昭和43(う)1525 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年9月25日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中      被告人A及び同Bに関する有罪部分ならびに      右各被告人に関する無罪部分のうち、被告人Aに対する昭和三六年一月 三一日付起訴状記載の公訴事実第一の(一

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主文 原判決中被告人A及び同Bに関する有罪部分ならびに右各被告人に関する無罪部分のうち、被告人Aに対する昭和三六年一月三一日付起訴状記載の公訴事実第一の(一)の(1)、(2)の被告人Bから(イ)昭和三五年一〇月上旬現金一〇万円(ロ)同年同月二七日頃現金一〇万円をそれぞれ供与を受けた事実ならびに被告人Bに対する昭和三六年一月三一日付起訴状記載の公訴事実第一の(四)、(五)の被告人Aに対し(イ)昭和三五年一〇月上旬現金一〇万円、(ロ)同年同月二七日頃現金一〇万円をそれぞれ供与した事実に関する部分をそれぞれ破棄する。 被告人Aを懲役六月、被告人Bを懲役八月に処する。 但し本裁判確定の日からいずれも二年間右各刑の執行を猶予する。 被告人Aより金三五万円を追徴する。 原審における訴訟費用中証人Cに支給した分の全部及び証人Dに支給した分(但し昭和三九年三月一九日支給の分)の二分の一を被告人Bの負担とする。 検察官のその余の無罪の部分に関する本件控訴ならびに被告人E、同Fの本件各控訴はいずれもこれを棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人Aの弁護人林三夫、同中井一夫、同奥村孝、同井嶋盤根共同作成の控訴趣意書、被告人E、同Fの各弁護人林三夫、同中井一夫、同奥村孝共同作成の各控訴趣首書ならびに神戸地方検察庁検察官土井義明作成の控訴趣意書にそれぞれ記載のとおりであり、検察官の控訴趣意に対する答弁は、被告人Aの弁護人中井一夫、同井嶋盤根、同奥村孝、同林三夫共同作成の答弁書及び被告人B作成の答弁書にそれぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。 一、 各控訴趣意に対する判断に先立ち、職権を以て、調査するに、原判決は、被告人A、同B 村孝、同林三夫共同作成の答弁書及び被告人B作成の答弁書にそれぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。 一、 各控訴趣意に対する判断に先立ち、職権を以て、調査するに、原判決は、被告人A、同Bに対する本件各公訴事実に対し、その一部を有罪、一部を無罪の言渡しをしているところ、検察官の右被告人両名に対する本件控訴申立書によれば、特に部分を限らないで、控訴の申立をしているものと認められるので本件各控訴は、刑事訴訟法三五七条後段により、原判決の全部すなわち、有罪、無罪の判決全部に対し、申立てられたものとみなすべきものである。ところで、検察官の本件控訴趣意書には、各有罪の部分については、それぞれ量刑不当の控訴理由が述べられているけれども、各無罪の部分については、そのうち、被告人Bが同Aに対し(一)昭和三五年一〇月上旬頃現金一〇万円、(二)同年同月二七日頃現金一〇万円をそれぞれ供与し、被告人Aが同Bより、右各現金の供与を受けた事実についてのみ事実誤認である旨の控訴理由が記載されてあるだけ(もつとも量刑不当を主張する控訴趣意中に、右各被告人のGに対する現金供与のうち無罪の言渡のあつた事前買収の部分について、その事実誤認を主張するものの如き記載があるけれどもそれが記載された箇所及びその主張全体の趣旨からみて、右は単なる量刑の事情として記載されたもので特に事実誤認を主張する趣旨とは解せられない。)で、その他の無罪の部分については控訴理由が全く記載されていないのみならず、記録を精査しても、控訴趣意書差出期間内にその不備を補充した形跡も認められないから、無罪の言渡のあつた部分のうち、右被告人間における(一)昭和三五年一〇月上旬頃(二)同年同月二七日頃の現金授受の点を除くその余の部分に関する本件控訴は刑事訴訟法三七六条一項、三八六条一項一号、刑事訴訟規則 言渡のあつた部分のうち、右被告人間における(一)昭和三五年一〇月上旬頃(二)同年同月二七日頃の現金授受の点を除くその余の部分に関する本件控訴は刑事訴訟法三七六条一項、三八六条一項一号、刑事訴訟規則二四〇条により棄却すべきものである。 二、 検察官の控訴趣意第一について所論は、要するに、原判決は、被告人B及び同Aに対する各公訴事実中(一)昭和三五年一〇月上旬頃及び(二)同年同月二七日頃、右被告人らの間に授受された各現金一〇万円はその授受が候補者Hの立候補届出前でかつ政党員である右被告人らの間において行なわれたものであるほか、その所属政党である民社党結党直後、未だ、その下部の組織化が十分できていない段階に総選挙が行なわれたため、いわゆる「政治活動」と「所属の候補者の当選を目的」とする「選挙運動」が並行的に混然と行なわれなければならない背景的特殊事情のあつたことを理由に右金員は、むしろ政治活動に関するものであることの疑いが強く、また、被告人らは、民社党結党後選挙告示の直前まで兵庫県下の党下部組織確立のための政治活動を活溌に行なつたこと等を挙げ、これらを前提に、被告人らが、捜査官に対してした公訴事実に関する自供は、被告人Bは当時胃潰瘍で弱つており、被告人Aもその病状を心配していたもので、そのため相当の社会的地位にある被告人らが拘束を免れたいために捜査官に迎合して供述しないとは限らないと考えられる反面、被告人らの公判廷における供述は必ずしも虚偽とは考えられず、右の自供だけでは有罪を確信するに至らないとしていずれも無罪の言渡しをしたけれども、右は政治活動と選挙運動との区別の基準を誤り、かつ、証拠の取捨選択を誤つた結果事実を誤認したものであるというのである。 よつて調査するに、原判決は、被告人B及び同Aに対する本件各公訴事実中、検察官所論の 活動と選挙運動との区別の基準を誤り、かつ、証拠の取捨選択を誤つた結果事実を誤認したものであるというのである。 よつて調査するに、原判決は、被告人B及び同Aに対する本件各公訴事実中、検察官所論の金員を含めて、右両被告人の間に四回にわたり授受された現金合計四〇万円が「選挙運動」に関するものであるか、あるいは「政治活動」に関するものであるかを判断するに当つて、両者の性質ないし区別の基準について詳細に論じ、事実認定にあたつての基本的見解を示したのち、結局検察官所論のような理由により、候補者Hの立候補届出前に授受されたとされる(一)昭和三五年一〇月上旬頃(二)同年同月二七日頃の各一〇万円については、その授受の日時について明確な判断を示さない侭、無罪の言渡をし、右の立候補届出後に授受されたとされる(三)同年一一月二日頃及び(四)同年同月中旬頃の各一〇万円についてのみ有罪の言渡をしているのである。 (一) 政治活動と選挙運動との関係について<要旨>思うに公職選挙法二二一条一項一号あるいは四号のいわゆる買収罪は、特定の選挙につき、特定の候補者の</要旨>当選を得、若しくは得しめ、又は得しめない目的をもつて、選挙人又は選挙運動者に金銭、物品その他の財産上の利益を供与し、その情を知つて供与を受けることによつて成立するものであるから、もし授受された金銭等が選挙運動に関するものではなく、純然たる政治活動に関するものであるときは右の罪は成立しないことはいうまでもないところである。ところで選挙運動あるいは政治活動という用語は一般にも広く用いられており、かつ公職選挙法においても各所で用いられている法律用語(ことに同法一二九条以下、及び二〇一条の五以下)であるが同法にはこれらに関する定義規定はない。しかし、一般に政治活動とは、抽象的には、政治上の主義、施策を 法においても各所で用いられている法律用語(ことに同法一二九条以下、及び二〇一条の五以下)であるが同法にはこれらに関する定義規定はない。しかし、一般に政治活動とは、抽象的には、政治上の主義、施策を推進し、支持し、もしくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持もしくはこれに反対することを目的として行なう直接、間接の一切の行為を指し、広く特定候補者の推薦、支持等選挙運動にわたる活動をも含んでいるものであるが公職選挙法二〇一条の五以下にいうところの政治活動には右の選挙運動にわたる行為は含まないものと解せられ、また選挙運動とは、特定の選挙の施行が予測され、あるいは確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定しているときは固より、その立候補を予測せられるときにおいても、その選挙につき、その人に当選を得しめるため、投票を得、若しくは得しめる目的をもつて、直接又は間接に行なう必要かつ、有利な一切の行為をいうものとされているのであるが、議院内閣制を採用している現行憲法は、当然政党政治を予想しているものであり、政党は、共通の政治的意見を持つ者が結合した永続的団体であつて、政治権力を獲得することによつて、その政見や政策を実現しようとするものであるから、選挙により多数議員を獲得することを第一目標とし、そのため選挙に際しては、政治活動を展開して所属候補者のため選挙運動をすることは政党活動の基底というべく、したがつて、選挙運動期間中であつても、これらの活動を可能な限り認める法制がとられているのである。このため政治活動と選挙運動とは究極において、候補者の当選を目的とするものであることにおいては異なるところはないから、元来両者の限界を明確に区別することは困難である。ことに政党が新たに結成された直後、未だその下部組織が確立されていない段階で総 補者の当選を目的とするものであることにおいては異なるところはないから、元来両者の限界を明確に区別することは困難である。ことに政党が新たに結成された直後、未だその下部組織が確立されていない段階で総選挙が行なわれる場合には右の区別は一層不明確となることは原判決の説示するとおりである。そして、原審証人H、同I、同Jらも異口同音に「組織をつくらなければ選挙をやつても何もならない」とか「組織づくりということが選挙に強くなるという前提になる」とかあるいは「政党の組織活動というのは日常の活動を通じて次の選挙に勝利をおさめるということに結びつけている」旨証言するところであつて、その限りにおいては右各証言は正しいものといえるであろう。しかし、これを判断する基準として金銭の授受の行なわれた時期の考慮せらるべきはもちろんであるけれども、これとその行為者の如何が最も重要であるとして(所属候補者の)立候補届出後の選挙運動の許される段階で行なわれる金銭の授受については特別の事情のない限り、選挙運動に関するものと認め得るものであり、また右届出前であつても、それに近接してなされる本来の政党員でない者の間におけるものは候補者に当選を得しめる目的のもとに行なわれる選挙運動とみるべきものとする原判決の見解は、にわかに賛成することはできない。元来、公職選挙法一二九条において、選挙運動の期間を定め、立候補届出前の一切の選挙運動を禁止している所以は、各候補者の選挙運動開始の時期を一定することによつて、可能な限り、各候補者の条件を公平、平等ならしめるとともに、常時選挙運動によつて生ずる弊害を防止しようとするにあつて、選挙運動期間中の政治活動が規制されていることを考慮しても原判決のいうように立候補届出前であるか否かによつて政治活動か選挙運動かを画一的に截然と区別することは選挙の実 害を防止しようとするにあつて、選挙運動期間中の政治活動が規制されていることを考慮しても原判決のいうように立候補届出前であるか否かによつて政治活動か選挙運動かを画一的に截然と区別することは選挙の実態を把握しないものであつて妥当ではない。すなわち、現在における選挙の実態は、任期満了による選挙の場合にはいうに及ばず、それ以前の解散に因る選挙にあつても、これを見越しての組織的な事前運動がその都度、大規模に展開されることは公知の事実であり、もちろんそれには正規の選挙運動期間が極めて短かいことにも因るところがあると思われるけれども、さきに説示したように立候補届出前の選挙運動を禁止しているに拘らず、依然これが横行していることも否定することのできない事実である、又行為者が政党員であるか否かを基準とすることにも問題がある。なるほど行為者が政党員である場合、その所属政党の宣伝、政策の説明、普及、下部組織の確立等党勢拡張のための政治活動に力めることは、もちろんであるけれども、それだけに止まるものではなく、それと同時に強力な選挙運動を行なうことも十分考えられるのである。 したがつて、立候補届出前に、政党員によつて行なわれる行為を原則的に政治活動に関するものと評価することは、たとえそれが新党結成後間もない時期に総選挙が行なわれた特殊事情を考慮に入れても(否このような場合にこそ却つて強力な選挙運動が行なわれるとさえ考えられるのである。)当を得ない。要は名目に捉われることなく、行為の行なわれた時期、方法、対象等についてその実態を観察し個々の具体的事例ごとにそれが政治活動に関するものであるか、あるいは選挙運動に関するものであるかを実質に即して決するのほかはないものと解するのが相当である。そしてもし当該行為が政治活動であると同時に、特定の選挙につき、特定の候補者に に関するものであるか、あるいは選挙運動に関するものであるかを実質に即して決するのほかはないものと解するのが相当である。そしてもし当該行為が政治活動であると同時に、特定の選挙につき、特定の候補者に対する投票依頼の趣旨をもつと認められるときには、その行為は選挙運動と認められることになるのである。したがつて、原判決が、政治活動と選挙運動とを区別する基準を、行為の時期と行為者に求め(もつとも被告人Bと原審相被告人K、同Lとの間の金銭の授受については一部例外を認めている。)、これを前提に被告人Bと同Aとの間に授受された本件各金銭の性質を判断したことは当を得ないものというべきである。 (二) 被告人Bと同Aとの間に金銭が授受された時期及びその趣旨について(1) 被告人Bと同Aとの間において、現金一〇万円ずつ四回合計四〇万円が授受されたことについては、各被告人ともこれを認めて争わないところであるが、原判決は前記見解のもとに本件選挙の告示ならびに立候補届出(いずれも昭和三五年一〇月三〇日(以下単に告示と略称する)以後である昭和三五年一一月二日頃と同月中旬の各一〇万円についてはこれを選挙運動に関するものとしてそれぞれ有罪の言渡しをしているけれども、告示以前のものとされている分については、さきにもふれたとおりその授受の日の判断を示さない侭無罪の言渡しをしているのである。 (2) そこで先づ右各金員の授受の日について考えてみるに被告人Bの検察官に対する昭和三五年一二月一二日付供述調書、被告人Aの検察官に対する同月二九日付及び三〇日付各供述調書のほか同被告人の原審公判廷(第二六回公判)における供述、ことにBから「西神戸辺から相当纏つた票を出してくれ」と頼まれたことがあり、また「車を使わんならんからようけはり込むから頼む」といわれたこともある、さらにB 原審公判廷(第二六回公判)における供述、ことにBから「西神戸辺から相当纏つた票を出してくれ」と頼まれたことがあり、また「車を使わんならんからようけはり込むから頼む」といわれたこともある、さらにBから受取つた四〇万円のうちEらに渡した以外の金の使途は金額の合わないところがあるが大体検事に述べたとおり間違いない旨の証人としての供述、当審公判廷(第八回公判)におけるE、Fらに渡した金員はBから貰つた金である旨の供述、当審において検察官より提出された領収証一二通の存在、就中これら証拠により認められる四〇万円の使途がすべて昭和三五年一〇月以降となつている事実を彼此総合すると、被告人Bと同Aとの間において現金四〇万円が授受されたのは、(イ)昭和三五年一〇月はじめ頃、(ロ)同年同月二七、八日頃、(ハ)選挙告示のあつた二、三日後の同年一一月二日頃、(ニ)同年同月中旬頃の四回であつたことが認められる。もつとも被告人B、同Aは原審及び当審各公判廷において右金員の授受されたのはいずれも選挙告示より以前である旨弁解するけれども右弁解は捜査段階においては全くなされておらず、原審公判廷においてはじめてこれがなされるに至つたものであり、またその内容も被告人Bは昭和三五年六月頃あるいは七月頃から毎月一〇万円宛といい、一方被告人Aは同年五、六月頃、七、八月頃、九月頃の三回であるといつたり、あるいは四、五月頃、六月頃、七、八月頃、八、九月頃のはじめ頃の四回であるというものであつて、いずれも極めてあいまいであるのみならずその根拠に乏しく、前掲各証拠と比べてみて、たやすく信用することができないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。してみると、原判決も選挙告示前に授受された分については無罪とし、右告示後に授受された分について有罪の言渡しをしているのは右金員の授受の日に ことができないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。してみると、原判決も選挙告示前に授受された分については無罪とし、右告示後に授受された分について有罪の言渡しをしているのは右金員の授受の日に関する被告人らの公判廷における弁解を信用しなかつたものと考えられこの点に関する限り、原判決の判断は正当といわなければならない。 (3) 次に右各金員の趣旨につき考えてみるに、記録を精査し、関係証拠ことに被告人Bの検察官に対する昭和三五年一二月一二日付及び一三日付各供述調書、司法警察員に対する同月一〇日付供述調書被告人Aの検察官に対する同年一二月二二日付、二九日付、三〇日付、各供述調書のほか右金員が告示に近接し、あるいは告示後間もなく、しかも、短期間に相次いで授受されている事実を考え合せると、右各金員は告示前の二〇万円を含めてすべてHに当選を得しめる目的をもつて農村地区である西神戸方面における投票取纏めのための選挙運動の費用または資金とする趣旨で授受されたものであることが認められる。すなわち、民主社会党(以下単に民社党と称する)は社会党から分裂して昭和三五年一月二四日結成されたものであるが、被告人Bは右分裂以前から社会党兵庫県支部連合会の役員を勤めており、また民社党の結成に当つては右社会党の県支部を脱党のうえ、民社党兵庫県支部連合会(以下党県連と称する)の結成をはじめ同県下における同党の下部組織の確立とその党勢拡張に尽力し、かつ、同年六月五日党県連が結成されたのちは健康上の理由から書記長に就任することを辞したものの総務部長となり、事実上同県連の党務を総括し、また、それ以前の数次の衆議院議員総選挙の際には、兵庫県第一区より立候補した社会党のHらの出納責任者、選挙事務長等を担当して選挙に関する知識、経験も極めて豊富であり、民社党結成当初よりすでに 総括し、また、それ以前の数次の衆議院議員総選挙の際には、兵庫県第一区より立候補した社会党のHらの出納責任者、選挙事務長等を担当して選挙に関する知識、経験も極めて豊富であり、民社党結成当初よりすでに年内に衆議院解散、総選挙の行なわれることは予想されていたところであつたばかりかその際には兵庫県第一区よりは同党より右Hが立候補することは既定の事実とされ、そのため同人より従前どおり出納責任者となることを強く要望されたけれども、後記のとおり選挙情勢を分析した結果選挙戦術について自ら含むところもあり、旁々健康上の理由もあつて、これを断る一方、事実上の総括者として行動することの同人の諒解を得たこと、そして同人の立候補が確定し、かつ、党神戸支部協議会にHのための選挙対策委員会が設置されるに伴い、自らがその委員長となり、他の委員とともに、同人のための選挙用の看板、ポスター等の注文、演説会場の予約、応援弁士の詮衡等事前準備を行なう一方選挙直前まで選挙区内である神戸市内の選挙人に対して働きかけるため、Hの出席を求めて、時局懇談会を市内各所で約六〇回開催したほか、各種労働団体にも働きかけてHの支持、推薦を依頼する等の運動を活溌に行ない、Hを通じて党本部より配布される資金の出納、管理にも当り、同人の立候補準備、選挙運動を通じ事実上の総括者として活躍していたこと、ところで民社党は社会党から分裂したものでもともと組織政党であり、その限りにおいて、労働団体等組織に働きかけることの重要であることはいうまでもないところであるが、被告人Bは、Hより出納責任者となることを求められた当時より新政党としての民社党に対する支持層の分布や、前回の総選挙におけるHの得票数等の点から選挙情勢を分析した結果、苦戦は予想されていたところとはいえ、同人を当選させるためには従来から保守党の地 当時より新政党としての民社党に対する支持層の分布や、前回の総選挙におけるHの得票数等の点から選挙情勢を分析した結果、苦戦は予想されていたところとはいえ、同人を当選させるためには従来から保守党の地盤といわれた、いわゆる新市域の垂水、兵庫両区の農村地域に対する運動を強化して、当落の鍵を握るといわれる得票を同地域で獲得するほかなく、そのためには、いわゆる買収による以外には方法がないとの考えを抱くに至つたこと、そこで被告人Bは、当時右地域のうち垂水区の農村方面については同地域を地盤として、過去四期連続して兵庫県議会議員に当選の実績を有し、かつ、党県連農漁村対策部長の地位にあつた被告人Aを通じまた兵庫区については原審相被告人Kを通じ右各方面におけるHの地盤固めのための買収を計画し、これに基づいて被告人Aには予てからこのことを依頼するとともに同地域で前記情勢判断による当落の鍵を握ると思われる得票として少くとも二、〇〇〇票を要望し、被告人Aもこれを承諾したものの被告人Bに対して屡々「農村では金がかかるので難しい」旨話していたこと、このように選挙戦術として、新市域における農村地区に対するHの勢力浸透に全力を傾注する方針をとつたところから、その趣旨で(1)昭和三五年一〇月はじめ頃県連事務所で一万円札一〇枚を封筒に入れた一〇万円を、(2)同年同月二七日頃党県連事務所の裏にあるM株式会社の二階の事務所の前廊下の人影のないところで前同様の現金一〇万円を渡したほか原判示第四の(二)の(1)(4)及び同第一の(三)の(1)(2)のとおり、(3)選挙告示後の同年一一月二日頃右M株式会社前路上で同様一〇万円を(4)同年同月中旬前記党県連事務所のHの選挙事務所で同様一〇万円をそれぞれ渡し、被告人Aも右趣旨を知りながらこれらを受取つたこと、右金員の授受に当つては、被告 頃右M株式会社前路上で同様一〇万円を(4)同年同月中旬前記党県連事務所のHの選挙事務所で同様一〇万円をそれぞれ渡し、被告人Aも右趣旨を知りながらこれらを受取つたこと、右金員の授受に当つては、被告人Bからは後日精算すべき要請は全くなく、被告人Aの自由処分に一任し、いわゆる渡し切りの金として授受されており、現に同被告人も後に判断するとおり、その一部を被告人E、同Fらに供与したほか、その大部分を自己の用途に使用し、しかもその精算の報告も全くなされていないこと、一方、前記Kにも、原判示第四の(一)及び第五の(一)のとおり被告人Aに対すると同趣旨で現金五万円を供与したこと等の事実が認められるのである。そして右の各事実、ことに、右各金員は被告人Bが本件選挙についての選挙情勢を分析した結果Hの当選をはかる目的意思のもとに授受されるに至つたもので、それがいずれも告示の日を中心に、これに接して、しかも相次で被供与者の自由処分に一任したうえ授受され、その金員の性格に異なるところはないと考えられるほか、その使途もいわゆる政治活動とは無関係であること等に徴すると、被告人Bが前認定のように党県連結成前後を通じその結成及び結成後もその中心幹部として兵庫県下ことに神戸市における党下部組織の確立とその党勢拡充等いわゆる政治活動に尽力していたこと、被告人Aが県連結成に当つてはその準備委員に名を連ね、結成後に農漁村対策部長となり、形式的ながら県連西神戸支部結成のため多少の尽力をしたこと、右各金員が右のように党県連の総務部長と、同農漁村対策部長というほんらい民社党の組織づくり及び党勢拡張等の政治活動に従事すべき同党幹部の間に授受されたものであることを考慮しても純然たるほんらいの政治活動のためのみの資金であるとは考えられず、むしろ、総選挙においてHの当選を得しめるため、 び党勢拡張等の政治活動に従事すべき同党幹部の間に授受されたものであることを考慮しても純然たるほんらいの政治活動のためのみの資金であるとは考えられず、むしろ、総選挙においてHの当選を得しめるため、すなわち選挙運動に関する資金とみるのが相当である。被告人B及び同Aの原審及び当審における各供述等によつても右認定を左右すべきものとは考えられず、他にこれを覆えすに足りる証拠はない。してみると原判決が一連の金銭の授受行為について告示の前後によつて、それが政治活動に関するものであるか選挙運動に関するものであるかを截然と区別し、その前に授受された分について、政治活動に関するものである疑いが強いとして無罪の言渡をしたのは事実を誤認したものといわざるを得ない。 (三) 被告人B及び同Aの捜査官に対する各自供の信用性について(1) 原判決は、右被告人らの捜査官に対する本件公訴事実にそう自供ことに、金員授受の趣旨に関する部分は、被告人らに拘束、追及に耐えられない身体的、心理的な特段の事情があつたとし、そのため被告人らは拘束を免れることを願うの余り取調官に迎合してなされた疑いが強いとして右自供の信用性を否定していることは検察官所論のとおりである。 (2) 原判決が被告人らの自供の信用性を欠くとしたのは政治活動と選挙運動との区別の基準についての見解の相違にもその理由を求めているものの如くであるが、むしろ、被告人らが自らの釈放の一日も早からんことを願うの余り捜査官に迎合して自供したことすなわち自白者の内部的な心理過程にその要因のあることを重視しているものと考えられる。しかし、自供の信用性を判断するに当つては右の心理過程も重要な要因であることはいうまでもないけれども、それとともにその自供の内容の合理性の有無もまたその要因をなすものと解せられるのである。ところで 。しかし、自供の信用性を判断するに当つては右の心理過程も重要な要因であることはいうまでもないけれども、それとともにその自供の内容の合理性の有無もまたその要因をなすものと解せられるのである。ところで原判決のいう政治活動と選挙運動との区別に関する一般的見解には必ずしも賛成し難いものがあることはさきに判断したところであるからもし原判決が示した見解に基づいて自供の信用性を判断したとすればその判断はすでに前提において誤りであるものといわざるを得ない。 (3) そこで被告人らの各自供の内容を検討してみるに、本件の最も重要な争点とされている被告人らの本件の授受金員の趣旨、目的に関してはこれが授受されるに至つた経緯、動機、その時期その当時の特殊な背景的事情のほか供与を受けた被告人Aの右金員の使途、同被告人の政治活動ならびに選挙運動の程度に関して捜査官に対してした各供述は他の関係証拠に照らしいずれも客観的事実に合致し、その合理性が認められるのに反し、これらの点に関する被告人らの原審ならびに当審の各公判廷の弁解は背景的事情はともかく、授受の時期についてはさきに判断したように極めてあいまいでその根拠に乏しいものがあるばかりでなく、その趣旨、目的についても、あまりにも抽象的で具体性に欠け、ことに被告人Bは具体的事情を考慮せず、政治活動と選挙運動とは告示の前後によつて区別すべきであると強調しながら、捜査官の取調べを受けた当時は金銭の授受が告示の前に行なわれたか後に行なわれたかはさほど重要とは考えなかつた旨選挙に関する知識経験の豊かな者の供述としてはあまりにも矛盾した納得し難い弁解をし、さきに示した選挙の実態とはほど遠いものがあつて、真実性に乏しく、N信用組合に預金していたという政治活動の資金を告示の翌日全額引出した理由にも納得し難い点があり、さらに被告人A 納得し難い弁解をし、さきに示した選挙の実態とはほど遠いものがあつて、真実性に乏しく、N信用組合に預金していたという政治活動の資金を告示の翌日全額引出した理由にも納得し難い点があり、さらに被告人Aは民社党西神戸支部を結成するために尽力したといいながら、同支部長には同被告人の県議選における後援者というだけで、政党員でもなく、また政治活動の経験もない、被告人Eを充てて支部を結成したかたちをとつたというだけで他の役員も決められておらず、政党の下部組織としての実態はなく、固より何らの政治活動も行なわれていないことは他の関係証拠により明らかであること等、むしろ、被告人らの公判廷の供述には合理性に欠けるものが多く信用性に乏しく、捜査官に対する自供にこそ合理性があり、信用性が認められるのである。 (4) 次に被告人らの自供は捜査官に迎合してなされたものであるか否かについて検討するに、記録によると、被告人Bは原判示第四の(三)のO及びDに対する現金及び清酒供与の容疑により昭和三五年一二月五日逮捕されたのち同月七日勾留されて捜査官の取調を受け、同月二六日釈放されたもの、また被告人Aは同年一一月一〇日頃被告人Bより現金一〇万円の供与を受けた容疑(原判示第一の(三)の(2)の事実と思われる。)により同年一二月一一日逮捕されたのち同月一三日勾留されて捜査官の取調を受け同月三〇日釈放されたことが認められる。したがつて右各被告人に対する捜査官の取調はすべてその身柄拘束中に行なわれたことが認められるが、各被告人とも曽てこのような経験は全くなく、またそれぞれ相当の社会的地位を有するものであることは原判決のいうとおりであり、ことに被告人Bが当時胃潰瘍のため相当衰弱していたことは同被告人の原審公判廷の供述のほか原審証人Cの証言によりこれを認めることができる。そして被告人 を有するものであることは原判決のいうとおりであり、ことに被告人Bが当時胃潰瘍のため相当衰弱していたことは同被告人の原審公判廷の供述のほか原審証人Cの証言によりこれを認めることができる。そして被告人Aは原審公判廷において証人あるいは被告人として「警察では自分が認めないとBが死んでしまうといわれ、Bの調書が前に置いてあつたので自分もちよつとあけてみて、結局Bの調書のとおり認めた」とか「早く認めんとBも帰れんといわれ、自分も早く出たい一心から認めた」旨供述し、当審公判廷においても同趣旨の供述をしている。また被告人Bは、原審公判廷のほか当審公判廷においても被告人あるいは証人として「当時胃潰瘍のため身体が極度に衰弱していたうえ、取調に当つたP警部補がBさんが倒れるか、自白して貰うか二つに一つだという発言をし、その取調も特高的な取調であつた」「総選挙で民社党が惨敗した精神的シヨツクもある等心身ともに衰弱していたため警察官に迎合して自供した」旨供述しているのである。しかしながら右被告人らが原判決がいうように取調に当つた捜査官に迎合して虚偽の自白をしたとは考えられない。すなわち、(イ) 被告人Aは被告人Bの(自供)調書が前に置いてあつてその調書のとおり認めたというのであるが、なるほど被告人Bは被告人Aより以前に逮捕、勾留されて、取調べを受けており、本件金員授受のうち昭和三五年一一月一〇日頃の分については被告人Aが逮捕される以前に自供していた(被告人Bの司法警察員に対する一二月一〇日付供述調書)けれども、その余の授受の点については同年一二月二〇日にはじめてこれを自供している(同被告人の司法警察員に対する一二月二〇日付供述調書)のである。ところが被告人Aは一一月一〇日頃授受された一〇万円についてはその趣旨はともかく、その余の一〇万円宛三回授受の点につ これを自供している(同被告人の司法警察員に対する一二月二〇日付供述調書)のである。ところが被告人Aは一一月一〇日頃授受された一〇万円についてはその趣旨はともかく、その余の一〇万円宛三回授受の点については被告人Bが自供する以前の一二月一五日、一六日の両日にすでにこれを自供している(被告人Aの司法警察員に対する一二月一五日付、一六日付各供述調書)のである。そうだとすると、被告人Aがすべてを自供した一二月一六日当時には一一月一〇日頃授受したとする一〇万円に関する自供調書はともかく、それ以外の授受については未だ被告人Bの自供調書が作成されていなかつたことが明らかであるから被告人Aの自供の動機に関する前記弁解は固より信用する限りではない。また被告人Bから供与を受けた金員の使途についての検察官指摘の供述の内容自体に徴しても同被告人の当時の心理過程が如実に表現されており、被告人でなければ供述し得ないものであり、取調官に迎合してなされたものとは考えられない。のみならず当時被告人Aが被告人Bの病状を案じていたことは事実であろうけれども、そのことの故に取調官に迎合してまで虚偽の(しかも自己に不利益な)自供をしなければならない事情があつたとは認められない。 (ロ) 被告人Bは主として当時の身体的事情を理由に取調官に迎合して虚偽の自供をしたというのであり、原判決もこれを重視してその自供の信用性に疑いがあるとするもののようである。しかし、そのために、捜査官から自供を強要された事実はなく、自己の供述どおりに調書が作成され決して捜査官が勝手に調書を作成したものでないことは同被告人の原審公判廷(第三六回公判)における証言により明らかなところであり、同被告人を取調べた司法警察員Cも原審公判廷(第五二回公判)において、同被告人の病状を考慮して、医師の診断を求め、拘束に は同被告人の原審公判廷(第三六回公判)における証言により明らかなところであり、同被告人を取調べた司法警察員Cも原審公判廷(第五二回公判)において、同被告人の病状を考慮して、医師の診断を求め、拘束に堪えられない病状でないことを確認したうえで拘束の手続をとり、また取調に当つてはその病状のことはもちろんであるが同被告人を個人的にも熟知し、かつ尊敬していたこともあつて、その都度必ず、同被告人にその可否を質したのちその諒解を得て取調べる等その健康状態には特に意を用い、被疑者扱いをしたことはなく、またそのような雰囲気ではなかつたし、同被告人の取調について、弁護人から特に注文ないし抗議を受けた事実もない旨証言しているのである。このように同被告人の健康状態、社会的地位について十分な配慮をして取調べをしていたことが認められ同被告人が取調官に迎合して、敢て虚偽の(しかも自己に不利益な)供述をせざるを得ないほどの苦痛を伴つていたとは思われない。もつとも、弁護人である原審証人奥村孝は、当時右被告人に面会した際、その取調に当つていたP警部補から「Bさんが倒れるか、認めるか、そういう段階だ」というふうなことを聞いた旨証言しているけれども、それはただ捜査の進捗状況を端的に説明したに過ぎず、決して同被告人の病状を無視して、自白を強要している趣旨の発言とは解せられないから右の発言があることを以て前記認定が左右されるものではない。 それのみならず、同被告人の捜査官に対する供述内容ことに同被告人でなければ供述し得ないと思われることを供述しているほか、検察官指摘のように一部供述を拒否している部分さえあることに徴し、それが捜査官に迎合して供述したものとは認められない。 (5) 被告人B、同Aの捜査官に対する自供は以上に説示したとおりその内容の点においてもまた自供をするに至 拒否している部分さえあることに徴し、それが捜査官に迎合して供述したものとは認められない。 (5) 被告人B、同Aの捜査官に対する自供は以上に説示したとおりその内容の点においてもまた自供をするに至つた動機の点においても特別その信用性に疑いを抱かせるような事情は認められない。しかるに原判決は右被告人らの自供のうち、検察官所論の昭和三五年一〇月上旬頃及び同月二七日頃の各一〇万円の授受の点についてはその趣旨、目的の点及び自供の動機の点においてその信用性を疑わせるものがあり、原審公判廷における弁解にむしろ信用性があるとして無罪の言渡しをしながらその余の同年一一月二日頃及び同月中旬頃の各一〇万円の授受の点についてはこれとは逆に各被告人の公判廷の弁解を排斥し、捜査官に対する自供を採つて以て有罪の言渡をしたのは、各被告人の一連の自供についてその一部は信用性ありとし、他は信用性なしとするものでことに告示前に授受された金員についての自供は信用性なしとし、告示後のそれについての自供には信用性があるとしてこれを採用したものであつて、それ自体矛盾というのほかなく、右は採証を誤り、事実を誤認したものといわざるを得ない。検察官の論旨は理由がある。 三、 被告人Aに関する弁護人の控訴趣意中原判示第一の(三)の(1)、(2)の事実について事実誤認を主張する部分について論旨は、原判示の被告人Bから受取つた各金員は、その授受の趣旨、目的ともに、原判決が無罪とした同被告人との間に授受された他の金員と同様、政治活動に関するものであつて選挙運動に関するものでないのに、原判決は右金員の授受がH候補の立候補届出の日の後であつたことから、その一事をもつて、ことさら選挙運動に関するものと認定したのは事実の誤認であるというのである。 しかしながら、所論の各金員を含めて、被告人Aと同 の授受がH候補の立候補届出の日の後であつたことから、その一事をもつて、ことさら選挙運動に関するものと認定したのは事実の誤認であるというのである。 しかしながら、所論の各金員を含めて、被告人Aと同Bとの間に授受された各金員についてはさきに検察官のこの点に関する控訴趣意に対する判断において詳細に判示したとおり、いずれも、総選挙において、Hの当選を目的とした投票取纏等の選挙運動のための資金とみるべきが相当であつて、弁護人所論のように単なる政治活動に関する資金とは解せられないし、またこの点に関する被告人らの捜査官に対する各自供も信用性があり、弁護人所論にそう原審及び当審の各公判廷における被告人または証人としての各供述はたやすく信用できないのである。 したがつて原判決が弁護人所論の各金員の授受について、有罪の言渡をしたのは正当であつて、右認定には所論のような事実誤認はない。論旨は理由がない。 四、 被告人Aに関する弁護人の控訴趣意中、原判示第一の(一)の(1)同第一の(二)の(2)の事実及び被告人Eに関する弁護人の控訴趣意中原判示第三の(一)の(1)(2)の事実についての各事実誤認の主張について論旨は、原判示第一の(一)の(1)及びこれに対応する同第三の(一)の(1)金員は、昭和三五年一〇月一八日民社党の西神戸支部が結成された際、同支部長に就任した被告人Eが支部結成準備のための費用を立替え支出していたのを党県連が被告人Aを通じて被告人Eに弁償したものであり、また原判示第一の(二)の(2)及びこれに対応する同第三の(一)の(2)の金員は、党県連が被告人Aを通じて党組織の整備拡充のための費用として被告人Eに届けられたものであつて、いずれも選挙運動の費用等として授受されたものではない。原判決は右金員授受の趣旨の点において事実誤認があるというので 人Aを通じて党組織の整備拡充のための費用として被告人Eに届けられたものであつて、いずれも選挙運動の費用等として授受されたものではない。原判決は右金員授受の趣旨の点において事実誤認があるというのである。 しかしながら、原判決挙示の関係各証拠を総合すると、原判示第一の(一)の(1)、同(二)の(2)これらに対応する同第三の(一)の(1)(2)の各現金一万円はいずれも被告人Aが原判示のようなHのための投票取纏等の選挙運動の費用または資金の趣旨で被告人Eに授与し、同被告人もその趣旨を諒承のうえこれを受取つたことが認められる。被告人A及び同Eの原審公判廷における証人あるいは被告人としての各供述中所論にそう部分は他の関係証拠によつて認められる右金員の使途、ことにそれが保険料の支払あるいは後記認定の部落の選挙人に対する饗応接待の費用に充てられている事実等に徴し、たやすく信用できないし、他に所論のような事実誤認のあることをうかがわせる資料はない。論旨はいずれも理由がない。 五、 被告人Aに関する弁護人の控訴趣意中原判示第一の(一)の(2)の事実についての事実誤認の主張及び被告人Fに関する弁護人の控訴趣意について論旨は、原判示第一の(一)の(2)及びこれに対応する同第八の金員が被告人Eを介して同Aと同Fとの間に授受された事実はない。右被告人らの捜査官に対する原判示事実にそう各自供は、いずれも捜査官に迎合していわゆる「供述を合せて」なされたもので信用性はない。しかるに原判決が右各被告人の原審公判廷の供述を排斥し捜査官に対する自供に基づいて原判示事実を認定したのは事実誤認であるというのである。 しかしながら、原判決挙示の関係証拠を総合し、かつ被告人Aの当審公判廷における供述をも参酌すると、被告人Aは昭和三五年一〇月二五日頃被告人E同Fのほか原審相 たのは事実誤認であるというのである。 しかしながら、原判決挙示の関係証拠を総合し、かつ被告人Aの当審公判廷における供述をも参酌すると、被告人Aは昭和三五年一〇月二五日頃被告人E同Fのほか原審相被告人Qの三名を肩書自宅に招いた際、右三名に対し「選挙も近くなつたので、Hに投票するよう部落の者に頼んでくれ」るよう依頼し、三名も投票依頼をできるところ等について話し合つていたところ被告人Fは所用があつて中座してさきに帰宅したため被告人Aは同Eに対し「Fの分も一緒に入つているから渡してやつてくれ」といつて現金二万円入つた封筒を渡したこと、そこで被告人Eはその翌二六日頃右の内一万円を被告人Fの肩書自宅に「Aから預つて来た金じや」と言つて手渡したところ、同被告人も原判示のような趣旨で供与されるものであることを知りながらこれを受取つたことが十分認められる。被告人A、同E、同Fの原審公判廷における証人あるいは被告人としての各供述中所論にそう部分は同被告人らの捜査官に対する各供述と対比し、たやすく信用することができない。のみならず、右捜査官に対する各供述が所論のように捜査官に迎合してなされた虚偽のものであることを認めるに足りる証拠もない。してみると原判決の認定には所論のような事実誤認はない。論旨はいずれも理由がない。 六、 被告人Aに関する弁護人の控訴趣意中原判示第一の(二)の(1)についての事実誤認の主張について論旨は、被告人AはGに対し従来から同人の発行していた新聞「世論タイムス」の購読料、広告料名義で経済的援助をしていたが原判示第一の(二)の(1)の金員もその趣旨で授与したものであり、決して選挙運動の報酬等として供与したものではない。原判決は右金員授受の趣旨の点において事実誤認があるというのである。 しかしながら、原判決挙示の関係証拠を総合 員もその趣旨で授与したものであり、決して選挙運動の報酬等として供与したものではない。原判決は右金員授受の趣旨の点において事実誤認があるというのである。 しかしながら、原判決挙示の関係証拠を総合すると、原判示の金員は、被告人Aが原判示のようにHの選挙運動者であるGに対し、投票取纏等の選挙運動の報酬等として投与し、同人もその趣旨を諒承のうえこれを受取つたことが認められる。被告人A及び原審相被告人Gの原審(被告人Aについては当審も)公判廷における各供述中所論にそう部分に他の関係証拠、ことに、道原良孝の司法警察員に対する供述調書と対比してたやすく信用することができない。もつとも原判決は被告人AとGとの間に三回にわたつて授受された計四万円の金員については、所論のような理由で無罪の言渡をしていることは所論のとおりであるけれども、Gは従来から被告人Aが県議会議員選挙に立候補した際その選挙運動をしていた者で、しかも本件選挙において重点を置いていた西神戸の農村地区ではかなり顔の売れていた人物であつたため被告人Aが同人を被告人Bに紹介するとともに自らもGにHのための選挙運動を依頼するに至つたこと等の事実が関係証拠によつて認められるのであつて、これらの事実に徴すると原判決の認定は相当であり、他に右認定が事実誤認であることをうかがわせる資料はない。論旨は理由がない。 七、 以上の次第であるから被告人A同E、同Fの各控訴はいずれも理由がなく刑事訴訟法三九六条によりこれを棄却すべきものであるが(但し被告人Aについては後記のとおり検察官の控訴を理由ありとしてその有罪部分についても破棄すべき場合であるから特に主文においてその旨の表示をしない。)しかし検察官の控訴にかかる原判決中被告人Aに関する無罪の部分のうち、昭和三六年一月三一日付起訴状記載の公訴事実第一の( 分についても破棄すべき場合であるから特に主文においてその旨の表示をしない。)しかし検察官の控訴にかかる原判決中被告人Aに関する無罪の部分のうち、昭和三六年一月三一日付起訴状記載の公訴事実第一の(一)の(1)及び(2)の被告人Bから(イ)昭和三五年一〇月上旬頃現金一〇万円(ロ)同年同月二七日頃現金一〇万円をそれぞれ供与を受けた部分、被告人Bに関する無罪の部分のうち、昭和三六年一月三一日付起訴状記載の公訴事実第一の(四)、及び(五)の被告人Aに対し(イ)昭和三五年一〇月上旬頃現金一〇万円(ロ)同年同月二七日頃現金一〇万円をそれぞれ供与した部分については同法三九七条一項三八二条によりいずれもこれを破棄すべきものあり、しかもこれらと右被告人らに対する他の有罪の部分とは刑法四五条前段の併合罪の関係に立ち、一個の刑を言渡すべき場合であるからたとえ右のように被告人Aについてはその有罪部分についての控訴が理由がない場合であつても、同被告人を含めて量刑不当の控訴趣意に対する判断を省略し、右被告人両名に対する有罪部分をも全部破棄することとし、刑事訴訟法四〇〇条但書に従い、さらに次のとおり自判する。 (当審において新たに認定する罪となるべき事実)被告人B、両Aは、いずれも昭和三五年一一月二〇日施行の衆議院議員総選挙に際し、兵庫県第一区より立候補したHの選挙運動者であるが第一被告人Bは右Hが同選挙に右選挙区から民社党公認候補として立候補する決意を有し党においてもそれが決定されていたところ同人に当選を得しめる目的をもつて、未だ立候補の届出のない(一) 同年一〇月上旬頃神戸市a区b町c丁目d番地民社党県連事務所で被告人Aに対し来るべき総選挙に立候補すべき右Hのため投票取纏等の選挙運動を依頼しそのための費用または資金の趣旨のもとに現金一〇万円を(二 一〇月上旬頃神戸市a区b町c丁目d番地民社党県連事務所で被告人Aに対し来るべき総選挙に立候補すべき右Hのため投票取纏等の選挙運動を依頼しそのための費用または資金の趣旨のもとに現金一〇万円を(二) 同年同月二七日頃同市同区e町f丁目g番地のh、M株式会社内で前同人に対し前同趣旨のもとに現金一〇万円をそれぞれ供与し以て立候補届出前の選挙運動をなし、第二被告人Aは、同Bより同被告人が前記趣旨のもとに供与するものであることの情を知りながら(一) 同年同月上旬頃前記党県連事務所で現金一〇万円(二) 同年同月二七日頃前記M株式会社内で現金一〇万円の各供与を受けたものである。 (証拠の標目)(省略)同第九の各事実(法令の適用)被告人Bの判示第一及び原判示第四の(一)の各所為中、金員供与の点は公職選挙法二二一条一項、一号に、事前運動の点は同法二三九条一号、一二九条に、原判示第四の(二)及び同第九の各所為は同法二二一条一項、一号(原判示第九の所為についてはなお刑法六〇条)に、原判示第四の(三)の所為は同法二二一条一項、三号、一号にそれぞれ該当するところ、判示第一、原判示第四の(一)の各所為はそれぞれ一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条によりそれぞれ重い金員供与罪の刑を以て処断すべく、これらの罪及びその余の各罪の所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第一の(一)の罪の刑に併合罪の加重をし、被告人Aの原判示第一の(一)の各所為中金員供与の点は公職選挙法二二一条一項、一号に、事前運動の点は同法三二九条一号、一二九条に原判示第一の(二)の各所為は同法二二一条一項一号に、判示第二、及び原判示第一の(三)の各 一の(一)の各所為中金員供与の点は公職選挙法二二一条一項、一号に、事前運動の点は同法三二九条一号、一二九条に原判示第一の(二)の各所為は同法二二一条一項一号に、判示第二、及び原判示第一の(三)の各所為は同法二二一条一項四号一号にそれぞれ該当するところ、原判示第一の(一)の各所為は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法五四条一項、前段、一〇条によりそれぞれ重い金員供与罪の刑を以て処断すべく、これらの罪及びその余の罪の所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の(一)の罪の刑に併合罪の加重をし、その各刑期範囲内で処断すべきところ、各犯行の罪質、態様、各被告人の地位、ことに被告人Bは本件総選挙の際における候補者Hの立候補準備、選挙運動を通じて事実上の総括者であり、また、被告人Aは党県連結成の際における準備委員となりその結成後農漁村対策部長の任にあつたものであること、本件各事犯が不正な金品の授受により選挙の帰趨を左右しようとするもので選挙の公明を著しく害し、各種公職選挙法違反の事犯のうちでも最も悪質なものであること、原審相被告人及び被告人Eらの地位、その各犯行の規模、態様とを比較対照したうえでの刑の権衡その他諸般の事情にかんがみ被告人Bを懲役八月、被告人Aを懲役六月に処し、諸般の情状を斟酌し、本裁判確定の日から二年間右各刑の執行を猶予し、被告人Aが同Bから収受した四〇万円のうち、被告人E、同F、Gに供与した計五万円を控除した三五万円はこれを没収することができないことが明らかであるから公職選挙法二二四条後段により被告人Aよりその価額を追徴し、原審における訴訟費用中証人Cに支給した分の全部また証人Dに支給した分(但し昭和三九年三月一九日支給の分)の二分 ないことが明らかであるから公職選挙法二二四条後段により被告人Aよりその価額を追徴し、原審における訴訟費用中証人Cに支給した分の全部また証人Dに支給した分(但し昭和三九年三月一九日支給の分)の二分の一は刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人Bの負担とする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡田退一裁判官瓦谷末雄裁判官藪田康雄)

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