令和7年1月31日宣告令和6年(わ)第666号収賄、贈賄被告事件判決 主文 (被告人A1関係)被告人A1を懲役2年に処する。 被告人A1に対し、未決勾留日数中70日をその刑に算入する。 被告人A1に対し、この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人A1から、福岡地方検察庁で保管中の別紙物品目録記載の各物品を没収する。 被告人A1から10万5277円を追徴する。 (被告人A2関係)被告人A2を懲役1年に処する。 被告人A2に対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】被告人A1は、当時、B市上下水道・環境部水道施設課浄水係係長として、福岡県B市が設置した地方公営企業であるB市水道事業が発注する浄水施設等運転管理業務等に関する職務に従事していたもの、被告人A2は、上下水道設備工事等を業とするC有限会社の代表取締役としてCの業務全般を統括していたものであるが第1 被告人A1は、前記B市水道事業が発注して株式会社Dと令和4年3月29日に契約した浄水施設等運転管理業務委託に関し、DにCを同業務における浄水施設除草工事の下請業者として推奨するなどして(以下「本件推奨行為」と いう。)、Cが前記除草工事を下請受注できるよう有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、別表のとおり、同年4月下旬頃から令和5年12月中旬頃までの間、順次、福岡県B市ab番地のE浄水場において、前記A2から、水道用品及び管工材料の販売等を業とするF株式会社の代表取締役のG及び同社従業員のHを介し、家具等169点(販売価格合計122 頃までの間、順次、福岡県B市ab番地のE浄水場において、前記A2から、水道用品及び管工材料の販売等を業とするF株式会社の代表取締役のG及び同社従業員のHを介し、家具等169点(販売価格合計122万7260円相当、主文の没収対象物はその一部)の供与を受け、もって自己の前記職務に関して賄賂を収受し第2 被告人A2は、前記第1記載の趣旨の下に、前記第1記載の日時場所において、前記G及び前記Hを介し、前記A1に対し、前記家具等169点を供与し、もって同人の前記職務に関して賄賂を供与した。 【証拠の標目】(略)【争点に対する判断】 1 本件の争点本件において、被告人A1が、判示の日時場所方法によって、被告人A2から、判示の物品の供与を受けたこと、被告人A1の本件推奨行為によって、CがDから浄水施設除草工事を下請受注できるよう有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨で同物品の供与が行われたことに争いはない。本件の争点は、本件推奨行為が被告人A1の職務行為又はそれに密接に関連する行為として行われたか否かであり、当裁判所は、判示のとおり、本件推奨行為が被告人A1の職務行為として行われたと判断したから、以下その理由を説明する。 2 認定事実関係証拠によれば、次の事実が認められる。 ⑴ B市は、地方公営企業であるB市水道事業を設置しており(地方公営企業法2条1項1号、4条、B市水道事業の設置等に関する条例1条)、同水道事業の事務を処理するための組織として、B市上下水道・環境部を設置していた(地 方公営企業法7条、8条1項、2項、9条、14条、B市水道事業の設置等に関する条例3条1項、2項)。同部水道施設課浄水係(以下「浄水係」という。)は、浄水施設の運営及び維持管理等に関する事務を所掌しており(B市水道事業の組 、2項、9条、14条、B市水道事業の設置等に関する条例3条1項、2項)。同部水道施設課浄水係(以下「浄水係」という。)は、浄水施設の運営及び維持管理等に関する事務を所掌しており(B市水道事業の組織及び事務分掌規程2条、3条)、被告人A1は、本件当時、同係係長として、同係所属の職員を指揮監督し、同係の分掌事務を処理するという職務権限を有していた(同規程4条1項、5条1項)。 ⑵ 従前、浄水係の業務は、全て浄水係に所属するB市職員が行っていたが、人件費削減等のため少しずつ民間業者への委託が進められ、遅くとも令和2年度頃には、浄水施設の運転管理業務の大半を民間業者に委託するようになっていた。もっとも、水道事業の主体はあくまでもB市であり、浄水係が委託先業者から定期的に状況の報告を受け、適宜助言や指導をするなどして運転管理業務を行っていた。 令和3年度までの浄水施設等運転管理業務委託には、浄水施設の除草工事は含まれておらず、除草工事は、B市が個別に外部へ発注していたが、令和4年度から令和6年度までの同業務委託(以下「本件業務委託」という。)については、被告人A1の発案により、浄水施設の除草工事も含める方針となった。 ⑶ 令和3年10月25日、B市水道事業は、本件業務委託の委託事業者を公募し、審査の結果、同年12月16日、Dが優先交渉権者となった。それ以降、同社とB市水道事業との間で、業務委託契約書の作成に関する諸条件について協議が進められ、その中には、浄水施設の除草工事に関して諸条件を詰めることも含まれていた。 被告人A1は、浄水係係長として、Dとの協議を担当していた。同社の担当者であるIは、同社に除草工事の経験がなく、適切な下請業者も知らなかったため、協議を進める中で、被告人A1に対してその紹介を依頼したところ、令和4年2月16日、 Dとの協議を担当していた。同社の担当者であるIは、同社に除草工事の経験がなく、適切な下請業者も知らなかったため、協議を進める中で、被告人A1に対してその紹介を依頼したところ、令和4年2月16日、被告人A1からCを推奨された(本件推奨行為)。 ⑷ 同年3月29日、B市とDは、本件業務委託契約を締結した。同契約書上、 委託者は、受託者に対し業務の処理状況につき調査をし、又は報告を求めることができるほか(同12条)、受託者が業務を委託し、又は請け負わせた者の商号又は名称その他必要な事項の通知を請求することができると定められている(同5条2項)。また、同契約書の仕様書においても、浄水施設等の除草工事に関し、施工前後の写真帳を委託者に提出することが求められており(同仕様書29条⑵)、作業は受託者が直接行うか、行えない場合は市内登録業者等に優先して外注を行い、地元優先に配慮することが求められている(同条⑹なお書き)。 ⑸ 同年4月中旬頃、Dは、浄水係担当者の求めに応じる形で、同係に対し、浄水施設の除草工事の外注先をCとする旨報告し、同月下旬頃、CはDから令和4年度の同業務を正式に受注した。また、令和5年度分についても、同年3月30日に同様に受注した。 3 検討⑴ 上記認定事実によれば、浄水係は浄水施設の運営及び維持管理等に関する事務を所掌しており、外部の民間業者に浄水施設の運転管理業務を委託するにしても、水道事業の実施主体として、受託者を監督し、適宜助言や指導をすることがその職務に含まれていることは明らかである。本件業務委託においては、除草工事も委託内容に含まれていたから、被告人A1は、浄水係係長として、受託者たるDに対し、除草工事が適切に実施されるように監督し、指導、助言する職務に従事していたといえる。 そして、この除草工事に下 工事も委託内容に含まれていたから、被告人A1は、浄水係係長として、受託者たるDに対し、除草工事が適切に実施されるように監督し、指導、助言する職務に従事していたといえる。 そして、この除草工事に下請業者が用いられる場合、下請業者によっては除草工事が適切に実施されないおそれも懸念されるから、受託者において当該業務を適切に実施できる下請業者を選定することについても、被告人A1が指導、助言すべき事項に含まれるというべきである。本件業務委託契約上も、委託者であるB市に、除草工事の処理状況やその下請業者を把握する権限が明示されており、除草工事について市内登録業者等に優先して外注を行うべき旨の留意 事項が付されていること、現にDは、浄水係に対し、除草工事の外注先をCとする旨報告していることなどは、下請業者の選定に関し、DがB市の監督等を受けることを前提とするもので、被告人A1に上記の職務権限が与えられていることを裏付ける事情といえる。 そもそも、本件推奨行為がなされるに至った経緯に照らせば、被告人A1が、B市の担当者であるからこそ、Dの担当者から下請業者の紹介を依頼されたことは明らかであり、そのような立場から離れて、一個人として本件推奨行為を行ったと評価することには無理がある。 以上によれば、受託者に除草工事の下請業者としてCを推奨する本件推奨行為は、被告人A1の職務行為として行われたものであると認められる。 ⑵ 弁護人らは、下請業者を紹介する行為が法令上定められた職務内容に記載されていないことをもって一般的ないし具体的職務権限に含まれない旨主張する。しかし、前述したとおり、本件推奨行為が被告人A1が担当する職務として行われたことは明らかであるから、法令上の記載のみを論じる弁護人らの主張は当を得ない。 また、弁護人らは、受注業者がいかな る。しかし、前述したとおり、本件推奨行為が被告人A1が担当する職務として行われたことは明らかであるから、法令上の記載のみを論じる弁護人らの主張は当を得ない。 また、弁護人らは、受注業者がいかなる下請業者を使用するかにつき、B市は何ら関心を有していなかったから、本件推奨行為は被告人A1の職務との関連性を有しない旨主張する。しかし、不適切な下請業者が使用されれば、浄水施設の運転管理業務に支障が生じかねないことや、前記のような本件業務委託契約の内容等に照らして、B市が、使用される下請業者について何ら関心を有していなかったとは到底いえず、弁護人らの主張は採用できない。 弁護人らはその他にも、被告人A1が、過去に受注業者に対して下請業者を紹介したことがなかったことなど、種々の主張をするが、いずれも前記結論を左右する事情とはいえない。 ⑶ したがって、弁護人らの主張を踏まえ検討しても、本件推奨行為が、被告人A1の職務行為として行われたものであるという結論は揺るがない。 4 結論よって、判示のとおり、被告人A1に収賄罪が、被告人A2に贈賄罪が成立する。 【法令の適用】(略)【量刑の理由】本件は、市の浄水施設を管理運営する部署の係長であった被告人A1が、同施設の運転管理業務委託先に対して、被告人A2が経営する会社を下請業者として推奨し、その見返りとして、被告人両名の間で約1年半にわたり多数の物品の授受がなされた事案である。 賄賂として供与された物品は合計約120万円相当と多額であり、公務員の職務の公正さ及びそれに対する社会の信頼が害された程度は大きい。また、本件では、第三者を介し、容易には発覚し難い態様で物品の供与が行われており、手口の巧妙さという点でも悪質な犯行といえる。 被告人A1については、物品供与の仲介者に対し が害された程度は大きい。また、本件では、第三者を介し、容易には発覚し難い態様で物品の供与が行われており、手口の巧妙さという点でも悪質な犯行といえる。 被告人A1については、物品供与の仲介者に対し、「欲しいものリスト」と題するPDFファイルを送信するなどして、供与物品を自ら選び、要求していたことに照らせば、動機の利欲性は顕著であり、動機、経緯に酌むべき点はない。以上によれば、被告人A1の刑事責任は相応に重く、外形的な行為を認めていることなどの事情を踏まえても、被告人A1を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 被告人A2についても、公務員である被告人A1に謝礼をすることが犯罪であると分かりながら安易に賄賂の供与に至っており、動機、経緯に酌むべき点はない。 そうすると、被告人A2の刑事責任も軽視することはできず、事実を認め、反省の態度を示していることや、妻が当公判廷において今後の監督を誓約していることなども考慮し、被告人A2を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑被告人A1:懲役2年、主文同旨の没収及び追徴被告人A2:懲役1年)令和7年2月3日 福岡地方裁判所第4刑事部 裁判長裁判官鈴嶋晋一 裁判官田野井蔵人 裁判官中元隆太 別紙物品目録 1 令和4年度分⑴ 家具7点⑵ パーソナルコンピュータ周辺機器4点⑶ 雑貨2点⑷ 排水備品1点⑸ 釣り具82点⑹ ゴルフ用品1点⑺ 浄水備品1点⑻ カー用品7点⑼ 装飾品1点 2 令和5年度分⑴ カー用品4点⑵ 釣り具8点⑶ ゲーム機6点⑷ パーソナルコンピュータ周辺機器1点⑸ キッチン設備1点⑹ ゴルフ用品4点 用品7点⑼ 装飾品1点 令和5年度分⑴ カー用品4点⑵ 釣り具8点⑶ ゲーム機6点⑷ パーソナルコンピュータ周辺機器1点⑸ キッチン設備1点⑹ ゴルフ用品4点 別表 令和4年4月下旬 家具7点 77,384 令和4年5月上旬 パーソナルコンピュータ周辺機器等6点 77,285 令和4年5月中旬 排水備品1点 1,815 令和4年7月上旬 釣り具等4点 64,465 令和4年7月下旬 釣り具12点 55,337 令和4年8月下旬 釣り具等25点 106,089 令和4年9月下旬ないし同年10月中旬 釣り具等31点 40,780 令和4年10月中旬 釣り具8点 71,371 令和4年11月中旬ないし同月下旬 釣り具7点 72,802 令和4年12月上旬ないし同月中旬 釣り具7点 76,041 令和5年1月中旬 釣り具9点 68,827 令和5年1月中旬 釣り具3点 80,089 令和5年3月上旬ないし同月中旬 装飾品等16点 102,845 家具等136点 895,130 令和5年4月中旬ないし同月下旬 カー用品6点 73,759 令和5年5月下旬 釣り具1点 84,040 令和5年7月下旬 ゲーム機4点 56,475 令和5年9月下旬 パーソナルコンピュータ周辺機器1点 14,006 令和5年10月下旬ないし同年11月上旬 キッチン設備1点 65,488 令和5年12月中旬 ゲーム機等20点 38,362 カー用品等33点 332,130 家具等169点 1,227,260 総合計枝番 合計合計番号年月日(頃)供与物品販売価格(円) 点332,130 家具等169点1,227,260 総合計枝番 合計 合計番号 年月日(頃) 供与物品 販売価格(円)
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