋立免許又は埋立承認に係る処分において法律上保護された利益として,知事が属する都道府県に帰属する個別的な権利利益が当然に含まれているとみることは困難であるし,また,埋立免許と埋立承認において実質的な差異は設けられていない。 このように,埋立法の関係規定を通観しても,都道府県知事は国土交通大臣の監督を受けるべき立場にあり,また,埋立免許又は埋立承認の権限を行使する知事の属する都道府県につき,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同 都道府県知事は国土交通大臣の監督を受けるべき立場にあり,また,埋立免許又は埋立承認の権限を行使する知事の属する都道府県につき,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同等のものが当然に法律上保護されているとみることはできない。 小括以上のとおり,自治権という観点から,憲法,自治法及び埋立法の関係規定を検討したとしても,都道府県知事のした埋立免許撤回処分に対してその名宛人たる私人が審査請求を行い,国土交通大臣がそれを取り消す旨の裁決をしたという場面において,処分庁が属する地方 公共団体が,その権限の行使に関し,私人が有する裁判を受ける権利 と同等の保護を受けることが予定されていると解することは困難であり,また,当該地方公共団体の有する権利利益として,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同等のものを見出すことは困難であるといわざるを得ない。 そして,以上の点については,国の機関が埋立承認撤回処分の名宛 人である場合においても,同様に解される。すなわち,埋立事業については,国の機関と国以外の者のいずれについても,埋立の主体となり得るものとして,都道府県知事の処分を受けて初めて埋立事業を適法に実施し得る地位を得ることができるものとされ,かつ,当該処分を受けるための規律が実質的に異なるものではないことから,国の機 関は,一般私人が立ちえないような立場で埋立承認の相手方となるものとはいえないと解されているところである(最高裁令和元年(行ヒ)第367号同2年3月26日第一小法廷判決・民集74巻3号471頁参照)。このことに,埋立事業の結果生じた土地については所有権の対象となり得ることをも勘案すると,埋立承認に係る処分に関する 限り,控訴人 2年3月26日第一小法廷判決・民集74巻3号471頁参照)。このことに,埋立事業の結果生じた土地については所有権の対象となり得ることをも勘案すると,埋立承認に係る処分に関する 限り,控訴人に属する沖縄県知事と国に属する沖縄防衛局との関係は,公権力を行使する行政庁と一般私人との関係と異ならないといえる。 そうすると,自治権の侵害を理由として,本件裁決の取消訴訟に係る「法律上の利益」を基礎づけることはできないといわざるを得ず,このような帰結は,現行法の解釈上,やむを得ないものである。これ と異なる控訴人の主張は採用することができない。 イ公物管理権について 控訴人は,①埋立承認は,都道府県知事が,公有水面の公物管理権の行使として,国の機関に対し,竣功通知により公用廃止という効果を生じさせるという公物管理上の地位ないし権限を付与する行為であ るから,本件は,海という公共用物につき埋立法に定められた内容で 機能管理を行っている控訴人が,その公物管理権の保護救済を求めて提起するものであるとし,また,②国有財産法9条3項,同法施行令6条2項1号カ,沖縄県国土交通省所管公共用財産管理規則2条1号に基づき財産管理を行っているとして,本件訴えは,かかる公物管理権の保護救済を求めるものとして適法である旨主張する。 そこで検討するに,都道府県知事が埋立承認の撤回処分をしたことは,特定の海域(以下「本件埋立海域」という。)についての公物管理に係る権限を行使したものと解することができるが,上記の撤回処分により,都道府県知事に対してもたらされる埋立法上の効果は,単に,同一海域について再度埋立許可又は埋立承認をする権限を回復し たというにとどまる。そして,埋立法上,埋立免許 が,上記の撤回処分により,都道府県知事に対してもたらされる埋立法上の効果は,単に,同一海域について再度埋立許可又は埋立承認をする権限を回復し たというにとどまる。そして,埋立法上,埋立免許又は埋立承認を行うことに関して,地方自治体が,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同等のものを当然に有するとはいえないことは,上記アで判示したとおりである。 また,海(海底地盤)は,国土交通大臣の所管する国有財産に当た り,その財産管理は,都道府県の法定受託事務に当たる(国有財産法9条3項,同法施行令6条2項1号カ)と解することができるが,現行法制度上,海について,海水に覆われたままの状態で一定範囲を区画しこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用されていないから(最高裁昭和55年(行ツ)第147号同61年12月16日第三 小法廷判決・民集40巻7号1236頁参照),都道府県における海の財産管理は,当然に私人と同様な意味・立場でのものということはできない。 控訴人は,埋立法に基づく権限の行使のほか,前記財産管理規則に基づいて,海に関する使用,工作物の築造,生産物の採取等の行為に ついての許可を与えるなどの管理を行ってきたと主張するが,海は陸 地の周囲に広範に広がっている上,海底地盤は常時海水に覆われ,控訴人において,同地盤の状態を把握したり,その維持管理のための措置を積極的に講じていたりするなどの事情もうかがわれないことや,自然公物たる水面については不特定多数人に供用させるために公物管理権者が特別の意思表示をすることを必要としないことをも踏まえる と,控訴人が本件埋立海域について上記内容の管理をしていることをもって,社会通念上,同海域が控訴人の事実的支配に属 るために公物管理権者が特別の意思表示をすることを必要としないことをも踏まえる と,控訴人が本件埋立海域について上記内容の管理をしていることをもって,社会通念上,同海域が控訴人の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあるとはいえず,控訴人が本件埋立海域について民事上の占有権を有すると認め得る状況にあるということもできない。 以上によれば,控訴人が,本件埋立海域について,公物管理権を行 使していることをもって,控訴人が,私人が裁判を受ける権利によって救済を認められるべき性格の権利利益と同等のものを享受しているということはできない。 そうすると,公物管理権の存在を理由として,本件裁決の取消しを求める「法律上の利益」を基礎づけることはできず,この点に関する 控訴人の主張は採用することができない。 なお,控訴人は,平成8年最高裁判決において,地方公共団体が,道路管理者としての土地の管理権に基づき,その所有者たる私人に対し,土地が市道の敷地であることの確認及び同土地上に設置された物件の撤去を請求することができるとされていることを指摘する。しか し,本件における管理権は,本来,紛争の相手方である被控訴人に帰属するものである上,一般海域は私人の所有の対象とならず,その管理・支配が著しく困難で,その管理権の内容性質も道路に関するものとは異なるものである点において,同判決とは事案を異にするというべきであり,控訴人の主張は採用の限りではない。 ウ控訴人のその他の主張について 控訴人は,昭和37年最高裁判決において,市が,住民の水源が破壊されその生活が脅かされるなどとして,私人に対する試掘権設定許可の取消しを求めて土地調整委員会の裁定を申請したところ,これを棄却する裁定がされたため, 7年最高裁判決において,市が,住民の水源が破壊されその生活が脅かされるなどとして,私人に対する試掘権設定許可の取消しを求めて土地調整委員会の裁定を申請したところ,これを棄却する裁定がされたため,同裁定の取消し等を求めたという事案で,本案判決がされていることを指摘する。 しかし,同判決は,土地調整委員会設置法49条1項(昭和37年法律第140号による改正前のもの)に基づく裁定取消訴訟に関するものであって,①上記の市は,裁定の原処分をした処分庁ではなく,公権力の行使に係る権限の回復や公法上の権利関係の変動を理由として訴えを提起したものではないという点や,②同法に基づく裁定手続 については,裁定の申請を認められる者の範囲(25条)や,公益上の関係を有する行政機関の当事者参加(37条)に係る規定があったことなどから,公益関係のある行政機関にも訴えの提起が認められるべきであると解釈されていた点(甲16)において,本件とは相違があり,事案を異にするというべきである。 控訴人は,令和2年最高裁判決において,出席停止の懲罰を受けた市議会の議員がその取消しを求めた事案で,原告適格を認めて本案判決をした原審の結論が維持されたことを指摘する。 しかし,同判決は,①議員が議事に参与し,議決に加わるなどして行う活動を阻害されて議員としての中核的な活動ができなくなるとい う状態を回復することを目的とした訴えであり,その行政主体性や公権力性が相当程度希薄である点や,②当該議員については懲罰処分に伴い議員報酬が減額されていたという事実があって,そのこと自体は,法律上の争訟の有無の判断を左右しないとしても,私人としての権利利益が侵害されている側面がある点において,本件とは相違があり, 事案を異にするとい れていたという事実があって,そのこと自体は,法律上の争訟の有無の判断を左右しないとしても,私人としての権利利益が侵害されている側面がある点において,本件とは相違があり, 事案を異にするというべきである。 エ小括以上のとおり,控訴人が主張する自治権及び公物管理権をもって,本件裁決の取消訴訟に係る「法律上の利益」を基礎付けることはできないから,控訴人には,本件裁決の行訴法3条3項に基づく取消訴訟についての原告適格は認められない。 3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えは不適法であり,これを却下した原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官下和弘 裁判官平山俊輔
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