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平成10(う)194 公正証書原本不実記載、同行使被告事件

裁判所

平成10年12月14日 名古屋高等裁判所

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4,444 文字

主文 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中一四〇日を原判決の本刑に算入する。理由 本件控訴の趣意は、弁護人鈴本顯藏、何佐藤昌巳、同名嶋聰郎作成の控訴趣意書、主任弁護人鈴木顯藏作成の控訴趣意書補充書(一)、(二)、(三)に、これに対する検察官の答弁は、検察官村主憲博作成の答弁書にそれぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。そこで、記録を調査し、当番における事実取調べの結果を併せ斟酌して検討する。一法令適用の誤りの所論について所論は、外国人登録法一八条一項二号が外国人登録申請の際の虚偽申請行為に対し罰則を設けていること、同法が在留外国人の公正な管理を目的としていること、外国人登録原票が原則非公開とされていることなどを理由に、同原票は刑法一五七条一項所定の権利、義務に関する公正証書原本に該当しないと主張し、同原票について公正証書原本不実記載罪の成立を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるという。<要旨>しかし、外国人登録原票は、本邦に在留する外国人の申請に基づき当該外国人の居住地の市町村長が外国</要旨>人登録法に依拠して作成し、当該市町村の事務所に備える公文書であり、同原票記載事項を証明する効力を有するものである。その記載事項は在留外国人の同一性とともに、居住関係、身分関係を明らかにし、ひいては公法上及び私法上の権利義務の帰属主体をも明らかにするものである。現に同原票は、外国人の居住関係、身分関係を明らかにする公文書として地方税等の賦課徴収事務や国民健康保険、国民年金、学齢児童への就学通知、児童手当の支給等の行政サービスの事務において広く機能しており、また、同原票に基いて、法律上当然に作成交付される外国人登録証明書や、運用 賦課徴収事務や国民健康保険、国民年金、学齢児童への就学通知、児童手当の支給等の行政サービスの事務において広く機能しており、また、同原票に基いて、法律上当然に作成交付される外国人登録証明書や、運用上発行されている外国人登録済証明書は、登録された外国人が、社会生活において、自己の同一性、居住関係等を疎明する資料として機能している。 た、同原票に基いて、法律上当然に作成交付される外国人登録証明書や、運用 賦課徴収事務や国民健康保険、国民年金、学齢児童への就学通知、児童手当の支給等の行政サービスの事務において広く機能しており、また、同原票に基いて、法律上当然に作成交付される外国人登録証明書や、運用上発行されている外国人登録済証明書は、登録された外国人が、社会生活において、自己の同一性、居住関係等を疎明する資料として機能している。同原票が権利、義務に関する一定の事実を公的に証明する効力を有するものとして、刑法一五七条一項の権利、義務に関する公正証書の原本に該当することは明らかである。同原票が原則として非公開であることは何ら公正証書性を否定する理由にはなり得ない。また、刑法一五七条一項の公正証書原本不実記載罪が、権利、義務に関する公正証書原本の記載の正確性に対する公共の信頼を保護するため、虚偽の申立てを手段として公正証書原本に不実の記載をさせることを処罰するものであるのに対し、外国人登録法一八条一項二号の外国人登録虚偽申請罪は、在留外国人の居住関係及び身分関係を明らかにして在留外国人の公正な管理に資するため、外国人登録原票の記載の正確性を確保しようとして虚偽の外国人登録申請行為自体を処罰するものであって、両罪は保護法益を異にするばかりでなく、構成要件をも異にする。そうすると、後者の罰則が存在するからといって前者の罰則の適用を排除することにはならず、両罪は共に成立し、観念的競合の関係にあるものと判断される。以上いずれの点から考えても、所論は理由がない。なお、原判決が法令の適用の項において、平成七年法律第九一号による改正前の刑広一五七条一項、一五八条一項、五四条一項後段、一〇条、二一条を適用すべきところを、右改正後の刑法の各法条を適用したのは誤りであるが、右各条項は改正の前後を通じてその内容に変わりはないから、右の誤りは判決に影響を及 一五八条一項、五四条一項後段、一〇条、二一条を適用すべきところを、右改正後の刑法の各法条を適用したのは誤りであるが、右各条項は改正の前後を通じてその内容に変わりはないから、右の誤りは判決に影響を及ぼさない。二事実誤認の所論について所論は、被告人は養子縁組によりAからBという名前に変わったものであって、Bの名前でなされた本件登録申請の内容は虚偽ではないから公正証書原本不実記載、同行使罪は成立しないという。 条一項、五四条一項後段、一〇条、二一条を適用すべきところを、右改正後の刑法の各法条を適用したのは誤りであるが、右各条項は改正の前後を通じてその内容に変わりはないから、右の誤りは判決に影響を及ぼさない。二事実誤認の所論について所論は、被告人は養子縁組によりAからBという名前に変わったものであって、Bの名前でなされた本件登録申請の内容は虚偽ではないから公正証書原本不実記載、同行使罪は成立しないという。右所論は控訴趣意書提出期限経過後の新たな控訴趣意あるから不適法な主張であるが、所論に鑑み、職権で判断する。関係証拠によれば、次の事実が認められる。被告人は、一九七二年四月二四日中華人民共和国(以下「中国」という)において、父C、母Dの実子として出生し、Aと名付けられた。被告人はA(一九七二年四月二四日生)の名で旅券を取得し平成四年一月就学生の在留資格で中国から本邦へ入国したが、建造物侵入、窃盗未遂罪により同年一二月二五日に懲役八か月、二年間刑執行猶予の判決を受け、同月末日中国へ自費出国した。その後、被告人は、残留日本人の二世を仮装して本邦へ再入国しようと考え、平成五年三月ころ、中国公安局職員である父Cと共に、残留日本人であるEびその夫F方を訪れ、自己をEの子供として日本に入国させることの承諾を得た。Cは、F・E夫婦の協力を得るとともに、中国の戸籍作成に携わる職員などに働きかけ、被告人の戸籍上の記載について、身分をF・E夫婦の子とするとともに、氏名をAからB、生年月日を一九七二年四月二四日から一九六八年一一月一二日と変えた。Eは平成五年九月本邦に帰国し、被告人の依頼に応じて、同年一二月ころB名義及び日本人の配偶者等(Eの二男)の在留資格の在留資格認定証明書交付申請書を入国管理事務所に提出し、同六年一月ころその旨の Eは平成五年九月本邦に帰国し、被告人の依頼に応じて、同年一二月ころB名義及び日本人の配偶者等(Eの二男)の在留資格の在留資格認定証明書交付申請書を入国管理事務所に提出し、同六年一月ころその旨の在留資格認定証明書の交付を受けてこれを被告人に送った。被告人は、Bの名義で旅券を取得し、同年二月本邦に入国し、月年三月一八日に前記4年月日、Bの氏名、前在留資格を記載した外国人登録申請書を豊橋市役所に提出し、その旨外国人登録原県に記載させ、備えさせた。以上の認定事実によれば、被告人は真実日本人の実子でもなく、民法八一七条の二の特別養子でもないから、出入国管理及び難民認定法一条の二、別表第一所定の日本人の配偶者等に当たらないし、生年月日も虚偽であるから、日本人の配偶者等で生年月日を一九六八年一一月一二日とするBなる表示は被告人の実体を表すものではないことか明らがである。 人登録申請書を豊橋市役所に提出し、その旨外国人登録原県に記載させ、備えさせた。以上の認定事実によれば、被告人は真実日本人の実子でもなく、民法八一七条の二の特別養子でもないから、出入国管理及び難民認定法一条の二、別表第一所定の日本人の配偶者等に当たらないし、生年月日も虚偽であるから、日本人の配偶者等で生年月日を一九六八年一一月一二日とするBなる表示は被告人の実体を表すものではないことか明らがである。そうすると、前記外国人登録申請を内容虚偽のものであるとして、公正証書原本不実記載、同行使罪の成立を認定めた原判決に事実の誤忍はない。三量刑不当の所論について所論は、被告人を懲役一年六か月の実刑に処した原判決の量刑が重すぎて不当であるという。本件は、被告人が、平成六年三月一八日、愛知県豊橋市役所において、同市役所職員を介して同市長に対し、日本人の実子でもないのにそのように仮装するとともに生年月日を偽ったBなる氏名による内容虚偽の外国人登録申請書を提出し、事情を知らない豊橋市長をして被告人の外国人登録原票にその旨の不実の記載をさせた上、これを同市役所に備えさせて行使したという事案である。前記二記載の本件犯行に至る経緯、動機に酌むべき点はないこと、日本人の実子を仮装した犯行の手口が計画的で悪質であること、被告人は平成四年一二月二五日に建造物侵入、窃盗未遂罪により懲役 事案である。前記二記載の本件犯行に至る経緯、動機に酌むべき点はないこと、日本人の実子を仮装した犯行の手口が計画的で悪質であること、被告人は平成四年一二月二五日に建造物侵入、窃盗未遂罪により懲役八か月、二年間刑執行猶予の判決(同五年一月九日確定)を受けたのに、その執行猶予期間中に本件犯行を犯したものであることなどに照らすと、被告人の刑事責任を軽視することはできない。そうすると、被告人が本件犯行を反省し、交通遺児を励ます会や盲導犬協会に合計三〇〇万円を贖罪寄附していること、被告人には日本人の妻がいること、本件実刑判夫が被告人の経営する事業に及ぼす影響や在留特別許可に及ぼすかもしれない影響、右実刑判決が退去強制理由となるとともに、今後の上陸拒否理由となることなど、所論が指摘し、証拠によって認められる被告人のために斟酌すべき諸事情を考慮しても、被告人を懲役一年六か月の実刑に処した原判決の量刑か重すぎて不当であるとはいえない。 犬協会に合計三〇〇万円を贖罪寄附していること、被告人には日本人の妻がいること、本件実刑判夫が被告人の経営する事業に及ぼす影響や在留特別許可に及ぼすかもしれない影響、右実刑判決が退去強制理由となるとともに、今後の上陸拒否理由となることなど、所論が指摘し、証拠によって認められる被告人のために斟酌すべき諸事情を考慮しても、被告人を懲役一年六か月の実刑に処した原判決の量刑か重すぎて不当であるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。よって、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、前記改正前の刑法二一条を適用して当審における未決勾留日数中一四〇日を原判決の本刑に算入し、当審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項ただし書を適用して、被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官笹本忠男裁判官神沢昌克裁判官川口政明)

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