- 1 -令和6年5月27日宣告令和5年第678号過失運転致死傷被告事件判決 主文 被告人を禁錮2年に処する。 この裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予する。 理由 【犯罪事実】被告人は、令和5年1月4日午前2時52分頃、普通乗用自動車(以下「被告人車」という。)を運転し、兵庫県三木市a 町b・c丁目d番地のe 付近の道路を東から西に向かって進行中、疲労等により眠気を覚え、その後まもなく前方を注視することが困難な状態になったから、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、そのまま運転を続けた過失により、同日午前3時11分頃、兵庫県加古川市f 町g の自動車専用道路「加古川バイパス」下り76.4キロポスト付近道路(以下、この地点及びそれと連続する前後の道路を「本件道路」という。)を南東から北西に向かって時速約50ないし60kmで進行中に居眠り状態に陥り、被告人車の左前部を本件道路左端のガードレールに衝突させて被告人車を本件道路第1車両通行帯上に停止させた(以下、これを「第1事故」という。)ことにより、その時、被告人車の南東側の本件道路第1 車両通行帯を、前方を十分注視せず、その付近の最高速度(時速60km)を超える時速約90kmの速度で北西に向かって進行していたA運転の中型特種自動車(冷蔵冷凍車、以下「A車」という。)の左前部を被告人車の左側面後部に衝突させ(以下、この事故を「第2事故」という。)、よって、被告人車に同乗していたB(当時1歳)に重症頭部外傷の傷害を負わせ、同日午前6時4分頃、 「A車」という。)の左前部を被告人車の左側面後部に衝突させ(以下、この事故を「第2事故」という。)、よって、被告人車に同乗していたB(当時1歳)に重症頭部外傷の傷害を負わせ、同日午前6時4分頃、神戸市中央区内の病院で同人をその傷害により死亡させ、同じく被告 - 2 -人車に同乗していたC(当時2歳。)に回復の見込みのない遷延性意識障害等の後遺症を伴う重症交通外傷の傷害を負わせた。 【証拠】省略【補足説明】被告人が犯罪事実記載のとおりの過失により第1事故を発生させたこと、その後第2事故が発生し、それにより被害者らが死傷したことに争いはない。争点となったのは、被告人の過失と被害者らの死傷との間に因果関係があるか否かである。弁護人は、Aの過失が重大であり、被害者らの死傷結果に対するほぼ唯一の原因がAの過失行為であるから、被告人の過失と被害者らの死傷結果との間には刑法上の因果関係がなく、被告人は無罪である旨主張した。 しかし、被告人が眠気を感じてから第1事故に至るまでの事実経過には格別特異な事実経過は認められない。また、第1事故の結果、被告人車は、先頭を道路左端方向に、後部を第2通行帯(中央分離帯)方向にして第1通行帯を塞ぐ形で停止したところ、本件道路は制限速度時速60km、片側2車線、中央分離帯のある自動車専用道路で、路外施設や交差点はなく、信号機も設置されていなかったから、そこを走行する多くの車両は相応の高速度で移動し、中には前記の制限速度を相当程度超える速度で進行する車両があることも、実情としては想定される場所である。また、現場付近の本件道路は直線で見通しはよかったものの、当時は夜間で、現場付近には道路上を照らす照明設備がなかった上、第2事故発生当時は、第1 事故からわずか43秒しか経過していなかったこと る。また、現場付近の本件道路は直線で見通しはよかったものの、当時は夜間で、現場付近には道路上を照らす照明設備がなかった上、第2事故発生当時は、第1 事故からわずか43秒しか経過していなかったこともあり、被告人車が通行帯上に停止していることを警告する発煙筒や警告板なども置かれていなかったことから、本件道路を南東から北西に向かって走行する車両(被告人車の後続車)運転者にとっては、進路前方の通行帯上に被告人車が停止していることを容易に推測ないし確認できたとはいえない。 このような状況からすると、被告人車の後続車の運転者が制限速度を相応に超える - 3 -高速度で運転し、なおかつ前方注視が十分でなかった結果、被告人が停止していることを発見するのが遅れ、それを回避できずに衝突するに至るということは、相応に想定できる事態というべきであり、本件において第2事故が発生したことについても格別特異な事実経過をたどったということはできない。 弁護人は、第1 事故発生後、被告人車はハザードランプを点灯していたから、後続車にとって被告人車が停止していることを発見するのは極めて容易であり、現に、A車の前を走行していた乗用車は被告人車を発見して衝突を回避できたのであるから、被告人の過失と第2事故の発生との間に因果関係は認められない旨主張するが、弁護人の提出した客観証拠(A車に設置されたドライブレコーダー映像)をみても、A車の前方に何らかの点滅する小さな光があることはある程度早い時期に確認できるものの、それが自動車のハザードランプであるか否かや、発光しているのが道路のどの位置であるかなどは一見して明らかではなく、これにより第1事故の発生を予測することは容易ではない。通行帯上に自動車が停止していることがわかるのは衝突の直前(数秒前)で、その時点では衝突の回 路のどの位置であるかなどは一見して明らかではなく、これにより第1事故の発生を予測することは容易ではない。通行帯上に自動車が停止していることがわかるのは衝突の直前(数秒前)で、その時点では衝突の回避が難しかったとみられる。もとより、Aが制限速度を遵守し、前方注視に万全を尽くしていれば事故を回避できたのは明らかであるが、他方で、Aの運転態様が常識的に考えられないような特異ないし異常なものであったとはいえないのであって、Aに前記のような過失があったからといって、因果関係が否定されるものではない。 よって、被告人の過失行為と被害者らの死傷結果との間には因果関係が認められる。 【法令の適用】省略【量刑の理由】居眠り運転は、自動車のコントロールを完全に失わせ、重大な事故に結びつく可能性があるから、自動車の運転という危険を伴う行為に携わっていた被告人としては、眠気を覚えたのであれば、できる限り早く運転行為をいったん中止して休憩をとる - 4 -など慎重を期すべきであった。その注意義務を怠ったことにより招いたのは、Bが命を落とし、Cが回復の見込みのない重い傷害を負うという、痛ましく重大な結果である。被告人が一定の刑事責任を負うことは否定できず、結果の重みを考えれば禁錮刑を選択することもやむを得ない。 他方、運転中に眠気を覚えた際に適時・適切に対応することは必ずしも容易なことではない。被告人の過失は、自動車運転者であれば誰でも犯しかねないもので、無謀な運転とはいえないし、交通規範や安全に対する甚だしい軽視に起因するものともいえない。被害者らの死傷の直接的・決定的な原因がAの過失にあることは明らかで、被告人の落ち度の結果への寄与度は相対的に見れば小さいことは確かである。被告人は、息子であるBをうしなうと共に、重い傷害を負って今 被害者らの死傷の直接的・決定的な原因がAの過失にあることは明らかで、被告人の落ち度の結果への寄与度は相対的に見れば小さいことは確かである。被告人は、息子であるBをうしなうと共に、重い傷害を負って今なお後遺症に苦しむ娘のCの介護に当たる日々を送っているのであり、このような被告人にさらに重い刑を科すのは酷でもある。 以上の検討から、被告人に対しては、主文の限度で刑事責任を問うのが相当であると判断する(求刑は禁錮3年)。 令和6年5月27日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官丸田顕
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