平成26年6月24日判決言渡平成26年(行コ)第19号放置違反金納付命令取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,愛知県公安委員会から平成24年1月19日付けで放置駐車違反による放置違反金納付命令(以下「本件納付命令」という。)を受けた被控訴人が,自らは,放置車両の使用者(道路交通法51条の4第4項)に当たらないから,本件納付命令は違法であると主張し,その取消しを求めた事案である。 原判決が,被控訴人の請求を認容したため,控訴人が控訴した。 以下,略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。 2 前提事実及び関係法令の定め原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「2 関係法令の定め」及び「3 前提事実」に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び当事者の主張 次のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「4 争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 当審における控訴人の主張ア被控訴人供述が信用できないことについて原判決は,被控訴人供述が信用できるとの証拠評価に基づき,被控訴人からAに対する本件車両の引渡しの経緯を認定しているが,以下のとおり,被控訴人の供述を信用することはできない。 (ア) 被控訴人 決は,被控訴人供述が信用できるとの証拠評価に基づき,被控訴人からAに対する本件車両の引渡しの経緯を認定しているが,以下のとおり,被控訴人の供述を信用することはできない。 (ア) 被控訴人がAに本件車両を任意に交付する行為は,債権者を害する目的で破産財団の価値を不当に減少させるものとして免責不許可事由に該当するため,被控訴人には,Aに脅迫され,完全に意思の自由を失った状態で本件車両を奪われた旨の虚偽供述をする動機があり,現に一貫して本件車両の引渡しの経緯について虚偽の供述を行っている。 (イ) 被控訴人の供述は,被控訴人が平成17年2月6日に本件メモを作成した際に,AにAメモ(甲8の6)を作成してもらったとするものであるが,Aメモが同月7日付けのメモであり,B弁護士作成にかかる報告文書(甲8の2)の同日の欄には,その前日に本件車両を勝手に引き上げたAが同日午前にまたやってきて,被控訴人に強制的に一筆を書かせたと記載されていることにも整合しない。また,Aに脅迫され,完全に意思の自由を失った状態で本件車両を奪われた旨の供述は,被控訴人がAに対して任意に本件車両を交付したことにも整合しない。 (ウ) 被控訴人の供述は,Cの代表取締役である父Dと同居し,同代表取締役の子であり,同社の常務取締役でもあり,事前にEからAに関する情報にも接していた被控訴人において,Aが,Cの債権者であるか否かが不明のままの状態で,本件メモを作成し,本件車両を交付したことになり,不自然かつ不合理である。 (エ) 被控訴人は,本来Aが所持しているはずの本件メモがコピーされ,そのコピーを被控訴人において所持するに至った経緯や,Aメモが作成されるに至った経緯について,記憶は定かでないなどとあいまいな供述をし,Fの事務所の場所 Aが所持しているはずの本件メモがコピーされ,そのコピーを被控訴人において所持するに至った経緯や,Aメモが作成されるに至った経緯について,記憶は定かでないなどとあいまいな供述をし,Fの事務所の場所や同代表取締役の氏名についても分からないなどと供述しており,その重要な部分について具体性に乏しく,信用できない。 (オ) 被控訴人は,本件車両の引渡しの経緯やAの連絡先を知っているEに連絡が可能であると認識しながらEに連絡を取っておらず,Aの住所地や電話番号についても調査をしておらず,真相解明にも不熱心である。 このような被控訴人の態度に鑑みれば,被控訴人は,自己に都合のよい虚偽事実を供述していると評価できる。 なお,被控訴人は,上記立証活動をあえて怠っていると考えるほかないが,その動機は,被控訴人において,真実はAとの合意のうえAに対する担保として本件車両を任意に交付して預けながら,自己の免責手続における免責不許可を免れるために,AとG社長の被控訴人に対する強迫を仮装したことに起因するものである。 イ本件車両の登録名義から生じる事実上の推定効や本件メモからすれば,本件車両は担保として任意に交付されたものであって,本件違反時における本件車両の運行についての最終的な決定権は被控訴人にあったこと(ア) 事実上の推定に反する認定をしていることについて放置駐車違反の取締りにおいて,行政庁の側で,ある者が放置駐車違反当時の実際の運転者であったことをゼロから立証して特定することは非常に困難な状況にあり,そのために放置駐車違反を犯しながらも運転者が処分されないといういわば逃げ得を許す状況になっていた。そのため,放置車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ずる放置違反金納付命令の制度が創設されたのである。 ながらも運転者が処分されないといういわば逃げ得を許す状況になっていた。そのため,放置車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ずる放置違反金納付命令の制度が創設されたのである。 このような放置違反金納付命令が創設された経緯と,自動車登録事項証明書の使用者は,経験則上,実際の使用者と一致するのが通常であり,これが一致しないまれなケースにおいては,登録と実際の不一致を理由づける基礎資料は専ら登録上の使用者の側に偏在していることからすれば,放置違反金納付命令制度における使用者性の判断にあたっては,登録上の使用者であれば,その者が使用者であることが事実上推定され,これに対する登録上の使用者からの証拠に基づく反論が,上記事実上の推定を覆すに足るものである場合に初めて,登録上の使用者であっても実際の使用者でないと認定されるという事実認定の在り方が予定されているとみるべきである。 しかるに,原判決はかかる事実認定の在り方に反し,事実上の推定を覆すに足りる証拠の有無の検討を欠いており,不当である。 (イ) 使用者性の認定に事実誤認があることについて仮に,事実上の推定効が生じないとしても,原判決は,①被控訴人は,平成17年2月に本件車両を引き渡した当時,Aとは挨拶を1回程度交わしたことがある程度の関係にすぎず,Aの素性や連絡先さえ知らなかったこと,②Aは,本件車両の引渡しを受ける見返りとして,Aメモを差し入れていること,③被控訴人は,本件車両を引き渡した後,Aと連絡を取ったことはなく,本件車両の使用者やその所在すら把握していなかったこと,④本件違反は,本件車両の引渡しから約6年6か月も経過した平成23年8月24日に発生したものである上,本件違反があった場所は,被控訴人の居住地である京都市内から遠く離れた ら把握していなかったこと,④本件違反は,本件車両の引渡しから約6年6か月も経過した平成23年8月24日に発生したものである上,本件違反があった場所は,被控訴人の居住地である京都市内から遠く離れた名古屋市内であったこと,⑤本件車両は,平成18年と平成21年の2回にわたって継続検査を受けているところ,その受検地は,被控訴人の住む京都市を管轄する近畿運輸局京都運輸支局ではなく,中部運輸局愛知運輸支局であったことを理由に,被控訴人が本件違反当時,本件車両の運行につい て最終的な決定権を有していなかったと認定するものである(以下,これらの事実を順に「①事実」,「②事実」などという。)。 しかし,①事実ないし③事実は,信用性を欠く被控訴人の供述により認定したものであり,これらの事実を本件車両の運行について最終的な決定権を有していたか否かの判断の理由付けに用いていること自体,誤りである。 また,④事実及び⑤事実については,債務の担保として車両を預けた場合であっても,担保が実行されるまでの間は,債務を弁済することによりその車両を取り戻すことができるのであるから,車両の引渡しと本件違反との時間的場所的隔離は,使用者性の判断とは無関係である。 さらに,平成17年当時の被控訴人の住所地から平成23年当時の本件違反場所までの距離が約140㎞にすぎず,約1時間47分で到着することができることから,原判決が指摘する点は,被控訴人の使用者性を否定する方向に評価すべきでない。 (ウ) 本件メモの存在及び内容の評価に誤りがあることついて本件メモは,処分証書又は重要な報告文書というべき実質的証拠力の極めて高い証拠であることから,かかる証拠が存在する場合には,特段の事情がない限り,当該証拠の内容に沿った事実を認定すべきであるが,原判決はそのよう 分証書又は重要な報告文書というべき実質的証拠力の極めて高い証拠であることから,かかる証拠が存在する場合には,特段の事情がない限り,当該証拠の内容に沿った事実を認定すべきであるが,原判決はそのような特段の事情がないにもかかわらず,本件メモの記載内容を認定せず,本件メモの記載どおりの本件車両を担保に入れた旨の認定をしていない点に誤りがある。 (エ) 被控訴人が本件車両をAに交付したことが代物弁済に当たるという原判決の事実認定に誤りがあることについて原判決は,[a]被控訴人が本件車両を引き渡した当時,Cは,2度の不渡手形を出して倒産状態に陥っており,その保証人であった被控訴人ともども,破産手続開始の申立ての準備中である旨を債権者に通知したば かりであったこと,[b]Aは,ローンの支払中であることを理由に本件車両の引渡しを渋る被控訴人に対し,本件車両の引渡しを執拗に求め,本件車両の引渡しと引換えに,被控訴人らに今後一切の危害を与えないことを保証する旨記載したAメモを差し入れたこと,[c]他方,本件車両を引き渡す際,被控訴人がAに差し入れた本件メモには,被控訴人が返済できない場合には,本件車両をどのように処理されても構わない旨の記載があること,[d]被控訴人は,本件車両の引渡し後間もなく,上記保証債務はもとよりその他の債権者に負っている債務の弁済ができないとして破産手続開始の申立てをし,破産手続開始決定を受けたこと,[e]上記破産手続や本件違反に係る弁明等の中において,被控訴人は,一貫して本件車両は債務の担保として交付したのではなく,持ち去られたものである旨説明してきたこと,[f]現に,被控訴人自身,Aに本件車両を引き渡した後,本件違反が問題になるまで,Aと接触して本件車両の占有の回復を図ろうとしたことはなかったことから く,持ち去られたものである旨説明してきたこと,[f]現に,被控訴人自身,Aに本件車両を引き渡した後,本件違反が問題になるまで,Aと接触して本件車両の占有の回復を図ろうとしたことはなかったことから,被控訴人がAに対して本件車両を引き渡した時点で本件車両の運行についての最終的な決定権が被控訴人からAに確定的に移転したと判示する(以下,これらの事実を順に「[a]事実」,「[b]事実」などという。)。 しかし,[a]事実については,被控訴人は,平成17年2月6日ないし7日,上記通知が出されたことを認識していなかったのであるから,上記通知の存在は,被控訴人がAと合意する際の前提とされることはなかったものである。しかるに原判決は,このような事実を根拠としており不当である。 [b]事実については,これを裏付ける被控訴人の供述は本件メモやAメモの作成日について客観的事実と異なっているなどの点でそもそも信用できないものであるから,このような事実をもとに本件車両が代物弁済されたと認定するのは相当でない。 [c]事実については,本件メモの記載は,本件車両を担保に入れたとしか解釈することはできないものであり,この事実により,本件車両が代物弁済されたものと評価することはできない。 [d]事実については,破産手続開始の申立て前に,担保提供行為よりも債務消滅行為が行われやすいという経験則は存在しないから,[d]事実によって,被控訴人がAに対して担保として本件車両を預けたのではなく,被控訴人がAに本件車両を代物弁済したということはできない。 [e]事実については,被控訴人が担保として持ち去られたものでない旨説明したことはないから,原判決の認定は誤っているし,[e]事実は信用性のない被控訴人供述に基づく認定となっており,これを本件車両が代物弁済され いては,被控訴人が担保として持ち去られたものでない旨説明したことはないから,原判決の認定は誤っているし,[e]事実は信用性のない被控訴人供述に基づく認定となっており,これを本件車両が代物弁済されたことの根拠とはできない。 [f]事実については,被控訴人の供述に基づく認定であるが,被控訴人の供述が信用できないことは既に主張したとおりである。また,仮に[f]事実が認められるとしても,担保設定者において,担保設定後に,担保物の価値と債務を見比べて,担保権者に連絡を取らず担保物を取り戻さないことも社会経済上よくある事象であるから,これをもって,被控訴人が本件車両を代物弁済したということもできない。 さらに,債務の担保として物を交付する際に,債務の弁済方法や弁済期限,弁済がなされない場合の車両の清算方法など細かい取り決めに関する合意や話し合いの痕跡が書面等の形で必ず残っているなどとする経験則は存在しない。 (オ) 被控訴人の本件車両に対する使用権の判断の誤りについて原判決の認定は,被控訴人の破産手続開始の申立てに伴い,Hに対して本件車両を引き渡すべき契約上の義務を負う反射効として,本件車両の占有を回復して上記引渡義務を履行するまでの間,所有権留保付割賦販売契約に基づく使用権を有しており,この点からも被控訴人が本件車 両の使用者といえることや,被控訴人は,Hに所有権留保されていた本件車両について,担保権の性質を有する留保所有権部分を除く所有権を取得しており,これも本件車両の使用権であり,被控訴人が本件車両の使用者といえることを看過するものである。 (2) 当審における被控訴人の主張ア道路交通法(以下「法」という。)51条の4第4項の「使用者」とは,車両を使用する権原を有し,その運行を支配し,管理する者であり,車両 である。 (2) 当審における被控訴人の主張ア道路交通法(以下「法」という。)51条の4第4項の「使用者」とは,車両を使用する権原を有し,その運行を支配し,管理する者であり,車両の運行について最終的な決定権を有する者であるが,この「使用者」に被控訴人が該当することについては,控訴人が主張立証責任を負うものである。 控訴人は,自動車登録事項証明書に記載された使用者が車両の運行・支配を管理していたものと事実上推定され,被控訴人において当該推定を覆すべきであると主張するが,そもそも事実上の推定は,裁判官の自由心証の問題であり,経験則の一種であるから,立証責任を転換するものでない。 したがって控訴人の主張は失当である。 イ被控訴人は,Aに対し,本件車両を代物弁済として引き渡したのであり,このことは,本件メモに「借金の代わりに」と記載されていることからも明らかである。 ウ控訴人は,被控訴人は所有権留保付割賦販売契約に基づく使用権や,担保権の性質を有する留保所有権部分を除く所有権に基づく使用権を有する旨主張する。 しかし,所有権留保付割賦販売契約の場合,販売会社が取得する留保所有権は,弁済期が到来するまでは動産の交換価値を把握するにとどまるが,残債務弁済期の経過後は,動産の占有権能及び処分権能につき制限のないものに変容すると解されるのである。そして,被控訴人が平成17年3月11日付けで破産手続開始決定の申立てを行ったことにより,被控訴人は 同日期限の利益を喪失し,Hに対し本件車両を引き渡す義務を負い,その結果,本件車両に対するHの留保所有権は占有権能について制限のないものに変容し,被控訴人は占有権能を喪失したのであるから,被控訴人には使用権がなかったものである。 第3 当裁判所の判断 結果,本件車両に対するHの留保所有権は占有権能について制限のないものに変容し,被控訴人は占有権能を喪失したのであるから,被控訴人には使用権がなかったものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人の請求は認容すべきと判断する。 その理由は,次の2のとおり,当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 被控訴人供述の信用性についてア控訴人は,被控訴人には虚偽供述をする動機があるため,被控訴人の供述は信用できない旨主張する。 しかし,証拠(甲8の2)によれば,被控訴人の父Dは,平成17年2月7日に,Hから本件車両を引き上げたいとの連絡が来る前に,すでに,B弁護士に対し,Cの債権者が本件車両を強引に持ち去った旨を連絡し,その時点で,被控訴人は,既に,Cの債権者に強引に本件車両の占有を移転させられたことを述べていたことが認められるから,被控訴人が破産免責のことなどを考えて,虚偽の内容を供述していたと認めることはできない。 イ控訴人は,被控訴人の供述は,本件メモやAメモの作成の日付が客観的証拠(甲8の2)と齟齬していたり,重要な部分においてあいまいであることなどから信用できない旨主張する。 なるほど,証拠(甲8の2)によれば,被控訴人が,B弁護士に対し,平成17年2月7日にIが前日に続いてやってきて,被控訴人に一筆書かせた旨説明したことが認められ,この事実は,同月6日に本件メモを作成 した旨の被控訴人の陳述書(甲17)の記載や被控訴人の供述(尋問調書5頁)と異なることになる。 しかし,被控訴人は,本人尋問において, ことが認められ,この事実は,同月6日に本件メモを作成 した旨の被控訴人の陳述書(甲17)の記載や被控訴人の供述(尋問調書5頁)と異なることになる。 しかし,被控訴人は,本人尋問において,B弁護士作成のメモ(甲8の2)を示された上,本件メモもAメモも同月7日に作成されたものである旨の供述もしており(尋問調書19頁),本件メモを作成したのが上記陳述書の作成時や供述時から7年以上前のことであり,その間,父Dが代表取締役を務め,自らが専務取締役を務めるCだけでなく,父Dも,被控訴人自身も破産手続開始の申立てをするような出来事があったことを考慮すると,被控訴人の供述が上記程度に齟齬することによって,被控訴人の供述全体が信用性を有しないということにはならない。 また,控訴人は,被控訴人の供述が重要部分においてあいまいであることも指摘し,確かに,被控訴人は,本件メモを作成するに至った具体的な経緯や,その写しを被控訴人が所持するに至った経緯,Aメモを作成してもらった経緯について具体的な記憶がない旨供述しているが(尋問調書19,20頁),これについても,7年以上の時間の経過とC,父D及び被控訴人自身の破産手続開始の申立てをするような出来事があったことを考慮すると,被控訴人が,記憶がないなどと述べ,その供述があいまいであるからといって,被控訴人の供述全体が信用性を有しないということにはならない。 ウ控訴人は,被控訴人の供述によると,被控訴人は,AがCの債権者であるのか否かが不明なままの状態で,本件車両を交付したなどという点で不合理である旨主張する。 しかし,被控訴人は,Aに本件車両を渡す前に,電話でEと会話をし,Eから,Aの述べるように本件車両をAに渡すよう懇願された旨供述しているのであるから(尋問調書3,4頁),被控 主張する。 しかし,被控訴人は,Aに本件車両を渡す前に,電話でEと会話をし,Eから,Aの述べるように本件車両をAに渡すよう懇願された旨供述しているのであるから(尋問調書3,4頁),被控訴人がAに本件車両をAに交付するに至った経緯が不合理であるということはできない。 エ控訴人は,被控訴人がEに対して連絡を取っていなかったり,Aの住所地や電話番号について調査しておらず,真相解明に不熱心である旨主張するが,被控訴人において,Eに連絡をとったり,Aの住所地や電話番号を調査して,本件車両をAに交付した際の経緯を明らかにすべきであるとはいえないから,控訴人の主張はその前提を欠くものであり,採用できない。 オ被控訴人の供述は,Fの事務所でAと会い,本件車両をAに交付するよう強く求められ,Eに連絡したところ,EからもAに本件車両を渡すよう懇願され,そのため,Aに対し,本件車両を交付したこと,その際,Aに本件メモを書くよう言われ,本件メモを作成し,その見返りにAメモを記載してもらったという重要部分では一貫しているのであるから,信用することができる。 被控訴人の供述する本件車両のAへの交付状況は,被控訴人がEに懇願され,Aに本件車両を交付したというものであり,被控訴人の本意ではないものであったのであるから,被控訴人が本件車両をAに奪われた旨の供述をしたことが,客観的事実に明らかに反することを知って故意にした虚偽供述であるということもできない。 これに反する控訴人の主張は採用できない。 (2) 使用者性についての主張立証責任について控訴人は,放置違反金納付命令制度が創設された趣旨からすれば,自動車登録事項証明書に記載された使用者が車両の運行・支配を管理していたものと事実上推定され,被控訴 いての主張立証責任について控訴人は,放置違反金納付命令制度が創設された趣旨からすれば,自動車登録事項証明書に記載された使用者が車両の運行・支配を管理していたものと事実上推定され,被控訴人において当該推定を覆すべきであると主張する。 証拠(乙5,7,8)及び弁論の全趣旨によれば,放置駐車違反の取締りにおいて,行政庁の側で,ある者が放置駐車違反当時の実際の運転者であったことを立証して特定することは非常に困難な状況にあり,そのために放置駐車違反を犯しながらも運転者が処分されないといういわば逃げ得を許す状 況になっていたため,放置車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ずる放置違反金納付命令制度が創設されたことが認められる。 しかしながら,放置違反金納付命令制度は,その条文の規定からしても,自動車登録事項証明書に使用者と記載された者に対して反則金を課すというものではないことは明らかであり,法54条の4第4項にいう「使用者」とは,車両を使用する権原を有し,その運行を支配し,管理する者であり,車両の運行について最終的な決定権を有する者であると解されるのであるから,自動車登録事項証明書に使用者と記載された者が,納付命令発令前の弁明書に実際には使用者ではない旨記載したり,反則金納付命令に対する異議の申立をしたようなときには,行政庁において,その者が車両を使用する権原を有し,その運行を支配し,管理する者であり,車両の運行について最終的な決定権を有する者であることを調査し,あるいは納付命令取消請求訴訟において主張立証すべきである。 自動車登録事項証明書に使用者と記載された者が,通常は当該車両の使用者と一致することが多いことは認められるが,これは,あくまでも経験則上の事実上の推定にすぎないから,納付命令取消請求訴訟において,立証責任 登録事項証明書に使用者と記載された者が,通常は当該車両の使用者と一致することが多いことは認められるが,これは,あくまでも経験則上の事実上の推定にすぎないから,納付命令取消請求訴訟において,立証責任の転換が生じることを主張する控訴人の主張は採用できない。 (3) 使用者性の認定についてア控訴人は,仮に,事実上の推定効が生じないとしても,本件において,被控訴人が本件車両の使用者ではないとした原判決の認定には事実誤認がある旨主張するので,順次検討する。 イまず,控訴人は,本件メモは,処分証書又は重要な報告文書というべき実質的証拠力の極めて高い証拠であることから,本件メモの記載どおり,被控訴人はAに対し,本件車両を担保に入れた旨認定すべきであると主張する。 確かに,本件メモ(甲8の5)は,「私,Jは,A様に300万借金の代わりに私,Jはグランドハイを預けます。もし300万の返済できないグランドハイエースをどのように処理されても構いません。」という内容であり,本件車両をAに交付した際に,Aに対する債務が直ちに消滅することが一義的に明確であるとはいえない面がある。 しかしながら,本件メモには,「借金の代わりに」とも記載されているのであり,このことに,本件メモが作成された前後の経緯も併せると,本件メモが,被控訴人が本件車両をAに対する代物弁済とする趣旨の記載であると解することができないではないから,控訴人の主張は採用できない。 ウ(ア) [a]事実について控訴人は,被控訴人は,破産手続開始の申立ての準備中である旨を債権者に通知したばかりであったことを知らなかったから,[a]事実を根拠に,被控訴人がAに対し,本件車両を代物弁済したと認定するのは相当でない旨主張する。 しかし,Cの債権者であったAにとっては,Cが 者に通知したばかりであったことを知らなかったから,[a]事実を根拠に,被控訴人がAに対し,本件車両を代物弁済したと認定するのは相当でない旨主張する。 しかし,Cの債権者であったAにとっては,Cが破産手続開始の申立ての準備中であることを知り,自らの債権を回収するために本件車両を代物弁済させようとしたものと考えることができるから,[a]事実は,被控訴人がAに対し,本件車両を代物弁済したとの判断の基礎となるべき事実といえる。控訴人の主張は採用できない。 (イ) [b]事実及び[c]事実について控訴人は,[b]事実を裏付ける被控訴人の供述が信用できない旨主張するが,このように述べる被控訴人の供述が信用できることは上記2(1)で説示したとおりであるし,[c]事実については,上記イで説示したとおりである。 (ウ) [d]事実について 控訴人は,破産手続開始の申立て前に,担保提供行為よりも債務消滅行為が行われやすいという経験則は存在しないから,[d]事実によって,被控訴人がAに本件車両を代物弁済したということはできない旨主張する。 しかし,破産手続開始の申立て前に,債権者からは,担保権の実行等の手続を伴う担保提供行為よりも,自らの債権を回収できる債務消滅行為が求められることが多いであろうことは経験則上明らかに認められるから,控訴人の主張は,その前提を欠き採用できない。 (エ) [e]事実について控訴人は,被控訴人が担保として持ち去られたものでない旨説明したことはないから,代物弁済であるとする原判決の認定は誤っている旨主張するが,被控訴人が本件車両を代物弁済したと述べたというのは,本件車両が担保として持ち去られたものであることを否定していることになるから,控訴人の主張は,その前提を欠き採用できない。 っている旨主張するが,被控訴人が本件車両を代物弁済したと述べたというのは,本件車両が担保として持ち去られたものであることを否定していることになるから,控訴人の主張は,その前提を欠き採用できない。 (オ) [f]事実について,控訴人は,仮に[f]事実が認められるとしても,担保設定者において,担保設定後に,担保物の価値と債務を見比べて,担保権者に連絡を取らず担保物を取り戻さないことも社会経済上よくある事象であるから,これをもって,被控訴人が本件車両を代物弁済したということもできない旨主張する。 確かに,担保設定者が担保物の価値と債務を見比べて,担保権者に連絡を取らず担保物を取り戻さないことも社会経済上よくある事象ではあるが,本件では,被控訴人は,本件車両をAに交付するに当たり,その後の担保物の取り戻しを前提とする行動を一切とっていないのであるから,[f]事実は,被控訴人が本件車両を代物弁済したとの判断の基礎となる事実といえる。 (カ) 控訴人は,債務の担保として物を交付する際に,債務の弁済方法や弁済期限,弁済がなされない場合の車両の清算方法など細かい取り決めに関する合意や話し合いの痕跡が書面等の形で必ず残っているなどとする経験則は存在しない旨主張し,本件においては,書面であれ,口頭であれ,債務の弁済方法や弁済期限,弁済がなされない場合の本件車両の清算方法など細かい取り決めに関する合意や話し合いがなされた痕跡が一切認められないのであるが,これは,被控訴人及びAにおいて,代物弁済により債務が消滅したものと考えていたことの証左というべきである。 (キ) 以上から,被控訴人は,Aに対し,本件車両を代物弁済したと認めるのが相当である。 エ控訴人は,原判決が,④事実や,⑤事実から,被控訴人が本件車両の運行についての最終的 うべきである。 (キ) 以上から,被控訴人は,Aに対し,本件車両を代物弁済したと認めるのが相当である。 エ控訴人は,原判決が,④事実や,⑤事実から,被控訴人が本件車両の運行についての最終的な決定権を有していなかったと判断した点について,平成17年当時の被控訴人の住所地から平成23年当時の本件違反場所までの距離が約140㎞にすぎず,約1時間47分で到着することができることから,原判決が指摘する点は,被控訴人の使用者性を否定する方向に評価すべきでない旨主張する。 しかし,京都府内に住所を有する被控訴人が,平成18年と平成21年の2回にわたって,あえて,中部運輸局愛知運輸支局で本件車両の継続検査を受けるということは通常考えられず,これに加えて,本件違反場所も愛知県内であることを考慮すれば,本件車両については,愛知県近辺に居住する者が使用していることが推認できるのであり,被控訴人が本件車両を代物弁済したことも考慮すれば,被控訴人は,本件車両の最終的な運行の決定権を有していなかったと認められる。 オ控訴人は,被控訴人が所有権留保付割賦販売契約に基づく使用権や,担保権の性質を有する留保所有権部分を除く所有権に基づく使用権を有する旨 主張するが,証拠(甲7,8の4)によれば,被控訴人が破産手続開始決定の申立てを行ったことにより,被控訴人は,Hとの間の支払保証委託契約に基づき,本件車両の使用権を喪失し,同社に対し,本件車両を返還すべき義務を負うことになることが認められるから,被控訴人には本件車両の法律上の使用権を認めることはできず,控訴人の主張は,採用できない。 第4 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 控訴人の主張は,採用できない。 主文 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 名古屋高等裁判所民事第3部 裁判長裁判官長門栄吉 裁判官眞鍋美穂子 裁判官片山博仁
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