令和7年9月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第11704号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和7年6月26日判決 原告株式会社シャリティー(以下「原告会社」という。)代表者代表取締役 a 原告 a (以下「原告A」という。)両名訴訟補佐人弁理士木森有平 被告コクヨ株式会社代表者代表取締役 訴訟代理人弁護士速見禎祥同溝内伸治郎訴訟代理人弁理士石田知里 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告製品目録記載の製品を輸出し、輸入し、製造し、譲渡し、譲渡の申出をし、又は譲渡のために展示してはならない。 2 被告は、別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は、原告らに対し、6000万円及びこれに対する令和6年1月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本判決で用いる略称(1) 被告製品:別紙被告製品目録記載の製品 (2) 本件特許(権):特許第5080691号の特許(に係る特許権)(3) 本件明細書:本件特許に係る特許公報の明細書又は図面(4) 本件発明:本件特許の請求項1 告製品目録記載の製品 (2) 本件特許(権):特許第5080691号の特許(に係る特許権)(3) 本件明細書:本件特許に係る特許公報の明細書又は図面(4) 本件発明:本件特許の請求項1ないし3に係る発明の総称(なお、請求項1に係る発明は「本件発明1」、請求項2に係る発明は「本件発明2」、請求項3に係る発明は「本件発明3」) (5) PW製品:PaperWelderInc.社の製造した製品名「PaperWelder」の製品(乙16)(6) 乙19文献:米国特許第3106139号に係る明細書(乙19文献に開示された発明は「乙19発明」) 2 原告の請求(訴訟物) 被告製品の譲渡等が本件特許権の侵害であることを理由とする、原告らの被告に対する、①特許法100条1項に基づく被告製品の譲渡等の差止請求権、②同条2項に基づく被告製品の廃棄請求権、③民法709条に基づく損害賠償請求権又民法703条に基づく不当利得返還請求権 3 前提事実(争いのない事実及び証拠〔枝番を含む。以下同じ〕により容易に認 定できる事実)(1) 当事者等ア原告Aは、本件特許の特許権者であり、原告会社の代表取締役である。 イ原告会社は、原告Aから、本件特許の登録日から存続期間満了日(令和12年8月11日)までの間を対象期間として、本件特許の専用実施権の設定 を受けている(甲23、24)。 ウ被告は、文具類の製造販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告Aの特許権(甲1、2)本件特許の書誌的事項は、次のとおりである。 ア出願日 :平成22年8月11日イ優先日 :平成21年8月12日 (国際出願番号 PCT/JP2010/005043)ウ登録日 :平成24 事項は、次のとおりである。 ア出願日 :平成22年8月11日イ優先日 :平成21年8月12日 (国際出願番号 PCT/JP2010/005043)ウ登録日 :平成24年9月7日エ発明の名称:紙の綴じ込み用金型セット(3) 本件発明の構成要件の分説本件発明の構成要件は、次のとおり分説される。 【請求項1】A 対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の金型からなり、この一対の金型で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、一対の金型の歯部を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む紙の綴じ込み用金型セットであって、 B 前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部は、断面略三角形で所定の歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、C-1 前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部のうち、一方の金型に有する歯部にあっては、歯幅方向の一側または両側が、歯部の山頂部に向かって狭幅方向に傾斜する傾斜面部となっており、 C-2 この歯部に対向する他方の金型に有する歯部にあっては、少なくとも、歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部における傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在していることを特徴とする紙の綴じ込み用金型セット。 【請求項2】 D 前記一対の金型のうち、少なくとも一方の金型の歯部を有する対向面には、 歯部の幅方向の一側または両側に、歯部の谷底部と略同一面となる平坦面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙の綴じ込み用金型セット。 【請求項3】E 前記歯部の山頂部の幅方向の両側端部と谷底部の幅方向の両側端部は曲 面形状となっていることを特徴とする請求項1または2の とする請求項1に記載の紙の綴じ込み用金型セット。 【請求項3】E 前記歯部の山頂部の幅方向の両側端部と谷底部の幅方向の両側端部は曲 面形状となっていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1に記載の紙の綴じ込み用金型セット。 (4) 被告製品の譲渡等アコクヨS&T株式会社は、業として、被告製品を製造し、平成26年10月22日に販売を開始した。被告は、平成27年10月1日、同社を吸収合 併し、以後、被告製品を製造販売している。(甲10)イ被告製品は、金属歯で紙を圧着するプレスロック式を採用した「針なしステープラー」である(甲3、10)。 被告製品は、本件発明の構成要件C-1を充足する(争いなし)。 (5) 原告らの警告 原告Aは、平成27年3月13日付け通告書をもって、コクヨS&T株式会社に対し、被告製品の製造販売が本件特許権の侵害であるとして、被告製品の製造販売の中止を求めた。これに対し、同社は、被告製品と本件発明との対比を具体的に説明するように求め、その後、被告は、同社と同様の回答をした。 (甲11、12、乙1ないし4) 原告Aは、令和5年5月26日付け警告書により、被告に対し、被告製品の製造販売の差止め及び廃棄を求め、損害賠償請求及び不当利得返還請求の意向を示した(甲13)。 4 争点(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1) (2) 無効理由の有無(争点2) ア明確性要件違反の有無(争点2-1:本件発明)イサポート要件違反の有無(争点2-2:本件発明)ウ PW製品を公然実施品とする新規性欠如の有無(争点2-3:本件発明1及び3)エ乙19文献を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如の有無(争点2- 4:本件発明1及び3) 件発明)ウ PW製品を公然実施品とする新規性欠如の有無(争点2-3:本件発明1及び3)エ乙19文献を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如の有無(争点2- 4:本件発明1及び3)(3) 原告の損害額又は被告の利得額(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件発明の技術的範囲への属否)について【原告らの主張】 (1) 被告製品の構成被告製品の構成は、別紙「被告製品の構成(原告らの主張)」のとおりである。 (2) 構成要件Aを充足すること本件発明1では、金型セットを使用する綴じ具についての限定はなく、ホッ チキスを対象としている。 被告製品は、上記(1)の構成を備えた複数枚の紙を綴じ込む、手動針なし紙綴器であるから、構成要件Aを充足する。 なお、構成要件Aの文言は「対向して配置され…一対の金型の歯部を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む紙の綴じ込み用金型セット」である から、構成要件Aの充足性は、歯部が噛み合った状態で判断すべきである。また、本件発明の本質的な部分である構成要件C-2の構成において、下歯の歯部に対して上歯の歯部が回転しながら接触するか等は重要ではないから、構成要件Aの「金型セット」を上下の金型(歯部)が前後方向に移動しないものと限定することはできない。 (3) 構成要件Bを充足すること 構成要件Bは、本件発明の本質的部分ではないから、仮に、「上歯及び下歯」が台形であっても構成要件Bを充足する。 (4) 構成要件C-2を充足すること構成要件C-2は、上記(2)の構成要件Aの解釈のとおり、上下の歯が噛み合った状態の構成を示すものであるから、構成要件C-2の充足性は、上下の 歯が噛み合った状態で、 C-2を充足すること構成要件C-2は、上記(2)の構成要件Aの解釈のとおり、上下の歯が噛み合った状態の構成を示すものであるから、構成要件C-2の充足性は、上下の 歯が噛み合った状態で、上下の歯部の各山頂部の位置がずれているか否かを検討することとなる。 原告は、70台以上の被告製品を入手し、複数回にわたって上下の歯部の位置のズレを測定し(甲16、45、52)、石川県工業試験場では技師を伴って測定したところ(甲70)、すべての被告製品において上の歯部が下の歯部よ り前方にズレ(なお、後方にズレがあった製品はなかった。)、ズレの程度が約0.31mmであることを確認した。そして、JIS規格の公差表によれば、被告製品のような「当事者(設計・生産・組立)」における普通公差(通常公差)は「+0.047mm、-0.109mm」であり、許容誤差は「0.156mm」であるから、被告製品のズレの数値は、製造誤差や組立誤差として許容 できる数値ではない。 したがって、被告製品は、構成要件C-2を充足する。 なお、被告は、自らの測定結果をもって被告製品のズレは製造誤差又は組立誤差の範囲内であると主張するが、被告の測定は信用できず、また、ズレがないとする被告製品の設計図面(乙21)は虚偽である。 (5) 構成要件Dを充足すること「谷底部と略同一面となる平坦面」の該当性の判断において重要な点は、谷底部の中央部分の段差の有無ではなく、谷底部の端部が、複数枚の紙が曲面形状の端部と平坦面が接していることによって、複数の紙の綴じ力を高めながら紙の破れを防止するとの本件発明の作用効果を奏するか否かという点である。 この点、複数の紙が山頂部と谷底部の端部の位置に存在し、谷底部の曲面形状 の端部によって接する平坦 めながら紙の破れを防止するとの本件発明の作用効果を奏するか否かという点である。 この点、複数の紙が山頂部と谷底部の端部の位置に存在し、谷底部の曲面形状 の端部によって接する平坦面に案内されることによって、上記作用効果を奏する。 被告製品の構成は、上記(1)のとおりであり、谷底部K8の端部である曲面形状の端部K8aが平坦面K11に接しているから、平坦面K11は谷底部K8と略同一面を形成しているといえる。 よって、被告製品は、構成要件Dを充足する。 (6) 構成要件Eを充足すること「曲面形状」とは、「位相幾何学における曲面…は二次位相多様体である。最もよく知られた曲面の例は、古典的な三次元ユークリッド空間R内の立体の境界として得られる曲面である点」などと説明されている。 被告製品の立体的写真(甲9)によれば、歯部の山頂部の端部と谷底の端部の形状は「曲面形状」であることは明らかである。 よって、被告製品は、構成要件Eを充足する。 【被告の主張】(1) 被告製品の構成 被告製品の構成は、別紙「被告製品の構成(被告の主張)」のとおりである。 (2) 構成要件Aを充足しないこと被告製品のような手動針なし紙綴器は、上本体が支点を軸として円弧状に上下に動き、上歯と下歯の山頂部の前後方向の位置が上本体の回転とともに変化し、回転位置によって上歯と下歯の山頂部の前後方向の位置が変化する。しか し、構成要件C-2は歯部の山頂部の前後方向の位置関係を特定するものであるにもかかわらず、特許請求の範囲及び本件明細書には、紙の押圧時に歯部の山頂部の前後方向の位置関係が変化する場合に、どの点をもって構成要件を充足するかに関する記載はなく、むしろ、本件明細書には、上下の金型が上下垂直方向に動く 範囲及び本件明細書には、紙の押圧時に歯部の山頂部の前後方向の位置関係が変化する場合に、どの点をもって構成要件を充足するかに関する記載はなく、むしろ、本件明細書には、上下の金型が上下垂直方向に動くものと上歯が左右方向に動くもの(【図22】)の構成のみ記載さ れており、歯部の山頂部の前後方向の位置が変化する構成の記載がない。また、 原告らの主張するとおり、構成要件充足性を上下の歯が「噛み合った状態」で判断するとしても、綴じ込む紙の厚さや枚数によって「噛み合った状態」における上下歯の前後方向の位置は変化し、本件発明の技術的範囲に属したり属しなかったりすることは妥当でない。以上から、構成要件A及びC-2の「金型セット」とは、上下の金型が前後方向に移動しないもののみを意味すると解す べきである。 したがって、上下の歯が前後方向に移動する被告製品は、構成要件Aの「金型セット」を充足しない。 (3) 構成要件Bを充足しないこと被告製品の上歯及び下歯の歯部は、いずれも断面円弧状であり「断面略三角 形」ではない。 よって、被告製品は、構成要件Bを充足しない。 (4) 構成要件C-2を充足しないこと上記(2)と同様の理由から、被告製品は、構成要件Cの「金型セット」を充足しない。 また、手動針なし紙綴器は、従来技術として存在し、複数の部品を組み立てて構成するため、部品の製造誤差や組立誤差による上下歯の前後方向のズレが不可避的に生じるものである。そして、本件発明の特徴部分は、従来技術にない新たな構成である構成要件C-2の構成であるところ、部品の製造誤差や組立誤差により、上下歯のハブの山頂部が前後方向にズレた構成も含むとすれば、 従来技術との区別ができない。そうすると、構成要件 新たな構成である構成要件C-2の構成であるところ、部品の製造誤差や組立誤差により、上下歯のハブの山頂部が前後方向にズレた構成も含むとすれば、 従来技術との区別ができない。そうすると、構成要件C-2は、少なくとも部品の製造誤差や組立誤差による上下歯の山頂部の前後方向のズレ程度のものは含まず、意図的に上下歯の山頂部の前後方向のズレを設定したものを意味するというべきである。 しかし、被告の測定結果(乙6)によれば、被告製品の上歯の歯部の山頂部 と下歯の歯部の山頂部は0.06mmズレが生じているが、これは製造誤差又 は組立誤差の範囲内であり、このような誤差を除き、被告製品の上歯の歯部と下歯の歯部の山頂部の前後方向の位置は揃っている。また、被告製品の設計図面(乙21)では、上歯を挿入する上本体の上歯ホルダーと下歯を挿入する下本体の下歯ホルダーの各ホルダー前側及び後側のねじ穴の中心を通る線と歯の挿入部の中心を通る線の距離はそれぞれ同一である(順に、5.6mm、15. 6mm)とされているから、被告製品は、組立て時の上本体と下本体において、軸穴の中心を通る線から各歯の挿入部の中心を通る線との距離は同一になるように設計されており、製造上の誤差を除き、上歯の歯部と下歯の歯部の山頂部の前後方向の位置を揃えるとの技術思想に基づき設計されているといえる。実際、被告製品は、上下の歯の前後方向の位置を揃えた状態で固定して製造され ている。 したがって、被告製品は、構成要件C-2を充足しない。 なお、原告らは、被告製品の上下の歯の位置について複数の測定結果を証拠として提出するが、測定のポイントが不適切であったり、測定内容の詳細が不明であるから、いずれも被告製品において上歯と下歯の山頂部に意図的なズレ があることを の位置について複数の測定結果を証拠として提出するが、測定のポイントが不適切であったり、測定内容の詳細が不明であるから、いずれも被告製品において上歯と下歯の山頂部に意図的なズレ があることを裏付けるものではない。 (5) 構成要件Dを充足しないこと上記のとおり、被告製品は、構成要件AないしC-2を充足しない。また、被告製品の歯部の谷底面と平坦面の間には段差があるから、少なくとも構成要件Dの「歯部の幅方向の一側または両側に、歯部の谷底部と略同一面となる平 坦面」を備えていない。 よって、被告製品は、構成要件Dを充足しない。 (6) 構成要件Eを充足しないこと上記のとおり、被告製品は、構成要件AないしDを充足しないから、構成要件Eも充足しない。 2 争点2-1(明確性要件違反の有無)について 【被告の主張】(1) 本件発明について本件発明1は「歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部における傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在している」との構成を有する。しかし、「傾斜面部側の谷底部」がどの範囲を指すのかについては、本件明細書の【図6】 から「傾斜面部の方向」が同図赤矢印の方向であることは理解できるが、その方向の「谷底部」の範囲は何ら特定されていない。また、本件明細書をみても、上記構成に関する記載は、山頂部が「傾斜面部側の谷底部に掛かる位置」にどの程度存在するかについての記載があるのみ(【0020】)である。 よって、本件発明1の「傾斜面部側の谷底部」がどの範囲を指すのか不明確 であり当業者がその技術的範囲を画定することができないから、本件発明1は、明確性要件を欠き、これに従属する本件発明2及び同3も明確性要件を欠く。 (2) 本件発明3に 範囲を指すのか不明確 であり当業者がその技術的範囲を画定することができないから、本件発明1は、明確性要件を欠き、これに従属する本件発明2及び同3も明確性要件を欠く。 (2) 本件発明3について本件発明3は「歯部の山頂部の幅方向の両端部と谷底部の幅方向の両端部は曲面形状」との構成を有するが、「山頂部の幅方向の両端部は曲面形状」及び「谷 底部の幅方向の両端部は曲面形状」とはどの部分が曲面形状を指すのか不明確である。 よって、本件発明3は、明確性要件を欠く。 【原告らの主張】争う。 次の理由のほか、本件特許は、対応外国特許も含めて特許として成立しているので、明確性要件違反の無効理由はない。 (1) 本件発明1について「側」とは、物の一つの方向・方面・一面との意味であり、一面は物体の一つの面を意味するから、本件発明1において「谷底部」の範囲を特定しなくと も技術的範囲を理解することができる。 (2) 本件発明3について「曲面形状」とは、「位相幾何学における曲面…は二次元位相多様体である…」と説明されており、山頂部の端部を曲面にすると、その1か所を曲面にすれば、横にも縦にも斜にも曲面の広がりが生じ、これが「曲面形状」であり、球体の境界の面も「曲面形状」といえる(なお、被告製品の山頂部端部K7と谷底部 端部K8の形状が「曲面形状」である。)。 3 争点2-2(サポート要件違反の有無)について【被告の主張】本件明細書によれば、本件発明の課題は「紙の破れを抑えながら複数枚の紙を圧縮することが可能となり、紙の圧縮部に強い結着力が得られることから、複数 枚の紙を、破れを抑えた状態で強い結着力で確実に綴じ込むこと」(【0009】【 題は「紙の破れを抑えながら複数枚の紙を圧縮することが可能となり、紙の圧縮部に強い結着力が得られることから、複数 枚の紙を、破れを抑えた状態で強い結着力で確実に綴じ込むこと」(【0009】【0010】【0017】)にある。しかし、本件発明の特有の構成は構成要件C-2の構成のみであるところ、本件明細書には、構成要件C-2の作用効果に関する記載があるが(【0009】【0010】【0017】)、これを裏付ける実験結果などの記載はなく、上記作用効果が生じる歯の幅や形状等の具体的な条件の記 載はない。 以上によれば、当業者において、歯の形状(歯の凹凸の深さ、幅、凹凸の形状、傾斜面部の角度、山頂部の長さ等)や歯部にどの程度の力が加わるかという点を捨象して、本件明細書をもって、単に本件発明1の構成を備えるだけで上記課題を解決することができると認識することはできないから、本件発明1は、サポー ト要件を欠き、これに従属する本件発明2及び同3もサポート要件を欠く。 【原告らの主張】争う。 本件特許は、対応外国特許も含めて特許として成立しているので、サポート要件違反の無効理由はない 4 争点2-3(PW製品を公然実施品とする新規性欠如の有無)について 【被告の主張】(1) PW製品の構成PW製品は、本件特許の優先日より前の1957年から1984年の間に販売されていた。 PW製品は、以下の構成を有する。 a’ 上下に対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する上歯及び下歯を備え、上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であり、b’ 上歯及び下歯のそれぞれの対 歯及び下歯を備え、上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であり、b’ 上歯及び下歯のそれぞれの対向面に有する歯部は、断面略三角形で所定の 歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、c-1’ 上歯及び下歯の歯部はいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜する傾斜面部を備えており、c-2’ 上歯の歯部の山頂部と下歯の歯部の山頂部のズレは0.15mm~0. 30mmであり、上下の歯の山頂部は完全に一致しない、 e’ 上歯及び下歯の歯部の山頂部の幅方向の両側端部と谷底部の幅方向の両側端部が曲面形状になっている(2) PW製品は本件発明1と一致することPW製品の構成a’、b’、c-1’は、順に本件発明1の構成要件A、B、C-1と一致する。 また、構成要件C-2について、原告らの主張するとおり、上下の歯部の「山頂部」がぴったり重ならない限り、一方の歯部の「山頂部」が「傾斜面部側の谷底部に掛かる位置」まで存在するのであれば、PW製品は、上下の歯が傾斜面部を備えることを前提に(構成a’)、上歯部の山頂部と下歯部の山頂部のズレは0.15mmないし0.30mmであるから、構成要件C-2の構成と一 致する。 よって、PW製品は、本件発明1と一致する。 (3) PW製品は本件発明3と一致すること本件明細書には、本件発明3の「曲面形状」について具体的な記載はなく、どのような形状を含むか否かは判然としないが、実施例(【0035】)によれば、紙の破れが効果的に防止できるものであれば本件発明3の「曲面形状」に 含まれると理解できる。 被告が委託し く、どのような形状を含むか否かは判然としないが、実施例(【0035】)によれば、紙の破れが効果的に防止できるものであれば本件発明3の「曲面形状」に 含まれると理解できる。 被告が委託した第三者による試験結果によれば、PW製品は、4枚重ねの紙を綴じたときに紙の破れを効果的に防止している。また、PW製品にある「曲面形状」が構成要件Eの「曲面形状」とは異なる事情は見当たらない。 よって、PW製品は、本件発明3と一致する。 (4) 以上のとおり、本件発明1及び同3は、公然実施品であるPW製品と同一であるから、本件発明1及び3には、新規性欠如の無効理由がある。 なお、原告らは、PW製品にズレが認められるとしても不可避な組立誤差であると主張するが、この解釈を前提とすれば、被告製品も構成要件C-2を充足しないこととなる。また、原告らは、公然実施発明の認定にあたって、本件 明細書に記載された作用やメカニズムまで認識することを要求するが、独自の理論である。 【原告らの主張】 争う。 PW製品の上下の歯部の山頂部のズレに関する被告の測定結果は信用できない。 PW製品に対する原告らの測定・分析によれば、歯部の山頂部のズレは「ほぼ0. 0mm」であるから、PW製品は、構成要件C-2の構成を有しない。また、本件特許の審査過程において、特許庁はPW製品と同じ内容と思われる実用新案に係る考案(甲57)を踏まえて登録査定をしている。加えて、当業者は、PW製品に接しても、本件発明の構成や作用効果、メカニズムを認識することは困難で ある。 よって、PW製品は、本件発明1及び3の公然実施品であるとはいえない。 なお、被告の測定したPW製品(乙16)は、使用前の状態と同一であるとはいえず、また、 困難で ある。 よって、PW製品は、本件発明1及び3の公然実施品であるとはいえない。 なお、被告の測定したPW製品(乙16)は、使用前の状態と同一であるとはいえず、また、被告による測定結果は信用できない。 5 争点2-4(乙19文献を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如の有無)について 【被告の主張】(1) 乙19発明の構成乙19文献は、本件優先日前の1963年10月8日に特許付与された米国特許に係る明細書である。 乙19発明の構成は、次のとおりである。 a’’ シート圧着デバイスは、対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な突出端部28を有する上下一対の歯26を有し、この一対の歯26で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、一対の歯26を嚙み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であり、b’’ シート圧着デバイスは、上下一対の歯26のそれぞれの対向面に有する 突出端部28が、断面略三角形で所定の歯幅を有し、対向面に複数連なっており、c-1’’シート圧着デバイスは、上下一対の歯26の突出端部28が歯幅方向の両側が突出端部28の山頂部に向かって幅狭方向に傾斜する傾斜面部を有しており、 c-2’’シート圧着デバイスの上下一対の歯26は、前後方向に揃った位置に設けられているが、各製品の製造誤差や組立誤差が生じることは不可避であるから、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部が上下で完全に一致することは至難であり、ほとんど全ての場合において、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部は前後方向(歯幅方向)にズレており、 e’’シート圧着デバイスの上下一対の歯26は、山頂部の端部及び谷底部の 端部が曲面 場合において、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部は前後方向(歯幅方向)にズレており、 e’’シート圧着デバイスの上下一対の歯26は、山頂部の端部及び谷底部の 端部が曲面形状となっている。 (2) 乙19発明と本件発明1の相違点乙19発明の構成a’’、b’’、c-1’’と本件発明1の構成要件A、B及びC-1は一致する。 構成要件C-2について、上記のとおり原告らの主張する解釈を前提とする と、乙19発明は、各部品の製造誤差や組立誤差を考慮すれば、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部が上下で完全に一致することは至難であり、ほとんどすべての場合において、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部は前後方向(歯幅方向)にズレているから、乙19発明は、本件発明1の構成要件C-2の構成と同一である。 また、乙19文献には、各部品の製造誤差や組立誤差が生じることが不可避であることまで記載されていないとすると、乙19発明と本件発明1は、構成要件C-2の構成を備えているか否かにおいて相違する。しかし、当業者は、乙19発明のシート圧着デバイスを現に製造しようとした場合、各部品の製造誤差や組立誤差に起因して、上下一対の歯26の突出端部28の山頂部は前後 方向(歯幅方向)にズレる構成が実現される。したがって、相違点に係る構成は、当業者が乙19発明を実施しようとすれば当然に到達する不可避的な構成にすぎず、容易に想到することができる。 (3) 乙19発明と本件発明3の相違点及び容易想到性上記のとおり、本件発明3の構成要件Eの「曲面形状」の具体的な構成は判 然としないが、乙19発明の上下一対の歯26の山頂部の端部及び谷底部の端部は「曲面形状」であるといえる。 したがって 記のとおり、本件発明3の構成要件Eの「曲面形状」の具体的な構成は判 然としないが、乙19発明の上下一対の歯26の山頂部の端部及び谷底部の端部は「曲面形状」であるといえる。 したがって、乙19発明の構成と本件発明3の構成は一致する。 なお、構成要件Eの「曲面形状」が乙19発明の「曲面形状」とは異なる部分であると解すると、乙19発明と本件発明3の相違点は、構成要件Eの「曲 面形状」の有無となるが、歯を構成する部品の端部を曲面としないことは至難 の業であり、通常、各端部に一定のRが形成されるのが通常であるから、当業者において、乙19発明の圧着デバイスの歯の端部を曲面形状とすることは一般的な技術事項の適用にすぎず、容易に想到することはできる。 (4) まとめ以上から、本件発明1及び3には、新規性欠如又は進歩性欠如の無効理由が ある。 【原告らの主張】争う。 乙19発明の構成における上下の歯部のズレは、不可避的な組立誤差であり、構成要件C-2の構成と異なる。 また、当業者において、乙19発明を見ても、本件発明1及び3の構成や作用効果を想起することはできない。 6 争点3(原告らの損害額又は被告の利得額)について【原告らの主張】被告による被告製品の製造販売等の行為は、原告Aの保有する本件特許権を侵 害する不法行為である。被告の不法行為により、原告A及び本件特許の専用実施権者である原告会社は、次の算式のとおり、被告製品の販売(平成26年10月)からの10年間、少なくとも合計2億円のライセンス料相当額の損害(特許法102条3項)を被り、又は、被告は同額の利得を不当に得た。 (算式) ・ 2億円(被告製品の年間売上げ推定額)×10年(被 、少なくとも合計2億円のライセンス料相当額の損害(特許法102条3項)を被り、又は、被告は同額の利得を不当に得た。 (算式) ・ 2億円(被告製品の年間売上げ推定額)×10年(被告製品の販売開始から本件提訴までの期間)×10%(ライセンス料率)よって、原告らは、被告に対し、上記損害又は不当利得金の一部として、6000万円の支払を求める。 【被告の主張】 いずれも否認ないし争う。 第4 判断 1 争点1(本件発明の技術的範囲への属否)について(1) 構成要件Aについてア 「金型セット」の意義 特許請求の範囲には、「金型セット」の意義についての記載はなく、その移動方向に関する記載もない。 本件明細書には、「本発明は、…紙製品全般に関して、金属製綴じ針や糊等を使用せず、安全性及び生産性やコスト面で優れ、且つ、廃棄処分が容易な紙を綴じ込む為の機器に使用する金型セットを提供することにある。」 (【0006】)、「本発明に係る紙の綴じ込み用金型セットは、紙以外に…プラスチックフィルム、アルミなどを紙に積層した金属性シート材などの綴じ込みにも適用される。」(【0017】 )との記載があり、これらの記載によれば、「金型セット」とは、紙や上記金属性シート材を綴じ込むための機器に使用するための金型のセットであると解される。また、本件明細 書の実施例には、紙の綴じ込み方法の一例として、「このように構成された一対の金型1、2からなる綴じ込み用金型セットは…一対の金型1、2で重ねた複数枚の紙15を厚さ方向両側から強く加圧し、金型1、2の歯部5、6を噛み合わせることにより、複数枚の紙15は歯部5、6により圧縮され、歯部5、6の側壁面部13間で ットは…一対の金型1、2で重ねた複数枚の紙15を厚さ方向両側から強く加圧し、金型1、2の歯部5、6を噛み合わせることにより、複数枚の紙15は歯部5、6により圧縮され、歯部5、6の側壁面部13間で強く上下方向に加圧されることになる。これ により重ねられている複数枚の紙15が強く擦れ合い、表面の繊維が露出して絡んで圧縮されることにより圧縮部16が一体化し、重なり合う紙15同士がしっかりと結着する。」(【0027】)との記載があり、上下の金型が垂直方向に移動すると認められる金型セットの例示はある。しかし、本件明細書をみても、金型セットが移動する方向に関する記載はなく、このよう な移動方向が本件発明の作用効果に影響すると解する記載も見当たらない。 そうすると、本件発明1の「金型セット」とは、金型セットの移動方向を問わず、一対の金型で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から強く加圧し、金型の歯部を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込むことができるものと解するのが相当である。 イ被告製品の構成要件充足性 証拠(甲27、28、45、乙6)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品は、「上下に対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する上歯及び下歯を備え、この上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器」との構成(別紙「被告製品の構成(裁判所の認定)」 の構成a)を有することが認められる。そして、上記(1)アのとおり、構成要件Aの「金型セット」について、上下の金型の移動方向を限定して解する必要はない。 よって、被告製品は、構成要件Aを充足する。 ウ被告の主張について 被 のとおり、構成要件Aの「金型セット」について、上下の金型の移動方向を限定して解する必要はない。 よって、被告製品は、構成要件Aを充足する。 ウ被告の主張について 被告は、構成要件A及び構成要件C-2の「金型セット」の意義につき、紙を挟んだ「噛み合った状態」を意味することを前提に、綴じる紙の厚さ及び枚数によって本件発明の技術的範囲への属否が異なるような製品が構成要件に含まれるような解釈は妥当ではないから、「金型セット」とは、上下の金型が前後方向に移動しないもののみを意味するなどと主張する。 しかし、本件明細書には、実施例の一例として「一対の金型の歯部を噛み合わせた状態」として「歯部5、6を噛み合わせたとき、一方の金型1の歯部5の山頂部7と他方の金型2の歯部6の谷底部8との間に隙間Sが形成されるようになっている(図2、図3参照。)。」(【0018】、【0023】)との記載があり、【図3】には紙が挟まれていない状態が記載され ている。そうすると、「噛み合った状態」を押圧する紙を挟んだ状態を意味 することを前提とする被告の上記主張は、前提において誤りがあり、採用できない。 (2) 構成要件Bについてア 「断面略三角形」の意義特許請求の範囲及び本件明細書には、「断面略三角形」の具体的な形状を 特定する記載はない。本件明細書の実施例には、「この歯部5、6にあっては、本例では山頂部7の曲面が谷底8の曲面より大きい曲率に形成されており、歯部5、6を噛み合わせたとき、一方の金型1の歯部5の山頂部7と他方の金型2の歯部6の谷底部8との間に隙間Sが形成されるようになっている。」(【0023】)との記載があり、歯部の山頂部7が隙間Sを形成 できるように曲 き、一方の金型1の歯部5の山頂部7と他方の金型2の歯部6の谷底部8との間に隙間Sが形成されるようになっている。」(【0023】)との記載があり、歯部の山頂部7が隙間Sを形成 できるように曲率の大きい曲面であること、すなわち、歯部の断面の上部は曲線状であることが開示されており、歯部の断面の上部は円弧状で両辺及び底辺は直線状である三角形状、すなわち、三角形の頂角の部分が円弧状である形状が「断面略三角形」状の具体例(【図1】【図3】【図4】【図6】)として記載されている。 そして、「略」の一般的な意義は、「はぶくこと。簡単にすること。あらまし」(広辞苑第7版)であり、訓読みは「ほぼ」であることも踏まえると、構成要件Bの「断面略三角形」とは、「断面」がほぼ三角形の形状であることを意味し、三角形の頂角が円弧状のものも含むといえる。 イ被告製品の構成要件充足性 被告製品の歯部の試作品の図面(乙7)には、「R=0.22、凹はR=0.196」との記載があるから、歯部の断面の上部は円弧状であるといえる。また、歯部の外観(甲51)をみても、上記断面は、三角形の頂角が円弧状であると認められる。そして、被告製品の歯部の外観の写真(甲3、甲5)によれば、被告製品の上歯及び下歯の対向面に有する歯部は、所定の歯 幅を有し、対向面に複数連なって設けられていることも認められる。 よって、被告製品は、「前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部K5、K6は、断面略三角形で所定の歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、」(別紙「被告製品の構成(裁判所の認定)」の構成b)との構成を有し、構成要件Bを充足する。 (3) 構成要件C-2について ア 「この歯部に対向す に複数連なって設けられており、」(別紙「被告製品の構成(裁判所の認定)」の構成b)との構成を有し、構成要件Bを充足する。 (3) 構成要件C-2について ア 「この歯部に対向する他方の金型に有する歯部にあっては、少なくとも、歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部における傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在している」の意義特許請求の範囲の文言によれば、本件発明1において、「歯部」は「対向して配置され」、「対向面に互いに噛み合い可能」(構成要件A)である上、その 一方の「歯部」は、「歯幅方向の一側または両側が、歯部の山頂部に向かって狭幅方向に傾斜する傾斜面部」となっていることを前提に、構成要件C-2は、この傾斜面部を有する歯部に対向するもう一方の「金型に有する歯部」の山頂部が、「傾斜面部を有する方の歯部の当該傾斜面部側の谷底部に掛かる位置」にまで及んでいることを求めるものであるところ、傾斜面部を有する歯 部(以下「傾斜面部保有歯部」という。)の向かい側の歯部(以下「他方歯部」という。)の山頂部の端が、歯部の歯幅方向での位置として、傾斜面部保有歯部の山頂部の幅の範囲におさまるのではなく、傾斜面部保有歯部の山頂部の端よりも傾斜面部の方向にズレた位置にあるとの構成を意味するものと解される。また、このようなズレの程度については、特許請求の範囲の文言上はも ちろん、本件明細書を見ても、これを特定の程度に限定する根拠を見出すことはできないといえる(【0020】参照)。 そして、本件明細書の実施例(【0022】以下)によれば、上記の「対向して配置されて」いる歯部は「上方」と「下方」の歯部であると記載されているが、傾斜面部を有し得る歯部としては、上方又は下方のいずれかの歯部に 限定するもので 22】以下)によれば、上記の「対向して配置されて」いる歯部は「上方」と「下方」の歯部であると記載されているが、傾斜面部を有し得る歯部としては、上方又は下方のいずれかの歯部に 限定するものではなく、双方ともに想定されるものであるところ、双方の歯 部ともが傾斜面部を有する場合には、いずれもが傾斜面部保有歯部であるとともに、その対としての他方歯部にも当たることを前提に、他方歯部の山頂部の端の位置の上記意味でのズレが1つでもあれば、構成要件C-2を充足することとなる。 他方、本訴訟の経過においては、上記ズレが製造者による意図的なズレで ある場合に限定解釈すべきか否かをめぐる主張もあったものであるが、物の発明は、客観的な構成で特定されるものであって、そのような主観的な意図の有無が、当該発明の技術的範囲の属否の判断を左右するとの解釈はとり得ない。 次に、構成要件C-2の構成が、歯部がどの位置にある時点の構成である かについては、特許請求の範囲には具体的な特定をする記載はない。この点、本件明細書には、「この歯部に対向する他方の金型に有する歯部にあっては、少なくとも、歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部における傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在するので、対向する一対の金型の歯部にあっては、一方の金型の歯部の傾斜面部側の山頂部の端部は他の金型の歯部の山頂部 の幅内にあり、対向する一対の金型の歯部を噛み合わせたとき、一方の金型の歯部の傾斜面部側の山頂部の端部側が他方の金型の歯部の山頂部の幅内で噛み合い、一方の金型の歯部の傾斜面部側の谷底部と他方の金型の歯部の山頂部と噛み合うことになる。」(【0008】)、「このような一対の金型で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、一対の金型の歯部を噛み合わ 一方の金型の歯部の傾斜面部側の谷底部と他方の金型の歯部の山頂部と噛み合うことになる。」(【0008】)、「このような一対の金型で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、一対の金型の歯部を噛み合わせたと き…傾斜面部側の山頂部の端部側が他方の金型の歯部の山頂部の幅内で噛み合い、山頂部の端部同士が対向して噛み合わないので、強い圧力を加えても紙の破れを抑えることができ…」(【0009】)との記載があり、実施例には、上歯と下歯の位置が「歯部を噛み合わせた状態」(【0018】、【0028】、【図5】【図3】【図4】)の構成が記載されている。そうすると、本件明細 書には、構成要件C-2の「歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部にお ける傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在している」との構成により、対向する一対の金型の歯部を噛み合わせたとき、一方の山頂部の端部が他方の山頂部の幅内で噛み合い、山頂部の端部同士が対向して噛み合わないようになり、その結果、強い圧力を加えても紙の破れを抑えることができるという本件発明の作用効果が奏されることが開示されているといえるから、構成要件C-2の 構成は、本件発明の作用効果が奏される「噛み合った状態」の時点における構成であると解すべきである。 以上から、構成要件C-2の「この歯部に対向する他方の金型に有する歯部にあっては、少なくとも、歯部の山頂部が前記一方の金型に有する歯部における傾斜面部側の谷底部に掛かる位置まで存在している」とは、対向する歯部が 噛み合った状態において、他方歯部の山頂部の端に、傾斜面部保有歯部の山頂部との関係において、上記意味でのズレが生じていることを意味する。 なお、以上の解釈によれば、上方及び下方のいずれの歯部も、歯幅方向(前後方向 他方歯部の山頂部の端に、傾斜面部保有歯部の山頂部との関係において、上記意味でのズレが生じていることを意味する。 なお、以上の解釈によれば、上方及び下方のいずれの歯部も、歯幅方向(前後方向)の両側に傾斜面部(計4か所)を有しているような「金型セット」においては、上方の歯部の山頂部と下方の歯部の山頂部の位置が、「歯部の噛み 合った」時点で、前後両端のいずれでも一致するものでない限り、構成要件C―2の射程とするところの他方歯部の山頂部の端のズレが存在することになる。そのため、本件発明の技術的範囲は、相当に広いものといえる一方、新規性欠如の無効事由を内包しやすいものとなっていることが否定できない。 イ被告製品の構成要件充足性 証拠(甲4、16、28、45、82、乙6・3~6頁)によれば、被告製品は、「前記上歯及び下歯の歯部のいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜」との構成(別紙「被告製品の構成(裁判所の認定)のc-1の構成」を有するものである(双方当事者とも、被告製品の歯幅方向を前後方向とした上、別紙被告製品目録の図面上の用紙挿入口の側を「前」としているた め、本判決の用例もこれに従うものとする。)が、このうち被告製品の下の歯 部の前方向側に「傾斜面部」を有することに着目して下の歯部を傾斜面部保有歯部と見た場合、その対として他方歯部に当たる上の歯部の山頂部の前端は、各歯部を噛み合わせた状態で、下の歯部の山頂部の前端よりも前方向にズレて、下の歯部の上記傾斜面部の位置まで及んでいることが認められる 。加えて、「金型セット」の意義は、構成要件Aで判示したとおりである。 以上によれば、被告製品は、「前記上歯の山頂部及び下歯の山頂部にあっては、各歯部を噛み合わせた状態で、上歯 が認められる 。加えて、「金型セット」の意義は、構成要件Aで判示したとおりである。 以上によれば、被告製品は、「前記上歯の山頂部及び下歯の山頂部にあっては、各歯部を噛み合わせた状態で、上歯部の山頂部が前記下歯の歯部の前側の傾斜面部の谷底部に掛かる位置まで存在している」との構成(別紙「被告製品の構成(裁判所の認定)のc-2の構成」を有するものと認められるとともに、構成要件C-2を充足する。 ウ被告の主張について被告は、被告製品に見られる上下の歯部の各山頂部のズレは製造誤差又は組立誤差にすぎず、構成要件C-2を充足しないと主張する。 しかしながら、ズレの方向が、被告製品の個別製品によって前又は後ろとばらついているのであればともかく、前掲の証拠によれば、被告製品は、測定の 方法や機会によって一定の程度の差こそあるものの、被告が観察した場合も含め、上下の歯部を噛み合わせた状態で、上の歯部の山頂部の前端が、下の歯部の山頂部の前端よりも前方向にズレて、下の歯部の上記傾斜面部の位置まで及んでいることで一貫しているところ、被告製品そのものに、上記ズレが客観的な構成上存在するというほかない。これに対し、被告は、被告製品を部品に分 解しての測定結果や開発設計・製造の過程に係る証拠(乙8、9、21、25、27)をもって、上記のようなズレの存在を否定するが、あくまで実際の被告製品を用いて上下の歯部を「噛み合わせた状態」で測定された結果に基づく上記認定を左右するものではない。また、被告が製造等の過程でそのようなズレを意図したものとまで認定するものではないが、この点が、構成要件C-2の 充足性を左右するものでないことは前記アのとおりである。 このように被告製品は、上の歯部の山頂部の前端 を意図したものとまで認定するものではないが、この点が、構成要件C-2の 充足性を左右するものでないことは前記アのとおりである。 このように被告製品は、上の歯部の山頂部の前端について、下の歯部の山頂部の前端よりも前方向にズレて、下の歯部の傾斜面部の位置まで及んでいる一方で、構成要件C-2は、このようなズレにつき、程度によって限定するものではないから、同構成要件の充足を否定する理由はなく、被告の上記主張は採用できない。 (4) 構成要件Dについてア 「歯部の谷底部と略同一面となる平坦面」の意義特許請求の範囲には、谷底部と平坦面との具体的な位置関係等について上記文言のほかに限定する記載はない。本件明細書には、実施例として「本例では、金型1、2の歯部5、6を有するそれぞれの対向面3、4に、歯部5、 6の傾斜面部9側と歯部5、6の連設方向の両側に、歯部5、6の谷底部8と略同一面となる平坦面11が形成されているので、重ねた紙15の枚数が多い場合、平坦面11で重ねた紙15を押さえることにより、歯部5、6による紙15への過度な圧力を規制することができ、過度な圧力による紙15の破れを防止し、あるいは減少させることができる。」(【0034】)と の記載があり、平坦面が、重ねた紙の枚数が多い場合に、紙を押さえて歯部による紙への過度な圧力を規制するために設けられ、歯部の一側または両側で紙を押さえるとともに、歯部による紙への圧力を規制するものであることが開示されている。そして、一般的に、「同一」とは「ひとしいこと、差のないこと。」を、「平坦」とは、「土地の平らかなこと。またそのようなさ ま。」を、「面」とは「物のおもて。」をそれぞれ意味し(広辞苑第7版)、「略」の意義(訓読みを含む。 「ひとしいこと、差のないこと。」を、「平坦」とは、「土地の平らかなこと。またそのようなさ ま。」を、「面」とは「物のおもて。」をそれぞれ意味し(広辞苑第7版)、「略」の意義(訓読みを含む。)は上記のとおりである。 このような本件明細書の記載及び一般的な意義に照らせば、「歯部の谷底部と略同一面となる平坦面」は、歯部の谷底部とほぼ差のない同一平面上に位置する平坦な面であり、歯部とともに紙を押さえるための面を意味すると 認められる。 イ被告製品の構成要件充足性証拠(甲48、49)によれば、被告製品には、谷底部と平坦面には明らかに段差があり、ほぼ同一平面状に位置していると認めることはできない。 したがって、被告製品は、構成要件Dを充足しない。 ウ原告らの主張について 原告らは、被告製品の谷底部の端部である曲面形状を介して平坦面と谷底部は略同一面状にあると主張する。 しかし、特許請求の範囲の文言に照らせば、平坦面と谷底部とが「略同一面状」にあるか否かの判断は、平坦面と谷底部の面の位置を検討すべきであり、本件明細書をみても、谷底部の端部又は曲面形状を介して位置を検討す ることを認める理由は見出せない。よって、原告らの上記主張は採用できない。 (5) 構成要件Eについて上記のとおり、被告製品は構成要件AないしC-2(本件発明1)を充足する。そして、証拠(甲9)によれば、被告製品の上下の歯部の両端部と谷底部 の両端部は曲面の形状となっていることが認められる。 よって、被告製品は、構成要件Eを充足する。 (6) まとめ以上によれば、被告製品は、構成要件AないしC-2及びEを充足し、本件発明1及び同3の っていることが認められる。 よって、被告製品は、構成要件Eを充足する。 (6) まとめ以上によれば、被告製品は、構成要件AないしC-2及びEを充足し、本件発明1及び同3の技術的範囲に属すると認められる。一方、被告製品は、構成 要件Dを充足せず、本件発明2の技術的範囲に属するとは認められない。 2 争点2-3(PW製品を公然実施品とする新規性欠如の有無)について(1) PW製品の構成等ア PW製品は、本件特許の優先日(平成21年8月12日)より前である1957年時点で販売されていた製品である(乙13)。 イ PW製品の綴じ歯を撮影した写真や測定結果(乙16、17)によれば、 PW製品の構成は、次の構成を有することが認められる。なお、測定対象となったPW製品の歯部の測定は令和6年に行われているが、当該製品の歯部に顕著な摩耗は見られないこと(乙16)、複数回の使用によってもPW製品の押圧力には大きな変化は見られないこと(乙18)からすれば、PW製品の販売当初の時点の構成も、上記同様の構成であったと推認できる。 a’ 上下に対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する上歯及び下歯を備え、上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であり、b’ 上歯及び下歯のそれぞれの対向面に有する歯部は、断面略三角形で所 定の歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、c-1’ 上歯及び下歯の歯部はいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜する傾斜面部を備えており、c-2’ 各歯部を噛み合わせた状態で、上歯の歯部の山頂部の後端が下歯の c-1’ 上歯及び下歯の歯部はいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜する傾斜面部を備えており、c-2’ 各歯部を噛み合わせた状態で、上歯の歯部の山頂部の後端が下歯の歯部の山頂部の後端よりも後方向にズレ、上の歯部の山頂部が下の歯部 の後側の傾斜面部の谷底部に掛かる位置まで存在している、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であり、e’ 上歯(下歯)の歯部の山頂部の幅方向の両側端部と谷底部の幅方向の両側端部が曲面形状となっている、構成a’ないしc-2’の構成を有する複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器。 (2) PW製品と本件発明1及び同3との同一性上記(1)のとおりのPW製品の構成のうち、構成a’ないしc-2’は、本件発明1の構成要件AないしC-2と一致し、構成e’は本件発明3の構成要件Eに一致する。 (3) 以上のとおり、PW製品は、本件発明1及び3の構成と同一であるから、本 件発明1及び3には、公然実施品の存在を理由とする新規性欠如の無効理由が あると認められる。 (4) 原告らの主張について原告らは、①被告によるPW製品の測定(乙16)は信用できず、原告らの測定によればPW製品の上下の歯部の山頂部にズレはないから、PW製品は本件発明1及び3と相違する、原告らの測定によれば、PW製品の上下の歯部の 各山頂部はほとんど一致しており、ズレがあるとしても誤差の範囲内であるし、②PW製品を見ても、本件発明1及び3の作用効果やメカニズムを理解することができないことなどを理由として、PW製品は本件発明1及び3の公然実施品とはいえない旨主張する。 アしかし、①について、被告の測定(乙16)は、ハンドルを回動させて上 下の歯部を噛み合 とができないことなどを理由として、PW製品は本件発明1及び3の公然実施品とはいえない旨主張する。 アしかし、①について、被告の測定(乙16)は、ハンドルを回動させて上 下の歯部を噛み合わせた状態において、ノギスを用いて部材の位置の測定をしているところ、その測定方法に不合理な点は見当たらない。また、上記測定の過程において、上下の歯を噛み合わせた状態が撮影されているが、その写真を目視で確認しても、上下の歯部の各山頂部の後端が一致していると認めることはできず、上の歯部の山頂部の後端が下の歯部の山頂部の後端より も後方にあることが確認できる(乙16・13頁参照)。 そもそも、前記1(3)アで言及したとおり、上方及び下方のいずれの歯部も、前後方向の両側に傾斜面部(計4か所)を有しているような「金型セット」においては、上方の歯部の山頂部と下方の歯部の山頂部の位置が、「歯部の噛み合った」時点で、前後両端のいずれでも一致するものでない限り、構 成要件C―2の射程とするところの他方歯部の山頂部の端のズレが存在することになるが、PW製品は、まさに上方及び下方のいずれの歯部も前後方向の両側に傾斜面部(計4か所)を有する「金型セット」である。そして、証拠(乙28。当事者以外の法人が、PW製品の上歯及び下歯の各山頂部の長さを3Dスキャナを用いて三次元測定した報告書。)によれば、PW製品 19台の上歯と下歯の各山頂部の長さを測定した結果、上歯の方が一貫して 約0.2mm長いものとなっている(甲53、54、63、88ないし90は、当事者以外の法人による3Dスキャナを用いた測定結果に基づくこのような認定を妨げるに足りる証拠ではない。)ところ、この一事をもってしても、上方の歯部の山頂部と下方の歯部の山頂部の位置が、前後両端 は、当事者以外の法人による3Dスキャナを用いた測定結果に基づくこのような認定を妨げるに足りる証拠ではない。)ところ、この一事をもってしても、上方の歯部の山頂部と下方の歯部の山頂部の位置が、前後両端のいずれでも一致するということは物理的にあり得ないもので、上方の歯部の山頂部 は、前後少なくともいずれかの方向で、下方の歯部の山頂部の幅の範囲内におさまらず、下方の歯部の傾斜面部の位置に及ぶことになる。被告の測定(乙16)は、いわば、上の歯部の山頂部が下の歯部の山頂部よりも長いことに伴う必然的な結果が、後方向で表れたものというべきもので、このような観点からも信用できるといえる。 そして、構成要件C-2について、山頂部のズレを程度によって限定する理由はなく、また、そのようなズレが意図的なものであったか否かという主観面によって充足性が左右されるものでもないところ、PW製品が構成要件C―2と一致する構成を有することを否定する理由はないといえる。 イ他方、②については、物の発明に係る特許について、本件では優先日前の 公然実施が無効理由とされているものであるところ、本件発明の構成要件が公然実施発明における構成と一致していれば足りるもので、発明の技術思想や課題・作用効果の開示がされていたことまで求められるものではない。本件訴訟の経過全体に照らし、原告らにおいては、本件発明の構成によって所定の作用効果を発生させるメカニズムを発見したことへの強い自負がうか がわれ、当裁判所もこれを一概に否定するものではないが、この点は、無効理由として容易想到性が問題となっている場合であればともかく、新規性欠如を否定する理由となるものではないといえる。 ウしたがって、原告らの上記主張はいずれも採用することができない。 3 原告らの訂正請求に係 易想到性が問題となっている場合であればともかく、新規性欠如を否定する理由となるものではないといえる。 ウしたがって、原告らの上記主張はいずれも採用することができない。 3 原告らの訂正請求に係る主張について 原告らは、令和7年4月25日付け原告準備書面(8)において、本件特許につ いて、訂正審判請求をしたと仮定した場合の6つの訂正事項案を主張する。 しかし、本訴訟は、令和5年12月1日に提起されたもので、その後、令和7年3月13日の弁論準備手続期日において、PW製品を公然実施品とする新規性欠如が認められる可能性があるとの心証が暫定的に開示された後に提出された上記同年4月25日付け準備書面までは、原告らが訂正の再抗弁ないしその具体 案を主張したことはなく、その後、受命裁判官が一部変更となった同年6月26日の弁論準備手続期日においても、改めて、無効の心証が開示されたものであるが、その時点においても、原告らは、上記準備書面で訂正審判の案文と称しての主張をしたにとどまり、特許庁での訂正審判を請求したわけでも、これを前提とした訂正の再抗弁の主張をするに至っていたわけでもなかった。このような訴訟 経過に照らせば、同年6月26日より後に期日を続行して原告らによる訂正の再抗弁の主張がされたとしても、もはや時機に後れたものと言わざるを得ない上、本件訴訟の完結を遅延させることになると認められたため、同日において、直ちに弁論準備手続終結、弁論終結と手続を進めたものである。 なお、念のため付言すると、原告らの主張する訂正事項のうち、「特許請求の範 囲の減縮」として、訂正の俎上に載り得るのは、請求項を削除する訂正事項4のほかは、訂正事項1(請求項1につき、構成要件C―2の「他方の金型に有する歯部にあっては」の次に「複 特許請求の範囲の減縮 として、訂正の俎上に載り得るのは、請求項を削除する訂正事項4のほかは、訂正事項1(請求項1につき、構成要件C―2の「他方の金型に有する歯部にあっては」の次に「複数枚の紙を介して前記対向する歯部で噛合わせるときには、」を加えるもの。)と考えられる(特許法126条1項、6項)が、前記2での検討に照らし、そのような時点の特定をしたとしても、新規性欠如の無効理由を解消するとはいえないものである。 まとめ 以上によれば、被告製品は、本件発明1及び3の技術範囲に属するが、本件発明1及び3にはPW製品を公然実施品とする無効理由(特許法29条1項3号)がある。また、被告製品は、本件発明2の技術的範囲に属するものとは認められない。 結論 よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、いずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 松川充康 裁判官 阿波野右起 裁判官 島田美喜子 (別紙)被告製品目録 〔製品名〕ハリナックスプレス 〔製品番号〕 島田美喜子 (別紙)被告製品目録 〔製品名〕 ハリナックスプレス 〔製品番号〕 SLN-MPH105G (別紙)被告製品の構成(原告らの主張) ※符号は、下記図面の符号である。 a 対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部K5、K6を有す る一対の金型からなり、この一対の金型で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、一対の金型の歯部K5、K6を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む紙の綴じ込み用金型セットであって、b 前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部K5、K6は、断面略三角形で所定の歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、 c-1 前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部K5、K6のうち、一方の金型に有する歯部K5(K6)にあっては、歯幅方向の一側K10または両側K10が、歯部の山頂部K7に向かって狭幅方向に傾斜する傾斜面部K9となっており、c-2 この歯部K5(K6)に対向する他方の金型K1(K2)に有する歯 部K5(K6)にあっては、歯部の山頂部K7が前記一方の金型K1(K2)に有する歯部K5(K6)における傾斜面部側K9の谷底部K8に掛かる位置まで存在していることを特徴とするa~cを備えた紙の綴じ込み用金型セット。 d 前記一対の金型のうち、少なくとも一方の金型の歯部を有する対向面には、 歯部の幅方向の一側または両側に、歯部の谷底部K8と略同一面となる平坦面K11が形成されていることを特徴とするa~dを備えた紙の綴じ込み用金型セット。 e 前記歯部 を有する対向面には、 歯部の幅方向の一側または両側に、歯部の谷底部K8と略同一面となる平坦面K11が形成されていることを特徴とするa~dを備えた紙の綴じ込み用金型セット。 e 前記歯部K5(K6)の山頂部K7の幅方向の両側端部K7aと谷底部K8の幅方向の両側端部K8a・K8bは曲面形状となっていることを特徴と するa~cまたはdのいずれか1を備えた紙の綴じ込み用金型セット。 (別紙)被告製品の構成(被告の主張) a 上下に対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する上歯及び下歯を備え、この上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側か ら加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針ないし紙綴器であって、b 前記上歯及び下歯の歯部は、いずれも、断面円弧状で、対向面に上歯に歯部が11個、下歯に歯部が10個設けられており、上歯及び下歯の歯部の前後方向の幅は1.6mmであり、 c-1 前記上歯及び下歯の歯部はいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜しており、c-2 製造上の誤差を除き、上歯の歯部と下歯の歯部の山頂部の前後方向の位置が揃っている、以上の構成を備える手動針なし紙綴器。 別紙被告製品の構成(裁判所の認定) a 上下に対向して配置され、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する上 歯及び下歯を備え、この上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であっ に噛み合い可能な歯部を有する上 歯及び下歯を備え、この上歯及び下歯で重ねた複数枚の紙を厚さ方向両側から加圧し、上歯及び下歯を噛み合わせることにより、複数枚の紙を綴じ込む手動針なし紙綴器であって、b 前記一対の金型のそれぞれの対向面に有する歯部は、断面略三角形で所定の歯幅を有し、対向面に複数連なって設けられており、 c-1 前記上歯及び下歯の歯部はいずれも、前後方向の両側が先端に向かって幅狭に傾斜しており、c-2 前記上歯の山頂部及び下歯の山頂部にあっては、各歯部を噛み合わせた状態で、上歯部の山頂部が前記下歯の歯部の前側の傾斜面部の谷底部に掛かる位置まで存在していることを特徴とするa~cを備えた手動針なし紙 綴器。 d 前記一対の金型のうち、少なくとも一方の金型の歯部を有する対向面には、歯部の幅方向の一側または両側に、歯部の谷底部と段差のある平坦面が形成されていることを特徴とするa~dを備えた手動針なし紙綴器。 e 前記上歯部(下歯部)の山頂部の幅方向の両側端部と谷底部の幅方向の両 側端部は曲面形状となっていることを特徴とするa~c及びeに記載の手動針なし紙綴器。
▼ クリックして全文を表示