平成25年7月16日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第10590号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年5月24日判決原告共進産業株式会社同訴訟代理人弁護士藏冨恒彦同石井雄介同補佐人弁理士松波祥文被告ジャパンレントオール株式会社被告ジャパンイベントプロダクツ株式会社上記2名訴訟代理人弁護士澤田 恒同中上幹雄同森 崇志同太田悠子同訴訟復代理人弁護士高橋 淳同訴訟代理人弁理士石井久夫主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告ジャパンレントオール株式会社は,別紙物件目録記載の製品を製造し,輸入し,貸渡してはならない。 (2)被告ジャパンイベントプロダクツ株式会社は,別紙物件目録記載の製品を製造し,輸入し,販売してはならない。 (3)被告らは,別紙物件目録記載の製品又は半製品を廃棄せよ。 (4)被告ジャパンレントオール株式会社は,原告に対し,450万円及びこれに対する平成23年9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (5)被告ジャパンイベントプロダクツ株式会社は,原告に対し,270万円及びこれに対する平成23年9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による 5%の割合による金員を支払え。 (5)被告ジャパンイベントプロダクツ株式会社は,原告に対し,270万円及びこれに対する平成23年9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (6)訴訟費用は被告らの負担とする。 (7)仮執行宣言 2 被告ら主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者ア原告原告は,スチール家具や事務器の製造・販売等を目的とする株式会社である。イ被告ら被告ジャパンレントオール株式会社(以下,「被告ジャパンレントオール」という。)は各種物品賃貸業,中国製品の輸入などを目的とする株式会社である。被告ジャパンイベントプロダクツ株式会社(以下,「被告ジャパンイベントプロダクツ」という。)は,イベント,式典及び展示会に使用する器具の製造及び販売等を目的とする株式会社である。 (2)原告の特許権ア本件特許権原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,本件特許にかかる発明を「本件特許発明」という。また,本件特許にかかる明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)にかかる特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。特許番号特許第3474265号発明の名称家具の脚取付構造出願日平成6年7月6日登録日平成15年9月19日特許請求の範囲「テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって,家具本体1に固定させる基盤6に,有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,前記嵌合 て,家具本体1に固定させる基盤6に,有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,前記嵌合突起8の底面8aには,筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に,底面8aの上面は,前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し,前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると,前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたことを特徴とする家具の脚取付構造。」イ構成要件の分説本件特許発明は,次の構成要件に分説することができる。 A テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって,B 家具本体1に固定させる基盤6に,有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,C 脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,D 前記嵌合突起8の底面8aには,筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に,E 底面8aの上面は,前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面aに形成し,F 前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,G 前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると 挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,G 前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると,H 前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたことを特徴とするI 家具の脚取付構造(3)被告らの行為ア被告ジャパンレントオールは,業として,「丸テーブル(白)カチット式」の名称で,天板の直径が異なる3種類(90 ,75 ,60 )の丸テーブル(別紙物件目録のうち丸テーブルのもの。以下「被告製品」という。なお,別紙物件目録は,角のある天板のテーブルを含むものと解されるが,被告らがそのようなテーブルを製造販売等したことを認めるに足りる証拠はない。)を貸し渡している。 イ被告ジャパンイベントプロダクツは,業として,中華人民共和国所在の工場で製造された被告製品を,日本国内に輸入し,自社のプライベートブランド商品として販売している。 2 原告の請求原告は,被告ら各自に対し,本件特許権に基づき,別紙物件目録記載の製品の製造・輸入等の差止め,同製品及びその半製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づき,被告ジャパンレントオールに対しては450万円の損害賠償及びこれに対する平成23年9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金,被告ジャパンイベントプロダクツに対しては270万円の損害賠償及びこれに対する平成23年9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか (争点1)(2) 9月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか (争点1)(2)本件特許は,下記無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか (争点2)ア本件特許は,新規性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか (争点2-1)イ本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙2文献) (争点2-2)ウ本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙1文献) (争点2-3)エ本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙3文献) (争点2-4)オ明確性要件違反 (争点2-5)(3)原告の損害 (争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1)被告製品の構成と本件特許発明の構成要件充足性被告製品の構成は,以下のとおりであり(別紙物件目録の記載により特定される被告製品との関係は,第4の1(1)参照),本件特許発明の各構成要件を充足することは明らかである。 a1 テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって,b1 家具本体1に固定させる基盤6に,有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,c1 脚部2の上端に設 ブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって,b1 家具本体1に固定させる基盤6に,有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,c1 脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,d1 前記嵌合突起8の底面8aには,筒の径方向に伸びるスリット9を設けると共に,e1 底面8aの上面は,前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向(下図に示す矢印方向)に上向きに緩やかに傾斜する斜面aを形成し,f1 前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,g1 前記掛止部2bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると,h1 前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたi1 脚取付構造を持つテーブル。(2) 「緊密に挿嵌」(構成要件C)の充足性ア自白の成立(禁反言の法理)被告らは,平成23年12月9日の第1回弁論準備手続期日において,被告製品の構成につき,「脚部2の上端に設けられて,前記下方膨出部80を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,」(構成c2)と特定した上,構成要件A,D,E,F,H及びGの非充足のみを主張し,その余の点については積極的に非充足の主張をしていなかったことからすれば,被告製品が,下方膨出部80を嵌合孔10に「緊密に挿嵌」させる構造を有することを自白したといえる。 また,被告らは,同期日において,上記のとおり構成要件Bの充足性を積極的に争わず,被告製品の「有底短円錐筒状の下方膨出部80」 合孔10に「緊密に挿嵌」させる構造を有することを自白したといえる。 また,被告らは,同期日において,上記のとおり構成要件Bの充足性を積極的に争わず,被告製品の「有底短円錐筒状の下方膨出部80」(構成b2)が嵌合孔10に緊密に挿嵌される構造であると主張しているのであるから,構成要件Bの充足性についても自白が成立したといえる。そのため,被告らが上記のような主張をした後に「緊密に挿嵌」の充足性を争うことは禁反言の法理に反するし,この点を裁判所が判断することは弁論主義に反する。イ仮に,自白の成立が認められないとしても,被告製品が「緊密に挿嵌」を充足することは明らかである。すなわち,「緊密に挿嵌」とは,本件特許発明の採用する連結方法によって固定部4と被固定部5を強固に掛け合わせる必要から,嵌合突起8を嵌合孔10に緊密に挿嵌して被固定部5の上面と内側面とを固定部4に緊密に接触させることであり,その機能は,これによって脚部2(及びこれに伴う掛止部12b)の回動の軸を決定し,回動中も軸を固定して軸がぶれないようにすることで回転制御を行うものである。「緊密に挿嵌」の技術的意味及び機能はかかるものであり,被固定部5と固定部4の密閉などを目的とするものではないのであるから,被固定部5の上面と固定部4とが緊密に接触した状態下において必ずしも固定部4における嵌合突起の側面の全てが被固定部5の内側面と接触している必要はない。少なくとも,被固定部5の上面と固定部4とが緊密に接触した状態下において,被固定部5の内側面と固定部4とが上記機能を果たしうる程度の範囲で緊密に接触していれば足りる。そのため,被告製品の嵌合突起8の形状が短円柱筒状ではなく,短円錐筒状であったからといって,作用効果は同じであり,「緊密に挿嵌」を充足性 能を果たしうる程度の範囲で緊密に接触していれば足りる。そのため,被告製品の嵌合突起8の形状が短円柱筒状ではなく,短円錐筒状であったからといって,作用効果は同じであり,「緊密に挿嵌」を充足性が左右されるものではない。(3) その他の被告らの主張について被告製品の構成にかかる被告らの主張は,本件特許発明の構成要件に該当しないように表現や言葉を変えているに過ぎない。 また,本件明細書の実施例におけるスリット9は底面直径全長には伸びておらず,この点で被告製品と形状を異にしているが,解決すべき技術的課題に対して本件特許発明が有する作用効果とは無関係であり,当該差違点が顕著な効果を有することもなく,構成要件の充足性に影響を及ぼすものではない。 【被告らの主張】(1)被告製品の構成被告製品の構成は以下のとおりであり,原告の主張は誤っている。 a2 家具本体1の脚部2に天板13を着脱自在に取付ける為の構造であって,b2 家具本体1に固定させる基盤6に,有底短円錐筒状の下方膨出部80を下向きに突設した固定部4と,c2 脚部2の上端に設けられて,前記下方膨出部80を挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,d2 前記下方膨出部80の底面80aには,始端が円錐筒下端部から底面80aに至る円周部から切り込まれ,底面直径全長に伸びる切り込み90をプレス成形により設けると共に,e2 底面80aは始端が円錐筒下端部から底面80aに至る円周部から切り込まれ,底面直径全長に伸びる切り込み90により切り込み90を挟んで両側の底面周端部は一方はd1長で深く,他方はd2長で浅くプレス時にひねりを加えて押し込まれ,切り込み90全長を挟んで互いに逆方向に傾斜し合う一対の傾斜底面がプレス形成され,底面80aの表面は,切 両側の底面周端部は一方はd1長で深く,他方はd2長で浅くプレス時にひねりを加えて押し込まれ,切り込み90全長を挟んで互いに逆方向に傾斜し合う一対の傾斜底面がプレス形成され,底面80aの表面は,切り込み90の底面両側端90a,90aから夫々切り込み方向に上向きに傾斜する斜面cに形成し,底面80aの裏面は,前記切り込み90の底面両側端90a,90aから夫々切り込み方向に上向きに傾斜する斜面cに形成しf2 嵌合孔10の底部11には,切り込み90に挿嵌させ得るT字形状を備えて,その上端に斜面cに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,g2 掛止部12bを切り込み90に挿通させたうえ,天板13を回動させると,h2 掛止部12bが斜面cに密接し,固定部4と被固定部5とが掛合されるようにしたことをi2 特徴とする天板取付構造。 (2)被告製品は本件特許発明の構成要件を充足しないこと被告製品は,以下のとおり,本件特許発明の構成要件A及びCからHまでを充足しない。 ア構成要件Aの非充足被告製品の構成a2 は,「家具本体1の脚部2に天板13を着脱自在に取付ける為の構造」であり,「テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造」ではないから,構成要件Aを充足しない。イ構成要件Cの非充足原告は,「緊密に挿嵌」について,少なくとも,被固定部5の内周面と固定部4とが脚部2(及びこれに伴う掛止部12b)の回動の軸を決定し,回動中も軸を固定して軸がぶれないようにするとの機能を果たし得る程度に緊密に接触していれば足りると主張する。しかし,あえて「緊密」という文言が用いられている以上,その程度の接触では,「緊密に挿嵌」とはいえない。かかる機能を果たし得る程度に被固定部5 し得る程度に緊密に接触していれば足りると主張する。しかし,あえて「緊密」という文言が用いられている以上,その程度の接触では,「緊密に挿嵌」とはいえない。かかる機能を果たし得る程度に被固定部5の内周面と固定部4とが接触している必要があることは,本件特許発明の構成要件G及びHから当然に導かれることであるため,原告の解釈に立つ限り,「緊密」の文言が無意味になる上,「緊密」という文言の通常の意味に照らせば,被固定部5の内周面と固定部4とが隙間なく完全に接触している必要はないとしても,大部分が接触している必要があると解すべきである。被告製品は,下方膨出部80が嵌合孔10に挿嵌されても,被固定部5の上面と内側面が,固定部4に「緊密に接触」しているものではないことは明らかである。なお,原告が,「緊密に挿嵌」の解釈について,無効論と異なる主張をすることは禁反言の法理に照らして許されない。ウ構成要件D及びEの非充足被告製品の構成d2,e2 の「底面直径全長に伸びる切り込み90」は,構成要件D及びEにいう「スリット9」とはその形状を異にするから,構成要件D及びEを充足しない。エ構成要件F及びHの非充足被告製品における掛止部12bは,「底面80aの裏面にある斜面cに密接させる掛止部12bを設けた」ものであり,「前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し」たものではなく,また,同じく掛止部12bは,「底面80aの裏面に形成された斜面cに密接する」ものであり,「前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付ける」ものではないから,構成要件F及びHを充足しない。オ構成要件Gの非充足被告製品の構成g2 裏面に形成された斜面cに密接する」ものであり,「前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付ける」ものではないから,構成要件F及びHを充足しない。オ構成要件Gの非充足被告製品の構成g2 は,「天板13を回動させる」ものであり,前記掛止部12bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させる」ものではないから,構成要件Gを充足しない。 (3)原告の禁反言の法理などに係る主張への反論原告は,被告製品が「緊密に挿嵌」(構成要件C)を充足しない旨の被告らの主張について禁反言の法理に反するなどと主張するが,被告らの主張は,原告が特許庁での無効審判事件の審決を受けて「緊密に挿嵌」の解釈を弁論再開後に初めて明らかにしたことに対応したもので,原告の行為に起因するものであるから,禁反言の法理に反するとは到底いえない。 2 争点2-1(本件特許は,新規性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか)について【被告らの主張】(1)乙1発明実開昭60-47909号公報(乙1。以下「乙1文献」という。)には,以下の発明(以下「乙1発明」という。)が開示されている。 ① 支脚(3)を天板(2)に着脱自在に取り付けるための構造② 天板(2)に固定させるための支脚取付板(4)に,膨出部(5)を下向きに突設した固定部材③ 支脚(3)の上端に設けられて,膨出部(5)を挿嵌させる凹所12を備える被固定部材④ 下方膨出部の底面に開口(6)を設ける。 ⑤ 該袋部の内底部は周方向で開口近接部よりも同遠方側が高位置にあり,傾斜面をなしている。 ⑥ 開口(6)に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に係止片(15a)を設けた連結部材(15)を設ける。 ⑦ 脚(3)の上端と で開口近接部よりも同遠方側が高位置にあり,傾斜面をなしている。 ⑥ 開口(6)に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に係止片(15a)を設けた連結部材(15)を設ける。 ⑦ 脚(3)の上端と取付板(4)とを係止片(15a)(15b)が開口(6)から膨出部(5)内へ嵌入するように当接し,この当接状態で矢印(S)の如く支脚(3)を回転させると,固定部材と被固定部材とが強固に掛合する状態となる。 (2)本件特許発明と乙1発明との対比本件特許発明と乙1発明とを対比すると,乙1発明の「支脚(3)」が本件特許発明の「脚部2」に,「天板(2)」が「家具本体1」に,「固定部材」が「固定部4」に,「被固定部材」が「被固定部5」に,「膨出部(5)」が「嵌合突起8」に,「取付板(4)」が「基盤6」に,「該袋部の内底部は周方向で開口近接部よりも同遠方側が高位置にある構造」が,「スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a」に,「凹所(12)」が「嵌合孔10」に,「開口(6)」が「スリット9」に,「高位置の内底面に圧接する係止片(15a)(15b)」が「斜面aに密接させる掛止部12b」に,「連結部材(15)」が「係止部材12」に,「脚(3)の上端と取付板(4)とを係止片(15a)(15b)が開口(6)から膨出部(5)内へ嵌入するように当接し,この当接状態で矢印(S)の如く支脚(3)を回転させると,固定部材と被固定部材とが強固に掛合する状態となる」が「スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると,前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される」に相当する。したがって,本件特許発明と乙1発明とは一致しており,本件特許発明は新規性を欠く。 と,前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される」に相当する。したがって,本件特許発明と乙1発明とは一致しており,本件特許発明は新規性を欠く。 (3)「緊密に挿嵌」について原告は,「緊密に挿嵌」を,嵌合突起8が嵌合孔10に挿嵌されても,被固定部5の上面と内側面が,固定部4に「緊密に接触」していることを意味すると主張するが,誤った解釈である。すなわち,本件特許発明の目的は,不使用時に脚を取り外して保管・運搬の便を図るようにしたものにおいて,脚部の取付け及び取外しを極力簡単・迅速,且つ確実に行えるようにした家具の脚取付構造を提供することにあり,その解決手段は,固定部と被固定部とを嵌合突起に形成した斜面が呈する楔作用によって,十分な連結強度を確保するものであるが,その楔作用は,「脚部2を回動させ」て,「係止部12b」が「斜面a」を「次第に締め付ける」ことにより奏功する。そして,このような「回動」が可能となるためには,「回動」以前に,固定部4と被固定部5との間に一定の隙間が形成されることが必須である。そのため,「緊密に挿嵌」が,原告の上記主張のように解釈されることはあり得ず,むしろ,固定部の嵌合突起8の基部に被固定部5の嵌合孔10の先端部が,一定の隙間を保ちつつ,「嵌り合う」という意味と解釈されるべきである。この解釈を前提とする限り,本件特許発明と乙1発明とは,構成要件B及びCにおいても一致する。なお,特許権侵害を主張する原告は,本件特許発明の解釈につき,属否論と無効論とで主張を一貫させる必要があるが,これを争う被告らにおいては,いずれかで主張が採用されれば足りるから,属否論と無効論とで矛盾した主張をすることが妨げられるものではない。 (4)原告の主張について させる必要があるが,これを争う被告らにおいては,いずれかで主張が採用されれば足りるから,属否論と無効論とで矛盾した主張をすることが妨げられるものではない。 (4)原告の主張についてこの点,原告は,① 乙1発明には,「斜面a」に相当する構造がなく,また,② 乙1発明は,支脚を約90°回転させることに伴い,係止片が膨出部内で90°旋回し,袋部の定位置の内定面から高位置の内底面側へ擦動移動して,距離(t)の分だけ内定面に圧接されるものであるから,本件特許発明のように,脚部2を軸周りに回動させると斜面aに係止部が次第に締め付けられるものではない旨主張する。しかし,乙1文献には,「袋部の内底面は周方向で開口近接側より同遠方側が高位置にあり」との限定があるのみで,内底面に周方向で傾斜を設けることを排除する記載はない。そして,緩やかに傾斜する斜面を形成することが,袋部の開口近接側の内底面から同遠方側の高位置の内底面側への擦動移動を容易にすることは,掛止部材を回転させ,緩やかに傾斜する斜面に密接させて互いに嵌合させる回転式掛止構造が周知技術であることに照らし,当業者にとって技術常識に属するのであるから,乙1発明の袋部内底面の構成は,緩やかに傾斜する斜面を含むと解すべきである。 【原告の主張】(1)相違点乙1発明の構成は,以下のとおり,本件特許発明の構成要件B,C,E及びGの点で相違する。 ア本件特許発明は,嵌合突起が「有底短筒状」(構成要件B)であり,嵌合孔が「嵌合突起8を緊密に挿嵌させる」(構成要件C)ものであり,スリットの伸びる方向が「筒の径方向」(構成要件D)であるのに対し,乙1発明は嵌合突起が「短筒状」でなく(したがって「筒の径方向」もない。),嵌合孔が「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものでない点で ,スリットの伸びる方向が「筒の径方向」(構成要件D)であるのに対し,乙1発明は嵌合突起が「短筒状」でなく(したがって「筒の径方向」もない。),嵌合孔が「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものでない点で相違する。 イ本件特許発明の構成要件Eは,「筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a」であるのに対して,乙1発明は「周方向で開口近接側より同遠方側が高位置にある」という構成である。すなわち,乙1発明においては,「係止片(15a)(15a)」が,「袋部(9)(9)の低位置の内底面(9a)(9a)から高位置の内定面(9b)(9b)側へ摺接移動する」,「支脚(3)全体が距離(t)だけ上方へ引き付けられ(る)」とされているとおり,その袋部(9)(9)の内底面は,明確に異なる高さ(距離(t))をもった2種の内底面を備えた構造となっており,本件特許発明の「上向きに緩やかに傾斜する斜面」とは異なっている。ウさらに,本件特許発明の構成要件Hは「掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にした」ものであるのに対して,乙1発明では「支脚を90°回転させることにより,高位置の内底面に圧接すると共に,支脚の周縁部と支脚取付板の周囲部とが圧接する」ものである。すなわち,本件特許発明では脚部2を軸周りに回動させると斜面aに掛止部が次第に締め付けられるのに対して,乙1発明は,「支脚(3)を90°回転させ」ることに伴い,「係止片(15a)(15a)」が膨出部(5)内で90°旋回し,「袋部(9)(9)の低位置の内底面(9a)(9a)から高位置の内定面(9b)(9b)側へ摺接移動」して,距離(t)の分だけ内底面に圧接されるものである。(2)本件特許発明の作用効果と新規性かかる2点の相違により,乙1発明 面(9a)(9a)から高位置の内定面(9b)(9b)側へ摺接移動」して,距離(t)の分だけ内底面に圧接されるものである。(2)本件特許発明の作用効果と新規性かかる2点の相違により,乙1発明では圧接する力が内底面の高低差距離(t)で固定される(90°回転し,終端壁5aで固定される。)のに対して,本件特許発明は斜面aに掛止部が締め付けられる構造であり,かつ,脚部2の回転角度に制限がないことから,「嵌合突起の形成した斜面が呈する楔作用」によって生ずる斜面aと掛止部12aとを圧接する力は,脚部2の回転角度によって決定されるのであり,脚部2をより回動させることによって,掛止部12aをより強く,斜面aに締め付けることで,常に「十分な連結強度を確保できる」という効果を生じさせる。この相違によって本件特許発明だけが有する効果は,保管・運搬の便を図るため,脚部の取付及び取外しを簡単・迅速,且つ確実に行うという本件特許発明の目的に寄与する。すなわち,テーブル等の家具に支脚を取り付ける取付装置においては,脚部の取付け及び取外しの繰り返しや,取付状態において家具を引き摺った際などに掛止片が変形するなどし,取付部に「緩み」が発生してくることが極めて多い。乙1発明は,終端壁5aにより,脚部の回転角度は90°に固定されている上,係止片と内接する内底面の高さも,高低差距離tを持つ2種の内底面のみで構成されている。そのため,仮に乙1発明において係止片が変形するなどの「緩み」が生じた場合には,係止片自体を取り替えるなどの修理を施す必要がある。これに対し,本件特許発明では,「緩み」が生じたとしても,単に脚部2をさらに回動することによって,常に「嵌合突起の形成した斜面が呈する楔作用により,十分な連結強度を確保できる」のである。つまり,本件特 に対し,本件特許発明では,「緩み」が生じたとしても,単に脚部2をさらに回動することによって,常に「嵌合突起の形成した斜面が呈する楔作用により,十分な連結強度を確保できる」のである。つまり,本件特許発明では,仮に継続的な使用により「緩み」が生じたとしても,乙1発明のように修理等を要せず,脚部2をさらに回動させるという「簡単」な方法のみで,「迅速」に,常に脚部を天板に強固に「確実」に固定することが可能となっている。したがって,本件特許発明は,乙1発明と同一とはいえず,新規性は否定されない。 3 争点2-2(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか〔乙2文献〕)について【被告らの主張】(1)乙2発明特開昭57-25510号公報(乙2。以下「乙2文献」という。)には,以下の発明(以下「乙2発明」という。)が開示されている。 ① テーブルの脚(2)を,天板に着脱自在に取付ける為の構造② テーブルに固定される取付体であって,有底短筒状の嵌合突起を下向きに突設した取付体(3)③ 脚(2)の上端に設けられて,嵌合する突起と嵌合孔を備える取付体(4)④ 取付体(7)を上端に有する脚(2)を回転させることにより取付体(3)(7)を介してテーブル(1)に強固に取り付けられる(2)乙3文献実開昭60-177311号公報(乙3。以下「乙3文献」という。)には以下の発明(以下「乙3発明」という。)が開示されている。 ① 係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部② 嵌入部を差込孔に差し込んだとき嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当体(3)一致点及び相違点本件特許発明と乙2発明とを対比すると,乙 下り傾斜になるようにした締付部② 嵌入部を差込孔に差し込んだとき嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当体(3)一致点及び相違点本件特許発明と乙2発明とを対比すると,乙2発明の「テーブル」が本件特許発明の「テーブル等の家具」に,「脚(2)」が「脚部」に,「天板」が「天板等の家具本体」に,「取付孔6と突起係合4とが嵌合されたもの」が「基盤6」に,「第1図に示された部材の一部:係合突起11で囲まれるリング状枠体(9)」が「嵌合突起8」に,「第1図に示された部材」が「固定部4」に,「第7図に示された部材の一部:係合突起12で囲まれるリング状枠体(10)」が「嵌合孔10」に,「第7図に示された部材」と「被固定部5」に,それぞれ相当する。 したがって,本件特許発明と乙2発明とは以下の点で相違し,それ以外の点では一致する。 ① 底面8aに設けられた筒の径方向に設けられたスリット9(構成要件Dの有無)② スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a(構成要件Eの有無)③ 斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12(構成要件Fの一部の有無)(4)容易想到性乙3発明の「嵌入孔」が「スリット9」に,「係止受体の根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部」が「スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a」に,「嵌入部を差込孔に差し込んだとき嵌入孔に嵌入するよう嵌入部から外側に突設した二つの押当子」が「斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12」に相当する。そのため,乙2発明に乙3発明を適用することにより本件特許発明に想到することができる。そして,乙2発明と乙3発明とは技術分野が 「斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12」に相当する。そのため,乙2発明に乙3発明を適用することにより本件特許発明に想到することができる。そして,乙2発明と乙3発明とは技術分野が同じである上,発明の課題も共通しており,乙3文献には,設計上の工夫により確実な連結が可能となる点も示唆されていることからすると,乙2発明に乙3発明を適用する動機付けがあることは明らかである。したがって,当業者が乙2発明に乙3発明を適用して本件特許発明を想到することは容易といえるから,本件特許発明は進歩性を欠いているというべきである。 (5)原告の主張について原告の主張は,乙3発明では「係止受体」が存在し,「締付部」による「締付け」に限度があるため,「締付部」は,本件特許発明の「斜面a」に相当しないという趣旨と理解される。しかし,「締付部」の構造は,「斜面a」と同一であり,前者が後者に相当していることは明らかである。そもそも「係止受体」は連結性を強固にするために付加された部材であるが,被告らは,乙3文献から,この部材を除外して技術事項を取り出したものを乙3発明としているのであるから,原告の主張はその前提を誤っている。また,本件特許発明の「斜面a」についても,その終端が締付けの限度となることは明らかであり,「斜面a」にも「締付け」に限度があることになるから,仮に「係止受体」による「締付け」の限度を考慮に入れても,乙3発明の「締付部」は本件特許発明の「斜面a」に相当することとなる。しかも,原告自身,本件特許発明の拒絶査定不服審判手続において,本件特許発明の斜面とそれに当接する掛止部材の「楔作用による締結方法自体は,勿論,公知技術に属する」と述べ,本件特許発明と乙2発明(又は乙1発明)との相違点が公知技術である 定不服審判手続において,本件特許発明の斜面とそれに当接する掛止部材の「楔作用による締結方法自体は,勿論,公知技術に属する」と述べ,本件特許発明と乙2発明(又は乙1発明)との相違点が公知技術であることを認めていた。さらに,当該相違点が単なる公知技術を超えて周知技術であることは,乙19~21の刊行物記載からも明らかである。そして,原告の拒絶査定不服審判手続における上記陳述に照らせば,上記相違点が公知技術でないと主張することは出願経過禁反言の原則に照らして許されない。また,原告は,本件特許発明独自の作用効果を強調するが,周知技術である楔作用の構成から必然的に生じるものであり,進歩性を基礎づけるものではない。このことは,本件明細書はもとより拒絶査定不服審判手続においても従来の周知の楔作用と区別できる作用効果を奏するとは明示されていないことからも裏付けられる。 【原告の主張】(1)本件特許発明は,短筒状の嵌合突起が「有底」であり,嵌合孔が「前記嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものであるのに対し,乙2発明はリング状枠体(9)が下方に開放するもので,脚側合成樹脂製取付体(7)のリング状枠体(10)がリング状枠体(9)内に挿嵌されるものであり,リング状枠体(10)内の空間(本件特許発明の「嵌合孔」に相当するもの)が,リング状枠体(9)(本件特許発明の「嵌合突起」に相当するもの)を緊密に挿嵌させるものでない点でまず相違する。 そして,乙2発明のリング状枠体(9)は,脚(2)の上端に設けられた脚側合成樹脂製取付体(7)のリング状枠体(10)の部分を,リング状枠体(9)内に挿嵌して,テーブル(1)の裏面に脚(2)を取り付けるもので,「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設」したものではないから,当該リング状枠体(9)を「有底 体(10)の部分を,リング状枠体(9)内に挿嵌して,テーブル(1)の裏面に脚(2)を取り付けるもので,「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設」したものではないから,当該リング状枠体(9)を「有底」とすることは,被告らが副引例とする乙3文献ほかいずれの文献にも記載又は示唆されたものでない以上,当業者が上記相違点に係る構成に到達することは容易ではない。 (2)また,被告ら主張のとおり,本件特許発明と乙2発明とでは,本件特許発明の構成要件D,E及びHで相違するが,乙2文献には,それらの構成について何らの記載も示唆もない。この点,被告らが副引例とする乙3文献には,本件特許発明のスリット9及び斜面aに対応する,差込孔4と二つの嵌入孔5及び締付部8が設けられた雌体1が記載され,本件特許発明の掛止部材12に対応する,嵌入部10の外側に突設した二つの押当子11が設けられた雄体2が記載されて,雄体2の嵌入部10を雌体1の差込孔4に差し込み回転させ,押当子11を締付部8に密接するとされている(乙3発明)。しかし,このような乙3発明も,本件特許発明の構成要件Hのように「掛止部12bが斜面aを次第に締付けて,前固定部4と被固定部5とが強固に掛合される」ものではなく,「雄体2の押当子11が雌体1の係止受体6に押当すると共に押当子11が締付部8に密接する」,すなわち雌体締付部8の根元である係止受体6(押当受面6a)まで回転させて固定する構造であり,締付部8の斜面となっている場所で密接するのではない。そのため,乙3発明では,「緩み」が生じた場合,「押当子11を下向きにするか締付部8を突出させ」る,つまり,固定部の改造加工を要する。これに対し,本件特許発明は,構成要件Hのように,脚部2をその軸周りにさらに回動させ,掛止部12bが斜面aを を下向きにするか締付部8を突出させ」る,つまり,固定部の改造加工を要する。これに対し,本件特許発明は,構成要件Hのように,脚部2をその軸周りにさらに回動させ,掛止部12bが斜面aを次第に締付けて,さらに強固に掛止することができるのであり,ここにこそ本件特許発明独自の効果があるといえる。そのため,本件特許発明と乙2発明及び乙3発明とでは,構造,作用が相違しており,乙2発明に乙3発明を適用しても本件特許発明に想到するものではない。また,乙2文献や乙3文献には本件特許発明の構成要件E及びHを示唆する記載もなく,乙2発明に乙3発明を適用する動機付けもない。なお,乙19~21に記載されている発明も,本件特許発明とは固定方法に関する技術的思想が異なっており,本件特許発明の容易想到性を根拠付けるものではない。したがって,この観点からも,本件特許発明を容易想到とする被告らの主張は誤りである。 4 争点2-3(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか〔乙1文献〕)について【被告らの主張】(1)容易想到性ア前記2(争点2-1)の被告らの主張欄に記載のとおり,乙1発明は,本件特許発明と同一の構成であるが,仮に① スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向に上向きに緩やかに傾斜する斜面a(構成要件E),② 斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12(構成要件F)の2点を具備しないことで相違するとしても,乙3文献で開示されている前記乙3発明を適用することにより,これら相違点に係る構成へ容易に想到することができる。 そして,乙1発明と乙3発明とは技術分野が同じである上,発明の課題も共通しており,乙3文献には,設計上の工夫により確実な連結が可能となる点も示唆 ら相違点に係る構成へ容易に想到することができる。 そして,乙1発明と乙3発明とは技術分野が同じである上,発明の課題も共通しており,乙3文献には,設計上の工夫により確実な連結が可能となる点も示唆されていることからすると,乙1発明に乙3発明を適用する動機付けがあることは明らかである。イまた,本件特許発明の「緊密に挿嵌」が無効論に係る原告の主張のとおりに解釈され,乙1発明との相違点であるとしても,かかる相違点も,当業者であれば,容易に相当し得るものである。まず,この点に関する原告の主張は,乙1発明では,支脚(3)の回転は,円形輪郭(6a)で支障なくされており,膨出部(5)及び凹所(12)が,積極的な意味で回転を支障なくするための機能を要求されるものでないことを前提としている。しかし,係止片(15a)(15a)は,支脚(3)の回転動作に伴って取付板(4)の膨出部(5)内で旋回することが必要とされており,この旋回が円形輪郭(6a)の存在により完全に支障なくされるものでもないから,乙1発明においても,回転を支障なくする機能を有する他部材が要求されているといえる。 そして,取付状態を安定化させるとの課題は,乙1文献に記載されているのみならず,脚部を着脱可能とするテーブルにおいては周知の課題である上,この課題解決手段として,固定部材と被固定部材とが強固に掛合されるよう,脚部の回動により埋められる「隙間」を可能な限り小さくすべく,膨出部(5)の形状について,膨出部(5)を収納する機能を有する凸所12の形状(円筒形)に合わせて「有底の短筒状」に置換し,「緊密な挿嵌」とすることは単なる設計事項であり(乙8,9,11,13,16,22,23),当業者が容易に想到することができる。ウしたがって,当業者が乙1発明に乙3発 「有底の短筒状」に置換し,「緊密な挿嵌」とすることは単なる設計事項であり(乙8,9,11,13,16,22,23),当業者が容易に想到することができる。ウしたがって,当業者が乙1発明に乙3発明を適用して本件特許発明を想到することは容易であるといえるから,本件特許発明は進歩性を欠いているというべきである。 (2)原告の主張について原告の主張に対する反論は,前記3(争点2-2)の被告らの主張欄(5)に記載のとおりである。 【原告の主張】(1)本件特許発明と乙1発明とが,構成要件B及びCで相違することは,前記2(争点2-1)の原告の主張欄に記載のとおりである。 そして,乙1発明の支脚(3)の回転は,円形輪郭(6a)で支障なくされているものであり,膨出部(5)(本件特許発明の「嵌合突起」に相当するもの)及び凹所(12)(本件特許発明の「嵌合孔」に相当するもの)が,積極的な意昧で回転を支障なくするための機能を要求されるものではない。 さらに,乙1文献には,両者が相互に「緊密に挿嵌させる」ことを示唆するその他の記載も存在しておらず,さらに,被告らが副引例とする乙3文献ほかいずれの文献に記載又は示唆されたものでない以上,当業者が上記相違点に係る構成に到達することは容易ではない。 (2)本件特許発明と乙1発明とが,構成要件E及びGで相違することも,前記2(争点2-1)の原告の主張欄に記載のとおりである。そして,かかる相違点については,乙3発明の構成とも相違しているが,この点は,争点3(争点2-2)の原告の主張欄に記載のとおりである。 つまり,本件特許発明の構成要件E及びGは,乙1発明及び乙3発明とは構成を異にしており,かかる相違点に基づき,乙1発明及び乙3発明では不可能な特別な効果を有している。そのため,仮に乙 りである。 つまり,本件特許発明の構成要件E及びGは,乙1発明及び乙3発明とは構成を異にしており,かかる相違点に基づき,乙1発明及び乙3発明では不可能な特別な効果を有している。そのため,仮に乙1発明に乙3発明を適用しても,本件特許発明の構成には至らず,本件特許発明の有する特別な効果を得ることもできない。したがって,この観点からも,本件特許発明を容易想到とする被告らの主張は誤りである。 5 争点2-4(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものか〔乙3文献〕)について【被告らの主張】(1)乙3発明の2乙3文献には,以下の発明(以下「乙3発明の2」という。)が開示されている。 ① テーブルの足Cを,テーブル板Aに着脱自在に取り付ける為の構造② テーブル板Aに固着する連結部材12③ 足Cに固着する連結部材13④ 雌体1は板状の基材3の中央部に差込孔4を形成し,差込孔4の外周の対向位置に同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5を形成し,夫々の嵌入口5の周縁に二つの係止受体6を突設し,第3図イ及び第5図のロ,ハに明示するように夫々の係止受体6の近くにその根元を高くしてそこから他方の嵌入孔側に次第に下り傾斜になるようにした締付部8を形成してなる。⑤ 雄体2は第3図ロに明示するように,板状の基材9に雌体1の差込孔4に回転自在に嵌入できるようにした嵌入部10を環状に立設し,嵌入部10の周縁に雌体1の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11を形成してなる。(2)一致点及び相違点本件特許発明と乙3発明の2とを対比すると,乙3発明の2の「足C」が本件特許発明の「テーブル等の家具の脚部2」に,「テーブル板A」が「天板等の家具本体1」に,「基材3」が「基盤6」に,「押当子 本件特許発明と乙3発明の2とを対比すると,乙3発明の2の「足C」が本件特許発明の「テーブル等の家具の脚部2」に,「テーブル板A」が「天板等の家具本体1」に,「基材3」が「基盤6」に,「押当子11a」が「係止部材12a」に,「押当子11」が「係止部材12」に,「締付部8」が「斜面a」に,それぞれ相当する。そのため,本件特許発明と乙3発明の2とは以下の点で相違し,それ以外の点では一致する。 ① 本件特許発明においては,テーブル側の連結部材である固定部4に嵌合突起8(雄体)が設けられているのに対し,乙3発明の2においては,足側の連結部材である被固定部5に嵌入部10(雄体)が設けられている点。② 本件特許発明においては,テーブル側固定部の嵌合突起8の底面aにスリット9が設けられているのに対し,乙3発明の2においては,テーブル側固定部の底面にスリット(嵌入孔5)が設けられている点。(3)容易想到性乙3発明の2において,雄体と雌体とを置換すること,つまり,雌体1を雄体とし,雄体2を雌体とすることにより,本件特許発明に想到することができる。すなわち,雌体1を雄体とすることは,雌体1に嵌合突起を設けることを意味しており,他方,雄体2を雌体とすることは,雄体2に前記嵌合突起に対応する嵌合孔を設けることを意味する。そして,押当子11が締付部8を締め付けるためには,嵌合突起の底面に押当子11が通過するためのスリットが必要となる。このように,乙3発明の2において,雄体と雌体とを置換することにより,テーブル側の連結部材に嵌合突起が設けられるとともに,足側の連結部材に嵌合孔が設けられることになり,さらに,嵌合突起の底面に押当子11が通過するためのスリットが設けられることになるから,本件特許発明に想到することができる。 突起が設けられるとともに,足側の連結部材に嵌合孔が設けられることになり,さらに,嵌合突起の底面に押当子11が通過するためのスリットが設けられることになるから,本件特許発明に想到することができる。そして,乙4~6の刊行物記載によれば,脚取付構造の嵌合部において,雄体と雌体の配置を入れ替えることは単なる設計事項であり,動機付けがあるといえる。また,乙7~16の刊行物記載によれば,天板側に雄体,脚部側に雌体を配置することは周知技術ともいえる上,回転する側にねじこまれる雄体を設けることは,部材に加えられる力の方向と部材自体の動きが一致するため自然であるといえることに照らせば,この周知技術を適用する動機付けがあるといえる。したがって,当業者が乙3発明の2に設計事項である置換を施し又は周知技術を適用して本件特許発明を想到することは容易であるといえるから,本件特許発明は進歩性を欠いているというべきである。 【原告の主張】(1)本件特許発明と乙3発明の2とは,① 本件特許発明が,家具本体1に固定させる基盤6に「有底短筒状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4」を備え,脚部2の上端に「前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5」を備え,スリット9は,基盤6の固定部4の「嵌合突起8の底面8a」に設けるのに対し,乙3発明の2は,そのようなものでない点(相違点①),② 本件特許発明は,スリット9が「筒の径方向に伸びる」ものであるのに対し,乙3発明の2は,「差込孔4の外周の対向位置」の「同差込孔4に開口する二つの嵌入孔5」である点(相違点②),③ 本件特許発明は,斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12が「嵌合孔10の底部11」に突設するものであるのに対し,乙3発明の2は,「雄体2は板状の基材9に・ 5」である点(相違点②),③ 本件特許発明は,斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12が「嵌合孔10の底部11」に突設するものであるのに対し,乙3発明の2は,「雄体2は板状の基材9に・・・嵌入部10を環状に立設し,嵌入部10の周縁にテーブル側の嵌入孔5に嵌入する二つの押当子11を形成してなる」ものである点(相違点③)で相違する。 この点,被告らは,乙3発明の2の雄体と雌体とを置換することにより,本件特許発明に想到できる旨主張するが,乙3発明の2は,「雌体1は・・・嵌入孔5を形成」,「雄体2は・・・二つの押当子11を形成」したものであり,その雄体と雌体とを置換すると,「嵌入孔5」や「押当子11」は,一緒に置換されることになり,テーブル板A側に「二つの押当子11」が,足C側に「嵌入孔5」(本件特許発明の「スリット」に相当するもの)が位置するものとなってしまうので,相違点①に係る構成に到達することはできない。 また,被告らが引例とするいずれの文献にも相違点①~③に係る構成に到達することを示唆する記載は存在しておらず,示唆もされていないことから,当業者がそれら構成に到達することは容易ではない。 (2)また,前記2(争点2-1)の原告の主張欄に記載のとおり,本件特許発明は,「緩み」が生じたとしても,単に脚部2をさらに回動することによって,常に「嵌合突起の形成した斜面が呈する楔作用により,十分な連結強度を確保できる」という特別な効果を有している。このような効果は,乙3発明の2が有しているものではないし,その雄体と雌体とを置換したところで得られるものもない。この観点からも,乙3発明の2から本件特許発明を想到することは容易であるとの被告らの主張は誤りである。 6 争点2-5(明確性要件違反)について【被 置換したところで得られるものもない。この観点からも,乙3発明の2から本件特許発明を想到することは容易であるとの被告らの主張は誤りである。 6 争点2-5(明確性要件違反)について【被告らの主張】本件特許発明は,「緩やかに傾斜する斜面」「強固に係合される」の用語の意味が不明確であり,明確性要件違反がある。すなわち,「緩やかに傾斜」といっても,傾斜面における傾斜角はさまざまであり,本件明細書を精査しても,どこから「緩やかではない」傾斜となるかが明らかではない。また,「強固に」といっても,その程度はさまざまであり,どの程度の「連結の強さ」があれば,「強固に」といえるか否かが明らかではない。【原告の主張】本件特許発明が登録に至っていることから明らかなとおり,本件特許発明に明確性要件違反はない。 7 争点3(原告の損害)について【原告の主張】(1)被告ジャパンレントオールについて被告製品は,直径60 ,75 及び90 の3種類があるが,被告ジャパンレントオールは,原告から譲渡を受けたものを除き,少なくとも各250台を有していると考えられる。 また,被告ジャパンレントオールは,天板直径60 の被告製品について,1個当たり1日2000円でこれを貸し渡している。そして,被告ジャパンレントオールは,遅くとも平成20年1月以降,これら被告製品を貸し渡しているところ,その期間は,少なく見ても3年間を下回ることはない。以上から,被告製品がそれぞれ1年間に1回貸し渡されたと仮定した場合,被告ジャパンレントオールが被告製品の貸渡しによって得た利益は,少なくとも450万円(=2000円×3年間×750個)であり,これが原告の受けた損害額と推定される(特許法102条2項)。(2) 被告ジャパンレントオールが被告製品の貸渡しによって得た利益は,少なくとも450万円(=2000円×3年間×750個)であり,これが原告の受けた損害額と推定される(特許法102条2項)。(2)被告ジャパンイベントプロダクツについて被告ジャパンイベントプロダクツは,平成19年5月の設立以降今日に至るまで,被告製品を許諾無しに販売していることから,その期間は,少なく見ても3年間を下回ることはない。そして,原告の販売実績から,被告ジャパンイベントプロダクツは,価格2万円程度で,少なくとも年間150台を販売し,利益率は30%を下回るものではないと考えられる。以上から,被告ジャパンイベントプロダクツが被告製品の販売によって得た利益は,少なくとも270万円(=2万円×30%×3年間×150台)であり,これが原告の受けた損害額と推定される(特許法102条2項)。【被告らの主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について被告製品は,本件特許発明の構成要件Cを充足せず,その技術的範囲に属するとは認められない。理由は以下のとおりである。 (1)被告製品の構成証拠(甲10,乙25)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,別紙物件目録掲載の写真(丸い天板,土台のテーブル)のとおりと認められ,その構成は,別紙物件目録記載のとおり特定でき,請求の趣旨においてもこのように特定されるべきである。 なお,原告は,被告製品の構成について,前記第3の1【原告の主張】(1)のとおり主張するが,別紙物件目録記載の構成との違いは,上記被告製品をどのように表現するかという評価の違いに過ぎず,このように被告製品を特定しても,処分権主義に反することはないと考える。(2)構成 とおり主張するが,別紙物件目録記載の構成との違いは,上記被告製品をどのように表現するかという評価の違いに過ぎず,このように被告製品を特定しても,処分権主義に反することはないと考える。(2)構成要件A,D~Hの充足性被告製品の構成が上記(1)のとおり特定されることからすれば,被告製品が本件特許発明の構成要件A及びDからHまでを各充足することは明らかというべきである。アこの点,被告らは,被告製品につき,「底面直径全長に伸びる切り込み」の構成を備えているものの,これは本件特許発明の「筒の径方向に伸びるスリット9」には当たらず,構成要件D及びEを充足しない旨主張する。 しかし,「底面直径全長に伸びる切り込み」との表現は,「筒の径方向に伸びるスリット」であるとの表現に比べ,スリットを切り込みと言い換えた上,その長さを特定している点で差異があるにとどまる。そして,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,本件特許発明におけるスリット9は,嵌合孔10の底部11に突設された掛止部材12を挿嵌させるための構成であるところ,本件特許発明の技術的範囲への属否を論じるに当たり,対応する被告製品の構成である「スリット」の長さが,底面直径全長に及んでいるか否かを特定する必要に欠けるというべきである。 したがって,構成要件D及びEに対応する被告製品の構成としては,上記(1)のとおり特定すれば足り,また,構成要件D及びEを充足することも明らかであるから,被告らの主張は採用できない。 イ被告らは,他にも① 構成要件Aに対応する被告製品の構成につき,「家具本体1の脚部2に天板13を着脱自在に取付ける為の構造」であり,「テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造」(構成要件A)を充足しない, 成につき,「家具本体1の脚部2に天板13を着脱自在に取付ける為の構造」であり,「テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造」(構成要件A)を充足しない,② 構成要件Fに対応する被告製品の構成につき,「底面80aの裏面にある斜面cに密接させる掛止部12bを設けた」であり,「前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに密接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し」(構成要件F)を充足しない,また,構成要件Hに対応する被告製品の構成につき,掛止部12bは,「底面80aの裏面に形成された斜面cに密接する」ものであり,「前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付ける」(構成要件H)を充足しない,などと主張する。しかし,上記①については,取り付ける側と取り付けられる側とを言い換えたに過ぎず,実質的な違いはない。また,上記②についても,原告の主張する被告製品の構成f及びhと,被告の主張する被告製品の構成 及び とは,実質的に同一のことを,異なるように分説し,あたかも本件特許発明の構成要件に該当しないかのような表現に言い換えているに過ぎず,被告製品の特定につき,上記(1)のとおり認定することを何ら妨げるものではなく,構成要件の充足性を左右するものでもない。 被告らの主張が採用できないことは明らかである。 (3)構成要件Cの充足性構成要件Cは,「脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,」であり,「被固定部5」に備えられた「嵌合孔10」が,「嵌合突起8」を「緊密に挿嵌させる」ことを求めている。そのため,「緊密に挿嵌させる」の解釈を明らかにした上で,被告製品の「嵌合孔10」が「有 」であり,「被固定部5」に備えられた「嵌合孔10」が,「嵌合突起8」を「緊密に挿嵌させる」ことを求めている。そのため,「緊密に挿嵌させる」の解釈を明らかにした上で,被告製品の「嵌合孔10」が「有底円錐台形状の嵌合突起8」を「緊密に挿嵌」させるものといえるか検討する。 ア 「緊密に挿嵌」の解釈一般に「緊密」の用語は,隙間なく付着していることを意味する。そのため,「嵌合突起8を緊密に挿嵌させる嵌合孔10」とは,その文言から,「嵌合突起8」を「嵌合孔10」に挿嵌させた際,「嵌合突起8」の外周面と「嵌合孔10」の内周面がほぼ一致し,全面にわたって隙間のない状態となることを意味すると解される。ただし,本件特許発明では,「嵌合突起8」を「嵌合孔10」に挿嵌させた状態で,「嵌合孔10」を上端に備える「脚部2」を「その軸周りに回動させる」ことが想定されているため,「回動」ができないほどに隙間がないことを求めているとはいえず,若干の隙間があるにとどまる場合を除外するものではないと解される。この点,本件明細書の記載によれば,本件特許発明において,嵌合突起8と嵌合孔10とが「緊密に挿嵌」されることは,脚部2の回動開始時から,支脚3の回転軸の位置決めを行うことができる点にその技術的意義があると解される。すなわち,本件特許発明は,斜面a(嵌合突起8の底面8aの上面)に当接させる掛止部12b(嵌合孔10の底部11の上端)が,脚部2の回動に伴って斜面aを次第に締め付けて,固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたものであるが,嵌合突起8が嵌合孔10に「緊密に挿嵌」されることは,その「緊密」さゆえに,斜面aの締付けを開始する時点から,脚部2の回転軸の位置決めを行い,「次第に締め付ける」との作用効果を実現するようにしたものといえる。 嵌合孔10に「緊密に挿嵌」されることは,その「緊密」さゆえに,斜面aの締付けを開始する時点から,脚部2の回転軸の位置決めを行い,「次第に締め付ける」との作用効果を実現するようにしたものといえる。「緊密に挿嵌」に係る上記文言解釈,つまり,嵌合突起8の外周面と嵌合孔10の内周面に隙間がないことを意味すると解することは,このような「緊密に挿嵌」の技術的意義とも整合的といえる。なお,本件明細書記載の実施例では,「嵌合突起8」を「嵌合孔10」に挿嵌させた状態を下記図面のとおりに示しているが,同図面においても,「嵌合突起8」の外周面と「嵌合孔10」の内周面との間に隙間はなく,上記解釈の相当性を裏付けるものといえる。 イ被告製品の充足性前記(1)で認定のとおり,被告製品の嵌合突起8は,周面の外径が付け根部分における約545~547 (平均約546 )から,頂部における約447 へと傾斜縮小する有底円錐台形状であるのに対し,嵌合孔10は,内径約561~579 (平均約572 )の円筒状であり,嵌合突起8を嵌合孔10に挿嵌させた状態を図示すると,別紙被告製品装着図のとおりである。すなわち,被告製品の嵌合孔10の内径(平均値)は,嵌合突起8の外径と比べると,同外径が最も大きくなる嵌合突起8の付け根部分(平均値)で見ても,約26 も大きく,挿嵌時に嵌合突起8の外周面との間で隙間が存在している。しかも,嵌合突起8は傾斜縮小する有底円錐台形状なため,その頂部(下方)へと向かうにつれ,嵌合孔10の内周面と嵌合突起8の外周面との隙間は大きくなる。 「緊密に挿嵌」といっても,脚部2を回動させるためには,嵌合突起8と嵌合孔10の内周面との間にある程度の隙間は必要であるが,上記認定の構成からする の内周面と嵌合突起8の外周面との隙間は大きくなる。 「緊密に挿嵌」といっても,脚部2を回動させるためには,嵌合突起8と嵌合孔10の内周面との間にある程度の隙間は必要であるが,上記認定の構成からすると,被告製品の嵌合孔10の内周面と嵌合突起8の外周面との間には,必要以上の隙間があるといわざるを得ない。そうすると,「締め付けを開始する時点から,脚部2の回転軸の位置決めを行う」という作用効果を奏しているとはいえず,嵌合孔10は,嵌合突起8を「緊密に挿嵌」させるものとはいえない。したがって,被告製品は,構成要件Cを充足するとは認められない。 (4) 構成要件Cに対応する被告製品の構成及びその構成要件充足性について自白が成立したなどの原告の主張についてこれに対し,原告は,構成要件Cに対応する被告製品の構成及びその構成要件充足性については自白が成立しており,被告らがこれを争う主張をすることは禁反言の法理に反して許されない旨主張するが,以下の理由により採用できない。 ア証拠(各項末尾に掲記),弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な事実によれば,原告と被告ら間の紛争及び本件訴訟につき,以下の経過が認められる。 (ア) 原告は,かねてから商品名をワンタッチテーブルとする着脱自在の脚を備えたテーブル(以下「原告製品」という。)を販売している。原告製品は,本件特許発明の構成要件A,D~Hを充足するが,被告製品同様,テーブル本体に有底円錐台形状の嵌合突起を備え,脚部上端の被固定部に備えられた嵌合孔へ挿嵌させた際,嵌合突起の外周面と嵌合孔の内周面とは接触せず,被告製品と同程度の隙間ができる。しかし,原告は,かかる挿嵌状態も本件特許発明の「緊密に挿嵌」(構成要件C)に当たると考えており,原告製品を本件特許発明の実施品であると認識していた 面とは接触せず,被告製品と同程度の隙間ができる。しかし,原告は,かかる挿嵌状態も本件特許発明の「緊密に挿嵌」(構成要件C)に当たると考えており,原告製品を本件特許発明の実施品であると認識していた。 被告ジャパンレントオールは,平成16年から平成19年にかけ,原告から原告製品を購入し,自社の賃貸事業に供していた。ところが,被告ジャパンレントオールと本店所在地及び代表取締役を同じくするジャパンイベントプロダクツ(平成19年5月21日設立)は,平成20年ころから,被告製品を販売するようになり,被告ジャパンレントオールも,原告製品ではなく,被告製品を賃貸事業で用いるようになった。被告ジャパンイベントプロダクツは,被告ジャパンレントオールの賃貸事業を通じて蓄積した知識や経験などを商品開発に活用する方針をとっており,被告製品の嵌合突起8及び嵌合孔10の形状は,原告製品の形状に依拠したものであった。(甲6,9)(イ) 原告は,平成23年8月19日に提起した本件訴訟において,被告製品の構成を前記第3の1【原告の主張】(1)のとおり,すなわち,被告製品の有底円錐台形状の嵌合突起8を「有底短筒状の嵌合突起8」と,嵌合突起8を嵌合孔10に挿嵌させた際,嵌合突起の外周面と嵌合孔の内周面とは接触せず,隙間ができる状態であったにもかかわらず,これを「緊密に挿嵌」と表現した上,被告製品が本件特許発明の構成要件B及びCを充足する旨主張した。これに対し,被告らは,平成23年12月9日の第1回弁論準備手続期日において,被告製品につき,被告製品の有底円錐台形状の嵌合突起8を「有底短円錐筒状の下方膨出部80」と,上記挿嵌の状態を「(下方膨出部80を)緊密に挿嵌させる嵌合孔10」と特定した上,被告製品は構成要件A及びDからHまでを充足しないと主 円錐台形状の嵌合突起8を「有底短円錐筒状の下方膨出部80」と,上記挿嵌の状態を「(下方膨出部80を)緊密に挿嵌させる嵌合孔10」と特定した上,被告製品は構成要件A及びDからHまでを充足しないと主張する一方,構成要件B及びCの充足性について積極的に争う主張をしなかった。また,被告らは,乙1発明に基づき,本件特許発明は新規性又は進歩性を欠き,特許庁の審判において無効とされるべきものである旨の抗弁を主張した。この点,乙1発明の膨出部(5)と凹所(12)は,本件特許発明の嵌合突起8と嵌合孔10と同様,膨出部(5)が凹所(12)に挿嵌できるとはされているものの,乙1文献に,膨出部5の形状や挿嵌時の状態を限定する記載はなかった。しかし,原告は,被告らの乙1発明に基づく無効論への反論として,構成要件E及び構成要件Hが相違し,かつ,当該相違点に係る構成が当業者にとって容易想到でない旨の主張をする一方,「有底短筒状の嵌合突起8」(構成要件B)及び「緊密に挿嵌」(構成要件C)について相違しているとは主張しなかった。また,被告らは,乙2発明や乙3発明に基づく無効論も展開したが,やはりいずれの当事者からも,「有底短筒状の嵌合突起8」(構成要件B)及び「緊密に挿嵌」(構成要件C)が相違点として主張されることはなかった。 このように本件訴訟は,属否論においても,無効論においても,「有底短筒状の嵌合突起8」(構成要件B)及び「緊密に挿嵌」(構成要件C)が明示的な争点となることのないまま,平成24年7月9日,損害論の審理をすることなく口頭弁論が終結され,同年9月13日に判決言渡期日が指定された。(甲12,乙1)(ウ) 被告ジャパンレントオールは,本件訴訟と平行して,平成23年12月23日,特許庁に本件特許発明の無効審判を請求し が終結され,同年9月13日に判決言渡期日が指定された。(甲12,乙1)(ウ) 被告ジャパンレントオールは,本件訴訟と平行して,平成23年12月23日,特許庁に本件特許発明の無効審判を請求したところ,特許庁は,平成24年8月14日付けの審決において,本件特許発明と乙1発明との対比において,本件特許発明の嵌合突起が「有底短筒状」であり,嵌合孔が「嵌合突起8を緊密に挿嵌させる」ものであり,スリットの伸びる方向が「筒の径方向」であるのに対し,乙1発明は嵌合突起が「短筒状」でなく,嵌合孔が「嵌合突起を緊密に挿嵌させる」ものでない点を相違点1と認定した(原告は,同手続において,これを相違点と主張していたわけではなかった。)。そして,特許庁は,他に認定した相違点に係る構成に到達することは当業者が容易に想到し得たとする一方,相違点1に係る構成については,乙1発明の膨出部(5)(本件特許発明の「嵌合突起8」に相当)と凹所12(本件特許発明の「嵌合孔10」に相当)が,支脚(3)の回転を支障なくするための機能を要求されておらず,他にも両者が相互に「緊密に挿嵌させる」ことを示唆する記載は乙1文献になく,他の刊行物にもその旨の示唆はないことから,当業者が到達することは容易ではないとし,相違点1を根拠として,乙1発明に基づく容易想到性の主張を排斥した。この審決は,被告ジャパンレントオールによる他の無効理由の主張も排斥し,無効審判請求不成立を結論とするものであった。 (甲12)(エ) 当裁判所は,原告から特許庁の上記審決の写しが提出され,弁論再開の申出があったことを踏まえ,平成24年9月13日,弁論を再開した。原告は,弁論再開後の同年11月13日の第6回弁論準備手続期日において,上記審決において認定された相違点1を,本件特許発明と 再開の申出があったことを踏まえ,平成24年9月13日,弁論を再開した。原告は,弁論再開後の同年11月13日の第6回弁論準備手続期日において,上記審決において認定された相違点1を,本件特許発明と乙1発明との相違点として初めて主張し,当該相違点に係る構成が容易想到でない理由についても,上記審決の判断を援用した。 これに対し,被告らは,平成24年12月13日の第7回弁論準備手続期日において,上記相違点1が,本件特許発明と乙1発明との相違点であることを争い,また,仮に相違していても,設計事項に過ぎず,当業者であれば容易に想到できる旨主張すると共に,原告の新たな主張は,「緊密に挿嵌」を,嵌合突起8が嵌合孔10に挿嵌された際,被固定部5の上面と内側面が,固定部4に緊密に接触していることを意味すると解するものであるが,そうであれば,被告製品は「緊密に挿嵌」を充足しない旨主張した(原告が「緊密に挿嵌」の解釈について,属否論と無効論とで異なる主張をすることは禁反言の法理から許されないとも主張した。)。 その後,原告は,同年5月24日の第10回弁論準備手続期日において,「緊密に挿嵌」の解釈及び被告製品の充足性について主張を追加すると共に,被告製品が「緊密に挿嵌」の構成を備えていることには自白が成立し,構成要件B及びCを充足することも争いがなかったのであり,被告らがこれと矛盾する主張をすることは禁反言の法理から許されない旨主張するに至った。 イ検討原告は,被告製品の構成について,原告が被告製品の構成を前記第3の1【原告の主張】(1)のとおりに主張したのに対し,被告らも構成要件Cに対応する構成として「(下方膨出部80を)緊密に挿嵌させる嵌合孔10」と主張し,構成要件Cの充足性を争わなかったのであるから,被告製品が「緊密に 1)のとおりに主張したのに対し,被告らも構成要件Cに対応する構成として「(下方膨出部80を)緊密に挿嵌させる嵌合孔10」と主張し,構成要件Cの充足性を争わなかったのであるから,被告製品が「緊密に挿嵌」との構成を備えていることには自白が成立している上,構成要件Cを充足することも争いがなかったのであり,これを後日争うことは禁反言の法理に反して許されない旨主張する。しかし,自白(民事訴訟法179条)は,具体的な事実について成立するものであり,ある事実を前提とした抽象的な評価について成立するものではない。この点,被告製品の構成に係る原告及び被告らの主張に係る「緊密に挿嵌」との文言は,嵌合突起8(下方膨出部80)を嵌合孔10に挿嵌させたときの状態を評価したものであり,事実そのものではない。また,前記ア認定の事実経過からしても,原告は,本件訴訟において,被告製品が原告製品と同様,有底短円錐状の嵌合突起8を嵌合孔10に挿嵌させた際,嵌合突起の外周面と嵌合孔の内周面とは接触せず,隙間ができることを念頭に置きつつ,このような状態も「緊密に挿嵌」に該当するとの認識のもと,被告製品の構成について「緊密に挿嵌」との文言を用いて特定したのに対し,被告らも,原告製品に依拠した形状を備える被告製品を販売等してきた経過もあり,原告と同一の認識のもとで,上記状態を「緊密に挿嵌」と表現したものといえるから,やはり「緊密に挿嵌」は事実そのものを摘示したというより,上記のような物理的な状態を評価したものである。そのため,かかる抽象的な評価の前提となっている嵌合突起8や嵌合孔10の形状等の事実関係について自白が成立したと見る余地はあるものの,挿嵌時の状態が「緊密に挿嵌」と表現されるべきものとの点について自白が成立したとはいえないし,ましてや構成要件C 孔10の形状等の事実関係について自白が成立したと見る余地はあるものの,挿嵌時の状態が「緊密に挿嵌」と表現されるべきものとの点について自白が成立したとはいえないし,ましてや構成要件Cの一部である「緊密に挿嵌」を充足するとの点について自白が成立したともいえない。また,原告の主張は,被告らが弁論再開前には争っていなかった「緊密に挿嵌」(構成要件C)の充足性を争うことにつき,自白の成否にかかわらず,禁反言の法理に反して許されない趣旨とも考えられるが,この主張も採用できない。すなわち,被告らは,弁論再開前において,構成要件Cの充足性を積極的に争う主張をしなかったとはいえ,その充足性を明示的に認めていたわけではないから,これを後日争ったとしても矛盾した主張をしたとは言い難い。加えて,原告は,当初「緊密に挿嵌」の解釈について,嵌合突起の外周面と嵌合孔の内周面との接触の有無及び程度を特段限定するものではないことを前提とした主張をしていたが,弁論再開後においては,本件特許発明が進歩性を欠くとの判断を回避するため,「緊密に挿嵌」の意義を限定的に解釈するに至ったものである。つまり,被告らが「緊密に挿嵌」の充足性を積極的に争うに至ったのは,「緊密に挿嵌」の解釈に関し,原告が従前の主張と異なる新しい主張をしたためであり,十分に合理的な事情があったといえるから,被告らにおいて,禁反言の法理など信義則に反する訴訟活動を行ったとはいえない。したがって,被告製品の構成及び構成要件Cの充足性に係る被告らの主張は,そもそも事実に係る自白を撤回するものではなく,禁反言の法理など信義則に反するものでもなく,この点に関する原告の主張は採用できない。 (5) 小括したがって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するとは認めら ではなく,禁反言の法理など信義則に反するものでもなく,この点に関する原告の主張は採用できない。 (5) 小括したがって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するとは認められない。 2 結論以上の次第で,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁 判 長 裁 判 官山田陽三 裁 判 官松川充康 裁 判 官 西田昌吾 (別紙)物件目録後記写真に掲載された脚取付構造を有するテーブルで,次の構成を備えるものa テーブル等の家具の脚部を,天板等の家具本体に着脱自在に取付ける為の構造であって,b 家具本体1に固定させる基盤6に,周面の外径が付け根部分における約545~547 から,頂部における約447 へと傾斜縮小する有底円錐台形状の嵌合突起8を下向きに突設した固定部4と,c 脚部2の上端に設けられて,前記嵌合突起8を挿嵌させる内径約561~579 の円筒状の嵌合孔10を備える被固定部5とから成り,d 前記嵌合突起8の底面8aには,筒の底面(円)の径方向に伸びるスリット9を設けると共に,e 底面8aの上面は,前記スリット9の両側端9a,9aから夫々筒周方向(下図に示す矢印方向)に上向きに緩やかに傾斜する斜面aを形成し,f 前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛 (下図に示す矢印方向)に上向きに緩やかに傾斜する斜面aを形成し,f 前記嵌合孔10の底部11には,前記スリット9に挿嵌させ得る形状を備えて,その上端に前記斜面aに当接させる掛止部12bを設けた掛止部材12を突設し,g 前記掛止部2bを前記スリット9に挿通させたうえ,前記脚部2をその軸周りに回動させると,h 前記掛止部12bが前記斜面aを次第に締付けて,前記固定部4と被固定部5とが強固に掛合される様にしたi 脚取付構造を持つテーブル。(丸い天板,土台のテーブル) (角のある天板のテーブル) (別紙)被告製品装着図
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